IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

特許7562885放射線撮影制御装置、放射線撮影制御方法、プログラムおよび放射線撮影システム
<>
  • 特許-放射線撮影制御装置、放射線撮影制御方法、プログラムおよび放射線撮影システム 図1
  • 特許-放射線撮影制御装置、放射線撮影制御方法、プログラムおよび放射線撮影システム 図2
  • 特許-放射線撮影制御装置、放射線撮影制御方法、プログラムおよび放射線撮影システム 図3
  • 特許-放射線撮影制御装置、放射線撮影制御方法、プログラムおよび放射線撮影システム 図4
  • 特許-放射線撮影制御装置、放射線撮影制御方法、プログラムおよび放射線撮影システム 図5
  • 特許-放射線撮影制御装置、放射線撮影制御方法、プログラムおよび放射線撮影システム 図6
  • 特許-放射線撮影制御装置、放射線撮影制御方法、プログラムおよび放射線撮影システム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】放射線撮影制御装置、放射線撮影制御方法、プログラムおよび放射線撮影システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240930BHJP
   A61B 6/46 20240101ALI20240930BHJP
【FI】
A61B6/00 520M
A61B6/46 506Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2024001516
(22)【出願日】2024-01-09
(62)【分割の表示】P 2019229706の分割
【原出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2024038298
(43)【公開日】2024-03-19
【審査請求日】2024-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】池田 勇一
(72)【発明者】
【氏名】清水 康友
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0136323(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0188191(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0021677(US,A1)
【文献】特開平02-042436(JP,A)
【文献】特開2005-210467(JP,A)
【文献】特開2001-307069(JP,A)
【文献】特開2017-035294(JP,A)
【文献】特開2018-130336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
G01T 1/161-1/166
G06T 1/00-19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を光学カメラ及び赤外線カメラのすくなくとも一方のカメラによって撮影した撮影画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部によって取得された撮影画像から、前記被検体の放射線画像を取得する場合に当該放射線画像に写り込む可能性のある異物を検出する異物検出部と、
前記異物検出部によって前記撮影画像中に異物を検出したことに基づいて、放射線画像の撮影に関する警告情報を生成する警告情報生成部と、
前記警告情報に基づく通知を行う表示制御部と、を有し、
前記画像取得部による前記撮影画像の取得は、前記放射線画像の取得より前に行われることを特徴とする放射線撮影制御装置。
【請求項2】
前記放射線画像の撮影の準備が完了した後、前記画像取得部は前記撮影画像の取得を開始することを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影制御装置。
【請求項3】
前記異物検出部は、機械学習アルゴリズムを用いて前記撮影画像から異物を識別する異物識別部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の放射線撮影制御装置。
【請求項4】
前記異物識別部は、識別の結果を尤度で出力することを特徴とする請求項3に記載の放射線撮影制御装置。
【請求項5】
前記異物検出部は、前記異物識別部による出力結果のうち、閾値以上の尤度を有する異物を検出することを特徴とする請求項4に記載の放射線撮影制御装置。
【請求項6】
前記警告情報生成部は、前記異物検出部によって検出された異物と該異物の位置を示す警告情報を生成することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の放射線撮影制御装置。
【請求項7】
前記放射線撮影制御装置は、前記撮影画像から放射線発生装置による照射野の位置を検出し照射野情報を生成する照射野情報生成部を有し、
前記異物検出部は、前記画像取得部により取得された前記撮影画像のうち、前記照射野情報生成部によって生成された照射野情報に対応する画像領域から異物を検出することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の放射線撮影制御装置。
【請求項8】
前記異物検出部によって検出された異物が複数あった場合に、前記表示制御部は検出された複数の異物のそれぞれを識別可能に表示することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の放射線撮影制御装置。
【請求項9】
前記異物検出部によって検出された異物が複数あった場合に、前記表示制御部は検出された複数の異物のそれぞれを切り替え可能に表示することを特徴とする請求項8に記載の放射線撮影制御装置。
【請求項10】
前記表示制御部は、前記異物検出部によって検出された異物をユーザが確認したか否かを入力する項目を表示することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の放射線撮影制御装置。
【請求項11】
被検体を放射線撮影し放射線画像を取得する放射線撮影装置と、放射線の撮影を制御する請求項1乃至10の何れか1項に記載の放射線撮影制御装置とを含む放射線撮影システム。
【請求項12】
前記画像取得による前記撮影画像の撮影範囲が、前記放射線撮影装置による放射線画像の撮影範囲と少なくとも重複領域を有する撮影範囲であることを特徴とする請求項11に記載の放射線撮影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像の再撮影を抑制する放射線撮影制御装置、放射線撮影制御方法、プログラムおよび放射線撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野における撮影システムとして、放射線を利用した放射線撮影システムが知られている。放射線撮影システムは、放射線発生装置が照射した放射線から対象患者を介して放射線撮影装置に放射線を照射し、放射線撮影装置が放射線画像を生成することで、放射線撮影直後にユーザによる放射線画像の確認が可能となる。
【0003】
特許文献1には放射線撮影による再撮影を抑制する放射線診断装置が開示されている。放射線発生装置に光学カメラを取り付け、光学カメラで撮影した撮影画像を放射線診断装置の画面上に表示する。そして、ユーザが対象患者の姿勢の位置決めをした際の位置決め画像と、光学カメラによって撮影された撮影画像とを比較し、画像間で対象患者の姿勢が一致しなければユーザに通知を行うことで、対象患者の体動による放射線画像の再撮影の発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-24721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、衣服のボタンやネックレスなどの放射線画像に写り込む異物によっても放射線画像の再撮影が必要となる場合がある。近年では、対象患者のプライバシーの観点から対象患者が衣服を身につけたまま放射線画像を撮影する場合や、集団検診などで多数の対象患者に対して放射線画像を撮影する場合など、ユーザが放射線画像に写り込む異物に注意を払いきれないことがある。特許文献1には、放射線画像に写り込む異物による放射線画像の再撮影を抑制する構成について開示されていない。
【0006】
本発明は上記問題を鑑みてなされたものであり、放射線画像の撮影より前に、放射線画像に写り込む可能性のある異物を検出し警告表示をすることで、放射線画像の再撮影の発生を抑制する放射線撮影制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に記載の放射線撮影制御装置は、
被検体を光学カメラ及び赤外線カメラのすくなくとも一方のカメラによって撮影した撮影画像を取得する画像取得部と、画像取得部によって取得された撮影画像から、被検体の放射線画像を取得する場合に当該放射線画像に写り込む可能性のある異物を検出する異物検出部と、異物検出部によって撮影画像中に異物を検出したことに基づいて、放射線画像の撮影に関する警告情報を生成する警告情報生成部と、
前記警告情報に基づく通知を行う表示制御部と、を備え
前記画像取得部による前記撮影画像の取得は、前記放射線画像の取得より前に行われる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、放射線画像の撮影より前に、放射線画像に写り込む可能性のある異物を検出し警告表示をすることで、放射線画像の再撮影の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係る放射線撮影システムのシステム構成図
図2】実施形態1に係る放射線撮影制御装置のハードウェア構成図
図3】実施形態1に係る放射線撮影制御装置のソフトウェア構成図
図4】実施形態1に係る放射線撮影制御装置のフローチャート図
図5】実施形態1に係る放射線撮影制御装置の警告画面の概略図
図6】実施形態2に係る放射線撮影制御装置のソフトウェア構成図
図7】実施形態2に係る放射線撮影制御装置のフローチャート図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に開示する実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0011】
以下で用いる放射線画像に写り込む可能性のある異物は、放射線撮影によって取得される放射線画像に写り込む可能性がある物体を指す。放射線画像に写り込む可能性がある物体として例えば、眼鏡、ボタンなどのプラスチック類、ベルト、ファスナーなどの金属類、Tシャツのプリント、湿布、カイロなどがある。なお、放射線画像に写り込む可能性のある異物は、これらの物体に限定されるものではない。
【0012】
[実施形態1]
まず、本実施形態の放射線撮影システムの構成について、図1から図3を用いて説明する。
【0013】
図1は、本実施形態の放射線撮影システム全体の構成例である。本放射線撮影システムは、ネットワーク140を介して、放射線撮影制御装置100と放射線撮影装置110、放射線発生装置120、画像取得装置130から構成される。なお、ネットワーク140は、有線ネットワークでも無線ネットワークでもよい。
【0014】
放射線撮影制御装置100は、放射線撮影装置110とネットワーク140を介して通信し放射線撮影を制御する、コンピュータなどの情報処理装置で構築される装置である。放射線撮影制御装置100は、また、放射線発生装置120とネットワーク140を介して通信し、放射線発生装置120から放射線を照射した際の情報を取得する。放射線撮影制御装置100は、さらに画像取得装置130と通信し、画像取得装置130の制御、及び、画像取得装置130が撮影した撮影画像を取得する。なお、放射線撮影制御装置100の各構成の一部が同一の装置で構成されてもよい。
【0015】
放射線撮影装置110は、放射線撮影制御装置100からの指示により放射線画像を撮影できる放射線画像の撮影可能状態へと遷移する。そして放射線撮影装置110は、放射線発生装置120と同期を取りながら放射線撮影を実施し、放射線発生装置120から照射された放射線に基づき放射線画像を生成する装置である。なお、放射線撮影装置110の台数は一台に限定されるものではなく、複数台の放射線撮影装置110を用いる構成でも良い。
【0016】
放射線発生装置120は、曝射スイッチ121による放射線照射指示を受けて、操作パネルなどのユーザ操作を受け付ける入力装置等により設定された照射条件を基に、管球122より放射線を発生させる装置である。
【0017】
画像取得装置130は、放射線撮影制御装置100からの指示により被検体の撮影を行い、撮影画像を取得する装置である。本実施形態では、画像取得装置130に光学カメラを用い、光学カメラにより撮影された撮影画像を取得するものとする。なお、本実施形態では、画像取得装置130は管球122に取り付けられ、管球122の放射線発生方向の撮影を行うものとして説明する。即ち、撮影画像の撮影範囲は、放射線画像の撮影範囲と少なくとも重複領域を有する撮影範囲であることを特徴とする。しかしながら、画像取得装置130が取り付けられる位置は管球122に限定されず、被写体の異物を撮影可能な位置であれば設置位置に制限はない。例えば画像取得装置130として室内カメラを用い、撮影室の天井に設置してもよい。図2は、本実施形態の放射線撮影システムを構成する放射線撮影制御装置100のハードウェア構成例である。
【0018】
放射線撮影制御装置100は、ネットワーク140に接続するネットワーク装置201、キーボードなどユーザ操作を受け付ける入力装置202を有する。更に放射線撮影制御装置100は、液晶ディスプレイなど操作画面、放射線画像を表示する表示装置203、装置全体を制御するCPU(Central Processing Unit)204を有する。また放射線撮影制御装置100は、CPU204のワークスペースを提供するRAM(Random Access Memory)205、各種制御プログラム、及び放射線撮影装置110から受信した放射線画像、画像取得装置130から受信した撮影画像などを記憶する記憶装置206を有する。放射線撮影制御装置100を構成する各装置は、メインバス207で接続されており、相互にデータの送受信が可能である。
【0019】
なお、入力装置202と表示装置203を別々の装置として記載しているが、これらの装置が一体となった、例えばタッチパネルを備えた装置としてもよい。
【0020】
図3は、本実施形態の放射線撮影システムを構成する放射線撮影制御装置100のソフトウェア構成例である。
【0021】
図3に示す各機能部は、放射線撮影制御装置100上のCPU204が、記憶装置206に記憶される制御プログラムをRAM205上に読み出して実行することで実現される。
【0022】
放射線撮影制御装置100は、通信部301、システム制御部302、画像取得部303、放射線画像処理部304、表示制御部305、異物検出部306、警告情報生成部309を有する。
【0023】
通信部301は、ネットワーク装置201を制御して通信を行うソフトウェアである。
【0024】
システム制御部302は、通信部301を介して、画像取得装置130の制御、及び放射線発生装置120の照射情報や放射線撮影装置110の撮影情報の取得、並びに各々の状態管理を行う。また、システム制御部302は、放射線撮影制御装置100の基本的な機能を実現するプログラムであり、各部の動作制御を行う。
【0025】
画像取得部303は、通信部301を介して放射線撮影装置110から放射線画像を、画像取得装置130から撮影画像を、各々取得する。
【0026】
放射線画像処理部304は、システム制御部302を介して取得した放射線画像を処理し、放射線撮影制御装置100上で使用する画像を生成する。
【0027】
表示制御部305は、放射線画像処理部304により生成された画像を、表示装置203を介して表示する。
【0028】
更に表示制御部305は、警告情報生成部309が生成した警告情報に基づく通知を、表示装置203を介して表示する。ここで、表示制御部305が行う、警告情報に基づく通知は、例えば、音声メッセージによる通知でも、アラート音でもユーザに確認を促すことができれば形態は問わない。
【0029】
また、表示制御部305は、入力装置202からの操作に基づきシステム制御部302で指示される画像への処理反映や、表示装置203の画面表示の切り替え処理などを行う。
【0030】
異物検出部306は、画像取得部303が画像取得装置130から取得した撮影画像を用いて、撮影画像内の異物を検出する。
【0031】
異物検出部306は、異物識別部307、特徴量格納部308から構成される。異物識別部307が機械学習に基づいて放射線画像に写り込む可能性のある異物を撮影画像中から識別する場合に、特徴量格納部308には、異物識別部307が異物を識別できるように予め学習を行った撮影画像から異物を識別するための特徴量を保持しているものとする。異物識別部307が撮影画像に対して、特徴量格納部308に格納されている異物を識別するための特徴量を用いて撮影画像内の異物を認識する。即ち、異物検出部306は、機械学習アルゴリズムを用いて異物を識別する異物識別部307を有することを特徴とする。
【0032】
なお、本実施形態で機械学習に用いる具体的な方法に制限はなく、例えば異物識別部307の識別にCNN(Convolutional Neural Network)のアーキテクチャとしてResNetを用いても良いし、複数の機械学習の技術を組み合わせた識別を行っても良い。また、異物検出部306は、画像取得部303によって画像取得装置130から得られた撮影画像を用いて、撮影画像から異物を検出できれば、構成に制限はない。
【0033】
ここでは異物検出部306における異物識別部307における識別器としてCNNを用いる場合の構成について説明する。CNNを始めとする機械学習に基づく識別器は、識別器を学習する学習フェーズと、学習された識別器を用いて推論を行う推論フェーズから構成される。
【0034】
以下、CNNを用いた識別器の構成について説明をする。学習フェーズでは、異物識別部307は放射線画像に写り込む可能性のある異物を識別するための識別器の学習を行う。CNNは機械学習技術の中で、教師あり学習に分類される。教師あり学習とは、学習を行う学習画像と、学習画像上で正解領域の情報を示した正解画像を対にした教師データを用いた学習が実施される。正解画像は、本明細書においては放射線画像に写り込む可能性のある異物のそれぞれに対応し、異物のそれぞれをクラスと呼ぶ。クラスを識別する識別器の出力には、大きく分けて画像上から識別されたクラス(異物)の画素を識別する抽出と、画像上に存在する異物のクラスを識別する分類とに分けられる。また出力層にSoftmax関数を用いることで、識別器による出力を尤度で得ることができる。即ち、異物識別部307は、識別の結果を尤度で出力することを特徴とする。
【0035】
本発明においては、ここで説明したモデルや、ネットワーク構造は一例であり、異物識別部307で用いられる識別器は、他の機械学習技術でも、ルールベースの技術によって構成されてもよい。
【0036】
学習フェーズによる識別器の学習が終了すると、異物識別部307は学習された異物検出のための特徴量を特徴量格納部308に記憶する。異物識別部307を構成する識別器の学習フェーズの終了は、ユーザの規定回数により行われても、過学習の判定やearly stopping等の判定により学習の終了条件が規定されてもよい。複数の異物のそれぞれに対応する複数のクラスを識別器に学習させても、それぞれの異物をそれぞれの識別器に学習させてもよい。複数の識別器を学習させた場合は、複数の異物識別のための特徴量を特徴量格納部308に記憶する構成になる。
【0037】
推論フェーズにて、異常識別部307は、特徴量格納部308に記憶されている特徴量を用いて異物の識別を行う。なお、両フェーズは異なる装置にて実行されてもよく、推論フェーズで推論をする際に、学習フェーズによって生成された異物識別のための特徴量を取得できれば装置構成は問わない。
【0038】
異物識別部307における識別器による出力結果が尤度である場合に、異物検出部306は、例えば閾値処理によって画像取得部303によって取得された撮影画像上に異物が存在するか否かを判定する。尤度はすなわち、異物識別部307における機械学習に基づく識別器の識別結果への確信度と言い換えてもよい。よって、異物識別部306は閾値をあらかじめ設定し、所定の閾値以上のクラスに対応する異物を撮影画像上に存在する異物として検出をする。即ち、異物検出部306は、異物識別部307による出力結果のうち閾値以上の尤度を有する異物を検出することを特徴とする。
【0039】
警告情報生成部309は、異物検出部306が異物を検出した際、異物を検出したことを表す警告情報を生成する。その後、警告情報生成部309は、生成した警告情報を画面表示するように表示制御部305に指示する。詳細については、警告情報生成部309の警告画面の構成図にて記載する。
【0040】
即ち、放射線撮影制御装置100は、被検体である対象患者を撮影した撮影画像を取得する画像取得部303と、画像取得部303によって取得された撮影画像から放射線画像に写り込む可能性のある異物を検出する異物検出部306を有する。また放射線撮影制御装置100は、異物検出部306によって異物が検出された場合に、検出された異物に基づいて、放射線画像の撮影に関する警告情報を生成する警告情報生成部309と、警告情報生成部309によって生成された警告情報に基づく通知を表示する表示制御部305を有することを特徴とする。
【0041】
本実施形態における、放射線撮影制御装置100の対象患者撮影時の表示処理の方法を図4で、警告画像の表示に関する構成図を図5で説明する。
【0042】
図4は、放射線撮影制御装置100の通知表示処理のフローチャート図である。
【0043】
ステップS401では、システム制御部302が、ユーザ操作に基づき、放射線撮影制御装置100を検査開始の状態とする。具体的には、システム制御部302が、ユーザ操作により検査指示された対象患者の撮影条件に基づき、放射線撮影装置110へ撮影のための準備を行う指示を、通信部301を介して送信する。放射線撮影装置110は、自身の撮影準備が完了となると、放射線撮影制御装置100へ折り返し準備完了通知を送信する。 放射線撮影制御装置100が準備完了通知を受けた後、システム制御部302は、放射線撮影制御装置100を検査開始の状態とし、後述するステップS406を受け付けるようになる。システム制御部302はまた、画像取得装置130へ撮影開始を行う指示を、通信部301を介して送信する。画像取得装置130は、撮影開始指示を受けた後、放射線撮影制御装置100へ折り返し自身が取得した撮影画像を逐次送信する。
【0044】
ステップS403からS405間の処理は、ステップS406が実行されるか、ユーザ操作による検査の中止が決定されるまで、システム制御部302により実行される。
【0045】
ステップS402では、画像取得部303が、通信部301を介して画像取得装置130から取得した撮影画像を、表示制御部305を介して表示装置203上へ表示する。
【0046】
ステップS403では、異物検出部306が、画像取得部303を介して取得した撮影画像を元に、撮影画像内に異物の検出を行う。
【0047】
ステップS403で異物検出部306により撮影画像中に異物が検出された場合、ステップS404として、警告情報生成部309が、警告情報を生成する。
【0048】
ステップS405では、表示制御部305が、表示装置203上へ警告情報に基づく通知を行う。
【0049】
ステップS403で異物検出部306によって異物が検出されなかった場合、放射線撮影制御装置100は、警告情報の生成を行わない。すなわち、放射線撮影制御装置100はステップS404およびステップS405の処理を実行しない。
【0050】
ステップS406では、ユーザが放射線発生装置120の曝射スイッチ121を押下し、撮影を開始する。放射線画像の撮影が開始されると、放射線発生装置120が管球122から放射線を発生させ、対象患者を通過した放射線が放射線撮影装置110へ通知され、放射線撮影装置が放射線撮影画像を生成する。その後、放射線撮影装置110は、放射線撮影制御装置100へ放射線撮影画像を送信する。また、前記処理と並行して、放射線発生装置120が、前記放射線撮影に関する放射線の照射情報を、放射線撮影制御装置100へ送信する。
【0051】
図5は、本実施形態の放射線撮影制御装置100で表示される通知の概略図である。
【0052】
表示装置203によって表示される表示画面500は、ステップS402にて表示装置203上へ表示される画像取得装置130から取得した撮影画像を含む画面である。なお、実際の撮影画像には対象患者の背後に放射線撮影装置110が存在しているなど、画像取得装置130の撮影範囲内の物体が映り込むが、簡便のため、表示画面500には対象患者の身体情報のみ表現した図を用いる。また、以降の表示画面500に表示される撮影画像及び撮影画像に関連する画像に関しても、特記されない限り同様に対象患者の身体情報のみ表現した図を用いる。
【0053】
図5における通知501は、ステップS404で警告情報生成部309が生成する異物の存在を示す警告情報に基づく通知である。図5(A)では、異物検出部306が、異物を検出した場合に、撮影画像500上に警告する文章を通知501として表示し、ユーザに確認を促す構成としている。しかしながら、ユーザに異物が存在することを提示可能であれば、構成に制限はない。例えば、図5(B)の構成のように、通知501及び異物と判断した撮影画像上の領域を示す異物検出情報502を表示してもよい。ユーザは異物が検出された旨と、当該異物の位置を表示画面500上で即座に把握することができる。また、表示画面500において図5(C)の構成のように、表示制御部304は、警告情報501及び異物と判断した撮影画像上の異物情報を表す異物内容情報503を表示してもよい。また、異物検出情報502と、異物内容情報503を組み合わせることで、異物内容情報503によって、ユーザが確認すべき異物情報を把握でき、また異物検出情報502によって当該異物の位置に対して、把握した異物を確認することが可能となる。
【0054】
即ち、警情報生成部309は、異物検出部306によって検出された異物と該異物の位置を示す警告情報を生成することを特徴とする。
【0055】
なお、上述の表示方法は組み合わされても、構成の一部のみが表示画面500に表示されてもよい。
【0056】
以上により、実施形態1に記載の放射線撮影制御装置100では、放射線画像を取得するより前に取得される撮影画像に対して、異物検出部305が放射線撮影画像に映り込む可能性のある異物を検出し、表示制御部305が表示装置203上に警告に基づく通知を行う。これにより、ユーザは異物に気付くことができるので、放射線画像の再撮影発生の抑制につながり、結果として対象患者への無効被ばくを抑止することが可能となる。
【0057】
(変形例1)
ここでは、異物検出部306によって検出された異物が複数ある場合の処理について図4を用いて説明する。ステップS403において異物検出部306が複数の異物を検出する。異物検出部306における異物識別部307は異物を複数の異なる識別器のクラスとして識別しても、複数の異物を同一の識別器のクラスのそれぞれとして識別してもよい。
【0058】
異物識別部307における識別器が、撮影画像上の異なる画像領域に対して異物を識別した場合に、異物検出部306は、異物識別部307によるそれぞれの異物に対応する尤度に対して閾値処理を実行し、閾値以上の尤度を有するクラスに対応する異物を異物として検出する。また撮影画像上の同一の画像領域を含む画像領域に対して異物識別部307が複数の異物を検出した場合には、複数の異物のそれぞれに対応するクラスの尤度を比較し、尤度の最も高いクラスに対応する異物を、異物として検出する。もしくは、撮影画像上の同一の画像領域の面積が一定以下、もしくは検出された異物領域に対する異物を示す画像領域の割合が一定以下である場合には、異物識別部307における識別器による複数の異物の識別結果をそれぞれ異物として検知してもよい。
【0059】
ステップS404において警告情報生成部309は、異物検出部306から取得した複数の異物情報に対応する異物をそれぞれ識別可能となるように通知501を生成する。例えば、異物検出部306によって検出された異物の数が、同一の表示画面500に対してそれぞれの警告情報に基づく通知の表示が困難である場合には、警告情報生成部309はそれぞれの異物に対して、通知501を生成し、切り替え表示をする。もしくは、警告情報生成部309は、表示画面500に検出された異物を表示できる場合には、複数の異物情報を警告情報として同一の表示画面上に表示させるように警告情報を生成する。表示制御部305に複数の異物情報を同一の表示画面上に表示させる場合には、それぞれの異物が互いに識別可能となるように、例えば表示の濃度や、色を変更して表示させる等の処理を行ってもよい。
【0060】
ステップS405において、表示制御部305は、警告情報生成部309から取得した警告情報を表示画面500に表示をする。表示制御部305は、複数の異物のそれぞれを識別可能に表示する。また表示制御部305による表示は複数の異物のそれぞれを切り替え可能に表示したり、複数の異物情報を同一の表示画面上に表示したりさせる。表示制御部305による表示はこれだけに限定されず、例えば確認すべき異物をリスト形式で表示してもよい。また、異物が複数存在する場合には、表示制御部305はユーザによる確認がなされたか否かを入力するチェックリスト(項目)を表示してもよい。
【0061】
本変形例により、異物検出部306によって複数の異物が検出された場合においても、ユーザは異物の有無や、異物の位置、異物の情報を把握することができ、放射線画像の再撮影による無効被ばくを抑制することができる。
【0062】
(変形例2)
なお、実施形態1では、画像取得装置130に光学カメラ、および取得した撮影画像として光学画像を用いた撮影画像を対象にした異物検出部306が異物の検出を行っている構成について説明を行った。しかしながら、異物検出部306は、画像取得装置130に近赤外線カメラ、および取得した撮影画像として近赤外線画像を用いて異物の検出を行ってもよいし、光学カメラによって撮影された撮影画像と、近赤外線カメラによって撮影された撮影画像とを組み合わせて、異物を検出してもよい。即ち、画像取得部303によって取得される撮影画像は、光学カメラ及び近赤外線カメラのすくなくとも一方のカメラによって撮影された撮影画像である。
【0063】
以下では、複数の撮影画像を用いて異物を検出する方法として、異物検出部306における異物識別部307がCNNに基づく識別器によって異物の識別をする場合の構成について説明をする。
【0064】
異物検出部306における異物識別部307がCNN等の機械学習に基づく識別を行う場合、上述のように教師データが必要となる。上述までは教師データとして、光学カメラによる撮影画像と、正解画像として該当の異物を示すクラスに対応する正解領域の情報を示した正解画像とを対にした教師データを用いて、異物識別部307における識別器の学習を行い、学習によって生成された異物を識別するための特徴量を特徴量格納部308に記憶した。撮影画像が光学カメラや、近赤外線カメラによる複数の撮影画像から構成される場合には、例えば、上述までに説明をした識別器の教師データのように、光学カメラによる撮影画像と、正解領域の情報を示した正解画像を対にした教師データによって学習される識別器と、さらに近赤外線カメラによって撮影される撮影画像と正解領域の情報を示した正解画像を対にした教師データによって学習される識別器とを別途学習する方法がある。光学カメラによる撮影画像を含む教師データと、近赤外線カメラによる撮影画像を含む教師データとで、識別器は異なる特徴を学習することができ、それぞれの識別器による異物の識別結果に基づいて、両者を比較することで異物の検出漏れを防ぐことができ、また異物識別の整合性を担保することができる。
【0065】
また、光学カメラによって撮影された撮影画像と、近赤外線カメラによって撮影された撮影画像とを学習画像とし、正解領域に対応する正解画像として識別器に学習させる方法も挙げられる。光学カメラによる撮影画像と、近赤外線カメラによる撮影画像とを同時に学習画像とすることで、撮影画像間の関係性を踏まえた特徴量を学習にて生成することが可能となる。
【0066】
ここでは、赤外線カメラとして近赤外線カメラを例にとって説明したが、赤外線カメラで取得する波長帯域を近赤外線のみに限定するものではない。
【0067】
なお、異物検出部306に与える情報は、上述のみに限定されず、光学カメラでは取得できないような画像情報を取得できる他の撮影装置によって撮影された画像でも、金属探知機など撮影画像以外の情報を入力する構成でもよい。
【0068】
(変形例3)
変形例2において光学カメラや、近赤外線カメラによって撮影された撮影画像を入力し、異物検出部306によって異物を検出する構成について説明をした。本変形例では、被検体である対象患者の状態に合わせて、異物検出部306が検出を行う対象となる撮影画像もしくは、異物識別器の特徴量とのうち、少なくとも一方を調整する構成について説明をする。
【0069】
例えば、放射線画像の撮影の際に、対象患者によって撮影範囲の状態が異なることが考えられる。例えば衣服を着用した状態と、衣服を着用していない状態とで撮影される撮影画像は撮影画像から異物を検出する難易度も、異物を検出するための特徴量も異なることが考えられる。故に、本変形例においては対象患者の状態をユーザによって入力、もしくは判定することで、異物を検出する異物検出部306への入力と、異物検出部306における異物識別部307による特徴量とのうち、すくなくとも一方を調整する。ユーザが衣服を着用している場合は、ユーザが衣服を着用していない場合に比べ、光学カメラによって撮影された撮影画像から異物を検出することが困難になる。ユーザが衣服を着用している場合には、近赤外線カメラによって撮影された画像をすくなくとも異物検出部306への入力とする。また異物検出部306における異物識別器307が特徴量格納部308から取得する特徴量も近赤外線カメラによって撮影された撮影画像を少なくとも含む教師データを学習することによって生成された特徴量を選択する。
【0070】
本変形例により、異物検出部306は対象患者の状態に適応した異物検出を行うことが可能となり、異物の写り込みを抑制できる。
【0071】
[実施形態2]
次に、本発明の実施形態2を説明する。
【0072】
実施形態1の構成では、画像取得部303が取得した撮影画像から、異物検出部306が放射線撮影画像に写り込む可能性のある異物の検出をしていた。しかしながら、放射線画像には写らない範囲であれば、撮影画像中に異物として検出される物体をユーザが身に着けていても、異物として検出を行わず、通知を行わないことが望ましい場合がある。
【0073】
一般に、放射線発生装置120から発せられた放射線は、コリメータ等によって被検体上の限られた領域に照射され、この領域を照射野と呼ぶ。照射野が対象患者の胸部であった場合、例えば腕に貼った湿布類が撮影画像中に写っていても、放射線画像には写らない範囲であるため、腕に貼った湿布類を異物として検出をせず、通知を行わないほうが望ましい。なぜなら放射線画像に写らない範囲から異物が検出され、ユーザに対して警告表示がなされると、放射線画像の撮影には当該物体が影響しないにも関わらず、ユーザは異物の確認を行う必要があり、作業の手間を増加させてしまう可能性があるためである。
【0074】
そこで実施形態2の構成では、放射線撮影制御装置100による、照射野情報の生成および異物検出部306における異物検出の処理を追加する。以下、図6及び図7を用いて、実施形態1との差分のみ説明する。
図6は、放射線撮影制御装置100のソフトウェア構成例である。本実施形態に係る放射線撮影制御装置100は、実施形態1で説明した構成に加えて照射野情報生成部600を有する。ここで照射野情報生成部600は、撮影画像内の照射野領域の位置情報を表す照射野情報を生成する。本実施形態では、照射野情報生成部600は、例えば画像取得装置130から得られる管球122の照射野ランプ点灯時の撮影画像内の輝度の変化を画像解析し照射野情報を生成するものとする。具体的には、管球122の照射野ランプ消灯後は、放射線撮影制御装置は、記憶装置206にて消灯直前の照射野情報を保持し続けるものとする。
【0075】
即ち、放射線撮影装置100は、撮影画像から放射線発生装置による照射野の位置を検出して照射野情報を生成する照射野情報生成部600を有し、異物検出部306は、画像取得部303により取得された撮影画像のうち、照射野情報生成部600によって生成された照射野情報に対応する画像領域から異物を検出することを特徴とする。
【0076】
なお、照射野情報生成部600によって照射野領域の位置情報を取得できれば具体的な方法に制限はなく、例えば放射線発生装置120から管球122の絞り情報を事前に取得し照射野領域を計算してもよいし、CNN等の機械学習に基づいて計算されてもよい。
【0077】
図7は、本実施形態の放射線撮影制御装置100の警告情報を表示する処理を示すフローチャート図である。
【0078】
ステップS701では、照射野情報生成部600が、撮影画像から、上述した画像解析によって照射野領域を示す照射野情報を生成する。
【0079】
ステップS702では、異物検出部306が、画像取得部303が取得した撮影画像から照射野情報に基づいて、照射野領域に対応する撮影画像上の画像領域に対して異物検出の処理を行う。実施形態1で説明をしたステップS403とは異なり、ステップS702の異物検出によって、照射野情報に基づいて撮影画像上の照射野領域に対応する画像領域に異物が検出された場合に、後段のステップS404、ステップS405の処理を実行する。
【0080】
以上により、実施形態2では、放射線撮影制御装置100が、検査開始時に画像取得部303が取得した撮影画像から、照射野情報生成部600が照射野情報を生成し、異物検出部306は、照射野情報における照射野領域に対応する画像領域に放射線撮影画像に写り込む可能性のある異物が存在するかを表示装置203上に警告表示する。これにより、撮影には影響しない領域から放射線画像に写り込む可能性のある異物を検出しても警告表示を行うことがなくなり、ユーザの確認作業発生による手間の増加を抑止することが可能となる。
【0081】
(その他の実施例)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0082】
100 放射線撮影制御装置
110 放射線撮影装置
120 放射線発生装置
130 画像取得装置
301 通信部
302 システム制御部
303 画像取得部
304 放射線画像処理部
305 表示制御部
306 異物検出部
309 警告情報生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7