(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】ニコチンアミドリボシドのリン誘導体を含む組成物及びニコチンアミドアデニンジヌクレオチドのモジュレーションのための方法
(51)【国際特許分類】
C07H 19/048 20060101AFI20240930BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240930BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240930BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240930BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20240930BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240930BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20240930BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240930BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240930BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20240930BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20240930BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240930BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240930BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240930BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240930BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240930BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
C07H19/048 CSP
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
A61K31/706
A61P3/00
A61P3/02 101
A61P3/04
A61P3/10
A61P7/02
A61P7/04
A61P9/00
A61P17/00
A61P25/00
A61P29/00
A61P35/00
A61P43/00 111
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023087508
(22)【出願日】2023-05-29
(62)【分割の表示】P 2021556720の分割
【原出願日】2020-03-18
【審査請求日】2023-06-28
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518033082
【氏名又は名称】メトロ インターナショナル バイオテック,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スズクゼパンキーウィクズ,ブルース
(72)【発明者】
【氏名】マキーリン,ジェームズ,エム.
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/132833(WO,A1)
【文献】CATTANEO-PANGRAZZI, R.M.C., et al.,The Novel Heterodinucleoside Dimer 5-FdU-NOAC Is a Potent Cytotoxic Drug and a p53-Independent Induc,The Prostate,2000年08月21日,Vol. 45, No. 1,pp. 8-18
【文献】NIKIFOROV, A., et al.,Pathways and Subcellular Compartmetation of NAD Biosynthesis in Human Cells,THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,2011年06月17日,Vol. 286, No. 24,pp. 21767-21778
【文献】LEISVUORI, A., et al.,5',5'-Phosphodiesters and esterase labile triesters of 2'-C-methylribonucleosides,ARKIVOC,2012年,pp. 226-243
【文献】PUECH, F., et al.,NUCLETIDIC PRODRUGS OF ANTI-HIV DIDEOXYNUCLEOSIDES,Bioorganic & Medicinal Chemistry Lettters,1992年06月,Vol. 2, No. 6,pp. 603-606
【文献】MIGAUD, Marie E. et al.,Probing Aplysia Adenosine 5'-Diphosphate Ribosyl Cyclase for Substrate Binding Requirements: Design,Biochemistry,1999年,vol.38,pp.9105-9114
【文献】THORPE, Colin et al.,Lipoamide Dehydrogenase from Pig Heart. Pyridine Nucleotide Induced Changes in Monoalkylated Two-Ele,Biochemistry,1981年,vol.20,pp.1507-1513
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 19/048
A61K 31/706
A61K 9/14
A61K 9/20
A61K 9/48
A61P 43/00
A61P 3/00
A61P 3/04
A61P 3/10
A61P 3/02
A61P 25/00
A61P 9/00
A61P 7/04
A61P 7/02
A61P 29/00
A61P 35/00
A61P 17/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造:
【化1】
を有する化合物、又はその塩。
【請求項2】
塩が、H
+、Li
+、Na
+、K
+、Mg
2+及びCa
2+から選択されるカチオンで形成される、請求項1に記載の化合物又はその塩。
【請求項3】
塩が、酢酸イオン、トリフレートイオン、ハロゲン化物イオン、トリフルオロ酢酸イオン、ギ酸イオン、H
2PO
4
-
、HPO
4
2-、OH
-、HSO
4
-
、SO
4
2-、NO
3
-
、HCO
3
-及びCO
3
2-から選択されるアニオンで形成される、請求項1に記載の化合物又はその塩。
【請求項4】
1種以上の薬学的に許容される固体賦形剤、並びに式I:
【化2】
(式中、nは、1である)
によって表される構造を有する化合物及び/又はその塩を含む組成物。
【請求項5】
薬学的に許容される固体賦形剤が、抗付着剤、バインダー、コーティング、染料、崩壊剤、香味剤、滑剤、滑沢剤、保存料、収着剤、甘味料、分散剤
、充填剤、顆粒化剤、コーティング剤、ワックス、懸濁化剤、湿潤剤、ビヒクル、及びその組合せから選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
錠剤、丸剤、カプセル剤、カプレット剤、トローチ剤、顆粒剤、散剤、サッシェ剤、吸入粉末剤、チュアブル剤、芳香錠剤及びロゼンジ剤から選択される固体形態である、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
錠剤の形態である、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
式Iの化合物が、0.001重量%から10重量%の量で組成物に存在する、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
組成物における式Iの化合物の量が、組成物の0.25重量%である、請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
薬学的に許容される賦形剤が、少なくとも5重量%の量で存在する、請求項4に記載の組成物。
【請求項11】
薬学的に許容される賦形剤が、30重量%の量で存在する、請求項4に記載の組成物。
【請求項12】
対象におけるNAD+レベルを増加させる方法における使用のための、請求項4から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
1種以上の医薬品有効成分、並びに式I:
【化3】
(式中、nは、1である)
によって表される構造を有する化合物及び/又はその塩を含む固体組成物。
【請求項14】
1種以上の医薬品有効成分の量に対する式Iの化合物の量が、0.001重量%から50重量%未満を範囲とする、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
1種以上の医薬品有効成分の量に対する式Iの化合物の量が、0.1重量%から1.5重量%である、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
1種以上の医薬品有効成分が、ニコチン酸(NA)、ニコチンアミド(Nam)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチン酸モノヌクレオチド(NaMN)、ニコチン酸リボシド(NAR)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+/NADH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート(NADP)、ニコチン酸アデニンジヌクレオチド(NaAD)、式II:
【化4】
(式中、mは、2又は3である)
の1種以上の化合物、及びその塩、並びにその組合せから選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
mが2である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
対象におけるNAD+レベルを増加させることにおける使用のための、請求項13から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の化合物を含む、対象におけるNAD+レベルを増加させることにおける使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2019年3月22日に出願された米国仮出願第62/822,456号、及び2019年3月22日に出願された米国非仮出願第16/362,130号に対する優先権を主張し、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)及び関連化合物は、全ての生きている生物体における細胞酸化還元反応に必須な補酵素として公知である。いくつかの一連の証拠も、NADが、DNA修復におけるポリ(ADP-リボシル)化(Menissier de Murciaら、EMBO J.、(2003) 22、2255~2263)、免疫応答及びGタンパク質カップリングシグナル伝達におけるモノ-ADP-リボシル化(Corda及びDi Girolamo、EMBO J.、(2003) 22、1953~8)、並びに細胞内カルシウムシグナル伝達における環式ADP-リボース及びニコチネートアデニンジヌクレオチドホスフェート(NAADP)の合成を含めて、哺乳動物細胞における多数の重要なシグナル伝達経路に関与することを示している(Lee、Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol.、(2001) 41、317~345)。NAD及びその代謝物は、転写調節における重要な役割を果たすことも示された(Lin及びGuarente、Curr. Opin. Cell. Biol.、(2003) 15、241~246)。特に、Sir2 NAD依存性デアセチラーゼ活性の発見は、(例えば、Imaiら、Nature、(2000) 403、795~800; Landryら、Biochem. Biophys. Res. Commun.、(2000) 278、685~690; Smithら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、(2000) 97、6658~6663)、NADのこの役割に注目を集めた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
NADの生物学を理解することにおける進歩にもかかわらず、生細胞及び生組織におけるNAD経路の薬理学的介入及び/又は操作のための改善された組成物及びこうした組成物を使用する方法の必要が、依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)のモジュレーションのための化合物及び組成物に関する。一部の実施形態において、本発明は、こうした化合物及び組成物を作製する方法に関する。一部の実施形態において、本発明は、第1の成分である1種以上のNAD+モジュレート性化合物を1種以上の医薬品有効成分と組み合わせて含有する医薬組成物に関する。さらなる実施形態において、本発明は、こうした化合物又は組成物を使用して、疾患を処置する及び/又は細胞及び組織生存を改善するために細胞及び組織におけるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の細胞内レベルの増加を促進する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】2mM、1mM及び500マイクロモル濃度の化合物Aについて、並びに2mM、1mM及び500マイクロモル濃度の化合物Bについて、未処置細胞(1.0に正規化された第1のデータカラム)と比較して、処置されたAML12細胞における総タンパク質に正規化されたNAD(H)を図示する図であり、両化合物がAML12細胞においてNAD(H)ブースト活性を所有することを示す。化合物Aは式Iであり、n=2である。化合物Bは式Iであり、n=1である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
定義
別段に定義されていない限り、本明細書において使用されている全ての技術的及び化学的用語は、本開示の当業者によって共通して理解される意味を有する。本明細書で使用される場合、以下の用語は、別段に特定されていない限り、下の用語に帰する意味を有する。
【0007】
この開示において、「含む」、「含むこと」、「含有すること」及び「有すること」などは、米国特許法における用語に帰する意味を有することができ、「含める」、「含めること」などを意味することができ、「から本質的になること」又は「本質的になる」は、同様に、米国特許法における用語に帰する意味を有し、該用語はオープンエンドであり、列挙されているものの基本的又は新規な特徴が、列挙されているもの以外の存在によって変化されない限り、列挙されているもの以外の存在を可能にするが、従来技術実施形態を除外する。
【0008】
本明細書において提供されている範囲は、範囲内の値の全ての省略表現であると理解される。例えば、1から50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50からなる群からの任意の数、数の組合せ、又は下位範囲を含むと理解される。
【0009】
「1つ(a)」又は「1つ(an)」の実体という成句は、本明細書で使用される場合、その実体の1つ以上を指し、例えば、化合物は、1種以上の化合物又は少なくとも1種の化合物を指す。したがって、「1つ(a)」(又は「1つ(an)」)、「1つ以上」及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書において相互交換可能に使用することができる。
【0010】
具体的に明記されていない又は文脈から明白でない限り、本明細書で使用される場合、「約」という用語は、当技術分野における通常の許容差の範囲内、例えば、平均の2標準偏差内と理解される。約は、明記された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%又は0.01%内と理解することができる。別段に文脈から明確でない限り、本明細書において提供されている全ての数値は、約という用語によって修飾される。
【0011】
「任意選択の」又は「任意選択により」という用語は、本明細書で使用される場合、引き続いて記載されている事象又は状況は発生し得るが、起こる必要はないこと、並びに該記載は、事象又は状況が発生する場合及びそれが発生しない場合を含むことを意味する。例えば、「任意選択の結合」は、結合が存在し得る又は存在し得ないこと、及び該記載は、単、二重又は三重結合を含むことを意味する。
【0012】
「精製されている」という用語は、本明細書に記載されている場合、所与の化合物の純度を指す。例えば、化合物は、所与の化合物が組成物の主要な構成成分である場合に「精製されている」、即ち、少なくとも約50%w/w純粋である。したがって、「精製されている」は、少なくとも約50%w/wの純度、少なくとも約60%w/wの純度、少なくとも約70%の純度、少なくとも約80%の純度、少なくとも約85%の純度、少なくとも約90%の純度、少なくとも約92%の純度、少なくとも約94%の純度、少なくとも約96%の純度、少なくとも約97%の純度、少なくとも約98%の純度、少なくとも約99%の純度、少なくとも約99.5%の純度、及び少なくとも約99.9%の純度を包含し、ここで、「実質的に純粋」は、少なくとも約97%の純度、少なくとも約98%の純度、少なくとも約99%の純度、少なくとも約99.5%の純度、及び少なくとも約99.9%の純度を包含する。
【0013】
「代謝物」という用語は、本明細書に記載されている場合、対象への投与の後にインビボで産生される化合物を指す。
【0014】
「塩」という用語は、本明細書に記載されている場合、カチオン及びアニオンを含む化合物を指し、これらは、プロトン受容部分のプロトン化及び/又はプロトン供与部分の脱プロトン化によって生成することができる。プロトン受容部分のプロトン化は、電荷が生理的アニオンの存在によってバランスのとれたカチオン種の形成をもたらし、一方、プロトン供与部分の脱プロトン化は、電荷が生理的カチオンの存在によってバランスのとれたアニオン種の形成をもたらすことに留意されるべきである。
【0015】
「薬学的に許容される塩」という成句は、薬学的に許容される塩を意味する。薬学的に許容される塩の例としては、限定されないが、:(1)無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などで形成される、若しくは有機酸、例えば、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、サリチル酸、ムコン酸などで形成される酸付加塩、又は(2)上記にリストされている無機酸のいずれかの共役塩基で形成される塩基付加塩であり、共役塩基が、Na+、K+、Mg2+、Ca2+、NHgR4-g
+の中から選択されるカチオン性構成成分を含み、RはC1~3アルキルであり、gは、0、1、2、3若しくは4から選択される数である塩基付加塩、が挙げられる。薬学的に許容される塩に対する全ての参照は、同じ酸付加塩の、本明細書において定義されている通りの溶媒付加形態(溶媒和物)又は結晶形態(多形体)を含むと理解されるべきである。
【0016】
本発明は、本発明の化合物の有用な形態、例えば、代謝物、水和物、溶媒和物、プロドラッグ、塩、特に薬学的に許容される塩、及び/又は共沈殿物も含む。
【0017】
本発明の化合物は、水和物として又は溶媒和物として存在することができ、ここで、本発明の化合物は、極性溶媒、特に水、メタノール又はエタノールの分子を、例えば、化合物の結晶格子の構造要素として含有する結晶を形成する。極性溶媒、特に水の分子は、化合物の分子との化学量論比又は非化学量論比で存在することができる。化学量論的溶媒和物、例えば、水和物の場合において、ヘミ-、(セミ-)、モノ-、セスキ-、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-などの溶媒和物又は水和物が、それぞれ可能である。本発明は、全てのこうした水和物又は溶媒和物を含む。
【0018】
さらに、本発明の化合物は、遊離形態で、例えば、遊離塩基として若しくは遊離酸として、又は両性イオンとして存在すること、或いは塩の形態で存在することが可能である。前記塩は、任意の塩、有機又は無機付加塩のいずれか、特に、薬学において通例使用される、又は例えば、本発明の化合物を単離又は精製するために使用される、任意の薬学的に許容される有機又は無機付加塩であってよい。
【0019】
投与が企図される「対象」という用語は、以下に限定されないが、ヒト(即ち、任意の年齢群の男性又は女性、例えば、小児対象(例えば、幼児、小児、青年)又は成人対象(例えば、若年成人、中年成人又は老人))及び/若しくは他の霊長類(例えば、カニクイザル、アカゲザル)、商業関連の哺乳動物、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ネコ及び/若しくはイヌを含めた哺乳動物、並びに/又は、商業関連の鳥類、例えば、ニワトリ、アヒル、雌ガチョウ、ウズラ類及び/若しくはシチメンチョウを含めた鳥類を含む。
【0020】
「処置」、「処置すること」、「緩和すること」及び「寛解させること」という用語は、本明細書において相互交換可能に使用される。これらの用語は、以下に限定されないが、治療的利益及び/又は予防利益を含めて、有益な又は所望の結果を得るための手法を指す。治療的利益によって、処置されている基礎障害の根絶又は寛解が意味される。その上、治療的利益は、患者がまだ基礎障害で苦しめられ得るにもかかわらず改善が患者において観察されるような基礎障害と関連する生理学的症状の1つ以上の根絶又は寛解で達成される。予防利益のため、該医薬化合物及び/又は組成物は、特別な疾患を発症するリスクがある患者又は疾患の生理学的症状の1つ以上を報告する患者に、この疾患の診断が行われていなくても、投与することができる。
【0021】
「調製物」又は「剤形」という用語は、活性化合物の固体及び液体製剤の両方を含むと意図され、当業者は、有効成分が、所望の用量及び薬物動態学的パラメータに依存して異なる調製物中に存在することができることを認められよう。
【0022】
「賦形剤」という用語は、本明細書で使用される場合、医薬組成物を調製するために使用されるとともに一般に安全で非毒性であり、生物学的にもそれ以外でも望ましくなくない化合物を指し、獣医学的使用、同様にヒト医薬的使用に許容される賦形剤を含む。
【0023】
化合物、組成物、及び処置の方法
本明細書において、構造:
【0024】
【化1】
を有する化合物、及びその塩が提供される。
【0025】
本明細書において、1種以上の薬学的に許容される賦形剤並びに1種以上の化合物及び/又はその塩を含む組成物であって、化合物は、式I:
【0026】
【化2】
(式中、nは、1から3の整数である)
によって表される構造を有する、組成物もまた提供される。
【0027】
本明細書において、1種以上の追加の医薬品有効成分並びに1種以上の化合物及び/又は1種以上のその塩を含む組成物であって、化合物は、式I:
【0028】
【化3】
(式中、nは、1から3の整数である)
によって表される構造を有する、組成物が提供される。
【0029】
一部の実施形態において、nは1である。他の実施形態において、nは2である。なお他の実施形態において、nは3である。
【0030】
一部の実施形態において、組成物は、錠剤、丸剤、カプセル剤、カプレット剤、トローチ剤、顆粒剤、散剤、サッシェ剤、吸入粉末剤、チュアブル剤、芳香錠剤及びロゼンジ剤から選択される固体形態である。ある特定の実施形態において、組成物は、錠剤の形態である。他の実施形態において、組成物は、硬質又は軟質のゼラチンカプセル剤の形態である。
【0031】
一部の実施形態において、化合物は、非晶質固体形態である。他の実施形態において、化合物は、結晶性固体形態である。
【0032】
一部の実施形態において、組成物における式Iの化合物の量は、組成物の約0.001重量%から約10重量%、約0.01重量%から約10重量%、約0.1重量%から約8重量%、約0.25重量%から約8重量%、約0.5重量%から約5重量%、約0.5重量%から約3重量%、又は約0.1重量%から約1重量%、好ましくは約0.5重量%である。ある特定の実施形態において、組成物における式Iの化合物の量は、組成物の約0.25重量%である。
【0033】
一部の実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、抗付着剤、バインダー、コーティング、染料、崩壊剤、香味剤、滑剤、滑沢剤、保存料、収着剤、甘味料、シロップ、エリキシル、分散剤、希釈液、充填剤、顆粒化剤、コーティング剤、ワックス、懸濁化剤、湿潤剤、増稠剤及びビヒクル、並びにその組合せから選択される。一部の実施形態において、賦形剤は、固体賦形剤である。
【0034】
一部の実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、組成物の少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約15重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約25重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約35重量%、少なくとも約40重量%、少なくとも約45重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約55重量%、又は少なくとも約60重量%の量で存在する。一部の実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、組成物の少なくとも約20重量%、少なくとも約25重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約35重量%、又は少なくとも約40重量%、好ましくは少なくとも約30重量%の量で存在する。他の実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、組成物の少なくとも約50重量%の量で存在する。
【0035】
一部の実施形態において、組成物における1種以上の追加の医薬品有効成分の量に対する式Iの化合物の量は、組成物の約0.001重量%から約50重量%未満、約0.01重量%から約45重量%、約0.05重量%から約40重量%、約0.1重量%から約30重量%、約0.5重量%から約30重量%、約1重量%から約30重量%、約1.5重量%から約20重量%、約2重量%から約20重量%、約2.5重量%から約20重量%、約3重量%から約20重量%、又は約0.5重量%から約5重量%、好ましくは約0.5重量%から約1.5重量%を範囲とする。ある特定の実施形態において、組成物における1種以上の追加の医薬品有効成分の量に対する式Iの化合物の量は、組成物の0.5重量%である。他の実施形態において、組成物における1種以上の追加の医薬品有効成分の量に対する式Iの化合物の量は、組成物の1.5重量%である。
【0036】
一部の実施形態において、1種以上の追加の医薬品有効成分の量に対する式Iの化合物の量は、ゼロよりも大きい。「ゼロよりも大きい」という用語は、当技術分野において公知の任意の定量的手段による検出の下限である量を指す。化学物質を定量化する方法の非限定的な例としては、クロマトグラフィー(液体LC、高速液体HPLC、ガスG)、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、大気圧化学イオン化(APCI)、及び大気圧光イオン化(APPI)が挙げられる。これらの分離方法は、測定されている化合物を同定する質量分析器に連結される。質量分光分析技法としては、三重四重極(QQQ)、イオントラップ(IT)、三重四重極線形イオントラップ(QTrap)、飛行時間(TOF)、三重四重極飛行時間(Q-TOF)、オービトラップ、及びフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FT-ICR)が挙げられる。Roskar、R.ら Analytical Methods for Quantification of Drug Metabolites in Biological Samples 2012、87~91ページを参照されたい。
【0037】
一部の実施形態において、医薬品有効成分は、NAD+経路における化合物、例えば、ニコチン酸(NA)、ニコチンアミド(Nam)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチン酸モノヌクレオチド(NaMN)、ニコチン酸リボシド(NAR)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+/NADH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート(NADP)、及びニコチン酸アデニンジヌクレオチド(NaAD)から選択される。一部の実施形態において、医薬品有効成分は、非晶質固体である。一部の実施形態において、医薬品有効成分は、結晶性固体である。一部の実施形態において、医薬品有効成分は、非晶質NMNである。
【0038】
一部の実施形態において、医薬品有効成分は、抗加齢化合物、例えば、抗酸化剤(例えば、CoQ10、ビタミンC、ビタミンE)、ペプチド、例えば、マトリキシル(パルミトイルペンタペプチド3)、アルジレリン(アセチルヘキサペプチド3)、ビタミンA、関連レチノイド、及び抗加齢日焼け止め、例えば、ヘリオプレックス及びメキソリルSX(エカムスル)から選択される。
【0039】
一部の実施形態において、医薬品有効成分は、疼痛軽減薬及び炎症低減剤、例えば、アセトアミノフェン、デュロキセチン、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク、及びジクロフェナク-ミソプロストールから選択される。他のNSAID医薬品有効成分としては、セレコキシブ、ピロキシカム、インドメタシン、メロキシカム、ケトプロフェン、スリンダク、ジフルニサル、ナブメトン、オキサプロジン、トルメチン、サルサレート、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトロラク、メクロフェナメート、及びメフェナム酸が挙げられる。
【0040】
一部の実施形態において、医薬品有効成分は、皮膚炎を処置するために使用される化合物、例えば、トリアムシノロン、クロベタゾール、ベタメタゾン、ヒドロコルチゾン、フルオシノニド及びプレドニゾロンから選択される。他の実施形態において、医薬品有効成分は、創傷を処置するために使用される化合物、例えば、銀スルファジアジン、サンチル(santyl)コラゲナーゼ、クロルヘキシジン、尿素、ベネレックス(venelex)及びレビシン(levicyn)から選択される。
【0041】
一部の実施形態において、医薬品有効成分は、老化細胞除去薬、例えば、ダサチニブ、ケルセチン、コルチゾール、コルチコステロン、メトホルミン、レスベラトロール、アピゲニン、オウゴニン、ケンフェロール、ラパマイシン、ルキソリチニブ、トファシチニブ、シンバスタチン及びナビトクラクスから選択される。
【0042】
一部の実施形態において、医薬品有効成分は、心血管疾患及び障害を処置するために使用される化合物、例えば、アミロライド、ブメタニド、クロロチアジド、クロルタリドン、フロセミド、ヒドロ-クロロチアジド、インダパミド及びスピロノラクトンから選択される。
【0043】
一部の実施形態において、医薬品有効成分は、セロトニン再取込み阻害剤(SRI)、5HT2受容体アンタゴニスト、抗けいれん薬、ノルエピネフリン再取込み阻害剤、アルファ-アドレナリン受容体アンタゴニスト、NK-3アンタゴニスト、NK-1受容体アンタゴニスト、PDE4阻害剤、ニューロペプチドY5受容体アンタゴニスト、D4受容体アンタゴニスト、5HT1A受容体アンタゴニスト、5HT1D受容体アンタゴニスト、CRFアンタゴニスト、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、及び鎮静催眠薬から選択される。
【0044】
一部の実施形態において、SRIは、フルオキセチン、ノルフルオキセチン、ネファゾドン、ヒドロキシネファゾドン、オキソンファゾドン(oxonefazodone)、デュロキセチン、ベンラファキシン、ミルナシプラン、シタロプラム、フルボキシアミン、パロキセチン及びセルトラリンから選択される選択的SRIである。一部の実施形態において、鎮静催眠薬は、アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼプ酸、クロバザム、ジアゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパムプラゼパム、ゾルピデム及びバルビツレートから選択される。一部の実施形態において、5HT1A受容体アンタゴニストは、ブスピロン、フレシノキサン、ゲピロン及びイプサピロンから選択される。
【0045】
ある特定の実施形態において、ノルエピネフリン再取込み阻害剤は、第3級三環系、例えば、アミトリプチリン、クロミプラミン、ドキセピン、イミプラミン及びトリミプラミンから選択される。他の実施形態において、ノルエピネフリン再取込み阻害剤は、第2級アミン三環系、例えば、アモキサピン、デシプラミン、マプロチリン、ノルトリプチリン及びプロトリプチリンから選択される。
【0046】
一部の実施形態において、モノアミンオキシダーゼ阻害剤は、イソカルボキサジド、フェネルジン、トラニルシプロミン、セレギリン及びモクロベミドから選択される。
【0047】
他の実施形態において、医薬品有効成分は、1-アミノ-4-フェニルアミノ-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2-スルホネート(アシッドブルー25)、1-アミノ-4-[4-ヒドロキシフェニル-アミノ]-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2-スルホネート、1-アミノ-4-[4-アミノフェニルアミノ]-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2-スルホネート、1-アミノ-4-[1-ナフチルアミノ]-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2-スルホネート、1-アミノ-4-[4-フルオロ-2-カルボキシフェニルアミノ]-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2-スルホネート、1-アミノ-4-[2-アントラセニルアミノ]-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2-スルホネート、ABT-263、アファチニブジマレエート、アキシチニブ、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、APCP、アスパラギナーゼ、AZD5363、バチルスカルメット-ゲランワクチン(bcg)、ビカルタミド、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、β-メチレン-ADP(AOPCP)、ブセレリン、ブスルファン、カバジタキセル、カボザンチニブ、カンプトテシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルフィルゾミブ、カルムスチン、セリチニブ、クロランブシル、クロロキン、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、コビメチニブ、コルヒチン、クリゾチニブ、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デメトキシビリジン、デキサメタゾン、ジクロロアセテート、ジエネストロール、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エリブリン、エルロチニブ、エストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、エバロリムス、エキセメスタン、フィルグラスチム、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲニステイン、ゴセレリン、GSK1120212、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、インターフェロン、イリノテカン、イクサベピロン、レナリドミド、レトロゾール、ロイコボリン、リュープロリド、レバミソール、ロムスチン、ロニダミン、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトホルミン、メトトレキセート、ミルテホシン、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、MK-2206、ムタマイシン、N-(4-スルファモイルフェニルカルバモチオイル)ピバルアミド、NF279、NF449、ニルタミド、ノコダゾール、オクトレオチド、オラパリブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、パゾパニブ、ペメトレキセド、ペントスタチン、ペリホシン、PF-04691502、プリカマイシン、ポマリドミド、ポルフィマー、PPADS、プロカルバジン、ケルセチン、ラルチトレキセド、ラムシルマブ、リアクティブブルー2、リツキシマブ、ロロフィリン、ロミデプシン、ルカパリブ、セルメチニブ、シロリムス、ナトリウム2,4-ジニトロベンゼンスルホネート、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、スニチニブ、スラミン、タラゾパリブ、タモキシフェン、テモゾロマイド、テムシロリムス、テニポシド、テストステロン、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、二塩化チタノセン、トナポフィリン、トポテカン、トラメチニブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ベリパリブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン及びボリノスタット(SAHA)から選択される化学療法剤である。
【0048】
他の実施形態において、適当な化学療法剤としては、以下が挙げられる: ABT-263、デキサメタゾン、5-フルオロウラシル、PF-04691502、ロミデプシン及びボリノスタット(SAHA)。他の実施形態において、化学療法剤としては、以下が挙げられる: 1-アミノ-4-フェニルアミノ-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2-スルホネート(アシッドブルー25)、1-アミノ-4-[4-ヒドロキシフェニル-アミノ]-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2-スルホネート、1-アミノ-4-[4-アミノフェニルアミノ]-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2-スルホネート、1-アミノ-4-[1-ナフチルアミノ]-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2-スルホネート、1-アミノ-4-[4-フルオロ-2-カルボキシフェニルアミノ]-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2-スルホネート、1-アミノ-4-[2-アントラセニルアミノ]-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2-スルホネート、APCP、β-メチレン-ADP(AOPCP)、カペシタビン、クラドリビン、シタラビン、フルダラビン、ドキソルビシン、ゲムシタビン、N-(4-スルファモイルフェニルカルバモチオイル)ピバルアミド、NF279、NF449、PPADS、ケルセチン、リアクティブブルー2、ロロフィリンナトリウム2,4-ジニトロベンゼンスルホネート、スマリン(sumarin)及びトナポフィリン。
【0049】
化学療法剤の他の型としては、腫瘍免疫療法薬、例えば、アバゴボマブ、アデカツムマブ、アフツズマブ、アレムツズマブ、アナツモマブマフェナトックス、アポリズマブ、ブリナツモマブ、BMS-936559、カツマキソマブ、デュルバルマブ、エパカドスタット、エピラツズマブ、インドキシモド、イノツズマブオゾガマイシン、インテツムマブ(intelumumab)、イピリムマブ、イサツキシマブ、ランブロリズマブ、MED14736、MPDL3280A、ニボルマブ、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オファツムマブ、オララツマブ(olatatumab)、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、リツキシマブ、チシリムマブ、サマリズマブ及びトレメリムマブが挙げられる。
【0050】
一部の実施形態において、医薬品有効成分は、DNA損傷を修復することが公知のPARP阻害剤、例えば、オラパリブ、ベリパリブ、ニラパリブ、NMS-P118、タラゾパリブ及びルカパリブから選択される。
【0051】
一部の実施形態において、医薬品有効成分は、神経変性疾患を処置するための薬剤、例えば、アマンタジン、アポモルフィン、バクロフェン、カルビドパ、ダントロレン、ドネペジル、エンタカポン、ガランタミン、レボドパ、メマンチン、プラミペキソール、ラサギリン、リルゾール、リバスチグミン、ロピニロール、セレギリン、タクリン、テトラベナジン、チザニジン及びトルカポンから選択される。
【0052】
一部の実施形態において、医薬品有効成分は、ニューロパチーを処置するための薬剤、例えば、ガバペンチン、レボカルニチン、デュロキセチン、カルバマゼピン、カプサイシン、プレガバリン及びクテンザから選択される。
【0053】
一部の実施形態において、医薬品有効成分は、血栓性障害を処置するための薬剤、例えば、ヘパリン、アクチバーゼ、アルテプラーゼ、アルガトロバン、アコバ(Acova)、ウロキナーゼ及びアボキナーゼから選択される。
【0054】
一部の実施形態において、医薬品有効成分は、肥満及び体重増加を処置するための薬剤、例えば、フェンテルミン、アジペックス-P、トピラメート、Belviq、コントレーブ、デソキシン、Alli、フェンジメトラジン、ゼニカル、オルリスタット及びテヌエートから選択される。
【0055】
一部の実施形態において、医薬品有効成分は、糖尿病を処置するとともに血糖レベルを調節する薬剤、例えば、クロルプロパミド、トルブタミド、トラザミド、グリメピリド、グリブリド、グリピジド、グリクラジド、メトホルミン、ミグリトール、アカルボース、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、レパグリニド、ナテグリニド、エクセナチド、リラグルチド、デュラグルチド、リキシセナチド、セマグルチド、サクサグリプチン、シタグリプチン、リナグリプチン、アログリプチン、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン及びエルツグリフロジンから選択される。
【0056】
一部の実施形態において、医薬品有効成分は、概日リズム障害を処置するための薬剤、例えば、メラトニン、ロゼレム、ベンゾジアザピン、アンビエン、Sonata、ルネスタ、ベルソムラ及びプロビジルから選択される。
【0057】
本明細書においてその上開示されているのは、式II:
【0058】
【化4】
(式中、mは、2又は3である)
の化合物又はその塩である。一部の実施形態において、mは2であり、一方、他の実施形態において、mは3である。
【0059】
一部の実施形態において、1種以上の医薬品有効成分は、ニコチン酸(NA)、ニコチンアミド(Nam)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチン酸モノヌクレオチド(NaMN)、ニコチン酸リボシド(NAR)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+/NADH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート(NADP)、ニコチン酸アデニンジヌクレオチド(NaAD)、及び式II:
【0060】
【化5】
(式中、mは、2又は3である)
の1種以上の化合物及び1種以上のその塩、並びにその組合せから選択される。
【0061】
本発明は、本発明の組成物及び方法における本発明の化合物の薬学的に許容される塩の使用を含む。ある特定の実施形態において、本発明の企図される塩としては、以下に限定されないが、アルキル塩、ジアルキル塩、トリアルキル塩又はテトラ-アルキルアンモニウム塩が挙げられる。ある特定の実施形態において、本発明の企図される塩としては、以下に限定されないが、L-アルギニン塩、ベネタミン塩、ベンザチン塩、ベタイン塩、水酸化カルシウム塩、コリン塩、デアノール塩、ジエタノールアミン塩、ジエチルアミン塩、2-(ジエチルアミノ)エタノール塩、エタノールアミン塩、エチレンジアミン塩、N-メチルグルカミン塩、ヒドラバミン塩、1H-イミダゾール塩、リチウム塩、L-リジン塩、マグネシウム塩、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン塩、ピペラジン塩、カリウム塩、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン塩、ナトリウム塩、トリエタノールアミン塩、トロメタミン塩及び亜鉛塩が挙げられる。
【0062】
ある特定の実施形態において、化合物は、酢酸イオン、トリフレートイオン、ハロゲン化物イオン、トリフルオロ酢酸イオン又はギ酸イオンから選択されるアニオンとの塩である。他の実施形態において、開示されている化合物が、媒体、例えば、水性媒体と接触するならば、アニオンは、例えば、OH-、H2PO4
-、HPO4
2-、HSO4
-、SO4
2-、NO3
-、HCO3
-及びCO3
2-から選択することができる。
【0063】
一部の実施形態において、開示されている化合物は、任意の適当なカチオンとの塩を形成することができる負荷電ホスフェートの形態である。カチオンは、該化合物が単離される又は異なるアニオン種を有する媒体中に移動されると、変化し得る。例えば、開示されている化合物は、本明細書に記載されている通りの薬学的に許容される塩であるホスフェート塩の形態であってよい。ある特定の実施形態において、カチオンは、Li+、Na+、K+、Mg2+及びCa2+から選択され得る。
【0064】
本明細書において、化合物又はその塩を投与することを含む、それを必要とする対象におけるNAD+レベルを増加させる方法であって、化合物が、本明細書において開示されているものである、方法が提供される。
【0065】
本明細書において、化合物又はその塩を投与することを含む、NAD+生合成と関連する疾患又は障害を処置する方法であって、化合物が、本明細書において開示されているものである、方法が提供される。
【0066】
本明細書において、NAD+レベルを増加させることにおける使用のための、本明細書に記載されている通りの任意の組成物が提供される。一実施形態において、組成物は、式Iの化合物を含む。
【0067】
疾患、障害及び状態
本明細書において、開示されている化合物及びその医薬組成物を使用する方法が提供される。開示されている化合物及びその医薬組成物は、老化又はストレスに関連した疾患若しくは障害、糖尿病、肥満、神経変性疾患、心血管疾患、血液凝固障害、炎症、がん及び/又は潮紅などを例えば含めた多種多様な疾患及び障害を処置及び/又は低減することを例えば含めて、様々な治療用途に有用であり得る。該方法は、開示されている化合物及び/又はその医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0068】
他の実施形態において、開示されている化合物及び/又はその医薬組成物は、皮膚状態を処置するために使用することができる。本明細書に記載されている方法に従って処置することができる例証的な皮膚状態としては、炎症、日光による損傷、又は自然老化に関連する若しくはそれによって引き起こされる障害若しくは疾患が挙げられる。例えば、組成物は、接触性皮膚炎(刺激性接触性皮膚炎及びアレルギー性接触皮膚炎を含める)、アトピー性皮膚炎(アレルギー性湿疹としても公知である)、光線性角化症、角質化障害(湿疹を含める)、表皮水疱症疾患(天疱瘡を含める)、剥離性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、紅斑(多形性紅斑及び結節性紅斑を含める)、日光又は他の光源によって引き起こされる損傷、円板状ループスエリテマトーデス、皮膚筋炎、乾癬、皮膚がん、及び自然老化の作用の処置に有用性を見出す。他の実施形態において、開示されている化合物及びその医薬組成物は、例えば、第1度、第2度若しくは第3度熱傷、及び/又は熱、化学若しくは電気熱傷を含めて、創傷及び/又は熱傷の処置で治癒を促進するために使用することができる。
【0069】
開示されている化合物及びその医薬組成物は、急性疾患、例えば、臓器若しくは組織への損傷を患う対象、例えば、脳卒中若しくは心筋梗塞を患う対象、又は脊髄損傷を患う対象に投与することもできる。開示されている化合物及びその医薬組成物は、アルコール依存症者の肝臓を修復するために使用することもできる。
【0070】
ある特定の実施形態において、本明細書において開示されている通りの化合物又は医薬組成物は、対象における細胞老化によって誘発又は悪化される疾患又は状態を処置又は防止すること、対象の老化の速度を例えば老化の開始後に減少させる方法、対象の寿命を伸ばす方法、寿命に関連する疾患又は状態を処置又は防止する方法、細胞の増殖能に関連する疾患又は状態を処置又は防止する方法、及び細胞傷害又は細胞死に起因する疾患又は状態を処置又は防止する方法のために使用することができる。ある特定の実施形態において、該方法は、対象の寿命を短くする疾患の発生率を減少させることによって作用するわけではない。ある特定の実施形態において、該方法は、疾患、例えば、がんによって引き起こされる死亡率を低減することによって作用するわけではない。
【0071】
ある特定の実施形態において、本明細書において開示されている通りの化合物又は医薬組成物は、対象の細胞の寿命を一般に増加させるために、並びにストレスに対して及び/又はアポトーシスに対して対象の細胞を保護するために、対象に投与することができる。本明細書に記載されている化合物で対象を処置することは、ホルミシス、即ち、生物体に有益である軽度のストレスを対象にかけることと同様であり得、それらの寿命を延ばすことができる。
【0072】
他の実施形態において、本明細書において、開示されている化合物及び/又はその医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することによって心血管疾患を処置する方法が提供される。開示されている化合物及びその医薬組成物を使用して処置することができる心血管疾患としては、心筋症又は心筋炎、例えば、特発性心筋症、代謝性心筋症、アルコール性心筋症、薬剤誘発性心筋症、虚血性心筋症、及び高血圧性心筋症が挙げられる。その上、本明細書に記載されている組成物及び方法を使用して処置可能であるのは、主要血管、例えば、大動脈、冠状動脈、頸動脈、脳血管動脈、腎動脈、腸骨動脈、大腿動脈及び膝窩動脈のアテローム性障害(大血管性疾患)である。処置することができる他の血管疾患としては、血小板凝集、網膜細動脈、糸球体細動脈、神経栄養血管、心臓細動脈、並びに眼、腎臓、心臓並びに中枢及び末梢神経系の関連する毛細血管床に関連したものが挙げられる。開示されている化合物及びその医薬組成物は、個体の血漿中のHDLレベルを増加させるために使用することもできる。
【0073】
開示されている化合物及びその医薬組成物は、放射線又は毒素の用量を近年受容した又は受容する可能性が高い対象に投与することができる。一実施形態において、放射線又は毒素の用量は、作業関連の又は医療の手順、例えば、核発電所での作業、飛行機の操縦、X線、CATスキャン、又は医用画像化のための放射性染料の投与の一部として受容され、こうした実施形態において、化合物は、予防措置として投与される。他の実施形態において、放射線又は毒素曝露は、非意図的に、例えば、産業事故、自然放射の位置における居住、テロ行為、又は放射性若しくは毒性材料を伴う戦争行為の結果として受容される。こうした場合において、開示されている化合物及びその医薬組成物は、アポトーシス及び急性放射線症候群の後続発症を阻害するために、好ましくは曝露後できるだけ早く投与される。
【0074】
他の実施形態において、開示されている化合物及びその医薬組成物は、年齢関連障害、例えば、がんを処置するのに有用であり得る。
【0075】
開示されている化合物及びその医薬組成物を使用して処置することができる例証的がんとしては、脳及び腎臓のがん、乳房、前立腺、精巣及び卵巣がんを含めたホルモン依存性がん、リンパ腫、並びに白血病が挙げられる。処置することができる他の疾患としては、自己免疫疾患、例えば、全身性ループスエリテマトーデス、強皮症及び関節炎が挙げられ、ここで、自己免疫細胞は除去されるべきである。ウイルス感染症、例えば、ヘルペス、HIV、アデノウイルス、並びにHTLV-1関連の悪性及び良性障害も、開示されている化合物及びその医薬組成物の投与によって処置することができる。
【0076】
一部の実施形態において、開示されている化合物及びその医薬組成物は、神経変性疾患、及び中枢神経系(CNS)又は末梢神経系(PNS)に対する外傷性又は機械的損傷を患う患者を処置するために使用することができる。神経変性疾患の例としては、以下に限定されないが、運動失調、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー・ゲーリック病)、びまん性レビー小体疾患、有棘赤血球舞踏病、原発性側索硬化症、眼球疾患(眼球神経炎)、化学療法誘発性ニューロパシー(例えば、ビンクリスチン、パクリタキセル、ボルテゾミブから)、糖尿病誘発性ニューロパシー及びフリードライヒ運動失調症が挙げられる。
【0077】
他の実施形態において、開示されている化合物及びその医薬組成物は、食欲を低減する及び/又は満腹を増加させるために使用することができ、それによって、体重損失又は体重増加の回避を引き起こす。こうした処置を必要とする対象は、過体重、肥満である対象、又は過体重若しくは肥満になる可能性が高い対象であり得る。
【0078】
他の実施形態において、開示されている化合物及びその医薬組成物は、悪液質を有する対象又は悪液質を発症する可能性が高くあり得る対象を処置するために使用することができる。方法は、対象において疾患の状態をモニタリングすることをさらに含むことができる。食欲及び/又は体重増加を促進する方法は、例えば、脂肪又は脂質代謝の減少を必要としているような対象を、例えば、対象を秤量すること、対象のBMIを決定することによって事前同定することを含むことができる。該方法は、例えば、開示されている化合物又はその医薬組成物の投与の最中及び/又はその後に対象をモニタリングすることを含むこともできる。投与することは、例えば、ボーラスで又は連続的に送達される1つ以上の投与量を含むことができる。モニタリングすることは、ホルモン又は代謝物を評価することを含むことができる。例証的なホルモンとしては、レプチン、アディポネクチン、レジスチン及びインスリンが挙げられる。例証的な代謝物としては、トリグリセリド、コレステロール及び脂肪酸が挙げられる。
【0079】
一部の実施形態において、開示されている化合物及びその医薬組成物は、代謝障害、例えば、インスリン抵抗性、前糖尿病状態、II型糖尿病、及び/又はその合併症を処置するために使用することができる。
【0080】
開示されている化合物及びその医薬組成物の投与は、対象においてインスリン感受性を増加させる及び/又はインスリンレベルを減少させることができる。こうした処置を必要とする対象は、II型糖尿病のインスリン抵抗性若しくは他の前駆症状を有する対象、II型糖尿病を有する対象、又はこれらの状態のいずれかを発症する可能性が高い対象であり得る。例えば、対象は、インスリン抵抗性を有する対象、例えば、高循環レベルのインスリン及び/又は関連の状態、例えば、高脂血症、脂質生成不全、高コレステロール血症、耐糖能障害、高血糖レベル、シンドロームXの他の顕在化、高血圧症、アテローム動脈硬化症並びにリポジストロフィーを有する対象であり得る。
【0081】
本明細書において、哺乳動物における血糖の濃度を調節する方法が提供される。本明細書において用いられる場合、血糖の濃度を調節することは、以前に決定されたレベルと比較した場合の、血糖の濃度における又はその任意の増加、減少及び/又は維持を指す。
【0082】
本明細書において開示されている処置の方法は、概日時計を調節する方法も対象とし、それによって、概日時計の活性によって調節される(時々、影響される、連携される又は媒介されるとも言われる)生物学的機能を調節する又はそれに影響する。典型的に、これらの生物学的機能は、24時間の期間中に「活性」状態と「不活性」状態との間で振動しながら一般におよそ24時間毎に反復される活性及び不活性のパターンを呈する。
【0083】
したがって、本発明は、本明細書において開示されている通りの化合物又は医薬組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与することによって概日時計の活性を調節する方法を提供する。一般に、概日時計の活性の調節は、SIRT1の活性を調節することによって本方法に従って達成されるCLOCK:BMAL1の調節の結果である。SIRT1の活性は、一般に、本明細書において開示されている通りの化合物又は医薬組成物の投与によって、及びある特定の実施形態において、NAD+経路に影響する化合物の投与によって、本方法に従って調節される。それによる概日時計の調節は、概日時計によって媒介される活性の調節を可能にする。
【0084】
本発明によると、概日時計の活性は、本明細書において開示されている通りの化合物又は医薬組成物の投与によって増加、減少又は維持することができる。したがって、概日時計の活性によって調節される生物学的機能(時々、生物学的活性とも称される)も、増加、減少又は維持され得る。加えて、これらの生物学的機能は、時間シフトすることもでき、即ち、特別な期間中、例えば、昼間又は昼光時間中(時々、光サイクルとも称される)、又は夜若しくは夜間時間中(時々、暗サイクルとも称される)に典型的に発生する活性は、活性が代わりにそれぞれ暗又は光サイクル中に発生するようにシフトすることができる。
【0085】
医薬製剤
この発明の化合物は、通常の実践を踏まえて選択することができる従来の担体及び賦形剤で製剤化される。錠剤は、賦形剤、滑剤、充填剤、バインダーなどを含有し得る。全ての製剤は、任意選択により、賦形剤、例えば、「Handbook of Pharmaceutical Excipients」(1986)で説明されているものを含有する。適当な賦形剤は、米国食品医薬品局非活性成分データベースにもリストされている。賦形剤としては、アスコルビン酸及び他の抗酸化剤、キレート化剤、例えば、EDTA、炭水化物、例えば、デキストラン、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ステアリン酸などが挙げられる。製剤のpHは、約3から約11を範囲とすることができるが、通常約7から約10である。
【0086】
有効成分は単独で投与されることが可能である一方で、それらを医薬製剤として提供することが好ましくあり得る。本発明の、獣医学のための及びヒト使用のための両方の製剤は、上記で定義されている通りの少なくとも1種の有効成分を、そのための1種以上の許容される担体及び任意選択により他の治療的成分と一緒に含む。担体は、製剤の他の成分と適合性があるとともにそのレシピエントに生理的に非侵害性であるという意味において「許容される」ものでなければならない。
【0087】
「薬学的に許容される」という成句は、健全な医学的判断の範疇内で、対象の組織との接触における使用に適当な、過度の毒性、刺激性、アレルギー応答又は他の問題若しくは合併症なく、妥当な利益/リスク比に相応するような化合物、材料、組成物及び/又は剤形を指すために、本明細書において用いられる。
【0088】
「薬学的に許容される担体」という成句は、本明細書で使用される場合、薬学的に許容される材料、組成物又はビヒクル、例えば、液体若しくは固体の充填剤、希釈液、賦形剤、溶媒又はカプセル化材料を意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性があるとともに対象に対して傷害性でないという意味において「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体として働くことができる材料の一部の例としては、:(1)糖、例えば、ラクトース、グルコース及びスクロース、(2)デンプン、例えば、コーンスターチ及びバレイショデンプン、(3)セルロース、及びその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース、(4)粉末化トラガカント、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)賦形剤、例えば、カカオ脂及び坐剤ワックス、(9)油、例えば、落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油、(10)グリコール、例えば、プロピレングリコール、(11)ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール、(12)エステル、例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル、(13)寒天、(14)緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム、(15)アルギン酸、(16)ピロゲンフリー水、(17)等張生理食塩水、(18)リンゲル液、(19)エチルアルコール、(20)リン酸緩衝溶液、並びに(21)医薬製剤中に用いられる他の非毒性の適合性がある物質、が挙げられる。
【0089】
経口投与に適当な本発明の製剤は、個別の単位、例えば、カプセル剤、カシェ剤又は錠剤として提供することができ、各々は、所定量の有効成分を散剤又は顆粒剤として含有する。有効成分は、ボーラス、舐剤又はパスタ剤として投与することもできる。
【0090】
錠剤は、任意選択により1種以上の副成分とともに、圧縮又は成形することによって作製される。圧縮錠剤は、任意選択によりバインダー、滑沢剤、不活性希釈剤、保存料、表面活性剤又は分散剤と混合された自由流動性形態、例えば、散剤又は顆粒剤の有効成分を、適当な機械中で圧縮することによって調製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化有効成分の混合物を、適当な機械中で成形することによって作製することができる。錠剤は、任意選択により、コーティングすること又は切れ目を入れることができ、任意選択により、それからの有効成分の緩徐又は制御放出を提供するように製剤化される。
【0091】
本発明による医薬製剤は、本発明による化合物を、1種以上の薬学的に許容される担体又は賦形剤及び任意選択により他の治療剤と一緒に含む。有効成分を含有する医薬製剤は、意図される投与方法に適当な任意の形態であってよい。例えば経口使用が意図される場合、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水若しくは油懸濁剤、分散性散剤若しくは顆粒剤、乳剤、硬及び軟カプセル剤、シロップ剤又はエリキシル剤が調製され得る。経口使用が意図される組成物は、医薬組成物の製造に関する技術分野で公知の任意の方法に従って調製することができ、こうした組成物は、美味な調製物を提供するために、甘味剤、香味剤、着色剤及び保存剤を含めて1種以上の薬剤を含有することができる。錠剤の製造に適当である非毒性の薬学的に許容される賦形剤との添加混合物中に有効成分を含有する錠剤が許容される。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤、例えば、炭酸カルシウム又はナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はナトリウム、顆粒化剤及び崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプン又はアルギン酸、結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン又はアカシア、並びに滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクであってよい。錠剤は、非コーティングであり得るか、又はマイクロカプセル化を含めた公知の技法によってコーティングすることで胃腸管中での崩解及び吸着を遅延させ、それによって、より長い期間にわたって持続作用を提供することができる。例えば、時間遅延材料、例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルが、単独で又はワックスとともに用いられ得る。
【0092】
経口使用のための製剤は、有効成分が不活性固体希釈剤、例えばリン酸カルシウム若しくはカオリンと混合される硬ゼラチンカプセルとして、或いは有効成分が水又は油媒体、例えば、落花生油、流動パラフィン若しくはオリーブ油と混合される軟ゼラチンカプセル剤として提供することもできる。
【0093】
本発明の水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適当な賦形剤との添加混合物中で活性材料を含有する。こうした賦形剤としては、懸濁化剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム及びガムアカシア、並びに分散剤又は湿潤剤、例えば、自然発生ホスファチド(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)、酸化エチレンと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、脂肪酸及びヘキシトール無水物から誘導される酸化エチレンと部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられる。水性懸濁液は、1種以上の保存料、例えば、エチル又はn-プロピルp-ヒドロキシ-ベンゾエート、1種以上の着色剤、1種以上の香味剤、及び1種以上の甘味剤、例えば、スクロース又はサッカリンを含有することもできる。
【0094】
水の添加による水性懸濁液の調製に適当な本発明の分散性散剤及び顆粒剤は、分散剤又は湿潤剤、懸濁化剤、及び1種以上の保存料との添加混合物中で有効成分を提供する。適当な分散剤又は湿潤剤、及び懸濁化剤は、上記で開示されているものによって例証される。追加の賦形剤、例えば甘味剤、香味剤及び着色剤も存在することができる。
【0095】
単一剤形を生成するための担体材料と組み合わせることができる有効成分の量は、処置される対象及び特別な投与モードに依存して変動する。例えば、ヒトへの経口投与が意図される徐放性製剤は、総組成物の約5%から約95%(重量:重量)まで変動することができる適切及び好都合な量の担体材料と配合される、およそ1mgからおよそ1000mgの活性材料を含有することができる。医薬組成物は、投与のための容易に測定可能な量を提供するために調製することができる。
【0096】
肺内又は経鼻投与に適当な製剤は、経鼻通過を介する急速吸入によって又は口を介する吸入によって投与されることで肺胞嚢に達する、例えば約0.1から約500ミクロン、例えば、約0.5、約1、約30又は約35ミクロンなどの範囲における粒子サイズを有する。適当な製剤は、有効成分の水性又は油性溶液を含む。エアロゾル又は乾燥粉末投与に適当な製剤は、従来の方法に従って調製することができ、他の治療剤とともに送達することができる。
【0097】
該製剤は、単位用量又は多用量容器、例えば、密閉アンプル及びバイアル中にて提供され、注射のための滅菌液体担体、例えば、水の添加のみを、使用の直前に必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で貯蔵することができる。即時注射溶液及び懸濁液は、前に記載されている種類の滅菌散剤、顆粒剤及び錠剤から調製される。好ましい単位投与量製剤は、有効成分の、本明細書において上記に列挙されている通りの日用量若しくは単位サブ日用量、又はその適切な画分を含有するものである。
【0098】
上で特に記述されている成分に加えて、この発明の製剤は、当該の製剤の型を考慮して、当技術分野において従来の他の薬剤を含むことができると理解されるべきであり、例えば、経口投与に適当なものは、香味剤を含むことができる。
【0099】
本発明の前述の書面記載は、当業者が、目下その最良モードであると考えられるものを作製及び使用するのを可能にする一方で、通常の技能者は、本明細書における特定の実施形態、方法及び実施例の変動、組合せ及び同等物の存在を理解し、認められよう。本発明は、そのため、上に記載されている実施形態、方法及び実施例によってではなく、本発明の範疇及び趣旨内の全ての実施形態及び方法によって限定されるべきである。
【0100】
値及び範囲が本明細書において提供される場合は常に、これらの値及び範囲によって包含される全ての値及び範囲は、本発明の範疇内に包含されると意味されると理解されるべきである。さらに、これらの範囲内に入る全ての値、同様に、値の範囲の上限又は下限も、本出願によって企図される。
【0101】
参照による組み込み
この明細書において記述されている全ての米国特許並びに米国及びPCT公開特許出願、並びに非特許文献は、各々の独立した特許及び公報が具体的に及び個々に参照により組み込まれると示されているかのように同じ程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0102】
[実施例]
当業者は、日常的実験法だけを使用して、本明細書に記載されている特定の手順、実施形態、請求項及び実施例の多数の同等物を認識するか、又は確かめることができる。こうした同等物は、この発明の範囲内であるとともに本明細書に添付されている請求項によって包含されると考えられる。例えば、以下に限定されないが、反応時間、反応サイズ/体積、及び実験用試薬、例えば、溶媒、触媒、圧力、大気条件、例えば、窒素雰囲気、並びに還元/酸化剤を含めた反応条件において、技術認識されている代替物を用いるとともに日常的実験法だけを使用する修正は、本出願の範疇内であると理解されるべきである。
【0103】
本明細書における可変要素の任意の定義における要素の一覧の列挙は、その可変要素の定義を、一覧されている要素の任意の単一の要素又は組合せ(又は副次的組合せ)として含む。本明細書における実施形態の列挙は、その実施形態を、任意の単一の実施形態として又は任意の他の実施形態若しくはその一部との組合せで含む。別段に注記されていない限り、本明細書に記載されている合成のための出発材料は、市販供給源又は公知の合成手順から得て、さらに精製することなく使用した。
【0104】
一般の合成スキーム
【0105】
【化6】
ビス(((2R,3S,4R,5R)-5-(3-カルバモイルピリジン-1-イウム-1-イル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メチル)ホスフェートアセテートの調製
【0106】
【化7】
NRトリフレート(5.00g、12.38ミリモル)を100mlの一口24/40丸底フラスコに入れ、アルゴン下に置いた。フラスコを-15℃から-10℃の冷浴に入れ、次いで、トリメチルホスフェート(18ml)を添加し、反応混合物を撹拌した。オキシ塩化リン(0.865mL、1.42gm、9.28ミリモル、0.75当量)をシリンジから2分の期間をかけて滴下により添加した。反応物を30分間この冷浴中で撹拌し、次いで、冷蔵庫に5℃で1~2日間入れた。反応物を次いで、-15℃から-10℃に冷却し、1当量から6当量の水を20分かけて滴下により添加した。反応混合物を次いで、アミノプロピルシリカゲルカラム上に置き、酢酸エチル:メタノール中0.1Mの酢酸:水中0.1Mの酢酸の勾配で溶出して、所望の生成物を、その一酢酸塩として得た。
1H NMR (500 MHz, D
2O) δ 9.43 (d, 2H J = 0.6 Hz), 9.21 (dd, 2H, J = 6.3, 1.1 Hz), 8.95 (ddd, 2H, J = 8.1, 1.7, 1.2 Hz), 8.25 (td, 2H, J = 7.2, 1.7 Hz), 6.18 (d, 2H, J = 5.2 Hz), 4.57 (m, 2 H), 4.48 (td, 2H, J = 5.1, 2.1 Hz), 4.37 (m, 2H), 4.29 (ddd, 2H, J = 12.0, 4.8, 2.4 Hz), 4.12 (ddd, 2H, J = 12.0, 5.7, 2.7 Hz), 1.87 (s, 3H);
13C NMR (125 MHz, D
2O) δ 181.40, 165.66, 145.97, 142.45, 139.80, 134.00, 128.51, 99.72, 86.92, 77.57, 70.65, 64.64, 23.23;
31P NMR (200 MHz, D
2O), δ 0.74. (MS (ESI
+) m/z = 571.1 (M
+).
【0107】
式Iの調製、n=2
【0108】
【化8】
50mLナスフラスコに、4.00g(9.89mmol)のニコチンアミドリボシドトリフルオロメタンスルホネート及び撹拌子を投入した。フラスコをアルゴンでパージし、セプタムで蓋をした。フラスコを氷浴で冷却し、次いで、24mLのトリメチルホスフェートを、シリンジを介して添加した。混合物を氷冷しながら5~10分間撹拌し、次いで、1.45mL(15.56mmol)のオキシ塩化リンを、シリンジを介して添加した。3時間後、400マイクロリットルのピリジンを反応物に添加した。5.25時間後、534マイクロリットルの水を滴下により1分かけて添加した。次に、3.2mLのピリジンを添加した。懸濁液を氷冷しながら1.5時間の間撹拌し、次いで、4℃で15.5時間の間貯蔵した。
【0109】
反応物を濁るまで酢酸エチルで希釈し、次いで、少量のメタノール(約1mL)を添加して、清澄な溶液を得た。混合物の半分を、酢酸エチルで予備平衡化された90gのアミノプロピル官能化シリカゲルカラム(アセテート形態)上に載せた。カラムを次いで、以下の移動相の順序で溶出した:移動相A-酢酸エチル、移動相B:メタノール中0.1Mの酢酸、移動相C:水中0.1Mの酢酸。溶出順序は、以下の通りであった(全ての比はv:vである):1000mLのA、50:50のA:B、40:60のA:B、100%のB、80:20のB:C、60:40のB:C、40:60のB:C、及び100%のC。生成物含有画分をHPLC MS(ESI+、スキャンモード)によって同定し、生成物質量としてm/z=651amuであった。生成物は主に、60:40のB:C及び40:60のB:C画分中にあった。生成物含有画分をプールし、真空中で泡に濃縮し、次いで、0.5mLの水中に取り込み、泡に再濃縮した。泡を3mLの水中に溶解させ、凍らせ、凍結乾燥させて、不純な生成物を得た。同じクロマトグラフィー及び凍結乾燥順序を介して泡を再精製して、所望の生成物を白色の固体として得た。
【0110】
粗生成物溶液の第2の半分を次いで、第1の半分と同じ順序を介して精製した。これで、第2のロットの生成物を白色の固体として得た。合わせたロットの総収量は、50~500mgであった。
(付記)
(付記1)
構造:
【化9】
を有する化合物、又はその塩。
(付記2)
塩が、H
+
、Li
+
、Na
+
、K
+
、Mg
2+
及びCa
2+
から選択されるカチオンで形成される、付記1に記載の化合物。
(付記3)
塩が、酢酸イオン、トリフレートイオン、ハロゲン化物イオン、トリフルオロ酢酸イオン、ギ酸イオン、H
2
PO
4
-
、HPO
4
2-
、OH
-
、HSO
4
-
、SO
4
2-
、NO
3
-
、HCO
3
-
及びCO
3
2-
から選択されるアニオンで形成される、付記1に記載の化合物。
(付記4)
1種以上の薬学的に許容される固体賦形剤、並びに式I:
【化10】
(式中、nは、1である)
によって表される構造を有する1種以上の化合物及び/又は1種以上のその塩を含む組成物。
(付記5)
薬学的に許容される固体賦形剤が、抗付着剤、バインダー、コーティング、染料、崩壊剤、香味剤、滑剤、滑沢剤、保存料、収着剤、甘味料、分散剤、希釈液、充填剤、顆粒化剤、コーティング剤、ワックス、懸濁化剤、湿潤剤、ビヒクル、及びその組合せから選択される、付記4に記載の組成物。
(付記6)
錠剤、丸剤、カプセル剤、カプレット剤、トローチ剤、顆粒剤、散剤、サッシェ剤、吸入粉末剤、チュアブル剤、芳香錠剤及びロゼンジ剤から選択される固体形態である、付記4に記載の組成物。
(付記7)
錠剤の形態である、付記4に記載の組成物。
(付記8)
式Iの化合物が、約0.001重量%から約10重量%の量で組成物に存在する、付記4に記載の組成物。
(付記9)
組成物における式Iの化合物の量が、組成物の約0.25重量%である、付記4に記載の組成物。
(付記10)
薬学的に許容される賦形剤が、少なくとも約5重量%の量で存在する、付記4に記載の組成物。
(付記11)
薬学的に許容される賦形剤が、約30重量%の量で存在する、付記4に記載の組成物。
(付記12)
1種以上の医薬品有効成分、並びに式I:
【化11】
(式中、nは、1である)
によって表される構造を有する化合物及び/又は1種以上のその塩を含む固体組成物。
(付記13)
1種以上の医薬品有効成分の量に対する式Iの化合物の量が、約0.001重量%から約50重量%未満を範囲とする、付記12に記載の組成物。
(付記14)
1種以上の医薬品有効成分の量に対する式Iの化合物の量が、約0.1重量%から約1.5重量%である、付記12に記載の組成物。
(付記15)
1種以上の医薬品有効成分が、ニコチン酸(NA)、ニコチンアミド(Nam)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチン酸モノヌクレオチド(NaMN)、ニコチン酸リボシド(NAR)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD
+
/NADH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート(NADP)、ニコチン酸アデニンジヌクレオチド(NaAD)、式II:
【化12】
(式中、mは、2又は3である)
の1種以上の化合物及びその塩、並びにその組合せから選択される、付記12に記載の組成物。
(付記16)
mが2である、付記15に記載の組成物。
(付記17)
NAD+レベルを増加させることにおける使用のための、付記1から3のいずれか一項に記載の化合物又は付記4から16のいずれか一項に記載の組成物。
(付記18)
付記4から17のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、それを必要とする対象におけるNAD+レベルを増加させる方法。