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特許7562861レーダーセンサおよび屈折率分布型レンズを含む車両アセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】レーダーセンサおよび屈折率分布型レンズを含む車両アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/32 20060101AFI20240930BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20240930BHJP
   H01Q 15/08 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
H01Q1/32 Z
G01S13/931
H01Q15/08
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023533383
(86)(22)【出願日】2021-11-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2021082048
(87)【国際公開番号】W WO2022117349
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】2012491
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】391011607
【氏名又は名称】ヴァレオ ビジョン
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】ピエール、ルノー
(72)【発明者】
【氏名】ピエール、アルボー
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0076581(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/32
G01S 13/931
H01Q 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(2)向けの車両アセンブリ(1)であって、
- 視野(FOV)を有し、前記視野(FOV)の中へ波長(λ)範囲(Δ1)のレーダー波(R1)を送信するよう構成されているレーダーセンサ(10)と、
- 前記レーダーセンサ(10)へ向けて配置されるレンズ(11)と、
を含み、
- 前記レンズ(11)は屈折率分布型レンズであって、下層(12)とサブ波長構造の誘電体素子を形成するパターン(130)の層(13)とを含み、前記パターン(130)の繰り返し周期(Λ1、Λ2)は前記範囲(Δ1)内の前記波長(λ)の一つの4分の1未満であることを特徴とし、また前記パターン(130)の前記層(13)は前記層(13)内の前記パターン(130)の局所密度(τ)に応じて算出される局所的屈折率(n1)を有することを特徴とする、車両アセンブリ(1)。
【請求項2】
前記レーダーセンサ(10)は、ミリ波、極超短波、またはマイクロ波のレーダーセンサである、請求項1に記載の車両アセンブリ(1)。
【請求項3】
前記レーダー波(R1)は、100MHz~5GHzから成る周波数帯域で送信される、請求項2に記載の車両アセンブリ(1)。
【請求項4】
前記パターン(130)の前記繰り返し周期(Λ1、Λ2)は、前記波長(λ)の10分の1未満である、請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の車両アセンブリ(1)。
【請求項5】
前記レンズ(11)は、それぞれが1つの前記パターン(130)を含む単位セル(132)から成り、前記レンズ(11)の所与の点における前記層(13)内の前記パターン(130)の前記局所密度(τ)は、用いられる前記波長範囲(Δ1)内の前記波長(λ)の一つのオーダーの所与の値よりも前記レンズ(11)上の問題の点から小さい距離に配置される前記単位セル(132)のそれぞれに対して得られる空間占有率(τr132)のすべての加重平均と等しい、請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の車両アセンブリ(1)。
【請求項6】
前記単位セル(132)のそれぞれの前記空間占有率(τr132)は、前記パターン(130)の前記繰り返し周期(Λ1、Λ2)に前記単位セル(132)の前記パターン(130)の最大高さ(hmax)を乗じたもので前記単位セル(132)内の材料の体積(V132)を割ったものと等しい、請求項5に記載の車両アセンブリ(1)。
【請求項7】
前記局所密度(τ)は、前記パターン(130)の長さ(a2)を幅(a1)に乗じたものを前記パターン(130)の前記繰り返し周期(Λ1、Λ2)で割ったものと等しい、請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の車両アセンブリ(1)。
【請求項8】
前記局所的屈折率(n1)は、前記局所密度(τ)と、前記パターン(130)の誘電率(εmax)と、空気の誘電率(εmin)とにより決まる、2つの有効屈折率(neffTE、neffTM)からなる、請求項1から7のうちのいずれか一項に記載の車両アセンブリ(1)。
【請求項9】
前記パターン(130)は、円筒プリズム、直方体プリズム、ピラミッド型プリズム、立方体プリズム、または複数のトーラスから成る部分である、請求項1から8のうちのいずれか一項に記載の車両アセンブリ(1)。
【請求項10】
前記パターン(130)は0.4mm未満の寸法(a1、a2)を有する、請求項1から9のうちのいずれか一項に記載の車両アセンブリ(1)。
【請求項11】
前記レンズ(11)は、前記パターン(130)の高さ(h1)と前記下層(12)の厚さ(e2)により形成される全厚(e0)を有し、前記全厚(e0)は、前記パターン(130)の前記層(13)と前記下層(12)の等価屈折率(neq)の2倍に前記レーダー波(R1)の入射角(θ)に対応する屈折角(r)のコサインを乗じたもので前記波長(λ)を割ったもののm倍(mは整数)と等しくなるような寸法とされる、請求項1から10のうちのいずれか一項に記載の車両アセンブリ(1)。
【請求項12】
前記入射角(θ)がゼロと等しい場合は、前記全厚(e0)は、前記等価屈折率(neq)の2倍で前記波長(λ)を割ったものと等しい、請求項11に記載の車両アセンブリ(1)。
【請求項13】
前記全厚(e0)はarctan(d1/(2e4))と等しい入射角(θ)を用いて規定され、e4は前記レーダーセンサ(10)と前レンズ(11)の間の距離であり、d1は前記レーダーセンサ(10)の送信アンテナ(100)と受信アンテナ(101)の間の距離である、請求項11または12に記載の車両アセンブリ(1)。
【請求項14】
レーダー波(R1)を送信するよう構成されている車両(2)のレーダーセンサ(10)の視野(FOV)を適合させるよう構成され、前記レーダーセンサ(10)へ向けて配置されるレンズ(11)であって、
- 前記レンズ(11)は屈折率分布型レンズであって、下層(12)とサブ波長構造の誘電体素子を形成するパターン(130)の層(13)とを含み、前記パターン(130)の繰り返し周期(Λ1、Λ2)は前記レーダー波(R1)が送信される波長(λ)範囲(Δ1)内の前記波長(λ)の一つの4分の1未満であり、前記パターン(130)の前記層(13)は前記層(13)内の前記パターン(130)の局所密度(τ)に応じて算出される局所的屈折率(n1)を有することを特徴とする、レンズ(11)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両アセンブリに関する。本発明は、特に自動車に対して適用可能であるが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
当業者に既知の車両アセンブリは、
- 視野を有し、前記視野の中へ波長範囲内のレーダー波を送信するよう構成されているレーダーセンサと、
- 前記レーダーセンサへ向けて配置されるレンズと、
を含む。
【0003】
この車両アセンブリは、車両の外の環境にある物体のレーダーセンサによる検出に関する要求を満たすために、車両の前部または後部に設置される。レンズは、レーダーセンサの視野を適合させるために湾曲している。具体的には、レンズはレーダーセンサの視野を拡大または縮小することを可能とする。たとえば、レンズは、レーダーセンサの視野を小さくしてレーダーセンサの範囲を増加させる、またはレーダーセンサの視野を大きくして、車両の両側にある物体のより広い範囲での検出を実現する。このようにして、製造会社の要求に応じて、レンズはレーダーセンサの視野を調整することを可能とする。
【0004】
先行技術の一つの欠点は、そのようなカーブレンズは場所を取ってしまい、重く、高価であるということである。加えて、レンズの材料はレーダーセンサにより送信されるレーダー波をいくらか吸収してしまい、これによりレーダーセンサの検出性能が低下する。それゆえ、このためにレーダーセンサの検出範囲が小さくなる。その結果、物体が車両の外の環境に存在していたとしても、物体の誤検出や検出漏れが発生しうる。
【発明の概要】
【0005】
この文脈では、本発明は、前述した欠点の解決を可能とする車両アセンブリを提供することを目的とする。
【0006】
この目的のため、本発明は車両向けの車両アセンブリを提供し、前記車両アセンブリは、
- 視野を有し、前記視野の中へ波長範囲内のレーダー波を送信するよう構成されているレーダーセンサと、
- 前記レーダーセンサへ向けて配置されるレンズと、
を含み、
- 前記レンズは屈折率分布型レンズであって、下層とサブ波長構造の誘電体素子を形成するパターンの層とを含み、パターンの繰り返し周期は前記範囲内の波長の4分の1未満であることを特徴とし、またパターンの層は前記層内の前記パターンの局所密度に応じて算出される局所的屈折率を有することを特徴とする。
【0007】
非限定的な実施形態によれば、前記車両アセンブリはさらに、以下の中から選択される1つまたは複数の更なるパターンを、単独または任意の技術的に可能な組み合わせで含みうる。
【0008】
非限定的な一実施形態によれば、前記レーダーセンサはミリ波、極超短波、またはマイクロ波を用いるレーダーセンサである。
【0009】
非限定的な一実施形態によれば、前記レーダー波は100MHz~5GHzから成る周波数帯域で送信される。
【0010】
非限定的な一実施形態によれば、前記パターンの繰り返し周期は、前記波長の10分の1未満である。
【0011】
非限定的な一実施形態によれば、レンズは、それぞれが1つのパターンを含む単位セルから成り、レンズの所与の点における前記層内の前記パターンの局所密度は、用いられる波長範囲内の波長の一つのオーダーの所与の値よりもレンズ上の問題の点から小さい距離に配置される各単位セルに対して得られる空間占有率のすべての加重平均と等しい。
【0012】
非限定的な一実施形態によれば、各単位セルの空間占有率は、前記パターンの繰り返し周期に前記単位セルのパターンの最大高さを乗じたもので前記単位セル内の材料の体積を割ったものと等しい。
【0013】
非限定的な一実施形態によれば、局所密度は、パターンの長さを幅に乗じたものを前記パターンの繰り返し周期で割ったものと等しい。これは、立方体状または直方体状のパターンに対して当てはまる。
【0014】
非限定的な一実施形態によれば、局所的屈折率は、前記局所密度と、パターンの誘電率と、空気の誘電率とにより決まる、2つの有効屈折率から成る。
【0015】
非限定的な一実施形態によれば、前記パターンは円筒プリズム、直方体プリズム、ピラミッド型プリズム、立方体プリズム、または複数のトーラスから成る部分である。
【0016】
非限定的な一実施形態によれば、パターンは0.4mm未満の寸法を有する。
【0017】
非限定的な一実施形態によれば、前記レンズは前記パターンの高さと前記下層の厚さにより形成される全厚を有し、前記全厚は、パターンの層と下層の等価屈折率の2倍にレーダー波の入射角に対応する屈折角のコサインを乗じたもので前記波長を割ったもののm倍(mは整数)と等しくなるような寸法とされる。
【0018】
非限定的な一実施形態によれば、入射角がゼロと等しい場合は、全厚は、等価屈折率の2倍で前記波長を割ったものと等しい。
【0019】
非限定的な一実施形態によれば、全厚はarctan(d1/(2e4))と等しい入射角を用いて規定され、e4は前記レーダーセンサと前記レンズの間の距離であり、d1は前記レーダーセンサの送信アンテナと受信アンテナの間の距離である。
【0020】
レンズがさらに提供され、前記レンズはレーダー波を送信するよう構成されている車両のレーダーセンサの視野を適合させるよう構成されて、前記レーダーセンサへ向けて配置され、
- 前記レンズは屈折率分布型レンズであって、下層とサブ波長構造の誘電体素子を形成するパターンの層とを含み、パターンの繰り返し周期は前記レーダー波が送信される波長範囲内の一つの波長の4分の1未満であり、局所的屈折率を有するパターンの層は前記層内の前記パターンの局所密度に応じて算出されることを特徴とする。
【0021】
本発明およびその様々な用途は、以下の明細書を読み、明細書に添付される図を観察することでより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の非限定的な一実施形態に係る車両アセンブリの概略図であり、前記車両アセンブリはレーダーセンサとレンズとを含む。
図2】非限定的な一実施形態に係る図1の車両アセンブリのレーダーセンサにより送信され、図1の車両アセンブリのレンズにより部分的に反射されるレーダー波の模式図である。
図3】非限定的な一実施形態に係る図1の車両アセンブリのレンズの模式図であり、前記レンズは下層とパターンの層とを含む。
図4】本発明の非限定的な一実施形態に係る図3のレンズのパターンの層のパターンの局所的領域の斜視図である。
【0023】
特に指定のない限り、2つ以上の図で現れる、構造または機能において同一の要素は、それらが現れるすべての図において同じ参照符号により指定されている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
車両2向けの本発明に係る車両アセンブリ1について、図1図4を参照して説明する。車両アセンブリ1は車両システム1とも呼ばれる。非限定的な一実施形態では、車両2は自動車である。自動車が意味するのは、任意の種類の電動車両である。この実施形態は、明細書の残りの部分を通して非限定的な例であるとみなされる。したがって、明細書の残りの部分において車両2は自動車2とも呼ばれる。非限定的な一実施形態では、車両アセンブリ1は、自動車2のグリルまたは自動車2の後部に位置する車体部分に組み込まれたロゴの後に設置される。非限定的な別の実施形態では、車両アセンブリ1は照明装置または信号装置の中に設置される。
【0025】
図1に示されるように、車両配列1とも呼ばれる車両アセンブリ1は、
- 視野FOVを有し、前記視野FOVの中へ一次レーダー波R1とも呼ばれるレーダー波R1を送信するよう構成されているレーダーセンサ10と、
- 前記レーダーセンサ10へ向けて配置されるレンズ11と、
を含む。
【0026】
これらの要素について以下で説明する。
【0027】
レーダーセンサ10について以下で説明する。図1に示されるように、レーダーセンサ10はレンズ11へ向けて配置される。非限定的な一実施形態では、レーダーセンサ10はミリ波(24GHz~300GHzの波)、極超短波(300MHz~81GHzの波)、またはマイクロ波(1GHz~300GHzの波)を用いるレーダーセンサである。非限定的な実施形態の一つの変形では、レーダーセンサ10は76GHz~81GHzから成るレーダー周波数で動作する。レーダー波R1は波長λの範囲Δ1で送信される。非限定的な一実施形態では、レーダー波R1は100MHz~5GHzから成る周波数帯域で送信される。したがって、非限定的な一例では、センサが77GHzのレーダー周波数、すなわち3.95mmの波長λで1GHzの周波数帯域で動作する場合、レーダーセンサ10は76.5GHzから77.5GHzの周波数帯域で動作する。それゆえ、レーダー波R1は76.5GHzから77.5GHzの周波数範囲、すなわち3.87mmから3.92mmの波長λの範囲Δ1で送信される。したがって、非限定的な他の一例では、レーダーセンサ10が78.5GHzのレーダー周波数で5GHzの周波数帯域で動作する場合、レーダーセンサ10は76GHzから81GHzの周波数帯域で動作する。それゆえ、レーダー波R1は76GHzから81GHzの周波数範囲、すなわち3.701mmから3.945mmの波長λの範囲Δ1で送信される。
【0028】
図2に示されるように、送信されたレーダー波R1は入射角θでレンズ11にぶつかる。非限定的な一実施形態では、入射角θは0°~±30°から成る。したがって、視野FOVは-30°~+30°の間で変化する。視野FOVの中心は、車両軸とも呼ばれる車両の前後軸に対して0°の角度にある。非限定的な別の実施形態では、視野FOVは-90°~+45°の間で変化する。視野FOVの中心は車両軸に対して-45°の角度にあり、レンズ11へのレーダー波R1の入射角θは0°に近いままである(車両アセンブリ1は車両軸に対して約45°に位置する)。
【0029】
レーダーセンサ10は、レーダー波R1を送信することで自動車2の外の環境を走査するよう構成される。したがって、図1に示されるように、レーダーセンサ10は、
- 一次レーダー波R1とも呼ばれるレーダー波R1を送信するよう構成されている少なくとも1つの送信アンテナ100と、
- 二次レーダー波R2または反射レーダー波R2とも呼ばれるレーダー波R2を受信するよう構成されている少なくとも2つの受信アンテナ101と、
を含む。
【0030】
レーダーセンサ10は、一次レーダー波R1を生成するよう構成されている少なくとも1つの送信機103と、代わりに受信される二次レーダー波R2を処理するよう構成されている少なくとも1つの受信機104とをさらに含む。非限定的な一実施形態では、一つの電子部品を送信機能と受信機能の両方に用いることができる。したがって、1つまたは複数の送受信機が存在する。前記送信機103は、後で送信アンテナ100により送信される一次レーダー波R1を生成し、このレーダー波は、自動車2の外の環境にある物体3(ここでは、図示されている非限定的な例における歩行者)に遭遇すると、前記物体3で反射する。このように反射されたレーダー波は、レーダーセンサ10へと送り返される波である。これらの波は、受信アンテナ101により受信される二次レーダー波R2である。これらの波は、レーダーセンサ10の方向に再送信されるレーダー波である。非限定的な一実施形態では、一次レーダー波R1および二次レーダー波R2は無線周波数波である。非限定的な一実施形態では、レーダーセンサ10は複数の送信機103および複数の受信機104を含む。
【0031】
アンテナ100とも呼ばれる送信アンテナ100は、送信機103により生成される一次レーダー波R1を送信するよう構成される。アンテナ101とも呼ばれる受信アンテナ101は、二次レーダー波R2を受信して、後でこの二次レーダー波R2を処理する受信機104へこの二次レーダー波R2を伝達するよう構成される。自動車2の外の環境に位置する物体3の自動車2に対する角度位置の推測を可能とする位相シフトが受信アンテナ101により受信される複数の二次レーダー波R2の間に存在する。非限定的な実施形態では、アンテナ100、101はパッチアンテナまたはスロットアンテナである。
【0032】
非限定的な一実施形態では、アンテナ100、101、送信機103、および受信機104はプリント基板105上に配置される。非限定的な一実施形態では、プリント基板は、プリント基板アセンブリ、すなわちPCBAとしても知られる硬いプリント基板、またはフレックスボードしても知られるフレキシブルプリント基板である。
【0033】
レーダーセンサ10は、送信機103および受信機104を制御するよう構成されている電子制御装置106をさらに含む。そのようなレーダーセンサは当業者には既知であるため、本明細書でより詳細に説明されることはない。
【0034】
レンズ11について以下で説明する。レンズ11は屈折率分布型レンズである。つまり、レンズ11は平坦であり、波長範囲Δ1内の波長λの程度の等価屈折率neqを有する。(層13の)屈折率n1は可変であり、(下層12の)屈折率n2は一定であるために等価屈折率neqは前記波長λの程度で可変する。
【0035】
レンズ11により、(以下で説明される)パターン130の密度および大きさを利用して、それらに応じて等価屈折率neqを可変させることで車両アセンブリ1の視野FVを適合させることができる。レーダーセンサ10の視野FOVとは異なる視野FVを有する車両アセンブリ1がこうして得られる。こうして、具体的には、製造会社の要求に応じて、長距離(縮小された視野FOVの)レーダーセンサ10を用いて広い視野FVを得ることができる、または短距離(大きな視野FOVの)レーダーセンサ10を用いて縮小された視野FVを得ることができる。レンズ11は、レーダーセンサ10と自動車2の外装の間に設置される。
【0036】
図2および図3に示されるように、レンズ11は下層12とパターン130の層13とを含む。下層12は、パターン130の層13を保持するよう構成される。下層12は屈折率n2を有する。非限定的な実施形態では、下層12はプラスチック、ガラス、またはセラミックで作られる。非限定的な一例では、プラスチックはポリカーボネートである。パターン130の層13は、サブ波長構造の誘電体素子を形成する。パターン130の層13は、パターン130およびその間隔により決まる屈折率n1を有し、この屈折率は局所的屈折率n1とも呼ばれる。非限定的な実施形態では、誘電体素子はプラスチック、ガラス、またはセラミックで作られる。非限定的な一例では、プラスチックはポリカーボネートである。誘電材料は非導電であり、それゆえ、導体とは異なりレーダー波R1が通過できることが思い出されるであろう。
【0037】
構造化されている、が意味するのは、層13は構造物とも呼ばれるパターン130を含むということである。サブ波長が意味するのは、構造化された誘電体は前記範囲Δ1内の波長λよりも小さな規模であるということである。層13のパターン130はサブ波長であるという事実により、層13を可変屈折率の層としてモデル化することが可能となる。そうではない場合は、層13は回折光学素子であるとみなさなければならなくなるであろう。
【0038】
層13のパターン130の局所的領域Z1の図である図4に示されるように、パターン130は、a1(幅)、a2(幅)、h1(高さ)の寸法を有する。非限定的な実施形態では、パターン130は、円筒プリズム(円柱とも呼ばれる)、直方体プリズム(矩形柱とも呼ばれる)、ピラミッド型プリズム(角錐柱とも呼ばれる)、立方体プリズム(四角柱とも呼ばれる)(後者の場合が図4に示されている)、またはさらに複数のトーラスから成る部分である。また、パターン130は任意の他の平行六面体を有してもよい。非限定的な一実施形態では、パターン130は0.4mm未満の寸法、a1およびa2を有する。この値は、前記範囲Δ1内の波長λと比べて非常に小さい。たとえば、前記範囲Δ1内の波長λは、77GHzの周波数に対して4mmであり、この場合はa1およびa2の値はλ/10とほぼ等しい。
【0039】
図4に示されるように、レンズ11は、それぞれが1つのパターン130と前記パターン130を取り囲む空気で満たされた部分を含む、単位セル132から成る。非限定的な一実施形態の変形(図示せず)では、パターン130は、層13と下層12の間の境界面に近接している(隣接している)。この非限定的な変形は、形状がピラミッド状またはトーラスから成る部分であるパターン130に対して当てはまる。単位セル132は、構造物130の繰り返し周期Λにより規定され、この周期はパターン130の繰り返し周期Λ、またはさらに格子周期Λとも呼ばれ、Λ=Λ1×Λ2である。Λ1は格子の(図4に示される)第1方向Axでの周期であり、Λ2は格子の(図4に示される)第2方向Ayでの周期である。AxおよびAyは、互いに並行ではない任意の方向である。非限定的な一実施形態では、第2方向Ayは第1方向Axに対して垂直である。非限定的な別の例では、単位セル132は、正方形、六角形、平行四辺形、または層13と下層12の間の境界面を周期的に並べられるようにする任意の他の形状である。第1方向Axおよび第2方向Ayに対して垂直な第3方向はAzと表され、これらの方向は参照フレームAx、Ay、Azを共に形成する。
【0040】
非限定的な第1実施形態では、層13を形成するサブ波長構造の誘電体素子は、周期的なサブ波長構造の誘電体素子である。パターン130の寸法a1およびa2は、レンズ1の屈折率を変化させるために層13に沿って変化するが、Λ1およびΛ2は一定のままである。つまり、パターン130は、(図4に示される)第1方向Axに互いに同一の間隔で離間しており、第1方向Axに対して垂直な(図4に示される)第2方向Ayに同一の間隔で離間している。つまり、層13は、(図4に示されるように)パターン130間に第1方向Axに同一の間隔131x、第2方向Ayに同一の間隔131yを有する、または換言すると、パターン130間には同じ比率の空気が存在する。
【0041】
図3に示される)非限定的な別の実施形態では、層13を形成するサブ波長構造の誘電体素子は周期的ではない。Λ1およびΛ2は、レンズ1の屈折率を変化させるために層13に沿って変化するが、パターン130の寸法a1およびa2は一定のままである。層13は、パターン130間に可変する間隔131xおよび131yを含む、または換言すると、パターン130間に異なる比率の空気が存在する。また、レンズ1の屈折率を変化させるために、Λ1およびΛ2ならびにパターン130の寸法a1およびa2を変化させることも可能である。
【0042】
サブ波長が意味するのは、格子周期Λ1およびΛ2は波長λの前記範囲Δ1の一つの波長λの4分の1未満であるということである。非限定的な一例では、問題の波長λは、前記範囲Δ1内の波長で最短のものである。したがって、Λ1<λ/4であり、Λ2<λ/4である。非限定的な一実施形態では、格子周期Λ1およびΛ2は、前記波長λの10分の1未満である。したがって、Λ1<λ/10であり、Λ2<λ/10である。この波長λは前記範囲Δ1から選択され、以下の式で用いられるものであることに留意されたい。
【0043】
図2に示されるように、レーダー波R1がレーダーセンサ10により送信されると、レーダー波R1は厚さe0を有するレンズ11まで進む。レーダー波R1は、屈折角rに対応する入射角θでレンズ11にぶつかる。レーダー波R1はレンズ11で反射されて2つの反射波を生成し、そのうちの一つのR11はレンズ11の下層12の外面で反射されたもので、他方はレンズ11の内側で反射されたものである。2つの反射波R11およびR12は、第一次と言われる反射波であり、レーダーセンサ10へ戻る。これらは寄生反射である。入射角θが0°とは異なる場合、対応する屈折角rも0°とは異なる。これら2つの反射波R11とR12の間の、位相シフトΔφとも呼ばれる位相差Δφは、以下と等しい。
【数1】
ここで、
- neqは下層12と層13の等価屈折率であり、
- δは2e0/cos(r)と等しい、材料を通る反射波R12の進路であり、
- nδ/λは材料を通る移動による位相シフトであり、
- πは下層12およびパターン130の層13内での内部反射による位相シフトであり、
- ((2e0tan(r)sin(θ))/λ)は反射波R11の反射点Pt1と反射波R12の出現点Pt2の間の距離による空気中での位相シフトである。
【0044】
sin(θ)=neq×sin(r)なので、以下が得られる。
【数2】
【0045】
すなわち、
【数3】
であり、これは屈折角rがいかなる値でも成り立つ。
【0046】
反射波R11およびR12がレーダーセンサ10の方向へ戻ると仮定すると、これらの反射波はレーダーセンサ10に混乱をもたらし、つまり信号対雑音比の減衰を引き起こす。こうした混乱を取り除くため、レンズ11の全厚e0は、相殺的干渉が作り出されるように反射波R11およびR12を逆位相とするように規定される。相殺的干渉を得るため、2つの反射波R11とR12の間の位相差Δφは2πを法とするπと等しくなければならない。したがって、ΔφはΔφ=(2m+1)*πである必要があり、mは自然数である。それゆえ、以下が得られる。
【数4】
【0047】
すなわち、
e0=mλ/(2neqcos(r))
である。
【0048】
方程式e0=mλ/(2neqcos(r))は角度rの値が何であっても適用されることに留意されたい。したがって、全厚e0は、パターン130の層13と下層12の等価屈折率neqの2倍にレーダー波R1の入射角θに対応する屈折角rのコサインを乗じたもので前記波長λを割ったもののm倍(mは整数)と等しくなるような寸法とされる。それゆえ、等価屈折率neqとレーダーセンサ10の動作周波数範囲内で用いられる波長λとに基づいて、全厚e0を前記反射波R11およびR12がお互いに打ち消し合うように決定することができる。非限定的な一実施形態では、用いられる波長は、許容される範囲Δ1の中心にある波長である。
【0049】
理想的な全厚e0は入射角が0と等しい場合に規定され、mは1と等しい。θ=0の場合、r=0である。その結果、m=1に対して、レンズ11の理想的な全厚e0は、それゆえ、e0=λ/(2neq)である。r=0°の場合はcos(r)=1である。
【0050】
非限定的な一実施形態では、レンズ11は、前記理想的な全厚e0の0.8倍~1.2倍から成る全厚e0を有する。この値の範囲は、レーダーセンサ10の取り得る放射角度を考慮している。入射角θの取り得る値はレーダーセンサ10の技術仕様において規定され、これは、入射角θの取り得る値はレーダーセンサ10の視野FOV内にあることを意味する。非限定的な一例では、入射角θは0°~±30°から成る。この0.8~1.2という値の範囲により、全厚e0の製造上の許容範囲を考慮することが可能となる。
【0051】
反射されたレーダー波R11およびR12がレーダーセンサ10の受信アンテナ101で最大の混乱をもたらす入射角θの値が存在することに留意されたい。この入射角θは、入射の臨界角θと呼ばれる。非限定的な一実施形態では、この値はθ=arctan(d1/(2e4))と等しく、図2に示されるように、d1は送信アンテナ100と受信アンテナ101の間の距離であり、e4はレーダーセンサ10とレンズ11の間の距離である。非限定的な例では、d1を計算する際に複数の受信アンテナ101の中点が考慮されることに留意されたい。
【0052】
したがって、局所的屈折率n1の値およびレーダーセンサ10の動作周波数範囲(所与の非限定的な例では76GHz~81GHz)内で用いられる波長λに応じて、第一次の反射波R11およびR12がお互いに打ち消し合うように、全厚e0が有している必要がある値を決定することができる。反射されたレーダー波R11およびR12は、限定された領域内でレンズ11により反射される。その結果、受信アンテナ101は受けるノイズが少なくなる。より良い信号対雑音比が得られる。
【0053】
レンズ11は、パターン130の高さh1および下層12の厚さe2により形成される全厚e0を有する。全厚e0を出すために、所与のrに対してe0=mλ/(2neqcos(r))となるように、パターン130の高さh1または厚さe2が調整される。非限定的な一実施形態では、所与のrは入射の臨界角θに対応する。
【0054】
等価屈折率neqは以下と等しい。
【数5】
ここで、n1はパターン130の層13の局所的屈折率であり、n2は下層12の屈折率であり、e1はパターン130高さh1であり、e2は下層12の厚さである。n1は、計算が実行される層13のパターン130の局所的領域Z1の位置により決まることに留意されたい。したがって、等価屈折率neqは、層13上の局所的領域Z1の位置により決まる。
【0055】
パターン130の層13は、層13内の前記パターン130の局所密度τに応じて算出される局所的屈折率n1を有することに留意されたい。レンズ11のある点における局所密度τは、用いられる波長範囲Δ1内の波長λのうちの一つのオーダーの所与の値よりも問題の点から小さい距離に配置される各セル132の空間占有率τr132の加重平均である。有効屈折率neffとも呼ばれる局所的屈折率n1は、入射波、すなわち一次レーダー波R1の偏光により決まる2つの有効屈折率neffTEおよびneffTMからなり、局所密度τ(空間占有率τとも呼ばれる)の関数として表現することができて、低屈折率n0の媒質、すなわちここでは空気とは対照的に高屈折率n1の媒質、すなわちここではパターン130により占有される材料の割合を表す。局所密度τは、用いられる波長範囲Δ1内の波長のうちの一つのオーダーの大きさを有する領域内で高屈折率n1の媒質により占有される材料の割合を表すことに留意されたい。したがって、
【数6】
【数7】
であり、ここで、項TEは、基板の面、すなわち下層12に対して垂直な入射波、すなわちここではレンズ11にぶつかるレーダー波R1の偏光を指し、TMは基板の面に平行な偏光を指し、εmaxは最も高い屈折率の媒質、すなわちパターン130の誘電率を指し、εminは最も低い屈折率の媒質、すなわちここでは空気の誘電率を指す。非限定的な別の実施形態では、空気は非常に低屈折率のプラスチックにより置き換えることができる。
【0056】
入射波、ここではレーダー波R1が構造化された誘電体素子、すなわちレンズ11に照射されていて、構造物130の繰り返し周期Λ1およびΛ2よりもずっと大きい(λ>>Λ1でλ>>Λ2)(前記範囲Δ1内の)波長λを有している場合、これは静的限界と呼ばれる伝搬形態の問題であることに留意されたい。
【0057】
図4に示されるもののような二次元構造物130では、二次元構造物の有効屈折率neff2Dは、一次元における2つの偏光TMおよびTEの有効屈折率の平方平均により、静的限界に対応する0の位まで近似しうる。単位セル132の空間占有率τr132は、この特定の例では以下のようになる。
【数8】
【数9】
【0058】
より一般的な例では、任意のΛ1およびΛ2を持つ任意の形状のパターン130に対して、矩形状底面の単位セル132では、単位セル132の空間占有率τr132は以下のようになる。
【数10】
これは、単位セル132内の材料の体積(V132)の空の境界容積(Λ1Λ2hmax)に対する比率に対応し、hmaxは単位セル132におけるパターン130の最大高さ(すなわち、パターン130内で最も高い高さ)である。そして、
【数11】
であり、ここで、(X132,Y132,0)は単位セル132の角C1の座標で、座標(X,Y,Z)の点が材料内に位置する場合はM(X,Y,Z)=1であり、座標(X,Y,Z)の点が材料内に位置しない場合、つまり座標(X,Y,Z)の点が空中に位置する場合はM(X,Y,Z)=0である。材料内に位置する場合はこの点は単位セル132のパターン130内に位置し、空中に位置する場合は、(非限定的な一例では、パターン130は実際には通気孔を含みうるため)この点はパターン130の内部に位置する可能性があることに留意されたい。図4の非限定的な例では、上述されたようにhmax=h1であることに留意されたい。
【0059】
材料の体積(V132)に対するこの式は、矩形状底面の単位セル132におけるパターン130の形状がどうであっても任意の前記単位セル132に対して当てはまることに留意されたい。したがって、Λ1およびΛ2は一つの単位セル132から別の単位セル132で変わることがあり、最大高さhmaxは一つのパターン130から別のパターン130で変わることがあるため、各単位セル132は異なる体積の材料を含むことがあって、それゆえ異なる空間占有率τ132を有することがある。レンズ11の所与の点におけるパターン130の層13全体の空間占有率τを求めるため、用いられる波長範囲Δ1内の波長λのうちの一つのオーダーの所与の値よりもレンズ11上の問題の点から小さい距離に配置される各セル132の空間占有率τr132の加重平均が算出される。この定義は、レンズ11のすべての点に対して当てはまる。非限定的な一実施形態では、点は座標Z=0の下層12の底面に属する。したがって、
【数12】
であり、ここで、nは、用いられる波長範囲Δ1内の波長λのうちの一つのオーダーの所与の値よりもレンズ11上の問題の点から小さい距離に配置される単位セル132のうちのいずれか一つを指定する。
【0060】
レンズ11を作るために、低コストの射出成形製造技術が製造方法として用いられることに留意されたい。特に、下層12およびパターン130の層13は、同じ材料で作って、同時に射出成型することで、製造コストが大きく削減される。また、3Dプリントとも呼ばれる付加製造技術を製造方法として用いることもできる。
【0061】
もちろん、本発明の説明は上述された実施形態、および上述された分野に限定されない。したがって、非限定的な別の実施形態では、レーダーセンサ10は2つ以上の送信アンテナ100と3つ以上の受信アンテナ101とを含む。
【0062】
したがって、記載された本発明は、特に以下の利点を有する:
- レーダーセンサ10の範囲を減少させないようにすることができる。
- カーブレンズを平面レンズで置き換えることで、車両アセンブリ1の容積を小さくすることができる。
- カーブレンズを平面レンズで置き換えることで、車両アセンブリ1のコストと重量を削減することができる。
- カーブレンズを平面レンズで置き換えることで、レーダーセンサ10により送信されるレーダー波R1の一部が吸収されるのを大幅に減少させることができる。
- カーブレンズと同様に、レーダーセンサ10の視野を製造会社の要求に適合させることができる。
- レーダーセンサ10の方向へ反射された第一次の反射波R11およびR12を抑制することができる。それゆえ、前記レーダーセンサ10の信号対雑音比はもはや低くない。
図1
図2
図3
図4