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特許7562695積層造形による製造可能である構造応用の高強度アルミニウム合金
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  • 特許-積層造形による製造可能である構造応用の高強度アルミニウム合金 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】積層造形による製造可能である構造応用の高強度アルミニウム合金
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/00 20220101AFI20240930BHJP
   B22F 10/25 20210101ALI20240930BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20240930BHJP
   B22F 1/05 20220101ALI20240930BHJP
   B22F 1/14 20220101ALI20240930BHJP
   C22C 21/12 20060101ALI20240930BHJP
   B22F 9/08 20060101ALI20240930BHJP
   B22F 10/362 20210101ALI20240930BHJP
   B22F 10/64 20210101ALI20240930BHJP
   B22F 10/38 20210101ALI20240930BHJP
   B33Y 70/10 20200101ALI20240930BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240930BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240930BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240930BHJP
【FI】
B22F1/00 N
B22F10/25
B22F10/28
B22F1/05
B22F1/14 400
C22C21/12
B22F9/08 A
B22F10/362
B22F10/64
B22F10/38
B33Y70/10
B33Y10/00
B33Y80/00
B33Y30/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022559311
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-15
(86)【国際出願番号】 EP2021058253
(87)【国際公開番号】W WO2021198231
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-01
(31)【優先権主張番号】102020108781.0
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521185066
【氏名又は名称】エーエム・メタルス・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘルテル、ミカエル
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/142631(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/189458(WO,A1)
【文献】特開2017-066432(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106676342(CN,A)
【文献】特表2019-532176(JP,A)
【文献】GU, Huaiyuan et al.,Fracture of three-dimensional lattices manufactured by selective laser melting,International Journal of Solids and Structures,2019年12月15日,vol.180-181,p.147-159,https://doi.org/10.1016/j.ijsolstr.2019.07.020
【文献】3T additive manufacturing "DATA SHEET Aluminum A20X(TM) (AM205)",3T Additive Manufacturing Ltdのオンラインデータシート,2019年04月29日,https://www.3t-am.com/sites/threeT/files/Aluminum%20A20X_Datasheet.pdf
【文献】DENTI Lucia,Additive Manufactured A357.0 Samples Using the Laser Powder Bed Fusion Technique: Shear and Tensile Performance,Metals,2018年,vol.8,No.9,p.670,DOI:10.3390/met8090670
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-12/90
C22C 21/00-21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最も関連合金化元素としてCu、Zn,またはSi/Mgを持つ2000,6000,または7000系の粉末状アルミニウム合金であって、Mo,Nb,Zr,Fe,Ti,Ta,Vおよびランタノイド元素を含む群M1から選択される金属を1~15重量%の含有量でさらに有し、前記アルミニウム合金は金属ホウ化物、金属窒化物および金属炭化物を0.2重量%未満含むことを特徴とする粉末状アルミニウム合金。
【請求項2】
群M1からの金属を2.0重量%8.0重量%の含有量で有することを特徴とする請求項1に記載の粉末状アルミニウム合金。
【請求項3】
2.0重量%~8.0重量%の含有量のZrおよび/またはTiを有することを特徴とする請求項2に記載の粉末状アルミニウム合金。
【請求項4】
前記アルミニウム合金は、4~6重量%のCu、0.1~1.5重量%のMg、および0.1~1重量%のAgの含有量で有することを特徴とする請求項1または2に記載の粉末状アルミニウム合金。
【請求項5】
Cuの含有量が少なくとも4.5重量%および多くても5.8重量%であり、Mgの含有量が少なくとも0.2重量%および多くても1.5重量%であり、およびAgの含有量が少なくとも0.1重量%および多くても0.6重量%である請求項に記載の粉末状アルミニウム合金。
【請求項6】
酸素の含有量が0.2重量%まででありマンガンの含有量が0.6重量%までであり、およびシリコンの含有量が0.3重量%までである請求項に記載の粉末状アルミニウム合金。
【請求項7】
0.1~500μmの範囲の平均粒径d50を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の粉末状アルミニウム合金。
【請求項8】
前記金属ホウ化物、前記金属窒化物および前記金属炭化物を0.1重量%未満の含有量で有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の粉末状アルミニウム合金。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の粉末状アルミニウム合金の製造方法であって、
液体合金を>850℃の温度で霧化する工程、またはメカニカルアロイングの工程を含むことを特徴とする粉末状アルミニウム合金の製造方法。
【請求項10】
三次元物体の製造方法であって、前記物体はビルドアップ材料層を層ごとに適用すること、および前記ビルドアップ材料を選択的に固化することによって、特にその層内の物体の断面に関連する各層内の位置で、放射線エネルギーの供給によって、少なくとも1つの照射領域を持つ位置で走査することによって、または前記ビルドアップ材料を放射線照射領域に導入すること、それを溶かして基板に適用することによって、製造され、
前記ビルドアップ材料は請求項1~のいずれかに記載の粉末状アルミニウム合金、または対応するワイヤ形状アルミニウム合金、を含む三次元物体の製造方法。
【請求項11】
前記粉末状アルミニウム合金は、少なくとも100℃の温度予熱される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
製造される三次元物体は、少なくとも400~500℃の温度熱処理に委ねられる請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか1項に記載の方法に従って粉末状アルミニウム合金を用いて製造される三次元物体であって、前記粉末状アルミニウム合金は、群M1の金属を2.0~8.0重量%含有する請求項のいずれか1項に記載のアルミニウム合金であり、前記三次元物体はそのようなアルミニウム合金を含むか、またはからなる、三次元物体。
【請求項14】
請求項10に記載の方法を実行するための製造装置であって、レーザ焼結装置またはレーザ融解装置と、容器壁を持つ開放容器として設計される処理チャンバと、前記処理チャンバに設置される支持体と、貯蔵容器と、水平方向に移動可能であるコータとを備え、前記処理チャンバおよび前記支持体は垂直方向に互いに相対的に移動可能であり、前記貯蔵容器は請求項1~のいずれか1項に記載の粉末状アルミニウム合金で少なくとも部分的に充填されている製造装置。
【請求項15】
Cuを4~6重量%、Mgを0.1~1.5重量%およびAgを0.1~1重量%、並びにMo,Nb,Zr,Fe,Ti,Ta,Vおよびランタノイド元素を含む群M1から選択される金属を1.3~15重量%の含有量で有するアルミニウム合金であって、前記合金の100重量%までの残りの割合はアルミニウム、マンガン、シリコンおよび酸素であるアルミニウム合金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最も関連合金化元素としてCu、Zn,またはSi/Mgを持つ特別の粉末状アルミニウム合金に関し、当該粉末状アルミニウム合金はMo,Nb,Zr,Fe,Ti,Ta,Vおよびランタノイド元素を含む群M1から選択される金属を1~15重量%の含有量で有する。本発明は、さらにそのような粉末状アルミニウム合金を製造する方法、これらの方法および特定のアルミニウム合金によって製造される三次元物体のみならず、三次元物体の積層造形のための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軽金属部品は、車両の性能と燃料効率を継続的に改善することを目的として、車両、特に自動車、の製造における集中的な研究の対象となっている。今日の自動車用途の多くの軽金属部品は、アルミニウムおよび/またはマグネシウム合金で作られている。このような軽金属は、強く、剛性があり、良好な強度と延性 (例えば、伸び) を備えている必要がある耐荷重製部品を形成できる。高い強度と延性は、自動車などの車両の安全要件と堅牢性にとって特に重要である。従来のスチールおよびチタン合金は、高温耐性を提供するものの、これらの合金はそれぞれ重いか、比較的高価である。
【0003】
車両の構造部品を形成するための軽金属合金の費用対効果の高い代替品は、アルミニウム基合金である。 このような合金は、押出、圧延、鍛造、スタンピング、またはダイキャスティングのような鋳造技術、サンドキャスティング、インベストメントキャスティング(インベストメントキャスティング)、重力ダイカストなどのバルク成形プロセスによって、所望の部品に従来通りに加工することができる。
【0004】
エネルギーを吸収するのに十分な塑性伸びを有する高強度アルミニウム合金は、最新技術、主に鍛造合金の分野からすでに知られている。ここでは、主にアルミニウム2000、6000、および7000シリーズの材料について説明する。これらの材料は、成形を可能にする比較的柔らかい延性のある集合状態を特徴としている。大規模な成形とその後の熱処理によって導入されるエネルギーの助けを借りて、合金は高強度で完全に硬化した状態に変換される。
【0005】
近年、「ラピッドプロトタイピング」または「ラピッドツーリング」は、また金属処理において重要性が増している。これらの処理は、選択的レーザ焼結および選択的レーザ溶融としても知られている。この処理において、粉末形態の材料の薄層は繰り返し適用され、材料は領域、後の製品がレーザビームへの暴露によって配置される、の各層で選択的に固化され、材料はまず所定の位置で溶融配置され、次に固化する。このようにして、完全な三次元物体は連続して構築することができる。
【0006】
選択的レーザ焼結または選択的レーザ溶融による三次元物体の製造方法、およびこの方法を実行するための装置は、例えば、EP1762122A1に開示されている。
【0007】
選択的レーザ焼結またはレーザ溶融による処理に関して、合金は析出機構が従前の冷間成形なしで機能することが求められる。このような合金は、特に2000系合金(すなわちアルミニウム-銅合金)の分野で知られている。しかしながら、構造の凝固中の収縮応力に影響を受けずに耐えられない低融点共晶による急速な凝固の結果として、高温割れが構造に発生する可能性があるため、比較的長い溶融間隔はこれらの合金に問題を引き起こす。選択的レーザ焼結による処理の場合、通常、マイクロクラック構造のみが得られ、それによって従来の高強度の鍛造アルミニウム合金は、未だ積層造形による加工をすることができない。
【0008】
積層造形技術(AlSi合金族からのそれらのような)を使用した処理が既に確立されている他の利用可能なアルミニウム合金は、高い降伏強度と破断点伸びの特性の望ましい組み合わせを有さない、または非常にコストがかかり、希少合金元素のために不利である。
【0009】
希少合金元素を含むアルミニウム合金の例は、例えばEP3181711A1にアルミニウムが比較的多量のSc(0.6から3重量%)と合金化されることが記載されている。この方法で製造された合金において、金属間化合物Al-Sc相は強力な強度増加効果を有し、それにより>400MPaの降伏強度が達成される。しかし、合金に必要である比較的コストのかかる金属Scに加えて、EP3181711A1に記載されている合金は、AlMgマトリクッスが柔らかく、かつクリープする傾向があるため、>180℃の適用温度に適していない、欠点がある。
【0010】
積層造形で使用する合金の別のアプローチは、Al-MMC(MMC=マトリックス金属複合材料)の構想であり、室温でAlMgSc合金に匹敵する機械的特性を有する。しかしながら、これらの材料の問題は、これらが200℃を超える温度で強度が大幅に低下することである。Al-MMCの構想のもう1つの問題は、材料が3つの成分の粉末混合物からなることであり、この粉末混合物は物理的処理による混合比の変化を排除できないため、輸送、保管、および再利用が困難になる。さらに、有害はMMC金属セラミック複合材料の負のリサイクル挙動と、Al-MMCの機械的再加工がより困難であり、高コストに関連する事実とである。
【0011】
上述の技術水準に基づいて、できるだけ安価で、熱的に安定で、高強度特性を有するアルミニウム合金が必要であり、かつ選択的レーザ焼結または選択的レーザ溶融のような積層造形技術を使用して高い強度、剛性および好ましい腐食特性を持つ三次元物体を加工できることである。スカンジウムのような、市場で不足している希土類金属は、高度な供給安全を確保することが可能であれば、避けるべきである。また、三次元物体を製造するための付加処理方法、およびこれらの方法によって製造された高強度の三次元物体に対する必要性もある。
【発明の概要】
【0012】
この課題は、請求項1に記載の粉末状アルミニウム合金、請求項9に記載の三次元物体の製造方法、請求項8に記載の粉末状アルミニウム合金の製造方法、請求項1に記載の粉末状アルミニウム合金を用いて製造される請求項11に記載の三次元物体、請求項14に記載の三次元物体の製造方法を実行するための装置、および請求項15に記載のアルミニウム合金、によって解決される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0013】
本発明による粉末状アルミニウム合金は、積層造形技術を用いる三次元物体の製造に使用するための粉末である。 本発明による粉末状アルミニウム合金は、最も関連合金化元素としてCu、Zn,またはSi/Mgを含み、さらにMo,Nb,Zr,Fe,Ti,Ta,Vおよびランタノイド元素を含む群M1から選択される金属を1~15重量%の含有量で有する。このアルミニウム合金は、便宜上、関連する部分のCrまたはLiを含まない(すなわち、特にCrおよび/またはLiの合計部分の0.3重量%未満、好ましくは0.15重量%未満、さらにより好ましくは0.1重量%未満、および最も好ましくは、不可避不純物およびCrおよび/またはLiを超える部分がない)。アルミニウム合金がCrおよび/またはLiを含有する場合、群M1の金属にCrおよびLiを加えた合計含有量は、1~15重量%の特定の範囲内、または対応するより好ましい範囲内にあることに注意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1本発明の一実施形態による三次元物体の層毎の構築のための装置を示す概略図である。
図2本発明の例1によるアルミニウム合金で作られた試験体と他の材料で作られた試験体との間の降伏強度の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
「アルミニウム合金」という表示は、合金がアルミニウムを最も必須の金属元素として含み、アルミニウム合金中のその部分が60重量%を超え、好ましくは70重量%を超え、さらにより好ましくは80重量%を超えることを意味すると、本明細書の文脈では理解されるべきである。「最も関連合金化元素としてのCu、ZnまたはSi/Mg」という表示は、Cu、ZnまたはSi/Mgの部分が他の全ての元素(アルミニウムを除く)のそれぞれの部分よりも大きいことを意味すると理解されるべきです。ここで、Si/Mgは合金中のSiとMgの合計含有量を示す。この場合、SiとMgの部分の合計は、合金の他の全ての元素(アルミニウムを除く)のそれぞれの部分よりも大きくなる。「最も関連合金化元素」とは、アルミニウム合金自体を指し、すなわち、本発明による組成物に含まれる群M1からの追加の金属を考慮しないが、CuまたはZnの部分が群M1からの金属を含む合金中の全ての他の元素(アルミニウムを除く)のそれぞれの部分よりも多い場合に好ましい。
【0016】
この文脈において、当業者は、AlCu合金(すなわち、Cuが最も関連合金化元素である)が2000系のアルミニウム合金と呼ばれ、AlZn合金(すなわち、Znが関連合金化元素である)が7000系のアルミニウム合金とも呼ばれ、およびAlSi/Mg合金(すなわち、「Si/Mg」が最も関連合金化元素である)が6000系(国際合金指定制度による)のアルミニウム合金とも呼ばれる。このカテゴリに分類されるアルミニウム合金の概要については、例えば
“https://en.wikipedia.org/wiki/aluminium_alloy#alloy_designaitions”を参照できる。
【0017】
M1群からの金属を混合することによって、選択的レーザ焼結または選択的レーザ溶融のような積層造形技術によって、本質的にまたは完全に亀裂のない三次元物体の製造が可能になるが、比較的大量の遷移金属が追加される。従来のアルミニウム処理技術において、これらの遷移金属の合金含有量を規定された限界(例えば、0.1から0.3重量%の範囲)を超えて増加させることは通常不可能であるため、これは驚くべきことである。そのような増加は、延性が低下し、加工性が失われ、非常に粗い構造部品しか製造できなくなる。ここで説明する積層造形技術による三次元体および三次元物体の製造において、この問題は回避され、何故なら成形はその材料の平均以上の延性が必要とせず、処理は非常に微細であり、かつナノスケールの構造も製造できるためである。
【0018】
群M1からの金属の好ましい部分として、少なくとも1.3重量%、好ましくは2.0重量%から8.0重量%まで、さらに好ましくは2.5重量%から5.0重量%までの部分を与えることができる。その代わりに、またはそれに加えて、群M1から選択される金属または複数の金属は、ランタニドの実質的な部分から構成されず、その取得はコストがかかる可能性があり、群M1の総量に対するランタニドの部分は、好ましくは10重量%未満、さらに好ましくは5重量%未満、なおさらに好ましくは1重量%未満である。群M1からの好ましい金属は、Zr、Fe、およびTiのような容易に入手可能で安価な金属であり、Zrおよび/またはTiが特に適切であると示され得る。Zrについては、0.25~2重量%、特に0.5~1.9重量%の部分が特に適切であると示され得る。同様に、Tiについては、0.25~2重量%、特に0.5~1.9重量%の部分が特に適切であると示され得る。アルミニウム合金が群M1の金属としてZrおよびTiを含み、これらがそれぞれ0.25~2重量%、特に0.5~1.9重量%の割合でアルミニウム合金中に存在するならば、特に好ましい。
【0019】
好ましくは、本発明によるアルミニウム合金はScまたはYの如何なる関連部分を含まない。なぜなら、これらの金属は深刻なコスト上の不利益を伴うからである。それ故、本発明による好ましいアルミニウム合金は、最大1.5重量%までのScおよび/またはY、好ましくは最大1重量%まで、さらにより好ましくは最大0.5重量%まで含み、かつより好ましくは、通常の不純物を超えるScおよびYの量にならない。
【0020】
この説明の文脈において、特に適切な粉末状アルミニウム合金は、Cuを4~6重量%、Mgを0.1~1.5重量%、およびAgを0.1~1重量%の含有量で有するアルミニウム合金である。この合金について、これらの元素および群M1からの元素を考慮すれば、合金の98重量%までの残りの割合、好ましくは合金の99重量%までの残りの割合は、アルミニウムが占める。この場合、合金の100重量%までの残りの割合は、他の金属および/または酸素のような非金属によって通常、提供されるが、合金の機械的特性に大きな影響を与えることはない。
【0021】
特に好ましい実施形態において、上述の本発明によるアルミニウム合金は、Cuを少なくとも4.5重量%および/または最大5.8重量%、好ましくは少なくとも4.8重量%および/または最大5.5重量%、Mgを少なくとも0.2重量%および/または最大1.5重量%、好ましくは少なくとも0.3重量%および/または最大1.2重量%、およびAgを少なくとも0.05重量%および/または最大0.6重量%、好ましくは少なくとも0.2重量%および/または最大0.4重量%の含有量で有する。その代わりに、またはそれに加えて、本発明による上述のアルミニウム合金は、好ましくは、0.2重量%まで、特に0.05~0.15重量%の酸素、0.6重量%まで、特に0.2~0.55重量%のマンガン、および0.3重量%まで、好ましくは0.05から0.15重量%のケイ素を含む。
【0022】
さらに特に好ましい実施形態において、上述の本発明によるアルミニウム合金は、Siを少なくとも0.2重量%および/または最大1.3重量%、好ましくは少なくとも0.3重量%および/または最大1.0重量%、Mgを少なくとも0.4重量%および/または最大2.2重量%、好ましくは少なくとも0.6重量%および/または最大1.8重量%、およびMnを少なくとも0.3重量%および/または最大1.3、好ましくは少なくとも0.4重量%および/または最大1.0重量%の含有量で有する。このアルミニウム合金は、0.9~2.8重量%の範囲、特に1.2~2.5重量%の範囲のSiとMgの総含有量を有することが好ましい。
【0023】
上述のアルミニウム合金について、積層造形によってそれらから製造された製品において、所望の機械的特性が熱処理によって調整され得ることが見出された。合金元素を選択することで、母材の電気化学的静止電位は析出物に比べてより貴の値にシフトすることもできるため、より高い耐食性と、応力亀裂に対する合金の感受性の大幅な低下とを実現できる。
【0024】
粒子サイズに関して、本発明による粉末状アルミニウム合金は重大な制限を受けることはなく、粒径は三次元物体の製造のための付加プロセスに適した寸法にすべきである。適切な粒径として、0.1~500μmの範囲、好ましくは少なくとも1および/または最大200μm、特に好ましくは少なくとも10および/または最大80μmの平均粒径d50を与えることができる。10~80μmの範囲の平均粒径d50が非常に特に好ましい。
【0025】
以下にさらに示すように、本発明による粉末状アルミニウム合金は、また、例えばある処理操作についてワイヤの形態であってもよく、それによって対応するワイヤ形状のアルミニウム合金も本発明の主題である。
【0026】
d50は、規定寸法より小さい直径を有する重量による粒子の量がサンプルの質量の50%である寸法を表す。従来、およびここに記載の本発明の文脈において、粒子寸法分布は、例えばISO13320:2009に従ってレーザ散乱またはレーザ回折によって決定される。場合によっては、単一粒子の直径は、それぞれの最大直径(=粒子の2点当たりの全ての距離の最大値)またはふるい直径、または体積相当球直径であり得る。
【0027】
上述のように、群M1からの元素を含めることによって、応力亀裂を形成する材料の傾向は大幅に低減することができ、理想的には応力亀裂が完全に回避される。この目的のために、同様の目的で述べられるセラミック材料を含める必要はない。従って、本発明による粉末状アルミニウム合金は、特に金属ホウ化物、金属窒化物および金属炭化物のような追加のセラミック化合物をできる限り含まない。アルミニウム合金中のそのような材料の部分は、従って便宜上、0.2重量%未満、特に0.1重量%未満、さらに好ましくは0.05重量%未満に制限される。また、応力亀裂を回避するために先行技術の他の場所に記載されている、ナノ粒子金属または金属水素化物(例えば、粒径が5μmまでのZr、HfまたはZrH)は、本発明による粉末状アルミニウム合金の目的のために必要ではなく、それによって、それらの部分は金属ホウ化物、金属窒化物、および金属炭化物またはセラミック添加物について示された制限内にあるべきである。対応する材料が本発明による粉末状アルミニウム合金にその処理のためにまたは処理中添加されなければ、特に有利である。
【0028】
本発明による粉末状アルミニウム合金は、粉末状合金の製造について当業者に知られている任意の方法によって製造することができる。特に有用な処理は、例えば、液体アルミニウム合金の噴霧化またはメカニカルアロイングを含む。従って、さらなる態様において、本発明は液体合金を>850℃、好ましくは>950℃、より好ましくは>1050℃の温度で霧化する工程を含む粉末状アルミニウム合金の製造方法に関する。1200℃を超える温度は、霧化に必要ではなく、エネルギー要件が高いため望ましいといえない。それ故、>850から1200℃、好ましくは>950から1150℃の範囲は、噴霧化にとって特に好ましい温度範囲として特定することができる。上述の温度が望ましくない一次析出物を防止するためにノズルで一定に実行することを溶融物の十分な過熱または処理制御によって保障する必要がある。噴霧化による粉末状アルミニウム合金の製造は、群M1の添加金属がアルミニウム合金に溶解するか、または準安定相として存在する、利点と関連している。レーザ焼結またはレーザ溶融によるその後の処理中に、これらの相が溶解し、金属が結晶粒微細化効果を持つようになる。
【0029】
また、本発明による粉末状アルミニウム合金は、メカニカルアロイングによっても製造することができる。この方法において、後者の合金(またはその予備混合物)の個々の成分の金属粉末は集中的に機械的に処理され、かつ原子レベルまで均質化される。粒子の改質にとって、例えば形態、粒径、粒径分布を変更するため、または表面処理を実行するために、メカニカルアロイング後に得られた粒子を後処理することが可能である。後処理は、粒子および/または粒子表面の化学修飾、ふるい分け、破砕、丸みを帯びた粉砕、プラズマ球状化(すなわち、丸い粒子への加工)および添加剤処理から選択される1つまたは複数の工程を含むことができる。ここでは、通常、メカニカルアロイングで板またはフレークが得られるため、特に粒子形態または粒径分布の変更が推奨される。この形態は、後の付加処理法において一般的に問題となる。
【0030】
さらに、本発明は、好ましくは>850℃、さらに好ましくは>1050℃の温度での液体合金の噴霧化による、または任意の後処理を伴うメカニカルアロイングによる、記載された方法によって得られる粉末状アルミニウム合金に関する。ここで、噴霧化、メカニカルアロイング、および任意の後処理の好ましい実施形態についての前記説明も参照される。
【0031】
また、積層造形技術の支援による三次元物体の製造の使用のための粉末状アルミニウム合金は以下に開示され、粉末状アルミニウム合金はアルミニウムに加えて、最も関連合金化元素としてCu、Zn,またはSi/Mgを含み、さらにMo,Nb,Zr,Fe,Ti,Ta,V、ランタノイド元素およびLiを含む群M1から選択される金属を1~15重量%の含有量で有する。本発明によるアルミニウム合金について上に開示された好ましい実施形態は、同様に、この粉末状アルミニウム合金についても好ましいと考えられる。
【0032】
本発明の別の態様は、積層造形プロセス(すなわち、物体が層ごとに構築されるプロセス)によって三次元物体を製造する方法に関する。物体は、好ましくは、その層内の物体の断面に関連する各層内の位置で、ビルドアップ材料を層ごとに適用し、ビルドアップ材料を選択的に固化する、特に放射エネルギーを供給する、ことによって、製造される。好ましくは、少なくとも1つの照射領域、特にエネルギービームの放射線照射領域持つ位置をスキャンするか、ビルドアップ材料を放射線衝突領域に導入し、それを溶かして基板に適用する。本明細書に記載される本発明の文脈において、ビルドアップ材料は、上述の粉末状アルミニウム合金を含むが、代替的に、対応するワイヤ形状のアルミニウム合金を含み得る。好ましくは、ビルドアップ材料は前記粉末状またはワイヤ形状のアルミニウム合金を含む。
【0033】
三次元物体は、1つの材料(すなわち、アルミニウム合金)で作られた物体であってもよいし、異なる材料で作られた物体であってもよい。 三次元物体が異なる材料からなる物体である場合、この物体は例えば、本発明のアルミニウム合金を他の材料の基体に適用することによって製造することができる。
【0034】
この方法に関連して、選択的固化の前に粉末状アルミニウム合金を予熱することが有用であり、少なくとも110℃の温度への予熱が好ましいとして与えられ、少なくとも120℃の温度への予熱、さらに好ましくは少なくとも130℃の温度への予熱、さらに好ましくは少なくとも150℃の温度への予熱、さらに好ましくは少なくとも165℃の温度への予熱、さらに好ましくは少なくとも190℃の温度への予熱、が挙げられる。他方、非常に高い温度への予熱は、三次元物体を製造するための装置、すなわち少なくとも三次元物体が形成される容器にかなりの要求を課し、それによって最高でも400℃の温度が予熱の妥当な最高温度として規定できる。好ましくは予熱の最高温度は350℃以下であり、さらに好ましくは300℃以下である。予熱のために示される温度は、それぞれ、粉末状アルミニウム合金が適用される構築プラットフォーム、および粉末状アルミニウム合金によって形成される粉末床が加熱される温度を示す。
【0035】
層ごとの適用または堆積層は、積層造形による処理に適した層の厚さ、例えば20~60μmの範囲の層厚、好ましくは少なくとも25および/または最大50μmの厚さ、さらに好ましくは少なくとも30および/または最大40μmの厚さ、で好都合に実行される。
【0036】
上述のように、本発明による方法は、ビルドアップ材料がエネルギー源、例えばレーザの放射線照射領域に導入され、かつレーザで溶かして基板に塗布するように構成することもできる。 粉末ビルドアップ溶接のモードでレーザクラッディングとも呼ばれるこのような方法において、粉末は1つまたは複数のノズルを通して基板上にスポットスプレーされ、レーザはレーザの適用点に同時に位置合わせされる。放射エネルギーにより、基板は部分的に溶融し、適用された合金粉末が溶融し、それによって適用された合金が溶融した基板と結合できる。このよう方法で、粒状材料の層がワークピースに適用され、ワークピースの表面層に結合される。 粒状材料の溶融層を順次「噴霧」することにより、より大きなワークピースは従って製造することができる。
【0037】
代替的に、レーザコーティング処理はワイヤビルドアップ溶接方法のモードでも実行でき、ワイヤは粉末の代わりに使用される。 従って、本発明による方法は、上記のようにアルミニウム合金で作られたワイヤが使用される、実施形態も含む。
【0038】
本発明による方法に関して、製造された三次元物体の熱処理は、その物理的特性、例えば、特に引張、強度および/または降伏強度、を大幅に改善できることがさらに見出された。おそらく、この効果は最初に形成された三次元物体の合金の微細構造の再配列によるものである。従って、この目的を達成するために、本発明による方法は最初に形成された三次元物体を熱処理、好ましくは400℃~500℃の温度で、および/または20分間~200分間の時間、ゆだねる工程をさらに含むことが好ましい。特に好ましい温度範囲として、420℃~470℃の範囲、特に少なくとも430℃および/または450℃以下が挙げられ得る。熱処理の特に好ましい時間枠は、30分~120分、特に少なくとも40分および/または80分以下、である。さらに、そのような熱処理は、比較的高い温度でのそのような熱処理の後、三次元物体がほぼ周囲温度まで急速に(すなわち、例えば水で急冷することにより10分以内、好ましくは5分以内)冷却され、その後90℃~150℃、特に少なくとも110℃および/または140℃以下の温度で少なくとも12時間、好ましくは18時間、時効する場合、特に有利な結果を提供することが見出された。
【0039】
本発明の別の態様は、特に上述した方法に従って製造された粉末状アルミニウム合金を使用して製造された三次元物体に関する。粉末状アルミニウム合金は、上述したアルミニウム合金であり、三次元物体はそのようなアルミニウム合金を含むか、またはそれからなる。このような物体の製造に上述した合金を使用することにより、「施工完了時」非常に良好な表面が得られ、それによってその後の表面の後処理(例えば平滑化)が最小限に抑えることができる。
【0040】
本発明による三次元物体は、便宜上、特に少なくとも400MPaおよび/または最大550MPa、好ましくは少なくとも440MPa~550MPa、特に好ましくは460~480MPaの降伏強度、および/または450MPaおよび/または最大550MPa、好ましくは少なくとも470MPa、特に好ましくは500~550MPaの範囲の引張強度のような有利に適合された機械的特性を有する。これらそれぞれの降伏強度および強度は、ここに記載の発明の範囲内で、EN ISO 6892.1(2011) に従って決定されるべきである。代替的にまたは追加的に、本発明による三次元物体は、好ましくは200℃で、少なくとも330MPa、より好ましくは少なくとも350MPa、さらにより好ましくは360MPa~420MPaの範囲の降伏強度を好ましくは有する。
【0041】
本発明の別の態様は、上述の三次元物体の製造方法を実行するための製造装置に関し、装置はレーザ焼結装置またはレーザ溶融装置と、容器壁を有する開放容器として構成される処理チャンバと、処理チャンバ内に配置された支持体と、貯蔵容器と、水平方向に移動可能なコータとを含む。ここで、処理チャンバおよび支持体は垂直方向に互いに相対的に移動可能であり、貯蔵容器は少なくとも 上記のように粉末状アルミニウム合金で少なくとも部分的に充填されている。
【0042】
同様に、本発明は三次元物体を製造する方法を実行するための製造装置に関し、当該製造装置はレーザコーティングのための装置と、処理チャンバと、レーザの照射領域に粒状材料またはワイヤを供給するための供給装置と、上述の粉末状アルミニウム合金またはそのようなアルミニウム合金のワイヤで少なくとも部分的に充填された貯蔵容器とを備える。
【0043】
三次元物体を製造するための積層造形装置および関連する方法は、一般に、形状のない(またはワイヤ形状の)ビルドアップ材料の固化によって層ごとに物体が製造される事実によって特徴付けられる。固化は、例えば電磁放射または粒子放射を照射することによりビルドアップ材料に熱エネルギーを供給する、例えば、レーザ焼結(「SLS」または「DMLS」)、またはレーザ溶融、または電子ビーム溶融によってもたらすことができる。
【0044】
例えば、レーザ焼結またはレーザ溶融において、ビルドアップ材料の層上のレーザ ビームの照射領域(「レーザスポット」)は、層で製造されるべき物体の物体断面に対応する層のそれらポイント上を移動する。エネルギーの適用の代わりに、適用されたビルドアップ材料の選択的な固化は、3D印刷によって、例えば接着剤または結合剤を適用することによって実行することもできる。一般に、本発明はビルドアップ材料が固化される方法に関係なく、層ごとの適用およびビルドアップ材料の選択的固化による物体の製造に関する。
【0045】
本発明の他の特徴および実施形態は、添付の図面を用いた例示的な実施形態の説明において見出される。
【0046】
図1は、本発明の一実施形態による三次元物体の層毎の構築のための装置の、断面として部分的に再現された概略図を示す。
【0047】
図1に示す装置は、それ自体既知のレーザ焼結装置またはレーザ溶融装置a1である。物体a2の構築にために、チャンバ壁a4を備えた処理チャンバa3を含む。処理チャンバa3内には、壁a6を有する上向きに開放された構築容器a5が配置されている。作業面a7は、構築容器a5の上部開口部によって画定され、物体a2を構築するために使用できる、開口部内にある作業面a7の領域は、構築領域a8と呼ばれる。容器a5内には、垂直方向Vに移動可能な支持体a10が配置され、これに基板a11が取り付けられ、基板a11は構築容器a5を底部で閉じ、従ってその底部を形成する。基板a11は、支持体a10に取り付けられる支持体a10と分離して形成される板であっても、支持体a10と一体に形成されていてもよい。使用される粉末および処理に応じて、基板a11上には物体a2が構築される構築プラットフォームa12も取り付けられ得る。しかしながら、物体a2は基板a11自体の上に構築することもでき、これは構築プラットフォームとして役目をする。図1において、構築プラットフォームa12上の構築容器a5内に形成される物体a2は未固化のままのビルドアップ材料a13によって囲まれた幾つかの固化層を持つ中間状態の作業面a7の下に示されている。レーザ焼結装置a1は、さらに電磁放射によって固化できる粉末状のビルドアップ材料a15のための貯蔵容器a14と、ビルドアップ材料a15を構築領域a8に塗布するために水平方向Hに移動可能なコータa16とを含む。レーザ焼結装置a1は、さらにエネルギービームとしてレーザビームa22を発生するレーザa21を有する照射装置a20を含み、前記エネルギービームは偏向装置a23を介して偏向され、処理チャンバa3の壁a4の上側に取り付けられる結合窓a25を介して集束装置a24によって作業面a7上に集束される。
【0048】
また、レーザ焼結装置a1は装置a1の個々の構成要素が協調方法で制御して構築処理を行う制御ユニットa29を備えている。制御ユニットa29は、動作がコンピュータプログラム(ソフトウェア)によって制御されるCPUを含んでいてもよい。コンピュータプログラムは、記憶媒体上に装置とは別に記憶され、そこから装置、特に制御ユニットにロードすることができる。動作中、粉末層を塗布するために、支持体a10は最初に、所望の厚さに対応する高さだけ下げられる。コータa16を作業平面a7上で移動させることにより、粉末ビルドアップ材料a15の層はそれから塗布される。安全のために、コータa16は層を構築するのに必要な量よりもわずかに多い量のビルドアップ材料a15をその前に押し出す。コータa16は、計画された余分のビルドアップ材料a15をオーバーフロー容器a18に押し込む。オーバーフロー容器a18は、構築容器a5の両側に配置される。粉末ビルドアップ材料a15の適用は、少なくとも生成される物体a2の断面全体にわたって、好ましくは構築領域a8全体、すなわち、支持体a10の垂直方向の動きにより下げることができる作業面a7の領域にわたって行われる。次いで、生成される物体a2の断面は、エネルギービームと作業平面a7との交差を概略的に表す、レーザビームa22によってビーム放射領域(図示せず)で走査される。これにより、粉末ビルドアップ材料a15は製造されるべき物体a2の断面に対応する点で固化される。これらの工程は、物体a2が完成し、構築容器a5から取り外せるまで、繰り返される。好ましくは処理チャンバa3内で層状の処理ガス流a34を発生するために、レーザ焼結装置a1はガス供給チャネルa32、ガス入口ノズルa30、ガス出口開口a31およびガス排出チャネルa33をさらに備える。処理ガス流a34は、構築領域a8を横切って水平に移動する。ガスの供給および排出は、また制御ユニットa29によって制御されてもよい(図示せず)。処理チャンバa3から抜き出されたガスは、フィルタ装置(図示せず)に送られ、ろ過されたガスはガス供給チャンネルa32を介して処理チャンバa3に戻され、それによって閉ガス回路を持つ再循環系が形成される。1つのガス入口ノズルa30および1つのガス出口開口a31のみの代わりに、いくつかのノズルまたは開口はいずれの場合も設けることができる。
【0049】
本発明による装置おいて、貯留槽a14は上述のように粉末状アルミニウム合金a15で少なくとも部分的に充填される。
【0050】
最後に、本発明の別の態様はCuを4~6重量%、Mgを0.1~1.5重量%、およびAgを0.1~1重量%、ならびにMo,Nb,Zr,Fe,Ti,Ta,Vおよびランタノイド元素を含む群M1から選択される金属を1.3~15重量%の含有量で有し、好ましくは合金の99重量%までの残りの割合はアルミニウムによって占められ、さらに好ましくは合金の100重量%までの残りの割合はアルミニウム、マンガン、シリコンおよび酸素よって占められる、アルミニウム合金に関する。
【0051】
本発明は、多数の実施例によってさらに説明されるが、本出願の保護範囲を決定するものとして解釈されるべきではない。
【0052】
例1:
表1に示す組成を有する種々のアルミニウム合金は、直接金属レーザ焼結(DMLS)によって試験体に加工した。このような方法で製造された試験体は、それらの硬度、23℃での降伏強度および引張強度に関して調べた。 これらの試験の結果も表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
硬度を決定するために製造された試験体は、標準DIN EN ISO 6506-1:2015「金属材料-ブリネル硬さ試験-第1部:試験方法」に従ってブリネル法にかけた。密度立方体試料は、決定のために使用された。試験は各試料に対して3回実行され、測定値は1HBWの精度で与えられる。
【0055】
比較試料1で製造された試験体は、大量の高温割れを示した。比較試料2において、高温割れは比較試料1に比べて大幅に減少したが、それでも目に見え;試験体の熱処理は材料の硬度の改善につながらない。本発明による材料は、高温割れがなく、製造直後のこれらの比較試料に比べて、機械的特性が大幅に改善されたことを示した。熱処理(485℃/40分、その後の水による急冷および25℃でのエージング)により、これらの特性を大幅に改善することができた。
【0056】
例2:
例1によるアルミニウム合金で作られた試験体(-●-)は、その降伏強度特性に関して他の材料で作られた対応する試験体と比較した。比較材料として、スカルマロイ(DMLS加工、-◇-)、アルミニウム合金AW2618(鍛造、T6、-□-)、アルミニウム合金7075(T6、-▲-)、アルミニウム合金2024(T6、-×-)、およびアダロイ(DMLS加工、-○-)で作られた試験体が使用された。比較材料のデータは、文献または対応するデータシートから取得される。これらの材料で作られた試験試料の降伏強度は図2に示される。
【0057】
図2から、本発明によるアルミニウム合金はすでに23℃で全ての試験材料の中で最高の降伏強度を有していたのに対し、スカルマロイおよびアルミニウム合金7075のみが同様に高い範囲で降伏強度を有していたことが明らかである。高温鍛造合金AW-2618Aと比較すると、その差は約27%であった。約100~120℃の温度を超えると、アルミニウム合金7075の降伏強度は急激に低下し、スカルマロイの降伏強度はこれらの温度でさえ、さらに大幅に低下する。これに対し、本発明のアルミニウム合金の降伏強度はこれらの温度では僅かしか低下しない。約200℃で、本発明によるアルミニウム合金は、2番目に優れた合金AW2618Aよりも約42%優れた降伏強度を有する。
以下に、本願出願の当初特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
最も関連合金化元素としてCu、Zn,またはSi/Mgを持つ粉末状アルミニウム合金であって、Mo,Nb,Zr,Fe,Ti,Ta,Vおよびランタノイド元素を含む群M1から選択される金属を1~15重量%の含有量でさらに有することを特徴とする粉末状アルミニウム合金。
[2]
群M1、好ましくはZrおよび/またはTiからの金属を少なくとも1.3重量%、好ましくは2.0重量%、8.0重量%まで、さらに好ましくは2.5重量%、5.0重量%までの含有量で有することを特徴とする[1]の粉末状アルミニウム合金。
[3]
Cuを4~6重量%、Mgを0.1~1.5重量%、およびAgを0.1~1重量%の含有量で有し、好ましくは前記合金の99重量%までの残りの割合はアルミニウムであることを特徴とする[1]または[2]の粉末状アルミニウム合金。
[4]
少なくとも4.5重量%および/または多くても5.8重量%、好ましくは少なくとも4.8重量%および/または多くても5.5重量%のCu、少なくとも0.2重量%および/または多くても1.5重量%、好ましくは少なくとも0.3重量%および/または多くても1.2重量%のMg、および少なくとも0.05重量%および/または多くても0.6重量%、好ましくは少なくとも0.2重量%および/または多くても0.4重量%のAgの含有量を有する[3]の粉末状アルミニウム合金。
[5]
0.2重量%まで、好ましくは0.05~0.15重量%の酸素、0.6重量%まで、好ましくは0.2~0.55重量%のマンガン、および0.3重量%まで、好ましくは0.05~0.15重量%のシリコンをさらに含む[3]の粉末状アルミニウム合金。
[6]
0.1~500μmの範囲、好ましくは少なくとも1および/または多くても200μm、特に好ましくは少なくとも10および/または多くても80μmの平均粒径d50を有することを特徴とする請求項[1]~[5]いずれかの粉末状アルミニウム合金。
[7]
金属ホウ化物、金属窒化物および金属炭化物を0.2重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、より好ましくは0.05重量%の含有量で有することを特徴とする[1]~[5]いずれかの粉末状アルミニウム合金。
[8]
前述のいずれかの粉末状アルミニウム合金の製造方法であって、
液体合金を>850℃、好ましくは>1050℃の温度で霧化する工程、またはメカニカルアロイングおよび任意に後処理の工程を含むことを特徴とする粉末状アルミニウム合金の製造方法。
[9]
三次元物体の製造方法であって、前記物体はビルドアップ材料層を層ごとに適用すること、および前記ビルドアップ材料を選択的に固化することによって、特にその層内の物体の断面に関連する各層内の位置で、放射線エネルギーの供給によって、好ましくは少なくとも1つの照射領域、特にエネルギービームの放射線照射領域、を持つ位置で走査することによって、または前記ビルドアップ材料を放射線照射領域に導入すること、それを溶かして基板に適用することによって、製造され、
前記ビルドアップ材料は[1]~[7]のいずれかの粉末状アルミニウム合金、または対応するワイヤ形状アルミニウム合金、を含む、好ましくはからなる三次元物体の製造方法。
[10]
前記粉末状アルミニウム合金は、好ましくは少なくとも100℃、より好ましくは高くとも400℃の温度で予熱される[9]の方法。
[11]
製造される三次元物体は、好ましくは少なくとも400~500℃の温度および/または20~200分の期間で、熱処理に委ねられる[9]または[10]の方法。
[12]
粉末状アルミニウム合金を用いて製造される、特に[8]の方法により製造される、三次元物体であって、前記粉末状アルミニウム合金は[1]~[7]のいずれかのアルミニウム合金であり、前記三次元物体はそのようなアルミニウム合金を含むか、またはからなる、三次元物体。
[13]
少なくとも400MPaおよび/または多くとも550MPa、好ましくは少なくとも440MPa、特に好ましくは460~500MPaの範囲の降伏強度、および/または450MPa、好ましくは少なくとも470MPaおよび/または多くとも550MPa、特に好ましくは500~550MPaの範囲の引張強度を有することを特徴とする[12]の三次元物体。
[14]
[9]の方法を実行するための製造装置であって、レーザ焼結装置またはレーザ融解装置と、容器壁を持つ開放容器として設計される処理チャンバと、前記処理チャンバに設置される支持体と、貯蔵容器と、水平方向に移動可能であるコータとを備え、前記処理チャンバおよび前記支持体は垂直方向に互いに相対的に移動可能であり、前記貯蔵容器は[1]~[7]のいずれかの粉末状アルミニウム合金で少なくとも部分的に充填されている製造装置。
[15]
Cuを4~6重量%、Mgを0.1~1.5重量%およびAgを0.1~1重量%、並びにMo,Nb,Zr,Fe,Ti,Ta,Vおよびランタノイド元素を含む群M1から選択される金属を1.3~15重量%の含有量で有し、好ましくは合金の99重量%まではアルミニウムであり、さらに好ましくは合金の100重量%の残りの割合はアルミニウム、マンガン、シリコンおよび酸素であるアルミニウム合金。
図1
図2