IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アーベーベー・シュバイツ・アーゲーの特許一覧

<>
  • 特許-塗装システム 図1
  • 特許-塗装システム 図2
  • 特許-塗装システム 図3
  • 特許-塗装システム 図4
  • 特許-塗装システム 図5
  • 特許-塗装システム 図6
  • 特許-塗装システム 図7
  • 特許-塗装システム 図8
  • 特許-塗装システム 図9
  • 特許-塗装システム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】塗装システム
(51)【国際特許分類】
   B05B 12/00 20180101AFI20240930BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240930BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240930BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
B05B12/00 A
B05C5/00 101
B05C11/10
B05D3/00 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024087657
(22)【出願日】2024-05-30
【審査請求日】2024-05-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】飯田 輝澄
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-70443(JP,A)
【文献】特許第7066035(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 12/00
B05C 5/00
B05C 11/10
B05D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の塗装部位への塗装を行う塗装ロボットを備える塗装システムであって、
前記塗装ロボットは、
塗料の液滴を吐出する複数のノズルを有する塗装ヘッドを備える塗装ヘッドユニットと、
前記塗装ヘッドユニットを先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニットを所望の位置へ移動させるロボットアームと、
前記塗装ヘッドの作動を制御するヘッド制御部、および前記ロボットアームの作動を制御するロボットアーム制御部を備える制御部と、を備え、
前記ロボットアーム制御部は、前記ロボットアームに対し、
前記塗装ヘッドユニットの姿勢を、前記液滴を吐出する吐出ポジションから、前記液滴と気泡との間の比重差によって前記塗装ヘッド内に存在する気泡を移動させるように前記塗装ヘッドユニットを移動させるヘッド移動制御と、
前記ヘッド移動制御の後に、前記塗装ヘッドユニットの姿勢を、前記吐出ポジションへと復帰させる姿勢復帰制御と、
を実行させる制御を行い、
前記ヘッド制御部は、前記姿勢復帰制御の直後または当該姿勢復帰制御の間から直後に前記塗装ヘッドの前記ノズルから前記液滴を吐出させる液滴吐出制御を実行させる、
ことを特徴とする塗装システム。
【請求項2】
請求項1記載の塗装システムであって、
前記ロボットアーム制御部は、前記ヘッド移動制御における移動ポジションにおいて、前記吐出ポジションにおける前記塗装ヘッドユニットに対し、上下反転させる制御を行う、
ことを特徴とする塗装システム。
【請求項3】
請求項1記載の塗装システムであって、
前記ロボットアーム制御部は、前記ヘッド移動制御において、前記塗装ヘッドユニットを揺動させる、
ことを特徴とする塗装システム。
【請求項4】
請求項1記載の塗装システムであって、
前記塗装ヘッドユニットのノズル形成面を拭き取るための払拭手段を有し、
前記液滴吐出制御の後に、前記払拭手段で前記ノズル形成面の拭き取りを実行する、
ことを特徴とする塗装システム。
【請求項5】
請求項1記載の塗装システムであって、
前記塗装ヘッドによる塗装部位の撮像が可能な撮像手段と、前記撮像手段の作動を制御する撮像制御部と、前記撮像手段で前記塗装部位を撮像した際に所定の判定を行う判定手段とを備え、
前記塗装ヘッドユニットへの前記塗料または前記塗装ヘッドの洗浄を行うための洗浄液の供給を制御する塗料・洗浄液供給制御部を備え、
前記ヘッド制御部は、前記液滴吐出制御の実行後、それぞれの前記ノズルからの前記液滴の吐出に不良がないか否かを確認するためのテストパターン印刷を行うよう、前記塗装ヘッドの作動を制御し、
前記撮像制御部は、所定の前記塗装部位へのテストパターン印刷後に撮像によって判定用画像データを取り込むように前記撮像手段の作動を制御し、
前記塗料・洗浄液供給制御部は、前記判定用画像データに基づいて、複数の前記ノズルの吐出不良が一定の条件を満たしたと前記判定手段が判定したときに、前記塗装ヘッドへ前記洗浄液を供給して当該塗装ヘッドの洗浄制御を実行する、
ことを特徴とする塗装システム。
【請求項6】
請求項2記載の塗装システムであって、
前記ロボットアーム制御部は、前記上下反転させる制御を行った後に、前記ヘッド移動制御において、前記塗装ヘッドユニットを揺動させる、
ことを特徴とする塗装システム。
【請求項7】
請求項4記載の塗装システムであって、
前記塗装ヘッドへ前記塗料を供給する際の供給圧力、および前記塗装ヘッドから吐出されなかった前記塗料を戻り流路を介して回収する際の回収圧力を制御する圧力制御部を備え、
前記圧力制御部での制御において、前記供給圧力よりも前記回収圧力の方が高いと判断される際に、前記液滴吐出制御は、前記払拭手段での前記ノズル形成面の拭き取り動作を実行するのに先立って実行される、
ことを特徴とする塗装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装ロボットを備える塗装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の塗装ラインにおいては、ロボットを用いたロボット塗装が主流となっている。このロボット塗装に関する構成の一例として、たとえば特許文献1には、脱気モジュールや気泡除去部材としてのタンク等を備える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第7066035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の構成においては、流路を流れる気泡は除去可能である。また、フィルタによって流路を流れる異物も除去可能である。しかしながら、インクジェット方式の塗装ヘッドユニットの内部に入り込んでいる気泡や異物を除去することは困難である。
【0005】
なお、塗装ヘッドユニットの内部に気泡や異物が残存していると、ノズルからの塗料の液滴の吐出不良や吐出不能の原因となってしまう。
【0006】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、塗装ヘッドユニットの内部における気泡や異物の排出性を良好にすることが可能な塗装システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、車両の塗装部位への塗装を行う塗装ロボットを備える塗装システムであって、塗装ロボットは、塗料の液滴を吐出する複数のノズルと、外部の供給路から液塗料をノズルに供給するための内部流路と、駆動することでノズルから液滴を押し出すための塗装ヘッドを備える塗装ヘッドユニットと、塗装ヘッドユニットを先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニットを所望の位置へ移動させるロボットアームと、塗装ヘッドの圧電素子の作動を制御するヘッド制御部、およびロボットアームの作動を制御するロボットアーム制御部を備える制御部と、を備え、ロボットアーム制御部は、ロボットアームに対し、塗装ヘッドユニットの姿勢を、液滴を吐出する吐出ポジションから、液滴と気泡との間の比重差によって内部流路内に存在する気泡を移動させるように塗装ヘッドユニットを移動させるヘッド移動制御と、ヘッド移動制御の後に、塗装ヘッドユニットの姿勢を、吐出ポジションへと復帰させる姿勢復帰制御と、を実行させる制御を行い、ヘッド制御部は、姿勢復帰制御の直後または当該姿勢復帰制御の間から直後に塗装ヘッドのノズルから液滴を吐出させる液滴吐出制御を実行させる、ことを特徴とする塗装システムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、塗装ヘッドユニットの内部における気泡や異物の排出性を良好にすることが可能な塗装システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態に係る塗装ロボットの全体構成を示す概略図である。
図2図1に示す塗装ロボットを備える塗装システムの概略的な構成を示す図である。
図3図1に示す塗装ロボットが備える塗装ヘッドユニットのうち、塗料を吐出させるノズル形成面を正面視した状態を示す図である。
図4図1に示す塗装ロボットにおいて、各ノズルへ塗料を供給する概略的な構成について示す図である。
図5図1に示す塗装ロボットにおいて、列方向供給流路、ノズル加圧室および列方向排出流路付近の構成を示す断面図である。
図6図3に示す塗装ヘッドユニットとは異なる他の塗装ヘッドユニットにおけるノズル形成面の構成を示す平面図である。
図7図5に示すノズル加圧室付近の構成において、ノズル加圧室内に気泡および異物が溜まっているイメージを示す図である。
図8図1に示す塗装ロボットが備える塗装ヘッドユニットに対し、気泡および異物の排出のための動作イメージを示す図であり、(a)は塗装ヘッドユニットを反転させた状態、(b)は塗装ヘッドユニットを揺動させた状態、(c)は塗装ヘッドユニットの吐出ポジションへ姿勢復帰させた状態を示している。
図9図1に示す塗装ロボットが備える塗装ヘッドユニットに対し、気泡および異物の排出のための動作イメージを示す図であり、(a)は気泡および異物の吐出のために塗料を吐出させる状態、(b)はノズル形成面の払拭を行う状態、(c)はテストパターンを印刷する状態を示している。
図10】(a)は図9(c)の状態において印刷されるテストパターンの一例を示す図であり、(b)は(a)におけるテストパターンの領域Aを拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態に係る塗装システム1および塗装ロボット10について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、必要に応じて、X方向はノズル形成面52(塗装ヘッド53)の長手方向とし、X1側は図3における右側、X2側は図3における左側とする。また、Y方向はノズル形成面52(塗装ヘッド53)の短手方向(幅方向)とし、Y1側は図3における紙面上側、Y2側は図3における紙面下側とする。
【0011】
(1.塗装システム1および塗装ロボット10の概要について)
本実施の形態の塗装システム1および塗装ロボット10は、自動車製造の工場における塗装ラインに位置する車両または車両部品(以下、車両の一部となる車両部品も車両として説明する)といった塗装対象物に対して、「塗装」を行うものであり、塗膜を塗装対象物の表面に形成して、その表面の保護や美観を与えることを目的としている。したがって、所定時間毎に、塗装ラインに沿って移動してくる車両に対し、一定の時間内に所望の塗装品質にて、塗装を行う必要がある。
【0012】
また、本実施の形態の塗装システム1および塗装ロボット10では、上述した塗膜を形成するのみならず、各種のデザインや画像を、車両や車両部品といった塗装対象物に対して形成することが可能である。なお、塗装対象物は、車両や車両部品には限られず、自動車以外の各種部品(一例としては、飛行機や鉄道の外装部品)等、塗装を行う必要があるものであれば良い。
【0013】
(1-1.塗装システム1および塗装ロボット10の全体構成について)
図1は、本発明の一実施の形態に係る塗装ロボット10の全体構成を示す概略図である。図2は、図1に示す塗装ロボット10を備える塗装システム1の概略的な構成を示す図である。図2に示すように、塗装システム1は、塗装ロボット10と、画像処理装置200と、カメラ300と、払拭手段400とを備えている。
【0014】
(1-2.塗装ロボット10について)
塗装ロボット10は、図1に示すように、ロボット本体20と、塗装ヘッドユニット50とを主要な構成要素としている。図1に示す塗装ロボット10は、その一例として、6軸の垂直多関節ロボットを示しているが、当該塗装ロボット10は、6軸以外の垂直多関節型、水平多関節型、直交ロボット等、どのようなタイプのロボットでも良い。
【0015】
(1-3.ロボット本体20について)
図1に示すように、ロボット本体20は、基台21と、第1~第6回転軸22a~22fと、脚部23と、第1回動アーム24と、第2回動アーム25と、回転アーム26と、リスト部27と、これらを駆動させるモータM1~M6(図2参照)と、を主要な構成要素としている。なお、脚部23からリスト部27までの部分は、ロボットアームR1に対応するが、基台21等のようなそれ以外の部分も、ロボットアームR1に対応するものとしても良い。
【0016】
これらのうち、基台21は床面等の設置部位に設置される部分であるが、この基台21が設置部位に対して走行可能であっても良い。また、脚部23は、基台21から上部に向かい立設された部分であり、モータM1(図2参照)の駆動によって第1回転軸22aを介して基台21に対して回転可能に設けられている。なお、脚部23は、基台21に対して回転しないように構成しても良い。
【0017】
また、脚部23の上端には、モータM2の駆動によって第2回転軸22bを介して第1回動アーム24が回動可能に設けられている。さらに、第1回動アーム24の先端側には、モータM3の駆動によって第3回転軸22cを介して第2回動アーム25が回動可能に設けられている。
【0018】
また、第2回動アーム25の先端側には、回転アーム26が第2回動アーム25の中心軸周りに回転可能に設けられている。この回転アーム26は、モータM4の駆動によって、第4回転軸22dを介して回転可能となっている。また、回転アーム26の先端側には、リスト部27が設けられている。このリスト部27は、モータM5およびモータM6の駆動によって、たとえば2つ等の複数の異なる向きの軸部を中心に、回転運動を可能としている。図1においては、その回転運動が可能な回転軸を、それぞれ第5回転軸22eおよび第6回転軸22fとしている。それにより、塗装ヘッドユニット50の向きを精度良くコントロールすることが可能となっている。なお、軸部の個数は、2つ以上であれば幾つでも良い。
【0019】
また、リスト部27には、塗装ヘッドユニット50が取り付けられているが、この塗装ヘッドユニット50は、リスト部27に対して着脱自在に設けられていても良い。
【0020】
(1-4.塗料・洗浄液供給部40について)
図2に示すように、塗装システム1および塗装ロボット10には、塗料・洗浄液供給部40が設けられている。塗料・洗浄液供給部40は、塗装ヘッドユニット50に向けて塗料または洗浄液を供給するための部分である。このため、塗料・洗浄液供給部40は、不図示の塗料貯留部から塗料を供給する、または不図示の洗浄液貯留部から洗浄液を供給するための供給路41(図4参照)と、不図示のポンプと、不図示の弁等と、吐出されなかった塗料または洗浄済みの洗浄液を回収するための戻り流路42とを備えている。
【0021】
ここで、塗料・洗浄液供給部40には、切替制御弁45が設けられている。切替制御弁45は、不図示の塗料貯留部から塗料を供給するのか、または不図示の洗浄液貯留部から洗浄液を供給するのかを切り替えるための制御弁であり、後述する塗料・洗浄液供給制御部80での制御によって作動する。このような切替制御弁45を備えることで、塗料・洗浄液供給部40では、塗料と洗浄液のいずれかを選択的に供給することが可能となっている。
【0022】
なお、塗料が塗装ロボット10の外部から供給される構成を採用する場合には、塗装ロボット10は、塗料を貯留する部分を備えなくても良く、塗装ロボット10の外部に塗料を貯留する部分を備えても良い。
【0023】
(1-5.塗装ヘッドユニットについて)
次に、塗装ヘッドユニット50について説明する。図3は、塗装ヘッドユニット50のうち、塗料を吐出させるノズル形成面52を正面視した状態を示す図である。図3に示すように、塗装ヘッドユニット50は、不図示のヘッドカバーを備え、そのヘッドカバー内に、種々の構成が内蔵されている。図3に示すように、ノズル形成面52には、ノズル54が塗装ヘッドユニット50の長手方向に対して傾斜する方向に連なるノズル列55が複数設けられている。かかるノズル列55には、本実施の形態では、主走査方向(Y方向)の一方側(Y2側)に存在する第1ノズル列55Aと、主走査方向の他方側(Y1側)に存在する第2ノズル列55Bとが設けられている。
【0024】
なお、塗料を吐出する場合、第1ノズル列55Aにおける隣り合うノズル54から吐出される液滴の間に、第2ノズル列55Bにおけるノズル54から吐出される液滴が着弾されるように、各ノズル54の駆動タイミングが制御される。それにより、塗装の際にドット密度を向上させることができる。
【0025】
ところで、図3に示すように、ノズル形成面52には、単一の塗装ヘッド53が存在している。しかしながら、ノズル形成面52には、複数の塗装ヘッド53から構成されるヘッド群が存在するようにしても良い。この場合、一例として、複数の塗装ヘッド53を位置合わせしつつ千鳥状に配置する構成が挙げられるが、ヘッド群における塗装ヘッド53の配置は千鳥状でなくても良い。
【0026】
図4は、各ノズル54へ塗料を供給する概略的な構成について示す図である。図5は、列方向供給流路58、ノズル加圧室59および列方向排出流路60付近の構成を示す断面図である。図4および図5に示すように、塗装ヘッド53は、供給側大流路57と、列方向供給流路58と、ノズル加圧室59と、列方向排出流路60と、排出側大流路61とを備えている。供給側大流路57は、上記の供給路41から塗料が供給される流路である。また、列方向供給流路58は、供給側大流路57内の塗料が、分流される流路である。
【0027】
また、ノズル加圧室59は、列方向供給流路58とノズル供給流路59aを介して接続されている。それにより、ノズル加圧室59には、列方向供給流路58から塗料が供給される。このノズル加圧室59は、ノズル54の個数に対応して設けられていて、内部の塗料を後述する圧電基板62を用いてノズル54から吐出させることができる。
【0028】
また、ノズル加圧室59は、ノズル排出流路59bを介して列方向排出流路60と接続されている。したがって、ノズル54から吐出されなかった塗料は、ノズル加圧室59内からノズル排出流路59bを介して、列方向排出流路60へと排出される。また、列方向排出流路60は、排出側大流路61と接続されている。排出側大流路61は、それぞれの列方向排出流路60から、排出された塗料が合流する流路である。この排出側大流路61は、上記の戻り流路42と接続されている。
【0029】
このような構成により、供給路41から供給された塗料は、供給側大流路57、列方向供給流路58、ノズル供給流路59aおよびノズル加圧室59を経て、ノズル54から吐出される。また、ノズル54から吐出されなかった塗料は、ノズル加圧室59からノズル排出流路59b、列方向排出流路60および排出側大流路61を経て、戻り流路42へと戻される。
【0030】
なお、図4に示す構成では、1本の列方向供給流路58には、1本の列方向排出流路60が対応するように配置されている。しかしながら、1本の列方向供給流路58に、複数本(たとえば2本)の列方向排出流路60が対応するように配置されていても良い。また、複数本の列方向供給流路58に、1本の列方向排出流路60が対応するように配置されていても良い。
【0031】
また、図5に示すように、ノズル加圧室59の天面(ノズル54とは反対側の面)には、圧電基板62が配置されている。この圧電基板62は、圧電体である2枚の圧電セラミック層63a,63bを備え、さらに共通電極64と、個別電極65とを備えている。圧電セラミック層63a,63bは、外部から電圧を印加することで、伸縮可能な部材である。このような圧電セラミック層63a,63bとしては、強誘電性を有する、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系、NaNbO3系、BaTiO3系、(BiNa)NbO3系、BiNaNb5O15系等のセラミックス材料を用いることができる。
【0032】
また、図5に示すように、共通電極64は、圧電セラミック層63aと圧電セラミック層63bの間に配置されている。また、圧電基板62の上面には、共通電極用の表面電極(不図示)が形成されている。これら共通電極64と共通電極用の表面電極とは、圧電セラミック層63aに存在する不図示の貫通導体を通じて、電気的に接続されている。また、個別電極65は、上記のノズル加圧室59と対向する部位にそれぞれ配置されている。さらに、圧電セラミック層63aのうち、共通電極64と個別電極65とに挟まれた部分は、厚さ方向に分極している。したがって、個別電極65に電圧を印加すると、圧電効果によって圧電セラミック層63aが歪む。このため、所定の駆動信号を個別電極65に印加すると、ノズル加圧室59の体積を減少させるように圧電セラミック層63bが相対的に変動し、それによって塗料が吐出される。
【0033】
なお、図5において、共通電極64がノズル加圧室59の天面に配置されているが、共通電極64は、図5に示すような、ノズル加圧室59の天面に配置されている構成には限られない。たとえば、共通電極64は、ノズル加圧室59の側面(上記の天面と直交または概ね直交する面)に配置される構成を採用しても良く、その他、塗料をノズル54から良好に吐出可能であれば、どのような構成を採用しても良い。
【0034】
(1-6.塗装ヘッドユニットの他の構成について)
次に、塗装ヘッドユニット50の他の構成について説明する。図6は、他の塗装ヘッドユニット50のノズル形成面52の構成を示す平面図である。図6に示すように、複数のノズル54が塗装ヘッド53の短手方向(幅方向;Y方向)に沿って並ぶことでノズル列55を構成するようにしても良い。なお、図6に示す構成では、複数のノズル54が塗装ヘッド53の短手方向(幅方向;主走査方向)に並んでノズル列55を構成しているが、1つの(単一の)ノズル54のみが塗装ヘッド53の短手方向(幅方向;主走査方向)に配置される構成としても良い。すなわち、ノズル列55が1つのノズル54から構成されていても良い。
【0035】
また、図6に示すような塗装ヘッド53を用いて車両に塗装を行う場合、塗装ヘッド53の長手方向が、塗装ヘッド53の主走査方向に対して若干傾斜させた状態で塗装を実行するようにしても良い。たとえば、図3に示す塗装ヘッド53の構成では、ノズル列55は主走査方向に対して所定の角度だけ傾斜しているとすると、図6に示す塗装ヘッド53の短手方向を、塗装ヘッド53の主走査方向に対して所定の角度だけ傾斜させるようにすればよい。このように傾斜させる場合には、各ノズル54からの塗料の吐出タイミングを調整するだけで、図3に示す塗装ヘッド53と同等の塗装を実現することができる。
【0036】
(1-7.塗装システム1の制御的な構成について)
次に、塗装システム1の作動を制御するための制御的な構成について説明する。なお、以下に説明する制御的な構成は、制御部に対応する。図2に示すように、塗装ロボット10は、ロボットアーム制御部70と、塗料・洗浄液供給制御部80と、ヘッド制御部90と、撮像制御部100と、主制御部110とを備えている。また、塗装ロボット10は、画像処理装置200に接続され、さらにカメラ300および払拭手段400を備えることで、塗装システム1を構成している。
【0037】
なお、ロボットアーム制御部70、塗料・洗浄液供給制御部80、ヘッド制御部90、撮像制御部100、主制御部110、および後述する画像処理部210は、CPU(Central Processing Unit)、記憶部位(ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、不揮発メモリ等)等のメモリ、その他の要素から構成されている。なお、画像処理部210は、画像処理性能に優れたCPUと共に、またはCPUに代えて、GPU(Graphics Processing Unit)を用いるようにしても良い。
【0038】
また、塗装ロボット10には、図示を省略する各種のセンサも備えていて、それら各センサからの出力が、ロボットアーム制御部70、塗料・洗浄液供給制御部80、ヘッド制御部90、撮像制御部100および主制御部110の何れかに入力される。各種のセンサとしては、たとえば加速度センサ、角速度センサ、各駆動部の位置を検出する位置検出センサ、イメージセンサ等が挙げられるが、これら以外のセンサを用いても良い。
【0039】
これらのうち、ロボットアーム制御部70は、上述したモータM1~M6の駆動を制御する部分である。このロボットアーム制御部70は、メモリ71を備えていて、メモリ71には、ロボットティーチングによって作成されたプログラムおよびデータが記憶されている。
【0040】
そして、ロボットアーム制御部70では、メモリ71に記憶されたプログラムやデータ、および画像処理装置200の画像処理部210での画像処理に基づいて、モータM1~M6の駆動を制御する。その制御により、塗装ヘッドユニット50は、塗装を実行するための所望の位置を、所望の速度で通過したり、所定の位置で停止することができる。なお、メモリ71は、塗装ロボット10が備えていても良いが、塗装ロボット10の外部にメモリ71が存在し、そのメモリ71に対して、有線または無線の通信手段を介して、情報の送受信を可能としても良い。
【0041】
また、塗料・洗浄液供給制御部80は、塗装ヘッドユニット50への塗料または洗浄液の供給を制御する部分であり、具体的には、塗料・洗浄液供給部40が備えるポンプや弁等の作動を制御する。また、塗料・洗浄液供給制御部80は、切替制御弁45の作動を制御して、不図示の塗料貯留部と不図示の洗浄液貯留部から、塗料と洗浄液のいずれかが選択的に供給される状態とする。さらに、塗料・洗浄液供給制御部80は、塗装ヘッド53へ塗料を供給する際の供給圧力、および塗装ヘッドから吐出されなかった塗料を戻り流路を介して回収する際の回収圧力を制御する。
【0042】
なお、塗料・洗浄液供給制御部80は、塗料または洗浄液が供給される塗装ヘッドユニット50に対して、定圧にて塗料または洗浄液が供給されるように、上記のポンプや弁の作動を制御することが好ましい。なお、塗料・洗浄液供給制御部80は、圧力制御部に対応する。
【0043】
また、ヘッド制御部90は、画像処理部210での画像処理に基づいて、塗装ヘッドユニット50内の圧電基板62の作動を制御する部分である。また、撮像制御部100は、後述するカメラ300の作動を制御する部分である。
【0044】
また、主制御部110は、上記のモータM1~M6、塗料・洗浄液供給部40および圧電基板62が協働して塗装対象物に対して塗装が実行されるように、上述したロボットアーム制御部70、塗料・洗浄液供給制御部80、ヘッド制御部90および撮像制御部100に所定の制御信号を送信する部分である。
【0045】
また、塗装システム1には、画像処理装置200が設けられている。画像処理装置200は、画像処理部210と、判定部220と、メモリ230とを備えている。画像処理部210は、塗装ヘッド53が塗装を実行する経路である塗装パス毎の画像データを作成する部分である。
【0046】
また、判定部220は、撮像制御部100での制御に基づいて作動するカメラ300で撮像したテストパターンの判定を行う部分である。かかる判定部220では、テストパターンを撮像した撮像データと、メモリ230に予め記憶されている判定用画像データとから、ノズル54の吐出不良が生じているか否かや、その吐出不良の程度を判定することが可能となっている。なお、判定部220は、判定手段に対応する。
【0047】
メモリ230は、塗装パス毎の画像データを塗装順序に対応して記憶する部分であり、また上記のテストパターン画像や、判定部220での判定結果も記憶可能となっている。
【0048】
なお、画像処理装置200は、たとえばコンピュータが対応するが、そのコンピュータは、塗装ロボット10の一部の構成要素であっても良く、塗装ロボット10とは別体的に設けられていても良い。画像処理装置200が塗装ロボット10とは別体的に設けられている場合、画像処理装置200と塗装ロボット10の間で、有線通信または無線通信により、データの送受信が行われる。なお、画像処理装置200が塗装ロボット10とは別体的に設けられていても、塗装ロボット10の概念に含めるようにしても良く、塗装ロボット10の概念に含めないようにしても良い。
【0049】
(1-8.カメラ300および払拭手段400について)
次に、カメラ300および払拭手段400について説明する。撮像手段に対応するカメラ300は、塗装ヘッド53で塗装対象物にテストパターンの塗装を行う部位の近傍に位置することが可能となっている。したがって、カメラ300は、塗装を行う部位の近傍に固定的に配置されていても良く、塗装ヘッド53と共に移動するように、ロボットアームR1に取り付けられていても良い。また、カメラ300は、車両への塗装を実行する塗装ブースの外に設置されていても良い。
【0050】
このカメラ300は、上述した撮像制御部100によって、その作動が制御されている。また、カメラ300は、画像処理装置200との間で、撮像された撮像データを無線通信または有線通信によって送信可能に接続されている。なお、カメラ300は、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等のイメージセンサを備えている。
【0051】
また、払拭手段400は、塗装ヘッド53によって車両の塗装を行う塗装ラインの外部(すなわち、車両の塗装を行う部位と干渉しない部位)に設けられている。この払拭手段400は、ノズル形成面52の払拭を行う手段であり、例えば、ワイヤとスポンジ等のうち少なくとも1つを備えている。
【0052】
この払拭手段400は、ノズル形成面52を払拭するために、例えば長尺状または平面状の払拭部410を備えている。したがって、払拭部にノズル形成面52を接触させた状態で、ノズル形成面52を移動させるようにロボットアームR1を作動させることで、ノズル形成面52の払拭が可能となっている。
【0053】
(2.作用について)
以上のような構成の塗装システム1および塗装ロボット10の作用について、以下に説明する。
【0054】
図5に示すような塗装ヘッド53において、塗料の吐出を所定だけ行うと、塗装ヘッド53の流路(列方向供給流路58、ノズル供給流路59a、ノズル排出流路59b、列方向排出流路60、および排出側大流路61等)や、ノズル加圧室59に、気泡や異物が所定だけ溜まってしまう場合がある。図7に、ノズル加圧室59に気泡B1や異物B2が所定だけ溜まった状態を示す。この図7に示すように、気泡B1や異物B2が溜まった状態を放置しておくと、ノズル54からの塗料の吐出性能が悪化してしまう虞がある。
【0055】
そこで、本実施の形態では、以下のようにロボットアームR1および塗装ヘッド53を作動させることで、気泡B1および異物B2のノズル54からの排出を行うようにしている。
【0056】
(a)吐出ポジションからの塗装ヘッド53の上下反転
まず、図8(a)に示すように、主制御部110からの指令により、ロボットアーム制御部70は、ロボットアームR1を作動させて、塗装ヘッドユニット50(塗装ヘッド53)を上下反転させる。すると、塗装ヘッド53内の各流路やノズル加圧室59内において、塗料と気泡B1、および塗料と異物B2の間の比重により、気泡B1や異物B2が塗料中を移動したり、気泡B1や異物B2が塗料中を漂ったりする。
【0057】
(b)塗装ヘッド53の揺動
次に、上記の上下反転の状態で、主制御部110からの指令により、ロボットアーム制御部70は、図8(b)に示すように、ロボットアームR1を作動させて、塗装ヘッドユニット50(塗装ヘッド53)を揺動させる。すると、塗料中に、気泡B1および異物B2が一層漂う状態となる。特に、上下反転だけでは漂わずに特定の箇所に堆積している異物B2が、塗料中に漂い易い状態となる。
【0058】
なお、かかる揺動は、塗装ヘッドユニット50の上下反転後に行うようにしても良いが、上下反転を行う動作の途中段階に行うようにしても良い。また、上下反転を行う動作の途中段階と、上下反転後の双方において、揺動を行うようにしても良い。また、「揺動」には、塗装ヘッド53に対し一定の振幅を付与する動作が含まれるため、大きく揺らす場合は勿論、塗装ヘッド53を振動させる場合も含まれる。
【0059】
また、上記の「揺動」には、特定の方向において往復運動するものでも良く、円弧状に運動するものでも良く、特定の平面内を規則的または不規則に運動するものでも良く、特定の空間内を規則的または不規則に運動するものでも良い。特に、特定の空間内を規則的または不規則に運動するように塗装ヘッド53を搖動させる場合、塗料中を漂う気泡B1および異物B2を増大させることが可能となる。
【0060】
(c)吐出ポジションへの姿勢復帰
上記の塗装ヘッド53の揺動後、または揺動と共に、主制御部110からの指令により、ロボットアーム制御部70は、図8(c)に示すように、ロボットアームR1を作動させて、塗装ヘッドユニット50(塗装ヘッド53)を、塗料を吐出させる吐出ポジションへと姿勢復帰させる。
【0061】
(d)塗料の吐出(気泡B1および異物B2)の排出
次に、主制御部110からの指令により、ヘッド制御部90は、図9(a)に示すように、圧電基板62を駆動させて塗装ヘッド53から塗料を吐出する。この吐出により、塗料中を漂っている気泡B1および異物B2が、塗料と共にノズル54から排出される。このとき、塗料中を漂う気泡B1および異物B2を排出するために、ノズル54の全てから塗料を吐出するようにすることが好ましい。しかしながら、一部または一区域のノズル54からは、塗料を吐出しないようにしても良い。また、塗装ヘッドユニット50(塗装ヘッド53)の姿勢復帰制御の直後のみならず、姿勢復帰の間から直後に、ヘッド制御部90は、塗装ヘッド53のノズル54から液滴を吐出させるようにしても良い。
【0062】
以上のような、塗装ヘッド53の上下反転から塗料の吐出までの動作を行うことで、塗装ヘッド53に溜まっている気泡B1や異物B2を排出させることが可能となっている。
【0063】
(e)ノズル形成面52の払拭
次に、主制御部110からの指令により、ロボットアーム制御部70は、図9(b)に示すように、ロボットアームR1を作動させて、塗装を行う塗装ラインの外部に塗装ヘッド53を移動させる。そして、その塗装ラインの外部に設けられている払拭手段400の払拭部410に、ノズル形成面52を押し付け、その押し付け状態のまま、ノズル形成面52を移動させる。それにより、払拭手段400(払拭部410)によって、ノズル形成面52の払拭を行う。
【0064】
かかる払拭により、ノズル形成面52に付着している塗料が除去される。このため、ノズル54から液滴を吐出する際に、ノズル形成面52に付着している塗料を巻き込んで液滴が吐出されるのが防止される。
【0065】
なお、塗料の種類によっては、塗装ヘッド53への塗料の供給圧力よりも、塗料の回収圧力を強く設定する必要がある。このような場合においては、ノズル54から空気を吸い込む可能性が高いため、気泡B1が発生し易い状態となる。そこで、かかる塗料種では、ノズル形成面52の表面を払拭する前に、ノズル54から塗料を吐出させる液滴吐出の制御を行い、その後に払拭手段400(払拭部410)でノズル形成面52を払拭するようにするのが好ましい。
【0066】
(f)テストパターンTPの印刷
上記のノズル形成面52の払拭後に、主制御部110からの指令により、ヘッド制御部90は、図9(c)に示すように、圧電基板62を駆動させて、塗装対象物に対する塗料の吐出を行い、所定のテストパターンTPを印刷する。このテストパターンTPは、インクジェットプリンタにおいて通常実施されているような、ノズル54からの塗料の吐出抜けをチェックするためのものである。かかるテストパターンTPをチェックすることで、どのノズル54に塗料の吐出不良が生じているのかを判別することができる。
【0067】
ここで、テストパターンTPの一例を、図10に示す。なお、図10(a)は図9(c)の状態において印刷されるテストパターンTPの一例を示す図であり、図10(b)は図10(a)におけるテストパターンTPの領域Aを拡大して示す図である。図10(a)および図10(b)に示すように、テストパターンTPは、主走査方向(図10中S1方向)に延びる複数のチェックラインMCLと、副走査方向(図10中S2方向)に延びる複数のチェックラインSCLと、を有する。
【0068】
副走査方向に延びるチェックラインSCL(SCL1~SCL9)は、塗装ヘッド53のノズル形成面52に設けられた複数のノズル54の各々が主走査方向における特定位置に到達したときに、特定位置に到達したノズル54から塗料の液滴を吐出することで生成されるチェックラインである。
【0069】
また、主走査方向に延びるチェックラインMCL(MCL1~MCL8)は、塗装ヘッド53を主走査方向に移動させながら、ノズル54のいずれかから塗料の液滴を複数回連続して吐出する動作を、塗料の液滴を吐出するノズル54を切り替えながら、全てのノズル54で行うことで生成されるチェックラインである。これらチェックラインMCL及びチェックラインSCLの本数は、ノズル形成面31に設けられるノズルの数によって異なる。
【0070】
なお、図10に示すテストパターンTPにおいては、複数のノズル54のいずれかの詰まりの有無を判定するものであるので、副走査方向に延びるチェックラインSCLは必ずしも必要ではなく、主走査方向に延びるチェックラインMCLのみのテストパターンとしてもよい。
【0071】
(g)カメラ300での撮像
上記のテストパターンTPの印刷後、主制御部110の指令により、撮像制御部100は、カメラ300を作動させて、テストパターンTPの撮像を行い、撮像データを得る。そして、撮像データを、無線または有線の通信を介して、画像処理装置200へと送信し、メモリ230に撮像データを記憶させる。
【0072】
(h)判定部220での判定
次に、画像処理装置200の判定部220では、メモリ230に記憶されている撮像データと、判定用画像データとを比較し、テストパターンTPの中から、塗装がされてないチェックラインMCLを抽出し、その塗装がされていないチェックラインMCLに対応する(塗装抜けによって形成されていないチェックラインMCLに対応する)ノズル54を吐出不良であると判定する。
【0073】
なお、判定部220は、ノズル54からの吐出不良が一定の条件を満たす場合に、塗装ヘッド53全体の吐出不良があると判定する。ここで、一定の条件を満たす場合とは、テストパターンTPにおいてチェックラインMCLの抜け(塗装抜け)が一定の本数に達した場合や、あるエリア内におけるチェックラインMCLの抜け(塗装抜け)が一定の本数に達した場合等が挙げられるが、これ以外を、一定の条件としても良い。
【0074】
(i)塗装ヘッド53の洗浄の実行
上記の判定部220により、塗装ヘッド53全体の吐出不良があると判定された場合には、主制御部110の指令により、塗料・洗浄液供給制御部80は、切替制御弁45を、塗料を供給する状態から洗浄液を吐出する状態へと切り替える。そして、主制御部110の指令に基づいて、塗料・洗浄液供給制御部80は、塗料・洗浄液供給部40の不図示のポンプや弁を作動させて、塗装ヘッド53へ洗浄液を供給し、塗装ヘッド53の洗浄を実行する。それにより、ノズル54からの吐出不良の状態を回復させることが可能となる。
【0075】
しかしながら、上述した、塗装ヘッド53の上下反転から洗浄までの一連の動作によっても、ノズル54からの吐出不良が、一定の条件を満たす場合には、上記の上下反転から洗浄までの一連の動作を、再度、繰り返すようにしても良い。また、上記の上下反転からの洗浄までの一連の動作を行っても、ノズル54からの吐出不良が回復不能であり塗装品質に影響を及ぼす場合には、塗装ヘッド53(塗装ヘッドユニット50)を交換するようにしても良い。
【0076】
(3.付記)
上述した実施の形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
[1]すなわち、車両の塗装部位への塗装を行う塗装ロボット10を備える塗装システム1であって、塗装ロボット10は、塗料の液滴を吐出する複数のノズル54を有する塗装ヘッド53を備える塗装ヘッドユニット50と、塗装ヘッドユニット50を先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニット50を所望の位置へ移動させるロボットアームR1と、塗装ヘッド53の作動を制御するヘッド制御部90、およびロボットアームR1の作動を制御するロボットアーム制御部70を備える制御部と、を備え、ロボットアーム制御部70は、ロボットアームR1に対し、塗装ヘッドユニット50の姿勢を、液滴を吐出する吐出ポジションから、液滴と気泡との間の比重差によって前記塗装ヘッド53内に存在する気泡を移動させるように塗装ヘッドユニット50を移動させるヘッド移動制御と、ヘッド移動制御の後に、塗装ヘッドユニット50の姿勢を、吐出ポジションへと復帰させる姿勢復帰制御と、を実行させる制御を行い、ヘッド制御部90は、姿勢復帰制御の直後または当該姿勢復帰制御の間から直後に塗装ヘッド53のノズル54から液滴を吐出させる液滴吐出制御を実行させる。
【0077】
このように、塗装ヘッドユニット50を移動させて気泡B1や異物B2を移動させ、その後の塗装ヘッドユニット50の姿勢復帰後に全ノズル54から液滴を吐出させることにより、姿勢の変更によって塗装ヘッド53内を移動した気泡B1や異物B2を、液滴と共に排出させることが可能となる。それにより、塗装ヘッド53の内部流路等の内部に残存している気泡B1や異物B2を低減することができ、ノズル54からの塗料の液滴の吐出不良や吐出不能を抑制することが可能となる。
【0078】
[2]また、上記の実施の形態においては、上記の[1]に記載の内容に加え、ロボットアーム制御部70は、ヘッド移動制御における移動ポジションにおいて、吐出ポジションにおける塗装ヘッドユニット50に対し、上下反転させる制御を行うことが好ましい。
【0079】
このように、塗装ヘッドユニット50を上下反転させることで、気泡B1が塗装ヘッド53の内部流路等の内部を移動する可能性が高まる。また、塗装ヘッド53の内部で沈降している塗料中の顔料のような異物B2が、塗料内を漂う状態となる可能性が高まる。そのため、塗装ヘッド53の内部を移動した気泡B1や異物B2を、液滴と共に排出させる確実性を向上させることが可能となる。
【0080】
[3]また、上記の実施の形態においては、上述した[1]と[2]、またはそれらの組み合わせに記載の内容に加え、ロボットアーム制御部70は、ヘッド移動制御において、塗装ヘッドユニット50を揺動させることが好ましい。
【0081】
このように、塗装ヘッドユニット50を揺動させることで、気泡B1が塗装ヘッド53の内部流路等の内部を移動する可能性が高まる。また、塗装ヘッド53の内部で沈降している塗料中の顔料のような異物B2が、塗料内を漂う状態となる可能性が高まる。そのため、塗装ヘッド53の内部を移動した気泡B1や異物B2を、液滴と共に排出させる確実性を向上させることが可能となる。
【0082】
[4]また、上記の実施の形態においては、上述した上記の[1]から[3]のいずれかに記載またはそれらの組み合わせた内容に加え、塗装ヘッドユニット50のノズル形成面52を拭き取るための払拭手段400を有し、液滴吐出制御の後に、前記払拭手段400でノズル形成面52の拭き取りを実行する、ことが好ましい。
【0083】
このように、液滴吐出制御の後に、払拭手段400でノズル形成面52を拭き取ることにより、実際の車両への塗装の際に、ノズル54の開口周囲に付着している液滴を巻き込んで液滴が吐出されてしまうのを防止可能となる。また、ノズル形成面52に付着している液滴が乾燥して、容易にはノズル形成面52から除去できなくなってしまうのを防止可能となる。
【0084】
[5]また、上記の実施の形態においては、上述した上記の[1]から[4]のいずれかに記載またはそれらの組み合わせた内容に加え、塗装ヘッド53による塗装部位の撮像が可能なカメラ300(撮像手段)と、カメラ300(撮像手段)の作動を制御する撮像制御部100と、カメラ300(撮像手段)で塗装部位を撮像した際に所定の判定を行う判定部220(判定手段)とを備え、塗装ヘッドユニット50への塗料または塗装ヘッド53の洗浄を行うための洗浄液の供給を制御する塗料・洗浄液供給制御部80を備え、ヘッド制御部90は、液滴吐出制御の実行後、それぞれのノズル54からの液滴の吐出に不良がないか否かを確認するためのテストパターンTPの印刷を行うよう、塗装ヘッド53の作動を制御し、撮像制御部100は、所定の塗装部位へのテストパターンTPの印刷後に撮像によって判定用画像データを取り込むように撮像手段の作動を制御し、塗料・洗浄液供給制御部80は、判定用画像データに基づいて、複数のノズル54の吐出不良が一定の条件を満たしたと判定部220(判定手段)が判定したときに、塗装ヘッド53へ洗浄液を供給して塗装ヘッド53の洗浄制御を実行する、ことが好ましい。
【0085】
このように、液滴吐出制御の後に、テストパターンTPの印刷を行い、そのテストパターンTPを判定部220(判定手段)で判定して、ノズル54の不良が一定の条件を満たすか否かを確認することで、塗装ヘッド53を洗浄すべきか否かを適切に判断することができる。そして、ノズル54の吐出不良が一定の条件を満たすときに、塗装ヘッド53の洗浄制御を行うことで、車両塗装において、塗装不良が生じるのを防止可能となる。
【0086】
[6]また、上記の実施の形態においては、上述した上記の[1]から[5]のいずれかに記載またはそれらの組み合わせた内容に加え、ロボットアーム制御部70は、塗装ヘッドユニット50を上下反転させる制御を行った後に、ヘッド移動制御において、塗装ヘッドユニット50を揺動させる、ことが好ましい。
【0087】
このように、塗装ヘッドユニット50を上下反転させた後に、塗装ヘッドユニット50を揺動させることで、気泡B1が塗装ヘッド53の内部流路等の内部を移動する可能性が高まる。また、塗装ヘッド53の内部で沈降している塗料中の顔料のような異物B2が、塗料内を漂う状態となる可能性が高まる。そのため、塗装ヘッド53の内部を移動した気泡B1や異物B2を、液滴と共に排出させる確実性を向上させることが可能となる。
【0088】
[7]また、上記の実施の形態においては、上述した上記の[1]から[6]のいずれかに記載またはそれらの組み合わせた内容に加え、塗装ヘッド53へ塗料を供給する際の供給圧力、および塗装ヘッドから吐出されなかった塗料を戻り流路を介して回収する際の回収圧力を制御する塗料・洗浄液供給制御部80(圧力制御部)を備え、塗料・洗浄液供給制御部80(圧力制御部)での制御において、供給圧力よりも回収圧力の方が高いと判断される際に、液滴吐出制御は、払拭手段400でのノズル形成面52の拭き取り動作を実行するのに先立って実行される、ことが好ましい。
【0089】
例えば、塗料の種類によっては、塗装ヘッド53への塗料の供給圧力よりも、塗料の回収圧力を強く設定する必要があるような場合においては、ノズル54から空気を吸い込む可能性が高いため、気泡B1が発生し易い状態となる。しかしながら、上記のように、塗料・洗浄液供給制御部80(圧力制御部)は、液滴を吐出させる液滴吐出制御を、払拭手段400でのノズル形成面52の拭き取り動作を実行するのに先立って実行させることで、ノズル54から吸い込んだ気泡B1の排出性を高めることが可能となる。
【0090】
(4.変形例について)
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態以外に、種々変形可能である。以下に、変形例について説明する。
【0091】
上述した実施の形態では、塗装ヘッド53は、圧電基板62を用いてノズル54から液滴を吐出するインクジェット方式を採用している。しかしながら、塗装ヘッドは、インクジェット方式には限られず、ディスペンサー方式を用いても良い。
【0092】
また、上述の実施の形態では、テストパターン印刷を行い、印刷されたテストパターンTPをカメラ300等の撮像手段で判定用画像データとして撮像し、その判定用画像データに基づいて判定部220(判定手段)でノズル54の不良が一定の条件を満たしているか否かを判断している。しかしながら、かかるテストパターンTPの印刷を取り込んだ判定用画像データに基づかず、吐出された塗料に基づく塗装を直接観察して、ノズル54に不良が存在しているか否かを検査するようにしても良い。また、テストパターンTPに対し、カメラ以外の三次元変位計等で膜厚を計測して、ノズル54に不良が存在しているか否かを検査するようにしても良い。
【符号の説明】
【0093】
1…塗装システム、10…塗装ロボット、20…ロボット本体、21…基台、22a…第1回転軸、22b…第2回転軸、22c…第3回転軸、22d…第4回転軸、22e…第5回転軸、22f…第6回転軸、23…脚部、24…第1回動アーム、25…第2回動アーム、26…回転アーム、27…リスト部、40…塗料・洗浄液供給部、41…供給路、42…戻り流路、45…切替制御弁、50…塗装ヘッドユニット、52…ノズル形成面、53…塗装ヘッド、54…ノズル、55…ノズル列、55A…第1ノズル列、55B…第2ノズル列、57…供給側大流路、58…列方向供給流路、59…ノズル加圧室、59a…ノズル供給流路、59b…ノズル排出流路、60…列方向排出流路、61…排出側大流路、62…圧電基板、63a…圧電セラミック層、63b…圧電セラミック層、64…共通電極、65…個別電極、70…ロボットアーム制御部、71…メモリ、80…塗料・洗浄液供給制御部(圧力制御部に対応)、90…ヘッド制御部、100…撮像制御部、110…主制御部、200…画像処理装置、210…画像処理部、220…判定部(判定手段に対応)、230…メモリ、300…カメラ(撮像手段に対応)、400…払拭手段、410…払拭部、B1…気泡、B2…異物、M1~M6…モータ、MCL,SCL…チェックライン、R1…ロボットアーム、TP…テストパターン
【要約】
【課題】塗装ヘッドユニットの内部における気泡や異物の排出性を良好にすることが可能な塗装システムを提供することを目的とする。
【解決手段】塗装ロボット10は、塗装ヘッド53を備える塗装ヘッドユニット50と、塗装ヘッドユニット50を所望の位置へ移動させるロボットアームR1と、塗装ヘッド53の作動を制御するヘッド制御部90、およびロボットアームR1の作動を制御するロボットアーム制御部70を備える制御部とを備え、ロボットアーム制御部70は、塗装ヘッドユニット50の姿勢を、液滴を吐出する吐出ポジションから、塗装ヘッド53内に存在する気泡B1を移動させるように塗装ヘッドユニット50を移動させるヘッド移動制御と、塗装ヘッドユニット50の姿勢を、吐出ポジションへと復帰させる姿勢復帰制御とを実行させ、ヘッド制御部90は、姿勢復帰制御の間または直後にノズル54から液滴を吐出させる液滴吐出制御を実行させる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10