(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】移動体、移動体制御装置及び移動体制御方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/00 20240101AFI20240930BHJP
B63C 11/48 20060101ALI20240930BHJP
B63C 11/00 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
G05D1/00
B63C11/48 D
B63C11/00 C
(21)【出願番号】P 2023100926
(22)【出願日】2023-06-20
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】松木 友明
(72)【発明者】
【氏名】土居本 和宏
(72)【発明者】
【氏名】川名 弘志
【審査官】田中 成彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-183427(JP,A)
【文献】特開2021-174214(JP,A)
【文献】特開2023-072596(JP,A)
【文献】特開2021-091371(JP,A)
【文献】特開2023-072588(JP,A)
【文献】特開2021-062652(JP,A)
【文献】特開2019-033348(JP,A)
【文献】特開2018-116332(JP,A)
【文献】特開2017-085263(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094635(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 - 1/87
B63C 11/48
B63C 11/00
B64C 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上を移動する水上移動体と、水中を潜航する潜航移動体とが着脱可能な状態で結合されている移動体であって、
前記水上移動体は、
構造物を撮影する指示と前記構造物の位置情報とを含む撮影指示を取得する指示情報取得部と、
前記指示情報取得部が前記撮影指示を取得した場合、前記位置情報に基づいて、前記潜航移動体が結合された状態の前記水上移動体を前記構造物から所定距離離れた水上の構造物近傍位置に移動させ
、水上で前記構造物を周回するように前記水上移動体を移動させる移動制御部と、
前記水上移動体が前記構造物近傍位置まで移動すると、
前記水上移動体の移動と並行して前記潜航移動体に水中で前記構造物を周回させ、水中で前記構造物を撮影させるための制御データを前記潜航移動体に送信する潜航制御部と、
を有
し、
前記移動制御部は、前記構造物の三次元形状に基づいて、前記潜航移動体が前記構造物を周回するために要する移動距離を特定し、特定した前記移動距離と前記潜航移動体の移動速度とに基づいて特定した測定所要時間を外部装置に送信する移動体。
【請求項2】
水上を移動する水上移動体と、水中を潜航する潜航移動体とが着脱可能な状態で結合されている移動体であって、
前記水上移動体は、
構造物を撮影する指示と前記構造物の位置情報とを含む撮影指示を取得する指示情報取得部と、
前記指示情報取得部が前記撮影指示を取得した場合、前記位置情報に基づいて、前記潜航移動体が結合された状態の前記水上移動体を前記構造物から所定距離離れた水上の構造物近傍位置に移動させる移動制御部と、
前記水上移動体が前記構造物近傍位置まで移動すると、
前記構造物から前記所定距離離れた水中の位置において、深さ方向に前記構造物の複数の領域を前記潜航移動体に撮影させるための制御データを前記潜航移動体に送信する潜航制御部と、
を有
し、
前記潜航制御部は、前記潜航移動体が前記構造物を撮影することにより生成された撮像画像データを解析することにより、前記構造物における最も深い位置が撮影されたことを特定した場合に、前記潜航移動体を水平方向に移動させてから水面に近づく向きに移動させるための制御データを生成する、
移動体。
【請求項3】
水上を移動する水上移動体と、水中を潜航する潜航移動体とが着脱可能な状態で結合されている移動体であって、
前記水上移動体は、
構造物を撮影する指示と前記構造物の位置情報とを含む撮影指示を取得する指示情報取得部と、
前記指示情報取得部が前記撮影指示を取得した場合、前記位置情報に基づいて、前記潜航移動体が結合された状態の前記水上移動体を前記構造物から所定距離離れた水上の構造物近傍位置に移動させる移動制御部と、
前記水上移動体が前記構造物近傍位置まで移動すると、
前記構造物から前記所定距離離れた水中の位置において、深さ方向に前記構造物の複数の領域を前記潜航移動体に撮影させるための制御データを前記潜航移動体に送信する潜航制御部と、
を有
し、
前記潜航制御部は、撮影可能な範囲に前記構造物がないという通知を前記潜航移動体から受けた場合に、前記潜航移動体を水平方向に移動させてから水面に近づく向きに移動させるための制御データを生成する、
移動体。
【請求項4】
水上を移動する水上移動体と、水中を潜航する潜航移動体とが着脱可能な状態で結合されている移動体を制御する移動体制御装置であって、
構造物を撮影する指示と前記構造物の位置情報とを含む撮影指示を取得する指示情報取得部と、
前記指示情報取得部が前記撮影指示を取得した場合、前記位置情報に基づいて、前記潜航移動体が結合された状態の前記水上移動体を前記構造物から所定距離離れた水上の構造物近傍位置に移動させ
、水上で前記構造物を周回するように前記水上移動体を移動させる移動制御部と、
前記水上移動体が前記構造物近傍位置まで移動すると、
前記水上移動体の移動と並行して前記潜航移動体に水中で前記構造物を周回させ、水中で前記構造物を撮影させるための制御データを前記潜航移動体に送信する潜航制御部と、
を有
し、
前記移動制御部は、前記構造物の三次元形状に基づいて、前記潜航移動体が前記構造物を周回するために要する移動距離を特定し、特定した前記移動距離と前記潜航移動体の移動速度とに基づいて特定した測定所要時間を外部装置に送信する移動体制御装置。
【請求項5】
水上を移動する水上移動体と、水中を潜航する潜航移動体とが着脱可能な状態で結合されている移動体を制御する移動体制御装置であって、
構造物を撮影する指示と前記構造物の位置情報とを含む撮影指示を取得する指示情報取得部と、
前記指示情報取得部が前記撮影指示を取得した場合、前記位置情報に基づいて、前記潜航移動体が結合された状態の前記水上移動体を前記構造物から所定距離離れた水上の構造物近傍位置に移動させる移動制御部と、
前記水上移動体が前記構造物近傍位置まで移動すると、
前記構造物から前記所定距離離れた水中の位置において、深さ方向に前記構造物の複数の領域を前記潜航移動体に撮影させるための制御データを前記潜航移動体に送信する潜航制御部と、
を有
し、
前記潜航制御部は、前記潜航移動体が前記構造物を撮影することにより生成された撮像画像データを解析することにより、前記構造物における最も深い位置が撮影されたことを特定した場合に、前記潜航移動体を水平方向に移動させてから水面に近づく向きに移動させるための制御データを生成する移動体制御装置。
【請求項6】
水上を移動する水上移動体と、水中を潜航する潜航移動体とが着脱可能な状態で結合されている移動体を制御する移動体制御装置であって、
構造物を撮影する指示と前記構造物の位置情報とを含む撮影指示を取得する指示情報取得部と、
前記指示情報取得部が前記撮影指示を取得した場合、前記位置情報に基づいて、前記潜航移動体が結合された状態の前記水上移動体を前記構造物から所定距離離れた水上の構造物近傍位置に移動させる移動制御部と、
前記水上移動体が前記構造物近傍位置まで移動すると、
前記構造物から前記所定距離離れた水中の位置において、深さ方向に前記構造物の複数の領域を前記潜航移動体に撮影させるための制御データを前記潜航移動体に送信する潜航制御部と、
を有
し、
前記潜航制御部は、撮影可能な範囲に前記構造物がないという通知を前記潜航移動体から受けた場合に、前記潜航移動体を水平方向に移動させてから水面に近づく向きに移動させるための制御データを生成する、
移動体制御装置。
【請求項7】
コンピュータが実行する、水上を移動する水上移動体と、水中を潜航する潜航移動体とが着脱可能な状態で結合されている移動体を制御する方法であって、
前記コンピュータが、
構造物を撮影する指示と前記構造物の位置情報とを含む撮影指示を取得するステップと、
前記撮影指示を取得した場合、前記位置情報に基づいて、前記潜航移動体が結合された状態の前記水上移動体を前記構造物から所定距離離れた水上の構造物近傍位置に移動させ
、水上で前記構造物を周回するように前記水上移動体を移動させるステップと、
前記水上移動体が前記構造物近傍位置まで移動すると、
前記水上移動体の移動と並行して前記潜航移動体に水中で前記構造物を周回させ、水中で前記構造物を撮影させるための制御データを前記潜航移動体に送信するステップと、
前記構造物の三次元形状に基づいて、前記潜航移動体が前記構造物を周回するために要する移動距離を特定し、特定した前記移動距離と前記潜航移動体の移動速度とに基づいて特定した測定所要時間を外部装置に送信するステップと、
を有する移動体制御方法。
【請求項8】
コンピュータが実行する、水上を移動する水上移動体と、水中を潜航する潜航移動体とが着脱可能な状態で結合されている移動体を制御する方法であって、
前記コンピュータが、
構造物を撮影する指示と前記構造物の位置情報とを含む撮影指示を取得するステップと、
前記撮影指示を取得した場合、前記位置情報に基づいて、前記潜航移動体が結合された状態の前記水上移動体を前記構造物から所定距離離れた水上の構造物近傍位置に移動させるステップと、
前記水上移動体が前記構造物近傍位置まで移動すると、
前記構造物から前記所定距離離れた水中の位置において、深さ方向に前記構造物の複数の領域を前記潜航移動体に撮影させるための制御データを前記潜航移動体に送信するステップと、
前記潜航移動体が前記構造物を撮影することにより生成された撮像画像データを解析することにより、前記構造物における最も深い位置が撮影されたことを特定した場合に、前記潜航移動体を水平方向に移動させてから水面に近づく向きに移動させるための制御データを生成するステップと、
を有する移動体制御方法。
【請求項9】
コンピュータが実行する、水上を移動する水上移動体と、水中を潜航する潜航移動体とが着脱可能な状態で結合されている移動体を制御する方法であって、
前記コンピュータが、
構造物を撮影する指示と前記構造物の位置情報とを含む撮影指示を取得するステップと、
前記撮影指示を取得した場合、前記位置情報に基づいて、前記潜航移動体が結合された状態の前記水上移動体を前記構造物から所定距離離れた水上の構造物近傍位置に移動させるステップと、
前記水上移動体が前記構造物近傍位置まで移動すると、
前記構造物から前記所定距離離れた水中の位置において、深さ方向に前記構造物の複数の領域を前記潜航移動体に撮影させるための制御データを前記潜航移動体に送信するステップと、
撮影可能な範囲に前記構造物がないという通知を前記潜航移動体から受けた場合に、前記潜航移動体を水平方向に移動させてから水面に近づく向きに移動させるための制御データを生成するステップと、
を有する移動体制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中で動作が可能な移動体、当該移動体を制御する移動体制御装置及び当該移動体を移動させるための移動体制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空中を飛行可能な水上ドローンが、水中で動作可能な潜航ドローンと結合された状態で所定の位置まで移動した後に潜航ドローンを分離し、潜航ドローンの作業終了後に潜航ドローンを回収する水空合体ドローンが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】KDDI株式会社,株式会社KDDI総合研究所,株式会社プロドローン,“世界初の水空合体ドローン、遠隔での水中撮影に成功~船を出さずに洋上風力発電設備の安全・効率的な点検を実施~”,[online],2021年12月14日,KDDI,[令和4年2月25日検索],インターネット <URL:https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2021/12/14/5593.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の水空合体ドローンを動作させるためには、オペレータが水空合体ドローンを目視しながら、又は水空合体ドローンが撮影した画像を見ながら、操縦装置を用いて水空合体ドローンを操縦する必要があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、オペレータの操縦によらず、水上を移動できる移動体に着脱可能な潜航移動体が水中の構造物を撮影できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の移動体は、水上を移動する水上移動体と、水中を潜航する潜航移動体とが着脱可能な状態で結合されている移動体であって、前記水上移動体は、構造物を撮影する指示と前記構造物の位置情報とを含む撮影指示を取得する指示情報取得部と、前記指示情報取得部が前記撮影指示を取得した場合、前記位置情報に基づいて、前記潜航移動体が結合された状態の前記水上移動体を前記構造物から所定距離離れた水上の構造物近傍位置に移動させる移動制御部と、前記水上移動体が前記構造物近傍位置まで移動すると、前記潜航移動体に水中で前記構造物を撮影させるための制御データを前記潜航移動体に送信する潜航制御部と、を有する。
【0007】
前記移動制御部は、水上で前記構造物を周回するように前記水上移動体を移動させ、前記潜航制御部は、前記水上移動体の移動と並行して前記潜航移動体に水中で前記構造物を周回させるための前記制御データを前記潜航移動体に送信してもよい。
【0008】
前記移動制御部は、前記構造物の三次元形状に基づいて、前記潜航移動体が前記構造物を周回するために要する移動距離を特定し、特定した前記移動距離と前記潜航移動体の移動速度とに基づいて特定した測定所要時間を外部装置に送信してもよい。
【0009】
前記移動体は、前記水上移動体が前記構造物の周回を開始する位置である周回開始位置を記憶する記憶部をさらに有し、前記移動制御部は、前記周回開始位置を起点として、前記構造物から所定の距離の範囲で前記構造物に沿って前記構造物を周回して前記周回開始位置に戻るまで前記水上移動体を移動させてもよい。
【0010】
前記移動制御部は、前記構造物から第1距離以上離れており、かつ前記潜航移動体に前記構造物を撮影させる位置からの距離が第2距離以内になる位置に前記水上移動体を移動させてもよい。
【0011】
前記潜航制御部は、前記構造物から前記所定距離離れた水中の位置において、深さ方向に前記構造物の複数の領域を撮影させるための前記制御データを生成してもよい。
【0012】
前記潜航制御部は、前記潜航移動体が前記構造物を撮影することにより生成された撮像画像データを解析することにより、前記構造物における最も深い位置が撮影されたことを特定した場合に、前記潜航移動体を水平方向に移動させてから水面に近づく向きに移動させるための前記制御データを生成してもよい。
【0013】
前記潜航制御部は、撮影可能な範囲に前記構造物がないという通知を前記潜航移動体から受けた場合に、前記潜航移動体を水平方向に移動させてから水面に近づく向きに移動させるための前記制御データを生成してもよい。
【0014】
前記潜航制御部は、深さ方向の所定の位置において水面と平行に前記構造物の複数の撮影対象位置を撮影させるための前記制御データを生成してもよい。
【0015】
前記水上移動体は、前記潜航移動体が前記構造物を撮影することにより生成された1以上の撮像画像データを解析することにより、損傷を示す領域が含まれている異常撮像画像データを特定する解析部と、前記異常撮像画像データを外部装置に送信する通信部と、をさらに有してもよい。
【0016】
前記解析部は、前記異常撮像画像データが撮影された時点における前記水上移動体の絶対位置と、前記水上移動体の位置を基準とする前記潜航移動体の相対位置と、に基づいて、前記潜航移動体の絶対位置を特定し、前記通信部は、前記解析部が特定した前記潜航移動体の絶対位置に関連付けて前記異常撮像画像データを外部装置に送信してもよい。
【0017】
本発明の第2の態様の移動体制御装置は、水上を移動する水上移動体と、水中を潜航する潜航移動体とが着脱可能な状態で結合されている移動体を制御する移動体制御装置であって、構造物を撮影する指示と前記構造物の位置情報とを含む撮影指示を取得する指示情報取得部と、前記指示情報取得部が前記撮影指示を取得した場合、前記位置情報に基づいて、前記潜航移動体が結合された状態の前記水上移動体を前記構造物から所定距離離れた水上の構造物近傍位置に移動させる移動制御部と、前記水上移動体が前記構造物近傍位置まで移動すると、前記潜航移動体に水中で前記構造物を撮影させるための制御データを前記潜航移動体に送信する潜航制御部と、を有する。
【0018】
本発明の第3の態様の移動体制御方法は、コンピュータが実行する、水上を移動する水上移動体と、水中を潜航する潜航移動体とが着脱可能な状態で結合されている移動体を制御する方法であって、前記コンピュータが、構造物を撮影する指示と前記構造物の位置情報とを含む撮影指示を取得するステップと、前記撮影指示を取得した場合、前記位置情報に基づいて、前記潜航移動体が結合された状態の前記水上移動体を前記構造物から所定距離離れた水上の構造物近傍位置に移動させるステップと、前記水上移動体が前記構造物近傍位置まで移動すると、前記潜航移動体に水中で前記構造物を撮影させるための制御データを前記潜航移動体に送信するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、オペレータの操縦によらず、水上を移動できる移動体に着脱可能な潜航移動体が水中の構造物を撮影できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】移動体制御システムの概要を説明するための図である。
【
図2】移動体制御システムの概要を説明するための図である。
【
図3】移動体制御システムの概要を説明するための図である。
【
図4】移動体制御システムの概要を説明するための図である。
【
図7】水上移動体1における処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[移動体制御システムの概要]
図1から
図4は、移動体制御システムの概要を説明するための図である。移動体制御システムは、移動体100と、移動体100を制御する移動体制御装置である管理サーバ3と、を備える。
【0022】
移動体100は、水上を移動することができる水上移動体1と、水中を潜航する潜航移動体2とが着脱可能な状態で結合されている。水上移動体1は飛行することができてもよい。移動体100は、水上移動体1に潜航移動体2が収容された状態、又は水上移動体1に潜航移動体2が収容されていない状態のいずれにおいても移動することができる。なお、
図2に示すように、潜航移動体2が水上移動体1に収容されていない状態においても、水上移動体1と潜航移動体2とはケーブルCにより結合されていてもよい。
【0023】
水上移動体1には、水上移動体1が移動するための移動機構部10、及び潜航移動体2を着脱するための着脱機構部11が設けられている。移動機構部10は、例えば水上移動体1を水上で移動させるためのスラスタを含む。移動機構部10は、プロペラ及び方向舵等のように、水上移動体1を飛行させるために必要な機構を含んでもよい。着脱機構部11は、潜航移動体2を収容する空間を構成する部材、潜航移動体2を固定する機構、及び潜航移動体2を解放するための機構を含む。
【0024】
図1は、水上移動体1に潜航移動体2が収容されており、潜航移動体2が構造物Kを撮影する場所に到達していない状態を示している。水上移動体1は、管理サーバ3から受信した指示情報が示す構造物Kの近傍の位置まで、潜航移動体2を収容した状態で移動する。指示情報は、構造物Kを撮影する指示と、構造物Kの位置情報と、を含む。構造物Kの近傍の位置は、突風又は波を受けたとしても移動体100が構造物Kに衝突しない所定の距離だけ構造物Kから離れた位置である。
【0025】
移動体100が構造物Kの近傍の位置に到達すると、
図2に示すように、水上移動体1が潜航移動体2を解放し、潜航移動体2が構造物Kの複数の位置を水中で撮影する。潜航移動体2は、例えば構造物Kを周回するように移動しながら構造物Kの側面を撮影する。潜航移動体2が構造物Kの複数の位置を撮影できるようにするために、水上移動体1は、構造物Kの外壁から所定距離離れた状態を維持しながら構造物Kに沿って移動するとともに、潜航移動体2が水上移動体1の移動と並行して水中で構造物Kに沿って移動するための制御データを潜航移動体2に送信する。
【0026】
潜航移動体2は、例えば所定の時間間隔又は所定の距離間隔で構造物Kを撮影するが、水上移動体1から指定された移動方向で移動し、水上移動体1から指定された向きで構造物Kを撮影する。水上移動体1は、ケーブルCを介して、移動方向及び撮影向きを示す制御データを潜航移動体2に送信することにより、潜航移動体2に構造物Kを撮影させる。
【0027】
図2に示す破線は、水中での潜航移動体2の移動経路を示している。
図2に示す例において、潜航移動体2は、移動開始点Sから移動終了点Gまでの間に、水平方向の移動と鉛直方向の移動とを繰り返すことにより、構造物Kの水中における複数の位置を撮影する。
【0028】
図3は、構造物Kが船舶である場合に構造物Kの上方から見た水上移動体1及び潜航移動体2の移動経路を模式的に示す図である。水上移動体1及び潜航移動体2は、構造物Kの一方の側に沿って移動開始点Sから移動終了点Gまで
図3に示すように移動した後に、構造物Kの反対側に沿って移動終了点Gから移動開始点Sまで
図3に示すように移動してもよい。このように水上移動体1及び潜航移動体2が構造物Kを周回することにより、潜航移動体2が構造物Kの全ての側面の複数の位置を撮影することができる。
【0029】
図4は、構造物Kが防潮堤である場合の移動経路の例を示す図である。
図4に示すように構造物Kが上下方向及び水平方向に長い面を有する場合、潜航移動体2は、上下に移動しながら動作を実行する。
図4に示す例の場合、水上移動体1は、水上移動体1の位置を固定した状態で潜航移動体2を下方に移動させる。水上移動体1は、潜航移動体2の位置が変化することに応じてケーブルCの長さを変化させてもよい。
【0030】
潜航移動体2が構造物Kの端部(例えば船底)に到達すると、水上移動体1は、潜航移動体2を水平方向に移動させるとともに、水上移動体1も水平方向に移動する。その後、水上移動体1は、水上移動体1の位置を固定した状態で潜航移動体2を上方に移動させる。水上移動体1及び潜航移動体2がこのような動作を繰り返すことで、構造物Kが上下方向及び水平方向に長い面を有する場合であっても、構造物Kの複数の位置で構造物Kを撮影させることができる。
【0031】
管理サーバ3は、携帯電話網又はWi-Fi(登録商標)等のネットワークを介して移動体100に指示情報を送信する移動体制御装置であり、例えばコンピュータである。管理サーバ3は、情報端末4においてユーザUにより指定された構造物Kを撮影するための指示情報を作成する。管理サーバ3は、例えば移動体100を使用して水中の物体の状態を観測したり、水中の物体をメンテナンスしたりする事業者により管理されている。
【0032】
情報端末4は、移動体100を利用して水中の物体の撮影を行う事業者、又は当該事業者に撮影を依頼した人等のユーザUが使用する端末であり、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット又はスマートフォンである。情報端末4は、予め登録された複数の構造物Kの候補を表示し、複数の候補からユーザUが指定した構造物Kを識別するための情報を管理サーバ3に送信する。
【0033】
潜航移動体2が撮影により生成した撮像画像データは、水上移動体1を介して管理サーバ3に送信される。管理サーバ3は、移動体100を用いた作業を依頼したユーザUに関連付けて、撮像画像データを記憶媒体に記憶させたり、撮像画像データを情報端末4に送信したりする。ユーザUは、情報端末4を介して撮像画像データを確認することができる。
【0034】
[水上移動体1の構成]
図5は、水上移動体1の構成を示す図である。水上移動体1は、移動機構部10と、着脱機構部11と、通信部12と、音響信号受信部13と、GPS受信機14と、撮像部15と、記憶部16と、制御部17と、を有する。制御部17は、指示情報取得部171と、位置特定部172と、移動制御部173と、潜航制御部174と、解析部175と、を有する。
【0035】
移動機構部10は、水上で水上移動体1を移動させるためのスラスタを含む。移動機構部10は、プロペラ及び方向舵のように水上移動体1を飛行させるために必要な機構を含んでもよい。移動機構部10は、移動制御部173の制御に基づいて動作し、水上移動体1を空中又は水上で移動させる。
【0036】
着脱機構部11は、潜航移動体2を着脱するための機構である。着脱機構部11は、例えば潜航移動体2を固定するためのアームを有しており、アームの形状又は向きを変化させることにより、潜航移動体2が水上移動体1に収容された状態と潜航移動体2が水上移動体1から解放された状態とを切り替えることができる。着脱機構部11には、ケーブルCを巻き取るための機構が含まれていてもよい。
【0037】
通信部12は、管理サーバ3との間でデータを送受信するための通信インターフェースを有する。通信部12は、例えば指示情報を含むデータを管理サーバ3から受信する。通信部12は、受信した指示情報を指示情報取得部171に入力する。通信部12は、潜航移動体2が構造物Kを撮影することにより生成した撮像画像データを管理サーバ3に送信してもよい。
【0038】
音響信号受信部13は、潜航移動体2が発した音響信号を受信する複数の受信機を有する。音響信号受信部13は、複数の受信機それぞれが受信した複数の音響信号を位置特定部172に入力する。複数の受信機は、水上移動体1におけるそれぞれ異なる位置に設けられているので、潜航移動体2が発した音響信号が複数の受信機それぞれに到達するタイミングが異なる。位置特定部172は、複数の受信機それぞれに音響信号が到達したタイミングに基づいて、水上移動体1に対する潜航移動体2の相対位置を特定する。
【0039】
GPS受信機14は、GPS衛星から受信した電波を受信する。GPS受信機14は、受信した電波に含まれる、緯度・経度を特定するために用いられるデータを位置特定部172に入力する。
【0040】
撮像部15は、水上移動体1の周囲の物体までの距離を検出する装置であり、例えば複眼カメラ又はLiDARである。撮像部15は、水上移動体1から所定範囲内(例えば30m以内)の物体の三次元形状を特定してもよい。撮像部15は、検出した物体までの距離を移動制御部173に通知する。
【0041】
記憶部16は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部16は、通信部12が受信した指示情報を記憶する。記憶部16は、潜航移動体2から送信された撮像画像データを記憶してもよい。記憶部16は、制御部17が実行するプログラムを記憶する。
【0042】
制御部17は、例えばCPU(Central Processing Unit)を有する。制御部17は、記憶部16に記憶されたプログラムを実行することにより、指示情報取得部171、位置特定部172、移動制御部173、潜航制御部174及び解析部175として機能する。
【0043】
指示情報取得部171は、通信部12を介して、構造物Kを撮影する指示と構造物Kの位置情報とを含む撮影指示を取得する。構造物Kの位置情報は、例えば、構造物Kを上方から見た場合の中央位置の緯度・経度情報であるが、構造物Kの輪郭線上の複数の位置の緯度・経度情報であってもよい。指示情報取得部171は、指示情報を移動制御部173に通知する。
【0044】
位置特定部172は、水上移動体1の絶対位置を特定する。具体的には、位置特定部172は、GPS受信機14から入力されたデータに基づいて、水上移動体1の絶対位置を示す情報として緯度・経度を特定する。
【0045】
位置特定部172は、潜航移動体2の位置を特定してもよい。具体的には、位置特定部172は、上述したように、音響信号受信部13が有する複数の受信機それぞれに音響信号が到達したタイミングに基づいて、水上移動体1に対する潜航移動体2の相対位置を特定する。位置特定部172は、特定した水上移動体1の絶対位置と潜航移動体2の相対位置とに基づいて、潜航移動体2の絶対位置をさらに特定してもよい。
【0046】
移動制御部173は、移動機構部10を制御することにより水上移動体1を移動させる。移動制御部173は、指示情報取得部171が撮影指示を取得した場合、管理サーバ3から通知された構造物Kの位置情報に基づいて、潜航移動体2が結合された状態の水上移動体1を構造物Kから所定距離離れた水上の構造物近傍位置に移動させる。上述のとおり、構造物近傍位置は、突風又は波を受けたとしても移動体100が構造物Kに衝突しない所定の距離だけ構造物Kから離れた位置であり、例えば10mである。
【0047】
移動制御部173は、例えば、位置特定部172から通知された水上移動体1の絶対位置と、構造物Kの位置情報が示す構造物Kの位置とに基づいて構造物近傍位置まで水上移動体1を移動させる。しかしながら、位置特定部172から通知された水上移動体1の絶対位置には誤差があるため、位置特定部172から通知された水上移動体1の絶対位置だけを使用すると、水上移動体1が構造物Kに近づきすぎてしまう場合がある。
【0048】
そこで、移動制御部173は、撮像部15が構造物Kを検出するまでの間は位置特定部172から通知された水上移動体1の絶対位置に基づいて水上移動体1を移動させ、撮像部15が構造物Kを検出した後は、撮像部15が検出した構造物Kまでの距離に基づいて構造物近傍位置まで水上移動体1を移動させてもよい。
【0049】
移動制御部173は、構造物近傍位置まで水上移動体1が到達すると、潜航移動体2を潜航させるように潜航制御部174に指示する。その後、移動制御部173は、撮像部15が検出した構造物Kまでの距離が一定の範囲内になるように、構造物Kの側面に沿って水上移動体1を移動させる。そして、
図3を参照しながら説明したように、移動制御部173は、水上で構造物Kを周回するように水上移動体1を移動させる。移動制御部173は、例えば潜航移動体2が水平方向に移動する場合に、潜航移動体2と同じ向きに水上移動体1を移動させる。
【0050】
移動制御部173は、Visual SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)の技術を用いて、撮像部15から入力された画像データに基づいて水上移動体1の現在位置を特定することにより水上移動体1を移動させてもよい。移動制御部173は、マルチビームソナーが発した信号の反射波を用いて特定した構造物Kの位置又は形状を用いることにより水上移動体1を移動させてもよい。移動制御部173は、撮像部15から入力された画像データに基づいて水中の構造物Kの三次元形状を特定し、特定した三次元形状を潜航制御部174に通知してもよい。
【0051】
移動制御部173は、構造物Kから第1距離以上離れており、かつ潜航移動体2に構造物Kを撮影させる位置からの距離が第2距離以内になる位置に水上移動体1を移動させる。移動制御部173は、例えば撮像部15から入力された画像データに基づいて構造物Kの三次元形状を特定し、特定した構造物Kの三次元形状に基づいて、構造物Kから第1距離以上離れた状態を維持しながら水上移動体1を移動させる。第1距離は、水上移動体1が構造物Kに衝突しない距離であり、例えば10mである。第2距離は、ケーブルCを最も長く延ばしたときのケーブルCの長さである。移動制御部173がこのように動作することで、潜航移動体2が構造物Kを撮影することができ、かつ水上移動体1が構造物Kに衝突しづらくなる。
【0052】
移動制御部173は、水上移動体1に周回を開始させる時点における水上移動体1の絶対位置(例えば
図3における移動開始点Sの位置)を、周回開始位置として記憶部16に記憶させておいてもよい。この場合、移動制御部173は、周回開始位置を起点として、構造物Kから所定の距離の範囲で構造物Kに沿って構造物Kを周回して周回開始位置に戻るまで水上移動体1を移動させる。所定の距離は、構造物Kと構造物近傍位置との距離と同等であり、例えば10mである。移動制御部173がこのように動作することで、潜航移動体2は、構造物Kの全ての側面を効率良く撮影することができる。
【0053】
移動制御部173は、特定した構造物Kの三次元形状に基づいて、潜航移動体2が構造物Kを周回するために要する移動距離を特定し、当該移動距離と潜航移動体2の移動速度とに基づいて特定した測定所要時間を外部装置(例えば管理サーバ3)に送信してもよい。具体的には、移動制御部173は、例えば撮像画像データに基づいて特定した構造物Kの三次元形状、又は予め記憶部16に記憶された構造物Kの三次元形状に基づいて、水上移動体1が移動する高さにおける構造物Kの外郭線を特定し、特定した外郭線の長さを水上移動体1の移動距離として算出する。移動制御部173は、構造物Kと水上移動体1が移動する位置との距離に基づいて、算出した移動距離を補正してもよい。
【0054】
潜航移動体2が水上移動体1の鉛直方向の下方を移動するとすれば、潜航移動体2が構造物Kを周回する際の移動距離は、算出した水上移動体1の移動距離とほぼ等しい。移動制御部173は、算出した移動距離を潜航移動体2の移動速度で除算することにより、測定所要時間を算出することができる。移動制御部173が測定所要時間を外部装置に送信することにより、移動体100を用いて構造物Kを撮影するユーザUが、作業に要する時間を把握することができる。
【0055】
潜航制御部174は、潜航移動体2の位置を制御する。潜航制御部174は、水上移動体1が構造物近傍位置まで移動すると、潜航移動体2に水中で構造物を撮影させるための制御データを潜航移動体2に送信する。
【0056】
潜航制御部174は、水上移動体1が周回開始位置に到達したという通知を移動制御部173から受けると、潜航移動体2を鉛直方向又は水平方向に移動させる。より具体的には、潜航移動体2が水上移動体1に収容されている状態で水上移動体1が構造物Kの近傍の位置に到達すると、潜航制御部174は、着脱機構部11を制御することにより潜航移動体2を解放する。続いて、潜航制御部174は、潜航移動体2が水上移動体1から解放された状態において、ケーブルCを介して制御データを潜航移動体2に送信することにより、潜航移動体2の移動を開始させる。
【0057】
潜航制御部174は、例えば、鉛直方向又は水平方向のいずれの方向に移動するかの指示を含む制御データを潜航移動体2に送信することにより、潜航移動体2を複数の位置に移動させる。潜航制御部174は、例えば、潜航移動体2が水上移動体1から解放された時点で、鉛直方向に下降する指示を含む制御データを潜航移動体2に送信する。その後、潜航制御部174は、構造物Kの下端に達したという通知を潜航移動体2から受信した場合に、水平方向に移動する指示を含む制御データ、及び鉛直方向に上昇する指示を含む制御データを潜航移動体2に送信する。潜航制御部174は、水平方向に移動する指示を含む制御データを潜航移動体2に送信し、構造物Kの端部に達したという通知を潜航移動体2から受信した場合に、鉛直方向に移動する指示を含む制御データ及び水平方向に移動する指示を含む制御データを潜航移動体2に送信してもよい。
【0058】
潜航制御部174は、潜航移動体2の向きを示す制御データを潜航移動体2に送信してもよい。潜航制御部174は、例えば、潜航移動体2に対する構造物Kの向きを示す制御データを潜航移動体2に送信する。潜航制御部174は、潜航移動体2の向きの通知を潜航移動体2から受けて、通知された向きと、構造物Kの向きとの差分を示す制御データを潜航移動体2に送信してもよい。
【0059】
潜航制御部174は、水上移動体1の移動と並行して潜航移動体2に水中で構造物Kを周回させるための制御データを潜航移動体2に送信する。潜航制御部174は、例えば
図2及び
図4に示したように、構造物Kから所定距離離れた水中の位置において、深さ方向に構造物Kの複数の領域を撮影させるための制御データを生成する。
【0060】
潜航移動体2が複眼カメラ又は距離センサーを有しており、所定距離内に構造物Kがないと判定できる場合、潜航制御部174は、潜航移動体2から受けた通知に基づいて潜航移動体2を移動させる向きを決定してもよい。例えば、潜航制御部174は、水面から遠くなる向きに移動している潜航移動体2から、所定距離内に構造物Kがないとの判定結果の通知を受けた場合に、潜航移動体2を水平方向に移動させてから水面に近づく向きに移動させるための制御データを生成してもよい。
【0061】
潜航制御部174は、深さ方向の所定の位置において水面と平行に構造物の複数の撮影対象位置を撮影させるための制御データを生成してもよい。潜航制御部174は、深さ方向に潜航移動体2を移動させるための制御データと、水面と平行な水平方向に潜航移動体2を移動させるための制御データと、を順次潜航移動体2に送信することにより、
図2及び
図4に示したように、潜航移動体2が構造物Kの領域の全体を撮影することが可能になる。
【0062】
潜航制御部174は、潜航移動体2の絶対位置を含む制御データを定期的に送信してもよい。潜航制御部174がこのような制御データを送信することで、潜航移動体2は、構造物Kを撮影した時点における潜航移動体2の絶対位置を撮像画像データに付すことができる。
【0063】
潜航移動体2は、所定の複数の位置で構造物Kを撮影すると、例えばケーブルCを介して、撮像画像データを水上移動体1に送信する。所定の複数の位置は、構造物Kの周囲(例えば360°)を撮影するために必要な位置である。潜航移動体2は、潜航移動体2の位置及び向きに関連付けて、潜航移動体2が実行した撮像画像データを水上移動体1に送信する。
【0064】
撮像画像データに関連付けられている潜航移動体2の位置は、例えば潜航制御部174が送信した制御データに含まれている潜航移動体2の絶対位置である。撮像画像データに関連付けられている潜航移動体2の向きは、例えば潜航移動体2が有する方位計により計測された向きである。潜航移動体2がジャイロセンサを有している場合、潜航移動体2の向きは、水上移動体1から解放された後に変化した潜航移動体2の角度の大きさに基づいて特定される、水上移動体1の向きに対する相対的な向きであってもよい。なお、潜航移動体2は、撮像画像データを生成するたびに撮像画像データを水上移動体1に送信してもよく、構造物Kの全ての領域の撮影が終了した時点で撮像画像データを水上移動体1に送信してもよい。
【0065】
潜航制御部174は、潜航移動体2が送信した撮像画像データを受信する。潜航制御部174は、作業を依頼したユーザUが進捗状況を把握することができるようにするために、撮像画像データを管理サーバ3に送信する。潜航移動体2が送信した撮像画像データには、水上移動体1に対する相対位置及び潜航移動体2の向きが含まれており、潜航制御部174は、相対位置に基づいて変換した潜航移動体2の絶対位置及び向きを含む撮像画像データを管理サーバ3に送信する。
【0066】
潜航制御部174は、構造物Kの周囲(例えば360°方向)の撮像画像データを取得した場合に潜航移動体2を上昇させる。潜航制御部174は、潜航移動体2のバッテリーの残量が閾値以下になる所定時間が経過した時点で潜航移動体2を上昇させてもよい。潜航制御部174は、例えば、ケーブルCを巻き取るように着脱機構部11を制御することにより潜航移動体2を上昇させる。潜航制御部174は、ケーブルCを巻き取るとともに、又はケーブルCを巻き取ることなく、水上移動体1の位置まで上昇させる指示を含む制御データを潜航移動体2に送信してもよい。潜航制御部174は、水上移動体1に対する潜航移動体2の相対位置に基づいて、水上移動体1に向けて潜航移動体2を移動させるための向き及び距離を含む制御データを潜航移動体2に送信することにより潜航移動体2を上昇させてもよい。
【0067】
なお、潜航制御部174は、所定の条件を満たさない撮像画像データがある場合、ケーブルCを巻き取らずに、当該撮像画像データが撮影された位置で再度の撮影をさせるために、当該撮像画像データが撮影された位置に戻るように潜航移動体2を移動させてもよい。所定の条件は、例えば、鮮明度が閾値以上であること、明度が閾値以上であることである。所定の条件を満たさない撮像画像データがある場合、潜航制御部174は、戻るべき撮影位置を移動制御部173に通知し、移動制御部173は戻るべき撮影位置の上方まで水上移動体1を移動させる。潜航制御部174は、再度の撮影をする際の撮影条件を潜航移動体2に指示してもよい。例えば、撮像画像データの鮮明度が基準レベル未満であった場合、潜航制御部174は、潜航移動体2にライトを点灯させるための制御データを送信してもよい。
【0068】
[撮像画像データの解析]
解析部175は、例えば潜航制御部174を介して、潜航移動体2が構造物Kを撮影することにより生成された1以上の撮像画像データを取得し、取得した1以上の撮像画像データを解析することにより、損傷を示す領域が含まれている異常撮像画像データを特定する。解析部175は、例えば、記憶部16に記憶された、損傷を示す評価用画像との類似度が閾値以上の領域を撮像画像データにおいて探索し、損傷を示す評価用画像との類似度が閾値以上の領域を検出した撮像画像データを異常撮像画像データとして特定する。解析部175は、異常箇所が含まれている画像データを教師データとして機械学習した学習モデルに撮像画像データを入力することにより、異常撮像画像データを特定してもよい。
【0069】
解析部175は、異常撮像画像データを通信部12に入力し、通信部12は、異常撮像画像データを外部装置(例えば管理サーバ3)に送信する。解析部175は、異常撮像画像データのみを送信してもよく、異常が検出されなかった撮像画像データとともに、異常であることを示すフラグを付して異常撮像画像データを送信してもよい。
【0070】
解析部175は、異常撮像画像データが撮影された時点における水上移動体1の絶対位置と、水上移動体1の位置を基準とする潜航移動体2の相対位置と、に基づいて、異常撮像画像データが撮影された時点における潜航移動体2の絶対位置を特定してもよい。解析部175は、異常撮像画像データが撮影された時点における潜航移動体2の絶対位置を関連付けた状態で異常撮像画像データを通信部12に入力する。通信部12は、解析部が特定した潜航移動体2の絶対位置に関連付けて異常撮像画像データを外部装置に送信する。解析部175が、このように異常撮像画像データを特定し、通信部12が異常撮像画像データを外部装置に送信することで、外部装置に送信する撮像画像データの量を減らすことができる。
【0071】
[管理サーバ3の構成]
図6は、管理サーバ3の構成を示す図である。管理サーバ3は、第1通信部31と、第2通信部32と、記憶部33と、制御部34と、を有する。制御部34は、受付部341と、指示情報生成部342と、画像データ取得部343と、を有する。
【0072】
第1通信部31は、ネットワークを介して情報端末4とデータを送受信するための通信インターフェースである。第1通信部31は、例えば、受付部341から入力された記録データを情報端末4に送信し、情報端末4において入力された指定データを受信する。第1通信部31は、受信した指定データを受付部341に入力する。
【0073】
第2通信部32は、ネットワークを介して水上移動体1とデータを送受信するための通信インターフェースである。第2通信部32は、例えば指示情報を水上移動体1に送信し、潜航移動体2が所定の動作を実行した結果を示すデータ(例えば撮像画像データ)を受信する。
【0074】
記憶部33は、ROM、RAM及びSSD等の記憶媒体を有する。記憶部33は、制御部34が実行するプログラムを記憶する。また、記憶部33は、複数の構造物Kそれぞれの名称と位置とを関連付けて記憶する。
【0075】
制御部34は、例えばCPUを有する。制御部34は、記憶部33に記憶されたプログラムを実行することにより、受付部341、指示情報生成部342及び画像データ取得部343として機能する。
【0076】
受付部341は、移動体100に撮影させる対象となる構造物Kを特定するための情報を受け付ける。構造物Kを特定するための情報は、例えば、情報端末4において撮影された構造物Kの画像データである。当該画像データには、情報端末4の位置及び向きが関連付けられているので、受付部341は、当該画像データに基づいて、構造物Kの位置を特定することができる。
【0077】
指示情報生成部342は、受付部341が受け付けた撮影対象の構造物Kを撮影する指示と、当該構造物Kの位置を示す指示情報を生成する。ユーザUが複数の構造物Kを撮影対象として指定した場合、指示情報生成部342は、ユーザUが選択した複数の構造物Kを示す指示情報を生成する。
【0078】
画像データ取得部343は、第2通信部32を介して、潜航移動体2が生成した撮像画像データを取得する。潜航移動体2が構造物Kを撮影した場合、画像データ取得部343は、構造物Kに関連付けて撮像画像データを記憶部33に記憶させる。画像データ取得部343は、構造物Kを撮影した潜航移動体2を識別するための情報を関連付けて撮像画像データを記憶部33に記憶させてもよい。
【0079】
[水上移動体1における処理の流れ]
図7は、水上移動体1における処理の流れを示すフローチャートである。
図7に示すフローチャートは、指示情報生成部342が指示情報を水上移動体1に送信した時点から開始している。
【0080】
まず、水上移動体1は、管理サーバ3から指示情報を取得する(S11)。水上移動体1は、取得した指示情報に含まれている構造物Kの近傍の位置に向けて移動する(S12)。具体的には、移動制御部173は、構造物Kの位置に向けて移動するように移動機構部10を制御する。
【0081】
移動制御部173は、移動体100の移動中に、移動体100が構造物Kの近傍の位置に到達したか否かを判定する(S13)。移動制御部173は、例えば撮像部15が撮影した画像に構造物Kが写っているか否かを判定することにより、移動体100が構造物Kの近傍の位置に到達していないと判定した場合(S13においてNO)、移動を継続する(S12)。移動制御部173は、移動体100が構造物Kの近傍の位置に到達したと判定した場合(S13においてYES)、潜航制御部174は、着脱機構部11を制御して潜航移動体2を解放する(S14)。
【0082】
潜航制御部174は、潜航移動体2を解放すると、潜航移動体2に水中での撮影を開始させる。潜航制御部174は、例えば、鉛直方向に潜航移動体2を下降させる(S15)。潜航制御部174は、構造物Kの端部に達したという通知を潜航移動体2から受けると、水平方向に潜航移動体2を移動させ、移動制御部173は、水上移動体1を潜航移動体2と同じ向きに移動させる(S16)。
【0083】
潜航制御部174は、潜航移動体2が所定の距離だけ水平方向に移動すると、潜航移動体2を鉛直方向に上昇させる(S17)。潜航制御部174は、水面から所定の深さまで潜航移動体2が到達すると、潜航移動体2を水平方向に移動させ、移動制御部173は水上移動体1を同じ向きに移動させる(S18)。潜航制御部174及び移動制御部173は、潜航移動体2が構造物Kの周囲の撮影が終わるまで(S19においてNO)、S15からS18までを繰り返す。
【0084】
潜航制御部174は、構造物Kの周囲の撮影が完了したという通知を潜航移動体2から受けた場合(S19においてYES)、潜航制御部174は、着脱機構部11を制御することによりケーブルCを巻き取るとともに、上昇させるための制御データを潜航移動体2に送信することにより潜航移動体2を上昇させる(S20)。潜航移動体2が上昇して水上移動体1に収容されると、移動制御部173は基地に向けて水上移動体1を移動させる(S21)。
【0085】
[変形例]
以上の説明においては、水上移動体1が、指示情報取得部171、移動制御部173、潜航制御部174を有する場合を例示したが、水上移動体1の外部の移動体制御装置(例えばコンピュータ)が、指示情報取得部171、移動制御部173、潜航制御部174と同等の機能部を有していてもよい。
【0086】
一例として、管理サーバ3が指示情報取得部171、移動制御部173、潜航制御部174と同等の機能部を有していてもよい。この場合、管理サーバ3の指示情報取得部が、情報端末4から、構造物Kを撮影する指示と、構造物Kの位置情報と、を含む撮影指示を取得する。そして、管理サーバ3の移動制御部及び潜航制御部が、水上移動体1から水上移動体1の位置及び潜航移動体2の位置を示す情報を取得する。そして、管理サーバ3が有する移動制御部が移動機構部10を制御するためのデータを水上移動体1に送信し、管理サーバ3が有する潜航制御部が、水上移動体1を介して、潜航移動体2を移動させるための制御データを潜航移動体2に送信する。
【0087】
また、潜航移動体2又は管理サーバ3が解析部175の機能を有していてもよい。潜航移動体2が解析部175の機能を有する場合、潜航移動体2は、異常撮像画像データのみを水上移動体1に送信してもよく、異常があることを示すフラグを付した状態で異常撮像画像データを水上移動体1に送信してもよい。
【0088】
[移動体100による効果]
以上説明したように、移動体100は、構造物Kを撮影する指示と構造物Kの位置を示す位置情報とを含む撮影指示を取得すると、位置情報に基づいて、潜航移動体2が結合された状態の水上移動体1を構造物Kから所定距離離れた水上の構造物近傍位置まで移動させる。そして、水上移動体1が構造物近傍位置まで移動すると、潜航移動体2に水中で構造物Kを撮影させるための制御データを潜航移動体2に送信する。移動体100がこのように構成されていることで、オペレータの操縦によらず、潜航移動体2が水中の構造物Kを撮影できる。
【0089】
なお、本発明により、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献することが可能となる。
【0090】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0091】
1 水上移動体
2 潜航移動体
3 管理サーバ
4 情報端末
10 移動機構部
11 着脱機構部
12 通信部
13 音響信号受信部
14 受信機
15 撮像部
16 記憶部
17 制御部
31 第1通信部
32 第2通信部
33 記憶部
34 制御部
100 移動体
171 指示情報取得部
172 位置特定部
173 移動制御部
174 潜航制御部
175 解析部
341 受付部
342 指示情報生成部
343 画像データ取得部
【要約】
【課題】オペレータの操縦によらず、水上を移動できる移動体に着脱可能な潜航移動体が水中の構造物を撮影できるようにする。
【解決手段】移動体100は、水上を移動する水上移動体1と、水中を潜航する潜航移動体2とが着脱可能な状態で結合された移動体である。水上移動体1は、構造物を撮影する指示と構造物の位置情報とを含む撮影指示を取得する指示情報取得部171と、指示情報取得部171が撮影指示を取得した場合、位置情報に基づいて、潜航移動体2が結合された状態の水上移動体1を構造物から所定距離離れた水上の構造物近傍位置に移動させる移動制御部173と、水上移動体1が構造物近傍位置まで移動すると、潜航移動体2に水中で構造物を撮影させるための制御データを潜航移動体2に送信する潜航制御部174と、を有する。
【選択図】
図5