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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】機械的位置制限機構
(51)【国際特許分類】
   F16M 11/12 20060101AFI20240930BHJP
   B66F 19/00 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
F16M11/12 B
B66F19/00 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022580231
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 CN2021102087
(87)【国際公開番号】W WO2021259359
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】202010592572.9
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517396261
【氏名又は名称】アンコン メディカル テクノロジーズ (シャンハイ) カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ANKON MEDICAL TECHNOLOGIES (SHANGHAI) CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】Floor 1,No.435,Chuanqiao Road,Pilot Free Trade Zone,Pudong New Area,Shanghai,201206,China
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100207217
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 智夫
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン シャオバン
(72)【発明者】
【氏名】シェン ユェユェ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥアン シャオドン
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第207349710(CN,U)
【文献】特開2006-301621(JP,A)
【文献】実開昭61-103109(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第109424829(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0025326(US,A1)
【文献】独国実用新案第29505404(DE,U1)
【文献】独国実用新案第8909957(DE,U1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0053829(US,A1)
【文献】中国実用新案第202834623(CN,U)
【文献】中国実用新案第204573503(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16M 11/04- 11/12
F16M 11/16
F16M 13/00
B66F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的位置制限機構であって、
回転台(2)と、スプリングアーム(3)と、載物部(4)と、補強アーム(5)とを含み、
前記スプリングアーム(3)の第1端は、前記回転台(2)に接続され、
前記載物部(4)は、物を載置するために用いられ、且つ前記スプリングアーム(3)の第2端は、前記載物部(4)に接続され、
前記補強アーム(5)の第1端が前記回転台(2)に接続され、前記補強アーム(5)の第2端が前記載物部(4)に接続されることにより、前記スプリングアーム(3)、前記回転台(2)、前記補強アーム(5)及び前記載物部(4)は、四節リンク機構を構成し、
前記スプリングアーム(3)と前記補強アーム(5)の接触により、前記スプリングアーム(3)及び前記補強アーム(5)の位置制限が図られ、且つ、前記載物部(4)の、鉛直方向において降下可能な位置の制限の変更は、前記スプリングアーム(3)の寸法及び/又は前記補強アーム(5)の寸法を調整することによって図られ、
前記スプリングアーム(3)の第1端は、第1回転軸(31)を介して前記回転台(2)に接続され、前記スプリングアーム(3)の第2端は、第2回転軸(32)を介して前記載物部(4)に接続され、
前記補強アーム(5)の第1端は、第3回転軸(51)を介して前記回転台(2)に接続され、前記補強アーム(5)の第2端は、第4回転軸(52)を介して前記載物部(4)に接続され、
前記補強アーム(5)における前記スプリングアーム(3)に接触するための箇所と前記第4回転軸(52)の軸心との距離であって、前記スプリングアーム(3)に接触するための箇所での、前記補強アーム(5)の断面上に、前記第4回転軸(52)の軸心を投影した時の、前記スプリングアーム(3)に接触するための箇所と前記第4回転軸(52)の軸心との距離との距離である距離L3と、前記スプリングアーム(3)の半径Rとの関係は、以下(数1)の通りであり、
(数1)

ただし、L1は、互いに鉛直方向に並んでいる前記第1回転軸(31)と前記第3回転軸(51)との軸心距離であり、前記第2回転軸(32)と前記第4回転軸(52)とは、互いに鉛直方向に並んでおり、L4は、前記第3回転軸(51)と前記第4回転軸(52)との軸心距離であり、hは、前記補強アーム(5)における前記スプリングアーム(3)に接触するための箇所と前記スプリングアーム(3)の外壁との間に形成された隙間であり、Hは、載物部(4)が前記第1回転軸(31)を含む水平面から鉛直方向に降下する距離である、
ことを特徴とする機械的位置制限機構。
【請求項2】
機械的位置制限機構であって、
回転台(2)と、スプリングアーム(3)と、載物部(4)と、補強アーム(5)とを含み、
前記スプリングアーム(3)の第1端は、前記回転台(2)に接続され、
前記載物部(4)は、物を載置するために用いられ、且つ前記スプリングアーム(3)の第2端は、前記載物部(4)に接続され、
前記補強アーム(5)の第1端が前記回転台(2)に接続され、前記補強アーム(5)の第2端が前記載物部(4)に接続されることにより、前記スプリングアーム(3)、前記回転台(2)、前記補強アーム(5)及び前記載物部(4)は、四節リンク機構を構成し、
前記スプリングアーム(3)と前記補強アーム(5)の接触により、前記スプリングアーム(3)及び前記補強アーム(5)の位置制限が図られ、且つ、前記載物部(4)の、鉛直方向において降下可能な位置の制限の変更は、前記スプリングアーム(3)の寸法及び/又は前記補強アーム(5)の寸法を調整することによって図られ、
前記スプリングアーム(3)は、円柱状構造に設けられ、前記補強アーム(5)は、溝状構造に設けられ、前記溝状構造の開口は、前記スプリングアーム(3)に向かい、前記溝状構造の内部には、支持具(54)が設けられ、前記支持具(54)は、前記溝状構造の高さ方向に溝状構造の底部から突起するとともに、補強アーム(5)の長さ方向に延在し、且つ前記支持具(54)の頂部は、前記スプリングアーム(3)との当接に用いられる、ことを特徴とする機械的位置制限機構。
【請求項3】
前記補強アーム(5)のアーム長さ方向に沿って、前記補強アーム(5)の溝状構造は、前記溝状構造の両端に設けられた端板を含み、且つ前記端板は、いずれも前記溝状構造の側壁に接続され、
前記端板の前記スプリングアーム(3)に向かう側は、曲面に形成され、且つ前記曲面は、前記スプリングアーム(3)の断面形状に合致する、ことを特徴とする請求項2に記載の機械的位置制限機構。
【請求項4】
機械的位置制限機構であって、
回転台(2)と、スプリングアーム(3)と、載物部(4)と、補強アーム(5)とを含み、
前記スプリングアーム(3)の第1端は、前記回転台(2)に接続され、
前記載物部(4)は、物を載置するために用いられ、且つ前記スプリングアーム(3)の第2端は、前記載物部(4)に接続され、
前記補強アーム(5)の第1端が前記回転台(2)に接続され、前記補強アーム(5)の第2端が前記載物部(4)に接続されることにより、前記スプリングアーム(3)、前記回転台(2)、前記補強アーム(5)及び前記載物部(4)は、四節リンク機構を構成し、
前記スプリングアーム(3)と前記補強アーム(5)の接触により、前記スプリングアーム(3)及び前記補強アーム(5)の位置制限が図られ、且つ、前記載物部(4)の、鉛直方向において降下可能な位置の制限の変更は、前記スプリングアーム(3)の寸法及び/又は前記補強アーム(5)の寸法を調整することによって図られ、
前記スプリングアーム(3)は、円柱状構造に設けられ、前記補強アーム(5)の前記スプリングアーム(3)に近接する面は、弧面であり、前記弧面は、前記スプリングアーム(3)の側面と少なくとも部分的に対応し、前記弧面は、前記スプリングアーム(3)との当接に用いられ、前記補強アーム(5)は、中空構造又は中実構造に設けられる、ことを特徴とする機械的位置制限機構。
【請求項5】
機械的位置制限機構であって、
回転台(2)と、スプリングアーム(3)と、載物部(4)と、補強アーム(5)とを含み、
前記スプリングアーム(3)の第1端は、前記回転台(2)に接続され、
前記載物部(4)は、物を載置するために用いられ、且つ前記スプリングアーム(3)の第2端は、前記載物部(4)に接続され、
前記補強アーム(5)の第1端が前記回転台(2)に接続され、前記補強アーム(5)の第2端が前記載物部(4)に接続されることにより、前記スプリングアーム(3)、前記回転台(2)、前記補強アーム(5)及び前記載物部(4)は、四節リンク機構を構成し、
前記スプリングアーム(3)と前記補強アーム(5)の接触により、前記スプリングアーム(3)及び前記補強アーム(5)の位置制限が図られ、且つ、前記載物部(4)の、鉛直方向において降下可能な位置の制限の変更は、前記スプリングアーム(3)の寸法及び/又は前記補強アーム(5)の寸法を調整することによって図られ、
前記スプリングアーム(3)は、円柱状構造に設けられ、前記補強アーム(5)の前記スプリングアーム(3)に近接する面は、平面であり、前記平面は、前記スプリングアーム(3)との当接に用いられる、ことを特徴とする機械的位置制限機構。
【請求項6】
前記スプリングアーム(3)は、その第1位置制限部(33)を介して前記補強アーム(5)に接触し、前記補強アーム(5)は、その第2位置制限部(53)を介して前記スプリングアーム(3)に接触し、前記第1位置制限部(33)は、前記第2位置制限部(53)に当接することによって、前記スプリングアーム(3)を位置制限する、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の機械的位置制限機構。
【請求項7】
機械的位置制限機構であって、
回転台(2)と、スプリングアーム(3)と、載物部(4)と、補強アーム(5)とを含み、
前記スプリングアーム(3)の第1端は、前記回転台(2)に接続され、
前記載物部(4)は、物を載置するために用いられ、且つ前記スプリングアーム(3)の第2端は、前記載物部(4)に接続され、
前記補強アーム(5)の第1端が前記回転台(2)に接続され、前記補強アーム(5)の第2端が前記載物部(4)に接続されることにより、前記スプリングアーム(3)、前記回転台(2)、前記補強アーム(5)及び前記載物部(4)は、四節リンク機構を構成し、
前記スプリングアーム(3)と前記補強アーム(5)の接触により、前記スプリングアーム(3)及び前記補強アーム(5)の位置制限が図られ、且つ、前記載物部(4)の、鉛直方向において降下可能な位置の制限の変更は、前記スプリングアーム(3)の寸法及び/又は前記補強アーム(5)の寸法を調整することによって図られ、
前記スプリングアーム(3)は、ロッド体(36)を含み、前記ロッド体(36)内には、スプリング(37)が設けられ、前記スプリング(37)は、一端が前記ロッド体(36)に接続され、他端が前記回転台(2)に接続され、且つ前記スプリング(37)は、常に引張状態にされる、ことを特徴とする機械的位置制限機構。
【請求項8】
機械的位置制限機構であって、
回転台(2)と、スプリングアーム(3)と、載物部(4)と、補強アーム(5)とを含み、
前記スプリングアーム(3)の第1端は、前記回転台(2)に接続され、
前記載物部(4)は、物を載置するために用いられ、且つ前記スプリングアーム(3)の第2端は、前記載物部(4)に接続され、
前記補強アーム(5)の第1端が前記回転台(2)に接続され、前記補強アーム(5)の第2端が前記載物部(4)に接続されることにより、前記スプリングアーム(3)、前記回転台(2)、前記補強アーム(5)及び前記載物部(4)は、四節リンク機構を構成し、
前記スプリングアーム(3)と前記補強アーム(5)の接触により、前記スプリングアーム(3)及び前記補強アーム(5)の位置制限が図られ、且つ、前記載物部(4)の、鉛直方向において降下可能な位置の制限の変更は、前記スプリングアーム(3)の寸法及び/又は前記補強アーム(5)の寸法を調整することによって図られ、
前記スプリングアーム(3)の第1端は、第1リンク(34)を介して、前記回転台(2)に接続され、
前記スプリングアーム(3)の第2端は、第2リンク(35)を介して、前記載物部(4)に接続され、
前記第1リンク(34)は、一端が前記スプリングアーム(3)に固定接続され、他端が前記回転台(2)にヒンジ接続され、
前記第2リンク(35)は、一端が前記スプリングアーム(3)に固定接続され、他端が前記載物部(4)にヒンジ接続されている、ことを特徴とする機械的位置制限機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本国際出願は、2020年06月24日に中国特許庁に出願された出願番号202010592572.9、発明名称「機械的位置制限機構」の中国特許出願の優先権を主張するものであり、その全ての内容は、参照によりここに結合される。
【0002】
本願は、機械装置の技術分野に関し、特に機械的位置制限機構に関する。
【背景技術】
【0003】
平衡アームシステムは、スプリング(機械スプリング又はガススプリング)によって末端の重量物の負荷を平衡させ、一定の空間範囲内で、負荷がその他の外力を借りずに自由懸架を実現する装置である。現在、この装置は、病院において、無影灯、監視ディスプレイなどの機器システムに多く応用されている。サスペンションシステムとして、病院装置の応用環境において、平衡アームシステムにおける機能スプリング部件は、許容される設計負荷重量内で、比較的高い信頼性を有する。しかしながら、医療機器設備の検査標準の要求のために、機械的位置制限方式を必要とし、スプリングの失効(機械スプリングの疲労、スプリングの切断、ガススプリングの失効等)による負荷の落下リスクに対応する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願は、負荷の落下を防止できる機械的位置制限機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願は、機械的位置制限機構を提供し、当該機械的位置制限機構は、回転台と、スプリングアームと、載物部と、補強アームとを含み、
前記スプリングアームの第1端は、前記回転台に接続され、
前記載物部は、物を載置するために用いられ、且つ前記スプリングアームの第2端は、前記載物部に接続され、
前記補強アームの第1端が前記回転台に接続され、前記補強アームの第2端が前記載物部に接続されることにより、前記スプリングアーム、前記回転台、前記補強アーム及び前記載物部は、四節リンク機構を構成し、
前記スプリングアームと前記補強アームの接触により、前記スプリングアームと前記補強アームの位置制限が図られ、且つ位置制限の高さの変更は、前記スプリングアームの寸法及び/又は前記補強アームの寸法を調整することによって図られる。
【0006】
さらに、前記スプリングアームの第1端は、第1回転軸を介して前記回転台に接続され、前記スプリングアームの第2端は、第2回転軸を介して前記載物部に接続され、
前記補強アームの第1端は、第3回転軸を介して前記回転台に接続され、前記補強アームの第2端は、第4回転軸を介して前記載物部に接続されている。
【0007】
さらに、前記補強アームにおける前記スプリングアームに接触するための箇所と前記第4回転軸の軸心との距離L3と、前記スプリングアームの半径Rとの関係は、以下の通りであり、
【数1】
【0008】
ただし、L1は、前記第1回転軸と前記第3回転軸との軸心距離であり、L4は、前記第3回転軸と前記第4回転軸との軸心距離であり、hは、前記補強アームにおける前記スプリングアームに接触するための箇所と前記スプリングアームの外壁との間に形成された隙間であり、Hは、載物部が降下する距離である。
【0009】
さらに、前記スプリングアームは、円柱状構造に設けられ、前記補強アームは、溝状構造に設けられ、前記溝状構造の開口は、前記スプリングアームに向かい、前記溝状構造の内部には、支持具が設けられ、前記支持具は、前記溝状構造の高さ方向に溝状構造の底部から突起するとともに、補強アームの長さ方向に延在し、且つ前記支持具の頂部は、前記スプリングアームとの当接に用いられる。
【0010】
さらに、前記補強アームのアーム長さ方向に沿って、前記補強アームの溝状構造は、前記溝状構造の両端に設けられた端板を含み、且つ前記端板は、いずれも前記溝状構造の側壁に接続され、
前記端板の前記スプリングアームに向かう側は、曲面に形成され、且つ前記曲面は、前記スプリングアームの断面形状に合致する。
【0011】
さらに、前記スプリングアームは、円柱状構造に設けられ、前記補強アームの前記スプリングアームに近接する面は、弧面であり、前記弧面は、前記円柱状面と少なくとも部分的にマッチングし、前記弧面は、前記スプリングアームとの当接に用いられ、前記補強アームは、中空構造又は中実構造に設けられる。
【0012】
さらに、前記スプリングアームは、円柱状構造に設けられ、前記補強アームの前記スプリングアームに近接する面は、平面であり、前記平面は、前記スプリングアームとの当接に用いられる。
【0013】
さらに、前記スプリングアームは、その第1位置制限部を介して前記補強アームに接触し、前記補強アームは、その第2位置制限部を介して前記スプリングアームに接触し、前記第1位置制限部は、前記第2位置制限部に当接することによって、前記スプリングアームを位置制限する。
【0014】
さらに、前記スプリングアームは、ロッド体を含み、前記ロッド体内には、スプリングが設けられ、前記スプリングは、一端が前記ロッド体に接続され、他端が前記回転台に接続され、且つ前記スプリングが常に引張状態にされる。
【0015】
さらに、前記第1リンクは、一端が前記スプリングアームに固定接続され、他端が前記回転台にヒンジ接続され、
前記第2リンクは、一端が前記スプリングアームに固定接続され、他端が前記載物部にヒンジ接続されている。
【発明の効果】
【0016】
本願に係る発明は、以下の有益な効果を奏することができる。
本願の提供する機械的位置制限機構は、回転台、スプリングアーム、載物部及び補強アームを含み、また、スプリングアーム、回転台、補強アーム及び載物部は、四節リンク機構を構成し、スプリングアームの回動により、載物部を上下移動させ、スプリングアームの弾性材が失効した場合、スプリングアームと補強アームとの接触により、位置制限を行うことになる。スプリングアームと補強アームが載物部を下向きに移動駆動するときに、スプリングアームが補強アームに当接した後、四節リンク機構は、それ以上回動できなくなり、それにより、機械的位置制限を図れ、載物部の落下を防止することができ、且つ余分な部品を追加する必要がなく、スプリングアームの寸法及び/又は補強アームの寸法を調整するだけで、異なる位置制限高さを図ることができ、使用が便利であり、且構造が簡単である。
【0017】
なお、以上の一般的な説明及び以下の詳細な説明は例示的なものであり、本願を制限するものではない
【図面の簡単な説明】
【0018】
ここでの図面は、明細書に組み込まれ且つ明細書の一部を構成し、本願に適合する実施例を示し、且つ明細書と共に本願の原理を説明するために用いられる。
図1】本願の実施例に係る機械的位置制限機構の構成模式図である。
図2】本願の実施例に係る機械的位置制限機構の正面図である。
図3】本願の一実施例の図2におけるA-Aに基づく断面図である。
図4】本願の別の実施例の図2におけるA-Aに基づく断面図である。
図5】本願の他の実施例の図2におけるA-Aに基づく断面図である。
図6】本願のさらに他の実施例の図2におけるA-Aに基づく断面図である。
図7】本願の実施例に係る機械的位置制限機構の局所断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願の技術的解決手段をよりよく理解するために、以下は図面を参照して本願の実施例を詳細に説明する。
【0020】
明らかなように、説明される実施例は、本願の一部の実施例だけである。本願の実施例に基づき、当業者が創造的な労働をしない前提で得られた全ての他の実施例は、いずれも本願の保護範囲に属する。
【0021】
具体的な実施例において、以下は、具体的な実施例により図面を参照しながら本願をさらに詳細に説明する。
【0022】
図1図3及び図7に示すように、本願に係る実施例は、機械的位置制限機構を提供し、当該機械的位置制限機構は、回転台2、スプリングアーム3、載物部4及び補強アーム5を含み、また、スプリングアーム3、回転台2、補強アーム5及び載物部4は、四節リンク機構を構成し、且つ四節リンク機構における各部材の接続は、回動可能な接続であり、スプリングアーム3の回動により、載物部4を上下移動させ、スプリングアーム3の弾性材が失効した場合、スプリングアーム3と補強アーム5との接触により、位置制限を行う。スプリングアーム3と補強アーム5が載物部4を駆動して下へ移動させる際に、スプリングアーム3が補強アーム5に当接すると、四節リンク機構がそれ以上回動できなくなり、それにより機械的位置制限を実現し、載物部の落下を防止することができ、且つ余分な部品を追加する必要がなく、スプリングアーム3の寸法及び/又は補強アーム5の寸法を調整するだけで、異なる位置制限高さを実現でき、使用が便利であり、且つ構造が簡単である。なお、機械的位置制限機構は、水平アーム1をさらに含み、水平アーム1は、機械装置に接続され、回転台2は、水平アーム1に取り付けられ、水平アーム1は、回転台2が移動するように駆動し、かつ回転台2を支持することができる。
【0023】
なお、スプリングアーム3の寸法及び/又は補強アーム5の寸法は、具体的には、形状及び形状寸法を含み、且つスプリングアーム3及び/又は補強アーム5が採用する異なる構成によって異なる。具体的には、スプリングアーム3におけるアーム長さ方向に垂直な断面が矩形である場合、スプリングアーム3の寸法は、スプリングアーム3の当該断面の長さ、幅又は対角線などであってもよく、また、例えばスプリングアーム3におけるアーム長さ方向に垂直な断面が楕円である場合、スプリングアーム3の寸法は、スプリングアーム3の当該断面の長軸又は短軸であってもよく、或いは、補強アーム5が溝状構造である場合、補強アーム5の寸法は、溝状の口径又は溝状の溝深さなどであってもよい。
【0024】
具体的には、スプリングアーム3の第1端は、第1回転軸31を介して回転台2に接続され、スプリングアーム3の第2端は、第2回転軸32を介して載物部4に接続され、それによりスプリングアーム3の両端は、それぞれ回転台2と載物部4にヒンジ接続され、補強アーム5の第1端は、第3回転軸51を介して回転台2に接続され、補強アーム5の第2端は、第4回転軸52を介して載物部4に接続され、それにより補強アーム5の両端は、それぞれ回転台2と載物部4にヒンジ接続され、さらにスプリングアーム3、回転台2、補強アーム5及び載物部4は、四節リンク機構を構成し、且つ四節リンク機構における各部材の接続は、回動可能な接続であり、スプリングアーム3及び補強アーム5の回動が容易となり、それにより、載物部4が上下移動するように駆動する。
【0025】
なお、本願の好ましい実施例では、スプリングアーム3は、円柱構成であり、スプリングアーム3の半径又は補強アーム5の高さを調整することにより、異なる位置制限高さを実現する。本願の他の実施例では、スプリングアーム3は、円筒構成であり、スプリングアーム3の外径又は補強アーム5の高さを調整することにより、異なる位置制限高さを実現する。スプリングアーム3の寸法及び/又は補強アーム5の寸法を調整することにより、異なる位置制限高さを実現し、構造が簡単であり、使用が便利であるメリットを有する。
【0026】
なお、スプリングアーム3の長さが変更しない場合、スプリングアーム3が下へ揺動することに伴い、スプリングアーム3が補強アーム5に接触するまで、スプリングアーム3と補強アーム5との間の距離を徐々に縮小することができる。スプリングアーム3が補強アーム5に当接すると、四節リンク機構は、それ以上回動できなくなるため、スプリングアーム3と補強アーム5との相互作用によって、スプリングアーム3と補強アーム5の回動を停止させることができ、載物部4も動きを停止し、それにより位置制限の役割を果たす。
【0027】
具体的な実施形態では、図2及び3に示すように、補強アーム5におけるスプリングアーム3に接触するための箇所と第4回転軸52の軸心との距離L3と、スプリングアーム3の半径Rとの関係は、以下の通りである。
【数1】
【0028】
ただし、L1は、第1回転軸31と第3回転軸51との軸心距離であり、L4は、第3回転軸51と第4回転軸52との軸心距離であり、hは、補強アーム5におけるスプリングアーム3に接触するための箇所とスプリングアーム3の外壁との間に形成された隙間であり、Hは、載物部4が降下する距離である。
【0029】
したがって、式からわかるように、補強アーム5におけるスプリングアーム3に接触するための箇所とスプリングアーム3の外壁との間に形成された隙間を調整すれば、異なる位置制限高さの要求を実現することができる。また、hについて、異なる実施例では、補強アーム5におけるスプリングアーム3に接触するための箇所が変わるため、実際の状況に応じて、両者の具体的な構成が異なり、hも異なる。本願の実施例では、hは、いずれも例示的な説明であり、本願におけるhは、スプリングアーム3の外面と補強アーム5の上面との間の最小距離であってもよく、スプリングアーム3(円柱である場合)の断面の径方向に沿った、スプリングアーム3の外面と補強アーム5の上面との間の距離であってもよく、スプリングアーム3の外面と補強アーム5の側壁の頂部との間の距離であってもよく、あるいは両者の他の接触箇所の間の距離などであってもよく、hを調整して位置制限に対する調整を実現できるものであればよい。
【0030】
なお、載物部4の降下する最大距離を設定する必要がある場合、まず載物部4を設定位置に降下させ(即ち、載物部4を最低の位置まで降下させる)、そして、第3回転軸51と第4回転軸52との軸心距離L4、及び載物部4の降下した距離Hを測定し、式sin(a)=H/L4により、aの角度を算出することができる。第1回転軸31と第3回転軸51との軸心距離も測定できるため、そして、式L2=L1*cos(a)によりL2の長さを算出し、L2は、補強アーム5とスプリングアーム3との軸心距離である。補強アーム5におけるスプリングアーム3に接触するための箇所とスプリングアーム3の外壁との間に形成された隙間hも測定できるため、式h=L2-L3-Rにより、補強アーム5のスプリングアーム3に接触するための箇所と第4回転軸52の軸心との距離L3と、スプリングアーム3の半径Rとの関係を得ることができる。L3及び/又はRを調整することにより、異なる位置制限高さの要求を実現することができる。
【0031】
具体的な実施形態では、図3に示すように、スプリングアーム3における補強アーム5に接触するための箇所は、第1位置制限部33であり、補強アーム5におけるスプリングアーム3に接触するための箇所は、第2位置制限部53であり、第1位置制限部33が第2位置制限部53に当接することにより、スプリングアーム3の弾性材が失効した場合、スプリングアーム3が補強アーム5に当接することによって、四節リンク機構は、それ以上回動できなくなるため、スプリングアーム3と補強アーム5との相互作用により、スプリングアーム3と補強アーム5の回動を停止させることができ、載物部4も動きを停止し、それにより、載物部4又は載物部4に取り付けられた重量物の落下を回避することができる。
【0032】
1つの具体的な実施形態では、図3に示すように、スプリングアーム3は、円柱状構造に設けられ、補強アーム5は、溝状構造に設けられ、溝状構造の開口は、スプリングアーム3に向かい、溝状構造の内部には、支持具54が設けられ、支持具54は、溝状構造の高さ方向に溝状構造の底部から突起するとともに、補強アーム5のアーム長さ方向に延在し、且つ支持具54の頂部は、スプリングアーム3との当接に用いられる。支持具54と溝状構造は、「E」型構造を組み合わせ、支持具54の設置により、側壁がスプリングアーム3の補強アーム5に対する鉛直方向における圧力を分担することに寄与し、両側壁の受ける正圧力を減少させ、それにより、補強アーム構成に対して保護の効果を果たし、補強アーム5の受力上限を高め、さらに位置制限の信頼性を向上させる。なお、支持具54の頂部は、第2位置制限部53とすることができ、第1位置制限部33が第2位置制限部53に当接すると、第1位置制限部33と第2位置制限部53との相互作用により、スプリングアーム3と補強アーム5の回動を停止させることができ、スプリングアーム3が下向きに揺動し続けることを制限することができる。
【0033】
なお、溝状構造の長さ方向に沿って、溝状構造が有する両側壁は、スプリングアーム3との当接のために、弧状合わせ部を形成し、この場合、両側壁の頂部は、スプリングアーム3の外壁に合わせるために、斜面又は弧面などであってもよい。溝状構造の幅方向に沿って、溝状構造が有する両端部の側壁の合わせ部は、スプリングアーム3と径方向に貼り合わせることができ、且つ高さが溝状構造の長さ方向に沿って有する両側壁の高さよりも低い。
【0034】
好ましくは、補強アーム5の荷重を受ける能力を向上させるために、補強アーム5のアーム長さ方向に沿って、溝状構造は、補強アーム5の両端に設けられた2つの端板をさらに含んでもよく、且つ2つの端板は、いずれも溝状構造の両側壁に接続され、それにより、溝状構造はより強固になる。より好ましくは、2つの端板のスプリングアーム3に向かう側は曲面に形成され、且つ曲面は、スプリングアーム3の断面形状に合致することができ、それにより、されにスプリングアーム3が補強アーム5に接触してから生じる相対的な動きを制限し、位置制限の信頼性を向上させる。なお、本願の他の実施例では、溝状構造内には、さらに複数の支持具(図示せず)を設けることにより、補強アーム5の信頼性を向上させることができる。
【0035】
他の具体的な実施形態では、図4及び図5に示すように、スプリングアーム3は、円柱状構造に設けられ、補強アーム5のスプリングアーム3に近接する面は、弧面であり、弧面は、円柱状面に少なくとも部分的にマッチングし、弧面は、スプリングアーム3との当接に用いられる。弧面は、第2位置制限部53とすることができ、弧面にマッチングする円柱状面は、第1位置制限部33とすることができ、第1位置制限部33と第2位置制限部53は、面接触により、両側壁の受ける力を分散させることができ、両側壁の受ける正圧力を減少させ、それにより、補強アーム構成に対して保護の効果を果たすことができ、さらに、両者が接触した後、第1位置制限部33と第2位置制限部53との相互作用によって、スプリングアーム3と補強アーム5の回動を停止させることができ、スプリングアーム3が下向きに揺動し続けることを阻止することができる。
【0036】
なお、図5に示すように、補強アーム5は、中空構造(即ち、補強アーム5可は、溝体ではなく中空の筒状に類似する)に設けられてもよく、補強アーム5のスプリングアーム3に近接する側に完全な弧状の当接板が形成され、弧状の当接板の弧度は、スプリングアーム3にマッチングすることができる。
【0037】
あるいは、図4に示すように、補強アーム5、中実構造にも設けられてもよく、補強アーム5のスプリングアーム3に近接する側は、弧状の凹部に形成され、凹部の表面は、スプリングアーム3に当接することができる。
【0038】
本願の別の実施例では、図6に示すように、スプリングアーム3は、円柱状構造に設けられ、補強アーム5におけるスプリングアーム3に接触するための箇所は平面であり、且つ位置制限の場合、平面は、スプリングアーム3との当接に用いられる。本実施例では、平面は、第2位置制限部53とされ、第1位置制限部33が第2位置制限部53に当接すると、第1位置制限部33と第2位置制限部53との相互作用によってスプリングアーム3と補強アーム5の回動を停止させることができ、スプリングアーム3が下向きに回動し続けることを制限することができる。
【0039】
本実施例では、図2及び図7に示すように、スプリングアーム3の第1端は、第1リンク34を介して回転台2に接続され、スプリングアーム3の第2端は、第2リンク35を介して載物部4に接続される。スプリングアーム3の取り付け過程において、第1リンク34及び第2リンク35だけでスプリングアーム3を取り付けることができ、取付は非常に便利である。
【0040】
具体的には、図2に示すように、第1リンク34は、一端がスプリングアーム3に固定接続され、他端が回転台2にヒンジ接続され、それにより、スプリングアーム3は、回転台2周りに回動することができる。第2リンク35は、一端がスプリングアーム3に固定接続され、他端が載物部4にヒンジ接続され、それにより、スプリングアーム3は、載物部4に回動可能に接続され、スプリングアーム3が回動するとき、載物部4が上下移動することを保証することができる。さらに、図7に示すように、スプリングアーム3は、ロッド体36を含み、ロッド体36には、スプリング37(即ち、スプリングアーム3の弾性材)が設けられ、スプリング37は、一端がロッド体36に接続され、他端が回転台2に接続され、それにより、スプリング37を引張状態にし、さらにスプリング37が収縮力を有するようにする。この収縮力は、鉛直方向及び水平方向における2つの分力に分けることができる。載物部4に重量物が設置されていない場合、スプリング37の収縮力の鉛直方向における分力により、スプリングアーム3は、第1リンク34が回転台2にヒンジ接続された位置周りに上向きに回動し又は上向きに回動する傾向がある。載物部4に重量物が設置されている場合、重量物の重力がスプリングアーム3の鉛直方向における分力よりも大きいとき、スプリングアーム3は、ヒンジ接続の位置周りに下へ回動し、スプリングアーム3が徐々に下へ回動することに伴い、スプリングアーム3の収縮力は徐々に大きくなるとともに、スプリングアーム3と鉛直方向との角度も徐々に大きくなり、さらにスプリング37の収縮力の鉛直方向における分力も徐々に大きくなり、この鉛直方向における分力が重量物の重力と同じになると、スプリングアーム3は回動しなくなり、機構は平衡状態にある。
【0041】
実際の作動では、スプリングアーム3の鉛直方向における分力は、載物部4に設けられた重量物の重力を平衡させるためであり、外部から小さい力を与えると、載物部4を駆動して移動させることができる。載物部4は、位置が外部に加えられる力によって制御され、作動する状態において、載物部4は、駆動力の作用によって作動範囲内で移動する。作動中に、スプリング37が失効すると、スプリングアーム3は、下へ移動し、スプリングアーム3の第1位置制限部33が補強アーム5の第2位置制限部53に当接したら、第1位置制限部33と第2位置制限部53との相互制限により、スプリングアーム3と補強アーム5の回動を停止させることができ、スプリングアーム3が引き続き下へ回動することを制限することができる。したがって、スプリング37が失効すると、機械的位置制限機構は、スプリングアーム3と補強アーム5との相互作用により、載物部4に対して位置制限を行って、載物部4及び重量物の落下を回避することができる。
【0042】
なお、スプリング37の一端は、第1接続部材を介して回転台2に接続され、スプリング37の他端は、第2接続部材を介してロッド体36の内壁に接続され、且つ第1接続部材の一端は、スプリング37に固定接続され、第1接続部材の他端は、回転台2にヒンジ接続され、それにより、スプリング37は、回転台2周りに回動することができ、第2接続部材の一端、スプリング37に固定接続され、第2接続部材の他端は、ロッド体36の内壁に固定接続され、それにより、スプリング37の一端の固定を保証することができ、スプリングアーム3が回動するときに、スプリング37は、スプリングアーム3に伴って回動することができ、この際、スプリング37は、引っ張られることが可能である。
【0043】
あるいは、スプリング37の一端は、第1接続部材を介して回転台2に接続され、スプリング37の他端は、第2接続部材に介して載物部4に接続され、且つ第1接続部材の一端は、スプリング37を介して固定接続され、第1接続部材の他端は、回転台2にヒンジ接続され、それにより、スプリング37は、回転台2周りに回動することができ、第2接続部材の一端は、スプリング37に固定接続され、第2接続部材の他端は、載物部4にヒンジ接続され、それにより、スプリング37は、載物部4周りに回動することができ、スプリングアーム3が回動するときに、スプリング37は、スプリングアーム3に伴って回動することができ、この際、スプリング37は、引っ張られることが可能である。
【0044】
なお、本特許出願書類の一部には、著作権保護されたコンテンツが含まれている。著作権者は、特許庁の特許書類又は記録された特許書類の内容についてコピーを作成する以外は、著作権を保持している。
【符号の説明】
【0045】
1…水平アーム
2…回転台
3…スプリングアーム
31…第1回転軸
32…第2回転軸
33…第1位置制限部
34…第1リンク
35…第2リンク
36…ロッド体
37…スプリング
4…載物部
5…補強アーム
51…第3回転軸
52…第4回転軸
53…第2位置制限部
54…支持具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7