(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】分子半導体対象膜の構造的および/または組成的改質を提供するための方法
(51)【国際特許分類】
H10K 71/20 20230101AFI20240930BHJP
H01L 21/225 20060101ALI20240930BHJP
H01L 21/228 20060101ALI20240930BHJP
H01L 21/26 20060101ALI20240930BHJP
H01L 21/368 20060101ALI20240930BHJP
H10K 10/46 20230101ALI20240930BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240930BHJP
H10K 71/12 20230101ALI20240930BHJP
H10K 71/30 20230101ALI20240930BHJP
H10K 71/40 20230101ALI20240930BHJP
H10K 85/00 20230101ALI20240930BHJP
【FI】
H10K71/20
H01L21/225 R
H01L21/228
H01L21/26 F
H01L21/368 L
H10K10/46
H10K50/10
H10K71/12
H10K71/30
H10K71/40
H10K85/00
(21)【出願番号】P 2022577159
(86)(22)【出願日】2021-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2021065902
(87)【国際公開番号】W WO2021254932
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2024-04-17
(32)【優先日】2020-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504339734
【氏名又は名称】コンセホ・スペリオール・デ・インベスティガシオネス・シエンティフィカス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】カンポイ キレス,マリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】ペレヴェデンツェフ,アレクサンドゥル
【審査官】内村 駿介
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-223075(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021117(WO,A1)
【文献】特表2012-533852(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0044976(KR,A)
【文献】特開2005-158357(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0051533(US,A1)
【文献】特開2003-217864(JP,A)
【文献】特開2015-011140(JP,A)
【文献】特開2014-135010(JP,A)
【文献】F. PSCHENITZKA et al.,Solvent-enhanced Dye Diffusion in Polymer This-Films for OLED Application,MRS Proceedings,2011年03月21日,Vol. 665,C9.5.1-C9.5.7
【文献】Florian PSCHENITZKA et al.,Three-color organic light-emitting diodes patterned by masked dye diffusion,Applied Physics Letters,米国,1999年03月29日,Vol. 74,No. 13,p.1913-1915
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-102/20
H01L 21/26
H01L 21/225
H01L 21/228
H01L 21/368
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(1)上に位置する分子半導体対象膜(2)に構造的および/または組成的改質を提供する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
a)溶液ベースの堆積技術によって、基材(1)上に位置する前記分子半導体対象膜(2)の表面上に半透性の一時的な中間層(3)を堆積させる工程、
b)溶液ベースの堆積技術によって工程(a)で得られた前記半透性の一時的な中間層(3)上に複数の機能性分子添加剤を含む固体ドナー層(4)を堆積させる工程、
c)工程(b)で得られた構造体を、熱刺激、溶媒蒸気刺激、または光刺激に曝露し、それによって前記半透性の一時的な中間層(3)を通る拡散を活性化させる工程、および
d)前記固体ドナー層(4)および前記半透性の一時的な中間層(3)の化学的または物理的な除去工程。
【請求項2】
前記分子半導体対象膜(2)が、溶液ベースの堆積技術によって基材(1)上に堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分子半導体対象膜(2)が、スピンコーティング、ブレードコーティング、スプレーコーティング、スロットダイコーティング、およびこれらの組み合わせから選択される技術によって、基材(1)上に堆積される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)および工程(b)が、スピンコーティング、ブレードコーティング、スプレーコーティング、スロットダイコーティング、およびそれらの組み合わせから選択される技術によって行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ドナー層(4)の前記複数の機能性分子添加剤が、溶媒、色素、発光色素、核形成剤、架橋剤、反応性モノマー、触媒、抗原、抗生物質、アミノ酸、オリゴペプチド、分子電子アクセプター、分子電子ドナー、分子電気ドーパント、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(b)で得られた構造体を、パターン状に、熱刺激、溶媒蒸気刺激、または光刺激に曝露する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(b)で得られた構造体を、工程(c)において、ホットプレート(5)、ホットチップ、ホットスタンプ、またはホットガスによって熱刺激に曝露する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(b)で得られた構造体を、工程(c)において、ノズル(6)またはスロットダイ(7)によって溶媒蒸気刺激に曝露する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも前記基材(1)、前記分子半導体対象膜(2)、前記半透性の一時的な中間層(3)、または前記ドナー層(4)が、光吸収層である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記基材(1)が光吸収層(9)を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(b)で得られた構造体が、レーザ(8)またはフラッシュランプによって光刺激に曝露される、請求項9または10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、半透性の一時的な中間層を介した分子半導体対象膜中への溶媒堆積ドナー層の機能性分子の拡散を局所的に活性化する、熱刺激、溶媒蒸気刺激または光刺激によって分子半導体対象膜の構造的および/または組成的改質を提供するための方法に関する。
【0002】
したがって、本発明は、電子デバイス、光電子デバイス、フォトニックデバイス、および分子半導体材料に基づく構造体の製造の分野に含まれ得る。
【0003】
〔背景技術〕
分子半導体は、例えば、有機(高)分子半導体の場合、π共役(ヘテロ)芳香族部分を含み得る、それらの特定の化学構造に由来する電子的および光学的特性を示す。既存および新規の幅広い用途において、分子半導体は一般的には数ナノメートル~数マイクロメートルの範囲の厚さを有する薄い固形フィルムの形態で使用される(例えば、M. Eslamian, Nano-Micro Lett.9,3(2017)を参照)。真空フリーで行う広範囲の溶液ベースのプロセススキームは、エネルギー効率およびコスト効率の良い製造を可能にするために非常に望ましいものであり、この分野で積極的に開発されている。
【0004】
分子半導体層の堆積の他に、デバイス特有の機能を実現するために、広範囲のデバイスの製造方法の一部として、製造の重要な部分では、分子材料の局所的な改質が多くの場合で必要とされる。例えば:
・例えば、局所的なドーピングによる薄膜トランジスタ(TFT)の電極および配線の高電気伝導電性のフィルム領域を画定するために、または、発光ダイオード(LED)内の発光素子を構造化するために、材料組成の局所的な改質が必要とされる。
【0005】
・例えば、異なる電荷キャリアモビリティまたは屈折率を示すフィルム領域を画定することを目的として、結晶化度の観点から、およびポリマー材料、鎖状構造の場合、短距離分子配列の局所的な改質が必要とされる。
【0006】
・異方性の光学的特性、電子的特性、熱的特性および機械的特性を示すフィルム領域を画定するために、(高)分子配向による長距離の分子配列の局所的な操作が必要とされる。
【0007】
ポリマーフィルムにおける溶媒増強色素拡散の最新の方法はシャドウマスクを使用しており、その空間分解能は、シャドウマスクによって決定される(F. Pschenitzka et al Materials Research Society Symposium Proceedings vol. 665. 31 December 2001 (2001-12-31)およびF. Pschenitzka and J. C. Sturm, Appl. Phys. Lett., Vol. 74, No. 13, 29 March 1999を参照)。それゆえに、シャドウマスクを使用することの欠点は、空間分解能がわずか数百ミクロンであることである。さらに、マスクを使用する方法は、対象膜に2つの可能性のある組成物のみを提供する:覆われた領域に1つ、および孔を有する部分に所定の組成物。
【0008】
材料組成物の局所的な改質のための最新技術はフォトリソグラフィである(G. M. Wallraff et al., Chem. Rev. 99, 1801 (1999)を参照)。一般的なプロセス工程は、(i)対象の分子半導体膜上への感光性レジストのスピンコーティング、(ii)フォトレジストの焼成、(iii)フォトレジスト上への所望の空間パターンの曝露、(iv)フォトレジストの現像、(v)対象層への所望の処理の実行、および(vi)残留フォトレジストの除去を含み得る。フォトリソグラフィはマイクロメートルスケールまでの空間分解能を与えるにもかかわらず、フォトリソグラフィの欠点としてはスループットを低下させ、それに伴ってコストを増加させる上述の複雑な多工程プロセスを含む。さらなる欠点は、本質的に追加型または減型の改質に関連し、これは多くの場合、デバイスに統合するために平面フィルムのフォーマットを復元するためのその後の埋め戻し、ならびに、エージングまたは屈曲時の隣接層の層間剥離の特性を必要とする。ほとんどの場合、フォトレジストおよび同様の性質の対象層は使用される溶媒に必ずしも無関係ではない、すなわち、一般的なフォトレジストの堆積は、その特性を改質する下部の対象層を少なくとも部分的に、溶解または膨潤させることができる。
【0009】
短距離の分子配列の局所的な改質の最新技術はディップペンナノリソグラフィである(A. Perevedentsev et al., Nat. Commun. 6, 5977 (2015)を参照)。一般的なプロセスでは、原子間力顕微鏡(AFM)チップを介して対象の分子半導体膜上に溶剤インクの局所的な堆積を行う。ディップペンナノリソグラフィはマイクロメートルスケールまでの空間分解能を提供するにもかかわらず、ディップペンナノリソグラフィの欠点としては、一般的な書込みスピードがマイクロメートル毎秒と遅いこと、ならびに、対象膜の機械的損傷を同時に行うことなくインクの堆積を可能とするためにチップ-フィルム分離の慎重な制御の必要性を含む。
【0010】
長距離の分子配列の局所的な改質のための最新技術は機械的ラビングである(L. Hartmann et al.,Adv. Funct. Mater. 21, 4047 (2011)を参照)。一般的なプロセスでは、マイクロファイバークロスでコーティングされたスピニングホイールを用いた対象の分子半導体膜の方向性ラビングを行う。機械的ラビングは迅速なプロセススピードを提供するにもかかわらず、機械的ラビングの欠点としては対象膜が機械的に損傷する傾向、低空間分解能(一般的には数ミリメートルのスケール)および複雑なパターンを形成することができないことを含む。
【0011】
したがって、構造的および/または組成的に分子半導体層を改質するための新しい方法を開発することが必要である。
【0012】
〔発明の概要〕
本発明のプロセスによって解決されるべき問題点は、分子材料、特に分子半導体に基づく広範囲のデバイスおよび構造体の製造のための多用途な方法を提供することである。特に、本発明のプロセスは、例えば、光吸収/発光、屈折率、電気伝導率などの光学的および電子的特性に関する、材料組成、分子配向、鎖状構造および結晶などの分子半導体対象膜における特性/特徴を改質することを目的として、分子半導体対象膜を構造的および/または組成的に(5μm未満の空間分解能で)改質するための方法を提供することを目的とする。
【0013】
前記方法は、例えば、導波路、回折格子、LED、TFT、紙幣および個人IDのためのセキュリティ要素、光検出器、熱電発電機、ウェアラブルエレクトロニクスなどの分子エレクトロニクスの分野における電子デバイスおよび電子構造体、ならびに、フォトニックデバイスおよびフォトニック構造体の製造を対象としている。前記の改質された分子半導体対象膜は、電子デバイスおよび/またはフォトニックデバイスの一部として用いられるのに適している。
【0014】
本発明の第1の態様は、基材上に配置された分子半導体対象膜に構造的および/または組成的改質を提供するための方法に関し、前記方法は、以下の工程を含むことを特徴とする:
a)溶液ベースの堆積技術によって、基材上に位置する前記分子半導体対象膜の表面上に半透性の一時的な中間層を堆積させる工程、
b)溶液ベースの堆積技術によって工程(a)で得られた前記半透性の一時的な中間層上に複数の機能性分子添加剤を含む固体ドナー層を堆積させる工程、
c)工程(b)で得られた前記構造体を、熱刺激、溶媒蒸気刺激、または光刺激に曝露し、それによって穿孔されていない半透性の一時的な中間層を通る拡散を活性化させる工程、および
d)前記固体ドナー層および前記半透性の一時的な中間層の化学的または物理的な除去工程。
【0015】
本発明における「分子半導体対象膜」という用語は、本発明の方法によって構造的および/または組成的に改質しようとする対象膜を指す。有機(高)分子半導体の場合、2つのサブクラス、すなわち、低分子量物質およびポリマーが存在する。共に、分子中のsp2混成軌道C原子のpz軌道によって形成される共役π電子系を有する。分子の骨格を構成するσ結合と比較して、π結合は著しく弱い。したがって、共役分子の最も低い電子励起は一般的には1.5~3eVのエネルギーギャップを有するπ-π遷移であり、可視および近赤外スペクトル領域での光吸収または発光をもたらす。ポリマーなどの分子半導体は、それらにドーピングまたは電荷キャリアが注入されたときに電気を通すことができる。半導体の電気的および光学的特性、ならびにプラスチックスの機械的特性を有する分子半導体は、例えば、トランジスタ、LED、光検出器などの低コストで柔軟性のある、電子デバイス、光電子デバイス、およびフォトニックデバイスを開発するための良好な候補である。
【0016】
「組成的改質」という用語は、分子半導体対象膜の組成の変化を指す。
【0017】
本明細書中において、「構造的改質」という用語は、分子半導体対象膜のコンフォメーション、結晶構造、結晶化度または分子配向の変化を指す。
【0018】
本発明では、構造的および/または組成的な改質は、機能性分子添加剤を分子半導体対象膜に導入することによって行われる。「機能性」という用語は、対象分子材料との特異的な物理化学的相互作用によって、所望の構造的および/または組成的な改質を誘導する前記機能性分子添加剤の能力を指す。前記機能性分子添加剤は溶解性であり、固体のドナー層を形成するために40℃を超える融点および約1500g/mol未満の分子量を有するべきである。
【0019】
・前記機能性分子添加剤の例は、溶媒、色素、発光色素、核形成剤、架橋剤、反応性モノマーおよび触媒がある。好ましくは、前記添加剤は約1500g/mol未満の分子量を有する。
【0020】
・前記「生体」機能性分子添加剤の例は、抗原、抗生物質、アミノ酸およびオリゴペプチドである。好ましくは、前記添加剤は約1500g/mol未満の分子量を有する。
【0021】
・他の機能性分子添加剤は、フラーレンまたは非フラーレン電子アクセプターなどの電子化合物、および分子ドーパントである。
【0022】
「添加剤」という用語はそれ自身が前記対象層に添加されるが、必ずしも永久的に保持されないことを意味する。求められる特定の構造的および/または組成的な改質に応じて、機能性分子添加剤は、得られた改質された分子半導体対象膜中に保持されていてもよく、保持されていなくてもよい。例えば、鎖状構造および配向を構築する場合では、前記機能性分子添加剤はその後、化学的手段または昇華によって除去される。
【0023】
本明細書中において、「ドナー層」という用語は、分子半導体において所望の構造的および/または組成的な改質を誘導するために使用される複数の機能性分子添加剤を含む層を指す。好ましくは、ドナー層の機能性分子添加剤は、溶媒、色素、発光色素、核形成剤、架橋剤、反応性モノマー、触媒、抗原、抗生物質、アミノ酸、オリゴペプチド、分子電子アクセプター、分子電子ドナー、分子電気ドーパントまたはそれらの組み合わせから選択される。
【0024】
本明細書中において、「半透性の一時的な中間層」という用語は、分子半導体対象膜とドナー層との間に配置された層を指す。半透性の一時的な中間層は、前記機能性分子添加剤を含むドナー層の堆積中に、機能性分子添加剤が対象層中に拡散することを防止する。したがって、半透性の一時的な中間層は、ドナー層を堆積させるために使用される条件(ドナー層の凝固の温度およびキネティクス)では、対象層の主要な構造的および/または組成的な特性を十分に保持するため、十分に不透性であるべきである。一方、半透性の一時的な中間層は、適切な刺激適用下で、当該中間層を通ってドナー層を含む複数の機能性分子添加剤が分子半導体対象膜中に拡散することを可能とする。したがって、半透性の一時的な中間層は、当該刺激の適用下で十分に透過性であるべきである。拡散は、刺激適用下でのみ行われる。
【0025】
したがって、所望の割合の前記機能性分子添加剤が約1分未満の時間内に半透性の一時的な中間層を通って拡散するために、上述の機能性分子添加剤は好ましくは約1500g/mol未満の分子量を有する。
【0026】
半透性の一時的な中間層の組成は、好ましくは対象分子半導体層およびドナー層の溶液ベースの堆積に使用される溶媒に選択的に不溶性であるポリマーの群から選択される。したがって、芳香族溶媒(例えば、トルエンまたはクロロベンゼン)および極性非プロトン性溶媒(例えば、アセトンまたはアセトニトリル)に選択的に可溶である一般的な分子半導体および機能性分子添加剤については、半透性の一時的な中間層は、水またはメタノールなどの極性プロトン性溶媒に選択的に可溶であるポリマーの群から選択されるべきである。半透性の一時的な中間層の例としては、ポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリウム)、ポリビニルブチラールおよびポリビニルアルコールが挙げられる。
【0027】
本発明のプロセスの1つの利点は、半透性の一時的な中間層の存在により、分子半導体対象膜の主要な特徴(例えば、フォトルミネッセンススペクトルまたは電気伝導率)が、一時的な中間層およびドナー層の溶液ベースの堆積後に改質されないことである。これは、その後の刺激の適用下における制御可能な/局所的な改質を可能にする。半透性の一時的な中間層がない場合、分子半導体対象膜の構造的および/または組成的特徴はドナー層の堆積と同時に改質されることから、半透性の一時的な中間層の存在は、その後の局所的な改質の可能性を防止する。
【0028】
熱刺激、溶媒蒸気刺激または光刺激の機能は、ドナー層の複数の機能性分子添加剤を溶融および/または溶解させ、半透性の一時的な中間層を介して分子半導体対象膜中への機能性添加剤の十分な割合の拡散を活性化させることである。すべての機能性分子添加剤が対象層中に拡散するわけではなく、ほんの一部である。
【0029】
本発明の工程(a)は、溶液ベースの堆積技術によって、基材上に位置する分子半導体対象膜上へ半透性の一時的な中間層を堆積させる工程を指す。好ましくは、分子半導体対象膜は、溶液ベースの堆積技術によって、より好ましくはスピン、ブレード、スプレー、またはスロットダイコーティング技術によって、基材上に堆積される。
【0030】
分子半導体対象膜の前駆物質溶液および基材は、工程(a)における堆積の前に予熱されてもよい。
【0031】
本発明の工程(b)は、工程(a)で得られた半透性の一時的な中間層上へ、溶液ベースの堆積技術によって固体ドナー層を堆積させる工程を指す。好ましくは、工程(b)は、スピン、ブレード、スプレー、またはスロットダイコーティング技術によって行われる。
【0032】
工程b)における半透性の一時的な中間層上への固体ドナー層の堆積は、分子半導体対象膜の主要な特徴を変化させない。好ましくは、前記特徴が発光または材料組成である場合、最大フォトルミネッセンス強度のスペクトル位置は10nmを超えて変化しない。好ましくは、前記特徴が電気伝導率である場合、その数値は100倍を超えて変化しない。
【0033】
本発明の工程(c)は、工程(b)で得られた構造体を、熱刺激、溶媒蒸気刺激または光刺激に曝露し、それによって分子半導体対象膜に構造的および/または組成的な改質を誘導する工程を指す。刺激は、ラスタリングモードで適用され、工程(b)で得られた構造体上に刺激を走査する。
【0034】
上述のように、熱刺激、溶媒蒸気刺激または光刺激の機能は、ドナー層の複数の機能性分子添加剤を溶融および/または溶解し、半透性の一時的な中間層を介して分子半導体対象膜中への前記機能性添加剤の十分な割合の拡散を活性化することである。
【0035】
工程(c)の好ましい実施形態において、工程(b)で得られた構造体は、パターン状に熱刺激、溶媒蒸気刺激または光刺激に曝露される。例えば、前記パターン状走査(曝露)は、分子配向を生成する熱勾配の方向性を生成する。
【0036】
工程(c)のより好ましい実施形態では、工程(b)で得られた構造体は、好ましくはホットプレート、ホットチップ、ホットスタンプまたはホットガスによって熱刺激に曝露される。
【0037】
工程(c)の別のより好ましい実施形態では、工程(b)で得られた構造体は、好ましくはノズルまたはスロットダイによって、溶媒蒸気刺激に曝露される。前記溶媒は、ドナー層を含む物質を選択的に溶解または膨潤させるアセトンまたはトルエンなどの溶媒の群から選択される。
【0038】
工程(c)の別のより好ましい実施形態では、工程(b)で得られた構造体は、光刺激に曝露される。光刺激を熱に変換するためには、光吸収層の存在が不可欠である。したがって、この後者の工程(c)の好ましい本実施形態では、少なくとも基材、分子半導体対象膜、半透性の一時的な中間層またはドナー層が光吸収層であるか、分子半導体対象膜が配置された基材は光吸収層を含む。光刺激の好ましい波長は光-熱変換を可能にするために、所定の光吸収層の吸収に実質的に一致する、紫外から近赤外のスペクトル領域の波長である。さらに、工程(b)で得られた構造体は、好ましくはレーザまたはフラッシュランプによって、光刺激に曝露される。パルスまたは連続波レーザを使用することができる。さらに、分子半導体対象膜の局所領域の改質には、シャドウマスクを用いることができる。さらに、レーザを用いて局所領域をパターン状に走査することも可能である。
【0039】
本発明の工程(d)は、固体ドナー層および半透性の一時的な中間層を化学的または物理的に除去する工程を指す。固体ドナー層および半透性の一時的な中間層の化学的および/または物理的な除去は、対象分子半導体層に誘起される構造的および/または組成的な改質を著しく悪化させることなく行われる。
【0040】
固体ドナー層および半透性の一時的な中間層の化学的除去は、ドナー層(例えば、アセトンまたはアセトニトリル)および一時的な中間層(例えば、水またはメタノール)を含む材料を選択的に溶解する溶媒の群から選択される溶媒に曝露することによって行ってもよい。前記溶媒は、工程(a)および(b)それぞれにおける一時的な中間層およびドナー層の溶液ベースの堆積に使用されるものと同じものを選択することができる。
【0041】
固体ドナー層および半透性の一時的な中間層の物理的除去は、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマーの、共形接触を形成するスタンプを用いた、インプリンティングおよびリフトオフによって行ってもよい。
【0042】
特に定義しない限り、本明細書中で用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似または同等の方法および材料を、本発明の実施において使用することができる。本明細書および特許請求の範囲を通して、「含む」という用語およびその変形は、他の技術的特徴、添加剤、成分、または工程を除外することを意図するものではない。本発明のさらなる目的、利点、および特徴は、本明細書の説明をによって当業者に明らかになり得るか、または本発明を実施することによって習得され得る。以下の実施例および図面は、例示のために提供され、本発明を限定することを意図するものではない。
【0043】
〔図面の簡単な説明〕
図1(A)~(E)は、熱刺激を用いて対象層を改質するための主要な工程の概略断面図であり、それに対応する、鎖状構造および発光特性が熱刺激を用いて改質された例示的な対象膜の蛍光顕微鏡写真を含む。
【0044】
図2(A)~(E)は、溶媒蒸気を用いて対象層を改質するための主要な工程の概略断面図であり、それに対応する、鎖状構造および発光特性が溶媒蒸気を用いて改質された例示的な対象膜の蛍光顕微鏡写真を含む。
【0045】
図3(A)~(B)は、溶媒蒸気刺激を用いた組成および発光特性が改質された対象半導体ポリマー膜の組成および発光特性の改質を示す概略断面図およびそれ対応する蛍光写真である。
【0046】
図4(A)~(C)は、溶媒蒸気刺激を用いて組成および発光特性を空間的に様々な改質がされた対象半導体ポリマー膜の概略断面図、ならびに対応する蛍光写真およびフォトルミネッセンススペクトルである。
【0047】
図5(A)~(C)は、熱刺激を用いて組成および電気伝導率が改質された対象半導体ポリマー膜の電気伝導率、光学顕微鏡写真および吸光スペクトルのプロットである。
【0048】
図6(A)~(C)は、共溶媒によって補助され、熱刺激を用いて組成および電気伝導率が改質された対象半導体ポリマー膜の電気伝導率のプロットおよび光学顕微鏡写真である。
【0049】
図7(A)~(B)は、試料を光刺激に曝露するための様々な手段を示す概略断面図である。
【0050】
図8(A)~(D)は、共焦点フォトルミネッセンス顕微鏡写真およびラマン強度比画像;フォトルミネッセンススペクトルおよび光刺激によって鎖状構造が局所的に改質された対象半導体ポリマー膜のプロセスパラメータの関数としてのパターン特性のプロットである。
【0051】
図9(A)~(F)は、偏光光学顕微鏡写真、偏光ラマンスペクトル、例示的なラマン異方性解析の詳細、および光刺激を用いて鎖配向が局所的に改質された対象半導体ポリマー膜のプロセスパラメータの関数としてのラマン異方性のプロットである。
【0052】
図10(A)~(B)は、光刺激を用いて鎖配向が局所的に改質された対象半導体ポリマー膜の広範囲の偏光光学顕微鏡写真である。
【0053】
図11(A)~(C)は、光刺激を用いて鎖配向が局所的に改質された対象半導体ポリマー膜の原子間力顕微鏡画像およびトポグラフィー分析である。
【0054】
図12は、半透性の一時的な中間層を用いずに、光ベースの刺激を用いて鎖配向が局所的に改質された対象半導体ポリマー膜の光学顕微鏡写真である。
【0055】
図13(A)~(D)は、光刺激を用いて組成および電気伝導率が改質された対象半導体ポリマー膜の光学顕微鏡写真およびプロセスパラメータの関数としての電気伝導率のプロット;ならびに熱刺激を用いて組成および電気伝導率が改質された前記ポリマーの対象膜の電気伝導率の関数としての参照ラマン分光データである。
【0056】
図14(A)~(C)は、光学顕微鏡写真、ラマン強度比画像ならびに光刺激を用いて組成および電気伝導率が改質された対象半導体ポリマー膜の位置の関数としての電気伝導率のプロットである。
【0057】
図15(A)~(B)は、一時的な中間層の上に溶液が堆積した例示的なドナー層および対象膜上に直接溶液が堆積した場合の例示的なドナー層の光学顕微鏡写真および概略断面図である。
【0058】
図16(A)~(B)は、化学的および物理的手段による一時的な中間層の除去を示す断面図および光学顕微鏡写真である。
【0059】
〔実施例〕
(材料)
以下の化合物をSigma-Aldrichから購入した:
「pNaSS」:ポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリウム);MW約1,000,000g/mol
「PFO」:ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン);MW≧20,000g/mol
「P3HT」:ポリ(3-ヘキシルチオフェン);MW約100,000g/mol、レジオレギュラー
「PMMA」:ポリ(メタクリル酸メチル);MW約15,000g/mol
「クマリン334」:10-アセチル-2,3,6,7-テトラ-ヒドロ-1H,5H,11H-1-ベンゾ-ピラノ[6,7,8-ij]キノリジン-11-オン(99%)
「Triton X-100」:4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコール
以下の化合物をTCI Chemicalsから購入した。
【0060】
ラウリン酸(>98%)
「BT」:2,1,3-ベンゾチアジアゾール(>99%)
「BCF」:トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(>98%)
ビフェニル(>99.5%)「DCM」:4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-(4-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン(>95%)
L-(+)-マンデル酸(>99%)
以下の化合物を1-Materialから購入した。
【0061】
PBTTT-C14:ポリ(2,5-ビス(3-テトラデシルチオフェン-2-イル)チエノ-[3,2-b]チオフェン);分子量 約50,000g/mol
標準的な実験室グレードの溶媒(>99%純度)を、全体を通して使用した。
【0062】
【0063】
(特性解析に用いる技術)
膜厚は、DektakXT profilometer(Bruker)を用いて測定した。
【0064】
電気伝導率は、4点プローブファンデルポー法を用いたEcopia HMS-5000装置を用いて、それぞれの角に銀ペースト接点が配置された約6×6平方mm2の面積である四角形状膜について測定した。
【0065】
Vis-NIR吸収スペクトルは、Bruker Hyperion光学顕微鏡に連結したBruker Vertex 70 FTIR分光光度計を用いて記録した。
【0066】
フォトルミネッセンスおよびラマン散乱の分光分析は、WITec Alpha 300RA装置(反射ジオメトリ;全体を通して連続波励起を使用した)を用いて行った。PLスペクトルは、355nmまたは365nmで励起して記録した(本明細書中で示される通り)。ラマンスペクトルは、488nm(PBTTT-C14膜)、633nm(PFO膜)および785nm(P3HT膜)で励起して記録した。偏光ラマン分析は、励起偏光および検出偏光の両方を同期調整して行った。
【0067】
原子間力顕微鏡は、Keysight5500装置(Agilent)を用いて、タッピングモードで行った。
【0068】
全ての特性解析は、室温で、大気雰囲気中で行った。
【0069】
実施例1:熱刺激によるPFOの対象膜(2)の鎖状構造および発光特性の改質。
【0070】
各処理工程の模式図およびそれに対応する波長365nmの紫外線照射下で記録された光学顕微鏡写真を
図1に示す。
【0071】
(1)基材
(2)分子半導体対象膜
(3)半透性の一時的な中間層
(4)ドナー層
(5)ホットプレート
【0072】
ガラス基材(1)上に、ガラス状の面内等方性のPFOの対象膜(2)(厚さ約85nm)を、トルエン中の2重量%溶液から、2000rpmでスピンコートした。なお、溶液および基材(1)の両方を、堆積前に70℃に予熱した。
図1(A)参照。
【0073】
次いで、pNaSSの半透性の一時的な中間層(3)を、溶媒の量に対して添加した約1重量%Triton X-100界面活性剤をさらに含む4重量%水溶液から、3000rpmでスピンコートした(厚さ約200nm)。
【0074】
図1(B)は、PFOの対象膜(2)の発光色を変えることなく、水中に浸漬することによる、半透性の一時的な中間層(3)の除去が容易であることを示す。
【0075】
次いで、ラウリン酸ドナー層(4)を、アセトン中の20重量%溶液から8000rpmでスピンコートした。
【0076】
図1(C)は半透性の一時的な中間層(3)が無い領域では堆積中にラウリン酸がPFO層の対象膜(2)中に拡散し、それに伴ってPFOの対象膜(2)中にいわゆる「β相」構造の形成が起こることにより、発光色が変化することを示す。
【0077】
一方、
図1(C)に示すように、PFOの対象膜(2)は、pNaSSの半透性の一時的な中間層(3)が存在する領域において、本来の鎖状構造および発光特性を保持している。
【0078】
その後、試料をホットプレート(5)上に50℃(ラウリン酸の融点=44℃)で1分間置き、PFOの対象膜(2)中へのラウリン酸の拡散を活性化することで、紫/暗青色(「ガラス状」のPFO;
図1(A)~(C)において暗灰色で表示)から明青色(「β相」のPFO;
図1(C)~(E)において明灰色で表示)への付随的な発光の色変化をもたらした。(本実施例のように)加熱された溶液から堆積したPFOは、一連の無秩序な「ワーム状」構造における鎖-総称して「ガラス状」を特徴とする。その後、ガラス状のPFOを溶媒に曝露すると、「β相」構造を取る鎖セグメントの一部をもたらす。これは、隣接する繰り返し単位が同一平面上に配向した明確な鎖延長された分子構造である。平坦化されたβ相構造の存在は赤外側の吸収およびフォトルミネッセンス(PL)スペクトルにおいて明らかであり、具体的には、β相のPFOの最大PL強度は438nm(明青色)であるのに比べ、ガラス状のPFOについては423nm(紫/暗青色)である。
【0079】
したがって、本実施例では、半透性の一時的な中間層(3)を介した熱活性化拡散によるPFOの対象膜(2)のラウリン酸ドナー化合物(4)への曝露はガラス状からβ相へのPFOの鎖セグメントの一部の鎖状構造を改質し、上述の発光特性の変化をもたらす。
【0080】
次いで、残留のラウリン酸ドナー層(4)およびpNaSSの半透性の一時的な中間層(3)を、試料を5000rpmで回転させ、50μLのアセトン、50μLの水、およびさらに50μLのアセトンを順次堆積させることによって、試料から除去した。PFOの対象膜(2)に誘起された特性は、この化学プロセスに影響を受けない。pNaSSの半透性の一時的な中間層(3)が存在する領域で得られたPFOの対象膜(2)の発光色の均一性を
図1(E)に示す。一方で、中間層が存在しない領域では発光色の均一性は明らかに非常に悪い。
【0081】
実施例2:溶媒蒸気刺激によるPFOの対象膜(2)の鎖状構造および発光特性の改質。
【0082】
各処理工程の模式図およびそれに対応する波長365nmを用いた紫外線照射下で記録された光学顕微鏡写真を
図2に示す。
【0083】
(1)基材
(2)分子半導体対象膜
(3)半透性の一時的な中間層
(4)ドナー層
(6)ノズル
【0084】
ガラス基材(1)上に、PFOの対象膜(2)、pNaSSの半透性の一時的な中間層(3)およびラウリン酸ドナー層(4)を、実施例1に記載のとおり堆積した;
図2(A)~(C)を参照。
【0085】
その後、1:1体積/体積のアセトン:水の溶媒蒸気を、当該溶液を含む二口容器を通して窒素キャリアガスをバブリングすることによって生成し、試料表面の約5mm上に配置された直径2mmのノズル(6)を介して試料に向けた。PFOの対象膜(2)中へのラウリン酸ドナー化合物(4)の溶媒蒸気活性化拡散は、対応する鎖状構造をガラス状からβ相に改質し、それによって発光特性の変化を誘導する(
図2(D))。
【0086】
次いで、残留のラウリン酸ドナー層(4)およびpNaSSの半透性の一時的な中間層(3)を、試料を5000rpmで回転させ、50μLのアセトン、50μLの水、およびさらに50μLのアセトンを順次堆積させることによって、試料から除去した。PFOの対象膜(2)に誘導された特性は、この化学プロセスに影響を受けない。
図2(E)は、得られたPFOの対象膜(2)が、ガラス状のPFOで囲まれた局所的なβ相のPFO領域を含むことを示す。
【0087】
実施例3:溶媒蒸気刺激によるPFO膜(2)の組成および発光特性の改質。
【0088】
図3(A)に示すように、ガラス基材(1)上に、PFOの対象膜(2)およびpNaSSの半透性の一時的な中間層(3)を、実施例1に記載のとおり堆積した。
【0089】
(1)基材
(2)分子半導体対象膜
(3)半透性の一時的な中間層
(4)ドナー層
(6)ノズル
【0090】
次いで、ドナー層(4)を、以下の溶液から6000rpmでスピンコートした
・1:2重量/重量のアセトン:塩化メチレン中の2重量%のクマリン334(C17H17NO3;シアン発光色素1)溶液
・当該溶液は、溶媒の量に対して添加した1wt%DCM(C19H17N3O;橙色発光色素2)、マンデル酸(固体溶媒;融解温度=135℃)および4重量%のPMMAをさらに含む
【0091】
その結果、固体ドナー層(4)は、不活性PMMAマトリックス中に埋め込まれたクマリン334、DCMおよびマンデル酸の固溶体を含む。
【0092】
得られた試料の発光を、基材(1)を通して波長365nmの光の照射下で観察すると、暗青色であり、本質的にガラス状のPFOの対象膜(2)の発光と一致する(
図3(B)の0秒の画像を参照)。ドナー層(4)を含む色素の発光は、誘導される濃度によりクエンチするため、ここでは明らかではない。
【0093】
その後、1:1体積/体積のアセトン:水の溶媒蒸気を、当該溶液を含む二口容器を通して窒素キャリアガスをバブリングすることによって生成し、試料表面の約20mm上に配置された直径8mmのノズル(6)を介して試料に向けた。
【0094】
モル質量のより小さいクマリン334色素(色素1)は、モル質量のより大きいDCM色素(色素2)よりも速くPFOの対象膜(2)中に拡散する。
【0095】
したがって、溶媒蒸気を施してから10~15秒後に記録された画像については、
図3(B)において灰色で示すように、PFOの対象膜(2)中に色素1が存在することで濃青色からシアン色に発光が変化する。
【0096】
溶媒蒸気への曝露を続けると、より高いモル質量のDCM色素(色素2)がPFOの対象膜(2)中に拡散する。したがって、溶媒蒸気を施してから25~30秒後に記録した画像については、
図3(B)において灰色および白色、
図3(B)においてオレンジ色で示すように、PFOの対象膜(2)中の色素2の存在によってシアン色からオレンジ色に発光が変化する。
【0097】
実施例4:溶媒蒸気刺激によるPFOの対象膜(2)の組成および発光特性の空間的に変化する改質。
【0098】
図4(A)に示すように、ガラス基材(1)上に、PFOの対象膜(2)と、pNaSSの半透性の一時的な中間層(3)と、不活性PMMAマトリクス中に埋め込まれたクマリン334(色素1)、DCM(色素2)およびマンデル酸の固溶体を含むドナー層(4)とを、実施例3に記載のとおりスピンコートによって堆積した。
【0099】
(1)基材
(2)分子半導体対象膜
(3)半透性の一時的な中間層
(4)ドナー層
(7)スロットダイ
【0100】
その後、1:1体積/体積のアセトン:水の溶媒蒸気を、当該溶液を含む二口容器を通して窒素キャリアガスをバブリングすることによって生成し、基材(1)の下端に配置されたスロットダイ(7)を介して試料に向けた。
【0101】
図4(B)は、試料を5000rpmで回転させて、50μLの塩化メチレンを堆積させることによって、残留のドナー層(4)を除去した後の試料を、波長365nmの光の照射下で記録した画像を示す。
【0102】
スロットダイ(7)の配置によって決定されるように、相対的な溶媒蒸気圧P
vap(すなわち、試料上の所定の位置における溶媒蒸気圧と飽和ストリームの溶媒蒸気圧との比率)は試料全体にわたって変化し、上部から下部へと増加する。したがって、試料の発光は、上部から下部にわたって、暗青色からシアン色およびオレンジ色に変化する。これは、上部から下部までの試料長にわたる空間位置で記録されたフォトルミネッセンス(PL)スペクトルによって、さらに確認される(
図4(C))。
【0103】
実施例5:熱刺激によるPBTTT-C14対象膜(2)の組成および電気伝導率の改質。
【0104】
ガラス基材(1)上に、PBTTT-C14の対象膜(2)(厚さ約43nm)をクロロベンゼン中の1.5重量%溶液から4000rpmでスピンコートした。なお、溶液および基材(1)の両方を堆積前に110℃に予熱した。
【0105】
後続の熱刺激の適用に伴う、温度に依存するポリマーの結晶における変化を避けるために、得られた膜(2)を、その後、窒素雰囲気下、180℃でアニーリングし、続いて室温まで徐冷することによって結晶化させた。
【0106】
次いで、pNaSSの半透性の一時的な中間層(3)を、溶媒の量に対して添加した約1重量%Triton X-100界面活性剤をさらに含む、2重量%水溶液から、6000rpmでスピンコートした(厚さ約80nm)。
【0107】
次いで、電気的p型ドーパントBCF(B(C6F5)3)を含むドナー層(4)を、10:1重量/重量のジエチルエーテル:メタノール中の60重量%BCF溶液から、6000rpmでスピンコートした。
【0108】
熱刺激:次いで、試料を50℃~120℃の範囲で選択された温度で、1分間、大気中での熱アニーリングし、ドナー層(4)からPBTTT-C14対象膜(2)中へのドーパントBCFの拡散を活性化した。
【0109】
次いで、残留のBCFドナー層(4)およびpNaSSの半透性の一時的な中間層(3)を、試料を5000rpmで回転させ、100μLのアセトニトリルおよび100μLの水を順次堆積させることによって、を除去した。
【0110】
PBTTT-C14の対象膜(2)に電気伝導率が誘導される。
図5(A)は、熱刺激として使用されるアニーリング温度に対する、PBTTT-C14の対象膜(2)に誘導される電気伝導率を示し、ここで、伝導率は片対数スケールでプロットされ、シグモイド型プロファイルに従い、62S/cmの高値に達する。なお、熱刺激を行わない場合、PBTTT-C14対象膜(2)は約4×10
-5S/cm(
図5(A)における「23℃」のデータポイント)と低い伝導率を保つことにも留意されたい。
【0111】
図5(B)には得られたPBTTT-C14の対象膜(2)の、種々の温度Tでのアニーリングによる熱刺激を適用した後の透過光顕微鏡写真を示し、より高いアニーリング温度でのドーピングの均一性が改善されたことを強調する。なお、ドナー層(4)のBCFドーパントの融解温度(126~131℃)よりも高いアニーリング温度Tを用いると、ドナー層(4)のドーパントBCFの蒸発によるPBTTT-C14対象膜(2)の脱ドーピングが生じ、それに伴い得られた電気伝導率の低下が生じ得ることに留意されたい。
【0112】
熱刺激の適用無しのとき、ならびに80℃および120℃のそれぞれのアニーリングによって熱刺激を適用したときのPBTTT-C14の対象膜(2)の吸光スペクトルを
図5(C)に示す。ドーピングは、中性ポリマー吸収(約550nmを中心とする)の予想される減衰、およびイオン種(約780nmを中心とする)に対応する広帯域の同時存在によって確認される(熱アニーリングがそれぞれ80℃および120℃で実施される場合)。
【0113】
実施例6:熱刺激によるPBTTT-C14の対象膜(2)の組成および電気伝導率の改質。
【0114】
ガラス基材(1)上に、PBTTT-C14の対象膜(2)を、実施例5に記載のとおり堆積させた。
【0115】
後続の熱刺激の適用に伴う、温度に依存するポリマーの結晶の変化を避けるために、得られた膜(2)を、その後、窒素雰囲気下、180℃でアニーリングし、続いて室温まで徐冷することによって結晶化させた。
【0116】
次いで、実施例5に記載のとおり、pNaSSの半透性の一時的な中間層(3)を堆積させた。
【0117】
ドナー層(4)はBCF:ビフェニルを含み;溶媒の量に対して添加した5重量%ビフェニルをさらに含む、10:1重量/重量のジエチルエーテル:メタノール中の60重量%BCF溶液から、6000rpmでスピンコートした。ビフェニル(「BP」;融解温度=69℃)をBCFの共溶媒として用いて、所望の電気伝導率を得るために必要な、アニーリング温度またはアニーリング時間を低減する。
【0118】
熱刺激:試料を、その後、大気中で熱アニーリングして(後述するように)、PBTTT-C14対象膜(2)中へのBCFの拡散を活性化させた。
【0119】
残留のBCF:ビフェニルドナー層(4)およびpNaSSの半透性の一時的な中間層(3)を、試料を5000rpmで回転させ、100μLのアセトニトリルおよび100μLの水を順次堆積させることによって除去した
【0120】
50~120℃の温度範囲で1分間の熱アニーリングによる熱刺激を適用した後に得られた試料の電気伝導率を
図6(A)に示す。ビフェニル(BP)の融解温度に等しいか、またはそれをわずかに上回るアニーリング温度では、ドナー層(4)中のビフェニル(BP)の存在はドナー層(4)がBCFのみを含む試料と比較して、電気伝導率を約2桁増加させることができる。対応する透過光顕微鏡写真(
図6(B))は、所定の温度においてドーピングの均一性が同時に改善されたことを示す(「80℃」および「90℃」の試料のデータを参照)。
【0121】
100℃で2~30秒間の範囲のアニーリング時間、熱アニーリングによる熱刺激を適用した後に得られた試料の電気伝導率を
図6(C)に示す。2秒間のアニーリング時間では、ドナー層(4)中のビフェニル(BP)の存在によって、ドナー層(4)がBCFのみである試料に対しての電気伝導率を、1桁を超えて増加させることができる。
【0122】
実施例7:光刺激によるPFOの対象膜(2)の鎖状構造の改質。
【0123】
ITO層(9)/ガラス基材(1)上に、PFOの対象膜(2)、pNaSSの半透性の一時的な中間層(3)およびラウリン酸ドナー層(4)を、実施例1に記載されるように堆積させた;
図7(A)を参照。
【0124】
(1)基材
(2)分子半導体対象膜
(3)半透性の一時的な中間層
(4)ドナー層
(8)レーザ(波長=785nm)
(9)光吸収層
【0125】
その後、785nmのレーザ(8)の出力を、基材(1)を通して試料へ導き、
図7(B)に示すようにPFO層の対象膜(2)に集光した。ここで、レーザ光の吸収は主に、ITO層(9)内で生じ、それに伴い基材(1)と対象膜(2)との間の界面で主な熱が生じる。なお、対象膜(2)、半透性の一時的な中間層(3)およびドナー膜(4)は、785nmの波長の光線をかなりの程度まで吸収しないことに留意されたい。レーザパワーPは、10~50mWの範囲で調整した。試料はレーザ(8)の焦点面において0.1~10μm/sの範囲の速度νで連続的に走査された。ここでのレーザ照射の役割は、ITO内の光吸収により局所的な熱を提供し、ラウリン酸ドナー層(4)からPFO対象層(2)中へのラウリン酸溶媒の局所的な拡散を活性化し、その鎖状構造を改質することである。
【0126】
次いで、残留のラウリン酸ドナー層(4)およびpNaSSの半透性の一時的な中間層(3)を、試料を5000rpmで回転させ、50μLのアセトン、50μLの水、およびさらに50μLのアセトンを順次堆積させることによって、試料から除去した。
【0127】
得られた試料では、鎖状構造の改質が誘導される。示されたレーザパワー(P=10~50mW)および一定速度ν=5μm/sで描かれた連続線の、355nmにおける励起で記録された共焦点PL顕微鏡画像を
図8(A)の左パネルに示し、
図8(B)で示されるように438nmでのスペクトルフィルタリングを使用して、β相のPFO PL発光の最大値を選択的に選択した。したがって、
図8(A)の明るい領域は、鎖セグメントの一部の構造がガラス状からβ相に改質した試料の領域と一致する。
【0128】
描かれた線の中心で記録されたPLスペクトル(
図8(B)の実線)は、438nm、467nmおよび498nmで特徴的な振動ピークを示すβ相構造の形成を裏付けている。一方で、レーザ露光された試料領域の外側で記録された参照PLスペクトルは、元のガラス状のPFO(
図8(B)の破線)のものに対応し、423nmおよび449nmにおける振動ピークを示す。さらに、上記スペクトルは上述のレーザベースのプロセスがPFOの対象膜(2)のいかなるかなりの光酸化分解も誘導しないことを示しており、これは500nmを超える波長で現れる顕著なPLによって裏付けられ得る。
【0129】
改質された鎖状構造を有する領域の大きさは、描かれた線にわたって438nmでのPL強度プロファイルの半値全幅(FWHM)として推定した。改質された領域のコントラスト(すなわち、β相の鎖セグメントの最大誘導容積分率)を、β相分率に対するラマン強度比r
R(1257cm
-1:1606cm
-1)の校正によって推定した。633nmでの励起を用いた改質された領域の分光ラマンマッピングにより、r
Rおよび対応するβ相分率を決定し、ν=5μm/sおよびP=30mWの実線で描かれた例示的なr
R画像を
図8(A)の右パネルに示す。
【0130】
改質された鎖状構造を有する試料の領域の大きさおよびコントラストは入射レーザパワー(
図8(C))および書込み速度(
図8(D))と相関する進化を示し、改質された領域の所望の特性を得るための簡単な手段を可能とする。例えば、一定のν=5μm/sで、Pを50~10mWで調整することは、改質された領域の大きさおよびコントラストのそれぞれを10倍および6倍低減することを可能にする。
【0131】
実施例8:光刺激によるP3HTの対象膜(2)の鎖配向の改質。
【0132】
ITO層(9)/ガラス基材(1)上に、P3HTの対象膜(2)(厚さ約90nm)をクロロベンゼン中の2重量%溶液から、4000rpmでスピンコートした。なお、溶液およびITO層(9)/ガラス基材(1)の両方を堆積前に50℃に予熱した;
図7(A)を参照。
【0133】
次いで、pNaSSの半透性の一時的な中間層(3)を、溶媒の量に対して添加した約1重量%Triton X-100界面活性剤をさらに含む4重量%水溶液から、7000rpm(厚さ約130nm)でスピンコートした(厚さ約130nm)。
【0134】
次いで、2,1,3-ベンゾチアジアゾール(BT)ドナー層(4)を、塩化メチレン中の40重量%溶液から、700rpmでスピンコートし、次いで約60秒後、溶媒エバポレーションを十分に行い、ガラスカバースリップ(厚さ0.17mm)をまだ液体のBTドナー層(4)上に配置することによって堆積させた。BTの付随の核形成および結晶化により、ガラスカバースリップの下に所望の固体BTドナー層(4)が得られる。このプロセスに必須ではないが、ガラスカバースリップを使用することにより、後続のレーザベースの改質中に過剰で迅速なBTの昇華が防止され、得られるドナー層(4)の膜厚に関する均一性が改善される。
【0135】
BTは、その高速成長軸に沿った結晶のBTの周期性cが結晶のP3HTのものに匹敵する(cBT=3.85Å;Cp3HT/2≒3.8Å)ためにドナー層(4)として選択され、エピタキシャル結晶化によるP3HTの方向の配向を可能にする。P3HTの方向の配向のためのさらなる条件は、BTの結晶化がP3HTの結晶化の前に生じることであり、これは、亜共晶のBT:P3HT組成物について容易に成し遂げられる。。ここでは、BTは、ドナー層(4)として、その低い融解温度(44℃)のために、さらに選択され、これは必要な処理温度を低下させる。
【0136】
その後、
図7(B)に示すように、785nmレーザ(8)の出力を、基材(1)を通して試料へ導き、P3HT対象膜(2)に集光した。ここで、レーザ光の吸収は主に、ITO層(9)内で生じ、それに伴い基材(1)と対象膜(2)との間の界面で主な熱が生じる。本実施例では、対象膜(2)、半透性の一時的な中間層(3)およびドナー層(4)は、785nmの波長の光をかなりの程度まで吸収しない。一定のレーザパワーP=55mWを用いた。試料をレーザ(8)の焦点面において0.1~3mm/sの範囲の速度νで連続的に走査した。
【0137】
次いで、本実施例で使用されたガラスカバースリップを取り外すことで、大気条件での昇華によって、残留のBTドナー層(4)の迅速な除去を可能にした。次いで、pNaSSの半透性の一時的な中間層(3)を、試料を5000rpmで回転させ、50μLの水を堆積させることによって、試料から除去した。
【0138】
得られた試料に光学異方性を誘導した。偏光透過光顕微鏡写真(
図9(A))は、ν≧0.5mm/sで描かれた線が光学異方性を示すこと、すなわち、レーザ走査方向に対して、平行または垂直にそれぞれ偏光された透過光については、より暗く、またはより明るく見えることを示す(それぞれ
図10(A)の左側および右側;偏光方向は矢印で示される)。
図10(A)~(B)(それぞれ、レーザ走査方向に対して平行および垂直に偏光された透過光、矢印で示す)で示される、さらに広範囲の偏光透過光顕微鏡写真は、改質された領域の均一性を強調する。光偏光の方向における吸光度の依存性は、レーザ走査方向に並列なP3HT鎖セグメントの選択配向を示す。後者は同じ試料領域についての交差偏光顕微鏡写真によってさらに裏付けられ(
図9(B);偏光方向が示される)、これは改質された領域の複屈折がレーザ走査方向に対してある角度で偏光された光についてのみ可視化されることを示す(
図9(B)、右パネル)。
【0139】
したがって、ここでのレーザ照射の役割は、BTドナー層(4)からP3HTの対象層(2)へのBT溶媒の局所的な拡散を活性化し、ITO内部の光吸収による局所的な熱を与えること、およびその後溶解させることである。光誘発された熱のその後の除去(すなわち、所定の試料領域から離れるようにレーザを走査することによる)は、P3HT:BT層(2)内のBTの結晶化、およびそれを伴うP3HTの方向性のある結晶化をもたらす。したがって、P3HTの対象層(2)の鎖配向の局所的な改質が得られる。
【0140】
偏光ラマン分光分析は、改質された領域の分子異方性の程度(すなわち、鎖配向)を定量化するために使用される。ν=2.5mm/sおよびP=55mW(実線;
図9(C))を用いて描かれた線の中心で785nmでの励起を用いて記録された例示的な偏光ラマンスペクトルは、レーザ走査方向に平行な偏光について、約1450cm
-1でのP3HTの対称C=C伸縮モードのより強い強度を示す。これは、レーザ走査方向に平行なP3HT鎖セグメントの選択配向を示す。また、改質された領域外に記録された参照スペクトルを示す(点線;
図9(C))。
【0141】
したがって、ラマン異方性A
Rを、レーザ走査方向に平行かつ垂直な偏光で記録されたP3HTの前記振動モードについての最大強度の比率として定義した。偏光分光ラマンマッピングを用いて、改質された領域の分子異方性およびその空間分布を定量化した。ν=2mm/sおよびP=55mWを用いて描かれた線についてのA
Rの例示的な画像を
図9(D)に示す。平均ラマン異方性<A
R>の対応するプロファイルは、レーザ走査方向に沿って<A
R>画像を平均化することによって得られた。
図9(D)中のA
R画像について得られた例示的な<A
R>プロファイルを
図9(E)に示し、ここで<A
R>は約2.6まで増大し、レーザ照射領域におけるレーザ走査方向に平行な対象膜(2)中のP3HT鎖セグメント部分の選択配向を示す。<A
R>プロファイルから推定した改質された鎖配向を有する領域のFWHMの大きさは、0.5~3mm/sの範囲のνで描かれた線について4.6±0.3μmである。
【0142】
図9(E)は、光刺激に曝露しない試料領域については<A
R>=1であることを示し、鎖配向が元のP3HTの対象膜(2)と同様に面内等方性を保持することを示す(
図9(A)~(B)に示される偏光光学顕微鏡写真と一致)。このことから、レーザ照射などの印加刺激の非存在下で、半透性の一時的な中間層(3)がドナー層(4)を含むBTのP3HTの対象膜(2)への拡散を防止し、それによってその元の微細構造を保持することが確認される。
【0143】
図9(F)には書込み速度νの関数として得られた最大<A
R>値(
図9(E)に示される<A
R>
max)を示し、これは、mm/s範囲のレーザ走査速度で鎖配向の迅速な改質を実現することができることを示す。<A
R>
maxはνと共に増加し、ν=2.5mm/sの場合、約3の値まで達する。より低速(例えば、0.1mm/s、
図9(F)を参照)では、レーザ誘発された過熱が露光領域からのBTの欠乏を引き起こし、それゆえに、<A
R>
maxが減少する。より高速(例えば3mm/s、
図9(F)を参照)では、不十分な昇温および/またはP3HTの対象膜(2)への半透性の一時的な中間層(3)を介した不十分な量のBTの拡散により、<A
R>
maxが減少する。より高い書込み速度は、例えば、半透性の一時的な中間層(3)の厚さ、ならびにより高いレーザパワーを使用することに関して、多層構造の最適化後の鎖配向の程度を損なうことなく使用され得る。
【0144】
ν=2.5mm/sおよびP=55mWを用いて描かれた線の原子間力顕微鏡(AFM)によるフィルムトポグラフィーの例示的な分析を
図11(A)に示す。対応する膜厚プロファイル(
図11(B))は、
図11(C)に拡大図が示される改質された領域の膜厚の2%の減少のみを明らかにしている。これは、改質された鎖配向の領域を有する得られたP3HTの対象膜(2)の平面性が半透性の一時的な中間層(3)による封じ込めのために保持されることを示す。フィルムの平面性を保持することは、電子デバイス、光電子デバイス、およびフォトニックデバイス内にそのような試料を集積するための大きな利点を提供する。比較して、一時的な中間層を使用せずにBTと同様の結晶性小分子化合物を使用して巨視的に配向されたP3HTの膜は、一般的には30nmまで、場合によっては100nmを超える二乗平均平方根(RMS)表面粗さを示す。
【0145】
比較例:半透性の一時的な中間層(3)を用いない光刺激によるP3HTの対象膜(2)の鎖配向の改質。
【0146】
本比較例では、P3HTの対象膜(2)についての鎖配向のレーザベースの改質を、半透性の一時的な中間層を使用せずに行った。ITO(9)/ガラス基材(1)上に、P3HTの対象膜(2)を、実施例8に記載されるように堆積した。次いで、BTドナー層(4)を実施例8に記載されるように堆積した。
【0147】
その後、532nmのレーザ(8)の出力を、基材(1)を通して試料に導き、P3HTの対象膜(2)の約25μm上に集光させて、改質された領域の合成幅を広げた。ここで、レーザ光の吸収は、532nmでのレーザ励起がP3HTの吸収極大のスペクトル位置に密接に一致すると仮定すると、主に対象層(2)内で生じる。したがって、熱は主にP3HTの対象膜(2)内で発生する。一定のレーザパワーP=10mWを使用した。試料を、レーザ(8)の焦点面において、速度ν=3mm/sで連続的に走査した。
【0148】
次いで、BTドナー層(4)を、実施例8に記載されるように昇華によって除去した。
【0149】
偏光透過光顕微鏡写真(
図12;偏光方向を矢印で示す)は、半透性の一時的な中間層を使用せずに鎖配向を改質することのいくつかの欠点を強調する。第1に、改質された領域の輝度(すなわち、吸光度)の偏光依存性の差によって示されるように、線に対してある程度の鎖配向が誘導されるが、配向の方向はレーザ走査方向と明らかに相関せず、2つの間の平均角度は約70°である。これは、P3HTの対象膜(2)と直接接しているBTドナー層(4)に起因する。したがって、レーザで誘起された熱は、BTのP3HTの対象膜(2)への必要とされる拡散および後者の溶解を刺激するものの、熱を除去すると、P3HT:BT層(2)内のBTの結晶化の方向は、代わりに、レーザ照射された試料領域の外側のドナー層(4)の結晶性BTの方向によって決定される。溶液から堆積されたBTドナー層(4)の結晶配向を正確にコントロールすることは極めて難しいと仮定すると、半透性の一時的な中間層(3)の非存在下では、レーザ走査方向に平行な対象膜(2)の鎖配向の制御可能かつ再現可能な改質は、半透性の一時的な中間層(3)が存在しない場合に防止される。
【0150】
第2に、得られたP3HTの対象膜(2)は、レーザ照射領域の外に、顕著な繊維性テクスチャーを示す(
図12;線の間の試料領域を参照)。これは、元のP3HTの対象膜(2)がP3HTの対象層(2)上へのBTドナー層(4)の直接的な堆積によって不可逆的に改質され、それに伴う後者の(部分的な)溶解および方向性結晶化を示す。
図12の偏光光学顕微鏡写真をさらに確認すると、光刺激に曝露されていない試料領域では、偏光依存性の輝度(すなわち、吸光度)が異なっていることがわかる。このことから、任意の刺激を適用する前のP3HTの対象膜(2)が(部分的な)配向であることが確認される。したがって、一時的な中間層の使用は、例えば、レーザ照射によって決定される選択領域内でのポリマー対象膜(2)の鎖配向の改質を可能にするための明確な利点を提供する。
【0151】
実施例9:光刺激によるPBTTT-C14の対象膜(2)の組成および電気伝導率の改質。
【0152】
ガラス基材(1)上に、PBTTT-C14の対象膜(2)(厚さ約43nm)をクロロベンゼン中の1.5重量%溶液から4000rpmでスピンコートした。なお、溶液および基材(1)の両方を堆積前に110℃に予熱した。
【0153】
後続の熱刺激の適用に伴う、温度に依存するポリマー結晶の変化を避けるために、得られた膜(2)を、その後、窒素雰囲気下、180℃でアニーリングし、続いて室温まで徐冷することによって結晶化させた。
【0154】
次いで、pNaSSの半透性の一時的な中間層(3)を、溶媒の量に対して添加した約1重量%Triton X-100界面活性剤をさらに含む2重量%水溶液から、6000rpmでスピンコートした(厚さ約80nm)。
【0155】
次いで、BCFを含むドナー層(4)を、10:1重量/重量のジエチルエーテル:メタノール中の60重量%BCF溶液から、9000rpmでスピンコートした。
【0156】
その後、
図7(A)に示すように、532nmレーザ(8)の出力を、ドナー層(4)を通して試料に導き、PBTTT-C14の対象膜(2)の約20μm上に集光させて、改質された領域の合成幅を広げた。ここで、532nmでのレーザ励起がPBTTT-C14の対象膜(2)の吸収極大のスペクトル位置に密接に一致すると仮定すると、レーザ光の吸収は、主に対象層(2)内で生じる。したがって、ここでのレーザ照射の役割は、PBTTT-C14の対象膜(2)内に光吸収による局所的な熱を供給し、ドナー層(4)からPBTTT-C14の対象膜(2)へのBCFドーパントの局所的な拡散を活性化し、後者をドーピングすることである。レーザ出力Pは、5~10mWの範囲で調整した。試料を、5μm/s~3mm/sの範囲の速度νで、レーザ(8)の焦点面において連続的に走査した。
【0157】
次いで、試料を5000rpmで回転させ、100μLのアセトニトリルおよび100μLの水を順次堆積させることによって、残留のBCFドナー層(4)およびpNaSSの半透性の一時的な中間層(3)を除去した。
【0158】
透過光顕微鏡写真(
図13(A))は、上述のドーピング時の中性PBTTT-C14の吸収の減衰で与えられた元の膜と比較して、描かれた線がより明るい外観であることを示し、これは、改質された領域において電気伝導率が誘起されたことを示す。したがって、
図13(A)は、実施例5および6において熱刺激で得られた、より大きなミリメートルスケールの同様の改質と比較して、光刺激の使用により、PBTTT-C14の対象膜(2)の電気伝導率をマイクロメートルスケールで局所的に改質できることを示す。薄膜トランジスタおよび他の光電子デバイスを含む様々な電子デバイスには、電気伝導率の局所的なマイクロメートルスケールの改質が必要とされる。
【0159】
光刺激によって誘起される最大電気伝導率の、書込み速度νおよびレーザ出力Pの関数での定量的な分析を
図13(B)に示す。ここでは、局所的な伝導率の値を、実験的に得られたラマン強度比r
R(1393cm
-1:1417cm
-1;488nmでの励起で記録)の校正データ対、熱刺激によってBCFが巨視的にドーピングされたPBTTT-C14対象膜の電気伝導率によって推定した(実施例5を参照)。電気伝導率σの関数としてのr
Rの校正データを
図13(C)に示し、例示的なラマンスペクトルを
図13(D)に示す(関連ピークのスペクトル位置をアスタリスクで示す)。したがって、改質された領域内の電気伝導率の最大値を実施例7の分光マッピングr
Rによって決定した。
【0160】
図13(B)に示すように、ν=10μm/sおよびP=7mWで、約7S/cmの最大電気伝導率が得られる。当該データはまた、レーザパワーが十分に高い条件では、最適な高スループット製造に必要とされるように、νが約3mm/sに達するまで、高い値の伝導率が得られ得ることを示している。過熱誘導された脱ドーピングの同時発生を最小限にするために、連続波ではなくパルスのレーザ源を使用することによって、さらなる改善が達成され得る。
【0161】
実施例10:RFIDアンテナ型構造を提供するための光刺激によるPBTTT-C14の対象膜(2)の組成および電気伝導率の改質。
【0162】
ガラス基材(1)上に、PBTTT-C14の対象膜(2)を、実施例9に記載されるように堆積した。
【0163】
後続の熱刺激の適用に伴う、温度に依存するポリマー結晶の変化を避けるために、得られた膜(2)を、その後、窒素雰囲気下、180℃でアニーリングし、続いて室温まで徐冷することによって結晶化させた。
【0164】
次いで、pNaSSの半透性の一時的な中間層(3)およびBCFを含むドナー層(4)を、実施例9に記載されるように堆積させた。
【0165】
その後、532nmレーザー(8)の出力を、
図7(A)に示されるように、ドナー層を通して試料へ導き、実施例9に記載されるように、PBTTT-C14の対象膜(2)の約20μm上に集光させた。一定のレーザ出力P=7mWを使用した。試料を、レーザ(8)の焦点面において、速度ν=3μm/sで連続的に走査した。
【0166】
次いで、残留のBCFドナー層(4)およびpNaSSの半透性の一時的な中間層(3)を、実施例9に記載されるように除去した。
【0167】
得られたPBTTT-C14の対象膜(2)の透過光学顕微鏡写真(
図14(A))は、pドーピングのパターンに加え、280×280μm
2の外形の大きさを有する螺旋の形状において、電気伝導率が増加したことを示す。したがって、ここでは、選択された位置での走査レーザ照射への試料の曝露が、他の半導体対象膜(2)に埋め込まれた伝導線を含む連続的で均一な構造を提供する。そのような構造は、無線周波識別(RFID)タグのためのアンテナとして使用され得る。実施例9に記載されるように選択された試料領域で得られたr
R(1393cm
-1:1417cm
-1;488nmの励起で記録)の画像を、
図14(B)に示す。対応するr
Rの平均プロファイルおよび電気伝導率σ(
図14(C))は、螺旋パターンの2つの隣接する伝導線の最大r
R、およびそれに伴うσ値と密接な一致を示し、約3S/cmの最大伝導率を有し、改質された電気特性の均一性を強調している。また、
図14(C)から、得られたPBTTT-C14の対象膜(2)は、レーザ照射領域外において、ドーピングされていないPBTTT-C14(σ≒4×10
-5S/cm;
図14(C)において破線で示す)の元の伝導率を保持していることが確認される。
【0168】
実施例11:堆積したドナー層の均一性に及ぼす一時的な中間層の影響。
【0169】
ガラス基材(1)上に、PBTTT-C14の対象膜(2)(厚さ約43nm)をクロロベンゼン中の1.5重量%溶液から、4000rpmでスピンコートした。なお、溶液および基材(1)の両方を堆積前に110℃に予熱した。
【0170】
次いで、得られた膜を、窒素雰囲気下、180℃でアニーリングし、続いて室温まで徐冷することによって結晶化させた。
【0171】
ここでは、4つの試料を作製した。
【0172】
-2つの試料については、次いで、pNaSSの半透性の一時的な中間層(3)を、溶媒の量に対して添加した約1重量%Triton X-100界面活性剤をさらに含む2重量%水溶液から、6000rpmで、スピンコートした(厚さ約80nm)。
【0173】
-他の2つの試料は、コーティングを行わない、すなわち、pNaSSの半透性の一時的な中間層(3)を有さないままにした。
【0174】
その後、2つの異なるドナー層(4)を堆積させた:
・BCF:10:1重量/重量のジエチルエーテル:メタノール中の40重量%溶液から、6000rpmでスピンコートした;
・2:1重量/重量のBCF:ビフェニル(BP):10:1重量/重量のジエチルエーテル:メタノール中の50重量%溶液から、6000rpmでスピンコートした。
【0175】
得られた試料の透過光顕微鏡写真を
図15に示す。親水性のpNaSSの半透性の一時的な中間層(3)の存在はBCFおよびBCF+BPドナー層(4)を堆積させるために使用される溶液の最適な湿潤性を可能にし、それによって均一な結晶が堆積したドナー層(4)が生じる(
図15(A))。
【0176】
一方、疎水性PBTTT-C14の対象膜(2)上に直接堆積したBCFおよびBCF+BPドナー層溶液は、均一な層を形成せずに、代わりに単独の領域を生じる(
図15(B))。
【0177】
実施例12:ドナー層(4)および半透性の一時的な中間層(3)を化学的除去した後の熱刺激で改質された対象層(2)の安定性。
【0178】
ガラス基材(1)上に、PBTTT-C14の対象膜(2)(厚さ約43nm)をクロロベンゼン中の1.5重量%溶液から、4000rpmでスピンコートした。なお、溶液および基材(1)の両方を堆積前に110℃に予熱した。
【0179】
後続の熱刺激の適用に伴う、温度に依存するポリマー結晶の変化を避けるために、得られた膜(2)を、その後、窒素雰囲気下、180℃でアニーリングし、続いて室温まで徐冷することによって結晶化させた。
【0180】
次いで、pNaSSの半透性の一時的な中間層(3)を、溶媒の量に対して添加した約1重量%Triton X-100界面活性剤をさらに含む2重量%水溶液から、6000rpmでスピンコートした(厚さ約80nm)。
【0181】
その後、BCFを含むドナー層(4)を、9:1重量/重量のジエチルエーテル:メタノール中の57重量%BCF溶液から、8000rpmでスピンコートした。
【0182】
その後、試料を大気中で30秒間、120℃で熱アニーリングし、PBTTT-C14の対象膜(2)をドーピングした。
【0183】
対象膜(2)の組成および電気伝導率の改質は、後続するドナー層(4)および半透性の一時的な中間層(3)の化学的な除去によって実質的に影響されないことが望ましい。ここで、得られた試料の電気伝導率を、残存のドナー層および一時的な中間層を除去するために使用された液体の溶媒中に連続的に曝露した後、試料を5000rpmで回転させによって、選択された体積の所与の溶媒を堆積させることによって測定した。
【0184】
BCFドナー層(4)は、前記ドナー層(4)(すなわち、ジエチルエーテルおよびメタノール)を堆積させるために使用するもの、ならびにアセトニトリルなどの他の有機溶媒を含む任意のBCF溶媒によって除去することができる。熱刺激で改質された対象層(2)の電気伝導率は、100μLのアセトニトリルの堆積後、本質的に24S/cmで一定のままであり、それに伴いドナー層(4)が完全に除去される。このことは、改質された対象層(2)の電気伝導率がこの工程の後に保持されることを示す。
【0185】
半透性の一時的な中間層(3)は、前記層を含む材料の任意の溶媒によって除去することができる。ここで、pNaSSの半透性の一時的な中間層(3)は、pNaSSの良好な溶媒である水によって除去することができる。熱刺激で改質された対象膜(2)の電気伝導率は、100μLの水を滴下した後、20S/cmまでわずかな低下を示し、それに伴って、半透性の一時的な中間層(3)が完全に除去される。これは、改質された対象層(2)の電気伝導率がこの工程の後に十分に保持されることを示す。
【0186】
したがって、湿式化学手段による、残留のドナー層(4)および半透性の一時的な中間層(3)の除去は、誘導された改質をかなり低下させることなく行うことができることを示す。
【0187】
実施例13:半透性の一時的な中間層(3)の物理的除去および化学的除去後の対象膜(2)の安定性
【0188】
図16(A)に示すように、ガラス基材(1)上に、P3HTの対象膜(2)を、クロロベンゼン中の2重量%溶液から、4000rpmでスピンコートした(厚さ約90nm)。なお、溶液および基材(1)の両方を堆積前に55℃に予熱した。
【0189】
次いで、溶媒の量に対して添加した約1重量%約1重量%のTriton X-100界面活性剤をさらに含む2重量%水溶液から、pNaSSの半透性の一時的な中間層(3)を6000rpmで、スピンコートした(厚さ約80nm)。
【0190】
電子デバイスおよびフォトボルタリックデバイスにおけるいくつかの適用では、対象膜(2)の半透性の一時的な中間層(3)の除去に使用される溶媒(例えば、水)への曝露を最小限に抑えることが好都合であり得る。したがって、上述の実施例で使用される化学的手段ではなく物理的手段によって半透性の一時的中間層(3)を除去することが望ましい場合がある。
【0191】
次いで、半透性の一時的な中間層(3)の除去に両方の方法が使用できることを実証するため、試料を水へ部分的に浸漬することによって、試料の左側の半透性の一時的な中間層(3)の一部を除去した(
図16(A)を参照)。
【0192】
その後、試料の右側の半透性の一時的な中間層(3)の別の一部を、ポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマーのコンフォーマル接触形成スタンプを使用して、インプリンティングおよびリフトオフによって除去した。
【0193】
両方の場合において、
図16(B)に示す反射光顕微鏡写真によって、pNaSSの半透性の一時的な中間層(3)が完全に同等に除去されたことが確認され、これは溶媒フリーの物理的プロセスを用いることによって、対象層(2)にダメージが生じないことをさらに強調する。
【図面の簡単な説明】
【0194】
【
図1】
図1(A)~(E)は、熱刺激を用いて対象層を改質するための主要な工程の概略断面図であり、それに対応する、鎖状構造および発光特性が熱刺激を用いて改質された例示的な対象膜の蛍光顕微鏡写真を含む。
【
図2】
図2(A)~(E)は、溶媒蒸気を用いて対象層を改質するための主要な工程の概略断面図であり、それに対応する、鎖状構造および発光特性が溶媒蒸気を用いて改質された例示的な対象膜の蛍光顕微鏡写真を含む。
【
図3】
図3(A)~(B)は、溶媒蒸気刺激を用いた組成および発光特性が改質された対象半導体ポリマー膜の組成および発光特性の改質を示す概略断面図およびそれ対応する蛍光写真である。
【
図4】
図4(A)~(C)は、溶媒蒸気刺激を用いて組成および発光特性を空間的に様々な改質がされた対象半導体ポリマー膜の概略断面図、ならびに対応する蛍光写真およびフォトルミネッセンススペクトルである。
【
図5】
図5(A)~(C)は、熱刺激を用いて組成および電気伝導率が改質された対象半導体ポリマー膜の電気伝導率、光学顕微鏡写真および吸光スペクトルのプロットである。
【
図6】
図6(A)~(C)は、共溶媒によって補助され、熱刺激を用いて組成および電気伝導率が改質された対象半導体ポリマー膜の電気伝導率のプロットおよび光学顕微鏡写真である。
【
図7】
図7(A)~(B)は、試料を光刺激に曝露するための様々な手段を示す概略断面図である。
【
図8】
図8(A)~(D)は、共焦点フォトルミネッセンス顕微鏡写真およびラマン強度比画像;フォトルミネッセンススペクトルおよび光刺激によって鎖状構造が局所的に改質された対象半導体ポリマー膜のプロセスパラメータの関数としてのパターン特性のプロットである。
【
図9】
図9(A)~(F)は、偏光光学顕微鏡写真、偏光ラマンスペクトル、例示的なラマン異方性解析の詳細、および光刺激を用いて鎖配向が局所的に改質された対象半導体ポリマー膜のプロセスパラメータの関数としてのラマン異方性のプロットである。
【
図10】
図10(A)~(B)は、光刺激を用いて鎖配向が局所的に改質された対象半導体ポリマー膜の広範囲の偏光光学顕微鏡写真である。
【
図11】
図11(A)~(C)は、光刺激を用いて鎖配向が局所的に改質された対象半導体ポリマー膜の原子間力顕微鏡画像およびトポグラフィー分析である。
【
図12】
図12は、半透性の一時的な中間層を用いずに、光ベースの刺激を用いて鎖配向が局所的に改質された対象半導体ポリマー膜の光学顕微鏡写真である。
【
図13】
図13(A)~(D)は、光刺激を用いて組成および電気伝導率が改質された対象半導体ポリマー膜の光学顕微鏡写真およびプロセスパラメータの関数としての電気伝導率のプロット;ならびに熱刺激を用いて組成および電気伝導率が改質された前記ポリマーの対象膜の電気伝導率の関数としての参照ラマン分光データである。
【
図14】
図14(A)~(C)は、光学顕微鏡写真、ラマン強度比画像ならびに光刺激を用いて組成および電気伝導率が改質された対象半導体ポリマー膜の位置の関数としての電気伝導率のプロットである。
【
図15】
図15(A)~(B)は、一時的な中間層の上に溶液が堆積した例示的なドナー層および対象膜上に直接溶液が堆積した場合の例示的なドナー層の光学顕微鏡写真および概略断面図である。
【
図16】
図16(A)~(B)は、化学的および物理的手段による一時的な中間層の除去を示す断面図および光学顕微鏡写真である。