IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝エレベータ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-見守りシステム 図1
  • 特許-見守りシステム 図2
  • 特許-見守りシステム 図3
  • 特許-見守りシステム 図4
  • 特許-見守りシステム 図5
  • 特許-見守りシステム 図6
  • 特許-見守りシステム 図7
  • 特許-見守りシステム 図8
  • 特許-見守りシステム 図9
  • 特許-見守りシステム 図10
  • 特許-見守りシステム 図11
  • 特許-見守りシステム 図12
  • 特許-見守りシステム 図13
  • 特許-見守りシステム 図14
  • 特許-見守りシステム 図15
  • 特許-見守りシステム 図16
  • 特許-見守りシステム 図17
  • 特許-見守りシステム 図18
  • 特許-見守りシステム 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】見守りシステム
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/04 20060101AFI20240930BHJP
   G08B 21/24 20060101ALI20240930BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20240930BHJP
   B66B 1/14 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
G08B25/04 F
G08B25/04 K
G08B21/24
G06Q50/10
B66B1/14 L
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023119016
(22)【出願日】2023-07-21
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徐 秀坤
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/175839(WO,A1)
【文献】特開2003-178378(JP,A)
【文献】特開2014-078150(JP,A)
【文献】特開2023-039645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 21/00-31/00
G06Q 50/10
B66B 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
見守り対象者が住んでいる第1の建物に設置されたエレベータの運転を制御するエレベータ制御装置と、前記見守り対象者が通う第2の建物に入館および退館したときの時刻を含む入出情報を管理する管理装置と、が通信ネットワークを介して接続された見守りシステムであって、
前記エレベータ制御装置は、
前記見守り対象者が前記エレベータを利用した時刻を含むエレベータ利用情報を記録する記録処理手段と、
前記エレベータ利用情報と、前記管理装置から得られる前記入出情報とに基づいて、前記見守り対象者の動向を監視する監視手段と、
予め設定された見守り時間内に、前記見守り対象者が前記第1の建物の前記エレベータを利用してから前記第2の建物に入館していない場合、あるいは、前記見守り対象者が前記第2の建物から退館してから前記第1の建物の前記エレベータを利用していない場合に、前記見守り対象者の関係者が持つ第1端末装置に異常事態である旨を通知する通知手段と
を具備した見守りシステム。
【請求項2】
前記監視手段は、
前記エレベータ利用情報に含まれる前記エレベータを利用した時刻と前記入出情報とから、時間差に基づく所要時間を算出し、
前記通知手段は、
前記所要時間が前記見守り時間を超えた場合に、前記異常事態である旨を前記第1端末装置に通知する
請求項1記載の見守りシステム。
【請求項3】
前記通知手段は、
前記監視手段によって前記所要時間が算出されたときに、前記所要時間を前記第1端末装置に通知する
請求項2に記載の見守りシステム。
【請求項4】
前記通知手段は、
前記異常事態である旨を前記第2の建物内に設置された第2端末装置に通知する
請求項1に記載の見守りシステム。
【請求項5】
前記エレベータ制御装置は、
前記管理装置から得られる前記入出情報に含まれる前記第2の建物から退館したときの時刻の情報に基づいて、前記見守り対象者が前記第1の建物に到着する時刻を予測し、その予測時刻に前記エレベータの乗りかごを前記第1の建物の玄関階に待機させる運転制御手段をさらに具備する
請求項1に記載の見守りシステム。
【請求項6】
見守り対象者が住んでいる第1の建物に設置されたエレベータの運転を制御するエレベータ制御装置の動作を物件毎に管理するサーバ装置を備え、前記サーバ装置と前記見守り対象者が通う第2の建物に入館及び退館したときの時刻を含む入出情報を管理する管理装置と、が通信ネットワークを介して接続された見守りシステムであって、
前記サーバ装置は、
前記エレベータ制御装置から得られる、前記見守り対象者が前記エレベータを利用した時刻を含むエレベータ利用情報を、前記第1の建物の物件情報と関連付けて記録する記録処理手段と、
前記物件情報と、前記エレベータ利用情報と、前記管理装置から得られる前記入出情報とに基づいて、前記見守り対象者の動向を監視する監視手段と、
予め設定された見守り時間内に、前記見守り対象者が前記第1の建物の前記エレベータを利用してから前記第2の建物に入館していない場合、あるいは、前記見守り対象者が前記第2の建物から退館してから、前記第1の建物の前記エレベータを利用していない場合に、前記見守り対象者の関係者が持つ第1端末装置に異常事態である旨を通知する通知手段と
を具備した見守りシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、見守りシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
児童の登下校中に何らかの事件に巻き込まれることが多く、地域における児童の安全確保が課題となっている。児童が携帯端末を所持していれば、GPS(Global Positioning System)機能などを利用して児童の行動を把握できるが、一般的には、携帯端末を所持していない児童が多く、また、学校側でも携帯端末の所持を認めていないことが多い。
【0003】
ここで、携帯端末を所持していない児童の登下校を見守るためのシステムとして、IDカードを用いた登下校時刻通知システムが知られている。これは、学校側に構築されたシステムであって、児童が登校時と下校時に学校のゲートを通過する際に、その児童に与えられたIDカードをカードリーダにかざすことで、当該ゲートを通過した時刻(登校時刻と下校時刻)を保護者の携帯端末に電子メールで通知するシステムである。この通知により、保護者は、児童が学校に登校したこと、そして、学校から下校したことを把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-33983号公報
【文献】特開2021-123452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、マンションにおいて、エレベータを利用して登下校を行う児童も増えてきており、マンションから学校までの範囲を見守る必要性が出てきている。しかし、上述した登下校時刻通知システムでは、学校のゲートを通過した時刻を起点とした登校時刻と下校時刻しかわからないため、例えば登校時刻の通知を受けなかった場合に、児童が自宅マンションから出てから学校に行っていないのか、あるいは、児童が自宅のマンションを出ていないのかがわからない。また、下校時刻の通知を受けた場合に、児童が自宅のマンションにいつ着いたのかがわからない。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、エレベータを利用して登下校を行う児童などの見守り対象者の動向を一定の行動範囲で見守ることのできる見守りシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る見守りシステムは、見守り対象者が住んでいる第1の建物に設置されたエレベータの運転を制御するエレベータ制御装置と、前記見守り対象者が通う第2の建物に入館および退館したときの時刻を含む入出情報を管理する管理装置と、が通信ネットワークを介して接続される。前記エレベータ制御装置は、記録処理手段と、監視手段と、通知手段とを具備する。前記記録処理手段は、前記見守り対象者が前記エレベータを利用した時刻を含むエレベータ利用情報を記録する。前記監視手段は、前記エレベータ利用情報と、前記管理装置から得られる前記入出情報とに基づいて、前記見守り対象者の動向を監視する。前記通知手段は、予め設定された見守り時間内に、前記見守り対象者が前記第1の建物の前記エレベータを利用してから前記第2の建物に入館していない場合、あるいは、前記見守り対象者が前記第2の建物から退館してから前記第1の建物の前記エレベータを利用していない場合に、前記見守り対象者の関係者が持つ第1端末装置に異常事態である旨を通知する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る見守りシステムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、同実施形態に係るエレベータ制御装置の機能構成の一例を示す図である。
図3図3は、同実施形態に係る管理装置の機能構成の一例を示す図である。
図4図4は、同実施形態に係る保護者が持つ保護者端末の機能構成の一例を示す図である。
図5図5は、同実施形態に係る児童の登校時の動きについて説明するため図である。
図6図6は、同実施形態に係る見守りシステムの登校時における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、同実施形態に係る児童のエレベータ利用情報の一例を示す図である。
図8図8は、同実施形態に係る児童の入出情報の一例を示す図である。
図9図9は、同実施形態に係る保護者端末及び学校端末に表示される異常通知の一例を示す図である。
図10図10は、同実施形態に係る保護者端末及び学校端末に表示される異常通知の一例を示す図である。
図11図11は、同実施形態に係る児童の下校時の動きについて説明するための図である。
図12図12は、同実施形態に係る見守りシステムの下校時における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図13図13は、同実施形態に係る保護者端末及び学校端末に表示される異常通知の一例を示す図である。
図14図14は、同実施形態に係る保護者端末及び学校端末に表示される異常通知の一例を示す図である。
図15図15は、同実施形態に係る保護者端末及び学校端末に表示される異常通知の一例を示す図である。
図16図16は、第2実施形態に係る見守りシステムの構成の一例を示す図である。
図17図17は、同実施形態に係るサーバ装置の機能構成の一例を示す図である。
図18図18は、同実施形態に係るサーバ装置7の児童U2-1の登校時の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図19図19は、同実施形態に係る児童毎のエレベータ利用情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、各実施形態について説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に相当し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施形態に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0010】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。
以下では、児童を見守り対象者、この児童の保護者や学校の教員等を見守り対象者の関係者とし、児童が住宅マンションから学校に通うときの動向を保護者が見守ることを想定して説明する。
【0011】
図1は、第1実施形態に係る見守りシステム1の構成の一例を示す図であり、保護者U1が児童U2の動向を見守るための構成が示されている。図中の符号20は、児童U2の住んでいる住宅マンション等の建物である。符号30は、児童U2が通う学校等の建物である。
【0012】
建物20には、エレベータ11a~11cが設置されている。なお、建物20に設置されたエレベータの台数は、1以上であればよい。建物20には、エレベータ11a~11cの運転を制御するためのエレベータ制御装置2が設置されている。また、建物20の各階12a~12xには、それぞれにカードリーダ21a~21xが設置されており、これらのカードリーダ21a~21xは、エレベータ制御装置2に無線又は有線で接続されている。図1の例では、児童U2の住居階12aにカードリーダ21aが設置されている。また、建物20の玄関階12xにカードリーダ21xが設置されている。
【0013】
一方、建物30には、学校側のシステムの1つとして、児童の登下校の時刻を通知する登下校時刻通知システムが構築されている。この登下校時刻通知システムは、カードリーダ31と、管理装置3と、学校端末6を備える。カードリーダ31は、例えば建物30の出入口、教室、ゲート等に設置されており、管理装置3に有線又は無線によって接続されている。管理装置3は、カードリーダ31を通じて児童U2が建物30に入った(入館した)ときの時刻(登校時刻)と、児童U2が建物30から出た(退館した)ときの時刻(下校時刻)を管理するための装置であり、建物30内の任意の箇所に設置された学校端末6と有線又は無線によって接続されている。本実施形態では、管理装置3が通信ネットワーク5を介してエレベータ制御装置2に接続されている。学校端末6は、管理装置3に有線又は無線によって接続されており、例えば教員が児童U2の登校時刻と下校時刻を確認する場合などに使用される。
【0014】
ここで、児童U2は、登下校時にIDカードCを所持している。IDカードCは、上記登下校時刻通知システムに用いられている個人認証カードである。IDカードCには、少なくとも、児童U2を識別するための情報が記録されている。本実施形態では、このIDカードCを利用して、児童U2が住んでいる建物20と登校先の建物30で、児童U2の動向を監視できるようにしている。
【0015】
すなわち、建物20では、児童U2が建物20の各階に設置されたカードリーダ21a~21xのいずれかに、IDカードCをかざしてエレベータに乗ることで、児童U2がエレベータを利用した時刻(以下、エレベータ利用時刻と表記)を把握できる。また、建物30では、児童U2が建物30に設置されたカードリーダ31にIDカードCをかざすことで、登校時刻と下校時刻を把握することができる。
【0016】
また、児童U2の保護者U1は、保護者端末4を所持している。保護者端末4は、例えばスマートフォン又はパーソナルコンピュータ等である。保護者端末4は、例えばインターネットを介してエレベータ制御装置2と接続されている。なお、保護者端末4は、通信ネットワーク5を介して、エレベータ制御装置2と接続されていてもよい。
【0017】
図2は、本実施形態に係るエレベータ制御装置2の機能構成の一例を示す図である。エレベータ制御装置2は、制御部22、記憶部23、及び通信部24を備える。
【0018】
制御部22は、プログラムの起動によりエレベータ11a~11cの運転制御、及び見守りシステム1に必要な各種処理を実行する部分であり、ここでは記録処理部22a、監視部22b、通知部22c、運転制御部22dを有する。なお、制御部22の具体的な処理については、図6及び図12を参照して後述し、ここでは簡単に説明する。
【0019】
記録処理部22aは、カードリーダ21a~21xによって読み取られた情報(児童U2の識別情報、カード読み取り時刻)に基づいて、当該児童U2がエレベータ11a~11cを利用したときの時刻を含むエレベータ利用情報を記憶部23に記録する。
【0020】
監視部22bは、記憶部23に記録された児童U2のエレベータ利用情報と、管理装置3から得られる児童U2の登校時刻又は下校時刻とに基づいて、児童U2の動向を監視する。「児童U2の動向」とは、登校時に建物20から建物30の移動に要した時間、下校時に建物30から建物20の移動に要した時間などを含む。
【0021】
通知部22cは、登校時に建物20から建物30の移動に要した時間、あるいは、下校時に建物30から建物20の移動に要した時間が予め設定された時間を超えた場合に、児童U2の保護者U1及び学校の教員に、異常事態である旨を通知する(異常通知)。具体的には、通知部22cは、児童U2の保護者U1が持つ保護者端末4及び学校端末6に、異常事態である旨を通知する。
【0022】
運転制御部22dは、エレベータ11a~11cの乗りかごの運転制御を行う。本実施形態では、運転制御部22dは、児童U2が建物30から出た(退館した)ときの時刻の情報に基づいて建物20に到着する時刻を予測し、その予測時刻にエレベータ11a~11cの何れかの乗りかごを玄関階12xに待機させておくための制御を行う。
【0023】
記憶部23は、記録処理部22aの処理に基づいて、上記したエレベータ利用情報を記憶する。加えて、記憶部23は、児童U2と対応づけられた保護者U1の保護者端末4の連絡先(例えば、保護者端末4のメールアドレス)等の情報を記憶する。通信部24は、管理装置3及び保護者端末4との通信処理を行う。
【0024】
図3は、本実施形態に係る管理装置3の機能構成の一例を示す図である。管理装置3は、制御部32、記憶部33、通信部34を有する。
【0025】
制御部32は、プログラムの起動により管理装置3の制御に必要な各種処理を実行する部分であり、ここでは記録処理部32a、送信部32bを有する。なお、制御部32の具体的な処理については、図6及び図12を参照して後述し、ここでは簡単に説明する。
【0026】
記録処理部32aは、IDカードCから読み取った情報に基づいて、児童U2が建物30に登校したときの時刻(登校時刻)及び建物30から下校したときの時刻(下校時刻)を含む情報(以下、入出情報と表記)を、記憶部33に記憶する。
【0027】
送信部32bは、上記入出情報を、通信部34を介してエレベータ制御装置2に送信する。また、エレベータ制御装置2から、通信部34を介して児童U2の異常通知を受信した場合、当該異常通知を学校端末6に送信する。
【0028】
記憶部33は、児童U2に関連付けて上記入出情報(登校時刻と下校時刻)を記憶する。通信部34は、エレベータ制御装置2との通信処理を行う。
【0029】
図4は、本実施形態に係る保護者U1が持つ保護者端末4の機能構成の一例を示す。保護者端末4は、制御部41、表示部42、通信部43、及び記憶部44を有する。制御部41は、プログラムの起動により保護者端末4の制御に必要な各種処理を実行する部分であり、ここでは表示処理部41aを有する。表示処理部41aは、通信部43を介して、エレベータ制御装置2から児童U2の異常通知を受信すると、当該異常通知を、表示部42を介して保護者U1に表示する。
【0030】
表示部42は、例えばディスプレイであり、表示処理部41aの制御に基づいて、異常通知を含む児童U2の登下校に関する情報を表示する。通信部43は、エレベータ制御装置2との通信処理を行う。記憶部44は、制御部41によって実行される各種プログラムを記憶する。なお、保護者端末4は、図4に示す構成に加えて、入力部等の他の構成要素を有していてもよい。
【0031】
建物30に設置された学校端末6の構成については、図示を省略するが、基本的な構成は図4と同様であり、制御部、表示部、通信部及び記憶部等を備える。
【0032】
以下、図5図15を参照して、本実施形態における見守りシステム1の処理の流れの一例を説明する。ここでは、(a)登校時、(b)下校時に分けて説明する。
【0033】
(a)登校時
まず、図5を参照して児童U2の登校時の動きについて簡単に説明する。図中の括弧数字は処理手順の順番を表している。児童U2は、登校時に住居階12aからエレベータ11a~11cに乗る際、住居階12aに設置されたカードリーダ21aにIDカードCをかざしてから(手順(1))、図示せぬ呼びボタン等の操作により呼び登録を行う。
【0034】
いま、エレベータ11aが児童U2の呼び登録に応答したものとする。エレベータ11aは、住居階12aに到着後、児童U2を乗せて行先階(玄関階12x)に向けて出発する。エレベータ11aが玄関階12xに到着すると(手順(2))、児童U2は、玄関階12xから建物20を出て、登校先である建物30に向かう。児童U2が建物30に着くと、そこに設置されているカードリーダ31にIDカードCをかざしてから建物30内に入る(手順(3))。
【0035】
ここで、手順(1)のときの時刻、つまり、児童U2がIDカードCを住居階12aのカードリーダ21aにかざした時刻を、児童U2がエレベータを利用した時刻(エレベータ利用時刻)とする。なお、児童U2がエレベータに乗り込み、住居階12aから玄関階12xに向けて出発したときの時刻を、エレベータ利用時刻としてもよい。例えば、児童U2がIDカードCを住居階12aのカードリーダ21aにかざした時刻に、呼び登録によってエレベータ11aが住居階12aに到着後、玄関階12xに出発するまでに要した時間を加えることで求めてもよい。この場合、児童U2がIDカードCを住居階12aのカードリーダ21aにかざした時刻が[07:59]であり、呼び登録によってエレベータ11aが住居階12aに到着後、玄関階12xに出発するまでに要した時間が1分であれば、エレベータ利用時刻は[08:00]として求められる。
【0036】
また、手順(3)のときの時刻、つまり、児童U2がIDカードCをカードリーダ31にかざしたときの時刻を「登校時刻」とする。さらに、手順(1)~(3)までの時間(エレベータ利用時刻から登校時刻までの時間)を、「登校所要時間T1(第1所要時間)」とする。
【0037】
図6は、本実施形態に係る見守りシステム1の登校時における処理手順の一例を示すフローチャートであり、図6(a)はエレベータ制御装置2の処理、同図(b)は管理装置3の処理を示している。
【0038】
まず、図6(a)を参照して、エレベータ制御装置2の処理手順について説明する。
住居階12aに設置されたカードリーダ21aによって、児童U2のIDカードCが読み取られると(ステップS11のYES)、エレベータ制御装置2の制御部22に備えられた運転制御部22dは、以下のような呼び登録の処理を実行する(ステップS12)。
【0039】
呼び登録には、乗場呼びと、行先階(かご呼び)の登録がある。乗場呼びは、図示せぬ乗場呼びボタンの操作によって登録される。乗場呼びが登録されると、運転制御部22dは、所定の割当評価式に従って、エレベータ11a~11cの中から最適なエレベータ(例えばエレベータ11aとする)を選出して、乗場呼びの登録階(ここでは住居階12a)に応答させる。行先階(かご呼び)は、乗場呼びの登録階に応答したエレベータ11aのかご内に設置されたかご操作盤上の行先階ボタンの操作によって登録される。行先階が登録されると、運転制御部22dは、エレベータ11aをその行先階に向けて出発させる。
【0040】
ここで、カードリーダ21aによって、児童U2のIDカードCが読み取られたときに、上記エレベータ利用時刻が定まる。
【0041】
なお、行先階を登録する場合に、例えばIDカードC内に、予め児童U2の登校時の行先階(玄関階12x)を記録しておくことで、このIDカードCを用いて行先階の登録を行う構成としてもよい。
【0042】
エレベータ11aが住居階12aから行先階(玄関階12x)に向けて出発し、行先階に到着したときに(ステップS13のYES)、記録処理部22aは、児童U2のエレベータ利用情報を記憶部23に児童U2の識別情報と関連付けて記録する(ステップS14)。
【0043】
図7に示すように、上記ステップS14で記録された児童U2のエレベータ利用情報には、日付、時刻(エレベータ利用時刻)、物件名(建物名)、乗車階及び行先階の情報が含まれる。例えば、2022年7月25日の午前8時に、児童U2がBマンションの7階(住居階)において、カードリーダ21aにIDカードCをかざし、7階から1階(玄関階)に到着した場合、図7の1行目に示すような情報が児童U2のエレベータ利用情報として記憶部23に記録される。
【0044】
ここで、監視部22bは、建物30の管理装置3から、児童U2が登校したときに送られて来る入出情報(登校時刻)を待つ(ステップS15)。管理装置3から児童U2の入出情報を受信した場合(ステップS16のYES)、監視部22bは、エレベータの利用情報に含まれる時刻(エレベータ利用時刻)と、入出情報に含まれる児童U2の登校時刻との時間差を、児童U2の登校所要時間T1として算出し、この登校所要時間T1を児童U2の識別情報と関連付けて記憶部23に記憶する(ステップS17)。この登校所要時間T1は、児童U2の関係者に必要に応じて通知される(図10図15参照)。
【0045】
一方、管理装置3から児童U2の入出情報を受信しなかった場合(ステップS16のNO)、監視部22bは、児童U2のエレベータ利用時刻から、所定の第1見守り時間Taが経過したか否かを判定する(ステップS18)。なお、「第1見守り時間Ta」は、保護者U1によって任意に設定された時間(例えば30分)であり、記憶部23に記憶されている。第1見守り時間Taは、児童U2が建物20のエレベータを利用してから、通常のルートで建物30に到着するまでの平均的な時間を基準にして定められる。
【0046】
上記第1見守り時間Taの間に、管理装置3から児童U2の入出情報を受信できなかったことは、図5に示した手順(1)~(3)の間に何らかの異常があり、児童U2が建物30に到着していないこと、つまり、通常通りに登校していなかったことを意味する。
【0047】
従って、登校時にエレベータ利用時刻から第1見守り時間Taが経過しても児童U2の入出情報を受信できなかった場合(ステップS18のYES)、通知部24cは、保護者端末4及び管理装置3に対して異常通知を送信する(ステップS19)。
【0048】
次に、図6(b)に示す管理装置3の処理を説明する。
建物30に設置されたカードリーダ31によって、建物30に到着した児童U2のIDカードCが読み取られると(ステップA11のYES)、制御部32に備えられた送信部32bは、IDカードCが読み取られた時刻(登校時刻)を含む入出情報を、エレベータ制御装置2に送信する(ステップA12)。さらに、記録処理部32aは、児童U2の入出情報を記憶部25に記録する(ステップA13)。
【0049】
図8に示すように、児童U2の入出情報は、日付、登校時刻、カードリーダ31の設置場所の情報を含む。例えば、2022年7月25日の午前8時15分に、児童U2がC小学校の1番ゲートを通過した場合、図8の1行目に示すような情報が児童U2の入出情報として記録される。
【0050】
ここで、エレベータ制御装置2から異常通知を受信した場合(ステップA14のYES)、送信部32bは、当該異常通知を保護者端末4及び学校端末6に送信して、処理を終了する。なお、管理装置3は、再びステップA11に戻り、処理を繰り返す。
【0051】
保護者端末4の表示処理部41aは、異常通知を受信すると、表示部42に登校時に異常があった旨を所定の形式で表示する。学校端末6についても同様であり、登校時に異常があった旨が表示される。保護者端末4及び学校端末6に表示される異常通知は、図9に示すように、児童U2が建物20を出てから第1見守り時間Taが経過している情報を含む。
【0052】
なお、図9の例では、児童U2が第1見守り時間Ta以内に登校しなかった旨を通知したが、図10のように、第1見守り時間Taを経過して登校した時に、その登校に要した時間(登校所要時間T1)を通知するようにしてもよい。
【0053】
(b)下校時
次に、図11を参照して児童U2の下校時の動きについて簡単に説明する。図中の括弧数字は処理手順の順番を表している。児童U2は、下校時に、建物30に設置されているカードリーダ31にIDカードCをかざして(手順(1))、児童U2が自宅のある建物20に向かう。児童U2が建物20に到着し、玄関階12xからエレベータ11a~11cに乗る際、玄関階12xに設置されたカードリーダ21xにIDカードCをかざしてから(手順(2))、図持せぬ呼びボタン等の操作により呼び登録を行う。
【0054】
いま、エレベータ11aが児童U2の呼び登録に応答したものとする。エレベータ11aは、玄関階12xに到着後、児童U2を乗せて行先階(住居階12a)に向けて出発し、住居階12aに到着すると(手順(3))、児童U2は自宅に帰宅する。
【0055】
ここで、手順(1)のときの時刻、つまり、下校時に、建物30に設置されているカードリーダ31にIDカードCをかざした時刻を「下校時刻」と表記する。また、手順(2)のときの時刻、つまり、児童U2がIDカードCを玄関階12xのカードリーダ21xにかざした時刻を、エレベータを利用した時刻(エレベータ利用時刻)とする。なお、児童U2が玄関階12xからエレベータに乗り、玄関階12xから出発したエレベータが住居階12aに到着した時刻を、エレベータ利用時刻としてもよい。例えば、児童U2がカードリーダ21xにIDカードCがかざされた時刻に、呼び登録によってエレベータ11aが玄関階12xに到着後、住居階12aに到着するまでに要した時間を加えることで求めてもよい。この場合、児童U2がIDカードCを玄関階12xのカードリーダ21xにかざした時刻が[14:57であり、呼び登録によってエレベータ11aが玄関階12xに到着後、住居階12aに向けて出発し、住居階12aに到着するまでに要した時間が1分であれば、エレベータ利用時刻は[14:58]として求められる。さらに、手順(1)~(2)までの時間(下校時刻からエレベータ利用時刻までの時間)を、「下校所要時間T2(第2所要時間)」とする。
【0056】
図12は、本実施形態に係る見守りシステム1の下校時における処理手順の一例を示すフローチャートである。図12(a)はエレベータ制御装置2の処理、同図(b)は管理装置3の処理を示している。
【0057】
まず、図12(a)を参照して、エレベータ制御装置2の処理手順について説明する。
児童U2のIDカードCが管理装置3のカードリーダ31に読み取られ、管理装置3から入出情報を受信した場合(ステップS21)、エレベータ制御装置2の運転制御部22dは、入出情報に含まれる児童U2の下校時刻に基づいて、児童U2が建物20の玄関階12xに到着する予定時刻を推定する(ステップS22)。詳しくは、運転制御部22dは、上記下校時刻に、児童U2の平均的な下校所要時間を加算した時間を到着予定時刻(児童U2が建物20の玄関階12xに到着する予定時刻)として算出する。なお、この到着予定時刻は、保護者U1が任意に設定しておくことでもよい。
【0058】
ここで、児童U2のための下校運転モードとして、運転制御部22dは、エレベータ11a~11cの運行情報に基づいて、上記到着予定時刻に玄関階12xに待機可能なエレベータを選出し、その選出されたエレベータを上記到着予定時刻に玄関階12xに一定の時間だけ待機させる(ステップS23)。以下では、エレベータ11aが選出されたものとして説明する。
【0059】
なお、上記選出されたエレベータ11aが玄関階12xに待機している間に、児童U2以外の利用者が玄関階12xで乗場呼びを登録した場合、当該エレベータ11aに対する割当てを禁止し、他のエレベータを玄関階12xに応答させるか、あるいは、上記選出されたエレベータ11aが児童U2以外の利用者を乗せて運転サービスを終えた後、玄関階12xに引き戻して、待機させることが好ましい。
【0060】
児童U2の乗場呼びか、児童U2以外の利用者の乗場呼びかの判断は、玄関階12xに設置されたカードリーダ21xの状態から判断できる。つまり、カードリーダ21xに児童U2のIDカードC1がかざされた直後に乗場呼びが登録された場合には児童U2の乗場呼びと判断でき、そうでない場合には他の利用者の乗場呼びと判断できる。
【0061】
児童U2が建物20の玄関階12xに到着すると、監視部22bは、玄関階12xに設置されたカードリーダ21xによって児童U2のIDカードCが読み取られることを待つ(ステップS24)。児童U2のIDカードCが読み取られると(ステップS25のYES)、エレベータ制御装置2の制御部22に備えられた運転制御部22dは、呼び登録の処理を実行する(ステップS26)。
【0062】
詳しくは、図示せぬ乗場呼びボタンの操作によって乗場呼びが登録されると、運転制御部22dは、上記ステップS23で玄関階12xに待機させていたエレベータ11aを戸開して、児童U2を乗せる。また、エレベータ11aのかご内に設置されたかご操作盤上の行先階ボタンの操作によって、行先階(住居階12a)が登録されると、運転制御部22dは、エレベータ11aをその行先階に向けて出発させる。ここで、カードリーダ21xによって、児童U2のIDカードCが読み取られたときに、上記エレベータ利用時刻が定まる。
【0063】
なお、行先階を登録する場合に、例えばIDカードC内に、予め児童U2の下校時の行先階(住居階12a)を記録しておくことで、このIDカードCを用いて行先階の登録を行う構成としてもよい。
【0064】
エレベータ11aが行先階(住居階12a)に到着すると(ステップS27のYES)、記録処理部22aは、児童U2のエレベータ利用情報を記憶部23に児童U2の識別情報と関連付けて記録する(ステップS28)。
【0065】
図7に示すように、上記ステップS28で記録された児童U2のエレベータ利用情報には、日付、時刻(エレベータ利用時刻)、物件名(建物名)、乗車階及び行先階の情報が含まれる。例えば、2022年7月25日の14時40分に、児童U2がBマンションの1階(玄関階12x)において、カードリーダ21xにIDカードCをかざし、1階から7階(住居階12a)に到着した場合、図7の2行目に示すような情報が記録される。
【0066】
また、監視部22bは、入出情報に含まれる下校時刻と、エレベータ利用情報に含まれるエレベータ利用時刻との時間差を、児童U2の下校所要時間T2として算出し、この下校所要時間T2を児童U2の識別情報と関連付けて記憶部23に記憶する(ステップS29)。この下校所要時間T2は、児童U2の関係者に必要に応じて通知される(図14図15参照)。
【0067】
一方、玄関階12xに設置されたカードリーダ21aによって、児童U2のIDカードCが読み取られなかった(すなわち、児童U2がエレベータを利用していない)場合(ステップS25のNO)、監視部24bは、入出情報に含まれる下校時刻から、所定の第2見守り時間Tbが経過したか否かを判定する(ステップS30)。なお、「第2見守り時間Tb」は、保護者U1によって任意に設定された時間(例えば30分)であり、記憶部23に記憶されている。第2見守り時間Tbは、児童U2が建物30から下校してから、通常のルートで玄関階12xに到着して建物20のエレベータを利用するまでの平均的な時間を基準にして定められる。第2見守り時間Tbは、第1見守り時間Taと同じ時間であっても、異なる時間であってもよい。
【0068】
上記第2見守り時間Tbの間に、管理装置3から入出情報を受信してから、カードリーダ21xによってIDカードCが読み取られず、上記第2見守り時間Tbが経過したことは、図11に示した手順(1)~(2)の間に何らかの異常があり、児童U2が建物20のエレベータを利用していないこと、つまり、通常通りに帰宅していないことを意味する。
【0069】
従って、監視部22bは、下校時に上記下校時刻から、第2見守り時間Tbが経過しても児童U2のIDカードCが読み取られなかった場合(ステップS30のYES)、通知部24cは、保護者端末4及び管理装置3に対して異常通知を送信する(ステップS31)。
【0070】
次に、図12(b)に示す管理装置3の処理を説明する。
建物30に設置されたカードリーダ31によって、建物30から下校した児童U2のIDカードCが読み取られると(ステップA21のYES)、制御部32に備えられた送信部31bは、当該読み取られた時刻(下校時刻)を含む入出情報を、エレベータ制御装置2に送信する(ステップA22)。さらに、記録処理部32aは、児童U2の入出情報を記憶部25に記録する(ステップA23)。
【0071】
なお、この時記録される入出情報は、図8に示すような日付、下校時刻、カードリーダ31の設置場所の情報を含む。例えば、2022年7月25日の14時30分に、児童U2がC小学校の1番ゲートを通過した場合、図8の2行目に示すような情報が児童U2の入出情報として記録される。
【0072】
ここで、エレベータ制御装置2から異常通知を受信した場合(ステップA24のYES)、送信部32bは、当該異常通知を保護者端末4及び学校端末6に送信して、処理を終了する。なお、管理装置3は、再びステップA21に戻り、処理を繰り返す。
【0073】
保護者端末4の表示処理部41aは、異常通知を受信すると、表示部42に下校時に異常があった旨を所定の形式で表示する。学校端末6についても同様であり、下校時に異常があった旨が表示される。保護者端末4及び学校端末6に表示される異常通知は、図13に示すように、児童U2が建物30から下校してから第2見守り時間Tbが経過している情報を含む。
【0074】
なお、図13の例では、児童U2が第2見守り時間Tb以内に帰宅しなかった旨を通知したが、図14のように、第2見守り時間Tbを経過して帰宅した時に、その登校に要した時間(下校所要時間T2)を通知するようにしてもよい。
【0075】
また、図6図14では、児童U2に異常があった場合に通知をするが、登校所要時間T1あるいは下校所要時間T2が算出されたときに、当該登校所要時間T1あるいは下校所要時間T2を通知することでも良い。この場合、図15のように、エレベータ利用時刻及び登校時刻とともに登校所要時間T1が表示され、下校時刻及びエレベータ利用時刻とともに下校所要時間T2が表示される。図15のように登校所要時間T1及び下校所要時間T2を毎回通知することで、第1見守り時間Ta及び第2見守り時間Tbを予め設定しておかなくても、異常を把握することができる。なお、図9図10図13図14図15に示す表示の方法は一例であり、これらを組み合わせて表示されてもよい。
【0076】
ここで、一般的には、カードリーダ31から建物30に通う児童U2に配布されたIDカードCを読み取り、当該読み取られた時刻を、児童U2の登下校の時刻として、当該IDカードCを所持する児童U2の保護者U1に通知するシステムが知られている。このようなシステムによれば、保護者U1は、児童U2が建物30に登校したこと、そして、建物30から下校したことを把握することができる。
【0077】
しかし、登下校の時刻を通知するのみでは、建物30を起点とした登校時刻と下校時刻しかわからないため、例えば登校時刻の通知を受けなかった場合に、児童U2が自宅マンションから出てから建物30に行っていないのか、あるいは、児童U2が自宅のマンションを出ていないのかがわからない。また、下校時刻の通知を受けた場合に、児童U2が自宅のマンションにいつ着いたのかがわからない。
【0078】
これに対し、本実施形態の見守りシステムによれば、児童U2の登校先の建物30に設置された管理装置3から得られる登下校の時刻(入出情報)と、児童U2が住んでいる建物20に設置されたエレベータの利用情報とを組み合わせることによって、児童U2の登下校の動向を詳しく把握することができ、児童U2が登校していない場合や、帰宅していない場合などに、児童U2の関係者にすぐに知らせることができる。
【0079】
具体的には、児童U2(見守り対象者)が建物20のエレベータを利用してから所定時間内に建物30に登校していない場合、あるいは、児童U2が学校から下校してから、所定時間内に建物20のエレベータを利用していない場合に、保護者端末4及び学校端末6にメール等で通知される。したがって、保護者たちは、この通知を受けて、児童U2を探しにいくなどの行動を速やかに取ることができる。
【0080】
なお、上述した実施形態では、児童U2が住む建物と学校の建物との間を移動するときの動向を例にして説明したが、学校に限らず、例えば塾や習い事で使われる建物であっても、その建物に登下校時刻通知システムと同様のシステムが設置されていれば、エレベータシステムと連携させることで、児童の動向を見守ることができる。
【0081】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。
図16は、第2実施形態に係る見守りシステム1の構成の一例を示す図であり、サーバ装置7を用いて、複数の見守り対象者を一元管理した構成が示されている。ここでは、一例として、住居が異なる二人の児童U2-1,U2-2を見守り対象者とした構成が示されているが、さらに多くの見守り対象者が存在してもよい。図中の符号20-1は、児童U2-1が住んでいる住宅マンション等の建物である。図中の符号20-2は、児童U2-2が住んでいる住宅マンション等の建物である。符号30は、児童U2-1及び児童U2-2が通う学校等の建物である。児童U2-1,U2-2は、それぞれにIDカードC1、C2を所持している。IDカードC1には、少なくとも児童U2-1を識別するための識別情報が記録されている。IDカードC2には、少なくとも児童U2-2を識別するための識別情報が記録されている。
【0082】
建物20-1には、エレベータ11-1a~11-1cが設置されている。なお、建物20-1に設置されたエレベータの台数は、1以上であればよい。建物20-1には、エレベータ11-1a~11-1cの運転を制御するためのエレベータ制御装置2-1が設置されている。また、建物20-1の各階12-1a~12-1xには、それぞれにカードリーダ21-1a~21-1xが設置されており、これらのカードリーダ21-1a~21-1xはエレベータ制御装置2-1に無線又は有線で接続されている。
【0083】
建物20-2の構成についても、建物20-1と同様であり、エレベータ11-2a~11-2cの運転を制御するためのエレベータ制御装置2-2が設置されている。その他の構成は建物20-1と基本的には同様であるため、説明を省略する。建物30の構成は、図1を用いて説明した第1実施形態と同様である。建物30には、学校側のシステムの1つとして、児童の登下校の時刻を通知する登下校時刻通知システムが構築されている。
【0084】
サーバ装置7は、エレベータ制御装置2-1,2-2とは独立して設けられ、エレベータ制御装置2-1,2-2の動作を物件毎に管理するコンピュータシステムであり、通信ネットワーク8を介してエレベータ制御装置2-1,2-2、登下校時刻通知システムの管理装置3と通信可能に接続されている。サーバ装置7は、上記第1実施形態でエレベータ制御装置2に備えられていた見守りシステムを実現するための機能と同様の機能が備えられている。
【0085】
サーバ装置7は、エレベータ制御装置2-1,2-2から児童U2-1、U2-2のエレベータ利用情報、管理装置3から児童U2-1、U2-2の登下校に関する情報(入出情報)を取得することで、児童U2-1、U2-2の動向を個別に監視し、登下校時に異常を検出したときに関係者に通知する機能を有する。関係者とは、児童U2-1の場合には保護者U1-1、児童U2-2の場合には保護者U1-2である。また、学校の教員等も関係者に含まれる。
【0086】
図17は、第2実施形態に係るサーバ装置7の機能構成の一例を示す図である。サーバ装置7は、制御部71、記憶部72、通信部73を備える。
【0087】
制御部71は、プログラムの起動により、見守りシステム1に必要な各種処理を実行する部分であり、ここでは記録処理部71a、監視部71b、通知部71cを備える。なお、制御部71の具体的な処理については、図18図19を参照して後述し、ここでは簡単に説明する。
【0088】
記録処理部71aは、エレベータ制御装置2-1、2-2から送信される各児童U2-1、U2-2のエレベータ利用情報を児童U2-1、U2-2の識別情報に関連付けて記憶部72に記録する。また、記録処理部71aは、管理装置3から各児童U2-1、U2-2の入出情報を受信し、各児童U2-1、U2-2毎に記憶部72に記録する。
【0089】
監視部71bは、記憶部72に記憶された各児童U2-1、U2-2のエレベータ利用情報と入出情報とに基づいて、各児童U2-1、U2-2の動向を監視する。通知部22cは、予め設定された第1見守り時間Ta1内に、児童U2-1が建物20-1のエレベータを利用してから建物30に登校(入館)していない場合、あるいは、予め設定された第2見守り時間Tb2内に、建物30から下校(退館)してから建物20-1のエレベータを利用していない場合に、児童U2-1の保護者U1-1及び学校の教員に、異常事態である旨を通知する(異常通知)。具体的には、通知部22cは、児童U2-1の保護者U1-1が持つ保護者端末4-1及び学校端末6に、異常事態である旨を通知する。
【0090】
児童U2-2が登校時も同様であり、通知部22cは、予め設定された第1見守り時間Ta2内に、児童U2-2が建物20-2のエレベータを利用してから建物30に登校(入館)していない場合、あるいは、予め設定された第2見守り時間Tb2内に、建物30から下校(退館)してから建物20-2のエレベータを利用していない場合に、児童U2-2の保護者U1-2及び学校の教員に、異常事態である旨を通知する。
【0091】
記憶部72は、上記したエレベータ利用情報及び入出情報を記憶する。加えて、児童U2-1と対応する保護者U1-1の保護者端末4-1の連絡先、及び児童U2-2と対応する保護者U1-2の保護者端末4-2の連絡先を記憶する。通信部73は、エレベータ制御装置2-1、エレベータ制御装置2-2、管理装置3、保護者端末4-1、保護者端末4-2との通信処理を行う。
【0092】
エレベータ制御装置2-1は、建物20-1の各階に設置されたカードリーダ21-1a~21-1xのいずれかを通じて児童U2-1のIDカードC1を読み取った時刻を含むエレベータ利用情報を児童U2-1の識別情報と共にサーバ装置7に送信する機能を有する。エレベータ制御装置2-2についても同様であり、建物20-2の各階に設置されたカードリーダ21-1a~21-1xのいずれかを通じて児童U2-2のIDカードC2を読み取った時刻を含むエレベータ利用情報を児童U2-2の識別情報と共にサーバ装置7に送信する機能を有する。図7に示したように、エレベータ利用情報には、日付、時刻(エレベータ利用時刻)、物件名(建物名)、乗車階及び行先階の情報を含む。
【0093】
なお、児童U2-1に対して設定された登校時の第1見守り時間Ta1と下校時の第2見守り時間Tb1は、例えば保護者U1-1が持つ保護者端末4-1からサーバ装置7に送られて、記憶部72に児童U2-1の識別情報と関連付けられて記憶されている。児童U2-2に対して設定された登校時の第1見守り時間Ta2と下校時の第2見守り時間Tb2についても同様であり、例えば保護者U1-2が持つ保護者端末4-2からサーバ装置7に送られて、記憶部72に児童U2-2の識別情報と関連付けられて記憶されている。
【0094】
また、管理装置3は、図3に示した構成と同様である。ただし、送信部32bについては、児童U2-1,U2-2の入出情報をサーバ装置7に送信する点で異なる。保護者端末4-1、4-2、及び学校端末6の構成は、図4に示した構成と同様である。
【0095】
以下、図18のフローチャートを参照して、児童U2-1の登校時におけるサーバ装置7の処理について説明する。
まず、サーバ装置7は、エレベータ制御装置2-1,2-2からエレベータ利用情報を受信すると(ステップS41)、エレベータ利用情報に含まれる物件情報に基づいて、エレベータ利用情報が建物20-1及び建物20-2の何れから得られたものかを特定するとともに、当該エレベータ利用情報に付加された識別情報に基づいて、見守り対象とする児童を特定する(ステップS42)。
【0096】
例えば、エレベータ利用情報に児童U2-1の識別情報が付加されていた場合には、見守り対象は児童U2-1であり、当該エレベータ利用情報は、児童U2-1が建物20-1内のエレベータ11-1a,11-1b,11-1cのいずれかを利用した情報であることがわかる。以下では、建物20-1に住む児童U2-1が見守り対象として特定された場合を想定して説明する。
【0097】
記録処理部71aは、児童U2-1のエレベータ利用情報を児童U2-1の識別情報と関連付けて記憶部72に記憶する(ステップS43)。図19に示すように、記録処理部71aは、児童U2-1、U2-2毎にエレベータ利用情報を個別で記録する構成になっている。
【0098】
ここで、監視部71bは、上記ステップS42で特定された児童U2-1が登校したときに管理装置3から送られて来る児童U2-1の入出情報(登校時刻)を待つ(ステップS44)。
【0099】
管理装置3から児童U2-1の入出情報を受信した場合(ステップS45のYES)、監視部71bは、児童U2-1のエレベータ利用情報に含まれる時刻(エレベータ利用時刻)と、入出情報に含まれる登校時刻との時間差を、児童U2-1の登校所要時間T1-1として算出する。そして、監視部71bは、算出した登校所要時間T1-1を児童U2-1の識別情報と関連付けて記憶部23に記憶する(ステップS46)。この登校所要時間T1-1は、児童U2-1の関係者に必要に応じて通知される(図10図15参照)。
【0100】
一方、管理装置3から児童U2-1の入出情報を受信しなかった場合(ステップS45のNO)、監視部71bは、児童U2-1のエレベータ利用時刻から予め設定された第1見守り時間Ta1が経過したか否かを判定する(ステップS47)。児童U2-1がエレベータを利用してから第1見守り時間Ta1が経過している場合(ステップS47のYES)、通知部71cは、児童U2-1の保護者U1が持つ保護者端末4-1及び学校端末6に対して異常通知を送信する(ステップS48)。
【0101】
下校時についても同様であり、サーバ装置7は、エレベータ11-1aから得られる児童U2-1のエレベータ利用情報(エレベータ利用時刻)と、児童U2-1の下校時に管理装置3から得られる入出情報(下校時刻)とに基づいて、児童U2-1が予め設定された第2見守り時間Tb1以内に帰宅していないと判断された場合に、児童U2-1の保護者U1が持つ保護者端末4-1及び学校端末6に対して異常通知がなされる。
【0102】
なお、ここでは児童U2-1に着目して説明したが、児童U2-2についても同様であり、登校時あるいは下校時に予め設定された時間(第1見守り時間Ta2又は第2見守り時間Tb2)内に登校あるいは帰宅していない場合に児童U2-2の保護者U1-2が持つ保護者端末4-2及び学校端末6に対して異常通知がなされる。
【0103】
このように第2実施形態によれば、サーバ装置7を用いて、住居の異なる複数の児童U2-1,U2-2を下校時の動向を監視することでも、異常があった場合にすぐに関係者に通知することができる。また、サーバ装置7で監視する構成とすることで、各物件のエレベータ制御装置2-1,2-2側の処理負担を軽減することができる。
【0104】
なお、上述した実施形態では、児童が住む建物と学校の建物との間の動向を監視する場合を想定したが、例えば児童が電車を利用して学校に通う場合に、駅の改札システムと連携して、児童が自宅の最寄り駅と学校の最寄り駅を通過した時刻を取得する構成とすれば、児童の動向を電車の通学経路を含めてさらに細かく監視することが可能である。
【0105】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、エレベータを利用して登下校を行う児童などの見守り対象者の動向を一定の行動範囲で見守ることのできる見守りシステムを提供することができる。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0107】
1…見守りシステム、2…エレベータ制御装置、3…管理装置、4…保護者端末、5…通信ネットワーク、6…学校端末、7…サーバ装置、11a~11c…エレベータ、12a…住居階、12x…玄関階、21a~21x…カードリーダ、22…制御部、22a…記録処理部、22b…監視部、22c…通知部、22d…運転制御部、23…記憶部、24…通信部、24b…監視部、24c…通知部、31…カードリーダ、32…制御部、32a…記録処理部、32b…送信部、33…記憶部、34…通信部、41…制御部、41a…表示処理部、42…表示部、42a…表示処理部、43…通信部、44…記憶部、71…制御部、71a…記録処理部、71b…監視部、71c…通知部、72…記憶部、73…通信部、T1…登校所要時間、T2…下校所要時間、Ta、Ta1、Ta2…第1見守り時間、Tb、Tb1、Tb2…第2見守り時間、U1、U1-1、U1-2…保護者、U2、U2-1、U2-2…児童。
【要約】
【課題】エレベータを利用して登下校を行う児童などの見守り対象者の動向を一定の行動範囲で見守ることのできる見守りシステムを提供する。
【解決手段】一実施形態に係る見守りシステムは、エレベータ制御装置と、入出情報を管理する管理装置と、が通信ネットワークを介して接続される。エレベータ制御装置は、見守り対象者がエレベータを利用した時刻を含むエレベータ利用情報を記録する記録処理手段と、エレベータ利用情報と、管理装置から得られる入出情報とに基づいて、見守り対象者の動向を監視する監視手段と、予め設定された見守り時間内に、見守り対象者が第1の建物のエレベータを利用してから第2の建物に入館していない場合、あるいは、見守り対象者が第2の建物から退館してから第1の建物のエレベータを利用していない場合に、見守り対象者の関係者が持つ第1端末装置に異常事態である旨を通知する通知手段とを具備する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19