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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】点群処理装置、点群処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 7/04 20060101AFI20240930BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
G01C7/04
G06T1/00 400A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023199545
(22)【出願日】2023-11-27
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮辻 和宏
(72)【発明者】
【氏名】西村 修
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/244134(WO,A1)
【文献】特開2011-215956(JP,A)
【文献】特開2004-325209(JP,A)
【文献】特開2012-018170(JP,A)
【文献】特開2018-044913(JP,A)
【文献】特開2018-197712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 7/00-7/06
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路又は歩道の路面及び前記路面の周辺地物が互いに重複部分を有して計測された基準点群及び補正対象点群を取得する取得手段と、
前記基準点群及び前記補正対象点群から、前記道路又は歩道上の移動物体よりも高い範囲の部分点群をそれぞれ抽出し、前記部分点群同士を比較して前記補正対象点群の水平位置を前記基準点群の位置に合わせる水平位置補正手段と、
前記基準点群及び前記水平位置補正手段により位置合わせされた前記補正対象点群において、水平位置が共通する共通領域の高さを一致させる鉛直位置補正手段と、
を備える点群処理装置。
【請求項2】
前記鉛直位置補正手段は、前記路面上に前記共通領域を設定する、請求項1記載の点群処理装置。
【請求項3】
前記取得手段は、前記道路又は歩道を移動する計測機器により計測された前記基準点群及び前記補正対象点群を計測時の前記計測機器の位置である計測位置と対応付けて取得し、
前記鉛直位置補正手段は、前記計測位置から所定距離内に前記共通領域を設定する、請求項2記載の点群処理装置。
【請求項4】
前記鉛直位置補正手段は、所定の高さ内に前記基準点群を構成する点が所定個数以上含まれ、かつ前記補正対象点群を構成する点が前記所定個数以上含まれる前記共通領域を設定する、請求項2又は3記載の点群処理装置。
【請求項5】
道路又は歩道の路面及び前記路面の周辺地物が互いに重複部分を有して計測された基準点群及び補正対象点群を取得する取得ステップ、
前記基準点群及び前記補正対象点群から、前記道路又は歩道上の移動物体よりも高い範囲の部分点群をそれぞれ抽出し、前記部分点群同士を比較して前記補正対象点群の水平位置を前記基準点群の位置に合わせる水平位置補正ステップ、
前記基準点群及び前記水平位置補正ステップで位置合わせされた前記補正対象点群において、水平位置が共通する共通領域の高さを一致させる鉛直位置補正ステップ、
を含む点群処理方法。
【請求項6】
コンピュータを、
道路又は歩道の路面及び前記路面の周辺地物が互いに重複部分を有して計測された基準点群及び補正対象点群を取得する取得手段、
前記基準点群及び前記補正対象点群から、前記道路又は歩道上の移動物体よりも高い範囲の部分点群をそれぞれ抽出し、前記部分点群同士を比較して前記補正対象点群の水平位置を前記基準点群の位置に合わせる水平位置補正手段、
前記基準点群及び前記水平位置補正手段により位置合わせされた前記補正対象点群において、水平位置が共通する共通領域の高さを一致させる鉛直位置補正手段、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、点群処理装置、点群処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両を自動運転させるためのシステムの構築や道路管理のために、高精度な三次元道路データベースの整備が進められている。道路の三次元計測は、例えば、MMS(Mobile Mapping System)によるレーザー計測などにより行われる。MMSでは、道路を走行する車両から周囲の各所にレーザー光を照射して反射光を検出することで、道路に沿って路面及び周辺の地物の三次元位置を表す点群を取得する。点群を構成する各点の三次元位置は、GNSS(Global Navigation Satellite System)に係る測位衛星からの電波を受信して測位演算を行うことで特定される。
【0003】
道路の車線数が多い場合には、道路幅全体に対して一度で高密度にレーザー光を照射することは難しい。したがって、複数回の走行時における点群を接合して道路幅全体の点群が得られる。この接合に際し、複数回の走行時における点群の間に生じる微小な位置ずれを補正するために点群間の位置合わせが行われる。また、一度の走行中であっても、測位結果に基づく各点の位置には、若干の揺らぎが生じ得る。したがって、走行方向についても複数の区間に区分けして、各区間の重複部分における位置合わせを行って揺らぎの影響を排除することが望ましい。位置合わせには、ICP(Iterative Closest Point)やLS3D(Least Squares 3D Surface Matching)などの技術が知られている(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】間野耕司、他6名、「移動計測車両測量システム(MMS)により取得される点群の精度評価」、写真測量とリモートセンシング、一般社団法人日本写真測量学会、2012年9月7日、51巻4号、p.186-200
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような位置合わせの技術を道路や歩道での移動中に計測された点群に対して適用する場合、他の車両や通行人などの通行物体により適切に位置合わせを行うことができない場合がある。その結果、位置精度が低下する場合があるという課題がある。
【0006】
この発明の目的は、より精度よく点群の位置を補正することができる点群処理装置、点群処理方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示は、
道路又は歩道の路面及び前記路面の周辺地物が互いに重複部分を有して計測された基準点群及び補正対象点群を取得する取得手段と、
前記基準点群及び前記補正対象点群から、前記道路又は歩道上の移動物体よりも高い範囲の部分点群をそれぞれ抽出し、前記部分点群同士を比較して前記補正対象点群の水平位置を前記基準点群の位置に合わせる水平位置補正手段と、
前記基準点群及び前記水平位置補正手段により位置合わせされた前記補正対象点群において、水平位置が共通する共通領域の高さを一致させる鉛直位置補正手段と、
を備える点群処理装置である。
【発明の効果】
【0008】
本開示に従うと、より精度よく点群の位置を補正することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】情報処理装置の機能構成を示すブロック図である。
図2】各ブロック及び中心点の設定例を模式的に示した図である。
図3】水平方向の位置合わせを説明する図である。
図4】高さずれ量の算出に係る路面点群の抽出範囲の設定について説明する図である。
図5】高さ調整の例を模式的に説明する図である。
図6】点群位置補正処理の制御手順を示すフローチャートである。
図7】車線間の位置合わせについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の点群処理装置である情報処理装置1の機能構成を示すブロック図である。
【0011】
情報処理装置1は、制御部11と、記憶部12と、入出力インターフェイス13(I/F)と、表示部14と、操作受付部15などを備える。
【0012】
制御部11は、情報処理装置1の動作を統括制御する。制御部11は、演算処理を行うプロセッサを有する。プロセッサは、単一の汎用CPU(Central Processing Unit)であってもよいし、複数のCPUを有し、これらが並列に又は用途などに応じて独立に演算処理を行ってもよい。プロセッサには、特定の演算処理や画像処理などに特化したものが含まれていてもよい。制御部11は、記憶部12からプログラム120などを読み込んで実行することで各種制御処理を行う。
【0013】
記憶部12は、RAM(Random Access Memory)と不揮発性メモリとを有し、各種データを記憶する。RAMは、制御部11に作業用のメモリ空間を提供し一時データを記憶する。不揮発性メモリは、プログラム120や設定データなどを記憶保持する。不揮発性メモリは、例えば、フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)などであるがこれに限られない。記憶部12は、ROM(Read Only Memory)を有していてもよい。ROMには、初期制御プログラムなどが記憶され得る。プログラム120には、後述の点群位置補正処理に係る制御プログラムが含まれる。
【0014】
入出力インターフェイス13は、情報処理装置1の外部(周辺機器を含む)との間でデータの入出力を行う。入出力インターフェイス13は、接続端子131及び通信部132を有する。接続端子131には、例えば、USB(Universal Serial Bus)端子やLAN(Local Area Network)コネクタなどが含まれる。通信部132は、例えば、TCP/IPなどのLANに係る通信規約(プロトコル)に従って通信を制御する。
【0015】
周辺機器としては、補助記憶装置であるデータベース装置21、並びにCDROM、DVD及びBlu-ray(登録商標)などの可搬型記憶媒体(光学ディスク)を読み取る光学読取装置22などが含まれていてもよい。また、可搬型記憶媒体に磁気テープが含まれ、この磁気テープを読み取る読取装置が周辺機器に含まれていてもよい。
【0016】
入出力インターフェイス13を介して情報処理装置1が外部から取得可能なデータには、計測データ201及び移動軌跡データ202が含まれる。
計測データ201は、道路上を移動する計測車両に搭載された計測機器を用いて適宜な間隔で道路の路面及び当該路面の周辺の地物(周辺地物)の表面の三次元位置を計測した点群を含むデータである。また、計測データ201は、歩道上を移動する手押し車に設置された計測機器あるいは歩道上を移動する計測者が背負う計測機器などを用いて適宜な間隔で歩道の路面及び当該路面の周辺地物の表面の三次元位置を計測した点群を含むデータであってもよい。周辺地物は、例えば、道路や歩道に沿って存在する建物及び斜面、並びに道路脇の標識などである。点群は、路面及び周辺地物の三次元形状を表す。
【0017】
計測機器には、例えば、レーザースキャナ、衛星測位装置及び姿勢計測装置が含まれる。この場合、レーザースキャナからレーザー光が出射されてその反射波が検出されることにより反射点の出射点に対する相対位置情報が得られる。すなわち、出射されたレーザー光が検出されるまでの時間及び光速に応じたTOF(Time of Flight)により、出射点から反射点までの距離が特定される。あるいは、TOF方式の代わりにフェイズシフト方式のレーザースキャナによって相対位置情報が得られてもよい。また、レーザースキャナにおけるレーザー光の出射角度及び姿勢計測装置により計測されるレーザースキャナの姿勢から、出射点に対する反射点の方向が特定される。一方、出射点の絶対位置、すなわち地理的な位置、及び出射時刻は、衛星測位装置がGNSS(Global Navigation Satellite System)を用いた衛星測位を行うことによって得られる。
【0018】
これらの結果を組み合わせて、上記相対位置情報が得られた各反射点の絶対位置が得られる。絶対位置は、例えば、水平方向に互いに直交するX軸及びY軸、並びに鉛直方向に沿ったZ軸を有する平面直角座標系などの直交座標系における三次元位置、又は緯度、経度及び高度を有する三次元位置として表される。
レーザー光は、適宜な時間間隔で周囲の各方向へ出射される。これに応じて、路面及び周辺地物の表面位置を計測したデータであって、離散的な複数の点(反射点)それぞれの三次元位置を表すデータの集合である点群が得られる。
【0019】
計測データ201は、一回又は複数回の計測作業により得られた点群を含んでいる。この点群データ201においては、計測作業と当該計測作業で得られた点群を構成する各点とが対応付けられている。例えば、計測車両の一回の走行にて計測された点群が一意のファイル名を有する一つのファイルに格納されてもよい。また、例えば、計測車両がある道路のある区間の上り車線を走行して得られた点群と、この区間と共通の区間の下り車線を走行して得られた点群とは、別のファイルに格納され得る。
【0020】
また、計測データ201においては、点群を構成する各点の三次元位置に対して当該点を計測した時の計測位置が対応付けられている。これにより、点群の中から任意の範囲内の計測位置で計測された点を抽出することができる。また、計測データ201においては、計測位置の計測順序が特定可能となっている。この計測順序で並べられた計測位置が移動軌跡を表す。本実施形態では、計測データ201から抽出された、各点群に対応する移動軌跡が移動軌跡202として取得される。
【0021】
計測位置は、上記衛星測位により適宜な間隔で取得された絶対位置に基づく位置情報である。衛星測位による絶対位置の取得タイミングと各点の計測タイミングとが一致しない場合には、計測タイミングに対応する絶対位置は、これと前後して衛星測位により取得された絶対位置と日時との関係から内挿することによって取得されればよい。計測位置は、例えば、各点を計測した時の衛星測位装置の三次元位置(衛星測位により得られた位置そのもの)を表す。また例えば、計測位置は、衛星測位装置とレーザースキャナの設置位置との関係をもとに換算したレーザースキャナの出射点の三次元位置とされてもよい。また例えば、計測位置は、衛星測位装置又はレーザースキャナの三次元位置における高さ成分の値を、水平成分が一致する位置において点群に形成される面である路面高さの値に置換した三次元位置であってもよい。あるいは、計測位置は、上記で得られたいずれかの三次元位置から高さ成分を除いた二次元位置であってもよい。
【0022】
各点の三次元位置と計測位置とは、1対1で対応付けられてもよいし、多対1で対応付けられてもよい。1対1で対応付けられる場合には、例えば、各点群のファイルを、各点の計測位置と三次元位置とからなるデータの組が計測された順に並べられたファイルとすることができる。多対1で対応付けられる場合には、例えば、所定の距離間隔に計測位置が間引かれて、各点群のファイルを、間引かれた残りの計測位置と、当該計測位置からその次の残りの計測位置までの間に計測された複数の点の三次元位置とからなるデータの組が、計測された順に並べられたファイルとすることができる。なお、この場合の距離間隔は、後述の中心点間の距離より短く、すなわち、後述の各ブロックに複数の計測位置が含まれるように予め設定される。
また、計測データ201において、各点の三次元位置に対して更に各点の計測日時や計測時の姿勢などが対応付けられていてもよい。
【0023】
表示部14は、制御部11の制御に基づいて表示画面に表示を行う。表示画面は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro-Luminescent)ディスプレイなどであるが、これらに限られるものではない。
【0024】
操作受付部15は、外部からの入力操作を受け付けて、入力操作に応じた操作信号を制御部11へ出力する。操作受付部15は、例えば、キーボードとポインティングデバイスなどを含む。ポインティングデバイスは、マウスであってもよい。
表示部14及び/又は操作受付部15は、情報処理装置1の周辺機器であってもよい。すなわち、これらは上記制御部11、記憶部12及び入出力インターフェイス13を含む情報処理装置1の本体(コンピュータ)に取り付けられるものであってもよい。
【0025】
次に、本実施形態の点群処理動作について説明する。
【0026】
上述したように、点群を構成する各点の三次元位置は、衛星測位によって得られた絶対位置と日時とにより算出されている。しかしながら、この日時の情報は、計測機器の状況、例えば発熱状況などに応じて微小な揺らぎを伴う場合がある。その結果、揺らぎに応じて、点群を構成する各点の三次元位置が不正確になり得る。そこで、本実施形態では、計測機器の移動時に連続的に取得された三次元位置のデータである点群を複数の区間に分割し、分割した区間の点群どうしを位置合わせすることによって、揺らぎの影響を除いた正確な点群に補正する。
【0027】
まず、処理対象の点群に対応付けられた移動軌跡上(計測位置を結んだ折れ線上)で所定距離ごとに中心点を定める。所定距離は、上記揺らぎの影響が無視できる範囲の長さであり、例えば、30メートルである。ただし、1つめの中心点は、移動軌跡の先端から所定距離の2分の1の位置に定められる。これらの各中心点について、移動軌跡上で中心点から前後に所定距離の2分の1の距離範囲内の計測位置を抽出し、抽出した計測位置に対応付けられた点を点群から抽出する。あるいは、移動軌跡上で所定距離ごとに、当該距離の範囲内の計測位置を抽出し、さらに、抽出された計測位置に対応付けられた点を点群から抽出するとともに、移動軌跡上の所定距離の2分の1の位置に中心点を定めてもよい。
これにより、各中心点について抽出された点の集まりを表すブロックが移動軌跡に沿って連続して設定される。以下では、各中心点について抽出された点の分布範囲を各ブロックの範囲と称する。そして、各ブロックの範囲は、前後のブロックの範囲と重複する部分を含み、この重複部分の点(点群どうしの重複部分)を利用した位置合わせが可能となる。先頭のブロックの絶対位置(地理的座標)は、手動で調整され得る。
【0028】
図2は、中心点C1~C3及び各ブロックA1~A3の設定例を示す図である。なお、説明の簡単化のために、ここでは、道路の延在方向をX方向とし、道路の幅方向をY方向としている。ブロックA1~A3の範囲は、路面に係る範囲を示しており、実際には、Y方向に広く周辺地物の表面位置も含まれる。
【0029】
ブロックA1、A2は、互いに重複する重複部分D12を有し、ブロックA2、A3は、互いに重複する重複部分D23を有する。この重複部分D12、D23の計測データを用い、一方のブロック(例えばブロックA1)の範囲を基準区間とし、当該一方以外のブロック(例えば、ブロックA2)の範囲を補正対象区間とする。基準区間の点群(基準点群)に属する点の三次元位置に対して、補正対象区間の点群(補正対象点群)に属する点の位置のずれ量を算出することで、補正される大きさが特定される。すなわち、補正量は、ずれ量の各成分の符号が反転された値となる。
【0030】
本実施形態における点群は、路面及び周辺地物を本来の計測対象として取得されるものである。しかしながら、点群には、本来の計測対象ではない車両や通行人などの移動物体が含まれる場合がある。このような移動物体は、位置合わせにおいて外乱となる。本実施形態では、点群の中の移動物体の高さよりも高い範囲の点(部分点群)を用いた位置合わせを行うことによって移動物体による位置合わせの精度の低下を防ぐ。部分点群は、周辺地物が計測された点の集まりとなる。ただし、部分点群は、高さ方向の特徴が少ないので、鉛直方向の位置合わせには用いられず、水平方向の位置合わせに用いられる。鉛直方向の位置合わせは、水平方向の位置合わせ後に別途行われる。これにより、鉛直方向の位置合わせに際して水平方向に位置合わせされた点を用いることが可能となり、位置合わせを高精度に行うことができる。特に、路面は高密度に計測されることから、鉛直方向の位置合わせには路面が計測された点を用いることが適していることに鑑み、移動軌跡上又は移動軌跡付近の点(路面点群)を鉛直方向の位置合わせに用いることで、位置合わせを高精度に行うことができる。
【0031】
図3は、水平方向の位置合わせを説明するための図である。
図3(a)に示す点群の道路側方で得られる部分には、建物や道路設置物などの周辺地物が含まれている。これらに対し、まず、路面の代表的な高さを仮路面高さとして各ブロックで取得する。代表的な高さは、ブロック内の点群のうち三次元位置又は水平位置が移動軌跡から所定距離内である点における高さの最小値、平均値又は中央値とすることができる。本実施形態では、水平位置が中心点から1メートル以内である点における最小の高さを仮路面高さとする。この仮路面高さからある基準高さ範囲の点の集合を部分点群としてそれぞれ抽出して、その水平方向への位置ずれ量(水平位置ずれ量)を特定する。基準高さ範囲は、例えば、通常の車両(自転車や自動二輪を含む)の全高、歩行者や沿線住民の身長など、道路又は歩道上の移動物体より高い位置を下限高さとする高さ範囲であって、下限高さよりも数十センチメートル~数メートル程度高い位置を上限高さとする範囲に設定されるとよい。ここでいう通常の車両からは、作業中の高所作業車、クレーン車など特殊な車両などは除外されてもよい。また、周辺地物の状況に応じて、基準高さ範囲は変更設定可能であってもよい。また、水平位置の範囲についても、ブロック内の全点の中から部分点群を抽出するのではなく、例えば、ブロック内において移動軌跡から所定水平距離内の点の中から部分点群を抽出するなど、位置合わせの精度が確保できる十分な広さの範囲を適宜設定して部分点群の抽出元としてもよい。このようにして移動物体よりも高い位置範囲に設定される部分点群は、移動物体により妨げられにくい。したがって、水平位置ずれ量は、周辺地物に基づき精度よく算出される。
【0032】
図3(a)において、各点のうち、黒色で示されている帯状の領域が基準となるブロックにおける基準高さ範囲の部分点群である。濃い灰色で示されている帯状の領域(一部は黒色の点と重複している)が位置合わせされる側のブロックにおける基準高さ範囲の部分点群である。
【0033】
各ブロック内で計測された点群は、必ずしも同一位置ではないので、単純に各ブロックの部分点群に属する点同士を位置合わせすることはできない。一方で、両ブロックの帯状の領域において最も近い点は、概ね同一の構造物の表面位置を表している。本実施形態では、例えば、水平位置ずれ量の算出に、ICP(Iterative Closest Point)マッチングアルゴリズムが用いられる。ICPマッチングでは、(1)基準側の部分点群の各点に最も近い補正対象側の部分点群に属する点を各々検索する。(2)これら検索された点を全体として対応付けられた基準側の部分点群の各点に最近接させるための移動量を算出する。求められた移動量で補正対象側の部分点群を移動させた後に、上記(1)及び(2)の処理を繰り返すことで、漸近的に移動量を最適値に収束させていく。
【0034】
ICPマッチングで求められる移動量は、一般的には、平行移動と回転移動の和である。しかしながら、随時衛星測位及び姿勢計測を行いながら計測機器を移動させて行う計測では、回転移動量は無視できるほど小さいことが多い。したがって、移動量の算出は、平行移動のみに対して行われてもよい。また、ここでは、鉛直方向成分(高さ)は調整されない。したがって、単純に位置データのうちZ成分が無視されて、二次元でのデータ処理がされてもよいし、Z成分を一時的にゼロとして三次元データ処理のアルゴリズムを用いて演算してもよい。すなわち、上記ICPマッチングアルゴリズムにおける繰り返し処理の各回で得られた平行移動量(Txi、Tyi)(iは処理回数を表す変数)として、平行移動量Tx=ΣTxi,Ty=ΣTyi(Σはそれぞれiについての総和)が求められる。補正後の各点の水平位置(Xc、Yc)は、補正前の各点の水平位置(X,Y)から、それぞれXc=X+Tx、Yc=Y+Tyとして表される。なお、補正対象には、補正対象区間のブロック内の点だけでなく、これに対応する移動軌跡を構成する計測位置も含まれる。
【0035】
ICPマッチングアルゴリズムは、処理量が多いため、処理対象の点をできる限り少なくする必要がある。上記の基準高さ範囲は、精度よく水平ずれ量が求められる点の数と、処理量との関係で適宜定められる。特に、周辺地物の形状を表す点は、数十センチメートル~数メートル程度の高さ範囲で十分な数が得られることが多いため、基準高さ範囲に上限高さを定めることで、容易かつ適切に処理対象の点の数を少なくできて、処理量が低減される。基準高さ範囲は、状況に応じて可変に定められてもよい。
【0036】
図3(b)に示す水平方向の位置ずれの例では、道路の延在方向Xに対して右斜め約40度の方向に路面標示などのずれが生じていることが分かる。上記ICPマッチングアルゴリズムにより、水平面内2方向の位置ずれ量が特定される。なお、基準高さ範囲内に周辺地物が十分になく、精度よく水平位置ずれ量を特定することが困難な場合には、補正対象点群の位置合わせの処理をエラー終了する。この場合には、以降の高さずれ量の算出及び位置合わせも中止される。
【0037】
水平位置ずれ量が算出されると、補正対象のブロックにおける各点の水平位置が当該水平位置ずれ量を用いて補正されて位置合わせされる。その後、補正対象のブロックの高さずれ量が算出される。高さずれ量は、路面上の複数の点(以下、路面点群)を用いて求められる。この場合も路面点群の位置同士は一致しない。高さずれ量は、一次元のスカラー値であるので、例えば、単純に抽出された、路面点群同士の高さの平均値といった代表値の差分が求められてもよい。この差分を解消するように、すなわち、補正対象区間の路面の高さが基準区間の路面の高さに一致するように補正されることで、補正対象区間の高さと基準区間の高さとのずれが調整される。
【0038】
基準区間及び補正対象区間の路面上の路面点群は、例えば、平面視で両ブロックの重複部分における移動軌跡上の点を中心点(路面中心点)とした所定の半径の円内(水平位置が共通する共通領域)でそれぞれ設定されてもよい。路面中心点は、例えば、両ブロックの共通部分における移動軌跡上で当該移動軌跡の始端又は終端から当該移動軌跡に沿った長さの2分の1の距離に設定され得る。平面視でこの共通領域の範囲において、上記仮路面高さを基準として上下基準差の範囲(所定の高さ)内にある点が抽出されればよい。共通領域及び上下基準差は、路面ではない点、すなわち、周囲の車両や人などの移動物体が除外されるように定められる。例えば、所定の半径は1メートルであってもよい。また、例えば、仮路面高さより1メートル下方から仮路面高さより20センチメートル上方までの範囲などの上下基準差が設定されてもよい。これらの上下基準差と円の半径及び路面中心点の位置とにより規定される円柱内の点が路面点群の候補として抽出される。
【0039】
本実施形態では、さらに、抽出された点の中で高さが低い点から順に所定個数が抽出されてもよい。局所的な路面において高さが高い点は、例えば、落ち葉や砂利などの表面を計測して得られている場合がある。このように路面を適切に計測していない点が除外されることで、位置合わせの精度が向上する。所定個数は、例えば、10個であってもよい。共通領域において移動物体が計測されずに路面が計測されている確度を高めるために、基準区間及び補正対象区間の両方からそれぞれ所定個数の点が得られる必要がある。
【0040】
図4は、高さずれ量の算出に係る路面点群の抽出範囲の設定について説明する図である。
上記のような路面点群の抽出において、設定された路面中心点付近に車両や人などの移動物体が存在した場合に、路面中心点を中心とする所定の半径の円(R1)内からでは、十分な個数の点が得られない場合がある。抽出された点の数が上記所定個数よりも少ない場合には、まず、上記所定の半径を拡大して抽出処理が行われることで、抽出する点の数の増大を図ってもよい。半径の拡大は、例えば、上記所定の半径の1.5倍(R2)~2.0倍(R3)などであってもよい。半径の拡大は、1回であってもよいし、拡大量を変えながら複数回繰り返されてもよい。
【0041】
半径を上限まで拡張しても抽出された点の数が所定個数に達しない場合には、抽出範囲の中心位置を上記路面中心点から水平方向にずらして再度上記の抽出処理が行われてもよい。中心位置をずらす方向は、例えば、前後方向のみであってもよいし、前後左右4方向や、斜めを含む8方向などであってもよい。例えば、中心位置を走行方向に所定の半径ずらした円R4、中心位置を走行方向とは反対側に所定の半径ずらした円R5でそれぞれ所定個数以上の点が得られるかを順番に判別してもよい。いずれでも所定個数以上の点が得られない場合には、円R6、R7、R8、R9のように中心位置のずらし幅を所定半径の2倍、3倍と所定個数以上の点が得られるまで順次拡大していってもよい。中心位置のずらし幅には、上限値が規定されていてもよい。中心位置のずらし幅の上限値(所定距離)は、必要な精度で点の位置が特定される範囲内で定められる。路面計測に係るレーザー光の照射は、レーザー光の出射位置の鉛直方向真下で最も密になされ、この点から離れるに従って精度が低下する。したがって、Y方向に大きく離れると、鉛直方向についての位置ずれ量の特定精度が低下し得る。
【0042】
上記の抽出範囲の変更によっても所定個数以上の点が抽出されない場合には、位置合わせエラーとして、このブロックの位置ずれ量算出を中止する。この場合には、1ブロック前の位置ずれ量をそのまま推定位置ずれ量として援用してもよい。
【0043】
図5は、高さ調整の例を模式的に説明する図である。
図5(a)の斜視図において、例えば、薄灰色の点がスキャナで計測された基準区間の位置であり、濃灰色の点がスキャナで計測された補正対象区間の位置である。円R1内で密に並ぶ黒点は、MMSで計測された基準区間及び補正対象区間の位置である。グリッド線はそれぞれX方向及びY方向を表している。
【0044】
図5(b)は、円Rr内の各点の高さZをY方向について示した図である。2本の点線で示した範囲内が円R1内の各点の高さである。この結果では、補正対象区間の高さが基準区間の高さよりも高く計測されている傾向が表れている。円R1内から更に抽出されたそれぞれ所定個数の点により、共通領域における基準区間及び補正対象区間の路面の高さが得られ、これらの差分が高さずれ量として算出される。
【0045】
図6は、本実施形態の情報処理装置1の制御部11が実行する点群位置補正処理の制御手順を示すフローチャートである。本実施形態の点群処理方法を含むこの点群位置補正処理は、例えば、操作受付部15への所定の入力操作などに応じてプログラム120が読み出されて実行される。入力操作は、計測結果を表示するアプリケーションソフトウェアにおける処理命令の一環としてGUI(Graphical User Interface)により受け付けられるものであってもよい。計測データ201のうちユーザが補正を行わせようとする点群(例えば、点群のファイル)は、入力操作により指定されるか、又は予め設定データファイルが生成されて規定のフォルダなどに保持されることで読み込まれてもよい。
【0046】
制御部11は、取得手段として、計測データ201から点群を取得し、また、移動軌跡データ202を取得する(S1)。取得手段は、移動軌跡に沿って、所定距離ごとにブロックを設定する(S2)。
【0047】
取得手段は、設定されたブロックの中で、計測精度の良いブロックを選択して基準区間を設定する(S3)。取得手段は、ユーザの入力操作(選択操作)に応じて設定を行う。この基準区間は、ユーザが予め計測精度が良好であることを確認した区間であり、あるいはユーザが手動で予め点群の位置ずれを調整した区間などである。取得手段は、基準区間と重複部分を有するブロックを選択して、補正対象区間を設定する(S4)。基準区間の点群は、基準点群である。補正対象区間の点群は、補正対象点群である。
【0048】
制御部11は、水平位置補正手段として、基準区間と補正対象区間の各点群の仮路面高さを求め、また、基準高さ範囲の部分点群を抽出する(S5)。水平位置補正手段は、ICPマッチングアルゴリズムなどに基づいて、基準区間の部分点群に対する補正対象区間の部分点群の水平方向についての位置ずれ量を算出し、補正対象区間の各点及び計測位置の水平位置を補正する(S6)。
【0049】
制御部11は、鉛直位置補正手段として、基準区間と補正対象区間の各点群から、上記共通領域の円柱範囲内に位置する路面の点から更に抽出された路面点群をそれぞれ特定する(S7)。鉛直位置補正手段は、基準区間に対する補正対象区間の高さずれ量を算出し、補正対象区間の鉛直位置(高さ)を補正する(S8)。
【0050】
制御部11は、未補正のブロックが残っているか否かを判別する(S9)。未補正のブロックが残っていないと判別された場合には(S9;NO)、制御部11は、点群位置補正処理を終了する。
【0051】
未補正のブロックが残っていると判別された場合には(S9;YES)、取得手段は、未補正かつ補正済のブロックの範囲と重複する補正対象区間を設定し、この補正対象区間と重複部分を有する補正済のブロックの範囲を基準区間として設定する(S10)。基本的に、基準区間は、前回の処理で補正対象区間が設定されたブロックであってもよく、新たな補正対象区間は、前回の処理で補正対象区間が設定されたブロックの基準区間とは反対側のブロックの範囲とされてもよい。それから、制御部11の処理は、処理S5に戻る。
【0052】
図6のフローチャートを参照して説明した手順のうち、処理S1~S4、S10が本実施形態の点群処理方法における取得ステップに含まれる。処理S5~S6が本実施形態の点群処理方法における水平位置補正ステップに含まれる。処理S7~S8が本実施形態の点群処理方法における鉛直位置補正ステップに含まれる。
【0053】
上記では、計測に係る移動軌跡に沿った方向の位置ずれ補正について説明した。道路の車線数が多い場合や、対向車線間で道路が分離しているような場合には、同一の道路について1又は複数の車線ごとの計測が複数回にわたって行われる場合がある。この場合には、異なる回の点群の間で位置合わせが必要になる。なお、各回の計測は、少なくとも他の1つの回の計測と重複部分を有するようにして行われる。
【0054】
図7は、車線間の位置合わせについて説明する図である。
例えば、一方の車線での移動軌跡W1に沿った位置合わせが範囲Acにおいて終了した後、他方の車線での軌跡W2に沿った位置合わせが順番に行われる。中心点C4~C6とブロックA4~A6が設定される。設定は、移動軌跡W1に沿った位置合わせのときと同様にブロックA4~A6の間で重複部分が生じるように行われてもよい。しかしながら、この場合には、必ずしもブロックA4~A6の間で重複部分がなくてもよい。ここでは、移動軌跡W1と移動軌跡W2とは逆方向を向くが、同一方向へ向かう複数車線間で位置合わせが行われる場合には、移動軌跡W1と移動軌跡W2とは、同方向を向く。
【0055】
各ブロックA4~A6は、それぞれ位置合わせ済みの範囲Acと重複部分Dcで重複している。したがって、各ブロックA4~A6の範囲を補正対象区間としたときに、基準区間は常に範囲Acに定められ得る。すなわち、位置合わせ済の車線とは異なる車線の位置合わせをする場合には、位置合わせ済の車線の点群を基準点群として位置合わせが行われてもよい。位置合わせの手順は、図6に示した内容と同一であるので、詳しい説明を省略する。
【0056】
車線数の多い道路などで、3回以上の計測に係る位置合わせを行う場合には、位置合わせの順番は、適宜定められてもよい。例えば、ユーザがデータを視認して、又は制御部11の演算により、測位結果が最も安定して精度よく得られていると判定された計測に係る移動軌跡に沿って最初の位置合わせを行い、他の移動軌跡に沿った位置合わせは、当該最初に位置合わせされた移動軌跡に係るブロックの範囲を基準区間として行われてもよい。
【0057】
また、同一車線について重複部分を有する複数回の計測により得られた点群どうしの位置合わせも、同様にして行われ得る。この場合には、例えば、重複部分を有する2つの点群のうち一方の点群について位置合わせがされた後に、当該一方の点群の重複部分に最初の基準点群を設定し、他方の点群の重複部分に最初の補正対象点群を設定して、当該他方の点群についての位置合わせが行われればよい。また、例えば、一方の点群と他方の点群のそれぞれについて位置合わせされた後に、一方の点群を基準点群とし、他方の点群を補正対象点群として、両点群の重複部分に部分点群及び道路点群を設定して位置合わせを行ってもよい。
【0058】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記の水平位置合わせでは、ICPマッチングにおいて、高さ方向成分を無視して二次元面内での移動量を求めたが、これに限られない。ICPマッチングでは三次元的に移動量を求め、このうちXY方向成分の移動量のみが反映されて水平位置合わせが行われてもよい。
【0059】
あるいは、水平位置合わせには、LS3Dなど、ICPマッチング以外の他の手法が用いられてもよい。
【0060】
また、上記では、鉛直方向の位置合わせの際に、路面点群を円柱領域から抽出、特定したが、これに限られない。角柱領域が設定されてもよい。この場合の角柱は、平面視で正方形であってもよいし、移動軌跡の方向と平行な長辺を有する長方形であってもよい。
【0061】
また、鉛直方向の位置合わせの際に定められる円柱領域の軸位置、すなわち、平面視円形領域の中心位置は、移動軌跡上に定められなくてもよい。例えば、重複部分において移動軌跡から所定距離内(車幅程度に予め定められた距離内)の帯状領域内に乱数に基づいて中心位置が定められてもよい。あるいは、操作受付部15への入力操作に応じて手動で重複部分の路面上に中心位置が定められてもよい。
【0062】
また、基準区間及び補正対象区間を設定する際の中心点の距離間隔(上記所定距離)は、適宜定められてもよい。これらの設定は、例えば、ユーザによるデータの目視により、測位結果の揺らぎの大きさや間隔などを評価して、評価結果に応じて行われてもよい。
【0063】
また、計測データ201の点群は、その全部又は一部がレーザースキャナ以外で計測された点群であってもよい。例えば、点群は、その全部又は一部がカメラを移動させながら連続的に路面及び周辺地物を撮影した複数の画像をSfM(Structure from Motion)処理するなどして点群を得る多視点画像計測により計測された点群であってもよい。あるいは、点群は、路面が光切断法によって計測され、周辺地物がレーザースキャナによって計測された点群であってもよい。
【0064】
また、以上の説明では、本発明の計測位置補正の制御に係るプログラム120を記憶するコンピュータ読み取り可能な媒体としてHDD、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリなどからなる記憶部12を例に挙げて説明したが、これらに限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、MRAMなどの他の不揮発性メモリや、CD-ROM、DVDディスクなどの可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを、通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)も本発明に適用される。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、処理動作の内容及び手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載した発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【0065】
以上のように、本実施形態の点群処理装置である情報処理装置1は、制御部11を備える。制御部11は、取得手段として、道路又は歩道の路面及び路面の周辺地物が互いに重複部分を有して計測された基準点群及び補正対象点群を取得する。制御部11は、水平位置補正手段として、基準点群及び補正対象点群から、道路又は歩道上の移動物体よりも高い範囲の部分点群をそれぞれ抽出し、部分点群同士を比較して補正対象点群の水平位置を基準点群の位置に合わせる。制御部11は、鉛直位置補正手段として、基準点群及び水平位置補正手段により位置合わせされた補正対象点群において、水平位置が共通する共通領域の高さを一致させる。
このように、高い位置の部分点群を利用した水平位置の位置合わせと、水平位置を位置合わせした後の高さの位置合わせの二段階で位置合わせすることで、移動物体が存在する道路又は歩道が計測された点群であっても、情報処理装置1は、精度よく位置合わせを行うことができる。よって、情報処理装置1は、より精度よく点群の位置を補正することができる。
【0066】
また、鉛直位置補正手段は、路面上に共通領域を設定してもよい。高密度に計測される路面上の点を用いて鉛直方向の位置合わせをすることで、より精度よく点群の位置を補正することが可能になる。
【0067】
また、取得手段は、道路又は歩道を移動する計測機器により計測された基準点群及び補正対象点群を計測時の計測機器の位置である計測位置と対応付けて取得する。鉛直位置補正手段は、計測位置から所定距離内に共通領域を設定してもよい。計測位置から所定距離内に共通領域を設定することで、共通領域を路面上に設定できる確度が高まる。したがって、情報処理装置1は、高密度に計測される路面上の点を用いた精度の高い位置合わせをすることができる。
【0068】
また、鉛直位置補正手段は、所定の高さ内に基準点群を構成する点が所定個数以上含まれ、かつ補正対象点群を構成する点が所定個数以上含まれる共通領域を設定してもよい。基準点群と補正対象点群の高さを一致させる共通領域において、所定の高さ内の点の個数が不足している場合には、当該共通領域が適切に路面を計測していないと考えられる。したがって、所定の高さ内に点が所定個数以上含まれる共通領域を設定することによって、適切に路面を計測している共通領域を定めることで、精度よく位置合わせが可能になる。
【0069】
また、本実施形態の点群処理方法は、以下のステップを含む。(1)道路又は歩道の路面及び路面の周辺地物が互いに重複部分を有して計測された基準点群及び補正対象点群を取得する取得ステップ。(2)基準点群及び補正対象点群から、道路又は歩道上の移動物体よりも高い範囲の部分点群をそれぞれ抽出し、部分点群同士を比較して補正対象点群の水平位置を基準点群の位置に合わせる水平位置補正ステップ。(3)基準点群及び水平位置補正ステップで位置合わせされた補正対象点群において、水平位置が共通する共通領域の高さを一致させる鉛直位置補正ステップ。
この点群処理方法によれば、高い位置の部分点群を利用した水平位置の位置合わせと、水平位置を位置合わせした後の高さの位置合わせの二段階で位置合わせすることで、移動物体が存在する道路又は歩道が計測された点群であっても、精度よく位置合わせを行うことができる。したがって、この点群処理方法では、より精度よく点群の位置を補正することができる。
【0070】
また、上記点群処理方法に係るプログラム120を実行することで、汎用のコンピュータにより容易に点群の位置を精度よく補正することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 情報処理装置
11 制御部
12 記憶部
120 プログラム
13 入出力インターフェイス
131 接続端子
132 通信部
14 表示部
15 操作受付部
21 データベース装置
22 光学読取装置
201 計測データ
202 移動軌跡データ
【要約】
【課題】より精度よく点群の位置を補正することができる点群処理装置、点群処理方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】点群処理装置は、制御部を備える。制御部は、取得手段として、道路又は歩道の路面及び路面の周辺地物が互いに重複部分を有して計測された基準点群及び補正対象点群を取得する。制御部は、水平位置補正手段として、基準点群及び補正対象点群から、道路又は歩道上の移動物体よりも高い範囲の部分点群をそれぞれ抽出し、部分点群同士を比較して補正対象点群の水平位置を基準点群の位置に合わせる。制御部は、鉛直位置補正手段は、基準点群及び水平位置補正手段により位置合わせされた補正対象点群において、水平位置が共通する共通領域の高さを一致させる鉛直位置補正手段と、を備える。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7