(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】溶融塩原子炉用のキャンド回転動力式流体機械及び溶融塩原子炉用の流体機械用能動型磁気軸受
(51)【国際特許分類】
H02K 3/34 20060101AFI20240930BHJP
H02K 3/12 20060101ALI20240930BHJP
F04D 7/08 20060101ALI20240930BHJP
F04D 13/06 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
H02K3/34 C
H02K3/12
F04D7/08 A
F04D13/06 C
(21)【出願番号】P 2023504183
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 DK2021050251
(87)【国際公開番号】W WO2022022792
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-03-20
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】523021829
【氏名又は名称】コペンハーゲン アトミクス アーエス
【氏名又は名称原語表記】COPENHAGEN ATOMICS A/S
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】スタブガルド アスラック
(72)【発明者】
【氏名】ペーデルセン トーマス ヤン
(72)【発明者】
【氏名】シュテンベルグ トーマス
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-060214(JP,A)
【文献】特開平10-066288(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第01124104(GB,A)
【文献】国際公開第2015/083470(WO,A1)
【文献】特開昭60-032545(JP,A)
【文献】特開2001-133572(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0047804(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0069680(US,A1)
【文献】米国特許第04683111(US,A)
【文献】特開2016-042090(JP,A)
【文献】特表2018-506047(JP,A)
【文献】特開平11-324970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/00- 7/20
H02K 3/34
H02K 3/12
F04D 7/08
F04D 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体とともに動作するように構成されたキャンド回転動力式流体機械であって、
前記作動流体のための流入口と前記作動流体のための流出口とを有する渦形室内に配置された羽根車と、
固定子と回転子とを備える誘導型又はリラクタンス型のモータ又は発電機と、
前記固定子を含む乾燥領域から前記回転子が配置された作動流体領域を分離するキャン、特に格納用外殻部と、
を備え、
前記回転子は、前記羽根車に動作可能に連結され、
前記固定子は、前記回転子を貫通する磁界を誘導するための固定子ワインディングを備え、
前記固定子ワインディングは、前記固定子に設けられたスロットの内部に分散して配置され、
前記スロットの内部の前記固定子ワインディングの部分は、1本以上の導電性硬質バーによって構成されるとともに、前記導電性硬質バーの各々が1つの前記スロットを1回のみ通って延在し、
前記キャンド回転動力式流体機械は、溶融塩原子炉の溶融塩を作動流体として動作するように構成され、
前記キャンド回転動力式流体機械は、600℃を超える温度で動作するように構成され、
1つ以上のスペーサによって、前記導電性硬質バーは前記スロットの内部で位置決めされて保持され、前記1つ以上のスペーサは、前記1本以上の導電性硬質バーを前記固定子から電気的に絶縁するべく、前記導電性硬質バーの表面を前記スロットの表面から離間してこれらの間に空隙を作る、
キャンド回転動力式流体機械。
【請求項2】
前記導電性硬質バーは、前記導電性硬質バーが収容される前記スロットの軸方向両端から突出しているとともに、少なくとも複数本の前記導電性硬質バーの突出端部が、他の導電性硬質バーの突出端部に電気的に接続するために屈曲している、請求項1に記載のキャンド回転動力式流体機械。
【請求項3】
1つの前記スロットの内部の前記固定子ワインディングが17本未満の前記導電性硬質バーで構成されている、請求項1に記載のキャンド回転動力式流体機械。
【請求項4】
前記導電性硬質バーそれぞれが収容される前記スロットから突出する前記導電性硬質バーの屈曲した端部が、別のスロットに収容される前記導電性硬質バーの屈曲した又は直線状の端部に電気的に接続する、請求項1に記載のキャンド回転動力式流体機械。
【請求項5】
前記スロット及び前記導電性硬質バーは、直線に沿って前記固定子内に延在する、請求項1に記載のキャンド回転動力式流体機械。
【請求項6】
前記導電性硬質バーの端部が電気端子において電気的に接続されている、請求項1に記載のキャンド回転動力式流体機械。
【請求項7】
前記スペーサは、電気的絶縁性又は低い導電性を有する、請求項1に記載のキャンド回転動力式流体機械。
【請求項8】
前記スペーサは、前記導電性硬質バーを、前記スロットの壁から、及び/又は対応する前記スロット内の他の導電性硬質バーから間隔をあけて配置するように構成される、請求項7に記載のキャンド回転動力式流体機械。
【請求項9】
前記スペーサは、耐火セメントで形成される、請求項7に記載のキャンド回転動力式流体機械。
【請求項10】
前記スペーサは、前記導電性硬質バーを局所的に支持し、
前記スペーサは、対応する前記スロット内の前記導電性硬質バーの長さ方向に沿って軸方向に間隔をあけた2か所以上の位置に設けられる、
請求項7に記載のキャンド回転動力式流体機械。
【請求項11】
前記スロットそれぞれが1本の前記導電性硬質バーを収容する、請求項1に記載のキャンド回転動力式流体機械。
【請求項12】
前記導電性硬質バーは、多角形の横断面形状を有する、請求項1に記載のキャンド回転動力式流体機械。
【請求項13】
前記導電性硬質バーは、円形、楕円形、又は角を丸めた横断面形状を有する、請求項1に記載のキャンド回転動力式流体機械。
【請求項14】
前記導電性硬質バーは、5mm
2以上の横断面積を有する、請求項1に記載のキャンド回転動力式流体機械。
【請求項15】
前記導電性硬質バーは、前記スロット内で前記スペーサによってのみ支持されながら、前記モータ又は発電機の動作時に発生する磁力の影響下であっても、前記導電性硬質バーを収容する前記スロットの壁に接触せず、前記導電性硬質バーを収容する前記スロット内の他の導電性硬質バーに接触せずに、形状を保つのに足りる剛性を有する、請求項1に記載のキャンド回転動力式流体機械。
【請求項16】
前記回転子と前記キャンとの間に間隙が形成され、前記キャンド回転動力式流体機械は、作動流体の流れを前記間隙に強制的に通すように構成される、請求項1に記載のキャンド回転動力式流体機械。
【請求項17】
前記回転子は中空シャフトに取り付けられ、前記中空シャフトは管状空洞部を有し、
前記管状空洞部は前記間隙に流体接続されて、前記管状空洞部から前記流入口への作動流体の流れを可能にする、
請求項16に記載のキャンド回転動力式流体機械。
【請求項18】
前記導電性硬質バーは、前記スペーサ又は耐火セメントによって前記キャンド回転動力式流体機械の他の構成要素から間隔をあけて配置されることによってのみ絶縁される、請求項1に記載のキャンド回転動力流量機。
【請求項19】
前記導電性硬質バーは、冷却媒体が前記バーを通過して流れるようにするための縦長の管状空洞部を有する、請求項1に記載のキャンド回転動力式流体機械。
【請求項20】
前記導電性硬質バーは、長さ方向に延在する複数のフィラメント又は細片によって構成される、請求項1に記載のキャンド回転動力式流体機械。
【請求項21】
前記中空シャフトを支持する1つ以上の能動型磁気軸受を備える、請求項17に記載のキャンド回転動力式流体機械。
【請求項22】
前記能動型磁気軸受は、
軸受固定子と、
軸受回転子と、を備え、
前記軸受固定子は、前記軸受回転子を貫通する磁界を誘導するための軸受固定子ワインディングを備え、
前記軸受固定子ワインディングは、前記軸受固定子に設けられた1つ以上のスロット内に配置され、
前記1つ以上のスロット内の前記軸受固定子ワインディングの部分は、1本以上の導電性の硬質の軸受バーによって構成され、
前記軸受固定子は前記乾燥領域に含まれるとともに、前記軸受回転子は前記作動流体領域に配置される、
請求項21に記載のキャンド回転動力式流体機械。
【請求項23】
溶融塩原子炉の塩ループであって、
600℃を超える温度で溶融塩を圧送するように構成されたポンプを備え、
前記ポンプは、
作動流体のための流入口と前記作動流体のための流出口とを有する渦形室内に配置された羽根車と、
固定子と回転子とを備える誘導型又はリラクタンス型のモータ又は発電機と、
前記固定子を含む乾燥領域からキャンドポンプを構成するために前記回転子が配置された作動流体領域を分離するキャン、特に格納用外殻部と、
を備え、
前記回転子は、前記羽根車に動作可能に連結され、
前記固定子は、前記回転子を貫通する磁界を誘導するための固定子ワインディングを備え、
前記固定子ワインディングは、前記固定子に設けられたスロット内に分散して配置され、
前記スロットの内部の前記固定子ワインディングの部分は、1本以上の導電性硬質バーによって構成され、
前記導電性硬質バーの表面は前記スロットの表面から離間しており、これらの間に空隙が存在する、
溶融塩原子炉の塩ループ。
【請求項24】
溶融塩原子炉の溶融塩ループにおける、600℃以上の温度を有する溶融塩を圧送するための、請求項1に記載のキャンド回転動力式流体機械の使用。
【請求項25】
作動流体とともに動作するキャンド流体機械で使用される、400℃を超える温度を有する環境で動作するように構成された能動型磁気軸受であって、
固定子と、
回転子と、を備え、
前記固定子は、前記回転子を貫通する磁界を誘導するための固定子ワインディングを備え、
前記能動型磁気軸受は、前記固定子ワインディングへの電流供給を制御するように構成された制御部と通信して前記回転子の位置を検出する手段と、
前記固定子を含む乾燥領域から前記回転子が配置された作動流体領域を分離するキャン、特に格納用外殻部と、
をさらに備え、
前記固定子ワインディングは、前記固定子に設けられた1つ以上のスロットの内部に配され、
前記1つ以上のスロットの内部における前記固定子ワインディングの部分は、1本以上の導電性硬質バーによって構成され、
前記1本以上の導電性硬質バーを前記固定子から電気的に絶縁するための1つ以上のスペーサによって、前記導電性硬質バーは前記スロットの内部で位置決めされ
、
前記スペーサは、前記導電性硬質バーを局所的に支持し、
前記スペーサは、対応する前記スロット内の前記導電性硬質バーの長さ方向に沿って軸方向に間隔をあけた2か所以上の位置に設けられる、
能動型磁気軸受。
【請求項26】
作動流体とともに動作するキャンド流体機械で使用される、400℃を超える温度を有する環境で動作するように構成された能動型磁気軸受であって、
固定子と、
回転子と、を備え、
前記固定子は、前記回転子を貫通する磁界を誘導するための固定子ワインディングを備え、
前記能動型磁気軸受は、前記固定子ワインディングへの電流供給を制御するように構成された制御部と通信して前記回転子の位置を検出する手段と、
前記固定子を含む乾燥領域から前記回転子が配置された作動流体領域を分離するキャン、特に格納用外殻部と、
をさらに備え、
前記固定子ワインディングは、前記固定子に設けられた1つ以上のスロットの内部に配され、
前記1つ以上のスロットの内部における前記固定子ワインディングの部分は、1本以上の導電性硬質バーによって構成され、
前記1本以上の導電性硬質バーを前記固定子から電気的に絶縁するための1つ以上のスペーサによって、前記導電性硬質バーは前記スロットの内部で位置決めされ
、
前記導電性硬質バーは前記スペーサの一部を受容する溝を有し、及び/又は、前記スロットは前記スペーサの一部を受容する溝を有する、能動型磁気軸受。
【請求項27】
前記回転子は、前記回転子を前記作動流体から保護するための格納用外殻部内に収容される、請求項
25又は26に記載の能動型磁気軸受。
【請求項28】
1つの前記スロット内部の前記固定子ワインディングは、17本未満の前記導電性硬質バーで構成される、請求項
25又は26に記載の能動型磁気軸受。
【請求項29】
前記導電性硬質バーは、対応する前記スロット内では少なくとも全体として角柱状である、請求項
25又は26に記載の能動型磁気軸受。
【請求項30】
前記能動型磁気軸受はラジアル軸受であり、前記スロット及び前記導電性硬質バーは、前記固定子において直線に沿って延在するか、又は、
前記能動型磁気軸受はアキシャル軸受であり、前記スロットは周方向に延在するスロットであって、前記導電性硬質バーは、前記固定子の前記周方向に延在するスロット内部に延在する、請求項
25又は26に記載の能動型磁気軸受。
【請求項31】
前記導電性硬質バーのそれぞれは、前記スロットの所定の1つを1回のみ通って延在する、請求項
25又は26に記載の能動型磁気軸受。
【請求項32】
前記導電性硬質バーの端部が、対応する前記スロットの外側の位置で、同じ前記スロット内又は別のスロット内の別の硬質バーに電気的に接続される、請求項
25又は26に記載の能動型磁気軸受。
【請求項33】
前記スペーサは、電気的絶縁性又は低い導電性を有する、請求項
25又は26に記載の能動型磁気軸受。
【請求項34】
前記スペーサは、前記導電性硬質バーを、前記スロットの壁、及び/又は対応する前記スロット内の他の導電性硬質バーから間隔をあけて配置するように構成される、請求項
33に記載の能動型磁気軸受。
【請求項35】
前記スペーサは耐火セメントによって形成される、請求項
33に記載の能動型磁気軸受。
【請求項36】
前記導電性硬質バーは、電気絶縁材料に埋め込まれることによって前記スロット内部に位置決めされる、
請求項
25又は26に記載の能動型磁気軸受。
【請求項37】
前記スロットそれぞれが1本の前記導電性硬質バーを収容する、請求項
25又は26に記載の能動型磁気軸受
【請求項38】
前記導電性硬質バーは多角形断面形状を有する、請求項
25又は26に記載の能動型磁気軸受。
【請求項39】
前記導電性硬質バーは、円形、楕円形、又は角を丸めた横断面形状を有する、請求項
25又は26に記載の能動型磁気軸受。
【請求項40】
前記導電性硬質バーは、5mm
2以上の横断面積を有する、請求項
25又は26に記載の能動型磁気軸受。
【請求項41】
前記導電性硬質バーは、前記スペーサ又は耐火セメントによって前記能動型磁気軸受の他の構成要素から間隔をおいて配置されることによってのみ絶縁される、請求項
25又は26に記載の能動型磁気軸受。
【請求項42】
キャンド流体機械で使用するための請求項
25又は26に記載の能動型磁気軸受であって、前記固定子を含む乾燥領域から前記回転子が配置された作動流体領域を分離するキャン、特に格納用外殻部を備える、能動型磁気軸受。
【請求項43】
前記回転子と前記固定子との間に間隙を有する、請求項42に記載の能動型磁気軸受。
【請求項44】
前記回転子は、管状空洞部を有する中空シャフトに取り付けられ、
前記管状空洞部は前記間隙に流体接続される、
請求項43に記載の能動型磁気軸受。
【請求項45】
前記導電性硬質バーは前記スペーサの一部を受容する溝を有し、及び/又は、前記スロットは前記スペーサの一部を受容する溝を有する、請求項1に記載のキャンド回転動力式流体機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶融塩原子炉(Molten Salt Reactor:MSR)の溶融塩、カバーガス、又は他の高温流体などの作動流体とともに動作するキャンド回転動力式流体機械(canned rotodynamic flow machine)、及び溶融塩原子炉の溶融塩、カバーガス、又は他の高温流体などの作動流体とともに動作する流体機械用能動型磁気軸受に関する。
【背景】
【0002】
溶融塩原子炉は、原子炉冷却材及び/又は核燃料が、融点が500℃程度までであり、動作温度が600℃から700℃程度であり、沸点が融点より1000℃程度まで高い溶融塩、一般的にはフッ化物塩又は塩化物塩である原子炉である。この種の原子炉には多くの利点があり、その1つは、溶融塩が、大気圧又はそれに近い圧力で動作しながら、非常に高い温度で伝熱媒体として使用できることである。このような原子炉からの熱は、原子炉の出力が熱交換器の温度低下と流量とに正比例した状態で、溶融塩を「炉心」と「熱交換器」の間のループに送り込むことで除去できる。そのため、700℃の溶融塩を圧送できるとともに、処理能力が高く、寿命が長く、保守が容易で、信頼性が高いポンプが望まれている。溶融塩原子炉ポンプは、溶融フッ化物塩や溶融塩化物塩が腐食性を有するため不活性な格納雰囲気で動作することが必要であり、さらに溶融塩やその蒸気が環境に漏れ出すことは許されないため完全な漏出防止が厳しく要求される。これには難しい技術的課題が伴う。高い放射線レベルに加え、溶融塩の温度及び高反応性により、使用できる好適な材料が少ないためである。例えば、ポンプを駆動する電動モータには永久磁石を使用することができない。この種の磁石は、上述の動作温度に達する前に磁性を不可逆的に失い始めるためである。他の例としては、動的封止材がある。動的封止材はポンプによく使用されるが、溶融塩原子炉用のポンプが晒される温度範囲や高反応性環境では使用できず、一般的には、静的封止材や溶接継手に比べて信頼性がはるかに劣る。
【0003】
溶融塩原子炉は、1950年代から1960年代にかけてオークリッジ国立研究所(ORNL)で建設されて運転され、1970年代まで続いた研究計画や、世界各地の小規模な計画で使用されてきた。ORNLでは、ポンプとモータを長いシャフトでつなぎモータをより低い温度と放射線量で維持する「片持ちポンプ」を中心に、多数のポンプ設計が検討された。
【0004】
ORNLでは「溶融塩実験炉(Molten Salt Reactor Experiment)」と呼ばれる溶融塩原子炉を数年間運転し、この設計のポンプは油潤滑式軸受を備えた片持ちポンプ型であった。このポンプにはいくつかの問題があり、油が燃料塩の中に漏れることもそのひとつである。
【0005】
他の公知の溶融塩ポンプは、溶融塩を伝熱媒体として使用する集光型太陽熱発電(Concentrated Solar Power:CSP)システムで使用されているが、使用する塩(硝酸塩)は、商用の溶融塩原子炉で使用する塩(フッ化物塩又は塩化物塩)とは種類が異なる。硝酸塩は腐食性が低く、溶融塩原子炉の燃料とは異なり、放射性でも有害でもない。したがって、公知の硝酸塩ポンプは、単純な動的シャフト封止材を備えた片持ちポンプである。これらのポンプは広く使用され市販されているが、漏出防止に関しては要件が低い。
【0006】
溶融塩原子炉ポンプに関連する課題の1つは、固定子のワインディングは一般的には絶縁ワイヤを用いて巻線として構成されるが、例えば溶融塩原子炉の溶融塩を扱う際に、上述の動作温度及び動作条件に対応できる固定子ワインディング用ワイヤに使用する好適な絶縁材料が存在しないことである。
【0007】
また、別の課題は、公知の電動モータ及び発電機が溶融塩原子炉の高い動作温度では作動できないため、電動モータ又は発電機ユニットと連結シャフトとを一般的な溶融塩原子炉の媒体の動作温度以下に冷却する必要があり、塩の蒸気が動的封止材、電動モータ、又は発電機内の冷たい表面に析出することである。その結果、設備の寿命が短くなり、運用上の問題又は放射性物質の放出が起こるリスクが高まる。
【0008】
また、別の課題は、公知の軸受が溶融塩原子炉の高い動作温度では十分に作動できないため、電動モータ又は発電機ユニットと連結シャフトとを一般的な溶融塩原子炉の媒体の動作温度以下に冷却する必要があり、塩の蒸気が動的封止材、電動モータ、又は発電機内の冷たい表面に析出することである。その結果、設備の寿命が短くなり、動作上の問題又は放射性物質の放出が起こるリスクが高まる。
【摘要】
【0009】
本発明は、上述した問題点の1つ以上を克服し、あるいは少なくとも軽減できる流体機械を提供することを目的とする。
【0010】
前述及び他の目的は、独立請求項の特徴によって達成される。さらなる実装形態は、従属請求項、本明細書、及び図面から明らかである。
【0011】
第1の態様によれば、溶融塩原子炉の溶融塩、カバーガス、又は他の高温流体などの作動流体とともに動作するように構成されたキャンド回転動力式流体機械が提供される。前記該キャンド回転動力式流体機械は、前記作動流体のための流入口と前記作動流体のための流出口とを有する渦形室内に配置された羽根車と、固定子と回転子を備える誘導型又はリラクタンス型のモータ又は発電機と、前記固定子を含む乾燥領域から前記回転子が配置された作動流体領域を分離するキャン(缶)、特に格納用外殻部と、を備える。前記回転子は、前記羽根車に動作可能に連結され、前記固定子は、前記回転子を貫通する磁界を誘導するための固定子ワインディングを備え、前記固定子ワインディングは、前記固定子に配置された複数のスロットに分散して配置され、前記スロットの内部における前記固定子ワインディングの部分は、1本以上の導電性の硬質バー、好ましくは硬質銅バーによって構成され、前記導電性硬質バーのそれぞれが1つの前記スロットを1回のみ通って延在し、前記スロットの内部で、前記硬質バーは、1本以上の前記導電性硬質バーを前記固定子から電気的に絶縁するための1つ以上のスペーサによって位置決めされる。
【0012】
固定子ワインディングに導電性硬質バーを使用することで、流体機械の製造や組立ての際に割れないように柔軟であること及び高い動作温度に耐えることが必要である絶縁材料を使用せずに、固定子ワインディングをその周囲から電気的に絶縁できる。また、固定子ワインディングに硬質バーを使用することで、より低い電圧と高い電流で、必要な作動トルク(モータとポンプとの場合)又は必要なエネルギー(発電機と流体モータとの場合)を発生させることができる。硬質バーは、通常のワインディング用ワイヤと同じ固定子スロット充填率でもワイヤと固定子との間の距離を大きくとることができる。それにより、ワイヤ周辺の電気絶縁のための余地の厚みが大きくなり、ワインディング間又はワインディングと固定子若しくは固定子キャンとの間の短絡につながるブレークスルー電圧が高くなる。溶融塩原子炉の高放射線量環境では、ワインディング間又はワインディングと固定子との間に存在する液体や固体がイオン化されてブレークスルー電圧が低下するため、電気絶縁の必要性が高まる。このように、硬質バーにより、電気絶縁が容易になり、機械的安定性が高まり、アーク放電が発生しにくくなる。その結果、装置の動作が安定化して信頼性が高まる。固定子ワインディングに硬質バーを使用して好適な絶縁を行うことで、溶融塩原子炉の動作条件下でモータや発電機を運転することが可能となる。
【0013】
キャンド回転動力式流体機械を使用することで、使用できない又は耐用期間が比較的短い動的封止材が不要となり、漏出の可能性を大幅に低減できる。さらに、硬質固定子バーを用いたキャンド回転動力式流体機械を用いることで、モータや発電機を作動流体で冷却することができる。これにより、当該機械を大幅に簡素化できる。
【0014】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記流体機械は、誘導型又はリラクタンス型のモータによって駆動される回転動力式ポンプを備える。
【0015】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記流体機械は、誘導型又はリラクタンス型の発電機を駆動する回転動力式油圧モータを備える。
【0016】
第1の態様の可能な実装形態によれば、1つの前記スロットの内部の前記固定子ワインディングが、17本未満の、好ましくは13本未満の、さらに好ましくは9本未満の前記硬質バーで構成される。
【0017】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記硬質バーは、対応する前記スロット内では少なくとも全体として角柱状の硬質バーである。
【0018】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記スロット及び前記硬質バーは、前記固定子内では直線に沿って延在する。
【0019】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記硬質バーのそれぞれは、所定の1つの前記スロットを1回のみ通って延在する。
【0020】
太い硬質バーを使用することで、固定子コア内に配置するためにバーを曲げる必要がなく、力や高価な装置を使って固定子スロットに押し込む必要がないため、ヘアピンコイルなどに関連した問題点を克服できる。
【0021】
さらに、所定の1つのスロットを1回のみ通る太い硬質バーを使用することにより、スペーサ、好ましくはセラミック製スペーサを用いて固定子スロットに固定子コイルを組み付け、固定子バーを対応するスロットに積み重ね、その後、固定子バーを他の固定子バー又は電気端子と電気的に接続することが可能となる。
【0022】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記硬質バーの端部は、対応する前記スロットの外部の位置で、同じ又は別のスロット内の別の硬質バーと、好ましくは電気接続部によって、電気的に接続されるか、又は電気端子と電気的に接続される。
【0023】
硬質バーの端部を、例えば、別の硬質バー若しくは電気接続部又は端子に接続することで、硬質バーを1本ずつそれぞれのスロットに挿入するだけで固定子の組立て時に硬質バーの端部を電気的に接続することが可能になるため、組立て工程がかなり容易になる。
【0024】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記硬質バーは、スロット内部で、1つ以上の電気絶縁スペーサ、好ましくはセラミック製スペーサによって位置決めされる。
【0025】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記硬質バーはスロット内部で1つ以上の前記スペーサによって位置決めされ、前記スペーサは、好ましくは電気絶縁性又は低い導電性を有し、好ましくはセラミック製スペーサである。
【0026】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記スペーサは、前記硬質バーを、前記スロットの壁から、及び/又は対応する前記スロット内の他の硬質バーから間隔をあけて配置するように構成される。
【0027】
電気絶縁性のスペーサを使用することで、硬質バーを固定子コア内の定位置に保持できるだけでなく、他の硬質バーや固定子の壁に確実に接触しなくなるため、短絡やアーク放電などの発生を抑制できる。
【0028】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記スペーサは耐火セメントによって構成され、前記耐火セメントは、好ましくは、前記硬質バーを前記スロット内で位置決めした後に塗布されたものである。
【0029】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記スペーサは、前記硬質バーを局所的に支持し、前記スペーサは、対応する前記スロット内の前記硬質バーの長さ方向に沿って軸方向に間隔をあけた2か所以上の位置に設けられる。
【0030】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記硬質バーは、電気絶縁材料に埋め込まれることによって前記スロットの内部に位置決めされ、前記絶縁材料は、好ましくは耐火セメントである。
【0031】
個々のバーを絶縁して他のバー及び固定子コアの壁と間隔をあけることで、システムの信頼性と安定性が大きく向上する。
【0032】
第1の態様の可能な実装形態によれば、各スロットは、1本の前記硬質バーを含み、前記1本の硬質バーは、好ましくは、スペーサとして機能する電気絶縁材料に埋め込まれている。
【0033】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記硬質バーは、多角形の横断面形状、好ましくは矩形の横断面形状を有し、前記多角形の横断面形状の角は、好ましくは丸められている。
【0034】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記硬質バーは、円形、楕円形、又は角を丸めた横断面形状を有する。
【0035】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記硬質バーは、16mm2以上、好ましくは13mm2以上、より好ましくは10mm2以上、さらに好ましくは7mm2以上、最も好ましくは5mm2以上の横断面積を有している。
【0036】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記硬質バーは、前記スペーサのみによって前記スロット内に支持されながら、モータ又は発電機の動作時に発生する電磁力の影響下であっても、硬質バーを収容するスロットの壁に接触せず、固定子のモータキャン壁に接触せず、さらに、他の硬質バーに接触せずにその形状を維持するのに足りる剛性を有する。
【0037】
屈曲可能なワイヤなどの代わりに硬質バーを使用することで、硬質バーの原形を実質的に維持することが可能となり、電磁的、機械的、及び熱的応力が発生しても硬質バーと固定子及び/又はキャンとの接触を防止できる。さらに、高い充填率と良好な電気効率を維持しながら一般的なワインディング用ワイヤと比較して導体間隔を大幅に広げることが可能となり、個々の導体間や導体と固定子との間に電気絶縁性の機械的スペーサを採用することも可能となる。
【0038】
回転子は、作動流体から回転子を保護するために、好ましくは格納用外殻部に格納され、当該格納用外殻部とキャンとの間には間隙が形成される。
【0039】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記回転子と前記キャンとの間に間隙が形成され、前記キャンド回転動力式流体機械は、好ましくは、作動流体の流れを強制的に前記間隙に通すように構成される。
【0040】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記誘導型又はリラクタンス型のモータ又は発電機は、前記間隙内の作動流体の流れによって冷却されるように構成される。
【0041】
当該間隙に作動流体を流すことで、キャンド回転動力式流体機械の冷却と軸受の潤滑を同時に行うことが可能になる。これにより、提案されて検討されている他のタイプの溶融塩ポンプに必要な油性潤滑剤などの潤滑剤が不要となり、回転動力式機械の動作がより安定する。また、油による潤滑が不要になるため、作動流体に油が漏れるリスクがなくなる。
【0042】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記回転子は、作動流体の流れを1本以上の流路に通すために、軸方向に貫通する1本以上の流路を有し、前記流路は前記間隙に流体接続される。
【0043】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記回転子は中空シャフトに取り付けられ、前記中空シャフトは管状空洞部を有する。前記管状空洞部は、前記間隙に流体接続され、前記管状空洞部から前記流入口への作動流体の流れが可能となる。
【0044】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記キャンド回転動力式流体機械は、500℃を超える温度を有する作動流体とともに動作するように構成されている。
【0045】
溶融塩の作動流体の温度に合わせて、キャンド回転動力式流体機械の動作温度を500℃超にすることで、作動流体の塩が析出するような冷たい面がないため塩が析出しない。そのため、回転動力式流体機械の寿命が長くなり、より安定した信頼性の高い動作が可能になる。
【0046】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記モータ又は発電機は、ヘアピンの各バーが所定の1つのスロットのみを通って延在するヘアピンワインディングモータ又はヘアピンワインディング発電機である。硬質バーは、ヘアピンワインディングの半分に相当すると考えることができる。
【0047】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記バーは、前記スペーサによって又は前記耐火セメントによって前記キャンド回転動力式流体機械の他の要素から間隔をあけて配置されることによってのみ絶縁され、前記硬質バーは、好ましくは、前記スペーサに加えて前記電気接続部又は前記端子にのみ接触している。
【0048】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記固定子の周方向における前記スロットの幅は、1本の前記硬質バーに対応する空間を提供する。
【0049】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記硬質バーは、絶縁材料によって包囲されていない。
【0050】
第1の態様の可能な実装形態によれば、1つの前記スロット内の前記硬質バーは、径方向に積み重ねられる。
【0051】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記キャンド回転動力式流体機械はキャンド回転動力式のポンプ又は圧縮機であり、前記誘導型又はリラクタンス型のモータ又は発電機は誘導型又はリラクタンス型のモータである。
【0052】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記キャンド回転動力式流体機械はキャンド回転動力式のモータであり、前記誘導型又はリラクタンス型のモータ又は発電機は誘導型又はリラクタンス型の発電機である。
【0053】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記スロットは、前記固定子において分散して放射状に配置され、好ましくは、前記固定子において均等に分散して放射状に配置される。
【0054】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記スロットの長さ方向全体が軸方向に配置され、前記スロットは、好ましくは、前記固定子の軸方向全体を貫通して延在している。
【0055】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記スロットは、前記固定子の内周面に対して径方向に開口している。
【0056】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記回転子は、前記回転子と一体に回転し前記回転子の素材を作動流体から分離する外殻部に、少なくとも部分的に包囲されている。
【0057】
回転子を外殻部で包囲することで、回転子と作動流体を分離して、キャンド回転動力式流体機械の耐久性及び信頼性を向上させることができる。
【0058】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記外殻部は、少なくとも部分的に薄肉パイプによって形成され、その薄肉パイプは、好ましくは、ステンレス鋼又は高ニッケル鋼合金(例えばハステロイN)製である。
【0059】
ステンレス鋼やニッケル鋼合金を使用することで、キャンド回転動力式流体機械の耐腐食性を高めることができる。また、それらは安価で入手しやすいため、キャンド回転動力式流体機械の組立て及び設置にかかる費用が削減される。
【0060】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記回転子は、前記回転子内部に分散して径方向に配置された導電性硬質回転子バーが設けられた、磁気伝導性プレートの積層体を備える。
【0061】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記回転子は、前記回転子内部に分散して径方向に配置された空隙が設けられた、磁気伝導性プレートの積層体を備える。
【0062】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記硬質バーは、前記バーを通って冷却媒体が流れることを可能にするための縦長の管状空洞部を有する。
【0063】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記硬質バーは、好ましくは銅製のフィラメント又は細片である、長さ方向に延在する複数のフィラメント又は細片を一体に接合することで形成され、前記フィラメント又は細片は、例えば、低導電性合金又はセラミック製結合剤を用いたろう付けによって一体に接合される。
【0064】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記キャンド回転動力式流体機械は、前記シャフトを支持する1つ以上の能動型磁気軸受を備える。
【0065】
第1の態様の可能な実装形態によれば、前記能動型磁気軸受は固定子と回転子とを備え、前記固定子は、前記回転子を貫通する磁界を誘導するための固定子ワインディングを備え、前記固定子ワインディングは、前記固定子に設けられた1つ以上のスロットに分散して配置され、前記1つ以上のスロット内部の前記固定子ワインディングの部分は、1本以上の導電性硬質バー、好ましくは硬質銅バーによって構成される。
【0066】
第2の態様によれば、固定子及び回転子を備える誘導型又はリラクタンス型のモータ又は発電機が提供される。前記固定子は、前記回転子を貫通する磁界を誘導するための固定子ワインディングを備え、前記固定子ワインディングは、前記固定子に設けられたスロットに分散して配置され、前記スロットの内部の前記固定子ワインディングの部分は、1本以上の導電性硬質バー、好ましくは硬質銅バーによって構成される。
【0067】
第3の態様によれば、溶融塩原子炉の溶融塩ループが提供される。前記溶融塩ループは、溶融塩を圧送するためのポンプを備える。前記ポンプは、前記作動流体のための流入口及び前記作動流体のための流出口を有する渦形室内に配置された羽根車と、固定子と回転子とを備える誘導型又はリラクタンス型のモータ又は発電機と、前記固定子を含む乾燥領域からキャンドポンプを構成するために前記回転子が配置された作動流体領域を分離するキャン、特に格納用外殻部と、を備える。前記回転子は、前記羽根車に動作可能に連結される。前記固定子は、前記回転子を貫通する磁界を誘導するための固定子ワインディングを備える。前記固定子ワインディングは、前記固定子に設けられたスロット内に分散して配置される。前記スロットの内部の前記固定子ワインディングの部分は、1本以上の導電性硬質バー、好ましくは硬質銅バーによって構成される。
【0068】
第4の態様によれば、溶融塩ループにおける、好ましくは溶融塩原子炉の溶融塩ループにおける、400℃以上、好ましくは500℃超、より好ましくは600℃超の温度を有する溶融塩を圧送するためのキャンドポンプの使用が提供される。
【0069】
第5の態様によれば、400℃を超える、好ましくは500℃を超える、より好ましくは600℃を超える温度を有する環境において動作するように構成された能動型磁気軸受が提供される。前記能動型磁気軸受は、固定子と回転子とを備え、前記固定子は、前記回転子を貫通する磁界を誘導するための固定子ワインディングを備える。前記能動型磁気軸受は、前記固定子ワインディングへの電流供給を制御するように構成された制御部と通信して、前記回転子の位置を検出する手段をさらに備え、前記固定子ワインディングは、前記固定子内に設けられた1つ以上のスロットに分散配置され、前記1つ以上のスロット内部の前記固定子ワインディングの部分は、1本以上の導電性硬質バー、好ましくは硬質銅バーによって構成され、前記硬質バーは、前記1本以上の導電性硬質バーを前記固定子から電気的に絶縁するための1つ以上のスペーサによって前記スロットの内部で位置決めされる。
【0070】
固定子ワインディングに導電性硬質バーを使用することで、流体機械の製造や組立ての際に割れないように柔軟であること及び高い動作温度に耐えることが必要である絶縁材料を使用せずに、固定子ワインディングをその周囲から電気的に絶縁できる。また、固定子ワインディングに硬質バーを使用することで、より低い電圧と高い電流で、必要な作動トルク(モータとポンプとの場合)又は必要なエネルギー(発電機と流体モータとの場合)を発生させることができる。硬質バーは、通常のワインディング用ワイヤと同じ固定子スロット充填率でもワイヤと固定子との間の距離を大きくとることができる。それにより、ワイヤ周辺の電気絶縁のための余地の厚みが大きくなり、ワインディング間又はワインディングと固定子若しくは固定子キャンとの間の短絡につながるブレークスルー電圧が高くなる。溶融塩原子炉の高放射線量環境では、ワインディング間又はワインディングと固定子との間に存在する液体や固体がイオン化されてブレークスルー電圧が低下するため、電気絶縁の必要性が高まる。このように、硬質バーにより、電気絶縁が容易になり、機械的安定性が高まり、アーク放電が発生しにくくなる。その結果、装置の動作が安定化して信頼性が高まる。固定子ワインディングに硬質バーを使用して好適な絶縁を行うことで、溶融塩原子炉の動作条件下でモータや発電機を運転することが可能となる。
【0071】
第5の態様の可能な実装形態によれば、1つの前記スロットの内部の前記固定子ワインディングは、17本未満の、好ましくは13本未満の、さらに好ましくは9本未満の前記硬質バーで構成されている。
【0072】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記硬質バーは、対応する前記スロット内では少なくとも全体として角柱状の硬質バーである。
【0073】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記能動型磁気軸受はラジアル(径方向)軸受であり、前記スロット及び前記硬質バーは前記固定子内で直線に沿って延在する。
【0074】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記能動型磁気軸受はアキシャル(軸方向)軸受であり、前記スロットは周方向に延在するスロットであり、前記硬質バーは、前記固定子内で前記周方向に延在するスロット内部に延在する。
【0075】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記硬質バーのそれぞれは、所定の1つの前記スロットを1回のみ通って延在する。
【0076】
太い硬質バーを使用することで、固定子コア内に配置するためにバーを曲げる必要がなく、力や高価な装置を使って固定子スロットに押し込む必要がないため、ヘアピンコイルなどに関連した問題点を克服できる。
【0077】
さらに、所定の1つのスロットを1回のみ通る太い硬質バーを使用することにより、スペーサ、好ましくはセラミック製スペーサを用いて固定子スロットに固定子コイルを組み付け、固定子バーを対応するスロットに積み重ね、その後、固定子バーを他の固定子バー又は電気端子と電気的に接続することが可能となる。
【0078】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記硬質バーの端部は、対応する前記スロットの外部の位置で、同じ又は別のスロット内の別の硬質バーと、好ましくは電気接続部によって電気的に接続されるか、又は電気端子と電気的に接続される。
【0079】
硬質バーの端部を、例えば、別の硬質バー若しくは電気接続部又は端子に接続することで、硬質バーを1本ずつそれぞれのスロットに挿入するだけで固定子の組立て時に硬質バーの端部を電気的に接続することが可能になるため、組立て工程がかなり容易になる。
【0080】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記スペーサは電気絶縁性又は低い導電性を有し、好ましくはセラミック製スペーサである。
【0081】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記スペーサは、前記硬質バーを、前記スロットの壁から、及び/又は対応する前記スロット内の他の硬質バーから間隔をあけて配置するように構成される。
【0082】
電気絶縁性のスペーサを使用することで、硬質バーを固定子コア内の定位置に保持できるだけでなく、他の硬質バーや固定子の壁に確実に接触しなくなるため、短絡やアーク放電などの発生を抑制できる。
【0083】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記スペーサは耐火セメントによって構成され、前記耐火セメントは、好ましくは、前記硬質バーを前記スロット内で位置決めした後に塗布されたものである。
【0084】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記スペーサは、前記硬質バーを局所的に支持し、前記スペーサは、対応する前記スロット内の前記硬質バーの長さ方向に沿って軸方向に間隔をあけた2か所以上の位置に設けられる。
【0085】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記硬質バーは、電気絶縁材料に埋め込まれることによって前記スロットの内部に位置決めされ、前記絶縁材料は、好ましくは耐火セメントである。
【0086】
個々のバーを絶縁して他のバー及び固定子コアの壁と間隔をあけることで、システムの信頼性と安定性が大きく向上する。
【0087】
第5の態様の可能な実装形態によれば、各スロットは、1本の前記硬質バーを含み、前記1本の硬質バーは、好ましくはスペーサとして機能する電気絶縁材料に埋め込まれている。
【0088】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記硬質バーは、多角形の横断面形状、好ましくは矩形の横断面形状を有し、前記多角形の横断面形状の角は、好ましくは丸められている。
【0089】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記硬質バーは、円形、楕円形、又は角を丸めた横断面形状を有する。
【0090】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記硬質バーは、16mm2以上、好ましくは13mm2以上、より好ましくは10mm2以上、さらに好ましくは7mm2以上、最も好ましくは5mm2以上の横断面積を有している。
【0091】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記硬質バーは、前記スペーサのみによって前記スロット内に支持されながら、モータ又は発電機の動作時に発生する電磁力の影響下であっても、硬質バーを収容するスロットの壁に接触せず、固定子のモータキャン壁に接触せず、さらに、他の硬質バーに接触せずにその形状を維持するのに足りる剛性を有する。
【0092】
屈曲可能なワイヤなどの代わりに硬質バーを使用することで、硬質バーの原形を実質的に維持することが可能となり、電磁的、機械的、及び熱的応力が発生しても硬質バーと固定子及び/又はキャンとの接触を防止できる。さらに、高い充填率と良好な電気効率を維持しながら一般的なワインディング用ワイヤと比較して導体間隔を大幅に広げることが可能となり、個々の導体間や導体と固定子との間に電気絶縁性の機械的スペーサを採用することも可能となる。
【0093】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記能動型磁気軸受は、ヘアピンの各バーが所定の1つのスロットを1回のみ通って延在するヘアピンワインディング能動型磁気軸受である。
【0094】
回転子は、作動流体から回転子を保護するために、好ましくは格納用外殻部に格納されるとともに、格納用外殻部と固定子を作動流体から分離するキャンとの間に間隙が形成される。
【0095】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記回転子と前記キャンとの間に間隙が形成される。
【0096】
第5の態様の可能な実装形態によれば、能動型磁気軸受が前記間隙内の作動流体の流れによって冷却されるように構成される。
【0097】
この間隙に作動流体を流すことで、複数の能動型磁気軸受の冷却を同時に行うことが可能になる。これにより、提案されている他のタイプの軸受に必要な油性潤滑剤などの潤滑剤が不要となり、能動型磁気軸受の動作がより安定する。また、油による潤滑が不要になるため、作動流体に油が漏れる可能性がなくなる。
【0098】
第5の態様の可能な実装形態によれば、作動流体の流れを1本以上の流路に通すために、前記回転子は、軸方向に貫通する1本以上の流路を有し、前記流路は、前記間隙に流体接続される。
【0099】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記回転子は中空シャフトに取り付けられ、前記中空シャフトは管状空洞部を有する。前記管状空洞部は前記間隙に流体接続され、前記管状空洞部から前記流入口への作動流体の流れが可能となる。
【0100】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記能動型磁気軸受は、500℃を超える温度を有する作動流体とともに動作するように構成されている。
【0101】
溶融塩の作動流体の温度に合わせて、能動型磁気軸受の動作温度を500℃超にすることで、作動流体の塩が析出するような冷たい面がないため塩が析出しない。そのため、能動型磁気軸受の寿命が長くなり、より安定した信頼性の高い動作が可能になる。
【0102】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記バーが、セメントによって能動型磁気軸受の他の要素から間隔をあけて配置されることによってのみ絶縁され、前記硬質バーが、好ましくは、前記スペーサに加えて前記電気接続部又は前記端子にのみ接触している。
【0103】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記固定子の周方向における前記スロットの幅は、1本の前記硬質バーに対応する空間を提供する。
【0104】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記硬質バーは、絶縁材料によって包囲されていない。
【0105】
第5の態様の可能な実装形態によれば、1つの前記スロット内の前記硬質バーは、径方向に積み重ねられる。
【0106】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記スロットは、前記固定子において分散して放射状に配置され、好ましくは、前記固定子において均等に分散して放射状に配置される。
【0107】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記スロットの長さ方向全体が軸方向に配置され、前記スロットは、好ましくは、前記固定子の軸方向全体を貫通して延在している。
【0108】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記スロットは、前記固定子の内周面に対して径方向に開口している。
【0109】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記回転子は、前記回転子と一体に回転し前記回転子の素材を作動流体から分離する外殻部に、少なくとも部分的に包囲されている。
【0110】
回転子を外殻部で包囲することで、回転子と作動流体を分離して能動型磁気軸受の耐久性及び信頼性を向上させることができる。
【0111】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記外殻部が、少なくとも部分的に薄肉パイプによって形成され、その薄肉パイプが、好ましくは、ステンレス鋼又は高ニッケル鋼合金(例えばハステロイN)製である。
【0112】
ステンレス鋼やニッケル鋼合金を使用することで、キャンド回転動力式流体機械の耐腐食性を高めることができる。また、それらは安価で入手しやすいため、キャンド回転動力式流体機械の組立て及び設置にかかる費用が削減される。
【0113】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記回転子は、磁気伝導性プレートの積層体を備える。
【0114】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記硬質固定子バーは、前記バーを通って冷却媒体が流れることを可能にするための縦長の管状空洞部を有する。
【0115】
第5の態様の可能な実装形態によれば、前記硬質固定子バーは、好ましくは銅製のフィラメント又は細片である、長さ方向に延在する複数のフィラメント又は細片を一体に接合することで形成され、前記フィラメント又は細片は、例えば、低導電性合金又はセラミック製結合剤を用いたろう付けによって一体に接合される。
【0116】
第5の態様の可能な実装形態によれば、いずれかの可能な実装形態に係る能動型磁気軸受は、キャンド流体機械で使用されるために構成される。前記能動型磁気軸受は、前記固定子を含む乾燥領域から前記回転子が配置された作動流体領域を分離するキャン、特に格納用外殻部をさらに備え、前記回転子は、好ましくは、前記回転子を作動流体から保護するための格納用外殻部に収容される。
【0117】
キャンド回転動力式流体機械に能動型磁気軸受を使用することで、全く使用できない又は寿命が比較的短い動的封止材が不要となり、漏出の可能性を大幅に低減することができる。さらに、能動型磁気軸受を使用することで、回転動力式流体機械を高速回転で使用することができる。それは、例えば、圧縮性の作動流体の圧縮機として回転動力式流体機械を使用する場合に有用である。
【0118】
第6の態様によれば、溶融塩原子炉のための溶融塩ループが提供される。前記溶融塩ループは、溶融塩を圧送するためのポンプを備える。前記ポンプは、作動流体のための流入口と前記作動流体のための流出口とを有する渦形室内に配置されてシャフトに取り付けられた羽根車であって、前記シャフトは好ましくは管状空洞部を有する中空シャフトである羽根車と、固定子と、前記シャフトに取り付けられた回転子とを備える誘導型又はリラクタンス型のモータと、前記固定子を含む乾燥領域からキャンドポンプを構成するために前記回転子が配置された作動流体領域を分離するキャン、特に格納用外殻部と、を備える。前記回転子は、前記シャフトによって前記羽根車に動作可能に連結される。前記シャフトは、回転運動用及び/又は直線運動用の能動型電磁軸受によって懸架されている。
【0119】
第7の態様によれば、キャンド溶融塩ポンプ、好ましくは溶融塩ループ内のキャンド溶融塩ポンプ、より好ましくは溶融塩原子炉の溶融塩ループ内のキャンド溶融塩ポンプにおける、シャフトを懸架するための直線運動用又は回転運動用の能動型電磁軸受の使用が提供される。
【0120】
これら及び他の態様は、以下に説明する実施形態から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0121】
本開示の以下の詳述部分では、態様、実施形態、及び実装形態が、図面に示される例示的な実施形態を参照してより詳細に説明される。
【
図1】一実施形態に係る流体機械の構成を示す図である。
【
図4】
図1に示す流体機械の線IV-IV'に沿った横断面図である。
【
図5】
図1に示す流体機械の線V-V'に沿った横断面図である。
【
図6】
図1に示す流体機械における1組の固定子ワインディングバーの立面図である。
【
図7】
図1に示す流体機械における1組の固定子ワインディングバーの側面図である。
【
図8】
図7に示す1組の固定子ワインディングバーの上面図である。
【
図9】
図7に示す1組の固定子ワインディングバーの別の側面図である。
【
図10】
図1に示す流体機械の線X-X'に沿った横断面図である。
【
図11】
図1に示す流体機械における固定子コアと固定子ワインディングバーの上面図である。
【
図12】
図1に示す流体機械における固定子コアと固定子スロット内の固定子ワインディングバーの配置とを示す立面図である。
【
図13】
図1に示す流体機械における固定子と回転子との立面図である。
【
図14】
図1に示す流体機械の固定子バーの詳細な側面図である。
【
図16】
図1に示す流体機械の回転子部の立面図である。
【
図17】溶融塩原子炉の現場での流体機械の一実施形態を示す図である。
【
図18a】能動型磁気軸受を備えた流体機械の一実施形態の断面図である。
【
図18b】
図18aに示す流体機械の能動型アキシャル磁気軸受の固定子の立面図である。
【
図18c】
図18aに示す流体機械の能動型アキシャル磁気軸受における硬質固定子バーの立面図である。
【
図19】
図18aに示す流体機械で使用できる磁気軸受における固定子コア及び固定子ワインディングバーの側面図である。
【
図20】
図19における線XX-XX'に沿って示した、磁気軸受における固定子コア及び固定子ワインディングの横断面側面図である。
【
図21】
図18に示す磁気軸受における固定子コア、固定子ワインディングバー、及び電気端子の可能な構成を示す立面図である。
【
図22】
図18に示す磁気軸受における固定子コア、固定子ワインディングバー、及び電気接続部の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0122】
図1から
図17を参照し、回転動力式流体機械1の一実施形態を説明する。回転動力式流体機械1は、キャンド回転動力式ポンプ又は圧縮機と、誘導型又はリラクタンス型のモータを備える。あるいは、キャンド回転動力式流体機械は、キャンド回転動力式モータと、誘導型又はリラクタンス型の発電機を備える。
【0123】
以下の説明では、回転動力式ポンプが電動モータによって駆動される一実施形態を参照しながら、回転動力式流体機械1について説明する。しかし、別の実施形態では、流体モータによって駆動される発電機を用いて当該機械を構成できることが理解される。したがって、誘導型又はリラクタンス型のモータで回転動力式ポンプを駆動してもよいし、回転動力式流体モータで誘導型又はリラクタンス型の発電機を駆動してもよい。一実施形態では、モータ及び発電機の設定は可逆的であり、流体機械は、流体モータが発電機を駆動する動作モードと、電動モータがポンプ又は圧縮機を駆動する別の動作モードとを有する。以下の実施形態では、ポンプを駆動する電動モータを参照して流体機械を説明するが、ここで説明する解決策と原理は、当該機械が流体モータによって駆動される発電機である場合にも適用されることが理解される。
【0124】
回転動力式ポンプ1は、例えば、400℃を超える、好ましくは500℃を超える、より好ましくは600℃を超える高温で動作するように構成される。
【0125】
図17に示すような一般的な溶融塩原子炉40の構成において、複数の遠心式流体機械1が含まれる。各流体機械1は、炉心41を冷却するための熱交換器42及び/又は冷却水ループ44又は45に接続される。燃料塩ループ43が核反応を駆動し制御するための燃料塩を供給し、さらに、熱交換器42が原子炉冷却材ループ44及び二次冷却材ループ45を介して一次原子炉冷却材及び二次原子炉冷却材を供給する。溶融塩の流れを循環させ駆動させるために、回転動力式流体機械1が使用される。
【0126】
本実施形態では、回転動力式機械1は、流体流入口4と流体流出口5とを有する渦形室3からなる回転動力式ポンプ1である。羽根車6は渦形室3の内部に配置される。羽根車6は、渦形室3とともに、原子炉溶融塩等の高温液体を圧送する遠心ポンプ、又は溶融塩原子炉のカバーガス等の高温ガスを圧縮する圧縮機を構成する。さらに、羽根車6はシャフト7と回転子8との組立体に接続され、回転子8は固定子10に収容される。
【0127】
好ましくは、羽根車6は、羽根車組立体の安定性に寄与するため円錐形の前面と裏面を持つ「閉鎖型羽根車」であり、溶融塩フィルムによって潤滑される「ジャーナル軸受」として機能する。
【0128】
回転動力式ポンプ1は、電気誘導型又はリラクタンス型のモータのための筐体2を備える。当該モータは、筐体2に取り付けられた渦形室3内に配置された羽根車6を駆動する。羽根車6は、開放型又は閉鎖型の羽根車であってもよく、回転子8と羽根車6との組立体の安定性に寄与するため円錐形の前面と裏面を有してもよい。
【0129】
電気端子21は、筐体2の内側から筐体2の開口部を通って筐体2の外側に延びている。開口部には、電気絶縁体24、25、好ましくはセラミック製絶縁体24、25、又は高温環境下での動作に適した別の絶縁体24、25が設けられる。
【0130】
シャフト7は、回転子8と羽根車6との組立体を接続する。シャフト7は、一実施形態では、管状空洞部22を有する中空シャフトであり、シャフト7内の管状空洞部22を通って作動流体を流すことができる。当該シャフトは、羽根車側の第1の転がり軸受15と、回転動力式ポンプ1の他方の側の第2の転がり軸受16によって筐体2及び渦形室6から回転可能に懸架され、軸方向及び径方向に支持される。
【0131】
回転子8はキャンドロータであり、回転子8を含む作動流体領域と固定子10からなる乾燥領域とを分離する薄肉のキャン18内に位置する。作動流体が溶融塩の場合、これが回転子8の銅成分や鉄成分を腐食させるおそれがあるため、回転子8は作動流体から分離される。
【0132】
そこで、薄肉の格納用外殻部17で回転子を包囲することにより、回転子8とキャン18との間には間隙20が形成される。作動流体は、間隙20を通って流れるようになる。外殻部17は回転子8と一体に回転し、回転子8の材料を作動流体から分離する。外殻部17は、少なくとも一部が、ステンレス鋼又はハステロイNなどの高ニッケル鋼合金製の薄肉パイプで構成される。
【0133】
間隙20はシャフト7の管状空洞部22に流体接続される。これにより、羽根車6から間隙20へ、さらに間隙20から管状空洞部22を通って流入口4(羽根車6の「目」)へ戻る作動流体の迂回流が可能になる。図示しない一実施形態では、回転子は、間隙22と流入口4を接続して流れを戻す流路を備えている。
【0134】
羽根車側では、間隙20は、渦形室3における径方向外側の領域、すなわち高圧領域に接続している。羽根車側では、管状空洞部22は渦形室6の中心部(「羽根車の目」)、すなわち低圧領域に接続している。圧力差により、高圧領域から間隙20、管状空洞部22を経て低圧領域へ作動流体の迂回流を強制的に発生させる。その結果、間隙20と管状空洞部22を通る作動流体の流れは、熱を吸収し(誘導型又はリラクタンス型のモータを冷却し)、誘導型又はリラクタンス型のモータから熱を取り除く。同時に、作動流体は、第1の転がり軸受15及び第2の転がり軸受16を潤滑する。シャフト7の管状空洞部22に入ると、作動流体は羽根車6の組立体の流入口4に向かって押し流される。間隙20と、中空シャフト7と、羽根車6の流入口4とを接続することで、作動流体の間断のない流れが可能になる。その結果、誘導型又はリラクタンス型のモータが間断なく冷却され、第1の転がり軸受15及び第2の転がり軸受16が間断なく潤滑される。
【0135】
羽根車6と回転子8との組立体は、機械的な軸受15及び16によって、好ましくは転がり軸受又はプレーン軸受によって両端が支持される。軸受15及び16は、軸方向にも径方向にも支持する深溝玉軸受、あるいはアンギュラコンタクト軸受、ジャーナル軸受、又はティルティングパッド流体軸受等の従来の軸受であってもよい。軸受15及び16は、例えば、ステンレス鋼等の耐腐食性鋼、ニッケル合金(例えばハステロイN等のニッケル合金)、又は耐腐食性鋼又はニッケル合金を硬質金属炭化物で被覆したもので形成されてもよい。あるいは、セラミック製軸受(例えば炭化ケイ素(SiC)又は窒化ケイ素(Si3N4))であってもよい。
【0136】
第1の転がり軸受15及び第2の転がり軸受16は、両方ともラジアル軸受及びアキシャル(スラスト)軸受として機能する。
図18から
図22に示す別の実施形態では、回転動力式流体機械1は、高温に適した材料からなる能動型磁気軸受を備え、この軸受は、電磁的懸架を用いてシャフト7に軸方向及び径方向の支持を提供する。図示しないさらに別の実施形態では、第1の転がり軸受15及び第2の転がり軸受16の代わりに、作動流体によって潤滑される滑り軸受が用いられ、ラジアル軸受及びアキシャル(スラスト)軸受として機能する。
【0137】
羽根車6を駆動する電動モータは、固定子10と回転子8とからなる誘導型又はリラクタンス型のモータである。回転子8は、シャフト7によって羽根車6に連結されている。一実施形態では、電動モータは非同期誘導モータである。
【0138】
回転子8(
図16aから
図16cに図示)は、所定の位置に鋳造された導電性の銅かご14によって囲まれている積層鉄製コア28を有するかご形回転子であってもよい。導電性の銅回転子バー14はわずかに斜めになっていてもよく、回転子8の「かご」を形成する。回転子8の端部環30、31は、銅製の硬質円盤又は円筒30、31で形成してもよい。
【0139】
鉄や銅はフッ化物や塩化物の溶融塩とは化学的に相溶性がないが、溶融塩は導電性を有するため、鉄や銅も電圧の印加により電解腐食や電気分解を起こす。したがって、固定子10と回転子8の両方が塩媒体から機械的に分離される。ステンレス鋼316Lは、塩に対する耐食性が良好で、安価で入手しやすいため、回転子8及び固定子10をそれぞれ作動媒体から分離する薄肉キャン18及び薄肉外殻部17を含め、流体機械1の大部分はステンレス鋼316Lで形成される。
【0140】
固定子10は、中空円筒状の固定子コア26を有し、固定子コア26の内側部分に複数のスロット11が形成される。好ましくは、スロット11は、固定子の周方向に均等に分布している。本実施形態では、各スロット11は、固定子10の径方向内側に開口し、固定子コア26の軸方向全長にわたって延在する。
【0141】
固定子ワインディング12は、溶融塩(例えば溶融フッ化物塩又は塩化物塩)環境での電圧の印加による電解腐食及び電気分解を受ける可能性があり、作動流体領域から機械的に隔離されなければならない。そのため、固定子10は乾燥領域に位置する。
【0142】
固定子10は、回転子8を貫通する磁界を発生させて回転子8を回転させる硬質固定子バー12、好ましくは硬質銅バー12である、固定子ワインディング12を備える。硬質固定子バー12は、好ましくは、銅又は銅合金で形成される。何故なら、そのような材料は良好な導電体であり、800℃までの動作温度でその電気的性質を保つからである。
【0143】
硬質固定子バー12は、本実施形態では、スペーサ13に少なくとも部分的に包囲される以外は、いかなる形態の電気絶縁材料にも包囲されない。
【0144】
固定子ワインディング12は、固定子10のコアに設けられたスロット11内に分散して配置される。硬質バー12は、スロット11内で位置決めされ、直線に沿って固定子10内に延在する。所定のスロット11を1回だけ通る太い硬質バー12を用いることで、他の固定子バー12(同じスロット11内又は別のスロット11内)又は電気端子21への電気的な接続が必要となり、固定子10の運搬及び取り付けが容易になる。硬質バー12は、スロット11内で径方向に積み重ねられて示されているが、硬質バー12は、(より広い)スロット11内で、さらに周方向に並んで配置されてもよいことが理解される。好ましくは、硬質固定子バー12は、スロット11内に、均等に分散して放射状に配置される。
【0145】
好ましくは、硬質固定子バー12は、それぞれのスロット11に径方向に積み重ねられる。図示しない一実施形態では、より広いスロット11が、固定子バー12を径方向に積み重ねた複数の列を含む。
【0146】
スペーサ13は、各スロット11内で互いに離れた所定の場所に硬質バー12を位置決めして保持し、間隔をあけて配置する。これにより、硬質バー12がスペーサ13、電気接続部9、及び端子21とのみ物理的に接触できるようにする。スペーサ13は、電気絶縁性又は高い電気抵抗を有する。
【0147】
スペーサ13は、一実施形態では、非導電性のセラミック材料(例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)又は炭化ケイ素(SiC))で形成される。一実施形態では、スペーサ13はガラスなどの石英系材料で形成される。一実施形態では、スペーサ13は編組石英繊維材料を含む。スペーサ13の他の好適な材料には、ゲルマニウム、シリコン、ヒ化ガリウム、リン化ガリウム、及び硫化カドミウムなどの半導体が挙げられる。
【0148】
スペーサ13により、固定子バー12を対応するスロット11に積み重ねて挿入することが可能になる。また、スペーサ13は耐火セメントで形成されてもよく、スロット11内に硬質バー12を位置決めする前又は位置決めした後に塗布されてもよい。対応するスロット11内の硬質バー12の長さ方向に沿って、軸方向に間隔をあけた2つ以上の位置に2つ以上のスペーサ13が置かれてもよく、例えば
図6は、硬質バー12の長さ方向に沿って軸方向に間隔をあけた各位置に5つのスペーサを使用した場合を示している。好ましくは、スペーサ13は、硬質バー12を完全に覆い隠すものではない。
【0149】
スペーサ13は、
図15aから
図15dに示すように、U字型又はH字型の留め具のように形成されている。U字型スペーサ13は、スロット11の「最上部」及び「最下部」(それぞれスロット11の径方向外側及び内側の境界)に用いられ、対応するスロット11の最下部及び最上部(スロットの「最上部」はキャン18によって形成されている)及び当該スロットの側壁から間隔をあけて硬質バー12を配置する。H型スペーサは、硬質バー12間に用いられ、硬質バー12どうしの間隔をあけ、かつ対応するスロット11の側壁から間隔をあけて配置する。
【0150】
図6に最もよく示されるように、スペーサ13は軸方向に間隔をあけた位置に設けられ、その位置で対応する硬質バー12を局所的に支持する。硬質バー12が比較的硬いことにより、誘導型又はリラクタンス型のモータの磁界によって硬質バー12に力が加えられても、隣り合う硬質バー12間の物理的接触、及び硬質バー12と対応するスロット11の壁との接触はない。
【0151】
図14及び
図15aから
図15dに示すように、各硬質バー12は、軸方向に間隔をあけた2つ以上の位置に横溝32を有する。これらの溝は、U字型又はH字型スペーサ13の内側に配置された突起(隆起部)33を収容するように構成される。これにより、スロット11における固定子バー12の組付けを容易にするだけでなく、スペーサ13が硬質バー12の長さ方向に沿って軸方向に移動するのを防止できる。つまり、スペーサ13は、対向する端部に、内面に沿って形成された内側隆起部33を有し、これらの内側隆起部33は硬質バー12の溝32に収容される。好ましくは、隆起部33の高さは溝部32の深さに相当する。
【0152】
これに換えて、硬質バー12が、電気絶縁材料(例えば耐火セメント)に埋め込まれてもよい。
【0153】
固定子バー12は、好ましくは、銅又は他の高導電性材料であって、W又はCu-Ni合金などの、好適に高い融点と、溶融塩反応器又は他の高温用途での使用に必要とされる強度とを有する材料で形成される。硬質バー12への電気的な接続は、一実施形態ではろう付け(例えば、Cuよりも融点が低いCu-Ag共晶金属のろう付け化合物を用いてろう付け)されるが、Agは、ろう付けに使用され得る他のほとんどの金属と異なり、固定子バー12の導電性に影響を与える不純物をもたらさない。
【0154】
図示の実施形態では、硬質バー12は、角を丸めた縁部を有する略正方形の横断面形状を有している。しかしながら、硬質バー12は、多角形の横断面形状、矩形の横断面形状、又は円形、楕円形、若しくは角を丸めた横断面形状など、他の好適な横断面形状を有し得ることが理解される。矩形横断面であれば、固定子10における硬質バー12の横断面積の比率が高くなり、固定子ワインディングの導電性が高まり、充填率が向上し、モータの出力及び効率が改善される。
【0155】
硬質バー12は、対応するスロット11内では少なくとも全体として角柱状の硬質バー12であってもよい。すなわち、バーの横断面形状がその長さ方向に沿って全て同一であってもよい。好ましくは、各硬質バー12は、所定の1つのスロット11を1回のみ通って延在する。
【0156】
各スロット11は、内部に1本以上の硬質バー12が位置決めされる。1つのスロット11には、好ましくは17本未満、より好ましくは13本未満、さらに好ましくは9本未満の硬質バー12が配置される。スロット11の長さ方向全体は、例えば
図11及び
図12に部分的に示すように、固定子コア26の軸方向全体を完全に貫通してもよい。スロット11は、固定子コア26の内周面に対して径方向に開口しているため、バー12を固定子コア26の内側部分に積み重ねることができる。
【0157】
硬質バー12の横断面積は、一実施形態においては、16mm2以上、好ましくは13mm2以上、より好ましくは10mm2以上、さらにより好ましくは7mm2以上、最も好ましくは5mm2以上である。
【0158】
各硬質バー12に、誘導型又はリラクタンス型のモータの運転時に発生する磁界の影響で曲がっても他の硬質バー12との接触や各硬質バー12が収容されているスロットの壁との接触が起きないように十分な剛性を持たせるためには、一定の横断面積及び横断面形状が必要である。固定子ワインディングとして、例えばワイヤの代わりに硬質バー12を使用することによって、硬質バー12は、モータ又は発電機を運転した際に生じる磁力の影響下でその形状を十分に維持するのに足りる剛性を有し、スペーサ13によって局所的にのみ支持され軸方向に間隔をあけて配置されているもかかわらず、隣り合う硬質バー12どうし及び硬質バー12とそれらが収容されるスロット11との接触が起きない。硬質バー12は、スロット11内で、スペーサ13によってのみ支持されている。図示の実施形態では、スロット11は、周方向には、1本の硬質バー12のための空間を提供する幅を有するが、より広いスロット11に2本以上の硬質バー12を並べた構成も実施可能であることが理解される。
【0159】
好ましくは、硬質固定子バー12は、スロット11内の硬質固定子バー12の全長にわたって略角柱状であり、スロット11の軸方向の両端部から突出する。小さな溝32が、スロット11内の硬質固定子バー12の長さ方向に沿って形成されてもよく、これらの溝32により、スペーサ13が硬質固定子バー12に固定されて、スペーサ13が軸方向にずれることを防止できる。一実施形態では、スロット11には、スペーサをスロット11に対して軸方向に固定できる対応する溝31が設けられ、固定子バー12の溝32とスロット11の溝31との組合せにより、固定子10に対する固定子バー12の位置が軸方向において固定される。
【0160】
好ましくは、1本の固定子バー12は、所定の1つのスロット11を1回のみ通って延在する。固定子10から突出する固定子バー12の端部は、必要に応じて直線状でも屈曲していてもよく、同じスロット11内の別の硬質固定子バー12、別のスロット11内の別の硬質固定子バー12、及び電気端子21のいずれかに電気的に接続される。
【0161】
固定子バー12は、電気接続部9によって互いに、又は1つ以上の電気端子21に、電気的に接続される。固定子バー12は、電気接続部又は電気端子21に溶接、ろう付け、又ははんだ付けされてもよい。あるいは、バー12を他のバー12又は電気端子21に電気的に接続する他の好適な手段を用いてもよい。
【0162】
好ましくは、電気接続部9は、硬質固定子バー12の端部に、すなわち組立て後に接続される。
【0163】
誘導型又はリラクタンス型のモータは、固定子10の内部に回転可能に配置された回転子8を含む。ここで、固定子10は、複数の鋼板をモータの形状に対応した円筒形に積層することで形成されてもよい。固定子10は、固定子10の軸方向に延在するスロット11を有する固定子コア26を備える。固定子ワインディングは、スロット11を貫通して軸方向に延在する硬質固定子バー12によって構成される。
【0164】
さらに、回転子8は、固定子10に対応するように複数の鋼板を円筒状に積層して形成してもよく、固定子10の中空部に挿入されてもよい。回転子8は、回転子ワインディングを形成する複数の導電性回転子バー14を有する回転子コアを含んでもよい。回転子バー14は周方向に、好ましくは周方向に均等に分散して配置され、回転子8の略軸方向に延在している。つまり、一実施形態では、回転子8は、磁気伝導性プレートの積層体を含み、この積層体は回転子内部に分散して放射状に配置される導電性硬質回転子バー14を備える。一実施形態によれば、回転子8は、磁気伝導性プレートの積層体を含み、この積層体は回転子8の内部に分散して放射状に配置される空隙を有する。
【0165】
図18aから
図22は、回転動力式流体機械1の別の実施形態を示す。シャフト7を回転可能に支持するために能動型磁気軸受(Active Magnetic Bearing:AMB)が使用されている。本実施形態では、本明細書で以前に説明又は示した対応する構造及び特徴と同一又は類似する構造及び特徴は、便宜上、以前に使用したものと同じ符号で示す。
【0166】
本実施形態の回転動力式流体機械1には、3つのAMB、すなわち、下部ラジアルAMB115、上部ラジアルAMB116、及び上部アキシャルAMB216が設けられる。下部ラジアルAMB115と上部ラジアルAMB116は、径方向負荷用の軸受であり、それぞれ固定子110と回転子108とを備える。固定子110は、固定子バー112を備え、回転子108の周囲に密接に沿っており、作動流体を通過させる間隙20を有している。固定子110は筐体2に固定され、回転子108はシャフト7に取り付けられる。AMB115、116は、必要な磁力を発生させるための電流を流す硬質固定子バー112を備え、回転子8のシャフト7を中心に保つように構成される。軸方向負荷用の軸受であるAMB216は、両側に固定子210が配置された円板形状の回転子208を備える。回転子208の固定子210側には、それぞれ、周方向に延在する硬質固定子バー212が設けられる。固定子バー212は、固定子210の対応するスロット211内で略周方向に延び、スペーサ213によって互いに、及びスロット211から分離されている。全ての固定子バー212の端部は、固定子210のスロット211の対応する部分を通って固定子210から径方向に延在し、端子221を形成している。固定子バー212の径方向に延在する端部間は、スペーサ213によって間隔をあけて配置される。
【0167】
固定子210と回転子208との間の間隙20には、作動流体を通過させることができる。AMB216は、シャフト7を軸方向に保持するように構成される。シャフト7は、回転子108及び208にそれぞれ磁気的に作用する下部ラジアルAMBコイル115、上部ラジアルAMBコイル116、及びアキシャルAMBコイル216によって、筐体2及び渦形室3から回転可能に懸架されて軸方向及び径方向の両方向に支持される。
【0168】
下部ラジアル位置センサ201は、下部ラジアルAMB115と羽根車6との間に置かれ、上部アキシャル位置センサ202は上部ラジアルAMB116とアキシャルAMB216との間に配置される。下部及び上部ラジアル位置センサ201、202は、回転子108の位置を軸方向及び径方向の両方で検出し、それに応じてAMB115、116、216内の固定子バーを通じて電力増幅器(図示せず)によって送られる電流を調節するように構成される制御部(図示せず)に信号を送るように構成される。別の実施形態では、ラジアルAMB及びアキシャルAMBの駆動コイルを使用して径方向及び軸方向の回転子位置をそれぞれ検出する(自己感知と呼ばれ、専用の位置センサが不要になる)。
【0169】
AMBは従来の玉軸受より高価であるが、潤滑の必要がなく、高温での使用や高速回転が可能であるなど、技術的な利点がある。さらに、AMBは機械的摩耗がないため、従来の軸受に比べて保守費用が低く寿命が長い。
【0170】
アキシャルAMB216は、円板状の回転子208と、回転子208の軸方向両側の固定子210とを備え、それぞれの側面は、対応して周方向に延在するスロット211に、周方向に延在する硬質固定子バー212を設けて構成されている。ラジアルAMBは、回転子108と、固定子110と、硬質固定子バー112とを備える。AMB回転子108、208は、ラジアル軸受及びアキシャル軸受の両方について、一実施形態では、機械加工された鉄の硬質塊又はシリカと鉄との積層体を積み重ねたものであるが、他の好適な材料、例えば、良好な透磁率、高い磁気飽和、及びより良い高温性能を可能にする、鉄よりも高いキュリー温度を有するコバルト及びコバルト合金を使用してもよいことが理解される。AMB回転子部分は、軽量化のために中心付近に孔を有してもよい(図示せず)。
【0171】
一実施形態では、AMBは永久磁石を使用せずに、すなわち電磁石のみを使用して構成される。既知の永久磁石は、本AMBが設計されているような高い動作温度では磁性を失う。さらに、永久磁石はキュリー温度を超えると磁化を回復することはなく、一般的には、永久磁石が磁化を失い始める「最高動作温度」はかなり低い。このように、この能動型磁気軸受は、永久磁石を使用しないことで、永久磁石を使用した軸受よりも高温で使用できる。一実施形態では、能動型磁気軸受は、400℃超、好ましくは500℃超、さらに好ましくは600℃超の温度で動作するように構成される。
【0172】
リテーナ軸受15、16は、本実施形態では追加の玉軸受であり、通常動作時には回転子8と接触しておらず(あるいは少なくとも実質的に接触しておらず)、いかなる負荷も受けていない。これらの軸受は、AMBの異常、過負荷、停止などの場合、回転子8が静止するまで、あるいはAMBが回転子8の制御を回復するまで、回転する回転子8を固定子10に接触させないようにする。
【0173】
AMBの回転子108/固定子110組立体(例えば
図19及び
図20に示すような)は、固定子の中空円筒状コア126を備え、固定子コア126の内側部分にはスロット111が形成されている。固定子110は、硬質固定子バー112で形成された、好ましくは硬質銅バー112の固定子ワインディング112を備える。硬質固定子バー112は、
図1から
図16の実施形態に示すように、電気接続部109を介して互いに又は電気端子121に接続され、スペーサ13によってスロットから間隔をあけて配置されてもよい。
【0174】
間隙20は、ラジアル磁気軸受の固定子110と回転子108の間に延在している。間隙20は、アキシャル磁気軸受の固定子210と回転子208との間にも延在しているため、作動流体が流体機械1の軸方向全長にわたって通過できる。
【0175】
ここで、キャン18は、両方のラジアル磁気軸受の固定子110の内部に延在している。キャン18はまた、アキシャル磁気軸受の中にも延在しており、いずれの場合も固定子110、210を作動流体から分離する。
【0176】
ラジアル磁気軸受の回転子108及びアキシャル磁気軸受の回転子208は、一実施形態では、特に作動流体が回転子108、109を損傷し得る高反応性流体である場合に作動流体から回転子108、208を保護するために、薄肉の格納用外殻部117、217で包囲されている。外殻部117、217は、それぞれ回転子108、208と一体となって回転し、回転子108、208の材料と作動流体とを分離させる。外殻部117、217は、少なくとも一部が、ステンレス鋼又はハステロイNなどの高ニッケル鋼合金製の薄肉パイプで構成される。
【0177】
これらの能動型磁気軸受は、径方向負荷と軸方向負荷をそれぞれ電磁的懸架で支持する。AMB軸受システムは、独立して動作する複数の駆動コイルで構成される。それぞれのコイルは、電流を流すと磁界を発生し、強磁性体の固定子とコイルの周囲にある回転子の素材を磁化し、固定子と回転子の間に引力を発生させる。
【0178】
それぞれの固定子バーには、固定子バーに電流を供給する電力増幅器が接続される。制御部と位置センサ(間隔センサ)、及び制御ユニット内の関連する電子回路が、回転子の位置を間隔内で制御するために必要なフィードバックを提供する。電力増幅器は、回転子の両側にある2組の電磁石に、等しいバイアス電流を供給する。この持続的な引っ張り合いには制御部が介在する。つまり、制御部は、回転子が中心位置から外れた時に、等しい逆向きの電流摂動によりバイアス電流を相殺する。
【0179】
一実施形態では、電力増幅器は、パルス幅変調構成で動作するソリッドステート装置である。制御部は、一実施形態では、マイクロプロセッサ又はデジタル信号プロセッサである。
【0180】
発電機を駆動する流体モータについても、上記と同様の構成が可能である。本実施形態では、本明細書で以前に説明又は示した対応する構造及び特徴と同一又は類似する構造及び特徴は、便宜上、以前に使用したものと同じ符号で示す。
【0181】
羽根車6は、渦形室3を通過する流体の圧流によって、上述したのとは逆の方向に駆動される。すなわち、この場合、前出の流入口4は作動流体の流出口として作用し、流出口5は作動流体の流入口として作用する。作動流体は、流出口5(ここでは流入口)から羽根車6に入り、中空シャフトの管状空洞部22を通って上方に押し出される。作動流体は間隙20に入り、下方に押されて流入口4(ここでは流出口)に入り、そこから作動流体が回転動力式流体機械1を出ていく。
【0182】
本実施形態では、電動モータを、外部回路で使用する電力を発生させるための発電機として運転する。
【0183】
図示しない一実施形態において、固定子スロット11は、1本の硬質固定子バー12のみを含む。本実施形態では、硬質固定子バー12は、上記スペーサ13によって電気的に絶縁されているか、あるいは、当該固定子バー12と対応するスロット11との間の空間を埋める耐火セメント等の好適な電気絶縁材料に埋め込まれる。
【0184】
図示しない一実施形態において、前記硬質バー12は、冷却媒体がバー12を通って流れることを可能にするための縦長の管状空洞部を有する。この冷却媒体は、硬質固定子バー12に追加の能動的/強制的な冷却を行うために用いられる専用の冷却媒体である。本実施形態は、特に大型の電動モータや発電機に有効である。
【0185】
前記硬質バー12が、互いに接合された複数の縦長のフィラメント又は細片(好ましくは銅フィラメント又は銅細片)で構成されている図示しない一実施形態において、例えば、当該フィラメント又は細片は、低導電性合金を用いたろう付けによって接合されるか、又はセラミックコーティングによって接合される。本実施形態は、特に大型の電動モータや発電機に有効である。
【0186】
図示しない一実施形態では、流体機械1をドライウェルに設置することにより流体機械1を溶融塩に沈め、羽根車を溶融塩と直接接触させ、流体機械1のプライミング(priming)に関する追加の手間を回避しつつ、一方で電気接点21などはドライウェル内で溶融塩から分離される。ドライウェルは、流体機械1の金属部品の酸化を防止又は抑制するために、不活性ガスでパージできる。一実施形態では、より高い上部圧力(head pressure)を達成するために、1つ以上のドライウェルに複数の流体機械1が直列に配置される。
【0187】
また、流体機械1は、例えば使用済み核燃料のリサイクルのためのパイロプロセシング(pyroprocessing)システム(高温化学処理施設)における溶融塩の圧送にも好適である。
【0188】
本明細書では、様々な実施形態とともに様々な態様及び実装形態を説明した。しかしながら、特許請求の対象を実施する当業者であれば、図面及び添付の請求項を検討することで、開示された実施形態に対する他の変形例を理解し実行できる。請求項において、「備える、含む」という語は他の要素やステップを排除するものではなく、単数での記載は複数を排除するものではない。
【0189】
請求項に使用されている参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。特に断りのない限り、図面(例えば、斜影線、部品の配置、比率、程度など)は、明細書とともに読まれることが意図されており、本開示の書面による説明全体の一部分とみなされるものとする。本明細書で使用される「水平な」、「鉛直な」、「左」、「右」、「上方に」及び「下方に」という用語並びにそれらの形容詞的派生語及び副詞的派生語は、図示された構造の向きを、単に特定の図面が読者に向いているとおりに示すものである。同様に、「内方に」、「外方に」という用語は、一般に、適宜、伸長軸又は回転軸に対する表面の向きを指す。