(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】改質ナノ結晶リボン、その製造方法および使用
(51)【国際特許分類】
H01F 1/153 20060101AFI20240930BHJP
H01F 3/04 20060101ALI20240930BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20240930BHJP
H01F 27/25 20060101ALI20240930BHJP
B22F 1/14 20220101ALI20240930BHJP
B22F 9/04 20060101ALI20240930BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240930BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
H01F1/153 141
H01F1/153 108
H01F1/153 133
H01F3/04
H01F27/24 J
H01F27/25
B22F1/14 650
B22F9/04 C
B22F9/04 E
B22F1/00 Y
C22C38/00 303S
(21)【出願番号】P 2023512348
(86)(22)【出願日】2021-04-20
(86)【国際出願番号】 CN2021088351
(87)【国際公開番号】W WO2022134404
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】202011528665.1
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517366220
【氏名又は名称】横店集団東磁股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼立▲東▼
(72)【発明者】
【氏名】付▲亜▼奇
(72)【発明者】
【氏名】唐子舜
(72)【発明者】
【氏名】李▲燦▼武
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-017696(JP,A)
【文献】特開2016-219795(JP,A)
【文献】国際公開第2020/235642(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/235643(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/069270(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108666115(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108231381(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109712800(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/153、3/04、27/24-27/25、27/36
H01F 38/14、41/02
H05K 9/00
H02J 50/10-50/12
B60L 53/12-53/126
B22F 1/00、1/14、9/04
C22C 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)片面に両面テープが粘着されたナノ結晶リボンに対してロールプレス処理を行うことにより、微粉砕化されたナノ結晶リボンを得るステップと、
(2)ステップ(1)で得た微粉砕化されたナノ結晶リボンに対して酸エッチング表面処理を行うステップと、
(3)ステップ(2)における酸エッチング表面処理されたナノ結晶リボンに対してアルカリ洗浄表面処理を行うステップと、
(4)ステップ(3)におけるアルカリ洗浄表面処理されたナノ結晶リボンに対して、順に水洗およびアルコール洗浄を行った後、乾燥するステップと、
(5)ステップ(4)における乾燥したナノ結晶リボンに対してマイクロ酸化処理を行うことにより、改質ナノ結晶リボンを得るステップと、を含む改質ナノ結晶リボンの製造方法。
【請求項2】
前記ナノ結晶リボンは、質量百分比で、73.5wt%のFe、13.5wt%のSi、9wt%のB、3wt%のNbおよび1wt%のCuを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ステップ(1)におけるロールプレスの圧力が60~70kgである、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
ステップ(1)におけるロールプレスの回数が1~5回である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
ステップ(2)における酸エッチング表面処理は、酸性溶液を微粉砕化されたナノ結晶リボンの表面に塗布して表面酸処理し、処理が完了した後、脱イオン水を用いて洗浄を行うことであり、
前記酸性溶液は、質量分率が0.5~1.2wt%の塩酸溶液であり、
前記表面酸処理の時間が3~8minである、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
ステップ(3)におけるアルカリ洗浄表面処理は、アルカリ性溶液を酸エッチング表面処理されたナノ結晶リボンの表面に塗布して表面アルカリ処理し、処理が完了した後、脱イオン水を用いて洗浄を行うことであり、
前記アルカリ性溶液は、炭酸水素ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液または水酸化ナトリウム溶液のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含み、
前記水酸化ナトリウム溶液の質量分率が0.5~2wt%であり、
前記表面アルカリ処理の時間が5~10minである、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記アルカリ性溶液は、水酸化カリウム溶液である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
ステップ(4)における水洗の回数が少なくとも3回であり、
ステップ(4)におけるアルコール洗浄は、無水エタノールで少なくとも3回洗浄することである、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
ステップ(5)におけるマイクロ酸化処理は、酸素ガス濃度が85vol%以上の酸素ガス雰囲気で行われ、
ステップ(5)におけるマイクロ酸化処理の温度が60~85℃であり、
ステップ(5)におけるマイクロ酸化処理の時間が15~30minである、請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記製造方法は、
(1)片面に両面テープが粘着されたナノ結晶リボンに対してロールプレス処理を行うことにより、微粉砕化されたナノ結晶リボンを得るステップであって、前記ナノ結晶リボンは、質量百分比で、73.5wt%のFe、13.5wt%のSi、9wt%のB、3wt%のNbおよび1wt%のCuを含むステップと、
(2)ステップ(1)で得た微粉砕化されたナノ結晶リボンに対して酸エッチング表面処理を行うステップであって、前記酸エッチング表面処理は質量分率が0.5~1.2wt%の塩酸溶液を、微粉砕化されたナノ結晶リボンの表面に塗布して表面酸処理を3~8min行い、処理が完了した後、脱イオン水を用いて洗浄を行うことであるステップと、
(3)ステップ(2)における酸エッチング表面処理されたナノ結晶リボンに対してアルカリ洗浄表面処理を行うステップであって、前記アルカリ洗浄表面処理は質量分率が0.5~2wt%の水酸化ナトリウム溶液を、酸エッチング表面処理されたナノ結晶リボンの表面に塗布して表面アルカリ処理を5~10min行い、処理が完了した後、脱イオン水を用いて洗浄を行うことであるステップと、
(4)ステップ(3)におけるアルカリ洗浄表面処理されたナノ結晶リボンに対して、順に少なくとも3回の水洗および少なくとも3回の無水エタノールによる洗浄を行った後、乾燥するステップと、
(5)ステップ(4)における乾燥したナノ結晶リボンに対して、酸素ガス濃度が85vol%以上の酸素ガス雰囲気で、マイクロ酸化処理(前記マイクロ酸化処理の温度が60~85℃である)を15~30min行うことにより、改質ナノ結晶リボンを得るステップと、を含む請求項1~9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記改質ナノ結晶リボンは、ナノ結晶複合構造磁性シートの製造に使用される請求項1~10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記ナノ結晶複合構造磁性シートは、順に積層して設けられた離型膜層、第1改質ナノ結晶リボン、第2改質ナノ結晶リボン、第3改質ナノ結晶リボンおよび第4改質ナノ結晶リボンを含み、
前記第1改質ナノ結晶リボンの両面テープが離型膜層に接続されており、隣り合う2層の改質ナノ結晶リボンの両面テープが改質ナノ結晶リボンに接続されており、
前記第1改質ナノ結晶リボン、第2改質ナノ結晶リボン、第3改質ナノ結晶リボンおよび第4改質ナノ結晶リボンは、それぞれ独立して請求項10に記載の製造方法で得られた改質ナノ結晶リボンである、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記改質ナノ結晶リボンの厚さが18~22μmであり、
前記両面テープの厚さが4~6μmであり、
前記第1改質ナノ結晶リボンは128kHzのテスト周波数での透磁率実数部が400~500であり、透磁率虚数部が40以下であり、
前記第2改質ナノ結晶リボンは128kHzのテスト周波数での透磁率実数部が600~800であり、透磁率虚数部が60以下であり、
前記第3改質ナノ結晶リボンは128kHzのテスト周波数での透磁率実数部が1000~1400であり、透磁率虚数部が90以下であり、
前記第4改質ナノ結晶リボンは128kHzのテスト周波数での透磁率実数部が5000~10000であり、透磁率虚数部が170以下である、請求
項12に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、材料の技術分野に属し、ワイヤレス充電材料、その製造方法および使用に関し、たとえば、改質ナノ結晶リボン、その製造方法および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ワイヤレス充電技術は、スマートフォンの標準構成になりつつある。携帯電話のワイヤレス充電の受信端は、主にコイルおよび磁性シートの2つの部分から構成されている。そのうち、コイルは、主に送信端による励磁磁界を受けて、交流電流に変換するものである。磁性シートは、主に磁気遮断作用および透磁作用を果たし、システム全体の充電効率を向上させながら、磁界漏れを回避するものである。現在、携帯電話のワイヤレス充電は、主にQi規格を採用しており、使用周波数が100~200kHzである。受信端の磁性シートの主な材質には、フェライトおよびナノ結晶合金が含まれている。そのうち、ナノ結晶磁性シートは、飽和磁化が高く、透磁率が高いので、主流になりつつある。
【0003】
ナノ結晶合金材料は、抵抗率が低く、高周波での渦電流損失が大きい。そのため、ナノ結晶材料の抵抗率および高周波特性を向上させ、渦電流損失を低下させるために、業界では、通常ナノ結晶リボンを微粉砕化処理する方法を用いることによりその課題を解決する。ナノ結晶リボンの微粉砕化は、一般的に、2つの金属ロールを用いてロールプレスすることにより実現され、ロールプレスパターン、圧力およびロールプレスの回数により、微粉砕化の程度を制御して、リボンの透磁率実数部および透磁率虚数部を調節し、最後に、幾つかの微粉砕化されたリボンユニットを両面テープで貼り付けて、ワイヤレス充電の受信端用の複合磁性シートを形成する。
【0004】
CN108597793Aでは、下地層材料、最上層材料および介在層材料が順に積層された積層構造を有する高性能・高周波数応答性の複合磁性材料が開示されている。前記下地層材料は、ブラックまたはマットブラックの非透明両面感圧接着剤の層であり、前記最上層材料は、ブラックまたはマットブラックの片面接着剤の層であり、前記介在層材料は、フェライト、ナノ結晶およびアモルファスのうちのいずれか2種または3種の軟磁性材料が交互に積層された磁性材料積層構造である。
【0005】
CN108231381Aでは、順に積層された第1磁性層及び第2磁性層を含み、前記第1磁性層の透磁率および熱伝導率がそれぞれ第2磁性層の透磁率及び熱伝導率よりも小さいワイヤレス充電用の透磁シート構造が開示されている。第1磁性層および第2磁性層の透磁率に対して勾配化設定を行うことにより、第2磁性層の透磁率を高く設定して、透磁シート構造の遮断性能を向上させ、第1磁性層の透磁率を低く設定して、渦電流の発生を低減させ、第1磁性層および第2磁性層の熱伝導率が徐々に大きくなり、透磁シート構造の温度均一性および放熱性能を向上させることができる。
【0006】
ナノ結晶リボンからなる複合磁性シート構造は、携帯電話のワイヤレス充電システムにおいて広く用いられているが、以下のような幾つかの問題や最適化の余地も存在する。微粉砕化処理されたナノ結晶リボンは、ミクロ構造が十分に均一ではなく、粉砕化ユニットの形状およびサイズが均一ではなく、各粉砕化ユニット同士の絶縁均一性も悪いので、磁界が尖角部および各粉砕化ユニットの接触箇所に集中し、磁界分布が不均一になり、深刻な局所発熱さえ発生する可能性がある。ナノ結晶材料は、良好な導電性を有するため、微粉砕化処理されても、磁性シートの渦電流損失が比較的深刻であり、システム全体の効率のさらなる向上を大幅に制限する。ナノ結晶リボンは、過度に微粉砕化されれば、粉砕化ユニットを小さくすることができ、渦電流効果による影響を効果的に低減させるが、それと同時に透磁率の低下が著しくなり、磁気遮断効果および透磁効果がいずれも悪くなる。ナノ結晶リボンの周波数特性、特に高周波での損失特性は、それ自体の材料の制限により特に優れておらず、具体的にナノ結晶リボンの透磁率虚数部が高く、さらにワイヤレス充電システム全体の効率に影響を及ぼす。現在、ナノ結晶複合磁性シートの大部分は、性能および仕様が同様なナノ結晶リボンが複合されてなり、構造にはさらに最適化の余地がある。
【0007】
これに対し、透磁率が高く、損失特性が低いワイヤレス充電材料を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願は、改質ナノ結晶リボン、その製造方法および使用を提供することを目的とする。これにより得られる改質ナノ結晶リボンは、より低い透磁率虚数部、より低い損失を有し、ワイヤレス充電システムが高い電力伝送効率を取得することにさらに寄与し、ナノ結晶複合構造磁性シートに適用すると、ワイヤレス充電システムの電力伝送効率を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の目的を達成するために、本願は、以下の技術案を講じた。
【0010】
第1態様として、本願は、
(1)片面に両面テープが粘着されたナノ結晶リボンに対してロールプレス処理を行うことにより、微粉砕化されたナノ結晶リボンを得るステップと、
(2)ステップ(1)で得た微粉砕化されたナノ結晶リボンに対して酸エッチング表面処理を行うステップと、
(3)ステップ(2)における酸エッチング表面処理されたナノ結晶リボンに対してアルカリ洗浄表面処理を行うステップと、
(4)ステップ(3)におけるアルカリ洗浄表面処理されたナノ結晶リボンに対して、順に水洗およびアルコール洗浄を行った後、乾燥するステップと、
(5)ステップ(4)における乾燥したナノ結晶リボンに対してマイクロ酸化処理を行うことにより、改質ナノ結晶リボンを得るステップと、を含む改質ナノ結晶リボンの製造方法を提供する。
【0011】
前記酸エッチング表面処理により、ナノ結晶材料を腐食することができる。平滑したナノ結晶リボンの表面と比較して、酸エッチングは、微粉砕化された亀裂および尖角部に発生しやすいことで、各微粉砕ユニット同士の絶縁性を向上させ、微粉砕化ユニットの形状を修復することができる。
【0012】
前記アルカリ洗浄表面処理により、残存した酸性溶液と化学的に反応することができる。各微粉砕ユニット同士の隙間が小さいため、余分な酸性溶液を除去しにくい。アルカリ洗浄表面処理によりこの問題を効果的に解決することができる。
【0013】
前記水洗により、アルカリ性溶液と酸性溶液とが反応して生成した塩分を除去することができるが、水洗されたナノ結晶リボンが乾燥過程で錆びやすいか、或いは過度の酸化が起こりやすい。アルコール洗浄により、脱イオン水が無水エタノールで効果的に希釈され、乾燥過程で脱イオン水とナノ結晶リボンとの反応を回避する。
【0014】
前記マイクロ酸化処理により、ナノ結晶リボンの表面、各微粉砕ユニットの断面に薄い酸化膜層を形成することができ、ナノ結晶リボンの抵抗率を効果的に向上させることで、渦電流損失を低減させることができる。
【0015】
好ましくは、前記ナノ結晶リボンは、73.5wt%のFe、13.5wt%のSi、9wt%のB、3wt%のNbおよび1wt%のCuを含む。本願に係るナノ結晶リボンの材料は、Fe73.5Si13.5B9Nb3Cuとして表してもよく、そのうちの添え字数値は、ナノ結晶リボンの合計質量に対する各元素の百分率である。
【0016】
本願に係るナノ結晶リボンは、アニール処理されたナノ結晶リボンであり、アニール条件によって、得られるナノ結晶リボンの透磁率実数部および透磁率虚数部が異なる。
【0017】
好ましくは、ステップ(1)におけるロールプレスの圧力は、60~70kgであり、例えば60kg、61kg、62kg、63kg、64kg、65kg、66kg、67kg、68kg、69kgまたは70kgであってもよいが、挙げられている数値に限定されず、数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に用いられてもよい。
【0018】
本願に係るロールプレスは、当該分野で周知のロールプレス機で行われ、ロールプレス機におけるラウンドロールとナノ結晶リボンとが線接触であり、ロールプレスの圧力を60~70kgとすることにより、ナノ結晶リボンの微粉砕化処理を実現することができる。
【0019】
好ましくは、ステップ(1)におけるロールプレスの回数は、1~5回であり、例えば1回、2回、3回、4回または5回であってもよい。
【0020】
好ましくは、ステップ(2)における酸エッチング表面処理は、酸性溶液を微粉砕化されたナノ結晶リボンの表面に塗布して表面酸処理を行い、処理が完了した後、脱イオン水で洗浄することである。
【0021】
好ましくは、前記酸性溶液は、質量分率が0.5~1.2wt%の塩酸溶液である。
【0022】
酸エッチング表面処理に用いられる塩酸溶液の質量分率は、0.5~1.2wt%であり、例えば0.5wt%、0.6wt%、0.7wt%、0.8wt%、0.9wt%、1wt%、1.1wt%または1.2wt%であってもよいが、挙げられている数値に限定されず、数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に用いられてもよい。
【0023】
好ましくは、前記表面酸処理の時間は、3~8minであり、例えば3min、4min、5min、6min、7minまたは8minであってもよいが、挙げられている数値に限定されず、数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に用いられてもよい。
【0024】
用いられる塩酸溶液の質量分率が低過ぎる、および/または表面酸処理の時間が短いと、効果的な酸エッチング作用を果たすことができない。塩酸溶液の質量分率が高すぎる、および/または表面酸処理の時間が長すぎると、過度に腐食されることを引き起こし、ナノ結晶リボンの透磁率が悪くなる。渦電流損失はある程度低減できるが、それと同時にヒステリシス損失が大幅に増加することで、合計損失が低下せずに増加する。
【0025】
好ましくは、ステップ(3)におけるアルカリ洗浄表面処理は、アルカリ性溶液を酸エッチング表面処理されたナノ結晶リボンの表面に塗布して表面アルカリ処理を行い、処理が完了した後、脱イオン水で洗浄することである。
【0026】
好ましくは、前記アルカリ性溶液は、炭酸水素ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液または水酸化ナトリウム溶液のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含み、水酸化ナトリウム溶液であることが好ましい。
【0027】
好ましくは、前記水酸化ナトリウム溶液の質量分率は、0.5~2wt%であり、例えば0.5wt%、0.8wt%、1wt%、1.2wt%、1.5wt%、1.6wt%、1.8wt%または2wt%であってもよいが、挙げられている数値に限定されず、数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に用いられてもよい。
【0028】
好ましくは、前記表面アルカリ処理の時間は、5~10minであり、例えば5min、6min、7min、8min、9minまたは10minであってもよいが、挙げられている数値に限定されず、数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に用いられてもよい。
【0029】
用いられる水酸化ナトリウム溶液の質量分率が低すぎる、および/または表面アルカリ処理の時間が短すぎると、酸性溶液を除去する目的を実現することができない。水酸化ナトリウム溶液の濃度が高すぎると、局所的な化学反応が強く、反応が不均一になる。表面アルカリ処理の時間が長すぎると、試験及び製造コストが無駄になる。
【0030】
好ましくは、ステップ(4)における水洗の回数は少なくとも3回であり、例えば3回、4回、5回、6回、7回または8回であってもよいが、挙げられている数値に限定されず、数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に用いられてもよい。
【0031】
好ましくは、ステップ(4)におけるアルコール洗浄は、無水エタノールで少なくとも3回洗浄することであり、例えば3回、4回、5回、6回、7回または8回であってもよいが、挙げられている数値に限定されず、数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に用いられてもよい。
【0032】
好ましくは、ステップ(5)におけるマイクロ酸化処理は、酸素ガス濃度が85vol%以上の酸素ガス雰囲気で行われる。
【0033】
前記マイクロ酸化処理が酸素ガス雰囲気で行われ、酸素ガス雰囲気の酸素ガス濃度は、85vol%以上であり、例えば85vol%、90vol%、92vol%、95vol%、98vol%または100vol%であってもよいが、挙げられている数値に限定されず、数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に用いられてもよい。
【0034】
好ましくは、ステップ(5)におけるマイクロ酸化処理の温度は、60~85℃であり、例えば60℃、65℃、70℃、75℃、80℃または85℃であってもよいが、挙げられている数値に限定されず、数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に用いられてもよい。
【0035】
好ましくは、ステップ(5)におけるマイクロ酸化処理の時間は、15~30minであり、例えば15min、18min、20min、25min、28minまたは30minであってもよいが、挙げられている数値に限定されず、数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に用いられてもよい。
【0036】
マイクロ酸化処理により、ナノ結晶リボンの表面、各微粉砕ユニットの断面に薄い酸化膜層を形成して、ナノ結晶リボンの抵抗率を効果的に向上させることができ、渦電流損失を低減させる。酸素ガス濃度が低過ぎたり、処理温度が低過ぎたり、処理時間が短すぎたりすると、マイクロ酸化処理の目的を効果的に実現することができない。酸素ガス濃度が高すぎたり、処理温度が高すぎたり、処理時間が長すぎたりすると、過度に酸化されることを引き起こし、ナノ結晶リボンの透磁率が明らかに悪くなる。渦電流損失はある程度低下するが、ヒステリシス損失が顕著に増加することで、合計損失が低下せずに増加する。
【0037】
本願に係る製造方法の好ましい技術案として、前記製造方法は、
(1)片面に両面テープが粘着されたナノ結晶リボンに対してロールプレス処理を行うことにより、微粉砕化されたナノ結晶リボンを得るステップであって、前記ナノ結晶リボンは、質量百分比で、73.5wt%のFe、13.5wt%のSi、9wt%のB、3wt%のNbおよび1wt%のCuを含むステップと、
(2)ステップ(1)で得た微粉砕化されたナノ結晶リボンに対して酸エッチング表面処理を行うステップであって、前記酸エッチング表面処理は質量分率が0.5~1.2wt%の塩酸溶液を、微粉砕化されたナノ結晶リボンの表面に塗布して表面酸処理を3~8min行い、処理が完了した後、脱イオン水を用いて洗浄を行うことであるステップと、
(3)ステップ(2)における酸エッチング表面処理されたナノ結晶リボンに対してアルカリ洗浄表面処理を行うステップであって、前記アルカリ洗浄表面処理は質量分率が0.5~2wt%の水酸化ナトリウム溶液を、酸エッチング表面処理されたナノ結晶リボンの表面に塗布して表面アルカリ処理を5~10min行い、処理が完了した後、脱イオン水を用いて洗浄を行うことであるステップと、
(4)ステップ(3)におけるアルカリ洗浄表面処理されたナノ結晶リボンに対して、順に少なくとも3回の水洗及び少なくとも3回の無水エタノールによる洗浄を行った後、乾燥するステップと、
(5)ステップ(4)における乾燥したナノ結晶リボンに対して、酸素ガス濃度が85vol%以上の酸素ガス雰囲気で、マイクロ酸化処理(前記マイクロ酸化処理の温度が60~85℃である)を15~30min行うことにより、改質ナノ結晶リボンを得るステップと、を含む。
【0038】
第2態様として、本願は、第1態様に記載される方法により製造される改質ナノ結晶リボンを提供する。
【0039】
第3態様として、本願は、第1態様に記載される改質ナノ結晶リボンの、ナノ結晶複合構造磁性シートの製造における使用を提供する。
【0040】
好ましくは、前記ナノ結晶複合構造磁性シートは、順に積層して設けられた離型膜層、第1改質ナノ結晶リボン、第2改質ナノ結晶リボン、第3改質ナノ結晶リボンおよび第4改質ナノ結晶リボンを含む。
【0041】
前記第1改質ナノ結晶リボンの両面テープは、離型膜層に接続されており、隣り合う2層の改質ナノ結晶リボンの両面テープは、ナノ結晶リボンに接続されている。
【0042】
前記第1改質ナノ結晶リボン、第2改質ナノ結晶リボン、第3改質ナノ結晶リボンおよび第4改質ナノ結晶リボンは、それぞれ独立して請求項7に記載される改質ナノ結晶リボンである。
【0043】
本願に係る離型膜層は、当該分野における通常の離型膜層であり、本願はこれを具体的に限定するものではない。
【0044】
好ましくは、前記改質ナノ結晶リボンの厚さは、18~22μmであり、例えば18μm、19μm、20μm、21μmまたは22μmであってもよいが、挙げられている数値に限定されず、数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に用いられてもよい。
【0045】
好ましくは、前記両面テープの厚さは、4~6μmであり、例えば4μm、4.5μm、5μm、5.5μmまたは6μmであってもよいが、挙げられている数値に限定されず、数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に用いられてもよい。
【0046】
好ましくは、前記第1改質ナノ結晶リボンは、128kHzのテスト周波数での透磁率実数部は、400~500であり、例えば400、420、450、480または500であってもよいが、挙げられている数値に限定されず、数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に用いられてもよく、透磁率虚数部は、40以下であり、例えば5、10、15、20、25、30、35または40であってもよいが、挙げられている数値に限定されず、数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に用いられてもよい。
【0047】
好ましくは、前記第2改質ナノ結晶リボンは、128kHzのテスト周波数での透磁率実数部は、600~800であり、例えば600、650、700、750または800であってもよいが、挙げられている数値に限定されず、数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に用いられてもよく、透磁率虚数部は、60以下であり、例えば10、20、30、40、50または60であってもよいが、挙げられている数値に限定されず、数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に用いられてもよい。
【0048】
好ましくは、前記第3改質ナノ結晶リボンは、128kHzのテスト周波数での透磁率実数部は、1000~1400であり、例えば1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350または1400であってもよいが、挙げられている数値に限定されず、数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に用いられてもよく、透磁率虚数部は、90以下であり、例えば10、20、30、40、50、60、70、80または90であってもよいが、挙げられている数値に限定されず、数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に用いられてもよい。
【0049】
好ましくは、前記第4改質ナノ結晶リボンは、128kHzのテスト周波数での透磁率実数部は、5000~10000であり、例えば5000、6000、7000、8000、9000または10000であってもよいが、挙げられている数値に限定されず、数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に用いられてもよく、透磁率虚数部は、170以下であり、例えば100、110、120、130、140、150、160または170であってもよいが、挙げられている数値に限定されず、数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に用いられてもよい。
【0050】
本願に係る透磁率は、E4990Aテスターにより測定された複素透磁率である。テスト時に、テスト対象のナノ結晶リボンを、外径19.9mm、内径8.8mmの円環に裁断する。そのうち、透磁率実数部が高いほど、透磁性能が良く、透磁率虚数部が高いほど、磁気遮断シートの磁気損失が大きい。
【0051】
本願に係るナノ結晶複合構造磁性シートは、各層のナノ結晶リボンの磁気特性を厳しく制限して、勾配化透磁特性を有する複合構造を形成する。第1改質ナノ結晶リボンは、ワイヤレス充電システムにおける受信端に最も近い端であり、その低い損失特性によりワイヤレス充電システムの効率を確保する。最外層の第4改質ナノ結晶リボンは、高い透磁率実数部を有し、磁気遮断の効果に優れており、ワイヤレス充電システムの磁界放射を回避する。本願では、第1改質ナノ結晶リボン、第2改質ナノ結晶リボン、第3改質ナノ結晶リボン及び第4改質ナノ結晶リボンの組合せにより、ナノ結晶複合構造磁性シートが良好な電力伝送効率を有するようにする。
【0052】
従来技術と比較して、本願は、以下の有益な効果を有する。
【0053】
(1)従来のワイヤレス充電用ナノ結晶リボンの製造プロセスと比べ、本願に係る製造方法により得られる改質ナノ結晶リボンは、より低い透磁率虚数部、より低い損失を有し、ワイヤレス充電システムが高い電力伝送効率を得ることにさらに寄与する。本願では、微粉砕化されたナノ結晶リボンを酸エッチングすることにより、希塩酸が微小な亀裂に進入し、微粉砕化ユニット同士のブリッジおよび粉砕化ユニットの尖角を腐食し除去し、リボンのミクロ構造を最適化し、作動過程における磁界の集中および不均一な分布を回避する。その後、アルカリ洗浄、水洗およびアルコール洗浄により、ナノ結晶リボンの表面に残留した酸、塩(酸塩基反応による塩化ナトリウム)および脱イオン水を除去し、最後、マイクロ酸化処理により、ナノ結晶リボンにおける微粉砕化ユニットの表面およびエッジに極めて薄い酸化膜層を形成し、ナノ結晶リボンの絶縁性を向上させ、ナノ結晶リボンの渦電流損失をさらに低減させる。
【0054】
(2)本願に係るナノ結晶複合構造磁性シートは、各層のナノ結晶リボンの磁気特性を厳しく制限して、勾配化透磁特性を有する複合構造を形成する。第1改質ナノ結晶リボンは、ワイヤレス充電システムにおける受信端に最も近い端であり、その低い損失特性によりワイヤレス充電システムの効率を確保する。最外層の第4改質ナノ結晶リボンは、高い透磁率実数部を有し、磁気遮断効果に優れており、ワイヤレス充電システムの磁界放射を回避する。つまり、第1改質ナノ結晶リボン、第2改質ナノ結晶リボン、第3改質ナノ結晶リボン及び第4改質ナノ結晶リボンの組合せにより、ナノ結晶複合構造磁性シートが良好な電力伝送効率を有するようにする。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】本願に係るナノ結晶複合構造磁性シートの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、具体的な実施形態によって本願の技術案をさらに説明する。当業者であれば、前記実施例は、本願を理解することに役に立つためのものに過ぎず、本願を具体的に限定するためのものと見なすべきではないことを理解すべきである。
【0057】
実施例1
本実施例は、
図1に示すように、順に積層して設けられた離型膜層1、第1改質ナノ結晶リボン3、第2改質ナノ結晶リボン4、第3改質ナノ結晶リボン5および第4改質ナノ結晶リボン6を含むナノ結晶複合構造磁性シートを提供する。
【0058】
前記第1改質ナノ結晶リボン3の両面テープ2が離型膜層1に接続され、隣り合う2層の改質ナノ結晶リボンの両面テープ2がナノ結晶リボンに接続されている。両面テープ2の厚さが5μmであり、各層の改質ナノ結晶リボンの厚さがいずれも20μmである。
【0059】
前記第1改質ナノ結晶リボン3、第2改質ナノ結晶リボン4、第3改質ナノ結晶リボン5および第4改質ナノ結晶リボン6は、それぞれ独立して、以下の製造方法により製造された改質ナノ結晶リボンである。前記製造方法は、
(1)片面に両面テープ2が粘着されたナノ結晶リボン(Fe73.5Si13.5B9Nb3Cu、ただし、添え字の数値は、ナノ結晶リボンの合計質量に対する各元素の百分率である)に対してロールプレス処理を行うことにより、微粉砕化されたナノ結晶リボンを得るステップであって、ロールプレス処理の圧力が、60kgであり、ロールプレスの回数が、3回であるステップと、
(2)ステップ(1)で得た微粉砕化されたナノ結晶リボンに対して酸エッチング表面処理を行うステップであって、前記酸エッチング表面処理は質量分率が0.8wt%の塩酸溶液を、微粉砕化されたナノ結晶リボンの表面に塗布して表面酸処理を5min行い、処理が完了した後、脱イオン水を用いて洗浄を行うことであるステップと、
(3)ステップ(2)における酸エッチング表面処理されたナノ結晶リボンに対してアルカリ洗浄表面処理を行うステップであって、前記アルカリ洗浄表面処理は質量分率が1.5wt%の水酸化ナトリウム溶液を、酸エッチング表面処理されたナノ結晶リボンの表面に塗布して表面アルカリ処理を8min行い、処理が完了した後、脱イオン水を用いて洗浄を行うことであるステップと、
(4)ステップ(3)におけるアルカリ洗浄表面処理されたナノ結晶リボンに対して、順に3回の水洗および3回の無水エタノールによる洗浄を行った後、乾燥するステップと、
(5)ステップ(4)における乾燥したナノ結晶リボンに対して、酸素ガス濃度が95vol%の酸素ガス雰囲気で、マイクロ酸化処理(前記マイクロ酸化処理の温度が75℃である)を21min行うことにより、改質ナノ結晶リボンを得るステップと、を含む。
【0060】
前記第1改質ナノ結晶リボン3、第2改質ナノ結晶リボン4、第3改質ナノ結晶リボン5および第4改質ナノ結晶リボン6における透磁率実数部μ′および透磁率虚数部μ′′は、表1に示すとおりである。
【表1】
【0061】
比較例1
本比較例は、ナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、第2改質ナノ結晶リボン4、第3改質ナノ結晶リボン5および第4改質ナノ結晶リボン6を第1改質ナノ結晶リボン3に置き換える以外、実施例1と同様である。
【0062】
比較例2
本比較例は、ナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、第1改質ナノ結晶リボン3、第3改質ナノ結晶リボン5および第4改質ナノ結晶リボン6を第2改質ナノ結晶リボン4に置き換える以外、実施例1と同様である。
【0063】
比較例3
本比較例は、ナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、第1改質ナノ結晶リボン3、第2改質ナノ結晶リボン4および第4改質ナノ結晶リボン6を第3改質ナノ結晶リボン5に置き換える以外、実施例1と同様である。
【0064】
比較例4
本比較例は、ナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、第1改質ナノ結晶リボン3、第2改質ナノ結晶リボン4および第3改質ナノ結晶リボン5を第4改質ナノ結晶リボン6に置き換える以外、実施例1と同様である。
【0065】
IDTにより製造されたP9221-EVKワイヤレス充電システムの受信端装置を用いて充電効率テストを行い、テストシステムの電力が15Wであり、Qi規格に準拠する。テスト時に、離型膜を剥がした後、ナノ結晶複合構造磁性シートをコイルの裏面に固定し、電力伝送効率をテストした。その結果は表2に示すとおりである。
【表2】
【0066】
上記表から分かるように、勾配化透磁率複合構造を有する磁性シートを用いたワイヤレス充電システムの電力伝送効率は、従来の単一透磁率を有する複合磁性シートを用いたワイヤレス充電システムの電力伝送効率よりも高い。
【0067】
実施例2
本実施例は、
図1に示すナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、順に積層して設けられた離型膜層1、第1改質ナノ結晶リボン3、第2改質ナノ結晶リボン4、第3改質ナノ結晶リボン5および第4改質ナノ結晶リボン6を含む。
【0068】
前記第1改質ナノ結晶リボン3、第2改質ナノ結晶リボン4、第3改質ナノ結晶リボン5および第4改質ナノ結晶リボン6における透磁率実数部μ′および透磁率虚数部μ′′は、表3に示すとおりである。その他は、実施例1と同様である。
【表3】
【0069】
比較例5
本比較例は、ナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、第2改質ナノ結晶リボン4を第1改質ナノ結晶リボン3に置き換え、第3改質ナノ結晶リボン5および第4改質ナノ結晶リボン6を第2改質ナノ結晶リボン4に置き換える以外、実施例2と同様である。
【0070】
比較例6
本比較例は、ナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、第2改質ナノ結晶リボン4を第1改質ナノ結晶リボン3に置き換え、第3改質ナノ結晶リボン5を第4改質ナノ結晶リボン6に置き換える以外、実施例2と同様である。
【0071】
比較例7
本比較例は、ナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、第1改質ナノ結晶リボン3を第2改質ナノ結晶リボン4に置き換え、第3改質ナノ結晶リボン5を第4改質ナノ結晶リボン6に置き換える以外、実施例2と同様である。
【0072】
比較例8
本比較例は、ナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、第1改質ナノ結晶リボン3および第2改質ナノ結晶リボン4を第3改質ナノ結晶リボン5に置き換え、第3改質ナノ結晶リボン5および第4改質ナノ結晶リボン6を第2改質ナノ結晶リボン4に置き換える以外、実施例2と同様である。
【0073】
比較例9
本比較例は、ナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、第4改質ナノ結晶リボン6を第3改質ナノ結晶リボン5に置き換える以外、実施例2と同様である。
【0074】
比較例10
本比較例は、ナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、第3改質ナノ結晶リボン5を第4改質ナノ結晶リボン6に置き換える以外、実施例2と同様である。
【0075】
IDTにより製造されたP9221-EVKワイヤレス充電システムの受信端装置を用いて充電効率テストを行い、テストシステムの電力が15Wであり、Qi規格に準拠する。テスト時に、離型膜を剥がした後、ナノ結晶複合構造磁性シートをコイルの裏面に固定し、電力伝送効率をテストした。その結果は、表4に示すとおりである。
【表4】
【0076】
上記表から分かるように、実施例2の充電効率は、比較例5~10の充電効率より高い。本願に係る勾配化透磁率複合構造を有する磁性シートは、磁気遮断効果、透磁効果が最もよく、構造が最も優れていることを示す。
【0077】
実施例3
本実施例は、
図1に示すナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、順に積層して設けられた離型膜層1、第1改質ナノ結晶リボン3、第2改質ナノ結晶リボン4、第3改質ナノ結晶リボン5および第4改質ナノ結晶リボン6を含む。
【0078】
前記第1改質ナノ結晶リボン3の両面テープ2が離型膜層1に接続されており、隣り合う2層の改質ナノ結晶リボンの両面テープ2がナノ結晶リボンに接続されている。両面テープ2の厚さが5μmであり、各層の改質ナノ結晶リボンの厚さがいずれも20μmである。
【0079】
前記第1改質ナノ結晶リボン3、第2改質ナノ結晶リボン4、第3改質ナノ結晶リボン5および第4改質ナノ結晶リボン6は、それぞれ独立して、以下の製造方法により製造された改質ナノ結晶リボンである。前記製造方法は、
(1)片面に両面テープ2が粘着されたナノ結晶リボン(Fe73.5Si13.5B9Nb3Cu、ただし、添え字の数値は、ナノ結晶リボンの合計質量に対する各元素の百分率である)に対して、ロールプレス処理を行うことにより、微粉砕化されたナノ結晶リボンを得るステップであって、ロールプレス処理の圧力が65kgであり、ロールプレスの回数が5回であるステップと、
(2)ステップ(1)で得た微粉砕化されたナノ結晶リボンに対して酸エッチング表面処理を行うステップであって、前記酸エッチング表面処理は質量分率が1wt%の塩酸溶液を、微粉砕化されたナノ結晶リボンの表面に塗布して表面酸処理を5min行い、処理が完了した後、脱イオン水を用いて洗浄を行うことであるステップと、
(3)ステップ(2)における酸エッチング表面処理されたナノ結晶リボンに対してアルカリ洗浄表面処理を行うステップであって、前記アルカリ洗浄表面処理は質量分率が1.5wt%の水酸化ナトリウム溶液を、酸エッチング表面処理されたナノ結晶リボンの表面に塗布して表面アルカリ処理を9min行い、処理が完了した後、脱イオン水を用いて洗浄を行うことであるステップと、
(4)ステップ(3)におけるアルカリ洗浄表面処理されたナノ結晶リボンに対して3回の水洗および3回の無水エタノールによる洗浄を行った後、乾燥するステップと、
(5)ステップ(4)における乾燥したナノ結晶リボンに対して、酸素ガス濃度が90vol%の酸素ガス雰囲気で、マイクロ酸化処理(前記マイクロ酸化処理の温度が80℃である)を28min行うことにより、改質ナノ結晶リボンを得るステップと、を含む。
【0080】
前記第1改質ナノ結晶リボン3、第2改質ナノ結晶リボン4、第3改質ナノ結晶リボン5および第4改質ナノ結晶リボン6の透磁率実数部μ′および透磁率虚数部μ′′は、表5に示すとおりである。
【表5】
【0081】
比較例11
本比較例は、ナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、第1改質ナノ結晶リボン3を製造する際に、ステップ(2)、ステップ(3)、ステップ(4)およびステップ(5)を行わない以外、実施例3と同様である。
【0082】
比較例12
本比較例は、ナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、第1改質ナノ結晶リボン3を製造する際に、ステップ(2)における塩酸溶液の質量分率が0.45wt%である以外、実施例3と同様である。
【0083】
比較例13
本比較例は、ナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、第1改質ナノ結晶リボン3を製造する際に、ステップ(2)における塩酸溶液の質量分率が1.4wt%である以外、実施例3と同様である。
【0084】
比較例14
本比較例は、ナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、第1改質ナノ結晶リボン3を製造する際に、ステップ(2)における表面酸処理の時間が2.5minである以外、実施例3と同様である。
【0085】
比較例15
本比較例は、ナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、第1改質ナノ結晶リボン3を製造する際に、ステップ(2)における表面酸処理の時間が10minである以外、実施例3と同様である。
【0086】
実施例3および比較例11~15で得た第1改質ナノ結晶リボン3の透磁率、およびナノ結晶複合構造磁性シートの電力伝送効率は、表6に示すとおりである。
【表6】
【0087】
上記表から分かるように、比較例11~15におけるナノ結晶リボン1と比べ、実施例3における第1改質ナノ結晶リボン3は、高い透磁率実数部および低い透磁率虚数部を有すると同時に、電力伝送効率がより高い。その結果から分かるように、本願に係るナノ結晶リボンの製造方法は、よい透磁作用および磁気遮断作用を有すると同時に、損失が低い。酸エッチング表面処理のプロセスパラメータが所定の範囲を超える場合、ナノ結晶リボンの磁気遮断効果および透磁効果、ならびにそれにより構成されたワイヤレス充電システムの充電効率がいずれも悪い。
【0088】
実施例4
本実施例は、
図1に示すナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、順に積層して設けられた離型膜層1、第1改質ナノ結晶リボン3、第2改質ナノ結晶リボン4、第3改質ナノ結晶リボン5および第4改質ナノ結晶リボン6を含む。
【0089】
前記第1改質ナノ結晶リボン3の両面テープ2が離型膜層1に接続されており、隣り合う2層の改質ナノ結晶リボンの両面テープ2がナノ結晶リボンに接続されている。両面テープ2の厚さは、5μmであり、各層の改質ナノ結晶リボンの厚さは、いずれも20μmである。
【0090】
前記第1改質ナノ結晶リボン3、第2改質ナノ結晶リボン4、第3改質ナノ結晶リボン5および第4改質ナノ結晶リボン6は、それぞれ独立して以下の製造方法により製造される改質ナノ結晶リボンである。前記製造方法は、
(1)片面に両面テープ2が粘着されたナノ結晶リボン(Fe73.5Si13.5B9Nb3Cu、ただし、添え字の数値は、ナノ結晶リボンの合計質量に対する各元素の百分率である)に対してロールプレス処理を行うことにより、微粉砕化されたナノ結晶リボンを得るステップであって、ロールプレス処理の圧力が62kgであり、ロールプレスの回数が4回であるステップと、
(2)ステップ(1)で得た微粉砕化されたナノ結晶リボンに対して酸エッチング表面処理を行うステップであって、前記酸エッチング表面処理は質量分率が0.9wt%の塩酸溶液を、微粉砕化されたナノ結晶リボンの表面に塗布して表面酸処理を6min行い、処理が完了した後、脱イオン水を用いて洗浄を行うことであるステップと、
(3)ステップ(2)における酸エッチング表面処理されたナノ結晶リボンに対してアルカリ洗浄表面処理を行うステップであって、前記アルカリ洗浄表面処理は質量分率が1.2wt%の水酸化ナトリウム溶液を、酸エッチング表面処理されたナノ結晶リボンの表面に塗布して表面アルカリ処理を6min行い、処理が完了した後、脱イオン水を用いて洗浄を行うことであるステップと、
(4)ステップ(3)におけるアルカリ洗浄表面処理されたナノ結晶リボンに対して3回の水洗および3回の無水エタノールによる洗浄を行った後、乾燥するステップと、
(5)ステップ(4)における乾燥したナノ結晶リボンに対して、酸素ガス濃度が98vol%の酸素ガス雰囲気で、マイクロ酸化処理(前記マイクロ酸化処理の温度が70℃である)を18min行うことにより、改質ナノ結晶リボンを得るステップと、を含む。
【0091】
前記第1改質ナノ結晶リボン3、第2改質ナノ結晶リボン4、第3改質ナノ結晶リボン5および第4改質ナノ結晶リボン6の透磁率実数部μ′および透磁率虚数部μ′′は、表7に示すとおりである。
【表7】
【0092】
比較例16
本比較例は、ナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、第2改質ナノ結晶リボン4を製造する際に、ステップ(3)におけるアルカリ洗浄表面処理を行わない以外、実施例4と同様である。
【0093】
比較例17
本比較例は、ナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、第2改質ナノ結晶リボン4を製造する際に、ステップ(3)における水酸化ナトリウム溶液の質量分率が0.4wt%である以外、実施例4と同様である。
【0094】
比較例18
本比較例は、ナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、第2改質ナノ結晶リボン4を製造する際に、ステップ(3)における水酸化ナトリウム溶液の質量分率が2.5wt%である以外、実施例4と同様である。
【0095】
比較例19
本比較例は、ナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、第2改質ナノ結晶リボン4を製造する際に、ステップ(3)における表面アルカリ処理の時間が4.5minである以外、実施例4と同様である。
【0096】
比較例20
本比較例は、ナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、第2改質ナノ結晶リボン4を製造する際に、ステップ(3)における表面アルカリ処理の時間が12minである以外、実施例4と同様である。
【0097】
実施例4および比較例16~20で得た第2改質ナノ結晶リボン4の透磁率、およびナノ結晶複合構造磁性シートの電力伝送効率は、表8に示すとおりである。
【表8】
【0098】
上記表から分かるように、比較例16~19におけるナノ結晶リボン2と比べ、実施例4における第2改質ナノ結晶リボン4は、高い透磁率実数部および低い透磁率虚数部を有すると同時に、電力伝送効率がより高い。比較例20における第2改質ナノ結晶リボン4の磁気性能および電力伝送効率は実施例4に相当し、長すぎるアルカリ洗浄時間は性能を向上させず、コストが無駄になることを証明している。そのため、本願に係るナノ結晶リボンの製造方法は、良い透磁作用および磁気遮断作用を有すると同時に、損失が低い。アルカリ洗浄ステップが用いられないか、またはアルカリ洗浄のプロセスパラメータが所定の範囲を超える場合、ナノ結晶リボンの磁気遮断効果および透磁効果、ならびにそれにより構成されたワイヤレス充電システムの充電効率がいずれも悪い。
【0099】
実施例5
本実施例は、
図1に示すナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、順に積層して設けられた離型膜層1、第1改質ナノ結晶リボン3、第2改質ナノ結晶リボン4、第3改質ナノ結晶リボン5および第4改質ナノ結晶リボン6を含む。
【0100】
前記第1改質ナノ結晶リボン3の両面テープ2が離型膜層1に接続されており、隣り合う2層の改質ナノ結晶リボンの両面テープ2がナノ結晶リボンに接続されている。両面テープ2の厚さは、5μmであり、各層の改質ナノ結晶リボンの厚さは、いずれも20μmである。
【0101】
前記第1改質ナノ結晶リボン3、第2改質ナノ結晶リボン4、第3改質ナノ結晶リボン5および第4改質ナノ結晶リボン6は、それぞれ独立して以下の製造方法により製造された改質ナノ結晶リボンである。前記製造方法は、
(1)片面に両面テープ2が粘着されたナノ結晶リボン(Fe73.5Si13.5B9Nb3Cu、ただし、添え字の数値は、ナノ結晶リボンの合計質量に対する各元素の百分率である)に対して、ロールプレス処理を行うことにより、微粉砕化されたナノ結晶リボンを得るステップであって、ロールプレス処理の圧力が60kgであり、ロールプレスの回数が5回であるステップと、
(2)ステップ(1)で得た微粉砕化されたナノ結晶リボンに対して酸エッチング表面処理を行うステップであって、前記酸エッチング表面処理は質量分率が0.5wt%の塩酸溶液を、微粉砕化されたナノ結晶リボンの表面に塗布して表面酸処理を8min行い、処理が完了した後、脱イオン水を用いて洗浄を行うことであるステップと、
(3)ステップ(2)における酸エッチング表面処理されたナノ結晶リボンに対してアルカリ洗浄表面処理を行うステップであって、前記アルカリ洗浄表面処理は質量分率が2wt%の水酸化ナトリウム溶液を、酸エッチング表面処理されたナノ結晶リボンの表面に塗布して表面アルカリ処理を5min行い、処理が完了した後、脱イオン水を用いて洗浄を行うことであるステップと、
(4)ステップ(3)におけるアルカリ洗浄表面処理されたナノ結晶リボンに対して3回の水洗および3回の無水エタノールによる洗浄を行った後、乾燥するステップと、
(5)ステップ(4)における乾燥したナノ結晶リボンに対して、酸素ガス濃度が90vol%の酸素ガス雰囲気で、マイクロ酸化処理(前記マイクロ酸化処理の温度が85℃である)を15min行うことにより、改質ナノ結晶リボンを得るステップと、を含む。
【0102】
前記第1改質ナノ結晶リボン3、第2改質ナノ結晶リボン4、第3改質ナノ結晶リボン5および第4改質ナノ結晶リボン6の透磁率実数部μ′および透磁率虚数部μ′′は、表9に示すとおりである。
【表9】
【0103】
比較例21
本比較例は、ナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、第3改質ナノ結晶リボン5を製造する際に、ステップ(4)におけるアルコール洗浄を行わない以外、実施例5と同様である。
【0104】
実施例5および比較例21で得た第3改質ナノ結晶リボン5の透磁率、およびナノ結晶複合構造磁性シートの電力伝送効率は、表10に示すとおりである。
【表10】
【0105】
上記表から分かるように、比較例21における第3改質ナノ結晶リボン5と比べ、実施例5における第3改質ナノ結晶リボン5は、高い透磁率実数部および低い透磁率虚数部を有すると同時に、電力伝送効率がより高い。その結果から分かるように、アルコール洗浄は、ナノ結晶リボンの製造過程には極めて重要である。
【0106】
実施例6
本実施例は、
図1に示すナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、順に積層して設けられた離型膜層1、第1改質ナノ結晶リボン3、第2改質ナノ結晶リボン4、第3改質ナノ結晶リボン5および第4改質ナノ結晶リボン6を含む。
【0107】
前記第1改質ナノ結晶リボン3の両面テープ2が離型膜層1に接続されており、隣り合う2層の改質ナノ結晶リボンの両面テープ2がナノ結晶リボンに接続されている。両面テープ2の厚さは、5μmであり、各層の改質ナノ結晶リボンの厚さは、いずれも20μmである。
【0108】
前記第1改質ナノ結晶リボン3、第2改質ナノ結晶リボン4、第3改質ナノ結晶リボン5および第4改質ナノ結晶リボン6は、それぞれ独立して以下の製造方法により製造される改質ナノ結晶リボンである。前記製造方法は、
(1)片面に両面テープ2が粘着されたナノ結晶リボン(Fe73.5Si13.5B9Nb3Cu、ただし、添え字の数値は、ナノ結晶リボンの合計質量に対する各元素の百分率である)に対してロールプレス処理を行うことにより、微粉砕化されたナノ結晶リボンを得るステップであって、ロールプレス処理の圧力が70kgであり、ロールプレスの回数が1回であるステップと、
(2)ステップ(1)で得た微粉砕化されたナノ結晶リボンに対して酸エッチング表面処理を行うステップであって、前記酸エッチング表面処理は質量分率が1.2wt%の塩酸溶液を、微粉砕化されたナノ結晶リボンの表面に塗布して表面酸処理を3min行い、処理が完了した後、脱イオン水を用いて洗浄を行うことであるステップと、
(3)ステップ(2)における酸エッチング表面処理されたナノ結晶リボンに対してアルカリ洗浄表面処理を行うステップであって、前記アルカリ洗浄表面処理は質量分率が0.5wt%の水酸化ナトリウム溶液を、酸エッチング表面処理されたナノ結晶リボンの表面に塗布して表面アルカリ処理を10min行い、処理が完了した後、脱イオン水を用いて洗浄を行うことであるステップと、
(4)ステップ(3)におけるアルカリ洗浄表面処理されたナノ結晶リボンに対して3回の水洗および3回の無水エタノールによる洗浄を行った後、乾燥するステップと、
(5)ステップ(4)における乾燥したナノ結晶リボンに対して、酸素ガス濃度が85vol%の酸素ガス雰囲気で、マイクロ酸化処理(前記マイクロ酸化処理の温度が60℃である)を30min行うことにより、改質ナノ結晶リボンを得るステップと、を含む。
【0109】
前記第1改質ナノ結晶リボン3、第2改質ナノ結晶リボン4、第3改質ナノ結晶リボン5および第4改質ナノ結晶リボン6の透磁率実数部μ′および透磁率虚数部μ′′は、表11に示すとおりである。
【表11】
【0110】
比較例22
本比較例は、ナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、第4改質ナノ結晶リボン6を製造する際に、ステップ(5)におけるマイクロ酸化処理を行わない以外、実施例6と同様である。
【0111】
比較例23
本比較例は、ナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、第4改質ナノ結晶リボン6を製造する際に、ステップ(5)における酸素ガス濃度が83vol%である以外、実施例6と同様である。
【0112】
比較例24
本比較例は、ナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、第4改質ナノ結晶リボン6を製造する際に、ステップ(5)におけるマイクロ酸化処理の温度が55℃である以外、実施例6と同様である。
【0113】
比較例25
本比較例は、ナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、第4改質ナノ結晶リボン6を製造する際に、ステップ(5)におけるマイクロ酸化処理の温度が90℃である以外、実施例6と同様である。
【0114】
比較例26
本比較例は、ナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、第4改質ナノ結晶リボン6を製造する際に、ステップ(5)におけるマイクロ酸化処理の時間が12minである以外、実施例6と同様である。
【0115】
比較例27
本比較例は、ナノ結晶複合構造磁性シートを提供し、第4改質ナノ結晶リボン6を製造する際に、ステップ(5)におけるマイクロ酸化処理の時間が35minである以外、実施例6と同様である。
【0116】
実施例6および比較例22~27で得た第4改質ナノ結晶リボン6の透磁率、およびナノ結晶複合構造磁性シートの電力伝送効率は、表12に示すとおりである。
【表12】
【0117】
上記表から分かるように、比較例22~27における第4改質ナノ結晶リボン6と比べ、実施例6における第4改質ナノ結晶リボン6は、高い透磁率実数部および低い透磁率虚数部を同時に有すると共に、電力伝送効率がより高い。その結果から分かるように、マイクロ酸化の有無およびそのプロセスパラメータの制限は、ナノ結晶リボンの磁気性能および電力伝送効率に大きく影響している。
【0118】
要するに、従来のワイヤレス充電用ナノ結晶リボンの製造プロセスと比べ、本願に係る製造方法により得られる改質ナノ結晶リボンは、より低い透磁率虚数部、より低い損失を有し、ワイヤレス充電システムが高い電力伝送効率を得ることにさらに寄与する。本願では、微粉砕化されたナノ結晶リボンを酸エッチングすることにより、希塩酸が微小な亀裂に進入し、微粉砕化ユニット同士のブリッジおよび粉砕化ユニットの尖角を腐食し除去し、リボンのミクロ構造を最適化し、作動過程における磁界の集中および不均一な分布を回避する。その後、アルカリ洗浄、水洗およびアルコール洗浄により、ナノ結晶リボンの表面に残留した酸、塩(酸塩基反応による塩化ナトリウム)および脱イオン水を除去し、最後に、マイクロ酸化処理により、ナノ結晶リボンにおける微粉砕化ユニットの表面およびエッジに極めて薄い酸化膜層を形成し、ナノ結晶リボンの絶縁性を向上させ、ナノ結晶リボンの渦電流損失をさらに低下させる。
【0119】
本願に係るナノ結晶複合構造磁性シートは各層のナノ結晶リボンの磁気性能を厳しく限定することにより、勾配化透磁特性を有する複合構造が形成される。第1改質ナノ結晶リボンは、ワイヤレス充電システムに最も近い端であり、その低い損失特性によりワイヤレス充電システムの効率を確保する。最外層の第4改質ナノ結晶リボンは、高い透磁率実数部を有し、磁気遮断効果に優れており、ワイヤレス充電システムの磁界放射を回避する。つまり、第1改質ナノ結晶リボン、第2改質ナノ結晶リボン、第3改質ナノ結晶リボンおよび第4改質ナノ結晶リボンの組合せにより、ナノ結晶複合構造磁性シートが良好な電力伝送効率を有するようにする。
【0120】
以上の内容は、本願の具体的な実施形態のみに過ぎないが、本願の保護範囲は、これに限定されないことを出願人より声明する。
【符号の説明】
【0121】
1、離型膜層
2、両面テープ
3、第1改質ナノ結晶リボン
4、第2改質ナノ結晶リボン
5、第3改質ナノ結晶リボン
6、第4改質ナノ結晶リボン