(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】スイッチング増幅器における出力ドライバの動的制御
(51)【国際特許分類】
H03F 3/217 20060101AFI20240930BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20240930BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240930BHJP
H03K 17/16 20060101ALI20240930BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
H03F3/217
H02M1/08 A
H02M7/48 F
H03K17/16 H
H03K17/687 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023094829
(22)【出願日】2023-06-08
【審査請求日】2023-06-08
(32)【優先日】2022-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】318000156
【氏名又は名称】ダイオーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100137969
【氏名又は名称】岡部 憲昭
(74)【代理人】
【識別番号】100104824
【氏名又は名称】穐場 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100121463
【氏名又は名称】矢口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】カダム,ダーマ アール.
(72)【発明者】
【氏名】アローラ,ロヒット
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-183241(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0226592(US,A1)
【文献】特開2008-022176(JP,A)
【文献】特表2016-507955(JP,A)
【文献】特開2016-208500(JP,A)
【文献】特開2021-61663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 3/217
H02M 1/08
H02M 7/48
H03K 17/16
H03K 17/687
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の出力段であって、第1及び第2の基準電圧間の第1の出力ノードにおいて直列に接続された第1のプルアップトランジスタ及び第1のプルダウントランジスタを備え、前記第1のプルアップ及びプルダウントランジスタの各々が、制御端子を有しかつスイッチドモジュレータから第1の差動スイッチング制御信号を受信し、前記第1の出力ノードが、第1の差動出力信号を負荷デバイスの第1の端部に提供する、第1の出力段と、
第2の出力段であって、前記第1及び第2の基準電圧間の第2の出力ノードにおいて直列に接続された第2のプルアップトランジスタ及び第2のプルダウントランジスタを備え、前記第2のプルアップ及びプルダウントランジスタの各々が、前記スイッチドモジュレータから第2の差動スイッチング制御信号を受信する制御端子を有し、前記第2の出力ノードが、第2の差動出力信号を前記負荷デバイスの第2の端部に提供する、第2の出力段と、
出力電流の方向を決定し、前記出力電流が前記第1の出力ノードから前記第2の出力ノードに流れるか、又は前記出力電流が前記第2の出力ノードから前記第1の出力ノードに流れるかを示す電流方向信号を提供するための、前記スイッチドモジュレータの第1の出力及び前記スイッチドモジュレータの第2の出力に結合された電流方向検出回路と、
前記電流方向信号に応答する、それぞれ前記第1のプルアップトランジスタ、前記第1のプルダウントランジスタ、前記第2のプルアップトランジスタ、及び前記第2のプルダウントランジスタに結合された第1、第2、第3、及び第4のスルー制御回路と、
を備え、
前記第1のスルー制御回路が、前記出力電流が前記第1の出力ノードから前記第2の出力ノードに流れるときの、前記第1のプルアップトランジスタのターンオフ中にのみ起動され、
前記第2のスルー制御回路が、前記出力電流が前記第2の出力ノードから前記第1の出力ノードに流れるときの、前記第1のプルダウントランジスタのターンオフ中にのみ起動され、
前記第3のスルー制御回路が、前記出力電流が前記第2の出力ノードから前記第1の出力ノードに流れるときの、前記第2のプルアップトランジスタのターンオフ中にのみ起動され、
前記第4のスルー制御回路が、前記第1の出力ノードから前記第2の出力ノードに前記出力電流が流れるときの、前記第2のプルダウントランジスタのターンオフ中にのみ起動される、
スイッチング増幅器回路。
【請求項2】
所与のスルー制御回路が、出力トランジスタの制御端子に結合されており、前記スルー制御回路が、並列に接続された第1のスイッチトランジスタ及び第2のスイッチトランジスタと直列に結合された電流源を含み、
前記第1のスイッチトランジスタが、スイッチング入力信号に結合された制御端子を有し、
前記第2のスイッチトランジスタが、出力ノードにおける電流方向に応じて、前記スイッチング入力信号又はスルーレートを低減する動的に変調されたスイッチング信号のいずれかに結合された制御端子を有する、
請求項1に記載のスイッチング増幅器回路。
【請求項3】
動的に変調されたスイッチング入力信号が、前記スイッチング入力信号と、前記出力ノードに結合されたハイパスフィルタによって決定された第1のパルス信号と、を含む、請求項2に記載のスイッチング増幅器回路。
【請求項4】
前記第2のスイッチトランジスタが、前記第1のスイッチトランジスタのオン抵抗の25%、又はそれ以下であるオン抵抗によって特徴付けられている、請求項3に記載のスイッチング増幅器回路。
【請求項5】
前記第2のスイッチトランジスタが、前記第1のスイッチトランジスタのオン抵抗の50%、又はそれ以下であるオン抵抗によって特徴付けられている、請求項3に記載のスイッチング増幅器回路。
【請求項6】
前記所与のスルー制御回路が、PMOSスルー制御回路であり、前記第1及び第2のスイッチトランジスタが、PMOSトランジスタであり、前記PMOSスルー制御回路が、
前記スイッチング入力信号を受信するための第1の入力ノード、
電流検出信号を受信するための第2の入力ノード、及び
出力ノードを有する、
OR回路と、
抵抗器を介して前記OR回路の前記出力ノードに結合されたドレインノードを有するpチャネルMOSトランジスタと、
前記出力トランジスタの出力ノードと前記pチャネルMOSトランジスタのゲートノードとの間に結合されたハイパスフィルタであって、
前記pチャネルMOSトランジスタのドレインが、前記動的に変調されたスイッチング入力信号を提供する、ハイパスフィルタと、
前記電流方向信号に応答して、前記スイッチング入力信号及び前記動的に変調されたスイッチング入力信号のうちの一方を選択するように構成されたマルチプレクサと、をさらに備える、
請求項3に記載のスイッチング増幅器回路。
【請求項7】
前記第1のプルアップトランジスタが、PMOSトランジスタであり、
前記第1のスルー制御回路が、PMOSスルー制御回路である、
請求項6に記載のスイッチング増幅器回路。
【請求項8】
前記第2のプルアップトランジスタが、PMOSトランジスタであり、
前記第2のスルー制御回路が、PMOSスルー制御回路である、
請求項6に記載のスイッチング増幅器回路。
【請求項9】
前記所与のスルー制御回路が、NMOSスルー制御回路であり、前記第1及び第2のスイッチトランジスタが、NMOSトランジスタであり、前記NMOSスルー制御回路が、
前記スイッチング入力信号を受信するための第1の入力ノード、
電流検出信号を受信するための第2の入力ノード、及び
出力ノードを有する、
AND回路と、
抵抗器を介して前記AND回路の前記出力ノードに結合されたドレインノードを有するnチャネルMOSトランジスタと、
前記出力トランジスタの出力ノードと前記nチャネルMOSトランジスタのゲートノードとの間に結合されたハイパスフィルタであって、
前記nチャネルMOSトランジスタのドレインが、前記動的に変調されたスイッチング入力信号を提供する、ハイパスフィルタと、
前記電流方向信号に応答して、前記スイッチング入力信号及び前記動的に変調されたスイッチング入力信号のうちの一方を選択するように構成されたマルチプレクサと、をさらに備える、
請求項3に記載のスイッチング増幅器回路。
【請求項10】
前記第1のプルダウントランジスタが、NMOSトランジスタであり、
前記第3のスルー制御回路が、NMOSスルー制御回路である、
請求項9に記載のスイッチング増幅器回路。
【請求項11】
前記第2のプルダウントランジスタが、NMOSトランジスタであり、
前記第4のスルー制御回路が、NMOSスルー制御回路である、
請求項9に記載のスイッチング増幅器回路。
【請求項12】
スイッチング入力信号に結合された制御端子、
負荷デバイスに結合するために出力ノードに結合されたドレインノード、及び
基準電圧に結合されたソースノードを含む、
出力トランジスタと、
並列に接続された第1のスイッチトランジスタ及び第2のスイッチトランジスタとの接続ノードにおいて直列に結合された電流源を含むスルー制御回路であって、前記接続ノードが、前記出力トランジスタの前記制御端子に結合されている、スルー制御回路と、
を備え、
前記第1のスイッチトランジスタが、前記スイッチング入力信号に結合された制御端子を有し、
前記第2のスイッチトランジスタが、前記出力ノードにおける電流方向に応じて、前記スイッチング入力信号又は動的に変調されたスイッチング入力信号のいずれかに結合された制御端子を有する、
スルーレート制御を伴う出力ドライバ。
【請求項13】
前記動的に変調されたスイッチング入力信号が、前記スイッチング入力信号と、前記出力ノードに結合されたハイパスフィルタによって決定された負のパルス信号と、を含む、請求項12に記載の出力ドライバ。
【請求項14】
遅延セルを使用し、感知された出力信号に従って遅延を加えることによって、前記動的に変調されたスイッチング入力信号を生成する、請求項13に記載の出力ドライバ。
【請求項15】
前記出力トランジスタが、NMOSトランジスタであり、前記スルー制御回路が、
前記スイッチング入力信号を受信するための第1の入力ノード、
電流検出信号IL-Dirを受信するための第2の入力ノード、及び
出力ノードを有する、
AND回路と、
抵抗器を介して前記AND回路の前記出力ノードに結合されたドレインノードを有するnチャネルMOSトランジスタと、
前記出力トランジスタの前記出力ノードとスイッチトランジスタのゲートノードとの間に結合されたハイパスフィルタであって、
前記nチャネルMOSトランジスタの前記ドレインノードが、動的に変調されたスイッチング信号を提供する、ハイパスフィルタと、
電流方向信号に応答して、前記スイッチング入力信号及び前記動的に変調されたスイッチング入力信号のうちの一方を選択するように構成されたマルチプレクサ回路と、をさらに備える、
請求項12に記載の出力ドライバ。
【請求項16】
前記出力トランジスタが、PMOSトランジスタであり、前記スルー制御回路が、
前記スイッチング入力信号を受信するための第1の入力ノード、
電流検出信号を受信するための第2の入力ノード、及び
出力ノードを有する、
OR回路と、
抵抗器を介して前記OR回路の前記出力ノードに結合されたドレインノードを有するpチャネルMOSトランジスタと、
前記出力トランジスタの前記出力ノードとスイッチトランジスタのゲートノードとの間に結合されたハイパスフィルタであって、
前記pチャネルMOSトランジスタのドレインが、前記動的に変調されたスイッチング入力信号を提供する、ハイパスフィルタと、
電流方向信号に応答して、スイッチング入力信号及び動的に変調されたスイッチング入力信号のうちの一方を選択するように構成されたマルチプレクサと、をさらに備える、
請求項12に記載の出力ドライバ。
【請求項17】
出力トランジスタを、前記出力トランジスタの制御端子においてスイッチング入力信号によって制御することと、
並列に接続された第1のスイッチトランジスタ及び第2のスイッチトランジスタとの接続ノードにおいて直列に結合された電流源を含むスルー制御回路を使用して前記出力トランジスタのターンオフ電流を調節することであって、前記接続ノードが、前記出力トランジスタの前記制御端子に結合されており、前記調節することが、
前記スイッチング入力信号を使用して前記第1のスイッチトランジスタをオンにすること、及び
前記出力トランジスタの出力ノードにおける電流方向に応じて、前記スイッチング入力信号又は動的に変調されたスイッチング入力信号のいずれかを使用して前記第2のスイッチトランジスタをオンにすることを含む、調節することと、を含む、
出力ドライバを動作させるための方法。
【請求項18】
前記出力ノードに結合されたハイパスフィルタによって決定されたパルス信号を使用して前記スイッチング入力信号を修正することによって、前記動的に変調されたスイッチング入力信号を形成することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2のスイッチトランジスタを、前記第1のスイッチトランジスタのオン抵抗の25%、又はそれ以下であるオン抵抗で構成することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
遅延セルを使用し、感知された出力信号に従って遅延を加えることによって、前記動的に変調されたスイッチング入力信号を生成することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001]本発明は、オーディオシステムにおける電子回路の分野に関する。より詳細には、本発明は、デバイス性能を改善するための動的制御技術に関する。本発明の実施形態は、効率的なスイッチド電力変換回路などの他の回路にも適用することができる。
【0002】
[0002]スイッチング増幅器としても知られているスイッチング増幅器は、トランジスタがバイナリスイッチとして動作する電子増幅器である。それらは完全にオン又は完全にオフのいずれかである。スイッチング増幅器は、理想的には、それらの出力トランジスタが事実上常にゼロ電流又はゼロ電圧のいずれかを運ぶ、レール・ツー・レール出力スイッチングを採用する。したがって、それらの電力損失は最小限であり、それらは広範囲の電力レベルにわたって高い効率性を実現する。それらの有利な高い効率性は、携帯電話からフラットスクリーンテレビ及びホームシアター受信機まで、様々なオーディオアプリケーションにおけるそれらの使用を推進してきた。スイッチングオーディオ電力増幅器は、AB級オーディオ電力増幅器よりも効率的である。より高い効率性のために、スイッチング増幅器は、より小さい電源を必要とし、ヒートシンクを排除し、システム全体のコスト、サイズ、及び重量を大幅に低減する。
【0003】
[0003]スイッチングオーディオ電力増幅器は、オーディオ入力信号に従ってオーディオ信号を高周波パルスに変換し出力をスイッチングする。一部のスイッチング増幅器は、パルス幅モジュレータ(PWM)を使用して、オーディオ信号の振幅によって幅が変化する一連の調整パルスを生成する。可変幅パルスは、固定周波数で電力出力トランジスタをスイッチングする。他のスイッチング増幅器は、他のタイプのパルスモジュレータに依存する場合がある。以下の論述は、主にパルス幅モジュレータを参照するが、当業者は、スイッチング増幅器が他のタイプのモジュレータで構成され得ることを認識するであろう。
【0004】
[0004]
図1は、従来のスイッチング増幅器を示す簡略化された回路図である。
図1に示すように、スイッチング増幅器100は差動増幅器である。差動入力オーディオ信号INP、INMは比較器101、102に入力され、入力信号INP、INMが発振器103から生成された三角波VREFと比較されて、PWM信号106、107が生成される。PWM信号106及び107は、それぞれトランジスタM1、M2、M3、及びM4のゲートに結合されている。スイッチング増幅器の差動出力信号は、それぞれOUTP及びOUTNとラベル付けされた端子に提供される。
図1に示すように、出力端子OUTP及びOUTNは、インダクタL1及び抵抗器R1で表されたスピーカ負荷110に接続されている。
【0005】
[0005]
図2は、
図1のスイッチング増幅器における信号の変調を示す波形図である。
図2に示すように、差動入力信号、例えばオーディオ信号INM及びINPは、
図1に関連して上述したように2つの比較器によって三角形基準波形と比較される。比較器の出力信号は、パルス幅が入力信号に比例する固定周波数のパルス信号である。2つのPWM信号がOUTP及びOUTNとして
図2に示されている。
【0006】
[0006]デバイスの絶縁破壊及び電磁干渉(EMI)は、スイッチングオーディオ増幅器及びDC-DCスイッチング調整器における重要な問題である。低耐圧デバイスによって大出力トランジスタを駆動するパルス幅変調を採用する任意のシステムは、これらの問題の影響を受けやすい。
【0007】
[0007]これらの問題の原因は、ターンオフ中に全ての信号遷移エッジを制御することができず、大きなオーバーシュート及びアンダーシュートをもたらすことであった。既存の技術は、EMI及びデバイスの損傷の問題を防止するために、デッドタイムを増加させること、又は極めてより遅いスルーレートを適用することに依存することが多い。しかし、そのような設計は、回路速度を遅くし、全高調波歪み(THD)特性が劣るという欠点がある。EMI及びデバイスの絶縁破壊並びにTHD特性に対してスルーレートを制御することに関してはトレードオフがあり、両者は逆相関するため、両方の仕様パラメータを満たすためのスルー制御の最適な設計は困難なタスクになる。
【0008】
[0008]したがって、上述の問題に対する改善された解決策が必要とされている。
定義
【0009】
[0009]本開示で使用される用語は、一般に、本発明の文脈内で当技術分野におけるそれらの通常の意味を有する。本発明の説明に関して実施者に追加のガイダンスを提供するために、特定の用語を以下に論述する。同じことが2つ以上の言い方で言われ得ることが理解されよう。それゆえに、代替の言い回し及び同義語が使用される場合がある。
【0010】
[0010]本明細書で使用される場合、スイッチング増幅器は、増幅デバイス(トランジスタ、通例ではMOSFET)が他の増幅器のような線形利得デバイスとしてではなく、電子スイッチとして動作する電子増幅器を指す。それらは、供給レール間を前後に迅速にスイッチングすることによって動作し、パルス幅、パルス密度、又は入力をパルス列に符号化するための関連技術を使用するモジュレータによって供給される。一般的なタイプのスイッチング増幅器には、D級増幅器及びスイッチドモード電力制御増幅器が含まれる。
【0011】
[0011]D級増幅器は、オーディオ増幅器アプリケーションでよく使用されるスイッチング増幅器のタイプである。
【0012】
[0012]本明細書で使用される場合、スイッチング制御信号又はスイッチング信号は、スイッチング増幅器で使用されるように、増幅デバイスを制御するために供給レール間で前後にスイッチングする信号を指す。
【0013】
[0013]本明細書で使用される場合、差動増幅器又はシングルエンド増幅器は、その2つの入力間の差を増幅する差動増幅器を指し、一方シングルエンド増幅器は、その単一の入力と接地との間の差を増幅する。
【0014】
[0014]本明細書で使用される場合、スルーレートは、単位時間当たりの電圧若しくは電流、又は別の電気量の変化を指す。
【0015】
[0015]本明細書で使用される場合、全高調波歪み(THD)は、電圧又は電流の歪みのうちのどれだけが信号内の高調波に起因するかの測定値を指す。
【0016】
[0016]本明細書で使用される場合、Hブリッジ回路とは、負荷に印加される電圧の極性をスイッチングする電子回路を指す。その共通の回路図は、文字「H」の枝として構成された4つのスイッチング素子と、クロスバーとして接続された負荷と、を含む。
【0017】
[0017]本明細書で使用される場合、デッドタイムは、ハーフブリッジ型スイッチング回路内のハイサイドトランジスタ及びローサイドトランジスタの両方がオフになる時間を指す。
【0018】
[0018]電力変換器は、ACとDCとの間の変換、又は電圧、電流、若しくは周波数の変更、又はこれらの変換のいくつかの組合せなど、電気エネルギーを変換するための電気又は電気機械デバイスである。電力変換器は、電圧調整を含むことが多い。
【0019】
[0019]スイッチング調整器、すなわちスイッチモード電源(SMPS)は、出力の平均値を維持するためにオン及びオフをスイッチングする能動デバイスを使用する。対照的に、線形調整器は、可変抵抗器のように動作させられ、一定の出力電圧を維持するように分圧器回路網を連続的に調節し、電力を継続的に散逸させる。
【0020】
[0020]電圧基準は、デバイスへの負荷、電源変動、温度変化、及び時間経過に関係なく、理想的には固定(一定)の電圧を生成する電子デバイスである。
【0021】
[0021]基準電圧は、比較動作の対象となる電圧値である。
【0022】
[0022]「同じ」という語句が2つの量を説明するために使用される場合、2つの量の値が測定又は製造上の制限内で同じと判定されることを意味する。
【発明の概要】
【0023】
[0023]本発明者らは、スイッチング増幅器がデバイスの絶縁破壊及びEMI問題の影響を受けやすく、従来の解決策はスルーレートの低下及びTHD特性の低下をもたらすことが多いことを観察した。本発明の実施形態は、スルーレートを動的に調節することによってこれらの問題に対処し、THD特性を維持する。臨界信号遷移エッジは、入力スイッチング信号及び出力電流検出によって特定される。スルー制御回路は、オーバーシュート及びアンダーシュートを回避して絶縁破壊及びEMI問題を改善するために、臨界信号遷移エッジにおいてのみ動的にオンにされる。非臨界出力遷移エッジでは、スルーレート制御は、高スルーレートエッジを可能にするために適用されない。
【0024】
[0024]いくつかの実施形態では、出力からのスルーレート情報は電流方向と結合され、その結果、駆動強さが動的に調節され、これは、良好なTHD特性の維持をもたらし、スルーレートを最適に制御して全ての遷移中(ターンオフ及びターンオンの両方の間)にオーバーシュート及びアンダーシュートを制御し、EMIを低減することとなる。
【0025】
[0025]本発明のいくつかの実施形態によれば、スイッチング増幅器回路は、第1及び第2の基準電圧間の第1の出力ノードにおいて直列に接続された第1のプルアップトランジスタ及び第1のプルダウントランジスタを含む、第1の出力段を含む。第1のプルアップ及びプルダウントランジスタは、スイッチドモジュレータからの第1の差動スイッチング制御信号を受信する制御端子を有する。第1の出力ノードは、第1の差動出力信号を負荷デバイスの第1の端部に提供する。スイッチング増幅器回路はまた、第1及び第2の基準電圧間の第2の出力ノードにおいて直列に接続された第2のプルアップトランジスタ及び第2のプルダウントランジスタを含む、第2の出力段を含む。第2のプルアップ及びプルダウントランジスタは、スイッチドモジュレータからの第2の差動スイッチング制御信号を受信する制御端子を有する。第2の出力ノードは、第2の差動出力信号を負荷デバイスの第2の端部に提供する。スイッチング増幅器回路はまた、出力電流の方向を決定し、出力電流が第1の出力ノードから第2の出力ノードに流れるか、又は出力電流が第2の出力ノードから第1の出力ノードに流れるかを示す電流方向信号を提供するための、スイッチドモジュレータの第1の出力及びスイッチドモジュレータの第2の出力に結合された電流方向検出回路を含む。スイッチング増幅器回路はまた、電流方向信号に応答する、それぞれ第1のプルアップトランジスタ、第1のプルダウントランジスタ、第2のプルアップトランジスタ、及び第2のプルダウントランジスタに結合された第1、第2、第3、及び第4のスルー制御回路を含む。第1のスルー制御回路は、出力電流が第1の出力ノードから第2の出力ノードに流れるときの、第1のプルアップトランジスタのターンオフ中にのみ起動される。第2のスルー制御回路は、出力電流が第2の出力ノードから第1の出力ノードに流れるときの、第1のプルダウントランジスタのターンオフ中にのみ起動される。第3のスルー制御回路は、出力電流が第2の出力ノードから第1の出力ノードに流れるときの、第2のプルアップトランジスタのターンオフ中にのみ起動される。第4のスルー制御回路は、出力電流が第1の出力ノードから第2の出力ノードに流れるときの、第2のプルダウントランジスタのターンオフ中にのみ起動される。
【0026】
[0026]上記のスイッチング増幅器回路のいくつかの実施形態では、所与のスルー制御回路が、出力トランジスタの制御端子に結合されており、スルー制御回路は、並列に接続された第1のスイッチトランジスタ及び第2のスイッチトランジスタと直列に結合された電流源を含む。第1のスイッチトランジスタは、スイッチング入力信号に結合された制御端子を有し、第2のスイッチトランジスタは、出力ノードにおける電流方向に応じて、スイッチング入力信号又はスルーレートを低減する動的に変調されたスイッチング信号のいずれかに結合された制御端子を有する。
【0027】
[0027]いくつかの実施形態では、動的に変調されたスイッチング入力信号は、スイッチング入力信号と、出力ノードに結合されたハイパスフィルタによって決定された第1のパルス信号と、を含む。
【0028】
[0028]いくつかの実施形態では、第2のスイッチトランジスタは、第1のスイッチトランジスタのオン抵抗の25%、又はそれ以下であるオン抵抗によって特徴付けられている。
【0029】
[0029]いくつかの実施形態では、第2のスイッチトランジスタは、第1のスイッチトランジスタのオン抵抗の50%、又はそれ以下であるオン抵抗によって特徴付けられている。
【0030】
[0030]いくつかの実施形態では、所与のスルー制御回路は、PMOSスルー制御回路であり、第1及び第2のスイッチトランジスタは、PMOSトランジスタであり、PMOSスルー制御回路は、スイッチング入力信号を受信するための第1の入力ノード、電流検出信号を受信するための第2の入力ノード、及び出力ノードを有する、OR回路をさらに含む。PMOSスルー制御回路はまた、抵抗器を介してOR回路の出力ノードに結合されたドレインノードを有するpチャネルMOSトランジスタと、出力トランジスタの出力ノードとpチャネルMOSトランジスタのゲートノードとの間に結合されたハイパスフィルタと、を含む。pチャネルMOSトランジスタのドレインは、動的に変調されたスイッチング入力信号を提供する。PMOSスルー制御回路はまた、電流方向信号に応答して、入力スイッチング信号及び動的に変調されたスイッチング入力信号のうちの一方を選択するように構成されたマルチプレクサを含む。
【0031】
[0031]いくつかの実施形態では、第1のプルアップトランジスタは、PMOSトランジスタであり、第1のスルー制御回路は、PMOSスルー制御回路である。
【0032】
[0032]いくつかの実施形態では、第2のプルアップトランジスタは、PMOSトランジスタであり、第2のスルー制御回路は、PMOSスルー制御回路である。
【0033】
[0033]いくつかの実施形態では、所与のスルー制御回路は、NMOSスルー制御回路であり、第1及び第2のスイッチトランジスタは、NMOSトランジスタであり、NMOSスルー制御回路は、スイッチング入力信号を受信するための第1の入力ノード、電流検出信号を受信するための第2の入力ノード、及び出力ノードを有する、AND回路をさらに含む。NMOSスルー制御回路は、抵抗器を介してAND回路の出力ノードに結合されたドレインノードを有するnチャネルMOSトランジスタと、出力トランジスタの出力ノードとnチャネルMOSトランジスタのゲートノードとの間に結合されたハイパスフィルタと、をさらに含む。nチャネルMOSトランジスタのドレインは、動的に変調されたスイッチング入力信号を提供する。NMOSスルー制御回路はまた、電流方向信号に応答して、入力スイッチング信号及び動的に変調されたスイッチング入力信号のうちの一方を選択するように構成されたマルチプレクサを含む。
【0034】
[0034]いくつかの実施形態では、第1のプルダウントランジスタは、NMOSトランジスタであり、第3のスルー制御回路は、NMOSスルー制御回路である。
【0035】
[0035]いくつかの実施形態では、第2のプルダウントランジスタは、NMOSトランジスタであり、第4のスルー制御回路は、NMOSスルー制御回路である。
【0036】
[0036]本発明のいくつかの実施形態によれば、スルーレート制御を伴う出力ドライバは、スイッチング入力信号に結合された制御端子、負荷デバイスに結合するために出力ノードに結合されたドレインノード、及び基準電圧に結合されたソースノードを含む、出力トランジスタを含む。出力ドライバはまた、並列に接続された第1のスイッチトランジスタ及び第2のスイッチトランジスタとの接続ノードにおいて直列に結合された電流源を含むスルー制御回路を有する。接続ノードは、出力トランジスタの制御端子に結合されている。第1のスイッチトランジスタは、スイッチング入力信号に結合されている制御端子を有する。第2のスイッチトランジスタは、出力ノードにおける電流方向に応じて、スイッチング入力信号又は動的に変調されたスイッチング入力信号のいずれかに結合される制御端子を有する。
【0037】
[0037]本発明のいくつかの実施形態によれば、出力ドライバを動作させるための方法は、出力トランジスタを、出力トランジスタの制御端子においてスイッチング入力信号によって制御することと、スルー制御回路を使用して出力トランジスタのターンオフ電流を調節することと、を含む。スルー制御回路は、並列に接続された第1のスイッチトランジスタ及び第2のスイッチトランジスタとの接続ノードにおいて直列に結合された電流源を含む。接続ノードは、出力トランジスタの制御端子に結合されている。ターンオフ電流を調節することは、スイッチング入力信号を使用して第1のスイッチトランジスタをオンにすること、及び出力トランジスタの出力ノードにおける電流方向に応じて、スイッチング入力信号又は動的に変調されたスイッチング入力信号のいずれかを使用して第2のスイッチトランジスタをオンにすることを含む。
【0038】
[0038]いくつかの実施形態では、上記の方法はまた、出力ノードに結合されたハイパスフィルタによって決定されたパルス信号を使用してスイッチング入力信号を修正することによって、動的に変調されたスイッチング入力を形成することを含む。
【0039】
[0039]いくつかの実施形態では、方法はまた、第1のスイッチトランジスタのオン抵抗の25%、又はそれ以下であるオン抵抗を使用して第2のスイッチトランジスタを構成することを含む。
【0040】
[0040]いくつかの実施形態では、方法はまた、遅延セルを使用し、感知された出力信号に従って遅延を加えることによって、動的に変調されたスイッチング入力を生成することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】従来のスイッチング増幅器を示す簡略化された回路図である。
【
図2】
図1のスイッチング増幅器における信号の変調を示す波形図である。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態に従って、従来のスイッチング増幅器に関連する問題を示す簡略化された波形図である。
【
図4】本発明のいくつかの実施形態による、動的スルーレート制御を伴うスイッチングドライバ回路を示す簡略化された回路図である。
【
図5】本発明のいくつかの実施形態による、スルー制御回路を有するスイッチング増幅器回路を示す簡略化された回路図である。
【
図6】本発明のいくつかの実施形態による、スルー制御回路を有するスイッチング増幅器回路を示す簡略化された回路図である。
【
図7】本発明のいくつかの実施形態による、電流方向検出回路の簡略化された回路図である。
【
図8】本発明のいくつかの実施形態による、動的スルーレート制御を伴わないスイッチング増幅器回路のシミュレートされた波形を示す波形図である。
【
図9】本発明のいくつかの実施形態による、動的スルーレート制御を伴うスイッチング増幅器回路のシミュレートされた波形を示す波形図である。
【
図10】本発明のいくつかの実施形態による、出力ドライバを動作させるための方法を示す簡略化されたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
[0051]
図3は、本発明のいくつかの実施形態に従って、従来のスイッチング増幅器に関連するいくつかの問題を示す簡略化された波形図である。
図1のスイッチング増幅器100のノードOUTP及びOUTNにおける出力信号の遷移は、入力信号、例えばオーディオ信号の正の導通周期及び負の導通周期の両方について
図3に示されている。以下の説明では、
図1の回路図を参照する。第1のハーフブリッジ111は、ハイサイドトランジスタM1及びローサイドトランジスタM2を有し、第2のハーフブリッジ112は、ハイサイドトランジスタM3及びローサイドトランジスタM4を有する。以下の説明では、トランジスタM1及びM2は、それぞれノードOUTPに関連付けられたハイサイドトランジスタ及びローサイドトランジスタとも呼ばれる。同様に、トランジスタM3及びM4は、それぞれノードOUTNに関連付けられたハイサイドトランジスタ及びローサイドトランジスタとも呼ばれる。
【0043】
[0052]この実施形態では、入力オーディオ信号振幅が増加すると、負荷電流は、半周期にわたってOUTPからOUTNに流れることとなり、次いで残りの半周期にわたってOUTNからOUTPに方向を反転させることとなる。PWM生成は、電流がOUTPからOUTNに流れており、OUTPがローからハイになる(PMOSのオン)とき、OUTPのスルーイングが制御されるように行われる。しかし、OUTNがローからハイになる(NMOSのオフ)とき、制御はなく、したがって、図における上述のようにオーバーシュートをもたらすこととなる。これは、EMIの悪化及びデバイスの絶縁破壊の問題をもたらす。
【0044】
[0053]
図3において、正弦波形の入力信号の正の半周期中、出力電流は、出力ノードOUTPから出力ノードOUTNに流れる。最初は、第1のハーフブリッジのハイサイドPMOSトランジスタM1がオンであり、第2のハーフブリッジのローサイドNMOSトランジスタM4がオンである。関心領域は、A1、A2、...、A11としてマークされている。
【0045】
[0054]領域A1では、ハイサイドPMOSトランジスタがオフされ、第1のハーフブリッジのローサイドNMOSトランジスタM2のボディダイオードのみが電流を通す。
【0046】
[0055]領域A2では、OUTPM2のローサイドNMOSトランジスタがオンされ、電流方向が維持される。
【0047】
[0056]領域A3では、OUTPのローサイドNMOSトランジスタM2はオフし、OUTPのハイサイドPMOSトランジスタM1のボディダイオードは電流を通し、オーバーシュートを引き起こす。しかしながら、この部分は電流源によって制御される。領域A4では、OUTPのハイサイドPMOSトランジスタM1がオンする。
【0048】
[0057]領域A5では、第2のハーフブリッジのローサイドNMOSトランジスタM4がオフされ、第2のハーフブリッジのハイサイドPMOSのM3のボディダイオードが導通する。この第2のハーフブリッジのローサイドNMOSM4のターンオフ動作は制御されず、オーバーシュートピークの大きさは、電源電圧を3V上回るほど高くなり得る。このオーバーシュートもピーク後のリンギングの原因となる。より高いピークはEMIのより悪い問題を引き起こし得、リンギングはTHDの悪化を引き起こす。
【0049】
[0058]領域A6では、ピーキング及びリンギングの後、第2のハーフブリッジのハイサイドPMOSトランジスタがオンされ、電圧レベルは電源電圧Vddに落ち着く。
【0050】
[0059]領域A7では、第2のハーフブリッジのハイサイドPMOSトランジスタはオフであり、第2のハーフブリッジPMOSのボディダイオードを介した導通により小さなピークが生じる。
【0051】
[0060]領域A8では、OUTP側のハイサイドPMOSトランジスタM1はオンであり、OUTN側のローサイドNMOSトランジスタM4がオンされる。
【0052】
[0061]領域A9では、スイッチング信号が負に遷移する。OUTP側のハイサイドPMOSトランジスタM1はオフであり、OUTP側のローサイドNMOSトランジスタM2のボディダイオードは電流方向を維持するように導通する。この領域は制御下にない。アンダーシュートのピークは2Vと高くなり得、リンギングも引き起こす。領域A5と同様に、高いピークアンダーシュート電圧はEMIを引き起こし、リンギングはTHDを悪化させる。
【0053】
[0062]領域A10では、OUTPのローサイドNMOSトランジスタM2がオンし、小さな負のピークの後、信号は領域A2と同じ接地電圧に落ち着き、プロセスは全ての正の入力振幅について領域A1からA8まで繰り返す。
【0054】
[0063]入力の正の半周期中の上記の領域A1~A8において上述したように、領域5は、OUTN側のローサイドトランジスタM4がオフになっているときに出力ノードOUTNのオーバーシュートを引き起こし、OUTNにおける電圧はインダクタ電流に起因して制御されない形でVDDを上回って揺れる。同様に、領域1及び領域9の間、OUTP側のハイサイドトランジスタM1がオフであるとき、出力ノードOUTPにおける電圧は下降し、インダクタ電流に起因するアンダーシュートが制御されない形でGNDを下回る原因となる。領域A1及びA5では、A9と同様に、大きな電圧の振れ及びリンギングがEMI及びTHDの問題を引き起こす。
【0055】
[0064]
図3の負の導通周期を参照すると、入力信号は負になり、電流方向はノードOUTNからノードOUTPに向かって反転する。8つの領域B1~B8が
図3にマークされており、以下に説明される。
【0056】
[0065]領域B1では、OUTPのローサイドNMOSトランジスタM2はオンであり、OUTNのローサイドNMOSトランジスタM4はオフである。
【0057】
[0066]領域B2では、OUTPのローサイドNMOSトランジスタM2はオンであり、OUNTのハイサイドPMOSトランジスタM3もまたオンである。
【0058】
[0067]領域B3では、OUTPのローサイドNMOSトランジスタM2はオフであり、OUTNのハイサイドPMOSトランジスタM1のボディダイオードは電流を通し、大きな上方への揺れを引き起こし、その後リンギングが生じる。これは制御下にない信号エッジであり、EMI及びTHDの問題をもたらす。
【0059】
[0068]領域B4では、OUTNのハイサイドPMOSトランジスタM1がオンされ、ノードOUTN上の電圧がVDDに落ち着く。
【0060】
[0069]領域B5では、OUTPのハイサイドPMOSトランジスタM1がオフされる。
【0061】
[0070]領域B6では、OUTPのローサイドNMOSトランジスタM2がオンされ、ハイサイドPMOSトランジスタM3のOUTNもまたオンである。電流は依然としてノードOUTNからノードOUTPに流れる。
【0062】
[0071]領域B7では、OUTNのハイサイドPMOSトランジスタM3がオフされ、OUTNのローサイドNMOSトランジスタM4のボディダイオードを介して導通している。これは制御下にない信号エッジであり、EMI及びTHDの問題をもたらす。
【0063】
[0072]領域B8では、OUTNのローサイドNMOSトランジスタM4がオンし、ノードOUTN上の電圧が接地に落ち着く。
【0064】
[0073]上述したように、領域B3では、OUTP側の大きなオーバーシュート及びリンギングがEMI及びTHDの問題を引き起こし、領域B7では、OUTN側の大きなアンダーシュート及びリンギングがEMI及びTHDの問題を引き起こす。
【0065】
[0074]
図3を参照して上述したように、本発明者らは、EMI及びTHDの問題を引き起こす特定の信号遷移エッジを特定したが、他の信号遷移エッジはこれらの問題を引き起こさない。したがって、本発明の実施形態では、回路速度を遅くするスルーレート制御は、全ての信号遷移エッジに適用されるわけではない。
【0066】
[0075]いくつかの実施形態では、電流方向がノードOUTPからノードOUTNへのとき、ターンオフ中にスルーレート制御がノードOUTNに適用される。この条件下では、ローサイドNMOSトランジスタプルダウントランジスタがオフされ、電流がNMOSトランジスタのボディダイオードを通って流れる。同様に、入力信号の負の半周期中、電流方向はノードOUTNからノードOUTPである。スルーレート制御がノードOUTPターンオフに適用され、OUTPのローサイドNMOSトランジスタM2がオフすると、電流がOUTPのハイサイドPMOSトランジスタM1のボディダイオードを通って流れる。言い換えると、負の半周期において、電流方向がノードOUTNからノードOUTPである場合、スルー制御はターンオフ中にノードOUTPに適用される。
【0067】
[0076]上述した2つのシナリオは、
図3の領域A5及びB3に示すように、スルーレート制御を使用してオーバーシュート及びリンギングの問題を改善することを指す。同様に、EMI及びTHDの問題は、信号のアンダーシュート及びリンギング中にも発生する可能性がある。例えば、アンダーシュートを示すA9と同様に、領域A1において、スルーレート制御が、ノードOUTPからノードOUTNへの電流方向で、OUTPのハイサイドPMOSトランジスタM1に適用される。この領域では、OUTPのハイサイドPMOSトランジスタM1がオフされ、電流はPMOSトランジスタから流出する。領域B7では、電流方向はノードOUTNからノードOUTPである。ここで、OUTNのハイサイドPMOSトランジスタM3のターンオフ中に、スルーレート制御がノードOUTNに適用され、電流はPMOSトランジスタから流出する。
【0068】
[0077]上述したように、本発明者らは、過剰なオーバーシュート又はアンダーシュート、及びデバイスを損傷するか又はデバイス性能を低下させる可能性がある信号リンギングにつながる可能性がある特定の信号遷移エッジを特定した。しかしながら、特定の他の信号遷移エッジは、そのような過剰なオーバーシュート又はアンダーシュートを生成しない。したがって、本発明の実施形態は、全ての信号遷移エッジではなく、臨界信号遷移エッジにおいてのみスルーレート制御を選択的又は動的に適用することを教示する。対照的に、いくつかの従来の例で説明したように、全ての遷移エッジでスルーレート制御を適用すると、回路速度が不必要に遅くなり、回路性能が低下することとなる。
【0069】
[0078]
図4は、本発明のいくつかの実施形態による、動的スルーレート制御を伴うスイッチング増幅器回路を示す簡略化された回路図である。
図4に示すように、スイッチング増幅器回路400は、第1のハーフブリッジとも呼ばれる第1のプッシュプル出力段411を含み、第1のプッシュプル出力段411は、いくつかの実施形態では電源端子及び接地端子によって提供され得る第1及び第2の基準電圧Vdd及びVss間の第1の出力ノードOUTPにおいて直列に接続された、第1のプルアップトランジスタUP1及び第1のプルダウントランジスタDN1を含む。第1のプルアップ及びプルダウントランジスタは、2つの比較器441及び442並びに発振器443を含む、スイッチドモジュレータ440から第1の差動スイッチング制御信号431を受信する制御端子411-1及び411-2を有する。第1の出力ノードOUTPは、第1の差動出力信号410-1を負荷デバイス401の第1の端部401-1に提供する。
図4の例では、負荷デバイス401は、インダクタL1及び抵抗器R1で表されるオーディオスピーカである。この例では、スイッチドモジュレータ440は、
図1及び
図2に関連して上述したPWM信号生成器と同様である。
【0070】
[0079]スイッチング増幅器回路400はまた、第2のハーフブリッジとも呼ばれる第2のプッシュプル出力段412を含み、第2のプッシュプル出力段412は、第1及び第2の基準電圧Vdd及びVss間に直列に接続された導通路を有し、かつ導通路間の接続部に第2の出力ノードOUTNを画定する、第2のプルアップトランジスタUP2及び第2のプルダウントランジスタDN2を備え、第2のプルアップ及びプルダウントランジスタの各々は、スイッチドモジュレータ440から第2の差動スイッチング制御信号432を受信する制御端子を有し、第2の出力ノードOUTNは、第2の差動出力信号410-2を負荷デバイス401の第2の端部401-2に提供する。
【0071】
[0080]スイッチング増幅器回路400はまた、出力電流ILの方向を決定し、電流方向信号IL-Dirを提供して、出力電流が第1の出力ノードOUTPから第2の出力ノードOUTNに流れるか、又は出力電流が第2の出力ノードOUTNから第1の出力ノードOUTPに流れるかを示すための、OUTP用のPWMP制御431及びOUTN用のPWMN制御432に結合された電流方向検出回路430を含む。いくつかの実施形態では、電流方向信号IL-Dirは、出力電流が第1の出力ノードOUTPから第2の出力ノードOUTNに流れる場合に正であり、電流方向信号IL-Dirは、出力電流が第2の出力ノードOUTNから第1の出力ノードOUTPに流れる場合に負である。
【0072】
[0081]また、スイッチング増幅器回路400は、電流方向信号IL-Dirに応答する、それぞれ第1のプルアップトランジスタUP1、第1のプルダウントランジスタDN1、第2のプルアップトランジスタUP2、及び第2のプルダウントランジスタDN2の制御端子に結合された第1、第2、第3、及び第4のスルー制御回路421、422、423、及び424を有する。スルー制御回路は、後述する臨界条件で出力ノードにおけるスルーレートを低下させるように構成されている。第1のスルー制御回路421は、出力電流が第1の出力ノードOUTPから第2の出力ノードOUTNに流れるときの第1のプルアップトランジスタUP1のターンオフ中にのみ起動される。第2のスルー制御回路422は、出力電流が第2の出力ノードOUTNから第1の出力ノードOUTPに流れるときの第1のプルダウントランジスタDN1のターンオフ中にのみ起動される。第3のスルー制御回路423は、出力電流が第2の出力ノードOUTNから第1の出力ノードOUTPに流れるときの第2のプルアップトランジスタUP2のターンオフ中にのみ起動される。第4のスルー制御回路424は、出力電流が第1の出力ノードOUTPから第2の出力ノードOUTNに流れるときの第2のプルダウントランジスタDN2のターンオフ中にのみ起動される。
【0073】
[0082]スルー制御回路の例は、
図5及び
図6に関連して以下に説明される。
図5はNMOSスルー制御回路を示しており、
図6はPMOSスルー制御回路を示している。
図4のスイッチング増幅器回路400では、第1のプルアップトランジスタUP1はPMOSトランジスタであり、第1のスルー制御回路421はPMOSスルー制御回路である。第2のプルアップトランジスタUP2はPMOSトランジスタであり、第3のスルー制御回路423はPMOSスルー制御回路である。第1のプルダウントランジスタDN1はNMOSトランジスタであり、第2のスルー制御回路422はNMOSスルー制御回路である。第2のプルダウントランジスタDN2はNMOSトランジスタであり、第4のスルー制御回路424はNMOSスルー制御回路である。
【0074】
[0083]要約すると、出力トランジスタのターンオフを動的に制御するために、ハイパスフィルタは、出力電圧が上昇するレートを過渡スパイクに変換し、それがスイッチングされた入力信号からの信号と結合され、その結果、出力トランジスタのターンオフが動的に実行される。その結果、EMI及びオーバーシュートの問題が大幅に改善される。加えて、フィルタレススイッチングPWMアプリケーションでは、この設計はデバイスの絶縁破壊も低減する。さらに、プルダウン又はプルアップ電流は、一方は弱く、他方は強い2つの部分に分割され、これら2つの部分は電流方向に基づいてスルーレートを動的に制御する。
【0075】
[0084]
図5は、本発明のいくつかの実施形態による、スルー制御回路を有するスイッチング増幅器回路を示す簡略化された回路図である。
図5は、
図4のスイッチング増幅器回路400の一例であり得るスイッチング増幅器回路500の一部を示している。
図5に示すように、スイッチング増幅器回路500は、負荷デバイス501の両側に差動出力ノードOUTP及びOUTNを含む。
図4のスイッチング増幅器回路400と同様に、スイッチング増幅器回路500は、ハイサイドプルアップトランジスタUP1及びプルダウントランジスタDN1、並びにローサイドプルアップトランジスタUP2及びプルダウントランジスタDN2を有する、Hブリッジ構成を有する。
図5に示すように、プルダウントランジスタDN2はNMOS出力トランジスタである。
【0076】
[0085]
図5に示すように、プルダウントランジスタDN2は、
図4のスイッチングされた制御信号432と同様にPWMモジュレータから導出され得るスイッチングされた制御信号であるスイッチング入力信号LG-Nに結合された制御端子501を含む出力トランジスタである。トランジスタDN2はまた、負荷デバイスに結合するために出力ノードOUTNに結合されたドレインノードと、この例では接地ノードによって提供された基準電圧Vssに結合されたソースノードと、を有する。また、スイッチングドライバ回路500は、
図4の電流方向検出回路430と同様の電流方向検出回路530を含む。電流方向検出回路530は出力ノードOUTPに結合されており、ノードOUTNは、出力ノードOUTPとOUTNとの間の負荷デバイス501内の電流の方向を示す電流方向信号IL-Dirを提供する。
【0077】
[0086]スイッチングドライバ回路はまた、並列に接続された第1のスイッチトランジスタ512-1及び第2のスイッチトランジスタ512-2との接続ノードにおいて直列に結合された電流源511を含むスルー制御回路510を含み、接続ノード512-3はトランジスタDN2の制御端子503に結合されている。第1のスイッチトランジスタ512-1は、スイッチング入力信号LG-Nに結合された制御端子を有する。第2のスイッチトランジスタ512-2は、出力ノードOUTNにおける電流方向に応じて、スイッチング入力信号LG-N又は動的に変調されたスイッチング入力信号519のいずれかに結合された制御端子を有する。
図5に示すように、電流方向は、電流方向検出回路530によって提供される電流方向信号IL-Dirによって提供される。
【0078】
[0087]
図5の例では、出力トランジスタDN2はNMOSトランジスタであり、スルー制御回路510は、スイッチング入力信号LG-Nを受信するための第1の入力ノード513-1と、電流検出信号IL-Dirを受信するための第2の入力ノード513-2と、出力ノード513-3と、を有するAND回路513をさらに含む。スルー制御回路510は、抵抗器516を介してAND回路513の出力ノードに結合されたドレインノード514-1を有するnチャネルMOSトランジスタ514と、出力トランジスタDN2の出力ノードOUTNとnチャネルMOSトランジスタのゲートノード514-2との間に結合されたハイパスフィルタ517と、をさらに備える。nチャネルMOSトランジスタ514のドレインノード514-1は、動的に変調されたスイッチング信号519を提供する。マルチプレクサ回路518は、電流方向信号IL-DIRに応答して、スイッチング入力信号LG-N及び動的に変調されたスイッチング入力信号519のうちの一方を選択するように構成されている。この構成では、第2のスイッチトランジスタ512-2は、出力ノードOUTNにおける電流方向に応じて、スイッチング入力信号LG-N又は動的に変調されたスイッチング入力信号519のいずれかを受信する。
【0079】
[0088]
図5は、関連する波形も示している。ハイパスフィルタ517は、コンデンサC及び抵抗器Rで構成されており、トランジスタ514のノード514-2においてパルス信号514-Pを生成する。スイッチング入力信号LG-Nは、パルス信号504-Pとして示されている。動的に変調されたスイッチング入力信号519は、波形519-Pによって示されている。動的に変調されたスイッチング入力信号519-Pは、スイッチング入力信号504-Pと、出力ノードOUTNに結合されたハイパスフィルタによって決定された負のパルス信号514-Pと、を含むことが分かる。負のパルス信号514-Pは、トランジスタDN2のターンオフ中にハイパスフィルタ517によって生成される。電流方向信号IL-Dirが、負荷電流ILが出力ノードOUTN内に流れていることを示すとき、第2のスイッチトランジスタ512-2のゲートノードは、動的に変調されたスイッチング入力信号519-Pを受信し、これにより、トランジスタDN2のターンオフが減速され、スルーレート制御が提供されて、電磁干渉(EMI)及び全高調波歪み(THD)が低減される。他の時間の間、第1のスイッチトランジスタ512-1及び512-2の両方は、その完全な強さでスイッチング入力信号LG-Nを受信し、トランジスタDN2が速度を失うことなく効率的にターンオフすることを可能にする。
【0080】
[0089]いくつかの実施形態では、スルー制御回路510内の抵抗器516は、例えば20KΩの高インピーダンスを提供し、そのため、ANDゲート513の直接出力513-3は、スイッチングされた信号LG-Nと同じ電圧を維持し、同時に、ノード514-1がハイパスフィルタ17によってプルダウンされることを可能にする。ハイパスフィルタ517において、RC時定数は、いくつかの実施形態では、ノードOUTNにおける信号のスルータイムと同様に、約5nsecに設定されている。
【0081】
[0090]いくつかの実施形態では、第2のスイッチトランジスタ512-2は、第1のスイッチトランジスタ512-1よりも多くの電流駆動能力をもたらすように構成されている。例えば、第2のスイッチトランジスタ512-2は、第1のスイッチトランジスタ512-1と同じチャネル長を有するがその幅が2倍であってもよく、この場合、第2のスイッチトランジスタ512-2は、第1のスイッチトランジスタ512-1のオン抵抗の50%、又はそれ以下であるオン抵抗によって特徴付けられている。他の実施形態では、第2のスイッチトランジスタ512-2は、第1のスイッチトランジスタ512-1のオン抵抗の25%、又はそれ以下であるオン抵抗によって特徴付けられている。さらに他の実施形態では、第2のスイッチトランジスタ512-2は、第1のスイッチトランジスタ512-1のオン抵抗の25%以下であるオン抵抗によって特徴付けられている。
【0082】
[0091]
図6は、本発明のいくつかの実施形態による、スルー制御回路を有するスイッチング増幅器回路を示す簡略化された回路図である。
図6は、
図5のスイッチング増幅器回路500と同様であるがPMOS出力トランジスタのためのスルー制御回路を有する、スイッチングドライバ回路600の一部を示している。これに対して、
図5のスイッチング増幅器回路500は、NMOS出力トランジスタのためのスルー制御回路を有する。以下により詳細に説明するように、
図6のスルー制御回路610は、
図5のスルー制御回路510と同様であり、回路の詳細は、PMOSとNMOSとの間の違いを反映する。例えば、スルー制御回路510内のNMOSトランジスタは、スルー制御回路610内のPMOSトランジスタに置き換えられる。同様に、ANDゲート回路はORゲート回路に置き換えられ、電源端子は接地端子に置き換えられる、などである。完全を期すために、詳細な説明を以下に提示する。
【0083】
[0092]
図6に示すように、スイッチングドライバ回路600は、負荷デバイス601の両側に差動出力ノードOUTP及びOUTNを備える。
図4のスイッチング増幅器回路400と同様に、スイッチングドライバ回路600は、ハイサイドプルアップトランジスタUP1及びプルダウントランジスタDN1、並びにローサイドプルアップトランジスタUP2及びプルダウントランジスタDN2を有するHブリッジ構成を有する。
図6に示すように、プルアップトランジスタDP2はPMOS出力トランジスタである。
【0084】
[0093]
図6に示すように、プルアップトランジスタDP2は、
図4のスイッチングされた制御信号432と同様に、PWMモジュレータから導出され得るスイッチングされた制御信号であるスイッチング入力信号LG-Nに結合された制御端子を含む出力トランジスタである。トランジスタDP2はまた、負荷デバイスに結合するために出力ノードOUTNに結合されたドレインノードと、この例では接地ノードによって提供された基準電圧Vssに結合されたソースノードと、を有する。スイッチングドライバ回路600はまた、
図4の電流方向検出回路430と同様の電流方向検出回路630を含む。電流方向検出回路630は出力ノードOUTPに結合されており、ノードOUTNは、出力ノードOUTPとOUTNとの間の負荷デバイス601内の電流の方向を示す電流方向信号IL-Dirを提供する。
【0085】
[0094]スイッチングドライバ回路はまた、並列に接続された第1のスイッチトランジスタ612-1及び第2のスイッチトランジスタ612-2との接続ノードにおいて直列に結合された電流源611を含むスルー制御回路610を含み、接続ノード612-3はトランジスタDP2の制御端子603に結合されている。第1のスイッチトランジスタ612-1は、スイッチング入力信号LG-Nに結合された制御端子を有する。第2のスイッチトランジスタ612-2は、出力ノードOUTNにおける電流方向に応じて、スイッチング入力信号LG-N又は動的に変調されたスイッチング入力信号619のいずれかに結合された制御端子を有する。
図6に示すように、電流方向は、電流方向検出回路630によって提供される電流方向信号IL-Dirによって提供される。
【0086】
[0095]
図6の例では、出力トランジスタDP2はPMOSトランジスタであり、スルー制御回路610は、スイッチング入力信号LG-Nを受信するための第1の入力ノード613-1と、電流検出信号IL-Dirを受信するための第2の入力ノード613-2と、出力ノード613-3と、を有するOR回路613をさらに備える。スルー制御回路610は、抵抗器616を介してAND回路613の出力ノードに接続されたドレインノード614-1を有するpチャネルMOSトランジスタ614と、出力トランジスタDN2の出力ノードOUTNとnチャネルMOSトランジスタのゲートノード614-2との間に結合されたハイパスフィルタ617と、をさらに含む。pチャネルMOSトランジスタ614のドレインノード614-1は、動的に変調されたスイッチング信号619を提供する。マルチプレクサ回路618は、電流方向信号IL-DIRに応答して、スイッチング入力信号LG-N及び動的に変調されたスイッチング入力信号619のうちの一方を選択するように構成されている。この構成では、第2のスイッチトランジスタ612-2は、出力ノードOUTNにおける電流方向に応じて、スイッチング入力信号LG-N又は動的に変調されたスイッチング入力信号619のいずれかを受信する。
【0087】
[0096]
図6は、関連する波形も示している。ハイパスフィルタ617は、コンデンサC及び抵抗器Rで構成されており、トランジスタ614のノード614-2においてパルス信号614-Pを生成する。スイッチング入力信号LG-Nは、パルス信号604-Pとして示されている。動的に変調されたスイッチング入力信号619は、波形619-Pによって示されている。動的に変調されたスイッチング入力信号619-Pは、スイッチング入力信号604-Pと、PMOSトランジスタ614のゲート上で負のパルス614-Pが発生することによって生じ、その幅が出力ノードOUTNに結合されたハイパスフィルタによって決定された、スイッチング入力信号604-P上に重畳された過渡的な正のパルスと、を含むことが分かる。負のパルス信号614-Pは、トランジスタDP2のターンオフ中にハイパスフィルタ617によって生成される。電流方向信号IL-Dirが、負荷電流ILが出力ノードOUTN内に流れていることを示すとき、第2のスイッチトランジスタ612-2のゲートノードは、動的に変調されたスイッチング入力信号619-Pを受信し、これにより、トランジスタDP2のターンオフが減速され、スルーレート制御が提供されて、電磁干渉(EMI)及び全高調波歪み(THD)が低減される。他の時間の間、第1のスイッチトランジスタ612-1及び第2のスイッチトランジスタ612-2の両方は、その完全な強さでスイッチング入力信号LG-Nを受信し、トランジスタDN2が速度を失うことなく効率的にターンオフすることを可能にする。
【0088】
[0097]いくつかの実施形態では、第2のスイッチトランジスタ612-2は、第1のスイッチトランジスタ612-1よりも多くの電流駆動能力をもたらすように構成されている。例えば、第2のスイッチトランジスタ612-2は、第1のスイッチトランジスタ612-1と同じチャネル長を有するがその幅が2倍であってもよく、この場合、第2のスイッチトランジスタ612-2は、第1のスイッチトランジスタ612-1のオン抵抗の50%、又はそれ以下であるオン抵抗によって特徴付けられている。他の実施形態では、第2のスイッチトランジスタ612-2は、第1のスイッチトランジスタ612-1のオン抵抗の25%、又はそれ以下であるオン抵抗によって特徴付けられている。さらに他の実施形態では、第2のスイッチトランジスタ612-2は、第1のスイッチトランジスタ612-1のオン抵抗の25%以下であるオン抵抗によって特徴付けられている。
【0089】
[0098]上述のように、
図5のスルー制御回路510は、
図4のスイッチング増幅器回路400におけるNMOSスルー制御回路424の一例であり、
図6のスルー制御回路610は、
図4のスイッチング増幅器回路400におけるPMOSスルー制御回路423の一例である。同様に、
図5のスルー制御回路510は、
図4のスイッチング増幅器回路400におけるNMOSスルー制御回路422の一例であり、
図6のスルー制御回路610は、
図4のスイッチング増幅器回路400におけるPMOSスルー制御回路421の一例である。
【0090】
[0099]
図7は、本発明のいくつかの実施形態による、電流方向検出回路の簡略化された回路図である。電流方向検出回路700は、
図4における電流方向検出回路430、
図5における電流方向検出回路530、及び
図6における電流方向検出回路630の一例である。
図7に示すように、電流方向検出回路700には、ゲートプリドライブ信号PWMN及びPWMPを入力として受信する。あるいは、いくつかの実施形態では、電流方向検出回路700は、出力ノードOUTN及びOUTPで信号を受信して電流方向を判定する。電流方向検出回路700は、中間信号717及び718を生成する、NAND回路713及び714に結合されたインバータ711、712、715、及び716を含む。中間信号717及び718は、Dフリップフロップ720に結合されており、Dフリップフロップ720もまたVDDに結合されており、出力Q及びQバーを提供する。電流方向検出回路700は、OUTP及びOUTNのゲートプリドライブ信号を入力し、どちらが先行し、どちらが遅れているかを判定し、その後、OUTP又はOUTN信号が最初に来ることに基づいて電流方向を示すフリップフロップ出力Qを生成する。
図3に関連して上述したように、正の半周期中、ノードOUTPにおける信号が最初に来て、負の半周期中、ノードOUTNにおける信号が最初に来る。
【0091】
[0100]
図8は、本発明のいくつかの実施形態による、動的スルーレート制御を伴わないスイッチング増幅器回路のシミュレートされた波形を示す波形図である。横軸は時間を示し、縦軸は信号の波形を示す。
図8において、曲線810はノードOUTPにおける信号である。曲線821及び822は、それぞれ、ノードOUTPを駆動するハイサイドPMOSトランジスタ及びNMOSトランジスタのゲート電圧である。曲線831及び832は、それぞれ、ノードOUTPを駆動するローサイドPMOSトランジスタ及びNMOSトランジスタのゲート電圧である。曲線840は、ノードOUTNにおける信号を示す。曲線810上で、領域811は、約6.5Vであるピークと、デバイスの損傷並びにEMI及びTHDを引き起こす可能性がある追加のリンギングと、を有する、制御下にない信号のエッジを示す。
【0092】
[0101]
図9は、本発明のいくつかの実施形態による、動的スルーレート制御を伴うスイッチング増幅器回路のシミュレートされた波形を示す波形図である。
図9において、横軸は時間を示し、縦軸は信号の波形を示す。
図9において、曲線910はノードOUTPにおける信号である。曲線921及び922は、それぞれ、ノードOUTPを駆動するハイサイドPMOSトランジスタ及びローサイドNMOSトランジスタのゲート電圧である。曲線931は、
図4に関連して上述したように、スルー制御回路によって提供されるローサイドNMOSトランジスタへのプリゲート駆動信号である。曲線932は、ノードOUTPを駆動するローサイドNMOSトランジスタのゲート電圧である。曲線941及び942はドレイン電流波形を示す。領域911は信号の制御されたエッジを示すことが曲線910上に見られる。オーバーシュートは、5.5V電源の場合に5.96Vとしてマーカに示される、電源を超えるほぼダイオード電圧まで低減される。この場合、デバイスの損傷、並びにEMI及びTHDの問題が回避される。
【0093】
[0102]
図10は、本発明のいくつかの実施形態による、出力ドライバを動作させるための方法を示す簡略化されたフローチャートである。
図10のフローチャートは、出力ドライバを動作させるための方法1000を概説する。出力ドライバの一例は、
図1~
図9を参照して上述されている。例えば、スイッチングドライバ回路400は、動的スルーレート制御を伴う差動出力ドライバの一例である。上述した方法は、以下のように、
図10を参照してシングルエンドの例を使用して説明することもできる。
【0094】
[0103]1010において、方法は、出力トランジスタの制御端子においてスイッチング入力信号によって出力トランジスタを制御することを含む。一例として、
図4では、出力トランジスタDN2は出力トランジスタDN2の制御端子においてスイッチング入力信号432によって制御される。
図4において、出力トランジスタDN2は、スイッチング入力信号LG-Nによって制御される。
【0095】
[0104]1020において、方法は、並列に接続された第1のスイッチトランジスタ及び第2のスイッチトランジスタの接続ノードにおいて直列に結合された電流源を含むスルー制御回路を使用して出力トランジスタのターンオフ電流を調節することを含み、接続ノードは、出力トランジスタの制御端子に結合されている。一例は、
図5に関連して上述されている。スルー制御回路510は、並列に接続された第1のスイッチトランジスタ512-1及び第2のスイッチトランジスタ512-2との接続ノード512-3において直列に結合された電流源511を含む。接続ノード512-3は、出力トランジスタDN2の制御端子に結合されている。
【0096】
[0105]1030において、方法は、スイッチング入力信号LG-Nを使用して第1のスイッチトランジスタ512-1をオンにすることを含む。
【0097】
[0106]1040において、方法は、出力トランジスタDN2の出力ノードOUTNにおける電流方向に応じて、スイッチング入力信号LG-N又は動的に変調されたスイッチング入力信号519のいずれかを使用して第2のスイッチトランジスタ512-2をオンにすることを含む。
【0098】
[0107]いくつかの実施形態では、方法はまた、出力ノードに結合されたハイパスフィルタによって決定された負のパルス信号を使用してスイッチング入力信号を修正することによって、動的に変調されたスイッチング入力を形成することを含む。動的に変調されたスイッチング入力の一例は
図5に関連して示され説明されており、動的に変調されたスイッチング入力519は、出力ノードOUTNに結合されたハイパスフィルタ517によって決定された負のパルス信号514-2を使用してスイッチング入力信号LG_Nを修正することによって形成される。負のパルス信号は、出力ノードに結合されたハイパスフィルタを使用して生成される。
【0099】
[0108]いくつかの実施形態では、方法は、第2のスイッチトランジスタ512-2を、第1のスイッチトランジスタ512-1のオン抵抗の25%以下のオン抵抗で構成することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、第2のスイッチトランジスタ512-2を、第1のスイッチトランジスタ512-1のオン抵抗の50%以下のオン抵抗で構成することを含む。
【0100】
[0109]いくつかの実施形態の特徴は、本開示のいくつかの態様を強調するために上述されている。本明細書に記載された例及び実施形態は例示のみを目的としており、それに照らした様々な修正又は変更が当業者に示唆されることとなり、本開示の趣旨及び範囲内に含まれるべきであることが理解される。
【符号の説明】
【0101】
100 スイッチング増幅器
101 比較器
102 比較器
103 発振器
106 PWM信号
107 PWM信号
110 スピーカ負荷
111 第1のハーフブリッジ
112 第2のハーフブリッジ
400 スイッチング増幅器回路、スイッチングドライバ回路
401 負荷デバイス
401-1 第1の端部
401-2 第2の端部
410-1 第1の差動出力信号
410-2 第2の差動出力信号
411 第1のプッシュプル出力段
411-1 制御端子
411-2 制御端子
412 第2のプッシュプル出力段
421 第1のスルー制御回路、PMOSスルー制御回路
422 第2のスルー制御回路、NMOSスルー制御回路
423 第3のスルー制御回路、PMOSスルー制御回路
424 第4のスルー制御回路、NMOSスルー制御回路
430 スイッチドモジュレータ、電流方向検出回路
431 第1の差動スイッチング制御信号、PWMP制御
432 第2の差動スイッチング制御信号、PWMN制御
432 スイッチング入力信号
440 スイッチドモジュレータ
441 比較器
442 比較器
443 発振器
500 スイッチング増幅器回路、スイッチングドライバ回路
501 負荷デバイス、制御端子
503 制御端子
504-P パルス信号、スイッチング入力信号
510 スルー制御回路
511 電流源
512-1 第1のスイッチトランジスタ
512-2 第2のスイッチトランジスタ
512-3 接続ノード
513 ANDゲート、AND回路
513-1 第1の入力ノード
513-2 第2の入力ノード
513-3 出力ノード
514 nチャネルMOSトランジスタ
514-1 ドレインノード
514-2 ゲートノード、負のパルス信号
514-P 負のパルス信号
516 抵抗器
517 ハイパスフィルタ
518 マルチプレクサ回路
519 スイッチング入力信号
519-P スイッチング入力信号、波形
530 電流方向検出回路
600 スイッチングドライバ回路
601 負荷デバイス
603 制御端子
604-P パルス信号、スイッチング入力信号
610 スルー制御回路
611 電流源
612-1 第1のスイッチトランジスタ
612-2 第2のスイッチトランジスタ
612-3 接続ノード
613 OR回路、AND回路
613-1 第1の入力ノード
613-2 第2の入力ノード
613-3 出力ノード
614 pチャネルMOSトランジスタ
614-1 ドレインノード
614-2 ゲートノード
614-P 負のパルス信号
616 抵抗器
617 ハイパスフィルタ
618 マルチプレクサ回路
619 スイッチング入力信号
619-P スイッチング入力信号、波形
630 電流方向検出回路
700 電流方向検出回路
711 インバータ
712 インバータ
713 NAND回路
715 インバータ
716 インバータ
717 中間信号
718 中間信号
720 Dフリップフロップ
810 曲線
811 領域
821 曲線
822 曲線
831 曲線
832 曲線
840 曲線
910 曲線
911 領域
921 曲線
922 曲線
931 曲線
932 曲線
941 曲線
942 曲線
A1 領域
A2 領域
A3 領域
A4 領域
A5 領域
A6 領域
A7 領域
A8 領域
A9 領域
A10 領域
B1 領域
B2 領域
B3 領域
B4 領域
B5 領域
B6 領域
B7 領域
B8 領域
C コンデンサ
DN1 第1のプルダウントランジスタ
DN2 第2のプルダウントランジスタ、出力トランジスタ
IL 出力電流
IL 負荷電流
IL-DIR 電流方向信号
IL-Dir 電流方向信号、電流検出信号
INM 差動入力オーディオ信号
INP 差動入力オーディオ信号
L1 インダクタ
LG-N スイッチング入力信号
M1 第1のハーフブリッジのハイサイドPMOSトランジスタ
M2 第1のハーフブリッジのローサイドNMOSトランジスタ
M3 第2のハーフブリッジのハイサイドPMOSトランジスタ
M4 第2のハーフブリッジのローサイドNMOSトランジスタ
OUTN 差動出力ノード、第2の出力ノード、出力端子
OUTP 差動出力ノード、第1の出力ノード、出力端子
Q フリップフロップ出力
R 抵抗器
R1 抵抗器
UP1 第1のプルアップトランジスタ、ハイサイドプルアップトランジスタ
UP2 第2のプルアップトランジスタ、ローサイドプルアップトランジスタ
VREF 三角波
Vdd 第1の基準電圧、電源電圧
Vss 第2の基準電圧