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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20240930BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20240930BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
G06F3/03 400Z
G06F3/041 580
G06F3/01 560
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024022881
(22)【出願日】2024-02-19
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(72)【発明者】
【氏名】吉冨 圭一
【審査官】三田村 陽平
(56)【参考文献】
【文献】特許第7404584(JP,B1)
【文献】特開2011-253266(JP,A)
【文献】国際公開第2023/163114(WO,A1)
【文献】特開2020-204814(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0253478(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/041- 3/047
G06F 3/01
G06F 3/048- 3/04895
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペン型入力デバイスの操作対象面に対する接触と、前記操作対象面上の検出限度距離内におけるペン型入力デバイスの存在との検出を行うセンサ部と、
入力された音データに応じた音を出力する音出力部と、
前記センサ部によりペン型入力デバイスが前記検出限度距離内にて検出されることとなった第1状態が検出されたことに応じて前記音出力部に無音の音データを入力し、前記第1状態となった後において、前記センサ部によりペン型入力デバイスが操作対象面に接触した第2状態となったことに応じて前記音出力部に有音の音データを入力する音出力制御部と
を備える情報処理システム。
【請求項2】
前記音出力制御部は、前記センサ部により前記第2状態からペン型入力デバイスが操作対象面から離間する第3状態となったことに応じて、前記音出力部への音データの入力を停止させる
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記音出力制御部は、前記第2状態から前記第3状態となったタイミングから、当該第3状態が所定時間にわたって継続したことに応じて、前記音出力部への音データの入力を停止させる
請求項2に記載の情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
対話型ディスプレイシステムに対する入力にあたり、触覚アクチュエータを駆動した振動を発生させることで触覚フィードバックが可能とされたペン状のスタイラス(ペン型入力デバイス)を入力装置として用いることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2017-537395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ペン型入力デバイスにて振動が発せられることで、例えば紙等の筆記媒体にペン先を滑らせているときの触感が疑似的に得られることから、ペン型入力デバイスを用いて入力しているユーザは、筆記媒体に筆記しているときに近い感覚を得ることができる。
【0005】
ペン型入力デバイスを用いた入力にあたっては、できるだけ実物の筆記媒体に筆記しているときの感覚に近いことが好ましいという側面がある。
そこで、本発明は、上記した課題を考慮して、ペン型入力デバイスを用いた入力にあたり、現実に筆記媒体に筆記しているときと同様の感覚が損なわれないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決する本発明の一態様は、ペン型入力デバイスの操作対象面に対する接触と、前記操作対象面上の検出限度距離内におけるペン型入力デバイスの存在との検出を行うセンサ部と、入力された音データに応じた音を出力する音出力部と、前記センサ部によりペン型入力デバイスが前記検出限度距離内にて検出されることとなった第1状態が検出されたことに応じて前記音出力部に無音の音データを入力し、前記第1状態となった後において、前記センサ部によりペン型入力デバイスが操作対象面に接触した第2状態となったことに応じて前記音出力部に有音の音データを入力する音出力制御部とを備える情報処理システムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ペン型入力デバイスを用いた入力にあたり、現実に筆記媒体に筆記しているときと同様の感覚が損なわれないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態における情報処理システムの外観構成例を示す図である。
図2】第1実施形態における情報処理装置とペン型入力デバイスとの触覚フィードバックに応じた機能構成例を示す図である。
図3】第1実施形態における接触速度の検出手法例について説明する図である。
図4】第1実施形態における情報処理装置とペン型入力デバイスとが触覚フィードバックに対応して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
図5】第2実施形態における接触速度の検出手法例について説明する図である。
図6】第2実施形態における情報処理装置とペン型入力デバイスとが触覚フィードバックに対応して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
図7】第3実施形態における情報処理装置とペン型入力デバイスとの触覚・筆記音フィードバックに応じた機能構成例を示す図である。
図8】第3実施形態におけるペン型入力デバイスが、触覚・筆記音フィードバックに対応して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
図9】第4実施形態における情報処理装置とペン型入力デバイスとの触覚・筆記音フィードバックに応じた機能構成例を示す図である。
図10】第4実施形態におけるデータ入出力部を説明する図である。
図11】第4実施形態における音出力部のレイテンシーを説明する図である。
図12】第4実施形態における情報処理装置とペン型入力デバイスとが触覚・筆記音フィードバックに対応して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態の情報処理システムの外観構成例を示している。同図に示されるように、本実施形態の情報処理システムは、情報処理装置100とペン型入力デバイス200とを有する。
【0010】
情報処理装置100は、ペン型入力デバイス200による入力操作に応じて情報処理を実行可能とされる。同図の情報処理装置100は、タブレット端末あるいはノート型パーソナルコンピュータ等とされた例を示している。
【0011】
情報処理装置100は、タッチパネル表示部102を備える。タッチパネル表示部102は、タッチパネルと表示部とが組み合わされた部位である。タッチパネル表示部102は、表示面に画像を表示するとともに、表示面に対してペン型入力デバイスや指等の操作体を接触させることによる操作が可能とされる。
【0012】
ペン型入力デバイス200は、ユーザが情報処理装置100のタッチパネル表示部102におけるタッチパネルに対して操作を行うのに用いるペン型の入力デバイスである。
ユーザは、ペン型入力デバイス200を把持し、ペン先をタッチパネル表示部102の表示面に接触させるようにして移動させることで、文字、絵、図形等の手書き入力の操作を行うようにされる。
【0013】
なお、ペン型入力デバイス200を用いた操作として、タッチパネル表示部102に表示されているユーザインターフェース画像に対するポインティング操作なども可能とされてよい。
【0014】
なお、本実施形態のタッチパネル表示部102におけるタッチパネルによるペン型入力デバイス200の検出方式については特に限定されるものではないが、例えば静電容量方式や電磁誘導方式等を挙げることができる。以下の説明においては、静電容量方式が用いられる場合を例に挙げる。
【0015】
情報処理装置100には、ペン型入力デバイス200による入力操作に対応するアプリケーション(ペン操作対応アプリケーション)がインストールされている。
ペン操作対応アプリケーションは、例えばペン型入力デバイス200のペン先をタッチパネル表示部102に対して接触させて行う文字入力、絵描き等の手書き入力操作に応じて描画した文字や絵をタッチパネル表示部102に表示したり、操作により描画された文字や絵をデータ化する処理などを実行可能とされてよい。
【0016】
また、本実施形態の情報処理システムにおいて、ペン型入力デバイス200は、筆記に応じた操作(筆記操作)が行われているときに対応して、ペン型入力デバイス200が振動する。このようなペン型入力デバイス200の振動により、ユーザは、例えば紙等の筆記媒体に筆記しているときに近い触覚が感じられることとなり、実物の筆記具により筆記媒体に筆記しているときに近い感覚を得ることが可能となる。
【0017】
以降の説明において、ペン型入力デバイス200により筆記操作が行われているときの振動発生については、「触覚フィードバック」とも呼ぶ。
【0018】
図2は、本実施形態の触覚フィードバックに応じた情報処理装置100とペン型入力デバイス200との機能構成例を示している。
まず、情報処理装置100の機能構成例について説明する。同図に示される情報処理装置100としての機能は、情報処理装置100としてのハードウェアが備えるCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等がプログラムを実行することにより実現される。
同図の情報処理装置100は、通信部101、タッチパネル表示部102、制御部103、記憶部104、および速度検出部105を備える。
【0019】
通信部101は、ペン型入力デバイス200と無線通信を行う。通信部101が対応する無線通信の方式については特に限定されない。なお、通信部101は、有線によるペン型入力デバイス200との通信に対応可能とされてもよい。
【0020】
タッチパネル表示部102は、表示部121とタッチパネル122(センサ部の一例)とが組み合わされたデバイスである。
表示部121は、制御部103の制御に応じて画像を表示する。
タッチパネル122は、表示部121の表示面に対応して設けられ、ペン型入力デバイス200のペン先の位置を検出し、検出した位置の座標をペン操作情報として出力する。具体的に、静電容量方式のタッチパネル122は、パネル面(操作対象面の一例)に対するペン型入力デバイス200のペン先の接触(または近接)により発生する静電容量を電極で検出することにより、パネル面におけるペン先の位置(座標)を検出してよい。
【0021】
制御部103は、情報処理装置100における各種の制御を実行する。制御部103は、ペン操作対応アプリケーションに対応する処理を実行するアプリケーション対応処理部131を備える。
ペン操作対応アプリケーションに対する操作としてペン型入力デバイス200による筆記操作が行われているとき、タッチパネル122からアプリケーション対応処理部131にペン操作情報が入力される。アプリケーション対応処理部131は、入力されたペン操作情報が入力されたことに応じて、例えば描画などの処理を行う。
【0022】
記憶部104は、情報処理装置100に対応する各種の情報を記憶する。
【0023】
速度検出部105は、パネル面に対するペン型入力デバイス200の接近、接触に応じてタッチパネル122にて発生する静電容量を示す検出信号に基づいて、ペン型入力デバイス200のペン先がパネル面に接触する際の速度(接触速度)を検出する。
【0024】
なお、速度検出部105は、タッチパネル表示部102に備えられてもよいし、制御部103に備えられてもよい。
【0025】
次に、ペン型入力デバイス200の機能構成例について説明する。同図に示されるペン型入力デバイス200の機能は、例えばハードウェアとしてのペン型入力デバイス200が備えるMCU(Micro Controller Unit)等のマイクロプロセッサにプログラムを実行させることにより実現されてよい。
【0026】
同図のペン型入力デバイス200は、通信部201、振動部202、制御部204、および記憶部205を備える。
【0027】
通信部201は、情報処理装置100の通信部101と通信可能に接続する。
【0028】
振動部202(アクチュエータ)は、ペン型入力デバイス200を把持するユーザに筆記操作時の触覚を与えるために振動する部位である。振動部202は、振動制御部241により振動が制御される。
【0029】
制御部204は、ペン型入力デバイス200における各種の制御を実行する。制御部204は、振動制御部241を備える。
【0030】
振動制御部241は、振動波形データ記憶部251が記憶する振動波形データに基づいて振動部202を振動させる。
【0031】
記憶部205は、ペン型入力デバイス200が対応する各種の情報を記憶する。記憶部205は、振動波形データ記憶部251を備える。振動波形データ記憶部251は、振動波形データを記憶する。振動波形データは、ペン型入力デバイス200に所望の振動状態を発生させるための振動波形を示すデータである。
【0032】
上記構成による本実施形態の情報処理システムのペン型入力デバイス200は、触覚フィードバックを与えることができる。つまり、本実施形態のペン型入力デバイス200は、タッチパネル表示部102(タッチパネル122)のパネル面にペン先が接触された状態で筆記に応じた操作が行われているときに対応して、振動するように動作可能とされる。このように筆記操作が行われているときにペン型入力デバイス200が振動することで、実物の筆記具により筆記媒体に筆記しているときの感覚に近づけることが可能となる。
このような触覚フィードバックとして、例えば、ペン型入力デバイス200がパネル面に接触するときの強度(接触強度)に応じて振動の強さを変更するといったように振動が制御できるようにすれば、さらに実物の筆記具により筆記媒体に筆記しているときの感覚に近づけることが可能となって好ましい。
【0033】
そこで、本実施形態の情報処理システムにおいては、ユーザの操作によりペン型入力デバイス200の先端(ペン先)がタッチパネル122のパネル面に接触する際の速度(パネル接触速度)を検出するようにされる。接触速度が高くなるにつれて接触強度も大きくなることから、接触速度と接触強度とは相関性を有する。従って、パネル接触速度は、タッチパネル122のパネル面に対するペン型入力デバイス200の接触強度として扱うことが可能である。そこで、本実施形態のペン型入力デバイス200は、タッチパネル122のパネル面に接触したタイミングで発する振動について、検出された接触速度に応じた強度で振動するようにされる。
【0034】
図3を参照して、本実施形態における接触速度の検出手法例について説明する。静電容量方式による本実施形態のタッチパネル122は、ペン型入力デバイス200のペン先210がパネル面1221に接触していなくとも、パネル面1221から一定以内の検出可能範囲d1内にペン先210が存在している状態では、静電容量の変化が生じることで、ペン先210の位置を検出し、検出信号を出力可能となる。また、静電容量は、検出可能範囲d1内におけるペン先210のパネル面1221までの距離に応じて変化する。
【0035】
ユーザがペン型入力デバイス200によりパネル面1221に筆記を始める際には、ペン型入力デバイス200のペン先210をパネル面1221に接触させるようにする。図3は、ユーザがペン先210をパネル面1221に接触させようとしているときの時間経過に応じたペン先210とパネル面1221の位置関係の変化を示している。
【0036】
ユーザは、ペン型入力デバイス200のペン先210をパネル面1221に接触させようとしているとき、ペン型入力デバイス200のペン先210がパネル面1221に対して或る距離を隔てて離間していた状態からペン先210をパネル面1221に近づけていくようにされる。
【0037】
図3では、まず、ペン型入力デバイス200が、パネル面1221に対して検出可能範囲d1よりも離間した位置からパネル面1221に近づけられていったことにより、時刻t1においてペン先210が検出可能範囲d1にまで到達した。
また、本実施形態においては、速度検出対象範囲d2が定められている。速度検出対象範囲d2は、パネル面1221から検出可能範囲d1よりも短い所定距離までの範囲である。
【0038】
時刻t1以降において、ペン型入力デバイス200がパネル面1221に近づけられていくことにより、時刻t2において、ペン先210が速度検出対象範囲d2に到達した。タッチパネル122は、所定のサンプリングレートによりパネル面1221に対する操作を検出(サンプリング)するようにされている。時刻t2でのサンプリングによるサンプリング番号は「m」であった。サンプリング番号は、例えばサンプリングが1回行われるごとにインクリメントされるようにして付される番号である。このようにペン先210が速度検出対象範囲d2に到達したタイミングに対応するサンプリング番号mは、ペン先210が速度検出開始位置に在るタイミングに対応するサンプリング番号となる。
【0039】
時刻t2以降において、時刻t3、t4による時間経過として示すように、引き続きペン型入力デバイス200のペン先210はパネル面1221に近づけられていくようにされる。この間、タッチパネル122にて発生する静電容量は、パネル面1221に対するペン先210の距離に応じて変化する。
【0040】
時刻t4以降においても引き続きペン型入力デバイス200のペン先210はパネル面1221に近づけられていくようにされ、時刻t5においてペン先210がパネル面1221に接触した。このときのサンプリング番号は「n」であった。速度検出部105は、ペン先210がパネル面1221に接触したか否かは、例えばペン先210がパネル面1221に接触した状態に対応して発生する静電容量が得られているか否かにより判定してよい。このようにペン先210がパネル面1221と接触したタイミングに対応するサンプリング番号nは、ペン先210が速度検出終了位置に在るタイミングに対応するサンプリング番号となる。
【0041】
速度検出部105は、ペン先210がパネル面1221に接触したことに応じて、ペン型入力デバイス200の接触速度を検出する。速度検出部105は、接触速度について、速度検出対象範囲d2をペン先210が速度検出対象範囲d2を移動した時間(時刻t2~時刻t5の期間に相当)により除算して求めることができる。具体的に、速度検出部105は、例えば以下の式1により接触速度Vを算出してよい。式1において、srはサンプリングレート、mは速度検出開始位置に対応するサンプリング番号、nは速度検出終了位置に対応するサンプリング番号である。
V=d2×sr/(n-m)・・・(式1)
【0042】
なお、タッチパネル122は、例えばペン先210が検出可能範囲d1あるいは速度検出対象範囲d2において存在していることが検出されている状態においては、ペン先210が検出されていないときに設定されているサンプリングレートよりも高い所定のサンプリングレートに変更されてよい。このようにサンプリングレートが変更されることに応じて、サンプリング番号mのサンプリングタイミングと実際にペン先210が速度検出開始位置に到達したタイミングとの誤差、およびサンプリング番号nのサンプリングタイミングと実際にペン先210がパネル面1221に接触したタイミングとの誤差を小さくすることが可能となる。このようにタイミングの誤差が小さくなることで、検出される接触速度の精度も向上させることが可能となる。
【0043】
図4のフローチャートを参照して、本実施形態の情報処理装置100とペン型入力デバイス200とが触覚フィードバックに対応して実行する処理手順例について説明する。
【0044】
まず、情報処理装置100が実行する処理手順例から説明する。
ステップS100:情報処理装置100において速度検出部105は、タッチパネル122によるペン先210の検出が開始されるのを待機する。速度検出部105は、図3の時刻t1のように、ペン先210が検出可能範囲d1に到達したことに応じてタッチパネル122にて静電容量が発生し、発生した静電容量に応じた検出信号の出力が開始されたことに応じて、ペン先210の検出が開始されたと判定してよい。
【0045】
ステップS102:速度検出部105は、タッチパネル122によるペン先210の検出が開始されたことに応じて、タッチパネル122のサンプリングレートを高くするように変更する。つまり、同図の処理では、ペン先210が検出可能範囲d1において存在している状態に応じてサンプリングレートの変更が行われるようにされた例が示されている。
【0046】
ステップS104:ステップS102の処理の後、速度検出部105は、ペン先210からパネル面1221までの距離(ペン先・パネル間距離)が速度検出対象範囲d2未満となるのを待機する。つまり、速度検出部105は、図3における時刻t1に対応する状態から、時刻t2に対応する状態となるのを待機する。
なお、ステップS104にて待機しているときに、ペン先・パネル間距離が速度検出対象範囲d2未満となることなく、ペン先210が検出可能範囲d1の外に位置する状態に戻る場合がある。このような場合には、ステップS102により変更したサンプリングレートをデフォルト状態に戻したうえで、同図の処理を終了してよい。
【0047】
ステップS106:速度検出部105は、ペン先・パネル間距離が速度検出対象範囲d2未満となったタイミングに応じて実行されたサンプリングを示すサンプリング番号mを取得する。サンプリング番号mは、速度検出開始位置に対応するサンプリング番号となる。
【0048】
ステップS108:次に、速度検出部105は、ペン先210がパネル面1221に接触するのを待機する。
なお、ステップS108にて待機しているときに、ペン先210がパネル面1221に接触することなく、検出可能範囲d1の外に位置する状態に戻る場合がある。このような場合には、ステップS102により変更したサンプリングレートをデフォルト状態に戻したうえで、同図の処理を終了してよい。
【0049】
ステップS110:速度検出部105は、ペン先210がパネル面1221に接触したことが判定されたタイミングに応じて実行されたサンプリングを示すサンプリング番号nを取得する。サンプリング番号nは、速度検出終了位置に対応するサンプリング番号となる。
【0050】
ステップS112:速度検出部105は、ステップS106により取得した速度検出開始位置に対応のサンプリング番号mと、ステップS110により取得した速度検出終了位置に対応のサンプリング番号nを利用して、例えば式1により接触速度を算出する。
【0051】
ステップS114:速度検出部105は、ステップS112にて算出した接触速度を、通信部101によりペン型入力デバイスに送信させる。
【0052】
次に、ペン型入力デバイス200が実行する処理手順例について説明する。
ステップS200:ペン型入力デバイス200において通信部201は、ステップS114により情報処理装置100から送信された接触速度を受信する。
【0053】
ステップS202:ペン型入力デバイス200において振動制御部241は、ステップS200により受信された接触速度に基づいて、ペン先210がパネル面1221に接触したタイミングに応じてペン型入力デバイス200を振動させる際の振動強度を設定する。
【0054】
ステップS204:振動制御部241は、振動波形データ記憶部251が記憶する振動波形データを用いて、ステップS202により設定した振動強度により振動部202を駆動させる。このように振動部202が振動されることで、ペン型入力デバイス200は、ペン先210がパネル面1221に接触したタイミングで、接触強度に応じた強度で振動する。
ユーザは、例えばペン型入力デバイス200のペン先210をパネル面1221に接触させた後において、パネル面1221に接触させた状態のままペン先210を移動させる筆記操作を行うことができる。この場合、同図においては対応の処理は示されていないが、ペン先210の移動に応じた触覚フィードバックがペン型入力デバイス200に与えられる。
【0055】
<第2実施形態>
続いて、第2実施形態について説明する。ユーザが、いったん、ペン型入力デバイス200のペン先210をパネル面1221に接触させた後において筆記操作を行っている際に、ペン先210を少しだけパネル面1221から離間させてから再度パネル面1221に接触させるような場合がある。この場合、ペン先210は、速度検出対象範囲d2未満の範囲において、パネル面1221からいったん離間してからパネル面1221に接触するような場合がある。このような場合、ペン先210が検出可能範囲d1の外にまで移動せずにパネル面1221に接触することから、図4の処理手順例では、ステップS106以降の処理が実行されないこととなり、接触速度を検出することができない。
そこで、本実施形態においては、速度検出対象範囲d2未満の範囲内でのペン先210の移動に応じて適切に接触速度が検出可能なようにされる。
【0056】
図5を参照して、速度検出対象範囲d2未満の範囲内でのペン先210の移動に応じた接触速度の検出手法例について説明する。
例えば、図5の時刻t11は、図3の時刻t5によりペン先210が接触した状態から或る時間を経過したタイミングである。時刻t5から時刻t11の期間においては、ペン先210はパネル面1221に接触した状態が維持されている。なお、時刻t5から時刻t11の期間においては、例えば筆記操作によりペン先210がパネル面1221上で移動されていてもよい。
時刻t11において、ユーザは、ペン先210をパネル面1221から離間させ始める。時刻t11から時刻t12を経過し時刻t13に至るまでの期間は、ペン先210がパネル面1221に対して離間していく方向(離間方向)に移動されており、パネル面1221に対する距離(離間距離)が時間経過に応じて徐々に大きくなっていく。速度検出部105においては、タッチパネル122はパネル面1221からペン先210までの距離に応じて発生する静電容量の変化を示す検出信号に基づいて、パネル面1221からペン先210までの距離が把握されている。
【0057】
時刻t13に至って、ユーザは、これまでのペン先210の移動方向を反転させ、ペン先210をパネル面1221に接近させる方向(接近方向)に移動させ始めた。時刻t13以降においてペン先210はパネル面1221に接近していくように移動し、時刻t14を経過して時刻t15に至ってパネル面1221に接触する。
このようなペン先210の動きに対応して、速度検出部105は、速度検出対象範囲d2未満の範囲にて、時刻t13にてペン先210の移動方向が離間方向から接近方向に反転したと判定する。速度検出部105は、ペン先210の移動方向が離間方向から接近方向に反転したタイミングで、速度検出開始位置に対応するサンプリング番号mを取得する。また、速度検出部105は、時刻t15においてペン先210がパネル面1221に接触したタイミングで、速度検出終了位置に対応するサンプリング番号nを取得する。速度検出部105は、このように取得したサンプリング番号m、nと、ペン先210の移動方向が離間方向から接近方向に反転した時刻t13におけるペン先210とパネル面1221との距離とを利用して、式1により接触速度を算出する。このようにして、本実施形態の速度検出部105は、速度検出対象範囲d2未満の範囲内でペン先210がパネル面1221に接触する際の接触速度を検出することが可能とされる。
【0058】
図6のフローチャートを参照して、本実施形態の情報処理装置100が接触速度の検出に対応して実行する処理手順例について説明する。
同図において、ステップS300~S314の処理は、図4のステップS100~S114と同様となる。
【0059】
ステップS316:ステップS300~S314の処理によって、図3に示したように、検出可能範囲d1より外から移動されたペン先がパネル面1221に接触したことによる接触速度の検出と送信が行われる。接触速度の送信に応じて、図4のステップS200~S204の処理が実行されることで、ペン型入力デバイス200がパネル面1221に接触したタイミングで接触速度に応じた強度で振動するように触覚フィードバックが与えられる。
そのうえで、本実施形態においては、ステップS314の処理が実行されると、速度検出部105は、その後のユーザの筆記操作のもとで、ペン先・パネル間距離が速度検出対象範囲d2以上となったか否かを判定する。
【0060】
ステップS318:ペン先・パネル間距離が速度検出対象範囲d2未満にある状態のもとで、速度検出部105は、図5の時刻t13として例示したように、ペン先210の移動方向が離間方向から近接方向に反転したか否かを判定する。
ペン先210の移動方向が離間方向から近接方向に反転していないと判定した場合にはステップS316に処理が戻される。
【0061】
ステップS320:ステップS318にてペン先210の移動方向が離間方向から近接方向に反転したと判定された場合、速度検出部105は、当該近接方向に反転したタイミングに応じてタッチパネル122にて実行されたサンプリングを示すサンプリング番号mを、速度検出開始位置に対応するものとして取得する。
【0062】
ステップS322:ステップS320の処理の後、速度検出部105は、ペン先210がパネル面1221に接触するのを待機する。この場合にも、図4のステップS108と同様に、当該ステップS322にて待機しているときに、ペン先210がパネル面1221に接触することなく、検出可能範囲d1の外に位置する状態に戻った場合には、ステップS302により変更したサンプリングレートをデフォルト状態に戻したうえで、同図の処理を終了してよい。
そして、ペン先210がパネル面1221に接触すると、速度検出部105は、ステップS310に処理を戻すようにされる。この場合、速度検出部105がステップS310~S314の処理を実行することで、ペン先・パネル間距離が速度検出対象範囲d2未満の状態のもとでペン先210がパネル面1221に接触した際の接触速度が検出され、検出された接触速度がペン型入力デバイス200に送信される。ペン型入力デバイス200は、送信された接触速度に対応してステップS200~S204(図4)の処理を実行する。これにより、ペン型入力デバイス200は、ペン先210がパネル面1221に接触したタイミングで、ペン先210がパネル面1221に接触したときの強度に応じて振動するようにされる。
【0063】
ステップS324:ステップS316にてペン先・パネル間距離が速度検出対象範囲d2以上になったと判定された場合、速度検出部105は、タッチパネル122にてペン先210の検出が終了したか否かを判定する。ペン先210が検出可能範囲d1の外に位置する状態となって、パネル面1221にて静電容量が発生せず、静電容量に応じた検出信号が出力されない状態となった場合に、ペン先210の検出が終了したと判定される。
ペン先210の検出が終了していないと判定された場合には、ステップS316に処理が戻される。
ペン先210の検出が終了したと判定された場合には、同図の処理が終了される。同図の処理の終了に際しては、ステップS302にて変更されたタッチパネル122のサンプリングレートはデフォルト状態に戻される。
【0064】
<第3実施形態>
続いて、第3実施形態について説明する。本実施形態の情報処理システムにおいて、ペン型入力デバイス200は、触覚フィードバックによる振動に加えて、筆記操作が行われているときに対応して、実物の筆記具により筆記媒体に筆記している場合に生じる音(筆記音)を出力可能とされる。このようにペン型入力デバイス200を用いた筆記操作に応じた筆記音を出力することについては、「筆記音フィードバック」とも呼ぶ。
このように筆記音フィードバックが行われることで、ペン型入力デバイス200を用いてタッチパネル122に筆記しているときに、実物の筆記具により筆記媒体に筆記しているときの感覚にさらに近づけることが可能となる。
【0065】
図7は、本実施形態の触覚・筆記音フィードバックに応じた情報処理装置100とペン型入力デバイス200との機能構成例を示している。同図において、図2と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、主として図2との相違点について説明する。
同図において、情報処理装置100の構成は図2と同様である。
【0066】
同図のペン型入力デバイス200は、音出力部203を備える。また、同図のペン型入力デバイス200は、制御部204において音出力制御部242を備え、記憶部205において筆記音データ記憶部252を備える。
音出力部203は、例えばスピーカを備え、音出力制御部242の制御に応じて筆記音を出力する。なお、音出力部203は、例えば電子音や音声等の音も出力可能とされてよい。
音出力制御部242は、筆記音データ記憶部252が記憶する筆記音データとしてのオーディオデータを音出力部203に入力することで、音出力部203から筆記音を出力させる。
筆記音データ記憶部252は、筆記音データを記憶する。筆記音データは、筆記音を再現するように作成されたオーディオデータである。
【0067】
本実施形態において、情報処理装置100は、触覚・筆記音フィードバックに対応する処理として、図4または図6と同様の処理を実行するようにされてよい。
【0068】
図8のフローチャートは、本実施形態のペン型入力デバイス200が、触覚・筆記音フィードバックに対応して実行する処理手順例を示している。
ステップS400:ペン型入力デバイス200において通信部201は、図4のステップS114もしくは図6のステップS314により情報処理装置100から送信された接触速度を受信する。
【0069】
ステップS402:ペン型入力デバイス200において振動制御部241は、ステップS400により受信された接触速度に基づいて、ペン先210がパネル面1221に接触したタイミングに応じてペン型入力デバイス200を振動させる際の振動強度を設定する。
【0070】
ステップS404:また、音出力制御部242は、ステップS400により受信された接触速度に基づいて、ペン先210がパネル面1221に接触したタイミングに応じてペン型入力デバイス200から出力させる筆記音の音量(筆記音量)を設定する。
【0071】
ステップS406:振動制御部241は、振動波形データ記憶部251が記憶する振動波形データを用いて、ステップS402により設定した振動強度により振動部202を駆動させる。
【0072】
ステップS408:また、音出力制御部242は、筆記音データ記憶部252が記憶する筆記音データを用いて、ステップS404により設定した筆記音量により音出力部203から筆記音を出力させる。
同図においては対応の処理は示されていないが、パネル面1221に接触した状態のペン先210の移動に応じて、触覚・筆記音フィードバックがペン型入力デバイス200に与えられてよい。
【0073】
なお、音出力部203と音出力制御部242としての機能は、情報処理装置100に備えられることで、筆記音フィードバックが情報処理装置にて行われるようにされてよい。
【0074】
本実施形態の変形例として、情報処理装置100のアプリケーション対応処理部131は、速度検出部105が検出した接触速度に基づいて、筆記操作に応じた描画を行ってよい。具体的には、例えば筆記具として筆のようなものを使用して筆記操作に応じた描画を行うようにされている場合において、接触速度が所定以上の場合には、筆が強い勢いで筆記媒体に接触されたことにより、インク(さらに塗料、墨等)などが筆記媒体上で飛び散るような描画が行われるようにされてよい。
【0075】
なお、上記各実施形態において、ペン先210がパネル面1221に接触したタイミングでの触覚フィードバックは、接触速度に応じて振動強度を変更するほか、振動時間、振動波形等も変更するようにされてよい。
【0076】
<第4実施形態>
続いて、第4実施形態について説明する。本実施形態においては、筆記音フィードバックとして、ペン型入力デバイス200における筆記音の出力と併せて、情報処理装置100においても筆記音を出力可能に構成される。
このように情報処理装置100が筆記音を出力可能とされることで、情報処理装置100による筆記音の出力とペン型入力デバイス200における筆記音の出力とが同時に行われることとなって、筆記音量を増加させることが可能となり、十分な筆記音量での筆記音フィードバックを容易に実現できる。また、情報処理装置100による筆記音の出力では、筆記音量を変更することも容易となることから、例えば物の筆記具により筆記媒体に筆記しているときの感覚に近くなるように、あるいはユーザの好みに沿うように筆記音量を調整することも可能となる。
また、情報処理装置100が筆記音を出力可能とされることで、筆記音フィードバックの機能を有さないペン型入力デバイスをユーザが使用している場合であっても、ペン型入力デバイスの振動による触覚フィードバックと情報処理装置100による筆記音フィードバックとによる触覚・筆記音フィードバックを実現することができる。
【0077】
以下の本実施形態の説明においては、ペン型入力デバイスも筆記音フィードバックの機能を有するように構成された場合を例に挙げる。また、以下の本実施形態の説明では、先の各実施形態における接触速度に応じて振動強度、筆記音量を変更する機能は省略した構成を例に挙げる。
【0078】
図9は、実施形態の触覚・筆記音フィードバックに応じた情報処理装置100とペン型入力デバイス200との機能構成例を示している。同図において、図7と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、主として図7との相違点について説明する。
【0079】
同図の情報処理装置100においては、音出力部106が備えられる。音出力部106は、例えば音声回路とスピーカとを備え、フィードバック制御部132(音出力制御部の一例)の制御に応じて筆記音を出力する。なお、音出力部106は、例えば電子音や音声等の音も出力可能とされてよい。
【0080】
また、本実施形態の情報処理装置100の制御部103においては、フィードバック制御部132(音出力制御部の一例)が備えられる。フィードバック制御部132は、触覚・筆記音フィードバックに対応する制御を実行する。具体的に、フィードバック制御部132は、ペン型入力デバイス200における触覚・筆記音フィードバックとの開始と終了とを制御する。また、フィードバック制御部132は、筆記音データ記憶部141が記憶する筆記音データとしてのオーディオデータを音出力部106に入力することで、音出力部106から筆記音を出力させるようにして、情報処理装置100における筆記音フィードバックの制御を実行する。
【0081】
図10は、音出力部106の内部回路において備えられるキュー161を示したものである。キュー161は、音データADを入力し、例えばFIFO(First-In-First-Out)により出力するようにされる。音出力部106において、キュー161から出力された音データは、例えばD/A変換によりアナログの音信号に変換され、増幅回路により増幅されてスピーカから音として出力されてよい。
【0082】
説明を図9に戻す。また、本実施形態の情報処理装置100の記憶部104においては、筆記音データ記憶部141が備えられる。筆記音データ記憶部141は、筆記音データを記憶する。
【0083】
本実施形態におけるペン型入力デバイス200の構成は、図7と同様である。
【0084】
また、本実施形態の情報処理装置100においては、同図に示されるように、図7において備えられていた速度検出部105は省略されてよい。
【0085】
本実施形態の情報処理装置100において備えられる音出力部106は、消費電力の節減のため、音出力の処理を実行していないときにはスリープモードとなるようにされている。つまり、音出力部106は、音データが入力されていないときにはスリープ状態に設定され、音データが入力されることに応じてスリープ状態から起動して動作状態となり、音出力の処理を開始するようにされる。
【0086】
図11は、音データの入力に応じた音出力部106の状態遷移例を示している。
音出力部106がスリープ状態にあるときに音データが入力された場合には、まず、ウォームアップによる待機時間(ウォームアップ期間Tw)が生じる。次に、ウォームアップ期間Twを経過すると、音出力部106における信号処理に応じた待機時間(システム遅延期間Ts)が生じる。システム遅延期間Tsが経過して音の出力が開始される。つまり、音出力部106がスリープ状態のときに音データが入力された場合には、入力された音データに応じた音が出力されるまでに、ウォームアップ期間Twとシステム遅延期間Tsとによるレイテンシー(遅延)が発生する。
一方、音出力部106がスリープ状態から起動した動作状態にあるときに音データが入力された場合には、ウォームアップ期間Twは生じない。この場合には、システム遅延期間Tsを経て音の出力が開始される。つまり、音出力部106が動作状態のときに音データが入力された場合には、入力された音データに応じた音が出力されるまでに、システム遅延期間Tsによるレイテンシー(遅延)が発生する。
このように、音データが入力されたタイミングから当該入力された音データに応じた音が出力されるまでに生じるレイテンシーは、動作状態のときよりスリープ状態のときのほうが長くなる。
【0087】
例えば、情報処理装置100における筆記音の出力処理において、ペン型入力デバイス200のペン先がタッチパネル表示部102のパネル面1221に接触したことが検出されたタイミングで音データを音出力部106に入力させてもよい。しかしながら、このような構成では、音出力部106は、音データが入力されたタイミングでスリープ状態から起動することになる。この場合、音出力部106に入力された音データに応じた音は、ウォームアップ期間Twとシステム遅延期間Tsとによる比較的長い遅延を経てから出力されることになる。この場合、ユーザは、ペン型入力デバイス200のペン先をタッチパネル表示部102のパネル面1221に接触させてからある程度遅れたタイミングで筆記音を聞くことになる可能性がある。筆記音の出力によっては、現実に筆記媒体に筆記しているときと同様の感覚をユーザに体験させることができるが、上記のような筆記音の遅延が生じることによっては、このような感覚が損なわれることになる。
【0088】
そこで、本実施形態の情報処理装置100のフィードバック制御部132は、以下のようにして筆記音の出力の開始に対応する制御(音出力開始制御)を実行することで、音出力部106から出力される筆記音の遅延を短縮するようにされる。
図3を再度参照して、本実施形態における音開始制御について説明する。ユーザは、ペン型入力デバイス200を使用して筆記を開始しようとする際には、ペン型入力デバイス200のペン先を、検出可能範囲d1(検出限度距離の一例)の外の位置からパネル面1221に近づけていくようにされる。そして、ペン型入力デバイス200のペン先がパネル面1221に近づいていく過程で、ペン先が検出可能範囲d1到達すると、タッチパネル122にてペン先の検出が開始される。
【0089】
ペン先の検出が開始されたことに応じて情報処理装置100のフィードバック制御部132は、音出力開始制御として、音出力部106のキュー161に対する無音データの入力を開始する。無音データは、例えば音量レベルがゼロによる無音に対応する音データである。
無音データが入力されることで、音出力部106は、これまでのスリープ状態から起動し、図11に示したウォームアップ期間Twからの動作を開始する。
【0090】
上記のようにペン先の検出が開始されたタイミングからある時間を経過すると、ペン型入力デバイスのペン先がパネル面1221に接触する状態となる。このようにペン先がパネル面1221に接触したことがタッチパネル122にて検出されると、フィードバック制御部132は、キュー161に入力する音データを、これまでの無音データから、筆記音データ記憶部141が記憶する筆記音データ(有音データの一例)に切り替える。
【0091】
このように無音データから筆記音データに切り替えが行われることで、ペン型入力デバイス200のペン先がパネル面1221に接触するよりも前のタイミングから音出力部106を起動させることができる。このため、ペン先がパネル面1221に接触したタイミングでは、音出力部106は、ウォームアップ期間Twとシステム遅延期間Tsとによる遅延時間を経過して音出力が可能な状態となっている場合がある。この場合、音出力部106は、ペン先がパネル面1221に接触したタイミングで入力された筆記音データについて遅延時間を経ることなく筆記音として出力する。この結果、ユーザの感覚としては、ペン先がパネル面1221に接触したタイミングで情報処理装置100から出力される筆記音を聞くことができるので、ほぼ遅延を感じることがない。
また、ペン先がパネル面1221に接触したタイミングでは、まだ音出力部106は、ウォームアップ期間Twとシステム遅延期間Tsとによる遅延時間を経過していない可能性もある。しかしながら、ペン先がパネル面1221に接触したタイミングでは、既にある程度の遅延時間(ウォームアップ期間Twとシステム遅延期間Ts)を経過していることから、短い遅延時間を経て筆記音を出力することができる。この場合、筆記音は、ペン先がパネル面1221に接触したタイミングから或る程度の遅延時間を経過してから出力されるものの、遅延時間としては短いことから、ユーザの聴感上では、ほとんど遅延を感じないか、遅延を感じたとしても違和感を覚えにくい。
このようにして、本実施形態においては情報処理装置100から出力される筆記音の遅延を解消もしくは緩和される。この結果、ユーザがペン型入力デバイス200を用いて筆記を行っているとき、現実に筆記媒体に筆記しているときと同様の感覚を損なわないようにすることができる。
【0092】
図12のフローチャートを参照して、本実施形態の情報処理装置100とペン型入力デバイス200とが触覚・筆記音フィードバックに対応して実行する処理手順例について説明する。
【0093】
まず、情報処理装置100が実行する処理手順例について説明する。
ステップS500:情報処理装置100においてフィードバック制御部132は、タッチパネル122によるペン先210の検出が開始される状態(第1状態の一例)となるのを待機する。フィードバック制御部132は、図4のステップS100の処理と同様に、ペン先210が検出可能範囲d1(図3の時刻t1)に到達したことに応じてタッチパネル122にて静電容量が発生し、発生した静電容量に応じた検出信号の出力が開始されたことに応じて、ペン先210の検出が開始されたと判定してよい。
【0094】
ステップS502:ステップS500にてタッチパネル122によるペン先210の検出が開始されたことを判定すると、フィードバック制御部132は、スリープ状態の音出力部106のキュー161に対する無音データの入力を開始する。音出力部106は無音データの入力が開始されたことに応じて起動する。
【0095】
ステップS504:ステップS502にてキュー161への無音データの入力が開始された後、フィードバック制御部132は、タッチパネル122にてペン先がパネル面1221に接触した状態(第2状態の一例)となったことが検出されるのを待機する。
【0096】
なお、当該ステップS504にてペン先がパネル面1221に接触することなく、検出可能範囲d1の外に移動したことでペン先が検出されなくなった場合には、フィードバック制御部132は、これまでの無音データの入力を停止させたうえで、ステップS500に処理を戻してよい。この場合、音出力部106は、無音データの入力の停止に応じてスリープ状態に移行してよい。
【0097】
ステップS506:ステップS504にてペン先がパネル面1221に接触したことが検出されると、フィードバック制御部132は、これまでの無音データに代えて、筆記音データ記憶部141が記憶する筆記音データのキュー161への入力を開始する。
【0098】
ステップS508:また、ステップS504にてペン先がパネル面1221に接触したことが検出されたことに応じて、フィードバック制御部132は、ペン型入力デバイス200にフィードバック開始命令を送信する。フィードバック開始命令は、ペン型入力デバイス200に触覚・筆記音フィードバックの動作の開始を指示するコマンドである。
【0099】
ステップS510:ステップS506、S508の処理の後、フィードバック制御部132は、タッチパネル122にてペン先がパネル面1221から離間した状態(第3状態の一例)となったことが検出されるのを待機する。
【0100】
ステップS512:ステップS510にてペン先がパネル面1221から離間したことが検出されたことに応じて、フィードバック制御部132は、ステップS506により開始したキュー161への筆記音データの入力を停止する。筆記音データの入力が停止されたことに応じて、音出力部106はスリープ状態に遷移する。
【0101】
ステップS514:ステップS510にてペン先がパネル面1221から離間したことが検出されたことに応じて、フィードバック制御部132は、ペン型入力デバイス200にフィードバック開始命令を送信する。フィードバック開始命令は、ペン型入力デバイス200に触覚・筆記音フィードバックの動作の停止を指示するコマンドである。
【0102】
次に、ペン型入力デバイス200が実行する処理手順例について説明する。
ステップS600:ペン型入力デバイス200において、制御部204は、ステップS508により情報処理装置100から送信されたフィードバック開始命令を受信する。
【0103】
ステップS602:ステップS600にてフィードバック開始命令が受信されたことに応じて、振動制御部241は、例えば予め定められた振動強度による振動部202の振動を開始させる。
【0104】
ステップS604:また、ステップS600にてフィードバック開始命令が受信されたことに応じて、音出力制御部242は、筆記音データ記憶部252が記憶部する筆記音データを音出力部203に入力することで、筆記音の出力を開始させる。
【0105】
上記のようにステップS602、S604の処理が実行されることにより、ペン型入力デバイス200のペン先がパネル面1221に接触したのと同じとみなせるタイミングで、ペン型入力デバイス200にて触覚・筆記音フィードバックの動作が開始される。
【0106】
ステップS606:ステップS602、S604により触覚・筆記音フィードバックの動作が解された後の或るタイミングで、制御部204は、ステップS514により情報処理装置100から送信されたフィードバック停止命令を受信する。
【0107】
ステップS608:フィードバック停止命令が受信されたことに応じて、振動制御部241は、振動部202の駆動を停止させる。
ステップS610:また、フィードバック停止命令が受信されたことに応じて、音出力制御部242は、音出力制御部242からの筆記音の出力を停止させる。
【0108】
なお、上記の図12の処理によれば、ステップS510によりペン型入力デバイス200のペン先がパネル面1221から離間したことが検出されると、ただちにステップS512、S514の処理によって、情報処理装置100の筆記音フィードバックとペン型入力デバイス200の触覚・筆記音フィードバックが停止される。
しかしながら、ユーザが筆記を続けているときの筆記の内容によっては、ペン先をパネル面1221から短時間で離間させ、すぐに再びペン先をパネル面1221に接触させた状態に戻す場合もある。このような状況のもとでは、ペン先がパネル面1221から離間する都度に、情報処理装置100の筆記音フィードバックとペン型入力デバイス200の触覚・筆記音フィードバックが停止されると、かえってユーザが違和感を覚え、現実に筆記媒体に筆記しているときと同様の感覚が損なわれる可能性がある。つまり、ペン型入力デバイス200のペン先がパネル面1221から離間する時間が短い状況では、情報処理装置100の筆記音フィードバックとペン型入力デバイス200の触覚・筆記音フィードバックとが継続されることが好ましい場合がある。
そこで、本実施形態の変形例として、ステップS510にてペン型入力デバイス200のペン先がパネル面1221から所定時間以上継続して離間した状態となったか否かを判定するようにされてよい。
このような処理とすることで、ユーザがペン型入力デバイス200のペン先がパネル面1221から離間させても、すぐにパネル面1221に接触させるように筆記している状況では、情報処理装置100の筆記音フィードバックとペン型入力デバイス200の触覚・筆記音フィードバックが継続される。これにより、ユーザが違和感を覚えにくくなり、現実に筆記媒体に筆記しているときと同様の感覚が損なわれにくくなる。
【0109】
なお、上述の情報処理装置100、ペン型入力デバイス200等としての機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述の情報処理装置100、ペン型入力デバイス200等としての処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるHDD、SSD等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。配信サーバの記録媒体に記憶されるプログラムのコードは、端末装置で実行可能な形式のプログラムのコードと異なるものでもよい。すなわち、配信サーバからダウンロードされて端末装置で実行可能な形でインストールができるものであれば、配信サーバで記憶される形式は問わない。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に端末装置で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0110】
100 情報処理装置、101 通信部、102 タッチパネル表示部、103 制御部、104 記憶部、105 速度検出部、106 音出力部、121 表示部、122 タッチパネル、131 アプリケーション対応処理部、132 フィードバック制御部、141 筆記音データ記憶部、161 キュー、200 ペン型入力デバイス、201 通信部、202 振動部、203 音出力部、204 制御部、205 記憶部、210 ペン先、241 振動制御部、242 音出力制御部、251 振動波形データ記憶部、252 筆記音データ記憶部、1221 パネル面
【要約】
【課題】ペン型入力デバイスを用いた入力にあたり、現実に筆記媒体に筆記しているときと同様の感覚が損なわれないようにする。
【解決手段】ペン型入力デバイスの操作対象面に対する接触と、操作対象面上の検出限度距離内におけるペン型入力デバイスの存在との検出を行うセンサ部と、入力された音データに応じた音を出力する音出力部と、センサ部によりペン型入力デバイスが検出限度距離内にて検出されることとなった第1状態が検出されたことに応じて音出力部に無音の音データを入力し、第1状態となった後において、センサ部によりペン型入力デバイスが操作対象面に接触した第2状態となったことに応じて音出力部に有音の音データを入力する音出力制御部とを備えて情報処理システムを構成する。
【選択図】図12
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12