(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】駆動装置、露光装置、露光方法及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240930BHJP
G02B 7/00 20210101ALI20240930BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
G02B7/00 E
G02B7/00 F
(21)【出願番号】P 2023028688
(22)【出願日】2023-02-27
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】杉田 光
(72)【発明者】
【氏名】蘆川 健一郎
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-357651(JP,A)
【文献】特表2017-537343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
G02B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子を保持する保持部材に力を加えて前記光学素子を移動又は変形させる駆動装置であって、
ベース部と、
変形部と、
前記変形部と前記ベース部とに囲まれた空間の圧力を調整する圧力調整部と、を
備え、
前記変形部は、前記圧力調整部が前記空間の圧力を調整することで変形する部分を有し、
前記変形する部分
は、変形することで前記保持部材に力を加える領域である接触領域と、前記保持部材に接触しない非接触領域とを含み、
前
記接触領域における前記保持部材に前記力を加える方向の剛性は、前
記非接触領域のうち少なくとも一部の領域における前記方向の剛性よりも高い、
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記接触領域の厚さは、前記非接触領域のうち少なくとも一部の領域の厚さよりも厚いことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記変形する部分は、薄板部と、凸形状部と、から成り、前記凸形状部の少なくとも一部が前記保持部材に力を加えることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記凸形状部は平板形状であることを特徴とする請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記変形する部分の厚さは、前記接触領域からの距離が大きいほど薄くなることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記変形部は、変形により前記光学素子を、前記光学素子を通過する光軸と直交する方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記変形部は前記保持部材と接触しているときにおいて、接触面積が最大となるときの前記変形部の前記保持部材に接触する接触領域の厚さが、前記接触面積が最大でないときの前記変形部の前記保持部材に接触する接触領域の厚さよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記変形部は、前記空間の圧力が大気圧より高くなった場合に前記光学素子を移動又は変形させることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記変形部はダイヤフラムであることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記変形部が前記保持部材に力を加えるときの前記接触領域の長手方向における長さは、前記変形部の長手方向の長さの1%以下の長さであることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記変形部を少なくとも4つ以上有し、
複数の前記変形部は同一の前記光学素子を保持する前記保持部材に力を加えることが可能な位置にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項12】
前記複数の変形部の変形する部分の変形により、前記光学素子を通過する光軸と直交する面上の少なくとも2方向において前記保持部材に力を加えることができることを特徴とする請求項11に記載の駆動装置。
【請求項13】
前記接触領域の材質は、前記非接触領域の材質よりも変形しにくい材質であることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項14】
前記接触領域の材質はセラミックス又は鉄又はステンレスであることを特徴とする請求項13に記載の駆動装置。
【請求項15】
光を照射する照明光学系と、
前記照明光学系からの光が入射する光学素子を保持する保持部材と、
変形することで前記保持部材に力を加えて前記光学素子を変形又は移動させる変形部を有する駆動装置と、を
備え、
前記変形部の変形する部分
は、変形することで前記保持部材に力を加える領域である接触領域と、前記保持部材に接触しない非接触領域とを含み、
前
記接触領域における前記保持部材に
前記力を加える方向の剛性は、前
記非接触領域のうち少なくとも一部の領域における前記方向の剛性よりも高い、
ことを特徴とする露光装置。
【請求項16】
前記変形する部分の変形により、第1光学素子と、前記第1光学素子との間に空間を有する第2光学素子とのうち少なくとも一方を保持している前記保持部材に力を加えることで、前記第1光学素子と前記第2光学素子に起因する収差を変化させることを特徴とする請求項15に記載の露光装置。
【請求項17】
変形する部分を有する変形部が圧力調整により変形し、
光学素子を保持する保持部材に力を加えることで前記光学素子を移動又は変形させる調整工程と、
前記調整工程で移動又は変形した前記光学素子を用いて、基板に露光を行う露光工程と、を有
し、
前記変形する部分は、変形することで前記保持部材に力を加える領域である接触領域と、前記保持部材に接触しない非接触領域とを含み、
前記接触領域における前記保持部材に前記力を加える方向の剛性は、前記非接触領域のうち少なくとも一部の領域における前記方向の剛性よりも高い、
ことを特徴とする露光方法。
【請求項18】
変形する部分を有する変形部が圧力調整により変形し、
光学素子を保持する保持部材に力を加えることで前記光学素子を移動又は変形させる調整工程と、
前記調整工程で移動又は変形した前記光学素子を用いて、基板にパターンを形成する形成工程と、
前記形成工程で前記パターンが形成された前記基板から物品を製造する製造工程と、
を有
し、
前記変形する部分は、変形することで前記保持部材に力を加える領域である接触領域と、前記保持部材に接触しない非接触領域とを含み、
前記接触領域における前記保持部材に前記力を加える方向の剛性は、前記非接触領域のうち少なくとも一部の領域における前記方向の剛性よりも高い、
ことを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置、露光装置、露光方法及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや液晶表示デバイスなどの製造工程において、複数の光学素子を有する露光装置が用いられることがある。特許文献1には、流体を用いて光学素子の位置を調整し、収差を低減する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、収差を低減するための光学素子の調整が同一条件のもとで行われたとしても、光学素子を調整する部材が光学素子を調整する際に意図せぬ変形をすることで同一の収差変化量を得られないことがある。
【0005】
そこで、本発明は、光学素子の調整に有利な駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての光学素子を保持する保持部材に力を加えて前記光学素子を移動又は変形させる駆動装置は、ベース部と、変形部と、前記変形部と前記ベース部とに囲まれた空間の圧力を調整する圧力調整部と、を備え、前記変形部は、前記圧力調整部が前記空間の圧力を調整することで変形する部分を有し、前記変形する部分は、変形することで前記保持部材に力を加える領域である接触領域と、前記保持部材に接触しない非接触領域とを含み、前記接触領域における前記保持部材に前記力を加える方向の剛性は、前記非接触領域のうち少なくとも一部の領域における前記方向の剛性よりも高い、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、図面を参照して説明される実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光学素子の調整に有利な駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態における露光装置の構成を示す概略図である。
【
図2】駆動装置により投影光学系の収差を調整する例である。
【
図3】第1実施形態における投影光学系の内部の構成を示す図である。
【
図4】第1実施形態における駆動装置の構成の例を示す図である。
【
図5】第1実施形態における投影光学系の内部の構成の一例を示す図である。
【
図6】第1実施形態における露光処理を行うときのフローチャートである。
【
図7】第2実施形態における駆動装置の構成を示す図である。
【
図8】第3実施形態における投影光学系の内部の構成を示す図である。
【
図9】第4実施形態における物品の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
また、本明細書および図面では、基本的に、鉛直方向をZ軸とし、鉛直方向に対し垂直な水平面をXY平面とする、各軸が相互に直交するXYZ座標系によって方向が示されている。ただし、各図面にXYZ座標系を記載している場合はその座標系を優先する。
【0012】
以下、各実施形態において、具体的な構成を説明する。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態における露光装置1の構成を示す概略図である。露光装置1は、本実施形態では、ステップ・アンド・リピート方式又はステップ・アンド・スキャン方式により原版(マスク、レチクル)のパターンを、投影光学系を介して基板に露光する投影露光装置である。なお、本実施形態では投影露光装置の例を説明するが、光学素子を調整することにより収差を調整する装置であればよく、特に装置の種類について限定しない。
【0014】
露光装置1は、光を照射する照明光学系12と、投影光学系15と、レチクル13を保持するレチクルステージ14と、基板16を保持しつつXY方向に移動可能なステージ17と、制御部11と、を有する。レチクル13は、例えば石英ガラスの表面に転写されるべきパターン(例えば回路パターン)がクロムで形成されている原版である。また、基板16は、例えば単結晶シリコンであり、表面上に感光材料(レジスト)が塗布されている。制御部11は後述する駆動装置の一部であり、駆動装置の駆動を制御する。なお、制御部11は露光装置1内の各部分の制御を併せて行ってもよい。
【0015】
露光装置1において、光源(不図示)からの露光光は、照明光学系12を介して、レチクルステージ14に保持されたレチクル13を照明する。レチクル13を透過した光は、投影光学系15を介して、基板16に照射される。この時、レチクル13に形成されたパターンからの光が基板16表面に結像される。露光装置1はこのように基板16上のショット領域を露光し、複数のショット領域のそれぞれについて同様に露光を行う。
【0016】
図2は駆動装置により投影光学系15の収差を調整する例である。投影光学系15の鏡筒103の内部には複数の光学素子(レンズ)が備えられている。光学素子には、照明光学系12からの光が入射する。
図2(a)は、投影光学系15に備えられた複数の光学素子のうちの1つの光学素子を投影光学系の物体面側から見た場合の図である。投影光学系15に備えられた複数の光学素子のうち、少なくとも1つの光学素子101は保持部材102により保持されている。保持部材102は光学素子101を保持する保持部102aと、弾性ヒンジ120と、を有する。そして、弾性ヒンジ120はヒンジ部104と、凸部105と、を有する。
【0017】
投影光学系15に備えられた複数の光学素子のそれぞれは、露光光による熱の吸収等の要因により光学特性が変化することがある。この光学特性の変化により、投影光学系15に収差が発生する。投影光学系15は発生した収差を変化させるための駆動装置110を有し、制御部11は駆動装置110の駆動により投影光学系15に備えられた複数の光学素子のうち少なくとも1つの光学素子101を移動させるよう制御する。光学素子101を移動させる方向は、例えば、投影光学系15の光軸(Z軸方向)と直交する方向(X軸方向又はY軸方向)である。なお、投影光学系15の収差は光学素子101の変形によっても変化するため、制御部11は駆動装置110により力を加えることで光学素子101を変形させるよう制御してもよい。光学素子101の移動又は変形により投影光学系15の収差は変化するため、制御部11は投影光学系15の収差が低減するように駆動装置110により光学素子101を移動又は変形させる量を制御する。
【0018】
駆動装置110は、変形部106と、ベース部107と、流路108と、圧力調整部109と、を有する。変形部106とベース部107により形成される空間は流路108により圧力調整部109と接続されている。圧力調整部109は、流体を供給又は回収することで、変形部106とベース部107により形成される空間に対して加圧又は減圧を行う。変形部106は、圧力調整部109が空間の圧力を調整することで変形する部分を有する。なお、変形部106はダイヤフラムともいわれる。変形部106とベース部107により形成される空間が圧力調整部109により加圧された場合に、変形部106の変形する部分は、変形部106のX軸方向の長手における中央を中心に+Y方向側に変形する。これは、空間が膨張するように変形部106の変形する部分が変形することと同義である。ここで、加圧された場合には空間の圧力は大気圧よりも高くなる。また、変形部106の形状によっては変形部106のX軸方向の長手における中央が変形の中心とならず、変形部106のX軸方向の長手における中央付近の領域を中心として、変形部106の変形する部分が+Y方向側に変形する場合もあり得る。一方、変形部106とベース部107により形成される空間が圧力調整部109により減圧された場合に、変形部106の変形する部分は、変形部106のX軸方向の長手における中央又は中央付近の領域を中心に-Y方向側に変形する。これは、空間が収縮するように変形部106の変形する部分が変形することと同義である。ここで、
図2の例では圧力調整部109が鏡筒103の外側に備えられているが、圧力調整部109の位置は特に限定されない。
【0019】
変形部106の変形する部分が、圧力調整部109からの加圧により+Y方向に変形した場合に、変形部106は弾性ヒンジ120の凸部105と接触し、弾性ヒンジ120を+Y方向に押す。弾性ヒンジ120が+Y方向に押されることで、保持部102aに保持された光学素子101が変形又は+Y方向に移動する。以上説明したように、制御部11は光学素子101を移動又は変形させるよう駆動装置110を制御し、これにより投影光学系15の収差は変化する。
【0020】
ここで、弾性ヒンジ120に凸部105を設け、凸部105と変形部106が接触することにより、変形部106が弾性ヒンジ120に力を加えるときの再現性を向上させることができる。例えば、弾性ヒンジ120に凸部105を設けず、ヒンジ部104と変形部106とが直接的に接触すると、変形部106が力を加える際のヒンジ部104と変形部106との接触面積が大きくなる。これにより、ヒンジ部104と変形部106とのそれぞれの平面度や表面粗さが、力が加わる方向に大きく影響する。この影響を低減するために、弾性ヒンジ120に凸部105を設け、変形部106と弾性ヒンジ120とが接触する面積を低減し、これにより接触する部材の平面度や表面粗さの影響を低減し、変形部106からの力の加わる方向のばらつきを低減する。変形部106からの力の加わる方向のばらつきを低減することで、光学素子101の移動量又は変形量のばらつきを低減することができる。なお、別の方法で再現性が補完できる場合は、弾性ヒンジ120に凸部105を設けなくともよい。また、凸部105は変形部106から力を加えられることで容易に変形しない材料、例えばセラミックスや鉄やステンレスから成ることが好ましい。
【0021】
図2(b)は、
図2(a)に示した第1領域1000を拡大した図である。変形部106の変形する部分が+Y方向に変形することで凸部105と接触し、保持部材102を+Y方向に押すと、凸部105からの反力により、
図2(b)に示すように変形部106が-Y方向側に意図せぬ変形をすることがある。反力により変形部106が変形すると、変形部106の凹面と凸部105の凸面との接触となり、変形部106と凸部105との接触位置が想定していた位置からずれ、変形部106が保持部材102に力を加える方向がずれる。これにより、実際の光学素子101の移動量又は変形量は、所望の光学素子101の移動量又は変形量とは異なる。
【0022】
図3は、本実施形態における投影光学系15の内部の構成を示す図である。本実施形態の制御部11は投影光学系15の収差が低減するように、駆動装置210の駆動により光学素子101を移動又は変形させる量を制御する。なお、本実施形態では駆動装置210の一部である制御部11が駆動装置210を制御する例を示すが、駆動装置210は外部の制御装置により制御される形態でもよい。また、変形部206の変形する部分は圧力調整部109の圧力調整(流体の移動)により変形する。
【0023】
本実施形態の駆動装置210の変形部206の変形する部分は、保持部材102に力を加えるために保持部材102に接触する接触領域と保持部材102に接触しない非接触領域を有する。そして、接触領域における保持部材102に力を加える方向(Y軸方向)の剛性は、保持部材102に接触しない非接触領域のうち少なくとも一部の領域における保持部材102に力を加える方向の剛性よりも高い。ここで、変形部206が保持部材102に接触する接触領域とは、変形部206が保持部材102を押す領域でもある。そして、変形部206が保持部材102に接触しない非接触領域とは、変形部が保持部材102を押さない領域でもある。
【0024】
図3(a)は本実施形態における投影光学系15に備えられた複数の光学素子のうちの1つの光学素子を投影光学系の物体面側から見た場合の図である。
図3(a)の例では、本実施形態の変形部206は保持部材102に接触する接触領域である中央部の厚みが保持部材102に力を加える方向(Y軸方向)において厚く、中央部から離れるに従い厚みが薄くなる。換言すれば、変形部206の厚さは、保持部材102に接触する接触領域からの距離が大きいほど薄い。つまり、変形部206の保持部材102に接触しない非接触領域である端部の厚みは薄い。変形部206の厚みが厚い領域は変形しづらく剛性が高く、変形部206の厚みが薄い領域は厚みが厚い領域よりも変形しやすく剛性が低い。これにより、変形部206の保持部材102に接触する接触領域における剛性が、変形部206の保持部材102に接触しない非接触領域のうち少なくとも一部の領域の剛性よりも高くなっている。なお、本実施形態における接触領域の剛性とは、接触領域のY軸方向における厚さ部分を含む部分の剛性である。そして、本実施形態における非接触領域の剛性とは、非接触領域のY軸方向における厚さ部分を含む部分の剛性である。
【0025】
ここで、本実施形態では変形部206の保持部材102に接触する接触領域における剛性が、変形部206の保持部材102に接触しない非接触領域のうち少なくとも一部の領域の剛性よりも高い例を示している。しかし、この例は、変形部206の保持部材102に接触する接触領域における剛性の平均値が、変形部206の保持部材102に接触しない非接触領域の剛性の平均値よりも高いことと同義である。
【0026】
変形部206の保持部材102に接触する接触領域における剛性が高いことで、変形部206が保持部材102を押す際の変形部206の保持部材102からの反力による変形量を低減することができる。また、保持部材102からの反力による変形部206の変形量が低減されることで、変形部206と保持部材102との接触面積が小さくなり、変形部206が保持部材102を押したときの再現性を向上することができる。変形部206と保持部材102の接触長さ(接触領域の長手方向の長さ)は、好ましくは変形部206の長手方向の長さの1%以下である。
図3(a)の例では、変形部206のX方向に沿った長さが長手方向であり、変形部206とベース部107が結合されている2点間の距離が変形部206の長手方向の長さである。この長さが、例えば100mmであるとき、変形部206と保持部材102の接触面積は100mmの1%以下、つまり1mm以下の長さで接触することが好ましい。
【0027】
これにより、光学素子101を所望の移動量又は変形量で移動又は変形させることができ、投影光学系15の収差を所望の変化量で変化させることができる。換言すれば、駆動装置210により光学素子101を調整すると、変形部の意図せぬ変形を低減でき、所望の収差変化量又は所望の収差変化量に近い収差変化量を得ることができる。これは、駆動装置210により光学素子101を調整するときの、収差変化量の再現性の向上と同義である。ここで、
図3の例では圧力調整部109が鏡筒103の外側に備えられているが、圧力調整部109の位置は特に限定されない。
【0028】
図3(b)は
図3(a)に示した駆動装置210を-X方向側から見た場合の図である。変形部206は薄板部と凸形状部とから成る。凸形状部は、薄板部の保持部材102に接触する接触領域に基づいて設けられている。なお、本実施形態において変形部206の薄板部と凸形状部とは一体となっている。この凸形状は
図3(a)に示したようにX軸方向に沿って、弓なりの形状である。また、
図3(a)及び
図3(b)の例は、凸形状部が平板形状の例である。ここで、例えば薄板部の周りに変形部206を固定するための固定部が設けられている場合に、その固定部は変形部206には含まない。
【0029】
変形部206の材質は、例えば、鉄やステンレスである。鉄やステンレスは加工性が良好であり、薄板部の一部に凸形状部を形成するような複雑な加工を比較的容易に行うことができる材料である。また、変形部206は光学素子101の調整のたびに変形を行う部材であるため、耐久性が高いことが好ましく、鉄やステンレスは耐久性も良好な部材であるため、変形部206の材料として適している。また、本実施形態では変形部206の構成は薄板部と凸形状部が一体である例を示したが、薄板部と凸形状部とを別部材とし、薄板部と凸形状部を結合させて変形部206とする形態でもよい。薄板部と凸形状部を別部材とする場合、例えば薄板部はばね鋼などの材料により形成されてもよい。
【0030】
変形部206の薄板部の厚みは、変形部206の変形可能量と変形部206の耐久性に影響する。変形部206の薄板部が厚いほど変形部206の変形可能量は小さくなるが耐久性は向上する。一方、変形部206の薄板部が薄いほど変形部206の変形可能量は大きくなるが、耐久性は低下する。そして、変形部206の変形可能量と耐久性は厚みだけでなく変形部206の面積にも影響される。よって、変形部206は変形可能量と耐久性を考慮して設計されることが好ましい。また、変形部206の保持部材102に接触する接触領域の厚さ(Y方向に沿った長さ)は3mm以上であることが好ましい。
【0031】
また、変形部206とベース部107とにより形成される空間の容積は、変形部206の変形の精度、つまり光学素子101を移動又は変形させる精度に影響する。光学素子101を移動又は変形させる精度を優先する場合は、容積を小さくするほうが有利である。これは、空間の容積を小さくした方が、圧力調整部109により加圧又は減圧した時の応答性がよくなるためである。一方で容積が小さいと、気体の状態方程式に従い、圧力を変化させた時の温度変化が大きくなる。圧力変化による温度変化が発生すると、鏡筒103の熱変形により、予期せぬ光学特性の変化が発生することがある。よって、変形部206とベース部107は上記のような精度と温度変化についても考慮し、設計されることが好ましい。
【0032】
ここで、変形部206の形状は
図3の例に限定されない。
図4は、本実施形態における駆動装置210の構成の例を示す図である。
図4(a)の例では、変形部206は薄板部のうち保持部材102に接触する接触領域に凸形状部が設けられており、凸形状はZ軸方向に沿って、弓なりの形状である。
図4(b)の例は、投影光学系の物体面側から駆動装置210を見た場合の図であり、変形部206は薄板部のうち保持部材102に接触する接触領域に凸形状部が設けられており、凸形状は矩形形状である。
図4(c)は
図4(b)に示した駆動装置210を-X方向側から見た場合の図である。なお、
図4(a)、
図4(b)、
図4(c)の例は、凸形状部が平板形状の例である。
図4(d)は、+Y方向側から駆動装置210を見た場合の図であり、変形部206は円形状(球面形状)であり、ベース部107は変形部206の外周形状に沿う環状形状である。変形部206は、円形状の中心に近くなるほどY軸方向に沿った厚みが厚くなるよう形成される。
図4(d)のような形態にすることで、変形部206の耐久性は向上する。
【0033】
図5は、本実施形態における投影光学系15の内部の構成の一例を示す図である。
図5の例では、本実施形態の駆動装置210(変形部206)を光学素子101の+X方向側、-X方向側、+Y方向側、-Y方向側の4か所に設けている。これにより、駆動装置210の駆動により同一の光学素子101を+X方向側、-X方向側、+Y方向側、-Y方向側に移動又は変形させることができ、投影光学系15の収差の調整に有利である。
【0034】
なお、本実施形態では4つの弾性ヒンジ120を離間して配置した例を示したが、弾性ヒンジ120の配置はこの例に限定されない。例えば、弾性ヒンジは保持部材102を囲むような環状形状の部材であってもよい。この場合、環状形状の弾性ヒンジは、離間して配置された4つの駆動装置210から+X方向側、-X方向側、+Y方向側、-Y方向側に力を加えられる。また、本実施形態では等間隔に4つの駆動装置210を配置し、保持部材102に対して+X方向側、-X方向側、+Y方向側、-Y方向側に力を加える例を示した。しかし、駆動装置210の配置は等間隔でなくともよく、数も4つに限定されず、保持部材102に力を加える方向も特に限定されない。つまり、変形部206を少なくとも4つ以上有し、変形部206の変形により光学素子101は光学素子101を通過する光軸と直交する面上の少なくとも2方向に移動可能であればよい。
【0035】
図6は、本実施形態における露光処理を行うときのフローチャートである。まず、制御部11又は外部の制御装置が駆動装置210を駆動させることで、変形部206を変形させ、保持部材102に力を加えることで光学素子101を移動又は変形させるよう制御する(S110、調整工程)。なお、変形部206は、光学素子101を保持する保持部材102に接触する接触領域における剛性が保持部材102に接触しない非接触領域のうち少なくとも一部の領域の剛性よりも高い。その後、露光装置1は露光処理を行う(S120、露光工程)。なお、光学素子101の調整は、事前に取得したデータに基づいて所定量だけ駆動装置210を駆動させる制御(オープン制御)であってもよい。或いは、保持部材102に設けられたターゲット又は光学素子101の移動量や変形量をセンサにより検出し、センサが検出した結果に基づいて駆動装置210を駆動させる制御(FB制御)であってもよく、特に限定しない。
【0036】
また、本実施形態は2つの光学素子により構成される一対のレンズであって、2つの光学素子の間に空間を有するアルバレツレンズに適用されてもよい。アルバレツレンズが第1光学素子と第2光学素子から成る場合、駆動装置210の変形する部分の変形により、第1光学素子と第2光学素子とのうち少なくとも一方を保持している保持部材102に力を加える。駆動装置210により力を加えられた保持部材102に保持されている光学素子は、移動又は変形する。これにより、第1光学素子と第2光学素子に起因する収差を変化させることができる。
【0037】
本実施形態の変形部206の変形する部分は、変形する部分の保持部材102に接触する接触領域における厚みを、変形する部分の保持部材102に接触しない非接触領域のうち少なくとも一部の領域の厚みより厚くする。これにより、本実施形態の駆動装置210の変形部206は、変形部206の保持部材102に接触する接触領域における剛性が、変形部206の保持部材102に接触しない非接触領域のうち少なくとも一部の領域の剛性よりも高い。よって、本実施形態の変形部206を有する駆動装置210は、光学素子101の調整において、保持部材102からの反力による調整量の誤差を低減した状態で、光学素子101を所望の移動量又は変形量だけ調整することができる。したがって、本実施形態の駆動装置210は光学素子101の調整に有利である。
【0038】
<第2実施形態>
本実施形態は、第1実施形態と変形部の変形する部分の保持部材102に接触する接触領域における剛性を高くするための構成が異なる。本実施形態の変形部306は、変形部306の保持部材102に接触する接触領域における材質の剛性を、変形部306の保持部材102に接触しない非接触領域のうち少なくとも一部の領域の材質の剛性より高くする。
【0039】
図7は本実施形態における駆動装置310の構成を示す図である。駆動装置310の変形部306は、少なくとも2つ以上の材料により形成される。変形部306の保持部材102に接触する接触領域(領域320)は、剛性の高い材料により形成される。剛性の高い材料とは、例えばセラミックスや鉄やステンレスである。変形部306の保持部材102に接触しない非接触領域(領域330、領域340)は、変形部306の保持部材102に接触する接触領域の材質の剛性よりも剛性が低い材料により形成される。これにより、変形部306のY軸方向における厚さが均一であったとしても、変形部306の保持部材102に接触する接触領域が保持部材102に力を加える際に、保持部材102からの反力による変形部306の意図せぬ変形を低減できる。
【0040】
剛性の低い材料とは、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金である。ただし、材料はこの例に限定されない。例えば、剛性の高い材料としてセラミックスを採用した場合は、剛性の低い材料としてセラミックスより剛性の低い鉄又はステンレス又はアルミニウム又はアルミニウム合金等を用いてもよい。そして、剛性の高い材料として鉄やステンレスを採用した場合は、剛性の低い材料として鉄やステンレスより剛性の低いアルミニウム又はアルミニウム合金等を用いてもよい。
【0041】
このような構成により、第1実施形態と同様に、変形部306の保持部材102に接触する接触領域における剛性が高いことで、変形部306が保持部材102を押す際の変形部306の保持部材102からの反力による変形量を低減することができる。これにより、駆動装置310により光学素子101を調整するときの、収差変化量の再現性を向上できる。よって、本実施形態の変形部306を有する駆動装置310は、光学素子101の調整において、保持部材102からの反力による調整量の誤差を低減した状態で、光学素子101を所望の移動量又は変形量だけ調整することができる。したがって、本実施形態の駆動装置310は光学素子101の調整に有利である。また、本実施形態では、変形部306のY軸方向における厚さが均一である例について説明した。しかし、第1実施形態と本実施形態を組み合わせ、保持部材102と接触する接触領域のY軸方向における厚さと材料を調整し、接触領域の剛性を非接触領域の剛性より高くしてもよい。
【0042】
<第3実施形態>
本実施形態は、第1実施形態の特徴に加えて、保持部材102と接触して変形した時の変形部506(変形部506の変形する部分)の形状変化を考慮して、変形部506の形状が設計されていることを特徴とする。
【0043】
制御部11の制御により光学素子101を大きく移動又は変形させる場合に、変形部506が保持部材102を押す力が強くなり、反力が大きくなる。変形部506に加わる保持部材102からの反力が大きくなると、第1実施形態のように保持部材102に接触する接触領域の厚さを厚くして剛性を高くしたとしても、変形部506は意図せぬ変形をすることがある。具体的には、保持部材102からの反力により
図2(b)に示すように変形部506が-Y方向側に意図せぬ変形をすることがある。
【0044】
本実施形態では、変形部506が保持部材102と接触して変形した時の変形部506の形状変化を考慮して、変形部506の形状が設計されている。理想的には、変形部506と保持部材102とが接触して保持部材102から変形部506が反力を受けて変形する変形量は、変形部506の保持部材102に接触する接触領域の厚さを厚くした分と同じであることが好ましい。具体的には、変形部506の保持部材102に接触する接触領域の厚さを3mm厚くした位置においては、保持部材102からの反力により3mm分変形することが好ましい。
【0045】
しかし、例えば光学素子101を+Y方向に1mm移動させる場合と、3mm移動させる場合とでは、変形部506が保持部材102を押す力は異なり、それにより保持部材102から受ける反力も異なる。つまり、光学素子101を移動又は変形させる量により、反力を受ける量は異なるため、保持部材102から変形部506が反力を受けて変形する変形量を、変形部506の保持部材102に接触する接触領域の厚さを厚くした分と常に同様にすることはできない。
【0046】
そのため、本実施形態では変形部506の変形可能量の最大変形量と最小変形量の中間値である中間変形量に基づいて変形部506が保持部材102と接触して変形するとき(保持部材102に力を加えるとき)の変形部506の形状変化を考慮する例を示す。なお、本実施形態では変形可能量の最大変形量と最小変形量の中間値である中間変形量に基づいて変形部506の形状変化を考慮する例を示すが、形状変化を考慮する状態は中間変形量に限定されない。例えば、最も高い頻度で光学素子101を移動又は変形させる量、つまり最も頻度が高い変形部506(変形部506の変形する部分)の変形量に基づいて変形部506の形状変化を考慮してもよい。
【0047】
図8は本実施形態における投影光学系15の内部の構成を示す図である。
図8の例の駆動装置510の変形部506は、保持部材102に力を加える位置の最大変形量が5mm、最小変形量が1mmである。
図8(a)は変形部506が変形していない例である。
図8(b)は、
図8(a)の状態から光学素子101を+Y方向に中間変形量である3mm移動させるために、制御部11が圧力調整部109に対して変形部506とベース部107から成る空間の圧力を調整するよう制御する例である。これにより
図8(b)のように変形部506とベース部107から成る空間が膨張し、変形部506が保持部材102を+Y方向に押す。このとき、変形部506は保持部材102からの反力を受け、変形する。本実施形態では、
図8(b)に示すように中間変形量になるよう変形部506が変形したとき、変形部506の弾性ヒンジに接触する接触領域は、変形部506の剛性を高めるために厚みを増した分だけ-Y方向に変形する。
【0048】
上記の例は、換言すれば、接触面積が最大となるときの変形部506の保持部材102に接触する接触領域の厚さが、接触面積が最大でないときの変形部506の保持部材102に接触する接触領域の厚さよりも小さい変形部506を示す。
【0049】
本実施形態では変形部506の形状変化を考慮して、変形部506が設計されるが、このとき形状変化を考慮して変形部506の設計を変更する部分は、例えば変形部506の厚みや変形部506の材質である。変形部506の形状変化を考慮して変形部506の厚みを決定してもよいし、材質を決定してもよいし、厚さと材質の両方を決定してもよい。
【0050】
本実施形態によれば、形状変化を考慮した変形部506を用いることができ、光学素子101の調整にさらに有利である。
【0051】
<第4実施形態>
本実施形態は、前述した駆動装置を用いて物品を製造することを特徴とする。
【0052】
図9は本実施形態における物品の製造方法のフローチャートである。前述した駆動装置を用いて、光学素子101を移動又は変形させる調整工程(S210)を行う。
【0053】
なお、この調整工程は、変形部の変形する部分が変形して光学素子101を保持する保持部材102に力を加えることで光学素子101を移動又は変形させて調整が行われる。ここで、変形部の変形する部分において、保持部材102に力を加えるために保持部材102に接触する接触領域における剛性が、保持部材102に接触しない非接触領域のうち少なくとも一部の領域における剛性よりも高い。なお、剛性は保持部材102に力を加える方向の剛性である。
【0054】
そして、調整工程の後に、基板にパターンを形成する形成工程(S220)を行い、形成工程でパターンが形成された基板から物品を製造する製造工程(S230)を行う。
【0055】
この製造方法で製造する物品は、例えば、半導体IC素子、液晶表示素子、カラーフィルタ、MEMS等である。
【0056】
形成工程は、例えば、感光材料が塗布された基板(シリコンウエハ、ガラスプレート等)を露光装置(リソグラフィ装置)により露光することで基板にパターンを形成する。
【0057】
製造工程は、例えば、パターンが形成された基板(感光材料)の現像、現像された基板に対するエッチング及びレジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージングの実施が含まれる。本製造方法によれば、従来よりも高品位の物品を製造することができる。
【0058】
本明細書の開示は、以下の駆動装置、露光装置、露光方法及び物品の製造方法を含む。
【0059】
[項目1]
光学素子を保持する保持部材に力を加えて前記光学素子を移動又は変形させる駆動装置であって、
ベース部と、
変形することで前記保持部材に力を加える変形部と、
前記変形部と前記ベース部とに囲まれた空間の圧力を調整する圧力調整部と、を有し、
前記変形部は、前記圧力調整部が前記空間の圧力を調整することで変形する部分を有し、
前記変形する部分において、
前記保持部材に力を加えるために前記保持部材に接触する接触領域における前記保持部材に力を加える方向の剛性は、前記保持部材に接触しない非接触領域のうち少なくとも一部の領域における前記方向の剛性よりも高い、
ことを特徴とする駆動装置。
【0060】
[項目2]
前記接触領域の厚さは、前記非接触領域のうち少なくとも一部の領域の厚さよりも厚いことを特徴とする項目1に記載の駆動装置。
【0061】
[項目3]
前記変形する部分は、薄板部と、凸形状部と、から成り、前記凸形状部の少なくとも一部が前記保持部材に力を加えることを特徴とする項目1又は2に記載の駆動装置。
【0062】
[項目4]
前記凸形状部は平板形状であることを特徴とする項目3に記載の駆動装置。
【0063】
[項目5]
前記変形する部分の厚さは、前記接触領域からの距離が大きいほど薄くなることを特徴とする項目1~4のうちいずれか1項に記載の駆動装置。
【0064】
[項目6]
前記変形部は、変形により前記光学素子を、前記光学素子を通過する光軸と直交する方向に移動させることを特徴とする項目1~5のうちいずれか1項に記載の駆動装置。
【0065】
[項目7]
前記変形部は前記保持部材と接触しているときにおいて、接触面積が最大となるときの前記変形部の前記保持部材に接触する接触領域の厚さが、前記接触面積が最大でないときの前記変形部の前記保持部材に接触する接触領域の厚さよりも小さいことを特徴とする項目1~6のうちいずれか1項に記載の駆動装置。
【0066】
[項目8]
前記変形部は、前記空間の圧力が大気圧より高くなった場合に前記光学素子を移動又は変形させることを特徴とする項目1~7のうちいずれか1項に記載の駆動装置。
【0067】
[項目9]
前記変形部はダイヤフラムであることを特徴とする項目1~8のうちいずれか1項に記載の駆動装置。
【0068】
[項目10]
前記変形部が前記保持部材に力を加えるときの前記接触領域の長手方向における長さは、前記変形部の長手方向の長さの1%以下の長さであることを特徴とする項目1~9のうちいずれか1項に記載の駆動装置。
【0069】
[項目11]
前記変形部を少なくとも4つ以上有し、
複数の前記変形部は同一の前記光学素子を保持する前記保持部材に力を加えることが可能な位置にそれぞれ配置されていることを特徴とする項目1~10のうちいずれか1項に記載の駆動装置。
【0070】
[項目12]
前記複数の変形部の変形する部分の変形により、前記光学素子を通過する光軸と直交する面上の少なくとも2方向において前記保持部材に力を加えることができることを特徴とする項目11に記載の駆動装置。
【0071】
[項目13]
前記接触領域の材質は、前記非接触領域の材質よりも変形しにくい材質であることを特徴とする項目1~12のうちいずれか1項に記載の駆動装置。
【0072】
[項目14]
前記接触領域の材質はセラミックス又は鉄又はステンレスであることを特徴とする項目13に記載の駆動装置。
【0073】
[項目15]
光を照射する照明光学系と、
前記照明光学系からの光が入射する光学素子を保持する保持部材と、
変形することで前記保持部材に力を加えて前記光学素子を変形又は移動させる変形部を有する駆動装置と、を有し、
前記変形部の変形する部分において、
前記保持部材に力を加えるために前記保持部材に接触する接触領域における前記保持部材に力を加える方向の剛性は、前記保持部材に接触しない非接触領域のうち少なくとも一部の領域における前記方向の剛性よりも高い、
ことを特徴とする露光装置。
【0074】
[項目16]
前記変形する部分の変形により、第1光学素子と、前記第1光学素子との間に空間を有する第2光学素子とのうち少なくとも一方を保持している前記保持部材に力を加えることで、前記第1光学素子と前記第2光学素子に起因する収差を変化させることを特徴とする項目15に記載の露光装置。
【0075】
[項目17]
光学素子を保持する保持部材に力を加えるために前記保持部材に接触する接触領域における前記保持部材に力を加える方向の剛性が、前記保持部材に接触しない非接触領域のうち少なくとも一部の領域における前記方向の剛性よりも高い変形する部分を有する変形部が圧力調整により変形し、前記保持部材に力を加えることで前記光学素子を移動又は変形させる調整工程と、
前記調整工程で移動又は変形した前記光学素子を用いて、基板に露光を行う露光工程と、を有することを特徴とする露光方法。
【0076】
[項目18]
光学素子を保持する保持部材に力を加えるために前記保持部材に接触する接触領域における前記保持部材に力を加える方向の剛性が、前記保持部材に接触しない非接触領域のうち少なくとも一部の領域における前記方向の剛性よりも高い変形する部分を有する変形部が圧力調整により変形し、前記保持部材に力を加えることで前記光学素子を移動又は変形させる調整工程と、
前記調整工程で移動又は変形した前記光学素子を用いて、基板にパターンを形成する形成工程と、
前記形成工程で前記パターンが形成された前記基板から物品を製造する製造工程と、
を有することを特徴とする物品の製造方法。
【0077】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。