(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】支持体およびそのような支持体を備える抄紙機
(51)【国際特許分類】
D21F 3/02 20060101AFI20240930BHJP
【FI】
D21F3/02 Z
(21)【出願番号】P 2023534367
(86)(22)【出願日】2021-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2021081974
(87)【国際公開番号】W WO2022122327
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-07-27
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】513102187
【氏名又は名称】バルメット、アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】VALMET AKTIEBOLAG
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】アンデシュ、リーンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】ヨーナス、ベリ
(72)【発明者】
【氏名】アンデシュ、ブラットストロム
(72)【発明者】
【氏名】ピーター、ヨーケボーン
(72)【発明者】
【氏名】アダム、ノルディーン
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-043887(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第03030233(DE,A1)
【文献】独国実用新案第202013009470(DE,U1)
【文献】国際公開第2013/015739(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02085513(EP,A1)
【文献】特開平06-017394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙機のための支持体(50)であって、前記抄紙機は、前記支持体と対抗圧力部材との間に形成された拡張ニップを有し、前記支持体(50)は、
-第1の方向(D)に向いた上面を含むベース体(51)と、
-対抗圧力部材を用いて拡張ニップを形成するための作業面(15)を含むカバー体(52)であって、前記作業面(15)が前記第1の方向(D)に向くように前記ベース体(51)の前記上面に装着されるカバー体(52)と
を備え、
前記カバー体(52)は、第1の材料を含み、前記第1の材料はポリマーであ
り、
前記第1の材料は、60以下のショアD硬度を有する、の支持体。
【請求項2】
前記第1の材料は、50~100のショアA硬
度を有する、請求項1に記載の支持体。
【請求項3】
前記第1の材料は、ポリウレタンである、請求項1
または2に記載の支持体。
【請求項4】
抄紙機のための支持体(50)であって、前記抄紙機は、前記支持体と対抗圧力部材との間に形成された拡張ニップを有し、前記支持体(50)は、
-第1の方向(D)に向いた上面を含むベース体(51)と、
-対抗圧力部材を用いて拡張ニップを形成するための作業面(15)を含むカバー体(52)であって、前記作業面(15)が前記第1の方向(D)に向くように前記ベース体(51)の前記上面に装着されるカバー体(52)と
を備え、
前記カバー体(52)は、第1の材料を含み、前記第1の材料は、ポリウレタンである、支持体。
【請求項5】
前記第1の材料は、エラストマ
ーである、請求項1から
4のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項6】
前記ベース体(51)は、金
属を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項7】
前記ベース体(51)は、前記第1の材料よりも硬いポリマーを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項8】
抄紙機のための支持体(50)であって、前記抄紙機は、前記支持体と対抗圧力部材との間に形成された拡張ニップを有し、前記支持体(50)は、
-第1の方向(D)に向いた上面を含むベース体(51)と、
-対抗圧力部材を用いて拡張ニップを形成するための作業面(15)を含むカバー体(52)であって、前記作業面(15)が前記第1の方向(D)に向くように前記ベース体(51)の前記上面に装着されるカバー体(52)と
を備え、
前記カバー体(52)は、第1の材料を含み、前記第1の材料はポリマーであり、
前記ベース体(51)は、前記第1の材料よりも硬いポリマーを含む、支持体。
【請求項9】
前記ベース体(51)は、強化ポリマ
ーを含む、請求項7
または8に記載の支持体。
【請求項10】
前記カバー体(52)は、前記作業面を備える上側本体部分を含み、前記カバー体はまた、下側本体部分を含み、前記上側本体部分は、前記下側本体部分に固定される、請求項1から
9のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項11】
抄紙機のための支持体(50)であって、前記抄紙機は、前記支持体と対抗圧力部材との間に形成された拡張ニップを有し、前記支持体(50)は、
-第1の方向(D)に向いた上面を含むベース体(51)と、
-対抗圧力部材を用いて拡張ニップを形成するための作業面(15)を含むカバー体(52)であって、前記作業面(15)が前記第1の方向(D)に向くように前記ベース体(51)の前記上面に装着されるカバー体(52)と
を備え、
前記カバー体(52)は、第1の材料を含み、前記第1の材料はポリマーであり、
前記カバー体(52)は、前記作業面を備える上側本体部分を含み、前記カバー体はまた、下側本体部分を含み、前記上側本体部分は、前記下側本体部分に固定される、支持体。
【請求項12】
前記下側本体部分は、ポリマー材料、金属材料、または強化ポリマーのうちの少なくとも1つを含む、請求項
10または11に記載の支持体。
【請求項13】
前記カバー体(52)は、前記カバー体(52)と前記ベース体(51)との間に配置された接着剤によって前記ベース体(51)に固定的に取り付けられる、請求項1から
12のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項14】
抄紙機のための支持体(50)であって、前記抄紙機は、前記支持体と対抗圧力部材との間に形成された拡張ニップを有し、前記支持体(50)は、
-第1の方向(D)に向いた上面を含むベース体(51)と、
-対抗圧力部材を用いて拡張ニップを形成するための作業面(15)を含むカバー体(52)であって、前記作業面(15)が前記第1の方向(D)に向くように前記ベース体(51)の前記上面に装着されるカバー体(52)と
を備え、
前記カバー体(52)は、第1の材料を含み、前記第1の材料はポリマーであり、
前記カバー体(52)は、前記カバー体(52)と前記ベース体(51)との間に配置された接着剤によって前記ベース体(51)に固定的に取り付けられる、支持体。
【請求項15】
前記カバー体(52)は、成形によって前記ベース体(51)に固定的に取り付けられる、請求項1から
14のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項16】
抄紙機のための支持体(50)であって、前記抄紙機は、前記支持体と対抗圧力部材との間に形成された拡張ニップを有し、前記支持体(50)は、
-第1の方向(D)に向いた上面を含むベース体(51)と、
-対抗圧力部材を用いて拡張ニップを形成するための作業面(15)を含むカバー体(52)であって、前記作業面(15)が前記第1の方向(D)に向くように前記ベース体(51)の前記上面に装着されるカバー体(52)と
を備え、
前記カバー体(52)は、第1の材料を含み、前記第1の材料はポリマーであり、
前記カバー体(52)は、成形によって前記ベース体(51)に固定的に取り付けられる、支持体。
【請求項17】
前記カバー体(52)を前記ベース体(51)に装着するために前記ベース体(52)および前記カバー体(52)に取り付けられるように構成されたホルダ(53)をさらに備える、請求項1から
16のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項18】
抄紙機のための支持体(50)であって、前記抄紙機は、前記支持体と対抗圧力部材との間に形成された拡張ニップを有し、前記支持体(50)は、
-第1の方向(D)に向いた上面を含むベース体(51)と、
-対抗圧力部材を用いて拡張ニップを形成するための作業面(15)を含むカバー体(52)であって、前記作業面(15)が前記第1の方向(D)に向くように前記ベース体(51)の前記上面に装着されるカバー体(52)と
を備え、
前記カバー体(52)は、第1の材料を含み、前記第1の材料はポリマーであり、
前記支持体は、
前記カバー体(52)を前記ベース体(51)に装着するために前記ベース体(52)および前記カバー体(52)に取り付けられるように構成されたホルダ(53)をさらに備える、支持体。
【請求項19】
前記ベース体(51)はさらに、前記支持体を前記第1の方向に変位させるための変位デバイスに接続可能である、請求項1から
18のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項20】
紙を製造するための抄紙機であって、請求項1から
19のいずれか一項に記載の支持体(50)を備える、抄紙機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体と対抗圧力部材との間に形成された拡張ニップを有する器具のための支持体に関する。このような装置は、典型的には、拡張ニップがウェブの脱水に使用される抄紙機である。
【背景技術】
【0002】
製紙機械では、拡張ニッププレスは、一般に、新しく形成された湿潤繊維ウェブから水を押し出すために使用されるが、拡張ニップはまた、他の目的、例えばカレンダ加工のために使用されてもよい。拡張ニッププレスは、最初に板紙などの重量グレードのために導入されたが、印刷紙などのより軽量のグレードのために、さらにはティッシュペーパーのためにも使用されるようになってきている。ティシュペーパーを製造する場合、拡張ニッププレスは、拡張ニップロールと、拡張ニップロールの対向ロールとして作用するヤンキー乾燥シリンダとによって形成されることが多い。
【0003】
特にティッシュペーパーを製造するための機械において、拡張ニッププレスは、典型的には、支持体を対向ロールに向かって第1の方向に押すように作用する、支持体の内部または下方の加圧室によって対向ロールに押し付けられる作業面を有する支持体を含む拡張ニップロールによって形成される。拡張ニッププレスの目的は、紙の製造中に繊維ウェブを脱水することである。
【0004】
当技術分野では、典型的には金属材料から作製された剛性支持体が知られているが、剛性支持体は柔軟性がないため、拡張ニップにおいて所望の圧力プロファイルを達成することが困難であり、これは、繊維ウェブの効率的な脱水を防止するとともに、拡張ニップロールおよびニップを通してウェブを搬送するために使用されるフェルトなどの拡張プレスニップの構成要素に過度の摩耗を引き起こす。
【0005】
また、拡張ニップを調整し、剛性支持体に関する既知の欠点を克服するために、弾性的に変形可能なより柔軟でより可撓性の支持体を使用することも知られている。しかしながら、可撓性支持体は、剛性支持体よりも堅牢性が低く、寿命が短い。
【0006】
したがって、剛性支持体および可撓性支持体の両方に欠点がある。したがって、この分野における改善が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、上述の問題を排除すること、または少なくとも最小限に抑えることである。これは、添付の独立請求項による支持体と、そのような支持体を備える抄紙機とによって達成される。
【0008】
本発明による支持体は、支持体と対抗圧力部材との間に形成された拡張ニップを有する器具に適しており、支持体は、
-第1の方向に向いた上面を含むベース体と、
-対抗圧力部材を用いて拡張ニップを形成するための作業面を含むカバー体であって、作業面が第1の方向に向くようにベース体の上面に装着されるカバー体と
を備える。
【0009】
カバー体は、ポリマーである第1の材料を含む。
【0010】
支持体にベース体およびカバー体が装着され、カバー体がポリマーであることによって、支持体は、既知の弾性変形可能な支持体の利点を有すると同時に、金属体などの以前は可撓性がなかった支持体が使用されていた抄紙機に取り付けることができる。カバー体はポリマーを含むため、隣接する構成要素の摩耗は最小限に保たれるが、同時に支持体は、ベース体に起因して安定性が向上する。
【0011】
好適には、第1の材料は60以下のショアD硬度を有する。それにより、第1の材料は、可撓性支持体として機能し、可撓性支持体に一般的に関連するのと同じ利点を有する細長いニップを形成することができるように十分に柔軟かつ可撓性にされる。同時に、第1の材料は、高精度で細長いニップに押し込むことができるように十分に硬く耐久性がある。
【0012】
また、第1の材料は、好適には、50~100のショアA硬度、好ましくは80~100のショアA硬度、より好ましくは90~95のショアA硬度を有することができる。これは、可撓性支持体に関連する利点が達成され、支持体をニップに押し込むことによる周囲の構成要素への損傷を回避または少なくとも最小限に抑えることができるように、第1の材料が柔らかく可撓性であることを意味する。抄紙機で以前に使用された金属支持体を、本明細書に開示された範囲の硬度を有する第1の材料を有する本発明による支持体と交換することも有利であり、これにより、抄紙機における支持および変位デバイスの実質的な再構築を必要とせずに可撓性支持体の利点が可能になる。
【0013】
第1の材料は、好適には、可撓性支持体に特に適したポリウレタンであってもよいが、所与の用途に適した特性を有するように設計されてもよい。
【0014】
代替的に、第1の材料は、ゴムなどのエラストマーであってもよい。これは、弾力性があり柔軟性の高い支持体を提供するという利点を有する。
【0015】
好適には、ベース体は、鋼またはアルミニウムなどの金属を含む。これにより、ベース体は柔軟性がなくなり、カバー体を有利に支持することができる。ベース体の他の好適な材料は、青銅などの金属合金を含む。
【0016】
代替的に、ベース体は、第1の材料よりも硬いポリマーを含む。これは、ベース体のポリマーが、第1の材料について上に与えられた値よりも高いショアA硬度またはショアD硬度を有することを意味する。ベース体に硬質なポリマーを設けることで、安価な材料を用いつつ、カバー体の支持を図ることができる利点がある。有利には、ベース体は、炭素繊維強化ポリマーまたはガラス繊維強化ポリマーなどの強化ポリマーを含んでもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、カバー体は、作業面を含む上側本体部分を含み、カバー本体はまた、下側本体部分を含み、前記上側本体部分は、下側本体部分に固定される。それにより、カバー体は、異なる特性を有する層または部分で作られてもよく、下側本体部分はまた、ベース体へのカバー体の装着を容易にするために、ホルダまたは他のタイプの締結デバイスを含んでもよい。これは、製造をより容易にするのに適しており、異なる特性の層または部分を提供することによって、細長いニッププレスの圧力プロファイルを所望の圧力プロファイルに適合するように設計することもできる。
【0018】
下側本体部分は、ポリマー、金属材料、または強化ポリマーのうちの少なくとも1つを含むことができる。これにより、下側本体部分の剛性を高めることができ、カバー体の上側本体部分に安定した底部を与えることができる。
【0019】
好適には、カバー体は、カバー体とベース体との間に配置された接着剤によってベース体に固定的に取り付けられる。これにより、支持体は、カバー体をベース体上に好適に保持することを容易かつ確実に達成することができる。
【0020】
代替的に、カバー体は、成形によってベース体に固定的に取り付けられる。これにより、カバー体をベース体にさらに効率的に固定することが達成され、取り扱い、輸送、装着、および使用中にカバー体が緩むのを効率的に防止する。
【0021】
他の代替形態では、ベース体は、ベース体およびカバー体に取り付けられるように構成されたホルダを含む。これにより、成形などのより複雑な技術の使用を必要とせずに、カバー体の確実な締結も達成される。これはまた、ベース体へのカバー体の装着を、抄紙機の近くの現場または抄紙機内などの様々な場所で行うことを可能にする。このように、ベース体とカバー体とを別々に製造し、ホルダを用いて接合することにより、支持体の製造が簡単になる。
【0022】
好適には、ベース体はまた、支持体を第1の方向に変位させるための変位デバイスに接続可能である。これにより、支持体を対向ロールに押し付けて、細長いニップを形成することができる。
【0023】
本発明はまた、本発明による支持体を含む抄紙機を備える。
【0024】
本発明の多くのさらなる利点および利点は、以下の詳細な説明を考慮して当業者によって容易に理解されるであろう。
【0025】
次に、添付の図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明による支持体を備える抄紙機の概略図である。
【
図2】支持体と対抗圧力部材との間に拡張ニップが形成された、
図1の抄紙機の拡張ニッププレスの概略断面図である。
【
図3】サポート内に配置された本発明による支持体の断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態を開示する図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態を開示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
すべての図は概略図であり、必ずしも縮尺通りではなく、一般に、それぞれの実施形態を解明するために必要な部分のみを示しているが、他の部分は省略または単に示唆されてもよい。複数の図面に現れる任意の参照番号は、別段の指示がない限り、図面全体を通して同じ物体または特徴を指す。
【0028】
本明細書で「抄紙機」に言及する場合、これはパルプから紙を製造するのに適した機械として理解されるべきである。機械は、ティッシュペーパーを生成するように構成されてもよいが、代替的に、筆記紙または板紙を生成するように構成されてもよい。以下では、ティシュペーパーの製造について言及するが、これは例としてのみ見られるべきであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0029】
「上(upper)」、「下(lower)」、「上部(top)」、および「底部(bottom)」などの用語が以下で使用される場合、これは、上向きの方向として見ることができる第1の方向Dに関連するものとして理解されるべきである。したがって、上側は、第1の方向Dに向く側であり、下側は、第1の方向Dとは反対の方向に向く。また、上部と底部とは、上部を通過する前に底部を最初に通過する第1の方向Dに向かう動きにおいて互いに異なる。
【0030】
図1は、形成セクション4を有する抄紙機1を概略的に開示しており、ヘッドボックス31は、形成ファブリック32とフェルト33との間の隙間にストックを注入するように配置されている。形成ファブリック32は、典型的には有孔ワイヤである。フェルト33は、形成ロール35上を渡るように構成され、フェルト33および形成ファブリック32は、ガイドロール34によってループ状に案内される。形成セクション4からは、新たに形成された湿潤状態の繊維ウェブWが、フェルト33によって、拡張ニップロール5と対抗圧力部材7との間に形成された拡張プレスニップNに搬送される。拡張ニップロール5は、以下により詳細に説明するように、本発明による支持体50を備える。対抗圧力部材7は、適切にはヤンキー乾燥シリンダであってもよいが、いくつかの実施形態では、拡張ニップは、ヤンキー乾燥シリンダに送られる前に、拡張ニップロール5と他の対抗圧力部材7との間に配置されてもよい。
【0031】
拡張ニップロールと対抗圧力部材7との間のプレスニップNでは、ウェブWから水が押し出され、被水性のフェルト33に吸水される。次いで、ウェブWは、ヤンキー乾燥シリンダ7の上を通過し、ヤンキー乾燥シリンダ7からウェブWに伝播する熱によって乾燥される。ヤンキー乾燥シリンダ7は、加熱デバイス8として象徴的に識別される内部加熱を含むが、ヤンキー乾燥シリンダ内または外部からなど、ヤンキー乾燥シリンダ7を加熱する様々な方法が知られており、既知の加熱方法の各々は、本明細書に記載の抄紙機1での使用に適していることに留意されたい。ヤンキー乾燥シリンダ7は、典型的には、ウェブWと接触する表面の温度が約95℃~100℃に達するように加熱されると言えば十分である。ウェブWが拡張プレスニップNに到達するときのウェブWの乾燥固形分は、かなり変化し得るが、典型的な用途では18~30%の範囲である。拡張プレスニップNの後、ウェブWは、ニップ内の線形荷重、対抗圧力部材7の温度、およびウェブWが拡張プレスニップNに到達する前のウェブWの乾燥固形分などの要因に応じて、40~55%の乾燥固形分を有することができる。
【0032】
ウェブWは、典型的には、ヤンキー乾燥シリンダ7からドクターブレード9によって合体され、乾燥済みウェブWの形態で巻取器3に通される。
【0033】
上記のことは、抄紙機1の一般的な説明と見なされるべきであるが、本発明による支持体装置は、支持体と対抗圧力部材との間に拡張プレスニップを有する限り、様々な種類の抄紙機で使用され得ることに特に留意されたい。
【0034】
図2は、拡張ニップロール5と対抗圧力部材7との間に形成された拡張プレスニップNをより詳細に開示しており、拡張ニップロール5が、内面11および外面12を有する可撓性ジャケット10を含むことを示している。可撓性ジャケット10は、典型的にはポリウレタンを含み、機械横断方向に延在する管として成形され、前記機械横断方向は、形成セクション4から巻取器3への方向、すなわちウェブWの主進行方向として定義される機械方向に垂直な方向である。
【0035】
したがって、可撓性ジャケット10は、機械横断方向と一致する軸方向を有し、その軸方向端部において、可撓性ジャケット10は、通常、拡張ニップロール5が回転できるように軸周りに回転可能に配置された端壁に接続される。好適には、拡張ニップロール5は、可撓性ジャケット10および端壁によって形成された密閉空間が加圧空気で満たされ得るように、加圧空気源に接続されてもよい。
【0036】
拡張ニップロール5の内側には、サポート21が装着され、支持体50の上面14が可撓性ジャケット10の内面11に押し付けられるように本発明に係る支持体50を保持する。上面14には、ウェブWが今度は対抗圧力部材7に押し付けられるように可撓性ジャケット10に押し付けられることによって拡張プレスニップNを形成する作業面15(
図3以降を参照)がある。支持体50は、拡張ニップロール5の内面11に沿って、拡張プレスニップN内のウェブWの全幅を押圧することができるように、拡張ニップロール5の回転方向に対して横断方向に伸長され、延在している。この目的のために、支持体50は、ウェブWの意図された幅以上の長さを有することができるが、いくつかの実施形態では、支持体装置50は、ウェブWの意図された幅よりも短い長さを代わりに有することができる。
【0037】
作業面15は、拡張プレスニップNを形成するように作用する表面である。作業面15の形状は、当技術分野で周知のように、対抗圧力部材7によって所望のプレスプロファイルを形成するように適合されてもよい。作業面の設計を扱う1つの従来技術は、米国特許出願公開第2009/0173465号(Metso紙)である。
【0038】
図3は、本発明による支持体50が溝22内の所定位置に保持されたサポート21を、機械横断方向から見た図で開示している。支持体50は、いくつかの実施形態ではホルダ53によって互いに接合されたベース体51およびカバー体52を含む。ベース体51は、少なくとも1つの変位デバイス18に動作可能に接続される。この図では、変位デバイス18は、第1の方向Dへの制御された膨張を可能にするように構成された膨張デバイス18として示されている。膨張デバイスは、少なくとも1つの圧力室18への加圧流体の供給が少なくとも1つの圧力室18の制御された膨張を引き起こし、第1の方向Dにおけるベース体51自体の制御された膨張をもたらすように、圧力源に接続されるように封止され構成された少なくとも1つの圧力室18として示されている。加圧流体は、好適には油圧流体であってもよいが、いくつかの実施形態では他の流体が代わりに使用されてもよい。いくつかの実施形態では、ベース体51の変位は、
図4~
図5を参照してより詳細に説明するように、内部圧力室18を使用する以外の方法で達成される。剛性ベース51を有する支持体50の場合、
図4~
図5に示すような外部変位デバイス18を使用することが有利である。
【0039】
好適には、サポート21は、制御された膨張が第1の方向Dのみに向けられることを確実にするために、第1の方向Dに向く側を除くすべての側でベース体51を覆うように構成されてもよいが、代替的に、ベース体51自体は、他の方向へのベース体51の膨張が不可能であるように作製されてもよい。カバー体52は、ベース体51から第1の方向Dに延在するように装着されているため、ベース体51の変位または膨張は、カバー体52が第1の方向Dに押されることになり、支持体50が拡張ニップロール5の内側の所定位置にあるとき、これは、カバー体52が可撓性ジャケット10の内面11に押し付けられることになり、それにより、拡張プレスニップNが形成される。拡張ニップロール5が使用されるとき、拡張プレスニップNは、支持体50の作業面15が可撓性ジャケット10に押し付けられるとき、すなわち、少なくとも1つの圧力室18が加圧されてベース体51が第1の方向Dに膨張するとき、閉じたニップであると見なされるべきである。ベース体51が膨張しないとき、拡張プレスニップNは代わりに開いていると見なされるべきである。
【0040】
拡張プレスニップでは、圧力プロファイルは、プレスニップの端部の直前に圧力ピークが達成され、圧力ピークの直後に圧力が著しく低下するように非対称であるべきである。このような圧力プロファイルは、紙ウェブWの再湿潤を低減する。ニップの開始時の圧力勾配は、圧力が緩やかに増加するが、その後、ピークがプレスニップの終わりに向かって到達するまで、より大きな勾配で増加するように比較的小さいことも望ましい。拡張プレスニップが使用される各用途の特性に応じて、カバー体52の上面14は、ニップの圧力プロファイルを変更するように調整されてもよい。
図3には、作業面15の両端に形成された入口面28および出口面17を有する作業面15を有する本発明の一実施形態が示されている。使用時に、拡張ニップに入るウェブWは、次いで、最初に入口面18から圧力を受け、続いて作業面15の中間部分が圧力を受け、出口面17からの圧力で終わる。これにより、上述したように、拡張ニップの所望の圧力プロファイルが達成される。
図3に示す実施形態では、入口面28は、カバー体52から延在するリップ27に設けられている。作業面15、特にその入口面28および出口面17を調整することによって、圧力プロファイルを調整することができる。特に、
図3に示すような作業面15は、一例としてのみ見られるべきであり、本明細書では、拡張ニッププレスNに作業面15を設ける目的を示すために設けられていることに留意されたい。しかしながら、本発明の主な特徴は、支持体50自体、および支持体50の耐久性を高める安定したベース体51を提供することを依然として可能にしながら、可撓性支持体の利点を達成するための可撓性カバー体52の使用にある。
【0041】
次に、
図4~
図5を参照して、本発明の支持体50についてより詳細に説明する。
【0042】
上述したように、支持体50は、互いに接合または取り付けられて支持体50自体を形成するベース体51およびカバー体52を含む。カバー体52は、ポリマーである第1の材料を含み、拡張プレスニップNに押し込まれて所望の圧力プロファイルを達成することができる可撓性作業面15の利点をもたらす。第1の材料は、好適には、60以下のショアD硬度を有するか、または代替的に、第1の材料は、50~100のショアA硬度、好ましくは80~100のショアA硬度、より好ましくは90~95のショアA硬度を有する。本明細書でショアA硬度またはショアD硬度に言及する場合、これはASTM D2240に従っていると理解されるべきである。
【0043】
第1の材料として使用するのに好適な材料は、カバー体52として使用するための所望の硬度を達成するように設計することができるという利点を有するポリウレタンなどのポリマーを含む。90~95のショアA硬度は、細長いニップの形成に使用することを可能にし、ニップの所望のプロファイルを達成する支持体50の結果として生じる特性を考慮して非常に望ましいが、より硬くて柔らかい材料も上記の間隔内で好適である。また、ポリウレタンは耐久性が高いため有利である。より柔軟でより柔軟なカバー体を達成するための1つの特に好適な種類のポリマーは、例えばゴムなどのエラストマーである。ゴムまたは類似のエラストマーを使用する場合、カバー体は、所望の圧力プロファイルが達成されるように所望の方法で弾性的に変形可能にされる。他の好適なポリマーも使用され得る。カバー体52は、カバー体52が全体として弾性変形可能である限り、複数の材料を含んでもよい。
【0044】
ベース体51は、好適には可撓性がなく、または容易に変形可能であるが、代わりにカバー体52のための安定したベースを提供するのに役立つ。この目的のために、ベース体51は、好ましくは鋼もしくはアルミニウムなどの金属、または青銅などの金属合金である第2の材料を含む。いくつかの実施形態では、第2の材料は、代わりに、強化ポリマー、例えば炭素繊維強化ポリマーまたはガラス繊維強化ポリマー(ファイバガラス)などの他の十分に剛性の高い材料であってもよい。ベース体51はまた、ベース体51が全体としてカバー体を支持することができる限り、複数の材料を含んでもよい。
【0045】
特に好適な組合せの1つは、ベース体51が鋼を含み、カバー体52がポリウレタンを含むことである。これは、安定性および耐久性を提供すると同時に、拡張プレスニップにおいて所望の圧力プロファイルを達成することができる可撓性作業面15を提供するのに有利である。他の好適な組合せは、ベース体51がアルミニウムまたは青銅を含み、カバー体52がポリウレタンを含むことである。さらに他の好適な組合せでは、ベース体51は強化ポリマーを含み、カバー体52はゴムなどのエラストマーを含む。これはまた、安定したベースおよび可撓な作業面を提供するのにも有利である。
【0046】
図4は、本発明の支持体50の第1の実施形態を開示しており、カバー体52が装着されたベース体51を有する。第1の実施形態では、カバー体52を装着するためのホルダ53が設けられている。ホルダは、カバー体52がベース体51に固定されるように、カバー体52およびベース体51と係合するように構成される。そのようなホルダの例は、オス型/メス型ホルダ、ねじホルダ、突出部/溝ホルダ、および連動ホルダである。代替的に、ホルダ53は、代わりに、ベース体51およびカバー体52の少なくとも一方に塗布される接着剤を含んでもよく、または代替的に、カバー体52は、ベース体51上に成形されてもよい。接着剤または成形が使用される場合、ホルダ53は接合部53の形態である。
【0047】
図4の第1の実施形態では、カバー体52は、ベース体51上に成形され、これは、ベース体51を製造した後、カバー体52を形成するための材料が挿入される金型にベース体51を接続することによって達成される。このように、ベース体51とカバー体52とを確実に接合することにより、カバー体52が非常に確実に取り付けられ、支持体50がベース体51とカバー体52とに分断されるリスクが効率的に最小限に抑えられる。
【0048】
カバー体52は、前述のように作業面15を含み、ベース体51は、変位デバイス18に接続されるように構成され、この第1の実施形態では、ベース体51の下側で支持体50に沿って延在し、好ましくはプレート66によってベース体51に接続される少なくとも1つ、好ましくは2つ以上のホース65の形態である。少なくとも1つのホース65に加圧媒体を供給することにより、ホースが膨張してプレート66が第1の方向に押され、それにより支持体50自体も第1の方向に押される。この膨張デバイス18は、圧力室を使用してベース体51を膨張させることが困難であるように、ベース体51が非常に硬い材料から作られる実施形態に特に好適である。そのような材料の1つは鋼である。
【0049】
いくつかの実施形態では、変位デバイス18は、代わりに、ベース体51の内部に形成され、圧力室61への加圧流体の供給が圧力室61を膨張させ、それによってカバー体52およびベース体51の上部を変位させるためにベース体51も膨張させるように、加圧流体の供給源に接続された圧力室を含んでもよい。このように内部圧力室61を使用することは、ベース体51が例えばポリマーなどの膨張することができる材料を含む実施形態において特に好適である。
【0050】
図5は、第2の実施形態を開示しており、この実施形態では、ベース体51の上面および/またはカバー体52の下面に接着剤を塗布し、接着剤がそれらに作用してそれらを互いに固定することができるようにベース体51およびカバー体52を一緒にすることによって形成される接合部53において、ベース体51およびカバー体52は互いに固定されている。第1の実施形態と同様に、これはカバー体52をベース体51上にしっかりと固定するが、ホルダをベース体51および/またはカバー体52に成形して導入することを回避することができるので、製造も容易にする。
【0051】
変位デバイス18は、この実施形態では、入口63を介して作動流体が供給されるように構成され、接触面64でベース体51に接触する液圧シリンダ62の形態である。この実施形態における作動流体の供給の結果、支持体50は、第1の方向Dに押される。この膨張デバイス18は、ベース体51の内部にチャンバを含むことが望ましくない場合にも有利であり、液圧シリンダ62はまた、支持体50を第1の方向に変位させるために非常に大きな力を高い精度で与えることができる点でも適している。
【0052】
いくつかの実施形態では、カバー体は、上側本体部分と下側本体部分とを含み、上側本体部分は下側本体部分に固定される。このとき、上側本体部分は、作業面15を含む。このように2つの部分を用いてカバー体52を形成することは、上側本体部分に弾性変形可能な第1の材料を用い、下側本体部分に金属や金属合金などのより頑丈な材料や炭素繊維材料やポリマー材料を用いるなど、カバー体52に複数の材料を用いやすくする上で有利である。下側本体部分は、このような実施形態では、カバー体52の製造中に上側本体部分に取り付けられてもよく、または代替的に、カバー体52がベース体51に固定されることに関連して取り付けられてもよい。
【0053】
本明細書に記載の様々な実施形態からの特徴は、そのような組合せが不適であると明示的に述べられていない限り、自由に組み合わせることができることに留意されたい。