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特許7562838炭素被覆複合材料、その製造方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】炭素被覆複合材料、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/113 20060101AFI20240930BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20240930BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240930BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240930BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20240930BHJP
   C23C 16/50 20060101ALI20240930BHJP
   C23C 16/26 20060101ALI20240930BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240930BHJP
   B22F 1/16 20220101ALI20240930BHJP
   B22F 1/052 20220101ALI20240930BHJP
【FI】
C01B33/113 A
H01M4/587
H01M4/36 C
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/36 D
C01B33/113 Z
C23C16/50
C23C16/26
B22F1/00 R
B22F1/16
B22F1/052
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023511621
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 CN2022102629
(87)【国際公開番号】W WO2023155365
(87)【国際公開日】2023-08-24
【審査請求日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】202210154223.8
(32)【優先日】2022-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523050748
【氏名又は名称】北京壹金新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING IAMETAL NEW ENERGY TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 66, Zhongguancun East Road, HaiDian District Beijing 100190, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李 金▲い▼
(72)【発明者】
【氏名】徐 泉
(72)【発明者】
【氏名】李 閣
(72)【発明者】
【氏名】趙 岸光
(72)【発明者】
【氏名】孫 東立
(72)【発明者】
【氏名】程 暁彦
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-100047(JP,A)
【文献】特表2023-524933(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112209390(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111048784(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/113
H01M 4/587
H01M 4/36
H01M 4/38
H01M 4/48
C23C 16/50
C23C 16/26
B22F 1/00
B22F 1/16
B22F 1/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア物質と前記コア物質の外に被覆された炭素被覆層と、を含む炭素被覆複合材料であって、
前記炭素被覆層は密度が1.0~2.0g・cm-3であり、コア物質である炭素被覆対象材料はD50が1~40μmであり、粒度分布の範囲が0.5≦(D90-D10)/D50≦2を満たし、比表面積が1~5m・g-1であり、比表面積と堆積細孔体積との比が0.50~2.00cm-1であり、被覆後の複合材料のD50の増加幅が3μm以下であり、前記炭素被覆複合材料を溶出液に入れることで溶出される所定の元素であるコア特徴元素の溶出を測定した結果、前記コア特徴元素の溶出量が100ppm以下であり、前記コア特徴元素は前記炭素被覆対象材料における化学反応によりそのICP定量データが得られる元素であり、
コア物質は黒鉛粒子、金属錫粒子、錫酸化物粒子、ケイ素粒子、ケイ素酸化物粒子、窒化ケイ素粒子、元素ドープケイ素酸素複合物粒子、金属ゲルマニウム粒子、ゲルマニウム酸化物粒子から選択されるいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせであり、
前記コア物質が黒鉛粒子である場合、溶出液は王水であり、前記コア特徴元素は鉄元素であり、
前記コア物質が金属錫粒子、錫酸化物粒子である場合、溶出液は王水であり、前記コア特徴元素は錫元素であり、
前記コア物質が金属ゲルマニウム粒子、ゲルマニウム酸化物粒子である場合、前記溶出液は王水溶液であり、前記コア特徴元素はゲルマニウム元素であり、
前記コア物質がケイ素粒子、ケイ素酸化物粒子、窒化ケイ素粒子、元素ドープケイ素酸素複合物粒子である場合、溶出液は水酸化ナトリウム又はフッ化水素酸溶液であり、前記コア特徴元素はケイ素である、ことを特徴とするリチウムイオン電池用炭素被覆複合材料。
【請求項2】
炭素被覆層は密度が1.2g・cm-3≦ρ≦1.5g・cm-3であり、炭素被覆対象材料はD50が3~10μmであり、粒度分布の範囲が1≦(D90-D10)/D50≦1.5を満たし、比表面積が1~2m・g-1であり、比表面積と堆積細孔体積との比が0.70~1.50cm-1であり、被覆後の複合材料のD50の増加幅が1μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の炭素被覆複合材料。
【請求項3】
前記ケイ素酸化物粒子はケイ素と酸素との比が1:1~1:2の任意のケイ素酸化物であり、前記元素ドープケイ素酸素複合物粒子はリチウムドープ一酸化ケイ素、マグネシウムドープ一酸化ケイ素を含むことを特徴とする請求項に記載の炭素被覆複合材料。
【請求項4】
コア物質の平均径が1~40μm、粒度分布の範囲が0.5≦(D90-D10)/D50≦2、比表面積が1~5m・g-1、比表面積と堆積細孔体積との比が0.5~2.0cm-1となるように、被覆対象原料であるコア物質を処理するステップ(1)と、
処理後の被覆対象原料をロータリーキルンに投入して、保護性雰囲気の下で、炭素含有プロセスガスを導入して1回目の炭素元素気相堆積を行い、第1中間生成物を得るステップ(2)と、
前記第1中間生成物を篩にかけて、大粒径の材料を除去し、残りの材料を破砕して解凝集し、第2中間生成物を得るステップ(3)と、
前記第2中間生成物をロータリーキルンに再度投入して、保護性雰囲気の下で、炭素含有プロセスガスを導入して2回目の炭素元素気相堆積を行い、被覆対象原料粒子をコアとして外層に炭素を被覆した炭素被覆複合材料を得るステップ(4)と、を含むことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用炭素被覆複合材料の製造方法。
【請求項5】
ステップ(2)及びステップ(4)では、前記炭素含有プロセスガスはC1~4のアルカン、C2~4のオレフィン、C2~4のアルキンを含み、ロータリーキルンの回転数が0.1~2rpmであり、
1回目の炭素元素気相堆積は温度600~1200℃、時間0.5~10hであり、又は、前記1回目の炭素元素気相堆積は100~500℃のプラズマ気相堆積であり、時間が0.5~10hであり、
前記2回目の炭素元素気相堆積は温度600~1200℃、時間0.5~10hであり、又は、前記2回目の炭素元素気相堆積は100~500℃のプラズマ気相堆積であり、時間が0.5~10hであることを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記1回目の炭素元素気相堆積において、前記炭素含有プロセスガスはプロピレンとメタンとを1~2:1~2の体積比で配合したものであり、プロセスガスの導入流速は、h=V/sの条件を満たし、ここで、Vはロータリーキルンのチャンバの全体積(単位L)であり、sはガスの導入速度(単位L/min)であり、プロセスガスの流速は、hが20~60minであることを満たし、
前記2回目の炭素元素気相堆積における炭素含有プロセスガスの導入流速は、前記1回目の炭素元素気相堆積の炭素含有プロセスガスの流速の1/4~4/5であることを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項7】
プロピレンはロータリーキルンの炉口部位置から炉体の全長さの1/5の位置から導入され、メタンはロータリーキルンの炉体の全長さの1/3~2/3の位置から導入されることを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の炭素被覆複合材料の、リチウムイオン電池の電極材料としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭素複合材料の製造分野に属し、具体的には、炭素が緻密で均一に被覆された複合材料、その製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素被覆は一般的な材料改質方法の1つである。材料を炭素被覆することにより、一方では材料の導電性を向上させることができ、他方では安定した化学的及び電気的化学反応界面を提供することができる。
【0003】
現在、炭素被覆は通常、固相法、液相法及び気相法プロセスを採用している。従来技術では、炭素被覆は固相法によって行うことができ、すなわち、固-固混合の方式で固体炭素源を被覆対象材料中に分散させ、その後、一定の温度に加熱することで固体炭素源を軟化して被覆対象材料の粒子表面に被覆し、さらに温度を上昇させることで脱水素して炭素にすることができる。しかし、固相法による炭素被覆プロセスは被覆の均一性を実現することが困難であり、粒子の凝集という問題を回避することができない。液相法と気相法は粒子の凝集という問題をよく避けることができる。液相法では、通常、溶質を水やエタノールなどの溶媒で液相分散させた後、高温で炭化して炭素被覆材料を得る。しかし、液相法による炭素被覆では、溶剤回収が必要であり、しかも、そのプロセスが煩雑であり、広く応用されることが難しい。気相法は、具体的には、炭素含有ガスを気相堆積法により被覆対象材料の表面に被覆することである。気相法により被覆は設備や技術が発展しており、新エネルギー関連材料への応用に成功し、特に体積の変形が大きい材料に対して良い効果があり、導電性を高め、界面を改善し、リチウム吸蔵過程の体積膨張を減少することができる。また、気相被覆は汚染が少なく、被覆量を制御することができるという特徴を有する。しかし、気相法により被覆の場合は、被覆層の完全性は不安定で、被覆が完全に実施できないということがよく発生し、被覆層も適切な緻密性を持つ効果を実現することが難しく、内部被覆材料の漏れや溶出が生じやすく、炭素被覆複合材料の特性に悪影響を与える。気相被覆プロセスは炭素源プロセスガスの選択及び原材料のキーパラメータのスクリーニングが重要な指標であり、原材料の表面欠陥の数、粒子サイズの最適化、及び異なる粉体堆積細孔構造は異なる活性部位の数をもたらし、このような活性部位はプロセスガスと組み合わせると、化学気相堆積プロセス中に拡散と成長核生成の複雑な競合反応をもたらす。したがって、均一で緻密な炭素層は依然として気相被覆プロセスの難点である。均一で緻密な炭素層は製品のサイクル特性及び貯蔵特性を明らかに向上させることができ、特に高温条件下で副反応を抑制することができる。
【0004】
ケイ素負極材料において、体積膨張が最も重要な課題であり、従来技術において、ケイ素酸化物の技術手段により体積膨張を一定程度低減することができるが、導電率が低く、初回クーロン効率が高くないという問題があり、炭素被覆は導電率が低いという問題を効果的に解決することができるが、炭素被覆ケイ素負極材料の導電率を効果的に向上させるために、炭素被覆の被覆層の緻密性と完全性を確保することが必要とされる。
【0005】
そのため、被覆対象材料をより完全に炭素層で被覆でき、炭素被覆複合材料の特性を最大化するために、より高い緻密性と高い被覆完全性を有する炭素被覆複合材料の開発が急務となっている。
【発明の概要】
【0006】
従来技術の欠点に対して、本願の第1の目的は、コアと前記コアの外に被覆された炭素被覆層と、を含み、前記炭素被覆層は密度が1.0~2.0g・cm-3であり、前記炭素被覆対象材料はD50が1~40μm、好ましくは3~10μm、より好ましくは4~7μmであり、粒度分布の範囲が0.5≦(D90-D10)/D50≦2、好ましくは1≦(D90-D10)/D50≦1.5であり、比表面積が1~5m・g-1、好ましくは1~2m・g-1であり、比表面積と堆積細孔体積との比が0.50~2.00cm-1、好ましくは0.70~1.50cm-1であり、被覆後の複合材料のD50の増加幅が3μm以下、好ましくは1μm以下である炭素被覆複合材料を提供することである。
【0007】
炭素被覆層密度は下記式により算出され得る。ρ=mρρ/(mρ-mρ)(ρは炭素被覆層の密度であり、前記炭素被覆複合材料の質量はm、密度はρであり、前記炭素被覆層の質量はmであり、前記コアの質量はm、密度はρである。)。コア特徴元素を溶解し得る過量の溶液に前記炭素被覆複合材料を入れて、コア特徴元素の溶出を測定した結果、前記コア特徴元素の溶出量が100ppm以下である。
【0008】
好ましくは、前記炭素被覆複合材料において、炭素被覆層の密度は1.2g・cm-3≦ρ≦1.5g・cm-3である。
【0009】
本願に係る炭素被覆複合材料は、高密度の緻密な炭素被覆層、100ppm以下のコア元素溶出量を持ち、言い換えれば、本願に係る炭素被覆複合材料は完全で緻密性が適切な炭素被覆層を有する。完全に被覆されている炭素被覆複合材料は被覆欠陥を効果的に回避し、コアの外層への炭素被覆層の被覆の均一性を表すことができ、一方、炭素層が均一に被覆されることは炭素被覆材料の特性の安定性にとって非常に重要なことであり、一方では、コア物質の体積変化(例えば体積膨張)を緩衝することができ、他方では、完全で均一な炭素層は表面電荷を効果的に分散させてより安定的な電気二重層を形成し、リチウム吸蔵中により均一で安定的な界面を形成することができ、適切な炭素被覆層密度は炭素被覆層の緻密度を表すことができ、1.0g・cm-3≦ρ≦2.0g・cm-3(1.1g・cm-3、1.2g・cm-3、1.3g・cm-3、1.4g・cm-3、1.5g・cm-3、1.6g・cm-3、1.7g・cm-3、1.8g・cm-3、1.9g・cm-3など)では、炭素被覆層は適切な緻密さを有し、より安定的な電気二重層を形成することができる。
【0010】
本願は前記炭素被覆複合材料のコア物質について特に限定されず、好ましくは、コア物質は、無機粒子、例えば黒鉛粒子、金属錫粒子、錫酸化物粒子、ケイ素粒子、ケイ素酸化物粒子、窒化ケイ素粒子、元素ドープケイ素酸素複合物粒子、金属ゲルマニウム粒子、ゲルマニウム酸化物粒子のうちのいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0011】
コア特徴元素を溶解し得る過量の溶液に本発明で得られた炭素被覆複合材料を入れて、コア特徴元素の溶出を測定した結果、前記コア特徴元素の溶出量が100ppm以下である。前記コア特徴元素は前記コア物質について化学反応などの方法によりそのICP定量データが得られる元素タイプであり、コア自体が溶解できない場合、他の溶解可能な元素を参照とする必要がある。前記コアが黒鉛粒子である場合、前記溶出液は王水であり、前記コア特徴元素は不純物である微量元素、例えば鉄元素である。前記コアが金属錫粒子、錫酸化物粒子である場合、前記溶出液は王水であり、前記コア特徴元素は錫元素であり、前記コアが金属ゲルマニウム粒子、ゲルマニウム酸化物粒子である場合、前記溶出液は王水溶液であり、前記コア特徴元素はゲルマニウム元素であり、前記コアがケイ素粒子、ケイ素酸化物粒子、窒化ケイ素粒子、元素ドープケイ素酸素複合物粒子である場合、前記コア特徴元素はケイ素であり、前記溶出液は水酸化ナトリウム又はフッ化水素酸溶液であり、溶出時間は24h以上である。
【0012】
前記コア特徴元素の溶出量を測定する際には、過量の溶液とは、溶液の添加量が前記コア特徴元素を完全に溶出できる溶液の量よりも多いことを意味する。コア特徴元素の溶出量が小さいほど、炭素被覆が緻密かつ均一であり、コア物質に亘って被覆し、欠陥や脆弱部がないことを示し、完全な被覆構造は界面の副反応を減少させるのに有利であり、電池の高温特性、低温特性、貯蔵特性やサイクル特性を改善するために大きく寄与する。
【0013】
質量m、密度ρの炭素被覆複合材料では、炭素被覆複合材料の炭素含有量をA(コアに炭素が含有されていない複合材料については、炭素・硫黄分析装置により炭素被覆含有量を測定し、コアに炭素が含有されている複合材料については、TG-DSCの方法により決定することができる)とすると、前記炭素被覆層の質量はm=m×Aになる。
【0014】
本願の前記炭素被覆複合材料の密度ρ及び前記コアの密度ρのいずれも対応する物質の真密度であるが、本願で限定される炭素被覆層密度ρも炭素被覆層の真密度として理解すべきである。真密度(True Density)とは、絶対的に密な状態での材料の単位体積あたりの固体物質の実際の質量であり、すなわち、内部の孔隙又は粒子間の空隙を除去した密度である。真密度は見掛け密度及びタップ密度と異なり、見掛け密度とは材料の質量と見掛け体積との比であり、見掛け体積とは実体積に閉孔の体積を掛けたものであり、材料内部の空隙などの要素を考慮しておらず、タップ密度とは粉塵や粉体を特定の容器に充填した直後に測定した単位体積あたりの質量であり、同様に材料の堆積により形成される細孔や空隙を考慮していない。本発明の前記炭素被覆複合材料の密度ρ及び前記コアの密度ρのいずれも真密度テスターにより測定され得る。平均粒径、粒度分布、比表面積、堆積細孔体積は全て従来技術により測定され得、テスト方法の一例として、比表面積テスターが得られる。
【0015】
本発明の第2の目的は、
コア物質の平均径が1~40μm、粒度分布の範囲が0.5≦(D90-D10)/D50≦2、比表面積が1~5m・g-1、比表面積と堆積細孔体積との比が0.5~2.0cm-1となるように被覆対象原料であるコア物質を処理するステップ(1)と、
処理後の被覆対象原料をロータリーキルンに投入して、保護性雰囲気の下で、炭素含有プロセスガスを導入して1回目の炭素元素気相堆積を行い、第1中間生成物を得るステップ(2)と、
前記中間生成物を篩にかけて、大粒径の材料を除去し、残りの材料を破砕して解凝集し、第2中間生成物を得るステップ(3)と、
前記第2中間生成物をロータリーキルンに再度投入して、保護性雰囲気の下で、炭素含有プロセスガスを導入して2回目の炭素元素気相堆積を行い、被覆対象原料粒子をコアとして外層に炭素を被覆した炭素被覆複合材料を得るステップ(4)と、を含む第1の目的の前記炭素被覆複合材料の製造方法を提供することである。
【0016】
ロータリーキルンにおいて回転させて、動的な原料の表面について気相堆積を2回行い、コア特徴元素の溶出量が100ppm未満の完全な炭素被覆層を形成する。本願に係る製造方法では、原料のサイズ範囲、粒径範囲、比表面積及び堆積細孔体積により前記原料が適切な空隙及び適切な粒子表面粗さを持つようにして、これにより、化学気相堆積において粒子の表面や細孔壁に炭素層がより堆積されやすく、1回の化学気相堆積後に粒子が適宜解凝集して特定のサイズになり(第2中間生成物の平均径は被覆対象原料の平均径の1~1.1倍)、このようにして、1回目の化学気相堆積において凝集により生じた被覆層の欠陥が露出して、2回目の化学気相堆積により被覆層の欠陥が補修される。
【0017】
ステップ(1)における処理プロセスは、例えば気流粉砕、ボールミル、高速粉砕機、4分級など当該分野に公知のことである。なお、被覆対象原料が「平均径が1~40μm、粒度分布の範囲が0.5≦(D90-D10)/D50≦2、比表面積が1~5m・g-1、比表面積と堆積細孔体積との比が0.5~2.0cm-1である」という要件を満たさない場合、当業者が破砕、分級などの従来技術によって本願における被覆対象原料の要件を満たすまで被覆対象原料を処理してから、炭素を被覆することができる。
【0018】
好ましくは、前記被覆対象原料は黒鉛粉体、金属錫、錫酸化物、ケイ素、ケイ素酸化物、窒化ケイ素、元素ドープケイ素酸素複合物、金属ゲルマニウム粒子、ゲルマニウム酸化物粒子のうちのいずれか1種を含む。
【0019】
前記ケイ素酸化物の例としては、酸化ケイ素、一酸化ケイ素、又はケイ素酸素比が1:1~1:2の任意のケイ素酸化物が含まれ、前記元素ドープケイ素酸素複合物の例はリチウムドープ一酸化ケイ素、マグネシウムドープ一酸化ケイ素などであってもよい。
【0020】
本発明の炭素被覆複合材料はリチウムイオン電池の負極材料として利用することができ、複合材料の導電性を向上させ、体積変化を緩和し、界面を安定化させる効果を果たすことができ、被覆対象材料が黒鉛である場合、この複合材料はリチウムを吸蔵した後の体積膨張が小さくなり、レート特性が向上し、界面が安定的になり、被覆対象材料が一酸化ケイ素である場合、この複合材料は材料の電気伝導率及びSEI膜の安定性を向上させることができ、特に緻密な炭素層は体積変化に対する緩衝効果がよく、この連続的で緻密な炭素層による保護によって、高温特性やサイクル特性が向上する。
【0021】
ステップ(2)において、前記炭素含有プロセスガスはC1~4のアルカン(例えばメタン、エタン、プロパン)、C2~4のオレフィン(例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1,3-ブタジエン)、C2~4のアルキン(例えばアセチレン、プロピン)を含む。
【0022】
好ましくは、前記1回目の炭素元素気相堆積において、前記炭素含有プロセスガスはプロピレンとメタンとを1~2:1~2の体積比で配合したものであり、プロセスガスの導入流速は、h=V/sの条件を満たし、ここで、Vはロータリーキルンチャンバの全体積(単位L)であり、sはプロセスガスの導入速度(単位L/min)であり、プロセスガスの流速はhが20~60minであることを満たす。一例として、炉体の全容積が100Lである場合、流量は1.667~5.000L/minであり、炉体の全容積が1200Lである場合、流量は20~60L/minである。
【0023】
より好ましくは、1回目の炭素元素気相堆積において、炭素含有プロセスガスはメタンとプロピレンとを配合したものであり、プロピレンはロータリーキルンの炉口部位置から炉体の全長さの1/5までの位置(すなわち、炉口部に近い位置)から導入され、メタンはロータリーキルンの炉体の全長さの1/3~2/3の位置(すなわち、ロータリーキルンの中央位置)から導入される。どうのようにロータリーキルンの様々な位置から炭素含有プロセスガスを導入するかは、当業者に公知のことであり、例えば様々な長さのガス導入管を使用するか、又はロータリーキルンの様々な位置にガス導入管が設けられ得る。本発明者らは、炉口部に近い位置からは炭素含有プロセスガスとしてプロピレン、ロータリーキルンの中央位置からは炭素含有プロセスガスとしてメタンを導入すると、炭素被覆層の緻密性及び均一性により有利であることを見出した。化学気相堆積における炭素形成は炭素源ガスの炭素/水素比と緊密な関係があり、炭素/水素比が大きい場合、層状堆積が発生しやすく、一方、炭素/水素比が小さい場合、等方性の炭素構造が堆積されやすい。これに加えて、炭素源ガスの堆積による副生成物である多環芳香族炭化水素の含有量も炭素/水素比の調整に伴い変化し、この副生成物含有量が高いほど、炭素ブロックの形成や粒子の凝集が生じやすい。このため、このプロセスにおいて炭素源ガスの割合及び濃度が非常に重要である。本発明では、2回目の炭素被覆により、被覆されていない又は被覆の度合が不十分な欠陥部位や弱い部位について修補を行うことができるが、2回目の被覆におけるプロセスガスの流速を1回目の被覆における流速よりも低くする必要がある。前記保護性雰囲気のガスは窒素ガス又はアルゴンガスであり、保護性雰囲気は単独でロータリーキルン内に導入されてもよく、炭素含有ガスと予備混合してから導入されてもよい。保護性ガスと炭素含有ガスとの体積比が1~3:1~3である。
【0024】
好ましくは、ステップ(2)において、前記ロータリーキルンの回転数が0.1~2rpm(例えば0.2rpm、0.5rpm、0.8rpm、1.2rpm、1.5rpm、1.8rpmなど)である。前記ロータリーキルンの回転数が0.1~2rpmの範囲内である場合、炭素被覆層の完全性及び緻密性のいずれも優れている。
【0025】
前記1回目の炭素元素気相堆積は温度600~1200℃、時間0.5~10hであり、又は、前記1回目の炭素元素気相堆積は100~500℃のプラズマ気相堆積であり、時間が0.5~10hである。
【0026】
好ましくは、前記2回目の炭素元素気相堆積における炭素含有プロセスガスの導入流速は前記1回目の炭素元素気相堆積における炭素含有プロセスガスの流速の1/4~4/5、好ましくは1/2~4/5である。
【0027】
前記2回目の炭素元素気相堆積は、1回目の炭素元素気相堆積による炭素被覆層の欠陥を補修し、炭素層を完全に被覆することを目的とし、コア粒子について1回目の炭素元素気相堆積が行われた後、炭素被覆層の切断面が解凝集することにより得られ、切断層の切断面が不均一であり、2回目の炭素元素気相堆積では、炭素含有プロセスガスの導入流速を1回目の炭素元素気相堆積における炭素含有プロセスガスの導入流量の1/4~4/5に下げることにより、1回目の炭素元素気相堆積による炭素被覆層の切断面上にさらに炭素層をよく生成させて被覆することができる。
【0028】
好ましくは、ステップ(3)では、前記大粒径材料は粒径が50μmを超える材料であり、前記破砕・解凝集は機械的粉砕や気流粉砕などの方式によって、凝集した粒子を衝突させて分散させる。
【0029】
好ましくは、ステップ(4)では、前記ロータリーキルンの回転数は0.1~2rpm(例えば0.2rpm、0.5rpm、0.8rpm、1.2rpm、1.5rpm、1.8rpmなど)である。なお、ステップ(2)及びステップ(4)では、ロータリーキルンの回転数はそれぞれ単独で0.1~2rpmの範囲から選択され、好ましくはステップ(2)では、ロータリーキルンの回転数はステップ(4)のロータリーキルンの回転数の2~3倍である。
【0030】
好ましくは、前記2回目の炭素元素気相堆積は温度600~1200℃、時間0.5~10hであり、又は、前記2回目の炭素元素気相堆積は100~500℃のプラズマ気相堆積であり、時間が0.5~10hである。好ましい技術的解決手段としては、本発明の前記炭素被覆複合材料の製造方法では、1回目の炭素元素気相堆積及び2回目の炭素元素気相堆積のプロセスガスはそれぞれ単独でプロピレン及びメタンから選択される。
【0031】
本発明の第3の目的は、リチウム電池、ナトリウム電池、カリウム電池などのいずれかの電極材料として使用される、炭素被覆複合材料の使用を提供することである。
従来技術と比べて、本願は以下の有益な効果を有する。
【0032】
(1)本願は、適切な緻密度(炭素被覆層の密度は1.0g・cm-3以上)、高い完全性(コア特徴元素の溶出量は100ppm以下)を持つ炭素被覆複合材料を提供し、炭素被覆層がコア物質の外に被覆され、この炭素材料シェルがコア物質の体積変化を緩衝することができ、これに加えて、完全で均一な炭素層は表面電荷を効果的に分散させてより安定的な電気二重層を形成し、リチウム吸蔵中により均一で安定な界面を形成することができる。
【0033】
(2)好適な技術的解決手段では、前記炭素被覆複合材料のコア物質は一酸化ケイ素であり、材料の電気伝導率及びSEI膜の安定性を向上させることができ、特に緻密な炭素層は体積変化に対する緩衝効果がよく、この連続的で緻密な炭素層による保護によって、高温特性やサイクル特性が向上する。
【0034】
(3)本願はまた、プロセスが簡単であり、量産が可能な、前記の適切な緻密度を持ち、被覆の完全性が高い炭素被覆複合材料の製造方法を提供する。
【0035】
(4)本発明では、被覆が2回行われ、2回の被覆には異なる被覆ガス、異なるガス流速が使用されることによって、得られた炭素被覆複合材料は被覆がより緻密で均一に行われており、電極材料としての電気化学的特性により優れている。好ましくは、本発明では、1回目の炭素被覆においてプロピレンとメタンを混合した炭素含有プロセスガスが使用され、また、導入位置が異なり、これによって、炭素被覆の均一性及び緻密性がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】実施例1で製造された炭素被覆複合材料のSEM像である。
図2】実施例1で製造された炭素被覆複合材料のTEM像である。
図3】実施例3で製造された炭素被覆複合材料のSEM像である。
図4】実施例4で製造された炭素被覆複合材料のSEM像である。
図5】比較例1で製造された炭素被覆複合材料のTEM像である。
図6】実施例29のロータリーキルンのガス供給と材料供給の概略図である。
図7】実施例29で得られた炭素被覆複合材料のTEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、具体的な実施例を参照しつつ本発明の技術的解決手段をさらに詳細に説明する。以下の実施例は本発明を例示的に説明して解釈するために過ぎず、本発明の特許範囲を制限するものとして理解すべきではない。本発明の上記内容に基づいて実現される技術であれば、本発明の特許範囲内に含まれるものとする。
【0038】
下記の実施例における前記試験方法は、特に断らない限り、常法であり、前記試薬及び材料は、特に断らない限り、市販品として入手することができる。
【0039】
<実施例1>
炭素被覆一酸化ケイ素の製造方法は以下のステップを含む。
(1)一酸化ケイ素500kgを気流粉砕方式で、D50が5μm、(D90-D10)/D50が1.0、比表面積が1.1m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が0.8cm-1となるように処理し、被覆対象原料を得た。
(2)5kg/hの投入速度で被覆対象原料を回転数0.5rpm、全体積1200L、炉内温度850℃の高温でロータリーキルンに投入し、ロータリーキルンのうち炉頭部に近い位置(炉頭部からロータリーキルンの全長さの約1/10の位置)から50L/min窒素ガス及び50L/minプロピレンガスを持続的に導入し、材料を炉内で3h回転させると、1回目の炭素元素気相堆積が完了し、第1中間生成物を得た。
(3)ステップ(2)の第1中間生成物を最小で325メッシュの篩にかけて、篩にかけた材料を機械解凝集により解凝集して、D50が5.1μmの第2中間生成物を得た。
(4)ステップ(3)の材料を5kg/hの速度で回転数1.5rpm、炉内温度850℃の高温でロータリーキルンに投入し、ロータリーキルンのうち炉頭部に近い位置(炉頭部からロータリーキルンの全長さの約1/10の位置)から50L/min窒素ガス及び25L/minプロピレンプロセスガスを持続的に導入し、2回目の炭素元素気相堆積を行い、材料の炉内の滞留時間を2時間に制御し、一酸化ケイ素をコアとして外層に炭素が被覆された炭素被覆複合材料の粗品を得た。
(5)ステップ(4)の炭素被覆複合材料の粗品を篩にかけて、炭素が均一で緻密に被覆された炭素被覆複合材料を得た。
実施例1で製造された炭素被覆複合材料はD50が5.2μm、(D90-D10)/D50が1.1、比表面積が1.3m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.09cm-1である。
図1は実施例1で製造された炭素被覆複合材料のSEM像を示す。図2は実施例1で製造された炭素被覆複合材料のTEM像を示す。これらの図から、実施例1で製造された炭素被覆複合材料の表面に明らかな格子縞があり、完全な炭素被覆層があることが分かった。
【0040】
<実施例2>
炭素被覆酸化錫の製造方法であって、実施例1と比較して、一酸化ケイ素500kgを酸化錫500kgに変更したこと、ステップ(1)において、酸化錫500kgを気流粉砕方式で、D50が4.9μm、(D90-D10)/D50が1.0、比表面積が1.2m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.0cm-1となるように処理し、被覆対象原料を得たことのみは相違する。
実施例2で製造された炭素被覆複合材料は、D50が5.0μm、(D90-D10)/D50が1.2、比表面積が1.4m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.17cm-1である。
【0041】
<実施例3>
炭素被覆ケイ素の製造方法であって、実施例1と比較して、一酸化ケイ素500kgをケイ素500kgに変更したこと、ステップ(1)において、ケイ素500kgを気流粉砕方式で、D50が5.3μm、(D90-D10)/D50が1.0、比表面積が1.3 m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.15cm-1となるように処理し、被覆対象原料を得たことのみは相違する。
実施例3で製造された炭素被覆複合材料は、D50が5.5μm、(D90-D10)/D50が1.0、比表面積が1.5m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.39cm-1である。
図3は実施例3で製造された炭素被覆複合材料のSEM像を示し、図3から分かるように、実施例3では炭素被覆ケイ素材料が製造された。
【0042】
<実施例4>
炭素被覆黒鉛の製造方法であって、実施例1と比較して、一酸化ケイ素500kgを天然黒鉛500kgに変更したこと、ステップ(1)において、天然黒鉛500kgを気流粉砕方式で、D50が4.9μm、(D90-D10)/D50が1.0、比表面積が1.3m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.25cm-1となるように処理し、被覆対象原料を得たことのみは相違する。
実施例4で製造された炭素被覆複合材料は、D50が5μm、(D90-D10)/D50が1.0、比表面積が1.6m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.49cm-1である。
図4は実施例4で製造された炭素被覆複合材料のSEM像を示し、図4から分かるように、実施例4では炭素被覆黒鉛材料が製造された。
【0043】
<実施例5>
炭素被覆酸化ケイ素の製造方法であって、実施例1と比較して、一酸化ケイ素500kgを酸化ケイ素500kgに変更したこと、ステップ(1)において、酸化ケイ素500kgを気流粉砕方式で、D50が4.9μm、(D90-D10)/D50が1.0、比表面積が1.3 m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.25cm-1となるように処理し、被覆対象原料を得たことのみは相違する。
実施例5で製造された炭素被覆複合材料は、D50が5μm、(D90-D10)/D50が1.0、比表面積が1.3m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.1cm-1である。
【0044】
<実施例6>
炭素被覆マグネシウムドープ一酸化ケイ素の製造方法であって、実施例1と比較して、一酸化ケイ素500kgをマグネシウムドープ一酸化ケイ素500kgに変更したこと、ステップ(1)において、マグネシウムドープ一酸化ケイ素500kgを気流粉砕方式で、D50が5.2μm、(D90-D10)/D50が1.0、比表面積が1.5 m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.28cm-1となるように処理し、被覆対象原料を得たことのみは相違する。
実施例6で製造された炭素被覆複合材料は、D50が5.5μm、(D90-D10)/D50が1.1、比表面積が1.8m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.51cm-1である。
【0045】
<実施例7>
炭素被覆リチウムドープ一酸化ケイ素の製造方法であって、実施例1と比較して、一酸化ケイ素500kgをリチウムドープ一酸化ケイ素500kgに変更したこと、ステップ(1)において、リチウムドープ一酸化ケイ素500kgを気流粉砕方式で、D50が5.2μm、(D90-D10)/D50が1.0、比表面積が1.4m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.24cm-1となるように処理し、被覆対象原料を得たことのみは相違する。
実施例7で製造された炭素被覆複合材料は、D50が5.4μm、(D90-D10)/D50が1.1、比表面積が1.6m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.49cm-1である。
実施例1~7で提供された炭素被覆複合材料について以下のようにテストした。
(1)炭素含有量:LECO炭素硫黄分析装置によって前記炭素被覆複合材料の炭素含有量を測定し、Aとした。
(2)炭素層密度:測定方法としては、JWGB真密度計を用いて炭素被覆複合材料の真密度ρ、質量m、前記被覆対象材料(コア)の質量m、密度ρを測定し、(1)のように、炭素硫黄分析装置によって前記炭素被覆複合材料の炭素含有量(A)を測定し、前記炭素被覆層の質量をm=m×Aとし、次に、ρ=mρρ/(mρ-mρ)によりρを算出した。
(3)コア元素溶出量:測定方法として、コア特徴元素を溶解し得る過量の溶液に炭素被覆複合材料を入れて48h静置し、溶液におけるコア元素の含有量を測定してX1とした。
テスト結果を表1に示す。
表1からわかるように、炭素含有プロセスガスとしてプロピレンを使用する場合、850℃の条件で、1回目の炭素元素気相堆積において50L/minでプロピレンを導入し、2回目の炭素元素気相堆積において25L/minでプロピレンを導入し、コアがどのような無機粒子であっても、炭素層の密度を1.30g・cm-3以上に制御することができ、特に一酸化ケイ素の場合、炭素層の密度を1.40g・cm-3以上に制御することができる。
【0046】
<実施例8~実施例11>
実施例1と比較して、前記1回目の炭素元素気相堆積及び2回目の気相堆積の温度は830℃(実施例8)、920℃(実施例9)、800℃(実施例10)、1000℃(実施例11)であることのみは相違する。
実施例8で製造された炭素被覆複合材料は、D50が5.1μm、(D90-D10)/D50が1.1、比表面積が1.3m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.03cm-1であり、実施例9で製造された炭素被覆複合材料は、D50が5.2μm、(D90-D10)/D50が1.1、比表面積が1.4 m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.19cm-1であり、実施例10で製造された炭素被覆複合材料は、D50が5μm、(D90-D10)/D50が1.1、比表面積が1.3 m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.27cm-1であり、実施例11で製造された炭素被覆複合材料は、D50が5.3μm、(D90-D10)/D50が1.1、比表面積が1.5m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.49cm-1である。
【0047】
<実施例12~実施例15>
実施例1と比較して、前記2回目の気相堆積におけるプロピレンプロセスガスの流量は13L/min(実施例12)、40L/min(実施例13)、50L/min(実施例14)、7L/min(実施例15)であることのみは相違する。
実施例12で製造された炭素被覆複合材料は、D50が5.1μm、(D90-D10)/D50が1.1、比表面積が1.3m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.27cm-1であり、実施例13で製造された炭素被覆複合材料は、D50が5.6μm、(D90-D10)/D50が1.1、比表面積が1.4m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.29cm-1であり、実施例14で製造された炭素被覆複合材料は、D50が6.4μm、(D90-D10)/D50が1.1、比表面積が1.7m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.68cm-1であり、実施例15で製造された炭素被覆複合材料は、D50が5.3μm、(D90-D10)/D50が1.1、比表面積が1.6m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.55cm-1である。
【0048】
<実施例16>
実施例1と比較して、ステップ(2)及びステップ(4)のいずれにおいても、高温ロータリーキルンの回転数は0.5rpmであることのみは相違する。
<実施例17>
実施例1と比較して、ステップ(2)及びステップ(4)のいずれにおいても、高温ロータリーキルンの回転数は1.5rpmであることのみは相違する。
【0049】
<比較例1>
炭素被覆一酸化ケイ素の製造方法は以下のステップを含む。
(1)一酸化ケイ素500kgを気流粉砕方式で、D50が5μm、(D90-D10)/D50が1.0、比表面積が1.1m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が0.8cm-1となるように処理し、被覆対象原料を得た。
(2)200kg/hの投入速度で被覆対象原料を炉内温度850℃の高温でロータリーキルンに投入し、200L/min窒素ガス及び50L/minプロピレンガスを持続的に導入し、材料を炉内で6h回転させると、1回目の炭素元素気相堆積が完了し、外層に炭素が被覆された炭素被覆複合材料の粗品を得た。
(3)ステップ(2)の炭素被覆複合材料の粗品を篩にかけて、炭素が被覆された炭素被覆複合材料を得た。
図5は比較例1で製造された炭素被覆複合材料のTEM像を示し、図5から分かるように、比較例1で製造された炭素被覆複合材料の表面に炭素層が被覆されていない露出部分があり、炭素層が完全に被覆されていないことが示唆された。
実施例16で製造された炭素被覆複合材料は、D50が5.6μm、(D90-D10)/D50が1.0、比表面積が1.3m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.19cm-1であり、実施例17で製造された炭素被覆複合材料は、D50が5.3μm、(D90-D10)/D50が1.0、比表面積が1.4m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.28cm-1である、実施例8~実施例17で得た炭素被覆一酸化ケイ素について、実施例1と同様なテスト方法によって炭素層密度及びケイ素元素の溶出量をテストし、各実施例の炭素層密度及びコア特徴元素溶出量の結果を表2に示す。
比較例1及び実施例の比較からわかるように、炭素元素気相堆積が1回だけ行われる場合、堆積時間を延ばしても、炭素被覆の完全性及び炭素層密度が確保できない。実施例8~実施例11からわかるように、気相堆積の温度が830~920℃である場合、前記炭素被覆層は密度が1.3g・cm-3≦ρ2≦1.45g・cm-3であり、溶出率が60ppm以下であり、温度が高すぎたり低すぎたりすると、溶出率が向上する。実施例12~実施例15からわかるように、2回目の被覆のガス流量が1回目の被覆のガス流量の1/4~4/5である場合、前記炭素被覆層は、密度が1.4g・cm-3≦ρ2≦1.45g・cm-3であり、特徴元素の溶出率が60ppm以下であり、2回目の被覆のガス流量が低すぎる場合、炭素被覆層の完全性が低下し、溶出率が向上したものの、100ppm以下が確保でき、2回目の被覆のガス流量が高すぎると、溶出率が低下したが、低下が明らかではない。
炭素含有プロセスガスとしてプロピレンを使用する場合、830~920℃の条件で、1200Lロータリーキルンを例として、回転数を0.5~1.5rpmとして、1回目の炭素元素気相堆積において50L/minでプロピレンを導入し、2回目の炭素元素気相堆積において25L/minでプロピレンを導入し、いずれも炭素層密度を1.38~1.43g・cm-3以上、コア元素の溶出量を100ppm未満に制御することができる。
【0050】
<実施例18>
実施例1と比較して、1回目の炭素元素気相堆積において炭素含有プロセスガスがメタンであり、温度が適応的に調整されることのみは相違し、具体的には、
ステップ(2)では、5kg/hの投入速度で被覆対象原料を炉内温度1000℃の高温ロータリーキルンに投入し、50L/min窒素ガス及び50L/minメタンガスを持続的に導入し、材料を炉内で3h回転させると、1回目の炭素元素気相堆積が完了し、第1中間生成物を得るように調整した。
実施例18で製造された炭素被覆複合材料は、D50が5.3μm、(D90-D10)/D50が1.1、比表面積が4.5m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が3.78cm-1である。メタンがプロセスガスとして使用されるので、非規則的な炭素層が被覆されており、このため、比表面積が大幅に増加した。
【0051】
<実施例19>
実施例1と比較して、2回目の炭素元素気相堆積において炭素含有プロセスガスがメタンであり、温度が適応的に調整されることのみは相違し、具体的には、
ステップ(4)では、炉内温度が1000℃に調整された。
ステップ(3)の材料を5kg/hの速度で回転数1.5rpm、炉内温度1000℃の高温ロータリーキルンに投入し、50L/min窒素ガス及び25L/minメタンを持続的に導入し、2回目の炭素元素気相堆積を行い、材料の炉内の滞留時間を2時間に制御し、一酸化ケイ素をコアとして外層に炭素が被覆された炭素被覆複合材料の粗品を得た。
実施例19で製造された炭素被覆複合材料は、D50が5.3μm、(D90-D10)/D50が1.1、比表面積が3.5m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が2.94cm-1である。
【0052】
<実施例20>
実施例1と比較して、1回目の炭素元素気相堆積及び2回目の炭素元素気相堆積のいずれにおいても炭素含有プロセスガスがメタンであり、温度が適応的に調整されることのみは相違し、具体的には、
ステップ(2)では、5kg/hの投入速度で被覆対象原料を回転数0.5rpm、炉内温度1000℃の高温ロータリーキルンに投入し、50L/min窒素ガス及び50L/minメタンを持続的に導入し、材料を炉内で3h回転させると、1回目の炭素元素気相堆積が完了し、第1中間生成物を得るように調整された。
ステップ(4)では、ステップ(3)の材料を5kg/hの速度で回転数1.5rpm、炉内温度1000℃の高温ロータリーキルンに投入し、50L/min窒素ガス及び25L/minメタンを持続的に導入し、2回目の炭素元素気相堆積を行い、材料の炉内の滞留時間を2時間に制御し、一酸化ケイ素をコアとして外層に炭素が被覆された炭素被覆複合材料の粗品を得るように調整された。
実施例20で製造された炭素被覆複合材料は、D50が5.4μm、(D90-D10)/D50が1.1、比表面積が5.5m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が4.62cm-1である。
【0053】
<実施例21>
実施例1と比較して、1回目の炭素元素気相堆積において炭素含有プロセスガスがアセチレンであり、温度が適応的に調整されることのみは相違し、具体的には、
ステップ(2)では、5kg/hの投入速度で被覆対象原料を回転数0.5rpm、炉内温度900℃の高温ロータリーキルンに投入し、50L/min窒素ガス及び50L/minアセチレンガスを持続的に導入し、材料を炉内で3h回転させると、1回目の炭素元素気相堆積が完了し、第1中間生成物を得るように調整された。
実施例21で製造された炭素被覆複合材料は、D50が5.1μm、(D90-D10)/D50が1.1、比表面積が1.5m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.38cm-1である。
【0054】
<実施例22>
実施例1と比較して、2回目の炭素元素気相堆積における炭素含有プロセスガスがアセチレンであり、温度が適応的に調整されることのみは相違し、具体的には、
ステップ(4)では、ステップ(3)の材料を5kg/hの速度で回転数1.5rpm、炉内温度900℃の高温ロータリーキルンに投入し、50L/min窒素ガス及び25L/minアセチレンガスを持続的に導入し、2回目の炭素元素気相堆積を行い、材料の炉内の滞留時間を2時間に制御し、一酸化ケイ素をコアとして外層に炭素が被覆された炭素被覆複合材料の粗品を得るように調整された。
実施例22で製造された炭素被覆複合材料は、D50が5.2μm、(D90-D10)/D50が1.1、比表面積が1.6m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.51cm-1である。
【0055】
<実施例23>
実施例1と比較して、1回目の炭素元素気相堆積及び2回目の炭素元素気相堆積における炭素含有プロセスガスがアセチレンであり、温度が適応的に調整されることのみは相違し、具体的には、
ステップ(2)では、5kg/hの投入速度で被覆対象原料を回転数0.5rpm、炉内温度900℃の高温ロータリーキルンに投入し、50L/min窒素ガス及び50L/minアセチレンガスを持続的に導入し、材料を炉内で3h回転させると、1回目の炭素元素気相堆積が完了し、第1中間生成物を得るように調整された。
ステップ(4)では、ステップ(3)の材料を5kg/hの速度で回転数1.5rpm、炉内温度900℃の高温ロータリーキルンに投入し、50L/min窒素ガス及び25L/minアセチレンガスを持続的に導入し、2回目の炭素元素気相堆積を行い、材料の炉内の滞留時間を2時間に制御し、一酸化ケイ素をコアとして外層に炭素が被覆された炭素被覆複合材料の粗品を得るように調整された。
実施例23で製造された炭素被覆複合材料は、D50が5.5μm、(D90-D10)/D50が1.1、比表面積が1.7m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.67cm-1である。
上記の実施例について、実施例1と同様なテスト方法によって炭素層密度及びコア特徴元素の溶出をテストし、表3は上記の実施例のテスト結果である。
表3からわかるように、メタンかアセチレンに関わらず、1回目の炭素元素気相堆積後、解凝集を行い、次に2回目の炭素元素気相堆積を行うことによって、炭素層密度及び炭素被覆の均一性を向上させることができ、もちろん、他の炭素含有プロセスガスであっても、1回目の炭素元素気相堆積後、解凝集を行い、次に2回目の炭素元素気相堆積を行うことによって、炭素層密度及び炭素被覆の均一性を向上させることができる。
【0056】
<実施例24>
実施例1と比較して、被覆対象原料をD50が5μm、(D90-D10)/D50が1.2、比表面積が1.5m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.1cm-1のものに変更したことのみは相違し、具体的には、
(1)一酸化ケイ素500kgを気流粉砕方式でD50が5μm、(D90-D10)/D50が1.2、比表面積が1.5m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.1cm-1となるように処理し、被覆対象原料を得た。
実施例24で製造された炭素被覆複合材料は、D50が5.3μm、(D90-D10)/D50が1.2、比表面積が1.6m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.58cm-1である。
【0057】
<実施例25>
実施例1と比較して、ステップ(1)において、一酸化ケイ素500kgを気流粉砕方式でD50が5μm、(D90-D10)/D50が1.2、比表面積が2.5 m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.5cm-1となるように処理し、被覆対象原料を得たことのみは相違する。
実施例25で製造された炭素被覆複合材料は、D50が5.5μm、(D90-D10)/D50が1.2、比表面積が1.9m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が2.44cm-1である。
【0058】
<実施例26>
実施例1と比較して、ステップ(1)において、一酸化ケイ素500kgを気流粉砕方式で、D50が10μm、(D90-D10)/D50が1.0、比表面積が1.1m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が0.8cm-1となるように処理し、被覆対象原料を得たことのみは相違する。
実施例26で製造された炭素被覆複合材料は、D50が10.3μm、(D90-D10)/D50が1.0、比表面積が1.4m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.48cm-1である。
【0059】
<実施例27>
(1)実施例27では、実施例1と比較して、ステップ(1)において、一酸化ケイ素500kgを気流粉砕方式で、D50が30μm、(D90-D10)/D50が1.0、比表面積が1.1m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が0.8cm-1となるように処理し、被覆対象原料を得たことのみは相違する。
実施例27で製造された炭素被覆複合材料は、D50が30.5μm、(D90-D10)/D50が1.1、比表面積が1.3m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が1.41cm-1である。
【0060】
<実施例28>
実施例1と比較して、被覆対象原料をD50が5μm、(D90-D10)/D50が1.8、比表面積が2.0m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が0.8cm-1のものに変更したことのみは相違する。
実施例28で製造された炭素被覆複合材料は、D50が5.5μm、(D90-D10)/D50が1.9、比表面積が1.4m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が0.92cm-1である。
【0061】
<比較例2>
実施例1と比較して、被覆対象原料をD50が5μm、(D90-D10)/D50が1.2、比表面積が1.1m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が0.4cm-1のものに変更したことのみは相違し、具体的には、
比較例2で製造された炭素被覆複合材料は、D50が5.5μm、(D90-D10)/D50が1.2、比表面積が1.5m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が0.8cm-1である。
【0062】
<比較例3>
実施例1と比較して、被覆対象原料をD50が2.5μm、(D90-D10)/D50が0.6、比表面積が5.0m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が7.0cm-1に変更したことのみは相違し、具体的には、
比較例3で製造された炭素被覆複合材料は、D50が3.1μm、(D90-D10)/D50が0.7、比表面積が2.5m・g-1、A/V(比表面積と堆積細孔体積との比)が2.3cm-1である。
上記の実施例及び比較例について、炭素層密度及びコア特徴元素の溶出をテストし、テスト結果を表4に示す。
表4からわかるように、特定の原料(被覆対象原料は平均径が1~40μm、粒度分布の範囲が0.5≦(D90-D10)/D50≦2、比表面積が1~50m・g-1、比表面積と堆積細孔体積との比が0.5~5cm-1である)をロータリーキルンにて回転させ、運動における原料の表面について気相堆積を2回施し、完全で緻密な(炭素被覆層の密度ρは1.0~2.0g・cm-3であり、コア元素の溶出率は100ppm以下である)炭素被覆層を形成する。
【0063】
<実施例29>
ステップ(2)において、5kg/hの投入速度で被覆対象原料を回転数0.5rpm、炉内の全体積1200L、炉内温度850℃の高温でロータリーキルンに投入し、50L/min窒素ガス、25L/minプロピレンガス及び25L/minメタンガスを持続的に導入し、図6はロータリーキルンガス供給と材料供給の概略図であり、ガス供給口1であるロータリーキルンのうち炉頭部に近い位置(炉頭部からロータリーキルンの全長さの約1/10の位置)でプロピレンガスと窒素ガスとの混合ガスを導入し、長いガス導入管を介してガス供給口2であるロータリーキルンのうち中央に近い位置(炉頭部からロータリーキルンの全長さの約2/5の位置)からメタンガスと窒素ガスを混合して導入し、材料を炉内で3h回転させると、1回目の炭素元素気相堆積が完了し、第1中間生成物を得る以外、残りの条件は実施例1と同様であった。
最終的には、炭素が均一で緻密に被覆された炭素被覆複合材が得られ、図7は実施例29で得られた炭素被覆複合材料のTEM像である。コア及びシェルのコントラストの変化及び表面の格子縞の区別から、表面被覆炭素の厚さ及び完全性が実施例1の炭素被覆複合材料よりも優れており、被覆がより完全に行われることが分かった。実施例29で得られた炭素被覆複合材料についてテストを行った結果、その炭素層密度は1.44g・cm-3であり、コア特徴元素であるケイ素の溶出量は29ppmである。
【0064】
<実施例30>
プロピレンガスとメタンガスがともにガス供給口1から入ること以外、残りの条件は実施例29と同様であった。実施例30で得られた炭素被覆複合材料についてテストを行った結果、その炭素層密度は1.44g・cm-3であり、コア特徴元素であるケイ素の溶出量は36ppmである。原因が明らかでないが、実施例29と実施例30の比較から、炉頭部に近い位置からプロピレンガスを導入し、炉体の中央に近い位置からメタンを導入すると、完全、均一かつ緻密な炭素被覆層の形成により有利であることが示唆された。
【0065】
<適用例>
炭素被覆複合負極材料の電気化学的特性の特徴付け:上記の実施例で製造された炭素被覆複合負極材料、Super P及びポリアクリル酸(粘着剤)を80:10:10の質量比で混合してスラリーを調製し、銅箔集電体に均一に塗布して、電極シートを得た。金属リチウム板を対電極、ポリプロピレン微多孔膜(Celgard 2400)をセパレータ、1mol/L LiPF(溶媒は体積比1:1の炭酸ビニルと炭酸ジメチルとの混合液であり、5%のフッ化ビニリデンカーボネート、2%ビニリデンカーボネートが添加されている)を電解液として、アルゴンガスで保護されたグローブボックスにて組み立ててボタン電池を作製し、充放電テストを行い、テストプログラムは100mAg-1、充放電の電圧範囲を0.01~1.5Vとし、表5は電池のテスト結果である。適用例1~30、比較適用例1~3はそれぞれ実施例1~30、比較例1~3の炭素被覆負極材料を用いた。一部の適用例の電池の特性のテスト結果を下記の表5に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7