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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】光学素子および光学モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20240930BHJP
   G02B 1/11 20150101ALI20240930BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20240930BHJP
   G02B 1/18 20150101ALI20240930BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20240930BHJP
   G02B 3/08 20060101ALI20240930BHJP
   G02B 27/42 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B1/11
G02B1/14
G02B1/18
G02B5/00 Z
G02B3/08
G02B27/42
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023513406
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-11
(86)【国際出願番号】 CN2021137464
(87)【国際公開番号】W WO2022183804
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】202110238053.7
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519151253
【氏名又は名称】浙江水晶光電科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】汪肇坤
(72)【発明者】
【氏名】伍未名
(72)【発明者】
【氏名】劉風雷
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-035920(JP,A)
【文献】中国実用新案第208795952(CN,U)
【文献】米国特許第07763841(US,B1)
【文献】特開平08-254604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18
G02B 1/11
G02B 1/14
G02B 1/18
G02B 5/00
G02B 3/08
G02B 27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回折光学素子と、前記回折光学素子に一体成形されるフレネルレンズとを備え、フレネルレンズを通って前記回折光学素子を透過する光束で所定パターンを形成できるように構成され、
前記回折光学素子は、透明ベースと、前記透明ベースに一体成形される回折層とを含み、
前記回折層に、前記回折層を覆うように構成される充填層が充填され、
前記フレネルレンズは、前記充填層に一体成形される、
ことを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記透明ベースの構成材料は、ガラスまたは樹脂である、ことを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記回折光学素子の屈折率nと前記充填層の屈折率nとの差が、|n-n|≧0.2を満たす
ことを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項4】
前記回折光学素子を構成する材料は、前記充填層を構成する材料よりも屈折率が高く、または、前記回折光学素子を構成する材料は、前記充填層を構成する材料よりも屈折率が低い
ことを特徴とする請求項3に記載の光学素子。
【請求項5】
前記透明ベースの一側面に透明導電層が設置される
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記透明導電層は、透明な金属酸化物または金属ドープされた酸化物を採用する
ことを特徴とする請求項5に記載の光学素子。
【請求項7】
前記フレネルレンズは、ベース部と、前記ベース部に設置されるコリメート層とを含み、前記フレネルレンズを透過する光束を平行に出射させるように構成され、前記コリメート層が、前記ベース部の、前記透明ベースから離間する側に位置する
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項8】
前記回折層および前記コリメート層の構造形態は、それぞれ階段型および連続型のいずれか1種を採用する
ことを特徴とする請求項7に記載の光学素子。
【請求項9】
前記透明ベースまたは前記充填層の透光面に反射防止膜層、耐摩耗層または撥水撥油層の少なくとも1種が設置される
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の光学素子と光源とを備え、前記光源が前記光学素子のフレネルレンズの焦点面に位置し、前記フレネルレンズのコリメート部が前記光源に向かうように構成される
ことを特徴とする光学モジュール。
【請求項11】
前記光学モジュールにおける前記光源は、垂直共振器型面発光レーザーまたはレーザーダイオードを採用する
ことを特徴とする請求項10に記載の光学モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、光学技術の分野に属し、具体的に、光学素子および光学モジュールに関する。
【0002】
関係出願の相互参照
本出願は、2021年03月04日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202110238053.7であり、名称が「光学素子および光学モジュール」である中国出願に基づいて優先権を主張し、その内容のすべては本出願に参照として取り込まれる。
【背景技術】
【0003】
電子設備における構造化光(structure light)などの光学モジュールは、現代の製品においてますます広く応用されている。構造化光は、特定のパターンを物体表面に投射し、受信モジュールにより採集を行い、物体による光信号の変化に基づいて物体の位置および奥行き情報を算出することにより、デプス空間全体を復元することに用いられるものである。該パターンは、ストライプ形態、ドットアレイ形態、格子形態、スペックル形態、コード形態など、ひいてはより複雑な形態の配光パターンとして設計され得る。光学技術の発展に伴い、構造化光の適用範囲がますます広くなり、例えば、顔認識、ジェスチャ認識、プロジェクター、三次元(Three-dimensional、3D)輪郭復元、奥行き測定、偽造防止識別などに適用されている。したがって、光学モジュールは、研究の重点となっている。
【0004】
従来技術における光学モジュールは、主に光源と、コリメートレンズと、光学素子とを備える。光源からの光束は、コリメートレンズを通ってコリメート光として変更され、光学素子に入射して回折されて複数の光スポットのパターン配列になったあと物体に投影される。しかしながら、光束に対してコリメート、回折を行うには一般的に複数のレンズ群が必要となり、複数のレンズ群を組み立てる過程においてずれが発生しやすいため、光束伝搬の信頼性に影響を与える。したがって、組立または信頼性試験の後、複数のレンズ群が失効しやすくなり、光学モジュールの組立不良率が高くなる。また、複数のレンズ群の組み合わせを採用する場合、占めるスペースが大きくなり、組立工数がかかり、生産コストが高い。
【発明の概要】
【0005】
本出願は、組立コストを削減するとともに組立の難易度を下げることができ、光学モジュールの小型化に寄与できる光学素子および光学モジュールを提供する。
【0006】
本出願のいくつかの実施例は、光学素子を提供する。該光学素子は、回折光学素子と、前記回折光学素子に接続されるフレネルレンズとを備え、フレネルレンズを通って前記回折光学素子を透過する光束で所定パターンを形成できるように構成される。
【0007】
任意で、前記回折光学素子は、透明ベースと、前記透明ベースに設置される回折層とを含む。
【0008】
任意で、前記透明ベースの構成材料は、ガラスまたは樹脂であり、前記回折層は、マイクロナノエッチングまたはインプリントプロセスを利用して前記回折層に対してパターニング処理を行うように構成される。
【0009】
任意で、前記回折層に、前記回折層を覆うように構成される充填層が充填され、または、前記回折層にカバー板が設置される。
【0010】
任意で、前記フレネルレンズは、前記透明ベースまたは前記充填層に設置される。
【0011】
任意で、前記回折光学素子の屈折率nと前記充填層の屈折率nとの差が、|n-n|≧0.2を満たす。
【0012】
任意で、前記回折光学素子を構成する材料は、前記充填層を構成する材料よりも屈折率が高く、または、前記回折光学素子を構成する材料は、前記充填層を構成する材料よりも屈折率が低い。
【0013】
任意で、前記透明ベースの一側面に透明導電層が設置される。
【0014】
任意で、前記透明導電層は、透明な金属酸化物または金属ドープされた酸化物を採用する。
【0015】
任意で、前記フレネルレンズは、ベース部と、前記ベース部に設置されるコリメート層とを含み、前記フレネルレンズを透過する光束を平行に出射させるように構成され、前記コリメート層が、前記ベース部の、前記透明ベースから離間する側に位置する。
【0016】
任意で、前記回折層および前記コリメート層の構造形態は、それぞれ階段型および連続型のいずれか1種を採用する。
【0017】
任意で、前記透明ベースまたは前記充填層の透光面に反射防止膜層、耐摩耗層または撥水撥油層の少なくとも1種が設置される。
【0018】
本出願の他のいくつかの実施例は、光学モジュールを提供する。該光学モジュールは、上記のいずれか一項に記載の光学素子と光源とを備え、前記光源が前記光学素子のフレネルレンズの焦点面に位置し、前記フレネルレンズのコリメート部が前記光源に向かうように構成される。
【0019】
任意で、前記光学モジュールにおける前記光源は、垂直共振器型面発光レーザーまたはレーザーダイオードを採用する。
【0020】
本出願の実施例は、少なくとも下記の有益な効果を有する。
【0021】
本出願の実施例による光学素子および光学モジュールは、回折光学素子とフレネルレンズとを接続することにより、コリメートと回折の光学性能を兼ねるように一体に形成される。光学素子を加工するとき、回折光学素子とフレネルレンズとの位置合わせ誤差が、ウエハ同士の位置合わせによって決められ、レンズ群を組み立てる従来の方式に比べて、回折光学素子とフレネルレンズとの位置合わせ精度がレンズ群同士の位置合わせ精度よりも遥かに高くなる。また、本出願の実施例による光学素子を利用すれば、組立時に単一の光学素子のみを組み立てればよく、組立効率がより高くなり、個別のコリメートレンズ群およびDOE素子を使用する形態に比べて、組立コストを削減することができ、組立の難易度を下げることができる。また、単一の光学素子を採用すれば、占めるスペースがより小さくなり、光学モジュールの小型化設計に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本出願の実施例の技術案をより明瞭に説明するため、以下、実施例の説明に必要な図面を簡単に説明する。説明する図面は、本出願のいくつかの実施例を示すものにすぎず、範囲を限定するものではない。当業者は、発明能力を用いなくても、これらの図面をもとに他の関連図面を得ることも可能である。
【0023】
図1】本出願の実施例による光学素子の模式的構成図のその1である。
図2】本出願の実施例による光学素子の模式的構成図のその2である。
図3】本出願の実施例による光学素子の模式的構成図のその3である。
図4】本出願の実施例による光学素子の模式的構成図のその4である。
図5】本出願の実施例による光学素子の模式的構成図のその5である。
図6】本出願の実施例による光学素子の模式的構成図のその6である。
図7】本出願の実施例による光学モジュールの模式的構成図のその1である。
図8】本出願の実施例による光学モジュールの模式的構成図のその2である。
図9】本出願の実施例による光学モジュールの模式的構成図のその3である。
図10】本出願の実施例による光学モジュールの模式的構成図のその4である。
図11】本出願の実施例による光学モジュールの模式的構成図のその5である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本出願の実施例の目的、技術案および利点をより明瞭に説明するため、以下、本出願の実施例に用いられる図面を参照しながら、本出願の実施例における技術案を明瞭かつ完全に説明し、説明する実施例が本出願の一部の実施例にすぎず、すべての実施例ではないことは無論である。ここで図面を用いて示した本出願の実施例における部品は、さまざまな配置方法で配置、設計することが可能である。
【0025】
このため、図面に示された本出願の実施例に対する以下の詳細な説明は、本出願の選択された実施例にすぎず、保護しようとする本出願の範囲を限定するものではない。本出願の実施例をもとに、当業者が発明能力を用いることなく得たすべての他の実施例も、本出願の保護範囲内に属する。
【0026】
なお、同様な符号は、図面において同様なものを示すので、1つの図面で定義された場合、その他の図面でさらに定義、解釈することが不要になる。
【0027】
本出願の説明において、明確な定義や限定がない限り、用語の「設置」、「接続」を広義に理解すべきである。例えば、固定接続でもよいし、取外し可能な接続でもよいし、一体的な接続でもよい。また、直接接続してもよいし、中間物を介して間接的に接続してもよいし、2つの要素の内部が連通してもよい。当業者は、本出願における上記用語の具体的な意味を、具体的な状況に応じて理解することができる。
【0028】
光学素子は、多くの場面に応用されている。例えば、3D構造化光のシステム全体は、構造化光投影モジュールと、カメラと、画像取得処理システムとを備える。3D構造化光のシステムの仕事原理として、投影モジュールにより光束を測定対象物に出射し、カメラにより測定対象物に形成される三次元光パターンを撮影し、撮影した画像を画像取得処理システムにより処理したあと、測定対象物の表面データが得られる。このシステムにおいて、カメラと投影モジュールとの相対位置が一定である場合、測定対象物に投射される光束の歪み程度が物体表面の奥行きによって決められるため、撮影した画像のうち、奥行きをもつ光束画像が得られる。
【0029】
投影モジュールは、3D視全体にとって重要なアッセンブリーの1つであり、特殊に変調された不可視赤外光を撮影対象物に放射し、放射による画像の品質が認識効果全体にとって特に重要である。投影モジュールが使用される場合、不可視赤外光の放射源により不可視赤外光が放射され、不可視赤外光がコリメートレンズによりコリメートされ、コリメートされた不可視赤外光が回折光学素子(Diffractive Optical Element、DOE)により回折され、所要の光スポットパターンが得られる。
【0030】
従来の投影モジュールにおいて、コリメートレンズとDOEとが個別に設けられるため、モジュール全体の占めるスペースが大きく、位置合わせ精度が低く、組立コストが高いなどの問題があり、使用に限界がある。本出願の実施例は、上記の問題を解決するように、単一の光学素子により、コリメート機能と回折機能とを同時に実現することができる。
【0031】
本実施例は、図1および図2に示すように、光学素子100を提供する。該光学素子100は、回折光学素子110と、回折光学素子110に接続されるフレネルレンズ120とを備え、フレネルレンズ120を通って回折光学素子110を透過する光束で所定パターンを形成できるように構成される。
【0032】
具体的に、回折光学素子110とフレネルレンズ120とを接続して一体構造とするようにしてもよく、同じ基材にインプリント、エッチングまたはレーザー直描を行うことにより一体成形のものとするようにしてもよい。これによって形成された回折光学素子110とフレネルレンズ120との位置合わせ誤差(ミクロンオーダー)は、ウエハ同士の位置合わせによって決められ、従来の方法における部品同士の位置合わせ誤差(ミリオーダー)よりも遥かに小さくなる。上記の方式を採用すれば、光学素子100全体の光学性能を向上させることができる。
【0033】
本出願の実施例による光学素子100を使用するとき、光源がフレネルレンズ120の焦点面に置かれ、光源が放射した散乱光スポットが、光学素子100におけるフレネルレンズ120を通ってコリメートされて回折光学素子110に平行に入射し、回折光学素子110によりコリメート光を回折して所定パターンを形成する。ここで、該所定パターンは、実際のニーズに応じてストライプ形態、ドットアレイ形態、格子形態、スペックル形態、コード形態などに設計することができ、本出願の実施例ではこれが限定されない。
【0034】
本出願の実施例による光学素子100は、回折光学素子110とフレネルレンズ120とを接続することにより、光学素子100がコリメートと回折の光学性能を兼ねるように一体に形成される。光学素子100を加工するとき、回折光学素子110とフレネルレンズ120との位置合わせ誤差が、ウエハ同士の位置合わせによって決められ、レンズ群を組み立てる従来の方式に比べて、回折光学素子110とフレネルレンズ120との位置合わせ精度がレンズ群同士の位置合わせ精度よりも遥かに高くなる。また、本出願の実施例による光学素子100を利用すれば、組立時に単一の光学素子100のみを組み立てればよく、組立効率がより高くなり、個別のコリメートレンズ群およびDOE素子を使用する形態に比べて、組立コストを削減することができ、組立の難易度を下げることができる。また、単一の光学素子100を採用すれば、占めるスペースがより小さくなり、光学モジュール200の小型化設計に寄与できる。
【0035】
回折光学素子110は、図1および図2に示すように、透明ベース112と、透明ベース112に設置される回折層114とを含む。
【0036】
具体的に、透明ベース112の構成材料は、ガラスまたは樹脂である。回折層114は、マイクロナノエッチングプロセスを利用してパターニング処理を行ってなるものである。これによって、レーザ光が各回折ユニットを通って回折され、例えば、ドットアレイのような特定の光強度分布を形成することができる。また、実際のニーズに応じて、光を均一化する拡散シートを形成することもできる。回折光学素子110の回折ユニットの具体的なパターンは、動作波長と、使用する垂直共振器型面発光レーザー(Vertical Cavity Surface Emitting Laser、VCSEL)のアレイ分布と、最終に要する回折パターン分布とによって決められる。回折光学素子110の高さは、動作波長と、使用する2種の材料の屈折率の差と、階段数によって決められる。また、所要の回折ユニットを形成するように、回折層114がナノインプリント成形により形成され得る。
【0037】
図4図5または図6に示すように、回折層114には、回折層114を覆うように構成される充填層130が充填され、または、回折層114には、カバー板140が設置される。
【0038】
具体的に、図4および図5に示すように、回折光学素子110およびフレネルレンズ120が透明ベース112の対向する両側にそれぞれ位置する場合、透明ベース112にエッチングまたはインプリントまたはレーザー直描などを行うことにより回折層114を形成したあと、外部からの衝突による回折層114の構造への影響を避け、回折層114の構造の安定性を保証するため、回折層114を覆うように充填層130を充填するようにする。充填層130で回折層114を被覆するので、回折層114の構造の安定性を保証することができる。図6に示すように、回折光学素子110の回折層114を保護して光学素子100の使用時の安定性を保証するために、回折光学素子110の回折部にカバー板140を設置してもよい。
【0039】
フレネルレンズ120によりコリメートされた光束が回折層114により所要のパターンとして回折されるために、回折光学素子110の屈折率nと充填層130の屈折率nとの差を、|n-n|≧0.2を満たすようにする必要がある。
【0040】
具体的に、回折光学素子110を構成する材料として比較的高い屈折率のものを選択し、充填層130を構成する材料として比較的低い屈折率のものを選択するようにしてもよい。また、回折光学素子110を構成する材料として比較的低い屈折率のものを選択し、充填層130を構成する材料として比較的高い屈折率のものを選択するようにしてもよく、本出願の実施例ではこれが具体的に限定されない。|n-n|≧0.2を満たす場合、回折効果がより良好であり、得た所定パターンがより優れる。
【0041】
なお、屈折率の異なるものを採用するのは、回折が正常に形成されるように保証するためである。屈折率が同じである材料を採用する場合、充填層130と回折層114とが同じ構造として形成されるとみなすことができ、回折層114を有しないようになり、このため、充填層130と回折光学素子110との屈折率を異ならせて設定する必要がある。また、充填層130を有しない場合、回折光学素子110と空気との屈折率も異なるため、所要のパターンを正常に形成することを保証することができる。
【0042】
フレネルレンズ120は、図3および図4に示すように、透明ベース112に設置されてもよく、回折層114に設置されてもよい。
【0043】
具体的に、図3は、フレネルレンズ120が回折層114に設置される場合の模式的構成図である。フレネルレンズ120が製造されるとき、フレネルレンズ120と回折光学素子110とが透明ベース112の同じ側に位置する場合、インプリントまたはエッチングまたはレーザー直描などを行うことにより直接充填層130において成形されることができる。このようにして、充填層130とフレネルレンズ120との材料が同じであり、フレネルレンズ120と充填層130とのより安定した結合に寄与できる。フレネルレンズ120および充填層130の材料は、紫外線硬化型接着剤などを採用することができる。なお、充填層130の材質とフレネルレンズ120の材質が異なってもよく、この場合、回折層114を覆うように充填層130を充填して平坦化したあと、さらに新しい層を設け、インプリントを行うことによりフレネルレンズ120を形成する必要がある。
【0044】
図4は、フレネルレンズ120が透明ベース112に設置される場合の模式的構成図である。回折光学素子110の原盤およびフレネルレンズ120の原盤が製造できたあと、直接透明ベース112の対向する両側に回折光学素子110およびフレネルレンズ120の本体構造をそれぞれインプリントし、最後、離型を行って所要の光学素子100が形成される。光学素子100における回折光学素子110を効果的に保護するため、回折光学素子110の回折層114を覆うように充填層130を充填する。上記の方式により光学素子100を製造する場合、回折光学素子110およびフレネルレンズ120の材質が同じであってもよく異なってもよい。なお、どのような製造方式であっても、アライメントマークを付ける方法で位置合わせ誤差を減らすことができる。
【0045】
本出願の選択可能な実施例において、透明ベース112の一側面に透明導電層が設置される。
【0046】
具体的に、透明導電層は、透明な金属酸化物または金属ドープされた酸化物を採用することができ、例えば、インジウムスズ酸化物、酸化亜鉛、酸化スズ(IV)、インジウムドープされた酸化スズ(II)、スズドープされた酸化ガリウム(III)、スズドープされた銀インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物、亜鉛ドープされた酸化インジウム(III)、アンチモンドープされた酸化スズ(IV)、アルミニウムドープされた酸化亜鉛などである。図1または図3に示す方式を採用する場合、透明導電層の全体が透明ベースの、回折光学素子110から離間する側に設置される。図2図4または図5に示す方式を採用する場合、透明導電層は、先に全体として透明ベース112の一側に設置され、そして両面インプリントで透明ベースに回折光学素子110およびフレネルレンズ120をそれぞれ形成する。この場合、透明導電層が回折光学素子110またはフレネルレンズ120に位置する。上記の方式を採用する場合、光学素子100が破損するとき、透明導電層が破断して検出回路が遮断されるので、光学モジュール200に対応する制御装置は、透明導電層の導通、遮断に基づいて光学素子100の状態を確定することができる。光学素子100が無傷である場合、光源210が正常に発光することができ、このとき、光源210からのレーザ光が、光学素子100によって回折されるため、人の目に害を与えることがない。光学素子100が破損するとき、制御装置により光源210をオフになるように制御し、これによって、光源210からの光束が直接出射されるのを防止することができ、利用者を効果的に保護することができ、製品の使用時の安全性を向上させることができる。
【0047】
図2に示すように、フレネルレンズ120は、ベース部122と、ベース部122に設置されるコリメート層124とを含み、フレネルレンズ120を透過する光束を平行に出射させるように構成される。コリメート層124は、ベース部122の、透明ベース112から離間する側に位置する。
【0048】
具体的に、フレネルレンズ120は、透明ベース112にインプリント、エッチングまたはレーザー直描を行うことにより成形されてもよい。上記の方式を採用する場合、ベース部122と透明ベース112とを同一の技術的特徴とみなすことができる。また、透明ベース112に印刷ペーストを塗布し、印刷ペーストの表面にインプリントにより成形され、これによって、フレネルレンズ120と透明ベース112とが接続されるように成形される。インプリント成形を採用する場合、エッチングまたはレーザー直描を行うことにより所要の原盤を製造し、原盤によるインプリントを利用すれば、生産コストを削減することができるとともに、量産に寄与し、生産効率を上げることができる。また、フレネルレンズ120を透過する光束が平行に出射されることは、具体的に、出射される光束が互いに平行であり、出射される光束と、透明ベース112が位置する平面とが互いに垂直であることを意味し、これによって光束に対する効果的なコリメートを保証することができる。
【0049】
本出願の選択可能な実施例において、回折層114およびコリメート層124の構造は、それぞれ階段型および連続型のいずれか1種を採用する。
【0050】
具体的に、回折光学素子110の回折層114は、回折ユニットを含み、回折ユニットを形成する単位構造が階段型または連続型の構造を採用することができる。回折層114は、階段型構造を採用する場合、2段、4段または8段などの階段型構造を採用することができる。同様に、フレネルレンズ120のコリメート層124も階段型(図1に示す)または連続型(図2に示す)の構造を採用することができる。コリメート層124は、階段型構造を採用する場合、4段、8段の階段構造を採用したり、必要に応じてそれ以上の階段数の階段型構造を採用したりすることができる。また、本出願の実施例によるフレネルレンズ120として、マイクロナノメートルオーダーのフレネルレンズを使用することが好ましい。このようなマイクロ構造のフレネルレンズは、一般的なフレネル構造よりも細かく、精度がより高いので、コリメート素子のレンズの個数を減らすとともに良好な集光性および結像性能を保証することができ、さらにコリメート素子の球面収差によるレーザ光の品質への影響をある程度で低減することができる。なお、屈折の原理に基づいて、連続型のフレネルレンズ120の高さを約10~30μmにする。回折の原理に基づいて、階段型のフレネルレンズ120の高さを約1~2μmにし、フレネルゾーンプレートの位相の変化により、比較的高い回折効率を得る。
【0051】
本出願の選択可能な実施例において、透明ベース112または充填層130の透光面に反射防止膜層、耐摩耗層または撥水撥油層(指紋防止、Anti-fingerprint)の少なくとも1種が設置される。このようにして、透明ベース112または充填層130の透光面に反射防止膜層が設置されれば、光束の透過率を上げて、光束の有効利用率を上げることができる。また、本出願の選択可能な実施例において、光学素子100の組立または使用中の安定性を保証して表面の摩耗による光束伝搬への影響を低減するように、透明ベース112または充填層130の出光面に耐摩耗層が設置されてもよい。また、指紋防止能力を向上させるために、実際のニーズに応じて撥水撥油層が設置されてもよい。これによって、透明ベース112または充填層130の透光面をきれいにすることができる。
【0052】
図7および図8に示すように、本出願の実施例は、光学モジュール200をさらに提供する。該光学モジュール200は、上記の実施例による光学素子100と光源210とを備え、光源210が光学素子100のフレネルレンズ120の焦点面に位置し、フレネルレンズ120のコリメート部が光源210に向かうように構成される。
【0053】
具体的に、光学モジュール200における光源210は、垂直共振器型面発光レーザーまたはレーザーダイオード(Laser Diode、LD)を採用する。垂直共振器型面発光レーザーは、体積が小さく、出射する光スポットが円形で、単一縦モードで出射可能で、閾値電流が小さく、安価で、大面積のアレイとして集積しやすいなどのメリットを有するため、光束の出射の多様化に寄与できる。光源210をフレネルレンズ120の焦点面に設置することにより、光束をよりよくコリメートすることができ、これによって、所定パターンの質を保証することができる。
【0054】
本出願に係る光学モジュール200は、構造がシンプルで、光源210と光学素子100とのみを備え、他のコリメートレンズの追加が不要で、従来の光学モジュール200に比べて、組立コストが低くなる。また、光学素子100がコリメート機能と回折機能とを兼ね、全体の寸法を1mmに抑えることができ、光学モジュール200の小型化に寄与できる。
【0055】
図6図9および図10は、フレネルレンズ120が階段型を採用し、かつそれぞれレーザーダイオードまたは垂直共振器型面発光レーザーを採用する場合の模式的構成図であり、構造として、フレネルレンズ120と回折光学素子110とが透明ベースの両側にそれぞれ設置される。この場合、回折光学素子110を効果的に保護するため、使用中に構造化光学モジュール200をより安定にするように回折光学素子110にカバー板140を設置してもよい。また、回折光学素子110に、カバー板140と同様な効果を奏する充填層130を設置してもよい(図11に示す)。
【0056】
図1図7および図8は、フレネルレンズ120と回折光学素子110とが透明ベースの同じ側に設置される場合の構造を示す。上記構成は、いずれもフレネルレンズ120と回折光学素子110とが全体として設置されるので、占めるスペースを効果的に低減し、高効率と低加工難易度を確保するとともに、モジュールの位置合わせ精度を高めることができる。これによって、組立コストを削減することができ、光学モジュール200の小型化に寄与できる。
【0057】
上記は、本出願の好ましい実施例にすぎず、本出願を限定するものではない。当業者にとって、本出願に各種の変更や変化を有してもよい。本出願の精神および原理から逸脱しない限り、行った如何なる変更、均等置換、改良なども、本出願の保護範囲内に属する。
【0058】
産業上の利用可能性
本出願は、光学素子および光学モジュールを提供し、該光学素子が、回折光学素子と、前記回折光学素子に接続されるレネルレンズとを備え、フレネルレンズを通って前記回折光学素子を透過する光束で所定パターンを形成するように構成され、組立コストを削減することができるとともに、光学モジュールの小型化に寄与できる。
【0059】
なお、本出願に係る光学素子および光学モジュールは、実施可能なものであり、さまざまな産業用途に適用することができる。例えば、本出願に係る光学素子および光学モジュールは、光学技術の分野に適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
100 光学素子、110 回折光学素子、112 透明ベース、114 回折層、120 フレネルレンズ、122 ベース部、124 コリメート層、130 充填層、140 カバー板、200 光学モジュール、210 光源
図1
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図3
図4
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図6
図7
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図9
図10
図11