(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】非接触式加工装置及び加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/53 20140101AFI20240930BHJP
B26F 3/00 20060101ALI20240930BHJP
B26F 3/06 20060101ALI20240930BHJP
B23H 7/02 20060101ALI20240930BHJP
B23H 1/04 20060101ALI20240930BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
B23K26/53
B26F3/00 E
B26F3/00 F
B26F3/06
B23H7/02 K
B23H1/04 Z
H01L21/304 611Z
(21)【出願番号】P 2023140033
(22)【出願日】2023-08-30
(62)【分割の表示】P 2022078900の分割
【原出願日】2022-05-12
【審査請求日】2023-08-31
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】519404230
【氏名又は名称】日揚科技股▲分▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】521488440
【氏名又は名称】明遠精密科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】寇崇善
(72)【発明者】
【氏名】葉文勇
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/203240(WO,A1)
【文献】特開2020-191335(JP,A)
【文献】特開2013-124206(JP,A)
【文献】特開2019-208018(JP,A)
【文献】特開2013-049161(JP,A)
【文献】特開2011-249449(JP,A)
【文献】特開2008-004648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/53
B26F 3/00
B26F 3/06
B23H 7/02
B23H 1/04
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの固体構造に対して加工手順を実行するための非接触式加工装置であって、
前記加工手順の改質ステップで改質エネルギーを前記固体構造の加工対象領域に提供し、前記固体構造の前記加工対象領域に質的な変化又は欠陥を発生させ、さらに改質層を形成するための改質エネルギー源であって、前記改質エネルギー源はレーザー源であり、前記改質エネルギーはレーザーエネルギーである、改質エネルギー源と、
前記加工手順の分離ステップで分離エネルギーを、前記改質層を有する前記固体構造に非接触で印加することにより、前記改質層から前記固体構造を分離又は薄型化して、前記固体構造を分離又は薄型化された固体構造とするための分離エネルギー源と、を含み、
前記分離エネルギー源は、前記分離エネルギーとしてマイクロ波又は高周波エネルギーを提供するためのマイクロ波又は高周波源を含み、
前記改質エネルギー及び前記分離エネルギーは、正のサイクルを形成する、ことを特徴とする非接触式加工装置。
【請求項2】
前記分離エネルギー源は、前記分離エネルギーとして前記マイクロ波又は高周波エネルギーと放電エネルギーをそれぞれ提供するための前記マイクロ波又は高周波源と放電加工(EDM)ユニットを含む、請求項1に記載の非接触式加工装置。
【請求項3】
電界を提供して前記分離エネルギー源の前記分離エネルギーが前記改質層から前記固体構造を分離又は薄型化するのを支援して、前記固体構造を前記分離又は薄型化された固体構造とする電界源をさらに含む、請求項2に記載の非接触式加工装置。
【請求項4】
前記加工手順の研磨ステップで前記分離又は薄型化された固体構造を研磨するための研磨ユニットをさらに含む、請求項1に記載の非接触式加工装置。
【請求項5】
前記研磨ユニットは、前記レーザー源、放電加工(EDM)ユニット、マイクロ波又は高周波源、及び/又は別の前記マイクロ波又は高周波源であることにより、前記レーザーエネルギー、放電エネルギー、前記マイクロ波又は高周波エネルギー、及び/又は別のマイクロ波又は高周波エネルギーをそれぞれ提供して前記分離又は薄型化された固体構造を研磨し、前記分離エネルギー源は、前記放電加工(EDM)ユニット及び/又は前記マイクロ波又は高周波源を含む、請求項4に記載の非接触式加工装置。
【請求項6】
前記別のマイクロ波又は高周波源は、前記放電加工(EDM)ユニットの少なくとも1つの放電電極を介して前記別のマイクロ波又は高周波エネルギーを提供する、請求項5に記載の非接触式加工装置。
【請求項7】
前記加工手順の前記改質ステップ、前記分離ステップ及び/又は加熱ステップで前記固体構造を加熱するための熱源をさらに含む、請求項1に記載の非接触式加工装置。
【請求項8】
前記熱源は、前記レーザー源、前記マイクロ波又は高周波源、熱油タンク、別のレーザー源、別のマイクロ波又は高周波源、及び/又は赤外線光源であり、前記分離エネルギー源は、放電加工(EDM)ユニット及び/又は前記マイクロ波又は高周波源を含む、請求項7に記載の非接触式加工装置。
【請求項9】
前記固体構造はさらに熱膨張物質に接触し、前記熱膨張物質は前記改質層に浸透し、且つ前記熱膨張物質の体積を膨張させることにより、前記改質層から前記固体構造を分離又は薄型化する、請求項1に記載の非接触式加工装置。
【請求項10】
前記分離又は薄型化された固体構造の表面亀裂を埋め材で埋めるようにする外力外乱源をさらに含む、請求項1に記載の非接触式加工装置。
【請求項11】
埋め材は、前記分離又は薄型化された固体構造の前記加工対象領域の表面亀裂を埋めるように、熱源によって前記分離又は薄型化された固体構造の前記加工対象領域に形成される、請求項1に記載の非接触式加工装置。
【請求項12】
前記固体構造は、加熱液体に浸漬される、請求項1、6、又は10に記載の非接触式加工装置。
【請求項13】
前記分離エネルギー源が前記分離エネルギーを前記固体構造に印加する方向は、前記レーザー源が前記レーザーエネルギーを前記固体構造に提供する方向とは異なる、請求項1に記載の非接触式加工装置。
【請求項14】
前記分離エネルギー源が前記分離エネルギーを前記固体構造に印加する方向は、前記レーザー源が前記レーザーエネルギーを前記固体構造に提供する方向と同じである、請求項1に記載の非接触式加工装置。
【請求項15】
前記非接触式加工装置は、流体中で前記固体構造の前記加工対象領域に対して前記加工手順を実行する、請求項1に記載の非接触式加工装置。
【請求項16】
前記非接触式加工装置は、真空環境で前記固体構造の前記加工対象領域に対して前記加工手順を実行する、請求項1に記載の非接触式加工装置。
【請求項17】
前記放電加工(EDM)ユニットの放電電極の数は、1つ又は複数である、請求項2に記載の非接触式加工装置。
【請求項18】
前記固体構造の数は、1つ又は複数である、請求項1に記載の非接触式加工装置。
【請求項19】
少なくとも1つの固体構造に対して加工手順を実行するための非接触式加工方法であって、
改質エネルギー源により改質エネルギーを前記固体構造の加工対象領域に提供し、前記固体構造の前記加工対象領域に質的な変化又は欠陥を発生させ、さらに改質層を形成する前記加工手順の改質ステップを実行するステップであって、前記改質エネルギー源はレーザー源であり、前記改質エネルギーはレーザーエネルギーである、ステップと、
分離エネルギー源により分離エネルギーを、前記改質層を有する前記固体構造に非接触で印加することにより、前記改質層から前記固体構造を分離又は薄型化して、前記固体構造を分離又は薄型化された固体構造とする前記加工手順の分離ステップを実行するステップと、を含み、
前記分離エネルギー源は、前記分離エネルギーとしてマイクロ波又は高周波エネルギーを提供するためのマイクロ波又は高周波源を含み、
前記改質エネルギー及び前記分離エネルギーは、正のサイクルを形成する、ことを特徴とする非接触式加工方法。
【請求項20】
前記分離エネルギー源は、前記マイクロ波又は高周波エネルギーを提供する前記マイクロ波又は高周波源、及び/又は放電エネルギーを提供する放電加工(EDM)ユニットを含み、前記分離エネルギーを、前記改質層を有する前記固体構造に印加することに用いられる、請求項19に記載の非接触式加工方法。
【請求項21】
前記改質層の第1の領域は、分離起点を有し、前記分離ステップは、前記分離エネルギーで前記改質層の前記分離起点から前記固体構造を分離又は薄型化する、請求項19に記載の非接触式加工方法。
【請求項22】
前記分離ステップでは、電界を前記固体構造に印加することにより、前記分離エネルギー源が前記改質層から前記固体構造を分離又は薄型化するのを支援することをさらに含む、請求項20に記載の非接触式加工方法。
【請求項23】
前記分離ステップでは、熱膨張物質を前記固体構造の前記改質層に浸透させ、前記熱膨張物質の体積を膨張させることにより、前記分離エネルギー源が前記改質層から前記固体構造を分離又は薄型化するのを支援することをさらに含む、請求項19に記載の非接触式加工方法。
【請求項24】
前記分離ステップの実行後に、前記加工手順の研磨ステップを実行することにより、研磨ユニットを用いて前記分離又は薄型化された固体構造を研磨するステップをさらに含む、請求項19に記載の非接触式加工方法。
【請求項25】
前記改質ステップ、前記分離ステップ及び/又は前記研磨ステップの実行中又は後に、前記加工手順の加熱ステップを実行することにより、前記固体構造を加熱するステップをさらに含む、請求項24に記載の非接触式加工方法。
【請求項26】
埋めステップを実行することにより、前記分離又は薄型化された固体構造の前記加工対象領域の表面亀裂を埋めるステップをさらに含む、請求項19に記載の非接触式加工方法。
【請求項27】
前記加工手順は、前記分離又は薄型化された固体構造に対して後続ステップを実行するステップをさらに含み、前記後続ステップは、コーティングステップ、蒸着ステップ、黄色光照射ステップ、フォトリソグラフィーステップ、エッチングステップ及び拡散ステップからなる群から選択される、請求項19に記載の非接触式加工方法。
【請求項28】
前記加工対象領域は、前記固体構造の一部の領域に位置する、請求項19に記載の非接触式加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置及び加工方法に関し、特に非接触式加工装置及び加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体技術の継続的な発展により、科技製品は大きく進歩している。半導体プロセスでは、加工素子を用いてウエハなどの材料に対して切断、研削又は磨きなどの加工手順を実行する場合が多い。炭化ケイ素(SiC)などの半導体材料は、エネルギーバンドギャップが広く、硬度が高く、熱伝導率が高く、及び化学的に不活性であるなどの利点を有するため、高温電子部品、高周波高出力素子を製造するための理想的な材料である。しかしながら、半導体材料の硬度が高いため、スライシング、研削又は磨きなどの加工手順を実行することは困難であり、加工素子などの刃物も摩耗する。従って、如何に半導体材料の加工効率及び品質を向上させるかは、現在の重要な研究開発トピックの1つとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これに鑑みて、本発明の1つ又は複数の目的は、上記従来技術の課題を解決するために、非接触式加工装置及び加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記1つ又は複数の目的を達成するために、本発明は、少なくとも1つの固体構造に対して加工手順を実行するための非接触式加工装置であって、前記加工手順の改質ステップで改質エネルギーを前記固体構造の加工対象領域に提供し、前記固体構造の前記加工対象領域に質的な変化又は欠陥を発生させ、さらに改質層を形成するための改質エネルギー源であって、前記改質エネルギー源はレーザー源であり、前記改質エネルギーはレーザーエネルギーである、改質エネルギー源と、前記加工手順の分離ステップで分離エネルギーを前記改質層を有する前記固体構造に非接触で印加することにより、前記改質層から前記固体構造を分離又は薄型化して、前記固体構造を分離又は薄型化された固体構造とするための分離エネルギー源と、を含む、ことを特徴とする非接触式加工装置を提供する。
【0005】
本発明に係る非接触式加工装置によると、前記分離エネルギー源は、前記分離エネルギーとしてマイクロ波又は高周波エネルギーを提供するためのマイクロ波又は高周波源を含む。
【0006】
本発明に係る非接触式加工装置によると、前記分離エネルギー源は、少なくとも1つの放電電極を介して前記分離エネルギーとして放電エネルギーを提供するための放電加工(EDM)ユニットを含む。
【0007】
本発明に係る非接触式加工装置によると、前記分離エネルギー源は、前記分離エネルギーとしてマイクロ波又は高周波エネルギーと放電エネルギーをそれぞれ提供するためのマイクロ波又は高周波源と放電加工(EDM)ユニットを含む。
【0008】
本発明に係る非接触式加工装置によると、電界を提供して前記分離エネルギー源の前記分離エネルギーが前記改質層から前記固体構造を分離又は薄型化するのを支援して、前記固体構造を前記分離又は薄型化された固体構造とする電界源をさらに含む。
【0009】
本発明に係る非接触式加工装置によると、前記加工手順の研磨ステップで前記分離又は薄型化された固体構造を研磨するための研磨ユニットをさらに含む。
【0010】
本発明に係る非接触式加工装置によると、前記研磨ユニットは、前記レーザー源、放電加工(EDM)ユニット、マイクロ波又は高周波源、及び/又は別のマイクロ波又は高周波源であることにより、前記レーザーエネルギー、放電エネルギー、マイクロ波又は高周波エネルギー、及び/又は別のマイクロ波又は高周波エネルギーをそれぞれ提供して前記分離又は薄型化された固体構造を研磨し、前記分離エネルギー源は、前記放電加工(EDM)ユニット及び/又は前記マイクロ波又は高周波源を含む。
【0011】
本発明に係る非接触式加工装置によると、前記別のマイクロ波又は高周波源は、前記放電加工(EDM)ユニットの少なくとも1つの放電電極を介して前記別のマイクロ波又は高周波エネルギーを提供する。
【0012】
本発明に係る非接触式加工装置によると、前記加工手順の前記改質ステップ、前記分離ステップ及び/又は加熱ステップで前記固体構造を加熱するための熱源をさらに含む。
【0013】
本発明に係る非接触式加工装置によると、前記熱源は、前記レーザー源、マイクロ波又は高周波源、熱油タンク、別のレーザー源、別のマイクロ波又は高周波源、及び/又は赤外線光源であり、前記分離エネルギー源は、放電加工(EDM)ユニット及び/又は前記マイクロ波又は高周波源を含む。
【0014】
本発明に係る非接触式加工装置によると、前記固体構造はさらに熱膨張物質に接触し、前記熱膨張物質は前記改質層に浸透し、且つ前記熱膨張物質の体積を膨張させることにより、前記改質層から前記固体構造を分離又は薄型化する。
【0015】
本発明に係る非接触式加工装置によると、前記分離又は薄型化された固体構造の前記加工対象領域には、前記分離又は薄型化された固体構造の前記加工対象領域の表面亀裂を埋めるように埋め材がある。
【0016】
本発明に係る非接触式加工装置によると、前記分離又は薄型化された固体構造の表面亀裂を埋め材で埋めるようにする外力外乱源をさらに含む。
【0017】
本発明に係る非接触式加工装置によると、前記埋め材は、前記分離又は薄型化された固体構造の前記加工対象領域の表面亀裂を埋めるように、熱源によって前記分離又は薄型化された固体構造の前記加工対象領域に形成される。
【0018】
本発明に係る非接触式加工装置によると、前記固体構造は、加熱液体に浸漬される。
【0019】
本発明に係る非接触式加工装置によると、前記分離エネルギー源が前記分離エネルギーを前記固体構造に印加する方向は、前記レーザー源が前記レーザーエネルギーを前記固体構造に提供する方向とは異なる。
【0020】
本発明に係る非接触式加工装置によると、前記分離エネルギー源が前記分離エネルギーを前記固体構造に印加する方向は、前記レーザー源が前記レーザーエネルギーを前記固体構造に提供する方向と同じである。
【0021】
本発明に係る非接触式加工装置によると、前記非接触式加工装置は、流体中で前記固体構造の前記加工対象領域に対して前記加工手順を実行する。
【0022】
本発明に係る非接触式加工装置によると、前記非接触式加工装置は、真空環境で前記固体構造の前記加工対象領域に対して前記加工手順を実行する。
【0023】
本発明に係る非接触式加工装置によると、前記放電加工(EDM)ユニットの前記放電電極の数は、1つ又は複数である。
【0024】
本発明に係る非接触式加工装置によると、前記固体構造の数は、1つ又は複数である。
【0025】
前記1つ又は複数の目的を達成するために、本発明は、少なくとも1つの固体構造に対して加工手順を実行するための非接触式加工方法であって、改質エネルギー源により改質エネルギーを前記固体構造の加工対象領域に提供し、前記固体構造の前記加工対象領域に質的な変化又は欠陥を発生させ、さらに改質層を形成する前記加工手順の改質ステップを実行するステップであって、前記改質エネルギー源はレーザー源であり、前記改質エネルギーはレーザーエネルギーである、ステップと、分離エネルギー源により分離エネルギーを前記改質層を有する前記固体構造に非接触で印加することにより、前記改質層から前記固体構造を分離又は薄型化して、前記固体構造を分離又は薄型化された固体構造とする前記加工手順の分離ステップを実行するステップと、を含む、ことを特徴とする非接触式加工方法を提供する。
【0026】
本発明に係る非接触式加工方法によると、前記分離エネルギー源は、マイクロ波又は高周波エネルギーを提供するマイクロ波又は高周波源、及び/又は放電エネルギーを提供する放電加工(EDM)ユニットを含み、前記分離エネルギーを前記改質層を有する前記固体構造に印加することに用いられる。
【0027】
本発明に係る非接触式加工方法によると、前記改質層の第1の領域は、分離起点を有し、前記分離ステップは、前記分離エネルギーで前記改質層の前記分離起点から前記固体構造を分離又は薄型化する。
【0028】
本発明に係る非接触式加工方法によると、前記分離ステップでは、電界を前記固体構造に印加することにより、前記分離エネルギー源が前記改質層から前記固体構造を分離又は薄型化するのを支援することをさらに含む。
【0029】
本発明に係る非接触式加工方法によると、前記分離ステップでは、熱膨張物質を前記固体構造の前記改質層に浸透させ、前記熱膨張物質の体積を膨張させることにより、前記分離エネルギー源が前記改質層から前記固体構造を分離又は薄型化するのを支援することをさらに含む。
【0030】
本発明に係る非接触式加工方法によると、前記分離ステップの実行後に、前記加工手順の研磨ステップを実行することにより、研磨ユニットを用いて前記分離又は薄型化された固体構造を研磨するステップをさらに含む。
【0031】
本発明に係る非接触式加工方法によると、前記改質ステップ、前記分離ステップ及び/又は前記研磨ステップの実行中又は後に、前記加工手順の加熱ステップを実行することにより、前記固体構造を加熱するステップをさらに含む。
【0032】
本発明に係る非接触式加工方法によると、埋めステップを実行することにより、前記分離又は薄型化された固体構造の前記加工対象領域の表面亀裂を埋めるステップをさらに含む。
【0033】
本発明に係る非接触式加工方法によると、前記加工手順は、前記分離又は薄型化された固体構造に対して後続ステップを実行するステップをさらに含み、前記後続ステップは、コーティングステップ、蒸着ステップ、黄色光照射ステップ、フォトリソグラフィーステップ、エッチングステップ及び拡散ステップからなる群から選択される。
【0034】
本発明に係る非接触式加工方法によると、前記加工対象領域は、前記固体構造の一部の領域に位置する。
【発明の効果】
【0035】
上記のように、本発明による非接触式加工装置及び加工方法は、以下の1つ又は複数の利点を有する。
【0036】
(1)本発明は、改質ステップで電磁放射源を用いて固体構造の加工対象領域に質的な変化又は欠陥を発生させることにより、他の領域との応力、構造強度、結晶格子形態又は硬度の違いを発生させる。本発明は、分離ステップでこの応力、構造強度、結晶格子形態又は硬度の違いによって、固体構造を高速に分離又は薄型化することができる。
【0037】
(2)本発明は、分離ステップで改質現象が発生した固体構造に分離エネルギーを印加することにより、応力、構造強度、結晶格子形態又は硬度の違いによる改質層と他の領域の分離エネルギー源に対する異なる応答を用いて、改質層から固体構造を分離又は薄型化する。
【0038】
(3)本発明は、熱源により固体構造を加熱し、固体構造の温度を上昇させることができ、温度を上昇させることによって放射源のエネルギーの吸収率を向上させることができる。
【0039】
(4)本発明は、固体構造の改質層の形成状態を検出し、さらにレーザー源によって提供されたレーザーエネルギーをフィードバック制御するか、及び/又はマイクロ波又は高周波源によって提供されたマイクロ波又は高周波エネルギーをフィードバック制御し、例えば、マイクロ波又は高周波源によって提供されたマイクロ波又は高周波エネルギーの大きさ、周波数又は加工送り速度などを制御することができる。
【0040】
(5)本発明は、固体構造の分離速度を加速でき、さらに加工対象領域の表面亀裂を埋めることにより、余分な表面亀裂の拡大を防止する。
【0041】
(6)本発明は、加熱液体タンク内で加工手順を実行でき、熱衝撃による不要な亀裂又は亀裂伝播を低減させ、不要な表面亀裂の拡大を防止することができる。
【0042】
本発明の技術的特徴および達成し得る技術的効能の理解を深めるために、より良い実施例と詳細な説明を以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1は本発明の非接触式加工方法の加工手順の模式図である。
【
図2a】
図2aは本発明の非接触式加工装置が改質ステップを実行する模式図である。
【
図2b】
図2bは本発明の非接触式加工装置が分離ステップを実行する模式図である。
【
図3】
図3は本発明の非接触式加工装置が改質及び分離ステップを実行する模式図であり、改質エネルギーと分離エネルギーは、同じ側から固体構造に供給される。
【
図4】
図4は本発明の非接触式加工装置が改質及び分離ステップを実行する模式図であり、改質エネルギーと分離エネルギーは、反対側から固体構造に供給される。
【
図5】
図5は本発明の非接触式加工装置が改質及び分離ステップを実行する模式図であり、改質エネルギーと分離エネルギーは、垂直側から固体構造に供給される。
【
図7a】
図7aは本発明の非接触式加工装置が改質及び分離ステップを実行する簡単な模式図であり、2種類の分離エネルギーが同じ側から固体構造に供給されることを示している。
【
図7b】
図7bは本発明の非接触式加工装置が改質及び分離ステップを実行する簡単な模式図であり、2種類の分離エネルギーが垂直側から固体構造に供給されることを示している。
【
図7c】
図7cは本発明の非接触式加工装置が電界源又は膨張液体で固体構造を分離又は薄型化するのを支援する模式図である。
【
図8】
図8は本発明の非接触式加工装置が分離ステップ及び加熱ステップを実行する模式図である。
【
図9a】
図9aは本発明の非接触式加工装置が加熱液体タンク内で研磨ステップを実行する模式図である。
【
図9b】
図9bは本発明の非接触式加工装置が加熱液体タンク外に研磨ステップを実行する模式図である。
【
図10a】
図10aは本発明の非接触式加工装置が埋めステップを実行する模式図である。
【
図10b】
図10bは本発明の非接触式加工装置が埋めステップを実行する模式図である。
【
図11】
図11は本発明の非接触式加工装置で2組の二重マイクロ波又は高周波源を用いる模式図である。
【
図12a】
図12aは本発明の固体構造の単一の加工対象領域が一部の領域に位置する上面図である。
【
図12b】
図12bは本発明の固体構造の単一の加工対象領域が一部の領域に位置する断面側面図である。
【
図12c】
図12cは本発明の固体構造の複数の加工対象領域が一部の領域に位置する上面図である。
【
図12d】
図12dは本発明の固体構造の複数の加工対象領域が一部の領域に位置する断面側面図である。
【
図13a】
図13aは本発明の単一の放電電極を有する放電加工(EDM)ユニットにより複数の固体構造を分離する模式図である。
【
図13b】
図13bは本発明の複数の放電電極を有する放電加工(EDM)ユニットにより単一の固体構造を分離する模式図である。
【
図13c】
図13cは本発明の複数の放電電極を有する放電加工(EDM)ユニットにより複数の固体構造を分離する模式図であり、
図13aの視角は
図8と同じであり、インゴットが被加工物として用いられ、
図13aの視角は、
図13b及び
図13cに垂直である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本発明の実施の形態の図面における各部材の比率は、説明を容易に理解するために示され、実際の比率ではない。また、図に示すアセンブリの寸法の比率は、各部品とその構造を説明するためのものであり、もちろん、本発明はこれに限定されない。一方、理解を便利にするために、下記の実施の形態における同じ部品については、同じ符号を付して説明する。
【0045】
さらに、明細書全体および実用新案登録請求の範囲で使用される用語は、特に明記しない限り、通常、この分野、本明細書に開示される内容、および特別な内容で使用される各用語の通常の意味を有する。本発明を説明するために使用されるいくつかの用語は、当業者に本発明の説明に関する追加のガイダンスを提供するために、本明細書の以下または他の場所で説明される。
【0046】
この記事での「第1」、「第2」、「第3」などの使用については、順序や順次を具体的に示すものではなく、本発明を制限するためにも使用されていない。これは、同じ専門用語で説明するコンポーネントまたは操作を区別するだけために使用される。
【0047】
次に、この記事で「含む」、「備える」、「有する」、「含有する」などの用語が使用されている場合、それらはすべてオープンな用語である。つまり、これらは、含むがこれに限定されないことを意味する。
【0048】
本発明は、非接触式加工装置及び加工方法を提供し、この非接触式加工装置及び加工方法は、加工される固体構造(すなわち、被加工物)に対して加工手順を実行することに用いられ、且つ、例えば、SOI(絶縁層上の半導体)プロセス、インゴットスライシング(Slicing)プロセス、ウエハ薄型化(Thinning)プロセス又はパッケージング(Packaging)プロセスなどの多くの半導体プロセスに適用できるが、これらに限定されない。上記固体構造は、例えば、ウエハ又はインゴットなどの結晶構造など、上記半導体プロセスにおける半導体材料を含有する固体物体であるが、これらに限定されない。上記半導体材料は、例えば、Si、SiC、SiGe、Ge、GaAs、GaN又はInPなどの基板材料であるが、これらに限定されず、結晶構造は、例えば、単結晶、多結晶又はアモルファス構造であるが、これらに限定されない。本発明の非接触式加工方法によって実行される加工手順は、改質ステップを実行するステップと、分離ステップを実行するステップと、を少なくとも含む。改質ステップは、改質エネルギー源により改質エネルギーを固体構造の加工対象領域に提供し、固体構造の加工対象領域に質的な変化又は欠陥を発生させ、さらに改質層を形成し、改質エネルギー源はレーザー源であり、改質エネルギーはレーザーエネルギーである。分離ステップは、分離エネルギー源により分離エネルギーを上記改質層を有する固体構造に非接触で印加することにより、改質層から固体構造を分離又は薄型化して、この固体構造を分離又は薄型化された固体構造とする。
【0049】
上記固体構造の「分離又は薄型化」は、例えば、上記加工される固体構造から、一部の材料又はシート状構造を除去(Removing)、分割(Separating)、切断(Cutting)又は分裂(Splitting)、裁断(Slicing)することであり、前記一部の材料又はシート状構造は、選択的に回収又は再利用されてもよい。換言すると、上記分離又は薄型化された固体構造は、単一の加工された構造(すなわち、後述する第1の半部の構造)又は2つの加工された構造(すなわち、後述する第1の半部の構造と第2の半部の構造)であってもよい。上記加工対象領域は、固体構造の任意の深さ又は表面(前面又は裏面に限定されない)に位置してもよい。従って、本発明の分離又は薄型化された固体構造の厚さ(すなわち、第1の半部の構造/第2の半部の構造の厚さ)は、実際の応用のプロセス要件に応じて調整及び変化することができ、本発明では特定の厚さに限定されない。
【0050】
図1に示すように、本発明の加工手順の改質ステップS10では、本発明の非接触式加工装置は、改質エネルギー源により改質エネルギーを上記固体構造の加工対象領域に提供し、固体構造の加工対象領域に質的な変化又は欠陥を発生させ、すなわち改質層を形成する。本発明の加工手順の分離ステップS20では、本発明は、分離エネルギー源により分離エネルギーを改質層を有する固体構造に非接触で印加することにより、改質層から固体構造を分離又は薄型化して、上記分離又は薄型化された固体構造とする。
【0051】
上記分離ステップS20の実行後に、本発明は、さらに選択的に研磨ステップS30を実行することにより、研磨ユニットを用いて上記分離又は薄型化された固体構造(第1の半部の構造100a及び/又は第2の半部の構造100bなど)を研磨(研削磨き)する。また、上記改質ステップS10の実行中に、本発明は、さらに選択的に検出及び制御ステップS40を同時に実行することにより、改質層120の形成状態をリアルタイムに検出してフィードバック制御する。さらに、改質ステップS10、分離ステップS20及び/又は研磨ステップS30の実行中又は後に、本発明は、さらに選択的に加熱ステップS50を実行することにより、熱源を用いて固体構造を加熱し、その材料脆性を低減させ、その切断面又は薄型化面の粗さを低減させることができる。上記分離ステップS20又は研磨ステップS30の実行後に、本発明は、1つ又は複数の後続ステップS60を実行するステップをさらに含んでもよく、上記後続ステップS60は、例えば、コーティングステップ、蒸着ステップ、黄色光照射ステップ、フォトリソグラフィーステップ、エッチングステップ及び拡散ステップからなる群から選択される。
【0052】
図1及び
図2aを参照すると、
図2aに示すように、本発明の非接触式加工装置及び加工方法の改質ステップS10は、改質エネルギー源(電磁放射源など)により改質エネルギーを上記固体構造100の加工対象領域110に非接触で提供し、固体構造100に質的な変化又は欠陥を発生させて、さらに改質層120を形成する。固体構造100がウエハであることを例として、ウエハには、ウエハの径方向断面(Radial Section)又は軸方向断面(Axial Section)に位置する上記加工対象領域110が画定されており、この径方向断面又は軸方向断面は、例えば、ウエハの任意の深さX又は表面に位置してもよい。固体構造100は、例えば、載置ステージ150に載置されており、該載置ステージ150は、可動載置ステージに限定されない。また、固体構造100の加工手順は、加熱液体タンク80(
図8に示される)などのチャンバ内で実行されてもよく、加熱液体タンク(
図3~
図5に示される)などのチャンバ内で実行されなくてもよい。
【0053】
上記第1種類の電磁放射源は、第1種類の電磁エネルギーを固体構造100の加工対象領域110に提供し、この固体構造100の加工対象領域110に原子結合の弱体化、構造の弱体化、又は単結晶形態から多結晶形態又はアモルファス形態への変換などの質的な変化又は欠陥などの改質現象を発生させ、すなわち改質層120を形成する。固体構造100の厚さは、例えば、約50μm~約1,800μmの範囲であるが、これに限定されない。加工対象領域110は、例えば、固体構造100の深さX又は表面に位置する。本発明で形成された改質層120が固体構造100を占める面積及び厚さは特に限定されず、実際のプロセス要件に応じて決定されてもよい。
【0054】
本発明の改質エネルギー源で使用される電磁放射源は、例えば、上記加工手順の改質ステップS10でレーザーエネルギー(改質エネルギー)を有するパルス光を生成して、固体構造100の加工対象領域110を照射するレーザー源20である。固体構造100の厚さが約1,800μmであることを例として、加工対象領域110の深さXは、約0μm~約1,800μmの間の範囲であってもよく、同様に、パルス光の集束点と載置ステージ150との間の距離範囲は、実際のプロセスの異なりによって約1,800μm~約0μmの間であってもよい。レーザー源20は、レーザー発生器22によってパルス光23を生成し、このパルス光23は、レンズ群24を介して固体構造100に伝達される。レーザー源20のパルス光23は、集束点で非線形吸収効果及び熱効果を形成してホットスポット(Hot Spot)を形成するため、集束点での固体構造100はイオン化されて自由電子を生成し、自由電子のエネルギーも集束点での固体構造100に伝達されて、集束点での固体構造100の温度を上昇させ、すなわち集束点の吸収係数を増加させて、レーザー源20によって提供されたより多くのレーザーエネルギーを吸収し、さらに改質効果を向上させる。従って、レーザー源20によって生成されるパルス光23の集束点が固体構造100の加工対象領域110に集束される場合、レーザーエネルギーをこの固体構造100の加工対象領域110に提供して、原子結合の弱体化、構造の弱体化、又は単結晶形態から多結晶形態又はアモルファス形態への変換、硬度の低減などの質的な変化又は欠陥などの改質現象を発生させ、すなわち上記改質層120を形成する。
【0055】
本発明で使用されるレーザー源20は、例えば、Nd:YAGパルスレーザー、Nd:YVO4パルスレーザー又はTi-Sapphireパルスレーザーであるが、これらに限定されない。レーザー源20によって生成されるパルス光は、欠陥密度が約100ea/mm2~約1,000,000ea/mm2の範囲であるように、固体構造100の加工対象領域110を走査照射し、パルス光の移動速度は、約10mm/sec~約1,000mm/secの範囲であり、パルス光の波長は、約700nmよりも大きく、好ましくは約700nm~約1,600nmの範囲であり、パルス幅は約1,000nsよりも小さく、繰り返し周波数(Repetition Frequency)は、約5KHz~約10MHzの範囲であり、パルスエネルギー(Pulse Energy、E)は、例えば、約0.1μJ~約1,000μJの範囲であり、スポット径(Spot Diameter)は、例えば、約1μm~約50μmの範囲である。
【0056】
本発明は、パルス光が固体構造100の加工対象領域110を水平に走査照射するように、可動載置ステージを用いて固体構造100を水平に移動させるか(
図2aの下方の水平方向の二重矢印C1に示される)、又は、レーザー源20がパルス光を水平に移動させることができる(
図2aの上方の水平方向の二重矢印L1に示される)。また、本発明は、さらに、例えば、パルス光が固体構造100の加工対象領域110を垂直に走査照射するように、可動載置ステージを用いて固体構造100を垂直に移動させるか(すなわち、レーザー源は垂直方向に固定されるが、載置ステージは垂直方向に移動可能であり、
図2aの下方の垂直方向の二重矢印C2に示される)、又は、レーザー源20がパルス光を垂直に移動させることができる(すなわち、レーザー源20は垂直方向に移動可能であるが、載置ステージは垂直方向に固定され、
図2aの上方の垂直方向の二重矢印L2に示される)。また、他の実施態様では、上記可動載置ステージによる移動方法は、固体構造100の垂直移動又は水平移動に限定されず、可動載置ステージは、例えば、回転、傾斜又は他の方法で固体構造100を移動させてもよく、すなわち、パルス光の集束点が照射する固体構造100の位置を調整できる限り、いずれも本発明に適用できる。また、パルス光の集束点が照射する固体構造100の位置を調整することで、固体構造の加工対象領域110は、固体構造の全領域に完全に分布することに限定されず、例えば、径方向断面及び/又は縦断面の一部にのみ分布する。例えば、1つの加工対象領域110(
図12a及び
図12bを参照)又は複数の加工対象領域110(
図12c及び
図12dを参照)は、固体構造100の一部の領域に位置してもよく、加工対象領域110の断面形状は特に限定されず、実際の必要に応じて決定されてもよく、例えば、
図12a~
図12dに示されるU字形であってもよく、
図12bは
図12aの断面線I-I’に沿った断面側面図であり、
図12dは
図12cの断面線II-II’に沿った断面側面図である。
【0057】
図1、
図2b、
図3~
図5を参照すると、本発明の非接触式加工装置及び加工方法は、加工手順の分離ステップS20を実行するステップをさらに含み、分離ステップ20は、分離エネルギー源40により分離エネルギーを改質層120を有する固体構造100に非接触で印加することにより、改質層120から固体構造100を分離又は薄型化して、固体構造100を、薄型化面を有する第1の半部の構造100a、又は、分割面をそれぞれ有する第1の半部の構造100a及び第2の半部の構造100bなどの分離又は薄型化された固体構造とする。また、分離又は薄型化された固体構造(すなわち、第1の半部の構造100a及び/又は第2の半部の構造100b)は、一部の改質層120を有してもよい(
図7c、
図10a又は
図10bを参照)。
【0058】
本発明で使用される分離エネルギー源40は、例えば、マイクロ波又は高周波源30を含み、このマイクロ波又は高周波源30は、マイクロ波又は高周波電磁波を出力してマイクロ波又は高周波エネルギーを上記分離エネルギーとして提供することにより、応力、構造強度、結晶格子形態又は硬度の違いによる改質層120(すなわち、加工対象領域110)と他の領域(すなわち、非加工対象領域)のマイクロ波又は高周波エネルギーに対する異なる応答を用いて、改質層120から固体構造100を分離又は薄型化して、固体構造100を上記分離又は薄型化された固体構造(第1の半部の構造100a、又は第1の半部の構造100a及び第2の半部の構造100bなど)とする。本発明の固体構造100の加工対象領域110の改質層120の応力(圧縮応力又は引張応力など)は、他の領域(非加工対象領域)とは異なり、又は、改質層120の構造強度は、他の領域(非加工対象領域)よりも弱く、又は、改質層120の結晶格子形態(単結晶、多結晶又はアモルファスなど)は、他の領域(非加工対象領域)とは異なり、又は、改質層120の硬度は、他の領域(非加工対象領域)よりも弱い。本発明は、改質層120と非加工対象領域のマイクロ波エネルギーに対する吸収の違いによって、改質層120と非加工対象領域との違いを増加させ、改質層120から分離程度を容易に大きくすることができる。また、改質層120の導電率は、他の領域(非加工対象領域)よりも優れているため、分離エネルギー源40は、放電加工(EDM)ユニットであってもよく(
図8に示される)、改質層120と他の領域の放電エネルギーに対する異なる応答によって、改質層から固体構造を分離又は薄型化する。
【0059】
マイクロ波又は高周波源30は、マイクロ波発生器32(マグネトロンなど)によってマイクロ波33を生成し、同軸共振器(Coaxial Resonator)34を介して固体構造100に伝達する。アイソレータ(Isolator)36は、好ましくは、マイクロ波発生器32と同軸共振器34との間に設けられ、一方向のマイクロ波伝送効果を有し、整合器38は、好ましくは、マイクロ波の伝送経路(同軸共振器34など)に設けられ、マイクロ波の反射量を低減させることができ、これにより、マイクロ波は、同軸共振器34に効果的に入って固体構造100に伝達され得る。整合器38は、例えば、同軸管38a、金属板38b及び金属棒38cからなるが、上記マイクロ波又は高周波源30の構造は、本発明を限定するものではなく、好ましい例に過ぎない。紫外線光又は赤外線光と比較して、マイクロ波又は高周波源30によって提供されたマイクロ波又は高周波電磁波は、ウエハ/インゴットなどの固体構造100を貫通できるため、分離エネルギーを改質層120が位置する深さに効果的に伝達することができる。固体構造100の加工対象領域110の改質層120は、質的な変化又は欠陥などの改質現象を有するため、マイクロ波又は高周波源30によって提供されたマイクロ波又は高周波エネルギーに対する吸収に違いがあり、マイクロ波又は高周波エネルギーは、固体構造100の原子(シリコン原子など)間の結合を振動させ、加熱昇温させるため、改質層120と他の非加工対象領域との応力の違い、構造強度、結晶格子形態及び/又は硬度の違いによって、固体構造100を改質層120から分離又は薄型化させる。また、本発明は、固体構造100の加工対象領域110の全部に改質層120を形成してから、分離エネルギーを固体構造100の改質層120に印加することに限定されない。すなわち、固体構造100の加工対象領域110の一部又は全部に改質層120が形成されるかにかかわらず、本発明は、分離エネルギーを固体構造100の改質層120に印加することができる。換言すると、本発明の加工手順の改質ステップS10と分離ステップS20は、順番に実行されてもよく、例えば、改質ステップS10を用いて加工対象領域110の全部に改質層120を形成してから、分離ステップS20を実行する。改質ステップS10と分離ステップS20は、同時に実行されてもよく、例えば、改質ステップS10を用いて加工対象領域110の一部に改質層120を形成するとともに、分離ステップS20を実行することにより、固体構造100を部分的又は全部に分離又は薄型化する。
【0060】
改質ステップS10と分離ステップS20が順番に実行される場合、本発明は、まず改質ステップS10を実行し、レーザー源20によって提供されたレーザーエネルギーにより固体構造100の加工対象領域110に改質層120を形成させてから、分離ステップS20を実行し、すなわちマイクロ波又は高周波源30によって提供されたマイクロ波又は高周波源を分離エネルギーとすることにより、改質層120から固体構造100を分離又は薄型化して、固体構造100を上記分離又は薄型化された固体構造とする。
【0061】
改質ステップS10と分離ステップS20が同時に実行される場合、本発明は、例えば、改質層120を形成するとともに、改質層120から固体構造100を分離又は薄型化することができる。レーザー源20によって提供されたレーザーエネルギーは、固体構造100の加工対象領域110に自由電子を生成させることができ、前記自由電子の生成は、他の領域(非加工対象領域)よりも多くのマイクロ波エネルギーを吸収できるため、加工対象領域の温度を上昇させ、温度が上昇するため、加工対象領域110がより多くのレーザーエネルギーを吸収してより多くの自由電子を生成して、マイクロ波又は高周波放射源によって提供されたより多くの電磁エネルギーを吸収し、従って正のサイクルを形成することに寄与する。固体構造100の加工対象領域110(すなわち、改質層120が位置する場所)は、レーザー源20のパルス光の集束点で多くの自由電子を有し、温度が高いと、吸収係数が高くなるため、他の領域(非加工対象領域)よりも多くのマイクロ波エネルギーを吸収でき、これにより他の非加工対象領域との熱差を大きく発生させ、他の領域(非加工対象領域)との応力、構造強度、結晶格子形態又は硬度の違いを多く発生させ、固体構造100を分離又は薄型化する効果に寄与する。上記温度は、例えば、温度センサ92(赤外線温度センサなど)によって検出され得る。また、本発明のレーザー源20は、パルス光を生成することによってレーザーエネルギーを提供し、マイクロ波又は高周波源30は、マイクロ波又は高周波電磁波を連続的又は断続的に生成することによってマイクロ波又は高周波エネルギーを提供する。これにより、本発明のレーザー源20とマイクロ波又は高周波源30は、パルス光とマイクロ波又は高周波電磁波を順番に又は同時にそれぞれ出力してレーザーエネルギーとマイクロ波又は高周波エネルギーを提供し、固体構造100の加工対象領域110に改質層120を形成させ、改質層120から固体構造100を分離又は薄型化することができる。
【0062】
また、本発明のマイクロ波又は高周波源30がマイクロ波又は高周波電磁波を出力してマイクロ波又は高周波エネルギーを固体構造100に提供する方向は特に限定されず、マイクロ波又は高周波源30は、レーザー源20がレーザーエネルギーを固体構造100に提供する方向とは異なる方向(
図4に示される反対側)、同じ方向(
図3に示される同じ側)又は垂直な方向(
図5、
図6に示される)から、マイクロ波又は高周波電磁波を提供することができる。本発明では、1組の二重マイクロ波又は高周波源を用いてマイクロ波又は高周波エネルギーを提供することができ、
図5及び
図6に示すように、該組の二重マイクロ波又は高周波源の2つのマイクロ波又は高周波源30は、同じ同軸共振器34を共有し、固体構造100の左右両側にそれぞれ設けられ、レーザー源20がレーザーエネルギーを提供する方向に垂直な方向にマイクロ波又は高周波エネルギーを提供する。
図5及び
図6に示される同軸共振器34は、より選択的に開口部35を有することにより、載置ステージ150は、この開口部35を用いて固体構造100上で処理される領域を同軸共振器34に送り込むことができる。また、
図11に示すように、加工(分離など)効果を向上させるために、1組の二重マイクロ波又は高周波源が増設されてもよい。また、前記反対側方向、同じ側方向、垂直方向に加えて、マイクロ波又は高周波源30がマイクロ波又は高周波エネルギーを提供する方向と、レーザー源がレーザーエネルギーを提供する方向とは、夾角をなしてもよく、この夾角は、約0度~約180度の間である。また、マイクロ波又は高周波源30がマイクロ波又は高周波電気エネルギーを提供する方向も調整可能であり、例えば、固体構造100の表面形態又は組成に応じて、マイクロ波又は高周波源30がマイクロ波又は高周波エネルギーを提供する方向とレーザー源20がレーザーエネルギーを提供する方向及び/又は前記夾角を調整する。
【0063】
例えば、レーザー源20によって提供されたパルス光は、例えば、ウエハ又はインゴットなどの結晶構造の径方向断面又は軸方向断面の方向に沿って走査して改質エネルギーを固体構造100に提供し、固体構造100の質的な変化又は欠陥の分布方向は、径方向断面又は軸方向断面に平行な方向であり、パルス光が径方向断面又は軸方向断面の方向に沿って走査するときの走査経路は特に限定されず、レーザーエネルギーを固体構造100の加工対象領域110に提供できる限り、本発明に適用できる。マイクロ波又は高周波電磁波は、ウエハ/インゴットなどの固体構造100を貫通できるため、マイクロ波又は高周波源30は、径方向断面又は軸方向断面に平行な方向、径方向断面又は軸方向断面に垂直な方向、又は他の方向から、マイクロ波又は高周波電磁波を提供することができ、質的な変化又は欠陥が発生した固体構造100(すなわち、改質層120)のみは、多くのマイクロ波又は高周波エネルギーを吸収する。マイクロ波又は高周波源30がどの方向からマイクロ波又は高周波電磁波を提供するかにかかわらず、いずれも反対側に吸収素子42が設けられて、不要な散乱を回避し、吸収の均一性を向上させることができる(
図4に示される)。マイクロ波又は高周波源30がマイクロ波であることを例として、本発明のマイクロ波の波長範囲は、約1mm~約1mであり、周波数範囲は、約300GHz~約0.3GHzであり、電力範囲は、例えば、約200ワット~約5,000ワットである。本発明のレーザー源20によって出力されるレーザーエネルギーは、マイクロ波又は高周波源30によって出力されるマイクロ波又は高周波エネルギーよりも高いか、よりも低いか又は等しいことに限定されない。レーザー源20及びマイクロ波又は高周波源30の設置方法及びそれらの作動原理は、当業者に知られているものであるため、本発明は、ここでは詳細な説明を省略する。
【0064】
また、
図7a及び
図8に示すように、本発明の分離エネルギー源40は、例えば、上記マイクロ波又は高周波源30の代わりに放電加工(EDM)ユニット50を用いてもよく、放電電極52を介して上記分離エネルギーとして放電エネルギーを非接触で提供することに用いられる。又は、
図7b及び
図8に示すように、本発明は、放電加工(EDM)ユニット50とマイクロ波又は高周波源30を分離エネルギー源40として同時に用いてもよく、放電加工(EDM)ユニット50とマイクロ波又は高周波源30が分離エネルギーを提供する方向は、例えば、同じであってもよく(
図7aに示される)、互いに垂直であってもよく(
図7bに示される)、又は夾角をなしてもよく、この夾角は、約0度~約180度の間である。放電加工(EDM)ユニット50の放電電極52は、例えば、線状電極又は板状電極であり、線状電極及び板状電極の材料はすべて、例えば、モリブデン、黄銅、タングステン及び亜鉛めっき物であってもよく、線状電極の直径は、約30μm~約300μmの範囲であり、板状電極の厚さは、約30μm~約300μmの範囲である。放電加工(EDM)ユニット50は、分離エネルギー源40として、ウエハ(
図7a~
図7bに示される)又はインゴット(
図8に示される)などの固体構造を分離(分割)又は薄型化することに寄与する。さらに、固体構造100の加工対象領域110の改質層120の硬度又は構造強度は、他の領域よりも低く、放電加工(EDM)ユニット50の放電エネルギーを改質層120から高速に除去し、さらに改質層120から固体構造100を高速に分離又は薄型化することに寄与する。例えば、本発明は、放電加工(EDM)ユニット50により放電エネルギーを固体構造100の改質層120の第1の領域122の分離起点124に印加することにより、改質層120の分離起点124から固体構造100を分離又は薄型化することができる。固体構造100の加工対象領域110の改質層120の応力(圧縮応力又は引張応力)は、他の領域(非加工対象領域)とは異なるため、改質層120の分離起点124から分離程度を容易に大きくすることができる(
図7a及び
図7bを参照)。換言すると、本発明は、分離速度を加速できるだけでなく、放電加工(EDM)ユニット50の使用電力を低減させることができる。放電加工(EDM)ユニット50の作動原理、作動方法及び構造は、当業者に知られているものであり、本発明の重要点ではないため、詳細な説明が省略される。
【0065】
図8に示すように、本発明は、1つの放電電極52(単一の導電性構造)を有する放電加工(EDM)ユニットにより1つの固体構造(すなわち、単一の被加工物)に対して分離ステップを実行することを例として説明するが、本発明はこれに限定されない。
図13aに示すように、本発明の放電電極52は、例えば、複数の固体構造100(すなわち、複数の被加工物)に対して分離ステップを同時に実行してもよく、すなわち、放電電極52は、複数の固体構造100を同時に分離することができる。同様に、本発明は、複数の分離された放電電極52(複数の導電性構造)で1つの固体構造100(
図13bに示される)又は複数の固体構造100(
図13cに示される)に対して分離ステップを同時に実行してもよい。さらに、本発明の分離ステップS20は、上記液状又はガス状などの流体中で実行されることに限定されず、真空環境で実行されてもよい。換言すると、本発明の分離ステップS20は、放電電極52で被加工物100を湿式分離できる(すなわち、液体タンク又は加熱液体タンク80内で実行される)ことに加えて、放電電極52で固体構造100を乾式分離できる(すなわち、空気又は真空環境で実行される)。本発明は、放電電極52による固体構造100の乾式分離中に、放電電極52を選択的に降温してもよく、例えば、液体又はガスなどの降温流体を用いて放電電極52を降温させ又は温度を維持させてもよく、又は、液体又はガスなどの降温流体を用いることなく、放電電極52を放電エネルギーによって昇温させてもよい。同じ理由により、前記改質ステップS10又は分離ステップS20、及び後述する研磨ステップS30、埋めステップS70又は加熱ステップS50などの本発明の加工手順の各ステップはすべて、選択的に上記液状又はガス状などの流体中で実行されてもよく、又は真空環境で実行されてもよい。
【0066】
図7cに示すように、本発明の非接触式加工装置は、さらに選択的に電界源46を含んでもよく、上記分離ステップS20では、電界源46は、電界を固体構造100の改質層120に提供し、改質層120と固体構造100との界面に自由電子を蓄積させることにより、分離エネルギー源40が改質層120から固体構造100を分離又は薄型化するのを支援して、固体構造100を分離又は薄型化された固体構造とする。電界方向は限定されず、自由電子が改質層120と固体構造100との界面に蓄積できる限り、本発明に適用できる。
【0067】
また、
図7cに示すように、分離ステップS20の実行前に、本発明は、選択的に熱膨張物質48を、改質層120を有する固体構造100に接触させてもよく、例えば、固体構造100を上記熱膨張物質48(水など)に浸漬し、熱膨張物質48を改質層120の穴又は亀裂に浸透させる。又は、本発明は、熱膨張物質48を改質層120の穴又は亀裂に直接充填してもよく、この熱膨張物質は、例えば、水溶液などの液体又は水蒸気などのガスであり、さらに液体とガスの混合物である。従って、続いて、分離エネルギー源40(及び後続の熱源70)により分離エネルギー/熱エネルギーを改質層120を有する固体構造100に印加する場合、熱膨張物質48は、分離エネルギー/熱エネルギーを吸収するため、加熱膨張し又は沸騰し、さらに固体構造100を改質層120から分解するようにし、従って、本発明の熱膨張物質48は、分離エネルギー源40が改質層120から固体構造を分離又は薄型化するのを支援することができる。
【0068】
また、
図8に示すように、本発明の非接触式加工装置は、さらに選択的に、例えば、別のマイクロ波又は高周波源85をさらに含んでもよい。この別のマイクロ波又は高周波源85は、例えば、放電加工(EDM)ユニット50の放電電極52を介して改質層120に沿った方向から別のマイクロ波又は高周波エネルギーを固体構造100に提供することができる。この別のマイクロ波又は高周波源85は、分離エネルギー源として前記分離ステップS20に適用されてもよく、分離速度を加速し、研磨ユニットとして後述する研磨ステップS30に適用されてもよく、分離又は薄型化された固体構造の切断面又は薄型化面の表面粗さを低減させ、又は、加熱ユニットとして加熱ステップS50に適用されて、固体構造の温度を上昇させ、温度を上昇させることによって放射源のエネルギーの吸収率を向上させ、放電加工の効率を向上させることができる。また、本発明の放電加工(EDM)ユニット50は、分離、研磨及び加熱効果などを同時に発揮するように、放電電極52を介して放電エネルギーと別のマイクロ波又は高周波エネルギーを同時に提供してもよい。本発明の放電加工(EDM)ユニット50は、分離、研磨及び加熱効果などをそれぞれ発揮するように、放電電極52を介して放電エネルギーと別のマイクロ波又は高周波エネルギーを非同時に提供してもよい。
【0069】
また、
図9a及び
図9bに示すように、本発明の加工装置は、より選択的に、例えば、切断面又は薄型化面の表面粗さが、例えば、約30μm~約1μmの範囲から約10μm~約0.05μmの範囲に低減するように、加工手順の研磨ステップS30で上記分離又は薄型化された固体構造を研磨するための研磨ユニット60を含む。研磨ユニット60は、例えば、
図3~
図5、
図9a及び
図9bに示されるレーザー源20、
図7a、
図7b及び
図8に示される放電加工(EDM)ユニット50、
図3~
図5、
図7a、
図7b及び
図8~
図9aに示されるマイクロ波又は高周波源30、及び/又は
図8に示される別のマイクロ波又は高周波源85であってもよく、これによりレーザーエネルギー、放電エネルギー又はマイクロ波又は高周波エネルギーを用いて上記分離又は薄型化された固体構造(第1の半部の構造100a、又は第1の半部の構造100a及び第2の半部の構造100bなど)を研磨して切断面又は薄型化面の表面粗さを低減させる。
【0070】
また、
図8~
図9aに示すように、本発明の加工装置100は、より選択的に、例えば、加熱ステップS50を実行することにより、上記加工手順の改質ステップS10、分離ステップS20及び/又は研磨ステップS30の実行中又は後に固体構造100を加熱するための熱源70を含む。
図8は、固体構造100がインゴットであることを例とし、
図9aは、分離又は薄型化された固体構造がウエハであることを例とする。熱源70は、例えば、
図3~
図5、
図7a、
図7b及び
図9aに示されるレーザー源20、
図3~
図5、
図7a、
図7b及び
図8~
図9aに示されるマイクロ波又は高周波源30、
図8~
図9aに示される加熱液体タンク80、別のレーザー源、別のマイクロ波又は高周波源85、及び/又は赤外線光源である。上記熱源70としての加熱液体タンク80は、加熱液体82、好ましくは熱油、より好ましくはフッ素油などの耐高温油を有し、上記加工手順のステップの全部又はステップの一部では、固体構造100は、加熱液体82に浸漬できることにより、熱衝撃による不要な亀裂又は亀裂の拡大を低減させることができる。分離ステップS20では、熱源70により固体構造100を同時に加熱する場合、固体構造100の温度を上昇させることができ、加熱により、改質層120上により多くの自由電子を生成し、自由電子の生成は、他の領域(非加工対象領域)よりも多くのマイクロ波エネルギーを吸収できるため、加工対象領域110の改質層120の温度を上昇させることができ、温度が上昇するため、改質層120がより多くのレーザーエネルギーを吸収してより多くの自由電子を生成し、マイクロ波又は高周波放射源によって提供されたより多くの電磁エネルギーを吸収し、従って正のサイクルを形成することに寄与する。
【0071】
また、
図8に示すように、本発明の加工装置100は、より選択的に、例えば、加工手順の検出及び制御ステップS40で固体構造100の改質層120の形成状態を検出し、例えば、自由電子量を検出することによってその光伝導減衰の変化及び欠陥の発生状態を得て、さらにレーザー源20によって提供されたレーザーエネルギーをフィードバック制御するか、及び/又はマイクロ波又は高周波源30によって提供されたマイクロ波又は高周波エネルギーをフィードバック制御し、例えば、マイクロ波又は高周波源30によって提供されたマイクロ波又は高周波エネルギーの大きさ、周波数又は加工送り速度などを制御するための検出及び制御ユニット90を含む。上記検出及び制御ステップS40は、例えば、改質ステップS10、分離ステップS20及び/又は研磨ステップS30の実行中に同時に実行されてもよい。
【0072】
また、上記分離ステップS20の実行中に、固体構造100の加工対象領域110の周囲(切断面又は薄型化面)に、深さの異なる表面亀裂112が発生する。従って、本発明は、さらに選択的に埋めステップS70を実行してもよく、例えば、超音波ユニットなどの外力外乱源95(
図10aに示される)を用いて超音波を提供して加工対象領域110の切断面又は薄型化面の表面亀裂112を埋め材114で埋めるようにし、これらの余分な表面亀裂112の連続的な拡大を回避することにより、その構造を強化できるだけでなく、分離ステップS20を高速(さらに加速)実行する効果を達成できる。埋め材の組成は、例えば、Si、SiC、SiGe、Ge、GaAs、GaN又はInPなどの材料であってもよいが、これらに限定されず、埋め剤又は接着剤などの、亀裂を埋めるのに適する任意の材料は、いずれも本発明に適用できる。超音波の周波数範囲は、例えば、約15KHz~約30KHzであるが、これに限定されない。この埋めステップS70は、選択的に流体中で実行されてもよく、この流体は、例えば、加熱液体82、水又は空気などの伝導媒体であり、超音波は、流体中に流体液滴及び衝撃圧力波を発生させて、埋め材114の材料粒子を加工対象領域110の切断面又は薄型化面の表面亀裂112に埋め込むようにする。また、本発明は、特定の構造の超音波ユニットに限定されず、超音波ユニットが超音波を提供する方向も特に限定されず、任意の方向であってもよく、埋め効果を達成できる限り、本発明に適用できる。
【0073】
また、本発明は、上記熱源70によって提供された熱エネルギーにより、分離又は切断された固体構造(第1の半部の構造100aなど)の表面又はその改質層120の表面を酸化し又は他の化学反応を発生させて、酸化ケイ素又は酸化物などの
図10bに示される埋め材114を形成し、さらに表面亀裂112を埋めて表面亀裂112の伝播を防止することができる。
【0074】
上記のように、本発明による非接触式加工装置及び加工方法は、以下の1つ又は複数の利点を有する。
【0075】
(1)本発明は、改質ステップで電磁放射源を用いて固体構造の加工対象領域に質的な変化又は欠陥を発生させることにより、他の領域との応力、構造強度、結晶格子形態又は硬度の違いを発生させる。本発明は、分離ステップでこの応力、構造強度、結晶格子形態又は硬度の違いによって、固体構造を高速に分離又は薄型化することができる。
【0076】
(2)本発明は、分離ステップで改質現象が発生した固体構造に分離エネルギーを印加することにより、応力、構造強度、結晶格子形態又は硬度の違いによる改質層と他の領域の分離エネルギー源に対する異なる応答を用いて、改質層から固体構造を分離又は薄型化する。
【0077】
(3)本発明は、熱源により固体構造を加熱し、固体構造の温度を上昇させることができ、温度を上昇させることによって放射源のエネルギーの吸収率を向上させることができる。
【0078】
(4)本発明は、固体構造の改質層の形成状態を検出し、さらにレーザー源によって提供されたレーザーエネルギーをフィードバック制御するか、及び/又はマイクロ波又は高周波源によって提供されたマイクロ波又は高周波エネルギーをフィードバック制御し、例えば、マイクロ波又は高周波源によって提供されたマイクロ波又は高周波エネルギーの大きさ、周波数又は加工送り速度などを制御することができる。
【0079】
(5)本発明は、固体構造の分離速度を加速でき、さらに加工対象領域の表面亀裂を埋めることにより、余分な表面亀裂の拡大を防止する。
【0080】
(6)本発明は、加熱液体タンク内で加工手順を実行でき、熱衝撃による不要な亀裂又は亀裂伝播を低減させ、不要な表面亀裂の拡大を防止することができる。
【0081】
以上の記述は例を挙げたものにすぎず、限定するものではない。本発明の精神及び範疇から逸脱しない、それに対して行ういかなる同等効果の修正又は変更も、添付の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
S10:改質ステップ
S20:分離ステップ
S30:研磨ステップ
S40:検出及び制御ステップ
S50:加熱ステップ
S60:後続ステップ
S70:埋めステップ
20:レーザー源
22:レーザー発生器
23:パルス光
24:レンズ群
30:マイクロ波又は高周波源
32:マイクロ波発生器
33:マイクロ波
34:同軸共振器
35:開口部
36:アイソレータ
38:整合器
38a:同軸管
38b:金属板
38c:金属棒
40:分離エネルギー源
42:吸収素子
46:電界源
48:熱膨張物質
50:放電加工(EDM)ユニット
52:放電電極
60:研磨ユニット
70:熱源
80:加熱液体タンク
82:加熱液体
85:別のマイクロ波又は高周波源
90:検出及び制御ユニット
92:温度センサ
95:外力外乱源
100:固体構造
110:加工対象領域
112:表面亀裂
114:埋め材
120:改質層
122:第1の領域
124:分離起点
100a:第1の半部の構造
100b:第2の半部の構造
140:埋め材
150:載置ステージ
X:深さ
L1:水平方向の二重矢印
L2:垂直方向の二重矢印
C1:水平方向の二重矢印
C2:垂直方向の二重矢印
I-I’、II-II’:断面線