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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】認識装置及び認識方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/08 20060101AFI20240930BHJP
【FI】
H05K13/08 Q
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023529416
(86)(22)【出願日】2021-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2021024178
(87)【国際公開番号】W WO2022269912
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2024-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】絹田 実
(72)【発明者】
【氏名】清水 利律
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/184855(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/047252(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/055757(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に装着される部品の所定の特徴部の状態を認識する認識装置であって、
前記認識装置は、
前記所定の特徴部を含む前記部品に光を照射する光源と、
前記光源が照射した光を受けた前記部品を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置が撮像し、前記撮像装置から取得した撮像データを画像解析し、前記部品の前記所定の特徴部の状態を認識する画像解析装置と、
を備え、
前記画像解析装置は、
前記撮像装置に対して、そのシャッタスピードを所定の下限スピードと所定の上限スピードとの間で変動させながら前記部品の撮像を指示する指示処理と、
前記指示処理に応じて前記撮像装置から取得した複数の撮像データにそれぞれ含まれる前記所定の特徴部の画像と、理想とする撮像データに含まれる前記所定の特徴部の理想画像とを比較し、前記所定の特徴部の画像が前記理想画像に対して欠落する欠落割合を前記複数の撮像データのそれぞれについて算出する算出処理と、
前記算出処理により算出された複数の欠落割合のうち、欠落割合が所定の第1閾値以下である撮像データを検出する検出処理と、
前記検出処理により検出された撮像データの撮像に用いたシャッタスピードを選択する選択処理と、
を実行する
認識装置。
【請求項2】
前記画像解析装置は、
前記検出処理により検出された撮像データについて前記算出処理により算出された欠落割合が所定の第2閾値以上である場合、警告を報知する警告報知処理
を実行する、
請求項1に記載の認識装置。
【請求項3】
前記画像解析装置は、
前記撮像装置から取得した前記撮像データを2値化する2値化処理
を実行し、
前記算出処理では、前記2値化処理による2値化後の撮像データに含まれる前記所定の特徴部の画像と、2値化後の理想とする撮像データに含まれる前記所定の特徴部の理想画像とを比較し、前記所定の特徴部の画像が前記理想画像に対して欠落する欠落割合を算出する、
請求項1又は2に記載の認識装置。
【請求項4】
前記画像解析装置は、
前記撮像装置から取得した前記撮像データに基づいて3次元画像を生成する3次元画像生成処理
を実行し、
前記3次元画像生成処理により生成された3次元画像を画像解析し、前記部品の前記所定の特徴部の状態を認識する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の認識装置。
【請求項5】
基板に装着される部品の所定の特徴部の状態を認識する認識方法であって、
前記認識方法は、
前記所定の特徴部を含む前記部品に光を照射する光源が照射した光を受けた前記部品を撮像する撮像装置が撮像し、前記撮像装置から取得した撮像データを画像解析し、前記部品の前記所定の特徴部の状態を認識する画像解析工程
を含み、
前記画像解析工程では、
前記撮像装置に対して、そのシャッタスピードを所定の下限スピードと所定の上限スピードとの間で変動させながら前記部品の撮像を指示する指示処理と、
前記指示処理に応じて前記撮像装置から取得した複数の撮像データにそれぞれ含まれる前記所定の特徴部の画像と、理想とする撮像データに含まれる前記所定の特徴部の理想画像とを比較し、前記所定の特徴部の画像が前記理想画像に対して欠落する欠落割合を前記複数の撮像データのそれぞれについて算出する算出処理と、
前記算出処理により算出された複数の欠落割合のうち、欠落割合が所定の第1閾値以下である撮像データを検出する検出処理と、
前記検出処理により検出された撮像データの撮像に用いたシャッタスピードを選択する選択処理と、
を実行する
認識方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板に装着される部品の所定の特徴部の状態を認識する認識装置及び認識方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、リード部品のリードの先端を、撮像装置により異なるシャッタスピードで複数回撮像して、複数の撮像データを作成し、それら複数の撮像データの各々に基づいて、リードの先端位置を認識可能であるか否かを判定し、認識可能であると判定された撮像データに応じた撮像時のシャッタスピードのうちの、最も速いシャッタスピードと最も遅いシャッタスピードとの間のシャッタスピードを、最適シャッタスピードとして決定するようにした認識装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開番号 WO2018/047252 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、作成された撮像データの画像は、撮像時のシャッタスピードに応じて欠落する割合が変動する。このため、撮像データに基づいて画像認識を行うときに、その画像認識の精度を向上させようとすると、撮像データとして、画像が欠落する割合がより少ないものが求められる。したがって、撮像データを作成する際のシャッタスピードとして、画像が欠落する割合が所定の閾値以下となるシャッタスピードを選択することが求められる。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の認識装置では、撮像時のシャッタスピードに応じて、作成された撮像データの画像が欠落する割合が変動することは考慮されていない。
【0006】
本開示は、作成された撮像データの画像が欠落する割合が所定の閾値以下となるシャッタスピードを選択することが可能となる認識装置及び認識方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の認識装置は、基板に装着される部品の所定の特徴部の状態を認識する認識装置であって、認識装置は、所定の特徴部を含む部品に光を照射する光源と、光源が照射した光を受けた部品を撮像する撮像装置と、撮像装置が撮像し、撮像装置から取得した撮像データを画像解析し、部品の所定の特徴部の状態を認識する画像解析装置と、を備え、画像解析装置は、撮像装置に対して、そのシャッタスピードを所定の下限スピードと所定の上限スピードとの間で変動させながら部品の撮像を指示する指示処理と、指示処理に応じて撮像装置から取得した複数の撮像データにそれぞれ含まれる所定の特徴部の画像と、理想とする撮像データに含まれる所定の特徴部の理想画像とを比較し、所定の特徴部の画像が理想画像に対して欠落する欠落割合を複数の撮像データのそれぞれについて算出する算出処理と、算出処理により算出された複数の欠落割合のうち、欠落割合が所定の第1閾値以下である撮像データを検出する検出処理と、検出処理により検出された撮像データの撮像に用いたシャッタスピードを選択する選択処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、作成された撮像データの画像が欠落する割合が所定の第1閾値以下となるシャッタスピードを選択することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態に係る部品実装機の全体を示す平面図である。
図2】認識装置が適用された部品実装機の制御装置を示すブロック図である。
図3】吸着ノズルと測定ユニットの位置関係を示す模式図である。
図4】形状測定された電子部品の検査面を示す図である。
図5】異なるシャッタスピードで撮像された撮像データのうち、図4中の領域Aに相当する部分を拡大した図である。
図6図2中の画像解析部が実行するシャッタスピード選択処理の手順を示すフローチャートである。
図7図6のシャッタスピード選択処理の続きの手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、部品実装機1を示している。部品実装機1は、回路基板70に対する電子部品の実装作業を実行するための装置である。部品実装機1は、図1に示すように、基板搬送装置10と、部品供給装置20と、部品移載装置30と、部品カメラ41と、基板カメラ42と、認識装置50と、制御装置60とを備える。以下の説明において、部品実装機1の水平幅方向(図1の左右方向)をX軸方向とし、部品実装機1の水平長手方向(図1の上下方向)をY軸方向とし、X軸及びY軸に垂直な鉛直方向(図1の前後方向)をZ軸方向とする。
【0011】
基板搬送装置10は、ベルトコンベアなどにより構成され、回路基板70を搬送方向へと順次搬送する。基板搬送装置10は、部品実装機1の機内における所定の位置に回路基板70を位置決めする。そして、基板搬送装置10は、部品実装機1による実装処理が実行された後に、回路基板70を部品実装機1の機外に搬出する。
【0012】
部品供給装置20は、回路基板70に装着される電子部品を供給する。部品供給装置20は、X軸方向に並んで配置された複数のスロットを有する。複数のスロットには、フィーダ21が着脱可能にそれぞれセットされる。部品供給装置20は、フィーダ21によりキャリアテープを送り移動させて、フィーダ21の先端側(図1の上側)に位置する取出し部において電子部品を供給する。
【0013】
また、部品供給装置20は、例えばリード部品などの比較的大型の電子部品を、トレイ22上に並べた状態で供給する。部品供給装置20は、上下方向に区画された収納棚23に複数のトレイ22を収納し、実装処理に応じて所定のトレイ22を引き出してリード部品などの電子部品を供給する。
【0014】
部品移載装置30は、X軸方向及びY軸方向に移動可能に構成される。部品移載装置30は、部品実装機1の長手方向の後部側(図1の上側)から前部側の部品供給装置20の上方にかけて配置される。部品移載装置30は、ヘッド駆動装置31と、移動台32と、装着ヘッド33とを備える。ヘッド駆動装置31は、直動機構により移動台32をXY軸方向に移動可能に構成される。
【0015】
装着ヘッド33は、ヘッド駆動装置31の移動台32に着脱可能に設けられ、電子部品を保持する保持装置である。また、装着ヘッド33は、複数のノズルホルダに着脱可能に設けられた複数の吸着ノズル34(図3を参照)を支持する。装着ヘッド33は、Z軸と平行なR軸回りに回転可能に、且つ昇降可能に吸着ノズル34をそれぞれ支持する。
【0016】
吸着ノズル34の各々は、装着ヘッド33に対する昇降位置(Z軸方向位置)や角度、負圧の供給状態を制御される。吸着ノズル34は、負圧を供給されることにより、フィーダ21の取出し部において供給される電子部品、及びトレイ22により供給される電子部品を吸着して保持する。このような構成により、本実施形態の装着ヘッド33は、電子部品を吸着により保持する。
【0017】
部品カメラ41及び基板カメラ42は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を有するデジタル式の撮像装置である。部品カメラ41及び基板カメラ42は、通信可能に接続された制御装置60による制御信号に基づいてカメラ視野に収まる範囲の撮像を行い、当該撮像により取得した撮像データを制御装置60に送出する。
【0018】
部品カメラ41は、光軸が鉛直方向(Z軸方向)となるように部品実装機1の基台に固定され、部品移載装置30の下方から撮像可能に構成される。より具体的には、部品カメラ41は、吸着ノズル34に保持された状態の電子部品の下面を撮像可能に構成される。詳細には、部品カメラ41のレンズユニットは、撮像素子から一定の距離にある対象物に焦点が合うように設定される。また、部品カメラ41のレンズユニットのカメラ視野は、装着ヘッド33が支持する全ての吸着ノズル34が収まる大きさに設定されている。
【0019】
基板カメラ42は、光軸が鉛直方向(Z軸方向)の下向きとなるように部品移載装置30の移動台32に設けられる。基板カメラ42は、回路基板70を撮像可能に構成されている。この基板カメラ42から撮像データを取得した制御装置60は、画像処理により例えば基板に付された位置決めマークを認識することで、基板搬送装置10による回路基板70の位置決め状態を認識する。そして、制御装置60は、回路基板70の位置決め状態に応じて移動台32の位置を補正して、電子部品の装着を行うように実装処理を制御する。
【0020】
認識装置50は、電子部品に設定される測定点の三次元位置(三次元座標により示される空間位置)を測定する。なお、認識装置50は、次の制御装置60に含まれる画像解析部62を含んで構成されているので、認識装置50についての詳細な説明は後述する。
【0021】
制御装置60は、主として、CPUや各種メモリ、ディスプレイ、制御回路により構成される。制御装置60は、部品カメラ41及び基板カメラ42の撮像により取得した撮像データ、後述する認識装置50による電子部品の適否の判定結果に基づいて、回路基板70に電子部品を実装する実装処理を制御する。制御装置60は、図2に示すように、実装制御部61、画像解析部62及び記憶装置66に、バスを介して入出力インターフェース67が接続されている。入出力インターフェース67には、モータ制御回路68及び撮像制御回路69が接続されている。
【0022】
実装制御部61は、モータ制御回路68を介して装着ヘッド33の位置や吸着機構の動作を制御する。より詳細には、実装制御部61は、部品実装機1に複数設けられた各種センサから出力される情報や、各種の認識処理の結果を入力する。そして、実装制御部61は、記憶装置66に記憶されている制御プログラム、各種センサによる情報、画像処理や認識処理の結果に基づいて、モータ制御回路68に制御信号を送出する。これにより、装着ヘッド33に支持された吸着ノズル34の位置及び回転角度が制御される。
【0023】
画像解析部62は、後述する認識装置50を構成するため、詳細については認識装置50の構成の説明において説明する。記憶装置66は、ハードディスク装置などの光学ドライブ装置、又はフラッシュメモリなどにより構成される。この記憶装置66には、部品実装機1を動作させるための制御プログラム、バスや通信ケーブルを介して部品カメラ41及び基板カメラ42から制御装置60に転送された撮像データ、認識装置50による画像処理の一時データなどが記憶される。入出力インターフェース67は、CPUや記憶装置66と各制御回路68,69との間に介在し、データ形式の変換や信号強度を調整する。
【0024】
モータ制御回路68は、実装制御部61による制御信号に基づいて、部品移載装置30に設けられた各軸モータの制御に用いられる。これにより、装着ヘッド33が各軸方向に位置決めされる。また、この各軸のモータの制御により、所定の吸着ノズル34の昇降位置(Z軸方向位置)及び回転角度が割り出される。
【0025】
撮像制御回路69は、制御装置60が送出する撮像の制御信号に基づいて、部品カメラ41、基板カメラ42及び認識装置50の測定カメラ53による撮像を制御する。また、撮像制御回路69は、部品カメラ41、基板カメラ42及び測定カメラ53の撮像による撮像データを取得して、入出力インターフェース67を介して記憶装置66に記憶させる。
【0026】
認識装置50は、電子部品の適否を判定する装置である。本実施形態において、認識装置50は、部品実装機1の一部を構成するように組み込まれている。認識装置50は、部品移載装置30の吸着ノズル34に吸着により保持された電子部品を適否判定の対象とする。
【0027】
ここで、認識装置50が適否判定の対象とする電子部品は、部品本体及び複数の電極部を有する電子部品である。電子部品の電極部は、部品本体に設けられ、電子部品が回路基板70上に載置された後に、回路基板70のランドに電気的に接続される。具体的には、電極部は、リード部品のリード、又はチップ部品の突起状の端子である。以下では、適否判定の対象の電子部品80は、上記リード部品であるものとして説明する。
【0028】
電子部品80は、図3に示すように、部品本体81と、複数の電極部に相当するリード82とを有する。ここで、装着ヘッド33に保持された電子部品80のうち装着ヘッド33側とは反対側(鉛直方向の下側)を向いた部品本体81の外面及び複数のリード82の外面を「検査面」と定義する。つまり、図3に示すように、電子部品80が適正な姿勢で吸着により保持された状態、即ち部品本体81の本体上面が吸着ノズル34に吸着された吸着面81aとなった状態においては、部品本体81の本体下面81b、及びリード82のリード下面82aが「検査面」である。一方で、電子部品80が上下反対に保持された状態、即ち本体下面81bが吸着面となった状態においては、部品本体81の本体上面及びリード82のリード上面が「検査面」となる。
【0029】
認識装置50は、電子部品80に設定される測定点の三次元位置を測定する。本実施形態において、認識装置50は、三次元座標により示される検査面の立体的な形状(以下、単に「立体形状」とも称する)を測定することによって、それぞれの測定点の三次元位置を測定する。
【0030】
認識装置50は、立体形状の測定に用いられる撮像データを取得する2つのプロジェクタ51,52及び測定カメラ53と、制御装置60の一部を構成する画像解析部62(図2参照)とを有する。2つのプロジェクタ51,52及び測定カメラ53は、部品実装機1の基台に固定される。2つのプロジェクタ51,52は、測定カメラ53の光軸を中心に90°ずれた位置に配置され、立体形状の測定対象となる対象物に予め定められたパターン光を投影する装置である。
【0031】
2つのプロジェクタ51,52の各々は、光源の光をスリット又は透過型の液晶などにより所定のパターン光を生成し、投影レンズにより当該パターン光を対象物に投影している。本実施形態において、プロジェクタ51,52により投影されるパターン光は、輝度が正弦波状に変化する縞状からなる。
【0032】
測定カメラ53は、部品カメラ41と同様に、撮像素子を有するデジタルカメラである。測定カメラ53は、図3に示すように、プロジェクタ51(52)から規定距離Lpだけパターン光の配列方向に離間して配置され、対象物に投影されたパターン光を撮像する。測定カメラ53は、通信可能に接続された制御装置60による制御信号に基づいて撮像を行い、当該撮像により取得した撮像データを制御装置60に送出する。
【0033】
画像解析部62は、測定カメラ53の撮像により取得した複数の撮像データに基づいて対象物の立体形状を測定する。本実施形態において、画像解析部62は、各パターン光にそれぞれ対応する複数の撮像データを用いて、位相シフト法により対象物の立体形状を測定する。なお、位相シフト法は公知であるので、その具体的な方法の説明は省略する。
【0034】
図4は、画像解析部62により可視化された電子部品80の立体形状を示し、各部位における輝度(図4における濃淡)により、当該部位の高さ(Z座標)が示される。図5は、図4の電子部品80の立体形状の領域Aに相当する部分を拡大した図である。そして、図5(a)と図5(b)とは、異なるシャッタスピードで撮像された撮像データに基づいて可視化された点が異なっている。図5(a)及び図5(b)中、一点鎖線で囲まれた領域82a11~82a14及び82a21~82a24はそれぞれ、領域A1及びA2に含まれる4本のリード82の各下面82aの可視化像が存在する領域である。つまり、4本のリード82の各下面82aの可視化像は、領域82a11~82a14及び82a21~82a24内の全ての領域に亘って存在することが理想的である。しかし、図5(a)の領域82a11~82a14でも、図5(b)の領域82a21~82a24でも、4本のリード82の各下面82aの可視化像は全ての領域に亘って存在しておらず、画像の欠落が生じている。ただし、図5(b)の領域82a21~82a24における画像の欠落割合の方が、図5(a)の領域82a11~82a14における画像の欠落割合より小さくなっている。この画像の欠落割合は、基となる撮像データを撮像するときのシャッタスピードに応じて変動する。そして、画像の欠落割合が小さければ小さいほど、画像認識の精度が向上するので、画像の欠落割合が最小となるシャッタスピードを選択することが求められる。
【0035】
図6及び図7は、画像解析部62、特に上記CPUが実行するシャッタスピード選択処理の手順を示している。以降、各処理の手順の説明において、ステップを「S」と表記する。シャッタスピード選択処理は、部品の実装を開始する前や実装する部品を変更するとき、あるいは測定カメラ53を含む認識装置50が経年変化したときなどに適宜実行される。
【0036】
図6において、まずCPUは、測定カメラ53のシャッタスピードを初期値に設定する(S10)。シャッタスピードは、本実施形態では、所定の下限スピードと所定の上限スピードとの間で複数段階に変動させながら部品の撮像を指示するので、初期値とは、例えば、所定の下限スピードである。所定の下限スピードは、測定カメラ53で設定可能な最も遅いシャッタスピードでもあってもよいし、最も遅いシャッタスピードでなくても、それより速いシャッタスピードであってもよい。なお、S10に処理が進む前、つまり、シャッタスピード選択処理が実行される前、あるいはS10の処理後直ぐ、CPUは、測定対象である電子部品80を吸着ノズル34により吸着させ、装着ヘッド33を各軸方向に位置決めすることにより、測定カメラ53の上方の測定位置に電子部品80を移動させておく。
【0037】
次にCPUは、設定されたシャッタスピードで測定カメラ53に撮像を指示する(S12)。この指示に応じて、測定カメラ53が設定されたシャッタスピードで電子部品80の検査面を撮像し、生成した撮像データを、CPUは測定カメラ53から取得し、二値化後、上記記憶装置66(図2参照)に保存する(S14)。測定カメラ53から取得した撮像データは、各画素毎に、例えば0~255のうちのいずれかの整数値、つまり輝度値を有する。二値化とは、所定の閾値を超える輝度値の画素を“1”とし、所定の閾値以下の輝度値の画素を“0”とする処理である。二値化後、“0”となった画素は欠落した画素と判断し、“1”となった画素は欠落していない画素と判断する。これにより、欠落した画素の判断が二値化前の撮像データに対する判断より容易になる。なお、S14では、二値化対象の撮像データは、測定カメラ53から直接取得した撮像データとしているが、実際には、測定カメラ53から直接取得した撮像データに基づいて可視化した後の立体形状を示すデータである。このように記載したのは、説明を複雑化させないためである。
【0038】
次にCPUは、測定カメラ53による撮像を終了するか否かを判断する(S16)。この判断は、シャッタスピードを上記所定の上限スピードまで変更したか否かを判断することにより行う。この判断において、シャッタスピードを所定の上限スピードまで変更していない場合、つまり、測定カメラ53による撮像を終了しない場合(S16:NO)、CPUは、現在のシャッタスピードを所定の刻み幅だけ増大させた後のシャッタスピードに変更した(S18)後、処理を上記S12に戻す。以降、CPUは、シャッタスピードを順次変更しながら(S18)、測定カメラ53に撮像を指示し(S12)、これに応じて測定カメラ53から取得した撮像データを二値化した後、記憶装置66に保存する(S14)処理を、シャッタスピードが所定の上限スピードに至るまで続ける。そして、シャッタスピードが所定の上限スピードに至ると、CPUは、測定カメラ53による撮像を終了すると判断し(S16:YES)、処理をS20に進める。なお、上記S18で増大させる所定の刻み幅は、上記所定の下限スピードから上記所定の上限スピードまで一定であってもよいし、途中で何段階かに分けて変動させるようにしてもよい。
【0039】
S20では、CPUは、記憶装置66から上記S14で保存した二値化後の複数の撮像データのうちの1つの撮像データを読み出す。続くS22では、CPUは、読み出した撮像データの特徴部の画像と、理想とする撮像データの特徴部の画像とを比較する。ここで、比較対象の理想とする撮像データは、理想とする撮像データを二値化したものであることは言うまでもない。そして、特徴部とは、本実施形態では、上記検査面のうちの高さ測定を行いたい部分であり、具体的には、各リード82の下面82aである。測定対象の電子部品80とその検査面が確定し、測定カメラ53の上方の電子部品80の測定位置が確定すれば、測定カメラ53から取得した撮像データにおける特徴部の座標や大きさなどの特徴部を特定する情報は確定する。したがって、撮像データにおける特徴部を特定する情報を予め記憶装置66に記憶しておけば、S22では、CPUは、読み出した情報に基づいて撮像データの特徴部を特定し、読み出した撮像データのうちの特定された特徴部に含まれる画像と、理想とする撮像データのうちの特定された特徴部に含まれる画像とを容易に比較することができる。
【0040】
次にCPUは、読み出した撮像データのうちの特定された特徴部に含まれる画像が理想とする撮像データのうちの特定された特徴部に含まれる画像に対して欠落する割合を算出する(S24)。今、処理対象の撮像データが図5(a)に示す撮像データとする。ただし、図5(a)には全撮像データのうちの一部の領域A1に含まれる撮像データのみが示されている。図5(a)において、特定された特徴部が領域82a11~82a14であるとする。図5(a)では、撮像データに含まれる濃い部分、つまり画像が欠落していない部分が二値化後の“1”に相当し、薄い部分、つまり画像が欠落している部分が二値化後の“0”に相当するので、各領域82a11~82a14における画像の欠落割合は、20%~50%の間の値として算出される。なお、特定された特徴部は、領域82a11~82a14のみではなく、全リード82の各下面82aに相当する全領域に亘るので、欠落割合は、全領域のそれぞれについて算出される。このように特定された特徴部が撮像データ内の複数の領域に亘る場合、欠落割合は領域毎に算出されるので、複数の欠落割合が算出される。複数の欠落割合が算出された場合、本実施形態では、CPUはさらに、算出された複数の欠落割合の平均値を算出する。
【0041】
次にCPUは、算出した欠落割合を記憶装置66に保存する(S26)。このとき、算出した欠落割合が複数ある場合には、上述のようにその平均値が算出されるが、S26では、CPUは、算出された欠落割合の平均値を保存する。また、欠落割合と対応付けて、その欠落割合の算出基となる撮像データのシャッタスピードも一緒に保存する。
【0042】
次にCPUは、保存した全ての撮像データについて欠落割合を算出したか否かを判断する(S28)。この判断において、欠落割合を算出していない撮像データがまだ記憶装置66に残っている場合(S28:NO)、CPUは、読み出し対象の撮像データを次の撮像データに変更した(S30)後、処理を上記S20に戻す。以降、CPUは、読み出し対象の撮像データを順次変更しながら(S30)、撮像データを読み出し(S20)、読み出した撮像データに基づいて特定された特徴部の欠落割合を算出し(S22,S24)、算出した欠落割合を記憶装置66に保存する(S26)処理を、記憶装置66に保存した撮像データがなくなるまで続ける。そして、欠落割合を算出していない撮像データが記憶装置66内になくなると(S28:YES)、CPUは、処理を図7のS40に進める。
【0043】
S40では、CPUは、記憶装置66に保存された複数の欠落割合のうち、最小の欠落割合を検出する。図5(b)は、上述のように図5(a)とは異なるシャッタスピードで撮像された撮像データを示している。図5(b)の各領域82a21~82a24における画像の欠落割合は、数%~10%の間の値として算出されるので、撮像データのうちの領域82a21~82a24以外の特定された特徴部の画像の欠落割合も同様の傾向があるとすると、撮像データのうちの特定された特徴部の画像の欠落割合(の平均値)は、図5(a)の撮像データについての欠落割合(の平均値)より小さい。このように、撮像データにより特定された特徴部の画像の欠落割合は変動するので、最小の欠落割合を検出することは可能である。
【0044】
次にCPUは、検出した最小の欠落割合が所定値(「所定の第2閾値」の一例)以上であるか否かを判断する(S42)。所定値とは、画像解析部62が撮像データに基づいて特定された特徴部の画像解析を行うために許容できる特徴部の画像の欠落割合の最大値である。したがって、S42では、CPUは、特徴部の画像の欠落割合が最小であっても、その特徴部の画像解析を行うための許容範囲を超えているか否かを判断している。S42の判断において、検出した最小の欠落割合が所定値未満である場合(S42:NO)、つまり特徴部の画像の欠落割合の最小値がその特徴部の画像解析を行うための許容範囲内である場合、CPUは、最小の欠落割合が算出された撮像データを撮像したときのシャッタスピードを選択する(S44)。上述のように記憶装置66には、算出した欠落割合に対応付けてシャッタスピードも保存されているので、S44では、CPUは、検出した最小の欠落割合に対応付けられたシャッタスピードを読み出して選択する。選択されたシャッタスピードは、部品の実装を開始したときの測定カメラ53のシャッタスピードとして、記憶装置66に記憶される。S44の処理後、CPUは、シャッタスピード選択処理を終了する。
【0045】
一方、S42の判断において、検出した最小の欠落割合が所定値以上である場合(S42:YES)、つまり特徴部の画像の欠落割合の最小値がその特徴部の画像解析を行うための許容範囲を超えている場合、CPUは、そのことをオペレータに警告するために報知する(S46)。警告の報知は、例えば、認識装置50に含まれる上記ディスプレイに警告文を表示させることで行う。この他に、音を発生させることで警告するようにしてもよい。また、表示と音で同時に警告するようにしてもよい。
【0046】
次にCPUは、オペレータに対して条件を変更して再度上記S12からの処理を実施するか否かを問い合わせる(S48)。問い合わせる方法は、上記S46の警告の報知と同様に、ディスプレイに表示する方法、音声を発音する方法、及び表示と発音の両方を行う方法などが考えられる。S48の問い合わせに対して、オペレータが条件を変更しての再度の実施を拒否した場合(S48:NO)、CPUは、シャッタスピード選択処理を終了する。一方、オペレータが条件を変更しての再度の実施を承諾した場合(S48:YES)、CPUは、オペレータの指示に応じて条件を変更した(S50)後、処理を上記S12(図6)に戻す。条件の変更は、具体的には、上記所定の下限スピード及び上記所定の上限スピードを他の所定値に変更することや、上記S18で増大させる所定の刻み幅を他の所定値に変更すること、照明強度や照明角度などの照明条件を変更することなどが考えられる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の認識装置50は、回路基板70に装着される電子部品80の各リード82の下面82aの状態を認識する認識装置である。認識装置50は、各リード82の下面82aを含む電子部品80に光を照射するプロジェクタ51,52と、プロジェクタ51,52が照射した光を受けた電子部品80を撮像する測定カメラ53と、測定カメラ53が撮像し、測定カメラ53から取得した撮像データを画像解析し、電子部品80の各リード82の下面82aの状態を認識する画像解析部62と、を備えている。そして、画像解析部62は、測定カメラ53に対して、そのシャッタスピードを所定の下限スピードと所定の上限スピードとの間で複数段階に変動させながら電子部品80の撮像を指示する指示処理(S10~S18)と、指示処理に応じて測定カメラ53から取得した複数の撮像データにそれぞれ含まれる各リード82の下面82aの画像と、理想とする撮像データに含まれる各リード82の下面82aの理想画像とを比較し、各リード82の下面82aの画像が理想画像に対して欠落する欠落割合を複数の撮像データのそれぞれについて算出する算出処理(S20~S30)と、算出処理により算出された複数の欠落割合のうち、最小の欠落割合である撮像データを検出する検出処理(S40)と、検出処理により検出された撮像データの撮像に用いたシャッタスピードを選択する選択処理(S44)と、を実行する。
【0048】
このように、本実施形態の認識装置50では、作成された撮像データの画像が欠落する割合が最小となるシャッタスピードを選択することが可能となる。また、シャッタスピードの選択は自動的になされるので、オペレータ自身がシャッタスピードを選択するという手間を省くことができる。オペレータは、これによって空いた時間を他事に使うことができるので、時間をさらに有効活用することができる。さらに、シャッタスピードが自動的に選択されることにより、シャッタスピードの選択がオペレータ毎にばらつかなくなり、安定する。
【0049】
ちなみに、本実施形態において、回路基板70は、「基板」の一例である。プロジェクタ51,52は、「光源」の一例である。測定カメラ53は、「撮像装置」の一例である。電子部品80は、「部品」の一例である。各リード82の下面82aは、「所定の特徴部」の一例である。画像解析部62は、「画像解析装置」の一例である。
【0050】
なお、本実施形態では、上記S40にて最小の欠落割合を検出し、上記S44にて最小の欠落割合が算出された撮像データを撮像したときのシャッタスピードを選択するようにしているが、これに限られない。許容可能な欠落割合に基づいて、欠落割合の閾値(「所定の第1閾値」の一例)を予め定めておき、欠落割合が所定の閾値以下の撮像データを撮像したときのシャッタスピードを選択してもよい。このとき、ある撮像データにおいて所定の閾値以下であることが算出されれば、その撮像データを撮像したときのシャッタスピードを選択し、残りの撮像データに対する検出処理を中止してもよい。
【0051】
また、本実施形態では、所定の下限スピードと所定の上限スピードとの間でシャッタスピードを複数段階に変動させながら部品の撮像を指示し、全ての段階の撮像を終了した後に、検出処理を実行したが、これに限られない。あるシャッタスピードで撮像した後、その撮像データに対して上記S22~S26の処理をした後に、次のシャッタスピードでの撮像を指示してもよい。このとき、あるシャッタスピードで撮像した後、その撮像データの欠落割合を算出し、その欠落割合が所定の閾値以下であることが検出されれば、その撮像データを撮像したときのシャッタスピードを選択し、残りのシャッタスピードの段階での撮像を中止し、その欠落割合が所定の閾値より大きいことが検出されれば、次の段階のシャッタスピードでの撮像を指示してもよい。
【0052】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0053】
(1)上記実施形態では、認識装置50は部品実装機1に含まれるものとしたが、これに限らず、認識装置50のうち、少なくとも画像解析部62は、部品実装機1の外部に設けるようにしてもよい。具体的には、例えば、部品実装機1にPCを接続し、画像解析部62が実行する上記シャッタスピード選択処理(図6及び図7)をPCにより実行することが考えられる。
【0054】
(2)上記実施形態では、認識装置50が認識の対象とする部品は、部品実装機1が回路基板70に実際に実装する電子部品80であり、認識装置50が画像認識の基礎とする撮像データは、電子部品80を実装する過程で測定カメラ53により撮像されたものである。しかし、これに限らず、実装ラインに組み込まれていない外部の部品データ作成装置に設けられた撮像装置を用いて、部品データ作成装置に設けられたノズルに吸着された部品の撮像データを取得し、部品データ作成装置内に設けられた認識装置(又は部品データ作成装置に接続された他の装置)が画像解析するようにしてもよい。
【0055】
(3)上記実施形態では、画像の欠落割合を算出する特徴部として、電子部品80が備えている各リード82の下面82aを採用したが、これに限らないことは言うまでもない。
【0056】
(4)上記実施形態では、認識装置50が画像認識に用いる画像は、位相シフト法により可視化した3次元画像であるが、3次元画像の可視化に用いる方法は、位相シフト法に限らない。また、3次元画像に限らず、2次元画像、つまり、測定カメラ53から取得された撮像データそのものであってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…部品実装機、33…装着ヘッド、34…吸着ノズル、50…認識装置、51,52…プロジェクタ、53…測定カメラ、60…制御装置、61…実装制御部、62…画像解析部、66…記憶装置、67…入出力インターフェース、68…モータ制御回路、69…撮像制御回路、70…回路基板、80…電子部品、82…リード、82a…下面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7