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特許7562862表面の質感を評価し、任意に監視又は制御するための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】表面の質感を評価し、任意に監視又は制御するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20240930BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240930BHJP
   G06T 7/60 20170101ALI20240930BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
G01N21/88 J
G06T7/00 610Z
G06T7/60 150Z
G01N21/17 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023533882
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2021082674
(87)【国際公開番号】W WO2022117401
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】20211136.5
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ツマイェフ,イェフゲン
(72)【発明者】
【氏名】ラカ,ファトミール
(72)【発明者】
【氏名】ミルバイアー,イゴール
(72)【発明者】
【氏名】ヴィッガー,ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】ブリーゼニック,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】リブツキー,ハリー
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-256773(JP,A)
【文献】特表2011-504248(JP,A)
【文献】特開2002-190031(JP,A)
【文献】特許第3185559(JP,B2)
【文献】国際公開第2013/043103(WO,A1)
【文献】特開平07-306156(JP,A)
【文献】特開平04-291136(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01898207(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01N 21/84 - G01N 21/958
G06T 7/00 - G06T 7/90
G06V 10/00 - G06V 20/90
G06V 30/418
G06V 40/16
G06V 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面(5)の質感を評価するための方法であって、以下のステップ:
(i) 入力チャネルを介して、線パターン(11、12;21、22;31、32)を含む表面(5)の画像データ(10)を処理装置に提供するステップであって、前記線パターン(11、12;21、22;31、32)は、予め定義された線パターンを前記表面(5)に投影することによって得られる、ステップと;
(ii) 前記処理装置によって前記提供された画像データ(10)を処理する、ステップと;
(iii) パターン認識アルゴリズムを使用して前記処理された画像データから複数の平行線(40、41、42、43、44)を抽出し、少なくとも2つの抽出された平行線(41、42、43、44)を連結することによって少なくとも1つの連結線(50、60)を形成し、高速フーリエ変換によって各連結線(50、60)の波長スペクトル(73)を計算することによって、前記処理された画像データ(30)の線パターン(11、12;21、22;31、32)から、前記表面(5)の少なくとも1つの質感パラメータ(75)を導出するステップと;
(iv) 出力チャネルを介して前記少なくとも1つの質感パラメータ(75)を提供するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記導出された少なくとも1つの質感パラメータ(75)に基づいて、前記表面(5)の質感を監視又は制御することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記表面(5)がコーティング層である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記線パターン(11、12;21、22;31、32)は、複数の線(11、12;21、22;31、32)である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(ii)において前記提供された画像データ(10)を処理することが、ステップ(i)で提供された前記画像データ(10)から線パターン情報を抽出することを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
得られた画像データ(10)を処理することが、前記得られた画像データ(10)をバイナリ画像データ(30)に変換することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの質感パラメータ(75)を導出することが、前記表面(5)に投影された予め定義された線パターンからの前記表面(5)の前記線パターン(11、12;21、22;31、32)の偏差を決定することを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの質感パラメータ(75)は、計算された波長スペクトル(73)のスペクトルピーク(74)として導出される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの質感パラメータ(75)は、スペクトルピーク(74)を含む計算された波長スペクトル(73)の波長範囲として導出される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記表面(5)の質感を監視することが、前記処理された画像データ(30)における前記線パターン(11、12;21、22;31、32)から導出される前記表面(5)の前記少なくとも質感パラメータ(75)を、繰り返し決定することを含む、請求項2及び請求項2を引用する請求項3~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記表面(5)の質感を監視することが、繰り返し決定された少なくとも1つの質感パラメータ(75)を、前記少なくとも1つの質感パラメータ(75)を導出するために使用された前記画像データ(10)が得られた時点で使用された表面処理パラメータと相関させることをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記表面(5)の質感を制御することが、前記処理された画像データ(30)における前記線パターン(11、12;21、22;31、32)から導出された前記表面(5)の前記少なくとも1つの質感パラメータ(75)を、少なくとも1つの予め定義された質感パラメータと表面(5)の調製中に比較することと、前記導出された少なくとも1つの質感パラメータ(75)が予め定義された値だけ前記予め定義された質感パラメータから偏差を生じた場合に、前記表面(5)の調製中に使用される少なくとも1つのパラメータを修正することとを含む、請求項2及び請求項2を引用する請求項3~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
表面(5)の質感を評価するためのシステムであって:
(a)処理装置に接続された入力チャネルであって、前記入力チャネルは、画像データ(10)を処理装置に提供するように構成されている、入力チャネルと、
(b)処理装置であって、
- 線パターン(11、12;21、22;31、32)を含む表面(5)の画像データ(10)を処理し、前記線パターン(11、12;21、22;31、32)は、予め定義された線パターンを前記表面(5)に投影することによって得られる、及び
- パターン認識アルゴリズムを用いて前記処理された画像データから複数の平行線(40、41、42、43、44)を抽出し、少なくとも2つの抽出された平行線(41、42、43、44)を連結することによって少なくとも1つの連結線(50、60)を形成し、高速フーリエ変換によって各連結線(50、60)の波長スペクトル(73)を計算することによって、処理された画像データ(30)の前記線パターン(11、12;21、22;31、32)から前記表面(5)の少なくとも1つの質感パラメータ(75)を導出する
うに構成された処理装置と、
(c)前記導出された少なくとも1つの質感パラメータ(75)を表示するように構成された出力チャネルと
備えるシステム。
【請求項14】
表面(5)の質感を評価するためのコンピュータプログラム製品であって、プロセッサによって実行されるプログラムコードを保存するデータキャリアを備え、前記プログラムコードは、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法を実装する、コンピュータプログラム製品。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法によって決定された少なくとも1つの質感パラメータ(75)に基づいて、コーティングされた物体の表面の質感を制御することによって、コーティングされた物体を製造するための、前記少なくとも1つの質感パラメータ(75)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面の質感を評価し、任意に監視又は制御するためのコンピュータ実装方法に関し、該方法は、入力チャネルを介して処理装置に表面の画像データを提供するステップと、パターン認識アルゴリズムを用いて処理された画像データから複数の平行線を抽出し、少なくとも2つの抽出された平行線を連結し、高速フーリエ変換によって形成された連結線のそれぞれの波長スペクトルを計算することにより、提供された画像データから表面の少なくとも1つの質感パラメータを導出するステップと、出力チャネルを介して少なくとも1つの質感パラメータを提供するステップと、を含む。さらに、本発明は、処理装置に接続された入力チャネルと、表面の少なくとも1つの質感パラメータを導出し、任意に監視又は制御するように構成された処理装置と、出力装置と、任意に少なくとも1つの表面調製装置と、を備えるシステムに関する。最後に、本発明は、プロセッサによって実行されるプログラムコードを保存するデータキャリアを備える、表面の質感を評価し、任意に監視又は制御するためのコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
表面は、物体に外観を与えるものである。表面は、入射光を観察者の目に反射させ、物体の視覚的な印象を引き起こす。
【0003】
表面が入射光を反射する方法は、他のファクターがある中でも、表面の粗さによって決まる。粗さは実質的にゼロ、つまり表面は鏡の表面のように完全に滑らかである場合は実質的にゼロである。あるいは、表面はある程度の粗さ、すなわち質感又は構造化されたプロファイルを含み得、その結果、表面はある程度のうねりが生じる。
【0004】
前記質感は、規則的であってもよく、すなわち、質感は、1つ以上の繰り返しパターンを含んでいてもよい。あるいは、質感は不規則であってもよく、すなわち、質感はいかなる繰り返しパターンを含んでいなくてもよい。もちろん、質感は、繰り返しパターン及び非繰り返しパターンの組み合わせを含むこともできる。
【0005】
物体が、少なくとも1つの液体又は固体コーティング組成物を物体に塗布し、その後、前記塗布されたコーティング組成物(複数可)を硬化させることによってコーティングされている場合、物体の外観を決定する表面は、得られたコーティングによって提供される。特に自動車産業では、自動車のボディパネルは、保護及び美観上の理由から、コーティングが施されている。
【0006】
このようなコーティングは、典型的には、第1コーティング、典型的には着色されたベースコートのコーティングを塗布し、次に第2コーティング、一般的にはクリアコートを、非硬化又は「湿った」第1コーティングの上に塗布することを要する複合コーティングシステムである。塗布された第1及び第2のコーティングは、共同硬化される。したがって、このようなシステムは、しばしば「ウェット・オン・ウェット」又は「2コート/1ベーク」と表現される。完全な硬化に至らない乾燥工程は、コーティングの塗布間に使用されることができる。
【0007】
このようなコーティングシステムは、外装コーティングが最適な外観だけでなく、優れた耐久性と耐候性を有することも必要とされる場合に、選択されることが多い。その結果、自動車業界では、特に自動車のボディパネルにこのようなコーティングが多用されている。自動車のボディパネルに使用されるクリアコートコーティング組成物に要求される最低限の性能要件としては、高い接着性、耐スクラッチ性及び耐擦傷性、チップ抵抗、耐湿性、及びQUVなどで測定される耐候性などが挙げられる。クリアコート組成物はまた、高度な光沢、画像の明瞭さ(DOI)、及び平滑性によって特徴付けられる視覚的外観をも提供することができなければならない。最後に、このようなコーティングは、製造環境での塗布が容易であり、塗布欠陥に対して耐性があることも必要である。
【0008】
このようなコーティングシステムで使用されるクリアコートは、通常、着色ベースコートが塗布される膜形成よりも大幅に高い膜形成で塗布される。このような高いクリアコート膜形成は、システム全体の所望の外観及び/又は耐久性に寄与するシステムの一面である。
【0009】
残念ながら、クリアコートの膜形成の要求は高くなると、クリアコート組成物の垂れ(sag)傾向を増加させる可能性がある。主に垂直方向の表面(すなわち、地表に対して90°±45°の角度を有する表面)で発生する垂れは、塗布されたコーティングの望ましくない下向きの流れと表され得る。しずく(drips)又は流れ(runs)として現れることが多い垂れは、コーティングの「重すぎる」又は「濡れすぎる」塗布に起因することがある。理想的には、商業的に成功するクリアコート組成物は、用途及び/又は設備パラメータに関係なく、垂れに耐性ある固有の傾向を有する。クリアコートが垂直方向の表面で垂れ下がりにくいほど、自動車OEM設備での塗布が容易になる。
【0010】
しかしながら、垂直方向の垂れに耐性のあるクリアコートは、伝統的に、水平方向の表面(すなわち、地表に対して180°±45°の角度を有する表面)上での流れに対する抵抗が増大することを示している。水平方向の表面上での流れに対するコーティング組成物の抵抗は、「オレンジピール」及び/又は硬化したコーティング膜の平滑性、光沢及びDOIの点で全体的に許容できない外観を生じることがよくある。オレンジピールとは、塗布された濡れフィルムが塗布後に「平らになる」ことができないことから生じる、硬化フィルムの表面の繰り返される凹凸と説明され得る。オレンジピールのある硬化フィルムは、触ると滑らかに感じるが、連続した一連の小さな凹凸のような状態に見える。塗布される濡れフィルムが「平らになる」こと又は流れることができないほど、観察者には小さな凹凸又はくぼみがより顕著に、あるいは鮮明に見える。このような表面の凹凸の存在により、高いDOI評価を有する滑らかで光沢のあるコーティングされたクリアコーティング表面を得ることが特に困難になる。
【0011】
コーティング組成物の耐垂れ性及び塗布後の「平らになる」能力は、コーティング組成物の成分だけでなく、コーティング工程にも依存するため、得られるコーティングの所望の視覚的外観を作り出すために、コーティング組成物の配合だけでなく、コーティング工程の両方を最適化することが望まれる。したがって、コーティングの質感、すなわちコーティングされた物体の表面を評価し、任意に監視又は制御するための効率的な方法は非常に関心が高いものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、特に表面の調製中に、表面が所望の視覚的外観を有するかどうかを経験的に検証することを可能にする、表面の質感を評価するための効率的なコンピュータ実装方法及びシステムを提案することである。特に好ましくは、コンピュータ実装方法及びシステムは、製造された表面の結果としての質感に対する製造パラメータの影響に関する情報を収集するために、その調製プロセス中に表面の質感を監視することを可能にすべきである。さらに、特に好ましくは、コンピュータ実装方法及びシステムは、表面の調製中に少なくとも1つの質感パラメータを評価することによって、及び、決定された質感パラメータが予め定義された範囲又は値の外にある場合に少なくとも1つの製造パラメータを修正することによって、その調製工程中に表面の質感を制御できるようにすべきである。これにより、所望の質感を得て、それによって所望の質感を有するコーティングされた物体の非常に効率的な製造を得られるように、表面の調製工程、好ましくはコーティング層の製造を調整することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
コンピュータ実装された本発明の方法:
本発明の一態様は、表面の質感を評価し、任意に監視又は制御するためのコンピュータ実装方法である。この方法は、(i)入力チャネルを介して表面の画像データを処理装置に提供するステップと、(ii)前記提供された画像データを前記処理装置によって処理するステップと、(iii)パターン認識アルゴリズムを使用して前記処理された画像データから複数の平行線を抽出し、少なくとも2つの抽出された平行線を連結することによって少なくとも1つの連結線を形成し、高速フーリエ変換によって各連結線の波長スペクトルを計算することによって、前記処理された画像データから表面の少なくとも1つの質感パラメータを導出するステップと、(iv)出力チャネルを介して少なくとも1つの質感パラメータを提供するステップと、を含む。少なくとも1つの質感パラメータは、表面の外観に直接関係するため、表面の質感を評価及び/又は定量化するために使用されることができる。特に好ましくは、本方法は、導出された質感パラメータに基づいて、表面の質感を監視又は制御するステップ(v)をさらに含む。このステップ(v)は、製造パラメータを得られた表面質感に関連付けることを可能にし、又は、決定された少なくとも1つの質感パラメータが予め定義された値又は範囲から外れている場合に少なくとも1つの製造パラメータを修正することによって所望の表面質感を得ることを可能にする。
【0014】
評価され、任意に監視又は制御される表面は、線パターン(以下、反射線パターンと表す)を含む。前記反射線パターンは、好ましくは、予め定義された線パターンを表面に投影することによって得られる。予め定義された線パターンからの反射線パターンの歪みは、表面の粗さ、すなわち表面の質感に直接関係するため、反射線パターンの歪みは分析されて、ステップ(iii)の少なくとも1つの質感パラメータを得ることができる。したがって、少なくとも1つの質感パラメータは、予め定義された線パターンからの反射線パターンの歪みを表す。提供された画像データを処理すること、すなわち、本発明の方法のステップ(iii)の前に、画像処理を介して提供された画像データから反射線パターン情報を抽出することは、続く前記ステップ(iii)における表面の線パターンの以下の分析を容易にする。
【0015】
ステップ(i):
本発明の方法のステップ(i)によれば、線パターンを含む表面の画像データが、入力チャネルを介して処理装置に提供される。線パターンは、予め定義された線パターンを表面上に投影することによって得られる。適切な入力チャネルは、例えば、画像キャプチャ装置、データベース、ネットワーク、クラウド、RAM、ROM、EEPROM、ソリッドステートドライブ、フラッシュメモリ、相変化メモリ、光ディスクストレージ、磁気ディスクストレージなどのような物理的記憶媒体である。線パターンを含む表面は、コーティング層、特にクリアコート層であり得る。この方法の実施形態は、物体に塗布されるコーティング、すなわち、自動車のボディ部品などに塗布されるコーティングの外観を容易に最適化することを可能にする。
【0016】
有利には、ステップ(i)で提供された画像データは、コーティング層を塗布した直後、及び/又は塗布されたコーティング層をフラッシングオフする間もしくはその後に、及び/又は塗布されたコーティング層を硬化する間もしくはその後に、及び/又は硬化されたコーティング層を冷却する間もしくはその後に得られる。塗布されたコーティング組成物は、水性の液体又は溶媒ベースのコーティング組成物、又は固体コーティング組成物であり得る。さらに、コーティング組成物は、プライマー、ベースコート又はクリアコートコーティング組成物であってよい。コーティング組成物の塗布は、例えば、当業者に知られている空気圧スプレー塗布及び/又は静電スプレー塗布によって行われることができる。「フラッシング」又は「フラッシュオフ」は、好ましくは15~90℃で、0.5~60分の持続時間で、塗布されたコーティング材料からの有機溶媒及び/又は水の受動的又は能動的な蒸発として理解される。フラッシング段階の後、形成されたコーティングフィルムは、したがって、塗布されたコーティング材料と比較して、より少ない水及び/又は溶媒を含むが、部分的に乾燥されているだけであり、まだ硬化されていない。一方、硬化されたコーティングフィルムは、もはや軟らかくなく粘着性もなく、代わりに、硬化条件にさらに曝されても、硬度や物体に対する接着性などの特性に実質的な変化を示さない固体のコーティングフィルムとして調整される。画像データを得るための画像のキャプチャは、物体にコーティング組成物を塗布した後にいつでも行うことができる。製造工程又は解決すべき外観の問題に応じて、画像のキャプチャは、少なくとも1つの質感パラメータの時間依存性を監視するために、予め定義された時点又はランダムに選択された時点で繰り返し行われることができる。
【0017】
多くの実施形態では、画像は、好ましくは、表面上に延びる光軸を有するカメラによってキャプチャされる。一例では、予め定義された線パターンを含むホワイトボードが白色光源によって照射され、ホワイトボードの予め定義された線パターンが、カメラの光軸に平行な表面上に投影される。表面がある程度の粗さ、すなわち質感を含む場合、この表面の粗さにより、ホワイトボードの予め定義された線パターンは表面上で歪む。つまり、評価する表面に対するカメラの位置と向きの両方は、テクスチャ評価の構成において、予め定義された線パターンを当該表面に投影することによって、画像をキャプチャすることと、線パターンを含む表面の画像データを得ることとをサポートする。
【0018】
線パターンの少なくとも2つの線間の表面の部分は、好ましくは10mm×10mm~50mm×50mmの範囲の面積、特に15mm×15mmの面積を有する。表面の線パターンが垂直線と水平線を含むグリッドである場合、表面部分は、グリッドの交差する線によって形成される面積に対応する。このサイズの表面部分は、線パターンを用いる場合に実現されやすく、表面の規則的な質感と不規則な質感の両方を評価するのに十分な大きさである。
【0019】
線パターンは、周期的又は非周期的な線パターンであってよく、好ましくは周期的な線パターンである。周期的な線パターンの例は、単純で周期的なストリップ又は線パターン、特に単純な線グリッド、インターリーブ(interleaved)された又は連結された複数のストリップグレーティング、又は内部(周期的)構造を有し、その内部構造の強度プロファイルがステッププロファイル又はボックスプロファイルから偏差を生じる、例えばガウスプロファイル、ドッペルガウスプロファイル又はローレンツプロファイルを有するストリップのグリッドである。
【0020】
好ましい実施形態では、線パターンは、複数の線、特に線グリッド、最も好ましくは直交線グリッドを含む。線パターンは、複数の水平線又は垂直線を含んでよい。あるいは、線パターンは、グリッド、すなわち複数の交差する線、特に、他の複数の線に対して垂直に延びる複数の線を有する直交グリッドを含んでよい。したがって、表面に投影される好ましい予め定義された線パターンは、複数の直線、特に直線のグリッド、最も好ましくは平行直線の直交グリッドから選択される。
【0021】
ステップ(ii):
本発明の方法のステップ(ii)では、提供された画像データは、処理装置によって処理される。処理は、好ましくは、ステップ(i)で提供された画像データから線パターン情報を抽出することを含んでいる。この点で、ステップ(i)で提供される画像データは前処理されていることが特に好ましい。前処理は、提供された画像データにコントラスト、シャープネス、又は明るさを増加させるような標準的な画像処理アルゴリズムを適用することを含んでよい。さらに、ステップ(i)で提供される画像データ又は前処理される画像データが、バイナリ画像データに変換されることが特に好ましい。バイナリ画像とは、正確に2色すなわち白と黒のうちのどちらかを有することができるピクセルからなる画像である。バイナリ画像データの使用は、バイナリ画像データがステップ(iii)で好ましく使用されるパターン認識アルゴリズムの適用をサポートするため、反射線パターンの検出可能性を大幅に向上させる。提供された画像データの前処理は、続くバイナリ画像データへの変換をサポートすることができる。
【0022】
ステップ(iii):
本発明の方法のステップ(iii)では、表面の少なくとも1つの質感パラメータは、予め定義された線パターン、すなわち表面に投影された線パターンに対する反射線パターンの偏差が表面の質感に直接起因するため、処理された画像データの線パターン情報の偏差から導出される。したがって、本発明の方法のステップ(iii)で導出される少なくとも1つの質感パラメータは、表面に投影された予め定義された線パターンからの表面の線パターンの偏差を反映する。したがって、ステップ(iii)において少なくとも1つの質感パラメータを導出することは、表面に投影された予め定義された線パターンからの表面の線パターンの偏差を決定することを含む。
【0023】
ステップ(iii)は、パターン認識アルゴリズムを使用して、処理された画像データ、好ましくはバイナリ画像データから複数の線を抽出し、少なくとも2つの抽出された線を連結することによって少なくとも1つの連結された線を形成することを含む。連結された線は、各抽出された線よりも長く、それに対応して、各抽出された線よりも多くの質感情報を含むため、小さな測定領域から得られた画像データを使用して、表面の質感を確実に決定することを可能にする。これは、画像データがかなり小さい表面積についてしか得られない場合に特に有用であり、例えば、オーブンの開口に起因する不必要な熱損失を避けるために、前記構成が、非常に小さい領域でコーティング層の画像を得ることしかできないために、オーブンで各コーティング組成物を硬化させることによってコーティング層の調製中などの、コーティング層の硬化中に表面の画像データを得ることが必要な場合である。次に、各連結線の波長スペクトルが高速フーリエ変換によって計算される。高速フーリエ変換は、対応する連結された元の線からの連結線の横方向の偏差の周期性の内容を抽出する。周期性の内容は、連結線の波長スペクトルに容易に変換されることができる。計算された波長スペクトルは、順に、表面の質感の繰り返しパターンと強い相関がある。
【0024】
少なくとも1つの質感パラメータは、計算された波長スペクトルのスペクトルピークとして導出され得る。スペクトルピークの波長は、表面の質感の主要な繰り返しパターンに対応する。スペクトルピークの波長、すなわち主要な空間繰り返し率は、第1質感パラメータと考えられ得る。
【0025】
あるいは、少なくとも1つの質感パラメータは、計算された波長スペクトルのスペクトルピークの波長を含む、計算された波長スペクトルの波長範囲から導出される。波長の代わりに波長範囲を使用することは、外観に関する表面の分類をサポートする、すなわち、表面を類似の外観を有する表面のクラスに割り当てることをサポートする。計算された波長スペクトルのスペクトルピークを含む前記波長範囲は、第2質感パラメータと考えられ得る。
【0026】
この観点から、波長範囲は、好ましくは、0.3mmから1mmまでの所定の短波の波長範囲、又は1mmを超えて10mmまでの所定の長波の波長範囲である。短波の波長範囲は、微細な繰り返しパターンを有する質感をカバーする。長波の波長範囲は、短波の波長範囲に隣接しており、粗い繰り返しパターンを有する質感をカバーする。
【0027】
あるいは、短波の波長範囲は、表面を本発明の方法を用いて標準化された基準表面と比較することによって,導出することができる。標準化された基準表面は、短波の波長範囲をカバーするために提供される。表面は、その表面が標準化された基準表面とほぼ同じように入射光を反射する場合、短波の波長範囲に関連する。
【0028】
ステップ(iv):
ステップ(iii)において導出された少なくとも1つの質感パラメータは、出力チャネルを介して提供される。適切な出力チャネルは、例えば、ディスプレイ、ネットワークなどのような物理的出力チャネル、又はAPI、関数呼び出し、データベースなどのような論理的出力チャネルである。非常に好ましくは、ディスプレイ装置が出力チャネルとして使用される。適切なディスプレイ装置は、当業者によく知られており、視覚情報を提供するディスプレイ装置を含み、この情報は、典型的には、ピクセルの配列として論理的及び/又は物理的に編成され得る。
【0029】
任意のステップ(v):
本発明の方法は、ステップ(iii)で導出された質感パラメータに基づいて、表面の質感を監視又は制御することをさらに含み得る。
【0030】
画像データは、表面の調製中に繰り返し提供され、処理され得るため、本発明の方法は、前記画像データから導出される少なくとも1つの質感パラメータを介して、その調製中に、表面の質感を監視することを可能にする。したがって、本発明の方法の任意のステップ(v)の好ましい第1の代替案は、処理された画像データにおける線パターンから導出される表面の少なくとも1つの質感パラメータを、好ましくは少なくとも1つの表面の調製中に、繰り返し決定し、そして任意で、決定された少なくとも1つの質感パラメータを少なくとも1つのストレージ装置に保存することにより、表面(5)の質感を監視することを含む。次いで、保存された質感パラメータは、決定された質感パラメータに対する前記パラメータの影響を評価するために、前記パラメータを、画像データが得られた時点で使用された塗布、乾燥、硬化及び冷却パラメータと相関させるために、使用することができる。表面の調製工程中に繰り返し提供される画像データは、予め定義された時点又はランダムに選択された時点で収集されることができる。決定された少なくとも1つの質感パラメータを、表面を調製するために使用された調製条件と相関させるために、画像データが収集された時点での前記調製条件を保存し、それらを少なくとも1つのストレージ装置に保存することが好ましい。適切なストレージ装置は、ディスク、ハードディスク、サーバ、クラウド、ネットワークなどから選択されることができる。
【0031】
表面の調製中の少なくとも1つの質感パラメータの決定は、少なくとも1つの質感パラメータを予め定義された値又は範囲に調整するように、表面の調製のための条件を修正することも可能にする。これにより、調製条件を修正することによって、調製中の表面の質感を調整することができ、したがって、調製された表面の望ましくない質感の発生を低減させることができる。したがって、本発明の方法は、予め定義された質感を有する表面を調製する効率的な方法を提供する。したがって、代替の任意のステップ(v)は、処理された画像データの線パターンから導出された表面の少なくとも1つの質感パラメータを、少なくとも1つの予め定義された質感パラメータと比較し、好ましくは(表面の調製中に)繰り返し比較することによって表面の質感を制御することと、導出された少なくとも1つの質感パラメータが予め定義された閾値だけ予め定義された質感パラメータから偏差を生じた場合に、表面の調製中に用いられる少なくとも1つのパラメータを修正することとを含む。好ましくは、表面の調製中に修正される少なくとも1つのパラメータは、塗布条件、乾燥条件、硬化条件、冷却条件、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0032】
多くの実施形態では、本発明の方法は、本方法を実装するプログラムコードを実行するプロセッサによって行われる。このようにして、スプレーされたコーティングの流れの評価は、少なくとも部分的に自動化され得、これは評価プロセスの効率及び精度を高める。
【0033】
本発明による方法の本質的な利点は、表面の質感が非常に効率的に評価され得ること、及び、本方法がさらに表面の質感を監視又は制御することを可能にし、したがって、得られる質感に対する前記条件の影響を導出するために、又は調製される表面の所望の質感を得るために表面の調製中に表面の質感を制御するために、導出された質感パラメータを、表面を調製するために使用された条件と相関させることである。この方法は、非常に単純な構成に基づき、画像処理と高速フーリエ変換を使用する。画像処理と高速フーリエ変換は、コンピュータによって自動的に実行されることができる。さらに、本方法は、現在使用されている表面処理工程、好ましくは物体上のコーティングを調製するための工程に容易に組み込むことができる。
【0034】
本発明のシステム:
本発明のさらなる態様は、表面の質感を評価し、任意に監視又は制御するためのシステムであって、前記システムは:
(a)処理装置に接続された入力チャネルであって、前記入力チャネルは、画像データを前記処理装置に提供するように構成されている、入力チャネルと、
(b)処理装置であって、
- 線パターンを含む表面の画像データを処理し、前記線パターンは、予め定義された線パターンを表面に投影することによって得られる、
- パターン認識アルゴリズムを用いて処理された前記画像データから複数の平行線を抽出し、少なくとも2つの抽出された平行線を連結することによって少なくとも1つの連結線を形成し、高速フーリエ変換によって各連結線の波長スペクトルを計算することにより、処理された前記画像データの線パターンから前記表面の少なくとも1つの質感パラメータを導出する、
- 任意に、表面調製装置に監視又は制御信号を提供することにより、導出された前記少なくとも1つの質感パラメータを監視及び/又は制御する、
ように構成された処理装置と、
(c)導出された前記少なくとも1つの質感パラメータを表示するように構成された出力チャネルと、
(d)任意に、前記処理装置に接続され、前記表面を調製するように構成された少なくとも1つの表面調製装置と、
を備える。
【0035】
適切な処理装置は、少なくとも1つのプロセッサと、実行可能な命令を実行するように構成されたオペレーティングシステムと、メモリと、本発明の方法を実行するデジタル処理装置によって実行可能な命令を含むコンピュータプログラムと、を備える。さらに、処理装置及び/又は出力装置は、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)を表示するためのスクリーンを有するディスプレイをさらに備えることができる。
【0036】
表面処理装置は、液体又は固体のコーティング組成物を表面に塗布するように構成された少なくとも1つの塗布装置、及び/又は塗布されたコーティング層をフラッシュオフするように、及び/又は塗布されたコーティング層を硬化させるように、及び/又は硬化したコーティング層を冷却するように構成された少なくとも1つの装置を備えることができる。
【0037】
システムは、表面上に予め定義された線パターンを投影するように構成された少なくとも1つの線パターン投影装置をさらに備えることができる。適切な線パターン投影装置は、予め定義された線パターンを有するホワイトボードと、光源、好ましくは白色光源とを含むことができる。
【0038】
本システムは、表面の質感、好ましくは物体に塗布されたコーティングの質感を効率的に評価、監視又は制御することができるため、前述の本発明の方法との関連で特に適している。
【0039】
本発明の方法について述べたことは、本発明システムのさらに好ましい実施形態に関して準用して適用される。
【0040】
本発明のコンピュータプログラム製品:
本発明の別の態様は、表面の質感を評価し、任意に監視又は制御するためのコンピュータプログラム製品であって、該コンピュータプログラム製品はプロセッサによって実行されるプログラムコードを保存するデータキャリアを備える。データキャリアは、保存されたプログラムコードをインストールするため、及び/又は、インストールされたプログラムコードを保存されたプログラムコードによってアップグレードするために使用され得る。
【0041】
本発明によれば、プログラムコードは、本発明の方法を実装する。保存されたプログラムコードは、表面の質感を効率的に評価し、任意に監視又は制御することを可能にする。表面の質感の監視又は制御が、前記表面の調製中に繰り返し行われることができるため、得られる表面、好ましくはコーティングの品質は、最適化されることができ、したがって、所望の質感特性を有する表面を効率的に調製することができる。
【0042】
本発明の方法及び本発明システムについて述べたことは、本発明コンピュータプログラム製品のさらに好ましい実施形態に関して準用して適用される。
本発明の使用:
本発明のさらなる目的は、表面の質感を監視又は制御するための本発明の方法に従って決定される少なくとも1つの質感パラメータの使用である。
【0043】
さらに、本発明の方法は、クレーターなどの表面欠陥を検出するのに使用されることができる。
【0044】
特に好ましくは、本発明の方法は、コーティング又はコーティング層、好ましくは最外層のコーティング層、特に好ましくは自動車ボディ又は自動車ボディ部品上のコーティング層の調製の間に、使用される。したがって、本発明のさらなる目的は、コーティングされた物体、好ましくは自動車ボディ及び/又は自動車ボディ部品を製造するための本発明の方法に従って決定される少なくとも1つの質感パラメータの使用である。この点で、特に好ましいのは、本発明の方法に従って決定される少なくとも1つの質感パラメータが、自動車塗装ラインと関連して使用されることである。
【0045】
本発明の使用は、前記表面の調製中に前記質感パラメータを繰り返し決定することにより、表面の質感を監視又は制御し、その結果、コーティングされた物体の効率的な製造工程を得ること、を可能にする。
【0046】
本発明の方法について述べたことは、本発明の使用のさらに好ましい実施形態に関して準用して適用される。
【0047】
本発明は、特に以下の実施形態により説明される:
【0048】
実施形態1:表面5の質感を評価し、任意に監視又は制御するための方法であって、以下のステップ:
(i) 入力チャネルを介して、線パターン11、12;21、22;31、32を含む表面5の画像データ10を処理装置に提供するステップであって、前記線パターン11、12;21、22;31、32は、予め定義された線パターンを表面に投影することによって得られる、ステップと;
(ii) 前記処理装置によって前記提供された画像データ10を処理する、ステップと;
(iii)パターン認識アルゴリズムを使用して前記処理された画像データから複数の平行線40、41、42、43、44を抽出し、少なくとも2つの抽出された平行線41、42、43、44を連結することによって少なくとも1つの連結線50、60を形成し、高速フーリエ変換によって各連結線50、60の波長スペクトル73を計算することによって、前記処理された画像データ30の線パターン11、12;21、22;31、32から、前記表面5の少なくとも1つの質感パラメータ75を導出するステップと;
(iv) 出力チャネルを介して前記少なくとも1つの質感パラメータ75を提供するステップと、
を含む、方法。
【0049】
実施形態2:前記導出された少なくとも1つの質感パラメータ75に基づいて、表面5の質感を監視又は制御することをさらに含む、実施形態1に記載の方法。
【0050】
実施形態3:前記表面5がコーティング層、特にクリアコート層である、実施形態1又は2に記載の方法。
【0051】
実施形態4:前記入力チャネルを介して前記処理装置に提供された前記画像データ10は、コーティング層を塗布した直後に、及び/又は塗布されたコーティング層をフラッシングオフする間もしくはその後に、及び/又は塗布されたコーティング層を硬化する間もしくはその後に、及び/又は硬化されたコーティング層を冷却する間もしくはその後に得られる、実施形態3に記載の方法。
【0052】
実施形態5:前記線パターン11、12;21、22;31、32の少なくとも2つの線の間の表面5の部分13、23、33は、10mm×10mm~50mm×50mmの範囲の面積、特に15mm×15mmの面積を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0053】
実施形態6:前記線パターン11、12;21、22;31、32は、周期的又は非周期的な線パターンであり、好ましくは周期的な線パターン11、12;21、22;31、32である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0054】
実施形態7:前記線パターン11、12;21、22;31、32は、複数の線11、12;21、22;31、32、特に線11、12;21、22;31、32のグリッド、最も好ましくは線11、12;21、22;31、32の直交グリッドを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0055】
実施形態8:ステップ(ii)において提供された前記画像データ10を処理することが、ステップ(i)で提供された前記画像データ10から線パターン情報を抽出することを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0056】
実施形態9:前記提供された画像データ10を処理することが、前記提供された画像データ10を前処理することを含む、実施形態8に記載の方法。
【0057】
実施形態10:前記得られた画像データ10を処理することが、前記得られた画像データ10又は前記前処理された画像データ20をバイナリ画像データ30に変換することを含む、実施形態8又は9に記載の方法。
【0058】
実施形態11:前記少なくとも1つの質感パラメータ75を導出することが、前記表面5に投影された予め定義された線パターンからの前記表面5の前記線パターン11、12;21、22;31、32の偏差を決定することを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0059】
実施形態12:前記少なくとも1つの質感パラメータ75は、計算された波長スペクトル73のスペクトルピーク74として導出される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0060】
実施形態13:前記少なくとも1つの質感パラメータ75は、スペクトルピーク74を含む計算された波長スペクトル73の波長範囲として導出される、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0061】
実施形態14:前記波長範囲は、0,3mmから1mmまでの所定の短波波長範囲、又は1mmを超えて10mmまでの所定の長波波長範囲である、実施形態13に記載の方法。
【0062】
実施形態15:前記波長範囲は、表面5を標準化された基準表面と比較することによって導出される短波波長範囲である、実施形態13に記載の方法。
【0063】
実施形態16:前記出力チャネルはディスプレイ装置である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0064】
実施形態17:前記表面5の前記質感を監視することが、前記処理された画像データ30における前記線パターン11、12;21、22;31、32から導出された前記表面5の前記少なくとも質感パラメータ75を、好ましくは前記少なくとも1つの表面5の調製中に繰り返し決定し、任意に、前記決定された少なくとも1つの質感パラメータ75を少なくとも1つのストレージ装置に保存することを含む、実施形態2~16のいずれか1つに記載の方法。
【0065】
実施形態18:前記表面5の前記質感を監視することが、繰り返し決定された少なくとも1つの質感パラメータ75を、前記少なくとも1つの質感パラメータ75を導出するために使用された前記画像データ10が得られる時点で使用された前記表面処理パラメータと相関させることをさらに含む、実施形態17に記載の方法。
【0066】
実施形態19:前記表面5の質感を制御することが、前記処理された画像データ30における前記線パターン11、12;21、22;31、32から導出された前記表面5の前記少なくとも1つの質感パラメータ75を、少なくとも1つの予め定義された質感パラメータと比較すること、好ましくは(表面5の調製中に)繰り返し比較することと、前記導出された少なくとも1つの質感パラメータ75が予め定義された値だけ前記予め定義された質感パラメータから偏差を生じた場合に、前記表面5の調製中に使用される少なくとも1つのパラメータを修正することとを含む、実施形態2~16のいずれか1つに記載の方法。
【0067】
実施形態20:前記方法を実装するプログラムコードを実行するプロセッサによって実行される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0068】
実施形態21:表面5の質感を評価し、任意に監視又は制御するためのシステムであって:
(a)処理装置に接続された入力チャネルであって、前記入力チャネルは、画像データ10を処理装置に提供するように構成されている、入力チャネルと、
(b)処理装置であって、
- 線パターン11、12;21、22;31、32を含む表面5の画像データ10を処理し、前記線パターン11、12;21、22;31、32は、予め定義された線パターンを前記表面に投影することによって得られる、
- パターン認識アルゴリズムを用いて前記処理された画像データから複数の平行線40、41、42、43、44を抽出し、少なくとも2つの抽出された平行線41、42、43、44を連結することによって少なくとも1つの連結線50、60を形成し、高速フーリエ変換によって各連結線50、60の波長スペクトル73を計算することによって、前記処理された画像データ30の前記線パターン11、12;21、22;31、32から前記表面5の少なくとも1つの質感パラメータ75を導出する、
- 任意に、表面調製装置に監視又は制御信号を提供することにより、前記導出された少なくとも1つの質感パラメータ75を監視及び/又は制御する、
ように構成された処理装置と、
(c)前記導出された少なくとも1つの質感パラメータ75を表示するように構成された出力チャネルと、
(d)任意に、前記処理装置に接続され、前記表面5を調製するように構成された少なくとも1つの表面調製装置と、
を備えるシステム。
【0069】
実施形態22:前記表面上に予め定義された線パターンを投影するように構成された少なくとも1つの線パターン投影装置をさらに備える、実施形態21に記載のシステム。
【0070】
実施形態23:表面5の質感を評価し、任意に監視又は制御するためのコンピュータプログラム製品であって、プロセッサによって実行されるプログラムコードを保存するデータキャリアを備え、前記プログラムコードは、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法を実装する、コンピュータプログラム製品。
【0071】
実施形態24:表面の質感を監視又は制御するための、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法によって決定された少なくとも1つの質感パラメータ75の使用。
【0072】
実施形態25:コーティングされた物体、好ましくはコーティングされた自動車ボディ及び/又は自動車ボディ部品を製造するための、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法によって決定された少なくとも1つの質感パラメータ75の使用。
【0073】
本発明のさらなる利点及び構成は、以下の説明及び添付の図面から明らかになる。
【0074】
先に説明した特徴及びこの後に説明する特徴は、示された組み合わせだけでなく、本発明の範囲を離れることなく、異なる組み合わせ又はそれ自体で使用され得ることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1】本発明の実施形態による方法を実行するための構成の斜視図を概略的に示す斜視図である。
図2】予め定義された線の直交グリッドを表面に投影することによって得られた画像データを示す図である。
図3図2に示された画像データを前処理することによって得られた前処理された画像データを示す図である。
図4図3に示された前処理された画像データを変換することによって得られたバイナリ画像データを示す図である。
図5図4に示されたバイナリ画像データから抽出された複数の線を概略的に示す図である。
図6】4つの抽出された線を概略的に示す図である。
図7図6に示された4つの線を含む連結線を概略的に示す図である。
図8】連結線のバイナリ表現を示す図である。
図9図8に示された連結線から計算された波長スペクトルを含むグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
図面の詳細な説明
図1は、本発明の実施形態による方法を実行するための構成1を概略的に示す斜視図である。構成1は、表面5と、表面5に延びる光軸を有するカメラ4(すなわちカメラ4は表面5に向けられている)を備えている。
【0077】
構成1は、予め定義された線パターンを有するホワイトボード3と、ホワイトボード3を照射するように構成された白色光源2とをさらに備える。カメラ4、表面5及びホワイトボード3は、ホワイトボード3の予め定義された線パターンが表面に投影され、表面5への投影から生じる線パターンがカメラ4の光軸に平行となるように、互いに対して配置されるのが好ましい。ホワイトボード3の予め定義された線パターンは、複数の平行な直線、好ましくは平行な直線の直交グリッドを含んでよい。それぞれの平行な直線は、さらに、等間隔に配置されていてよい。ただし、ホワイトボードの線パターンは、非周期的な線パターンであってもよい。表面5によって反射された線パターンは、ホワイトボード3の予め定義された線パターンから偏差を生じる(図2、3、4参照)。偏差の程度は、表面の粗さ、すなわち質感に直接的に相関している。
【0078】
ホワイトボード3は、光源2によって照射される。ホワイトボード3、すなわちホワイトボード3の予め定義された線パターンは表面5に投影され、投影された線パターンを含む表面5はカメラ4によってキャプチャされる。線パターンを含む表面5は、コーティング層、特にクリアコート層であってよい。コーティングは、物体、好ましくはスプレー工程、好ましくはベルスプレー工程中の車ボディ部品上に塗布されたものであってよい。さらに、塗布されたコーティング層は、続いてフラッシングオフ及び/又は硬化及び/又は冷却されたものであってよい。しかしながら、本発明は、コーティング又はコーティング層の質感を評価し、任意に監視又は制御することに限定されない。
【0079】
図2は、カメラ4によってキャプチャされた表面5の画像データ10を示す。画像データ10は、コーティング層を塗布した直後、及び/又は塗布されたコーティング層をフラッシングオフしている間もしくはその後に、及び/又は塗布されたコーティング層を硬化している間もしくはその後に、及び/又は硬化されたコーティング層を冷却している間もしくはその後にキャプチャされ得る。
【0080】
キャプチャされた画像データ10は、表面5の部分13、23、33と、線パターン11、12;21、22;31、32を含む表面5の部分を含む。線パターン11,12;21,22;31,32は、水平線11,21,31と垂直線12,22,32を含む。部分13、23、33は、例示的な15mm×15mmの面積を有し、一般に、10mm×10mmから50mm×50mmの範囲の面積を有することができる。
【0081】
図3は、図2に示されたキャプチャされた画像データ10を前処理することによって得られる前処理された画像データ20を示す。キャプチャされた画像データ10を処理することは、キャプチャされた画像データ10のコントラスト、シャープネス、明るさなどを増加させることによってキャプチャされた画像データ10を前処理することを含んでよい。
【0082】
図4は、図3に示される前処理された画像データ20を変換して得られたバイナリ画像データ30を示す図である。
【0083】
さらなるステップでは、表面部分13、23、33の少なくとも1つの質感パラメータ75が、処理された画像データ30、すなわちバイナリ画像データ30における抽出された線パターン情報から導出される。少なくとも1つの質感パラメータ75を導出することは、パターン認識アルゴリズムを用いることによって、バイナリ画像データ30から複数の線40、41、42、43、44を抽出することを含んでいる。図5は、図4に示されるバイナリ画像データ30から抽出された複数の線40を示す。図6は、4つの抽出された線41,42,43,44を例示的に示している。
【0084】
少なくとも1つの質感パラメータ75を導出することは、少なくとも2つの抽出された線41、42、43、44を連結することによって少なくとも1つの連結線50、60を形成することをさらに含んでいる。図7は、図6に示される4つの線41、42、43、44に対応する4つのセグメント51、52、53、54を含む連結線50を概略的に示している。図8は、より多数の抽出された線40によって連結された連結線60のバイナリ表現を示している。
【0085】
少なくとも1つの質感パラメータ75を導出することは、高速フーリエ変換によって各連結線60の波長スペクトル73を計算することを含む。図9は、波長を示す横座標71と、波長のスペクトル量を示す縦座標72と、図8に示された連結線60から計算された波長スペクトル73とを含むグラフ70を示している。計算された波長スペクトル73は、波長75にあるスペクトルピーク74を含む。スペクトルピーク74の波長75は、表面5の第1質感パラメータとして導出されることができる。
【符号の説明】
【0086】
1 構成
2 光源
3 ホワイトボード
4 カメラ
5 表面
10 キャプチャされた画像
11 水平線
12 垂直線
13 表面部分
20 前処理された画像
21 水平線
22 垂直線
23 表面部分
30 処理された画像、バイナリ画像
31 水平線
32 垂直線
33 表面部分
40 抽出された線
41 抽出された線
42 抽出された線
43 抽出された線
44 抽出された線
50 連結線
51 セグメント
52 セグメント
53 セグメント
54 セグメント
60 連結線
70 グラフ
71 横座標
72 縦座標
73 波長スペクトル
74 スペクトルピーク
75 スペクトルピークの波長
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9