(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】コンテンツ視聴解析システムおよびコンテンツ視聴解析方法
(51)【国際特許分類】
H04N 17/00 20060101AFI20240930BHJP
H04N 21/258 20110101ALI20240930BHJP
【FI】
H04N17/00 M
H04N21/258
(21)【出願番号】P 2024021984
(22)【出願日】2024-02-16
【審査請求日】2024-02-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591101434
【氏名又は名称】株式会社ビデオリサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森谷 東二郎
(72)【発明者】
【氏名】萱野 哲平
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 圭亮
【審査官】益戸 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-150382(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0182698(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0095138(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0155956(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 17/00
H04N 21/258
H04H 60/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送を介して放送コンテンツを送信する放送コンテンツ送信と、ネットワークを介して該放送コンテンツと対比するIPコンテンツを送信するIPコンテンツ送信とが実行されるコンテンツ送信における該放送コンテンツ送信と該IPコンテンツ送信との重複視聴を、該放送コンテンツ送信を受信して視聴した放送視聴と該IPコンテンツ送信を受信し
て視聴したIP視聴とをシングルソースで取得したクロスメディアパネルデータから解析するコンテンツ視聴解析システムにおいて、
前記放送コンテンツの出稿を複数時点ランダムに抽出し、前記クロスメディアパネルデータ全体における放送
コンテンツのリーチ%に対する前記IPコンテンツ送信の利用者における該放送コンテンツのリーチ%が100%に収束する近似曲線となる近似曲線モデルを作成するリーチ重複計算モデル作成部と、
前記リーチ重複計算モデル作成部により作成された近似曲線モデルを、前記クロスメディアパネルデータ以外の放送視聴データに適用して推定人口を基に放送視聴のリーチユニークユーザ数と、放送視聴およびIP視聴の重複視聴のリーチユニークユーザ数とを算出するリーチ算出部と
を備えることを特徴とするコンテンツ視聴解析システム。
【請求項2】
請求項1記載のコンテンツ視聴解析システムにおいて、
前記放送コンテンツの放送視聴における接触頻度と、前記IPコンテンツのIP視聴による接触頻度と、放送視聴およびIP視聴による接触頻度との相対的な関係に基づくインプレッション配分モデルを作成するインプレッション配分モデル作成部を
備えることを特徴とするコンテンツ視聴解析システム。
【請求項3】
請求項1記載のコンテンツ視聴解析システムにおいて、
前記IPコンテンツ送信がテレビ配信サービスと動画共有サービスとの2つの送信サービスを含む場合で、前記放送コンテンツ送信と該テレビ配信サービスと該動画共有サービスとが互いに重複部分を含む関係である場合に、前記リーチ重複計算モデル作成部は、各重複部分について前記近似曲線モデルを作成することを特徴とするコンテンツ視聴解析システム。
【請求項4】
放送を介して放送コンテンツを送信する放送コンテンツ送信と、ネットワークを介して該放送コンテンツと対比するIPコンテンツを送信するIPコンテンツ送信とが実行されるコンテンツ送信における該放送コンテンツ送信と該IPコンテンツ送信との重複視聴を、該放送コンテンツ送信を受信して視聴した放送視聴と該IPコンテンツ送信を受信して視聴したIP視聴とをシングルソースで取得したクロスメディアパネルデータから解析するコンテンツ視聴解析方法において、
前記放送コンテンツの出稿を複数時点ランダムに抽出し、前記クロスメディアパネルデータ全体における放送
コンテンツのリーチ%に対する前記IPコンテンツ送信の利用者における該放送コンテンツのリーチ%が100%に収束する近似曲線となる近似曲線モデルを作成するリーチ重複計算モデル作成工程と、
前記リーチ重複計算モデル作成工程により作成された近似曲線モデルを、前記クロスメディアパネルデータ以外の放送視聴データに適用して推定人口を基に放送視聴のリーチユニークユーザ数と、放送視聴およびIP視聴の重複視聴のリーチユニークユーザ数とを算出するリーチ算出工程と
を備えることを特徴とするコンテンツ視聴解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送を介して放送コンテンツを送信する放送コンテンツ送信と、ネットワークを介して該放送コンテンツと対比するIPコンテンツを送信するIPコンテンツ送信とが実行されるコンテンツ送信における該放送コンテンツ送信と該IPコンテンツ送信との重複視聴を解析するするコンテンツ視聴解析システムおよびコンテンツ視聴解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、広告枠の最適化は、下記特許文献1に記載されているように、高度視聴率予測装置(SHARE)等により、ターゲット視聴率を所定の精度よりも高い精度で予測することにより実現しようとするものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来の広告枠の最適化では、いわゆるテレビ放送である放送コンテンツ送信ではある程度の精度のインプレッション等を予測することが可能であっても、ネットワークを介して放送コンテンツと対比するIPコンテンツを送信するIPコンテンツ送信との間の重複を実態値と遜色のない精度でインプレッション等を予測することは困難であった。
【0005】
以上の事情に鑑みて、本発明は、放送コンテンツとこれと対比されるIPコンテンツがIP送信される場合に、これら全体の視聴実態を重複部分を含めて適切に評価することができるコンテンツ視聴解析システムおよびコンテンツ視聴解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明のコンテンツ視聴解析システムは、放送を介して放送コンテンツを送信する放送コンテンツ送信と、ネットワークを介して該放送コンテンツと対比するIPコンテンツを送信するIPコンテンツ送信とが実行されるコンテンツ送信における該放送コンテンツ送信と該IPコンテンツ送信との重複視聴を、該放送コンテンツ送信を受信して視聴した放送視聴と該IPコンテンツ送信を受信して視聴したIP視聴とをシングルソースで取得したクロスメディアパネルデータから解析するコンテンツ視聴解析システムにおいて、
前記放送コンテンツの出稿を複数時点ランダムに抽出し、前記クロスメディアパネルデータ全体における放送コンテンツのリーチ%に対する前記IPコンテンツ送信の利用者における該放送コンテンツのリーチ%が100%に収束する近似曲線となる近似曲線モデルを作成するリーチ重複計算モデル作成部と、
前記リーチ重複計算モデル作成部により作成された近似曲線モデルを、前記クロスメディアパネルデータ以外の放送視聴データに適用して推定人口を基に放送視聴のリーチユニークユーザ数と、放送視聴およびIP視聴の重複視聴のリーチユニークユーザ数とを算出するリーチ算出部と
を備えることを特徴とする。
【0007】
第1発明のコンテンツ視聴解析システムによれば、放送コンテンツの出稿を複数時点ランダムに抽出し、クロスメディアパネルデータ全体における放送コンテンツのリーチ%に対するIPコンテンツ送信の利用者における放送コンテンツのリーチ%が100%に収束する近似曲線となる近似曲線モデルを作成することで、放送視聴のリーチ%に対するIP視聴のリーチ%の実際の重複度合いを反映させつつ、100%に収束する理論的な近似曲線により、実態に即した重複計算モデルを構築することができる。
【0008】
このように、第1発明のコンテンツ視聴解析システムによれば、放送コンテンツとこれと対比されるIPコンテンツがIP送信される場合に、これら全体の視聴実態を重複部分を含めて適切に評価することができる。
【0010】
また、第1発明のコンテンツ視聴解析システムによれば、作成された近似曲線モデルを、例えば、ピープルメータ(PM)を用いて測定された視聴率などの実際の放送視聴データに適用し、これを人口統計に基づいて拡大推計することで、実体に即した、放送視聴のリーチユニークユーザ数と、放送視聴およびIP視聴の重複視聴のリーチユニークユーザ数を算出することができる。
【0011】
このように、第1発明のコンテンツ視聴解析システムによれば、放送コンテンツとこれと対比されるIPコンテンツがIP送信される場合に、これら全体の視聴実態であるリーチユニークユーザ数を重複部分を含めて適切に評価することができる。
【0012】
第2発明のコンテンツ視聴解析システムは、第1発明において、
前記放送コンテンツの放送視聴における接触頻度と、前記IPコンテンツのIP視聴による接触頻度と、放送視聴およびIP視聴による接触頻度との相対的な関係に基づくインプレッション配分モデルを作成するインプレッション配分モデル作成部を
備えることを特徴とする。
【0013】
第2発明のコンテンツ視聴解析システムによれば、放送視聴における接触頻度と、IP視聴による接触頻度と、放送視聴およびIP視聴による接触頻度との相対的な関係に基づくインプレッション配分モデルを作成することで、放送視聴とIP視聴とにおける重複部分を含めたインプレッション配分を実態に即して実現することができる。
【0014】
このように、第2発明のコンテンツ視聴解析システムによれば、放送コンテンツとこれと対比されるIPコンテンツがIP送信される場合に、重複部分を含めたこれら全体の視聴実態であるインプレッション配分を適切に実現することができる。
【0015】
第3発明のコンテンツ視聴解析システムは、第1発明において、
前記IPコンテンツ送信がテレビ配信サービスと動画共有サービスとの2つの送信サービスを含む場合で、前記放送コンテンツ送信と該テレビ配信サービスと該動画共有サービスとが互いに重複部分を含む関係である場合に、前記リーチ重複計算モデル作成部は、各重複部分について前記近似曲線モデルを作成することを特徴とする。
【0016】
第3発明のコンテンツ視聴解析システムによれば、IPコンテンツ送信がテレビ配信サービスと動画共有サービスとの2つの送信サービスを含み、放送コンテンツ送信とテレビ配信サービスと動画共有サービスとが互いに重複部分を含む関係である場合に、第1発明の近似曲線モデルを、これらの各重複部分について適用することができる。
【0017】
このように、第3発明のコンテンツ視聴解析システムによれば、放送コンテンツとこれと対比されるIPコンテンツがテレビ配信サービスと動画共有サービスとの2つの送信サービスで配信される場合にも、これら全体の視聴実態を重複部分を含めて適切に評価することができる。
【0018】
第4発明のコンテンツ視聴解析方法によれば、
放送を介して放送コンテンツを送信する放送コンテンツ送信と、ネットワークを介して該放送コンテンツと対比するIPコンテンツを送信するIPコンテンツ送信とが実行されるコンテンツ送信における該放送コンテンツ送信と該IPコンテンツ送信との重複視聴を、該放送コンテンツ送信を受信して視聴した放送視聴と該IPコンテンツ送信を受信して視聴したIP視聴とをシングルソースで取得したクロスメディアパネルデータから解析するコンテンツ視聴解析方法において、
前記放送コンテンツの出稿を複数時点ランダムに抽出し、前記クロスメディアパネルデータ全体における放送コンテンツのリーチ%に対する前記IPコンテンツ送信の利用者における該放送コンテンツのリーチ%が100%に収束する近似曲線となる近似曲線モデルを作成するリーチ重複計算モデル作成工程と、
前記リーチ重複計算モデル作成工程により作成された近似曲線モデルを、前記クロスメディアパネルデータ以外の放送視聴データに適用して推定人口を基に放送視聴のリーチユニークユーザ数と、放送視聴およびIP視聴の重複視聴のリーチユニークユーザ数とを算出するリーチ算出工程と
を備えることを特徴とする。
【0019】
第4発明のコンテンツ視聴解析方法によれば、放送コンテンツの出稿を複数時点ランダムに抽出し、クロスメディアパネルデータ全体における放送コンテンツのリーチ%に対するIPコンテンツ送信の利用者における放送コンテンツのリーチ%が100%に収束する近似曲線となる近似曲線モデルを作成することで、放送視聴のリーチ%に対するIP視聴のリーチ%の実際の重複度合いを反映させつつ、100%に収束する理論的な近似曲線により、実態に即した重複計算モデルを構築することができる。
【0020】
このように、第4発明のコンテンツ視聴解析方法によれば、放送コンテンツとこれと対比されるIPコンテンツがIP送信される場合に、これら全体の視聴実態を重複部分を含めて適切に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態のコンテンツ視聴解析システムに関する構成を示す模式図。
【
図2】重複計算モデル作成処理における処理内容を示す模式図。
【
図3】インプレッション配分モデル作成処理における処理内容を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態のコンテンツ視聴解析システム1を以下に
図1を参照して説明する。
【0023】
コンテンツ視聴解析システム1は、
図1(A)に示すように、リーチ重複計算モデル作成部11と、リーチ算出部12と、インプレッション配分モデル作成部13と、重複計算実行処理部14とを備え、
図1(B)左側に模式的に示すように、放送を介して放送コンテンツを送信する放送コンテンツ送信と、ネットワークを介して該放送コンテンツと対比するIPコンテンツを送信するIPコンテンツ送信として2つのテレビ配信サービスと動画共有サービスとの計3つの独立した視聴データ(シングルソースで取得したクロスメディアパネルデータ)から、
図1(B)右側に模式的に示すように、3つの視聴データにおける重複視聴を考慮したトータルの解析するシステムである。
【0024】
なお、テレビ配信サービスとしては、例示のTVer(登録商標)のほか、Amazon Prime Video(登録商標)、Netflix(登録商標)、Hulu(登録商標)、さらに、Yahoo(登録商標)や楽天(登録商標)などインターネット事業者が提供する動画配信サービスが含まれ得る。また、動画共有サービスとしては、例示のYouTube(登録商標)のほか、Facebook(登録商標)やXなどにおける動画共有が含まれる。
【0025】
さらに、インターネット回線に接続されたテレビ端末視聴(コネクテッドTV)視聴についても、IPコンテンツ視聴、すなわち、テレビ配信サービスや動画共有サービスによる視聴として取り扱われる。
【0026】
リーチ重複計算モデル作成部11は、放送コンテンツの出稿を複数時点ランダムに抽出し、前記クロスメディアパネルデータ全体における放送視聴のリーチ%に対するIP視聴のリーチ%が100%に収束する近似曲線となる近似曲線モデルを作成する。
【0027】
リーチ算出部12は、リーチ重複計算モデル作成部11により作成された近似曲線モデルを、前記クロスメディアパネルデータ以外の放送視聴データに適用して推定人口を基に放送視聴のリーチユニークユーザ数と、放送視聴およびIP視聴の重複視聴のリーチユニークユーザ数を算出する。
【0028】
インプレッション配分モデル作成部13は、放送コンテンツの放送視聴における接触頻度と、前記IPコンテンツのIP視聴による接触頻度と、放送視聴およびIP視聴による接触頻度との相対的な関係に基づくインプレッション配分モデルを作成する。
【0029】
重複計算実行処理部14は、放送視聴およびIP視聴(テレビ配信サービスと動画共有サービスとのいずれか一方または両方の場合を含む)における重複視聴(
図1(B)右側の各象限)を含めた各種演算処理を実行する。
【0030】
以上が本実施形態のコンテンツ視聴解析システム1の構成である。なお、以上の構成において、各処理部11~14は、それぞれ例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のハードウェアにより構成され、後述する各種処理を実行するプログラムをメモリ(不図示)に記憶保持し、そのプログラムを実行することにより、各種処理を実行するための演算装置(シーケンサ)として機能する。また、各処理部11~14との一部または全部は、他のサーバ(外部サーバ)により構成し、分散処理によりコンテンツ視聴解析システム1を実現してもよい。
【0031】
次に、コンテンツ視聴解析システム1による処理内容(本発明のコンテンツ視聴解析方法)を説明する。
【0032】
なお、本実施形態では、視聴データとして、TV視聴およびインターネット利用の利用履歴(アプリケーション利用およびWEB閲覧)をシングルソースで取得したクロスメディアパネルデータを用いる。加えて、かかるクロスメディアパネルデータでは、パネルのプロフィール(例えば、性別および年代を表す情報、収入を表す情報、職業を表す情報、同居家族の構成を表す情報、視聴意識を表す情報、購入意識を表す情報等の属性情報を含む)やアンケート情報も取得可能となっている。
【0033】
まず、リーチ重複計算モデル作成部11により重複計算モデル作成処理を実行した後、リーチ算出部12により重複視聴のリーチユニークユーザ数を算出する処理について説明する。
【0034】
まず、重複計算モデル作成処理では、例えば、放送コンテンツであるテレビCMの視聴について出稿を数千から数万時点毎にランダム抽出し、クロスメディアパネルデータのパネラー全体におけるテレビCMのリーチ%に対する、IPコンテンツ送信であるテレビ配信サービス(例えばTVer)の利用者におけるテレビCMのリーチ%を算出する。
【0035】
そして、パネラー全体に対する利用者ベースのテレビCMのリーチ%を基に、
図2に示す重複計算モデルを作成する。
【0036】
かかる重複計算モデルは、テレビCMのリーチ%に対するTVer利用者におけるテレビCMリーチ%が共に100%に収束する近似曲線となる近似曲線モデルとして作成される。
【0037】
ここで、パネラー全体に対する利用者ベースのテレビCMのリーチ%を、単に、重複係数を設定して、1.1や0.9を乗ずる場合には、図中に参考として示した重複係数1の直線に対して、パネラー全体のテレビCMのリーチ%が100%の場合または利用者ベースのテレビCMのリーチ%が100%の場合に、重複が極端に小さくまたは大きくなってしまうという不整合を生じてしまう。
【0038】
しかしながら、上述のように、テレビCMのリーチ%に対するTVer利用者におけるテレビCMリーチ%が共に100%に収束する近似曲線となる近似曲線モデルを作成することで、かかる不整合を生じることがない。
【0039】
次に、リーチ算出部12が、リーチ重複計算モデル作成部11により作成された近似曲線モデルを、前記クロスメディアパネルデータ以外の放送視聴データ(例えば、ピープルメータ(PM)を用いて測定された視聴率)などの実際の放送視聴データに適用する。そして、これを人口統計に基づいて拡大推計することで、実体に即した、放送視聴およびIP視聴(TVerの利用者)の特定のテレビCMの重複視聴のリーチユニークユーザ数を算出することができる。なお、このとき、放送視聴のリーチユニークユーザ数についても算出することができる。
【0040】
以上が、リーチユニークユーザ数を算出する処理の詳細である。なお、上記実施形態では、放送視聴とテレビ配信サービス(例えばTVer)の利用者との重複について説明したが、同一の処理を
図1(B)右側の3集合のそれぞれ(正確には重なり合う各象限同士)について適用することで、集合の重複部分についての重複視聴のリーチユニークユーザ数を算出することができる。
【0041】
次に、インプレッション配分モデル作成部13により、放送コンテンツの放送視聴とIPコンテンツ配信であるテレビ配信サービス(例えばTVer)視聴との間のインプレッション配分モデルを作成するインプレッション配分モデル作成処理について説明する。
【0042】
なお、インプレッション配分モデル作成処理では、放送コンテンツの放送視聴とIPコンテンツ配信とでは、取得できるデータが異なることが前提となる。すなわち、放送コンテンツの場合には、例えば、テレビCMの総接触回数が取得できるのに対して、IPコンテンツ配信では、(テレビ配信サービスと動画共有サービスとの両方を含む)総稼働分数が取得される。
【0043】
そのため、まず、インプレッション配分モデル作成処理では、クロスメディアパネルデータからパネル別のテレビCMの総接触回数およびIPコンテンツ配信(TVerとYouTube(登録商標)との両方)の総稼働分数を取得する。
【0044】
次に、パネルをいずれのメディアを利用したかに応じて利用別に分類し、各象限内のメディア接触頻度を算出する。
【0045】
このようにして算出された各象限のメディア接触頻度の相対的な関係性に基づいてインプレッション配分モデルを作成する。
【0046】
例えば、
図3に模式的に示すように、上述のリーチユニークユーザ数を算出する処理により得られたリーチユニークユーザ数UUが、TV only 50 人 , TV&TVer 50 人 , TVer only 50 人であり、データとして得られているインプレッションimpsが、TV 300imps, TVer 200impsである場合に、TVonly は TV&TVer に対し TV 接触頻度は多いまたは少ないかに応じて、インプレッション配分を調整する。
【0047】
具体的には、インプレッションimpsをリーチユニークユーザ数UUで除算することで得られるアベレージフリークエンシーの比に基づく接触頻度によりインプレッション配分を調整する。
【0048】
これにより、インプレッションを単に、各象限のリーチユニークユーザ数に応じて均等配分した場合に生ずる、必ずしもTV&TVer の(A)TV imps (B)TVer imps は、TV only, TVer only に対し同一では無いにもかかわらず、同一となってしまうとの不整合を生ずることがない。
【0049】
このように、本実施形態のインプレッション配分モデル作成処理によれば、(1)放送コンテンツの放送視聴における接触頻度と、(2)IPコンテンツ配信であるテレビ配信サービス(例えばTVer)視聴の接触頻度と、(3)放送視聴およびTVer視聴による接触頻度との相対的な関係に基づくインプレッション配分モデルを作成することで、放送視聴とIP視聴とにおける重複部分を含めたインプレッション配分を実態に即して実現することができる。
【0050】
以上が、インプレッション配分モデル作成処理の詳細である。なお、上記実施形態では、放送視聴とテレビ配信サービス(例えばTVer)とにおけるインプレッション配分モデル作成について説明したが、同一の処理を
図1(B)右側の3集合のそれぞれ(正確には重なり合う各象限同士)について適用することで、集合の重複部分を含めたインプレッション配分モデルを作成することができる。
【0051】
このように、本実施形態のコンテンツ視聴解析システム1およびこれにより実行されるコンテンツ視聴解析方法によれば、放送コンテンツとこれと対比されるIPコンテンツがIP送信される場合に、これら全体の視聴実態を重複部分を含めて適切に評価することができる。
【0052】
なお、本実施形態において、コンテンツとして、テレビCMと同一のコンテンツがIPコンテンツがIP送信される場合について説明したが、比較対象となるコンテンツ同士であれば、必ずしも同一である必要はなく、放送コンテンツに対して対比されるIPコンテンツを選んで適用することができる。
【0053】
また、本実施形態において、コンテンツとしては、CM素材(テレビCM素材)のほか、対象番組(テレビ番組)であってもよく、さらに映像を伴わないラジオ番組やラジオCMであってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…コンテンツ視聴解析システム、11…リーチ重複計算モデル作成部、12…リーチ算出部、13…インプレッション配分モデル作成部、14…重複計算実行処理部。
【要約】
【課題】放送コンテンツとこれと対比されるIPコンテンツがIP送信される場合に、これら全体の視聴実態を重複部分を含めて適切に評価することができるコンテンツ視聴解析システムおよびコンテンツ視聴解析方法を提供する。
【解決手段】コンテンツ視聴解析システム1は、リーチ重複計算モデル作成部11により重複計算モデル作成処理を実行した後、リーチ算出部12により重複視聴のリーチユニークユーザ数が算出される。また、インプレッション配分モデル作成部13により、放送コンテンツの放送視聴とIPコンテンツ配信による視聴との間のインプレッション配分モデルを作成される。
【選択図】
図1