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  • 特許-印刷インキ組成物、積層体、及び包装材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】印刷インキ組成物、積層体、及び包装材
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/102 20140101AFI20240930BHJP
   C09D 11/03 20140101ALI20240930BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240930BHJP
   B32B 9/02 20060101ALI20240930BHJP
   B32B 23/08 20060101ALI20240930BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
C09D11/102
C09D11/03
B05D7/24 302C
B32B9/02
B32B23/08
B65D65/40 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2024052904
(22)【出願日】2024-03-28
【審査請求日】2024-04-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100209347
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】冨山 亮太
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-80724(JP,A)
【文献】特開2022-101885(JP,A)
【文献】特開2007-246822(JP,A)
【文献】特開2013-234238(JP,A)
【文献】特開平10-67959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂(A)と、ロジン誘導体(B)と、キレート剤(C)と、を含有する印刷インキ組成物であって、前記バインダー樹脂(A)が、ポリアミド樹脂(A1)及びニトロセルロース樹脂(A2)を含有し、前記ロジン誘導体(B)の酸価が150mgKOH/g以上であり、前記キレート剤(C)がリン酸エステル構造を有し、前記ロジン誘導体(B)の固形分換算での含有量が、前記印刷インキ組成物の固形分の総質量に対して、1~15質量%であり、前記キレート剤(C)の固形分換算での含有量が、前記印刷インキ組成物の固形分の総質量に対して、0.5~10質量%である、印刷インキ組成物。
【請求項2】
以下の評価方法により評価されるアルカリ脱離性において、印刷層の総面積に対して脱離した印刷層の面積の割合が50%以上である、請求項1に記載の印刷インキ組成物。
[評価方法]
前記印刷インキ組成物を、ザーンカップ#3を用いて測定される25℃における粘度が16秒となるように、メチルシクロヘキサン:酢酸n-プロピル:イソプロパノール=5:3:2(質量比)の混合溶剤を用いて希釈を行い、印刷インキを調製し、片面をコロナ放電処理した延伸ポリプロピレンの処理面に、グラビア印刷機により、前記印刷インキを塗布する。その後、80℃で10秒間熱風乾燥を行い、得られた印刷物を3cm×3cmにカットし、70℃の1.5%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、3分間撹拌する。水酸化ナトリウム水溶液から引き上げた印刷物を水洗した後、目視で観察する。
【請求項3】
前記キレート剤(C)は、リン酸エステルがチタン原子に結合した構造を有する有機金属化合物である、請求項1に記載の印刷インキ組成物。
【請求項4】
前記バインダー樹脂(A)の固形分換算での含有量が、前記印刷インキ組成物の固形分の総質量に対して、25~75質量%である、請求項1に記載の印刷インキ組成物。
【請求項5】
前記ニトロセルロース樹脂(A2)の固形分に対する、前記ポリアミド樹脂(A1)の固形分の質量比が、1.5~9である、請求項1に記載の印刷インキ組成物。
【請求項6】
前記ロジン誘導体(B)の酸価が、150~280mgKOH/gである、請求項1に記載の印刷インキ組成物。
【請求項7】
前記ポリアミド樹脂(A1)の重量平均分子量が、30,000以下である、請求項1に記載の印刷インキ組成物。
【請求項8】
前記ニトロセルロース樹脂(A2)のJIS K 6703:1995に準拠した粘度測定によって規定される種類及び粘度記号が、H1/4、H1/2、H1又はH2である、請求項1に記載の印刷インキ組成物。
【請求項9】
さらに、塩素化ポリオレフィン樹脂を含有する、請求項1に記載の印刷インキ組成物。
【請求項10】
グラビア印刷用である、請求項1~のいずれか1項に記載の印刷インキ組成物。
【請求項11】
プラスチックフィルムと、前記プラスチックフィルムの少なくとも一方の面上に、請求項10に記載の印刷インキ組成物を用いて形成された印刷層と、を備える、積層体。
【請求項12】
請求項11に記載の積層体を備える包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷インキ組成物、積層体、及び包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や日用品等の商品の包装に用いられる、プラスチックフィルム等の基材を用いた包装材には、装飾や必要物性の担保等を目的として、使用される基材上にグラビアインキ等の印刷インキによる印刷が施される。例えば、基材の表側に印刷が施され、内容物と接触する基材の裏側には印刷が施されていないといった、表刷り印刷方式と言われる簡単な構成の印刷物などが一般的である。表刷り印刷に用いられる印刷インキとしては、要求される意匠性や諸物性を達成するために、ポリアミド樹脂とニトロセルロース樹脂を混合した印刷インキが一般的に用いられ、さらに必要に応じて各種添加剤が印刷インキに配合されている。
【0003】
前記添加剤としては、キレート剤が一般的に広く用いられている。印刷インキがキレート剤を含有すると、得られる印刷層の基材に対する密着性、耐熱性、耐ブロッキング性が向上することが知られている。キレート剤としては、周期表4族に属する遷移金属であるチタンやジルコニウムを含む化合物が広く用いられている。中でも、価格等の面でチタンを含むキレート剤が広く使用されている。
【0004】
ところで、近年、マイクロプラスチック問題をはじめとする、環境問題に対する取り組みとして、プラスチックフィルムの再利用が求められている。しかし、包装材に用いられているプラスチックフィルムを再利用する場合、印刷インキが混入すると、再生プラスチックフィルムの色相の悪化や、物性の低下を引き起こすため、再利用する際にアルカリ溶液で処理することにより、印刷インキをプラスチックフィルムから予め脱離させておくことが求められる。
【0005】
例えば、特許文献1には、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、アセチルアセトン構造を有するキレート剤を含有するアルカリ脱離用印刷インキ組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2022-080724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1で提案されたアルカリ脱離用印刷インキ組成物を用いて形成した印刷層のアルカリ脱離性は、必ずしも充分ではない。したがって、脱離のために厳しい条件が必要となり、より温和な条件下で容易にアルカリ脱離を可能とするための、さらなる改善が求められている。
【0008】
上述のチタンを含むキレート剤としては、アセチルアセトン構造や、アセト酢酸エチル構造を有するキレート剤が広く使用されている。これらのキレート剤は、粘着テープ等に含まれる成分と反応し、有色の化合物を生成することにより、粘着テープを貼付した部分の印刷層が黄変してしまい、外観不良となる。包装材の印刷層に粘着テープを貼付する機会はよくあるため、上記外観不良改善のための、さらなる改善も求められる。さらに、キレート剤の種類によっては、印刷インキ組成物の安定性が損なわれるという問題もあることが判明した。
【0009】
本発明は、アルカリ脱離性が高く、粘着テープを貼付した際の耐黄変性に優れた印刷層が得られ、かつ安定性の高い印刷インキ組成物を提供することを課題とする。加えて、包装材として求められる各種物性を満足する印刷層が得られる印刷インキ組成物を提供することも課題とする。前記物性とは、基材に対する密着性、耐ブロッキング性、耐熱性、耐湿摩擦性である。さらに、前記印刷インキ組成物を用いて形成された印刷層を有する積層体、及び前記積層体を含む包装材を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の態様を有する。
[1] バインダー樹脂(A)と、ロジン誘導体(B)と、キレート剤(C)と、を含有する印刷インキ組成物であって、前記バインダー樹脂(A)が、ポリアミド樹脂(A1)及びニトロセルロース樹脂(A2)を含有し、前記ロジン誘導体(B)の酸価が150mgKOH/g以上であり、前記キレート剤(C)がリン酸エステル構造を有し、前記ロジン誘導体(B)の固形分換算での含有量が、前記印刷インキ組成物の固形分の総質量に対して、1~15質量%であり、前記キレート剤(C)の固形分換算での含有量が、前記印刷インキ組成物の固形分の総質量に対して、0.5~10質量%である、印刷インキ組成物。
[2] 前記バインダー樹脂(A)の固形分換算での含有量が、前記印刷インキ組成物の固形分の総質量に対して、25~75質量%である、[1]に記載の印刷インキ組成物。
[3] 前記ニトロセルロース樹脂(A2)の固形分に対する、前記ポリアミド樹脂(A1)の固形分の質量比が、1.5~9である、[1]又は[2]に記載の印刷インキ組成物。
[4] 前記ロジン誘導体(B)の酸価が、150~280mgKOH/gである、[1]~[3]のいずれかに記載の印刷インキ組成物。
[5] 前記ポリアミド樹脂(A1)の重量平均分子量が、30,000以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の印刷インキ組成物。
[6] 前記ニトロセルロース樹脂(A2)のJIS K 6703:1995に準拠した粘度測定によって規定される種類及び粘度記号が、H1/4、H1/2、H1又はH2である、[1]~[5]のいずれかに記載の印刷インキ組成物。
[7] さらに、塩素化ポリオレフィン樹脂を含有する、[1]~[6]に記載の印刷インキ組成物。
[8] グラビア印刷用である、[1]~[7]のいずれかに記載の印刷インキ組成物。
[9] プラスチックフィルムと、前記プラスチックフィルムの少なくとも一方の面上に、[1]~[8]のいずれかに記載の印刷インキ組成物を用いて形成された印刷層と、を備える、積層体。
[10] [9]に記載の積層体を備える包装材。
【発明の効果】
【0011】
本発明によればアルカリ脱離性が高く、粘着テープを貼付した際の耐黄変性に優れた印刷層が得られ、かつ安定性の高い印刷インキ組成物が提供できる。さらに、包装材として求められる各種物性を満足する印刷層が得られる印刷インキ組成物を提供することもできる。前記物性とは、基材に対する密着性、耐ブロッキング性、耐熱性、耐湿摩擦性である。さらに、前記印刷インキ組成物を用いて形成された印刷層を有する積層体、及び前記積層体を含む包装材も提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の積層体の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための単なる例示であって、本発明をこの実施の形態にのみ限定することは意図されない。本発明は、その趣旨を逸脱しない限り、様々な態様で実施することが可能である。
本明細書中でのバインダー樹脂(A)およびロジン誘導体(B)の含有量は、すべて固形分換算である。
「固形分」とは、印刷インキ組成物に含まれる成分のうち、溶剤等の揮発する媒体を除いた成分を指し、最終的に印刷層を形成することになる成分であり、具体的にはJIS K 5601-1-2:2008に準拠して測定したものである。
樹脂の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される。
【0014】
≪印刷インキ組成物≫
本発明の一実施形態に係る印刷インキ組成物は、バインダー樹脂(A)と、酸価が150mgKOH/g以上のロジン誘導体(B)と、リン酸エステル構造を有するキレート剤(C)と、を含む。
印刷インキ組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、必要に応じてバインダー樹脂(A)、ロジン誘導体(B)、キレート剤(C)以外の成分(任意成分)をさらに含有してもよい。
【0015】
<バインダー樹脂(A)>
本発明に用いるバインダー樹脂(A)は、ポリアミド樹脂(A1)及びニトロセルロース樹脂(A2)を含有する。
【0016】
(ポリアミド樹脂(A1))
ポリアミド樹脂(A1)としては、多塩基酸と多価アミンとの重縮合物であり、有機溶剤に可溶な熱可塑性ポリアミドが挙げられる。
多塩基酸としては、例えばアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、スベリン酸、グルタル酸、フマル酸、ピメリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、テレフタル酸、1,4- シクロヘキシルジカルボン酸、トリメリット酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などが挙げられる。また、これら多塩基酸に加えて、酢酸、プロピオン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸等のモノカルボン酸を併用することもできる。
多価アミンとしては、例えばポリアミンなどが挙げられる。ポリアミンとしては、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メチルアミノプロピルアミン等の脂肪族ジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン;シクロヘキシレンジアミン、イソホロンジアミン等の脂環族ポリアミン;キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ポリアミンなどが挙げられる。また、これら多価アミンに加えて、n-ブチルアミン、オクチルアミン、ジエルアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン等の一級又は二級モノアミンを併用することもできる。
【0017】
ポリアミド樹脂(A1)の具体例としては、植物性材料から作られる脂肪酸や、それを原料とした重合脂肪酸を用いた熱可塑性ポリアミド樹脂が一般的である。植物を原材料とする脂肪酸の代表例として、トール油、大豆油、やし油、パーム油、カシューナッツオイル、米ぬか、カカオ豆などが挙げられる。一方、重合脂肪酸としては、ダイマー酸やそれを水素還元した水添ダイマー酸などが挙げられる。
これらのポリアミド樹脂(A1)は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0018】
ポリアミド樹脂(A1)の重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう。)は、30,000以下が好ましく、500~30,000がより好ましく、700~20,000がさらに好ましく、1,000~15,000が特に好ましい。
ポリアミド樹脂(A1)のMwが上記下限値以上であると、得られる印刷層の耐摩擦性や耐熱性が向上しやすい。ポリアミド樹脂(A1)のMwが上記上限値以下であると、溶解性が向上やすく、かつ、得られる印刷層の基材に対する密着性、アルカリ脱離性、光沢性が向上しやすい。
【0019】
ポリアミド樹脂(A1)の酸価は、30mgKOH/g以下が好ましく、20mgKOH/g以下がより好ましく、15mgKOH/g以下が特に好ましい。ポリアミド樹脂(A1)の酸価が上記上限値以下であると、印刷インキ組成物の安定性が向上しやすい。ポリアミド樹脂(A1)の酸価は、JIS K 0070:1992に準拠した中和滴定法により測定することができる。
ポリアミド樹脂(A1)のアミン価は、30mgKOH/g以下が好ましく、20mgKOH/g以下がより好ましく、15mgKOH/g以下が特に好ましい。ポリアミド樹脂(A1)のアミン価が上記上限値以下であると、印刷適性が向上しやすい。
【0020】
ポリアミド樹脂の軟化点は、80~160℃が好ましく、85~150℃がより好ましく、90~140℃が特に好ましい。ポリアミド樹脂の軟化点が上記下限値以上であると、得られる印刷層の耐熱性や耐ブロッキング性が向上しやすい。ポリアミド樹脂の軟化点が上記上限値以下であると、基材に対する密着性が向上しやすい。
ポリアミドの軟化点は、軟化点は、JIS K 2207:2006に準拠して測定される値である。
【0021】
ポリアミド樹脂としては、市販品を用いてもよい。
ポリアミド樹脂の市販品としては、例えば花王社製の製品名「レオマイドシリーズ」、;ハリマ化成グループ社製の製品名「ニューマイドシリーズ」、;株式会社T&K TOKA社製の製品名「トーマイドシリーズ」;エアープロダクツジャパン株式会社製の製品名「サンマイドシリーズ」;築野食品工業株式会社製の製品名「ベジケムグリーンシリーズ」が挙げられる。
【0022】
(ニトロセルロース樹脂(A2))
ニトロセルロース樹脂(A2)のJIS K 6703:1995に準拠した粘度測定によって規定される種類及び粘度記号は、H1/4、H1/2、H1、又はH2が好ましく、H1/2、H1、又はH2がより好ましい。ニトロセルロース樹脂(A2)の粘度記号がH1/4より低粘度であると、得られる印刷層の耐摩擦性、耐熱性、耐ブロッキング性が低下しやすい。ニトロセルロース樹脂(A2)の粘度記号がH2より高粘度であると、得られる印刷層の基材に対する密着性、耐もみ性、インキ安定性、アルカリ脱離性が低下しやすい。ニトロセルロース樹脂の種類がLであると、印刷インキ組成物に対する相溶性がやや低下しやすい。すなわち、ニトロセルロース樹脂(A2)の前記種類及び粘度記号がH1/4、H1/2、H1、又はH2であると、印刷インキ組成物に対する相溶性が向上しやすく、印刷インキ組成物の安定性が向上しやすい。さらに、得られる印刷層の耐摩擦性、耐熱性、耐ブロッキング性、基材に対する密着性、耐もみ性、インキ安定性、アルカリ脱離性が向上しやすい。
【0023】
前記種類は、ニトロセルロース中の窒素分に応じて規定される。
窒素分が10.7%以上、11.5%未満であるニトロセルロースの場合、種類はLとなる。
窒素分が11.5%以上、12.2%以下であるニトロセルロースの場合、種類はHとなる。
前記種類及び粘度記号は、所定の固形分濃度におけるニトロセルロース溶液中で、所定の鋼球が標線間を落下する時間(落下時間)に応じて規定される。
前記種類及び粘度記号がH1/8であるニトロセルロースの場合、固形分濃度が25質量%であるニトロセルロース溶液中での鋼球の落下時間が1.6~2.9秒である。
前記種類及び粘度記号がH1/4であるニトロセルロースの場合、固形分濃度が25質量%であるニトロセルロース溶液中での鋼球の落下時間が3.0~8.9秒である。
前記種類及び粘度記号がH1/2であるニトロセルロースの場合、固形分濃度が20質量%であるニトロセルロース溶液中での鋼球の落下時間が3.0~4.9秒である。又は、固形分濃度が25質量%であるニトロセルロース溶液中での鋼球の落下時間が9.0~22.0秒である。
前記種類及び粘度記号がH1であるニトロセルロースの場合、固形分濃度が20質量%であるニトロセルロース溶液中での鋼球の落下時間が5.1~9.0秒である。
前記種類及び粘度記号がH2であるニトロセルロースの場合、固形分濃度が12.2質量%であるニトロセルロース溶液中での鋼球の落下時間が1.5~2.5秒である。又は、固形分濃度が20質量%であるニトロセルロース溶液中での鋼球の落下時間が15.0~40.0秒である。
これらのニトロセルロース(A2)は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0024】
ニトロセルロース(A2)としては、市販品を用いてもよい。
ニトロセルロース(A2)の市販品としては、例えば後述の実施例で使用されているニトロセルロースが挙げられる。
【0025】
<ロジン誘導体(B)>
本実施形態の印刷インキ組成物がロジン誘導体(B)を含むことにより、印刷層をアルカリ溶液などで脱離させ、プラスチックフィルムを再利用する場合に、印刷層の脱離が促進されやすい。
ロジン誘導体(B)としては、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル、水添ロジン、重合ロジン、テルペンフェノール樹脂が挙げられる。
これらのロジン誘導体(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
ロジン誘導体(B)の酸価は、150mgKOH/g以上であり、150~280mgKOH/gが好ましく、160~270mgKOH/gがより好ましく、170~260mgKOH/gが特に好ましい。ロジン誘導体(B)の酸価が上記下限値以上であると、アルカリ脱離性が向上しやすい。ロジン誘導体(B)の酸価が上記上限値以下であると、印刷インキ組成物のインキ安定性及び得られる印刷層の耐水性が向上しやすい。ロジン誘導体(B)の酸価は、JIS K 0070:1992に準拠した中和滴定法により測定することができる。
なお、本実施形態の印刷インキ組成物は、得られる印刷層の基材に対する密着性、光沢性をさらに向上させる目的で、酸価が上記下限値未満のロジン誘導体をさらに含有しても良い。
【0027】
ロジン誘導体(B)の軟化点は、80~150℃が好ましく、90~140℃がより好ましく、95~130℃が特に好ましい。ロジン誘導体(B)の軟化点が上記下限値以上であると、得られる印刷層の耐ブロッキング性、耐熱性が向上しやすい。ロジン誘導体(B)の軟化点が上記上限値以下であると、得られる印刷層の基材に対する密着性が向上しやすい。ロジン誘導体(B)の軟化点は、JIS K 5601-2-2:1999に準拠した環球法により測定することができる。
【0028】
ロジン誘導体(B)としては、市販品を用いてもよい。
ロジン誘導体(B)の市販品としては、例えばハリマ化成グループ社製の製品名「ハリマックシリーズ」、「ハリフェノールシリーズ」、「ハリエスターシリーズ」、「ハリタックシリーズ」、;荒川化学工業社製の製品名「パインクリスタルシリーズ」、「マルキードシリーズ」、「タマノルシリーズ」、;イーストマンケミカル社製の製品名「フォーラルシリーズ」、が挙げられる。
【0029】
<キレート剤(C)>
キレート剤(C)は、リン酸エステル構造を有するキレート剤である。リン酸エステル構造とは、O=P(OR)で表される構造を意味する。Rの少なくとも1個は金属原子であり、その他は炭化水素基でもよい。リン酸エステル構造を有するキレート剤は、金属原子にリン酸エステルが結合した構造を有する有機金属化合物である。このようなリン酸エステル構造を有するキレート剤を用いることによって、従来のアセチルアセトン構造やアセト酢酸エチル構造を有するキレート剤と比較し、優れたアルカリ脱離性と、粘着テープ貼付時における耐黄変性に優れた印刷層を形成することが可能となる。前記金属原子としては、チタン原子、ジルコニウム原子などの周期表第4族の金属原子が好ましい。
中でも、リン酸エステルがチタン原子に結合した構造を有する有機金属化合物であるキレート剤が好ましく、リン酸エステルが2個のチタン原子に結合した構造を有する有機金属化合物であるキレート剤がより好ましく、n-ブチルリン酸エステルチタンが特に好ましい。
【0030】
<任意成分>
任意成分としては、例えば、溶剤、顔料、顔料誘導体、体質顔料、ワックス、ブロッキング防止剤、脂肪酸アマイド、キレート剤、硬化剤、沈降防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、レベリング剤、増粘剤、消泡剤、可塑剤、分散剤、難燃剤、安定剤などが挙げられる。また、任意成分としては、ポリアミド樹脂(A1)、ニトロセルロース樹脂(A2)、及びロジン誘導体(B)以外のその他の樹脂も例示される。
これらの任意成分は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0031】
(溶媒)
溶剤としては有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系有機溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル等のエステル系有機溶剤;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール等のアルコール系有機溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系有機溶剤;等を用いることができる。
【0032】
なかでも、トルエンやキシレン等の芳香族系有機溶剤を実質的に含有しない有機溶剤(ノントルエン系有機溶剤)が好ましい。すなわち、印刷インキ組成物に含まれる有機溶剤は、トルエンを実質的に含有しないノントルエン系有機溶剤であることが環境面で好ましい。なお、有機溶剤としては、脂肪族炭化水素系有機溶剤、エステル系有機溶剤、及びアルコール系有機溶剤を含むことが好ましい。有機溶剤中の脂肪族炭化水素系有機溶剤の含有割合は、有機溶剤の全体を基準として、1~80質量%であることが好ましい。有機溶剤中のエステル系有機溶剤の含有割合は、有機溶剤の全体を基準として、1~70質量%であることが好ましい。有機溶剤中のアルコール系有機溶剤の含有割合は、有機溶剤の全体を基準として、1~50質量%であることが好ましい。
【0033】
(ワックス)
ワックスとしては、炭化水素ワックスが好ましい。印刷インキ組成物が炭化水素ワックスを含有すると、得られる印刷層の耐摩擦性が向上しやすい。炭化水素ワックスとしては、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュ・ワックス、パラフィンワックス、マイクロスタリンワックス、ポリプロピレンワックス等を挙げることができる。なかでも、ポリエチレンワックス及びフィッシャー・トロプシュ・ワックスが好ましい。ポリエチレンワックスとしては、高密度重合ポリエチレン、低密度重合ポリエチレン、酸化ポリエチレン、酸変性ポリエチレン、及び特殊モノマー変性ポリエチレン等を挙げることができる。また、フィッシャー・トロプシュ・ワックスは、一酸化炭素と水素を原料とし、フィッシャー・トロプシュ法により製造されたワックスであり、ほぼ飽和の、分枝を有しない直鎖の分子構造を有する。
これらの炭化水素ワックスは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0034】
炭化水素ワックスの、JIS K 2207:2006で規定される25℃における針入度(硬度)は、0.1~30が好ましく、0.1~28がより好ましく、0.1~25が特に好ましい。炭化水素ワックスの針入度(硬度)が上記上限値以下であると、得られる印刷層の耐摩擦性及び印刷適性が向上しやすい。
【0035】
(塩素化ポリオレフィン樹脂)
本実施形態の印刷インキ組成物は、ポリアミド樹脂(A1)、ニトロセルロース樹脂(A2)、及びロジン誘導体(B)以外のその他の樹脂を含有してもよい。その他の樹脂としては、塩素化ポリオレフィン樹脂が好ましい。印刷インキ組成物が塩素化ポリオレフィン樹脂を含有すると、得られる印刷層の基材への密着性が向上しやすい。塩素化ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂中の水素原子の少なくとも一部が塩素原子で置換された樹脂である。前記ポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン系不飽和炭化水素の単独重合体又は共重合体が好ましく、ポリプロピレンがさらに好ましい。塩素化ポリオレフィン樹脂は、前記ポリオレフィンを製造するための単量体中の少なくとも一部の水素が塩素原子に置換された単量体を重合することにより製造できる。
これらの塩素化ポリオレフィン樹脂は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0036】
塩素化ポリオレフィン樹脂のMwは、3,000~100,000が好ましく、3,500~80,000がより好ましく、4,000~50,000が特に好ましい。塩素化ポリオレフィン樹脂のMwが上記下限値以上であると、得られる印刷層の基材への密着性が向上しやすい。塩素化ポリオレフィン樹脂のMwが上記上限値以下であると、印刷インキ組成物において相溶性が向上しやすい。
【0037】
塩素化ポリオレフィン樹脂の塩素含有率は、15~60質量%が好ましく、20~55質量%がより好ましく、25~50質量%が特に好ましい。塩素化ポリオレフィン樹脂の塩素含有率が上記下限値以上であると、アルカリ脱離性、相溶性が向上しやすい。塩素化ポリオレフィン樹脂の塩素含有率が上記上限値以下であると、得られる印刷層の基材への密着性が向上しやすい。塩素化ポリオレフィン樹脂の塩素含有率は、塩素化ポリオレフィン樹脂の総質量に対する塩素原子の含有量である。
【0038】
(顔料)
本実施形態の印刷インキ組成物は、顔料を含有してもよい。なお、印刷インキ組成物は、顔料等の色材を実質的に含有しない、無色の印刷インキ組成物でもよい。無色の印刷インキ組成物の場合は、メジウムとして使用できる。
【0039】
顔料としては、体質顔料、無機顔料、及び有機顔料等を用いることができる。体質顔料としては、シリカ、硫酸バリウム、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等を挙げることができる。無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ等の白色顔料;カーボンブラック、鉄黒等の黒色顔料;アルミニウム粒子、マイカ、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、酸化亜鉛等の各色無機顔料;等を挙げることができる。
【0040】
有機顔料としては、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系等の各系統の有機顔料を挙げることができる。
【0041】
<各成分の含有量>
バインダー樹脂(A)の固形分の含有量は、印刷インキ組成物の固形分の総質量に対して、20~80質量%が好ましく、25~75質量%がより好ましく、28~72質量%がさらに好ましく、30~70質量%が特に好ましい。
バインダー樹脂(A)の含有量が上記下限値以上であると、得られる印刷層の基材に対する密着性、耐水性、耐摩擦性、印刷適性が向上しやすい。バインダー樹脂(A)の含有量が上記上限値以下であると、得られる印刷層の耐熱性、耐ブロッキング性が向上しやすい。
【0042】
ニトロセルロース樹脂(A2)の固形分に対する、ポリアミド樹脂(A1)の固形分の質量比は、1.3~10が好ましく、1.5~9がより好ましく、1.6~5.7がさらに好ましく、1.9~4が特に好ましい。
上記質量比が上記下限値以上であると、印刷インキ組成物の安定性、及び得られる印刷層の基材に対する密着性、耐もみ性が向上しやすい。上記質量比が上記上限値以下であると、得られる印刷層の耐ブロッキング性、耐熱性、耐水性、耐摩擦性が向上しやすい。
【0043】
ロジン誘導体(B)の固形分の含有量は、印刷インキ組成物の固形分の総質量に対して1~15質量%であり、1.5~12質量%が好ましく、2~10質量%が特に好ましい。
ロジン誘導体(B)の含有量が上記下限値以上であると、得られる印刷層のアルカリ脱離性、基材に対する密着性、光沢性が向上しやすい。ロジン誘導体(B)の含有量が上記上限値以下であると、得られる印刷層の耐熱性、耐ブロッキング性、耐水性が向上しやすい。
【0044】
キレート剤(C)の固形分の含有量は、印刷インキ組成物の固形分の総質量に対して、0.5~10質量%であり、0.7~8質量%が好ましく、1~5質量%が特に好ましい。
キレート剤(C)の含有量が上記下限値以上であると、得られる印刷層の耐熱性、耐ブロッキング性、基材に対する密着性が向上しやすい。キレート剤(C)の含有量が上記上限値以下であると、印刷インキ組成物の安定性、得られる印刷層のアルカリ脱離性、耐黄変性が向上しやすい。
【0045】
キレート剤(C)の固形分に対する、バインダー樹脂(A)の固形分の質量比は、6~45が好ましく、10~30がより好ましく、15~25がさらに好ましい。
キレート剤(C)の固形分に対する、ロジン誘導体(B)の固形分の質量比は、0.5~5が好ましく、1~4がより好ましく、1.5~3がさらに好ましい。
ロジン誘導体(B)の固形分に対する、バインダー樹脂(A)の固形分の質量比は、3~30が好ましく、5~15がより好ましく、8~10がさらに好ましい。
【0046】
印刷インキ組成物が炭化水素ワックスを含む場合、炭化水素ワックスの固形分の含有量は、インキ組成物の固形分の総質量に対して、0.5~3.5質量%が好ましく、0.7~3質量%がより好ましく、1~2.5質量%が特に好ましい。
炭化水素ワックスの含有量が上記下限値以上であると、得られる印刷層の耐摩擦性が向上しやすい。炭化水素ワックスの含有量が上記上限値以下であると、得られる印刷層の印刷適性、耐熱性が向上しやすい。
【0047】
印刷インキ組成物が塩素化ポリオイレフィン樹脂を含む場合、塩素化ポリオレフィン樹脂の含有量は、インキ組成物中の固形分の総質量に対して、0.5~10質量%が好ましく、1~7質量%がより好ましく、2~5質量%が特に好ましい。塩素化ポリオレフィン樹脂の含有量が上記下限値以上、得られる印刷層の基材への密着性が向上しやすい。塩素化ポリオレフィン樹脂の含有量が上記上限値以下であると、得られる印刷層のアルカリ脱離性、耐ブロッキング性が向上しやすい。
【0048】
溶媒の含有量は、印刷インキ組成物の総質量に対して10~90質量%が好ましく、15~85質量%がより好ましく、20~82質量%がさらに好ましい。溶媒の含有量が上記下限値以上であると、印刷インキ組成物の流動性が向上しやすい。溶媒の含有量が上記上限値以下であると、印刷適性が向上しやすい。
【0049】
印刷インキ組成物が顔料を含む場合、インキ組成物中の顔料の含有量は、インキの着色力等を確保するのに充分な量に設定すればよい。具体的には、印刷インキ組成物中の顔料の含有量は、インキ組成物中の固形分の総質量に対して、1~80質量%とすればよい。
【0050】
炭化水素ワックス、塩素化ポリオレフィン樹脂、顔料以外のその他の任意成分の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば特に制限されないが、例えば印刷インキ組成物の固形分の総質量に対して0~10質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましい。
【0051】
<印刷インキ組成物の製造方法>
本実施形態の印刷インキ組成物は、例えば、ポリアミド樹脂(A1)と、ニトロセルロース樹脂(A2)と、ロジン誘導体(B)と、キレート剤(C)と、必要に応じて任意成分と、を溶剤に溶解又は分散させることで得られる。
各成分の混合方法としては特に限定されず、種々の方法により各成分を混合することができる。
各成分を溶剤に溶解又は分散させる方法としては特に制限されず、公知の分散機を用いて行うことができる。分散機としては、例えばペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル、ダイノミル、ロールミル、超音波ミル、高圧衝突分散機などが挙げられる。1種の分散機を使用して1回又は複数回分散処理してもよいし、2種以上の分散機を併用して複数回分散処理してもよい。
【0052】
<作用機序>
本発明の印刷インキ組成物は、リン酸エステル構造有するキレート剤(C)を含有する。粘着テープの粘着成分に含まれる、ロジン系粘着付与剤や、フェノール系化合物が、アセチルアセトン構造やアセト酢酸エチル構造を有する従来のキレート剤と反応し、有色の化合物を生成するのに対し、リン酸エステル構造を有するキレート剤では前記反応が起こりにくい。また、本発明の印刷インキ組成物は、酸価が150mgKOH/g以上のロジン誘導体(B)を含むため、アルカリ脱離性に優れる。本願の発明者は、ロジン誘導体(B)に加え、リン酸エステル構造を有するキレート剤(C)を含有することにより、さらにアルカリ脱離性が向上することを見出した。リン酸エステル構造を有するキレート剤(C)によるアルカリ脱離性の向上効果の要因としては、以下のことが考えられる。一つ目としては、キレート剤は、バインダー樹脂(A)同士の架橋に関与していると考えられる。リン酸エステル構造を有するキレート剤(C)の場合、従来のアセチルアセトン構造やアセト酢酸エチル構造を有するキレート剤と比較し、架橋性が低いため、バインダー樹脂(A)の架橋による相互作用が弱くなり、それに伴い、アルカリ脱離性が向上したと考えられる。二つ目としては、リン酸エステル構造を有するキレート剤(C)の場合、従来のアセチルアセトン構造やアセト酢酸エチル構造を有するキレート剤と比較し、加水分解によりバインダー樹脂(A)の架橋構造が壊れやすいと考えられる。すなわち、バインダー樹脂(A)の架橋構造が壊れやすいことにより、アルカリ脱離性が向上したと考えられる。
【0053】
<積層体>
図1に、本発明の一実施形態に係る積層体の一例を示す。なお、図1における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。
図1の積層体10は、プラスチックフィルム11と、プラスチックフィルム11の一方の面上に設けられた印刷層12と、を備える印刷物である。
なお、積層体をラベルとして包装容器に装着する場合、プラスチックフィルム11が、印刷層12よりも内側(包装容器と接する側)、すなわち、印刷層12が外側となるように装着することが好ましい。
【0054】
<プラスチックフィルム>
プラスチックフィルム11の種類は、積層体10の種類等に応じて適宜選択することが可能であり、特に限定されないが、ポリオレフィン(例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等)、ポリスチレン(PS)、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリアミド(NY)等が挙げられる。これらの材質からなるプラスチックフィルムは1種を単独で用いてもよく、2種以上を貼り合わせて使用してもよい。
プラスチックフィルムの表側の面(表面)及び裏側の面(裏面)の少なくとも一方には、必要に応じてコロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理、溶剤処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0055】
プラスチックフィルム11は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。すなわち、プラスチックフィルム11は、単層フィルムであってもよいし、積層フィルムであってもよい。プラスチックフィルム11が積層フィルムである場合、同じ種類のフィルムを2枚以上積層した構成であってもよいし、異なる種類のフィルムを2枚以上積層した構成であってもよい。
【0056】
プラスチックフィルム11、21の厚さは、5~100μmが好ましく、12~60μmがより好ましく、12~50μmがさらに好ましい。
【0057】
<印刷層>
積層体10において、印刷層12は、プラスチックフィルム11の一方の面上に設けられている。印刷層12は、上述した本実施形態の印刷インキ組成物を用いて形成された印刷層である。
印刷層12の厚さは、0.2~3.0μmが好ましく、0.3~2.0μmがより好ましく、0.3~1.5μmがさらに好ましい。
【0058】
<積層体の製造方法>
図1の積層体10の製造方法は、プラスチックフィルム11の一方の面上に、本実施形態の印刷インキ組成物を用いて印刷層12を形成する工程を含む。
図1の積層体10の製造方法では、例えばプラスチックフィルム11の一方の面上に本実施形態の印刷インキ組成物を塗工し、乾燥させて印刷層12を形成する。
なお、印刷インキ組成物をプラスチックフィルム11の一方の面上に塗工し、乾燥させて印刷層12を形成した後、さらに印刷インキ組成物を塗工(重ね塗り)してもよい。
【0059】
印刷インキの塗工方法としては特に限定されず、例えばグラビア印刷、フレキソ印刷、ハケ塗り、グラビアコーター法、ダイコーター法、バーコーター法、スプレーコート法、フローコート法、ディップコート法、スピンコート法及びカーテンコート法等の公知の塗工方法を用いることができる。これらの中でも、品質及び生産性の高さから、グラビア印刷が好ましい。
【0060】
乾燥方法としては、プラスチックフィルム11の一方の面上に塗工された印刷インキ組成物に含まれる溶媒を除去できれば特に制限されないが、例えば減圧乾燥、加圧乾燥、加熱乾燥、風乾が挙げられる。
加熱する際の温度は、30~150℃が好ましく、40~120℃がより好ましい。
【0061】
<用途>
積層体10は、包装材に使用されることが好ましい。包装材としては、軟包装用包装材が好ましい。「軟包装」とは、柔軟性を有する材料で構成されている包装材、すなわちフレキシブルパッケージのことであり、食品や日用品等の包装に用いられる。
【実施例
【0062】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
[使用原料]
ポリアミド樹脂(A1)として、以下に示す化合物を用いた。
・A1-1:花王社製、商品名「レオマイドS-8200」、重量平均分子量:6,000。
・A1-2:ハリマ化成グループ社製、商品名「ニューマイド872」、重量平均分子量:1,500。
・A1-3:花王社製、商品名「レオマイドS-6800」、重量平均分子量:27,000。
・A1-4:花王社製、商品名「レオマイドSP-40N」、重量平均分子量:31,000。
【0064】
ニトロセルロース樹脂(A2)として、以下に示す化合物を用いた。
・A2-1:キミア社製、商品名「RS1/2」、種類及び粘度記号:H1/2。
・A2-2:キミア社製、商品名「RS2」、種類及び粘度記号:H2。
・A2-3:キミア社製、商品名「RS1/8」、種類及び粘度記号:H1/8。
・A2-4:キミア社製、商品名「RS7」、種類及び粘度記号:H7。
【0065】
その他のバインダー樹脂(A3)として、以下に示す化合物を用いた。
・A3-1:ウレタン樹脂(大日精化工業株式会社製、製品名「セイカボンドA-155」)。
【0066】
ロジン誘導体(B)として、以下に示す化合物を用いた。
・B-1:ロジン変性特殊合成樹脂(ハリマ化成社製、製品名「ハリマックAS-5」、酸価190mgKOH/g、軟化点160℃)。
・B-2:酸変性超淡色ロジン(荒川化学工業社製、製品名「パインクリスタルKE-604」、酸価240mgKOH/g、軟化点130℃)。
・B-3:マレイン化ロジン(荒川化学工業株式会社製、商品名「マルキードNo.33」、酸価:305mgKOH/g、軟化点:145℃)。
・B-4:酸変性超淡色ロジン(荒川化学工業株式会社製、商品名「パインクリスタルKR-120」、酸価:320mgKOH/g、軟化点:120℃)。
・B-5:マレイン化ロジン(荒川化学工業株式会社製、商品名「マルキード3002」、酸価:100mgKOH/g、軟化点:175℃)。
・B-6:スチレン・マレイン酸ハーフエステル共重合体(荒川化学工業株式会社製、商品名「アラスター700」、酸価:187mgKOH/g、軟化点:112℃)。なお、B-6はスチレン・マレイン酸ハーフエステル共重合体であって、ロジン誘導体ではない。
【0067】
キレート剤(C)として、以下に示す化合物を用いた。
・C-1:配位子がリン酸エステルであるキレート剤(Borica社製、商品名「AP100」、固形分:65質量%)。
・C-2:配位子がリン酸エステルであるキレート剤(マツモトファインケミカル社製、商品名「オルガチックスTC-1040」、固形分:75質量%)。
・C-3:配位子がリン酸エステルであるキレート剤(ドルフケタル社製、商品名「IAM」、固形分:70質量%)。
・C-4:配位子がアセチルアセトンであるキレート剤(マツモトファインケミカル社製、商品名「オルガチックスTC-100」、固形分:75質量%)。
・C-5:配位子がアセチルアセトンであるキレート剤(マツモトファインケミカル社製、商品名「オルガチックスTC-401」、固形分:65質量%)。
・C-6:配位子がアセト酢酸エチルであるキレート剤(マツモトファインケミカル社製、商品名「オルガチックスTC-710」、固形分:63質量%)。
【0068】
任意成分として、以下に示す化合物を用いた。
・炭化水素ワックス(三井化学社製、商品名「ハイワックス220P」、針入度:13、融点:110℃)。
・塩素化ポリオレフィン樹脂(日本製紙株社製、商品名「スーパークロン370M」)。
・脂肪酸アマイド:ステアリン酸アマイド(日本精化社製、商品名「ニュートロンS」)。
・顔料1:酸化チタン(テイカ社製、商品名「チタニックスJR-600A」)。
・顔料2:C.I.Pigment Blue 15:4(大日精化工業社製、商品名「4933GN-EP」)。
・可塑剤(富士アミドケミカル社製、商品名「トップサイザーNO.3」)。
・消泡剤(ビックケミー・ジャパン社製、商品名「BYK-1751」)。
・溶剤:メチルシクロヘキサン:酢酸n-プロピル:イソプロパノール=5:3:2(質量比)の混合溶剤。
【0069】
[評価方法]
(アルカリ脱離性の評価)
実施例及び比較例で得られた印刷物を3cm×3cmにカットし、70℃の1.5%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、3分間撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液から引き上げた印刷物を水洗した後、目視で観察し、以下に示す評価基準にしたがってアルカリ脱離性を評価した。3~5を合格とする。
5:印刷層の総面積に対して脱離した印刷層の面積の割合が95%以上である。
4:印刷層の総面積に対して脱離した印刷層の面積の割合が80%以上、95%未満である。
3:印刷層の総面積に対して脱離した印刷層の面積の割合が50%以上、80%未満である。
2:印刷層の総面積に対して脱離した印刷層の面積の割合が20%以上、50%未満である。
1:印刷層の総面積に対して脱離した印刷層の面積の割合が20%未満である。
【0070】
(耐黄変性の評価)
実施例及び比較例で得られた印刷物の印刷面に、セロハンテープ(ニチバン社製)を貼り付けた状態で、20℃で1日経過後に外観を観察し、以下に示す評価基準にしたがって印刷層の耐黄変性を評価した。3~5を合格とする。
5:黄変が確認されなかった。
4:かすかに黄変が確認された。
3:軽度の黄変が確認された。
2:黄変が確認された。
1:激しい黄変が確認された。
【0071】
(密着性の評価)
実施例及び比較例で得られた印刷物の印刷面にセロハンテープ(ニチバン社製)を貼り付けた後、このセロハンテープを速やかに剥がし、基材フィルム上に残った印刷層の状態を目視にて確認し、以下に示す評価基準に従って密着性を評価した。3~5を合格とする。
5:印刷層の総面積に対して、剥離した印刷層の面積の割合が5%未満である。
4:印刷層の総面積に対して、剥離した印刷層の面積の割合が5%以上、20%未満である。
3:印刷層の総面積に対して、剥離した印刷層の面積の割合が20%以上、50%未満である。
2:印刷層の総面積に対して、剥離した印刷層の面積の割合が50%以上、80%未満である。
1:印刷層の総面積に対して、剥離した印刷層の面積の割合が80%以上である。
【0072】
(耐ブロッキング性の評価)
実施例及び比較例で得られた印刷物の印刷層と、印刷を施していない前記印刷物で使用されたものと同じフィルムの非印刷面とを重ね合わせて、4kg/cmの荷重をかけ、40℃の恒温機内で24時間保管した。その後、重ね合わせた印刷層を剥離し、下記に示す基準に従って耐ブロッキング性を評価した。3~5を合格とする。
5:非印刷面へのインキ取られが、印刷層の総面積に対して、5%未満である。
4:非印刷面へのインキ取られが、印刷層の総面積に対して、5%以上、20%未満である。
3:非印刷面へのインキ取られが、印刷層の総面積に対して、20%以上、50%未満である。
2:非印刷面へのインキ取られが、印刷層の総面積に対して、50%以上、80%未満である。
1:非印刷面へのインキ取られが、印刷層の総面積に対して、80%以上である。
【0073】
(耐熱性の評価)
実施例及び比較例で得られた印刷物の印刷面と、軟質のアルミニウム箔を重ね合わせ、アルミニウム箔上からヒートシールテスター(テスター産業製、製品名「TP-701-C ヒートシールテスター」)を用いて、110~150℃、2kg/cmの条件で1秒間加熱した。その後、印刷層を剥離し、印刷層の状態を確認し、以下の評価基準にて耐熱性を評価した。3~5を合格とする。
5:150℃で加熱してもインキ取られがなかった。
4:140℃まで加熱してもインキ取られがなかったが、150℃で加熱するとインキ取られがあった。
3:130℃まで加熱してもインキ取られがなかったが、140℃で加熱するとインキ取られがあった。
2:120℃まで加熱してもインキ取られがなかったが、130℃で加熱するとインキ取られがあった。
1:120℃未満の加熱でインキ取られがあった。
【0074】
(耐湿摩擦性の評価>
実施例及び比較例で得られた印刷物を学振型摩擦堅牢度試験機(テスター産業社製、製品名「AB-301」)を用いて、200gfの荷重をかけた水で湿らせた黒布(金巾3号)で印刷面を100往復擦り、耐湿摩擦試験を行った。その後、印刷層の外観を目視にて確認し、以下に示す評価基準にしたがって耐湿摩擦性を評価した。3~5を合格とする。
5:黒布(金巾3号)側に移行した印刷層の面積の割合が、10%未満である。
4:黒布(金巾3号)側に移行した印刷層の面積の割合が、10%以上、20%未満である。
3:黒布(金巾3号)側に移行した印刷層の面積の割合が、20%以上、50%未満である。
2:黒布(金巾3号)側に移行した印刷層の面積の割合が、50%以上、80%未満である。
1:黒布(金巾3号)側に移行した印刷層の面積の割合が、80%以上である。
【0075】
(インキ安定性の評価)
実施例及び比較例で得られた印刷インキ組成物を20℃で1日間静置した後、印刷インキ組成物の状態を観察し、以下に示す評価基準にしたがってインキの安定性を評価した。3~5を合格とする。
5:変化なし。
4:わずかに増粘した。
3:増粘した。
2:大幅に増粘してクリーム状になった。
1:固化してゼリー状になった。
【0076】
[実施例1~23、比較例1~12]
<印刷インキ組成物の調製>
表1、3、5、7、9に示す配合に従って、ポリアミド樹脂(A1)、ニトロセルロース樹脂(A2)、ロジン誘導体(B)、キレート剤(C)、溶剤、他の任意成分を混合した後、得られた混合物をペイントシェーカーで練肉して、印刷インキ組成物を得た。なお、表1、3、5、7、9中の数字は、キレート剤(C)以外は固形分の配合量である。一方、キレート剤(C)は揮発分も含む配合量である(キレート剤(C)の固形分濃度はキレート剤の種類の横に記載している。)。空欄は、その成分が配合されていないこと(配合量0質量部)を意味する。
得られた印刷インキ組成物を用いて、インキ安定性の評価の評価を行った。結果を表2、4、6、8、10に示す。
【0077】
<印刷物の作製>
調製した印刷インキ組成物を、ザーンカップ#3を用いて測定される25℃における粘度が16秒となるように、メチルシクロヘキサン:酢酸n-プロピル:イソプロパノール=5:3:2(質量比)の混合溶剤を用いて希釈を行い、印刷インキを調製した。ヘリオ175線/inchグラビア彫刻版を備えたグラビア印刷機(松尾産業社製、商品名「Kプリンティングプルーファー」)を使用し、片面をコロナ放電処理したOPPフィルム(フタムラ化学社製、商品名「FOR」、厚さ:25μm)の処理面に、調製した印刷用のインキを塗布した。その後、80℃で10秒間熱風乾燥を行い、印刷物を作製した。
得られた印刷物を用いて、アルカリ脱離性、耐黄変性、密着性、耐ブロッキング性、耐熱性、耐湿摩擦性の評価を行った。結果を表2、4、6、8、10に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
【表5】
【0083】
【表6】
【0084】
【表7】
【0085】
【表8】
【0086】
【表9】
【0087】
【表10】
【0088】
表2、4、6、に示すように、各実施例で得られた印刷インキ組成物は、アルカリ脱離性、耐黄変性に優れた。また、基材に対する密着性、耐ブロッキング性、耐熱性、耐湿摩擦性、インキ安定性など各種の物性も優れた。表8に示すように、酸価が100mgKOH/gであるロジン誘導体(B)を含む比較例1の印刷インキ組成物では、印刷層のアルカリ脱離性に劣った。ロジン誘導体(B)ではなく、スチレン・マレイン酸ハーフエステル共重合体を含む比較例2の印刷インキ組成物でも、印刷層のアルカリ脱離性に劣った。ロジン誘導体(B)の含有量が0.7質量%と少ない比較例3の印刷インキ組成物でも、印刷層のアルカリ脱離性に劣った。一方、ロジン誘導体(B)の含有量が18質量%と多い比較例4の印刷インキ組成物では、印刷層の耐ブロッキング性、耐熱性、耐湿摩擦性に劣った。ロジン誘導体(B)を含まない比較例5の印刷インキ組成物では、印刷層のアルカリ脱離性に劣った。表8及び10に示すように、配位子がアセチルアセトンであるキレート剤を含む比較例6、7の印刷インキ組成物では、印刷層のアルカリ脱離性、耐黄変性に劣った。表10に示すように、配位子がアセト酢酸エチルであるキレート剤を含む比較例8の印刷インキ組成物では、インキ安定性に劣り、印刷層のアルカリ脱離性にも劣った。キレート剤(C)の含有量が0.3質量%と少ない比較例9の印刷インキ組成物では、印刷層の耐ブロッキング性、耐熱性に劣った。キレート剤(C)の含有量が12質量%と多い比較例10の印刷インキ組成物では、インキ安定性に劣り、印刷層のアルカリ脱離性にも劣った。キレート剤を含まない比較例11の印刷インキ組成物では、印刷層の耐ブロッキング性、耐熱性に劣った。バインダー樹脂(A)としてポリアミド樹脂(A1)の代わりにウレタン樹脂(A3)を用いた比較例12の印刷組成物では、インキ安定性に劣った。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のインキ組成物は、アルカリ脱離性が高く、粘着テープを貼付した際の耐黄変性に優れた印刷層が得られ、かつ安定性の高い印刷インキ組成物である。さらに、包装材として求められる各種物性を満足する印刷層が得られる。したがって、特に、グラビア印刷用のインキとして有用である。
【符号の説明】
【0090】
10 積層体
11 プラスチックフィルム
12 印刷層
【要約】
【課題】アルカリ脱離性が高く、粘着テープを貼付した際の耐黄変性に優れた印刷層が得られ、かつ安定性の高い印刷インキ組成物の提供。
【解決手段】バインダー樹脂(A)と、ロジン誘導体(B)と、キレート剤(C)と、を含有する印刷インキ組成物であって、前記バインダー樹脂(A)が、ポリアミド樹脂(A1)及びニトロセルロース樹脂(A2)を含有し、前記ロジン誘導体(B)の酸価が150mgKOH/g以上であり、前記キレート剤(C)がリン酸エステル構造を有し、前記ロジン誘導体(B)の固形分換算での含有量が、前記印刷インキ組成物の固形分の総質量に対して、1~15質量%であり、前記キレート剤(C)の固形分換算での含有量が、前記印刷インキ組成物の固形分の総質量に対して、0.5~10質量%である、印刷インキ組成物。
【選択図】なし
図1