(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】構造部品用途のための持続可能な不織布積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 5/26 20060101AFI20240930BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20240930BHJP
B62D 25/18 20060101ALI20240930BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
B32B5/26
B62D25/20 N
B62D25/18 F
B60R13/02 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023036474
(22)【出願日】2023-03-09
【審査請求日】2023-04-25
(32)【優先日】2022-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501479868
【氏名又は名称】カール・フロイデンベルク・カーゲー
【氏名又は名称原語表記】Carl Freudenberg KG
【住所又は居所原語表記】Hoehnerweg 2-4, D-69469 Weinheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アルン プラサド ヴェヌゴパル
(72)【発明者】
【氏名】マーヴィン ヴェーバー
(72)【発明者】
【氏名】アンゲラ ヴァイク
【審査官】緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0251924(US,A1)
【文献】特開2012-218492(JP,A)
【文献】特開2021-037745(JP,A)
【文献】特開2004-359066(JP,A)
【文献】特開平06-010255(JP,A)
【文献】特開平07-017315(JP,A)
【文献】特開2014-028568(JP,A)
【文献】特開平08-156161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 5/26
B62D 25/20
B62D 25/18
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布積層体であって、
-多成分短繊維を含む不織布層(A)と、
-任意選択で、多成分短繊維または単成分短繊維を含む不織布層(B)と、
-単成分短繊維(c1)および多成分短繊維(c2)を含むニードリングされた不織布層(C)と、
-多成分短繊維または単成分短繊維を含む任意の不織布層(D)と、
-任意選択で、多成分短繊維を含む不織布層(E)と、
を備え、
前記層は、(A)~(E)の順に配置され、
前記層は、ニードリングによってではなく、メルトボンディングによって互いに結合され、
前記多成分
短繊維は、ポリエステル成分およびコポリエステル成分を含み、
層(C)中の前記単成分
短繊維は、ポリエステル繊維であり、
層(B)および(D)中の前記単成分
短繊維は、コポリエステル繊維であり、
任意の不織布層(B)および(D)中の前記コポリエステル
繊維の含有量は、不織布層(A)および任意の層(E)よりも高く、
前記不織布積層体の全ての繊維は、ポリエステル繊維および/またはコポリエステル繊維であり、
層(C)は、DIN EN 29073-1:1992-08に従って決定された500~2000g/m
2の坪量を有しており、
前記不織布積層体は、2mmの撓みについてISO 178:2019に従って決定された少なくとも6Nの曲げ力を有する、
不織布積層体。
【請求項2】
前記層(A)および(E)は、前記層を組み合わせる前にニードリングされている、請求項1記載の不織布積層体。
【請求項3】
層(A)、(C)および(E)を含むか、または層(A)、(C)および(E)から構成されている、請求項1記載の不織布積層体。
【請求項4】
-DIN EN ISO 9073-2に従って決定された1mm~10mmの厚み
-ASTM 5034:2009による≧800Nの引張強度、および/または
-DIN EN 29073-3:1992-08による≧100Nの引裂強度
の特徴のうちの少なくとも1つを有する、請求項1記載の不織布積層体。
【請求項5】
全ての層中の前記コポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートのコポリマーであり、前記コポリマーは、≦240℃の融点を有する、請求項1記載の不織布積層体。
【請求項6】
層(A)、(C)および/または(E)中の前記多成分
短繊維は、30%~95%のポリエステルおよび5%~70%のコポリエステルを含む、請求項1記載の不織布積層体。
【請求項7】
層(A)および/または(E)は、それぞれDIN EN 29073-1:1992-08による20~200g/m
2の坪量を有する、請求項1記載の不織布積層体。
【請求項8】
層(C)は、10~90%の単成分短繊維(c1)および10~90%の多成分短繊維(c2)から構成されている、請求項1記載の不織布積層体。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の不織布積層体を含む成形物品。
【請求項10】
請求項9記載の成形物品を製造する方法であって、
-請求項1から8までのいずれか1項記載の不織布積層体を提供することと、
-前記不織布積層体を、前記コポリエステルが軟化または溶融する温度まで加熱することと、
-前記不織布積層体を前記成形部品に成形することと、
を含む、方法。
【請求項11】
少なくとも1つの不織布層が、前記層を組み合わせる前にカレンダー加工によってサーマルボンディングされている、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記層を組み合わせる前に、層(C)が、ヒートセットおよび/または熱収縮によってサーマルボンディングされており、かつ/または前記層を組み合わせる前に、前記層(A)および/または層(E)が、カレンダー加工によってサーマルボンディングされている、請求項10記載の方法。
【請求項13】
請求項1から8までのいずれか1項記載の不織布積層
体の、特に自動車用途のための、アンダーボディシールド、ホイールアーチライナー、ルーフピラー、荷物または荷物室のための構造部品、カバーもしくはパネル材料、または他の構造部品としての使用。
【請求項14】
請求項9記載の成形物品の、特に自動車用途のための、アンダーボディシールド、ホイールアーチライナー、ルーフピラー、荷物または荷物室のための構造部品、カバーもしくはパネル材料、または他の構造部品としての使用。
【請求項15】
請求項1から8までのいずれか1項記載の不織布積層
体を含む、特に自動車用途のための、アンダーボディシールド、ホイールアーチライナー、ルーフピラー、荷物または荷物室のための構造部品、カバーまたはパネル材料、または他の構造部品。
【請求項16】
請求項9記載の成形物品を含む、特に自動車用途のための、アンダーボディシールド、ホイールアーチライナー、ルーフピラー、荷物または荷物室のための構造部品、カバーまたはパネル材料、または他の構造部品。
【請求項17】
請求項1から8までのいずれか1項記載の不織布積層体を製造する方法であって、
-ニードリングによって層(C)を調製することと、
-層(A)ならびに任意選択で層(B)および(D)および(E)を提供することと、
-前記層を互いにメルトボンディングすることと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布積層体、かかる不織布積層体を含む成形物品、それらの使用、それらを製造するための製品および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布および不織布積層体は、自動車用途のためのアンダーボディシールド材料などの種々の技術用途に使用されている。かかるアンダーボディシールドは、繊維前駆体材料を加熱および成形することによって製造することができる。アンダーボディシールドは、特に高い機械的安定性、低い吸水性および高い吸音性に関して、厳しい性能仕様を満たす必要がある。かかる仕様を満たすために、一般に、様々なアンダーボディシールド材料が当技術分野において提案されている。
【0003】
国際公開第2016/183079号は、複数の強化繊維およびロフティング剤を含有する多孔質コア層を有する複合物品を開示している。しかしながら、強化繊維は、コア層の加工性を低下させる可能性がある。さらに、ロフティング剤は、物品が加熱され成形される際に寸法の不安定性をもたらす可能性がある。強化繊維および/またはロフティング剤は、さらに複合物品のコストを増大させる可能性がある。
【0004】
欧州特許出願公開第3489008号明細書には、長繊維不織布生地層と短繊維不織布生地層との2層構造を有する基材不織布生地が記載されている。両不織布生地層は、ポリエステル繊維を含む。ポリプロピレン層は、2つの不織布生地層の間の界面に位置している。しかしながら、かかる複合材料にポリオレフィンを使用することには種々の欠点がある。概して、ポリオレフィンとポリエステルとの組み合わせを含む製品をリサイクルすることは困難である。また、ポリプロピレンは、融点が約160℃であるため、製品の耐熱性および不燃性が相対的に低い。また、ポリエステル繊維とポリプロピレンは、例えば伸度、引張強度などに関する特性が異なるため、製品は均一とならない。したがって、ポリエステルおよびポリプロピレンを同時に使用すると、最終製品の特性を調整する際に支障をきたす可能性がある。
【0005】
当技術分野における一部の不織布積層体として、特定の短繊維層とスパンボンド層との組み合わせが挙げられる。かかる積層体の一般的な問題は、短繊維層は加熱時に収縮させることができるのに対し、スパンボンド層は通常、収縮しないことである。その結果、望ましくない構造上の凹凸が生じ、安定性が損なわれ、美観が損なわれる可能性がある(いわゆるエレファントスキン現象)。さらに、スパンボンド不織布が比較的高価であることも問題である。
【0006】
米国特許出願公開第2016/0288451号明細書は、車両のアンダーボディ用途に適した、ニードリングされた短繊維コア層を有する積層体を記載している。少なくとも1つのスパンボンドポリエステル層は、ニードリングによってコア層に機械的に結合されている。しかしながら、ニードリングによる積層は、層構造全体に望ましくない影響を及ぼす可能性がある。例えば、コア層からのニードリングされた短繊維は、外側のスパンボンドのポリエステル層を貫通する可能性がある。かかる構造上の凹凸により、安定性および機能に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0007】
欧州特許出願公開第3769954号明細書には、スパンボンド不織布層と中央の短繊維不織布層とを含む積層体が開示されている。この製品は、アンダーボディシールドとして好適であり、機械的安定性、低い吸水性および良好な吸音性を有することができる。積層体がニードリングされていないため、ニードリング構造の欠点を回避することができる。しかしながら、スパンボンド不織布は非常に高価である。スパンボンド繊維層と短繊維のニードリングされたヒートセットコア層との組み合わせにより、異なる特性を有する可能性のある不均一な製品をもたらす可能性がある。加えて、性能および機械的特性をさらに改善する余地がありうる。
【0008】
米国特許出願公開第2018/0251924号明細書は、疎水性および吸音特性を有する不織布複合材に関する。通常、複合材は、ポリアルキルシロキサンまたは過フッ素化化合物で疎水化されたポリオレフィン繊維およびポリエステル繊維からの表面耐水性層と、中空多葉繊維を含むB表面音吸収層とを含む。両方の層の間に挿入された膜を有する積層体を含む種々のアセンブリおよび製造方法が、同明細書を通して示唆されている。しかしながら、特定の実施形態についての指針、ならびに、有利な特性を実現できるかおよび有利な特性をどのようにして実現できるかを提供しうる実用的な例は開示されていない。かかる複合材は、種々の異なる成分に基づいているため、製造が複雑かつ高価であり、リサイクルが非常に困難であるというのが一般的な問題である。さらに、実用的な例がないため、提案された種々の潜在的な成分、構造、および材料から機能的製品を提供するには負担が大きい。全体として、かかる複合材料および方法は、さらに改善する余地がありうる。
【0009】
当技術分野では、上述した問題を克服する、特にアンダーボディシールド用途のための繊維製品を改善することが一般に所望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、当技術分野において直面している欠点を克服する、繊維製品、使用、方法、およびそれから得られる製品を提供することである。本発明の目的は、所望の構成へと加熱および成形することができ、特に加熱および成形した際に寸法的に安定している繊維製品を提供することである。
【0011】
具体的には、特に引張強度、曲げ強度および引裂強度に関して高い機械的安定性、ならびに低い熱収縮特性を有する繊維製品を提供することが目的である。製品は、比較的低コストで比較的簡単に便利な製造プロセスで入手可能であることが求められる。製品は、均一であり、リサイクル性が高く、耐熱性および不燃性が高く、軽量で吸音性が高いことが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、本発明の根底にある課題は、特許請求の範囲に記載の不織布積層体、成形物品、使用および方法によって解決されることが見出された。本発明の更なる実施形態は、本明細書を通して概説される。
【0013】
本発明の主題は、不織布積層体であって、
-多成分短繊維を含む不織布層(A)と、
-任意選択で、多成分短繊維または単成分短繊維を含む不織布層(B)と、
-単成分短繊維(c1)および多成分短繊維(c2)を含むニードリングされた不織布層(C)と、
-多成分短繊維または単成分短繊維を含む任意の不織布層(D)と、
-任意選択で、多成分短繊維を含む不織布層(E)と、
を備え、
層は、(A)~(E)の順に配置され、
層は、ニードリングによってではなく、メルトボンディングによって互いに結合され、
多成分繊維は、ポリエステル成分およびコポリエステル成分を含み、
層(C)中の単成分繊維は、ポリエステル繊維であり、
層(B)および(D)中の単成分繊維は、コポリエステル繊維であり、
任意の不織布層(B)および(D)中のコポリエステルの含有量は、不織布層(A)および任意の層(E)よりも高く、
不織布積層体の全ての繊維は、ポリエステル繊維および/またはコポリエステル繊維であり、
層(C)は、DIN EN 29073-1:1992-08に従って決定された500~2000g/m2の坪量を有しており、
不織布積層体は、2mmの撓みについてISO 178:2019に従って決定された少なくとも6Nの曲げ力を有する、
不織布積層体である。
【0014】
不織布層(A)~(E)は、不織布生地である。当技術分野では、不織布は、機械的に、熱的に(繊維ポリマーを溶融させ、繊維を互いに接着させることによって)、または化学的に(接着剤を用いて)圧密化された繊維マットとして定義される。対照的に、圧密化されていない単なる繊維集合体またはパイルは、不織布生地ではない。不織布は、織物や編み物、または紙ではない。概して、不織布は、DIN EN ISO 9092:2018に定義されているようなテキスタイルファブリックである。典型的には、不織布繊維はランダムに配置され、整列していない。
【0015】
層(A)~(E)は、(A)~(E)の順に配置されている。全ての層が存在する場合、層(B)、(C)および(D)は、層(A)と(E)との間に埋め込まれる。好ましくは、層(A)および(E)は、内側層(C)を環境から遮蔽する。好ましくは、任意の層(B)および(D)は、層(A)と(C)との間、および(C)と(E)との間の結合強度を増強する接着剤層である。好ましくは、不織布複合材は追加の層を含まない。好ましくは、不織布複合材は、層(A)、(C)および(E)、ならびに任意選択で層(B)および(D)から構成される。
【0016】
不織布積層体は、比較的高い剛性および機械的安定性を特徴とする。本発明によれば、これらの特性は、特に層(C)の坪量および厚みによって調整することができ、サーマルボンディングによってさらに調整することができる。全体として、複合材料は非常に安定しているが、繊維不織布構造であるため、同等のプラスチック材料に比べて著しく軽量である。このことは、軽量で安定性の高い材料を必要とする多くの技術的用途において有利であり、成形部品に容易に変形させることができる。
【0017】
不織布積層体は、2mmの撓みについてISO 178:2019に従って決定された少なくとも6Nの曲げ力を有している。好ましくは、曲げ力は、少なくとも10Nまたは少なくとも15Nである。好ましくは、曲げ力は、6N~40N、または10N~30Nである。例えば、曲げ力は、層Cの坪量または厚みおよび/または圧密化を増大させることによって調整することができる。この場合、圧密化は、好ましくは、1つ以上の外側層が層(C)に結合されるように、積層体をカレンダー加工することによって行われる。高い曲げ力は、材料を曲げるのが困難であることを意味する。不織布積層体は、板状であり、低い可撓性および高い剛性を有しており、硬質プラスチック材料に似ている。
【0018】
ニードリングされた短繊維不織布層(C)は、DIN EN 29073-1:1992-08に従って決定された500~2000g/m2の比較的高い坪量を特徴とする。より好ましくは、坪量は800~1800g/m2、特に好ましくは900~1600g/m2である。標準的な乗用車における用途では、800~1500g/m2、より好ましくは1000~1400g/m2、最も好ましくは約1200g/m2の坪量が好ましい場合がある。オフロード車両における用途の場合、層(C)は、1500~1700g/m2、より好ましくは1550~1650g/m2の坪量を有することが好ましい。不織布は高い機械的安定性および良好なバリア機能を有することができるため、高い坪量は有利である。好ましくは、曲げ力は、1000~1700g/m2の坪量で10N~30Nである。
【0019】
好ましくは、不織布層(A)および/または(E)は、それぞれ、DIN EN 29073-1:1992-08に従って20~200g/m2、より好ましくは25~150g/m2、または30~100g/m2の坪量を有している。
【0020】
典型的には、層(A)および/または(E)の坪量は、層(C)の坪量よりも著しく低い。好ましくは、層(C)の坪量は、それぞれ層(A)および/または(E)の少なくとも3倍、または5倍である。これは、外側層(A)および(E)が層(C)を遮蔽することができるため、有利である。例えば、外側層は比較的コンパクトで機械的に安定であってよいのに対し、層(C)は、より低い密度を有していてよい。そのため、外側層によって効果的に遮蔽され、安定化された、比較的軽い不織布積層体を得ることができる。
【0021】
好ましくは、任意の層(B)および/または層(D)は、DIN EN 29073-1:1992-08に従って、5~100g/m2、好ましくは5~50g/m2、より好ましくは10~20g/m2の坪量を有している。これらの層は、比較的低い坪量を有する場合、接着剤層として機能することができ、積層体に高い安定性および剥離強度を付与することができる。好ましくは、層(A)および/または(E)のそれぞれの坪量は、層(B)および/または(D)のそれぞれの少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍である。
【0022】
不織布積層体は、以下の特徴、つまり、
-ASTM 5034:2009による≧800Nの引張強度、および/または
-DIN EN 29073-3:1992-08による≧100Nの引裂強度
の少なくとも1つを有することが好ましい。
【0023】
これらの特性は、不織布積層体に高い耐摩耗性および吸音性を付与することができる。
【0024】
不織布積層体は、≧800N、好ましくは≧1000N、より好ましくは≧1050Nの引張強度を有することがより好ましい。それぞれ引張強度が向上することで、不織布積層体の剛性、耐摩耗性および吸音性などの機械的特性をさらに増大させることができる。
【0025】
不織布積層体は、≧100N、好ましくは≧120N、より好ましくは≧140Nの引裂強度を有することがより好ましい。それぞれ引裂強度が向上することで、不織布積層体の剛性、耐摩耗性および吸音性などの機械的特性をさらに増大させることができる。
【0026】
好ましくは、不織布積層体は、好ましくはDIN EN ISO 9073-2(方法A)に従って決定された1mm~10mm、好ましくは1.5~8mm、特に好ましくは2~6mmの厚みを有している。不織布積層体の厚みは、少なくとも1.5mmまたは少なくとも2mmであることが特に好ましい。好ましくは、不織布積層体中の外側層(A)および/または(E)の厚みは、0.2~1mm、好ましくは0.3~0.8mmである。
【0027】
不織布積層体は、層(A)~(E)の全ての繊維が短繊維であることを特徴とする。短繊維とは、不連続な長さの繊維である。複数の短繊維は、ステープル長と称される平均繊維長を有している。好ましくは、不織布は、短繊維以外の繊維を含まない。
【0028】
一方、スパンボンド不織布は、溶融した繊維原料から引き出された「エンドレス」繊維を、繊維フェルトに連続的に敷き詰めることで形成されている。スパンボンド繊維は、所定の長さに切断されない。層(A)~(E)は、スパンボンド不織布ではなく、スパンボンド繊維を含まない。好ましくは、不織布積層体は、スパンボンド繊維および/またはスパンボンド不織布を含まない。
【0029】
不織布積層体は、層を一緒にニードリングすることによっては製造されない。しかしながら、層(C)は機械的にニードリングされている。ニードリングされた不織布層は、複数の繊維を含んでおり、これらの繊維は、機械的なニードルを用いて混ぜ合わされ、圧密化されている。ニードリングされた不織布は、ニードルが不織布を垂直方向に通過し、それによって、繊維および繊維束をそれらと共に垂直方向に延伸する局所領域があることが特徴である。ニードリングされた不織布には、繊維が緻密化された領域によって囲まれた、繊維密度が低い局所領域またはさらには空隙が含まれる。
【0030】
不織布積層体を組み立てる前に、不織布層(C)がニードリングされた。好ましい実施形態では、層(A)および(B)はまた、不織布積層体の組み立て前に、機械的にニードリングされた。層のニードリング構造は、不織布積層体に有利な機械的特性を付与することができることが見出された。
【0031】
全体として、不織布積層体は、多成分および単成分短繊維を含み、好ましくはそれらから構成される。多成分繊維は、ポリエステル成分およびコポリエステル成分を含む。層(C)中の単成分繊維は、ポリエステル繊維である。任意の層(B)および(D)中の単成分繊維は、コポリエステル繊維である。典型的には、コポリエステルおよびポリエステルは熱可塑性ポリマーである。
【0032】
ポリエステルは、ポリマー主鎖のあらゆる繰り返し単位中にエステル官能基を含むポリマーである。コポリエステルは、第1の二酸モノマーと第1のジオールモノマーとのポリマーであり、少なくとも1つの第2の異なる二酸モノマーおよび/または少なくとも1つの第2の異なるジオールモノマーも含む。したがって、コポリエステルは、特定のタイプのポリエステルである。ポリエステルという用語は、少なくとも2つの異なるモノマーからのポリマーを含むが、コポリエステルは、3つ以上の異なるモノマーから形成される。好ましくは、繊維中のポリエステルは、2つのモノマーから形成される。典型的には、二酸モノマーはジカルボン酸モノマーである。
【0033】
不織布層は、メルトボンディング(サーマルボンディング)によって互いに結合される。メルトボンディングとは、材料の少なくとも1つにエネルギーを印加し、それによって、繊維を軟化または溶融し、それらを密接に接触させ、続いて冷却することによって熱可塑性繊維を結合する技術である。典型的には、繊維および/または層が密接に接触して結合されるように、圧力が印加される。本発明の不織布積層体は、(A)~(E)の順に積層した後、層をメルトボンディングすることによって得られる。各層は、メルトボンディングに寄与する少なくとも1つの成分を含む。好ましくは、全ての層における結合成分はコポリエステルであり、これは、好ましくは全ての層において同じコポリエステルである。典型的には、不織布生地中の全てのコポリエステルは熱可塑性ポリマーである。層を互いにメルトボンディングすることは、不織布積層体の熱収縮特性の高い均一性をもたらすことができるため、有利である。この高い均質性は、成形中のエレファントスキンの形成を低減することができ、それにより、不織布積層体は、成形後に魅力的な審美性および高い曲げ強度を有することができる。また、層の互いへのメルトボンディングにより、加熱および成形した際に、不織布積層体に高い寸法安定性を付与することができる。
【0034】
不織布積層体は、メルトボンディングによってのみ圧密化した場合、非常に安定でありうることが見出された。不織布積層体は、好ましくは化学的に結合されていない。これは、例えば粒子または液体形態の追加の結合剤が結合のために使用されないことを意味する。メルトボンディングのみを使用することは、製造プロセスを比較的単純に保つことができ、構成要素の数を少なく保つことができるという利点を有している。対照的に、化学結合のための接着性結合剤は、リサイクルの問題、またはマイクロ粒子もしくはナノ粒子の望ましくない劣化、摩耗および剥離などの種々の問題を引き起こす可能性がある。
【0035】
好ましくは、多成分繊維は二成分繊維である。したがって、ポリエステル成分およびコポリエステル成分から構成される。多成分繊維は、不織布積層体中で結合剤繊維として機能する。コポリエステルは結合剤成分であるため、少なくとも結合剤繊維の表面に存在する。コポリエステルの融点および/または軟化点は、ポリエステルの融点および/または軟化点よりも低い。好ましくは、その差は少なくとも10℃または少なくとも20℃である。メルトボンディング時に、不織布は、コポリマーのみが溶融または軟化し、ポリエステル成分は溶融または軟化しない温度まで加熱される。したがって、ポリエステル繊維または成分は、メルトボンディングプロセスにおいてそれらの構造および形状を維持する。
【0036】
層(C)中の多成分繊維および単成分繊維のポリエステル成分は、任意の公知のポリエステルであってよい。ポリエステルはポリエチレンテレフタレート(PET)であることが非常に好ましい。PETは、テレフタル酸とエタン-1,2-ジオール(エチレングリコールとも称される)とのコポリマーである。PETは、機械的に安定であり、比較的高い融点を有しており、簡便に繊維に紡糸することができ、低コストで入手可能である。別の実施形態では、ポリカーボネート、ポリラクチド(PLA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、もしくはポリトリメチルテレフタレート(PTT)、またはそれらのコポリマーもしくは混合物などの別のポリエステルが使用される。
【0037】
好ましくは、全ての層におけるポリエステルはPETである。PETは、未使用PET(リサイクルされていない)、リサイクルPET(r-PET)またはそれらの混合物であってよい。未使用PETは、不織布積層体の機械的特性のより正確な設定を可能にすることができる。リサイクルPETは、不織布積層体のコスト削減を可能にすることができる。リサイクルPETは、ポリオレフィンなどの少量の他のポリマーを含んでもよい。
【0038】
全ての不織布層にPETを使用することは、種々の利点を有している。PETは、不織布積層体の機械的特性の高い均一性を付与することができる。これにより、特に、不織布積層体の伸度および引張強度の均一性を高めることができる。それによって、不織布積層体は、容易に加熱され、所望の構成を提供するように成形することができる。それによって、不織布積層体は、加熱および成形されたときに寸法的に安定となりうる。さらに、PETは、層および積層体全体にそれぞれ比較的低い坪量を提供することができる。自動車または他の用途では、エネルギーコストを低減するために低重量が一般に望ましいため、これは有利である。さらに、PETは、約260℃の比較的高い融点を有している。これにより、不織布積層体は、高い耐熱性および不燃性特性を有することができる。融点は、本明細書において、好ましくはDIN ISO 11357-3:2013に従って決定される。また、PETは比較的安価である。これにより、不織布積層体は、不織布積層体を含む物品のコストの低減に寄与することができる。
【0039】
不織布積層体の全ての層は、コポリエステルを含む。コポリエステルは、非晶質コポリエステル、結晶質コポリエステル、または非晶質コポリエステルと結晶質コポリエステルとの混合物であってよい。コポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートのコポリマーであることが好ましい。ポリエチレンテレフタレートのコポリマーは、モノマーのテレフタル酸、エタン-1,2-ジオール、ならびに少なくとも1つの更なる異なるジカルボン酸モノマーおよび/または少なくとも1つの更なる異なるジオールモノマーを含む。好ましい更なるジカルボン酸モノマーは、アジピン酸である。別の好ましい更なるジカルボン酸モノマーはイソフタル酸である。好ましい更なるジオールモノマーは、シクロヘキサンジメタノールである。ポリエチレンテレフタレートのコポリマーは、不織布積層体のリサイクル性を容易にすることができる。ポリエチレンテレフタレートのコポリマーは、不織布積層体内の剥離強度を増大させることができる。ポリエチレンテレフタレートのコポリマーは、不織布積層体の原材料のコストを低減することができる。
【0040】
コポリエステルの融点は≦240℃であることが好ましい。コポリエステル、特に層(B)、(C)および(D)中のコポリエステルは、≦220℃、さらに好ましくは≦210℃、さらにより好ましくは≦200℃、さらにより好ましくは≦190℃、特に180℃の融点を有することがより好ましい。これにより、コポリエステルは、繊維層同士のメルトボンディングに要するエネルギーを削減することができ、繊維層の製造に要するエネルギーをさらに削減することができる。低融点では、エネルギー削減量を連続的に増大させることができる。かかる融点を有するコポリマーは、ポリマーがPETである場合、特に好適な結合剤成分である。
【0041】
全ての層中のコポリエステルは、100~240℃の範囲、より好ましくは110~230℃の範囲、さらにより好ましくは140~225℃の範囲、さらにより好ましくは160~220℃の範囲の融点を有することが好ましい。この範囲の融点を有するコポリエステルは、特にポリマーがPETである場合、層を互いにメルトボンディングするのに必要なエネルギーを削減することができ、メルトボンディング後の層間の結合強度を増大させることができる。
【0042】
好ましい実施形態では、層(A)および/または(E)中のコポリエステルは、層(C)中のコポリエステルよりも、好ましくは≧20℃高い、より好ましくは≧30℃高い、さらに好ましくは≧35℃高い融点を有している。このようにして、メルトボンディング後の層間のより強い結合を達成することができる。
【0043】
全ての層中のコポリエステルは、≧120℃、より好ましくは≧140℃、さらにより好ましくは≧160℃の融点を有することが好ましい。これにより、メルトボンディング時の層間の結合強度を増大させ、不織布に熱安定性を付与することができる。
【0044】
不織布積層体は、層(B)および(D)の一方または両方を含んでもよい。不織布層(B)および(D)中のコポリエステル含有量は、不織布層(A)および(E)中のコポリエステルの含有量よりも高い。したがって、層(B)および(D)は、層(A)と(C)との間および/または層(C)と(E)との間の結合強度(剥離強度)を増大させる結合剤(接着剤)層として機能することができる。
【0045】
不織布積層体は、
-層(A)、(B)、(C)、(D)および(E)
-層(A)、(B)、(C)および(E)
-層(A)、(C)および(E)
-層(A)、(B)および(C)、または
-層(A)および(C)
を備えてよく、またはそれらから構成されてよい。
【0046】
層(A)および(C)は常に含まれる。しかしながら、少なくとも層(A)、(C)および(E)が含まれることが非常に好ましい。この実施形態では、中心層(C)は、保護および遮蔽を提供することができる2つの外側層の間に埋め込まれる。剥離強度を高めるために、全ての層(A)、(B)、(C)、(D)および(E)を含む不織布積層体が好ましい場合がある。生産性の簡略化およびコスト効率の観点から、層(A)、(C)および(E)から構成される不織布積層体が好ましい場合がある。層(A)および(C)から構成される積層体は、一方の側からの遮蔽、または吸水性もしくは音響などの特性がそれほど重要でない場合、コスト/利益の考慮から好ましい場合がある。積層体において、層(A)および(C)のみのアセンブリは、層(C)および(E)のみのアセンブリと等価である。
【0047】
層(E)が存在する場合、層(A)および(E)は、互いに同一であっても異なっていてもよい。層(B)および(D)が存在する場合、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。層(A)および(E)が同一であること、および/または層(B)および(D)が同一であることが好ましい。これは、不織布積層体の製造に必要な構成要素が少ないため、複雑さおよびコストを低減することができる点で有利である。
【0048】
好ましい実施形態において、不織布積層体は、層(A)~(E)の間に配置された追加の層を含まない。より好ましくは、不織布積層体は、層(A)、(C)および任意選択で層(B)、(D)および(E)から構成される。好ましくは、不織布積層体は、織布層、膜またはポリマーフィルムなどの不織布層ではない更なる層を含まない。したがって、不織布積層体は、比較的単純な構造を有することができ、これは製造およびコストの理由から有利である。
【0049】
別の実施形態では、不織布複合材は、層(A)~(E)とは異なる1つ以上の追加の層を含んでもよい。例えば、少なくとも1つの更なる中間層および/または外側保護層を含むことが可能である。中間層は、層(C)として構成することができるが、繊維比、組成、タイプなどが変化する。例えば、構造および特性の勾配を提供することができる。しかしながら、これは、積層体をより複雑かつ高価にするため、あまり好ましくない。
【0050】
好ましい実施形態では、不織布層(A)および/または存在する場合には不織布層(E)は、多成分短繊維、好ましくは二成分短繊維から構成される。これは、単一の繊維タイプからの層(A)または(E)の製造が簡単であり、層が非常に均一となるため、有利である。
【0051】
不織布積層体層は、ニードリングによって互いに結合されず、その結果、層のいずれも別の層にニードリングされない。典型的には、それらは、隣接する層の間に機械的結合が存在しないように、互いに機械的に結合されない。概して、不織布は、ニードリングまたは水流交絡(hydroentanglement)(流体ジェット処理)によって機械的に結合させることができる。これらの方法は、1つの層から別の層への繊維または繊維束の浸透をもたらす。典型的には、本発明の不織布積層体の繊維は、隣接する層を貫通せず、かつ/または層間の繊維の絡み合いが存在しない。これは、平坦であり、特にしわまたは波状構造がなく、高い曲げ強度を有する成形物品を不織布積層体から製造することができるという利点を有している。
【0052】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの不織布層は、積層体層を組み合わせる前に(つまり、個別に)サーマルボンディング(メルトボンディング)される。好ましくは、層はカレンダー加工によってサーマルボンディングされる。この実施形態において、層は、繊維材料の軟化点を超える温度に加熱されたカレンダーロールの間で圧搾される。好ましくは、層(A)、(C)および(E)、または全ての層が個別にサーマルボンディングされた。これは、積層体が形成される前に、各層を安定した形態で提供することができるという利点を有している。層は、続いて組み合わされ、一緒にメルトボンディングさせることができる。典型的には、個別の層のサーマルボンディングおよびその後の積層体のサーマルボンディングは、同じ手段、つまり、コポリエステルの溶融および結合によって実現される。
【0053】
好ましくは、不織布層(C)は、ヒートセットおよび/または熱収縮によって個別にサーマルボンディングされる。ヒートセットプロセスにおいて、個別の層は、著しい圧力を印加することなく、例えばカレンダーロールによって熱に供される。典型的には、不織布はオーブン中でヒートセットされる。これは、層(C)が比較的厚くなりうる場合、カレンダー加工によるサーマルボンディングが非効率的になりうるため、有利でありうる。さらに、ヒートセットは、層(C)が熱収縮されるという利点を有しうる。好ましくは、ニードリングされた繊維は、縦方向および横方向の両方に熱収縮される。熱収縮したニードリングされた短繊維は寸法的に安定となるため、その後の積層および成形に有利である。典型的には、基本重量は熱収縮の間に増大する。これにより、その後の成形プロセス中のエレファントスキンの望ましくない形成を回避することができる。また、ヒートセットは、材料が圧縮されず、比較的軽い重量を有することができるため有利である。
【0054】
好ましい実施形態では、不織布層(A)および/または(E)は、積層体の組み立て前にカレンダー加工によってサーマルボンディングされた。かかる方法では、基材が加熱下で圧縮されることにより、緊密な結合が得られる。これにより、不織布の外側層(A)および/または(E)を比較的コンパクトで安定した形態で提供可能となり、不織布積層体において層(C)を環境から効果的に遮蔽することができるため、有利である。
【0055】
好ましくは、不織布層(A)および/または(E)は、積層体の組み立て前にニードリングされた。これにより、ニードリングされた外側層が高い機械的安定性を有することができ、したがって層(C)を環境から保護することができるため、有利である。
【0056】
不織布積層体の全ての繊維は、ポリエステル繊維、特にPET繊維、およびコポリエステル繊維である。したがって、全ての繊維は、単成分ポリエステルもしくは単成分コポリエステル繊維、またはポリエステルおよびコポリエステル成分を含む多成分繊維のいずれかである。これにより、不織布積層体が比較的低コスト、比較的低重量、および比較的高い剥離強度を有することができるため、有利である。これにより、不織布積層体をより容易にリサイクルすることができる。これにより、耐熱性および不燃性特性を高めることができる。これにより、不織布積層体の機械的特性、特にその伸度および引張強度の均一性も向上させることができる。これにより、不織布積層体を含む製品の特性のより容易な調整を可能にすることができる。
【0057】
全ての繊維がポリエステル繊維およびコポリエステル繊維であるため、不織布積層体は、ポリオレフィン繊維、特にポリプロピレン繊維および/またはポリエチレン繊維を含有しない。しかしながら、繊維は、特にリサイクルされたポリエステル繊維が含まれる場合、他のポリマーの不可避の不純物、例えば、少量のポリエチレンまたはポリプロピレンを含んでもよい。例えば、r-PETは、標準的なリサイクルプロセスにおいて除去することが困難な少量のポリオレフィンを含んでよいことが当技術分野において既知である。
【0058】
不織布積層体は、例えば結合剤として、ポリプロピレンおよび/またはポリエチレンなどのポリエステルまたはコポリエステルではない更なるポリマーを含有しないことが好ましい。不織布積層体中の唯一のポリマーがポリエステルおよびコポリエステルであることは、製造およびリサイクルにとって有利である。
【0059】
好ましくは、不織布積層体の繊維は、疎水化剤、例えばケイ素またはフッ素をベースとする化合物、例えばポリアルキルシロキサンおよびフッ素化化合物を含まない。かかる添加剤は、不織布積層体をより複雑にし、高価にし、リサイクルを困難にするため、不利である。
【0060】
好ましくは、不織布積層体は、中空繊維および/またはマルチローバル繊維を含まない。好ましくは、繊維は、円形(または楕円形)の直径を有しており、かつ/または塊状(非中空)である。かかる円形の塊状繊維は、低コストで容易に入手可能であり、本明細書に概説される有利な特性を提供することができる。
【0061】
不織布積層体は、無機強化材、特にガラス繊維を含有しないことが好ましい。無機強化材がないこと、特にガラス繊維がないことにより、不織布積層体の加工性を容易にし、コストを低下させることができる。不織布積層体は、いかなるロフティング剤も含有しないことが好ましい。ロフティング剤が存在しないことにより、不織布積層体が加熱され成形されるときの不織布積層体の寸法不安定性を高めることができ、コストを低下させることができる。
【0062】
不織布積層体のさらにより高い耐摩耗性および増大した吸音性を付与するために、不織布積層体は、≧150MPaの曲げ強度および/または≧800Nの引張強度を有することが特に好ましい。不織布積層体は、≧100Nの引裂強度を有することが最も好ましい。高い曲げ強度および引張強度は、製品が剛性であることを意味しており、これは、アンダーボディシールドなどの構造部品に関連する。高い引裂強度および引張強度はまた、製品が機械的応力または歪みに対して高い安定性を有することを意味しており、これはまた、アンダーボディシールドなどの構造部品における使用にも関連する。これらの特性は、不織布積層体が、かかる用途のために当技術分野で使用される従来の成形熱可塑性部品に代替可能であることを意味する。さらに、不織布積層体およびそれから誘導される製品は、繊維構造体が軽量であり、高い音響吸収性を有することができ、驚くほど安定であるため、有利である。
【0063】
不織布積層体は、≧150MPa、好ましくは≧300MPa、より好ましくは≧350MPaの曲げ強度を有することが好ましい。厚みが比較的大きく、例えば3mmを超える場合、曲げ強度は、好ましくは≧350MPa、より好ましくは≧500MPaである。それぞれ結合強度が向上することで、不織布積層体の耐摩耗性および吸音性をさらに増大させることができる。
【0064】
全ての層、特に層(A)および(E)中のコポリエステルは、1.1~1.6g/cm3、より好ましくは1.2~1.5g/cm3、さらにより好ましくは1.3~1.4g/cm3の密度を有することが好ましい。密度は、DIN EN ISO 1183-1:2019-09に従って決定される。かかる密度は、過度のコストを回避しながら、適切な強度の積層体をもたらすことができる。
【0065】
好ましくは、層(A)、(C)および/または(E)中の二成分繊維は、少なくとも20%のコポリエステル、好ましくは5%~70%のコポリエステルおよび30%~95%のポリエステルを含む。好ましくは、層(A)、(C)および(E)は、特に層(B)および(D)が存在しない場合、20%~80%、好ましくは30~70%のコポリエステル、特に好ましくは少なくとも40%のコポリエステル、少なくとも50%のコポリエステル、少なくとも60%のコポリエステル、または少なくとも70%のコポリエステルを含む。かかるコポリエステル含有量は、効率的な結合を提供し、それによって積層体の波状構造を回避することができる。かかるコポリエステル含有量であれば、積層体の曲げ強度をさらに向上させることができる。本明細書において、「%」は、特に定義されない限り、重量%を意味する。本明細書において、残渣はポリエステル成分である。
【0066】
層(B)および(D)が存在する場合、層(A)および/または(E)は、2%~30%のコポリエステル、より好ましくは5~25%のコポリエステルを含むことが好ましい場合がある。次いで、接着層(B)および(D)によって結合が支持される。層(A)および/または(E)が少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%または少なくとも70%のコポリエステルを含む場合、層(B)および(D)を含まない積層体は、高い剥離強度を有することができる。つまり、層(B)も層(D)も、剥離強度を増大させるためには必要とされない。これにより、積層体の製造を簡略化することができる。
【0067】
層(C)は、10~90%の単成分繊維(c1)および10~90%の多成分繊維(c2)、より好ましくは20~80%の単成分繊維(c1)および20~80%の多成分繊維(c2)、さらにより好ましくは30~70%の単成分繊維(c1)および30~70%の多成分繊維(c2)、さらにより好ましくは40~60%の単成分繊維(c1)および40~60%の多成分繊維(c2)から構成されることが好ましい。単成分繊維は、サーマルボンディング中に溶融しない。したがって、層の基本構造は、サーマルボンディング時に維持することができる。したがって、層および積層体全体は、機械的に安定したままでありうるが、他方では比較的軽量でありうる。
【0068】
具体的には、層(C)が10~90%の単成分短繊維(c1)および10~90%の多成分短繊維(c2)から構成される場合、より簡便にニードリングすることができる。さらに、層(C)中のポリエステルとしてのPETの使用は、不織布積層体の全重量を低減することができ、不織布積層体の高い耐熱性および不燃性特性をもたらすことができ、不織布積層体のコストを低減することができる。
【0069】
好ましくは、層(C)において、単成分繊維はPET繊維であり、多成分繊維は、第1の成分としてPETを含み、第2の成分としてCoPETを含む二成分繊維である。
【0070】
好ましくは、不織布積層体中の多成分繊維は、シース-コア構造、海島(island-in-the-sea)構造、パイセグメント構造またはサイドバイサイド構造を有する二成分繊維であり、好ましくはシース-コア構造である。コポリエステル結合剤成分は、二成分繊維の少なくとも表面に存在する。短繊維(c2)は、以下の特徴、つまり、
-DIN EN ISO 1973:2020-05に従って決定された2~9dtex、より好ましくは3~7dtex、さらにより好ましくは4~6dtexの繊度
-30~100mm、より好ましくは40~70mm、さらに好ましくは45~55mmの繊維長
-DIN EN 13844:2003-04に従って決定された1~6g/de、より好ましくは2~5g/de、さらにより好ましくは3~4g/deの強度
-DIN EN ISO 5079:2020-01に従って決定された20~60%、より好ましくは30~50%、さらにより好ましくは35~55%の伸度
-JIS L-1074に従って決定された4~10EA/inch、より好ましくは5~9EA/inch、さらに好ましくは6~8EA/inchの捲縮量
-DIN EN 13844:2003-04に従って決定された75℃×15分で3~7%、より好ましくは4~6%、さらにより好ましくは3.5~4.5%の熱収縮率
の少なくとも1つ、より好ましくは2つ以上、最も好ましくは全てを有することが好ましい。
【0071】
短繊維(c2)が上記の特徴の少なくとも1つ、より好ましくは2つ以上、最も好ましくは全てを有する場合、ニードリングされた短繊維不織布層(C)は、不織布積層体に強度および剛性を同時に付与することができる。
【0072】
不織布積層体は、以下のこと、つまり、
-全ての層中のコポリエステルが、160~240℃の融点を有するポリエチレンテレフタレート(CoPET)のコポリマーである、
-層(B)および層(D)を含み、両方ともコポリエステルから構成され、DIN EN 29073-1:1992-08に従って5~30g/m2の坪量を有する、
-層(C)が、30~70%の単成分短繊維(c1)および30~70%の多成分短繊維(c2)から構成される、
が好ましい。
【0073】
かかる好ましい不織布積層体は、所望の構成を提供するために容易に加熱および成形することができ、加熱および成形されたときに寸法的に安定でありうる。特に、アンダーボディシールド材として好適でありうる。層(B)および(D)を有することにより、剥離強度および耐熱性を高くすることができる。
【0074】
別の実施形態では、不織布積層体は、以下のこと、つまり、
-層(B)および層(D)を含まない、
-層(A)、(C)および(E)中のコポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートのコポリマーであり、コポリマーは、160~240℃の融点を有する、
-層(C)が、30~70%の単成分短繊維(c1)および30~70%の多成分短繊維(c2)から構成される、
が好ましい。
【0075】
かかる不織布積層体は、所望の構成を提供するために容易に加熱および成形することができ、加熱および成形されたときに寸法的に安定でありうる。かかる好ましい不織布積層体は、特に、アンダーボディシールド材料としての用途に好適でありうる。層(B)および(D)が存在しないことにより、不織布積層体のコストを低減することができ、製造を単純化することができる。
【0076】
本発明の主題はまた、本発明の不織布積層体を含む成形物品(成形体、成形部品)である。この物品は、不織布積層体を所望の形状に成形することによって得ることができる。その形状は、平坦なシートであってもよく、または規定された寸法を有してもよく、縁部または屈曲領域を含んでもよい。かかる成形物品は、軽量で均質でありうることが有利である。成形物品は、短繊維のみを含み、ポリエステルおよびコポリエステルに完全に基づくことができ、スパンボンド材料を必要としないため、製造が容易であり、費用がかからない。
【0077】
本発明の主題はまた、成形物品を製造するための方法であって、
-本発明の不織布積層体を提供することと、
-不織布積層体を、コポリエステルが軟化または溶融する温度まで加熱することと、
-不織布積層体を成形物品に成形することと、
を含む、方法である。
【0078】
好ましくは、少なくとも1つの不織布層は、層を組み合わせる前にカレンダー加工によってサーマルボンディングされている。好ましくは、層を組み合わせる前に、層(C)がヒートセットおよび/または熱収縮によってサーマルボンディングされており、かつ/または、層を組み合わせる前に、層(A)および/または層(E)がカレンダー加工によってサーマルボンディングされている。
【0079】
好ましくは、成形物品は冷間成形される。冷間成形プロセスでは、不織布積層体は、結合剤として作用する低融点コポリエステルを活性化するために、坪量に応じて、例えば180℃~220℃の温度範囲で1~5分間、オーブン内で予熱される。結合剤は軟化または溶融し、PET繊維を互いに接着することができる。熱活性化後、不織布積層体を圧縮型に入れる。圧縮型は、50トン~200トンのトン数で不織布積層体の全てまたは一部を圧縮することができる。典型的には、不織布積層体は、最大60秒間、成形型内に留まることが可能である。圧縮された不織布積層体を金型の内側または外側で冷却させて、コポリエステルを融点未満に冷却させる。その後、不織布積層体をその最終形状に変換することができる。材料の最終的な厚みは、意図される用途の要件に応じて、2mm~6mmとすることができる。次いで、不織布積層体を必要に応じてトリミングすることができ、これは、機械的切断、熱的切断、またはウォータージェット切断によって達成することができる。
【0080】
別の実施形態では、成形物品は熱成形される。このプロセスでは、不織布積層体は、一対の高温圧縮型プレートの間に配置される。次に、プレートは、材料の厚みよりも薄い所望の厚みまで近づけることができる。例えば、不織布積層体の厚みが6mmである場合、プレート間の厚みは2mm~5mmである。成形プレートは、180℃~220℃の範囲の温度に加熱される。次いで、不織布積層体は、低融点コポリエステル(または結合剤)を活性化するために、坪量に応じて1~3分間圧縮される。その後、不織布積層体をその最終形状に変換することができる。典型的には、材料の最終的な厚みは、意図される用途の要件に応じて、2mm~6mmである。
【0081】
不織布積層体および/または成形物品は、高い安定性、軽量、吸音性および/または低コストが必要とされる種々の技術用途に使用することができる。本発明の主題は、特に自動車用途のための、アンダーボディシールド、ホイールアーチライナー、ルーフピラー、荷物もしくは荷物室のための構造部品、カバー材料もしくはパネル材料、または他の構造部品である。
【0082】
本発明の主題はまた、特に自動車用途のための、アンダーボディシールド、ホイールアーチライナー、ルーフピラー、荷物もしくは荷物室のための構造部品、カバー材料もしくはパネル材料、または他の構造部品としての、本発明の不織布積層体または本発明の成形部品の使用である。かかる使用において特に顕著なのは、向上した耐摩耗性および高い耐熱性および不燃性特性の利点、ならびにそれらに関連する利点である。
【0083】
本発明の主題はまた、本発明の不織布積層体を製造する方法であって、
-ニードリングによってニードリングされた安定な不織布層(C)を調製することと、
-層(A)ならびに任意選択で層(B)、(D)および(E)を提供することと、
-層を互いにメルトボンディングすることと、
を含む、方法に関する。
【0084】
この方法は、高い剥離強度をもたらしうるメルトボンディングによる層の容易な結合という効果、およびそれに関連する技術的用途における安定性のために有利である。
【0085】
本発明の例示的な実施形態および本発明の態様を図に示す。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【
図1】本発明による好ましい5層不織布積層体の個々の層を概略的かつ例示的な形態で示す図である。
【
図2】本発明による好ましい3層不織布積層体の個々の層を概略的かつ例示的な形態で示す図である。
【
図3】実用的な例に係る音響測定の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0087】
図1には、本発明による好ましい5層不織布積層体1が示されている。5層不織布積層体1は、層(A)に相当する第1の外側層2と、層(B)に相当する第1の接着剤層3と、層(C)に相当するコア層4と、層(D)に相当する第2の接着剤層5と、層(E)に相当する第2の外側層6とを含む。この積層体の層は、互いに機械的に結合されていないが、互いに排他的にメルトボンディングされている。
【0088】
一実施形態において、有利な繊維調製は、短繊維(c1)および(c2)をコア層(C)にニードリングする前に実施される。より具体的には、ニードリングプロセスの前に、繊維(c1)および(c2)がベールから開繊され、混合され、カーディングされる。その後、繊維(c1)および(c2)はクロスラップされ、ニードリング機に通される。あるいは繊維は、エアレイイング(air-laying)プロセスまたはエアレイド(air-laid)プロセスによって調製され、開繊された繊維は、吸引バンド上に集められ、ニードリングされる。コア4は、後続の成形プロセス中の収縮を回避するために、熱を加えることによって予め収縮される。短繊維(c1)および/または(c2)は、好ましくは10mm~150mm、より好ましくは30mm~100mmの範囲の長さを有している。
【0089】
一実施形態では、コア層(C)は、30~90%の二成分繊維(c2)と組み合わされ、10~70%の未使用またはリサイクルPET短繊維(c1)の混合物を含有している。二成分繊維は、シースがコアの融点よりも低い融点を有するシース-コア構造を有している。二成分繊維は、サイドバイサイド構造、シース-コア構造、セグメント化パイ構造または海島構造などの種々の幾何学的構成を有することができる。
【0090】
一実施形態では、二成分繊維(c2)の結合剤ポリマーは、その融点に基づいて選択される。好ましいシース-コア構成では、コアは好ましくはPETから構成され、シースは好ましくは<200℃の融点を有するコポリエステルから構成される。一つの特に好ましい結合剤繊維は、シース-コアフィラメント構成を有している。コアは、>250℃、つまり、約260℃の融点を有するPETから構成されることができ、シースは、110℃~200℃の範囲のより低い融点を有するコポリエステルから構成することができる。
【0091】
図2には、本発明による好ましいメルトボンディングされた3層不織布積層体7が示されており、層2、4および6は
図1に関して上で概説した通りであるが、層(B)および(D)に対応する接着剤層3および5はない。
【0092】
本発明の不織布積層体、使用、方法および製品は、本発明の根底にある問題を解決する。不織布積層体は、加熱して所望の形状に都合よく成形することができる。不織布積層体は、特に引張強度、曲げ強度、引裂強度および/または熱収縮に関して、寸法的に安定している。不織布積層体は、低コストで、簡単で便利な製造プロセスで入手可能である。スパンボンド繊維またはスパンボンド層を使用する必要はない。不織布積層体は、短繊維からのみ、およびポリエステルおよびコポリエステルからのみ得ることができるため、非常に均一である。したがって、良好なリサイクル性、高い耐熱性および不燃性、軽量を有することができ、高い吸音性を提供することができる。
【実施例】
【0093】
実施例1-不織布積層体の製造
本発明の不織布積層体を、不織布層(A)、(C)および(E)から製造した。
【0094】
外側層(A)および(E):
100%二成分短繊維
材料:コア50%PET、シース50%PETのコポリエステル(CoPET、TM=180℃)
長さ51mm、繊度2.1den
坪量:50g/m2
【0095】
中心層(C):
50%単成分短繊維(c1)/材料:r-PET/短繊維長さ:67mm/繊度:6.7den
50%二成分短繊維
材料:コア50%PET、シース50%PETのコポリエステル(CoPET、TM=180℃)
長さ51mm、繊度4.4den
【0096】
層(C)については、短繊維を50%:50%の比で混合し、カーディングし、クロスラップし、ニードリングした。使用したニードルは、350ニードル/cm2の全ニードリング強度を有するGroz-Beckert36gg細ニードルであった。ニードリング深さは、両側で10mmに設定した。次いで、二成分繊維が活性化され(軟化され)、結合されるように、200℃に加熱された通気オーブン中で、ニードリングされた生地をサーマルボンディングさせた。冷却後、約1050および約1350g/m2の坪量を有する堅い不織布生地が得られた。
【0097】
層(A)および(E)として使用するための不織布を、二成分短繊維生地から製造した。ニードリングを150ニードル/cm2で実施したことを除いて、層(C)について上述したように、繊維をカードし、クロスラップし、ニードリングした。その後、ニードリングされた不織布生地を200℃の温度で20m/分の速度でカレンダー加工してサーマルボンディングさせた。約50g/m2の坪量を有する不織布生地が得られた。
【0098】
層(C)用の不織布生地を一組のカレンダーローラーに通し、そこで外側層(A)および(E)を両側に導入した。カレンダー圧力は、層が互いにメルトボンディングされるように、200℃の温度で、両側で25barであった。約1150g/m2(試料D)および約1450g/m2(試料E)の坪量、ならびに4mmまたは2mmの厚みを有する不織布積層体が得られた。全ての層は、互いにメルトボンディング(サーマルボンディング)されるが、別の層に機械的に結合される層はない。不織布積層体をシートカットした。
【0099】
約1350g/m2の坪量を有する二成分メルトボンディング短繊維の単一層から構成される比較不織布生地(試料A)を調製した。更なる比較不織布生地が調製され、この比較不織布は、約1150g/m2(試料B)および1450g/m2(試料C)の坪量で、内側のニードリングされた短繊維層と、個別にサーマルボンディングされニードリングされていない2つの外側のスパンボンド層とから構成され、3つの層全てをメルトボンディングによって組み合わせた。
【0100】
実施例2:成形物品の製造
実施例1の不織布積層体から、冷間成形によって成形物品を製造した。シートカットされた不織布積層体を、CoPET成分が軟化するように、210℃まで加熱されたオーブンに3分間(通気オーブンの場合)または1分間(赤外線オーブンの場合)導入した。生地を直ちにコールドプレスに移し、そこで材料を高圧(50トン以上)で成形し、曲げ、形成した。成形物品は堅く、機械的に安定である。成形物品は、アンダーボディシールドなどの種々の技術的用途に適している。この結果は、本発明の不織布積層体を、所望の形状の安定した成形物品を形成するために便利に使用できることを実証するものである。
【0101】
実施例3:吸音性
実施例1の不織布積層体の音響特性をアルファキャビン内で試験した。試料を、2mmの空隙を有する壁または地面のいずれかの近くに置いた。吸収係数は、キャビン内の一連のセンサによって測定される。結果を表1に要約する。
図3は、音響周波数(横軸)対吸収係数α
s(縦軸)の結果をグラフで示している。吸音係数α
sが高いほど、試験された試料の音響性能は良好である。結果は、本発明の不織布積層体の吸音性が、短繊維から構成されるが、定義された層を含まない比較試料Aよりもはるかに良好であることを実証するものである。さらに、性能は、外側スパンボンド層を有する比較積層体に匹敵する。本発明の試料Eは、全体的に最良の性能を有している。特に、性能は、自動車のアンダーボディ用途に特に関連する400~800Hzの範囲で特に良好である。
【0102】
【0103】
実施例4:機械的特性
実施例1の不織布積層体の機械的特性を調べた。結果を、4mmの厚みを有する不織布積層体については表2に、2mmの厚みを有する対応する不織布積層体については表3に要約する。曲げ強度はISO 178:2019-04に従って、引張強度はASTM 5034:2009に従って、引裂強度はDIN EN 29073-3:1992-08に従って決定した。
【0104】
曲げ力は、2mmの屈曲撓みについてISO 178:2019に従って決定される。以下の条件を調整した:3点曲げ試験、試料幅30mm、プレフォース0.5N、試験速度10mm/分、半径曲げスタンプ5mm、プローブホルダー間の距離(スパン)64mm、支持ロール間の距離5mm、半径支持ローラー5mm。
【0105】
結果は、本発明の不織布積層体が高い機械的安定性および有利な特性を有することを実証するものである。高い曲げ力、引張強度および引裂強度は、材料が剛性、堅牢性および弾性であることを示す。安定性は、比較の単層製品よりもはるかに高い。さらに、性能は、外側スパンボンド層を有する比較積層体と同様であるか、またはそれよりも良好でありうる。これは、短繊維不織布がより均質であり、より簡便に製造および加工することができるため、有利である。
【0106】
【0107】
【0108】
実施例5:吸水率
実施例1による不織布積層体の吸水率を調べた。試料を水に浸漬し、乾燥させた。吸収された水の量を秤量によってモニタした。結果を表4に要約する。結果は、本発明の不織布積層体の吸水性が、比較の単層短繊維不織布よりもはるかに良好であることを実証するものである。全体的に、吸水性は、アンダーボディシールドなどの技術的用途の要件を満たすのに十分に低い。
【0109】