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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】香味充填材および香味吸引器
(51)【国際特許分類】
   A24B 15/16 20200101AFI20240930BHJP
   A24F 40/42 20200101ALI20240930BHJP
【FI】
A24B15/16
A24F40/42
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022581173
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2021036117
(87)【国際公開番号】W WO2022172501
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2021020982
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴泉 隆太郎
(72)【発明者】
【氏名】福村 雄一郎
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-521962(JP,A)
【文献】特開2013-189604(JP,A)
【文献】特開2001-323095(JP,A)
【文献】特開2008-156791(JP,A)
【文献】特表2019-528716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 15/16
A24F 40/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
40%以上の空隙率を有する多孔性セルロース粒子と、
前記多孔性セルロース粒子の外表面に担持され、香味成分含有粒子を含む香味層と
を含み、前記香味成分含有粒子が、前記多孔性セルロース粒子の平均孔径より大きい平均粒径を有する、香味吸引器用の香味充填材。
【請求項2】
前記香味成分含有粒子がたばこ粒子である請求項1に記載の香味充填材。
【請求項3】
前記香味成分含有粒子が香料粒子である請求項1に記載の香味充填材。
【請求項4】
前記多孔性セルロース粒子が50%以上の空隙率を有する請求項1~3の何れか1項に記載の香味充填材。
【請求項5】
前記多孔性セルロース粒子が、前記多孔性セルロース粒子の中心部から前記多孔性セルロース粒子の外表面に向かって放射状に伸びる複数の孔を有する請求項1~4の何れか1項に記載の香味充填材。
【請求項6】
前記香味層が、前記多孔性セルロース粒子の中心部から前記多孔性セルロース粒子の外表面に向かうにつれて、より多くの量で存在する請求項1~の何れか1項に記載の香味充填材。
【請求項7】
前記多孔性セルロース粒子が300~2000μmの平均粒径を有する請求項1~の何れか1項に記載の香味充填材。
【請求項8】
前記多孔性セルロース粒子が0.3~1000μmの平均孔径を有する請求項1~の何れか1項に記載の香味充填材。
【請求項9】
前記香味成分含有粒子が0.3~1000μmの平均粒径を有する請求項1~の何れか1項に記載の香味充填材。
【請求項10】
前記香味層の上にバリア層を更に含む請求項1~の何れか1項に記載の香味充填材。
【請求項11】
前記バリア層がバインダーを含むが香味寄与物質を含まない請求項10に記載の香味充填材。
【請求項12】
前記バリア層が、前記香味層に含まれる前記香味成分含有粒子とは異なる香味を提供する香味寄与物質を含む請求項10に記載の香味充填材。
【請求項13】
前記香味成分含有粒子が第1たばこ粒子であり、前記香味寄与物質が、前記第1たばこ粒子とは異なる第2たばこ粒子、または香料粒子である請求項12に記載の香味充填材。
【請求項14】
前記香味成分含有粒子が第1香料粒子であり、前記香味寄与物質が、たばこ粒子、または前記第1香料粒子とは異なる第2香料粒子である請求項12に記載の香味充填材。
【請求項15】
請求項1~14の何れか1項に記載の香味充填材を含む香味吸引器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香味充填材および香味吸引器に関する。
【背景技術】
【0002】
たばこ製品として、たばこ刻などのたばこ充填材を燃焼させることなく加熱することによりたばこ香味をユーザに提供する加熱型香味吸引器が知られている(例えば、特許文献1を参照)。加熱型香味吸引器は、たばこ充填材とエアロゾル源とを含み、加熱によりたばこ充填材の水分およびエアロゾル源から蒸気が発生するとともに、かかる蒸気中にたばこ充填材からたばこ香味成分が移行し、エアロゾル(主流煙)が生成される。ただし、加熱型香味吸引器では、たばこ充填材を燃焼させないため、たばこ充填材からたばこ香味成分が放出されにくいという問題がある。
【0003】
たばこ充填材として、たばこ刻に加えて、たばこ顆粒、シートたばこが知られている。「たばこ刻」は、熟成済たばこ葉(すなわち、たばこ製品にたばこ香味源として組み込まれる葉たばこ)が、所定の大きさに刻まれたものである。「たばこ顆粒」は、熟成済たばこ葉の粉砕物を含む組成物を、顆粒形状に成形して得られるものである。たばこ顆粒は、押出造粒法等の公知の方法で成形することができる。「シートたばこ」は、熟成済たばこ葉の粉砕物を含む組成物を、シート形状に成形して得られるものである。シートたばこは、抄造法、キャスト法、圧延法等の公知の方法で成形することができる。
【0004】
加熱型香味吸引器において、たばこ充填材からたばこ香味成分を効率的に放出するために、たばこ充填材の改良が為されている。例えば、特許文献2は、個々のたばこ充填材の密度を小さくすることにより、たばこ充填材からたばこ香味成分を効率的に放出することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2010/110226
【文献】WO2017/141406
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、香味吸引器で用いられる香味充填材からの香味成分のリリースを向上させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、高い空隙率を有する多孔性セルロース粒子の外表面に、熟成済たばこ葉の粉砕物(以下、たばこ粒子ともいう)を担持させたところ、たばこ粒子からのたばこ香味成分のリリースを向上させることができることを新たに見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、一つの側面によれば、
40%以上の空隙率を有する多孔性セルロース粒子と、
前記多孔性セルロース粒子の外表面に担持され、香味成分含有粒子を含む香味層と
を含む、香味吸引器用の香味充填材が提供される。
【0009】
別の側面によれば、上述の香味充填材を含む香味吸引器が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、香味吸引器で用いられる香味充填材からの香味成分のリリースを向上させることができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】多孔性セルロース粒子の一例を示す断面模式図。
図2】多孔性セルロース粒子の一例を示す電子顕微鏡画像。
図3】香味充填材の一例を示す部分切開図。
図4】加熱型香味吸引器の一例を示す斜視図。
図5図4に示す加熱型香味吸引器を示す分解図。
図6図4に示す加熱型香味吸引器の内部構造を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明を詳説することを目的とし、本発明を限定することを意図していない。
【0013】
<1.香味充填材>
香味充填材は、
40%以上の空隙率を有する多孔性セルロース粒子と、
前記多孔性セルロース粒子の外表面に担持され、香味成分含有粒子を含む香味層と
を含む。香味充填材は、香味吸引器に組み込んで、ユーザに香味を提供することができる。
【0014】
好ましい態様において、香味充填材は、たばこ粒子を含む香味層を備えたたばこ充填材である。すなわち、好ましい態様において、たばこ充填材は、
40%以上の空隙率を有する多孔性セルロース粒子と、
前記多孔性セルロース粒子の外表面に担持され、たばこ粒子を含む香味層と
を含む。
【0015】
(多孔性セルロース粒子)
まず、担体粒子である多孔性セルロース粒子について説明する。多孔性セルロース粒子は、40%以上の空隙率を有する。空隙率は、以下の式により算出される値を指す。
空隙率(%)=(粒子の空隙体積/粒子の見かけ体積)×100
【0016】
「粒子の空隙体積」は、アルキメデス法により得られた空隙体積、および水銀圧入法により測定された細孔径分布測定により得られた平均細孔径をもとに算出された空隙体積のうち、大きい方の体積を指す。アルキメデス法による空隙体積の取得は、JIS R1634:1998に従って行うことができる。水銀圧入法による空隙体積の取得は、JIS R1655:2003に従って行うことができる。
【0017】
「粒子の見かけ体積」は、粒子を球状と捉えた際の粒子の理論体積、すなわち、レーザ回折式粒子径分布測定装置を用いて測定された平均粒子径と等しい直径を有する球の体積を指す。レーザ回折式粒子径分布測定装置を用いた平均粒子径の測定は、JIS Z8825:2013(粒子径解析-レーザ回折・散乱法)に従って行うことができる。
【0018】
多孔性セルロース粒子の空隙率は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上である。多孔性セルロース粒子の空隙率の上限は、例えば95%である。なお、本明細書において「空隙率」は、粒子内空隙率を指す。
【0019】
多孔性セルロース粒子は高い空隙率を有するため、低い嵩密度を有する。具体的には、多孔性セルロース粒子は、例えば0.1~0.6g/mL、好ましくは0.1~0.4g/mL、より好ましくは0.1~0.3g/mLの嵩密度を有する。
【0020】
多孔性セルロース粒子は、セルロースを主成分として含み、多孔質構造を有する粒子である。多孔性セルロース粒子は、木材パルプなどの植物を原料として製造された場合、原料に由来するセルロース以外の成分を含んでいてもよい。あるいは、多孔性セルロース粒子は、粒子の製造過程で、バインダー、香料、たばこ細粉、発泡剤などの微粉末を混ぜ込むことによりセルロース以外の成分を意図的に含んでいてもよい。
【0021】
多孔性セルロース粒子は、公知であり、例えば、酵素を固定化するための担体、イオン交換体の担体、薬剤を担持するための担体、または化粧品添加剤として、利用されている。多孔性セルロース粒子は、例えば、日本国特開平6-157772号公報、日本国特開2001-323095号公報などに開示される。
【0022】
多孔性セルロース粒子の形状は、特に限定されないが、好ましくは球状である。球状は、真球状だけでなく、楕円球状などの変形した球状も含む。
【0023】
多孔性セルロース粒子は、例えば300~2000μm、好ましくは300~850μmの平均粒径を有する。多孔性セルロース粒子の「平均粒径」は、レーザ回折・散乱法により求められるものであり、レーザ回折式粒子径分布測定装置(例えば、堀場製作所 LA-950)を用いて測定される値を指す。
【0024】
多孔性セルロース粒子は、外表面に開孔部を有し、表面開孔部の最大径(以下、孔径ともいう)は、例えば、多孔性セルロース粒子の粒径の1/2~1/1000、好ましくは、多孔性セルロース粒子の粒径の1/5~1/50である。多孔性セルロース粒子は、例えば0.3~1000μm、好ましくは0.3~200μm、より好ましくは6~40μmの平均孔径を有する。平均孔径は、多孔性セルロース粒子の電子顕微鏡写真から無作為に10個の粒子を選び、各粒子から代表的な1つの表面開孔部を選び、顕微鏡画像に基づいて、粒径に対する表面開孔部の最大径(すなわち孔径)の比を算出し、この比に粒径の値を掛けて各粒子の孔径の値を算出し、10個の粒子の平均値を算出することにより得ることができる。
【0025】
好ましい態様において、多孔性セルロース粒子は、多孔性セルロース粒子の中心部から多孔性セルロース粒子の外表面に向かって放射状に伸びる複数の孔を有する。かかる多孔性セルロース粒子の一例を図1および図2に示す。図1は、断面模式図であり、図2は、電子顕微鏡写真である。図1は多孔性セルロース粒子1を示し、多孔性セルロース粒子1は複数の孔1aを有する。本明細書では、孔1aの表面を除く多孔性セルロース粒子の表面を、「多孔性セルロース粒子の外表面1b」と呼ぶ。図1および2において、複数の孔1aは、多孔性セルロース粒子の中心部から多孔性セルロース粒子の外表面1bに向かって放射状に伸びる。
【0026】
多孔性セルロース粒子は、公知技術に従って調製されてもよいし、市販のものを使用してもよい。市販の多孔性セルロース粒子として、例えば、レンゴー株式会社からビスコパールという商品名で販売されている多孔性セルロース粒子が挙げられる。
【0027】
(香味層)
香味層は、上述の多孔性セルロース粒子の外表面に担持され、上述の多孔性セルロース粒子とともに香味充填材を形成する。香味充填材の一例を模式的に図3に示す。図3は、香味充填材10を示し、多孔性セルロース粒子1の外表面に香味層2が形成されている。図3において、香味層2は、多孔性セルロース粒子1の外表面に微粒子の層として存在する。図3において、香味層2は、多孔性セルロース粒子の外表面に微粒子の層として存在するが、多孔性セルロース粒子の外表面に担持されていればこの形態に限定されない。
【0028】
図3に示される香味層2は、例えば、香味成分含有粒子とバインダーを含む液体香料組成物を多孔性セルロース粒子1にスプレードライすることにより形成することができる。香味層2は、多孔性セルロース粒子1の外表面を完全に被覆するように存在していてもよいし、多孔性セルロース粒子1の外表面を部分的に被覆するように存在していてもよい。
【0029】
図3において、香味層2は、多孔性セルロース粒子の外表面にのみ存在しているが、香味層の一部が多孔性セルロース粒子の孔に侵入して存在していてもよい。香味層の多くは、多孔性セルロース粒子の孔に侵入することなく多孔性セルロース粒子の外表面に存在することが好ましい。香味層が、多孔性セルロース粒子の孔に侵入して存在する場合には、多孔性セルロース粒子の外表面の近傍に存在することが好ましい。すなわち、好ましい態様において、香味層は、多孔性セルロース粒子の中心部から多孔性セルロース粒子の外表面に向かうにつれて、より多くの量で存在する。これにより、香味層に含まれる香味成分含有粒子から、香味成分を効率良く放出することができる。
【0030】
香味層を、多孔性セルロース粒子の外表面や外表面の近傍に存在させるためには、香味層に含有される香味成分含有粒子が、多孔性セルロース粒子の平均孔径より大きい平均粒径を有することが好ましい。香味成分含有粒子は、例えば0.3~1000μm、好ましくは50~200μm、より好ましくは60~80μmの平均粒径を有する。香味成分含有粒子の平均粒径は、レーザ回折・散乱法により求められるものであり、レーザ回折式粒子径分布測定装置(例えば、堀場製作所、LA-950)を用いて測定される値を指す。
【0031】
香料成分含有粒子は、香味成分を含有する任意の粒子である。香味成分含有粒子は、例えば、たばこ粒子である。あるいは、香味成分含有粒子は、例えば、香料粒子である。香料成分含有粒子は、1種類の粒子であってもよいし、異なる香味を提供する複数種類の粒子であってもよい。香料成分含有粒子は、たばこ粒子と香料粒子の組み合わせであってもよいし、複数種類のたばこ粒子や複数種類の香料粒子であってもよい。
【0032】
「たばこ粒子」は、熟成済たばこ葉(すなわち、たばこ製品にたばこ香味源として組み込まれる準備が整った葉たばこ)の粉砕物である。「熟成済たばこ葉」は、栽培、収穫されたたばこ植物の葉に、農家での乾燥工程、その後の原料工場での1年ないし数年の長期熟成工程、およびその後の製造工場でのブレンドおよび裁刻などの種々の加工処理を施すことにより得られるたばこ葉を指す。粉砕は、公知の粉砕機を用いて行うことができ、乾式粉砕でも湿式粉砕でもよい。上述のとおり、たばこ粒子は、例えば0.3~1000μm、好ましくは50~200μm、より好ましくは60~80μmの平均粒径を有することができる。
【0033】
「香料粒子」は、香料成分を含有する任意の粉体である。香料粒子に、たばこ粒子は包含されない。香料粒子は、天然香料であってもよいし、合成香料であってもよい。香料粒子は、たばこ製品(とりわけ香味吸引器)において一般に使用される任意の香料粒子を使用することができる。香料粒子は、例えば、ココアであってもよいし、香料分散液を噴霧乾燥させて粉体化することにより得られた粉体であってもよい。あるいは、香料粒子は、多孔質の微粒炭酸カルシウム(例えば、白石カルシウム株式会社からのポアカル-N)または多孔質の微粒活性炭(例えば、株式会社クラレからのクラレコール)に香料を吸着させることにより得られた粉体であってもよい。上述のとおり、香料粒子は、例えば0.3~1000μm、好ましくは50~200μm、より好ましくは60~80μmの平均粒径を有することができる。
【0034】
(バリア層)
香味充填材は、上述の香味層の上にバリア層を更に含んでいてもよい。バリア層は、例えば、バリア層の構成成分を含む液体香料組成物を、多孔性セルロース粒子の上に形成された香味層の上にスプレードライすることにより形成することができる。バリア層は、香味層を完全に被覆するように存在していてもよいし、香味層を部分的に被覆するように存在していてもよい。
【0035】
バリア層は、香味層に含まれる香味成分含有粒子から香味成分がリリースされるタイミングをコントロールすることができる。これにより、バリア層は、香味吸引器のパフ回数を重ねても、香味層に含まれる香味成分のリリース量を低下させないようにすることができる。
【0036】
第1の態様において、バリア層は、バインダーを含むが香味寄与物質を含んでいない。バインダーとしては、例えばヒドロキシプロピルセルロース(HPC)が挙げられる。この態様では、バリア層は、香味寄与物質を含まない。香味寄与物質とは、香味に寄与する任意の物質を指し、上述の「たばこ粒子」や上述の「香料粒子」などの粒子状物質に加えて、任意の香味成分も含む。この態様では、バリア層が、香味に寄与することなく、香味層に含まれる香味成分含有粒子から香味成分がリリースされるのを遅延させることができる。これにより、バリア層は、香味吸引器のパフ回数を重ねても、香味層に含まれる香味成分のリリース量を低下させないようにすることができる。
【0037】
第2の態様において、バリア層は、香味層に含まれる香味成分含有粒子とは異なる香味を提供する香味寄与物質を含む。この態様では、バリア層は、香味寄与物質を含み、必要に応じてバインダーなどの添加剤を含んでいてもよい。香味寄与物質とは、香味に寄与する任意の物質を指し、上述の「たばこ粒子」や上述の「香料粒子」などの粒子状物質に加えて、任意の香味成分も含む。バインダーとしては、例えばヒドロキシプロピルセルロース(HPC)が挙げられる。この態様では、バリア層が、香味層に含まれる香味成分含有粒子とは異なる香味をパフ期間の比較的初期の段階に提供するとともに、香味層が、パフ期間の比較的後期の段階に、香味成分含有粒子から香味成分をリリースすることができる。これにより、バリア層は、香味吸引器のパフ回数を重ねても、香味層に含まれる香味成分のリリース量を低下させないようにすることができる。
【0038】
第2の態様において、香味層に含まれる香味成分含有粒子は、例えば、第1たばこ粒子であり、バリア層に含まれる香味寄与物質は、例えば、第1たばこ粒子とは異なる第2たばこ粒子、または香料粒子である。ここで「たばこ粒子」および「香料粒子」は、上記説明を参照することができる。第2たばこ粒子は、第1たばこ粒子とは異なるたばこ香味を提供するたばこ粒子である。第2たばこ粒子は、例えば、第1たばこ粒子とは異なる葉たばこの組み合わせ(ブレンド)から得られたたばこ粒子を使用することができる。
【0039】
あるいは、第2の態様において、香味層に含まれる香味成分含有粒子は、例えば、第1香料粒子であり、バリア層に含まれる香味寄与物質は、例えば、たばこ粒子、または第1香料粒子とは異なる第2香料粒子である。ここで「たばこ粒子」および「香料粒子」は、上記説明を参照することができる。第2香料粒子は、第1香料粒子とは異なる香味を提供する香料粒子である。第1香料粒子として、例えばメンソール系香料粒子(すなわち、メンソール粒子、またはハッカ臭を有するメンソール類似体の粒子)、第2香料粒子として、例えばノンメンソール系香料粒子(すなわち、メンソール系香料粒子以外の香料粒子)を使用することができる。
【0040】
バリア層を設けた場合、バリア層に含まれる香味寄与物質と、香味層に含まれる香味成分含有粒子との組み合わせにより、ユーザが味わう香味に多様性を生み出すことができる。
【0041】
(香味充填材の作製方法)
香味充填材は、例えば、以下の方法により作製することができる。
まず、香味成分含有粒子、水、および必要に応じてバインダーなどの添加物を混合して、液体香料組成物を調製する。多孔性セルロース粒子を流動層造粒装置に投入し、装置内に下部から熱風を送り、多孔性セルロース粒子の流動層を形成する。この流動層に液体香料組成物を噴霧し、多孔性セルロース粒子の表面に液体香料組成物の液滴を付着させる。多孔性セルロース粒子の表面に付着した液体香料組成物の液滴は、熱風により速やかに乾燥され、香味層が多孔性セルロース粒子の上に形成される。
【0042】
あるいは、別の方法として、粉体混合機に、多孔性セルロース粒子、香味成分含有粒子、および必要に応じてバインダーなどの添加剤を投入し、回転と揺動により混合する。これにより、多孔性セルロース粒子の表面に香味成分含有粒子を付着させて、香味層を多孔性セルロース粒子の上に形成する。
【0043】
香味充填材が、バリア層を更に含んでいる場合、香味層が表面に形成された多孔性セルロース粒子を核粒子として用いて、バリア層を、香味層の形成方法と同様の方法に従って形成することができる。
【0044】
このように、香味充填材は、核粒子へのコーティングにより作製可能であるため、簡便な方法で作製することができる。
【0045】
(効果)
本発明の香味充填材は、後述の実施例で実証されるとおり、香味成分のリリースを向上させることができる。この効果は、香味成分含有粒子が、多孔性セルロース粒子の外表面に担持されていることと、多孔性セルロース粒子が高い空隙率を有していることに起因すると考えられる。具体的には、多孔性セルロース粒子の外表面に存在する香味成分含有粒子は、外部の空気と接しているため、香味成分含有粒子から香味成分が外部空間へリリースされ易いと考えられる。また、多孔性セルロース粒子の内部に存在する空隙は、外部空間から粒子内部の空隙に向かって空気の流れを引き起こすことができ、この空気の流れが、香味成分含有粒子から香味成分をリリースする機会を増やし、香味成分のリリースを促進すると考えられる。とりわけ、多孔性セルロース粒子が、その中心部から外表面に向かって放射状に伸びる複数の孔(すなわち空隙)を有している場合、これらの孔が空気の流通路となり、外部空間から粒子内部の空隙に向かって、効率良く空気の流れを引き起こすことができると考えられる。
【0046】
一方、たばこ充填材として公知のたばこ顆粒のように、香味成分含有粒子を顆粒状に押し固めて香味顆粒を作製した場合、かかる香味顆粒は、本発明の香味充填材とは以下の2つの点で異なる。
(1)香味顆粒は、その全体が香味成分含有粒子から構成されるため、多くの香味成分含有粒子は顆粒の内部に存在する。
(2)香味顆粒は、香味成分含有粒子を顆粒状に押し固めて作製されるため、顆粒の内部に、多孔性セルロース粒子ほど多くの空隙を有していない。
【0047】
香味顆粒は、顆粒の内部に存在する多くの香味成分含有粒子が、外部の空気と接していないため、顆粒の内部に存在する香味成分含有粒子から香味成分をリリースさせることはできないと考えられる。また、香味顆粒は、顆粒の内部に、多孔性セルロース粒子ほど多くの空隙を有していないため、多孔性セルロース粒子ほど、外部空間から顆粒内部に向かって空気の流れを引き起こすことはできず、香味顆粒の表面に存在する香味成分含有粒子であっても、香味成分をリリースし難いと考えられる。
【0048】
更に、本発明の香味充填材は、以下の利点を有する。多孔性セルロース粒子の外表面に担持された香味成分含有粒子のすべてが、香味成分のリリースに貢献することができる。また、多孔性セルロース粒子の内部の空隙が、上述のとおり、外部空間から粒子内部の空隙に向かって空気の流れを引き起こし、香味成分含有粒子から香味成分をリリースし易い環境をつくっている。これにより、所望の香味を発現するために必要な香味成分含有粒子の量を減らすことができ、製造コストの削減につなげることができる。また、多孔性セルロース粒子が高い空隙率を有しているため、香味充填材を軽量化することができる。
【0049】
<2.香味吸引器>
上述の香味充填材は、香味吸引器、好ましくは加熱型香味吸引器に組み込むことができる。すなわち、別の側面によれば、上述の香味充填材を含む香味吸引器が提供される。香味吸引器は、香味源を含み、吸引により香味をユーザに提供するデバイスである。好ましい態様によれば、上述の香味充填材を含む加熱型香味吸引器が提供される。加熱型香味吸引器は、香味源を燃焼させることなく加熱することにより香味をユーザに提供する香味吸引器である。
【0050】
本発明の香味吸引器は、本願出願時に公知の香味吸引器に含まれる香味源の全部または一部を本発明の香料充填材と置き換えた以外は、公知の香味吸引器と同じ構成を有することができる。
【0051】
本発明の香味充填材は、通常のたばこ充填材(すなわち、たばこ刻、たばこ顆粒、シートたばこなど)と組み合わせて使用してもよいし、通常のたばこ充填材(すなわち、たばこ刻、たばこ顆粒、シートたばこなど)と併用しないで単独で使用してもよい。本発明の香味充填材は、任意の量で香味吸引器に配合することができる。本発明の香味充填材は、1つの香味吸引器に含まれる全香味源を100質量%とした場合、例えば20~100質量%の量で配合することができる。
【0052】
加熱型香味吸引器は、当該吸引器と別体型の加熱装置により加熱されてもよいし、当該吸引器と一体型の加熱装置により加熱されてもよい。以下に、加熱型香味吸引器の一例を図4~6を参照して説明する。
【0053】
図4は、加熱型香味吸引器の外観の一例を示す斜視図である。図5は、加熱型香味吸引器の一例を示す分解図である。加熱型香味吸引器30(以下、単に香味吸引器30という)は、電子シガレットやネブライザー等であり、使用者の吸引に応じてエアロゾルを生成し、使用者に提供する。なお、使用者が行う1回の連続した吸引を「パフ」と呼ぶものとする。また、香味吸引器30は、生成したエアロゾルに対し、香味等の成分を添加して使用者の口腔内に放出する。
【0054】
図4及び図5に示すように、香味吸引器30は、本体30Aと、エアロゾル源保持部30Bと、添加成分保持部30Cとを備える。本体30Aは、電力を供給すると共に装置全体の動作を制御する。エアロゾル源保持部30Bは、霧化させてエアロゾルを生成するためのエアロゾル源を保持する。添加成分保持部30Cは、たばこ充填材38を保持する。使用者は、添加成分保持部30C側の端部である吸口を咥え、香味等が添加されたエアロゾルを吸引することができる。
【0055】
たばこ充填材38は、本発明の香味充填材を含む。一例として、たばこ充填材38は、たばこ粒子を含む本発明の香味充填材、および必要に応じて通常のたばこ充填材(すなわち、たばこ刻、たばこ顆粒、シートたばこなど)を含むことができる。別の例として、たばこ充填材38は、たばこ粒子を含まず香料粒子を含む本発明の香味充填材、および通常のたばこ充填材(すなわち、たばこ刻、たばこ顆粒、シートたばこなど)を含むことができる。
【0056】
香味吸引器30は、本体30A、エアロゾル源保持部30B及び添加成分保持部30Cを、使用者等が組み立てることによって形成される。本体30A、エアロゾル源保持部30B及び添加成分保持部30Cは、それぞれ径が所定の大きさである円柱状、円錐台状等であり、本体30A、エアロゾル源保持部30B、添加成分保持部30Cの順に結合させることができる。本体30Aとエアロゾル源保持部30Bとは、例えば、それぞれの端部に設けられた雄ねじ部分と雌ねじ部分とが螺合することにより結合される。また、エアロゾル源保持部30Bと添加成分保持部30Cとは、例えば、エアロゾル源保持部30Bの一端に設けられた筒状の部分に、側面にテーパが付けられた添加成分保持部30Cを嵌め込むことにより結合される。また、エアロゾル源保持部30B及び添加成分保持部30Cは、使い捨ての交換部品であってもよい。
【0057】
図6は、香味吸引器30の内部の一例を示す概略図である。本体30Aは、電源31と、制御部32と、吸引センサ33とを備える。制御部32は、電源31及び吸引センサ33とそれぞれ電気的に接続されている。電源31は、二次電池等であり、香味吸引器30が備える電気回路に電力を供給する。制御部32は、マイクロコントローラ(MCU:Micro-Control Unit)等のプロセッサであり、香味吸引器30が備える電気回路の動作を制御する。また、吸引センサ33は、気圧センサや流量センサ等である。使用者が香味吸引器30の吸口から吸引すると、吸引センサ33は、香味吸引器30の内部に生じる負圧や気体の流量に応じた値を出力する。すなわち、制御部32は、吸引センサ33の出力値に基づいて吸引を検知することができる。
【0058】
香味吸引器30のエアロゾル源保持部30Bは、貯留部34と、供給部35と、負荷36と、残量センサ37とを備える。貯留部34は、加熱により霧化する液体状のエアロゾル源を貯留する容器である。なお、エアロゾル源は、例えばグリセリンやプロピレングリコールなどのポリオール系の材料である。なお、エアロゾル源は、さらにニコチン液、水、香料等を含む混合液であってもよい。貯留部34には、このようなエアロゾル源が予め貯留されているものとする。なお、エアロゾル源は貯留部34を必要としない固体であってもよい。
【0059】
供給部35は、例えばガラス繊維のような繊維材料を撚って形成されるウィックを含む。供給部35は、貯留部34と接続される。また、供給部35は負荷36と接続されるか、又は供給部35の少なくとも一部が負荷36の近傍に配置される。エアロゾル源は毛細管現象によりウィックに浸透し、負荷36による加熱によってエアロゾル源を霧化できる部分まで移動する。換言すれば、供給部35は、貯留部34からエアロゾル源を吸い上げ、負荷36又はその近傍へ運ぶ。なお、ガラス繊維に代えて多孔質状のセラミックをウィックに用いてもよい。
【0060】
負荷36は、例えばコイル状のヒータであり、電流が流れることで発熱する。また、例えば負荷36は正温度係数(PTC:Positive Temperature Coefficient)特性を有し、その抵抗値が発熱温度にほぼ正比例する。なお、負荷36は必ずしも正温度係数特性を有している必要はなく、その抵抗値と発熱温度に相関があるものであればよい。一例として、負荷36は負温度係数(NTC:Negative Temperature Coefficient)特性を有していてもよい。なお、負荷36はウィックの外部に巻かれていてもよいし、逆に負荷36の周囲をウィックが覆うような構成であってもよい。負荷36への給電は、制御部32によって制御される。供給部35によって貯留部34から負荷36へエアロゾル源が供給されると、負荷36の熱によりエアロゾル源が蒸発し、エアロゾルが生成される。また、制御部32は、吸引センサ33の出力値に基づいて使用者による吸引動作が検知された場合に、負荷36への給電を行い、エアロゾルを生成させる。また、貯留部34に貯留されたエアロゾル源の残量が十分である場合、負荷36へも十分な量のエアロゾル源が供給され、負荷36における発熱はエアロゾル源に輸送されるため、換言すれば負荷36における発熱はエアロゾル源の昇温及び気化に用いられるため、負荷36の温度は予め設計された所定の温度を超えることはほぼない。一方、貯留部34に貯留されたエアロゾル源が枯渇すると、負荷36へのエアロゾル源の時間当たりの供給量が低下する。その結果、負荷36における発熱はエアロゾル源に輸送されないため、換言すれば負荷36における発熱はエアロゾル源の昇温及び気化に用いられないため、負荷36が過熱し、これに伴い負荷36の抵抗値も上昇する。
【0061】
残量センサ37は、負荷36の温度に基づいて貯留部34に貯留されたエアロゾル源の残量を推定するためのセンシングデータを出力する。例えば、残量センサ37は、負荷36と直列に接続された電流測定用の抵抗器(シャント抵抗)と、抵抗器と並列に接続され、抵抗器の電圧値を測定する測定装置とを含む。なお、抵抗器は、その抵抗値が温度によってほぼ変化しない予め定められた一定の値である。よって、既知の抵抗値と測定された電圧値に基づいて、抵抗器に流れる電流値が求められる。
【0062】
香味吸引器30の添加成分保持部30Cは、内部にたばこ充填材38を保持する。上述のとおり、たばこ充填材38は、本発明の香味充填材を含む。上述のとおり、たばこ充填材38は、本発明の香味充填材に加えて、通常のたばこ充填材を含んでいてもよい。通常のたばこ充填材は、例えば、たばこ刻および/またはシートたばこを所定幅に刻んだもの(シートたばこの裁断物)で構成することができる。
【0063】
また、添加成分保持部30Cは、吸口側及びエアロゾル源保持部30Bと結合される部分に通気孔を備え、使用者が吸口から吸引すると添加成分保持部30Cの内部に負圧が生じ、エアロゾル源保持部30Bにおいて発生したエアロゾルが吸引されると共に、添加成分保持部30Cの内部においてニコチンや香味等の成分がエアロゾルに添加され、使用者の口腔内に放出される。
【0064】
<3.好ましい実施形態>
以下に、本発明の好ましい実施形態をまとめて示す。
[1] 40%以上の空隙率を有する多孔性セルロース粒子と、
前記多孔性セルロース粒子の外表面に担持され、香味成分含有粒子を含む香味層と
を含む、香味吸引器用の香味充填材。
[2] 前記多孔性セルロース粒子が、50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上の空隙率を有する[1]に記載の香味充填材。
[3] 前記多孔性セルロース粒子が、50~95%、好ましくは60~95%、より好ましくは70%~95%、更に好ましくは80%~95%の空隙率を有する[1]または[2]に記載の香味充填材。
[4] 前記多孔性セルロース粒子が、前記多孔性セルロース粒子の中心部から前記多孔性セルロース粒子の外表面に向かって放射状に伸びる複数の孔を有する[1]~[3]の何れか1に記載の香味充填材。
【0065】
[5] 粒子の中心部から粒子の外表面に向かって放射状に伸びる複数の孔を有する多孔性セルロース粒子と、
前記多孔性セルロース粒子の外表面に担持され、香味成分含有粒子を含む香味層と
を含む、香味吸引器用の香味充填材。
[6] 前記多孔性セルロース粒子が、50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上の空隙率を有する[5]に記載の香味充填材。
[7] 前記多孔性セルロース粒子が、50~95%、好ましくは60~95%、より好ましくは70%~95%、更に好ましくは80%~95%の空隙率を有する[5]または[6]に記載の香味充填材。
【0066】
[8] 前記香味成分含有粒子がたばこ粒子である[1]~[7]の何れか1に記載の香味充填材。
[9] 前記香味成分含有粒子が香料粒子である[1]~[7]の何れか1に記載の香味充填材。
[10] 前記多孔性セルロース粒子が、0.1~0.6g/mL、好ましくは0.1~0.4g/mL、より好ましくは0.1~0.3g/mLの嵩密度を有する[1]~[9]の何れか1に記載の香味充填材。
[11] 前記多孔性セルロース粒子が、球状である[1]~[10]の何れか1に記載の香味充填材。
【0067】
[12] 前記香味成分含有粒子が、前記多孔性セルロース粒子の平均孔径より大きい平均粒径を有する[1]~[11]の何れか1に記載の香味充填材。
[13] 前記香味層が、前記多孔性セルロース粒子の中心部から前記多孔性セルロース粒子の外表面に向かうにつれて、より多くの量で存在する[1]~[12]の何れか1に記載の香味充填材。
[14] 前記多孔性セルロース粒子が、300~2000μm、好ましくは300~850μmの平均粒径を有する[1]~[13]の何れか1に記載の香味充填材。
[15] 前記多孔性セルロース粒子が、0.3~1000μm、好ましくは0.3~200μm、より好ましくは6~40μmの平均孔径を有する[1]~[14]の何れか1に記載の香味充填材。
【0068】
[16] 前記香味成分含有粒子が、0.3~1000μm、好ましくは50~200μm、より好ましくは60~80μmの平均粒径を有する[1]~[15]の何れか1に記載の香味充填材。
[17] 前記香味層の上にバリア層を更に含む[1]~[16]の何れか1に記載の香味充填材。
[18] 前記バリア層がバインダーを含むが香味寄与物質を含まない[17]に記載の香味充填材。
[19] 前記バリア層が、前記香味層に含まれる前記香味成分含有粒子とは異なる香味を提供する香味寄与物質を含む[17]に記載の香味充填材。
【0069】
[20] 前記香味成分含有粒子が第1たばこ粒子であり、前記香味寄与物質が、前記第1たばこ粒子とは異なる第2たばこ粒子、または香料粒子である[19]に記載の香味充填材。
[21] 前記香味成分含有粒子が第1香料粒子であり、前記香味寄与物質が、たばこ粒子、または前記第1香料粒子とは異なる第2香料粒子である[19]に記載の香味充填材。
[22] [1]~[21]の何れか1に記載の香味充填材を含む香味吸引器。
[23] [1]~[21]の何れか1に記載の香味充填材を含む加熱型香味吸引器。
【実施例
【0070】
[1]香味充填材の調製
香味充填材A:
多孔性セルロース粒子として、レンゴー株式会社からビスコパールという商品名で販売されている多孔性セルロース粒子(平均粒径:700μm、空隙率:87%、嵩密度:0.2g/mL)を使用した。ビスコパールは、粒子の中心部から粒子の外表面に向かって放射状に伸びる複数の孔を有し(図1および2を参照)、平均孔径は0.5μmであった。香味成分含有粒子として、たばこ粒子(平均粒径:100μm)を使用した。たばこ粒子は、たばこ製品の製造工程において副産物として生じる葉屑、すなわち原料工場または製造工場の作業工程で生じる葉屑から準備した。準備されたたばこ粒子は、バインダーを含む。
【0071】
まず、45gのたばこ粒子と、300gの水とを混合して、液体香料組成物を調製した。346gの多孔性セルロース粒子を粒子コーティング機(パウレック社製、SPC-01)に投入し、装置内に下部から熱風を送り、多孔性セルロース粒子の流動層を形成した。この流動層に、上述の液体香料組成物を噴霧し、これにより、流動している多孔性セルロース粒子の表面に液体香料組成物の液滴を付着させた。多孔性セルロース粒子の表面に付着した液体香料組成物の液滴は、熱風により速やかに乾燥され、たばこ粒子を含む香味層が多孔性セルロース粒子の上に形成された。得られた複合粒子を「香味充填材A」と呼ぶ。
【0072】
香味充填材B:
多孔性セルロース粒子として、レンゴー株式会社からビスコパールという商品名で販売されている多孔性セルロース粒子(平均粒径:300μm、空隙率:87%、嵩密度:0.2g/mL)を使用した。ビスコパールは、粒子の中心部から粒子の外表面に向かって放射状に伸びる複数の孔を有し(図1および2を参照)、平均孔径は0.5μmであった。香味成分含有粒子として、たばこ粒子(平均粒径:100μm)を使用した。たばこ粒子は、たばこ製品の製造工程において副産物として生じる葉屑、すなわち原料工場または製造工場の作業工程で生じる葉屑から準備した。準備されたたばこ粒子は、バインダーを含む。
【0073】
乾式粉体混合機であるロッキングミキサー(愛知電機社製、RMHLC-600(SJT)L)に、3389gの多孔性セルロース粒子、441gのたばこ粒子、および345gの香料(エタノールを主成分(含有量20~30%)とする液体香料)を投入し、回転と揺動により混合した。これにより、多孔性セルロース粒子の表面にたばこ粒子を付着させて、たばこ粒子を含む香味層を多孔性セルロース粒子の上に形成した。得られた複合粒子を「香味充填材B」と呼ぶ。
【0074】
香味充填材C:
多孔性セルロース粒子として、レンゴー株式会社からビスコパールという商品名で販売されている多孔性セルロース粒子(平均粒径:700μm、空隙率:87%、嵩密度:0.2g/mL)を使用したことを除いて、香味充填材Bと同様の手法で、たばこ粒子を含む香味層を多孔性セルロース粒子の上に形成した。ビスコパールは、粒子の中心部から粒子の外表面に向かって放射状に伸びる複数の孔を有し(図1および2を参照)、平均孔径は0.5μmであった。得られた複合粒子を「香味充填材C」と呼ぶ。
【0075】
香味充填材D:
多孔性セルロース粒子として、レンゴー株式会社からビスコパールという商品名で販売されている多孔性セルロース粒子(平均粒径:2000μm、空隙率:93%、嵩密度:0.1g/mL)を使用したことを除いて、香味充填材Bと同様の手法で、たばこ粒子を含む香味層を多孔性セルロース粒子の上に形成した。ビスコパールは、粒子の中心部から粒子の外表面に向かって放射状に伸びる複数の孔を有し(図1および2を参照)、平均孔径は105μmであった。得られた複合粒子を「香味充填材D」と呼ぶ。
【0076】
香味充填材E:
多孔性セルロース粒子の代わりに、アズワン社からガラスビーズASGB-20という商品名で販売されているガラス粒子(平均粒径:710~1000μm、空隙率:0%、嵩密度:1.5g/mL)を使用したことを除いて、香味充填材Aと同様の手法で、たばこ粒子を含む香味層をガラス粒子の上に形成した。得られた複合粒子を「香味充填材E」と呼ぶ。
【0077】
香味充填材F:
240kgのたばこ粒子(平均粒径:200μm)と、16.85kgのバインダー(HPC)と、72.8kgの炭酸カリウム水溶液とをミキサーで混合した。得られた混合物を、押出造粒機(ホソカワミクロン社製、EM-15)を用いて成形して0.9mmの径の造粒物を得た。造粒物を乾燥させ、その後、300~840μmのサイズに分級して香味顆粒を得た。
得られた香味顆粒を「香味充填材F」と呼ぶ。香味充填材Fは、30%の空隙率および0.55g/mLの嵩密度を有していた。
【0078】
[2]評価方法
香味充填材A~Fを、それぞれ、図4~6に示される加熱型香味吸引器30の添加成分保持部30C(すなわちカプセル)に充填して、香味吸引器A~Fを作製した。香味充填材A~Fの充填量(質量)は、カプセル内の充填率(体積)がほぼ同じになるように調整した。香味充填材A~Fの充填量を表1に示す。
【0079】
加熱型香味吸引器を自動吸引器で50パフまで吸引し、パフ毎に煙中のニコチン含量を測定した。パフ毎に測定されたニコチン含量を合計し、「ニコチンデリバリー量(mg)」とした。また、吸引前に、1つのカプセルに含まれる香味充填材中のニコチン含量(mg)をGC-MSにより測定した。
【0080】
ニコチンリリース効率(%)を下記式により計算した。
ニコチンリリース効率(%)=(ニコチンデリバリー量/香味充填材中のニコチン含量)×100
なお、実施例では、香味充填材からの香味成分のリリース量を調べるため、香味成分の1つであるニコチンを指標として用いた。
【0081】
[3]評価結果
ニコチンリリース効率の結果を以下の表に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
表1の結果から、香味吸引器A~Dは、香味吸引器Eや香味吸引器Fと比べてニコチンリリース効率が高いことが示された。
【0084】
香味充填材A~Dが高いニコチンリリース効率を達成できた理由を以下で考察する。
【0085】
香味吸引器A~Dは、たばこ粒子の粒径と多孔性セルロース粒子の孔径との関係から、たばこ粒子の多くが、多孔性セルロース粒子の外表面に担持されたため、たばこ粒子に含まれる香味成分が外部空間へリリースされ易かったと考えられる。また、香味吸引器A~Dは、多孔性セルロース粒子が粒子内部に複数の孔(すなわち空隙)を有し、この空隙が、外部空間から粒子内部の空隙に向かって空気の流れを引き起こすことができるため、この空気の流れが、たばこ粒子から香味成分をリリースする機会を増やしたと考えられる。とりわけ、多孔性セルロース粒子が、その中心部から外表面に向かって放射状に伸びる複数の孔(すなわち空隙)を有していたため、これらの孔が空気の流通路となり、外部空間から粒子内部の空隙に向かって、効率良く空気の流れを引き起こすことができたと考えられる。
【0086】
一方、香味吸引器Eは、ガラス粒子が、粒子内部に複数の孔(すなわち空隙)を有していないため、外部空間から粒子内部に向かって空気の流れを引き起こすことはできず、ガラス粒子の表面に存在するたばこ粒子であっても、香味成分をリリースし難かったと考えられる。
【0087】
香味吸引器Fは、たばこ粒子を含む混合物を押出成形することにより得られた香味顆粒を香味充填材として含むため、顆粒内部に存在するたばこ粒子から香味成分をリリースさせることはできなかったと考えられる。また、香味吸引器Fは、香味顆粒が、顆粒内部に、多孔性セルロース粒子ほど多くの空隙を有していないため、多孔性セルロース粒子ほど、外部空間から顆粒内部に向かって空気の流れを引き起こすことはできず、香味顆粒の表面に存在するたばこ粒子であっても、香味成分をリリースし難かったと考えられる。
【符号の説明】
【0088】
1…多孔性セルロース粒子、1a…孔、1b…外表面、2…香味層、10…香味充填材、30…加熱型香味吸引器、30A…本体、30B…エアロゾル源保持部、30C…添加成分保持部、31…電源、32…制御部、33…吸引センサ、34…貯留部、35…供給部、36…負荷、37…残量センサ、38…たばこ充填材
図1
図2
図3
図4
図5
図6