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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20240930BHJP
   F15B 11/08 20060101ALI20240930BHJP
   F15B 11/042 20060101ALI20240930BHJP
   F15B 11/044 20060101ALI20240930BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
E02F9/20 Q
F15B11/08 A
F15B11/042
F15B11/044
E02F9/22 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024512877
(86)(22)【出願日】2023-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2023013434
(87)【国際公開番号】W WO2023191014
(87)【国際公開日】2023-10-05
【審査請求日】2024-02-29
(31)【優先権主張番号】P 2022060233
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 輝樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏明
(72)【発明者】
【氏名】福地 亮平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠介
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-350536(JP,A)
【文献】国際公開第2020/241419(WO,A1)
【文献】特開2010-071414(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0095163(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
F15B 11/08
F15B 11/042
F15B 11/044
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油を吐出する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから吐出される作動油によって駆動される油圧シリンダと、
前記油圧シリンダによって駆動される駆動対象部材と、
前記油圧ポンプから前記油圧シリンダに供給される作動油の流量を制御する流量制御弁と、
前記流量制御弁を操作する操作圧を生成する電磁弁と、
前記電磁弁を制御するコントローラと、
前記油圧シリンダの圧力を検出する圧力センサと、を備えた作業機械において、
前記コントローラには、前記操作圧と前記流量制御弁の開口面積との関係を規定する開口特性テーブルが記憶され、
前記コントローラは、
前記電磁弁により生成される前記操作圧を段階的に変化させるとともに、前記圧力センサによって検出された前記油圧シリンダの圧力または前記油圧シリンダの圧力の時間変化率が予め定められた基準値になったときの前記操作圧を記憶する学習処理を実行し、
前記流量制御弁の前後差圧を算出し、
算出された前記前後差圧と、前記流量制御弁を通過する作動油の目標流量とに基づいて、前記流量制御弁の目標開口面積を演算し、
前記開口特性テーブルと、演算された前記目標開口面積と、前記学習処理において記憶された前記操作圧である学習結果操作圧とに基づいて、前記電磁弁により生成する前記操作圧の目標値を演算し、
演算された前記操作圧の目標値に基づいて、前記電磁弁を制御する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記コントローラは、
前記学習結果操作圧に基づいて前記開口特性テーブルを補正し、
補正された前記開口特性テーブルを参照し、前記目標開口面積に基づいて、前記操作圧の目標値を演算する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記コントローラは、
前記開口特性テーブルを参照し、前記目標開口面積に基づいて、前記操作圧の目標値を演算し、
前記学習結果操作圧に基づいて前記操作圧の目標値を補正し、
補正された前記操作圧の目標値に基づいて、前記電磁弁を制御する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機械において
前記コントローラは、
前記学習処理において、前記電磁弁により生成される前記操作圧を段階的に上昇させる過程で、前記油圧シリンダの出口側の圧力が前記基準値としての圧力閾値以下になったときの前記操作圧を前記学習結果操作圧として記憶し、
前記流量制御弁のメータアウト通路部の前後差圧を算出し、
算出された前記前後差圧と、前記メータアウト通路部を通過する作動油の目標流量とに基づいて、前記流量制御弁の前記メータアウト通路部の目標開口面積を演算し、
前記開口特性テーブルと、演算された前記目標開口面積と、前記学習結果操作圧とに基づいて、前記電磁弁により生成する前記操作圧の目標値を演算する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項1に記載の作業機械において、
前記コントローラは、
前記学習処理において、前記電磁弁により生成される前記操作圧を段階的に上昇させる過程で、前記油圧シリンダの入口側の圧力の増加率が前記基準値としての増加率閾値以上になったときの前記操作圧を前記学習結果操作圧として記憶し、
前記流量制御弁のメータイン通路部の前後差圧を算出し、
算出された前記前後差圧と、前記メータイン通路部を通過する作動油の目標流量とに基づいて、前記流量制御弁の前記メータイン通路部の目標開口面積を演算し、
前記開口特性テーブルと、演算された前記目標開口面積と、前記学習結果操作圧とに基づいて、前記電磁弁により生成する前記操作圧の目標値を演算する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項4に記載の作業機械において、
前記流量制御弁として、第1流量制御弁と第2流量制御弁とを備え、
前記第1流量制御弁及び前記第2流量制御弁は、前記油圧シリンダから排出される作動油が、前記第1流量制御弁及び前記第2流量制御弁を通過するように構成され、
前記コントローラは、
前記学習処理において、前記第1流量制御弁を開口させた状態で、前記第2流量制御弁に対応する前記電磁弁により生成される前記操作圧を段階的に上昇させ、
前記電磁弁により生成される前記操作圧を段階的に上昇させる過程で、前記油圧シリンダの出口側の圧力が前記圧力閾値以下になったときの前記操作圧を前記学習結果操作圧として記憶する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項7】
請求項1に記載の作業機械において、
複数の前記油圧ポンプと、
複数の前記油圧シリンダと、
複数の前記油圧シリンダのそれぞれに対応する複数の前記流量制御弁と、
複数の前記流量制御弁のそれぞれを個別に制御可能な複数の前記電磁弁と、を備え、
複数の前記油圧ポンプのそれぞれが個別に複数の前記油圧シリンダのそれぞれに対応する複数の前記流量制御弁に1対1で接続可能であり、
前記コントローラは、
複数の前記電磁弁のそれぞれにより生成される複数の前記操作圧を同期的かつ段階的に変化させるとともに、前記圧力センサによって検出された複数の前記油圧シリンダの圧力を入力し、
複数の前記油圧シリンダの圧力または複数の前記油圧シリンダの圧力の時間変化率のそれぞれが複数の前記電磁弁ごとに定められた前記基準値になったときの前記操作圧を、複数の前記電磁弁ごとの前記学習結果操作圧として記憶する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項8】
請求項1に記載の作業機械において、
複数の前記駆動対象部材が連結された作業装置の姿勢を検出する姿勢センサを備え、
前記コントローラは、
前記姿勢センサにより検出される前記作業装置の姿勢が予め定められた学習開始姿勢であるか否かを判定し、
少なくとも、前記作業装置の姿勢が前記学習開始姿勢であることを、前記学習処理を開始する条件の一つとする
ことを特徴とする作業機械。
【請求項9】
請求項1に記載の作業機械において、
作動油の温度を検出する温度センサを備え、
前記コントローラは、
前記温度センサにより検出される作動油の温度が、予め定められた温度閾値以上であるか否かを判定し、
少なくとも、作動油の温度が前記温度閾値以上であることを、前記学習処理を開始する条件の一つとする
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、油圧ショベル等の作業機械に対して半自動運転、自動運転、遠隔操縦等の要望が高まっており、作業機械の電子制御化が進んでいる。作業機械の電子制御化の手法としては、電磁弁を用いて油圧アクチュエータを制御するものがある。例えば、油圧シリンダ、油圧モータ等の油圧アクチュエータを制御するための制御弁を、電磁弁により生成されたパイロット圧(操作圧)で操作する方法が知られている。
【0003】
ここで、作業機械の電子制御において、作業機械の個体差を考慮し、制御に用いるデータを較正し、掘削精度を向上させる技術が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には、半自動運転における掘削精度の向上を目的とした発明が開示されている。特許文献1に記載の作業機械は、パイロット圧とシリンダの動作速度との関係を規定したデータを記憶したコントローラを備えている。コントローラは、電磁弁(電磁比例制御弁)に出力している電流の電流値を一時的に低下させた後に低下前よりも大きな電流値の電流を電磁弁に出力する処理を繰り返すことにより、電磁弁に出力する電流の電流値を段階的に上昇させる。コントローラは、電流値が段階的に上昇したときのシリンダの動作速度に基づいて、上記データにおけるパイロット圧とシリンダの動作速度との関係を較正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開WO2018/087831号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、作業機械に適用する油圧システムをオープンセンタシステムとした場合、電磁弁に出力する電流の電流値に対するシリンダの動作速度が油圧負荷に応じて変化してしまう。そのため、ある特定の油圧負荷条件(例えば空中動作)における油圧シリンダの動作速度を学習しても、実際の油圧負荷条件(例えば地面の掘削、押し付け)では油圧シリンダの動作速度が学習時から乖離してしまうおそれがある。この場合、掘削精度の向上を期待することができない。
【0007】
本発明は、油圧システムの構成に関わらず、作業機械の個体差に起因した油圧シリンダの動作のバラつきが抑制され、高い精度で作業が可能な作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による作業機械は、作動油を吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプから吐出される作動油によって駆動される油圧シリンダと、前記油圧シリンダによって駆動される駆動対象部材と、前記油圧ポンプから前記油圧シリンダに供給される作動油の流量を制御する流量制御弁と、前記流量制御弁を操作する操作圧を生成する電磁弁と、前記電磁弁を制御するコントローラと、前記油圧シリンダの圧力を検出する圧力センサと、を備える。前記コントローラには、前記操作圧と前記流量制御弁の開口面積との関係を規定する開口特性テーブルが記憶されている。前記コントローラは、前記電磁弁により生成される前記操作圧を段階的に変化させるとともに、前記圧力センサによって検出された前記油圧シリンダの圧力または前記油圧シリンダの圧力の時間変化率が予め定められた基準値になったときの前記操作圧を記憶する学習処理を実行し、前記流量制御弁の前後差圧を算出し、算出された前記前後差圧と、前記流量制御弁を通過する作動油の目標流量とに基づいて、前記流量制御弁の目標開口面積を演算し、前記開口特性テーブルと、演算された前記目標開口面積と、前記学習処理において記憶された前記操作圧である学習結果操作圧とに基づいて、前記電磁弁により生成する前記操作圧の目標値を演算し、演算された前記操作圧の目標値に基づいて、前記電磁弁を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、油圧システムの構成に関わらず、作業機械の個体差に起因した油圧シリンダの動作のバラつきが抑制され、高い精度で作業が可能な作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、作業機械の一例として示す油圧ショベルの側面図である。
図2図2は、油圧ショベルに搭載される油圧システムの構成を示す図である。
図3図3は、バケット先端位置の演算方法の説明図である。
図4図4は、油圧ショベルの制御システムのハードウェア構成図である。
図5図5は、表示装置の表示画面の一例を示す図である。
図6図6は、第1実施形態に係るコントローラの機能ブロック図である。
図7図7は、バケットの先端が補正後の目標速度ベクトルVcaの通りに制御されたときの、バケットの先端の軌跡の一例を示す図である。
図8図8は、流量制御弁のメータアウト通路部の開口線図であり、流量制御弁の受圧室に入力される操作圧と、流量制御弁のメータアウト通路部の開口面積との関係を示す。
図9図9は、第1実施形態に係るコントローラにより実行される学習処理の流れの一例について示すフローチャートである。
図10図10は、ブーム上げ、ブーム下げ、アーム引き、アーム押し、バケット引き、バケット押しの動作に対応する学習開始姿勢を示す図である。
図11図11は、学習開始姿勢画面の一例について示す図である。
図12図12は、第1実施形態に係る学習部からバルブ指令演算部に出力される学習レギュレータ圧及び学習操作圧と、圧力センサにより検出されるメータアウト側のシリンダ圧の時間変化について示す図である。
図13図13は、開口特性テーブルToの補正方法について説明する図である。
図14図14は、流量制御弁のメータイン通路部の開口線図であり、流量制御弁の受圧室に入力される操作圧と、流量制御弁のメータイン通路部の開口面積との関係を示す。
図15図15は、第2実施形態に係るコントローラにより実行される学習処理の流れの一例について示すフローチャートである。
図16図16は、第2実施形態に係る学習部からバルブ指令演算部に出力される学習レギュレータ圧及び学習操作圧と、圧力センサにより検出されるメータイン側のシリンダ圧の時間変化について示す図である。
図17図17は、開口特性テーブルTiの補正方法について説明する図である。
図18図18は、変形例1に係るコントローラにより実行される学習処理の流れの一例について示すフローチャートである。
図19図19は、変形例2に係る油圧システムの構成を示す図である。
図20図20は、変形例3に係る油圧システムの構成を示す図である。
図21図21は、変形例4に係る目標圧演算部の制御ブロック線図であり、目標操作圧の補正方法について示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る作業機械について説明する。
【0012】
<第1実施形態>
-油圧ショベル-
図1は、本発明の第1実施形態に係る作業機械の一例として示す油圧ショベルの側面図である。なお、本実施形態では作業装置の先端にアタッチメント(作業具)としてバケット10を装着した油圧ショベルを例示して説明するが、バケット以外のアタッチメントを装着した油圧ショベルにも本発明は適用され得る。
【0013】
図1に示すように、油圧ショベル1は、車体1Bと、車体1Bに取り付けられる多関節型の作業装置(フロント作業機)1Aとを含んで構成されている。車体1Bは、左右の走行モータ(油圧モータ)により走行する走行体11と、走行体11の上に取り付けられた旋回体12とを有する。旋回体12は、旋回モータ(油圧モータ)により走行体11に対して旋回する。旋回体12の旋回中心軸は油圧ショベル1が水平地に停車した状態で鉛直である。旋回体12には運転室16が設けられている。
【0014】
作業装置1Aは、鉛直面内でそれぞれ回動する複数の駆動対象部材(ブーム8、アーム9及びバケット10)が連結された構成である。ブーム8の基端はブームピン91を介して旋回体12の前部に回動可能に連結されている。このブーム8の先端にはアームピン92を介してアーム9が回動可能に連結されており、アーム9の先端にはバケットピン93を介してバケット10が回動可能に連結されている。ブーム8は油圧シリンダであるブームシリンダ5によって駆動され、アーム9は油圧シリンダであるアームシリンダ6によって駆動され、バケット10は油圧シリンダであるバケットシリンダ7によって駆動される。油圧シリンダ5,6,7は、一端が閉塞された有底筒状のシリンダチューブと、シリンダチューブの他端の開口を塞ぐヘッドカバーと、ヘッドカバーを貫通し、シリンダチューブに挿入されるシリンダロッドと、シリンダロッドの先端に設けられ、シリンダチューブ内をロッド室とボトム室とに区画するピストンと、を備える。
【0015】
ブームピン91にはブーム角度センサ30、アームピン92にはアーム角度センサ31、バケットリンク13にはバケット角度センサ32、旋回体12には車体傾斜角度センサ33が取り付けられている。角度センサ30,31,32は、それぞれブーム8、アーム9、バケット10の回動角度α,β,γ(図3)を検出し、検出結果を表す信号をコントローラ40(後述)に出力する。車体傾斜角度センサ33は、基準面(例えば水平面)に対する旋回体12(車体1B)の車体傾斜角θ(図3)を検出し、検出結果を表す信号をコントローラ40(後述)に出力する。
【0016】
旋回体12には一対のGNSS(Global Navigation Satellite System:全地球衛星測位システム)用のアンテナ(以下、GNSSアンテナと記す)14a,14bが設けられている。コントローラ40は、GNSSアンテナ14a,14bで受信された複数の測位衛星からの衛星信号(GNSS電波)に基づいて、グローバル座標系における旋回体12の位置及び方位を算出する。
【0017】
-油圧システム-
図2は、油圧ショベル1に搭載される油圧システムの構成を示す図である。図2では、ブームシリンダ5、アームシリンダ6及びバケットシリンダ7に関わる油圧回路について示し、走行モータ及び旋回モータに関わる油圧回路については図示を省略している。
【0018】
運転室16内には、電気操作レバー装置A1~A3が設置されている。電気操作レバー装置A1,A3は、運転席(不図示)の左右の一方側に配置された操作レバーB1を共有している。操作レバーB1によって電気操作レバー装置A1が操作されると、コントローラ40が電磁弁55a,55b,56a,56bを作動させる。これにより、ブームシリンダ5(ブーム8)が駆動される。操作レバーB1によって電気操作レバー装置A3が操作されると、コントローラ40が電磁弁59a,59bを作動させる。これにより、バケットシリンダ7(バケット10)が駆動される。電気操作レバー装置A2は、運転席の左右の他方側に配置された操作レバーB2を有している。操作レバーB2によって電気操作レバー装置A2が操作されると、コントローラ40が電磁弁57a,57b,58a,58bを作動させる。これにより、アームシリンダ6(アーム9)が駆動される。
【0019】
ブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7のそれぞれの入口側と出口側には、これらの油圧シリンダ5,6,7の入口側圧力と出口側圧力を検出する圧力センサ5a,5b,6a,6b,7a,7bが取り付けられている。圧力センサ5aは、ブームシリンダ5のロッド室の作動油の圧力を検出し、圧力センサ5bは、ブームシリンダ5のボトム室の作動油の圧力を検出する。圧力センサ6aは、アームシリンダ6のロッド室の作動油の圧力を検出し、圧力センサ6bは、アームシリンダ6のボトム室の作動油の圧力を検出する。圧力センサ7aは、バケットシリンダ7のロッド室の作動油の圧力を検出し、圧力センサ7bは、バケットシリンダ7のボトム室の作動油の圧力を検出する。
【0020】
メインポンプ201,202,203の吐出口には、メインポンプ201,202,203の吐出圧を検出する圧力センサ201b,202b,203bが取り付けられている。タンクには、作動油の温度を検出する温度センサ19が取り付けられている。
【0021】
旋回体12には、原動機であるエンジン18、第1メインポンプ201、第2メインポンプ202、第3メインポンプ203及びパイロットポンプ48が搭載されている。第1メインポンプ201、第2メインポンプ202、第3メインポンプ203及びパイロットポンプ48は、エンジン18によって駆動され、タンクから吸引した作動油を吐出する。メインポンプ201,202,203は、レギュレータ201a,202a,203aによって1回転当たりの吐出容量(押しのけ容積)が制御される可変容量型の油圧ポンプである。メインポンプ201,202,203は、例えば、斜板の傾転角によって吐出容量が制御される斜板式の油圧ポンプである。メインポンプ201,202,203は、複数の油圧アクチュエータ(ブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7等)を駆動する圧油を吐出する。パイロットポンプ48は、1回転当たりの吐出容量が一定の固定容量型の油圧ポンプである。
【0022】
レギュレータ201a,202a,203aは、電気操作レバー装置A1~A3の操作量に基づきコントローラ40で演算されたレギュレータ圧の目標値(以下、目標レギュレータ圧とも記す)PPc201,PPc202,PPc203に応じた油圧信号によって駆動され、油圧ポンプ201,202,203の吐出容量を制御する。
【0023】
具体的には、レギュレータ201a,202a,203aは、それぞれレギュレータ電磁弁(不図示)を備えている。コントローラ40は、目標レギュレータ圧に応じた電気信号(励磁電流)をレギュレータ電磁弁に出力する。これにより、レギュレータ電磁弁が駆動され、レギュレータ電磁弁によって、斜板を操作するレギュレータ圧が生成される。レギュレータ電磁弁は、パイロットポンプ48の吐出圧(パイロット1次圧)を減圧することにより、コントローラ40からの指令に応じたレギュレータ圧(パイロット2次圧)を生成する電磁比例減圧弁である。
【0024】
レギュレータ電磁弁により生成されるレギュレータ圧によって斜板の傾転角(すなわち吐出容量)が変化することにより、メインポンプ201,202,203の吐出流量が変化する。したがって、メインポンプ201,202,203の吐出流量は、コントローラ40によって演算される目標レギュレータ圧に応じて変化する。
【0025】
油圧システムは、複数の電磁弁55a~59bを有する。複数の電磁弁55a~59bは、コントローラ40からの指令(電気信号)に応じて、後述する流量制御弁D1~D6を操作する操作圧を生成する。複数の電磁弁55a~59bは、パイロットポンプ48の吐出圧(パイロット1次圧)を減圧することにより、電気操作レバー装置A1~A3の操作方向及び操作量に応じた操作圧(パイロット2次圧)を生成する電磁比例減圧弁である。
【0026】
パイロットポンプ48の吐出配管170にはロック弁39が設けられる。吐出配管170におけるロック弁39の下流側は、複数に分岐され電磁弁55a~59bに接続されている。本実施形態のロック弁39は電磁切換弁であり、そのソレノイドは旋回体12の運転室16に配置されたゲートロックレバー(不図示)の位置センサと電気的に接続されている。ゲートロックレバーのポジションは位置センサで検出され、その位置センサからゲートロックレバーのポジションに応じた信号がロック弁39に入力される。ゲートロックレバーのポジションがロック位置にあればロック弁39が閉じて吐出配管170が遮断され、パイロットポンプ48から電磁弁55a~59bへのパイロット圧の供給が遮断される。ゲートロックレバーのポジションがロック解除位置にあればロック弁39が開いて吐出配管170が開通し、パイロットポンプ48から電磁弁55a~59bへパイロット圧が供給される。吐出配管170が遮断された状態では電気操作レバー装置A1~A3による操作が無効化され、掘削等の動作が禁止される。
【0027】
コントローラ40は、電気操作レバー装置A1~A3の操作レバーB1~B2の操作量と操作方向に応じて電磁弁55a~59bを駆動する電気信号(励磁電流)を生成し、操作レバーB1,B2の操作方向に対応する電磁弁55a~59bに出力する。油圧システムは、メインポンプ201,202,203から吐出され油圧シリンダ5~7へ供給される作動油の流れを制御する制御弁ユニット15を備えている。制御弁ユニット15は、複数の流量制御弁D1~D6を含んで構成されている。
【0028】
流量制御弁D1は、電気操作レバー装置A1の操作に応じて、第1メインポンプ201からブームシリンダ5に供給される作動油の流量を制御する。コントローラ40の指令によって駆動される電磁弁55a,55bによって生成された操作圧は、パイロットラインC1,C2を介して流量制御弁D1の受圧室E1,E2に入力される。流量制御弁D1のスプールは、受圧室E1,E2に入力される操作圧に応じて駆動される。流量制御弁D1のスプールが駆動されることにより、第1メインポンプ201からブームシリンダ5への圧油の供給方向及び流量が制御され、ブームシリンダ5が駆動される。
【0029】
流量制御弁D2は、電気操作レバー装置A1の操作に応じて、第2メインポンプ202からブームシリンダ5に供給される作動油の流量を制御する。コントローラ40の指令によって駆動される電磁弁55a,55bによって生成された操作圧は、パイロットラインC3,C4を介して流量制御弁D2の受圧室E3,E4に入力される。流量制御弁D2のスプールは、受圧室E3,E4に入力される操作圧に応じて駆動される。流量制御弁D2のスプールが駆動されることにより、第2メインポンプ202からブームシリンダ5への圧油の供給方向及び流量が制御され、ブームシリンダ5が駆動される。
【0030】
流量制御弁D3は、電気操作レバー装置A1の操作に応じて、第3メインポンプ203からブームシリンダ5に供給される作動油の流量を制御する。コントローラ40の指令によって駆動される電磁弁56a,56bによって生成された操作圧は、パイロットラインC5,C6を介して流量制御弁D3の受圧室E5,E6に入力される。流量制御弁D3のスプールは、受圧室E5,E6に入力される操作圧に応じて駆動される。流量制御弁D3のスプールが駆動されることにより、第3メインポンプ203からブームシリンダ5への圧油の供給方向及び流量が制御され、ブームシリンダ5が駆動される。
【0031】
このように、ブームシリンダ5は、3つのメインポンプ201,202,203から吐出される作動油の流量が3つの流量制御弁D1,D2,D3によって制御されることで駆動される。なお、コントローラ40が、電磁弁55a,55b,56a,56bのうち、電磁弁56a,56bにのみ指令を与えた場合、ブームシリンダ5は第3メインポンプ203から吐出される作動油のみによって駆動される。
【0032】
流量制御弁D4は、電気操作レバー装置A2の操作に応じて、第2メインポンプ202からアームシリンダ6に供給される作動油の流量を制御する。コントローラ40の指令によって駆動される電磁弁57a,57bによって生成された操作圧は、パイロットラインC7,C8を介して流量制御弁D4の受圧室E7,E8に入力される。流量制御弁D4のスプールは、受圧室E7,E8に入力される操作圧に応じて駆動される。流量制御弁D4のスプールが駆動されることにより、第2メインポンプ202からアームシリンダ6への圧油の供給方向及び流量が制御され、アームシリンダ6が駆動される。
【0033】
流量制御弁D5は、電気操作レバー装置A2の操作に応じて、第1メインポンプ201からアームシリンダ6に供給される作動油の流量を制御する。コントローラ40の指令によって駆動される電磁弁58a,58bによって生成された操作圧は、パイロットラインC9,C10を介して流量制御弁D5の受圧室E9,E10に入力される。流量制御弁D5のスプールは、受圧室E9,E10に入力される操作圧に応じて駆動される。流量制御弁D5のスプールが駆動されることにより、第1メインポンプ201からアームシリンダ6への圧油の供給方向及び流量が制御され、アームシリンダ6が駆動される。
【0034】
このように、アームシリンダ6は、2つのメインポンプ201,202から供給される作動油の流量が2つの流量制御弁D4,D5によって制御されることで駆動される。なお、コントローラ40が、電磁弁57a,57b,58a,58bのうち、電磁弁57a,57bにのみ指令を与えた場合、アームシリンダ6は第2メインポンプ202から吐出される作動油のみによって駆動される。
【0035】
流量制御弁D6は、電気操作レバー装置A3の操作に応じて、第1メインポンプ201からバケットシリンダ7に供給される作動油の流量を制御する。コントローラ40の指令によって駆動される電磁弁59a,59bによって生成された操作圧は、パイロットラインC11,C12を介して流量制御弁D6の受圧室E11,E12に入力される。流量制御弁D6のスプールは、受圧室E11,E12に入力される操作圧に応じて駆動される。流量制御弁D6のスプールが駆動されることにより、第1メインポンプ201からバケットシリンダ7への圧油の供給方向及び流量が制御され、バケットシリンダ7が駆動される。このように、バケットシリンダ7は、第1メインポンプ201から吐出される作動油の流量が流量制御弁D6によって制御されることで駆動される。
【0036】
-バケット先端位置(作業装置の制御点)の演算方法-
図3は、バケット先端位置の演算方法の説明図である。作業装置1Aの姿勢は、図3に示すショベル基準座標系に基づいて定義できる。図3のショベル基準座標系は、旋回体12を基準に設定された座標系である。ショベル基準座標系では、ブームピン91の中心軸に原点が設定され、旋回体12の旋回中心軸と平行に(旋回体12の真上方向に)Z軸が設定され、Z軸と直交する方向(旋回体12の前方)にX軸が設定される。以下では、X軸に対するブーム8の傾斜角をブーム角α、ブーム8に対するアーム9の傾斜角をアーム角β、アーム9に対するバケット10の傾斜角をバケット角γと記す。また、水平面(基準面)に対する車体1B(旋回体12)の傾斜角、すなわち水平面(基準面)とX軸とのなす角を車体傾斜角θと記す。
【0037】
ブーム角αはブーム角度センサ30により、アーム角βはアーム角度センサ31により、バケット角γはバケット角度センサ32により、車体傾斜角θは車体傾斜角度センサ33により検出される。ブーム角αは、ブーム8を上限まで上げた状態(ブームシリンダ5が最伸長状態)で最小となり、ブーム8を下限まで下げた状態(ブームシリンダ5が最収縮状態)で最大となる。アーム角βは、アームシリンダ6が最収縮状態で最小となり、アームシリンダ6が最伸長状態で最大となる。バケット角γは、バケットシリンダ7が最収縮状態(図3の状態)で最小となり、バケットシリンダ7が最伸長状態で最大となる。
【0038】
ショベル基準座標系におけるバケット10の先端部の位置(以下、先端位置Pbと記す)は、XbkをX方向位置、ZbkをZ方向位置として、以下の(式1),(式2)で表される。
Xbk=L1cos(α)+L2cos(α+β)+L3cos(α+β+γ)…(式1)
Zbk=L1sin(α)+L2sin(α+β)+L3sin(α+β+γ)…(式2)
ここで、L1は、旋回体12とブーム8とを連結するブームピン91の中心軸からブーム8とアーム9とを連結するアームピン92の中心軸までの長さである。L2は、アームピン92の中心軸からアーム9とバケット10とを連結するバケットピン93の中心軸までの長さである。L3は、バケットピン93の中心軸からバケット10の先端位置(例えば、バケット10の爪先)Pbまでの長さである。
【0039】
-油圧ショベルの制御システム-
図4を参照して、マシンコントロール(Machine Control:MC)及びマシンガイダンス(Machine Guidance:MG)を行う制御システム21について説明する。図4は、油圧ショベル1の制御システム21のハードウェア構成図である。
【0040】
コントローラ40は、電気操作レバー装置A1~A3の少なくとも1つが操作された場合に、一定条件下でオペレータの操作に介入して作業装置1Aの動作を制限するMC機能を備えている。MCには、電気操作レバー装置A2によるアーム操作、もしくは電気操作レバー装置A1によるブーム操作をする際に実行される「領域制限制御」、及び、電気操作レバー装置A1によるブーム下げ操作や電気操作レバー装置A3によるバケット操作をする際に実行される「停止制御」が含まれる。
【0041】
領域制限制御は「整地制御」とも呼ばれる。領域制限制御が実行されている間、掘削目標面St(図3参照)から下側の領域を作業装置1Aが掘削しないように、ブームシリンダ5、アームシリンダ6及びバケットシリンダ7の少なくとも1つが制御される。領域制限制御では、アーム操作やブーム操作によって、バケット10の先端部が掘削目標面Stに沿って移動するように、作業装置1Aの動作が制御される。例えば、コントローラ40は、アーム操作がなされた場合に、掘削目標面Stに垂直な方向のバケット10の先端部の速度ベクトルがゼロになるように、ブーム上げ又はブーム下げの指令を行う。また、コントローラ40は、ブーム操作がなされた場合に、掘削目標面Stに垂直な方向のバケット10の先端部の速度ベクトルがゼロになるように、アーム引き又はアーム押しの指令を行う。これにより、回動運動であるアーム動作やブーム動作によるバケット10の先端部の軌跡が、掘削目標面Stに沿う直線軌道に補正される。
【0042】
停止制御は、掘削目標面Stよりも下方の領域にバケット10の先端部が侵入しないように、ブーム下げ動作やバケット動作を停止する制御である。停止制御では、コントローラ40は、バケット10の先端部が掘削目標面Stに接近するにつれブーム下げ動作やバケット動作を減速させる。
【0043】
なお、本実施形態では、MC時の作業装置1Aの制御点を、油圧ショベル1のバケット10の爪先に設定しているが、制御点は作業装置1Aの先端部分の点であればバケット10の爪先以外にも変更可能である。例えば、バケット10の底面やバケットリンク13の最外部に制御点を設定してもよい。また、掘削目標面Stから最も距離の近いバケット10上の点を制御点に設定してもよい。つまり、状況に応じて制御点は変化してもよい。
【0044】
MCでは、電気操作レバー装置A1~A3の非操作時に作業装置1Aの動作をコントローラ40により制御する「自動制御」と、電気操作レバー装置A1~A3の操作時にのみ作業装置1Aの動作をコントローラ40により制御する「半自動制御」と、がある。なお、MCは、オペレータ操作にコントローラ40による制御が介入するため「介入制御」とも呼ばれる。
【0045】
また、制御システム21は、MGとして、例えば、図5に示すように、掘削目標面Stと作業装置1A(例えば、バケット10)との位置関係を表示装置53に表示する処理を実行する。
【0046】
図4に示すように、制御システム21は、コントローラ40と、コントローラ40に接続されコントローラ40に信号を出力する姿勢検出装置50、目標面設定装置51、車体位置検出装置14、電気操作レバー装置A1~A3、外部入力装置96、圧力センサ5a~7b、及び温度センサ19を有する。また、制御システム21は、コントローラ40に接続されコントローラ40からの信号に基づいて制御される表示装置53、レギュレータ201a,202a,203a、及び電磁弁55a~59bを有する。
【0047】
姿勢検出装置50は、ブーム角度センサ30、アーム角度センサ31、バケット角度センサ32及び車体傾斜角度センサ33を有する。これらの角度センサ30,31,32,33は、油圧ショベル1の姿勢に関する情報を取得し、その情報に応じた信号を出力する。すなわち、角度センサ30,31,32,33は、作業装置1Aの姿勢、すなわち作業装置1Aを構成する複数の駆動対象部材(ブーム8、アーム9、及びバケット10)の姿勢を検出する姿勢センサとして機能している。なお、角度センサ30,31,32には、例えば、姿勢に関する情報としてのブーム角α、アーム角β及びバケット角γを取得し、取得した角度に応じた信号(電圧)を出力するポテンショメータを採用することができる。また、車体傾斜角度センサ33には、旋回体12の姿勢に関する情報として直交3軸の角速度及び加速度を取得し、この情報に基づき車体傾斜角θを演算し、車体傾斜角θを表す信号をコントローラ40に出力するIMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)を採用することができる。
【0048】
なお、車体傾斜角θの演算は、IMUの出力信号に基づき、コントローラ40が行うようにしてもよい。また、角度センサ30~32はそれぞれ基準面に対する傾斜角を検出するセンサ(IMU等)や油圧シリンダ5~7のストロークを検出するセンサで代替することもできる。
【0049】
目標面設定装置51は、掘削目標面の位置情報、掘削目標面の基準面(水平面)に対する傾斜角度情報等の掘削目標面に関する情報をコントローラ40に入力可能な装置である。例えば、目標面設定装置51は、グローバル座標系(絶対座標系)で規定された掘削目標面の3次元データを格納した外部端末(不図示)に接続され、外部端末から掘削目標面の3次元データが入力される。なお、目標面設定装置51を介したコントローラ40への掘削目標面の入力は、オペレータが手動で行ってもよい。
【0050】
車体位置検出装置14は、一対のGNSSアンテナ14a,14bを含み、車体1B(旋回体12)の位置及び車体1B(旋回体12)の方位を演算し、演算結果をコントローラ40に出力する。
【0051】
外部入力装置96は、オペレータによって操作され、操作に応じた入力信号をコントローラ40に出力する入力装置である。外部入力装置96は、例えば、表示装置53の表示画面に設けられる静電容量式のタッチセンサである。また、外部入力装置96は、複数のスイッチ、レバーを備えたものであってもよい。
【0052】
図5は、表示装置53の表示画面の一例を示す図である。図5に示すように、表示装置53は、コントローラ40からの表示制御信号に基づいて、様々な表示画像を表示画面に表示する。表示装置53は、例えば、タッチパネル式の液晶モニタであり、運転室16内に設置されている。コントローラ40は、MG機能として、表示装置53の表示画面に掘削目標面Stと作業装置1A(例えば、バケット10)の位置関係を表す表示画像を表示させる。図に示す例では、掘削目標面St及びバケット10を表す画像と、掘削目標面Stからバケット10の先端部までの距離が目標面距離H1として表示されている。目標面距離H1は掘削目標面Stを基準に上方向に正の値、下方向に負の値をとる。なお、図5に示す表示画像は、オペレータに操作されるモード切替スイッチ(不図示)によりMCを実行するモードが設定されているか否かに関わらず、表示装置53に表示させることができる。オペレータはこの表示画像を参考に、作業装置1Aを操作することができる。
【0053】
図4に示すように、コントローラ40は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等の処理装置41、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の不揮発性メモリ42、所謂RAM(Random Access Memory)と呼ばれる揮発性メモリ43、入力インターフェース44、出力インターフェース45、及び、その他の周辺回路を備えたコンピュータで構成される。これらのハードウェアは、協働してソフトウェアを動作させ、複数の機能を実現する。なお、コントローラ40は、1つのコンピュータで構成してもよいし、複数のコンピュータで構成してもよい。また、処理装置41としては、ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
【0054】
不揮発性メモリ42には、各種演算が実行可能なプログラム及び閾値などの各種データが格納されている。すなわち、不揮発性メモリ42は、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体(記憶装置)である。揮発性メモリ43は、処理装置41による演算結果及び入力インターフェース44から入力された信号を一時的に記憶する記憶媒体(記憶装置)である。処理装置41は、不揮発性メモリ42に記憶されたプログラムを揮発性メモリ43に展開して演算実行する装置であって、プログラムに従って入力インターフェース44、不揮発性メモリ42及び揮発性メモリ43から取り入れたデータに対して所定の演算処理を行う。
【0055】
入力インターフェース44は、各種装置(姿勢検出装置50、目標面設定装置51、車体位置検出装置14、電気操作レバー装置A1~A3、外部入力装置96、圧力センサ5a~7b,201b,202b,203b、及び温度センサ19)から入力された信号を処理装置41で演算可能なデータに変換する。また、出力インターフェース45は、処理装置41での演算結果に応じた出力用の信号を生成し、その信号を各種装置(レギュレータ201a,202a,203a、電磁弁55a~59b、及び表示装置53)に出力する。
【0056】
コントローラ40がレギュレータ201a~203aを制御することによりメインポンプ201~203の吐出容量が変化する。コントローラ40が電磁弁55a~59bを制御することにより、流量制御弁D1~D6のスプールが作動し、油圧シリンダ5~7が作動する。コントローラ40が表示装置53を制御することにより表示装置53の表示画面に所定の画像が表示される。
【0057】
-コントローラの機能-
図6を参照して、コントローラ40の機能の詳細について説明する。図6は、コントローラ40の機能ブロック図である。コントローラ40は、不揮発性メモリ42に記憶されているプログラムを実行することにより、操作量演算部141、姿勢演算部142、目標面演算部143、目標速度演算部144、学習部145、目標圧演算部146、バルブ指令演算部147、及び表示制御部148として機能する。目標圧演算部146及びバルブ指令演算部147は、電磁弁55a~59bを制御することにより、油圧アクチュエータである油圧シリンダ5,6,7を制御する電磁弁制御部149として機能する。
【0058】
-操作量演算部-
操作量演算部141は、電気操作レバー装置A1,A2,A3の操作信号(操作量及び操作方向)に基づいて、電磁弁55a~59bにより生成する操作圧の目標値(以下、操作量操作圧とも記す)Pi0を演算する。操作量演算部141は、電気操作レバー装置A1によってブーム上げ操作が行われた場合、電磁弁55aにより生成する操作圧の目標値PiBM12U0及び電磁弁56aにより生成する操作圧の目標値PiBM3U0を演算する。操作量演算部141は、電気操作レバー装置A1によってブーム下げ操作が行われた場合、電磁弁55bにより生成する操作圧の目標値PiBM12D0及び電磁弁56bにより生成する操作圧の目標値PiBM3D0を演算する。
【0059】
操作量演算部141は、電気操作レバー装置A2によってアーム引き(アームクラウド)操作が行われた場合、電磁弁57aにより生成する操作圧の目標値PiAM1C0及び電磁弁58aにより生成する操作圧の目標値PiAM2C0を演算する。操作量演算部141は、電気操作レバー装置A2によってアーム押し(アームダンプ)操作が行われた場合、電磁弁57bにより生成する操作圧の目標値PiAM1D0及び電磁弁58bにより生成する操作圧の目標値PiAM2D0を演算する。
【0060】
操作量演算部141は、電気操作レバー装置A3によってバケット引き(バケットクラウド)操作が行われた場合、電磁弁59aにより生成する操作圧の目標値PiBKC0を演算する。操作量演算部141は、電気操作レバー装置A3によってバケット押し(バケットダンプ)操作が行われた場合、電磁弁59bにより生成する操作圧の目標値PiBKD0を演算する。
【0061】
-姿勢演算部-
姿勢演算部142は、姿勢検出装置50により検出された姿勢情報(角度情報)、及び、不揮発性メモリ42に記憶されている作業装置1Aの寸法情報(L1,L2,L3)に基づき、ショベル基準座標系(ローカル座標系)における作業装置1Aの姿勢と、バケット10の先端位置Pbを演算する。バケット10の先端位置Pb(Xbk,Zbk)は、既述のとおり、(式1)及び(式2)により演算できる。なお、グローバル座標系における作業装置1Aの姿勢と、バケット10の先端位置が必要な場合には、姿勢演算部142は、車体位置検出装置14により検出された旋回体12のグローバル座標系における位置と方位に基づいて、ショベル基準座標系の座標をグローバル座標系の座標に変換する。
【0062】
-目標面演算部-
目標面演算部143は、目標面設定装置51からの情報に基づき掘削目標面Stを設定する。具体的には、目標面演算部143は、目標面設定装置51からの情報に基づき掘削目標面Stの位置情報を演算し、その演算結果を揮発性メモリ43に記憶する。目標面演算部143は、目標面設定装置51を介して3次元データで提供される掘削目標面を作業装置1Aが移動する平面(作業装置の動作平面)で切断した断面形状(図3参照)を2次元の掘削目標面Stとして演算する。
【0063】
なお、図3では掘削目標面Stが1つであるが、掘削目標面Stが複数存在する場合もある。掘削目標面Stが複数存在する場合、目標面演算部143は、バケット10の先端部に最も近いもの、バケット10の先端部の鉛直下方に位置するもの、あるいは、任意に選択したものを演算対象の掘削目標面Stとして設定する。
【0064】
-目標速度演算部-
目標速度演算部144は、領域制限制御(整地制御)において、作業装置1Aによって掘削目標面Stを超えて掘削目標面Stよりも下側を掘削してしまわないように、各油圧シリンダ5,6,7の目標速度を演算する。目標速度演算部144は、姿勢演算部142での演算結果及び操作量演算部141での演算結果に基づいて、各油圧シリンダ5,6,7の目標速度を演算する。
【0065】
図7を参照して、領域制限制御中の目標速度の演算方法について詳しく説明する。図7は、バケット10の先端が補正後の目標速度ベクトルVcaの通りに制御されたときの、バケット10の先端の軌跡の一例を示す図である。ここでの説明では、図7に示すように、Xt軸及びYt軸を設定する。Xt軸は、掘削目標面Stに平行な軸であり、Yt軸は、掘削目標面Stに直交する軸である。
【0066】
目標速度演算部144は、操作量演算部141によって演算された電磁弁55a~59bの操作量操作圧Pi0(PiBM12U0,PiBM3U0,PiBM12D0,PiBM3D0,PiAM1C0,PiAM2C0,PiAM1D0,PiAM2D0,PiBKC0,PiBKD0)に基づいて、各油圧シリンダ5,6,7の一次目標速度を演算する。
【0067】
目標速度演算部144は、各油圧シリンダ5,6,7の一次目標速度と、姿勢演算部142によって演算されたバケット10の先端位置Pbと、不揮発性メモリ42に記憶してある作業装置1Aの寸法情報(L1,L2,L3等)とに基づいて、図7に示すバケット10の先端部の目標速度ベクトルVcを演算する。
【0068】
目標速度演算部144は、バケット10の先端部と掘削目標面Stとの距離である目標面距離H1が0(ゼロ)に近づくにつれて、バケット10の先端部の目標速度ベクトルVcにおける掘削目標面Stに垂直な成分Vcy(Yt軸方向の速度成分)が0(ゼロ)に近づくように油圧シリンダ5,6,7のうち必要な油圧シリンダの一次目標速度を補正して、二次目標速度を演算する。これにより、バケット10の先端部の目標速度ベクトルVcが、補正後目標速度ベクトルVcaに変換される。目標面距離H1が0(ゼロ)のときの目標速度ベクトルVcaは掘削目標面Stに平行な成分Vcx(Xt軸方向の速度成分)のみになる。このため、領域制限制御では、掘削目標面Stよりも下側の領域にバケット10の先端部が侵入しないように、掘削目標面St上又はその上方にバケット10の先端部(制御点)が保持される。以下、このように、バケット10の先端部の速度ベクトルを変換(補正)する制御のことを方向変換制御とも記す。
【0069】
方向変換制御は、ブーム上げ又はブーム下げとアームクラウドとの組み合わせにより実行される場合と、ブーム上げ又はブーム下げとアームダンプとの組み合わせにより実行される場合とがある。いずれの場合においても、目標速度ベクトルVcが掘削目標面Stに接近する下向き成分(Vcy<0)を含むとき、目標速度演算部144は、その下向き成分を打ち消すブーム上げ方向のブームシリンダ5の目標速度を演算する。反対に目標速度ベクトルVcが掘削目標面Stから離れる上向き成分(Vcy>0)を含むとき、目標速度演算部144は、その上向き成分を打ち消すブーム下げ方向のブームシリンダ5の目標速度を演算する。
【0070】
なお、モード切替スイッチ(不図示)により、領域制限制御(整地制御)が行われないモードが設定されている場合、目標速度演算部144は、電気操作レバー装置A1~A3の操作に応じた各油圧シリンダ5~7の一次目標速度に対する補正は行わない。
【0071】
このように、目標速度演算部144は、操作量演算部141及び姿勢演算部142の演算結果に基づいて、油圧シリンダ5,6,7の伸長速度/収縮速度の目標値である目標速度を演算する。
【0072】
-目標圧演算部-
目標圧演算部146は、圧力センサ5a,5b,6a,6b,7a,7b,201b,202b,203bの検出結果に基づき、流量制御弁D1~D6の前後差圧ΔPを算出する。目標圧演算部146は、算出された流量制御弁D1~D6の前後差圧ΔPと、流量制御弁D1~D6の流量係数Cと、流量制御弁D1~D6を通過する作動油の目標流量Qとに基づいて、以下の(式3)により、流量制御弁D1~D6の目標開口面積Aを演算する。
A=Q/C√ΔP …(式3)
なお、本実施形態において、Aは流量制御弁D1~D6のメータアウト通路部の目標開口面積(以下、メータアウト目標開口面積とも記す)Aoutであり、Qは流量制御弁D1~D6のメータアウト通路部を通過する作動油の目標流量Qoutである。また、Cは流量制御弁D1~D6のメータアウト通路部の流量係数Coであり、ΔPは流量制御弁D1~D6のメータアウト通路部の前後差圧ΔPoである。
【0073】
つまり、本実施形態に係る目標圧演算部146は、流量制御弁D1~D6のメータアウト目標開口面積Aoutを以下のオリフィスの(式4)を用いて演算する。
Aout=Qout/Co√ΔPo…(式4)
ここで、前後差圧ΔPoは、圧力センサ5a,5b,6a,6b,7a,7bによって検出される油圧シリンダ5~7のメータアウト側(出口側)の圧力Paoから予め不揮発性メモリ42に記憶されているタンク圧Ptを減算することにより得られる(ΔPo=Pao-Pt)。なお、タンク圧Ptは、タンクあるいはタンクへの戻り配管に取り付けられる圧力センサ(不図示)により検出される圧力を採用してもよい。目標流量Qoutは、目標速度演算部144によって演算された油圧シリンダ5~7の目標速度を油圧シリンダ5~7のメータアウト側の流量に変換することにより得られる。
【0074】
ブーム8及びアーム9を動作させる際に優先的に使用するメインポンプ(流量制御弁)は、予め定められている。油圧シリンダ5~7に供給される作動油の目標流量Qinが、1つ目のメインポンプ(以下、優先第一ポンプとも記す)から吐出できる最大流量(最大吐出流量とも記す)を上回った場合に、2つ目のメインポンプ(以下、優先第二ポンプとも記す)が使用される。なお、目標流量Qinは、目標速度演算部144により演算された各目標速度を油圧シリンダ5~7のメータイン側(入口側)の流量に変換することにより求められる。
【0075】
本実施形態では、ブーム8の優先第一ポンプは第3メインポンプ203であり、ブーム8の優先第二ポンプは第1メインポンプ201である。また、アーム9の優先第一ポンプは第2メインポンプ202であり、アーム9の優先第二ポンプは第1メインポンプ201である。なお、バケット10を動作させる際、優先的に使用されるポンプはない。バケット10は、常に第1メインポンプ201から供給される作動油によって動作される。
【0076】
本実施形態において、流量制御弁D1と流量制御弁D2は個別に制御可能な構成ではない。このため、ブーム8の優先第二ポンプは、実質的に第1メインポンプ201と第2メインポンプ202となる。しかしながら、第1メインポンプ201から作動油が供給される流量制御弁D1の方が流量制御弁D2よりも早く開き始めるように、流量制御弁D1,D2のメータイン通路部の開口を設計することで、第1メインポンプ201を優先第二ポンプとして使用できるようにしている。
【0077】
各油圧シリンダ5~7の目標流量Qは、優先第一ポンプの目標流量(以下、第一目標流量)Q1と、優先第二ポンプの目標流量(以下、第二目標流量)Q2と、に分配される。1つのメインポンプから吐出できる最大流量をQmaxとすると、Q>Qmaxの場合、Q1=Qmax,Q2=Q-Qmaxとなる。また、Q<Qmaxの場合、Q1=Q,Q2=0となる。
【0078】
ブーム上げの場合、流量制御弁D3のメータアウト目標開口面積Aout_Bm3Uは、第一目標流量Qout1BmUと、圧力センサ5aによって検出されるブームシリンダ5のロッド室の圧力とに基づき、(式4)によって演算される。また、ブーム上げの場合、流量制御弁D1のメータアウト目標開口面積Aout_Bm1Uは、第二目標流量Qout2BmUと、圧力センサ5aによって検出されるブームシリンダ5のロッド室の圧力とに基づき、(式4)によって演算される。
【0079】
ブーム下げの場合、流量制御弁D3のメータアウト目標開口面積Aout_Bm3Dは、第一目標流量Qout1BmDと、圧力センサ5bによって検出されるブームシリンダ5のボトム室の圧力とに基づき、(式4)によって演算される。また、ブーム下げの場合、流量制御弁D1のメータアウト目標開口面積Aout_Bm1Dは、第二目標流量Qout2BmDと、圧力センサ5bによって検出されるブームシリンダ5のボトム室の圧力とに基づき、(式4)によって演算される。
【0080】
アーム引きの場合、流量制御弁D4のメータアウト目標開口面積Aout_Am1Cは、第一目標流量Qout1AmCと、圧力センサ6aによって検出されるアームシリンダ6のロッド室の圧力と基づき、(式4)によって演算される。また、アーム引きの場合、流量制御弁D5のメータアウト目標開口面積Aout_Am2Cは、第二目標流量Qout2AmCと、圧力センサ6aによって検出されるアームシリンダ6のロッド室の圧力とに基づき、(式4)によって演算される。
【0081】
アーム押しの場合、流量制御弁D4のメータアウト目標開口面積Aout_Am1Dは、第一目標流量Qout1AmDと、圧力センサ6bによって検出されるアームシリンダ6のボトム室の圧力とに基づき、(式4)によって演算される。また、アーム押しの場合、流量制御弁D5のメータアウト目標開口面積Aout_Am2Dは、第二目標流量Qout2AmDと、圧力センサ6bによって検出されるアームシリンダ6のボトム室の圧力と、に基づき、(式4)によって演算される。
【0082】
バケット引きの場合、流量制御弁D6のメータアウト目標開口面積Aout_BkCは、第一目標流量Qout1BkCと、圧力センサ7aによって検出されるバケットシリンダ7のロッド室の圧力とに基づき、(式4)によって演算される。また、バケット押しの場合、流量制御弁D6のメータアウト目標開口面積Aout_BkDは、第一目標流量Qout1BkDと、圧力センサ7bによって検出されるバケットシリンダ7のボトム室の圧力とに基づき、(式4)によって演算される。
【0083】
このように、本実施形態では、ブーム8、アーム9、及びバケット10のそれぞれのメータイン目標流量Qinがメインポンプ1つの最大吐出流量以下の場合、1つの油圧シリンダに対して、1つのメインポンプを割り当てることができる。このため、分流の影響を受けずに、(式4)で導出された流量制御弁の開口によって、目標流量(目標速度)に非常に近い精度で各油圧シリンダ5~7を動作させることができる。
【0084】
図8を参照して、流量制御弁D1~D6のメータアウト通路部の開口特性の一例について説明する。図8は、流量制御弁D1~D6のメータアウト通路部の開口線図であり、流量制御弁D1~D6の受圧室E1~E12に入力される操作圧と、流量制御弁D1~D6のメータアウト通路部の開口面積との関係を示す。図8に示すように、電磁弁55a~59bにより生成される操作圧が増加するほど、流量制御弁D1~D6のメータアウト通路部の開口面積は大きくなる。コントローラ40の不揮発性メモリ42には、操作圧と流量制御弁D1~D6の開口面積との関係を規定する開口特性テーブルToが記憶されている。
【0085】
目標圧演算部146は、開口特性テーブルToを参照し、メータアウト目標開口面積Aout(Aout_Bm1U,Aout_Bm3U,Aout_Bm1D,Aout_Bm3D,Aout_Am1C,Aout_Am2C,Aout_Am1D,Aout_Am2D,Aout_BkC,Aout_BkD)に基づき、操作圧の目標値である目標操作圧Pi1(PiBM12U1,PiBM3U1,PiBM12D1,PiBM3D1,PiAM1C1,PiAM2C1,PiAM1D1,PiAM2D1,PiBKC1,PiBKD1)を演算する。
【0086】
本実施形態では、開口特性テーブルToは、後述する学習処理の結果に基づき補正される。つまり、目標圧演算部146は、補正された開口特性テーブルToを参照し、メータアウト目標開口面積Aoutに基づいて、目標操作圧Pi1を演算する。開口特性テーブルToの補正方法は後述する。
【0087】
目標圧演算部146は、各メインポンプ201,202,203に割り当てられる各油圧シリンダ5~7のメータイン側の目標流量の総和を各メインポンプ201,202,203の目標流量Q201,Q202,Q203として演算する。つまり、目標圧演算部146は、以下の(式5)により第1メインポンプ201の目標流量Q201を演算し、以下の(式6)により第2メインポンプ202の目標流量Q202を演算し、以下の(式7)により第3メインポンプ203の目標流量Q203を演算する。
Q201=Qin1Bm1U+Qin1Am2C+Qin1Am2D+Qin1BkC+Qin1BkD…(式5)
Q202=Qin2Bm2U+Qin2Am1C+Qin2Am1D…(式6)
Q203=Qin3Bm3U…(式7)
ここで、Qin1Bm1Uは、ブーム上げの場合の第1メインポンプ201から流量制御弁D1を通じてブームシリンダ5に供給される作動油のメータイン側の目標流量である。Qin1Am2Cは、アーム引きの場合の第1メインポンプ201から流量制御弁D5を通じてアームシリンダ6に供給される作動油のメータイン側の目標流量である。Qin1Am2Dは、アーム押しの場合の第1メインポンプ201から流量制御弁D5を通じてアームシリンダ6に供給される作動油のメータイン側の目標流量である。Qin1BkCは、バケット引きの場合の第1メインポンプ201から流量制御弁D6を通じてバケットシリンダ7に供給される作動油のメータイン側の目標流量である。Qin1BkDは、バケット押しの場合の第1メインポンプ201から流量制御弁D6を通じてバケットシリンダ7に供給される作動油のメータイン側の目標流量である。Qin2Bm2Uは、ブーム上げの場合の第2メインポンプ202から流量制御弁D2を通じてブームシリンダ5に供給される作動油のメータイン側の目標流量である。Qin2Am1Cは、アーム引きの場合の第2メインポンプ202から流量制御弁D4を通じてアームシリンダ6に供給される作動油のメータイン側の目標流量である。Qin2Am1Dは、アーム押しの場合の第2メインポンプ202から流量制御弁D4を通じてアームシリンダ6に供給される作動油のメータイン側の目標流量である。Qin3Bm3Uは、ブーム上げの場合の第3メインポンプ203から流量制御弁D3を通じてブームシリンダ5に供給される作動油のメータイン側の目標流量である。
【0088】
不揮発性メモリ42には、メインポンプ201,202,203の目標流量Q201,Q202,Q203と、レギュレータ201a,202a,203aの目標レギュレータ圧との関係を規定するレギュレータ圧テーブルが予め記憶されている。レギュレータ圧テーブルは、メインポンプ201,202,203ごとに定められる。
【0089】
目標圧演算部146は、レギュレータ圧テーブルを参照し、演算したメインポンプ201,202,203の目標流量Q201,Q202,Q203に基づき、目標レギュレータ圧PPc201,PPc202,PPc203を演算する。
【0090】
-バルブ指令演算部-
バルブ指令演算部147は、目標圧演算部146により演算された目標操作圧Pi1(PiBM12U1,PiBM3U1,PiBM12D1,PiBM3D1,PiAM1C1,PiAM2C1,PiAM1D1,PiAM2D1,PiBKC1,PiBKD1)に基づく電気信号を演算し、演算した電気信号を対応する電磁弁55a~59bに出力する。また、バルブ指令演算部147は、目標圧演算部146により演算された目標レギュレータ圧PPc(PPc201,PPc202,PPc203)に基づく電気信号を演算し、演算した電気信号を対応するレギュレータ201a~203aのレギュレータ電磁弁に出力する。
【0091】
バルブ指令演算部147から出力された電気信号(励磁電流)によって、電磁弁55a~59bのソレノイドが励磁されることにより、電磁弁55a~59bが作動し、流量制御弁D1~D6に作用する操作圧(パイロット圧)が、目標圧演算部146で演算された目標操作圧Pi1に制御される。これにより、油圧シリンダ5~7の動作速度が目標速度に制御される。また、バルブ指令演算部147から出力された電気信号(励磁電流)によって、レギュレータ201a~203aのレギュレータ電磁弁のソレノイドが励磁されることにより、レギュレータ電磁弁が作動し、レギュレータ201a~203aの受圧部に作用するレギュレータ圧(パイロット圧)が、目標圧演算部146で演算された目標レギュレータ圧PPcに制御される。これにより、メインポンプ201~203の吐出流量が目標流量Q201,Q202,Q203に制御される。
【0092】
以上のように、本実施形態に係るコントローラ40は、油圧シリンダ5~7の目標速度から流量制御弁D1~D6を通過する作動油の目標流量Qを演算し、オリフィスの(式3)を用いて、目標流量Qと、流量制御弁D1~D6の前後差圧ΔPとに基づいて、流量制御弁D1~D6の目標開口面積Aを演算する。流量制御弁D1~D6の前後差圧ΔPは、油圧シリンダ5~7の負荷圧(本実施形態では、油圧シリンダ5~7のメータアウト側の負荷圧)に基づいて算出される。なお、以下では、油圧シリンダ5~7の負荷圧のことをシリンダ圧とも記す。そして、コントローラ40は、開口特性テーブルToを参照し、目標開口面積Aに基づいて、目標操作圧を演算する。さらに、コントローラ40は、電磁弁55a~59bにより生成される操作圧が目標操作圧になるように、電磁弁55a~59bを制御する。
【0093】
このように、オリフィスの(式3)を用いて目標操作圧を演算することにより、油圧シリンダの負荷圧(油圧負荷条件)が変化したとしても、その負荷圧に応じた目標開口面積を求めることができる。このため、油圧システムにオープンセンタシステムを採用した場合であっても、演算した目標流量(目標速度)で精度よく油圧シリンダ5~7を動作させることができる。その結果、領域制限制御などのMCによる作業を精度よく行うことができる。
【0094】
ここで、流量制御弁D1~D6の開口面積と電磁弁55a~59bにより生成する操作圧との関係は、流量制御弁D1~D6の製造誤差によって油圧ショベル1ごとにバラつきが発生する。流量制御弁D1~D6の製造誤差には、流量制御弁D1~D6のスプールの加工誤差、スプールを中立位置に保持するためのバネ(センタリングスプリング)のバネ係数のバラつき、スプールを摺動可能に保持するバルブケーシングの加工誤差等がある。
【0095】
そこで本実施形態では、流量制御弁D1~D6の製造誤差による油圧ショベル1ごとのバラつき(個体差)を抑えるため、コントローラ40は、流量制御弁D1~D6の開口面積と電磁弁55a~59bにより生成する操作圧との関係を学習する。さらに、コントローラ40は、その学習結果に基づいて、流量制御弁D1~D6の開口面積と電磁弁55a~59bにより生成する操作圧との関係を補正する。
【0096】
本実施形態では、1つの流量制御弁を一方に動作させるための操作圧を1つの電磁弁によって生成できる構成であり、コントローラ40は以下のような学習処理を実行する。コントローラ40は、学習処理において、メインポンプ201,202,203から一定の吐出流量を学習対象の流量制御弁D1~D6を通じて油圧シリンダ5~7に供給させている状態において、電磁弁55a~59bにより生成される操作圧を段階的に変化させるとともに、圧力センサ5a,5b,6a,6b,7a,7bによって検出された油圧シリンダ5~7の圧力を入力する。そして、コントローラ40は、学習処理において、入力した油圧シリンダ5~7の圧力が予め定められた基準値Ptaになったときの操作圧を学習結果操作圧Pisxとして記憶する。なお、基準値Ptaは、予め試作機を用いた実験などで得た所定の開口面積Adに対応する油圧シリンダ5~7の圧力である。
【0097】
学習処理によって得られた学習結果操作圧Pisxにおける流量制御弁D1~D6の開口面積は、予め実験で取得していた開口面積Adに相当する。コントローラ40は、上記開口面積Adに対応する操作圧(基準値)Pitaが学習結果操作圧Pisxと一致するように、開口特性テーブルToをオフセット補正する。コントローラ40は、学習結果操作圧Pisxに基づいて補正された開口特性テーブルToを参照し、目標開口面積Aに基づいて、目標操作圧Pi1を演算する。
【0098】
このようにして得られた目標操作圧Pi1に基づいて、電磁弁55a~59bを制御することにより、流量制御弁D1~D6に加工誤差等がある場合でも、精度よく油圧シリンダ5~7を動作させることができる。以下、本実施形態に係るコントローラ40による学習処理及び補正処理について詳しく説明する。
【0099】
-学習部-
図6に示すように、学習部145は、外部入力装置96により学習モードの実行指令が入力されると、学習モードを実行する。学習モードにおいて、学習部145は、外部入力装置96により学習対象とする流量制御弁と、その流量制御弁の動作方向が入力されると、姿勢演算部142の演算結果に基づき、作業装置1Aの姿勢が予め定められた学習開始姿勢であるか否かを判定する。本実施形態では、少なくとも、作業装置1Aの姿勢が学習開始姿勢であることを、学習処理を開始する条件の一つとする。
【0100】
学習部145は、作業装置1Aの姿勢が学習開始姿勢であると判定され、電気操作レバー装置A1~A3が操作されると、学習部145は、学習開始条件が成立したものとして、学習処理を開始する。学習処理において、学習部145は、流量制御弁D1~D6の学習用の目標操作圧である学習操作圧Pis(PiBM12Us,PiBM3Us,PiBM12Ds,PiBM3Ds,PiAM1Cs,PiAM2Cs,PiAM1Ds,PiAM2Ds,PiBKCs,PiBKDs)と、各レギュレータ201a,202a,203aの学習用の目標レギュレータ圧である学習レギュレータ圧PPcs(PPc201s,PPc202s,PPc203s)を演算する。学習部145は、演算した学習操作圧Pis及び学習レギュレータ圧PPcsをバルブ指令演算部147に出力する。
【0101】
バルブ指令演算部147は、学習部145で演算された学習操作圧Pisに基づく電気信号を演算し、演算した電気信号を学習対象の流量制御弁D1~D6の動作方向に対応する電磁弁55a~59bに出力する。また、バルブ指令演算部147は、学習部145で演算された学習レギュレータ圧PPcsに基づく電気信号を演算し、演算した電気信号を学習対象の流量制御弁D1~D6に対応するメインポンプ201~203のレギュレータ201a~203aのレギュレータ電磁弁に出力する。
【0102】
学習部145は、学習処理が行われている間、圧力センサ5a,5b,6a,6b,7a,7bから取得したシリンダ圧力を学習操作圧Pisと紐付けて記憶する。学習部145は、学習操作圧Pisを段階的に変化させる。
【0103】
-学習処理-
図9を参照して、コントローラ40により実行される学習処理の流れの一例について説明する。図9は、コントローラ40により実行される学習処理の流れの一例について示すフローチャートである。オペレータによって外部入力装置96が操作され、外部入力装置96から学習モードの実行指令が入力されると、コントローラ40は学習モードを開始する(ステップS101)。
【0104】
ステップS101において、表示制御部148は、表示装置53に学習モードの初期画面を表示させる。初期画面には、複数の流量制御弁D1~D6の中から学習対象とする流量制御弁を選択するための弁選択操作部と、選択された流量制御弁の動作方向を選択する動作方向選択部と、選択の完了を指示するための選択完了操作部とが含まれる。オペレータにより、流量制御弁D1~D6の中から学習対象とする流量制御弁が選択され、選択された流量制御弁の動作方向が選択され、選択の完了が指示されると、処理がステップS105に進む。
【0105】
以下、ステップS101において、流量制御弁D1~D6のうち「流量制御弁D3」が学習対象の流量制御弁として選択され、流量制御弁の動作方向として「ブーム上げ方向」が選択されている場合を例に説明する。ステップS101において、学習対象の流量制御弁D3及び流量制御弁D3の動作方向としてブーム上げ方向が選択された場合、学習部145は、ブーム上げ動作による学習に紐付けられた学習開始姿勢データを不揮発性メモリ42から読み出す。
【0106】
図10は、ブーム上げ、ブーム下げ、アーム引き、アーム押し、バケット引き、バケット押しの動作に対応する学習開始姿勢を示す図である。不揮発性メモリ42には、図10に示す学習開始姿勢を規定する学習開始姿勢データが記憶されている。不揮発性メモリ42には、ブーム上げ動作による学習を行うための学習開始姿勢データと、ブーム下げ動作による学習を行うための学習開始姿勢データと、アーム引き動作による学習を行うための学習開始姿勢データと、アーム押し動作による学習を行うための学習開始姿勢データと、バケット引き動作による学習を行うための学習開始姿勢データと、バケット押し動作による学習を行うための学習開始姿勢データとが記憶されている。
【0107】
学習開始姿勢データは、ブーム角αの目標範囲(下限値及び上限値)、アーム角βの目標(下限値及び上限値)及びバケット角γの目標範囲(下限値及び上限値)を含む。図10に示すように、ブーム上げに対応する学習開始姿勢データは、バケット10が地面につかない程度にブーム8が下がっている状態の学習開始姿勢を規定する。
【0108】
図9に示すように、ステップS105において、表示制御部148は、表示装置53に学習開始姿勢画面53a(図11参照)を表示させる。図11は、学習開始姿勢画面53aの一例について示す図である。図11に示すように、学習開始姿勢画面53aには、作業装置1Aの姿勢を学習開始姿勢とするための操作をオペレータに促すメッセージ「作業装置の姿勢を目標範囲に合わせてください。」が表示される。また、学習開始姿勢画面53aには、角度センサ30,31,32により検出されたブーム角α、アーム角β及びバケット角γの現在値と、学習開始姿勢データに含まれるブーム角α、アーム角β及びバケット角γの目標範囲(下限値及び上限値)が表示される。
【0109】
図9のステップS105において、学習開始姿勢画面53aが表示装置53に表示されると、処理がステップS110に進む。ステップS110において、学習部145は、作業装置1Aの姿勢が学習開始姿勢であるか否かを判定する。現在のブーム角α、アーム角β及びバケット角γのそれぞれが、ブーム上げの学習開始姿勢データで規定されるブーム角α、アーム角β及びバケット角γの目標範囲内にある場合、学習部145は、作業装置1Aの姿勢は学習開始姿勢であると判定し、処理をステップS120に進める。現在のブーム角α、アーム角β及びバケット角γのうちの少なくとも一つが、ブーム上げの学習開始姿勢データで規定される目標範囲内にない場合、学習部145は、作業装置1Aの姿勢が学習開始姿勢でないと判定する。ステップS110の学習開始姿勢判定処理は、肯定判定されるまで所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0110】
ステップS120において、表示制御部148は、表示装置53に操作指示画面を表示させる。操作指示画面には、「ブーム操作レバーを上げ側に5秒以上操作してください」といった操作指示が表示される。ステップS120において、操作指示画面が表示されると、処理がステップS130に進む。
【0111】
ステップS130において、オペレータにより電気操作レバー装置A1がブーム上げ側に操作されると、学習処理が開始され、電気操作レバー装置A1が操作されている間、学習部145は、学習レギュレータ圧PPcs及び学習操作圧Pis(i)をバルブ指令演算部147に出力するとともに、シリンダ圧の計測を行う。したがって、学習レギュレータ圧PPcsと学習操作圧Pis(i)とは同期して出力される。ここで、ブーム上げの学習時に計測されるシリンダ圧は、圧力センサ5aにより検出されるブームシリンダ5のメータアウト側の圧力である。また、学習操作圧Pisは、ブーム上げ用の電磁弁56aの制御に用いられる学習操作圧PiBM3Usである。
【0112】
学習レギュレータ圧PPcsは、第3メインポンプ203の第3レギュレータ203aの制御に用いられる学習レギュレータ圧PPc203sである。学習部145が学習レギュレータ圧PPc203sをバルブ指令演算部147に出力することにより、第3メインポンプ203からある一定以上の流量Qcの作動油が吐出される。
【0113】
流量Qcは、スタンバイ時の流量(最小傾転での流量)よりも大きく、ブームシリンダ5を一定以上の速度で安定して動かすことのできる流量である。例えば、流量Qcは、メータアウト開口が十分に開いていてもブームシリンダ5に10[MPa]程度のある程度の負荷を立てられることが可能な流量である。なお、学習部145は、スタンバイ時の流量を第1メインポンプ201及び第2メインポンプ202から吐出させるために、第1レギュレータ201a及び第2レギュレータ202aのレギュレータ圧の目標値として、レギュレータ圧の最小値をバルブ指令演算部147に出力する。
【0114】
学習部145は、ブーム上げ操作が行われている時間Δtaだけ学習操作圧Pis(i)をバルブ指令演算部147に出力する。なお、iは、自然数であり、後述する学習ステップ数を示す。学習ステップ数iは、ステップS101において、1が設定される(i=1)。なお、学習部145は、流量制御弁D3以外の流量制御弁D1,D2,D4~D6の操作圧の目標値として、操作圧の最小値をバルブ指令演算部147に出力する。
【0115】
ステップS130において、バルブ指令演算部147は、学習部145から出力されるレギュレータ圧の目標値(学習レギュレータ圧)に応じた電気信号を演算し、演算した電気信号を対応するレギュレータ電磁弁に出力する。また、バルブ指令演算部147は、学習部145から出力される操作圧の目標値(学習操作圧)に応じた電気信号を演算し、演算した電気信号を対応する電磁弁55a~59bに出力する。
【0116】
学習部145は、時刻と、圧力センサ5aによって検出されるブームシリンダ5のメータアウト側のシリンダ圧と、学習レギュレータ圧PPcsと、学習操作圧Pis(i)とを対応付けて記憶する。このように、ステップS130において、コントローラ40は、学習レギュレータ圧PPcs及び学習操作圧Pis(i)を発生させるための電気信号を電気操作レバー装置A1が操作されている時間Δtaだけ出力するとともに、シリンダ圧の計測を行い、処理をステップS140に進める。
【0117】
ステップS140において、学習部145は、ステップS130で計測されたシリンダ圧に基づいて、シリンダ圧の平均値(以下、平均シリンダ圧とも記す)Pav(i)を演算し、処理をステップS150に進める。
【0118】
ステップS150において、学習部145は、ステップS140で演算された平均シリンダ圧Pav(i)が予め定められた圧力閾値Pta以下であるか否かを判定する。なお、圧力閾値Ptaは、第3メインポンプ203から流量Qcの作動油が吐出され、ブーム上げ用の学習開始姿勢から流量制御弁D3を所定の開口面積Adとするために所定の操作圧Pitaを流量制御弁D3に入力させたときのブームシリンダ5の圧力の基準値(設計値)である。圧力閾値Ptaは、例えば、領域制限制御において使用頻度の高い速度領域におけるブーム上げ空中動作での流量制御弁D3のメータアウト側のシリンダ圧であり、事前に机上計算あるいは試作機を用いた実験などに基づいて定められる。
【0119】
ステップS150において、平均シリンダ圧Pav(i)が圧力閾値Ptaよりも大きいと判定されると、学習部145は、ブームシリンダ5の圧力は基準値(Pta)になっていないと判定して処理をステップS160に進める。
【0120】
ステップS160において、学習部145は、学習操作圧Pis(i)に所定の上昇圧力ΔPisを加算することにより、次の学習において用いる学習操作圧Pis(i+1)を演算し、処理をステップS170に進める。ステップS170において、学習部145は、学習ステップ数iに1を加算して、新たなiとするカウントアップ処理を行い、ステップS105に戻る。
【0121】
ステップS150において、平均シリンダ圧Pav(i)が圧力閾値Pta以下であると判定されると、学習部145は、ブームシリンダ5の圧力は基準値(Pta)になったと判定して処理をステップS180に進める。ステップS180において、学習部145は、ブームシリンダ5の圧力が基準値になったときの学習操作圧Pis(i)を学習結果操作圧Pisxとして記憶し、図9のフローチャートに示す処理を終了する。なお、表示制御部148は、学習処理が終了したことを表示装置53に表示させる。
【0122】
図12は、学習部145からバルブ指令演算部147に出力される学習レギュレータ圧及び学習操作圧と、圧力センサ5a~7bにより検出されるメータアウト側のシリンダ圧の時間変化について示す図である。図12に示すように、学習部145は、第一学習ステップ(学習ステップ数i=1)において、時刻t1からブーム上げ操作が行われている時間Δta(例えば、5秒間)だけ、学習レギュレータ圧PPcsをバルブ指令演算部147に出力する。また、学習部145は、時刻t1から時間Δtaだけ、学習操作圧Pis(1)をバルブ指令演算部147に出力する。
【0123】
シリンダ圧は、時刻t1から上昇し始め、その後、ほぼ一定値で保持され、時刻t1+5から減少し始める。学習部145は、ほぼ一定値で保持されているときのシリンダ圧の平均値を演算する。具体的には、学習部145は、時刻t1+2から時刻t1+4までに取得したシリンダ圧の平均値Pav(1)を演算する。
【0124】
平均シリンダ圧Pav(1)が圧力閾値Ptaよりも大きい場合には、第一学習ステップから第二学習ステップに移行する。なお、第1実施形態において、オペレータは、学習ステップが完了する度に、作業装置1Aを学習開始姿勢に戻すために電気操作レバー装置A1の操作を行う。
【0125】
学習部145は、第二学習ステップ(学習ステップ数i=2)において、第一学習ステップと同様、時刻t2から時間Δta(例えば、5秒間)だけ、学習レギュレータ圧PPcsをバルブ指令演算部147に出力する。また、学習部145は、時刻t2から時間Δtaだけ、学習操作圧Pis(2)をバルブ指令演算部147に出力する。
【0126】
ここで、学習操作圧Pis(2)は、学習操作圧Pis(1)よりも上昇圧力ΔPis(例えば、0.05MPa)だけ高い圧力である(Pis(2)=Pis(1)+ΔPis)。
【0127】
学習部145は、学習ステップごとに学習操作圧Pis(i)を上昇圧力ΔPisだけ増加させる(Pis(i+1)=Pis(i)+ΔPis)。そして、第X学習ステップ(学習ステップ数i=x)において、平均シリンダ圧Pav(x)が圧力閾値Pta以下であると判定されると、学習部145は、このときに出力されている学習操作圧Pis(x)を学習結果操作圧Pisxとして記憶する。
【0128】
以上、ブーム上げの場合の学習手順について説明したが、ブーム下げ、アーム引き、アーム押し、バケット引き、及びバケット押しの場合の学習手順も同様である。つまり、全ての流量制御弁の各動作方向に対して同様の学習を行うことができる。なお、圧力閾値Ptaは、流量制御弁D1~D6の動作方向ごとに設定される。
【0129】
このように、本実施形態において、学習部145は、学習処理において、電磁弁55a~59bにより生成される操作圧を段階的に上昇させる過程で、油圧シリンダ5~7の出口側の圧力が基準値としての圧力閾値Pta以下になったときの学習操作圧Pis(i)を学習結果操作圧Pisxとして記憶する。記憶した学習結果操作圧Pisxは、補正処理で用いられる。
【0130】
-補正処理-
学習部145は、上記学習処理の結果に基づき、開口特性テーブルToの補正を行う。図13を参照して、開口特性テーブルToの補正処理の内容について詳しく説明する。図13は、開口特性テーブルToの補正方法について説明する図である。図13では、開口特性テーブルToの基準データ(設計データ)、すなわち補正前の開口特性テーブルを破線で示している。また、図13では、補正後の開口特性テーブルを実線で示している。
【0131】
学習部145には、メータアウト側のシリンダ圧が圧力閾値Ptaになるときの操作圧(設計値)Pita及び開口面積Adが記憶されている。操作圧(設計値)Pitaは、事前に机上計算あるいは試作機を用いた実験などにより定められる。操作圧(設計値)Pitaは、圧力閾値Ptaと同様、流量制御弁D1~D6の動作方向ごとに設定される。
【0132】
学習部145は、開口面積Adに対応する操作圧(設計値)Pitaの位置が学習結果操作圧Pisxの位置と一致するように開口特性テーブルToをオフセット補正する。別の言い方をすれば、学習部145は、学習結果操作圧Pisxと操作圧(設計値)Pitaとの差分(偏差)だけ、開口特性テーブルToをオフセットさせる。これにより、例えば、開口面積Adに紐づけられる操作圧がPitaからPisxに変更され、開口特性テーブルToが破線の特性から実線の特性へと補正される。
【0133】
学習処理及び補正処理の後、領域制限制御が実行された場合には、目標圧演算部146は、補正後の開口特性テーブルTo(図13の実線で示す特性)に基づいて、目標操作圧Pi1を演算し、バルブ指令演算部147に出力する。
【0134】
なお、上記学習処理は、工場出荷時、流量制御弁D1~D6のスプールの交換時、流量制御弁D1~D6の経年劣化に起因してスプールストロークが工場出荷時の特性からある程度変化したときなどに行うことが好ましい。これにより、長期に亘って、MCを精度よく行うことができる。
【0135】
-効果-
上述した第1実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0136】
(1)コントローラ40は、電磁弁55a~59bにより生成される操作圧を段階的に変化させるとともに、圧力センサ5a,5b,6a,6b,7a,7bによって検出された油圧シリンダ5~7の圧力を入力し、入力した油圧シリンダ5~7の圧力(平均シリンダ圧Pav)が予め定められた基準値Ptaになったときの操作圧Pisを記憶する学習処理を実行する。コントローラ40は、流量制御弁D1~D6の前後差圧ΔP(本実施形態では流量制御弁D1~D6のメータアウト通路部の前後差圧ΔPo)を算出する。コントローラ40は、算出された前後差圧ΔPと、流量制御弁D1~D6を通過する作動油の目標流量Qとに基づいて、流量制御弁D1~D6の目標開口面積Aを演算する。具体的には、コントローラ40は、算出された前後差圧ΔP(本実施形態ではメータアウト通路部の前後差圧ΔPo)と、流量制御弁D1~D6の流量係数C(本実施形態ではメータアウト通路部の流量係数Co)と、流量制御弁D1~D6を通過する作動油の目標流量Q(本実施形態ではメータアウト通路部を通過する作動油の目標流量Qout)とに基づいて、(式3)により(本実施形態では(式4)により)、流量制御弁D1~D6の目標開口面積A(本実施形態ではメータアウト通路部の目標開口面積Aout)を演算する。
【0137】
コントローラ40は、補正前の開口特性テーブルTo(図13の破線で示す特性)と、演算された目標開口面積A(本実施形態ではAout)と、学習処理において記憶された操作圧Pisである学習結果操作圧Pisxとに基づいて、電磁弁55a~59bにより生成する操作圧の目標値(目標操作圧)Pi1を演算する。本実施形態に係るコントローラ40は、学習結果操作圧Pisxに基づいて開口特性テーブルTo(図13の破線で示す特性)を補正し、補正された開口特性テーブルTo(図13の実線で示す特性)を参照し、目標開口面積A(本実施形態ではAout)に基づいて、操作圧の目標値Pi1を演算する。コントローラ40は、演算された操作圧の目標値Pi1に基づいて、電磁弁55a~59bを制御する。
【0138】
この構成によれば、学習及び補正により、流量制御弁D1~D6の製造誤差の影響を低減し、事前に試作機で使用していた流量制御弁の開口特性を再現して、流量制御弁D1~D6を制御することができる。その結果、領域制限制御などにおいて、バケット10の爪先(制御点)を精度よく動かすことができる。
【0139】
なお、油圧システムは、クローズドセンタシステムとしてもよいし、オープンセンタシステムとしてもよい。本実施形態に係るコントローラ40は、所定の目標流量によって油圧シリンダ5~7を動作させたい場合に、目標流量と油圧シリンダ5~7の負荷圧を考慮したオリフィスの式を用いて目標開口面積を演算する。このため、油圧システムにオープンセンタシステムを採用した場合であっても、軽負荷、重負荷など問わずに目標流量通りに油圧シリンダ5~7を動作させることができる。
【0140】
このように、本実施形態によれば、油圧システムの構成に関わらず、作業機械の個体差に起因した油圧シリンダの動作のバラつきが抑制され、高い精度で作業が可能な作業機械を提供することができる。
【0141】
(2)コントローラ40は、少なくとも、作業装置1Aの姿勢が学習開始姿勢であることを、学習処理を開始する条件の一つとしている。これにより、コントローラ40は、学習結果操作圧Pisxを適切に取得することができ、開口特性テーブルToを精度よく補正することができる。
【0142】
<第1実施形態の変形例>
上述では、コントローラ40は、1度の学習処理において、1つの流量制御弁(例えば、ブーム用の流量制御弁D3)を学習対象とする例について説明した。しかしながら、1度の学習処理において、複数の流量制御弁を学習対象としてもよい。油圧ショベル(作業機械)1は、複数の油圧シリンダ5~7のそれぞれに対応する複数の流量制御弁D1~D6と、複数の流量制御弁D3~D6のそれぞれを個別に制御可能な複数の電磁弁56a~59bとを備える。また、3つのメインポンプ201,202,203のそれぞれが個別にブームシリンダ5、アームシリンダ6及びバケットシリンダ7のそれぞれに対応する3つの流量制御弁(例えば、流量制御弁D6,D4,D3)に1対1で接続可能に構成されている。
【0143】
このため、コントローラ40は、学習処理において、複数の電磁弁(例えば、電磁弁56a,57a,59a)のそれぞれにより生成される複数の操作圧を同期的かつ段階的に変化させるとともに、圧力センサ5a,5b,6a,6b,7a,7bによって検出された複数の油圧シリンダ5~7の圧力を入力することができる。この場合、コントローラ40は、複数の油圧シリンダ5~7の圧力のそれぞれが複数の電磁弁(例えば、電磁弁56a,57a,59a)ごとに定められた基準値になったときの学習操作圧Pis(i)を、複数の電磁弁(例えば、電磁弁56a,57a,59a)ごとの学習結果操作圧として記憶する。
【0144】
例えば、第1メインポンプ201と流量制御弁D6、第2メインポンプ202と流量制御弁D4、及び、第3メインポンプ203と流量制御弁D3は、個別の油路を確保できる構成のため、同時に学習処理を実施することができる。同時に学習処理を実施することにより、短時間で多くの流量制御弁の学習処理を完了させることができる。
【0145】
<第2実施形態>
図2図6図14図17を参照して、本発明の第2実施形態に係る油圧ショベル1について説明する。なお、第1実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照記号を付し、相違点を主に説明する。第1実施形態では、コントローラ40が、メータアウト側の開口特性テーブルToを用いて目標操作圧Pi1を決定する例について説明した。これに対して、第2実施形態では、コントローラ40が、メータイン側の開口特性テーブルTiを用いて目標操作圧Pi1を決定する。
【0146】
また、第1実施形態では、学習処理において、コントローラ40が、油圧シリンダ5~7の圧力が予め定められた基準値Ptaになったときの学習操作圧Pis(i)を学習結果操作圧Pisxとして記憶する例について説明した。これに対して、第2実施形態では、学習処理において、コントローラ40が、油圧シリンダ5~7の圧力の時間変化率が予め定められた基準値になったときの学習操作圧Pis(i)を学習結果操作圧Pisxとして記憶する。
【0147】
-目標圧演算部-
図2及び図6に示すように、第2実施形態に係る目標圧演算部146は、流量制御弁D1~D6のメータイン通路部の前後差圧ΔPiを算出する。目標圧演算部146は、算出された前後差圧ΔPiと、流量制御弁D1~D6のメータイン通路部の流量係数Ciと、流量制御弁D1~D6のメータイン通路部を通過する作動油の目標流量Qinとに基づいて、以下のオリフィスの(式8)により、流量制御弁D1~D6のメータイン通路部の目標開口面積(以下、メータイン目標開口面積)Ainを演算する。
Ain=Qin/Ci√ΔPi …(式8)
つまり、本第2実施形態において用いられるオリフィスの(式8)は、(式3)のA,Q,C,ΔPのそれぞれをAin,Qin,Ci,ΔPiとしたものである。
【0148】
ここで、前後差圧ΔPiは、圧力センサ201b,202b,203bによって検出されるメインポンプ201,202,203の吐出圧(ポンプ圧)Ppから圧力センサ5a~7bによって検出される油圧シリンダ5~7のメータイン側の圧力Paiを減算することにより得られる(ΔPi=Pp-Pai)。
【0149】
目標流量Qinは、目標速度演算部144によって演算された油圧シリンダ5~7の目標速度を油圧シリンダ5~7のメータイン側の流量に変換することにより得られる。
【0150】
図14を参照して、流量制御弁D1~D6のメータイン通路部の開口特性の一例について説明する。図14は、流量制御弁D1~D6のメータイン通路部の開口線図であり、流量制御弁D1~D6の受圧室E1~E12に入力される操作圧と、流量制御弁D1~D6のメータイン通路部の開口面積との関係を示す。図14に示すように、電磁弁55a~59bにより生成される操作圧が増加するほど、流量制御弁D1~D6のメータイン通路部の開口面積は大きくなる。コントローラ40の不揮発性メモリ42には、操作圧と流量制御弁D1~D6の開口面積との関係を規定する開口特性テーブルTiが記憶されている。
【0151】
目標圧演算部146は、開口特性テーブルTiを参照し、メータイン目標開口面積Ainに基づき、目標操作圧Pi1を演算する。なお、本第2実施形態では、第1実施形態と同様、学習処理の結果に基づき開口特性テーブルTiが補正される。つまり、目標圧演算部146は、補正された開口特性テーブルTiを参照し、メータイン目標開口面積Ainに基づいて、目標操作圧Pi1を演算する。
【0152】
-学習処理-
図15を参照して、第2実施形態に係るコントローラ40により実行される学習処理の流れの一例について説明する。図15は、図9と同様の図であり、第2実施形態に係るコントローラ40により実行される学習処理の流れの一例について示すフローチャートである。図15のフローチャートでは、図9のフローチャートのステップS120,S130,S140,S150,S170の処理に代えて、ステップS220,S230,S240,S250,S270の処理が実行される。
【0153】
第1実施形態と同様、流量制御弁D1~D6のうち「流量制御弁D3」が学習対象の流量制御弁として選択され、流量制御弁の動作方向として「ブーム上げ方向」が選択されている場合を例に説明する。
【0154】
ステップS220において、表示制御部148は、表示装置53に操作指示画面を表示させる。操作指示画面には、「学習が終わるまで、ブーム操作レバーを上げ側に操作してください」といった操作指示が表示される。ステップS220において、操作指示画面が表示されると、処理がステップS230に進む。
【0155】
ステップS230において、オペレータにより電気操作レバー装置A1がブーム上げ側に操作されると、学習処理が開始され、電気操作レバー装置A1が操作されている間、学習部145は、学習レギュレータ圧PPcs及び学習操作圧Pis(i)をバルブ指令演算部147に出力するとともに、シリンダ圧の計測を行う。ここで、ブーム上げの学習時に計測されるシリンダ圧は、圧力センサ5bにより検出されるブームシリンダ5のメータイン側の圧力である。また、学習操作圧Pisは、ブーム上げ用の電磁弁56aの制御に用いられる学習操作圧PiBM3Usである。
【0156】
学習レギュレータ圧PPcsは、第3メインポンプ203の第3レギュレータ203aの制御に用いられる学習レギュレータ圧PPc203sである。学習部145が学習レギュレータ圧PPc203sをバルブ指令演算部147に出力することにより、第3メインポンプ203からある一定以上の流量Qcの作動油が吐出される。
【0157】
ステップS230において、学習レギュレータ圧及び学習操作圧の出力、並びにシリンダ圧の測定が開始されると、ステップS240において、学習部145は、ステップS230で計測されたシリンダ圧に基づいて、メータイン側のシリンダ圧の増加率ΔPx(i)を演算し、処理をステップS250に進める。シリンダ圧の増加率ΔPx(i)とは、単位時間当たりのシリンダ圧の増加量、すなわちシリンダ圧の時間変化率のことを指す。
【0158】
ステップS250において、学習部145は、ステップS240で演算されたシリンダ圧の増加率ΔPx(i)が予め定められた増加率閾値ΔPta以上であるか否かを判定する。なお、増加率閾値ΔPtaは、第3メインポンプ203から流量Qcの作動油が吐出され、ブーム上げ用の学習開始姿勢から流量制御弁D3のメータイン通路部(開口)が開き始めたときのブームシリンダ5の圧力の時間変化率に相当する。増加率閾値ΔPtaは、シリンダ圧の時間変化率の基準値(設計値)であり、事前に机上計算あるいは試作機を用いた実験などに基づいて定められ、流量制御弁D3の開き始めを検出するために用いられる。
【0159】
ステップS250において、シリンダ圧の増加率ΔPx(i)が増加率閾値ΔPta未満であると判定されると、学習部145は、ブームシリンダ5の圧力の時間変化率は基準値(ΔPta)になっていないと判定して処理をステップS160に進める。
【0160】
ステップS160において、第1実施形態と同様、学習部145は、学習操作圧Pis(i)に所定の上昇圧力ΔPisを加算することにより、次の学習において用いる学習操作圧Pis(i+1)を演算し、処理をステップS270に進める。ステップS270において、学習部145は、学習ステップ数iに1を加算して、新たなiとするカウントアップ処理を行い、ステップS230に戻る。
【0161】
ステップS250において、シリンダ圧の増加率ΔPx(i)が増加率閾値ΔPta以上であると判定されると、学習部145は、ブームシリンダ5の圧力の時間変化率は基準値(ΔPta)になったと判定して処理をステップS180に進める。ステップS180において、学習部145は、ブームシリンダ5の圧力の時間変化率が基準値(ΔPta)になったときの学習操作圧Pis(i)を学習結果操作圧Pisxとして記憶し、図15のフローチャートに示す処理を終了する。
【0162】
図16は、学習部145からバルブ指令演算部147に出力される学習レギュレータ圧及び学習操作圧と、圧力センサ5a~7bにより検出されるメータイン側のシリンダ圧の時間変化について示す図である。図16に示すように、学習部145は、時刻t1から学習レギュレータ圧PPcsをバルブ指令演算部147に出力する。
【0163】
学習部145は、第一学習ステップ(学習ステップ数i=1)において、時刻t1から予め定められた所定時間Δtb(例えば、3秒間)だけ、学習操作圧Pis(1)をバルブ指令演算部147に出力する。
【0164】
シリンダ圧は、流量制御弁D3からの僅かなリーク(漏れ)に起因して時刻t1から上昇し始める。学習部145は、時刻t1から時刻t2までのシリンダ圧の増加率ΔPx(1)を演算する。
【0165】
シリンダ圧の増加率ΔPx(1)が増加率閾値ΔPta未満の場合には、第一学習ステップから第二学習ステップに移行する。なお、第2実施形態では、オペレータにより一度の電気操作レバー装置A1のブーム上げ操作が行われている間において、学習ステップ数が増加する。
【0166】
学習部145は、第二学習ステップ(学習ステップ数i=2)において、第一学習ステップと同様、時刻t2から所定時間Δtb(例えば、3秒間)だけ、学習操作圧Pis(2)をバルブ指令演算部147に出力する。
【0167】
ここで、学習操作圧Pis(2)は、学習操作圧Pis(1)よりも上昇圧力ΔPis(例えば、0.05MPa)だけ高い圧力である(Pis(2)=Pis(1)+ΔPis)。
【0168】
学習部145は、学習ステップごとに学習操作圧Pis(i)を上昇圧力ΔPisだけ増加させる(Pis(i+1)=Pis(i)+ΔPis)。そして、第X学習ステップ(学習ステップ数i=x)において、シリンダ圧の増加率ΔPx(x)が増加率閾値ΔPta以上であると判定されると、学習部145は、このときに出力されている学習操作圧Pis(x)を学習結果操作圧Pisxとして記憶する。
【0169】
以上、ブーム上げの場合の学習手順について説明したが、ブーム下げ、アーム引き、アーム押し、バケット引き、及びバケット押しの場合の学習手順も同様である。つまり、全ての流量制御弁の各動作方向に対して同様の学習を行うことができる。なお、増加率閾値ΔPtaは、流量制御弁D1~D6の動作方向ごとに設定される。
【0170】
このように、本実施形態において、学習部145は、学習処理において、電磁弁55a~59bにより生成される操作圧を段階的に上昇させる過程で、油圧シリンダ5~7の入口側の圧力の増加率が基準値としての増加率閾値ΔPta以上になったときの学習操作圧Pis(i)を学習結果操作圧Pisxとして記憶する。記憶した学習結果操作圧Pisxは、補正処理で用いられる。
【0171】
-補正処理-
学習部145は、上記学習処理の結果に基づき、開口特性テーブルTiの補正を行う。図17を参照して、開口特性テーブルTiの補正処理の内容について詳しく説明する。図17は、開口特性テーブルTiの補正方法について説明する図である。図17では、開口特性テーブルTiの基準データ(設計データ)、すなわち補正前の開口特性テーブルを破線で示している。また、図17では、補正後の開口特性テーブルを実線で示している。
【0172】
学習部145には、メータイン側のシリンダ圧の増加率が増加率閾値ΔPtaになるときの操作圧(設計値)Pitaが記憶されている。操作圧(設計値)Pitaは、事前に机上計算あるいは試作機を用いた実験などにより定められる。操作圧(設計値)Pitaは、増加率閾値ΔPtaと同様、流量制御弁D1~D6の動作方向ごとに設定される。
【0173】
学習部145は、流量制御弁D1~D6の開き始めの操作圧(設計値)Pitaの位置が学習結果操作圧Pisxの位置と一致するように開口特性テーブルTiをオフセット補正する。別の言い方をすれば、学習部145は、学習結果操作圧Pisxと操作圧(設計値)Pitaとの差分(偏差)だけ、開口特性テーブルTiをオフセットさせる。これにより、流量制御弁D1~D6の開き始めの操作圧がPitaからPisxに変更され、開口特性テーブルTiが破線の特性から実線の特性へと補正される。
【0174】
学習処理及び補正処理の後、領域制限制御が実行された場合には、目標圧演算部146は、補正後の開口特性テーブルTi(図17の実線で示す特性)に基づいて、目標操作圧Pi1を演算する。このように、本第2実施形態では、コントローラ40は、補正前の開口特性テーブルTiと、演算された目標開口面積Ainと、学習結果操作圧Pisxとに基づいて、電磁弁55a~59bにより生成する操作圧の目標値(目標操作圧)Pi1を演算する。コントローラ40は、操作圧の目標値Pi1に基づいて、電磁弁55a~59bを制御する。
【0175】
-効果-
このような第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0176】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、上述の異なる実施形態で説明した構成同士を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせることも可能である。
【0177】
<変形例1>
図18を参照して、本発明の実施形態の変形例1について説明する。図18は、図9と同様の図であり、変形例1に係るコントローラ40により実行される学習処理の流れの一例について示すフローチャートである。油圧シリンダ5~7のメータイン側の圧力、及びメータアウト側の圧力は、作動油の温度によって変化する。このため、本変形例に係るコントローラ40は、作動油の温度が予め定められた温度閾値以上である場合に限り、学習処理を実行する。
【0178】
図18のフローチャートでは、図9のフローチャートのステップS105の後にステップS307の処理が追加されている。図18に示すように、学習部145は、ステップS307において、温度センサ19により検出される作動油の温度Teが、温度閾値Tte以上であるか否かを判定する。温度閾値Tteは、不揮発性メモリ42に予め記憶されている。
【0179】
ステップS307において、作動油の温度Teが温度閾値Tte以上であると判定されると、処理がステップS110に進む。ステップS307の判定処理は、肯定判定されるまで所定の制御周期で繰り返し実行される。ステップS110において、学習部145は、第1実施形態と同様、作業装置1Aの姿勢が学習開始姿勢であるか否かを判定する。ステップS110において、作業装置1Aの姿勢が学習開始姿勢でないと判定されると、処理がステップS307に戻る。
【0180】
このように、本変形例では、作業装置1Aの姿勢が学習開始姿勢であること、及び、作動油の温度Teが温度閾値Tte以上であることを、学習処理を開始する条件としている。このように、少なくとも、作動油の温度Teが温度閾値Tte以上であることを、学習処理(S130~S180)を開始する条件の一つとすることにより、作動油の温度Teが温度閾値Tte未満であるときに、学習処理が行われることが防止される。これにより、領域制限制御での作業精度の向上を図ることができる。なお、第1実施形態において、作動油温度の判定処理(S307)を追加する例について説明したが、第2実施形態において、作動油温度の判定処理(S307)を追加してもよい。
【0181】
<変形例2>
上記実施形態で説明した3ポンプシステムでは、3つのメインポンプ201,202,203と、3つの油圧シリンダに対応する3つの流量制御弁とを1対1で個別に接続することが可能である。このため、例えば、第2実施形態において、姿勢を一定に保つようシリンダエンドでの姿勢で学習を開始する場合、相互に分流や負荷の影響が出にくいため、複数の流量制御弁を同時に学習することが可能となる。例えば、第1メインポンプ201と流量制御弁D6、第2メインポンプ202と流量制御弁D4、及び、第3メインポンプ203と流量制御弁D3は、個別の油路を確保できる構成であるため、これらを一度の学習処理における学習対象とすることができる。
【0182】
コントローラ40は、学習処理において、複数の油圧シリンダ5~7の圧力の時間変化率のそれぞれが複数の電磁弁(例えば、電磁弁56a,57a,59a)ごとに定められた基準値になったときの操作圧Pis(i)を、複数の電磁弁(例えば、電磁弁56a,57a,59a)ごとの学習結果操作圧として記憶する。同時に複数の流量制御弁の学習処理を実施することにより、短時間で多くの流量制御弁の学習処理を完了させることができる。
【0183】
また、油圧システムは、3ポンプシステムとする場合に限定されない。例えば、図19に示すような2ポンプシステムでも同様の学習が可能である。ただし、2ポンプシステムの場合はブーム8、アーム9、バケット10の3複合動作を実施すると、第1メインポンプ201から吐出される作動油は、流量制御弁D1と流量制御弁D6に分流が生じるため、同時に学習することができない。
【0184】
<変形例3>
油圧システムの構成は、図2及び図19に示した例に限定されない。油圧シリンダ5~7から排出される作動油が、複数の流量制御弁を通過してタンクに戻る油圧システムを備えた油圧ショベル1に本発明を適用してもよい。例えば、図20に示す油圧システムは、ブームシリンダ5に供給される作動油の流量を制御する流量制御弁として、第1流量制御弁D1と第2流量制御弁D2とを備える。第1流量制御弁D1及び第2流量制御弁D2は、ブームシリンダ5のロッド室から排出される作動油が、第1流量制御弁D1及び第2流量制御弁D2を通過するように構成されている。つまり、この油圧システムでは、ブーム上げ動作時に、ブームシリンダ5のロッド室から排出される作動油が、第1流量制御弁D1及び第2流量制御弁D2を通じてタンクに流れるメータアウト流路が形成される。
【0185】
この構成において、第2流量制御弁D2を学習対象とする場合、コントローラ40は、学習処理において、第1流量制御弁D1を開口させた状態で、第2流量制御弁D2に対応する電磁弁56aにより生成される操作圧を段階的に上昇させる。例えば、コントローラ40は、第1流量制御弁D1のメータアウト通路部を最大開口面積で保持するための一定の指令(電気信号)を出力しておく。この状態で、コントローラ40は、電磁弁56aにより生成する操作圧を段階的に上昇させる学習処理を実行する。コントローラ40は、電磁弁56aにより生成される操作圧を段階的に上昇させる過程で、圧力センサ5aにより検出されるブームシリンダ5の出口側の圧力が基準値としての圧力閾値Pta以下になったときの学習操作圧Pis(i)を学習結果操作圧Pisxとして記憶する。これにより、流量制御弁D2のメータアウト通路部の開口特性を学習し、開口特性テーブルToを補正することができる。
【0186】
<変形例4>
上記実施形態では、開口特性テーブルTo,Tiを補正する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。コントローラ40は、開口特性テーブル(基準データ)Tを参照し、目標開口面積Aに基づいて、操作圧の目標値である目標操作圧を演算し、演算された目標操作圧を学習結果操作圧に基づいて補正してもよい。
【0187】
図21は、目標圧演算部446の制御ブロック線図であり、目標操作圧の補正方法について示す。図21に示すように、目標圧演算部446は、流量制御弁のメータイン通路部もしくはメータアウト通路部の目標開口面積Aに対して、マイナスの値を取らないように、目標開口面積Aと0[mm]の最大値を選択する(L101)。目標圧演算部446は、不揮発性メモリ42に記憶されている開口特性テーブルT(基準データ)を参照し、目標開口面積Aに基づいて目標操作圧を演算する(L102)。目標圧演算部446は、演算した目標操作圧に対し、操作圧(設計値)Pitaと学習結果操作圧Pisxとの差分(Pita-Pisx)を加算した値を、補正後の目標操作圧として出力する。バルブ指令演算部147は、補正された目標操作圧に基づいて、電磁弁55a~59bを制御する。この構成によれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0188】
<変形例5>
上記実施形態では、学習処理において出力される学習レギュレータ圧PPcs及び学習操作圧Pis(i)がステップ波形状である例(図12図16参照)について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。学習レギュレータ圧PPcs及び学習操作圧Pis(i)の立ち上がり、及び立ち下がりをなだらかに変化させてもよい。これにより、学習時における油圧ショベル1のショックを軽減できる。
【0189】
<変形例6>
第1実施形態、第2実施形態ともに、学習レギュレータ圧に対応するメインポンプ201,202,203の吐出流量の目標流量(設計値)Qcに対するバラつきは、小さい方が学習の精度がよくなる。このため、メインポンプ201,202,203の吐出流量に対するレギュレータ圧の較正を行ってから、流量制御弁D1~D6の目標開口面積に対する目標操作圧の較正(学習及び補正)を行うことが好ましい。メインポンプ201,202,203の吐出流量が、目標流量(設計値)Qcに対してばらついた場合、計測されるシリンダ圧もばらついてしまい、狙いの圧力(圧力閾値)Ptaに対応する開口面積が得られているのかが分からなくなってしまう。このため、メインポンプ201,202,203の吐出流量がほぼ設計値通りに作動油を吐出している状態にした上で、流量制御弁D1~D6に対して学習処理を実施することが望ましい。
【0190】
<変形例7>
コントローラ40は、第1実施形態で説明した学習処理と、第2実施形態で説明した学習処理の双方を実行可能な構成としてもよい。これにより、油圧シリンダ5~7の動き始めの領域では、第2実施形態の補正後の開口特性テーブルTiを使用して目標操作圧Pi1を演算し、ある程度流量制御弁を開いた領域では、第1実施形態の補正後の開口特性テーブルToを使用して目標操作圧Pi1を演算してもよい。これにより、油圧シリンダ5~7が動き始めるとき、及び、領域制限制御での使用頻度の高い速度領域での作業装置1Aの動作の精度を向上することができる。
【0191】
<変形例8>
上記実施形態では、学習処理において、学習操作圧Pis(i)を段階的に上昇させる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。第1実施形態において、コントローラ40は、学習操作圧Pis(i)を段階的に下降させてもよい。この場合、コントローラ40は、学習操作圧Pis(i)を段階的に下降させる過程で、油圧シリンダの出口側の圧力が基準値としての圧力閾値Pta以上になったときの学習操作圧Pis(i)を学習結果操作圧Pisxとして記憶すればよい。
【0192】
また、第2実施形態において、コントローラ40は、学習操作圧Pis(i)を段階的に下降させてもよい。この場合、コントローラ40は、学習操作圧Pis(i)を段階的に下降させる過程で、油圧シリンダの入口側の圧力の時間変化率(<0)が基準値としての時間変化率閾値以下になったときの学習操作圧Pis(i)を学習結果操作圧Pisxとして記憶すればよい。ここで用いられる時間変化率閾値は、流量制御弁が閉じ始めたときの油圧シリンダの圧力の時間変化率に相当する。時間変化率閾値は、シリンダ圧の時間変化率の基準値(設計値)であり、事前に机上計算あるいは試作機を用いた実験などに基づいて定められ、流量制御弁の閉じ始めを検出するために用いられる。
【0193】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0194】
1…油圧ショベル(作業機械)、1A…作業装置、1B…車体、5…ブームシリンダ(油圧シリンダ)、5a,5b…圧力センサ、6…アームシリンダ(油圧シリンダ)、6a,6b…圧力センサ、7…バケットシリンダ(油圧シリンダ)、7a,7b…圧力センサ、8…ブーム(駆動対象部材)、9…アーム(駆動対象部材)、10…バケット(駆動対象部材)、11…走行体、12…旋回体、14…車体位置検出装置、14a,14b…GNSSアンテナ、15…制御弁ユニット、18…エンジン、19…温度センサ、21…制御システム、30…ブーム角度センサ(角度センサ、姿勢センサ)、31…アーム角度センサ(角度センサ、姿勢センサ)、32…バケット角度センサ(角度センサ、姿勢センサ)、33…車体傾斜角度センサ(角度センサ、姿勢センサ)、40…コントローラ、41…処理装置、42…不揮発性メモリ、43…揮発性メモリ、48…パイロットポンプ、50…姿勢検出装置、51…目標面設定装置、53…表示装置、53a…学習開始姿勢画面、55a,55b,56a,56b,57a,57b,58a,58b,59a,59b…電磁弁、96…外部入力装置、141…操作量演算部、142…姿勢演算部、143…目標面演算部、144…目標速度演算部、145…学習部、146…目標圧演算部、147…バルブ指令演算部、148…表示制御部、149…電磁弁制御部、170…吐出配管、201…第1メインポンプ(油圧ポンプ)、201a…第1レギュレータ、201b…圧力センサ、202…第2メインポンプ(油圧ポンプ)、202a…第2レギュレータ、202a…レギュレータ、202b…圧力センサ、203…第3メインポンプ(油圧ポンプ)、203a…第3レギュレータ、203b…圧力センサ、446…目標圧演算部、A…目標開口面積、A1,A2,A3…電気操作レバー装置(操作装置)、Ain…メータイン目標開口面積(目標開口面積)、Aout…メータアウト目標開口面積(目標開口面積)、D1…流量制御弁(第1流量制御弁)、D2…流量制御弁(第2流量制御弁)、D3~D6…流量制御弁、Pai…油圧シリンダのメータイン側の圧力(シリンダ圧)、Pao…油圧シリンダのメータアウト側の圧力(シリンダ圧)、Pav…平均シリンダ圧(シリンダ圧の平均値)、Pb…バケットの先端位置(作業装置の制御点の位置)、Pi0…操作量操作圧(操作量に応じた操作圧の目標値)、Pi1…目標操作圧(目標速度に応じた操作圧の目標値)、Pis…学習操作圧(学習処理において演算される操作圧の目標値)、Pisx…学習結果操作圧、Pita…操作圧(設計値)、Pp…吐出圧(ポンプ圧)、PPc201,PPc202,PPc203…目標レギュレータ圧、PPcs…学習レギュレータ圧、Pt…タンク圧、Pta…圧力閾値(基準値)、Q,Qin,Qout…目標流量、St…掘削目標面、T,Ti,To…開口特性テーブル、Tte…温度閾値、ΔP,ΔPi,ΔPo…前後差圧、ΔPta…増加率閾値(基準値)、ΔPx…増加率
図1
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