(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20240930BHJP
【FI】
H05K9/00 R
(21)【出願番号】P 2023077284
(22)【出願日】2023-05-09
(62)【分割の表示】P 2020049721の分割
【原出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】310021766
【氏名又は名称】株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【氏名又は名称】竹居 信利
(74)【代理人】
【識別番号】100102716
【氏名又は名称】在原 元司
(72)【発明者】
【氏名】野澤 鉄文
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-148026(JP,A)
【文献】特開2002-141811(JP,A)
【文献】特開2004-165382(JP,A)
【文献】特開平08-222877(JP,A)
【文献】特開平09-283962(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031807(WO,A1)
【文献】特開2005-129866(JP,A)
【文献】特開2001-007589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板と、
前記プリント基板に搭載される複数のコネクタと、
前記プリント基板に搭載され、それぞれ前記複数のコネクタのうち対応するコネクタを経由する通信を制御する複数の通信制御回路と、
前記プリント基板に対向して配置されるシールド部材と、
を備え、
前記プリント基板の表面側の導電体層内には、平面視において前記複数の通信制御回路を含むシールド領域の外周に沿って延伸する部分が形成され、
前記複数のコネクタは、いずれも平面視において前記シールド領域の外側に配置され、
前記延伸する部分には、前記シールド部材を前記プリント基板にネジ止めするための複数のネジ穴、及び前記シールド部材側に突出する複数の突起部が配置され、
前記シールド部材は、前記シールド領域を覆い、前記延伸する部分と対向する部分の少なくとも一部が前記ネジ穴を通るネジ、及び前記突起部と接触することによって、前記延伸する部分と電気的に接続されるように前記プリント基板に対して固定され、
前記延伸する部分内において隣接する2個の前記ネジ穴の間には、2個以下の数の前記突起部が配置されて
おり、
前記延伸する部分のうち、前記突起部が形成される領域の周囲の導電体層は誘電体層に覆われており、前記突起部が形成される領域には当該誘電体層が配置されておらず、
前記突起部は、前記延伸する部分の、前記誘電体層に覆われず前記導電体層が露出している領域に配置されたはんだによって形成されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記プリント基板は多層基板であって、
前記複数のコネクタの一つは、前記プリント基板の内層に配置された信号線を介して対応する通信制御回路と接続されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子機器において、
前記シールド領域内において前記プリント基板の表面に配置された第1の信号線と、前記プリント基板の裏面に配置され、前記プリント基板を貫通するビアを介して前記第1の信号線に接続される第2の信号線と、をさらに含み、
前記複数のコネクタの一つは、前記第1及び第2の信号線を介して当該コネクタに対応する通信制御回路と接続されている
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のコネクタを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子機器は複数の回路素子が搭載されたプリント基板を内蔵している。これらの回路素子の中には、他の回路素子の動作や無線通信などに影響を及ぼすノイズとなる電磁場を発生させるものがある。このようなノイズの伝搬を防止するために、金属板などによって形成されたシールド部材によって、ノイズの発生源となる回路素子を覆うことが行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ノイズの発生源となる回路素子を覆うようにシールド部材を配置しても、シールド部材内部の回路素子と外部のコネクタとを接続する信号線がプリント基板表面に存在すると、シールド部材で完全に回路素子を覆うことが難しくなる。
【0004】
本発明は上記実情を考慮してなされたものであって、その目的の一つは、プリント基板上の回路素子が発生させるノイズの伝搬を効果的に抑えることができる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る電子機器は、プリント基板と、前記プリント基板に搭載される複数のコネクタと、前記プリント基板に搭載され、それぞれ前記複数のコネクタのうち対応するコネクタを経由する通信を制御する複数の通信制御回路と、前記プリント基板に対向して配置されるシールド部材と、を備え、前記プリント基板の表面には、前記複数の通信制御回路を含むシールド領域を分断することなく囲む環状のグラウンドパターンが形成され、前記複数のコネクタは、いずれも前記シールド領域を囲む前記グラウンドパターンの外側に配置され、前記シールド部材は、前記シールド領域を覆い、前記グラウンドパターンと対向する部分が前記グラウンドパターンと電気的に接続されるように前記プリント基板に対して固定されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の実施の形態に係る電子機器に内蔵されるプリント基板の平面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る電子機器に内蔵されるプリント基板の底面図である。
【
図4】上側シールド部材を底面側から見た斜視図である。
【
図6】下側シールド部材を上面側から見た斜視図である。
【
図7】プリント基板表面に形成されるグラウンドパターンの一例を示す部分拡大図である。
【
図8】コネクタと通信制御回路との接続形態の一例を示す断面図である。
【
図9】コネクタと通信制御回路との接続形態の別の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
【0008】
電子機器1は、例えば家庭用ゲーム機等であって、プリント基板(プリント配線板)10と、上側シールド部材30と、下側シールド部材40と、を含んで構成されている。
図1は、本発明の一実施形態に係る電子機器1に内蔵されるプリント基板10の表面側の様子を示す模式的な平面図である。また、
図2はプリント基板10の裏面側の様子を示す模式的な底面図である。
【0009】
図1に示されるように、プリント基板10の表面には各種の回路素子が搭載されている。また、図では省略されているが、プリント基板10裏面にも各種の回路素子が配置されてよい。なお、本実施形態においてプリント基板10は、その表面、及び裏面だけでなく内側にも信号層(内層)を有する多層基板であるものとする。
【0010】
プリント基板10の外周に沿って、複数のコネクタが配置されている。これらのコネクタは、外部の通信機器、又は電子機器1に内蔵されるデバイスとの接続に用いられる。具体的に、プリント基板10の表面側には、映像信号コネクタ11、LANコネクタ12、及び2個のUSBコネクタ13が配置されている。また、裏面側には、記憶デバイス接続コネクタ14が配置されている。
【0011】
そして、プリント基板10の表面には、これらのコネクタを介したデータ通信を制御するための集積回路(以下、通信制御回路という)が配置されている。具体的に、プリント基板10の表面には、通信制御回路として、SoC(System-on-a-chip)15、映像信号制御回路16、LAN通信制御回路17、及び記憶デバイス制御回路18が配置されている。また、プリント基板10表面にはLAN用パルストランス19も配置されている。なお、プリント基板10の表面及び裏面には、これ以外にも各種の回路素子が配置されてよい。また、
図1及び
図2においては、プリント基板10の表面及び裏面に配置される信号線の図示は省略されている。
【0012】
映像信号コネクタ11は、映像信号を外部の映像表示装置に送信するために用いられる。映像信号コネクタ11は、例えばHDMI(登録商標)規格に従って映像信号を送信するためのコネクタであってよい。映像信号制御回路16は、映像信号コネクタ11を介した外部の映像表示装置との間のデータ通信を制御する通信制御回路である。具体的に映像信号制御回路16は、HDMI等の規格に従って映像信号を生成し、映像信号コネクタ11に対して出力する。
【0013】
LANコネクタ12は、電子機器1をLAN(ローカルエリアネットワーク)に接続するために用いられる。LANコネクタ12は、例えばイーサネット(登録商標)規格に従ってデータを送受信する。LAN通信制御回路17は、LANコネクタ12を介したデータ通信を制御する通信制御回路である。具体的にLAN通信制御回路17は、LANコネクタ12経由で送信するデータの符号化、及びLANコネクタ12経由で受信した信号の復号化を行う。LAN用パルストランス19は、LANコネクタ12とLAN通信制御回路17との間の通信経路に配置され、通信を中継する受動素子である。
【0014】
2個のUSBコネクタ13は、それぞれUSBデバイス機器を接続するために用いられる。SoC15は、電子機器1全体の動作を制御するための各種の情報処理を実行する集積回路である。特に本実施形態では、SoC15はUSBコネクタ13を介したシリアル通信を制御する通信制御回路としても機能する。具体的にSoC15は、USBコネクタ13経由でUSBデバイス機器に対して送信すべき信号を出力したり、USBコネクタ13経由でUSBデバイス機器から受信した信号を処理したりする。
【0015】
記憶デバイス接続コネクタ14は、電子機器1が内蔵するSSD等の記憶デバイス(不図示)を接続するために用いられる。記憶デバイス制御回路18は、記憶デバイスに対するアクセスを制御する通信制御回路である。記憶デバイス制御回路18は、記憶デバイス接続コネクタ14経由で記憶デバイスに対するデータの書き込みや読み出しなどのアクセス制御を実行する。
【0016】
プリント基板10の表面及び裏面には、プリント基板10に搭載される電子回路の基準電位となるグラウンドパターンが形成されている。
図1及び
図2においては、グラウンドパターンは網がけによって示されている。本実施形態では、このグラウンドパターンによって、プリント基板10の表面及び裏面のそれぞれにシールドエリアが画定されている。具体的に、プリント基板10の表面には、外周をグラウンドパターンG1によって囲まれたシールドエリアA1が形成されている。また、プリント基板10裏面には、外周をグラウンドパターンG2によって囲まれたシールドエリアA2が形成されている。
【0017】
本実施形態では、この表面及び裏面それぞれのシールドエリアに対して、そのエリア内で発生したノイズをエリア外に伝搬させないよう制御するノイズ対策が実現される。このようなノイズ対策は、上側シールド部材30及び下側シールド部材40によって実現される。上側シールド部材30及び下側シールド部材40は、いずれも導電性の金属板を成型して製造されており、凹状の部分を有する。これらのシールド部材は、それぞれ、1枚の金属板に絞り加工などの成形加工を施すことで製造できる。
【0018】
上側シールド部材30は、プリント基板10の表面に対向するように配置される。
図3は、上側シールド部材30の上面(プリント基板10表面に対向する面と逆側の面)を示す平面図であって、
図4は上側シールド部材30を底面(プリント基板10表面に対向する面)側から見た斜視図である。これらの図に示されるように、上側シールド部材30は、その中心部に、プリント基板10と対向する側の面が凹状に形成されたシールド部分31を有する。このシールド部分31が平面視においてシールドエリアA1と重なるように、上側シールド部材30はプリント基板10に対して固定される。なお、シールド部分31の中央近傍の矩形の開口は、SoC15に取り付けられるヒートシンクによって塞がれる。
【0019】
シールド部分31の外周を囲むように、底面側が平坦な環状部分32が形成されている。上側シールド部材30がプリント基板10に固定された状態で、この環状部分32はグラウンドパターンG1と電気的に接続される。なお、
図3において環状部分32は網がけによって示されている。
【0020】
図1に示されるように、プリント基板10に搭載される各種のコネクタ(映像信号コネクタ11、LANコネクタ12、及び2個のUSBコネクタ13)は、いずれもシールドエリアA1を囲むグラウンドパターンG1の外側に配置されている。一方、これらのコネクタを介した通信を制御する通信制御回路(SoC15、映像信号制御回路16、LAN通信制御回路17、及び記憶デバイス制御回路18)は、いずれもシールドエリアA1の内側に配置されている。このシールドエリアA1をシールド部分31で覆うように上側シールド部材30を配置することによって、シールドエリアA1内の各通信制御回路が放射するノイズを外部に伝搬させないようシールドすることができる。なお、本実施形態では、受動素子であるLAN用パルストランス19はシールドエリアA1の外側に配置されている。
【0021】
ここで、シールドエリアA1の外側に配置されたコネクタと、シールドエリアA1の内側に配置されてそのコネクタを介した通信を制御する通信制御回路とは、当然ながら信号線によって接続される必要がある。この信号線を単純にプリント基板10表面に形成されたプリント配線によって構成することとすると、そのプリント配線が通過する箇所でグラウンドパターンG1が分断されてしまうことになる。このようにグランドパターンG1が分断される箇所が存在すると、その箇所からノイズがシールドエリア外に漏洩するおそれがある。そこで本実施形態では、後述するような構成によって、コネクタと通信制御回路とを結ぶ信号線によってグラウンドパターンG1が分断されないようにし、グラウンドパターンG1が途切れることなくシールドエリアA1の外周を囲むように環状に形成されている。
【0022】
さらに上側シールド部材30は、プリント基板10表面のグラウンドパターンG1の外側の領域と平面視において対向する外周部分33を有している。この外周部分33も、シールド部分31と同様にプリント基板10側の面が凹状に形成されている。外周部分33の一部は、映像信号コネクタ11、LANコネクタ12、及び2個のUSBコネクタ13と平面視において重なっており、この重なる箇所でこれらのコネクタのハウジングと電気的に接続されている.具体的に外周部分33は、ガスケットや金属バネなどの導電部材を介して各コネクタのハウジングと接触するように構成されている。これにより上側シールド部材30は、1個の部材で、シールドエリアA1内をシールドするとともに、同時に各コネクタのハウジングを接地することができる。
【0023】
下側シールド部材40は、プリント基板10の裏面に対向するように配置される。
図5は、下側シールド部材40の底面(プリント基板10裏面に対向する面と逆側の面)を示す底面図であって、
図6は下側シールド部材40を上面(プリント基板10裏面に対向する面)側から見た斜視図である。
【0024】
下側シールド部材40についても、上側シールド部材30と同様に、プリント基板10裏面のシールドエリアA2と対向するシールド部分41、シールドエリアA2を囲むグラウンドパターンG2と対向する環状部分42、及びグラウンドパターンG2の外側の領域と対向する外周部分43を備えている。また、プリント基板10の裏面においても、グラウンドパターンG2は途中で分断することなくシールドエリアA2を囲むように環状に形成されている。下側シールド部材40の環状部分42は、上面側が平坦に形成され、このグラウンドパターンG2と電気的に接続される。これにより、シールドエリアA2内で発生するノイズを下側シールド部材40によって遮蔽し、外部に伝搬させないようにすることができる。なお、
図5において環状部分42は網がけによって示されている。また、外周部分43も、上側シールド部材30の外周部分33と同様に、プリント基板10の切り欠き部分に配置されたガスケット等を介して映像信号コネクタ11やUSBコネクタ13のハウジングと電気的に接続されてもよい。
【0025】
上側シールド部材30の環状部分32と下側シールド部材40の環状部分42とは、一部を除いて平面視において重なるように形成されており、この部分には間隔をおいてネジ穴Hが設けられている。また、これらの環状部分と平面視において重なるプリント基板10のグラウンドパターン内の位置にもネジ穴Hが形成されている。これらのネジ穴Hを介して上側シールド部材30、プリント基板10、及び下側シールド部材40をネジ止めすることによって、各シールド部材がプリント基板10に対して固定されるとともに、環状部分32及び環状部分42を電気的にグラウンドパターンG1及びG2に接続させることができる。
【0026】
さらに、環状部分32及び環状部分42のそれぞれには、対向するシールド部材に向けて突出する複数の突起部Pが配置されている。この突起部Pは、例えばはんだなどの導電材料をグラウンドパターンGに接着することによって形成されている。このような突起部Pを環状部分32又は42と対向する位置に設けることによって、この突起部Pの先端が環状部分32又は42と接触し、確実にシールド部材を電気的にグラウンドパターンG1又はG2に接続させることができる。
【0027】
ネジ穴H及び突起部Pは、シールドエリアの外周に沿って延伸する環状のグラウンドパターンに沿って、互いに所定値以内の間隔で隣接するように配置される。すなわち、ネジ穴H及び突起部Pは、隣接するネジ穴H又は突起部Pとの間の距離が所定値以内になるように配置される。この所定値は、シールドエリア内で放射されるノイズの周波数に対応する波長の1/4以下の電気長になるように決定される。これにより、ノイズのシールドエリア外への伝搬を効果的に抑制することができる。また、隣接するネジ穴Hの間に配置する突起部Pの数は、1個又は2個とすることが望ましい。これにより、各突起部Pの両側に突起部Pが並ぶことがなく、いずれの突起部Pもどちらか一方はネジ穴Hと隣接するようにすることができる。こうすれば、ネジ穴Hをネジ止めする際の締結力によって突起部Pも対向するシールド部材と確実に接触させることができる。
【0028】
また、突起部Pをシールド部材と接触させる場合、環状部分32又は42と対向するグラウンドパターンの全てを露出させる必要はなく、突起部Pを形成する領域、及びネジ穴Hを囲む領域だけを表面に露出させればよい。
図7は、この場合のプリント基板10表面の様子を示す部分拡大図である。この図においては、グラウンドパターンG1が形成される領域が破線で示されている。グラウンドパターンG1は帯状に形成されているが、そのうちネジ穴Hの周囲の領域と、隣接するネジ穴Hの間で突起部Pが形成される2か所の円形領域Cだけがプリント基板10表面に露出している。そして、突起部Pが形成される円形領域Cを囲む領域については、プリント基板10表面の誘電体層に覆われたままになっており、導電体層が露出していない。この円形領域Cにはんだ付けを行うことにより、表面張力によって容易に円形領域C内に突起部Pを形成することができる。
【0029】
なお、グラウンドパターンG1及びG2は、いずれもシールドエリアの外周だけでなく、いずれかのコネクタを囲む領域など、その他の領域にも形成されてよい。例えば
図1では、映像信号コネクタ11の周囲にC字状にグラウンドパターンG1が形成されており、これにより映像信号コネクタ11はプリント基板10外周を除く三方をグラウンドパターンG1に囲まれている。上側シールド部材30は、この映像信号コネクタ11を囲むグラウンドパターンG1に対しても環状部分32が接触するように形成されている。さらに、プリント基板10の外周に沿って映像信号コネクタ11の両側にネジ穴Hが配置されており、このネジ穴Hを介してネジ止めされることにより、上側シールド部材30は、映像信号コネクタ11と平面視において重なる領域が映像信号コネクタ11に向けて押しつけられるように固定される。これにより、上側シールド部材30の外周部分33が映像信号コネクタ11のハウジングに確実に接触するようにするとともに、映像信号コネクタ11及び映像信号コネクタ11に接続される映像信号ケーブルから放射されるノイズがその他のコネクタ等に影響を及ぼしにくくすることができる。
【0030】
以下、コネクタと対応する通信制御回路とを接続する信号線の配置例について、説明する。一例として、コネクタと通信制御回路とは、プリント基板10内側の内層に形成された信号線を介して接続されてよい。
図8は、この場合の信号線の配置例を模式的に示している。この図の例では、映像信号コネクタ11と映像信号制御回路16とを接続する信号線21の配置例を模式的に示している。
【0031】
信号線21は、シールドエリアA1内でプリント基板10表面に配置される信号線21a、プリント基板10内層に配置される信号線21b、及びシールドエリアA1外でプリント基板表面に配置される信号線21cによって構成されている。信号線21aと信号線21bはシールドエリアA1内でビア22aによって接続されており、信号線21bと信号線21cはシールドエリアA1外でビア22bによって接続されている。信号線21bは平面視においてグラウンドパターンG1と交差している。このような配置により、グラウンドパターンG1を分断することなくシールドエリアA1内外を接続できる。
【0032】
なお、この図の例では、映像信号コネクタ11のハウジングはガスケット23aを介して上側シールド部材30と接続されている。また、プリント基板10に形成された切り欠きに配置されたガスケット23bを介して下側シールド部材40と接続されている。また、この図の例では、上側シールド部材30の環状部分32、及び下側シールド部材40の環状部分42はいずれも突起部Pを介して対向するグラウンドパターンと接続されている。
【0033】
しかしながら、コネクタや通信制御回路に対して要求される仕様等によっては、信号線をプリント基板10の内層に配置することが困難な場合がある。このような場合、プリント基板10表面側のグラウンドパターンG1と裏面側のグラウンドパターンG2の位置をずらすことによって、信号線をプリント基板10の表面及び裏面に配置し、かつ表面及び裏面のいずれにおいてもグラウンドパターンを分断しないようにすることができる。この例においては、シールドエリアA1の内側の領域とシールドエリアA2の外側の領域とが平面視において重なる重複領域Xを確保する。そして、この重複領域X内に設けられ、プリント基板10を貫通するビアによって、プリント基板10表面の信号線とプリント基板10裏面の信号線とを接続する。これにより、グラウンドパターンGを分断することなく、シールドエリア内側から外側に繋がる信号線を配置することができる。
【0034】
図9は、この例における信号線の配置例を示している。この図の例では、USBコネクタ13とSoC15が信号線24によって接続されている。信号線24は、プリント基板10表面のシールドエリアA1内に配置される信号線24aと、プリント基板10裏面のシールドエリアA2外に配置される信号線24bと、によって構成されている。信号線24aと信号線24bは重複領域X内に設けられたビア25によって接続されている。すなわち、信号線24aは平面視において裏面側のグラウンドパターンG2と交差しており、信号線24bは平面視において表面側のグラウンドパターンG1と交差している。信号線25bは、プリント基板10裏面側に突出するUSBコネクタ13の端子13aと接続される。このような配置により、信号線24をプリント基板10の内層に配置せずに、シールドエリア内外を接続することができる。
【0035】
なお、
図9に示されるように、重複領域Xを画定するグラウンドパターンG1とグランドパターンG2は平面視においてずれている。そのため、この重複領域の周囲ではグラウンドパターンG1及びG2は突起部Pによってシールド部材と接触させることとし、ネジ穴Hはその近傍でグランドパターンG1とグラウンドパターンG2が重なる位置に設けることとする。また、この図の例では、USBコネクタ13のハウジングはガスケット26aを介して上側シールド部材30と接続されている。また、プリント基板10に形成された切り欠きに配置されたガスケット26bを介して下側シールド部材40と接続されている。
【0036】
以上の説明では、映像信号コネクタ11及びUSBコネクタ13のそれぞれを対応する通信制御回路と接続する例について説明したが、その他のコネクタについても、同様にしてグラウンドパターンG1及びG2を分断させずに対応する通信制御回路と接続することとする。
【0037】
以上説明したように、本実施形態に係る電子機器1によれば、途中で分断しないようにプリント基板10表面に形成されたグラウンドパターンG1によってシールドエリアA1を画定し、このシールドエリアA1を覆いグラウンドパターンG1と接触するように上側シールド部材30を固定することによって、効果的にシールドエリアA1内で発生するノイズの伝搬を抑えることができる。また、同様にして、プリント基板10の裏面についても、下側シールド部材40によってシールドエリアA2内で発生するノイズの伝搬を抑えることができる。
【0038】
なお、本発明の実施の形態は以上説明したものに限られない。例えばプリント基板10上の各種コネクタや通信制御回路の配置は一例に過ぎず、通信制御回路をシールドエリアの内側、これと接続されるコネクタをシールドエリアの外側に配置するのであれば、どのような配置であってもよい。また、プリント基板10に配置されるコネクタや通信制御回路の種類についても、以上説明したものと異なるものであってよい。例えばプリント基板10には、シリアルATA規格などの規格に従って光ディスクドライブ等の記憶デバイスを接続するためのコネクタを備えてもよい。
【0039】
また、以上の説明では、電子機器1は家庭用ゲーム機であることとしたが、本発明の実施の形態に係る電子機器1はこれに限らず、例えばパーソナルコンピュータや携帯型ゲーム機、スマートフォンなど、コネクタ及び通信制御回路を備える各種の機器であってよい。
【符号の説明】
【0040】
1 電子機器、10 プリント基板、11 映像信号コネクタ、12 LANコネクタ、13 USBコネクタ、14 記憶デバイス接続コネクタ、15 SoC、16 映像信号制御回路、17 LAN通信制御回路、18 記憶デバイス制御回路、19 LAN用パルストランス、21,24 信号線、22a,22b,25 ビア、23a,23b,26a,26b ガスケット、30 上側シールド部材、40 下側シールド部材、31,41 シールド部分、32,42 環状部分、33,43 外周部分。