(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
B66B 23/12 20060101AFI20240930BHJP
B66B 23/14 20060101ALI20240930BHJP
B66B 29/02 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
B66B23/12 Z
B66B23/14 A
B66B29/02 B
(21)【出願番号】P 2023119785
(22)【出願日】2023-07-24
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳永 豊
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-095255(JP,A)
【文献】特開2022-148628(JP,A)
【文献】特開平03-297794(JP,A)
【文献】特開平07-330268(JP,A)
【文献】特開平08-157174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋の上階と下階に跨がって設けられたトラスと、前記トラス内を無端状に連結されたチェーンにより循環移動する複数の踏段と、を有し、前記踏段が乗客を搬送する区間と乗客を搬送しない区間とを交互に通って前記トラスの上階側と下階側との間を循環移動する乗客コンベアにおいて、
前記踏段は、乗客が乗るクリート体と、前記クリート体における踏段移動方向の一方側の端部から下方に延設されたライザ体と、前記クリート体及び前記ライザ体を支持する踏段フレームと、ローラと、前記踏段フレームにおける踏段移動方向の一方側の端部に設けられ前記ローラを支持するローラ支持部とを有し、
前記トラスに設けられ、前記ローラが走行するガイドレールに沿って設けられた給電装置と、
前記ローラ支持部における踏段幅方向の内側に
前記給電装置と対向するように設けられ、前記給電装置から非接触で電力が供給される受電装置と、
前記受電装置から供給された電力によって動作する動作装置と、
を備えた乗客コンベア。
【請求項2】
前記乗客を搬送する区間は、上階側端部及び下階側端部に設けられ、前記踏段が水平方向へ移動する水平部と、上階側端部及び下階側端部の前記水平部の間に設けられ、水平方向に対して傾斜する方向へ前記踏段が直線移動する中間傾斜部と、前記水平部と前記中間傾斜部との間に設けられ前記踏段が曲線状に移動する曲線部とを有し、
前記給電装置が前記曲線部に設けられ、
前記受電装置に設けられたコイルの軸方向が上下方向に対して傾斜するように前記受電装置が前記ローラ支持部に設けられた、請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記動作装置は、前記クリート体の踏段幅方向の両端部に設けられた照明装置である、請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
複数の前記給電装置が、前記ガイドレールの延びる方向に間隔をあけて設けられた、請求項3に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
電線を使用せずに電力を踏段に送る非接触給電を利用した乗客コンベアが提案されている。例えば、トラスに設けられた給電装置から踏段に設けられた受電装置に非接触で電力を供給して、踏段に設けられた発光体を動作させる乗客コンベアが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗客コンベアにおいて非接触給電を利用する場合、受電装置と給電装置との間に例えばスカートガードのような磁性材料が存在すると、給電効率が大幅に低下したり、磁性材料が発熱したりするという問題があった。そこで、本発明は上記の事情に鑑み、給電装置から非接触で電力が供給される受電装置を踏段に備えた乗客コンベアにおいて、給電効率の低下や発熱を抑えることができる乗客コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る乗客コンベアは、建屋の上階と下階に跨がって設けられたトラスと、前記トラス内を無端状に連結されたチェーンにより循環移動する複数の踏段と、を有し、前記踏段が乗客を搬送する区間と乗客を搬送しない区間とを交互に通って前記トラスの上階側と下階側との間を循環移動する乗客コンベアにおいて、前記踏段は、乗客が乗るクリート体と、前記クリート体における踏段移動方向の一方側の端部から下方に延設されたライザ体と、前記クリート体及び前記ライザ体を支持する踏段フレームと、ローラと、前記踏段フレームにおける踏段移動方向の一方側の端部に設けられ前記ローラを支持するローラ支持部とを有し、前記トラスに設けられ、前記ローラが走行するガイドレールに沿って設けられた給電装置と、前記ローラ支持部における踏段幅方向の内側に前記給電装置と対向するように設けられ、前記給電装置から非接触で電力が供給される受電装置と、前記受電装置から供給された電力によって動作する動作装置と、を備えた乗客コンベア。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一実施形態の乗客コンベアを概略的に示す側面図
【
図3】(a)は踏段の平面図、(b)は踏段の背面図
【
図6】上階側水平部から中間傾斜部までの間を移動する踏段を示す図
【
図7】下階側水平部から中間傾斜部までの間を移動する踏段を示す図
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態の乗客コンベア1について、
図1~
図8を参照して説明する。本実施形態では、乗客コンベア1として建屋の上階Fuと下階Fdとの間で乗客を搬送するエスカレータについて説明する。
【0008】
以下の説明において、トラス2の長手方向を前後方向、幅方向を左右方向ということがある。また、前後方向や左右方向は下階Fdから上階Fuを見たときの方向を示し、上階
側が前側、下階側が後側であるものとする。
【0009】
(1)乗客コンベア1
図1に示すように、乗客コンベア1の枠組みであるトラス2が、建屋の上階Fuと下階Fdに跨がって支持アングル3,4を用いて支持されている。トラス2内には、無端状の踏段チェーン11によって連結された複数の踏段30が設けられている。
【0010】
トラス2は、前後方向(踏段30の移動方向)に延びる主枠部材22が、上下及び左右に4本設けられている。これら4本の主枠部材22には、上側の主枠部材22と下側の主枠部材22とを連結する左右一対の縦枠部材23が設けられている。
図1では主枠部材22の前端部と後端部における縦枠部材23のみを示し、他は省略しているが、縦枠部材23は乗客コンベアの前後方向に沿って所定間隔毎に設けられている。また、左右一対の縦枠部材23は、左右方向に沿って延びる横梁部材23aによって連結されている(
図5参照)。さらに、トラス2の底面には、不図示の底枠部材が左右方向に設けられている。
【0011】
乗客コンベア1は、上階側と下階側を繋ぐように設けられるため、主枠部材22の前後方向の中央部は水平方向に対して所定角度(例えば、30°)傾斜して取り付けられ、縦枠部材23は鉛直方向に対し同じ角度(上記の場合30°)傾斜して取り付けられている。
【0012】
トラス2の上端部にある上階側の機械室5内部には、踏段30を走行させる駆動装置6と、左右一対の駆動スプロケット7と、左右一対の手摺ベルトスプロケット(不図示)と、駆動装置6や後述する給電装置41,42などを制御する制御部16が設けられている。
【0013】
駆動装置6は、誘導電動機(インダクションモータ)よりなるモータMと、減速機と、この減速機の出力軸に取り付けられた出力スプロケットと、この出力スプロケットにより駆動する駆動チェーン8と、モータの回転を停止させ、かつ、停止状態を保持するディスクブレーキとを有している。この駆動チェーン8により左右一対の駆動スプロケット7が回転する。左右一対の駆動スプロケット7と左右一対の手摺ベルトスプロケットとは、不図示の連結ベルトにより連結されて同期して回転する。
【0014】
トラス2の下端部にある下階側の機械室9内部には、左右一対の従動スプロケット10が設けられている。上階側の駆動スプロケット7と下階側の従動スプロケット10との間には、左右一対の無端の踏段チェーン11が掛け渡されている。
【0015】
トラス2の左右両側には、左右一対のスカートガード12と左右一対の欄干13とが立設されている。欄干13の上部に手摺レール14が設けられ、この手摺レール14に沿って手摺ベルト15が移動する。手摺ベルト15は、欄干13の周縁部を踏段30と同期して循環移動するものであり、乗口側でスカートガード12内より外部に現れ、降口側でスカートガード12内に入り込み、スカートガード12内部を通って乗口側へ移動する。
【0016】
図1に示すように、上階側の乗降口17には機械室5の上面を覆うように乗降板19が設けられ、乗降板19の先端に複数の櫛歯が等間隔で突出するコム24が設けられている。下階側の乗降口18には機械室9の上面を覆うように乗降板20が設けられ、乗降板20の先端に複数の櫛歯が等間隔で突出するコム25が設けられている。コム24,25に設けられた櫛歯は、先端が下方へ屈曲し、端部が丸みをおびて細くなっている。コム24,25は、櫛歯が踏段30のクリート体32に設けられたクリート突条と噛み合うことで、踏段30上の乗客の足や異物等を乗降板19,20上にすくい上げ、乗客の足や異物等が踏段30と乗降板19,20との間に挟まれることを防止している。
【0017】
(2)踏段30
次に、踏段30について
図2及び
図3を参照して説明する。踏段30は、乗客が乗るクリート体32と、クリート体32における踏段移動方向の一方側の端部(下階側の端部)から一体に延設され、下方の踏段30との段差を塞ぐライザ体33と、クリート体32及びライザ体33を支持する左右一対の踏段フレーム31とを備える。踏段フレーム31とクリート体32とライザ体33とは、アルミダイカストで一体に形成されていてもよい。
【0018】
踏段30において乗客が搭乗するクリート体32の表面には、踏段30の移動方向に沿って延びる複数本のクリート突条32aが所定間隔をあけて互いに平行に設けられ、隣接するクリート突条32aの間にクリート溝32bが形成されている。
【0019】
クリート体32の踏段幅方向の両端部には、上方へ光を放出する照明装置38を有するデマケーション部32cが設けられている。デマケーション部32cに設けられた複数本のクリート突条32aは、デマケーション部32c以外の部分に設けられたクリート突条32aと比べて上方へ高く突出し、異なる色彩(例えば黄色)に着色されている。
【0020】
踏段フレーム31における踏段移動方向の一方側(下階側)には、踏段フレーム31と一体に形成されたローラ支持部36が踏段30の移動方向後方に向かって突出している。ローラ支持部36における踏段幅方向の外側にはベアリングを介して左右一対の後踏段ローラ37が設けられている。また、ローラ支持部36における踏段幅方向の内側には受電装置40が設けられている。
【0021】
踏段フレーム31における踏段移動方向の他方側(上階側)には、踏段30の幅方向外方へ突出する支軸34が設けられている。支軸34は、踏段30のクリート体32やライザ体33より幅方向外方において、ベアリングを介して左右一対の前踏段ローラ35を回転自在に支持する。また、支軸34には無端状の踏段チェーン11が取り付けられている。
【0022】
踏段30の幅方向の両側には、支持部材を介してトラス2に固定された搬送ガイドレール50,52及び非搬送ガイドレール60,62が踏段30の進行方向に沿って配設されている。搬送ガイドレール50,52及び非搬送ガイドレール60,62は、踏段30に設けられた前踏段ローラ35及び後踏段ローラ37が転動する転動面を備え、前踏段ローラ35及び後踏段ローラ37を案内する。
【0023】
(3)搬送ガイドレール50,52及び非搬送ガイドレール60,62
図1及び
図4に示すように、搬送ガイドレール50,52は、乗客を搬送する区間Rを移動する踏段30の前踏段ローラ35を転動可能に支持する前搬送ガイドレール50と、乗客を搬送する区間Rを移動する踏段30の後踏段ローラ37を転動可能に支持する後搬送ガイドレール52とから構成されている。
【0024】
非搬送ガイドレール60,62は、乗客を搬送する区間R以外の乗客を搬送しない区間Sを移動する踏段30の前踏段ローラ35を転動可能に支持する前非搬送ガイドレール60と、乗客を搬送しない区間Sを移動する踏段30の後踏段ローラ37を転動可能に支持する後非搬送ガイドレール62とから構成されている。なお、上階側の機械室5において踏段30の上下が反転するときは、前踏段ローラ35の踏段チェーン11が、回転する駆動スプロケット7に係合して上下が反転し、後踏段ローラ37は、半円型の後非搬送ガイドレール62を転動する。下階側の機械室9において踏段30の上下が反転するときは、前踏段ローラ35の踏段チェーン11が、回転する従動スプロケット10に係合して上下が反転し、後踏段ローラ37は、半円型の後非搬送ガイドレール62を転動する。
【0025】
ここで、乗客を搬送する区間Rとは、上階の乗降口17に設けたコム24と下階の乗降口18に設けたコム25との間において、踏段30のクリート体32が外部へ露出する区間のことである。乗客を搬送する区間Rは、上階側端部に設けられ踏段30が水平方向へ移動する上階側水平部R1と、下階側端部に設けられ踏段30が水平方向へ移動する下階側水平部R2と、上階側水平部R1及び下階側水平部R2の間に設けられ水平方向に対して傾斜する方向へ踏段30が直線移動する中間傾斜部R3と、上階側水平部R1と中間傾斜部R3との間に設けられ踏段30が曲線状に移動する上階側曲線部R4と、下階側水平部R2と中間傾斜部R3との間に設けられ踏段30が曲線状に移動する下階側曲線部R5とからなる。
【0026】
また、乗客を搬送しない区間Sとは、一方の乗降口に設けられたコム(例えば、上階側の乗降口17に設けられたコム24)から乗降口下方のトラス2の内部に進入し、乗客を搬送する区間Rを移動する踏段30の下方を通って、他方の乗降口に設けられたコム(例えば、下階側の乗降口18に設けられたコム25)からトラス2の外部へ進出するまでの区間のことである。
【0027】
乗客コンベア1では、駆動装置6から回転力を受けた駆動スプロケット7の回転によって、踏段チェーン11が駆動スプロケット7と従動スプロケット10の間を循環移動する。踏段チェーン11の循環移動に伴って、搬送ガイドレール50,52及び非搬送ガイドレール60,62は、踏段30が乗客を搬送する区間Rと乗客を搬送しない区間Sとを交互に通ってトラス2の上階側と下階側との間を循環移動するように、踏段30に設けられた前踏段ローラ35及び後踏段ローラ37を案内する。
【0028】
(4)受電装置40及び給電装置41,42
次に、受電装置40及び給電装置41,42について
図5~
図8を参照して説明する。
【0029】
受電装置40は、非接触式電力伝送用の受電コイル40aを有している。受電コイル40aは、後述する送電コイル41a,42aに発生した交番磁束を受けて電磁誘導の原理により起電力を生じる(
図8参照)。
【0030】
受電装置40は、デマケーション部32cに設けられた照明装置38と電気接続されており、受電コイル40aの起電力を照明装置38に供給することで、照明装置38を動作させてデマケーション部32cから上方へ光を放出させる。
【0031】
受電装置40は、上階側曲線部R4や下階側曲線部R5において、左右の後搬送ガイドレール52がなす面(後踏段ローラ37が転動する転動面)に対する受電コイル40aの軸方向の角度が90°に近づくように、受電コイル40aの軸方向を上下方向(鉛直方向)に対して傾斜させてローラ支持部36に取り付けられている。受電コイル40aの軸方向が上下方向に対してなす角度は例えば30°以下であり、10°以上20°以下であることが好ましい。
【0032】
給電装置41,42は、上階側水平部R1及び上階側曲線部R4に設けられた給電装置41と、下階側水平部R2及び下階側曲線部R5に設けられた給電装置42とから構成されている。
【0033】
図6に示すように、給電装置41は、上階側水平部R1及び上階側曲線部R4を移動する踏段30に設けられた受電装置40と上下方向に対向するように後搬送ガイドレール52に沿って設けられている。給電装置41は、後搬送ガイドレール52に沿って延びる長円状の送電コイル41aを備える。すなわち、長円状に巻回されたコイルの長軸方向が後搬送ガイドレール52に沿って前後方向に配され、短軸方向が左右方向に配されている。送電コイル41aは、受電コイル40aと磁気的に結合される位置に設けられている。具体的には、送電コイル41aの軸方向は後踏段ローラ37が転動する搬送ガイドレール52の転動面の法線方向に一致するようにトラス2内に設けられ、受電コイル40aと対面する位置に送電コイル41aが配置されている。
【0034】
給電装置41は、送電コイル41aから交番磁界を出力することにより、上階側水平部R1及び上階側曲線部R4を移動する踏段30に設けられた受電装置40の受電コイル40aに電力を供給する。
【0035】
図7に示すように、給電装置42は、下階側水平部R2及び下階側曲線部R5を移動する踏段30に設けられた受電装置40と上下方向に対向するように後搬送ガイドレール52に沿って設けられている。給電装置42は、後搬送ガイドレール52に沿って延びる長円状の送電コイル42aを備える。すなわち、長円状に巻回されたコイルの長軸方向が後搬送ガイドレール52に沿って前後方向に配され、短軸方向が左右方向に配されている。送電コイル42aは、受電コイル40aと磁気的に結合される位置に設けられている。具体的には、送電コイル42aの軸方向は後踏段ローラ37が転動する搬送ガイドレール52の転動面の法線方向に一致するようにトラス2内に設けられ、受電コイル40aと対面する位置に送電コイル42aが配置されている。
【0036】
給電装置42は、送電コイル42aから交番磁界を出力することにより、下階側水平部R2及び下階側曲線部R5を移動する踏段30に設けられた受電装置40の受電コイル40aに電力を供給する。
【0037】
(5)乗客コンベア1の制御構成
乗客コンベア1の制御構成について
図8を参照して説明する。
【0038】
制御部16には、インバータ回路161、電源回生ユニット162、リアクトル163、ノイズフィルタ164が接続されている。不図示の三相交流電源から供給された三相の交流電源は、高周波対策として設けられたノイズフィルタ164及びリアクトル163を経て、電源回生ユニット162に至る。電源回生ユニット162は、乗客コンベア1が下降運転した場合に発生するエネルギーを三相交流電源に回生する。電源回生ユニット162に接続されたインバータ回路161は、制御部16からの駆動信号に基づいて、駆動装置6のモータMをインバータ制御するものであり、運転速度、上昇又は下降の方向を変更する。
【0039】
また、制御部16は、給電装置41の送電コイル41a及び給電装置42の送電コイル42aが接続されている。制御部16は、乗客コンベア1の運転中に送電コイル41a、42aに電力を供給して交番磁界を出力させて、送電コイル41a、42aの上方を通過する受電コイル40aに電力を供給する。
【0040】
具体的には、乗客コンベア1が上昇運転を行っている場合、制御部16は、下階側水平部R2及び下階側曲線部R5に設けられた給電装置42を作動させず、上階側水平部R1及び上階側曲線部R4に設けられた給電装置41を作動させる。これにより、上階側水平部R1及び上階側曲線部R4を移動する踏段30の受電装置40に電力が給電され、降り口となる上階側の乗降口17付近において踏段30の照明装置38が点灯する。
【0041】
乗客コンベア1が下降運転を行っている場合、制御部16は、上階側水平部R1及び上階側曲線部R4に設けられた給電装置41を作動させず、下階側水平部R2及び下階側曲線部R5に設けられた給電装置42を作動させる。これにより、下階側水平部R2及び下階側曲線部R5を移動する踏段30の受電装置40に電力が給電され、降り口となる下階側の乗降口18付近において踏段30の照明装置38が点灯する。
【0042】
(6)効果
本実施形態の乗客コンベア1では、トラス2に設けられた給電装置41,42から踏段30に設けられた受電装置40に対して非接触給電が行われる。このため、踏段30の移動中に受電装置40に電力を供給して照明装置38を動作させることができる。
【0043】
また、受電装置40と給電装置41,42との間にスカートガードのような磁性材料が存在すると、送電コイル41a,42aで生じた磁界がシールドされ給電効率が大幅に低下したり、送電コイル41a,42aからの磁界の影響を受けて磁性材料が発熱したりするが、本実施形態では、受電装置40がローラ支持部36における踏段幅方向の内側に設けられ、給電装置41,42がトラス2内に設けられており、受電装置40と給電装置41,42との間に給電を妨げる障害物が存在しないため、給電装置41,42から受電装置40へ効率良く電力を供給することができる。
【0044】
本実施形態では、給電装置41,42が水平部R1,R2や曲線部R4,R5に設けられており、これら水平部R1,R2や曲線部R4,R5では、中間傾斜部R3に比べて位置精度良くガイドレール50,52を配置することができるため、踏段30に設けられた受電装置40に給電装置41,42を近接させて配置することができ、効率良く電力を供給することができる。
【0045】
本実施形態では、受電装置40に設けられた受電コイル40aの軸方向が上下方向に対して傾斜しているため、後搬送ガイドレール52の傾斜角度が変化する曲線部R4,R5に沿って給電装置41,42を設ける場合であっても、受電コイル40aを送電コイル41a,42aの軸と同軸に近い状態で配置することができ、効率良く電力を供給することができる。
【0046】
(7)変更例
上記した実施形態の変更例を説明する。上記した実施形態に対して、以下に説明する複数の変更例のうちいずれか1つを適用しても良いし、以下に説明する変更例のうちいずれか2つ以上を組み合わせて適用しても良い。なお以下の変更例の他にも様々な変更が可能である。
【0047】
(7-1)変更例1
上記した実施形態では、後搬送ガイドレール52に沿って延びる長円状の送電コイル41a、42aを備えた給電装置41,42をトラス2に設けたが、複数の給電装置を後搬送ガイドレール52の延びる方向に間隔をあけて設けてもよい。このように間隔をあけて複数の給電装置41,42を後搬送ガイドレール52に沿って設けることで、踏段30が複数の給電装置41,42の上方を通過する際に受電装置40に対して断続的に電力が供給され、照明装置38を点滅させることができる。
【0048】
(7-2)変更例2
上記した実施形態において、踏段30は受電装置40に供給された電力を充電するバッテリーを備えても良い。これにより、給電装置41、42の上方位置以外を走行する踏段30の照明装置38を点灯させることができる。
【0049】
(7-3)変更例3
上記した実施形態では、受電装置40に供給された電力によって照明装置38を点灯させる場合について説明したが、受電装置40に供給された電力によって動作する動作装置は特に限定されず、種々の装置の動作に受電装置40からの電力を利用してもよい。例えば、スピーカ、個々の踏段30を識別する識別信号などを発信する通信装置である。
【0050】
(7-4)変更例4
上記した実施形態において、受電装置40が通過可能な空間をあけて給電装置41,42の上方を覆うカバー体を設けてもよい。これにより、受電装置40と対向する給電装置41,42の上面が踏段チェーン11に噴霧された潤滑油によって汚れるのを防ぐことができる。
【0051】
(7-5)変更例5
上記した実施形態では、給電装置を水平部R1,R2、曲線部R4,R5に設けたが、これに加えて中間傾斜部R3にも設けてもよい。また、水平部R1,R2及び曲線部R4,R5のいずれか一方に設けてもよい。
【0052】
(7-6)その他
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1…乗客コンベア、2…トラス、3…支持アングル、4…支持アングル、5…機械室、6…駆動装置、7…駆動スプロケット、8…駆動チェーン、9…機械室、11…踏段チェーン、12…スカートガード、30…踏段、31…踏段フレーム、32…クリート体、32a…クリート突条、32c…デマケーション部、33…ライザ体、34…支軸、35…前踏段ローラ、36…ローラ支持部、37…後踏段ローラ、38…照明装置、40…受電装置、41…給電装置、42…給電装置、50…前搬送ガイドレール、52…後搬送ガイドレール、60…前非搬送ガイドレール、62…後非搬送ガイドレール
【要約】 (修正有)
【課題】給電装置から非接触で電力が供給される受電装置を踏段に備えた乗客コンベアにおいて、給電効率の低下や発熱を抑えることができる乗客コンベアを提供する。
【解決手段】本発明の乗客コンベア1は、トラス2に設けられた給電装置41から非接触で電力が供給される受電装置40と、受電装置40から供給された電力によって動作する動作装置と、を備え、踏段30は、クリート体32及びライザ体33を支持する踏段フレーム31と、踏段フレーム31における踏段移動方向の一方側の端部に設けられローラ37を支持するローラ支持部36とを備え、受電装置40はローラ支持部36における踏段幅方向の内側に設けられ、給電装置41はローラ37が走行するガイドレール52に沿って設けられている。
【選択図】
図5