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特許7562739界磁巻線層間短絡監視装置および界磁巻線層間短絡監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】界磁巻線層間短絡監視装置および界磁巻線層間短絡監視方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/00 20060101AFI20240930BHJP
【FI】
H02P9/00 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023045718
(22)【出願日】2023-03-22
【審査請求日】2023-03-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「2020年度~2022年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/次世代火力発電基盤技術開発/石炭火力の負荷変動対応技術開発/タービン発電設備次世代保守技術開発」」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 真史
(72)【発明者】
【氏名】加幡 安雄
(72)【発明者】
【氏名】平野 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】郡司 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅司
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 広唯
(72)【発明者】
【氏名】安藤 耕治
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-023050(JP,A)
【文献】特開2021-151007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機における界磁巻線の界磁巻線電流値および界磁巻線電圧値に基づいて算出された界磁巻線抵抗値ならびにこれに対応する前記界磁巻線電流値について、所定の時間間隔で得られる複数の前記界磁巻線抵抗値が平均されて得られる平均抵抗値および複数の前記界磁巻線電流値が平均されて得られる平均電流値からなる平均値データに基づいて、所定の数の前記平均値データを、正常時および複数の層間短絡時の界磁巻線抵抗対電流特性曲線とともに表示させるための画像データを生成する画像データ生成部を備えることを特徴とする界磁巻線層間短絡監視装置。
【請求項2】
前記画像データ生成部は、最新の前記平均値データおよびこれに遡る連続した所定の数の前記平均値データを平均値データ群として、前記画像データとしての最新実績画像データを生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の界磁巻線層間短絡監視装置。
【請求項3】
前記画像データ生成部は、選択された過去の期間についての前記平均値データを平均値データ群として、前記画像データとしての過去実績画像データを生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の界磁巻線層間短絡監視装置。
【請求項4】
前記画像データ生成部は、前記平均値データ群を、前記界磁巻線電流値の領域ごとに区分し、区分されたそれぞれの前記領域における代表値を表示する前記過去実績画像データを生成する、
ことを特徴とする請求項3に記載の界磁巻線層間短絡監視装置。
【請求項5】
前記代表値は、前記界磁巻線電流値の前記領域における前記平均値データの最大値、平均値、中間値および最小値の少なくとも一つであることを特徴とする請求項4に記載の界磁巻線層間短絡監視装置。
【請求項6】
前記界磁巻線抵抗値は、前記回転電機の内部の冷却用ガスの温度、圧力および純度の少なくとも一つについての基準値に対する差分の影響を補正した値であることを特徴とする請求項1に記載の界磁巻線層間短絡監視装置。
【請求項7】
外部から指定された条件を受け入れるステップと、
画像データ生成部が、回転電機における界磁巻線の界磁巻線電流値および界磁巻線電圧値に基づいて算出された界磁巻線抵抗値ならびにこれに対応する前記界磁巻線電流値について、所定の時間間隔で得られる複数の前記界磁巻線抵抗値が平均されて得られる平均抵抗値および複数の前記界磁巻線電流値が平均されて得られる平均電流値からなる平均値データに基づいて、所定の数の前記平均値データを、正常時および複数の層間短絡時の界磁巻線抵抗対電流特性曲線とともに表示させるための画像データを生成するステップと、
を有することを特徴とする界磁巻線層間短絡監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、界磁巻線層間短絡監視装置および界磁巻線層間短絡監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントなどのプラント内に設置されるタービン発電機などの回転電機は、一般に、その回転子あるいは固定子内に、磁界を発生するために、互いに絶縁された複数の層状の導体からなる界磁巻線を有している。また、巻線型の電動機等も同様に界磁巻線を有している。
【0003】
図15は、回転電機1の一般的な回転子2を示す概念的な部分斜視図である。また、図16は、回転電機1の一般的な界磁巻線20を示す概念的な斜視図である。
【0004】
回転子2は、回転子鉄心10および界磁巻線20を有する。回転子鉄心10には、周方向に互いに間隔をおいて軸方向に延びた回転子ティース12が形成されている。周方向に互いに隣接する2つの回転子ティース12により軸方向に貫通する回転子スロット11がそれぞれ形成されている。
【0005】
図16に示すように、界磁巻線20は、界磁巻線導体21が、回転子ティース12に巻回され、全体としてコイル状である。界磁巻線20は、回転子スロット11内の部分である回転子鉄心内部分20aと、回転子スロット11外の部分である回転子鉄心外部分20b(図16)を有する。互いに隣接する界磁巻線導体21は、その間に設けられた層間絶縁22により電気的に絶縁されており、互いに隣接する界磁巻線導体21間に短絡電流が流れることが防止されている。回転子鉄心内部分20aが回転子スロット11から径方向外側に突出しないように、回転子スロット11内の径方向外側部分には楔23が設けられている。
【0006】
層間絶縁の劣化もしくは損傷などの要因により、層間短絡と呼ばれる、界磁巻線導体21間の短絡が発生すると、界磁巻線20の有効な巻き数が減少するため、発生する磁界が減少するなど、回転電機1の性能低下を招く。そのため、層間短絡の早期の検知は、回転電機1が設置されている機械やプラント全体の性能維持の観点でも、重要な技術となっている。層間絶縁22は、経年的な劣化に加え、運転状態の変化に伴う巻線の温度変化によっても、劣化が加速される場合もあり、部分負荷や力率が変動するような運用が多い回転電機1においては、層間短絡のリスクは高くなり、その早期検知は特に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭63-031448
【文献】特開2009-300250
【文献】特開2021-23050
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図17は、通常の状態における界磁巻線電流の時間的変化の例を示す概念的なグラフである。横軸は時間、縦軸は界磁巻線電流である。界磁巻線電流は、出力、力率に応じて必要な当該発電量の界磁を発生するための界磁巻線電流の調整により、変動する。変動の周期はたとえば、分オーダであり、さらに、その変動が、さらに長周期で変動する。この際の界磁巻線電流変化量ΔIは、界磁巻線電流の値に対して例えば2%ないし3%程度である。
【0009】
一方、界磁巻線の巻き数が、たとえば100であるとすると、互いに隣接する層間の短絡時には、界磁巻線の抵抗の減少分は100分の1であり、これによる電流の変動値は、1%程度ということになる。すなわち、界磁巻線電流の値の変化のみから、層間短絡の有無を判断することは通常困難である。
【0010】
本発明の目的は、発電所の運転・監視に際して、界磁巻線の層間短絡の有無を容易に把握できる界磁巻線層間短絡監視装置および界磁巻線層間短絡監視方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視装置は、回転電機における界磁巻線の界磁巻線電流値および界磁巻線電圧値に基づいて算出された界磁巻線抵抗値ならびにこれに対応する前記界磁巻線電流値について、所定の時間間隔で得られる複数の界磁巻線抵抗値が平均されて得られる平均抵抗値および複数の前記界磁巻線電流値が平均されて得られる平均電流値からなる平均値データに基づいて、所定の数の前記平均値データを、正常時および複数の層間短絡時の界磁巻線抵抗対電流特性曲線とともに表示させるための画像データを生成する画像データ生成部を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視装置の構成を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視方法の手順を示すフロ―図である。
図3】第1の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視装置のHMIに表示させる操作画像の例を示す図である。
図4】第1の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視装置のHMIに表示させる最新実績画像の例を示す第1の画像である。
図5】第1の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視装置のHMIに表示させる最新実績画像の例を示す第2の画像である。
図6】第1の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視装置のHMIに表示させる最新実績画像の例を示す第3の画像である。
図7】第1の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視装置のHMIに表示させる過去実績表示条件の選択を行った過去実績画像の例を示す第1の画像である。
図8】第1の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視装置の過去データ選択部による過去実績表示条件の選択について示す説明図である。
図9】第1の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視装置のHMIに表示させる過去実績の表示条件の選択を行った過去実績画像の例を示す第2の画像である。
図10】第1の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視装置のHMIに表示させる層間短絡状況画像の表示例である。
図11】第2の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視装置の構成を示すブロック図である。
図12】第2の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視方法の手順を示すフロ―図である。
図13】第2の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視装置の界磁巻線抵抗補正部による補正を説明するグラフである。
図14】第2の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視装置の界磁巻線抵抗補正部による補正の効果を説明するグラフである。
図15】回転電機の一般的な回転子を示す概念的な部分斜視図である。
図16】回転電機の一般的な界磁巻線を示す概念的な斜視図である。
図17】通常の状態における界磁巻線電流の時間的変化の例を示す概念的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視装置およびこれを用いた界磁巻線層間短絡監視方法について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重畳する説明は省略する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視装置100の構成を示すブロック図である。
【0015】
界磁巻線層間短絡監視装置100は、回転電機1の界磁巻線20(図15)の層間短絡を監視する。界磁巻線層間短絡監視装置100は、入力部110、演算部120、記憶部130、画像データ生成部140、ヒューマンマシンインタフェース(HMI)150、および判定制御部160を有する。
【0016】
入力部110は、たとえば、DCS(Distributed Control System)などのプラント内制御装置200から、界磁巻線電流値Iおよび界磁巻線電圧値Vを受け入れて、界磁巻線電流値Iおよび界磁巻線電圧値Vを、たとえば1分などの所定のサンプリング周期Δtで取得する。なお、界磁巻線電流値Iおよび界磁巻線電圧値Vは、それぞれ直接に図示しない界磁巻線電流検出器および界磁巻線電圧検出器から受け入れてもよい。
【0017】
演算部120は、界磁巻線抵抗算出部121、平均値算出部122、ノイズ除去部123、異常判定部124、過去データ選択部125、および代表値算出部126を有する。演算部120は、たとえばコンピュータ、あるいは、それぞれの機能を有する演算器の集合であってもよい。演算部120の各要素について以下に順次説明する。
【0018】
界磁巻線抵抗算出部121は、取得された界磁巻線電圧値Vを界磁巻線電流値Iで除することによって、界磁巻線抵抗値Rを算出する。
【0019】
平均値算出部122は、たとえば10分などの所定の時間間隔ΔTで、取得された界磁巻線電圧値Vおよび界磁巻線電流値Iに基づいて算出された界磁巻線抵抗値Rの平均値、および界磁巻線電流値Iの平均値を算出する。所定の時間間隔ΔTは、応答性と監視の見やすさを勘案して設定される。所定の時間間隔ΔTは、デフォルト値として平均値算出部122が収納しているが、HMI150が外部入力として受け入れることにより、指定、変更可能である。所定の時間間隔ΔTにおけるデータ数Mは、ΔT/Δtの値をたとえば四捨五入した整数である。たとえば、サンプリング周期Δtが1分、所定の時間間隔ΔTが10分であれば、データ数Mは10である。
【0020】
平均値算出部122は、所定の数M個の連続する界磁巻線の抵抗値Rの平均抵抗値RFA(k)および電流値Iの平均電流値IFA(k)をそれぞれ、次の式(1)および式(2)に基づいて算出する。ここで、所定の時間間隔に一貫番号を付した場合の番号、すなわち所定の時間間隔の順番である。
FA(k)=(ΣR(m))/M …(1)
FA(k)=(ΣI(m))/M …(2)
【0021】
ここで、R(m)およびI(m)はそれぞれ、所定の時間間隔ΔTにおけるm番目の界磁巻線抵抗値R、および界磁巻線電流値Iであり、Σは、mが1からMまでの合計値を示す。以下、平均抵抗値RFA(k)とこれに対応する平均電流値IFA(k)の組合せデータを、平均値データと呼ぶこととする。また、連続する複数の平均値データを平均値データ群と呼ぶこととする。なお、所定の数Mは平均値算出部122に収納されているが、HMI150からの入力により指定、変更が可能である。
【0022】
ノイズ除去部123は、取得された界磁巻線電流値Iがノイズ的変動であった場合にその値を、処理対象のデータから除外する。
【0023】
具体的には、R(n)を判定対象とする場合、ノイズ除去部123は、R(n)およびR(n+1)について次の式(3)および式(4)が成立するか否かを確認する。
|(R(n)-RFA(n))/RFA(n)|>η …(3)
|(R(n+1)-RFA(n))/RFA(n)|<η …(4)
【0024】
ここで、RFA(n)は、(R(n)の属するM個からなる(これから平均値が算出されることになる)グル-プの直前のグループの平均値である。また、ηおよびηは判定用の定数であり、HMI150が外部入力(初期条件)として受け入れる。
【0025】
(n)およびR(n+1)について式(3)および式(4)が成立する場合、ノイズ除去部123は、R(n)がノイズ的変動を有する値であると判断し、R(n)は、データから除外する。
【0026】
なお、ここでは、R(n)のみがノイズ的変動を有する値で、R(n+1)は正常範囲の値である場合を例にとって示したが、たとえば、2回などの複数回連続してノイズ的変動を有する値であって、その後、正常範囲に復帰する場合に、この複数回連続してノイズ的変動を有する値をデータから除外することでもよい。回数の上限は、HMI150が外部入力(初期条件)として受け入れることとすればよい。ここでは、ノイズ的変動を除去する方法の一例を述べたが、ノイズの除去がなされれば、これに限定されず、他の方法でもよい。
【0027】
異常判定部124は、界磁巻線20の短絡時の界磁巻線抵抗対電流特性曲線(以下、「特性曲線」という)を用いて、平均電流値IFAに対する界磁巻線20の平均抵抗値RFAを導出し、平均抵抗値RFAに関して、次の式(5)の条件が成立したら、異常と判定する。
FSN-α<RFA<RFSN+α …(5)
【0028】
ここで、式(5)におけるRFSNはN個(N=1~Nmax)の層間短絡時の界磁巻線抵抗値を示す。近傍幅αは、短絡時の状態を判定する幅であり、互いに短絡層数が1つ異なる短絡時の界磁巻線抵抗値同士の差の半分より小さく、かつ確実な判定に必要な幅を確保できる値とし、経験的に設定してもよい。また、最大の層間短絡数Nmax、および近傍幅αは、初期条件の一部であり、HMI150が外部入力として受け入れる。
【0029】
過去データ選択部125は、HMI150に表示させる実績値の表示の条件に基づいて複数の実績値から、表示するものを選択する。ここで、実績値の表示の条件は、HMI150が外部から受け入れ可能である。表示の条件は、たとえば、所定の期間への限定である。期間の限定に対しては、過去データ選択部125は、界磁巻線抵抗算出値記憶部133に、それぞれが受け入れ時間とともに収納されている平均値データから、該当する受け入れ時間の平均値データを抽出する。また、限定として、さらに、たとえば、所定の期間についての全数の平均値データの表示ではなく、代表値算出部126により算出された代表値への限定等があってもよい。
【0030】
代表値算出部126は、過去データ選択部125により選択された期間すなわち時間範囲についてのデータ(平均抵抗値RFA(k)と平均電流値IFA(k)の組合せ)の全体からその代表値を算出する。具体的には、界磁巻線電流の全領域を複数の界磁巻線電流領域に区分し、区分されたそれぞれの電流領域ごとの代表値を算出する。ここで、代表値とは、たとえば、それぞれの電流領域の範囲のデータについての平均抵抗値RFA(k)の最大値、平均抵抗値RFA(k)の平均値および平均抵抗値RFA(k)の最小値である。ただし、代表値はこれに限定されず、たとえば、平均抵抗値RFA(k)の平均値に代えて平均抵抗値RFA(k)の中間値を用いてもよい。ここで、選択された時間範囲、界磁巻線電流領域への区分の仕方(たとえは区分領域についての一律な界磁巻線電流値の幅)は、表示条件のパラメータの一部としてHMI150が外部から受け入れる。
【0031】
画像データ生成部140は、演算部120、記憶部130、あるいは判定制御部160から受け入れた情報に基づいて、HMI150を介して指定された条件に応じてHMI150に画像表示させるためのデータを生成する。画像データ生成部140は、たとえば、コンピュータを作動させるプログラムあるいはアプリケーションであり、演算部120が収納されるコンピュータシステムとは別のコンピュータに収納されているものであってもよい。
【0032】
画像データ生成部140は、後述する操作画像145および層間短絡状況画像146の各画像データを生成し、かつ、それぞれの目的に対応して、特性曲線画像データ生成部141、最新実績画像データ生成部142、および過去実績画像データ生成部143を有する。
【0033】
特性曲線画像データ生成部141は、HMI150による抵抗曲線の表示のための、画像データを生成する。
【0034】
最新実績画像データ生成部142は、平均値算出部122により式(1)および式(2)に基づいて算出された平均値データ(界磁巻線の平均抵抗値RFA(k)および平均電流値IFA(k)の組み合わせ)の最新のF個からなる平均値データ群をHMI150に表示させるための最新実績画像データを生成する。表示される最新の平均値データ群の数Fは、最新実績画像データ生成部142がデフォルト値として収納しているが、HMI150が外部入力として受け入れることにより、指定、変更可能である。
【0035】
HMI150には、この1つの平均値データが1つのポイントとして表示される。また、HMI150には、常にF個のポイントが表示されるように、最新のポイントの追加とともに最も古いポイントの表示を消去する。また、表示される各ポイントは、特性曲線が表示された画像上にオーバプロットされる。すなわち、特性曲線とともに平均値データ群が表示される最新実績画像データが生成される。この、特性曲線に最新実績画像データがオーバプロットされた画面が、デフォルト画面となる。
【0036】
過去実績画像データ生成部143は、過去データ選択部125により選択された表示対象の過去の平均値データについて、代表値算出部126により算出された代表値をHMI150に表示させるための過去実績画像データを生成する。表示されるポイントは、特性曲線が表示された画像上にオーバプロットされる。あるいは、最新実績画像にオーバプロットされる。
【0037】
次に記憶部130について説明する。記憶部130は、入力部110で獲得した測定値すなわち界磁巻線電流値Iおよび界磁巻線電圧値V、演算部120により算出された界磁巻線抵抗値R等の演算値、HMI150が外部から受け入れた表示条件等を記憶、保存する。
【0038】
記憶部130は、初期条件記憶部131、測定値記憶部132、界磁巻線抵抗算出値記憶部133、界磁巻線抵抗特性記憶部134、および過去実績表示条件記憶部136を有する。
【0039】
初期条件記憶部131は、HMI150が外部入力として受け入れたデータを記憶する。初期条件としては、演算部120の演算に必要なパラメータ等、および最新実績の表示条件等がある。
【0040】
測定値記憶部132は、入力部110が取得した界磁巻線電流値Iおよび界磁巻線電圧値Vを記憶、保存する。
【0041】
界磁巻線抵抗算出値記憶部133は、界磁巻線抵抗算出部121により算出された界磁巻線抵抗値Rとこれに対応する界磁巻線電流値Iとの組み合わせを、それらを受け入れた時間とともに順次、記憶、保存する。
【0042】
界磁巻線抵抗特性記憶部134は、HMI150が外部入力として受け入れた正常時および層間短絡時の界磁巻線抵抗値の界磁巻線電流値への依存特性を収納、保存する。この場合、依存特性は、特性式の形式でもよいし、テーブルデータでもよい。また、HMI150が外部入力として、依存特性の修正データを受け入れた場合は、その修正データも収納、保存する。
【0043】
過去実績表示条件記憶部136は、HMI150が、その表示の条件として外部から受け入れた表示用パラメータを記憶、保存する。表示用パラメータについては、順次、後述する。
【0044】
ヒューマンマシンインタフェース(HMI)150は、表示部分と外部入力の受け入れ部分とを備えた、監視員等との対話型の装置である。HMI150は、表示用の画面とともに、たとえば、画面に直接入力可能なタッチパネルであってもよい。あるいは、USBなどの記憶装置の内容を読み込み可能なポート等、あるいは伝送装置等の受け入れ部分を有してもよい。HMI150の表示内容、および外部入力の受け入れ内容の詳細については、後に、図2を参照しながら説明する。
【0045】
判定制御部160は、界磁巻線層間短絡監視装置100内の各要素の動作の進行を制御する。また、判定制御部160は、それぞれの動作の進行に判定が必要な場合に、判定を行う。判定に必要な条件、判定値等は、あらかじめ判定制御部160内に保存されてもよいし、HMI150が外部から受け入れてもよい。
【0046】
図2は、第1の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視方法の手順を示すフロ―図である。
【0047】
まず、入力部110が、界磁巻線電流値Iをプラント内制御装置200から取得(ステップS11)し、界磁巻線電圧値Vをプラント内制御装置200から取得する(ステップS12)。測定値記憶部132は、取得された界磁巻線電流値Iおよび界磁巻線電圧値Vを収納、記憶する。
【0048】
界磁巻線抵抗算出部121は、界磁巻線電圧値Vを界磁巻線電流値Iで除することにより界磁巻線抵抗値Rを算出する(ステップS22)。
【0049】
なお、界磁巻線抵抗算出部121のこの演算に先立って、判定制御部160が、界磁巻線電流値Iが次の式(6)の条件を満たすか否かを判定する(ステップS21)。判定制御部160が条件を満たすと判定した場合(ステップS21 YES)のみ、ステップS22に進み、判定制御部160が条件を満たすと判定しなかった場合(ステップS21 NO)は、ステップS11に戻り次の界磁巻線電流値Iの取得を行う。
Fmin<I<IFmax …(6)
【0050】
ここで、HMI150は、判定用の条件値であるIFminおよびIFmaxを外部入力として取得する。これらの条件値は、界磁巻線電流値Iの通常の変動範囲に対して十分な余裕をもって設定される。
【0051】
次に、ノイズ除去部123は、ステップS22で算出された界磁巻線抵抗値Rについてノイズ的変動データ除去を行う(ステップS23)。すなわち、ノイズ除去部123は、界磁巻線抵抗値Rについてノイズ的変動を有する値であるか否かを判定し、該当する場合は、これをデータから除外する。
【0052】
次に、界磁巻線抵抗算出値記憶部133が、算出された界磁巻線抵抗値Rとそれに対応する界磁巻線電流値Iとの組み合わせデータを受け入れた時間とともに、順次収納、保存する(ステップS24)。
【0053】
次に、判定制御部160は、前回の平均値算出(後述するステップS26)の後の新たな界磁巻線抵抗値Rのデータが、M個蓄積されたか否かを判定する(ステップS25)。判定制御部160がM個蓄積されたと判定しなかった場合(ステップS25 NO)には、ステップS11およびステップS12に戻り、さらに新たなデータを受け入れる。
【0054】
判定制御部160がM個蓄積されたと判定した場合(ステップS25 YES)には、平均値算出部122が、新たなM個の界磁巻線抵抗値Rおよび界磁巻線電流値Iを用いて、前述の式(1)および式(2)によりこれらの平均抵抗値RFA(k)および平均電流値IFA(k)を算出する(ステップS26)。算出された平均抵抗値RFA(k)および平均電流値IFA(k)は、受け入れ時間の平均値とともに平均値記憶部135に順次収納、保存される。
【0055】
次に、異常判定部124が、界磁巻線20の層間短絡時の特性曲線上での、平均電流値IFA(k)に対応する界磁巻線抵抗値RFSを導出する(ステップS27)。なお、層間短絡時の特性曲線が複数ある場合は、全ての特性曲線について、N個(N=1~Nmax)の層間短絡時の界磁巻線抵抗値RFSを導出する
【0056】
次に、異常判定部124は、平均抵抗値RFA(k)について、前述の式(5)の条件の成立の有無を判定する(ステップS28)。すなわち、当該データ(平均抵抗値RFA(k)および平均電流値IFA(k))が短絡時の特性曲線の近傍に存在するか否かを判定する。
FSN-α<RFA<RFSN+α …(5)
【0057】
異常判定部124が式(5)の条件が成立しないと判定(ステップS28 NO)した場合は、ステップS11~ステップS15に戻り新たなデータの受け入れを繰り返す。
【0058】
異常判定部124が式(5)の条件が成立すると判定(ステップS28 YES)した場合は、異常判定部124は、どの短絡層数の特性曲線の近傍にあるかの情報を含めて、異常程度の判定を行う(ステップS29)。また、異常判定部124は、異常程度の判定結果を画像データ生成部140に出力する。画像データ生成部140は、後述する最新実績画像データ生成部142または過去実績画像データ生成部143が生成する画像データにこの異常程度の判定情報の表示を組み込んだ画像データを生成し(ステップS43)、HMI150が表示する(ステップS44)。
【0059】
以上が、異常判定に至る情報の処理の流れである。次に、界磁巻線層間短絡監視方法のうち、画像データ生成部140およびHMI150に係る情報の処理の流れおよび作用を説明する。
【0060】
まず、画像データ生成部140が、操作画像表示用データを作成する(ステップS31)。HMI150が、操作画像表示用データに基づいて、操作画像を表示する(ステップS32)。
【0061】
図3は、第1の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視装置100のHMI150に表示させる操作画像145の例を示す図である。HMI150は、後述する最新実績画像あるいは過去実績画像に並べて、操作画像145を常時表示する。
操作画像145は、初期条件に関するアイコン、過去データに関するアイコン、およびと特性曲線データに関するアイコンを表示している。
初期条件に関するものとしては、電流平均値算出用個数アイコン145a、ノイズ判定用設定値アイコン145b、異常判定用設定値アイコン145c、最新データ表示数アイコン145dがある。
【0062】
電流平均値算出用個数アイコン145aは式(1)および(2)の所定の数Mに関するものである。ノイズ判定用設定値アイコン145bは式(3)のηおよび式(4)のηに関するものである。異常判定用設定値アイコン145cは式(5)のαに関するものである。最新データ表示数アイコン145dは画像に表示する点数Fに関するものである。
【0063】
過去データに関するアイコンとしては、過去データアイコン145e、表示対象時間アイコン145f、電流領域区分アイコン145g、代表値の選択アイコン145h、特性曲線データアイコン145kがある。
【0064】
過去データアイコン145eをタッチすると、過去データの表示に関する処理が開始され、過去実績データが表示される。表示対象時間アイコン145fは、過去データ選択部125が過去実績データ群から選択すべき時間幅、すなわち何時から何時までのものを表示するかの指定に関するものである。電流領域区分アイコン145gは、代表値算出部126が代表値を算出する際のそれぞれの電流領域の範囲、たとえば、区分した電流の幅などに関するものである。代表値の選択アイコン145hは、代表値算出部126が代表値を算出する際の代表値を何にするかに関するものである。
【0065】
特性曲線データアイコン145kは、界磁巻線20の正常時および複数の層間短絡時の界磁巻線抵抗対電流特性曲線の作成用のデータの外部入力に関するものである。たとえば、特性曲線データアイコン145kにタッチすると、特性データを画面で読み込むか、あるいは、USB等により読み込むかの選択肢が表示される。
【0066】
以上説明したそれぞれのアイコンについては、必要に応じて、選択候補を表示するプルダウン機能が付加されている。また、さらに、直接入力も可能である。
【0067】
図3では、操作入力のアイコンが、最新実績画像あるいは過去実績画像とは別の操作画面としてまとまっている場合を例にとって示したが、これに限定されない。たとえば、それぞれのアイコンが、最新実績画像あるいは過去実績画像内に表示されている場合でもよい。また、一つのアイコンが複数個所に表示されていてもよい。
【0068】
図3では、それぞれの操作項目が、アイコンとして設けられている場合を例にとって示したが、これに限定されない。たとえば、それぞれが、タッチパネル方式ではなく、押しボタンなどの個別の操作部分であってもよい。
【0069】
表示された画面に従って、HMI150は、外部入力としての初期条件および特性曲線データを受け入れる(ステップS33)。なお、初期画面としては、操作画面、および後述する特性図上の最新実績データ群の表示としてよいが、これに限定されない。
【0070】
初期条件としては、平均値算出時の式(1)、(2)に用いる個数Mの値、式(3)、(4)によるノイズ除去に用いる判定用の定数ηおよびη、式(5)により界磁巻線電流値Iの値を判定する際の近傍幅α、式(6)による判定用の条件値IFminおよびIFmaxを含む演算部120の演算に必要なデータ、および例えば画像に表示する点数Fを含む最新実績の表示条件がある。初期条件記憶部131は、読み込まれた初期条件を収納、保存する。
【0071】
特性曲線データは、正常時および層間短絡時の界磁巻線抵抗値の界磁巻線電流値への依存特性であり、たとえば、2次関数などの関数で規定してもよいし、テーブルの形でもよい。界磁巻線抵抗特性記憶部134は、特性曲線データを収納、保存する。
【0072】
演算部120は、演算内容に応じて、初期条件記憶部131あるいは界磁巻線抵抗特性記憶部134から必要なデータを読み出す。
【0073】
次に、特性曲線画像データ生成部141が、HMI150により受け入れられた特性曲線を規定するデータを用いて、特性曲線画像データを生成する(ステップS34)。
【0074】
次に、HMI150は、生成された特性曲線画像データに基づいて、特性曲線の画像を表示する(ステップS35)。
【0075】
次に、最新実績画像データ生成部142は、最新実績画像データの生成を行う(ステップS36)。具体的には、初期条件記憶部131に記憶された表示条件に基づいて、平均値記憶部135に収納された平均値データ(平均抵抗値RFA(k)および平均電流値IFA(k))を用いて、最新実績画像データの生成を行う。この際、画像に表示される最新データの点数Fが与えられているので、最も古いデータは削除され、代わりに現在値が追加されるように、画像データが更新される。HMI150は、最新実績画像データ生成部142によって生成された画像データに基づいて最新実績画像を表示する(ステップS37)。
【0076】
図4は、第1の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視装置100のHMI150に表示させる最新実績画像の例を示す第1の最新実績画像142aである。
【0077】
第1の最新実績画像142a内のグラフの横軸の界磁巻線電流(A)で表示しているのは、界磁巻線電流値である。また、縦軸の界磁巻線抵抗値(Ω)で表示しているのは、界磁巻線抵抗値である。
【0078】
第1の最新実績画像142aに表示されている曲線は、界磁巻線抵抗対電流特性曲線(以下「特性曲線」)であり、界磁巻線抵抗値の高い順に、曲線A0は界磁巻線20(図16)の健全時、曲線A1ないしA5はそれぞれ、界磁巻線20の1層ないし5層短絡時、A10は界磁巻線20の10層短絡時の特性曲線を示す。この特性曲線は、特性曲線画像データ生成部141で生成された画像データに基づいて表示される。なお、図4では、6層ないし9層短絡時の特性曲線が示されていないが、表示してもよい。また、何層短絡時までの曲線を表示するかは、HMI150への入力により設定可能である。
【0079】
第1の最新実績画像142aに関する以上の点については、以下の画像においても共通である。
【0080】
第1の最新実績画像142aにおいては、白抜きの丸印で、最新データ群が、特性曲線にオーバプロットされるように表示されている。それぞれの丸印は、(IFA(k),RFA(k))の座標の点を示す。ここで、kは、最新を含めた連続したF個である。表示の数Fは、HMI150が外部入力(初期条件)として受け入れた値である。
【0081】
第1の最新実績画像142aにおいては、すべての点は、健全時の特性曲線A0の近傍にあり、層間短絡は生じていない状態であることを示している。この場合を白抜きの丸印で表示している。
【0082】
図5は、第1の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視装置100のHMI150に表示させる最新実績画像の例を示す第2の最新実績画像142bである。
【0083】
第2の最新実績画像142bにおいては、最新データ群として、白抜きの丸印と白抜きの三角が合計F個表示されている。ここで、白抜きの三角は、特性曲線A1の近傍にあり、1層短絡時の状態であることを示している。なお、点の表示は、状態ごとの区別ができればよく、白抜きの丸印と白抜きの三角に代えて、他の記号で表示してもよいし、色別等で区別してもよい。
【0084】
図6は、第1の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視装置100のHMI150に表示させる最新実績画像の例を示す第3の最新実績画像142cである。
【0085】
第3の最新実績画像142cにおいては、すべての点は、1層短絡時の特性曲線A1の近傍にあり、過去のある時点以降、1層短絡の状態が継続していることを示している。この画面では、過去のいつ頃に1層短絡が発生したかは判断できない。
【0086】
次に、HMI150が、過去実績表示条件を受け入れる(ステップS38)。具体的には、監視員等は、図3に示した操作画像145に基づく操作画面の過去データアイコン145eを選択する。また、表示対象時間アイコン145f、電流領域区分アイコン145g、代表値の選択アイコン145hなどにより、表示条件を入力、あるいは表示変更条件を入力する。
【0087】
過去データアイコン145eが選択された場合は、ステップS33において初期条件とともにHMI150に受け入れられた過去データに関する条件、あるいはステップS38で修正された条件に基づいて過去データ選択部125が、過去データ群を選択する(ステップS39)。さらに代表値算出部126が表示すべく代表値を算出する(ステップS40)。
【0088】
次に、過去実績画像データ生成部143は、HMI150に表示させる過去実績画面用の過去実績画像データを生成する(ステップS41)。HMI150は、これに基づいて過去実績画像を表示する(ステップS42)。
【0089】
図7は、第1の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視装置100のHMI150に表示させる過去実績表示条件の選択を行った過去実績画像の例を示す第1の過去実績画像143aである。
【0090】
第1の過去実績画像143aは、図6に示した1層短絡の状況において、過去のある期間を指定した場合の表示画面である。
【0091】
第1の過去実績画像143aは、過去データ群が、図6に示した第3の最新実績画像142cにオーバプロットされるように表示されている。
【0092】
第1の過去実績画像143aは、過去実績画像データ生成部143によって生成されたものである。表示されている過去データ群は、HMI150が受け入れた条件に基づいて過去データ選択部125により選択されたものである。また、過去データ群のそれぞれについて、代表値算出部126により算出された代表値のみが表示されている。第1の過去実績画像143aの場合は、代表値として、最大値、平均値および最小値が代表値として示されている。
【0093】
第1の過去実績画像143aでは、過去データ群がいずれも特性曲線A0の近傍に存在しており、正常時の期間のものとなっている。第1の過去実績画像143aにおいては、最大値が白抜きの丸、平均値が二重丸、最小値が黒丸で示されている。
【0094】
図8は、第1の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視装置100の過去データ選択部125による過去実績表示条件の選択について示す説明図である。
【0095】
図8では、白抜きの棒で示すように、界磁巻線20が、時間tにおいて、健全状態から1層短絡状態に移行した場合を示している。
【0096】
先に説明した第1の最新実績画像142aを取得した時間tは、界磁巻線20が健全状態にある時間である。また、第2の最新実績画像142bを取得した時間tは、界磁巻線20が健全状態から1層短絡状態に移行した直後の時間である。また、第3の最新実績画像142cを取得した時間tは、界磁巻線20が1層短絡状態にある時間である。
【0097】
また、図7に示した第1の過去実績画像143aは、界磁巻線20が健全状態にある期間を選択した結果であり、健全な状態での過去データ群のもが表示されている。
【0098】
ここで、時間tを含む適切な時間帯を、HMI150に入力すれば、次の図9に示すような第2の過去実績画像143bが得られる。
【0099】
図9は、第1の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視装置100のHMI150に表示させる過去実績表示条件の選択を行った過去実績画像の例を示す第2の過去実績画像143bである。
【0100】
図9は、第2の過去実績画像143bについて、過去データ群として、特性曲線A0の近傍に存在する点と、特性曲線A1の近傍に存在する点の両者を表示している。
【0101】
ここで、過去データ群のうち、1層短絡後のデータについては、最大値、平均値および最小値を健全時と同様の符号で表示しているが、判別しやすいように別の符号や色別により区別してもよい。
【0102】
以上のように、本実施形態による界磁巻線層間短絡監視装置100によれば、界磁巻線抵抗対電流特性曲線にオーバプロットした最新実績データ群を表示することにより、界磁巻線20が健全なのか層間短絡が生じた状態なのを、表示画面から把握することができる。この際、データの処理の上でも、特異点的に変化したデータを除去し、また、平均値を用いることにより、安定した状態表示を維持することができる。
【0103】
また、過去データについて、期間を指定して選択することができるので、層間短絡が生じた等の界磁巻線20の状態の変化の発生時点を、過去に遡って把握することができる。
【0104】
図10は、第1の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視装置のHMI150に表示させる層間短絡状況画像146の表示例であり、画像データ生成部140により生成される。
【0105】
層間短絡状況画像146はグラフ形式であり、横軸は時間、縦軸は短絡総数Nである。ここで、短絡層数Nとは、層間短絡を生じている層間の総数をいうものとする。すなわち、たとえば、i番目の層と(i+1)番目の層間に短絡が複数生じても、性能的な影響の違いは殆どないことから、短絡層数Nは1とカウントする。i番目の層と(i+1)番目の層との層間短絡と、j番目の層と(j+1)番目の層との層間短絡との両者が生じている場合は、短絡層数Nは2とカウントする(ただし、kはjとは異なる数であるとする。)(j+1)とkとが同じ層である、すなわち連続した層の層間短絡が生じた場合であってもよい。
【0106】
縦軸に平行で、kないし(k+3)と表示してある破線は、それぞれ、プラントの第k回定期検査ないし第(k+3)回定期検査の、現状計画でのそれぞれの開始時期を示す。
【0107】
階段状の実線は、時間とともに短絡層数Nが1ずつ増加する状況を示す。図9などに示すように、層短絡時の特性曲線が、A0,A1、…のように複数表示されている場合は、図10に示すように、短絡層数の増加の動向を目視により把握でき、以下のような効果がある、
【0108】
通常、たとえば発電機では、界磁が所定の値になるように制御されている。層間短絡が生じると、コイルのターン数が減少することになるため、界磁の強さを維持するために、ターン数が減少した分、界磁巻線電流を増加させることになる。増加した界磁巻線電流は、界磁巻線20が健全な場合には不要だった電流であり、いわば無駄電流が生じている。また、界磁巻線電流の増加により、界磁巻線での銅損が増加し、冷却負荷も増加する。
【0109】
したがって、短絡層数Nが大きくなると、上述のように、無駄電流の発生、冷却負荷の増加をもたらすが、構造的にも、その分、電気絶縁部を含めて界磁巻線20にとって運転条件が厳しい側に移行する。この傾向は、短絡層数Nが大きくなるほど大きくなる。したがって、短絡層数Nの時間に対する増加傾向は、短絡層数Nが大きくなるほど直線的ではなく、傾きが徐々に増加することになる。この結果、ある短絡層数Nになると、許容できずに界磁巻線20を交換する必要があると判断せざるを得ない状況となる。
【0110】
たとえば、短絡層数NがNとなったら、上述のような理由で、界磁巻線20を交換する必要があるとする。ここで、短絡層数Nは、発電機の製作者が提示してもよいし、発電機の所有者が製作者と相談して設定してもよい。
【0111】
界磁巻線20の交換は、当然ながら、プラントが停止中の定期検査期間中に実施する必要がある。界磁巻線20の交換は、交換用の界磁巻線20の各要素および付属品を準備した上で実施する必要がある。また、界磁巻線20の交換は、発電機ロータの引き抜きを要することから、定期検査中の工程の調整、タービン操作床等での分解品の配置上の調整などを要する。また、所有者(運転者)として、その予算を確保する必要がある。
【0112】
すなわち、短絡層数NがNとなることが判明してから、最初の定期検査でそれを実施することは、通常難しい。このため、たとえば、適当な短絡層数N(N<N)となった時点で、事前に、所有者(運転者)が認識する必要がある。
【0113】
計算上、短絡層数NがNとなる時期を予測することは難しいが、図10の例に示すような層間短絡状況画像146によれば、ある程度、短絡層数NがNとなる時期を想定することが可能となり、適切な準備を行うことができる。
【0114】
以上のように、本実施形態による界磁巻線層間短絡監視装置100によれば、界磁巻線20の状態変化の発生時点を正確に把握することにより、界磁巻線20の劣化の状況の動向を把握することができる。この結果、今後の各定期検査のいずれの時期に点検、交換などの処置を行うかについての見通しを確保できる。今後の見通しを確保することにより、予算措置をすべき時期も明確となり、しかるべき処置を確実に実施することが可能となる。
【0115】
[第2の実施形態]
図11は、第2の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視装置100aの構成を示すブロック図である。
【0116】
本実施形態は、第1の実施形態の変形である。界磁巻線層間短絡監視装置100aの演算部120aは、界磁巻線抵抗補正部127をさらに有する。また、入力部110は、プラント内制御装置200aから、ガス温度Tg、ガス圧力Pg、およびガス純度Mgの値を受け入れ、取得する。ここで、ガス温度Tg、ガス圧力Pg、およびガス純度Mgは、回転電機1の機内に封入された水素などの冷却用ガスのそれぞれの状態値である。なお、入力部110は、それぞれの検出器(図示しない)からの出力を直接受け入れてもよい。なお、HMI150が表示する画面については、第1の実施形態と同様である。
【0117】
界磁巻線抵抗補正部127は、入力部110により取得されたガス温度Tg、ガス圧力Pg、およびガス純度Mgのそれぞれの値を用いて、界磁巻線抵抗算出部121によって算出された界磁巻線抵抗値Rを補正し、新たな界磁巻線抵抗値Rとする。
【0118】
補正は、ガス温度Tg、ガス圧力Pg、およびガス純度Mgのそれぞれの基準値Tg、Pg、Mgに対する差分に基づいて行う。この際、差分が大きすぎない場合は、1次式を用いてもよい。ここで、差分が大きすぎないとは、後述する層間短絡の状態との区別ができる程度の精度が確保できる範囲であることである。ここで、基準値は、初期条件記憶部131が記憶してもよいし、HMI150が外部入力として受け入れてもよい。
【0119】
例えば、ガス温度Tgの補正の場合、界磁巻線抵抗算出部121によって算出された界磁巻線抵抗値をRF0とし、新たな界磁巻線抵抗値Rとすると、界磁巻線抵抗補正部127は、次の式(7)により新たな界磁巻線抵抗値Rを算出する。
=[1+β・{Tg・G(Pg,Pg,Mg,Mg)-Tg}]・RF0
…(7)
【0120】
ここで、βは界磁巻線20を構成する材料の温度係数である。βは、温度の単位を[℃]または[K]とし、Rの単位を[Ω]とすれば、例えば巻線が銅の場合は、0.00393などの値が用いられるが、巻線材料や回転電機1の運転温度等の条件によって異なる値を用いてもよい。また、G(Pg,Pg,Mg,Mg)は、ガス圧力Pgおよびガス純度Mgならびにこれらの基準値PgおよびMgの関数である。関数Gの値は、理論的には、ガスの比熱や粘性係数、流速等の条件によって決まるものであるが、実用的には、実運転データに基づいたフィッティング等によって定めることができる。
【0121】
なお、式(7)では、ガス温度Tg、ガス圧力Pg、およびガス純度Mgの全ての影響を考慮したが、これらのうちの1つないし2つの組合せでもよい。なお、少なくとも、ガス温度Tgが含まれていることが好ましい。
【0122】
記憶部130の界磁巻線抵抗算出値記憶部133aは、補正され得られた新たな界磁巻線抵抗値Rを収納、保存する。
【0123】
図12は、第2の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視方法の手順を示すフロ―図である。以下、図2に示す第1の実施形態における手順と異なる部分についてのみ説明する。
【0124】
まず、入力部110が、界磁巻線電流値Iおよび界磁巻線電圧値Vとともに、プラント内制御装置200aからの、ガス温度Tgの取得(ステップS13)、ガス圧力Pg、の取得(ステップS14)、ガス純度Mgの取得(ステップS15)を行う。図12にはガス温度やガス圧力、ガス純度に関して、「回転子周囲」あるいは「周囲」と例示しているが、例えば、ガスクーラ出口のように、回転子から離れた位置での測定値を用いてもよい。
【0125】
次に、界磁巻線抵抗補正部127は、ステップS22において界磁巻線抵抗算出部121により算出された界磁巻線抵抗値Rを、前述の式(7)を用いて補正する(ステップS22a)。補正され得られた新たな界磁巻線抵抗値Rは、ノイズ的変動データ除去(ステップS23)の後に、界磁巻線抵抗算出値記憶部133aにそれが受け入れた時間とともに収納、記憶される(ステップS24)。その他の手順は、第1の実施形態と同様である。
【0126】
図13は、第2の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視装置100aの界磁巻線抵抗補正部127による補正を説明するグラフである。
【0127】
図13に示すグラフの横軸は界磁巻線電流値I、縦軸は界磁巻線抵抗値Rである。Pで示しているのは、それぞれの状態におけるグラフの座標における(界磁巻線電流値I,界磁巻線抵抗値R)である。
【0128】
いま、状態が最初にP01の位置(界磁巻線電流値IF0)にあったとする。ここで、界磁巻線電流値がIF0からIF1に増加したとする。この場合、界磁巻線20のジュール熱が増加し界磁巻線20の温度が上昇するので、界磁巻線抵抗値が増加し、状態P02に移行する。すなわち、P01とP02とは、電流値の変動のみによる状態の変化である。ただし、この間の回転電機1の機内の冷却用ガスの状態量は基準値で一定であるとする。このような組み合わせの集合により、特性曲線A(T,P,M)が得られる。
【0129】
一方、回転電機1の機内の冷却用ガスの状態量が、ガス温度Tg、ガス圧力Pg、およびガス純度Mgから、ガス温度Tg、ガス圧力Pg、およびガス純度Mgに変化すると、状態は、P02から移動し、たとえばPb(Tg,Pg,Mg)となる。Pb(Tg,Pg,Mg)は、特性曲線A(T,P,M)とは異なる特性曲線A(T,P,M)上の点である。
【0130】
界磁巻線抵抗補正部127は、このような、Pb(Tg,Pg,Mg)の状態を、基準状態Pb(Tg,Pg,Mg)に戻すように補正し、基準状態における界磁巻線抵抗値RF2を算出するものである。
【0131】
図14は、第2の実施形態に係る界磁巻線層間短絡監視装置100aの界磁巻線抵抗補正部127による補正の効果を説明するグラフである。図14に示すグラフの横軸は界磁巻線電流値I、縦軸は界磁巻線抵抗値Rである。
【0132】
図14で、A(T,P,M)は基準状態の特性曲線、特性曲線B(T,P,M)、特性曲線B(T,P,M)は、基準状態とは異なる2つの状態の特性曲線である。また、As(T,P,M)は基準状態での1層短絡時の特性曲線である。
【0133】
今、回転電機1の機内のガスの状態値が変化して、最初に状態P(T,P,M)にあったものが、状態P(T,P,M)に、すなわち特性曲線B(T,P,M)に移行した場合を考える。図14に示すように、特性曲線B(T,P,M)が1層短絡時の特性曲線As(T,P,M)に近い場合、前述の式(5)の判定の幅内に入り、1層短絡が発生したとの誤判断が生ずる可能性がある。
【0134】
本実施形態による界磁巻線層間短絡監視装置100aによれば、状態P(T,P,M)から、状態P(T,P,M)に戻すように補正をするので、1層短絡が発生したとの誤判断が生ずることがない。
【0135】
以上、説明した実施形態によれば、発電所の運転・監視に際して、界磁巻線の層間短絡の有無を容易に把握できる界磁巻線層間短絡監視装置および界磁巻線層間短絡監視方法を提供することが可能となる。
【0136】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。たとえば、実施形態では、界磁巻線が回転子側に設けられている場合を例にとって説明したが、これに限定されない。たとえば、固定子側に設けられている場合であってもよい。また、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。
【0137】
さらに、実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0138】
1…回転電機、2…回転子、10…回転子鉄心、11…回転子スロット、12…回転子ティース、20…界磁巻線、20a…回転子鉄心内部分、20b…回転子鉄心外部分、21…界磁巻線導体、22…層間絶縁、23…楔、100、100a…界磁巻線層間短絡監視装置、110、110a…入力部、120…演算部、121…界磁巻線抵抗算出部、122…平均値算出部、123…ノイズ除去部、124…異常判定部、125…過去データ選択部、126…代表値算出部、127…界磁巻線抵抗補正部、130、130a…記憶部、131…初期条件記憶部、132…測定値記憶部、133…界磁巻線抵抗算出値記憶部、134…界磁巻線抵抗特性記憶部、135…平均値記憶部、136…過去実績表示条件記憶部、140…画像データ生成部、141…特性曲線画像データ生成部、142…最新実績画像データ生成部、142a…第1の最新実績画像、142b…第2の最新実績画像、142c…第3の最新実績画像、143…過去実績画像データ生成部、143a…第1の過去実績画像、143b…第2の過去実績画像、145…操作画像、145a…電流平均値算出用個数アイコン、145b…ノイズ判定用設定値アイコン、145c…異常判定用設定値アイコン、145d…最新データ表示数アイコン、145e…過去データアイコン、145f…表示対象時間アイコン、145g…電流領域区分アイコン、145h…代表値の選択アイコン、145k…特性曲線データアイコン、146…層間短絡状況画像、150…ヒューマンマシンインタフェース(HMI)、160…判定制御部、200、200a…プラントの制御装置
【要約】
【課題】発電所の運転・監視に際して、界磁巻線の層間短絡の有無を容易に把握可能とする。
【解決手段】実施形態によれば、界磁巻線層間短絡監視装置100は、回転電機における界磁巻線の界磁巻線電流値Iおよび界磁巻線電圧値Vに基づいて算出された界磁巻線抵抗値ならびにこれに対応する前記界磁巻線電流値について、所定の時間間隔で得られる複数の界磁巻線抵抗値と複数の前記界磁巻線電流値をそれぞれ平均して算出された平均抵抗値および平均電流値からなる平均値データに基づいて、所定の数の平均値データを平均値データ群として、正常時および層間短絡時の界磁巻線抵抗対電流特性曲線とともに表示させるための画像データを、ヒューマンマシンインタフェース150を介して指定された条件に応じて生成する画像データ生成部140を備えることを特徴とする
【選択図】図1
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