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特許7562714付加製造されるコンポーネントの構造シミュレーション
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】付加製造されるコンポーネントの構造シミュレーション
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20240930BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240930BHJP
   B22F 10/38 20210101ALI20240930BHJP
   B22F 10/28 20210101ALN20240930BHJP
   B22F 10/25 20210101ALN20240930BHJP
   B22F 12/90 20210101ALN20240930BHJP
【FI】
B29C64/393
B33Y50/02
B22F10/38
B22F10/28
B22F10/25
B22F12/90
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022580099
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 GB2021051399
(87)【国際公開番号】W WO2021260340
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】2009704.4
(32)【優先日】2020-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】20275113.7
(32)【優先日】2020-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390038014
【氏名又は名称】ビ-エイイ- システムズ パブリック リミテッド カンパニ-
【氏名又は名称原語表記】BAE SYSTEMS plc
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】プレンティス、マシュー・ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ、スティーブン・ロバート
(72)【発明者】
【氏名】クック、オースティン・ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】モーガン、スティーブン・アーサー
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/235150(WO,A1)
【文献】特表2019-521875(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0056717(US,A1)
【文献】特表2017-530027(JP,A)
【文献】Jack Francis,"Deep Lerrning for Distortion Prediction in Laser-Based Additive Manufacturing using Big Data",Manufacturing Letters,2019年02月21日,Vol. 20,p. 10-14,<URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S221384631830172X?via%3Dihub>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 50/02
B22F 1/00-12/90
B28B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造(AM)によって少なくとも部分的に製造される物品の機械的特性を推定する方法であって、前記方法は、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータによって少なくとも部分的に実施され、前記方法は、
前記物品の前記AMのインプロセスパラメータのセットを取得すること、ここにおいて、その前記セットのそれぞれのパラメータは、空間的に分解され、それに関連付けられた位置情報を有し、前記物品の前記AMのインプロセスパラメータの前記セットを取得することは、前記物品の前記AM中の光、熱、及び/又は音響放出を監視することを備え、と、
インプロセスパラメータの前記セットに対応する前記物品の属性のセットを推論すること、ここにおいて、その前記セットのそれぞれの属性は、空間的に分解され、それに関連付けられた前記位置情報を有し、その前記セットの前記それぞれの属性は、前記物品の空間的に分解された機械的特性であり、と、
属性の前記推論されたセットに少なくとも部分的に基づいて前記物品の前記機械的特性を推定すること、
ここにおいて、前記物品の前記機械的特性は前記物品の疲労寿命であり、
ここにおいて、前記物品の前記空間的に分解された機械的特性は、圧縮強度、弾性、弾性限度、疲労寿命、疲労限度、可撓性、曲げ弾性率、曲げ強度、破壊靱性、硬、剪断弾性率、剪断強度、比弾性率、比強度、剛、引張強度、靱性、極限引張強度、降伏強度、及びヤング弾性率から成るグループから選択される、と、
を備える、方法。
【請求項2】
前記物品の前記空間的に分解された機械的特性と前記物品の前記機械的特性とは異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記物品の前記AMのインプロセスパラメータの前記セットを取得することは、前記物品の前記AMの入力パラメータ及び/又は前記物品の前記AM中のリードバックパラメータをソーシングすることを備える、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
インプロセスパラメータの前記セットに対応する前記物品の属性の前記セットを推論することは、訓練された機械学習(ML)アルゴリズムを使用してインプロセスパラメータの前記セットに対応する前記物品の属性の前記セットを推論することを備える、請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記物品の前記空間的に分解された機械的特性は、引張強度から成るグループから選択される、請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記物品のモデルを提供することを備え、属性の前記推論されたセットに少なくとも部分的に基づいて前記物品の前記特性を推定することは、属性の前記推論されたセットと前記提供されたモデルとに少なくとも部分的に基づいて前記物品の前記特性を推定することを備える、請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記物品の前記モデルを提供することは、前記物品の測定値のセットを獲得することを備え、前記物品の測定値の前記セットを獲得することは、座標測定を備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記推定された機械的特性は、前記AMに少なくとも部分的に起因する不均質性、異方性、欠陥、及び/又は幾何学的偏差から少なくとも部分的に生じる、請求項1~7のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
属性の前記推論されたセットに少なくとも部分的に基づいて前記物品の前記特性を推定することは、属性の前記推論されたセットを使用する前記物品の有限要素解析(FEA)を備える、請求項1~8のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
物品のセットを備えるアセンブリの機械的特性を決定する方法であって、前記方法は、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータによって少なくとも部分的に実施され、前記方法は、請求項1~9のうちのいずれか一項に記載のその前記セットの前記それぞれの物品の機械的特性を推定することを備える、方法。
【請求項11】
請求項1~10のうちのいずれか一項に記載の方法を実施するように構成された、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータ。
【請求項12】
プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、請求項1~10のうちのいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を備えるコンピュータプログラム。
【請求項13】
プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、請求項1~10のうちのいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を備える非一過性コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加製造に関する。特に、本発明は、付加製造によって少なくとも部分的に製造される物品の特性を推定することに関する。
【背景技術】
【0002】
3次元(3D)印刷として広く知られる付加製造(AM)は、一般に、コンピュータ制御下で順次形成される、1つ以上の異なる材料を含む層から物品(コンポーネント、パーツ、又は物体としても知られる)を作製するために使用されるプロセスを指す。AMは、機械加工などの従来の除去製造プロセス、又は従来の鋳造若しくは成形プロセスに従って容易に形成されない場合がある、内部空隙を含む複雑な幾何学的形状(即ち、形状又は構造)を有する物品の作製を提供する。AMに適した材料は、金属、セラミック、ガラス、及びポリマーを含む。
【0003】
物品の特性の推定、例えば、疲労寿命予測又は残留疲労寿命予測は、一般に、均質な、等方的な、欠陥のない、及び/又は設計幾何学的形状の物品を仮定する。しかしながら、AMによって製造される物品は、例えば段階的材料に起因して不均質であり得、例えば、その順次的な層毎の形成に起因して及び/若しくはインプロセス変動性に起因して異方的であり得、欠陥、例えば、内部欠陥を備え得、並びに/又は意図された設計幾何学的形状から幾何学的に逸脱し得、それによって、物品間の変動性がもたらされ得る。
【0004】
故に、AMによって製造される物品の特性を推定する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の1つの目的は、とりわけ、本明細書で特定されようと他で特定されようと、先行技術の欠点のうちの少なくともいくつかを少なくとも部分的に排除又は軽減する、AMによって製造される物品の特性を推定する方法を提供することである。例えば、本発明の実施形態の目的は、物品の構造シミュレーションの正確度及び/又は精度を改善する、AMによって製造される物品の特性を推定する方法を提供することである。
【0006】
第1の態様は、付加製造(AM)、好ましくは指向性エネルギー堆積(DED)、及び/又は粉末床溶融結合(PBF)によって少なくとも部分的に製造される物品の特性を推定する方法を提供し、本方法は、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータによって少なくとも部分的に実施され、本方法は、
物品のAMのインプロセスパラメータのセットを取得することと、ここにおいて、そのセットのそれぞれのパラメータは、それに関連付けられた位置情報を有し、
インプロセスパラメータのセットに対応する物品の属性のセットを推論することと、ここにおいて、そのセットのそれぞれの属性は、それに関連付けられた位置情報を有し、
属性の推論されたセットに少なくとも部分的に基づいて物品の特性を推定することと
を備える。
【0007】
第2の態様は、物品のセットを備えるアセンブリの特性を決定する方法を提供し、本方法は、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータによって少なくとも部分的に実施され、本方法は、第1の態様に記載のそのセットのそれぞれの物品の特性を推定することを備える。
【0008】
第3の態様は、機械学習(ML)アルゴリズムを訓練する方法を提供し、本方法は、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータによって少なくとも部分的に実施され、本方法は、
第1の物品を含む物品のセットのAMのインプロセスパラメータのセットと、物品のセットの特性の対応するセットとを備える訓練データを提供することと、
提供された訓練データセットを使用してMLアルゴリズムを訓練することと
を備える。
【0009】
第4の態様は、第3の態様に記載の方法に従って訓練された機械学習(ML)アルゴリズムを提供する。
【0010】
第5の態様は、第1の態様、第2の態様、及び/又は第3の態様に記載の方法を実施するように構成された、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータを提供する。
【0011】
第6の態様は、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータによって実行されると、コンピュータに、第1の態様、第2の態様、及び/又は第3の態様に記載の方法を実行させる命令を備えるコンピュータプログラムを提供する。
【0012】
第7の態様は、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータによって実行されると、コンピュータに、第1の態様、第2の態様、及び/又は第3の態様に記載の方法を実行させる命令を備える非一過性コンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【0013】
AMによって製造される物品の特性を推定する方法第1の態様は、付加製造(AM)、好ましくは指向性エネルギー堆積(DED)、及び/又は粉末床溶融結合(PBF)によって少なくとも部分的に製造される物品の特性を推定する方法を提供し、本方法は、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータによって少なくとも部分的に実施され、本方法は、
物品のAMのインプロセスパラメータのセットを取得することと、ここにおいて、そのセットのそれぞれのパラメータは、それに関連付けられた位置情報を有し、
インプロセスパラメータのセットに対応する物品の属性のセットを推論することと、ここにおいて、そのセットのそれぞれの属性は、それに関連付けられた位置情報を有し、
属性の推論されたセットに少なくとも部分的に基づいて物品の特性を推定することと
を備える。
【0014】
このようにして、AMによって製造される物品の特性、例えば、機械的特性は、インプロセスAMパラメータのセットから推定され得る。即ち、推定された特性は、特に特定の物品のものである。特に、インプロセスAMパラメータのセットは、空間的に分解され、それにそれぞれに関連付けられた位置情報を有し、物品の属性の対応する推論されたセットは、類似して空間的に分解され、同様にそれにそれぞれに関連付けられた位置情報を有する。このようにして、特定の物品の不均質性、異方性、欠陥、及び/又は幾何学的偏差が、空間的に分解された属性の推論されたセットにおいて考慮される。このようにして、例えば、特定の物品の機械的性能が予測され得る。対照的に、物品の特性の従来の予測は、一般に、バルク(即ち、非空間的に分解された)属性を仮定し、このことから、個々の物品の特性を正確及び/又は精密に予測しない場合がある。代わりに、特定の物品の空間的に分解された属性のセットを推論することによって、特定の物品の特性の予測が改善され、例えば、改善された正確度及び/又は精度を有する。
【0015】
特性
本方法は、AMによって製造される物品の特性を推定、例えば、予測、又は算出するものである。物品の特性は、AMによって決定されるその材料特性であり、例えば、AMに少なくとも部分的に起因する不均質性、異方性、欠陥、及び/又は幾何学的偏差から生じることを理解されたい。
【0016】
一例では、特性は、材料特性、即ち、示強性、例えば、音響特性、化学特性、電気特性、環境特性、磁気特性、機械的特性、光学特性、放射線特性、又は熱特性などの物理特性である。音響特性は、音響吸収性、音の速度、音の反射、音の伝達、及び3次弾性を含む。関心のある化学特性は、耐食性及び反応性を含む。電気特性は、キャパシタンス、誘電定数、誘電強度、電気抵抗率及び導電率、電気感受率、電歪、磁電分極率、ネルンスト係数、誘電率、圧電定数、焦電効果及びゼーベック係数を含む。磁気特性は、キュリー温度、反磁性、ホール係数、ヒステリシス、磁歪、磁気熱量係数、磁気熱電力、磁気抵抗力、透磁率、圧電磁性、焦磁係数、及びスピンホール効果を含む。機械的特性は、脆性、体積弾性率、反発係数、圧縮強度、クリープ、密度、展延性、耐久性、弾性、弾性限度、疲労寿命、疲労限度、可撓性、曲げ弾性率、曲げ強度、破壊靱性、摩擦係数、硬度、展性、拡散係数、可塑性、ポアソン比、反発力、剪断弾性率、剪断強度、滑り、比弾性率、比強度、比重量、剛性、表面粗さ、引張強度、靱性、極限引張強度、粘度、降伏強度、及びヤング弾性率を含む。光学特性は、吸光度、複屈折、色、電気光学効果、光度、光学活性、光弾性、感光性、反射性、屈折率、散乱、及び透過率を含む。熱特性は、熱膨張係数、キュリー点、放射率、ガラス転移温度、気化熱、融点、比熱容量、熱伝導率、熱拡散率、及び熱膨張を含む。
【0017】
一例では、本方法は、AMによって製造される物品の機械的特性を推定するものである。一例では、機械的特性は、脆性、体積弾性率、反発係数、圧縮強度、クリープ、密度、展延性、耐久性、弾性、弾性限度、疲労寿命、疲労限度、可撓性、曲げ弾性率、曲げ強度、破壊靱性、摩擦係数、硬度、展性、拡散係数、可塑性、ポアソン比、反発力、剪断弾性率、剪断強度、滑り、比弾性率、比強度、比重量、剛性、表面粗さ、引張強度、靱性、極限引張強度、粘度、降伏強度、及びヤング弾性率から成るグループから選択される。好ましい一例では、機械的特性は、圧縮強度、クリープ、弾性、弾性限度、疲労寿命、疲労限度、可撓性、曲げ弾性率、曲げ強度、破壊靱性、硬度、剪断弾性率、剪断強度、比弾性率、比強度、剛性、引張強度、靱性、極限引張強度、降伏強度、及びヤング弾性率から成るグループから選択される。
【0018】
物品
本方法は、物品の性質を推定するものである。
【0019】
一例では、物品は、機体コンポーネントなどの航空宇宙コンポーネント、エンジンコンポーネントなどのビークルコンポーネント、又は埋め込み可能な医療デバイスなどの医療コンポーネントを備え、及び/又はそれらである。
【0020】
不均質性、異方性、欠陥、及び/又は幾何学的偏差
一般に、AMにおける不均質性は、微細構造及び/又は機械的不均質性を含み得る。微細構造不均質性は、相構成、層のバンディング、微細構造粗大化、粒子形態、微細構造フィーチャサイズ、処理欠陥、及び不均質再結晶に起因し得る。機械的不均質性は、ロケーション依存、特にZ軸方向依存の引張特性、硬度、及び破壊靱性を含み得る。
【0021】
一般に、AMにおけるの異方性は、微細構造及び/又は機械的異方性を含み得る。微細構造異方性は、構築方向に平行に位置合わせされたエピタキシャル柱状粒子などの粒子形態(それは、次に、機械的異方性を生じさせ得る)、結晶学的テクスチャ、及び融合欠陥の欠如から生じ得る。機械的異方性は、構築方向から生じ得、このことから、配向依存性を呈し、引張特性、破壊靱性、圧縮特性、及び疲労特性において明白であり得る。
【0022】
一般に、AMにおける欠陥は、多孔率、残留応力、亀裂、層間剥離、球状化、幾何学的欠陥、及び寸法正確度(収縮、反り、及び超隆起縁部など)、表面欠陥、微細構造の均質性及び不純物(含有物、汚染物質、及び表面酸化物など)を含む。これらの欠陥は、物品の特性に悪影響を及ぼす。例えば、多孔率は、疲労性能及び亀裂成長に影響を与え、その一方で、収縮及び反りは、物品の幾何学的形状を変化させる。
【0023】
一般に、AMにおけるこれらの欠陥は、AM機器、AMプロセス、AMモデル、及び/又はAM供給材料によって誘発され得る。AM機器によって誘発される欠陥は、例えば、ビーム走査、保護雰囲気を含む構築チャンバ、供給材料の取り扱い及び堆積、並びにベースプレートから生じ得る。AMプロセスによって誘発される欠陥は、例えば、制御設定(エネルギー密度を決定するレーザ出力、走査速度、及びハッチ距離など)及び走査戦略(例えば、温度分布及び残留応力を決定し得る)から生じ得る。AMモデルによって誘発される欠陥は、設計誤差、支持体及び犠牲コンポーネント、並びにベースプレートに対する物品の配向から生じ得る。AM供給材料によって誘発される欠陥は、純粋性及び汚染物質から生じ得、粉末については、粉末形態、粒子サイズ分布、流動性、及び見掛け密度から生じ得る。
【0024】
一般に、幾何学的偏差(例えば、構築誤差及び/又はゆがみ)は、AMの位置分解能、並びに/又はAM中に誘発若しくは発生する機械的応力及び/若しくは熱応力などの応力から生じる。
【0025】
付加製造
ISO/ASTM 52900-15は、結合剤噴射、指向性エネルギー堆積(DED)、材料押出、材料噴射、粉末床溶融結合(PBF)、シート積層、及び液槽光重合を含む、AMプロセスの7つのカテゴリーを定義している。これらのAMプロセスは、知られている。
【0026】
特に、直接金属レーザ焼結(DLMS)、選択的熱焼結(SHS)、選択的レーザ焼結(SLS)、選択的レーザ溶融(SLM)、レーザ金属堆積(LMD)、及び電子ビーム溶融(EBM)などのDED及びPBF技法は、金属粉末及び/又はワイヤ(フィラメントとしても知られる)などの供給材料から、例えば、金属物品を作製する(即ち、製造する、形成する)のに適している。同様に、ポリマー物品は、例えば、熱可塑性物質を含むポリマー組成物を備える粉末及び/又はフィラメントなどの供給材料から製造され得る。供給材料は、その溶融を含む高温まで加熱される。
【0027】
一例では、AMは、DED、例えば、ワイヤ又は粉末DED又はLMD、及び/又はPBF、例えばDMLS、SHS、SLS、SLM、又はEBMを備え、及び/又はそれらである。
【0028】
一例では、本方法は、少なくとも部分的にAMによって物品を製造することを備える。一例では、本方法は、少なくとも部分的にAMによって物品を製造することを備え、物品のAMのインプロセスパラメータのセットを取得することは、少なくとも部分的にAMによって物品を製造している間に(即ち、その間に、それと同時に)物品のAMのインプロセスパラメータのセットを取得することを備える。
【0029】
一例では、少なくとも部分的にAMによって物品を製造することは、必要な変更を加えて、ISO / ASTM52911 - 1 - 19 Additive manufacturing - Design - Part 1: Laser-based powder bed fusion of metalsに準拠するか、又はそれを超える。一例では、本方法は、必要な変更を加えて、ASTM F2924 - 14 Standard Specification for Additive Manufacturing Ti-6 Aluminum-4 Vanadium with Powder Bed Fusionに準拠するか、又はそれを超える。一例では、本方法は、必要な変更を加えて、ASTM F3055 - 14a Standard Specification for Additive Manufacturing Ni Alloy (UNS N07718) with Powder Bed Fusionに準拠するか、又はそれを超える。一例では、本方法は、必要な変更を加えて、ASTM F3184 - 16 Standard Specification for Additive Manufacturing Stainless Steel Alloy (UNS S31603) with Powder Bed Fusionに準拠するか、又はそれを超える。一例では、本方法は、必要な変更を加えて、ASTM F3091 / F3091M - 14 Standard Specification for Powder Bed Fusion of Plastic Materialsに準拠するか、又はそれを超える。一例では、本方法は、必要な変更を加えて、提案された新しいASTM standard, WK46188, Practice for Metal Powder Bed Fusion to Meet Rigid Quality Requirementsに準拠するか、又はそれを超える。
【0030】
一例では、少なくとも部分的にAMによって物品を製造することは、後処理、例えば、熱処理を備える。例えば、付加製造されたままの物品は、構築チャンバからそれを取り出した後に熱処理され得る。典型的には、付加製造されたままの物品は、余分な粉末を洗浄した後、ベースプレート上にある間に熱処理され、ベースプレートがその後取り除かれる。一例では、熱処理は、応力除去(それによって、例えばベースプレートを取り除く際のゆがみを低減するため、及び/又は使用中の応力を低減するため)及び/又は微細構造に影響を及ぼすことを備える。このようにして、熱処理は、物品の機械的特性などの特性に影響を及ぼし得、例えば、改善し得る。本文脈では、それぞれのインプロセスパラメータとその属性の推論されたセットとの間の関係は、そのため、物品に適用されている同じ後処理、及びパラメータと属性との間の関係を定義するデータセットに特有であろう(熱処理が使用されなかった場合も同じ)。アルゴリズムは、十分な訓練データ(又は非常に高度な材料モデル)を伴う異なる熱処理に適応することが可能であり得るが、構築されたパーツに関して、構築後熱処理は、本事例では、アルゴリズムへの入力変数であり得る。
【0031】
供給材料
一例では、少なくとも部分的にAMによって物品を製造することは、例えば粉末及び/又はワイヤを備える供給材料から少なくとも部分的にAMによって物品を製造することを備える。
【0032】
粉末は、固体である粒子を備え、個別の及び/又は凝集した粒子を含み得ることを理解されたい。一例では、粒子は、回転楕円体状、薄片状、又は顆粒状の形状などの不規則な形状を有する。
【0033】
一般に、供給材料は、金属又はポリマー組成物などの溶融による融合に適した任意の材料を備え得る。
【0034】
供給材料は、ポリマー、例えば熱可塑性ポリマーを備えるポリマー組成物を備え得る。熱可塑性ポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーであり得る。熱可塑性ポリマーは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、脂肪族又は半芳香族ポリアミド、ポリ乳酸(ポリラクチド)(PLA)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリブテン-1(PB-1)、ポリスチレン(PS)及びポリ塩化ビニル(PVC)から成るグループから選択され得る。
【0035】
粉末は、セラミック、例えば、耐火材料、砂、SiO2、SiC、Al23、Si23、ZrO2を備え得る。セラミック粒子は、球状、立方体状、若しくは棒状などの規則的な形状、及び/又は回転楕円体状、薄片状、若しくは顆粒状などの不規則な形状(形態としても知られる)を有し得る。
【0036】
一例では、供給材料は、金属又はその合金を備える。一例では、金属は、遷移金属、例えば、第1列、第2列、又は第3列遷移金属である。一例では、金属は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、又はZnである。一例では、金属は、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、又はCdである。一例では、金属は、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、又はHgである。一例では、金属は、Li、Na、若しくはKなどの第1族金属、Be、Mg、Ca、若しくはSrなどの第2族金属、Sc、Y、若しくはLaなどの第3族金属、又はAl、Ga、若しくはInなどの第13族金属である。一例では、供給材料は、これらの金属のうちの1つ以上、例えば、合金を備える。一例では、合金は、1つ以上の非金属合金化添加物を備える。一般に、粉末は、噴霧によって粒子が生成され得る任意の金属を備え得る。これらの粒子は、ガス噴霧、密結合ガス噴霧、プラズマ噴霧若しくは水噴霧などの噴霧、又は当技術分野で知られている他のプロセスによって生成され得る。これらの粒子は、球状などの規則的な形状及び/又は回転楕円体状、薄片状、若しくは顆粒状などの不規則な形状を有し得る。
【0037】
例えば、Ti合金のL-PBFの場合、粉末は、好ましくは、15μm~45μmの範囲及び/又は20μm~63μmの範囲のサイズを有する粒子を備え、その一方で、Ti合金のEBMの場合、粉末は、好ましくは、45μm~105μmの範囲のサイズを有する粒子を備える。例えば、Ni、Al合金、及びステンレス鋼のL-PBFの場合、粉末は、好ましくは、15μm~53μmの範囲のサイズを有する粒子を備え、その一方で、Ni、Al合金、及びステンレス鋼のEBMの場合、粉末は、好ましくは、50μm~150μmの範囲のサイズを有する粒子を備える。
【0038】
一例では、供給材料は、添加剤、合金化添加物、融剤、結合剤、及び/又はコーティングを備える。一例では、粉末は、異なる組成物を有する粒子、例えば、異なる組成物を有する粒子の混合物を備える。
【0039】
一例では、金属は、鉄合金又は非鉄合金、例えば、ステンレス鋼、Al合金、銅合金、Ti合金、Ni合金、又はそれらのそれぞれの合金の混合物、好ましくはそれらの対応する及び/又は適合性のある合金(例えば、同様の又は同じ公称組成物を有する)を備える。
【0040】
好ましい一例では、供給材料は、Ti合金、例えば、AMS 4911R、AMS 4928W、AMS 4965K、及びAMS 4905Fに従った、以下に説明されるようなTi-6Al-4V合金を備え、及び/又はそれから成る。
【0041】
一例では、供給材料は、Carpenter Technology Corporation(アメリカ)から入手可能な、ASTM Grade 5及びGrade 23で入手可能なCarpenter CT PowderRange Ti64 S(登録商標)、Sandvik AB(スウェーデン)から入手可能な、Osprey Ti-6Al-4V Grade 5(登録商標)及び/又はOsprey Ti-6Al-4V Grade 23(登録商標)、GKN Sinter Metals Engineering GmbH(ドイツ)から入手可能な、CPTi - Gr.1、Gr.2、Ti64 - Gr. 5、Gr. 23、Ti6242、Ti5553、及び/又はBeta 21Sから選択されるTi合金を備え、及び/又はTi合金である。同様のTi合金は、LPW Ti6-4 High Performance Titanium、UNS R56400/R56407、3D Systems Ti Gr.23、Concept Laser CL 41 TI ELI、EOS Ti64ELI、Renishaw Ti6Al4V ELI-0406、SLM Solutions TiAl6V4、及びTRUMPF TitaniumT:64 ELI-A LMFを含む。一例では、供給材料は、Sandvik AB(スウェーデン)から入手可能なOsprey Alloy 625(登録商標)及び/又はOsprey Alloy 718(登録商標)、GKN Sinter Metals Engineering GmbH(ドイツ)から入手可能なIN625、IN718、及び/又はNi-Tiから選択されるNi合金を備え、及び/又はNi合金である。一例では、供給材料は、GKN Sinter Metals Engineering GmbH(ドイツ)から入手可能なAlSi7Mg、AlSi10Mg、及び/又はAl4047から選択されるAl合金を備え、及び/又はAl合金である。一例では、供給材料は、GKN Sinter Metals Engineering GmbH(ドイツ)から入手可能な304L、316L、420、及び/又は17-4PHから選択されるステンレス鋼を備え、及び/又はステンレス鋼である。一例では、供給材料は、GKN Sinter Metals Engineering GmbH(ドイツ)から入手可能な4340、4630、5120、8620、20MnCr5、42CrMo4、1.2709、H13、Fe-Si、及び/又はFe-Niから選択されるFe合金を備え、及び/又はFe合金である。
【0042】
コンピュータ
本方法は、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータによって少なくとも部分的に実施される。適切なコンピュータは、知られている。
【0043】
インプロセスパラメータ
本方法は、物品のAMのインプロセスパラメータのセットを取得することを備える。インプロセスパラメータは、以下でより詳細に説明されるように、入力及び/又は出力パラメータを含み得ることを理解されたい。
【0044】
そのセットの各パラメータは、それに関連付けられた位置情報を有する。言い換えれば、各取得されたインプロセスパラメータは、空間的に分解され、関連付けられた位置情報、例えば、データムに対する、例えば、3次元(3D)座標又はXYZ座標などの座標を有する。一例では、そのセットのそれぞれのパラメータは、物品のそれぞれのボクセル(即ち、体積ピクセル)に対応し、それぞれの位置情報は、それぞれのボクセルのものである。
【0045】
一例では、そのセットのそれぞれのパラメータは、それに関連付けられた時間情報を有する。言い換えれば、各取得されたインプロセスパラメータは、関連付けられた時間情報、例えば、タイムスタンプ、例えば絶対時間、又はAMの開始時間などの基準時間に対する時間情報を有し得る。このようにして、物品のAMのそれぞれのインプロセスパラメータは、時間に応じて記録されたAMの測定値から取得され得る。
【0046】
一例では、物品のAMのインプロセスパラメータのセットを取得することは、物品のAM中の出力パラメータ、例えば、光、熱、及び/又は音響放出などの放出を監視することを備える。
【0047】
一般に、出力パラメータは、プロセスシグネチャとも呼ばれ得、それは、観察可能なシグネチャ及び導出されたシグネチャを含み得る。観察可能なシグネチャは、AM中に、例えば、インサイチュセンサを使用して測定又は感知され得る。導出されたシグネチャは、解析モデル又はシミュレーションを使用して決定され、例えば、算出され得る。
【0048】
AMに適したインサイチュセンサは、例えば、パイロメータと、例えば、NIRからLWIRまでの感知、可視範囲の光感知、低コヒーレンス干渉撮像、2Dレーザ変位センサ、光コヒーレンス断層撮影デバイス、加速度計、超音波検出器、ひずみゲージ、熱電対、及びX線検出器のための、1D、2D、及び3Dセンサを含むIRセンサとを使用する非接触温度測定を含む。センサは、例えば、IR撮像のために同軸状に構成され得るか、又は軸方向にずれて構成され得る。このようにして、出力パラメータは、AMと適合性のあるレートで、例えばAMの空間分解能で取得され得る。
【0049】
例えば、PBF及びDEDの場合、観察可能なシグネチャは、溶融プール、プラズマ、走査経路に沿ったトラック、スライスに関連し得、PBFの場合、粉末床(即ち、その融合前の粉末の層)に関連し得る。
【0050】
溶融プールに関連するインプロセスパラメータは、サイズ(例えば、面積又は直径)、形状、温度強度(平均又は累積)及び/又は温度プロファイル(横断方向及び長手方向に沿った1Dプロファイル又は全面積にわたる2Dプロファイル)を含む。溶融プール特性は、トラックの幾何学的正確度、物品の表面及び/又は幾何学的特性、コンポーネントの多孔率、不完全な溶融、並びに/又は残留応力、亀裂及び/若しくは層間剥離の発生を決定し得る。溶融プールは、高温測定、撮像(可視からNIR)及び/又は熱撮像(NIRからLWIR)、並びに音響センサを使用して、インサイチュで監視され得る。
【0051】
プラズマ(例えば、レーザ又は電子ビーム溶融から生じるイオン化プラズマ)に関連するインプロセスパラメータは、温度及び組成を含む。一般に、光、熱、及び/又は音響放出は、溶融プール及びイオン化プラズマから生じる。これらは、結合された現象であるが、別個の信号源である。溶融プールは、その温度によって決定されるように、通常はより長いピーク波長でプラズマに放出するであろう。何らかの材料は、入射レーザとの相互作用でイオン化され、黒体放射と同様にスペクトル帯域で放出し得る。プラズマは、高温測定、撮像(可視からNIR)及び/若しくは熱撮像(NIRからLWIR)、音響センサ、並びに/又は分光法を使用して、インサイチュで監視され得る。
【0052】
トラックに関連するインプロセスパラメータは、幾何学的形状、温度プロファイル、並びに/又は溶融プール及び周囲エリアから排出される材料を含む。トラックの幾何学的形状及び温度プロファイルは、球状化、融合の欠如、局所的過熱、表面及び幾何学的形状誤差、及び/又は多孔率形成などの欠陥の決定を可能にする。材料排出は、副生成物及び/又は局所組成の特徴付けに関連し得る。トラックは、高温測定、撮像(可視からNIR)、熱撮像(NIRからLWIR)、及び/又は干渉撮像を使用して、インサイチュで監視され得る。
【0053】
スライスに関連するインプロセスパラメータは、表面パターン、幾何学的形状(公称幾何学的形状からの偏差を含む)、スライス全体にわたる局所的な厚さプロファイル及び/又は温度プロファイル(通常は2Dプロファイル)を含む。これらのパラメータは、例えば、層毎に作られた印刷されたスライスの実際の形状の再構成を可能にする。スライスは、撮像(可視からNIR)、熱撮像(NIRからLWIR)、及び/又は干渉撮像を使用して、インサイチュで監視され得る。
【0054】
粉末床に関連するインプロセスパラメータは、床の均一性、温度、及び/又は温度プロファイルを含む。例えば、1つの層から次の層への温度安定性及び各層の2D温度プロファイルは、AMの時間的及び/又は空間的進展を特徴付けるために使用され得る。粉末床は、高温測定、撮像(可視からNIR)、熱撮像(NIRからLWIR)、及び/又は干渉撮像を使用して、インサイチュで監視され得る。類似して、インプロセスパラメータは、DEDのための粉末又はワイヤ供給に関連し得る。
【0055】
加えて及び/又は代替として、観察可能なシグネチャは、振動、超音波放出、及び/又はベースプレートゆがみから取得され得る。
【0056】
一例では、物品のAMのインプロセスパラメータのセットを取得することは、物品のAMの入力パラメータ及び/又は物品のAM中のリードバックパラメータをソーシングすることを備える。一般に、入力パラメータは、所望のレーザ出力、所望の走査速度、及び所望のハッチ距離などの所望の制御設定を含み、その一方で、リードバックパラメータは、実際のレーザ出力、実際の走査速度、及び実際のハッチ距離などの実際の制御設定を含む。例えば、所望のレーザ出力は、一定であり得るが、実際のレーザ出力は、AM中に変化し得る。
【0057】
物品の属性
本方法は、インプロセスパラメータのセットに対応する物品の属性のセットを推論することを備える。即ち、空間的に分解された属性のセットは、空間的に分解されたインプロセスパラメータの対応するセットから推論される。一般に、属性は、上記で説明されたように、特性を備え、及び/又は特性である。一例では、そのセットの推論されたそれぞれの属性は、推論されたそれぞれの属性が空間的に分解されているにもかかわらず、推定された特性と同じ特性である。例えば、そのセットの推論されたそれぞれの属性は、空間的に分解された引張強度であり得、推定された特性は、物品のバルク引張強度であり得る。一例では、そのセットの推論されたそれぞれの属性は、推論されたそれぞれの属性が空間的に分解され、推定された特性が属性の推論されたセットに少なくとも部分的に基づいて推定されるにもかかわらず、推定された特性とは異なる特性である。例えば、そのセットのそれぞれの属性は、空間的に分解された破断点伸びであり得、推定された特性は、物品の疲労寿命であり得る。一例では、インプロセスパラメータのセットに対応する物品の属性のセットを推論することは、物品の後処理、例えば、熱処理に少なくとも部分的に基づいてインプロセスパラメータのセットに対応する物品の属性のセットを推論することを備える。
【0058】
そのセットのそれぞれの属性は、それに関連付けられた位置情報を有する。言い換えれば、各推論された属性は、空間的に分解され、取得されたパラメータに関して説明されたように、関連付けられた位置情報、例えば、データムに対する、例えば、3次元(3D)座標又はXYZ座標などの座標を有する。一例では、そのセットのそれぞれの属性は、物品のそれぞれのボクセル(即ち、体積ピクセル)に対応し、それぞれの位置情報は、それぞれのボクセルのものである。言い換えれば、それぞれの属性は、各ボクセルについて推論される。例えば、それぞれの取得されたインプロセスパラメータに従った融合の部分的欠如を含むボクセルの推論された引張強度は、隣接するボクセルの推論された引張強度よりも相対的に低くなるであろう。即ち、単一のバルク特性によって物品を特徴付けるのではなく、物品は、その代わりに、比較的精緻化されたレベル、例えば、顕微鏡レベルで特徴付けられる。
【0059】
一例では、インプロセスパラメータのセットに対応する物品の属性のセットを推論することは、以下に説明されるように、訓練された機械学習(ML)アルゴリズムを使用してインプロセスパラメータのセットに対応する物品の属性のセットを推論することを備える。
【0060】
一例では、本方法は、以下で説明されるように、MLアルゴリズムを訓練することを備える。
【0061】
例えば、本方法は、以下を備え得る:
1.物品の幾何学的形状に関して空間的に分解されたインプロセスパラメータ(例えば、光放出)をAM中に捕捉すること、
2.これらのパラメータを処理し、物品の幾何学的形状に関して空間的に分解された属性(例えば、破断点伸び、疲労寿命)を生成すること、
3.物品の特性(例えば、疲労寿命)を決定するために、これらの空間的に分解された属性を物品の幾何学的形状(例えば、CAD)と共に使用するシミュレーションを実行すること。
【0062】
MLは、訓練データを使用して数学モデルを構築するために適用され、次いで、それは、パラメータデータセットを処理し、属性データセットを出力するために使用される。例えば、インプロセスパラメータは、異なる処理条件を使用して、複数の機械的クーポン(即ち、物品)のAM中に取得され得る。これらの機械的クーポンが試験され、それらの機械的特性が記録される。MLアルゴリズムは、モデルに入力される追加のインプロセスパラメータが関連付けられた属性を出力/予測することになるように、インプロセスパラメータと相関するこれらの機械的特性を用いて訓練される。この例では、訓練データは、引張クーポンから取得され、機械的な観点から、クーポンの中央領域(ゲージ長又はゲージ体積)が、機械的特性の決定に使用され、そのため、対応するインプロセスパラメータセットが、この領域に空間的に関連付けられる。
【0063】
モデル
一例では、本方法は、物品のモデルを提供することを備える。モデルは、物品のコンピュータ支援設計(CAD)モデル、又は物品の測定されたモデルなどの物品の幾何学的表現であることを理解されたい。
【0064】
一例では、属性の推論されたセットに少なくとも部分的に基づいて物品の特性を推定することは、属性の推論されたセットと提供されたモデルとに少なくとも部分的に基づいて物品の特性を推定することを備える。このようにして、属性の推論されたセット及び/又は推定された特性を使用して、物品の構造シミュレーション及び/又は熱シミュレーションなどのシミュレーションが実行され得る。
【0065】
一例では、物品のモデルを提供することは、例えば、物品のSTLモデルに従って、物品のコンピュータ支援設計(CAD)モデルにアクセスすることを備える。即ち、モデルは、設計モデルである。設計モデルを使用することは、計算が比較的単純である。
【0066】
一例では、物品のモデルを提供することは、物品の測定値のセットを獲得することを備える。即ち、モデルは、物品を測定することによって獲得され、このことから、実際の測定された物品の幾何学的表現である。測定されたモデルを使用することは、特性のより正確な及び/又は精密な推定を提供し得る。
【0067】
一例では、物品の測定値のセットを獲得することは、例えば、接触式又は非接触式の座標測定マシン(CMM)、例えば、X線コンピュータ断層撮影(CT)などのCTを使用する座標測定を備える。接触式のCMMは知られており、ブリッジ、カンチレバー、ガントリ、及び水平アームCMMを含む。非接触式のCMMは知られており、レーザスキャナ、構造化光スキャナ、及びCTスキャナを含む。一例では、座標測定は、2D又は3D座標測定であり、好ましくは、例えば、複数の2D座標測定から再構成された3D座標測定である。
【0068】
特性を推定すること
本方法は、属性の推論されたセットに少なくとも部分的に基づいて物品の特性を推定することを備える。即ち、物品の特性は、空間的に分解された属性の推論されたセットを使用して推定(即ち、算出、計算、決定)される。このようにして、推定された特性は、特に特定の物品のものであり、故に、空間的に分解されたインプロセスパラメータのセットから推論されるように、特定の物品の不均質性、異方性、欠陥、及び/又は幾何学的形状を考慮する。
【0069】
一例では、属性の推論されたセットに少なくとも部分的に基づいて物品の特性を推定することは、属性の推論されたセット、物品のモデル、及び/又は供給材料の特性、例えば、同じ特性を使用して物品の特性を推定することを備える。
【0070】
一例では、属性の推論されたセットに少なくとも部分的に基づいて物品の特性を推定することは、属性の推論されたセットを使用する物品の有限要素解析(FEA)を備える。FEAはまた、物品のモデル及び/又は供給材料の特性、例えば、同じ特性を使用することを理解されたい。FEAは、知られている。
【0071】
一例では、FEAは、モデル、例えば、設計モデル又は測定モデルからメッシュを生成することを備える。
【0072】
一例では、FEAは、属性の推論されたセットに関連付けられた位置情報を使用し、任意選択的に、メッシュを生成することを備えない。例えば、FEAは、例えば、AMからのボクセルデータを直接使用し得る。
【0073】
一例では、FEAは、物品の機械的(即ち、構造)シミュレーションを備える。このようにして、物品への静的負荷及び/又は動的負荷の適用が、空間的に分解された属性の推論されたセットを使用し、故に、特定の物品の不均質性、異方性、欠陥、及び/又は幾何学的形状を考慮して、シミュレートされ得る。このようにして、個々の物品のシミュレートされた挙動が評価され得、それによって、従来のシミュレーションと比較して比較的より高い正確度及び/又は精度で、稼働中の個々の物品の機械的性能の予測を可能にする。例えば、AMによって製造される翼桁(即ち、物品)などの航空宇宙コンポーネントの疲労寿命が予測され得る。
【0074】
一例では、FEAは、物品の熱シミュレーションを備える。このようにして、物品中の熱流が、空間的に分解された属性の推論されたセットを使用し、故に、特定の物品の不均質性、異方性、欠陥、及び/又は幾何学的形状を考慮して、シミュレートされ得る。このようにして、個々の物品のシミュレートされた挙動が評価され得、それによって、従来のシミュレーションと比較して比較的より高い正確度及び/又は精度で、稼働中の個々の物品の熱性能の予測を可能にする。
【0075】
物品のセットを備えるアセンブリの特性を決定する方法
第2の態様は、物品のセットを備えるアセンブリの特性を決定する方法を提供し、本方法は、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータによって少なくとも部分的に実施され、本方法は、第1の態様に記載のそのセットのそれぞれの物品の特性を推定することを備える。
【0076】
そのセットのそれぞれの物品は、AMによって少なくとも部分的に製造されることを理解されたい。
【0077】
このようにして、アセンブリの特性は、例えば、アセンブリを組み立てる前に、及び/又は保全中など、アセンブリ中のそのセットの特定の物品を交換する前に、比較的より正確に及び/又は精密に決定(即ち、推定、予測、算出、計算)され得る。
【0078】
一例では、そのセットのそれぞれの物品の少なくともサブセットは、例えば、機械的に、接着的に、及び/又は融合(溶接など)によって相互に結合される。
【0079】
一例では、アセンブリの特性を決定することは、必要な変更を加えて、一般に物品のFEAに関して説明されるように、アセンブリのFEAを備える。
【0080】
MLアルゴリズムを訓練する方法
第3の態様は、機械学習(ML)アルゴリズムを訓練する方法を提供し、本方法は、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータによって少なくとも部分的に実施され、本方法は、
第1の物品を含む物品のセットのAMのインプロセスパラメータのセットと、物品のセットの特性の対応するセットとを備える訓練データを提供することと、
提供された訓練データセットを使用してMLアルゴリズムを訓練することと
を備える。
【0081】
インプロセスパラメータのセット、付加製造、物品、及び/又は特性は、第1の態様に関して説明されたようなものであり得る。
【0082】
適切なMLアルゴリズムは、知られている。
【0083】
一例では、物品のセットのAMのインプロセスパラメータのセットを備える訓練データを提供することは、入力パラメータの所定のセットに従った物品のセットのAMを備える。即ち、物品は、異なるAM条件下で製造され、インプロセスパラメータがそこから取得される。このようにして、MLアルゴリズムは、AM物品の入力パラメータ、インプロセスパラメータ、及び特性を使用して訓練される。
【0084】
一例では、物品のセットの特性の対応するセットを備える訓練データを提供することは、物品のセットの非破壊検査(NDT)及び/又は破壊検査(DT)を備える。
【0085】
一般に、AMによって製造される物品は、超音波検査、赤外線検査、渦電流検査、X線検査、染料浸透検査、磁性粒子検査、及び/又は光学検査を含むNDTによって検査され得る。一般に、AMによって製造される物品は、機械的特性試験を含むDTによって試験され得る。そのような試験は、知られている。
【0086】
訓練されたMLアルゴリズム
第4の態様は、第3の態様に記載の方法に従って訓練された機械学習(ML)アルゴリズムを提供する。
【0087】
コンピュータ、コンピュータプログラム、及び非一過性コンピュータ可読記憶媒体
第5の態様は、第1の態様、第2の態様、及び/又は第3の態様に記載の方法を実施するように構成された、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータを提供する。
【0088】
第6の態様は、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータによって実行されると、コンピュータに、第1の態様、第2の態様、及び/又は第3の態様に記載の方法を実行させる命令を備えるコンピュータプログラムを提供する。
【0089】
第7の態様は、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータによって実行されると、コンピュータに、第1の態様、第2の態様、及び/又は第3の態様に記載の方法を実行させる命令を備える非一過性コンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【0090】
定義
本明細書を通して、「備える(comprising)」又は「備える(comprises)」という用語は、指定されたコンポーネント(複数可)を含むが、他のコンポーネントの存在を除外しないことを意味する。「から本質的に成る(consisting essentially of)」又は「から本質的に成る(consists essentially of)」という用語は、指定されたコンポーネントを含むが、不純物として存在する材料、コンポーネントを提供するために使用されるプロセスの結果として存在する不可避の材料、及び着色剤などの本発明の技術的効果を達成すること以外の目的のために添加されるコンポーネント、等を除いて、他のコンポーネントを除外することを意味する。
【0091】
「から成る(consisting of)」又は「から成る(consists of)」という用語は、指定されたコンポーネントを含むが、他のコンポーネントを除外することを意味する。
【0092】
適切な場合はいつでも、文脈に応じて、「備える(comprises)」又は「備える(comprising)」という用語の使用はまた、「から本質的に成る(consist essentially of)」又は「から本質的に成る(consisting essentially of)」という意味を含むと解釈され得、また、「から成る(consist of)」又は「から成る(consisting of)」という意味を含むと解釈され得る。
【0093】
本明細書に記載された任意選択の特徴は、適切な場合、個々に、又は互いに組み合わせて、特に添付の特許請求の範囲に記載されたような組み合わせで、のうちのいずれかで使用され得る。本明細書に記載されたような本発明の各態様又は例証的な実施形態についての任意選択の特徴は、適切な場合、本発明の全ての他の態様又は例証的な実施形態にも適用可能である。言い換えれば、本明細書を読む当業者は、本発明の各態様又は例証的な実施形態の任意選択の特徴を、異なる態様と例証的な実施形態との間で交換可能及び組み合わせ可能なものと見なすべきである。
【0094】
本発明をより良く理解するために、及び本発明の例証的な実施形態がどのように実施され得るかを示すために、例としてのみ、添付の図への参照が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
図1】例証的な実施形態による方法を概略的に図示する。
図2】例証的な実施形態による方法を概略的に図示する。
【発明を実施するための形態】
【0096】
図1は、例証的な実施形態による方法を概略的に図示する。
【0097】
本方法は、付加製造(AM)、好ましくは指向性エネルギー堆積(DED)、及び/又は粉末床溶融結合(PBF)によって少なくとも部分的に製造される物品の特性を推定するものである。本方法は、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータによって少なくとも部分的に実施される。
【0098】
S101において、本方法は、物品のAMのインプロセスパラメータのセットを取得することを備え、そのセットのそれぞれのパラメータは、それに関連付けられた位置情報を有する。
【0099】
S102において、本方法は、インプロセスパラメータのセットに対応する物品の属性のセットを推論することを備え、そのセットのそれぞれの属性は、それに関連付けられた位置情報を有する。
【0100】
S103において、本方法は、属性の推論されたセットに少なくとも部分的に基づいて物品の特性を推定することを備える。
【0101】
本方法は、第1の態様に関して説明されたようなステップのうちのいずれをも含み得る。
【0102】
図2は、例証的な実施形態による方法を概略的に図示する。
【0103】
例として、有限要素解析(FEA)などの構造シミュレーションは、典型的には、コンピュータ支援設計(CAD)モデルから体積メッシュを生成することなどによって、理想化された完全な物品の幾何学的形状に適用され、一般化されたバルク機械的特性データを使用する。シミュレーションは、1つ以上の入力負荷条件に基づいて物品の機械的性能を予測するために使用され得る。物品の機械的性能を予測するためには、物品の機械的特性が必要とされる。物品の機械的特性、例えば、その材料の機械的特性の直接測定は、常に破壊的であり、このことから、稼働中の物品に対して実行することができない。故に、設計及びシミュレーションのために、一般化されたバルク機械的特性が、既知の材料条件についてのルックアップテーブルから適用され、これらは、供給及びプロセスにおける変動性を考慮するための安全性の尺度を組み込む。
【0104】
しかしながら、空間的に分解されたパラメータは、例えば、AM用の供給材料とのレーザ(又は他の電源)相互作用の光及び/又は音響放出などの出力をAM中にリアルタイムで直接又は間接的に測定するセンサを使用して、AMから取得され得る。これらのインプロセスパラメータ(例えば、測定値)は、物品の結果として得られる機械的特性と相関し得る。例えば、機械学習(ML)方法は、インプロセスパラメータからバルク機械的特性を予測するために使用され得る。適切な検証により、「測定された」特性は、従来のルックアップテーブル中に埋め込まれた変動性仮定のうちのいくつかを除去し、特定の物品の挙動を予測するためのより代表的な基礎を提供する。
【0105】
故に、第1の態様に記載の方法は、物品のAM中に取得されたインプロセス測定値から機械的特性を導出して、例えば、構造シミュレーションの忠実度を向上させ、推論によって正確度を向上させる。最も単純な実施形態では、導出された機械的特性は、物品に特有のより精緻化されたバルク特性であり得るが、より興味深い概念は、物品の幾何学的形状に位置合わせされた空間的に分解された多数の機械的特性値と、場合によってはその方向性とを使用する。
【0106】
物品の空間的に分解された属性の推論されたセットは、例えば、X線コンピュータ断層撮影(CT)などの技法を使用して獲得された物品の実際の測定された幾何学的形状と更に組み合わされ得、それによって、理想化されたCAD幾何学的形状と置き換わり得る。このようにして、シミュレーションの忠実度が更に向上される。
【0107】
多くのAMプロセスは、所望の物品を生成するために必要とされるような形で横断される(例として)レーザ、電子ビーム、又は電気アークによる材料の熱処理を含む。時間不変のエネルギー入力の場合、相互作用点における材料の温度は、周囲の材料への伝導損失によって支配されるであろう。例えば、基板(ベースプレート又はプレートとしても知られる)を直接構築すると、プレートの比較的大きい質量が相互作用ゾーンから離れて熱を伝導し、相互作用点での材料温度の相対的な低減をもたらす。構築がプレートから離れて進行するにつれて、相互作用点に対して局所的な材料の質量は、漸進的に減少し、相互作用点における材料温度の相対的な増大が、結果として生じる。材料の結果として得られる機械的特性は、処理中に経験される熱サイクルによって影響されるので、構築全体を通して特性の変動があるであろう。構築中の同様の熱効果は、同様に局所的な変動をもたらすであろう、ブラインド壁、接合部、等などの幾何学的特徴で生じる。
【0108】
レーザと材料との相互作用の場所からの放出は、温度へのいくらかの依存性を有する可能性がある。例えば、黒体放射(強度及びスペクトルピーク)は温度の関数であるが、AMプロセス用の相互作用領域からの光放出は遙かにより複雑であることが認められている。ML又は他の技法を使用してインプロセスパラメータを処理し、これを既知の機械的値に別個に相関させることによって、機械的特性は、結果として生じる物品の幾何学的形状に関して空間的に分解され得る。これの更なる拡張は、層毎の構築アプローチに起因して異方的である傾向があるAM構造における機械的特性の方向性の態様を考慮に入れるであろう。
【0109】
特定の材料特性情報(バルク又は空間的に分解されたもののうちのいずれか)と共に実際のパーツの幾何学的形状に基づくその後の構造シミュレーションは、シミュレーションの忠実度を更に向上させる。
【0110】
例えば、本方法は、AM中のインプロセス測定から導出又は推論され、任意選択的に実際の物品の幾何学的形状と組み合わされた、空間的に分解された機械的特性の測定に基づいて、付加製造される物品の構造シミュレーションの正確度を改善させる。構造シミュレーションの正確度を向上させることによって、物品の負荷履歴に基づいて、より高い忠実度の耐用寿命予測が製造時に推定され得、及び/又は残りの耐用寿命がより正確に予測され得る。加えて及び/又は代替として、本方法は、元の設計範囲の外側及び元の設計範囲の負荷シナリオを評価するために使用され得る。この情報は、重要な物品の予知保全に有益である。
【0111】
この例では、本方法は、航空機コンポーネント、特に、付加製造(AM)、特にレーザ粉末床溶融結合(L-PBF)によって製造されるブラケット(即ち、物品)、の疲労寿命(即ち、特性)を推定するものである。本方法は、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータによって少なくとも部分的に実施される。
【0112】
この例では、供給材料は、Ti-6Al-4V合金粉末、特に、表1に示すような粒子サイズ分布を有するCarpenter CT PowderRange Ti64 S (Ti-6Al-4V) Grade 23である。
【0113】
【表1】
【0114】
この例では、AMは、粉末表面で80μmのスポットサイズ及び典型的には20~60μmの範囲の層厚さで動的に集束される4×500Wのレーザを有する、InfiniAM Spectralソフトウェア(イギリスのRenishaw plcから入手可能)を有するMeltVIEW(登録商標)及びLaserView(登録商標)を含むRenAM 500Q(登録商標)を使用して実行される。MeltVIEWは、広いスペクトル範囲にわたって溶融プールの放出を監視する。同軸光学構成は、溶融プールが構築全体を通して可視光フォトダイオードセンサの焦点内に留まることを確実にする、レーザ走査システムによって決定される視野を与える。LaserVIEWは、赤外線フォトダイオードセンサを使用してレーザの入力を測定する。
【0115】
この例では、物品の測定値のセットは、非接触式のCMM、特にX線CTを使用して、最大7Wで3μmの焦点スポットサイズ及び225Wで225μmの焦点スポットサイズを有し、1950×1500個のアクティブピクセル及び127μmのピクセルサイズを有するVarian 2520Dx検出器を装備されたXT H 225 ST(ベルギーのNikon Metrology Europe NVから入手可能)を使用して獲得される。
【0116】
インプロセスパラメータの空間分解能は、MeltVIEWデータ及び/又はX線CTデータによって定義され得る。
【0117】
S201において、本方法は、物品のAMのインプロセスパラメータのセットを取得することを備え、そのセットのそれぞれのパラメータは、それに関連付けられた位置情報を有する。この例では、インプロセスパラメータは、MeltVIEW及びLaserVIEWから取得される。
【0118】
S202において、本方法は、インプロセスパラメータのセットに対応する物品の属性のセットを推論することを備え、そのセットのそれぞれの属性は、それに関連付けられた位置情報を有する。この例では、そのセットのそれぞれの属性は、空間的に分解された破断点伸びである。これでは、インプロセスパラメータのセットに対応する物品の属性のセットを推論することは、訓練されたMLアルゴリズムを使用してインプロセスパラメータのセットに対応する物品の属性のセットを推論することを備える。この例では、訓練データは、訓練物品のセットのDT、特に引張試験から提供される。この例では、MLアルゴリズムを訓練することは、ガウス混合モデル(GMM)を使用する半教師あり訓練を備える。
【0119】
S203において、本方法は、属性の推論されたセットに少なくとも部分的に基づいて物品の特性を推定することを備える。この例では、特性は、疲労寿命である。この例では、本方法は、XT H 225 STを使用して物品の測定値のセットを獲得することを備える、物品のモデルを提供することを備える。この例では、属性の推論されたセットに少なくとも部分的に基づいて物品の特性を推定することは、属性の推論されたセットと提供された測定されたモデルとを使用する物品のFEAを備える。即ち、この例では、AM構造ブラケットの疲労寿命は、インプロセス測定から導出された推論された引張強度と実際の物品の幾何学的形状とを組み合わせるFEA機械シミュレーションによって推定される。
【0120】
この例は、L-BPFに関するものであるが、本方法は、任意の金属ベースのAMプロセス、例えばPBF、並びに粉末DED及びワイヤDEDなどのDEDに適用可能である。
【0121】
更に、この例は、単一材料構築に関するものであるが、本方法は、第1の材料から第2の材料への段階的遷移及び機械的特性の対応する変化が存在する段階的材料AMにより一般に適用可能である。インプロセス監視をそのような構築中の空間的に分解された属性を推論するために、同様に適用され得る。
【0122】
好ましい実施形態が示され、説明されてきたが、添付の特許請求の範囲に定義され、上記で説明されたような本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正が行われ得ることが当業者によって認識されるであろう。
【0123】
要約すると、本発明は、物品の製造中のインプロセス測定から導出された機械的特性の測定に基づいて、任意選択で実際の物品の幾何学的形状と組み合わせて(理想化されたCADモデルと比較して)、付加製造される物品の構造シミュレーションの正確度を改善するための方法を提供する。構造シミュレーション、例えばFEAに適用されると、この情報は、特定の製造されたままの物品に固有の機械的性能の非常に正確な予測を実現する機会を提示する。
【0124】
本出願に関連して本明細書と同時に又は本明細書より前に提出され、本明細書と共に公衆の閲覧に供される全ての文献及び文書に注意が向けられ、全てのそのような文献及び文書の内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0125】
本明細書(任意の添付の特許請求の範囲及び図面を含む)中に開示された特徴の全て、及び/又はそのように開示された任意の方法若しくはプロセスのステップの全ては、そのような特徴及び/又はステップのうちの多くともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わされ得る。
【0126】
本明細書(任意の添付の特許請求の範囲及び図面を含む)中に開示された各特徴は、別段に明記されない限り、同一、同等、又は同様の目的を果たす代替の特徴によって置き換えられ得る。このことから、別段に明記されない限り、開示された各特徴は、一般的な一連の同等又は同様の特徴の一例に過ぎない。
【0127】
本発明は、前述の実施形態(複数可)の詳細に限定されない。本発明は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲及び図面を含む)中に開示された特徴のうちの任意の新規の1つ若しくは任意の新規の組み合わせ、又はそのように開示された任意の方法若しくはプロセスのステップのうちの任意の新規の1つ若しくは任意の新規の組み合わせに及ぶ。
以下に本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
付加製造(AM)によって少なくとも部分的に製造される物品の機械的特性を推定する方法であって、前記方法は、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータによって少なくとも部分的に実施され、前記方法は、
前記物品の前記AMのインプロセスパラメータのセットを取得すること、ここにおいて、その前記セットのそれぞれのパラメータは、空間的に分解され、それに関連付けられた位置情報を有し、前記物品の前記AMのインプロセスパラメータの前記セットを取得することは、前記物品の前記AM中の光、熱、及び/又は音響放出を監視することを備え、と、
インプロセスパラメータの前記セットに対応する前記物品の属性のセットを推論すること、ここにおいて、その前記セットのそれぞれの属性は、空間的に分解され、それに関連付けられた前記位置情報を有し、その前記セットの前記それぞれの属性は、前記物品の空間的に分解された機械的特性であり、と、
属性の前記推論されたセットに少なくとも部分的に基づいて前記物品の前記機械的特性を推定すること、
ここにおいて、前記物品の前記空間的に分解された機械的特性と前記物品の前記機械的特性とは、脆性、体積弾性率、反発係数、圧縮強度、クリープ、密度、展延性、耐久性、弾性、弾性限度、疲労寿命、疲労限度、可撓性、曲げ弾性率、曲げ強度、破壊靱性、摩擦係数、硬度、展性、拡散係数、可塑性、ポアソン比、反発力、剪断弾性率、剪断強度、滑り、比弾性率、比強度、比重量、剛性、表面粗さ、引張強度、靱性、極限引張強度、粘度、降伏強度、及びヤング弾性率から成るグループから各々選択される、と、
を備える、方法。
[C2]
前記物品の前記空間的に分解された機械的特性と前記物品の前記機械的特性とは異なる、C1に記載の方法。
[C3]
前記物品の前記AMのインプロセスパラメータの前記セットを取得することは、前記物品の前記AMの入力パラメータ及び/又は前記物品の前記AM中のリードバックパラメータをソーシングすることを備える、C1又は2に記載の方法。
[C4]
インプロセスパラメータの前記セットに対応する前記物品の属性の前記セットを推論することは、訓練された機械学習(ML)アルゴリズムを使用してインプロセスパラメータの前記セットに対応する前記物品の属性の前記セットを推論することを備える、C1~3のうちのいずれか一項に記載の方法。
[C5]
前記物品の前記空間的に分解された機械的特性と前記物品の前記機械的特性とは、圧縮強度、クリープ、弾性、弾性限度、疲労寿命、疲労限度、可撓性、曲げ弾性率、曲げ強度、破壊靱性、硬度、剪断弾性率、剪断強度、比弾性率、比強度、剛性、引張強度、靱性、極限引張強度、降伏強度、及びヤング弾性率から成るグループから各々選択される、C1~4のうちのいずれか一項に記載の方法。
[C6]
前記物品のモデルを提供することを備え、属性の前記推論されたセットに少なくとも部分的に基づいて前記物品の前記特性を推定することは、属性の前記推論されたセットと前記提供されたモデルとに少なくとも部分的に基づいて前記物品の前記特性を推定することを備える、C1~5のうちのいずれか一項に記載の方法。
[C7]
前記物品の前記モデルを提供することは、前記物品の測定値のセットを獲得することを備え、前記物品の測定値の前記セットを獲得することは、座標測定を備える、C6に記載の方法。
[C8]
前記推定された機械的特性は、前記AMに少なくとも部分的に起因する不均質性、異方性、欠陥、及び/又は幾何学的偏差から少なくとも部分的に生じる、C1~7のうちのいずれか一項に記載の方法。
[C9]
属性の前記推論されたセットに少なくとも部分的に基づいて前記物品の前記特性を推定することは、属性の前記推論されたセットを使用する前記物品の有限要素解析(FEA)を備える、C1~8のうちのいずれか一項に記載の方法。
[C10]
物品のセットを備えるアセンブリの機械的特性を決定する方法であって、前記方法は、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータによって少なくとも部分的に実施され、前記方法は、C1~9のうちのいずれか一項に記載のその前記セットの前記それぞれの物品の機械的特性を推定することを備える、方法。
[C11]
機械学習(ML)アルゴリズムを訓練する方法であって、前記方法は、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータによって少なくとも部分的に実施され、前記方法は、
第1の物品を含む物品のセットのAMのインプロセスパラメータのセットと、物品の前記セットの機械的特性の対応するセットとを備える訓練データを提供すること、
ここにおいて、その前記セットのそれぞれのパラメータは、空間的に分解され、それに関連付けられた位置情報を有し、前記それぞれの物品の前記AMのインプロセスパラメータの前記セットを取得することは、前記それぞれの物品の前記AM中の光、熱、及び/又は音響放出を監視することを備え、
ここにおいて、前記物品の前記それぞれの機械的特性は、脆性、体積弾性率、反発係数、圧縮強度、クリープ、密度、展延性、耐久性、弾性、弾性限度、疲労寿命、疲労限度、可撓性、曲げ弾性率、曲げ強度、破壊靱性、摩擦係数、硬度、展性、拡散係数、可塑性、ポアソン比、反発力、剪断弾性率、剪断強度、滑り、比弾性率、比強度、比重量、剛性、表面粗さ、引張強度、靱性、極限引張強度、粘度、降伏強度、及びヤング弾性率から成るグループから選択され、と、
前記提供された訓練データセットを使用して前記MLアルゴリズムを訓練することと を備える、方法。
[C12]
物品の前記セットの前記AMのインプロセスパラメータの前記セットを備える前記訓練データを提供することは、入力パラメータの所定のセットに従った物品の前記セットのAMを備える、C11に記載の方法。
[C13]
物品の前記セットの特性の前記対応するセットを備える前記訓練データを提供することは、物品の前記セットの非破壊検査(NDT)及び/又は破壊検査(DT)を備える、C11又は12に記載の方法。
[C14]
C11~13のうちのいずれか一項に記載の方法に従って訓練された機械学習(ML)アルゴリズム。
[C15]
C1~13のうちのいずれか一項に記載の方法を実施するように構成された、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータ、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、C1~13のうちのいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を備えるコンピュータプログラム、又はプロセッサ及びメモリを備えるコンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、C1~13のうちのいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を備える非一過性コンピュータ可読記憶媒体。
図1
図2