(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
F15B 11/042 20060101AFI20240930BHJP
F15B 11/08 20060101ALI20240930BHJP
F15B 11/044 20060101ALI20240930BHJP
F16K 11/07 20060101ALI20240930BHJP
E02F 3/42 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
F15B11/042
F15B11/08 A
F15B11/044
F16K11/07 J
E02F3/42
(21)【出願番号】P 2023506652
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2021011261
(87)【国際公開番号】W WO2022195832
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】天野 裕昭
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 賢人
(72)【発明者】
【氏名】大平 礼
(72)【発明者】
【氏名】西川 真司
(72)【発明者】
【氏名】楢▲崎▼ 昭広
(72)【発明者】
【氏名】小高 克明
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-094973(JP,A)
【文献】特開2004-360898(JP,A)
【文献】実開平04-012498(JP,U)
【文献】特開2012-002289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/042
F15B 11/00-11/22;21/14
E02F 3/42- 3/43; 3/84- 3/85; 9/20- 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプから吐出される作動流体をアクチュエータに供給するメイン回路と、
前記メイン回路に設けられ、前記ポンプから前記アクチュエータに供給される作動流体の流れを制御する制御弁と、
前記ポンプから吐出される作動流体の一部を前記制御弁のパイロット受圧部に導くパイロット回路と、
前記パイロット回路に設けられ、前記ポンプから吐出される作動流体の圧力を減圧してパイロット1次圧を生成する第1減圧弁と、
前記パイロット回路に設けられ、前記パイロット1次圧を減圧して、前記制御弁のパイロット受圧部に作用するパイロット2次圧を生成する第2減圧弁と、
前記ポンプとタンクとを接続するブリードオフ通路と、
前記ブリードオフ通路に設けられるパイロット駆動式のブリードオフ弁と、
前記パイロット回路に設けられ、前記パイロット1次圧を減圧して、前記ブリードオフ弁のパイロット受圧部に作用するパイロット2次圧を生成する第3減圧弁と、
前記アクチュエータを操作するための操作装置と、
前記操作装置による操作に基づいて、前記第3減圧弁を制御する制御装置と、を備える作業機械において、
前記ブリードオフ弁は、
前記第3減圧弁によって生成されるパイロット2次圧によって、軸方向に移動するスプールと、
前記スプールを摺動自在に収容するバルブボディと、
通過する作動流体に抵抗を付与する絞りと、を有し、
前記スプールの軸方向の移動領域は、
前記スプールが軸方向一方側に向かって所定の位置まで移動するにつれて前記絞りの開口面積が段階的に
小さくなる第1移動領域と、
前記所定の位置から前記スプールが前記軸方向一方側に向かって移動するにつれて前記絞りの開口面積が連続的に
小さくなる第2移動領域と、を有し、
前記制御装置は、
前記操作装置による前記アクチュエータの操作が行われていないときには、前記スプールを前記第1移動領域に位置させるように前記第3減圧弁を制御し、
前記操作装置により、予め定めた所定値よりも大きい操作量で前記アクチュエータの操作が行われているときには、前記スプールを前記第2移動領域に位置させるように前記第3減圧弁を制御し、
前記絞りは、前記スプールが前記第1移動領域に位置しているときに、通過する作動流体に抵抗を付与する絞り孔を有
し、
前記制御装置は、
前記操作装置による前記アクチュエータの操作が行われていないときには、前記絞りの開口面積が所定の開口面積となるように前記スプールの位置を制御し、
前記操作装置により、前記所定値以下の操作量で前記アクチュエータの操作が行われているときには、前記絞りの開口面積が前記所定の開口面積よりも一段階小さい開口面積となるように前記スプールの位置を制御し、
前記操作装置により、前記所定値よりも大きい操作量で前記アクチュエータの操作が行われているときには、操作量の増加に伴って前記絞りの開口面積が連続的に小さくなるように前記スプールの位置を制御する、
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記バルブボディは、
前記スプールを摺動自在に収容する摺動孔と、
前記摺動孔に連通し、前記ポンプから吐出される作動流体が供給される供給通路と、
前記摺動孔と前記タンクとを連通する排出通路と、
前記排出通路に隣接するように前記摺動孔に設けられる流体室と、を有し、
前記スプールは、
前記排出通路と前記流体室とを連通または遮断するランド部と、
内部通路と、
前記供給通路と前記内部通路とを連通する複数の前記絞り孔と、
前記内部通路と前記流体室とを連通する連通孔と、を有し、
前記ランド部の軸方向端部には、切り欠き部が形成され、
前記絞りは、前記複数の絞り孔によって構成される第1絞りと、前記ランド部に形成された前記切り欠き部と前記摺動孔との隙間によって形成される第2絞りと、によって構成される、
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項2に記載の作業機械において、
前記第1絞りは、
前記スプールが前記摺動孔の一端側に位置しているときには前記供給通路と前記内部通路とを連通し、前記スプールが前記摺動孔の他端側に位置しているときには前記供給通路と前記内部通路との連通を遮断する絞り孔と、
前記スプールの位置にかかわらず、前記供給通路と前記内部通路とを連通する絞り孔と、によって構成される、
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項2に記載の作業機械において、
前記絞り孔は、前記スプールの径方向に貫通する貫通孔であり、その径方向の長さが前記切り欠き部の軸方向の長さよりも短くなるように形成される、
ことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項1に記載の作業機械において、
前記バルブボディは、
前記スプールを摺動自在に収容する摺動孔と、
前記摺動孔に連通し、前記ポンプから吐出される作動流体が供給される供給通路と、
前記摺動孔と前記タンクとを連通する排出通路と、を有し、
前記スプールは、
内部通路と、
前記供給通路と前記内部通路とを連通する複数の入口孔と、
前記内部通路と前記排出通路とを連通する出口孔と、を有し、
前記絞りは、前記複数の入口孔によって構成され、
前記複数の入口孔には、ベース孔部と、前記ベース孔部の端部から前記スプールの軸方向に延在する切り欠き部が形成された入口孔が含まれる、
ことを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項1に記載の作業機械において、
前記アクチュエータの動作を禁止するロック位置と前記アクチュエータの動作を許可するロック解除位置とに選択的に操作されるロックレバー装置、をさらに備え、
前記制御装置は、
前記ロックレバー装置が前記ロック位置に操作されている場合、前記絞りの開口面積が最大開口面積となるように前記スプールの位置を制御し、
前記ロックレバー装置が前記ロック解除位置に操作されている場合であって、前記操作装置による前記アクチュエータの操作が行われていないときには、前記絞りの開口面積が最大開口面積よりも一段階小さい
前記所定の開口面積となるように前記スプールの位置を制御し、
前記ロックレバー装置が前記ロック解除位置に操作されている場合であって、前記操作装置により、前記所定値以下の操作量で前記アクチュエータの操作が行われているときには、前記絞りの開口面積が最大開口面積よりも二段階小さい開口面積となるように前記スプールの位置を制御する、
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
メインポンプから吐出される作動流体をパイロット操作式制御弁により制御して流体アクチュエータに供給する主流体圧回路と、パイロットポンプから吐出されパイロットリリーフ弁で圧力設定された圧油を電磁比例減圧弁にパイロット1次圧として供給し、電磁比例減圧弁にて制御された2次圧をパイロット操作式制御弁に導くパイロット系流体圧回路と、を備える作業機械が知られている(特許文献1の
図6参照)。このような作業機械では、オペレータの手動操作がない場合であっても、パイロットポンプから吐出された一定流量の作動油が、パイロットリリーフ弁によりタンクにリリーフされるため、エネルギー消費効率が悪いという問題があった。
【0003】
特許文献1では、パイロットリリーフ弁を設けることによるエネルギー消費効率の悪化を改善するために、ポンプから吐出された作動流体をパイロット操作式制御弁により制御して流体圧アクチュエータに供給する主流体圧回路と、主流体圧回路のポンプから吐出された作動流体の一部をパイロット操作式制御弁のパイロット作用部に供給するパイロット系流体圧回路と、を有する流体圧回路装置が提案されている。
【0004】
この流体圧回路装置では、ポンプとタンクとを接続するバイパス通路に、バイパスシーケンス弁が設けられている。バイパスシーケンス弁は、手動操作信号がないときは無負荷連通状態に制御され、手動操作信号があるときはバイパスシーケンス弁の入口部の圧力がパイロット1次圧以上の圧力となるように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポンプから吐出される作動流体の一部をタンクに排出するブリードオフ弁(例えば、特許文献1に記載のバイパスシーケンス弁に相当)では、ブリードオフ弁を通過する作動流体の流量、圧力が大きくなると、弁体を駆動させるために必要な推力が大きくなる。この場合、ブリードオフ弁は、パイロット駆動式のものが採用される。
【0007】
しかしながら、パイロット駆動式のブリードオフ弁を特許文献1に記載の流体圧回路装置に適用した場合、手動操作信号がないときには、ブリードオフ弁を無負荷連通状態に制御して回路圧を低下させるため、手動操作信号が発生したときにブリードオフ弁を駆動させるためのパイロット圧を生成することができなくなってしまうという問題がある。このため、パイロット駆動式のブリードオフ弁を備える作業機械において、操作が行われていないときに、パイロット1次圧の生成に必要な回路圧を安定して確保できる作業機械が要望されている。
【0008】
本発明は、ポンプからメイン回路に吐出される作動流体の一部を制御弁に導くパイロット回路を有する作業機械において、アクチュエータの操作が行われていないときに、パイロット1次圧の生成に必要なメイン回路の圧力を安定して確保することのできるパイロット駆動式のブリードオフ弁を備えた作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による作業機械は、ポンプから吐出される作動流体をアクチュエータに供給するメイン回路と、前記メイン回路に設けられ、前記ポンプから前記アクチュエータに供給される作動流体の流れを制御する制御弁と、前記ポンプから吐出される作動流体の一部を前記制御弁のパイロット受圧部に導くパイロット回路と、前記パイロット回路に設けられ、前記ポンプから吐出される作動流体の圧力を減圧してパイロット1次圧を生成する第1減圧弁と、前記パイロット回路に設けられ、前記パイロット1次圧を減圧して、前記制御弁のパイロット受圧部に作用するパイロット2次圧を生成する第2減圧弁と、前記ポンプとタンクとを接続するブリードオフ通路と、前記ブリードオフ通路に設けられるパイロット駆動式のブリードオフ弁と、前記パイロット回路に設けられ、前記パイロット1次圧を減圧して、前記ブリードオフ弁のパイロット受圧部に作用するパイロット2次圧を生成する第3減圧弁と、前記アクチュエータを操作するための操作装置と、前記操作装置による操作に基づいて、前記第3減圧弁を制御する制御装置と、を備える。前記ブリードオフ弁は、前記第3減圧弁によって生成されるパイロット2次圧によって、軸方向に移動するスプールと、前記スプールを摺動自在に収容するバルブボディと、通過する作動流体に抵抗を付与する絞りと、を有する。前記スプールの軸方向の移動領域は、前記スプールが軸方向一方側に向かって所定の位置まで移動するにつれて前記絞りの開口面積が段階的に小さくなる第1移動領域と、前記所定の位置から前記スプールが前記軸方向一方側に向かって移動するにつれて前記絞りの開口面積が連続的に小さくなる第2移動領域と、を有する。前記制御装置は、前記操作装置による前記アクチュエータの操作が行われていないときには、前記スプールを前記第1移動領域に位置させるように前記第3減圧弁を制御する。前記制御装置は、前記操作装置により、予め定めた所定値よりも大きい操作量で前記アクチュエータの操作が行われているときには、前記スプールを前記第2移動領域に位置させるように前記第3減圧弁を制御する。前記絞りは、前記スプールが前記第1移動領域に位置しているときに、通過する作動流体に抵抗を付与する絞り孔を有する。前記制御装置は、前記操作装置による前記アクチュエータの操作が行われていないときには、前記絞りの開口面積が所定の開口面積となるように前記スプールの位置を制御し、前記操作装置により、前記所定値以下の操作量で前記アクチュエータの操作が行われているときには、前記絞りの開口面積が前記所定の開口面積よりも一段階小さい開口面積となるように前記スプールの位置を制御し、前記操作装置により、前記所定値よりも大きい操作量で前記アクチュエータの操作が行われているときには、操作量の増加に伴って前記絞りの開口面積が連続的に小さくなるように前記スプールの位置を制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アクチュエータの操作が行われていないときに、パイロット1次圧の生成に必要なメイン回路の圧力を安定して確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る油圧ショベルの側面図。
【
図2】油圧ショベルに搭載される油圧システムを示す図。
【
図3】本実施形態に係るブリードオフ弁の断面模式図。
【
図4】第1ランド部の一部を拡大して示す断面模式図であり、第1入口孔、第2入口孔及び第3入口孔を示す。
【
図5】スプール及びバルブボディの一部を拡大して示す断面模式図であり、出口孔、流体室及び切り欠き部について示す。
【
図6】スプールの各位置における作動油の流れについて説明する図。
【
図7】スプールの各位置における第1絞りの開口面積A10、第2絞りの開口面積A20及び絞りの合成開口面積A0について示す図。
【
図9】アクチュエータ目標速度演算部が行う演算処理の内容について示す図。
【
図10】ブリードオフ開口演算部が行う演算処理の内容について示す図。
【
図11】ブリードオフ弁指令生成部が行う演算処理の内容について示す図。
【
図12】制御弁指令生成部が行う演算処理の内容について示す図。
【
図13】アクチュエータ目標流量演算部が行う演算処理の内容について示す図。
【
図14】ポンプ容積指令生成部が行う演算処理の内容について示す図。
【
図15】ゲートロックレバー装置及びアクチュエータの操作レバーの操作に応じて設定されるブリードオフ弁の目標開口面積At、アクチュエータの操作レバーの操作に応じて設定されるポンプの吐出流量(ポンプ目標流量Qt)及び圧力センサで検出される吐出圧Pの変化について示すタイムチャート。
【
図16】変形例2に係るブリードオフ弁の断面模式図。
【
図17】変形例5に係るブリードオフ弁において、第1ランド部の一部を拡大して示す断面模式図であり、第1入口孔、第2入口孔及び第3入口孔を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る作業機械について説明する。本実施形態では、作業機械が、クローラ式の油圧ショベルである例について説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る油圧ショベル1の側面図である。説明の便宜上、
図1に示すように油圧ショベル1の前後および上下方向を規定する。つまり、本実施形態では、特に断り書きのない場合は、運転席の前方(同図中では左方向)を油圧ショベル1の前方とする。
【0014】
油圧ショベル1は、機体(車体)20と、機体20に取り付けられる作業装置10と、を備える。機体20は、走行体2と、走行体2上に旋回可能に搭載された旋回体3とを備える。走行体2は、左右一対のクローラと、アクチュエータである走行用油圧モータ2aと、を有する。走行体2は、クローラを走行用油圧モータ2aによって駆動することにより走行する。旋回体3は、アクチュエータである旋回用油圧モータ3aを有する。旋回体3は、旋回用油圧モータ3aによって、走行体2に対して回転する。
【0015】
旋回体3は、旋回フレーム30と、旋回フレーム30の前部左側に設けられる運転室31と、旋回フレーム30の後部に設けられるカウンタウエイト32と、旋回フレーム30における運転室31の後側に設けられるエンジン室33と、を有する。エンジン室33には、動力源であるエンジン及び油圧ポンプ、バルブ、アキュムレータ等の油圧機器が収容されている。旋回フレーム30の前部中央には作業装置10が回動可能に連結されている。
【0016】
作業装置10は、回動可能に連結される複数の被駆動部材及び被駆動部材を駆動する複数の油圧シリンダを有する多関節型の作業装置である。本実施形態では、3つの被駆動部材としてのブーム11、アーム12及びバケット13が、直列的に連結される。ブーム11は、その基端部が旋回フレーム30の前部に回動可能に連結される。アーム12は、その基端部がブーム11の先端部に回動可能に連結される。バケット13は、アーム12の先端部に回動可能に連結される。
【0017】
ブーム11は、アクチュエータである油圧シリンダ(以下、ブームシリンダ11aとも記す)によって駆動され、旋回フレーム30に対して回動する。アーム12は、アクチュエータである油圧シリンダ(以下、アームシリンダ12aとも記す)によって駆動され、ブーム11に対して回動する。バケット13は、アクチュエータである油圧シリンダ(以下、バケットシリンダ13aとも記す)によって駆動され、アーム12に対して回動する。
【0018】
図2は、油圧ショベル1に搭載される油圧システム90を示す図である。なお、油圧システム90には、複数の油圧アクチュエータ(2a,3a,11a,12a,13a)を駆動するための油圧機器が設けられているが、
図2では、ブームシリンダ11aとアームシリンダ12aを駆動するための油圧機器についてのみ図示し、その他の油圧アクチュエータ(2a,3a,13a)を駆動するための油圧機器についての図示は省略している。
【0019】
図2では、油圧システム90を制御する制御装置であるメインコントローラ100と、メインコントローラ100に信号を出力する装置(21,22,23,24,25)についても図示している。
図2に示すように、油圧ショベル1は、エンジン80の目標回転速度を設定するためのエンジンコントロールダイヤル21と、ブームシリンダ11a(ブーム11)を操作するための操作装置(ブーム操作装置とも記す)23と、アームシリンダ12a(アーム12)を操作するための操作装置(アーム操作装置とも記す)24と、ゲートロックレバー装置22と、を備える。これらの装置(21~24)は、運転室31内に設けられる。
【0020】
ブーム操作装置23は、中立位置からブーム上げ側及びブーム下げ側に傾動操作可能な操作レバー23aと、操作レバー23aの操作方向及び操作量を検出して、操作レバー23aの操作方向及び操作量を表す操作信号をメインコントローラ100に出力する操作センサと、を有する。アーム操作装置24は、中立位置からアームクラウド側及びアームダンプ側に傾動操作可能な操作レバー24aと、操作レバー24aの操作方向及び操作量を検出して、操作レバー24aの操作方向及び操作量を表す操作信号をメインコントローラ100に出力する操作センサと、を有する。操作装置23,24の操作センサで検出される操作レバー23a,24aの操作量(操作角)は、中立位置のときに0[%](0°)であり、中立位置から傾けるほど、その絶対値が大きくなる。
【0021】
ゲートロックレバー装置22は、運転室31の出入りを許可するとともにアクチュエータ(11a,12a,13a)の動作を禁止するロック位置(上げ位置)と、運転室31の出入りを禁止するとともにアクチュエータ(11a,12a,13a)の動作を許可するロック解除位置(下げ位置)とに選択的に操作されるレバー22aを有する。また、ゲートロックレバー装置22は、レバー22aの操作位置を検出して、レバー22aの操作位置を表すゲートロックレバー信号をメインコントローラ100に出力する操作位置センサと、を有する。
【0022】
エンジンコントロールダイヤル21は、エンジン80の目標回転速度を設定するための操作装置であり、メインコントローラ100に操作信号を出力する。メインコントローラ100は、エンジンコントロールダイヤル21からの操作信号に基づいて目標回転速度を決定し、決定した目標回転速度の信号をエンジンコントローラ105に出力する。エンジン80には、エンジン80の実回転速度を検出するエンジン回転速度センサ80a及びエンジン80のシリンダ内に噴射する燃料の噴射量を調整する燃料噴射装置80bが設けられている。エンジンコントローラ105は、エンジン回転速度センサ80aで検出されたエンジン80の実回転速度が、メインコントローラ100から出力される目標回転速度となるように、燃料噴射装置80bを制御する。
【0023】
油圧システム90は、ポンプ81と、ポンプ81から吐出される作動流体としての作動油をブームシリンダ11a及びアームシリンダ12aに供給するメイン回路HC1と、メイン回路HC1に接続されるパイロット回路HC2と、ポンプ81と作動油が貯留されるタンク19とを接続するブリードオフ通路Lbと、を備える。パイロット回路HC2は、ポンプ81から吐出される作動油の一部を、後述する制御弁45,46のパイロット受圧部45a,45b,46a,46b、及び、後述するブリードオフ弁140のパイロット受圧部149に導く回路である。
【0024】
ポンプ81は、エンジン80に接続され、エンジン80によって駆動されて、タンク19から作動油を吸い込み、吐出する。ポンプ81は、可変容量型のピストン式の油圧ポンプであり、レギュレータ81aにより斜板の傾きが変更されることで吐出容量(押しのけ容積)が変化する。エンジン80は、油圧ショベル1の動力源であり、例えば、ディーゼルエンジン等の内燃機関により構成される。
【0025】
メイン回路HC1には、ポンプ81からブームシリンダ11aに供給される作動油の流れを制御する制御弁(以下、ブーム制御弁とも記す)45と、ポンプ81からアームシリンダ12aに供給される作動油の流れを制御する制御弁(以下、アーム制御弁とも記す)46と、が設けられる。
【0026】
メイン回路HC1には、ポンプ吐出圧(回路圧)が予め設定されている設定圧を上回ると、ポンプ81から吐出される作動油をタンク通路Ltに排出することにより、ポンプ吐出圧の最高圧力を規定するリリーフ弁47が設けられている。
【0027】
メイン回路HC1は、ポンプ81の吐出口に接続されるポンプ吐出通路Ldと、ポンプ吐出通路Ldに接続されるパラレル通路Lpと、タンク19に接続されるタンク通路Ltと、を有する。
【0028】
パラレル通路Lpは、ポンプ吐出通路Ldからの作動油をブーム制御弁45及びアーム制御弁46のポンプポートに導く通路である。ブーム制御弁45のポンプポートに接続されるパラレル通路Lpには、ブームシリンダ11aの負荷圧を保持するためのチェック弁41が設けられる。チェック弁41は、ポンプ吐出圧がシリンダ圧を下回った場合には、全閉となる。アーム制御弁46のポンプポートに接続されるパラレル通路Lpには、アームシリンダ12aの負荷圧を保持するためのチェック弁42が設けられる。チェック弁42は、ポンプ吐出圧がシリンダ圧を下回った場合には、全閉となる。
【0029】
ブリードオフ通路Lbは、パラレル通路Lpに接続される。ブリードオフ通路Lbには、パイロット駆動式のブリードオフ弁140が設けられる。ブリードオフ弁140は、通過する作動油の流れに抵抗を付与する絞り(可変絞り)150を有し、この絞り150を通じてポンプ81から吐出される作動油をタンク19へ排出する。ブリードオフ弁140は、絞り150の開口面積(開度)を変化させることにより、ポンプ吐出圧の調整が可能となっている。
【0030】
パイロット回路HC2には、ポンプ81から吐出される作動油の圧力(すなわち、ポンプ吐出圧)を減圧して、パイロット1次圧を生成するパイロット減圧弁(第1減圧弁)71と、パイロット1次圧を保持するためのチェック弁72と、パイロット1次圧を平滑化するためのアキュムレータ73と、パイロット1次圧を減圧して、ブーム制御弁45のパイロット受圧部45a,45bに作用するパイロット2次圧を生成する電磁弁(第2減圧弁)51,61と、パイロット1次圧を減圧して、アーム制御弁46のパイロット受圧部46a,46bに作用するパイロット2次圧を生成する電磁弁(第2減圧弁)52,62と、パイロット1次圧を減圧して、ブリードオフ弁140のパイロット受圧部149に作用するパイロット2次圧を生成する電磁弁(第3減圧弁)63と、パイロット1次圧を遮断可能なロック弁74と、が設けられている。電磁弁51,52,61,62,63は、ソレノイドに供給される制御電流に応じて発生するソレノイド推力によって駆動される電磁比例弁である。
【0031】
電磁弁51,61は、パイロット減圧弁71によって生成されるパイロット1次圧を元圧として、ブーム制御弁45のパイロット受圧部45a,45bへ出力するパイロット2次圧を生成する。電磁弁51,61は、メインコントローラ100から出力される信号(制御電流)に基づいて制御される。メインコントローラ100は、ブーム操作装置23から出力される操作信号に基づいて、電磁弁51,61を制御する。
【0032】
電磁弁51によって生成されたパイロット2次圧が、ブーム制御弁45のパイロット受圧部45aに作用すると、ブーム制御弁45が伸長位置に切り換えられる。これにより、ポンプ81から吐出された作動油がブームシリンダ11aのボトム室に導かれるとともにロッド室からタンク19に作動油が排出され、ブームシリンダ11aが伸長する。その結果、ブーム11が上方向に回動する(すなわち、すなわちブーム11が起立する)。
【0033】
電磁弁61によって生成されたパイロット2次圧が、ブーム制御弁45のパイロット受圧部45bに作用すると、ブーム制御弁45が収縮位置に切り換えられる。これにより、ポンプ81から吐出された作動油がブームシリンダ11aのロッド室に導かれるとともにボトム室からタンク19に作動油が排出され、ブームシリンダ11aが収縮する。その結果、ブーム11が下方向に回動する(すなわち、ブーム11が倒伏する)。
【0034】
電磁弁52,62は、パイロット減圧弁71によって生成されるパイロット1次圧を元圧として、アーム制御弁46のパイロット受圧部46a,46bへ出力するパイロット2次圧を生成する。電磁弁52,62は、メインコントローラ100から出力される信号(制御電流)に基づいて制御される。メインコントローラ100は、アーム操作装置24から出力される操作信号に基づいて、電磁弁52,62を制御する。
【0035】
電磁弁52によって生成されたパイロット2次圧が、アーム制御弁46のパイロット受圧部46aに作用すると、アーム制御弁46が伸長位置に切り換えられる。これにより、ポンプ81から吐出された作動油がアームシリンダ12aのボトム室に導かれるとともにロッド室からタンク19に作動油が排出され、アームシリンダ12aが伸長する。その結果、アーム12が下方向に回動する(すなわち、アーム12はクラウド動作を行う)。
【0036】
電磁弁62によって生成されたパイロット2次圧が、アーム制御弁46のパイロット受圧部46bに作用すると、アーム制御弁46が収縮位置に切り換えられる。これにより、ポンプ81から吐出された作動油がアームシリンダ12aのロッド室に導かれるとともにボトム室からタンク19に作動油が排出され、アームシリンダ12aが収縮する。その結果、アーム12が上方向に回動する(すなわち、アーム12がダンプ動作を行う)。
【0037】
電磁弁63は、パイロット減圧弁71によって生成されるパイロット1次圧を元圧として、ブリードオフ弁140のパイロット受圧部149へ出力するパイロット2次圧を生成する。電磁弁63は、メインコントローラ100から出力される信号(制御電流)に基づいて制御される。メインコントローラ100は、ゲートロックレバー装置22から出力されるゲートロックレバー信号、及び操作装置23,24から出力される操作信号に基づいて、電磁弁63を制御する。
【0038】
ブリードオフ弁140は、パイロット受圧部149に作用するパイロット2次圧に応じてスプール141(
図3参照)の位置が制御される。パイロット2次圧がタンク圧相当の大きさである場合、リターンスプリング163のばね力によって、スプール141が中立位置で保持される。このとき、絞り150の開口面積は、最大開口面積Amaxとなる。
【0039】
パイロット受圧部149に作用するパイロット2次圧が増加すると、スプール141がリターンスプリング163のばね力に抗して移動し、絞り150の開口面積が小さくなる。パイロット受圧部149に作用するパイロット2次圧がさらに増加し、スプール141が遮断位置まで移動すると、ブリードオフ弁140によってポンプ81とタンク19との連通が遮断される。このとき、絞り150の開口面積は、最小開口面積Amin(例えば、0)となる。ブリードオフ弁140の構造及び制御の内容の詳細については、後述する。
【0040】
パイロット減圧弁71と電磁弁51,52,61,62,63との間には、ロック弁74が設けられる。ロック弁74は、ゲートロックレバー装置22の操作位置に応じてメインコントローラ100から出力される制御信号により、遮断位置及び連通位置のいずれかに切り換えられる電磁切換弁である。
【0041】
ゲートロックレバー装置22がロック位置に操作されると、ロック弁74は遮断位置に切り換えられる。これにより、電磁弁51,52,61,62へのパイロット1次圧が遮断され、操作レバー23a,24aによる操作が無効化される。また、電磁弁63へのパイロット1次圧も遮断されるため、操作装置23,24による操作にかかわらず、ブリードオフ弁140は中立位置で保持される。
【0042】
ゲートロックレバー装置22がロック解除位置に操作されると、ロック弁74が連通位置に切り換えられる。このため、ゲートロックレバー装置22がロック解除位置に操作されている状態では、操作レバー23a,24aの操作方向及び操作量に応じたパイロット2次圧が電磁弁51,52,61,62によって生成され、操作された操作レバー23a,24aに対応するアクチュエータ(11a,12a)が動作する。
【0043】
なお、パイロット回路HC2には、上述したように、チェック弁72とアキュムレータ73が設けられているため、ポンプ81の吐出圧が一時的にパイロット減圧弁71の設定圧よりも低くなった場合もパイロット1次圧を維持することが可能となっている。
【0044】
メインコントローラ100は、動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)101、記憶装置としてのROM(Read Only Memory)102、記憶装置としてのRAM(Random Access Memory)103、入出力インタフェース104、及び、その他の周辺回路を備えたマイクロコンピュータで構成される。メインコントローラ100は、1つのマイクロコンピュータで構成してもよいし、複数のマイクロコンピュータで構成してもよい。エンジンコントローラ105もメインコントローラ100と同様の構成を有し、メインコントローラ100に接続され、相互に情報(データ)の授受を行う。
【0045】
ROM102は、EEPROM等の不揮発性メモリであり、各種演算が実行可能なプログラムが格納されている。すなわち、ROM102は、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体である。RAM103は揮発性メモリであり、CPU101との間で直接的にデータの入出力を行うワークメモリである。RAM103は、CPU101がプログラムを演算実行している間、必要なデータを一時的に記憶する。なお、メインコントローラ100は、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の記憶装置をさらに備えていてもよい。
【0046】
CPU101は、ROM102に記憶されたプログラムをRAM103に展開して演算実行する処理装置であって、プログラムに従って入出力インタフェース104及びROM102,RAM103から取り入れた信号に対して所定の演算処理を行う。入出力インタフェース104には、エンジンコントロールダイヤル21、ゲートロックレバー装置22、操作装置23,24、圧力センサ25、エンジンコントローラ105等からの信号が入力される。入出力インタフェース104の入力部は、入力された信号をCPU101で演算可能なように変換する。また、入出力インタフェース104の出力部は、CPU101での演算結果に応じた出力用の信号を生成し、その信号をロック弁74、電磁弁51,52,61,62,63及びレギュレータ81a等に出力する。
【0047】
圧力センサ25は、ポンプ吐出圧(メイン回路HC1の回路圧)を検出し、検出結果(ポンプ吐出圧)を表す信号をメインコントローラ100に出力する。メインコントローラ100は、センサ25,80aによって検出されたポンプ吐出圧及び実エンジン回転速度、並びに、操作装置23,24からの操作信号に基づき、レギュレータ81aによってポンプ81の吐出容量を制御する。
【0048】
本実施形態に係る油圧システム90は、ブーム制御弁45、アーム制御弁46、ブリードオフ弁140、チェック弁41,42及びリリーフ弁47を有するコントロールバルブブロック4と、電磁弁51,52を有する第1電磁弁ブロック5と、電磁弁61,62,63を有する第2電磁弁ブロック6と、パイロット減圧弁71、チェック弁72及びロック弁74を有するパイロット1次圧生成ブロック7と、を有する。
【0049】
図3を参照して、ブリードオフ弁140の構造について説明する。
図3は、コントロールバルブブロック4に搭載されるブリードオフ弁140の断面模式図である。
図3に示すように、ブリードオフ弁140は、コントロールバルブブロック4のバルブハウジングの一部を構成するバルブボディ161と、円柱形状の弁体であるスプール141と、を有する。なお、以下では、図面の上下左右方向に合わせて、各部を説明するが、ブリードオフ弁140は、図示する向きで配置する場合に限られず、様々な向きで配置可能である。
【0050】
バルブボディ161は、スプール141を摺動自在に収容する摺動孔170と、摺動孔170に連通し、ポンプ81から吐出される作動油が供給される供給通路(ブリードオフ通路Lbに相当)171と、摺動孔170とタンク19とを連通する排出通路(タンク通路Ltに相当)172と、供給通路171と排出通路172の間において供給通路171及び排出通路172のそれぞれに隣接するように摺動孔170に設けられる流体室197と、電磁弁63で生成されたパイロット2次圧が導かれるパイロット通路174と、を有する。なお、摺動孔170の下端部とスプール141の下端部とによって、パイロット受圧部(受圧室)149が形成されている。また、供給通路171及び排出通路172は、それぞれ摺動孔170におけるスプール141の摺動面から径方向外方に窪むように形成される環状凹部に接続される。
【0051】
摺動孔170は、バルブボディ161の端面(図示上端面)に開口するように形成され、この開口を覆うようにバルブキャップ162がバルブボディ161に取り付けられている。バルブキャップ162がバルブボディ161に取り付けられることにより、スプール141の図示上端部側に、ばね室175が形成される。なお、バルブキャップ162には、ばね室175とタンク19とを連通するドレン通路(不図示)が形成されている。このため、ばね室175はタンク圧相当の圧力に保たれる。
【0052】
ばね室175には、スプール141にばね力を付与する付勢部材としてのリターンスプリング163が収容されている。リターンスプリング163は、ブリードオフ弁140の絞り150の開口面積が大きくなる方向(図示下方向)にスプール141を付勢する圧縮コイルばねである。パイロット通路174は、パイロット受圧部149に電磁弁63で生成されたパイロット2次圧を導く。パイロット受圧部149に導かれた作動油は、ブリードオフ弁140の絞り150の開口面積が小さくなる方向(すなわち、リターンスプリング163の付勢方向とは反対の方向)にスプール141を付勢する。スプール141は、パイロット2次圧による推力とリターンスプリング163のばね力とが釣り合う位置で停止する。このように、スプール141は、電磁弁63によって生成されるパイロット2次圧によって軸方向に移動し、これにより、絞り150の開口面積(開度)が変化する。
【0053】
スプール141は、軸方向に延在する円形断面の内部通路146を有する。内部通路146は、スプール141の軸方向に貫通するように形成される孔である。スプール141の上端側の開口は、ロッド142により閉塞されている。ロッド142は、スプール141に結合され、スプール141の上端部から上方に向かって延在している。スプール141の下端側の開口は、プラグにより閉塞されている。なお、軸方向とは、スプール141の中心軸方向、すなわちスプール141の移動方向である。
【0054】
パイロット通路174の外径は、摺動孔170の外径よりも小さい。このため、摺動孔170とパイロット通路174との間には、段差面179が形成される。スプール141の下端部が段差面179に当接すると、スプール141の下方向への移動が規制される。また、ロッド142の先端部がバルブキャップ162に当接すると、スプール141の上方向への移動が規制される。
【0055】
したがって、スプール141は、段差面179に当接することにより下方向への移動が規制される中立位置(一端側のストロークエンド)と、ロッド142がバルブキャップ162に当接することにより上方向への移動が規制される遮断位置(他端側のストロークエンド)と、の間で軸方向に移動可能である。
【0056】
スプール141は、パイロット受圧部149がタンク圧相当の圧力であるときには、リターンスプリング163の付勢力によって、スプール141の下端部が摺動孔170とパイロット通路174との間の段差面179に当接した位置(中立位置)に配置される。
【0057】
スプール141は、摺動孔170の内周面に沿って摺動する複数のランド部として、下端側(軸方向一端側)に設けられる第1ランド部181と、上端側(軸方向他端側)に設けられる第2ランド部182と、を有する。第1ランド部181及び第2ランド部182は、互いに軸方向に離間して設けられる。このため、スプール141の外周における第1ランド部181と第2ランド部182との間は、第1ランド部181及び第2ランド部182から径方向内方に窪む環状溝183が形成されている。
【0058】
流体室197は、摺動孔170におけるスプール141の摺動面から径方向外方に窪むように形成される環状凹部173によって形成される。第1ランド部181は、その外周部によって、スプール141の外周側での供給通路171と流体室197との連通を遮断する。供給通路171と流体室197とは、後述するように、スプール141の内部通路146を介して連通する。また、第1ランド部181は、流体室197と排出通路172とを連通したり、その連通を遮断したりする。
【0059】
第1ランド部181には、スプール141の径方向に貫通する複数の貫通孔として、第1入口孔191、第2入口孔192、第3入口孔193、及び、出口孔196が形成されている。これらの貫通孔(191,192,193,196)は、断面が円形状となるように形成されている。第1入口孔191、第2入口孔192及び第3入口孔193は、1つずつ設けられる。出口孔196は、複数設けられ、周方向に離間して配置される。なお、スプール141の径方向(半径方向)は、スプール141の軸方向に直交する。
【0060】
第2入口孔192は、その下端部が第3入口孔193の上端部から図示上方に所定距離だけ離れた位置に形成されている。第1入口孔191は、その下端部が第2入口孔192の上端部から図示上方に所定距離だけ離れた位置に形成されている。出口孔196は、その下端部が第2入口孔192の上端部から図示上方に所定距離だけ離れた位置に形成されている。
【0061】
本実施形態では、第1入口孔191、第2入口孔192及び第3入口孔193が、通過する作動油に抵抗を付与する絞り150として機能する第1絞り151を構成する。出口孔196は、スプール141の位置にかかわらず、常時、内部通路146と流体室197とを連通する連通孔である。
【0062】
絞り孔である第1入口孔191及び第2入口孔192は、スプール141が摺動孔170の一端側の中立位置に位置しているとき(
図6(a)参照)には供給通路171と内部通路146とを連通し、スプール141が中立位置よりも摺動孔170の他端側に所定距離離れた位置に位置しているとき(
図6(c)~
図6(e)参照)には供給通路171と内部通路146との連通を遮断する。
【0063】
第1入口孔191が遮断状態になると、第1入口孔191が連通状態であるときに比べて、ブリードオフ弁140の絞り150の開口面積が小さくなる。第2入口孔192が遮断状態になると、第2入口孔192が連通状態であるときに比べて、ブリードオフ弁140の絞り150の開口面積が小さくなる。つまり、第1入口孔191及び第2入口孔192は、供給通路171と内部通路146とを連通したり、遮断したりすることにより、ブリードオフ弁140の絞り150の開口面積を調整する調整孔として機能する。
【0064】
なお、絞り孔である第3入口孔193は、スプール141の位置にかかわらず、常時、供給通路171と内部通路146とを連通する。
【0065】
図4は、第1ランド部181の一部を拡大して示す断面模式図であり、第1入口孔191、第2入口孔192及び第3入口孔193を示す。第1入口孔191、第2入口孔192及び第3入口孔193の開口面積の合計値(総開口面積)は、複数の出口孔196(
図3参照)の開口面積の合計値(総開口面積)に比べて十分に小さい。換言すれば、複数の出口孔196は、入口孔(191,192,193)での通過圧損に比べて、出口孔196での通過圧損が無視できるほど小さくなるように、その総開口面積が複数の入口孔(絞り孔)の総開口面積に比べて十分に大きく形成されている。
【0066】
図4に示すように、第1入口孔191の開口面積はA11であり、第2入口孔192の開口面積はA12であり、第3入口孔193の開口面積はA13である。本実施形態では、第3入口孔193の開口面積A13は、第2入口孔192の開口面積A12よりも大きい。また、第3入口孔193の開口面積A13は、第1入口孔191の開口面積A11よりも大きい。なお、第1入口孔191の開口面積A11は、第2入口孔192の開口面積A12よりも大きくてもよいし、小さくてもよいし、同じであってもよい。
【0067】
図3に示すように、第1ランド部181の上端部(軸方向端部)には、複数(例えば4つ)の切り欠き部144が形成されている。複数の切り欠き部144は、第1ランド部181の周方向に離間して設けられている。切り欠き部144は、第1ランド部181の外周面から径方向内方に窪む溝状に形成されている。切り欠き部144は、第1ランド部181の上端面及び外周面に開口する凹部ともいえる。また、切り欠き部144は、第1ランド部181の上端面からスプール141の軸方向に所定の長さL1(
図5(a)参照)で延在している。
【0068】
溝状の切り欠き部144の底部は、第1ランド部181の上端面から下端側に向かって、摺動孔170におけるスプール141の摺動面からの径方向距離が徐々に小さくなるように傾斜している。なお、切り欠き部144とは、第1ランド部181の軸方向端部を切り欠いたような形状になっている部位のことを指す。つまり、切り欠き部144は、切削加工により形成してもよいし、鍛造、鋳造等の加工方法により形成してもよい。
【0069】
なお、切り欠き部144の断面形状は、四角形状、半円形状、三角形状等、種々の形状とすることができる。また、溝状の複数の切り欠き部144に代えて、第1ランド部181の軸方向端部の全周に亘って傾斜部を形成したテーパ形状の切り欠き部を設けてもよい。
【0070】
図5は、スプール141及びバルブボディ161の一部を拡大して示す断面模式図であり、出口孔196、流体室197及び切り欠き部144について示す。
図5に示すように、バルブボディ161には、環状凹部173の上端面と摺動孔170の摺動面とが交差する位置に角部(以下、上側角部と記す)E1が形成され、環状凹部173の下端面と摺動孔170の摺動面とが交差する位置に角部(以下、下側角部と記す)E2が形成される。
【0071】
図5(a)は、上側角部E1が切り欠き部144に径方向で対向していない状態を示し、
図5(b)は、上側角部E1が切り欠き部144に径方向で対向している状態を示している。
図5(b)に示す状態では、切り欠き部144と上側角部E1とによって形成される流路断面194の開口面積A20が、
図5(a)に示す状態に比べて小さい。なお、切り欠き部144と上側角部E1とによって形成される流路断面194とは、上側角部E1と切り欠き部144とを最短距離で結ぶ直線を含む流路断面のことを指す。このため、
図5(b)に示す状態では、切り欠き部144と上側角部E1とによって形成される流路断面194を通過する作動油には、
図5(a)に示す状態に比べて大きい抵抗が付与される。
【0072】
本実施形態では、スプール141の第1ランド部181に形成された切り欠き部144とバルブボディ161の摺動孔170との隙間によって第2絞り152が形成される。したがって、本実施形態に係るブリードオフ弁140の絞り150は、複数の絞り孔(191,192,193)によって形成される第1絞り151(
図4参照)と、切り欠き部144と摺動孔170との隙間によって形成される第2絞り152(
図5(b)参照)とによって構成される。
【0073】
なお、
図4に示すように、絞り孔(191,192,193)は、その径方向の長さL2が切り欠き部144の軸方向の長さL1(
図5(a)参照)よりも短くなるように形成される。
【0074】
次に、第1絞り151と第2絞り152により構成される絞り150の合成開口面積(開度)について説明する。第1絞り151を構成する第1入口孔191、第2入口孔192及び第3入口孔193は、並列開口として設けられている。このため、第1絞り151の開口面積A10は、作動油が通過する入口孔(191,192,193)の開口面積の総和に相当する。また、第1絞り151及び第2絞り152は、直列開口として設けられている。このため、第1絞り151と第2絞り152の合成開口面積(実効面積)A0は、次式(1)で表される。
【0075】
【0076】
ここで、A10は、第1絞り151の開口面積であり、A20は、第2絞り152の開口面積(流路断面194の開口面積)である。なお、流路断面194は、切り欠き部144と摺動孔170との隙間によって形成される流路の断面積が最小となる流路断面である。
【0077】
図6は、スプール141の各位置における作動油の流れについて説明する図であり、
図7は、スプール141の各位置における第1絞り151の開口面積A10(破線)、第2絞り152の開口面積A20(一点鎖線)及び絞り150の合成開口面積A0(太い実線)について示す図である。また、
図6では、上側角部E1の位置Yと、供給通路171に接続される環状凹部の上端部の位置Xと、を二点鎖線で図示している。
図7は、横軸がスプール141の位置(スプールストローク)を表し、縦軸が開口面積を表している。なお、
図7の横軸に付される符号(a)~(e)は、
図6(a)~(e)の状態のスプール141の位置に対応している。
【0078】
図6(a)は、スプール141が軸方向一端側のストロークエンドである中立位置に位置している状態を示している。
図6(a)に示す状態において、作動油は、バルブボディ161の供給通路171からスプール141の第1入口孔191、第2入口孔192及び第3入口孔193を通じてスプール141の内部通路146に導かれる。内部通路146に導かれた作動油は、スプール141の出口孔196を通じて流体室197に導かれ、流体室197から環状溝183と摺動孔170との間の環状流路を通じて排出通路172に導かれる。
【0079】
図7に示すように、
図6(a)の状態において、第1絞り151の開口面積A10は、作動油が通過する第1入口孔191、第2入口孔192及び第3入口孔193の開口面積の総和に相当する(A10=A11+A12+A13)。また、
図6(a)の状態では、第2絞り152の開口面積A20は、第1絞り151の開口面積A10に比べて十分に大きい。このため、
図7に示すように、
図6(a)の状態では、絞り150の合成開口面積A0は、第1絞り151の開口面積A10と略同じであり、第1絞り151(第1入口孔191、第2入口孔192及び第3入口孔193)が、主にブリードオフ弁140の絞り150として機能する。換言すれば、
図6(a)の状態では、主に、第1絞り151の開口面積A10(=A11+A12+A13)によって、ブリードオフ弁140を通過する作動油の圧力損失が定まり、第2絞り152で生じる圧力損失は無視できるほど小さい。
【0080】
図6(b)は、
図6(a)の状態から所定距離だけ、スプール141が図示上方に移動し、第1入口孔191がバルブボディ161の摺動孔170の内周面によって閉塞されている状態を示している。
図6(b)に示す状態において、作動油は、バルブボディ161の供給通路171からスプール141の第2入口孔192及び第3入口孔193を通じてスプール141の内部通路146に導かれる。内部通路146に導かれた作動油は、スプール141の出口孔196を通じて流体室197に導かれ、流体室197から環状溝183と摺動孔170との間の環状流路を通じて排出通路172に導かれる。
【0081】
図6(b)の状態では、第1入口孔191が遮断状態となっており、第1入口孔191による供給通路171と内部通路146との連通が遮断されている。
図7に示すように、
図6(b)の状態において、第1絞り151の開口面積A10は、作動油が通過する第2、第3入口孔192,193の開口面積の総和に相当する(A10=A12+A13)。また、
図6(b)の状態では、第2絞り152の開口面積A20は、第1絞り151の開口面積A10に比べて十分に大きい。このため、
図7に示すように、
図6(b)の状態では、絞り150の合成開口面積A0は、第1絞り151の開口面積A10と略同じであり、第1絞り151(第2入口孔192及び第3入口孔193)が、主にブリードオフ弁140の絞り150として機能する。換言すれば、
図6(b)の状態では、主に、第1絞り151の開口面積A10(=A12+A13)によって、ブリードオフ弁140を通過する作動油の圧力損失が定まり、第2絞り152で生じる圧力損失は無視できるほど小さい。
【0082】
図6(c)は、
図6(b)の状態から所定距離だけ、スプール141が図示上方に移動し、第1入口孔191及び第2入口孔192がバルブボディ161の摺動孔170の内周面によって閉塞されている状態を示している。
図6(c)に示す状態において、作動油は、バルブボディ161の供給通路171からスプール141の第3入口孔193を通じてスプール141の内部通路146に導かれる。内部通路146に導かれた作動油は、スプール141の出口孔196を通じて流体室197に導かれ、流体室197から環状溝183と摺動孔170との間の環状流路を通じて排出通路172に導かれる。
【0083】
図6(c)の状態では、第1入口孔191及び第2入口孔192が遮断状態となっており、第1入口孔191及び第2入口孔192による供給通路171と内部通路146との連通が遮断されている。
図7に示すように、
図6(c)の状態において、第1絞り151の開口面積A10は、作動油が通過する第3入口孔193の開口面積に相当する(A10=A13)。また、
図6(c)の状態では、第2絞り152の開口面積A20は、第1絞り151の開口面積A10に比べて十分に大きい。このため、
図7に示すように、
図6(c)の状態では、絞り150の合成開口面積A0は、第1絞り151の開口面積A10と略同じであり、第1絞り151(第3入口孔193)が、主にブリードオフ弁140の絞り150として機能する。換言すれば、
図6(c)の状態では、主に、第1絞り151の開口面積A10(=A13)によって、ブリードオフ弁140を通過する作動油の圧力損失が定まり、第2絞り152で生じる圧力損失は無視できるほど小さい。
【0084】
図6(d)は、
図6(c)の状態から所定距離だけ、スプール141が図示上方に移動し、バルブボディ161の上側角部E1と第1ランド部181の上端部とが径方向で対向している状態、すなわち第1ランド部181の上端面の軸方向位置が上側角部E1の位置Yに一致している状態を示している。
図6(d)に示す状態において、作動油は、バルブボディ161の供給通路171からスプール141の第3入口孔193を通じてスプール141の内部通路146に導かれる。内部通路146に導かれた作動油は、スプール141の出口孔196を通じて流体室197に導かれる。流体室197に導かれた作動油は、第1ランド部181の切り欠き部144と摺動孔170との隙間によって形成される第2絞り152を通過し、環状溝183と摺動孔170との間の環状流路を通じて排出通路172に導かれる。
【0085】
図6(d)の状態では、第1入口孔191及び第2入口孔192が遮断状態となっており、第1入口孔191及び第2入口孔192による供給通路171と内部通路146との連通が遮断されている。
図7に示すように、
図6(d)の状態において、第1絞り151の開口面積A10は、作動油が通過する第3入口孔193の開口面積に相当する(A10=A13)。また、
図7に示すように、
図6(d)の状態では、第2絞り152の開口面積A20が
図6(c)の状態に比べて小さく、第2絞り152で生じる圧力損失が無視できない程度に大きくなっている。このため、
図7に示すように、
図6(d)の状態では第1絞り151(第3入口孔193)及び第2絞り152(流路断面194)が、ブリードオフ弁140の絞り150として機能する。
【0086】
図6(d)に示す状態からさらにスプール141が図示上方に移動すると、
図7に示すように、第2絞り152の開口面積A20が合成開口面積A0に近づき、第2絞り152での圧力損失が支配的になるため、第2絞り152(流路断面194)が、主にブリードオフ弁140の絞り150として機能する。
【0087】
図6(e)は、
図6(d)の状態から所定距離だけ、スプール141が図示上方に移動し、スプール141が軸方向他端側のストロークエンドである遮断位置に位置している状態を示している。
図6(e)の状態では、第1ランド部181によって、流体室197と排出通路172との連通が遮断されている。これにより、
図7に示すように、絞り150の合成開口面積A0は0(ゼロ)となり、ブリードオフ流量が0(ゼロ)となる。つまり、ポンプ81から吐出される作動油が、ブリードオフ弁140を通じてタンク19に排出されることがなくなる。
【0088】
このように、本実施形態において、第1絞り151は、
図7に示すように、スプール141が摺動孔170の一端側(図示下端側)から他端側(図示上端側)に向かって移動するにつれて、その開口面積A10が段階的に小さくなるように形成される。また、第2絞り152は、スプール141が摺動孔170の一端側(図示下端側)から他端側(図示上端側)に向かって移動するにつれて、その開口面積A20が連続的に小さくなるように形成される。このため、中立位置(a)から所定の位置Zまでは、スプール141が上方向に移動するにつれて合成開口面積A0が段階的に小さくなり、所定の位置Zから遮断位置(e)までは、スプール141が上方向に移動するにつれて合成開口面積A0が連続的に小さくなる。
【0089】
スプール141は、その軸方向の移動領域として、合成開口面積A0が段階的に変化する第1移動領域(中立位置(a)から所定の位置Z)と、合成開口面積A0が連続的に変化する第2移動領域(所定の位置Zから遮断位置(e))と、を有する。具体的には、第1移動領域では、スプール141が中立位置から図示上方へ移動するにつれて、合成開口面積A0が、(A11+A12+A13)→(A12+A13)→(A13)へと段階的に小さくなる領域であり、スプール141の移動によって合成開口面積A0を一定に保つことのできる移動領域Ac1,Ac2,Ac3を有する。
図6(a)に示す中立位置は移動領域Ac1内に設定され、
図6(b)に示す位置は移動領域Ac2内に設定され、
図6(c)に示す位置は移動領域Ac3内に設定される。また、第2移動領域では、スプール141が図示上方へ移動するにつれて、合成開口面積A0が0(ゼロ)になるまで連続的に小さくなる。
【0090】
なお、第1入口孔191、第2入口孔192及び第3入口孔193の開口面積A11,A12,A13は、ポンプ81から吐出される作動油の流量が最小流量であるときに、通過する作動油の圧力損失(通過圧損)が目標値通りになるように設定される。本実施形態では、
図6(a)の状態のときにはポンプ吐出圧(回路圧)Pが第1目標値P1(例えば、2MPa)となり、
図6(b)の状態のときにはポンプ吐出圧(回路圧)Pが第2目標値P2(例えば、3MPa)となり、
図6(c)の状態のときにはポンプ吐出圧(回路圧)Pが第3目標値P3(例えば、4MPa)となるような圧力損失が発生するように、開口面積A11,A12,A13が設定される。
【0091】
ポンプ吐出圧Pの第1目標値P1は、ブリードオフ弁140のスプール141を移動させることのできるパイロット1次圧の生成に必要な圧力(回路圧)の最小値以上の値が設定される。なお、第1目標値P1は、ブリードオフ弁140のスプール141を
図6(b)の状態にまで移動させることのできる回路圧以上の値が採用される。したがって、第1目標値P1は、制御弁45,46のスプールをセンタリングスプリングに抗して移動させることができない圧力に設定することができる。
【0092】
ポンプ吐出圧Pの第2目標値P2は、第1目標値P1よりも大きい値が設定される。なお、第2目標値P2は、ブリードオフ弁140のスプール141を
図6(c)の状態にまで移動させることのできる回路圧以上の値が採用される。したがって、第2目標値P2は、制御弁45,46のスプールをセンタリングスプリングに抗してフルストロークまで移動させることができない圧力に設定することができる。
【0093】
ポンプ吐出圧Pの第3目標値P3は、第2目標値P2よりも大きい値が設定される。なお、第3目標値P3は、ブリードオフ弁140のスプール141を
図6(e)の状態にまで移動させることのできる回路圧以上の値が採用される。また、第3目標値P3は、制御弁45,46のスプールをセンタリングスプリングに抗してフルストロークまで移動させることができる圧力に設定される。
【0094】
図2に示すメインコントローラ100は、操作装置23,24によるアクチュエータの操作が行われていないときには、スプール141を第1移動領域(
図7参照)に位置させるように電磁弁63を制御することにより、回路圧を制御する。また、メインコントローラ100は、操作装置23,24により、予め定めた所定値L0よりも大きい操作量でアクチュエータの操作が行われているときには、スプール141を第2移動領域(
図7参照)に位置させるように電磁弁63を制御することにより、ブリードオフ流量を制御する。
【0095】
また、メインコントローラ100は、ゲートロックレバー装置22がロック位置に操作されている場合、絞り150の開口面積が最大開口面積Amax(=A11+A12+A13)となるようにスプール141の位置を制御することにより、回路圧をP1に制御する。メインコントローラ100は、ゲートロックレバー装置22がロック解除位置に操作されている場合であって、操作装置23,24によるアクチュエータの操作が行われていないときには、絞り150の開口面積が最大開口面積Amaxよりも一段階小さい開口面積(A12+A13)となるようにスプール141の位置を制御することにより、回路圧をP2に制御する。メインコントローラ100は、ゲートロックレバー装置22がロック解除位置に操作されている場合であって、操作装置23,24により、所定値L0以下の操作量でアクチュエータの操作が行われているときには、絞り150の開口面積が最大開口面積Amaxよりも二段階小さい開口面積(A13)となるようにスプール141の位置を制御することにより、回路圧をP3以上の圧力に制御する。
【0096】
以下、
図8~
図14を参照して、メインコントローラ100の機能について、詳しく説明する。
図8は、メインコントローラ100の機能ブロック図である。
図8に示すように、メインコントローラ100は、ROM102に記憶されているプログラムを実行することによりアクチュエータ目標速度演算部C4、ブリードオフ開口演算部C20、ブリードオフ弁指令生成部C10、制御弁指令生成部C11、アクチュエータ目標流量演算部C12、及び、ポンプ容積指令生成部C14として機能する。
【0097】
図9は、アクチュエータ目標速度演算部C4が行う演算処理の内容について示す図である。アクチュエータ目標速度演算部C4は、各アクチュエータのそれぞれに対応する情報(操作信号)に基づき、アクチュエータの目標速度を演算する。以下では、ブームシリンダ(アクチュエータ)11aの操作信号に基づき、ブームシリンダ(アクチュエータ)11aの目標速度を演算する例を代表して説明する。
【0098】
図9に示すように、アクチュエータ目標速度演算部C4は、ブームシリンダ11aの操作信号に基づいて、ブームシリンダ11aの目標速度を演算する。ROM102には、操作信号とブームシリンダ11aの目標速度とが対応付けられたテーブルT4が記憶されている。テーブルT4は、操作レバー23aの操作量の絶対値が大きくなるほど、目標速度が大きくなる特性である。なお、ブーム操作装置23は、操作レバー23aが中立位置から一方(ブーム上げ側)へ傾けられると正の値の操作量を表す操作信号を出力し、操作レバー23aが中立位置から他方(ブーム下げ側)へ傾けられると負の値の操作量を表す操作信号を出力する。
【0099】
アクチュエータ目標速度演算部C4は、テーブルT4を参照し、ブーム操作装置23から入力される操作信号に基づいて、ブームシリンダ11aの目標速度を演算する。なお、目標速度は、正の場合にはブームシリンダ11aの伸長方向の目標速度を表し、負の場合にはブームシリンダ11aの収縮方向の目標速度を表している。
【0100】
なお、図示しないが、アクチュエータ目標速度演算部C4は、アームシリンダ12a、バケットシリンダ13a、走行用油圧モータ2a及び旋回用油圧モータ3aの目標速度も演算する。
【0101】
図10は、ブリードオフ開口演算部C20が行う演算処理の内容について示す図である。
図10に示すように、ブリードオフ開口演算部C20は、ゲートロックレバー信号及びアクチュエータの操作信号に基づいて、ブリードオフ弁140の基準開口面積を演算する。
【0102】
ブリードオフ開口演算部C20は、演算部O20a、最大値選択部O20b、判定部O20c,O20e、選択部O20d,O20fとして機能する。演算部O20aは、アクチュエータの操作信号(ブームシリンダの操作信号、アームシリンダの操作信号等)の絶対値を演算する。最大値選択部O20bは、演算部O20aで演算された複数の絶対値(ブーム操作量の絶対値、アーム操作量の絶対値等)のうちで最も大きいものを選択する。
【0103】
判定部O20cは、最大値選択部O20bで選択された最大値が、予め定めた閾値Th1よりも大きいか否かを判定する。閾値Th1は、アクチュエータの操作レバー(操作レバー23a,24a等)が操作されているか否かを判定するために予め定められ、ROM102に記憶されている。閾値Th1は、例えば、操作レバーの最大操作量を100%とした場合における3%程度の値である。つまり、最大値選択部O20b及び判定部O20cは、操作信号の最大値が閾値Th1よりも大きいか否かによって、アクチュエータの操作レバー(操作レバー23a,24a等)のうちの少なくとも1つが操作されているか否かを判定している。
【0104】
選択部O20dは、判定部O20cで肯定判定されると、すなわち最大値選択部O20bで選択された最大値が閾値Th1よりも大きく、アクチュエータの操作レバーのうちの少なくとも1つが操作されていると判定されると、開口面積A13を選択する。選択部O20dは、判定部O20cで否定判定されると、すなわち最大値選択部O20bで選択された最大値が閾値Th1以下であり、アクチュエータの操作レバーのいずれもが操作されていないと判定されると、開口面積A12+A13を選択する。
【0105】
判定部O20eは、ゲートロックレバー装置22からのゲートロックレバー信号に基づいて、ゲートロックレバー装置22がロック位置に操作されているか否かを判定する。
【0106】
選択部O20fは、判定部O20eで肯定判定されると、すなわちゲートロックレバー装置22がロック位置に操作されていると判定されると、開口面積A11+A12+A13を基準開口面積として選択し、ブリードオフ弁指令生成部C10に出力する。選択部O20fは、判定部O20eで否定判定されると、すなわちゲートロックレバー装置22がロック解除位置に操作されていると判定されると、選択部O20dで選択された開口面積(A13またはA12+A13)を基準開口面積として選択し、ブリードオフ弁指令生成部C10に出力する。
【0107】
図11は、ブリードオフ弁指令生成部C10が行う演算処理の内容について示す図である。
図11に示すように、ブリードオフ弁指令生成部C10は、アクチュエータの操作信号及びブリードオフ開口演算部C20で演算された基準開口面積に基づいて、ブリードオフ弁140を駆動させる電磁弁63を制御するためのブリードオフ弁指令を生成する。
【0108】
ブリードオフ弁指令生成部C10は、演算部O10a、最小値選択部O10b及び演算部O10cとして機能する。ROM102には、アクチュエータの操作信号(ブームシリンダ11aの操作信号、アームシリンダ12aの操作信号等)とブリードオフ弁140の操作要求開口面積とが対応付けられたテーブルT10a1,T10a2が記憶されている。演算部O10aは、各アクチュエータのそれぞれに対応する操作信号に基づき、操作要求開口面積を演算する。以下では、ブームシリンダ11aの操作信号に基づき、操作要求開口面積を演算する例を代表して説明する。
【0109】
演算部O10aは、ブームシリンダ11aの操作信号に基づいて、ブリードオフ弁140の操作要求開口面積を演算する。テーブルT10a1は、操作レバー23aの操作量の絶対値が大きくなるほど、操作要求開口面積が小さくなる特性である。本実施形態では、操作レバー23aが中立位置を含む不感帯に位置しているときには、操作要求開口面積が絞り150の最大開口面積Amax(≒A11+A12+A13)以上の値となるように設定されている。また、テーブルT10a1は、操作量の絶対値が予め定めた所定値L0のときに操作要求開口面積が第3入口孔193の開口面積A13に相当する面積となるように設定されている。
【0110】
演算部O10aは、テーブルT10a1を参照し、ブーム操作装置23から入力される操作信号に基づいて、操作要求開口面積を演算する。また、演算部O10aは、テーブル10a2を参照し、アーム操作装置24から入力される操作信号に基づいて、操作要求開口面積を演算する。さらに、図示しないが、演算部10aは、バケットシリンダ13aの操作信号、走行用油圧モータ2aの操作信号及び旋回用油圧モータ3aの操作信号に基づいて、操作要求開口面積を演算する。
【0111】
最小値選択部O10bは、演算部10aで演算された複数の操作要求開口面積、及び、ブリードオフ開口演算部C20で演算された基準開口面積のうち、最も小さいものを選択し、選択したものをブリードオフ弁140の目標開口面積Atとして設定する。最小値選択部O10bは、ブリードオフ弁140の目標開口面積Atを演算部O10cに出力する。なお、最小値選択部O10bは、ブリードオフ弁140の目標開口面積Atをポンプ容積指令生成部C14にも出力する(
図8参照)。
【0112】
演算部O10cは、ROM102に記憶されている電流変換テーブルT10cを参照し、最小値選択部O10bから入力された目標開口面積Atに基づいて、電磁弁63に供給する制御電流の目標値を演算する。演算部O10cは、電磁弁63に供給される制御電流を目標値に制御するためのブリードオフ弁指令を生成し、生成したブリードオフ弁指令を電流制御部(不図示)に出力する。電流制御部は、ブリードオフ弁指令に基づいて、電磁弁63のソレノイドに供給される制御電流が、目標値となるように制御電流を制御する。
【0113】
図12は、制御弁指令生成部C11が行う演算処理の内容について示す図である。
図12に示すように、制御弁指令生成部C11は、制御弁45,46を駆動させる電磁弁51,52,61,62を制御するための制御弁指令を生成する。制御弁指令生成部C11は、ROM102に記憶されているテーブルT11aを参照し、アクチュエータ(ブームシリンダ11a、アームシリンダ12a)の操作信号に基づいて、電磁弁51,52に供給する制御電流の目標値を演算する。制御弁指令生成部C11は、ROM102に記憶されているテーブルT11bを参照し、アクチュエータ(ブームシリンダ11a、アームシリンダ12a)の操作信号に基づいて、電磁弁61,62に供給する制御電流の目標値を演算する。
【0114】
制御弁指令生成部C11は、電磁弁51,52,61,62に供給される制御電流を目標値に制御するための制御弁指令を生成し、生成した制御弁指令を電流制御部(不図示)に出力する。電流制御部は、制御弁指令に基づいて、電磁弁51,52,61,62のソレノイドに供給される制御電流が、目標値となるように制御電流を制御する。
【0115】
図13は、アクチュエータ目標流量演算部C12が行う演算処理の内容について示す図である。アクチュエータ目標流量演算部C12は、各アクチュエータのそれぞれに対応する情報(目標速度及び操作信号)に基づき、アクチュエータの目標流量を演算する。以下では、ブームシリンダ11aの目標速度及び操作信号に基づき、ブームシリンダ11aの目標流量を演算する例を代表して説明する。
【0116】
図13に示すように、アクチュエータ目標流量演算部C12は、乗算部O12a,O12b、判定部O12c及び選択部O12dとして機能する。
【0117】
乗算部O12aは、アクチュエータ目標速度演算部C4で演算されたブームシリンダ11aの目標速度(正の値)に(Sbot)を乗算し、ボトム側流入目標流量を演算する。ここで、Sbotは、ブームシリンダ11aのボトム側の受圧面積(シリンダ2本分の受圧面積)である。乗算部O12bは、アクチュエータ目標速度演算部C4で演算されたブームシリンダ11aの目標速度(負の値)に(-Srod)を乗算し、ロッド側流入目標流量を演算する。ここで、Srodは、ブームシリンダ11aのロッド側の受圧面積Srod(シリンダ2本分の受圧面積)である。
【0118】
判定部O12cは、ブームシリンダ11aの操作信号に基づき、ブーム操作量が正の値であるか否かを判定する。判定部O12cでブーム操作量が正の値であると判定されると、選択部O12dは、ボトム側流入目標流量をブームシリンダ11aの目標流量として決定する。判定部O12cでブーム操作量が正の値でないと判定されると、選択部O12dは、ロッド側流入目標流量をブームシリンダ11aの目標流量として決定する。
【0119】
なお、アクチュエータ目標流量演算部C12は、アームシリンダ12aの操作信号及び目標速度、バケットシリンダ13aの操作信号及び目標速度、走行用油圧モータ2aの操作信号及び目標速度、並びに、旋回用油圧モータ3aの操作信号及び目標速度に基づいて、それぞれの目標流量を演算する。
【0120】
図14は、ポンプ容積指令生成部C14が行う演算処理の内容について示す図である。
図14に示すように、ポンプ容積指令生成部C14は、ポンプ81の吐出容量を制御するレギュレータ81aに出力するポンプ容積指令を生成する。ポンプ容積指令生成部C14は、積算部O14a、演算部O14b、乗算部O14c,O14d、加算部O14e、最大値選択部O14f、除算部O14g、最小値選択部O14h、及び除算部O14iとして機能する。
【0121】
積算部O14aは、アクチュエータ目標流量演算部C12で演算された各アクチュエータ(ブームシリンダ11a、アームシリンダ12a等)の目標流量を積算し、目標流量合計値を算出する。演算部O14bは、圧力センサ25で検出されたポンプ吐出圧Pの平方根をとる。乗算部O14cは、演算部O14bでの演算結果(ポンプ吐出圧Pの平方根)にブリードオフ弁指令生成部C10で演算されたブリードオフ弁140の目標開口面積Atを乗算する。乗算部O14dは、乗算部O14cでの演算結果にROM102に記憶されている流量係数cを乗算して、ブリードオフ流量(ブリードオフ弁140を通過する作動油の流量)を算出する。加算部O14eは、積算部O14aでの演算結果である目標流量合計値に、乗算部O14dでの演算結果であるブリードオフ流量を加算して、ポンプ要求流量Qrを演算する。
【0122】
最大値選択部O14fは、加算部O14eでの演算結果であるポンプ要求流量Qrと、最小流量Qminとを比較し、大きい方を選択する。なお、最小流量Qminは、ポンプ81の損傷を防止するために設定される流量(機器保護用設定値)であり、予めROM102に記憶されている。
【0123】
除算部O14gは、最大馬力設定値をポンプ吐出圧Pで除算し、馬力制限によるポンプ流量制限値Qlを演算する。最小値選択部O14hは、最大値選択部O14fで選択された流量(QrまたはQmin)と、除算部O14gでの演算結果であるポンプ流量制限値Qlとを比較して小さい方を選択し、選択した流量をポンプ目標流量Qtとして決定する。
【0124】
除算部O14iは、最小値選択部O14hでの演算結果であるポンプ目標流量Qtをエンジン回転速度センサ80aで検出された実エンジン回転速度で除算し、吐出容量(押しのけ容積)の目標値を演算する。除算部O14iは、ポンプ81の吐出容量を目標値に制御するためのポンプ容積指令を生成し、生成したポンプ容積指令をレギュレータ81aに出力する。
【0125】
次に、
図15を参照して、本実施形態に係る油圧ショベル1の動作について説明する。
図15は、ゲートロックレバー装置22及びアクチュエータの操作レバーの操作に応じて設定されるブリードオフ弁140の目標開口面積At、アクチュエータの操作レバーの操作に応じて設定されるポンプ81の吐出流量(ポンプ目標流量Qt)及び圧力センサ25で検出される吐出圧Pの変化について示すタイムチャートである。
【0126】
図15の横軸は、時間(時刻)を示している。
図15(a)の縦軸は、ゲートロックレバー装置22の操作位置について示し、
図15(b)の縦軸は、アクチュエータの操作信号(操作レバーの操作量)を示し、
図15(c)の縦軸は、メインコントローラ100により設定されるブリードオフ弁140の目標開口面積Atを示し、
図15(d)の縦軸は、メインコントローラ100により設定されるポンプ81の吐出流量(ポンプ目標流量Qt)を示し、
図15(e)は、圧力センサ25で検出されるポンプ吐出圧Pを示している。
【0127】
時点t0において、ゲートロックレバー装置22はロック位置に操作されている。また、時点t0では、アクチュエータの操作レバーの全てが中立位置にある。すなわち、アクチュエータの操作装置は、全てが非操作状態である。このため、メインコントローラ100は、ブリードオフ弁140の目標開口面積AtをA11+A12+A13に設定する(At=A11+A12+A13)。この場合、メインコントローラ100は電磁弁63のソレノイドに供給される制御電流を最小値(例えば、待機電流値)に制御する。これにより、ブリードオフ弁140のパイロット受圧部149は、タンク圧相当の圧力となり、スプール141が
図6(a)に示す中立位置に配置される。その結果、第1絞り151の絞り孔(191,192,193)によって、通過する作動油に抵抗が付与され、ポンプ吐出圧P(メイン回路HC1の回路圧)が第1目標値P1(例えば、2MPa)で保持される。なお、アクチュエータの操作レバーが操作されていないため、ポンプ吐出流量は、最小流量Qminとなっている。
【0128】
時点t1において、ゲートロックレバー装置22がロック位置からロック解除位置に操作されると、メインコントローラ100は、ブリードオフ弁140の目標開口面積AtをA12+A13に設定する(At=A12+A13)。この場合、メインコントローラ100は、電磁弁63のソレノイドに供給される制御電流を増加させることにより、ブリードオフ弁140のパイロット受圧部149に作用するパイロット2次圧を増加させ、スプール141を
図6(b)に示す位置まで移動させる。これにより、第1絞り151の絞り孔(192,193)によって、通過する作動油に抵抗が付与され、ポンプ吐出圧Pが、1段階上昇して第2目標値P2(例えば、3MPa)となる。第2目標値P2までポンプ吐出圧Pを上昇させておくことにより、操作レバーによる操作が開始されたときに、速やかにブリードオフ弁140の絞り150の開口面積が小さくなる方向にスプール141を駆動させることのできる状態となる。
【0129】
時点t2において、例えば、ブーム操作装置23の操作レバー23aが中立位置から操作され、時点t3において、その操作量が閾値Th1を超えると、メインコントローラ100は、ブリードオフ弁140の目標開口面積AtとしてA13を設定する(At=A13)。この場合、メインコントローラ100は、電磁弁63のソレノイドに供給される制御電流値を増加させることにより、ブリードオフ弁140のパイロット受圧部149に作用するパイロット2次圧を増加させ、スプール141を
図6(c)に示す位置まで移動させる。これにより、第1絞り151の絞り孔(193)によって、通過する作動油に抵抗が付与され、ポンプ吐出圧Pが、さらに1段階上昇して第3目標値P3(例えば、4MPa)となる。第3目標値P3までポンプ吐出圧Pを上昇させておくことにより、操作レバーの操作に応じたブリードオフ弁140のスプール141の応答性をより高めることができる。また、この状態では、操作レバー23a,24aの操作によって、制御弁45,46のスプールをフルストロークまで移動させることのできる回路圧となっている。
【0130】
操作レバー23aがさらに操作され、その操作量が大きくなると、ポンプ吐出流量が増加し、ポンプ吐出圧Pが増加する。ポンプ吐出圧Pが、ブームシリンダ11aの負荷圧よりも大きくなると、チェック弁41が開き、ポンプ81から吐出される圧油(作動油)がブームシリンダ11aに供給され、ブーム11が駆動される。
【0131】
時点t4において、操作レバー23aの操作量が所定値L0を超えると、メインコントローラ100は、操作信号に基づいて演算した操作要求開口面積(A13未満の開口面積)をブリードオフ弁140の目標開口面積Atとして設定する。このため、時点t4以降では、操作レバー23aの操作量の増加に伴って、ブリードオフ弁140の目標開口面積Atが減少する。
【0132】
チェック弁41が開いた直後では、ブリードオフ弁140の目標開口面積AtはA13に設定されているため、ポンプ81から吐出された作動油の一部をブリードオフ弁140を通じてタンク19に逃がすことができる。そして、ブリードオフ弁140の目標開口面積Atが連続的に減少することにより、ブームシリンダ11aに供給される作動油の流量が連続的に増加する。これにより、ブームシリンダ11aに供給される作動油の流量が急激に増加することによりショックが発生することが防止され、ブームシリンダ11aを滑らかに動作させることができる。
【0133】
本実施形態の作用効果を、本実施形態の比較例と比較して説明する。本実施形態の比較例は、第1絞り151が省略され、切り欠き部144によって形成される第2絞り152のみが設けられ、非操作時に、第2絞り152で発生する圧力損失を利用して、回路圧を所定の圧力に保持する。この比較例では、スプールの位置が僅かにずれただけでも絞りの開口面積が変化してしまう。このため、回路圧の調整を精度よく行うことが難しい。
【0134】
これに対して、本実施形態では、複数の絞り孔(191,192,193)によって第1絞り151を構成し、切り欠き部144によって第2絞り152を構成し、非操作時に、第1絞り151で発生する圧力損失を利用して、回路圧を所定の圧力に保持する。複数の絞り孔(191,192,193)は、軸方向に離間して設けられている。このため、
図7に示すように、スプール141の軸方向の移動領域として、合成開口面積A0を一定に保つことのできる移動領域Ac1,Ac2,Ac3を確保することができる。
【0135】
したがって、回路圧を所定の圧力P1,P2,P3に保持する際、スプール141を移動領域Ac1,Ac2,Ac3の範囲内に位置させておくことにより、振動、作動油温の変化等の外乱の影響により、スプール141の位置が軸方向にずれてしまった場合に合成開口面積A0が変化してしまうことを防止することができる。つまり、本実施形態によれば、比較例に比べて、回路圧の調整を精度よく行うことができるので、パイロット1次圧の生成に必要な回路圧を安定して確保することができる。
【0136】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0137】
(1)油圧ショベル(作業機械)1は、ポンプ81から吐出される作動流体をアクチュエータに供給するメイン回路HC1と、メイン回路HC1に設けられ、ポンプ81からアクチュエータに供給される作動流体の流れを制御する制御弁45,46と、ポンプ81から吐出される作動流体の一部を制御弁45のパイロット受圧部45a,45b,46a,46bに導くパイロット回路HC2と、パイロット回路HC2に設けられ、ポンプ81から吐出される作動流体の圧力を減圧してパイロット1次圧を生成するパイロット減圧弁(第1減圧弁)71と、パイロット回路HC2に設けられ、パイロット1次圧を減圧して、制御弁45,46のパイロット受圧部45a,45b,46a,46bに作用するパイロット2次圧を生成する電磁弁(第2減圧弁)51,61,52,62と、ポンプ81とタンク19とを接続するブリードオフ通路Lbと、ブリードオフ通路Lbに設けられるパイロット駆動式のブリードオフ弁140と、パイロット回路HC2に設けられ、パイロット1次圧を減圧して、ブリードオフ弁140のパイロット受圧部149に作用するパイロット2次圧を生成する電磁弁(第3減圧弁)63と、アクチュエータを操作するための操作装置23,24と、操作装置23,24による操作に基づいて、電磁弁(第3減圧弁)63を制御するメインコントローラ(制御装置)100と、を備える。
【0138】
ブリードオフ弁140は、電磁弁(第3減圧弁)63によって生成されるパイロット2次圧によって、軸方向に移動するスプール141と、スプール141を摺動自在に収容するバルブボディ161と、通過する作動流体に抵抗を付与する絞り150と、を有する。スプール141の軸方向の移動領域は、絞り150の開口面積(開度)が段階的に変化する第1移動領域と、絞り150の開口面積(開度)が連続的に変化する第2移動領域と、を有する。メインコントローラ100は、操作装置23,24によるアクチュエータの操作が行われていないときには、スプール141を第1移動領域に位置させるように電磁弁(第3減圧弁)63を制御する。メインコントローラ100は、操作装置23,24により、予め定めた所定値L0よりも大きい操作量でアクチュエータの操作が行われているときには、スプール141を第2移動領域に位置させるように電磁弁(第3減圧弁)63を制御する。絞り150は、スプール141が第1移動領域に位置しているときに、通過する作動流体に抵抗を付与する絞り孔(第1入口孔191、第2入口孔192及び第3入口孔193)を有する。
【0139】
この構成によれば、アクチュエータの操作が行われていないときには、絞り孔(第1入口孔191、第2入口孔192及び第3入口孔193)に作動流体が通過することにより、圧力損失を発生させ、パイロット1次圧の生成に必要な回路圧を安定して確保することができる。
【0140】
(2)バルブボディ161は、スプール141を摺動自在に収容する摺動孔170と、摺動孔170に連通し、ポンプ81から吐出される作動流体が供給される供給通路171と、摺動孔170とタンク19とを連通する排出通路172と、排出通路172に隣接するように摺動孔170に設けられる流体室197と、を有する。スプール141は、排出通路172と流体室197とを連通または遮断する第1ランド部(ランド部)181と、内部通路146と、供給通路171と内部通路146とを連通する複数の絞り孔(第1入口孔191、第2入口孔192及び第3入口孔193)と、内部通路146と流体室197とを連通する出口孔(連通孔)196と、を有する。ブリードオフ弁140の絞り150は、複数の絞り孔(第1入口孔191、第2入口孔192及び第3入口孔193)によって構成される第1絞り151と、第1ランド部181に形成された切り欠き部144と摺動孔170との隙間によって形成される第2絞り152と、によって構成される。
【0141】
つまり、第1絞り151は、スプール141が摺動孔170の一端側から他端側に向かって移動するにつれて、その開口面積が段階的に小さくなるように形成される。第2絞り152は、スプール141が摺動孔170の一端側から他端側に向かって移動するにつれて、その開口面積が連続的に小さくなるように形成される。この構成によれば、第1絞り151の開口面積を段階的に変化させることにより、回路圧を段階的に変化させることができる。また、第2絞り152の開口面積を連続的に変化させることにより、ブリードオフ流量を連続的に変化させることができるため、アクチュエータを滑らかに動作させることができる。
【0142】
(3)第1絞り151は、スプール141が摺動孔170の一端側に位置しているときには供給通路171と内部通路146とを連通し、スプール141が摺動孔170の他端側に位置しているときには供給通路171と内部通路146との連通を遮断する絞り孔(第1入口孔191及び第2入口孔192)と、スプール141の位置にかかわらず、供給通路171と内部通路146とを連通する絞り孔(第3入口孔193)と、によって構成される。
【0143】
本実施形態では、連通状態から遮断状態に遷移する2つの絞り孔(第1入口孔191及び第2入口孔192)が設けられている。このため、ポンプ吐出流量が所定値(例えば、最小流量)のときに、第1入口孔191のみを遮断状態とすることにより、ポンプ吐出圧Pを第1目標値P1から第2目標値P2へ1段階上昇させ、第1入口孔191及び第2入口孔192の双方を遮断状態とすることにより、ポンプ吐出圧Pを第2目標値P2から第3目標値P3へさらに1段階上昇させることができる。この構成では、回路圧を3つの圧力状態に段階的に変化させることができる。このため、油圧ショベル1の状態に応じて、回路圧を段階的に調整することにより、エネルギー消費の効率の向上を図ったり、ブリードオフ弁140のスプール141及び制御弁45,46のスプールの動作の応答性及び移動可能範囲を調整したりすることができる。
【0144】
(4)油圧ショベル1は、アクチュエータ(11a,12a)の動作を禁止するロック位置とアクチュエータ(11a,12a)の動作を許可するロック解除位置とに選択的に操作されるゲートロックレバー装置(ロックレバー装置)22、を備える。メインコントローラ100は、ゲートロックレバー装置22がロック位置に操作されている場合、絞り150の開口面積が最大開口面積Amax(=A11+A12+A13)となるようにスプール141の位置を制御する。メインコントローラ100は、ゲートロックレバー装置22がロック解除位置に操作されている場合であって、操作装置23,24によるアクチュエータ(11a,12a)の操作が行われていないときには、絞り150の開口面積が最大開口面積Amaxよりも一段階小さい開口面積(A12+A13)となるようにスプール141の位置を制御する。メインコントローラ100は、ゲートロックレバー装置22がロック解除位置に操作されている場合であって、操作装置23,24により、予め定めた所定値L0以下の操作量でアクチュエータ(11a,12a)の操作が行われているときには、絞り150の開口面積が最大開口面積Amaxよりも二段階小さい開口面積(A13)となるようにスプール141の位置を制御する。
【0145】
この構成では、ゲートロックレバー装置22がロック位置に操作されているときには、絞り150の開口面積が最大開口面積Amaxとなるため、エネルギー消費効率を最も高めることができる。ゲートロックレバー装置22がロック解除位置に操作されると、ポンプ吐出圧Pが1段階上昇し、制御弁45,46を駆動させるのに必要なパイロット圧の生成に必要な回路圧を確保することができるとともに、エネルギー消費効率をある程度高めることができる。ゲートロックレバー装置22がロック解除位置に操作されている状態で、操作装置23,24により所定値L0以下の操作量で操作が行われると(すなわち操作量>閾値Th1)、ポンプ吐出圧Pがさらに1段階上昇するため、操作に応じて制御弁45,46をフルストロークまで動作させることが可能になる。
【0146】
(5)絞り孔(第1入口孔191、第2入口孔192及び第3入口孔193)は、スプール141の径方向に貫通する貫通孔であり、その径方向の長さL2が切り欠き部144の軸方向の長さL1よりも短くなるように形成される。絞り孔の径方向長さL2が長すぎると、作動流体の温度変化(粘度変化)に起因する圧力損失の変化が大きくなってしまう。例えば、作動流体の温度が低く、粘度が高い場合には、圧力損失が大きくなり、回路圧が過剰になってしまうおそれがある。また、作動流体の温度が高く、粘度が低い場合には、圧力損失が小さく、必要な回路圧を確保できなくなってしまうおそれがある。本実施形態では、絞り孔(第1入口孔191、第2入口孔192及び第3入口孔193)の径方向の長さL2が、切り欠き部144の軸方向の長さL1よりも短いため、作動流体の温度変化(粘度変化)の影響を小さくすることができる。このため、作動流体の温度が低いときに、回路圧が過剰になることを防止し、作動流体の温度が高いときに回路圧が不足することを防止することができる。
【0147】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0148】
<変形例1>
ブリードオフ弁140の構成は、上記実施形態で説明した構成に限定されない。上記実施形態では、連通状態から遮断状態に遷移する調整孔(第1入口孔191及び第2入口孔192)を2つ設ける例について説明したが、軸方向に離間する3つ以上の調整孔をスプールに設けるようにしてもよい。また、2つの調整孔のうち、1つを省略してもよい。例えば、第1入口孔(調整孔)191は、その開口面積がA11+A12となるように形成し、第2入口孔(調整孔)192は省略してもよい。
【0149】
<変形例1-1>
連通状態から遮断状態に遷移する調整孔を1つにした場合の目標開口面積の設定方法について説明する。本変形例1-1に係るメインコントローラ100は、ゲートロックレバー装置22の操作位置にかかわらず、ブリードオフ弁140の目標開口面積AtをA11+A12+A13に設定する。また、本変形例1-1に係るメインコントローラ100は、アクチュエータの操作レバーの操作量が閾値Th1を超えると、ブリードオフ弁140の目標開口面積AtをA13に設定する。
【0150】
この構成では、アクチュエータの操作が行われていないときには、ブリードオフ弁140の絞り150の開口面積は、最大開口面積Amax(=A11+A12+A13)となるため、上記実施形態と同様、エネルギー消費を抑えることができる。なお、本変形例1-1では、アクチュエータの操作レバーの操作量が増加して閾値Th1を超えると、ブリードオフ弁140の目標開口面積AtがA13に設定される。このため、操作装置23,24の操作に応じたブリードオフ弁140のスプール141及び制御弁45,46のスプールの動作の応答性は、本変形例に比べて上記実施形態の方が高い。
【0151】
<変形例1-2>
連通状態から遮断状態に遷移する調整孔を1つにした場合の目標開口面積の別の設定方法について説明する。本変形例1-2に係るメインコントローラ100は、ゲートロックレバー装置22の操作位置がロック位置に操作されている場合には、ブリードオフ弁140の目標開口面積AtをA11+A12+A13に設定する。また、本変形例1-2に係るメインコントローラ100は、ゲートロックレバー装置22の操作位置がロック解除位置に操作されている場合には、ブリードオフ弁140の目標開口面積AtをA13に設定する。
【0152】
この構成では、アクチュエータの操作が行われていないときには、ブリードオフ弁140の絞り150の開口面積は、最大開口面積Amax(=A11+A12+A13)となるため、上記実施形態と同様、エネルギー消費を抑えることができる。なお、本変形例1-2では、ゲートロックレバー装置22がロック解除位置に操作されると、ブリードオフ弁140の目標開口面積AtがA13に設定される。このため、エネルギー消費効率は、本変形例に比べて上記実施形態の方が高い。
【0153】
<変形例2>
図16を参照して、上記実施形態の変形例2について説明する。
図16は、
図3と同様の図であり、変形例2に係るブリードオフ弁240の断面模式図である。以下では、上記実施形態で説明したブリードオフ弁140と異なる点について主に説明する。
図16に示すように、本変形例では、スプール241に環状溝183(
図3参照)が形成されていない。また、摺動孔270に環状凹部173(
図3参照)が形成されていない。さらに、本変形例に係るブリードオフ弁240には、上記実施形態で説明した切り欠き部144(
図3参照)も形成されていない。以下、本変形例に係るブリードオフ弁240の構造について、上記実施形態とは異なる点を主に説明する。
【0154】
バルブボディ261は、スプール241を摺動自在に収容する摺動孔270と、摺動孔270に連通し、ポンプ81から吐出される作動油が供給される供給通路171と、摺動孔270とタンク19とを連通する排出通路172と、を有する。
【0155】
スプール241は、内部通路146と、供給通路171と内部通路146とを連通する複数の絞り孔(入口孔291、入口孔292、入口孔298、入口孔299)と、内部通路146と排出通路172とを連通する複数の出口孔296と、を有する。なお、複数の出口孔296の総開口面積は、複数の絞り孔(291,292,298,299)の総開口面積に比べて十分に大きい。
【0156】
本変形例に係るブリードオフ弁240の絞り250は、複数の絞り孔(291,292,298,299)によって構成される。入口孔291,292は、互いに軸方向で離間して設けられる円形断面形状の絞り孔であり、スプール241が摺動孔270の一端側から他端側に向かって移動するにつれて、絞り250の開口面積(開度)が段階的に小さくなるように形成される。入口孔291が連通状態から遮断状態になると、絞り250の開口面積は、最大開口面積から1段階小さい開口面積に変化する。また、入口孔292が連通状態から遮断状態になると、絞り250の開口面積は、さらに1段階小さい開口面積に変化する。
【0157】
入口孔298,299は、スプール241が摺動孔270の一端側から他端側に向かって移動するにつれて、絞り250の開口面積(開度)が連続的に小さくなるように形成される絞り孔である。入口孔298と入口孔299は、周方向に離間して設けられる。
【0158】
入口孔298は、長軸が軸方向に沿って配置される楕円形状のベース孔部298bと、ベース孔部298bの一端部(図示下端部)からスプール241の下端部に向かって軸方向に延在するように形成された切り欠き部298aと、を有する。切り欠き部298aは、ベース孔部298bから連続して形成される基端側切り欠き部298a1と、基端側切り欠き部298a1から下方向に延在する先端側切り欠き部298a2と、を有する。先端側切り欠き部298a2の幅は、基端側切り欠き部298a1の幅よりも短い。ベース孔部298b及び切り欠き部298aは、スプール241の径方向に貫通している。
【0159】
同様に、入口孔299は、長軸が軸方向に沿って配置される楕円形状のベース孔部299bと、ベース孔部299bの一端部(図示下端部)からスプール241の下端部に向かって軸方向に延在するように形成された切り欠き部299aと、を有する。切り欠き部299aは、ベース孔部299bから連続して形成される基端側切り欠き部299a1と、基端側切り欠き部299a1から下方向に延在する先端側切り欠き部299a2と、を有する。先端側切り欠き部299a2の幅は、基端側切り欠き部299a1の幅よりも短い。ベース孔部299b及び切り欠き部299aは、スプール241の径方向に貫通している。
【0160】
メインコントローラ100は、ゲートロックレバー装置22がロック位置に操作されている場合、複数の入口孔(291,292,298,299)の全てが全開状態となる中立位置にスプール241を位置させる。これにより、絞り250の開口面積は最大開口面積Amaxとなるため、回路圧が第1目標値P1で保持される。
【0161】
メインコントローラ100は、ゲートロックレバー装置22がロック解除位置に操作されている場合であって、アクチュエータの操作が行われていないときには、複数の入口孔(291,292,298,299)のうち、入口孔291のみが全閉状態となる位置にスプール241を位置させる。これにより、絞り250の開口面積は最大開口面積Amaxから1段階小さい開口面積となり、回路圧が第1目標値P1から1段階上昇した第2目標値P2で保持される。
【0162】
メインコントローラ100は、ゲートロックレバー装置22がロック解除位置に操作されている場合であって、予め定めた所定値L0以下の操作量でアクチュエータの操作が行われているときには、入口孔291,292が全閉状態となり、入口孔298,299が全開状態となる位置にスプール241を位置させる。これにより、絞り250の開口面積は、最大開口面積Amaxから2段階小さい開口面積となる。
【0163】
操作レバー23a,24aの操作量が所定値L0よりも大きくなると、操作量が増加するにしたがって、入口孔291,292の開口面積が小さくなる。このとき、切り欠き部298a,299aに比べて流路断面積が大きいベース孔部298b,299bの開口面積が小さくなり、その後に、切り欠き部298a,299aの開口面積が小さくなる。したがって、操作レバー23a,24aの操作量が大きくなるほど、操作量に対する開口面積の変化の割合の絶対値が小さくなる。このため、操作量に対する開口面積の変化の割合が一定である場合に比べて、より滑らかにアクチュエータを動作させることができる。
【0164】
このような変形例によれば、上記実施形態と同様の作用効果に加え、流体室197を省略することによりスプール241の軸方向の長さを短くすることができる。つまり、コントロールバルブブロック4の小型化によって、製品コストの低減を図ることができる。
【0165】
<変形例3>
上記実施形態では、ゲートロックレバー装置22がロック解除位置に操作されている場合であって、アクチュエータの操作が行われていないときには、メインコントローラ100は、絞り150の目標開口面積AtをA11+A12に設定し、その状態からゲートロックレバー装置22がロック位置に操作されると、絞り150の目標開口面積AtをA11+A12+A13に設定する。これに対して、例えば、メインコントローラ100は、絞り150の目標開口面積AtがA11+A12に設定されている状態において、アクチュエータの操作が予め定めた所定時間以上行われなかった場合に、絞り150の目標開口面積AtをA11+A12+A13に設定してもよい。
【0166】
<変形例4>
上記実施形態では、絞り孔(第1入口孔191、第2入口孔192及び第3入口孔193)の径方向の長さL2が切り欠き部144の軸方向の長さL1よりも短くなるように形成される例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、温度変化の少ない作業環境で作業を行う油圧ショベル1においては、絞り孔の径方向の長さL2は、切り欠き部144の軸方向の長さL1と同じか長くなるように形成してもよい。
【0167】
<変形例5>
図17に示すように、第1ランド部181に周方向に沿うように所定長さの溝390a,390b,390cを形成し、この溝390a,390b,390cの底部に溝390a,390b,390cの軸方向の幅よりも径が小さい絞り孔391,392,393を設けるようにしてもよい。これにより、スプール141の強度の向上を図りつつ、絞り孔391,392,393の流路長(径方向長さ)を短くすることにより、作動油の粘性の影響を低減することができる。
【0168】
<変形例6>
上記実施形態では、絞り孔(第1入口孔191、第2入口孔192及び第3入口孔193)の断面形状が円形状である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。絞り孔の断面形状は、楕円形状、長円形状、多角形状等、種々の形状とすることができる。
【0169】
<変形例7>
上記実施形態では、作業機械がクローラ式の油圧ショベル1である場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。ホイール式の油圧ショベル、ホイールローダ、クローラクレーン等、種々の作業機械に本発明を適用することができる。
【0170】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0171】
1…油圧ショベル(作業機械)、2a…走行用油圧モータ(アクチュエータ)、3a…旋回用油圧モータ(アクチュエータ)、10…作業装置、11a…ブームシリンダ(アクチュエータ)、12a…アームシリンダ(アクチュエータ)、13a…バケットシリンダ(アクチュエータ)、20…機体、22…ゲートロックレバー装置(ロックレバー装置)、23,24…操作装置、45,46…制御弁、51,52,61,62…電磁弁(第2減圧弁)、63…電磁弁(第3減圧弁)、71…パイロット減圧弁(第1減圧弁)、74…ロック弁(電磁切換弁)、80…エンジン、81…ポンプ、100…メインコントローラ(制御装置)、140,240…ブリードオフ弁、141,241…スプール、144…切り欠き部、146…内部通路、149…パイロット受圧部、161,261…バルブボディ、170,270…摺動孔、171…供給通路、172…排出通路、173…環状凹部、174…パイロット通路、175…ばね室、181…第1ランド部(ランド部)、191,391…第1入口孔(絞り孔)、192,392…第2入口孔(絞り孔)、193,393…第3入口孔(絞り孔)、194…流路断面、196…出口孔(連通孔)、197…流体室、291…入口孔(絞り孔)、292…入口孔(絞り孔)、296…出口孔、298,299…入口孔(絞り孔)、298a,299a…切り欠き部、298b,299b…ベース孔部、A0…合成開口面積(絞りの開口面積)、HC1…メイン回路、HC2…パイロット回路、L0…所定値、Lb…ブリードオフ通路、Ld…ポンプ吐出通路、Lp…パラレル通路、Lt…タンク通路、P…ポンプ吐出圧(メイン回路の回路圧)、Th1…閾値