(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】中間着
(51)【国際特許分類】
A41B 9/00 20060101AFI20240930BHJP
A41F 19/00 20060101ALI20240930BHJP
A41D 27/26 20060101ALI20240930BHJP
A41D 27/28 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
A41B9/00 A
A41F19/00 108
A41D27/26 B
A41D27/28 B
(21)【出願番号】P 2024070270
(22)【出願日】2024-04-24
【審査請求日】2024-05-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】724006584
【氏名又は名称】市原 南
(72)【発明者】
【氏名】市原南
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-290632(JP,A)
【文献】登録実用新案第3115537(JP,U)
【文献】特開2009-41155(JP,A)
【文献】登録実用新案第3113471(JP,U)
【文献】特開2005-120480(JP,A)
【文献】実開昭60-193921(JP,U)
【文献】実開昭54-37329(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D1/00
A41B9/00
A41F19/00
A41D27/26-27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着物を着る際に、着物の下に着用され、着用者の胴に巻かれる中間着であって、
弾性変形可能な、
本願明細書に記載された試験により特定される曲げ荷重が0.1~36Nである板材により形成される胴部を備え
、
胴部は湾曲させ接続部を接続することにより反発力を得て、
着用者の身体の周り
に空間をつくりながら形を保持し、
中間着と身体の間に隙間を形成することを特徴とする中間着。
【請求項2】
板材は、有孔であることを特徴とする請求項1記載の中間着。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着物を着る際に、着物の下に着用され、着用者の胴に巻かれる中間着に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着物を着る際には、体形補正が必須であり、複数の工程、多くの道具、熟練した技術を要した。寸胴にする為に布や綿などを身体に密着させるので通気性、放熱性に欠け、身体可動域の低下、息苦しさがあった。特許文献1には身体の凹んだ部分を埋めて補う方法が記載されている。しかしながらこの構成では通気性、放熱性に欠け、近年の温暖化による暑さに対応できず、また、着丈調整に必要な紐類からの着圧からは逃れることができず、可動域や息苦しさは残るという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3159403号(U3159403)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、着物の着用時に、着物等と身体の間に隙間を形成し、身体可動域、呼吸域の確保、好ましくは通気性と放熱性を確保し着用時の不快感を低減するとともに着物着用後の体型補正できる中間着を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
(1)着物を着る際に、着物の下に着用され、着用者の胴に巻かれる中間着であって、
弾性変形可能であり、板材の曲げ荷重が0.1~36Nである板材により形成される胴部を備えることを特徴とする中間着。
(2)胴部は、有孔であることを特徴とする(1)記載の中間着
である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、着物の着用時に、着物等と身体の間に隙間を形成し、身体可動域、呼吸域の確保、好ましくは通気性と放熱性を確保し着用時の不快感を低減、着物着用時にすらっとした体形補正が可能である中間着を提供できる。中間着の胴囲は着用者の身体の外側に、弾性可能な板の持つ反発力により略円形を作り出され、肩部背中部の布により肩から吊り下げられることにより着用者の身体に密着させることなく保持され、寸胴な体形と同様の形をつくり、着物着用に必要な各種の紐や、上衣の着物は中間着の外からかけられ着用されるので、紐や着物、帯などからの着圧は直接中間着にかかり、身体は着圧から解放される。簡単に胴囲を固定し、短時間で着用でき、かつきれいなシルエットを着用時に付与する体型補正ができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】板材の胴部ではめ込み式固定した中間着の斜形図である
【
図2】有孔板材の胴部ブロック調整固定した中間着の斜視図である
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る実施形態である中間着は、着物を着る際に、着物の下に着用され、着用者の胴に巻かれ、 弾性変形可能であり、部材の曲げ試験において、試験片50mm×100mm、両端自由支持はりで中央に力を加える3点曲げ試験で曲げ変位10mmの時にかかる力が0.1~36Nである板材により形成される胴部1からなる。
【0009】
「曲げ荷重測定方法」
本試験に係る曲げ荷重測定に使用する試験機及び試験条件は、以下のとおりである。
メーカー名:インストロンジャパン カンパニィ リミテッド
型番:5565型材料試験機
仕様;最大容量5kN/試験速度0.01~500mm/min
試験条件
試験片:50X100mm
試験速度:100mm/min
支点間距離:80mm
試験片幅の寸法公差:5mm±5mm
で、両端自由支持はりで中央に力を加える3点曲げ試験で曲げ変位10mmの時にかかる荷重(N)を測定した。
【0010】
本発明に用いる胴部の板材の曲げ荷重は0.1~36Nであることが必要である。
曲げ荷重が0.1N未満だと板材の硬度が低く、板材自体で形成する胴部の輪状体が保持されず、ゴム程度の着用圧でも円形を保持できない。中間着着用により、身体と中間着の間に得られる隙間空間がつぶれ、円形をゆがめ、身体に密着してしまうため好ましくない。
曲げ荷重36Nを超えると板材の硬度が高く、胴部の輪状体を形成させて着用したときには板材が割れる可能性が高くなり、中間着として身体に着用するものとしての安全性、着用性が悪くなり好ましくない。
【0011】
板材の曲げ荷重については0.1~4Nの領域の板材を用いて胴部を形成させると適度な弾性があって子供用もしくは、二部式着物などの紐による着丈調整不要な着物、二部式帯や形成帯などの作り帯を着用する時に好ましい。これらの着物や帯は、紐で強く縛る必要がなく着用できるように、縫い付けやゴム、面ファスナーなどで着丈調整や帯形成を補助されており、板材で保持される円形をゆがめない程度の着圧で着用可能となるときに好ましい。
【0012】
板材の曲げ荷重について4~20Nの領域の板材を用いると着丈調整、帯形成する必要があるものを着用する時に好ましい。着用する着物や帯の種類により異なるが、着丈調整、帯形成を紐でするために、着用中に着崩れない程度の圧力で着物や帯を固定する必要があるときに好ましい。
板材の曲げ荷重について20~36Nの領域の板材を用いると、着用時に紐による着丈調整や帯調整をする必要があり、かつ長く厚みがある丸帯や振袖など着物自体に重みがあり着用圧が高いものを着用する時に好ましい。
【0013】
中間着を構成する胴部が曲げ変位10mmの時にかかる力(N)が0.1~36Nであると中間着で保持される着物着用に必要な寸動の形状を保つことができる。
胴部を構成する板材の材質はプラスチックが軽量であるため好ましく、材料としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ABS、ポリスチレン、フッ素樹脂、PETなどからなるシート状のものが好ましい。
【0014】
胴部は2~4パーツからなり、胴部の大きさは縦(身長方向)が10~25cmであることが好ましい。胴部が複数パーツで構成されることで、保管や持ち運びなどの利便性と、修理や交換が簡便になるが、使用頻度が高く、耐久性を必要とする場合は一枚で構成することもできる。いずれの形状でも、着用時の胴囲、着丈サイズ調整を行うことができることが好ましい。
胴部の板材は平板状、湾曲形状いずれであってもよい。板材を湾曲させ接続することにより反発力を得、体の周りに空間を作りながら形を保持することで、楽で着用感が良い中間着を提供することができる。
【0015】
胴部を構成する板材は背中部又は脇部で接続させるのが好ましい。板材を背中部付近で接続することで、腕近くの脇部は広がりにくくなり腕の動作の邪魔をせず、呼吸に伴いよく動く胸部、肋骨、剣状突起部付近には空間が保持されることで、楽に呼吸することができるので好ましい。接続部を脇部に設けた場合には中間着の脱着が短時間で行うことができる。接続部は、面ファスナー、ファスナー、はめ込み式、スナップボタン、磁石、調節可能バックルやベルト、掛け金、ホック、スライドフックなど公知の方法で固定することができ、容易に緩むこともなく狭まることもなく留まる。
胴囲調整部は、簡単に着用者により固定ができる胴部(腹側)に配されることが好ましい。
【0016】
中間着を構成する胴部は着用の容易さから丈調整部を備え、丈調整部は紐状、ベルト状の紐帯で肩から吊り下げる構造であることが好ましいが、板材そのもので胴部位置が保持できるならばこのような丈調整部を有さない構造であってもよい。既存の独立した着物用作り衿(実登3066665などと同様の)と合わせてもよい。紐、ベルトは公知のものが使用可能であり、幅が2~15cmのものが好ましい。
【0017】
板材の長さ(胴囲方向)や幅(伸長方向)は、子供サイズ(3歳程度)から成人女性(胴囲35~150cm、幅は10~25cm)の体形に応じて変わるものとする。板材は接続部を通じて体を一周する構造であるのが好ましい。
板材にはメッシュ仕様のレース生地で被覆することで、外観の美しさを得ると共に生地の表面摩擦力を用いて接続部や胴部の固定を安定化出来るので好ましい。レース生地は市販のものを用いることができるが、模様付きの方が美観上より好ましい。
胴部の縁はエストラマーやゴム、シリコンなどで覆うと肌との接触が柔らかくなりより好ましい。
【0018】
板材は有孔であることが好ましい。有孔板材の開孔率は10~90%が望ましい。開口率は20cm角の面積での孔部分の面積率から計算することができる。孔の開き方は例として、丸孔、六角孔、角孔、長孔、長角孔の千鳥、並列など、孔の開け方は必要に応じて変更してもよい。孔は、通気性の確保の観点から胴部広域に渡りほぼ均等に開けられているものが好ましい。有孔プラスチックシートを用いれば、通気性が良いため身体から発生する水蒸気を通すことにより、蒸れが低減され、着物自体の劣化も防ぐことができ、季節を問わず着用することができる。
【0019】
本来着丈調整に必要となる腰紐は当該中間着の外側にかけられるので、当該紐が落ちないよう支えがあるとよい。支えは中間着の最下部に配され、ゴム、可塑性エストラマー、軟質塩化ビニル、シリコン、PET、ポリプロピレン等の素材で胴部の弾力と曲げに耐えうるもので、高さ10mm以上のものが突起状、或いは凹部状であることが好ましい。
枕紐を固定するために枕紐支えがあると良い。枕紐支えは胴部(腹側)の上部に配され、腰紐支えと同様の素材と形状であることが好ましい。
【0020】
中間着と身体には空間ができるが、中間着と体との乖離による着崩れ予防のために、胴部より繋がる股部を配し、身丈調整できる接続部を配してもよい。
胴囲が、板の反発力により身体から離れ独立して円形を保持するため、中間着の外側に着用される帯や着物は、中間着の内側にある身体の動きに左右されることなくなり、着崩れしにくくなるとともに、身体は紐などによる着圧から逃れられる。また、着物は胴部の身体動作に直接触れることのなくなることで、身体の動きを吸収し、着崩れを防ぐ目的でつくられる「おはしょり」も簡略化でき、対丈着物も好ましく着用することができる。
今までは密着する補正や下着の着用により通気性もなく、体温の放熱もできなかったが、中間着着用により補正は不要になる為、下着のみでの着用も可能となり、当該中間着と身体との間には隙間ができるので通気性、放熱性もあがる。
また、冬は、従来の襦袢などでは覆いきれなかった脇や腿部分などもTシャツやズボン、腹巻など着用により覆うことができ、体温調節も簡単にできるようになる。
【0021】
以下、実施例でもって説明する。
本中間着は、板材で形成される胴部1と、胸部背中部である布部4とを備えている。
【0022】
「実施例1」
成人女性S~Mサイズに適した中間着を
図1を用いて説明する。
胴部1は、硬質塩化ビニルシート、厚さ1mm(曲げ荷重20.7N)で長さ(胴囲方向)は、右身頃38cm、左見頃40cmで、背身頃30cmの板で、幅(身長方向)は20cmである。
胴囲調整部2は、左身頃に凸部を、右身頃に凹部となる穴を配し、左身頃の凸部を右身頃の凹部である穴に差し込むことで胴囲調整をし、固定する。
胴囲固定部3は、背身頃の左右に凹部となる穴を、左身頃と右身頃の胴部(背側)に凸部を配し、左右身頃の凸部を背身頃部の凹部である穴に差し込むことで固定する。
いずれの凹部、凸部にもゴムの滑り止めを配する。
支え6は胴部1の最下部に胴囲を囲うように腰紐支えと、胴部調節接続部2の上部左右に枕紐支えを配する。
胸部背中部4はメッシュ布製で、胴部1と繋がり、肩にある丈調整部5にはスナップボタンを配する。
着用者は、着用前に肩部にある丈調整部5で着丈を調節、弾性変形可能な板である胴部板の(背側)にある胴部固定接続部3をあらかじめ接続固定した状態にすることでいちまいの板の様に接続し、背負うようにして背中側より羽織る。そして、胴部(腹側)にある胴囲調節部2で着用者の胴囲に合わせたサイズに固定することにより、補正同様の寸動体形になる。
板の反発力により身体の周りに略円形が形成し、身体に密着することがないので、身体可動域、呼吸域は確保され、紐による圧力は当該中間着にかかり、身体は圧迫されることなく着物着用が可能となるため、洋服と同様、長時間の着用も不快感が低減される。
【0023】
「実施例2」
成人女性S~Mサイズに適した中間着を
図2を用いて説明する。
胴部1は高密度ポリエチレン、厚さ6mm(曲げ荷重6.5N)網状に一体成型されたシートで、長さ(胴囲方向)は、90cm、幅(身長方向)20cmである。
胴囲調整部2は、左身頃末端に接続部となる棒状のブロックを配し、当該棒状のブロックを連続して接続することにより胴囲調整をし、右身頃末端の接続部と接続することで固定する。
当該ブロックは凹部と凸部を有し、スライドすることで簡単に固定され、クリップ部分で網状のシートを挟み込むことで胴部と接続される。
胸部背中部4はメッシュ布製で、胴部1と繋がり、肩にある丈調整部5にはスナップボタンを配する。
着用者は着用前に肩部にある丈調節部5で着丈調節してから、背中側より羽織るようにして着る。胴部(腹側)にある胴囲調節部2で着用者の胴囲に合わせたサイズで固定する。
胴囲がブロックの差し込みにより調節可能な為、一つのサイズでも様々な体形の人が着用するような施設などでも適宜対応ができるようになり、着物を着たことのない人々も簡単に着用ができかつ実施例1同様に着用後の不快感は低減される。
【0024】
「実施例3」
女児130cm~140cmに適した中間着を
図3を用いて説明する。
胴部1は、ポリプロピレンシート、厚さ0.75mm(曲げ荷重1.2N)で胴部広域に有孔(丸孔45千鳥,開口率39.25%)で、長さ(胴囲方向)は、右身頃38cm、左見頃42cmの板で、幅(身長方向)は17cmである。
胴部1(腹側)の胴部調節接続部2、胴囲固定部3、ともに、面ファスナーで固定する
胸部背中部4はメッシュ布製で、胴部1と繋がり、肩にある丈調整部5には面ファスナーを配する。
着用方法は上記実施例1と同様である。
胴部は柔らかく胴部調整部2も面ファスナーのため無段階調節可能、予め形成されサイズ分けされて、紐や面ファスナーにより補助されている着物や帯を着用する場合には板材の円形が保持される程度の着圧で着用可能となるので、子供や着物初心者にも着用感が良い。
【産業上の利用可能性】
【0025】
着物を着用する際に使用し、簡単に装着できる上に、長時間快適に過ごすことのできる体形補正中間着を提供することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 胴部
2 胴囲調整部
3 胴囲固定部
4 身頃部(布製)
5 丈調整部
6 支え
【要約】
【課題】
着物の着用時に、着物等と身体の間に隙間を形成し、身体可動域の低下や、息苦しさを低減し、好ましくは通気性と放熱性を確保して着用時の不快感を低減するとともに着物着用の為の体形確保をするのを課題とする。
【解決手段】
着物を着る際に、着物の下に着用され、着用者の胴に巻かれる中間着であって、弾性変形可能であり、板材の曲げ荷重が0.1~36Nである板材により形成される胴部を備える中間着とし、有孔であっても良い。
【選択図】
図1