(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】三重構造の浮沈式淡水貯水槽。
(51)【国際特許分類】
B63B 35/44 20060101AFI20240930BHJP
A01K 61/75 20170101ALI20240930BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20240930BHJP
B63B 75/00 20200101ALI20240930BHJP
B65D 88/78 20060101ALI20240930BHJP
B65D 90/00 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
B63B35/44 Z
A01K61/75
B63B35/00 Z
B63B75/00
B65D88/78 B
B65D90/00 H
(21)【出願番号】P 2024122171
(22)【出願日】2024-07-29
【審査請求日】2024-07-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】722014044
【氏名又は名称】宮田 邦代
(72)【発明者】
【氏名】宮田 憲明
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-24167(JP,A)
【文献】特開2006-161533(JP,A)
【文献】特開平8-178821(JP,A)
【文献】中国特許第114688656(CN,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 35/44
A01K 61/75
B63B 35/00
B63B 75/00
B65D 88/78
B65D 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が海水中に設置されている外枠(2)と、前記外枠の内側に第一貯水槽(3)と第二貯水槽(4)を備えた、三重構造の浮沈式淡水貯水槽(1)であって、
前記外枠(2)は、略円型の外枠上面部材(21)と円筒型の外枠側面部材(22)で構成された略円筒型の外枠であって、
前記外枠上面部材(21)は、中央部に密閉できる外枠開口部(211)を備えた略円型の外枠上面部材であって、
前記外枠側面部材(22)は、上端が前記外枠上面部材(21)の周縁部に接続され、下端に海水よりも重い土砂滞留板(24)が備えられた外枠側面部材であって、
前記外枠上面部材(21)と前記外枠側面部材(22)が接する内側のコーナーに、略円錐型部材(212)が接続される事によって、前記略円錐型部材(212)の上方に三角形の断面を持った逆円錐型の閉塞空間が生れ、前記閉塞空間の上面に吸・排気口(214)が備えられ下端の前記外枠側面部材(22)側に通気・通水口(215)が備えられた開放空間が生れ、前記開放空間に前記吸・排気口(214)から加圧された空気を注入する事によって海水中で浮力部となるエアーポケット(213)が備えられた外枠(2)であって、
前記外枠(2)は、前記エアーポケット(213)の浮力と、前記土砂滞留板(24)の重力によって、海水中で垂直方向に設置されている外枠であって、
前記第一貯水槽(3)は、略円錐型の第一貯水槽上面部材(31)と、ジョウゴ型の第一貯水槽底面部材(32)と、ジグザグ状略円筒型の第一貯水槽側面部材(33)を備え、全体の嵩比重が海水よりも軽い第一貯水槽であって、
前記第一貯水槽上面部材(31)は、密閉する事ができる開口部と淡水の注入・排出口(311)を備え、中央部が前記外枠上面部材(21)に接続されている、第一貯水槽上面部材であって、
前記第一貯水槽底面部材(32)は、略円形の周縁部から中央へ向かうに従って擂り鉢状に下がった中央部に、海水よりも軽い開口部1(321)と開閉弁1(322)を備えた、第一貯水槽底面部材であって、
前記第一貯水槽側面部材(33)は、伸縮可能な軟質部材でジグザグ状略円筒型に形成され、大と小の円周を有する準硬質の側面輪(332)が大小交互に接続されたジグザグ状略円筒型で、上下方向に折りたたむ事ができ、上端が前記第一貯水槽上面部材(31)の周縁部に接続され、下端が前記第一貯水槽底面部材(32)の周縁部に接続されている、ジグザグ状略円筒型の第一貯水槽側面部材であって、
前記第二貯水槽(4)は、全体の嵩比重が海水よりも軽く、伸縮自在で折りたたむ事ができる軟質部材で形成されており、前記第一貯水槽(3)の最大貯水量の濁流が含む最大量の土砂が滞留できる容積を有し、上部が前記第一貯水槽底面部材の前記開口部1(321)と前記開閉弁1(322)を内包する位置に接続されており、最下部に海水よりも軽い開口部2(411)と開閉弁2(412)が備えられた、第二貯水槽であって、
前記三重構造の浮沈式淡水貯水槽(1)は、前記外枠(2)の内側にあって、前記第一貯水槽(3)の前記開閉弁1(322)と前記第二貯水槽(4)の前記開閉弁2(412)を操作する事で、前記第一貯水槽(3)に清涼な淡水も土砂が混入した濁流も貯水する事ができ、濁流から分離されて前記第二貯水槽に堆積した土砂を排出する事ができ、土砂と淡水が排出された前記第二貯水槽と前記第一貯水槽は、海水の浮力によって上方へ押し上げられて次の濁流或いは淡水を貯水する事ができる三重構造であって、
前記外枠(2)の前記エアーポケット(213)の空気量を調整する事で、平時は一部を海面上に出して設置する事ができ、非常時には海水中に埋設する事ができる浮沈式である、三重構造の浮沈式淡水貯水槽。
【請求項2】
前記外枠上面部材(21)に、接続用ロープ(241)を介して接続される浮力補助部材(23)であって、
前記浮力補助部材(23)は、平時は海面に浮かんでおり、非常時には前記三重構造の浮沈式淡水貯水槽(1)が海水中に埋設されて避難する時に、前記エアーポケット(213)の空気量を減じる事で前記土砂滞留板(24)の重力が勝り、海中深くまで沈下するのを防止するだけの浮力を有して、前記三重構造の浮沈式淡水貯水槽(1)を接続用ロープ(241)が及ぶ範囲内にとどめる事ができる浮力補助部材(23)が備えられている、請求項1に記載されている三重構造の浮沈式淡水貯水槽。
【請求項3】
前記外枠(2)内側の前記第一貯水槽(3)が、定位置間を移動する為の誘導システムであって、
前記外枠側面部材(22)の内側に、複数の誘導レールが縦方向に接続されており、前記第一貯水槽側面部材(33)の外周部の外側に、突起部(331)の複数個が前記誘導レールと同数の縦列方向に取付けられて前記誘導レール内に挿入される事によって、前記第一貯水槽(3)が伸縮する時に、前記外枠(2)内側の正常な定位置間を移動する事ができる誘導システムが備えられている、請求項1に記載されている三重構造の浮沈式淡水貯水槽。
【請求項4】
前記第一貯水槽上面部材(31)に備える渦巻き水流発生装置(51)であって、
前記渦巻き水流発生装置(51)は、前記第一貯水槽(3)に注水された濁流中に挿入され、稼働する事によって濁流に渦巻き水流を発生させ、濁流中の土砂(57)を中央に集めてジグザグ状略円筒型の前記第一貯水槽側面部材(33)に堆積するのを防ぎ、中央に集まった土砂を前記第二貯水槽(4)に沈殿する動きを加速させる、渦巻き水流発生装置(51)が備えられている、請求項1に記載されている三重構造の浮沈式淡水貯水槽。
【請求項5】
前記第一貯水槽(3)内に挿入される中間浮力部材(52)であって、
前記中間浮力部材(52)は、比重が、淡水に混入した土砂の割合を表わす土砂混入基準値の、基準値以下の軽い本体(521)の下方に、基準値以上の重い錘(522)が接続されて、前記土砂混入基準値の重力を持っている浮力部材が形成され、前記浮力部材に水中位置を計測する部品が付加されている中間浮力部材(52)であって、
前記第一貯水槽(3)内に挿入された前記中間浮力部材(52)の水中位置を計測する事によって、濁流から土砂が取り除かれて基準値以下になった淡水の貯水量が計測できる、中間浮力部材(52)が備えられている、請求項1に記載されている三重構造の浮沈式淡水貯水槽。
【請求項6】
前記第一貯水槽(3)の内部に設置する浮遊物捕獲装置(53)であって、
前記略円型の上面部材(31)に淡水より軽い浮遊物を捕獲する事ができる前記浮遊物捕獲装置(53)が備えられている、請求項1に記載されている三重構造の浮沈式淡水貯水槽。
【請求項7】
前記外枠(2)の外周部に備える接続用フランジ(25)であって、
前記三重構造の淡水貯水槽(1)の複数個を接続させる事ができる、前記接続用フランジ(25)が備えられている、請求項1に記載されている三重構造の浮沈式淡水貯水槽。
【請求項8】
前記外枠(2)の上面に、耐水性と耐塩性を有する太陽光発電装置が備えられている、請求項1に記載されている三重構造の浮沈式淡水貯水槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平時は一部を海面上に出し、非常時には全体を海水中の定位置にとどめる事ができる浮沈式淡水貯水槽に関する。
詳しくは、外枠と第一貯水槽と第二貯水槽からなる三重構造で、土砂が混入した濁流を第一貯水槽で貯水して第二貯水槽で土砂を沈殿させる機能を有し、平時は一部を海面上に出し、非常時には海水中の定位置にとどめる事ができる、三重構造の浮沈式淡水貯水槽に係るものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化によって気象の変化が極端化し、集中豪雨災害と極度な干ばつが世界中で頻発し、急激な乾燥地が拡大して農業生産が困難になった地域が拡大しており、同時に、増大する世界人口に対する食糧危機が叫ばれており、農業生産を拡充する事が危急の課題となっている。
【0003】
また我が国においても、大量の雨が集中する集中豪雨時期と長期間に及ぶ渇水期が続く異常事態が増加傾向にあり、この降雨時期の淡水を貯水して乾燥期の水需要に対応する為の貯水施設が求められているが、山間部の巨大ダム建設地には限界点に達しており、新たなる貯水施設の増設が強く求められている。
【0004】
そこで、例えば特許文献1及び特許文献2には、海水中に設置する淡水貯水槽ではあるが、いずれも比重が海水よりも軽い浄化された淡水を貯水するシステムであり、本願の土砂が混入して比重が海水よりも重くなった淡水を貯水する貯水槽とは異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第7298003号公報
【文献】特許第7395046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
平時の河川水は、土砂が取り除かれ比重が海水よりも軽くなった清流となって流れ下り、やがて海にたどり着くものの廃棄物となって海水中に消えています。
この廃棄物となって海に消える淡水を、貴重な淡水資源として生かすために、特許文献1及び特許文献2に記載されている通り、清涼な淡水は比重が海水よりも軽い特性を活用して、海水中で貯水する貯水槽が開発されているが、土砂が混入されて比重が海水よりも重くなった淡水は貯水できない、と言う欠点がある。
【0007】
本発明は、以上の点を鑑み創案されたものであり、大雨が降り洪水を起こすような濁流は大量の土砂を巻き込んで比重が重い淡水となっている為に、海に到達した濁流は、重要な大量の淡水であるにも拘わらず利用できず、廃棄物となっていました、この大量の濁流を淡水資源として活用する事を課題とする。
【0008】
しかし貯水槽を設置する海は、平時の静かな名海ばかりではなく時には猛烈に荒れ狂う非常時の海が繰返されており、荒れ狂う非常時の海に耐えられる貯水槽をも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、少なくとも一部が海水中に設置されている外枠(2)と、前記外枠の内側に第一貯水槽(3)と第二貯水槽(4)を備えた、三重構造の浮沈式淡水貯水槽(1)であって、前記外枠(2)は、略円型の外枠上面部材(21)と円筒型の外枠側面部材(22)で構成された略円筒型の外枠であって、前記外枠上面部材(21)は、中央部に密閉できる外枠開口部(211)を備えた略円型の外枠上面部材であって、前記外枠側面部材(22)は、上端が前記外枠上面部材(21)の周縁部に接続され、下端に海水よりも重い土砂滞留板(24)が備えられた外枠側面部材であって、前記外枠上面部材(21)と前記外枠側面部材(22)が接する内側のコーナーに、略円錐型部材(212)が接続される事によって、前記略円錐型部材(212)の上方に三角形の断面を持った逆円錐型の閉塞空間が生れ、前記閉塞空間の上面に吸・排気口(214)が備えられ下端の前記外枠側面部材(22)側に通気・通水口(215)が備えられた開放空間が生れ、前記開放空間に前記吸・排気口(214)から加圧された空気を注入する事によって海水中で浮力部となるエアーポケット(213)が備えられた外枠(2)であって、前記外枠(2)は、前記エアーポケット(213)の浮力と、前記土砂滞留板(24)の重力によって、海水中で垂直方向に設置されている外枠であって、前記第一貯水槽(3)は、略円錐型の第一貯水槽上面部材(31)と、ジョウゴ型の第一貯水槽底面部材(32)と、ジグザグ状略円筒型の第一貯水槽側面部材(33)を備え、全体の嵩比重が海水よりも軽い第一貯水槽であって、前記第一貯水槽上面部材(31)は、密閉する事ができる開口部と淡水の注入・排出口(311)を備え、中央部が前記外枠上面部材(21)に接続されている、第一貯水槽上面部材であって、前記第一貯水槽底面部材(32)は、略円形の周縁部から中央へ向かうに従って擂り鉢状に下がった中央部に、海水よりも軽い開口部1(321)と開閉弁1(322)を備えた、第一貯水槽底面部材であって、前記第一貯水槽側面部材(33)は、伸縮可能な軟質部材でジグザグ状略円筒型に形成され、大と小の円周を有する準硬質の側面輪(332)が大小交互に接続されたジグザグ状略円筒型で、上下方向に折りたたむ事ができ、上端が前記第一貯水槽上面部材(31)の周縁部に接続され、下端が前記第一貯水槽底面部材(32)の周縁部に接続されている、ジグザグ状略円筒型の第一貯水槽側面部材であって、前記第二貯水槽(4)は、全体の嵩比重が海水よりも軽く、伸縮自在で折りたたむ事ができる軟質部材で形成されており、前記第一貯水槽(3)の最大貯水量の濁流が含む最大量の土砂が滞留できる容積を有し、上部が前記第一貯水槽底面部材の前記開口部1(321)と前記開閉弁1(322)を内包する位置に接続されており、最下部に海水よりも軽い開口部2(411)と開閉弁2(412)が備えられた、第二貯水槽であって、前記三重構造の浮沈式淡水貯水槽(1)は、前記外枠(2)の内側にあって、前記第一貯水槽(3)の前記開閉弁1(322)と前記第二貯水槽(4)の前記開閉弁2(412)を操作する事で、前記第一貯水槽(3)に清涼な淡水も土砂が混入した濁流も貯水する事ができ、濁流から分離されて第二貯水槽に堆積した土砂を排出する事ができ、土砂と淡水が排出された前記第二貯水槽と前記第一貯水槽は、海水の浮力によって上方へ押し上げられて次の濁流或いは淡水を貯水する事ができる三重構造であって、前記外枠(2)の前記エアーポケット(213)の空気量を調整する事で、平時は一部を海面上に出して設置する事ができ、非常時には海水中に埋設する事ができる浮沈式である、三重構造の浮沈式淡水貯水槽を備える。
【0010】
本発明は、廃棄物となって河川から海に消えている淡水を、淡水資源として活用する取り組みであって、平時の河川水は、清らかな清流となって海までたどり着いた後、比重が海水よりも軽い為に海水の上方に流れ着き、風波などによって次第に海水と混合されて消えて行きます。
しかし大雨で、大量の土砂を含んだ濁流は、海水よりも比重が重くなっている為に、海に到着しても海水の下に潜り込み、その姿を見せること無く海の中に消えてしまいます。
同じ海に到着した同じ淡水であっても、清流と濁流とでは性質が大きく異なるが為に、海水より重い濁流を海面近くの海水中で貯水するのは難しく、閉鎖された環境で貯水する必要があると同時に、分離した土砂を排出する為には開放しなければならず、濁流を貯水して淡水資源として活用する為には、閉鎖と開放の相反する条件に適合させねばなりません。
【0011】
従って本発明は、閉鎖環境と開放環境を両立させました。
即ち、請求項1に記載した如く、第一貯水槽(3)に貯水された濁流は、時が経過する事によって土砂(57)が沈殿するが、請求項4に記載した渦巻き水流発生装置(51)によって起きる渦巻き水流が、土砂を中央に集める為に分離が促進され、中央に集まった土砂は比重が増して沈殿を早め、第二貯水槽(4)内に沈殿します。
第二貯水槽(4)に沈殿した土砂体積に見合う淡水が、第二貯水槽(4)から第一貯水槽(3)へ移動し、全体の濁流は上方から浄化されます。
以上の経過を経て第一貯水槽(3)内から濁流に混入した土砂が消えた時、請求項5に記載した中間浮力部材(52)が第一貯水槽の最下部まで移動して開口部1(321)を塞ぎ、センサーが稼働してその時を知らせます。
従って、前記第二貯水槽の開閉弁2(412)を開放すれば、前記第一貯水槽内に貯水された淡水に影響を及ぼす事なく、前記第二貯水槽内に沈殿した土砂を海水中に放出する事ができます。
【0012】
また、淡水貯水槽を設置する海は、穏やかな平時の海に対して台風などの非常時には、岩をも打ち砕く大波が押し寄せる荒天に一瞬にして変化するのが海である事から、海上にある施設は、この災難に備えねばなりません。
しかしこの大波のエネルギーは横方向に伝わりますが、一定の深さがある所の海水は上下動を繰返すだけで横方向へは移動しません、従って、巨大津波も台風の大波も、一定の深さまで沈める事ができれば影響は軽微であって、台風が通過するのを待てば被害は免れるでしょう。
【0013】
従って、本発明の三重構造の浮沈式淡水貯水槽(1)は、平時には、加圧した空気が注入されて浮力を持ったエアーポケット(213)と海水より重い土砂滞留板(24)の重力とが均衡する事によって、外枠上部が海面上にあって下部が垂直方向の海水中に設置されているが、台風などの非常時には、全て水面下に沈んでいる事が安全である為に、海水中の定位置に沈めます。
即ち、エアーポケット内の空気を排出すれば浮力を失った外枠は沈降します、しかし請求項2に記載された、外枠上面に接続用ロープ(241)を介して接続された浮力補助部材(23)が土砂滞留板(24)の重力と対峙する事になり、三重構造の浮沈式淡水貯水槽(1)を海水中の定位置に設置する事ができます。
【0014】
三重構造の浮沈式淡水貯水槽に貯水された濁流は、時が経過する事で重量が重い土砂は第二貯水槽(4)に沈殿し、第一貯水槽内は、土砂が分離されて軽くなった淡水で満たされます。
従って、中間浮力部材(52)は第一貯水槽の開口部1(321)まで沈下して開口部を塞ぎ、センサーが稼働して濁流の浄化が終了した事が判明し、第二貯水槽の開閉弁2(412)を開放して土砂(57)を海水中に放出します。
土砂が排出された第二貯水槽は、海水よりも軽い素材で形成されている為に折りたたまれて上方に押し上げられると同時に、第一貯水槽の開口部1も海水よりも軽い素材で形成されている為に、上方から開口部を塞いだ中間浮力部材(52)を開口部1が下から押し上げる力が働いて閉鎖弁の役割を担うが、土砂等の堆積による誤作動を想定して第一貯水槽の開閉弁1(322)も閉鎖し、第一貯水槽内に貯水された淡水には全く影響を及ぼす事がありません。
【0015】
土砂が排出された第二貯水槽(4)に続いて第一貯水槽(3)内の淡水まで排出されれば、海水より軽い開口部2(411)と開口部1(321)に続いて第二貯水槽も第一貯水槽も浮力によって押し上げられて、(
図2-D)から(
図2-E)へと姿を変えて、次の濁流を待ち構える準備が完了します。
【0016】
請求項2に示した外枠上面に接続用ロープ(241)を介して接続された浮力補助部材(23)について記述します。
平時の三重構造の浮沈式淡水貯水槽は、加圧した空気が注入される事で浮力部となるエアーポケット(213)によって海面上から海水中に浮かんでいますが、大波が荒れ狂う破天荒な状況下で三重構造の浮沈式淡水貯水槽の安全を保つのは不可能です。
しかし岩をも打ち砕く台風や季節風の風波は、少しでも水面下に移動するだけで状況が一変して小さな砂粒でも移動しません。
従ってこの特性を生かして、外枠のエアーポケット(213)の空気を排出して浮力を弱め、下方の土砂滞留板(24)の重力に任せて海面下に沈めます、この時のために存在するのが浮力補助部材(23)であって、接続用ロープ(241)を介して三重構造の浮沈式淡水貯水槽を一定の深さに止め置きます。
以上の条件を満たす為に、浮力補助部材(23)は、エアーポケット(213)の空気量を減じる事で土砂滞留板(24)の重力が勝り、海中深くまで沈下するのを防止するだけの浮力を有する事が重要な要件であって、土砂滞留板も堆積できる土砂に制限を加える必要であります。
従って、土砂滞留板を円錐型にして一定量しか滞留できない構造にして土砂重力に制限を加える事で、荒天時には、浮力補助部材だけが海面上に浮かんでいて、本体は海中の一定の位置に埋設されていることで安全を保ちます。
また陸上では猛烈な破壊力を発揮する津波も横運動なので、エネルギーは横方向に伝わるものの、一定以上の深さがある海中では、海水自体は縦方向に動くだけです、従って一定の深さに埋設された三重構造の淡水貯水槽は、僅かに上下動を繰返すだけで、ほとんど影響を受けません。
それは、船が沖合に避難するのと同じ原理です。
【0017】
請求項3に示した誘導システムについて記述します。
第一貯水槽(3)と第二貯水槽(4)は、濁流が注水される前と後では大きく形状が異なります。
即ち、濁流が注水される前の第一貯水槽(3)と第二貯水槽(4)は、(
図2-E)に示した如く外枠(2)内側の上方に折りたたまれて浮かんでおり(注1)、濁流が注入するに従って下方に伸びて(
図2-D)の姿に変身します。
従って、第一貯水槽(3)と第二貯水槽(4)は、外枠(2)内側の定められた定位置間を移動する為に、第一貯水槽の突起部(331)と外枠内側の誘導レールが存在します。
詳しくは、外枠側面部材(22)の内側に複数の誘導レールが縦方向に接続されており、第一貯水槽側面部材(33)の外周部の外側に、突起部(331)の複数個が前記誘導レールと同数の縦列方向に取付けられて誘導レール内に挿入される事によって、外枠内側の正常な定位置間を移動する事ができる誘導システムであって、最低限の数で効率的に移動させる為には、この誘導システムは6セットが最も好ましい。
(注1)は、一部が海面下にあっても(上方で浮かんでおり)と表現したのは、(底が海面下にある船と同じで一般的表現です)
【0018】
請求項4に示した第一貯水槽上面部材(31)に備えられた渦巻き水流発生装置(51)について記述します。
前記渦巻き水流発生装置(51)は、第一貯水槽(3)に注水され濁流中に挿入されて稼働する事によって渦巻き水流を発生させ、濁流中の土砂(57)を中央に集めてジグザグ状略円筒型の第一貯水槽側面部材(33)に堆積するのを防ぎ、中央に集まった土砂を第二貯水槽(4)に沈殿させる動きを加速させ、最下部の第二貯水槽(4)に沈殿して堆積し、その土砂量に見合う淡水が第二貯水槽から第一貯水槽へと移動し、上方から次第に土砂が取り除かれて清涼な淡水へと生まれ変わります。
【0019】
請求項5に記載した前記中間浮力部材(52)について記述します。
まず土砂混入基準値とは、淡水に混入した土砂の割合を表わす為に設けた数値であって、比重が淡水と海水の中間の値であり、その基準値以下とは淡水を表わし、基準値以上とは海水・或いは海水より重い濁流を表わしています。
比重が、基準値以下の軽い本体(521)の下方に、基準値以上の重い錘(522)の大きさで微調整をしながら接続して基準値の重力を持っている浮力部材を形成し、この浮力部材に水中位置を計測する部品が付加されている中間浮力部材(52)が完成します。
この中間浮力部材を第一貯水槽(3)内に浮かべて水中位置を計測する事によって、濁流から土砂が取り除かれて、海水よりも軽くなった淡水貯水量を計測する事ができます。
即ち、土砂が第二貯水槽(4)で沈殿し、第一貯水槽内が清涼な淡水で満たされた段階になると、この中間浮力部材は第一貯水槽の最下部まで沈殿します、その時下部の錘が第一貯水槽の底面の開口部1(321)の中に収って出口を塞ぎ、中間浮力部材の本体が第一貯水槽の底面下部を覆う事になって止水機能が発揮されます。
従って第一貯水槽の開閉弁1(322)は、基本的には不要になりますが、通常起きないアクシデントを考慮して開閉弁1を設置しています。
【0020】
請求項6に記載された浮遊物捕獲装置(53)について記述します。
濁流は、土砂等の重量物も水に浮く軽い物質もごっちゃ混ぜになって流れてきます、取水段階で、嵩の大きなゴミはある程度除去できても、小さなゴミまで除去する事は非常に困難です。
従って、第一貯水槽(3)の上面部材(31)の中央に、淡水より軽い浮遊物を捕獲する事ができる浮遊物捕獲装置を設置し、第一貯水槽内の渦巻き水流によって水に浮くゴミを採集します。
【0021】
請求項7に記載された接続用フランジ(25)について記述します。
大雨による濁流は大変な量であって、単体の貯水槽では到底カバーする事はできません。
従って、この膨大な濁流を最大限利用する為には、貯水槽を並列方向に接続させて大集団を形成し、システム化して、集団の総力で対応するのが最も合理的です。
従って、外枠の外側に六角型の接続用フランジ(25)を接続し、そのフランジを次々と接続する事によって、海面上に並列方向に接続された大集団が形成され、大量の濁流を貯水する事ができます。
尚、接続用フランジの形状には丸型や角型などいろいろあるが、円筒型の外枠を補強する目的も含めて大集団を形成する為には、外側が六角型である事が最も好ましい。
【0022】
請求項8に記載された太陽光発電装置につて記述します。
三重構造の浮沈式淡水貯水槽を設置するのは、遮る物がない大海原である事から、外枠上面は太陽光発電装置を設置するには最適の環境です。
しかし海上は絶えず潮風の影響を受け、また荒天時は海水中に没する事から、外枠上面に設置する太陽光発電装置は、耐水性と耐塩性を有する事が重要な要素です。
【発明の効果】
【0023】
近年の地球温暖化による異常気象は、乾燥地の拡大と局地的な豪雨が極端化し、同じ日本国内にあっても、線状降水帯となって特定の地域に大災害をもたらす程の豪雨となって現れる反面では、小雨に悩む地域が隣り合わせで現れる現象があり、又それは、時間を隔てて同一地域でも現れる現象があり、過去の常識では対応できない事態がしばしば発生する様になりました。
この災害をも引き犯す豪雨による濁流も、日本の美しい山野から生れた淡水である事に間違いありません、ただ急激に降ったが為に土砂崩れなどによって大量の土砂を含んだだけであって、土砂さえ取り除けば、基本的には美しい日本の淡水と何ら変る事がない淡水資源です。
しかし豪雨の濁流は、誰もが厄介者として嫌う廃棄物です、大量の土砂やゴミを含んだ厄介な廃棄物でありますが、貯水して浄化する事ができれば、濁流から分離した土砂を海水中に放出する事ができれば、その土砂は、貴重な海のミネラル資源であり、土砂が取り除かれた淡水は、大量の淡水資源となって重宝する事でしょう。
【0024】
しかし、この大雨を降らす地域は特定の場所に限定されており、或いは時間的にも降雨期と乾燥期に分かれており、この雨を他の地域に配分する為に、或いは乾燥期に供給する為にも、もっと大量に貯水する事が一番ですが、島国の日本には、これ以上巨大なダムを造る場所はもうありません。
また、山間部に降った雨を、大量に必要とするのは海岸部に広がる大都市であり工場地帯であり、平野部に広がる田園地帯です。
従って、消費地に近い海の中で貯水するのが最も合理的です。
海は、広大であって消費地に近く、障害となる個人の所有物はなく、必要以上の淡水は何時でも放流できます、最大の利点は「水に中で水を貯水する事」であって、圧力差が無いことが最大のメリットです。
【0025】
しかしその海は、穏やかな平時の海もあれば、台風・冬の季節風・津波によって一変して牙をむき、岩をも打ち砕く恐怖の海に変身します。
従って海に造る構造物は、この恐怖の海に耐えうる構造でなければなりません。
幸いなことに、台風や冬の木枯らしによって起きる風波は、表層の極一部の海水が動く現象であって、津波の巨大エネルギーも横波運動であって、力は横方向に伝わるものの海水自体は上下方向に動くだけで、海水がない陸上とは異なり、一定の深さがあれば海水は横方向へ移動しません。
従って、海中に埋設して避難できれば悪影響を受ける恐れは無くなります。
【図面の簡単な説明】
【0026】
「
図1」は、三重構造の浮沈式淡水貯水槽の断面図であって、
図1―Aは、上部が海面上にある平時の三重構造の浮沈式淡水貯水槽を表わし、
図1―Bは、非常時に海水中に避難した三重構造の浮沈式淡水貯水槽を表わした断面図である。
【0027】
「
図2」は、三重構造の浮沈式淡水貯水槽の断面図であって、
図2―Dは、平時の三重構造の浮沈式淡水貯水槽に濁流が注水された状態を表わした断面図であって、
図2―Eは、
図2―Dの濁流から土砂が分離されて排出され、濾過された淡水も排出され、空になった第一貯水槽と第二貯水槽が海水の浮力によって折りたたまれ、上方に浮上した状態を表わした断面図である。
【0028】
「
図3」は、第一貯水槽上部の構造の説明図であって、主として外枠上方のエアーポケットを説明するための断面図である。
【0029】
「
図4」は、第一貯水槽の下部に接続された第二貯水槽の構造と中間浮力部材の状況を説明するための断面図である。
【0030】
【0031】
【0032】
「
図7」は、外枠側面に接続用フランジが接続された斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の基となる三重構造の浮沈式淡水貯水槽(1)の実施の形態について、図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0034】
「
図1」は、三重構造の浮沈式淡水貯水槽(1)が海水中に設置されているイメージ図であって、「
図1-A」は、上面が海面上に出て本体が海水中にある平時の三重構造の浮沈式淡水貯水槽(1)を表わしており、「
図1-B」は非常時の避難状態であって、全体を海水中に埋設した時の三重構造の浮沈式淡水貯水槽(1)を表わした。
即ち、平時の三重構造の浮沈式淡水貯水槽(1)は、外枠(2)のエアーポケット(213)に加圧した空気が充填されている事で浮力が生じて上部が海面上に浮かんでいるが、台風接近などの非常時には、エアーポケットの空気を抜く事によって外枠は浮力を失い、海水中にドンドンと沈もうとするが、浮力補助部材(23)の浮力に支えられ、接続用ロープ(241)の範囲内の定位置に止まる事ができる三重構造の浮沈式淡水貯水槽(1)であって、「
図1-A」と「
図1-B」は平時と非常時によって設置場所が異なるだけで、何れも同じ浮沈式淡水貯水槽である。
【0035】
「
図2―D」と「
図2―E」は、何れも上部に浮力部となるエアーポケット(213)に加圧した空気が充填された平時の三重構造の浮沈式淡水貯水槽(1)であって、最下部に重い土砂滞留板(24)が接続されて垂直方向に設置された外枠(2)までは同じであるが、外枠内側にある第一貯水槽(3)と第二貯水槽(4)の形状が著しく異なる状態を表わした。
即ち、「
図2―D」の構図は、第一貯水槽(3)に濁流(56)が注入されて時が経過し、濁流中の土砂(57)が第二貯水槽(4)に沈殿している状態を表わした断面図であって、「
図2―E」の構図は、第二貯水槽(4)に沈殿した土砂が排出され、続いて第一貯水槽(3)の淡水も排出されると、第二貯水槽も第一貯水槽も海水より軽い素材で形成されているために、海水の浮力によって押し上げられ、折りたたまれて海面まで持ち上げられた状態を表わしており、何れも同じ三重構造の浮沈式淡水貯水槽(1)である。
しかし「
図2―E」は、土砂も淡水も排出された終わりの三重構造の浮沈式淡水貯水槽であると同時に、それは、次の濁流を受け入れる事ができる始まりの三重構造の浮沈式淡水貯水槽でもある。
【0036】
「
図3」は、三重構造の浮沈式淡水貯水槽(1)の上部の構造を説明するための断面図であって、外枠上面部材(21)の中央にある外枠開口部(211)の外側から外枠側面部材(22)に至るコーナーに円錐形部材(212)が接続される事によって、三角形の断面を持った逆円錐型の閉塞空間が第一貯水槽上面部材の周辺部を取り囲むように出現し、その閉塞空間の上面に吸・排気口(214)が接続され、
下端の外枠側面部材(22)側に通気・通水口(215)がある開放空間が生れ、その開放空間に加圧した空気を注入する事によって、通気・通水口(215)から海水が排出される事になってエアーポケット(213)が誕生する外枠上部を表わしており、その外枠の内側にある第一貯水槽(3)は、側面をジグザグ状に支える準硬質の側面輪(332)と外側の突起部(331)を表わし、渦巻き水流発生装置(51)と浮遊物捕獲装置(53)も図示した。
渦巻き水流発生装置(51)は、濁流が注入されると下に下ろされて稼働し、濁流に渦巻き水流を発生させ、浮遊物捕獲装置(53)は、淡水よりも軽い浮遊物を捕獲する事ができます。
【0037】
「
図4」は、第一貯水槽(3)の下部と第一貯水槽内に浮かぶ中間浮力部材(52)と第二貯水槽(4)との関係を説明するための断面図であって、濁流が第一貯水槽内に注水されてから時が経過し、濁流から分離された土砂(57)が第二貯水槽内に沈殿する事で、第一貯水槽内では土砂が取り除かれた淡水が満たされる事になります。
すると、濁流時には上方に浮かんでいた中間浮力部材が、第一貯水槽の最下部まで移動して開口部(321)を塞いだ状態を表わした概念図であって、第二貯水槽内に沈殿した土砂を排出する態勢が整った状態を表わした説明図である。
【0038】
図5は、中間浮力部材(52)の見取り図であるが、その構成等については実施例の項目で説明します。
【0039】
「
図6」の土砂滞留板(24)は、外枠(2)の最下部から接続用ロープ(241)によって吊下げられた土砂滞留板(24)の断面図であって、土砂滞留板の水中重力に、土砂滞留板に滞留する事ができる最大土砂重量を加えた総量が、外枠のエアーポケット(213)の浮力以下でなければならない為に、中央部が盛り上がった形状にして、中央部には土砂が堆積できるが周辺部では傾斜が急な為に土砂が滑り落ち、限度以上の土砂が堆積できない形状にした。
【0040】
「
図7」に示した外枠(2)の斜視図は、耐水性と耐塩性を有する太陽光発電装置が取付けられた外枠上面から、接続用ロープ(241)を介して浮力補助部材(23)が接続されており、外枠下端から接続用ロープ(241)を介して土砂滞留板(24)が接続されて垂直方向に海中に設置された外枠に、6角形の接続枠(25)が取付けられている状態を表わした説明図である。
即ち、大雨による濁流は、単体の貯水槽で受け止めるにはほど遠い大量であり、故に貯水槽を連結して集団にするための接続枠です。
【実施例】
【0041】
外枠(2)の内側は円形である事が好ましいが、外側は多少の凸凹があっても差し支えがないために、外枠は小さな部品に分割し、硬質の塩化ビニル樹脂を用いて大量生産し、現地で組立て設置する事が最も安価で合理的です。
また外枠に付随する浮力補助部材(23)は、市販品をそのまま利用し、土砂滞留板(24)や渦巻き水流発生装置(51)なども極力一般市販品を活用した。
【0042】
第一貯水槽と第二貯水槽は、濁流が注水される前も、排出された後も、海水の浮力によって海面上に押し上げられて折りたたまれている必要があり、全体の暈比重が海水よりも軽い事が条件である事から、第一貯水槽と第二貯水槽を構成する素材は、汎用的なフィルム状素材から耐久性のある化学製品を採用し、開口部や側面輪や突起部等の部品類は、発砲樹脂を採用する事で浮力部材としての役割も担います。
【0043】
第一貯水槽内に浮かぶ中間浮力部材(52)は、比重が淡水よりも軽い上部本体に比重が濁流より重い錘を取付けて製作しますが、淡水と濁流との誤差が僅かなために、錘は小さな部品を重ねる事で構成していて、その部品の数によって微調整が可能なように製作します。
また上部本体の下方にセンサーを取付ける事により、濁流が浄化されて中間浮力部材が第一貯水槽の底面部材に接するとセンサーが稼働し、濁流の浄化が終了した時を知らせます。
【産業上の利用可能性】
【0044】
日本には四季があり、台風が襲来し、一年を通じて膨大な雨が降ります、大量の雪も降ります、その水その雪は、毎年毎年追加される大切な永遠の資源なのに、今までは誰にも惜しまれず、廃棄物として海の中に消えていたのです、消えて無くなっていたのです。
従って本発明は、この消えていた淡水を有用な水資源として蘇らせる取り組みであって、廃棄され海に消える寸前の淡水を海の中で貯水し、乾燥に苦しむ人達に届ける為に、或いは渇水期が長引いてダムの貯水率が下がった時の水源として、この淡水資源を活用します。
【0045】
平時の河川水は、海水よりも軽い綺麗な淡水ですが、それは、量的には多くありません。
一方大荒れの日に流れる河川水は、大量ですが、それは海水よりも重くなった濁流であって、大量の土砂を含んでおり、少しでも淀むと大量の土砂が堆積し、厄介な処理が待ち受ける濁流です。
従って本発明は、海水より重い濁流を海の中で貯水し、貯水中に土砂を分離して浄化した淡水を活用し、分離された土砂を海水中に放出する事によって陸上のミネラルを特定の場所で放出して漁業に好影響を及ぼす事ができます。
【0046】
この淡水貯水槽を設置する海は、平時の穏やかな海ばかりではありません。
あの恐怖の巨大津波はもとより、台風の接近により、或いは冬の季節風が吹き荒れる時の海は、想像もできない程の大波が押し寄せる恐怖の海へと一変します、その為、海に設置する全ての構造物は、この大荒れの海に対処しなければなりません。
しかし、強烈な破壊力を発揮する大波は、何れも横波運動であって、一定の深さがある海中では、海水は一定の場所に止まって僅かに立て運動をするだけなので、海面から数メートルかせいぜい十メートルも海面下に沈めれば、海面の大荒れが嘘のように静かです。
従って、非常時には、施設を海面下に沈める事が最も合理的であって、三重構造の浮沈式淡水貯水槽の耐久性を著しく高めます。
【0047】
この三重構造の浮沈式淡水貯水槽は、大きな水圧対策から解放されているが為に、規格化された小型部品に分解する事で工場での大量生産が可能になり、海岸部に安価な淡水ダムが出現し、渇水期の水道用水の水源として、或いは農業用の渇水対策として重宝する事でしょう。
【符号の説明】
【0048】
1 三重構造の浮沈式淡水貯水槽
2 外枠
21 外枠上面部材
211 外枠開口部
212 円錐型部材
213 エアーポケット
214 吸・排気口
215 通気・通水口
22 外枠側面部材
23 浮力補助部材
24 土砂滞留板
241 接続用ロープ
25 接続用フランジ
26 太陽光発電装置
3 第一貯水槽
31 第一貯水槽上面部材
311 注入・排出口(311)
32 第一貯水槽底面部材
321 開口部1
322 開閉弁1
33 第一貯水槽側面部材
331 突起部
332 準硬質の側面輪
34 浮遊物捕獲装置
4 第二貯水槽
411 開口部2
412 開閉弁2
51 渦巻き水流発生装置
52 中間浮力部材
521 (土砂混入基準値よりも軽い)本体
522 (土砂混入基準値よりも重い)錘
53 浮遊物捕獲装置
54 海面
55 海水
56 淡水(或いは濁流)
57 土砂
図1-A 海面に設置された平時の三重構造の浮沈式淡水貯水槽
図1―B 海中に避難した非常時の三重構造の浮沈式淡水貯水槽
図2-D 濁流から分離した土砂が第二貯水槽に沈殿した三重構造の浮沈式淡水貯水槽
図2-E 分離した土砂も淡水も排出されて空になった三重構造の浮沈式淡水貯水槽
【要約】
【課題】
河川下流域の沿岸海域の海水中に、濁流を貯水できる三重構造の浮沈式淡水貯水槽を備える。
【解決手段】
海水中に設置する略円筒形の外枠(2)と、外枠の内側にある第一貯水槽(3)と第二貯水槽(4)を備えた三重構造の浮沈式淡水貯水槽(1)であって、
前記第一貯水槽(3)には、土砂が混入した濁流でも貯水する事ができ、貯水中に濁流中の土砂を分離させて第二貯水槽(4)へ沈殿させ、第一貯水槽では濾過された淡水が貯水されて利用する事ができ、第二貯水槽に沈殿した土砂を排出する事ができる、三重構造であって、
平時は、上方の一部を海面上に出して設置されているが、台風などの非常時には、外枠のエアーポケット(213)の空気量を調整する事で、浮力補助部材(23)のみを海面に残し、本体を海中に沈めて避難する事ができる浮沈式である、三重構造の浮沈式淡水貯水槽(1)を提供する。
【選択図】
図1