(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】沈下量推測方法、建築物補強方法、及び表示制御システム
(51)【国際特許分類】
E02D 33/00 20060101AFI20240930BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20240930BHJP
E02D 27/34 20060101ALN20240930BHJP
【FI】
E02D33/00
E04G23/02 D
E02D27/34 Z
(21)【出願番号】P 2023080109
(22)【出願日】2023-05-15
【審査請求日】2023-05-19
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】坂本 晴香
(72)【発明者】
【氏名】松蔭 知明
(72)【発明者】
【氏名】山口 路夫
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-211399(JP,A)
【文献】特開2002-054128(JP,A)
【文献】特開2002-133571(JP,A)
【文献】特開2021-008729(JP,A)
【文献】特開2020-094350(JP,A)
【文献】特開2002-250027(JP,A)
【文献】特開2019-116807(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108166547(CN,A)
【文献】計算例7,建築基礎構造設計指針 2004年 Recommendations for Design of Building Foundations ,日本,一般社団法人日本建築学会,2004年,第463頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 33/00
E04G 23/02
E02D 27/34
E02D 1/02
E02D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の設計段階における沈下量推測方法であって、
複数の設定位置における
、地盤内部の沈下想定層の
地盤内部の下端点と
地盤内部の上端点とを特定するステップと、
前記複数の設定位置における前記下端点の点間を補完して前記沈下想定層の仮想下面を生成するとともに、前記複数の設定位置における前記上端点の点間を補完して前記沈下想定層の仮想上面を生成し、前記仮想下面と前記仮想上面とにより形成される前記沈下想定層を含む仮想地盤モデルを構築するステップと、
前記仮想地盤モデルから複数の杭打ち想定位置における想定沈下量を算出するステップと、
を含み、
前記仮想地盤モデルは、前記複数の設定位置に亘っている、沈下量推測方法。
【請求項2】
前記複数の設定位置の一部は、前記複数の杭打ち想定位置と一致し、
又は、前記複数の杭打ち想定位置の一部は、前記複数の設定位置と一致する、
請求項1に記載の沈下量推測方法。
【請求項3】
前記点間の補完は、各点の間を曲面とした曲面補完である、
請求項
1に記載の沈下量推測方法。
【請求項4】
前記沈下想定層は粘土層及びシルト層の少なくともいずれか1つを含む、
請求項1に記載の沈下量推測方法。
【請求項5】
前記複数の設定位置における前記沈下想定層の
前記下端点と
前記上端点との特定は、ボーリング柱状図に基づいて行われる、
請求項1に記載の沈下量推測方法。
【請求項6】
前記沈下想定層の鉛直方向の長さは、複数の基準長と、前記基準長よりも短い1つの端数長と、に分割される、
請求項1に記載の沈下量推測方法。
【請求項7】
建築物の設計段階における建築物補強方法であって、
複数の設定位置における
、地盤内部の沈下想定層の
地盤内部の下端点と
地盤内部の上端点とを特定するステップと、
前記複数の設定位置における前記下端点の点間を補完して前記沈下想定層の仮想下面を生成するとともに、前記複数の設定位置における前記上端点の点間を補完して前記沈下想定層の仮想上面を生成し、前記仮想下面と前記仮想上面とにより形成される前記沈下想定層を含む仮想地盤モデルを構築するステップと、
前記仮想地盤モデルから複数の杭打ち想定位置における想定沈下量を算出するステップと、
複数の杭打ち想定位置における前記想定沈下量から想定沈下差分値を算出するステップと、
前記想定沈下差分値から、基礎梁に生じる付加応力を算出するステップと、
前記付加応力に応じて補強鉄筋の配置を決めるステップと、
を含み、
前記仮想地盤モデルは、前記複数の設定位置に亘っている、建築物補強方法。
【請求項8】
前記想定沈下量は、請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の沈下量推測方法により推測される、
請求項
7に記載の建築物補強方法。
【請求項9】
建築物の設計に適用される表示制御システムであって、
複数の設定位置における
、地盤内部の沈下想定層の
地盤内部の下端点と
地盤内部の上端点とを特定し、
前記複数の設定位置における前記下端点の点間を補完して前記沈下想定層の仮想下面を生成するとともに、前記複数の設定位置における前記上端点の点間を補完して前記沈下想定層の仮想上面を生成し、前記仮想下面と前記仮想上面とにより形成される前記沈下想定層を含む仮想地盤モデルを構築し、
前記仮想地盤モデルは、前記複数の設定位置に亘っており、
前記仮想地盤モデルから、複数の杭打ち想定位置における想定沈下量を表示部に表示させる、
表示制御システム。
【請求項10】
前記想定沈下量に応じて色の濃淡を設定して表示させる、
請求項
9に記載の表示制御システム。
【請求項11】
前記複数の杭打ち想定位置における前記想定沈下量から想定沈下差分値を算出し、
前記想定沈下差分値から、基礎梁の変形角を算出し、
前記想定沈下量に、前記変形角を対応付けて表示させる、
請求項
9に記載の表示制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈下量推測方法、建築物補強方法、及び表示制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の基礎構造として、地盤に杭が打設されることがある。杭が打設された地盤に軟弱地盤が含まれる場合、打設後に杭が沈下することがある。建築物を建築する際は、杭の数を増やす(複数本杭)ことで杭の沈下を生じさせないように対策を行い、又は、杭の沈下を許容し、杭の沈下量を推定した上で基礎構造を設計する。
従来技術の一例である特許文献1には、実際の載荷試験結果を地質ごと、地盤の特性、特にN値との関係でまとめ、それをもとに少ない本数の実測値から荷重と沈下量の関係をまとめ、荷重伝達法により埋込み杭の沈下量を合理的に推定できるようにする技術が開示されている。
また、従来技術の一例である特許文献2には、構造物が存在する地盤を対象として、地震で発生した液状化後の地盤および構造物の沈下量を予測することができる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-13047号公報
【文献】特開2007-9558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
杭の数を増やして杭の沈下を生じさせないように対策を行う場合、コストが増加する、という課題がある。
他方で、従来の技術により沈下を許容して杭の沈下量を推定する場合、時間とコストがかかる、という課題がある。
更に、従来の技術では地盤のうち代表位置においてのみ沈下量の推定を行うため、代表位置以外の部分において想定外の沈下が生じうる、という課題があった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、杭の想定外の沈下を抑えるとともに、コストを抑えた沈下量推測方法、建築物補強方法、及び表示制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>本発明の態様1に係る沈下量推測方法は、複数の設定位置における沈下想定層の下端点と上端点とを特定するステップと、前記沈下想定層を含む仮想地盤モデルを構築するステップと、前記仮想地盤モデルから複数の杭打ち想定位置における想定沈下量を算出するステップと、を含む。
【0007】
態様1によれば、まず、複数の設定位置における沈下想定層の下端点と上端点とを特定する。
次に、特定された複数の設定位置における沈下想定層の下端点と上端点との情報に基づき、沈下想定層を含む仮想地盤モデルを構築する。
そして、仮想地盤モデルから複数の杭打ち想定位置における想定沈下量を算出する。
このように、予め仮想地盤モデルを構築した上で、杭の想定沈下量を算出すると、杭打ち想定位置における想定沈下量を正確に算出することができる。
したがって、地盤のうち代表位置においてのみ沈下量の推定を行う場合に生じうる杭の想定外の沈下を抑えることができる。
よって、杭の沈下を許容した設計を行いやすくすることができ、設計コストを抑えることができる。
また、沈下を許容しない設計として杭の数を増やすことによるコストの増加を抑えることができる。
【0008】
<2>本発明の態様2に係る沈下量推測方法は、複数の設定位置における沈下想定層の下端点と上端点とを特定するステップと、前記複数の設定位置における前記下端点の点間を補完して前記沈下想定層の仮想下面を生成するとともに、前記複数の設定位置における前記上端点の点間を補完して前記沈下想定層の仮想上面を生成することで、前記沈下想定層を含む仮想地盤モデルを構築するステップと、前記仮想地盤モデルから、複数の杭打ち想定位置における想定沈下量を算出するステップと、を含む。
【0009】
態様2によれば、まず、複数の設定位置における沈下想定層の下端点と上端点とを特定する。
次に、複数の設定位置における沈下想定層の下端点の点間を補完して沈下想定層の仮想下面を生成するとともに、複数の設定位置における沈下想定層の上端点の点間を補完して沈下想定層の仮想上面を生成することで、沈下想定層を含む仮想地盤モデルを構築する。
そして、仮想地盤モデルから、複数の杭打ち想定位置における想定沈下量を算出する。
このように、仮想下面及び仮想上面を生成することで、仮想地盤モデルを構築することができる。その上で、杭の想定沈下量を算出すると、杭打ち想定位置における想定沈下量をより正確に算出することができる。
したがって、地盤のうち代表位置においてのみ沈下量の推定を行う場合に生じうる杭の想定外の沈下をより確実に抑えることができる。
よって、杭の沈下を許容した設計を行いやすくすることができ、設計コストを抑えることができる。
また、沈下を許容しない設計として杭の数を増やすことによるコストの増加を抑えることができる。
【0010】
<3>本発明の態様3に係る沈下量推測方法は、態様1又は態様2に係る沈下量推測方法において、前記複数の設定位置の一部は、前記複数の杭打ち想定位置と一致し、又は、前記複数の杭打ち想定位置の一部は、前記複数の設定位置と一致する。
【0011】
態様3によれば、複数の設定位置の一部は、複数の杭打ち想定位置と一致する。又は、複数の杭打ち想定位置の一部は、複数の設定位置と一致する。
換言すれば、複数の杭の一部又は全部が、地盤において沈下想定層の下端点と上端点とが特定された設定位置に打設される。
これにより、設定位置に打設される杭の想定沈下量をより確実に正確に算出することができる。
【0012】
<4>本発明の態様4に係る沈下量推測方法は、態様2又は態様3に係る沈下量推測方法において、前記点間の補完は、各点の間を曲面とした曲面補完である。
【0013】
態様4によれば、複数の設定位置における下端点又は上端点の点間の補完は、各点の間を曲面とした曲面補完である。
これにより、沈下想定層の仮想下面及び仮想上面の生成をより正確に行うことができ、より正確な仮想地盤モデルを構築することができる。
よって、杭打ち想定位置における杭の想定沈下量をより正確に算出することができる。
【0014】
<5>本発明の態様5に係る沈下量推測方法は、態様1から態様4のいずれか1つに係る沈下量推測方法において、前記沈下想定層は粘土層及びシルト層の少なくともいずれか1つを含む。
【0015】
態様5によれば、沈下想定層は粘土層及びシルト層の少なくともいずれか1つを含む。
これにより、杭打ち想定位置において粘土層又はシルト層による、杭の想定沈下量を算出することができる。
【0016】
<6>本発明の態様6に係る沈下量推測方法は、態様1から態様5のいずれか1つに係る沈下量推測方法において、前記複数の設定位置における前記沈下想定層の下端点と上端点との特定は、ボーリング柱状図に基づいて行われる。
【0017】
態様6によれば、複数の設定位置における沈下想定層の下端点と上端点との特定は、ボーリング柱状図に基づいて行われる。
このように、既存のボーリング柱状図を沈下想定層の特定に転用することで、特別な作業を行わずに、沈下想定層の下端点と上端点とを特定することができる。
よって、地盤の調査等によるコストの増加が生じることを抑えることができる。
【0018】
<7>本発明の態様7に係る沈下量推測方法は、態様1から態様6のいずれか1つに係る沈下量推測方法において、前記沈下想定層の鉛直方向の長さは、複数の基準長と、前記基準長よりも短い1つの端数長と、に分割される。
【0019】
態様7によれば、複数の設定位置において、沈下想定層の鉛直方向の長さは、複数の基準長と、基準長よりも短い1つの端数長と、に分割される。
このように、基準長を用いることで、複数の設定位置の間における沈下想定層の鉛直方向の長さを比較しやすくすることができる。
【0020】
<8>本発明の態様8に係る建築物補強方法は、複数の杭打ち想定位置における想定沈下量から想定沈下差分値を算出するステップと、前記想定沈下差分値から、基礎梁に生じる付加応力を算出するステップと、前記付加応力に応じて補強鉄筋の配置を決めるステップと、を含む。
【0021】
態様8によれば、まず、複数の杭打ち想定位置における想定沈下量から相対沈下差分値を算出する。
次に、複数の杭打ち想定位置における想定沈下差分値から基礎梁に生じる付加応力を算出する。
そして、付加応力に応じて補強鉄筋の配置を決める。
すなわち、複数の杭打ち想定位置における想定沈下量から想定される基礎梁の付加応力に応じて、補強鉄筋の疎密や本数等の配置を決める。
これにより、基礎梁を、複数の杭の沈下によって生じる付加応力に抵抗しやすくすることができる。
また、基礎梁の補強をより的確に行うことで、建築物を過度に補強してしまうことによるコストの増加を抑えることができる。
【0022】
<9>本発明の態様9に係る建築物補強方法は、態様8に係る建築物補強方法において、前記想定沈下量は、態様1から態様7のいずれか1つに係る沈下量推測方法により推測される。
【0023】
態様9によれば、杭の想定沈下量は、上記態様のいずれかに係る沈下量推測方法により推測される。
すなわち、補強鉄筋の疎密や本数等の配置は、前述の方法のいずれかによって想定される杭の沈下量から算出される基礎梁の付加応力に応じて決められる。
これにより、基礎梁に生じる付加応力を正確に把握することができ、基礎梁の補強を的確に行うことができる。
よって、基礎梁を、複数の杭の沈下によって生じる付加応力に対して、より抵抗しやすくすることができる。
【0024】
<10>本発明の態様10に係る表示制御システムは、複数の設定位置における沈下想定層の下端点と上端点とを特定し、前記沈下想定層を含む仮想地盤モデルを構築し、前記仮想地盤モデルから、複数の杭打ち想定位置における想定沈下量を表示部に表示させる。
【0025】
態様10によれば、表示制御システムは、まず、複数の設定位置における沈下想定層の下端点と上端点とを特定し、沈下想定層を含む仮想地盤モデルを構築する。
そして、表示制御システムは、構築された仮想地盤モデルから、複数の杭打ち想定位置における想定沈下量を表示部に表示させる。
これにより、ユーザが、複数の設定位置における杭の想定沈下量を容易に視認することができる。
【0026】
<11>本発明の態様11に係る表示制御システムは、複数の設定位置における沈下想定層の下端点と上端点とを特定し、前記複数の設定位置における前記下端点の点間を補完して前記沈下想定層の仮想下面を生成するとともに、前記複数の設定位置における前記上端点の点間を補完して前記沈下想定層の仮想上面を生成することで、前記沈下想定層を含む仮想地盤モデルを構築し、前記仮想地盤モデルから、複数の杭打ち想定位置における想定沈下量を表示部に表示させる。
【0027】
態様11によれば、表示制御システムは、まず、複数の設定位置における沈下想定層の下端点と上端点とを特定する。
次に、複数の設定位置における下端点の点間を補完して沈下想定層の仮想下面を生成するとともに、複数の設定位置における上端点の点間を補完して沈下想定層の仮想上面を生成することで、沈下想定層を含む仮想地盤モデルを構築する。
このように、仮想下面及び仮想上面を生成することで、より正確な仮想地盤モデルを構築することができる。
そして、表示制御システムは、構築した仮想地盤モデルから、複数の杭打ち想定位置における想定沈下量を表示部に表示させる。
これにより、ユーザが、複数の設定位置における杭の想定沈下量を容易に視認することができる。
【0028】
<12>本発明の態様12に係る表示制御システムは、態様10又は態様11に係る表示制御システムにおいて、前記想定沈下量に応じて色の濃淡を設定して表示させる。
【0029】
態様12によれば、表示制御システムは、杭の想定沈下量に応じて色の濃淡を設定して表示部に表示させる。
これにより、ユーザが、杭の想定沈下量を視覚により直感的に把握しやすくすることができる。
【0030】
<13>本発明の態様13に係る表示制御システムは、態様10から態様13のいずれか1つに係る表示制御システムにおいて、前記複数の杭打ち想定位置における前記想定沈下量から想定沈下差分値を算出し、前記想定沈下差分値から、基礎梁の変形角を算出し、前記想定沈下量に、前記変形角を対応付けて表示させる。
【0031】
態様13によれば、表示制御システムは、杭の想定沈下量に、基礎梁の変形角を対応付けて表示させる。
これにより、ユーザが、基礎梁に想定される変形角が許容範囲内であるか否かを把握しやすくすることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、杭の想定外の沈下を抑えるとともに、コストを抑えた沈下量推測方法、建築物補強方法、及び表示制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図2】実施形態に係る沈下量推測方法のフローチャートである。
【
図3】実施形態において、複数の設定位置におけるボーリング柱状図の模式図である。
【
図4】実施形態における仮想地盤モデルの模式図である。
【
図5】実施形態に係る建築物補強方法のフローチャートである。
【
図6】実施形態に係る表示制御システムのブロック図である。
【
図7】実施形態における表示部が表示する情報の第1例である。
【
図8】実施形態における表示部が表示する情報の第2例である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る沈下量推測方法、建築物補強方法、及び表示制御システムを説明する。
【0035】
(沈下量推測方法)
図1は、本実施形態における地盤Gの平面図である。
本実施形態に係る沈下量推測方法は、
図1に示すように、地盤Gに複数打設され、建築物の基礎の一部となる杭Pの沈下量を推測する方法である。該方法を用いることで、例えば、複数の杭P同士の間に設けられる基礎梁Bに生じる付加応力や、付加応力による基礎梁Bの変形角を算出する。
【0036】
図2は、本実施形態に係る沈下量推測方法のフローチャートである。
本実施形態に係る沈下量推測方法は、以下の第1~第3ステップを含む。
図2に示す沈下量推測の第1ステップSA1は、
図1に示す複数の設定位置BPにおける沈下想定層の下端点と上端点とを特定するステップである。
沈下想定層とは、
図1に示す地盤Gに含まれる複数の地層のうち、打設した杭Pの沈下が想定される地層をいう。沈下想定層には、軟弱地盤が含まれる。本実施形態において、沈下想定層は、粘土層及びシルト層の少なくともいずれか1つを含む。
なお、粘土層は、0.005mm以下の粒径の土粒子からなる地層である。シルト層は、0.075~0.005mmの粒径の土粒子からなる地層である。
【0037】
図3は、本実施形態における、複数の設定位置BPにおけるボーリング柱状
図Bcの模式図である。
沈下量推測の第1ステップSA1においては、まず、
図1及び
図3に示すように、地盤Gのうち、沈下想定層SLの下端点BPbと上端点BPtとを特定する設定位置BPを複数定める。設定位置BPは、例えば、地盤Gにおける、建築物の建築前にボーリング調査を行う位置である。
複数の設定位置BPにおける沈下想定層SLの下端点BPbと上端点BPtとの特定は、ボーリング柱状
図Bcに基づいて行うことが好ましい。すなわち、複数の設定位置BPにおいてボーリング調査を行うことで、
図3に示すように、複数の設定位置BPにおける沈下想定層SLの下端点BPbと上端点BPtとの位置を抽出する。
【0038】
本実施形態において、沈下想定層SLの鉛直方向の長さは、
図3に示すように、複数の基準長Xと、基準長Xよりも短い1つの端数長Yと、に分割される。すなわち、例えば、沈下想定層SLの鉛直方向の長さZは、任意の整数をaとしたとき、次の式で表される。
Z=aX+Y
すなわち、沈下想定層SLの鉛直方向の長さZは、基準長Xのa倍に、端数長Yを加算して表されるとよい。例えば、
図3に示すように、複数の設定位置BPの沈下想定層SLにおける鉛直方向の長さZをそれぞれZ1、Z2、Z3、とすると、Z1、Z2、Z3はそれぞれ次の式で表される。
Z1=aX+Y1
Z2=bX+Y2
Z3=cX+Y3
なお、上記式において、a、b、cは自然数である。
このように、複数の設定位置BPにおける沈下想定層SLの複数の鉛直方向の長さZを、1つの基準長Xに基づいて管理することで、複数の設定位置BPにおける沈下想定層SLの鉛直方向の長さZを比較しやすくすることができる。
【0039】
図2に示す沈下量推測の第2ステップSA2は、沈下想定層SLを含む仮想地盤モデルVGを構築するステップである。
図4は、本実施形態における仮想地盤モデルVGの模式図である。
すなわち、まず、複数の設定位置BPにおける沈下想定層SLの下端点BPbの点間を補完して沈下想定層SLの仮想下面SLbを生成する。同時に、複数の設定位置BPにおける沈下想定層SLの上端点BPtの点間を補完して沈下想定層SLの仮想上面SLtを生成する。
このことで、
図4に示すように、建築物を建築する場所の地盤Gにおける仮想地盤モデルVGが構築される。
本実施形態において、点間の補完は、各点の間を曲面とした曲面補完であることが好ましい。曲面補完は、例えば、公知の3次元モデリングツールを用いて行われる。
【0040】
図2に示す沈下量推測の第3ステップSA3は、第2ステップSA2において構築した仮想地盤モデルVGから、複数の杭打ち想定位置PPにおける想定沈下量を算出するステップである。
すなわち、まず、建築物における複数の杭Pを打設する位置、すなわち複数の杭打ち想定位置PPを設定する。次に、建築物を建築する場所の仮想地盤モデルVGにおいて、杭Pを設ける位置に相当する位置の沈下想定層SLの位置を特定する。
そして、「建築基礎構造設計指針(日本建築学会、第3版、2019年11月刊行)」の44ページに記載の一次元沈下計算方式によって、複数の杭打ち想定位置PPのそれぞれにおける杭Pの沈下量を算出する。
沈下量は、圧密沈下量S(m)として、下記の数1の圧縮曲線法(e~logσ法)により算出することができる。
【0041】
【0042】
ここで、Δeiは、i層中心において盛土や建物建設等による鉛直有効応力増分Δσz´(kN/m2)により生じる間隙比の変化量である。
なお、Δeiは、e~logσ曲線から読み取った値である。
また、e0iは、i層中心での建設前の鉛直有効応力σ1zi´における間隙比である。
Hiは、i層の層厚(m)である。
【0043】
本実施形態において、複数の設定位置BPの一部は、複数の杭打ち想定位置PPと一致し、又は、複数の杭打ち想定位置PPの一部は、複数の設定位置BPと一致する。
換言すれば、杭Pの一部又は全部が、地盤Gにおいて沈下想定層SLの下端点BPbと上端点BPtとが特定された設定位置BPに打設される。これにより、設定位置BPに打設される杭Pの想定沈下量をより確実に正確に算出することができる。
なお、想定沈下量から基礎梁Bに想定される変形角を算出してもよい。
【0044】
(建築物補強方法)
次に、本実施形態に係る建築物補強方法について説明する。本実施形態に係る建築物補強方法は、
図1に示すように、建築物のうち、特に複数打設される杭P同士の間を接続するように設けられる基礎梁Bの補強を行う方法である。基礎梁Bの補強は、例えば、基礎梁Bの断面形状を変更することにより断面二次モーメントを向上させ、又は、基礎梁Bの周囲に補強鉄筋を配置することにより行う。
本実施形態に係る建築物補強方法では、建築物において基礎梁Bの補強を行うか否かを、以下のステップにより決定する。
図5は、本実施形態に係る建築物補強方法のフローチャートである。
すなわち、本実施形態に係る建築物補強方法は、以下の第1~第3ステップを含む。
【0045】
建築物補強の第1ステップSB1は、複数の杭打ち想定位置PPにおける想定沈下量から想定沈下差分値を算出するステップである。
想定沈下差分値は、建築物において複数打設される杭Pのうち、互いに隣り合う杭P同士の想定沈下量の差である。本実施形態において、想定沈下差分値は、基礎梁Bによって接続される杭P同士の組み合わせのそれぞれにおいて算出される。
建築物補強の第1ステップSB1において、想定沈下量は、上述した沈下量推測方法により推測される。
【0046】
建築物補強の第2ステップSB2は、想定沈下差分値から、基礎梁Bに生じる付加応力を算出するステップである。
基礎梁Bの付加応力は、基礎梁Bによって接続される杭P同士の沈下量が異なることによって、基礎梁Bの両端の位置が相対的に変位することで、基礎梁Bを変形させるように付加される力によって生じる応力である。
本実施形態において、基礎梁Bの付加応力は、建築物において設けられる複数の基礎梁Bの一部又は全部のそれぞれについて算出される。
【0047】
建築物補強の第3ステップSB3は、付加応力に応じて補強鉄筋の配置を決めるステップである。すなわち、例えば、上述の第2ステップSB2によって算出された基礎梁Bの付加応力が許容範囲内であれば、補強鉄筋を配置不要とする。第2ステップSB2によって算出された基礎梁Bの付加応力が許容範囲を超えた場合は、付加応力の大きさによって、補強鉄筋の疎密を計算の上、基礎梁Bの周囲に補強鉄筋を設けることが検討される。
なお、基礎梁Bの付加応力が大きく、補強鉄筋によっては基礎梁Bを十分に補強できない場合には、基礎梁Bの形状を変更することで、基礎梁Bの断面二次モーメントを向上させてもよい。
【0048】
(表示制御システム)
次に、本実施形態に係る表示制御システム100について説明する。表示制御システム100は、上述した沈下量推測方法及び建築物補強方法における演算を行うとともに、ユーザに対して各種情報を目視可能に表示する。
図6は、本実施形態に係る表示制御システム100のブロック図である。
本実施形態に係る表示制御システム100は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ10とメモリ20とを備え、プログラムを実行する。表示制御システム100は、プログラムの実行によって表示部30に各種情報を表示する。
表示部30は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の表示装置を含んで構成される。
なお、
図6に示す表示部30は表示制御システム100内に設けられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、表示部30は表示制御システム100外に設けられていてもよい。
【0049】
表示制御システム100は、
図3に示すような複数の設定位置BPにおける沈下想定層SLの下端点BPbと上端点BPtとを特定し、
図4に示すような沈下想定層SLを含む仮想地盤モデルVGを構築し、仮想地盤モデルVGから、複数の杭打ち想定位置PPにおける想定沈下量を表示部30に表示させる。
表示制御システム100において、仮想地盤モデルVGの構築は、特定された下端点BPbの点間を補完して沈下想定層SLの仮想下面SLbを生成するとともに、特定された上端点BPtの点間を補完して沈下想定層SLの仮想上面SLtを生成することで行う。
また、表示制御システム100におけるプロセッサ10は、複数の杭打ち想定位置PPにおける想定沈下量から想定沈下差分値を算出する。更に、表示制御システム100におけるプロセッサ10は、算出した沈下差分値から、基礎梁Bの変形角を算出する。
【0050】
図7は、本実施形態における表示部30が表示する情報の第1例である。
本実施形態において、表示制御システム100は、想定沈下量に応じて色の濃淡を設定して表示させるとよい。
すなわち、例えば、
図7に示すように、表示部30は、複数の杭Pの想定沈下量を表として表示する。
このとき、想定沈下量の大小によって色の濃淡を設定し、例えば、比較的値の小さな想定沈下量を淡い色で表示し、比較的値の大きな想定沈下量を濃い色で表示する。
これにより、ユーザは、複数の杭Pの想定沈下量の大きさ又は大きさの差を視覚により直感的に把握することができる。
【0051】
図8は、本実施形態における表示部30が表示する情報の第2例である。
本実施形態において、表示制御システム100は、複数の杭Pのそれぞれの想定沈下量に、基礎梁Bの変形角を対応付けて表示させるとよい。
すなわち、例えば、
図8に示すように、表示部30は、複数の基礎梁Bの変形角を表として表示する。
このとき、基礎梁Bの変形角の大小によって色の濃淡を設定し、例えば、比較的値の小さな変形角を淡い色で表示し、比較的値の大きな変形角を濃い色で表示する。
これにより、ユーザは、基礎梁Bの変形角の大きさを視覚により直感的に把握することができる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る沈下量推測方法によれば、まず、複数の設定位置BPにおける沈下想定層SLの下端点BPbと上端点BPtとを特定する。
次に、特定された複数の設定位置BPにおける沈下想定層SLの下端点BPbと上端点BPtとの情報に基づき、沈下想定層SLを含む仮想地盤モデルVGを構築する。
そして、仮想地盤モデルVGから複数の杭打ち想定位置PPにおける想定沈下量を算出する。
このように、予め仮想地盤モデルVGを構築した上で、杭Pの想定沈下量を算出すると、杭打ち想定位置PPにおける想定沈下量を正確に算出することができる。
したがって、地盤Gのうち代表位置においてのみ沈下量の推定を行う場合に生じうる杭Pの想定外の沈下を抑えることができる。
よって、杭Pの沈下を許容した設計を行いやすくすることができ、設計コストを抑えることができる。
また、沈下を許容しない設計として杭Pの数を増やすことによるコストの増加を抑えることができる。
【0053】
また、本実施形態に係る沈下量推測方法の他の例によれば、まず、複数の設定位置BPにおける沈下想定層SLの下端点BPbと上端点BPtとを特定する。
次に、複数の設定位置BPにおける沈下想定層SLの下端点BPbの点間を補完して沈下想定層SLの仮想下面SLbを生成するとともに、複数の設定位置BPにおける沈下想定層SLの上端点BPtの点間を補完して沈下想定層SLの仮想上面SLtを生成することで、沈下想定層SLを含む仮想地盤モデルVGを構築する。
そして、仮想地盤モデルVGから、複数の杭打ち想定位置PPにおける想定沈下量を算出する。
このように、仮想下面SLb及び仮想上面SLtを生成することで、仮想地盤モデルVGを構築することができる。その上で、杭Pの想定沈下量を算出すると、杭打ち想定位置PPにおける想定沈下量をより正確に算出することができる。
したがって、地盤Gのうち代表位置においてのみ沈下量の推定を行う場合に生じうる杭Pの想定外の沈下をより確実に抑えることができる。
よって、杭Pの沈下を許容した設計を行いやすくすることができ、設計コストを抑えることができる。
また、沈下を許容しない設計として杭Pの数を増やすことによるコストの増加を抑えることができる。
【0054】
また、複数の設定位置BPの一部は、複数の杭打ち想定位置PPと一致するとよい。又は、複数の杭打ち想定位置PPの一部は、複数の設定位置BPと一致するとよい。
換言すれば、複数の杭Pの一部又は全部が、地盤Gにおいて沈下想定層SLの下端点BPbと上端点BPtとが特定された設定位置BPに打設される。
これにより、設定位置BPに打設される杭Pの想定沈下量をより確実に正確に算出することができる。
【0055】
また、複数の設定位置BPにおける下端点BPb又は上端点BPtの点間の補完は、各点の間を曲面とした曲面補完である。
これにより、沈下想定層SLの仮想下面SLb及び仮想上面SLtの生成をより正確に行うことができ、より正確な仮想地盤モデルVGを構築することができる。
よって、杭打ち想定位置PPにおける杭Pの想定沈下量をより正確に算出することができる。
【0056】
なお、曲面補完における曲面は、例えば、Grasshopper(株式会社アプリクラフト)のPatchコマンドで生成することができる。
Patchコマンドによれば、入力された曲線(Curves)や点群(Points)から、近似したパッチサーフェスが作成される。
また、間隔(Spans)や弾力性(Flexibility)によりサーフェスの精度を調整可能である。
本実施形態においては、点群(Points)としては、沈下想定層SLの複数の下端点BPbと、複数の上端点BPtと、が入力され、間隔(Spans)や弾力性(Flexibility)により曲面の柔らかさが調整される。
曲面の柔らかさが調整されることで、入力された点群(Points)の各々を通るように曲面の形状を調整することができる。
【0057】
また、沈下想定層SLは粘土層及びシルト層の少なくともいずれか1つを含むことが想定される。
これにより、杭打ち想定位置PPにおいて粘土層又はシルト層による、杭Pの想定沈下量を算出することができる。
【0058】
また、複数の設定位置BPにおける沈下想定層SLの下端点BPbと上端点BPtとの特定は、ボーリング柱状
図Bcに基づいて行われるとよい。
このように、既存のボーリング柱状
図Bcを沈下想定層SLの特定に転用することで、特別な作業を行わずに、沈下想定層SLの下端点BPbと上端点BPtとを特定することができる。
よって、地盤Gの調査等によるコストの増加が生じることを抑えることができる。
【0059】
また、複数の設定位置BPにおいて、沈下想定層SLの鉛直方向の長さZは、複数の基準長Xと、基準長Xよりも短い1つの端数長Yと、に分割されるとよい。
このように、基準長を用いることで、複数の設定位置BPの間における沈下想定層SLの鉛直方向の長さZを比較しやすくすることができる。
【0060】
また、本実施形態に係る建築物補強方法によれば、まず、複数の杭打ち想定位置PPにおける想定沈下量から相対沈下差分値を算出する。
次に、複数の杭打ち想定位置PPにおける想定沈下差分値から基礎梁Bに生じる付加応力を算出する。
そして、付加応力に応じて補強鉄筋の配置を決める。
すなわち、複数の杭打ち想定位置PPにおける想定沈下量から想定される基礎梁Bの付加応力に応じて、補強鉄筋の疎密や本数等の配置を決める。
これにより、基礎梁Bを、複数の杭Pの沈下によって生じる付加応力に抵抗しやすくすることができる。
また、基礎梁Bの補強をより的確に行うことで、建築物を過度に補強してしまうことによるコストの増加を抑えることができる。
【0061】
また、杭Pの想定沈下量は、上記態様のいずれかに係る沈下量推測方法により推測されるとよい。
すなわち、補強鉄筋の疎密や本数等の配置は、前述の方法のいずれかによって想定される杭Pの沈下量から算出される基礎梁Bの付加応力に応じて決められる。
これにより、基礎梁Bに生じる付加応力を正確に把握することができ、基礎梁Bの補強を的確に行うことができる。
よって、基礎梁Bを、複数の杭Pの沈下によって生じる付加応力に対して、より抵抗しやすくすることができる。
【0062】
また、本実施形態に係る表示制御システム100によれば、まず、複数の設定位置BPにおける沈下想定層SLの下端点BPbと上端点BPtとを特定し、沈下想定層SLを含む仮想地盤モデルVGを構築する。
そして、表示制御システム100は、構築された仮想地盤モデルVGから、複数の杭打ち想定位置PPにおける想定沈下量を表示部30に表示させる。
これにより、ユーザが、複数の設定位置BPにおける杭Pの想定沈下量を容易に視認することができる。
【0063】
また、表示制御システム100は、まず、複数の設定位置BPにおける沈下想定層SLの下端点BPbと上端点BPtとを特定する。
次に、複数の設定位置BPにおける下端点BPbの点間を補完して沈下想定層SLの仮想下面SLbを生成するとともに、複数の設定位置BPにおける上端点BPtの点間を補完して沈下想定層SLの仮想上面SLtを生成することで、沈下想定層SLを含む仮想地盤モデルVGを構築する。
このように、仮想下面SLb及び仮想上面SLtを生成することで、より正確な仮想地盤モデルVGを構築することができる。
そして、表示制御システム100は、構築した仮想地盤モデルVGから、複数の杭打ち想定位置PPにおける想定沈下量を表示部30に表示させる。
これにより、ユーザが、複数の設定位置BPにおける杭Pの想定沈下量を容易に視認することができる。
【0064】
また、表示制御システム100は、杭Pの想定沈下量に応じて色の濃淡を設定して表示部30に表示させるとよい。
これにより、ユーザが、杭Pの想定沈下量を視覚により直感的に把握しやすくすることができる。
【0065】
また、表示制御システム100は、杭Pの想定沈下量に、基礎梁Bの変形角を対応付けて表示させるとよい。
これにより、ユーザが、基礎梁Bに想定される変形角が許容範囲内であるか否かを把握しやすくすることができる。
【0066】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、表示部30において、杭Pの想定沈下量や基礎梁Bの変形角に応じて色の濃淡を設定すると説明したが、色の明暗を設定してもよい。すなわち、例えば、想定沈下量又は基礎梁Bの変形角が比較的大きな値であれば明るい色で表示し、想定沈下量又は基礎梁Bの変形角が比較的小さな値であれば暗い色で表示する。
あるいは、色自体を変えて表示してもよい。すなわち、例えば、想定沈下量又は基礎梁Bの変形角が比較的大きな値であれば赤色で表示し、想定沈下量又は基礎梁Bの変形角が比較的小さな値であれば青色で表示する。
また、例えば、表示部30に仮想地盤モデルVGを表示させ、複数の杭P及び基礎梁Bが設けられる位置に対応した部分に、それぞれの杭Pの想定沈下量や基礎梁Bの変形角の数値を表示させてもよい。
【0067】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 プロセッサ
20 メモリ
30 表示部
100 表示制御システム
B 基礎梁
Bc ボーリング柱状図
BP 設定位置
BPb 下端点
BPt 上端点
G 地盤
P 杭
PP 想定位置
SL 沈下想定層
SLb 仮想下面
SLt 仮想上面
VG 仮想地盤モデル
X 基準長
Y 端数長
Z 沈下想定層の鉛直方向の長さ
【要約】
【課題】杭の想定外の沈下を抑えるとともに、コストを抑えた沈下量推測方法、建築物補強方法、及び表示制御システムを提供することを目的とする。
【解決手段】複数の設定位置BPにおける沈下想定層の下端点と上端点とを特定するステップと、沈下想定層を含む仮想地盤モデルを構築するステップと、仮想地盤モデルから複数の杭打ち想定位置PPにおける想定沈下量を算出するステップと、を含む。
【選択図】
図1