(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】粉末供給システム
(51)【国際特許分類】
B05C 19/06 20060101AFI20240930BHJP
B05B 7/24 20060101ALI20240930BHJP
C23C 4/12 20160101ALI20240930BHJP
【FI】
B05C19/06
B05B7/24
C23C4/12
(21)【出願番号】P 2024534318
(86)(22)【出願日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 JP2024008658
【審査請求日】2024-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2023050026
(32)【優先日】2023-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 正樹
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-118848(JP,A)
【文献】特開昭55-151426(JP,A)
【文献】特開2007-075814(JP,A)
【文献】特開2014-172696(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107057769(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 19/06
B05B 7/24
C23C 4/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜装置に供給する粉末を貯蔵するホッパーと、
前記ホッパーに接続され、前記ホッパー内との圧力差を一定に保ちながら、前記ホッパー内に前記粉末を補給する粉末補給機と、
前記ホッパー内および前記粉末補給機内の圧力が一定になるように、前記ホッパー内の圧力と、前記粉末補給機内の圧力とを調整可能な圧力調整機構と、
前記ホッパー内と前記粉末補給機内とを繋ぐ部分に設置された開閉弁とを備える、粉末供給システム。
【請求項2】
前記開閉弁は、前記粉末補給機内から前記ホッパー内への前記粉末の補給時に、前記ホッパー内と前記粉末補給機内とが連続するよう開通された第1の状態となり、前記粉末補給機内への前記粉末の補充時に、前記ホッパー内と前記粉末補給機内とが遮断された第2の状態となる、請求項1に記載の粉末供給システム。
【請求項3】
前記第1の状態と前記第2の状態との間の切り替え前後において、前記ホッパー内の圧力は一定である、請求項2に記載の粉末供給システム。
【請求項4】
前記圧力調整機構は、前記ホッパー内および前記粉末補給機内に気体を流すことにより、前記ホッパー内の圧力と、前記粉末補給機内の圧力を制御する、請求項1または2に記載の粉末供給システム。
【請求項5】
前記粉末補給機内に前記粉末を補充する粉末補充機構をさらに備える、請求項1または2に記載の粉末供給システム。
【請求項6】
前記粉末補給機を振動させる振動機構をさらに備える、請求項5に記載の粉末供給システム。
【請求項7】
前記ホッパーには、前記粉末を出力可能な粉末貯蔵部が含まれ、
前記粉末貯蔵部は、水平方向の寸法が、前記ホッパーの前記粉末貯蔵部を除く部分のうち鉛直方向の最下部の水平方向の寸法よりも大きい、請求項1または2に記載の粉末供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特開2007-75814号公報(特許文献1)には、粉末を供給される装置の作動を中断することなく、貯蔵容器内への粉末の補給が可能な、溶射用の粉末供給システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2007-75814号公報の装置によれば、貯蔵容器内には常時、必要最小限の量の粉末が収納された状態となる。このため対象物への粉末の供給が連続的に可能となる。しかしながら、粉末を対象物へ連続的に供給すれば、供給量が時間変化する可能性がある。
【0005】
また粉末の供給される量および質を時間変化なく安定させる観点から、たとえば貯蔵容器内のガスによる圧力を常時一定にすることが好ましい。溶射中に、粉末供給システムの外部から、粉末を補給することは困難である。特開2007-75814号公報では、主容器の外部から粉末を補給すること、および容器内の圧力について考慮されていない。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みなされたものである。その目的は、時間的に連続して粉末を安定に供給可能な粉末供給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に従った粉末供給システムは、ホッパーと、粉末補給機と、圧力調整機構と、開閉弁とを備える。ホッパーは、成膜装置に供給する粉末を貯蔵する。粉末補給機は、ホッパーに接続され、ホッパー内との圧力差を一定に保ちながら、ホッパー内に粉末を補給する。圧力調整機構は、ホッパー内および粉末補給機内の圧力が一定になるように、ホッパー内の圧力と、粉末補給機内の圧力とを調整可能である。開閉弁は、ホッパー内と粉末補給機内とを繋ぐ部分に設置されている。
【発明の効果】
【0008】
上記によれば、時間的に連続して粉末を安定に供給可能な粉末供給システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係る成膜装置の構成を示す模式図である。
【
図2】本実施の形態に係る粉末供給システムの構成を示す模式図である。
【
図3】粉末補充機構および粉末容器を示す概略図である。
【
図4】本実施の形態に係る粉末供給システムの粉末供給時および粉末補給時での一連の工程と、各構成部材の状態とを示す一覧表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態を説明する。なお、同一の構成には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0011】
<成膜装置の構成>
図1は、本実施の形態に係る成膜装置の構成を示す模式図である。
図1を参照して、成膜装置100は、ノズル2bを含むスプレーガン2と、粉末供給部3と、ガス供給部4と、マスク治具1とを主に備える。
【0012】
スプレーガン2は、スプレーガン本体部2aと、ノズル2bと、ヒータ2cと、温度センサ9とを主に含む。スプレーガン本体部2aの先端側である第1端にはノズル2bが接続されている。スプレーガン本体部2aの後端側である第2端には配管6が接続されている。当該配管6はバルブ7を介してガス供給部4に接続されている。ガス供給部4は、配管6を介してスプレーガン2に動作ガスを供給する。バルブ7を開閉することで、ガス供給部4からスプレーガン2に対する動作ガスの供給状態を制御できる。配管6には圧力センサ8が設置されている。圧力センサ8はガス供給部4から配管6に供給される動作ガスの圧力を測定する。
【0013】
スプレーガン本体部2aの第2端からスプレーガン本体部2aの内部に供給される動作ガスは、ヒータ2cにより加熱される。ヒータ2cはスプレーガン本体部2aの第2端側に配置されている。スプレーガン本体部2aの内部を矢印31に沿って動作ガスが流れる。ノズル2bとスプレーガン本体部2aとの接続部に温度センサ9が接続されている。温度センサ9はスプレーガン本体部2aの内部を流れる動作ガスの温度を測定する。
【0014】
ノズル2bには配管5が接続されている。配管5は粉末供給部3に接続されている。粉末供給部3は、配管5を介してスプレーガン2のノズル2bに成膜原料となる粉末を供給する。
【0015】
マスク治具1は、基材20とスプレーガン2との間に配置される。マスク治具1には貫通孔1aが形成されている。貫通孔1aは基材20の表面における成膜領域を規定する。
【0016】
<成膜装置の動作>
図1に示した成膜装置100では、矢印30に示すようにガス供給部4から配管6を介して動作ガスがスプレーガン2に供給される。動作ガスとしては、たとえば窒素、ヘリウム、ドライエアまたはそれらの混合物を用いることができる。動作ガスの圧力はたとえば1MPa程度である。動作ガスの流量はたとえば300L/分以上500L/分以下である。スプレーガン本体部2aの第2端に供給された動作ガスは、ヒータ2cによって加熱される。動作ガスの加熱温度は、成膜原料の組成に応じて適宜設定されるが、たとえば100℃以上500℃以下とすることができる。スプレーガン本体部2aからノズル2bに動作ガスは流れる。ノズル2bには、配管5を介して粉末供給部3から矢印32に示すように成膜原料となる粉末10が供給される。粉末10としては、たとえばアルミニウムの粉末が用いられる。
【0017】
ノズル2bに供給された粉末10は、動作ガスとともにノズル2bの先端から基材20に向けて噴射される。基材20の表面にはマスク治具1が配置されている。噴射された粉末10はマスク治具1の貫通孔1aを介して基材20の表面に到達する。基材20の表面では、噴射された粉末10を原料とする膜が形成される。
【0018】
<粉末供給システムについて>
図2は、本実施の形態に係る粉末供給システムの構成を示す模式図である。なお
図2では、説明の便宜のため、互いに直交するX方向、Y方向、Z方向が導入されている。X方向は
図2での左右方向であり、Y方向は
図2での紙面奥行方向である。X方向およびY方向は
図2において水平方向である。Z方向は
図2での上下方向であり、鉛直方向である。
図2を参照して、ここに示す粉末供給システム200は、
図1の粉末供給部3を含んでいる。言い換えれば、
図1中の粉末供給部3を点線で囲んだ領域IIは、
図2の粉末供給システム200の一部である。粉末供給システム200は、
図2中に点線で囲まれた領域に相当する。粉末供給システム200は、ホッパー3aと、粉末補給機21と、圧力調整機構22と、開閉弁23とを備えている。
【0019】
ホッパー3aは、たとえば容量が12リットルの、粉末10(
図1参照:以下同じ)を収納可能な容器である。ホッパー3aは、内壁面がZ方向に対して傾斜していてもよい。つまりホッパー3aは、Z方向の上側よりも下側の領域において、Z方向に直交する断面積が小さくなってもよい。これによりホッパー3aの内部に補給された粉末は容易に下方に移動できる。
【0020】
ホッパー3aには、粉末貯蔵部3bが含まれてもよい。粉末貯蔵部3bは、粉末をホッパー3aの外側に出力可能である。粉末貯蔵部3bは、ホッパー3aのZ方向下側に配置される。粉末貯蔵部3bは、ホッパー3aと一体(同一部材の一部)であってもよいし、ホッパー3aとは別部材であってもよい。なお両者が別部材であっても、本明細書では、粉末貯蔵部3bはホッパー3aの一部(粉末貯蔵部3bはホッパー3aに含まれる)と考える。上記のいずれの場合においても、ホッパー3aと粉末貯蔵部3bとを合わせて、
図1の粉末供給部3となる。ホッパー3aと粉末貯蔵部3bとは内壁面が連続している。このため粉末供給部3全体として、1つの粉末を収納可能な部分(内壁面の内側の空間部分)を形成している。粉末供給部3(粉末貯蔵部3bまたはそれ以外のホッパー3aの部分)は、配管5を介して、スプレーガン2のノズル2bに接続される。
図2の粉末供給部3、配管5、スプレーガン2は、
図1の粉末供給部3、配管5、スプレーガン2に相当する。
【0021】
粉末貯蔵部3bの水平方向(X方向およびY方向)の寸法は、ホッパー3aの粉末貯蔵部3bを除く部分のうち鉛直方向(Z方向)の最下部の水平方向の寸法よりも大きい。粉末供給部3(ホッパー3a)では粉末貯蔵部3bにて平面積が大きいことにより、ホッパー3a内の粉末が下流側(ノズル2b側)にスムーズに流れるよう、広い間口での保管ができる。
【0022】
粉末補給機21は、たとえば配管5Aにより、ホッパー3aに接続されている。粉末補給機21は、粉末供給システム200において、ホッパー3aを含む粉末供給部3に対して粉末が出入りする流れの上流側に配置される。
【0023】
ホッパー3aおよび粉末補給機21は、圧力調整機構22に接続される。圧力調整機構22は、ホッパー3a内の圧力と、粉末補給機21内の圧力とが、たとえば時間変化せず一定となるように、ホッパー3a内の圧力と、粉末補給機21内の圧力とを調整可能である。なおここでの圧力が一定とは、厳密に圧力が時間的に変化せずまったく同一の値である場合に限らず、圧力の時間変化量が、圧力の平均値に対して±10%以内である場合を含むものとする。このことは以降においても同様である。
【0024】
圧力調整機構22は、圧力調整機構本体22a(以下「本体22a」)と、加圧配管22bとを含む。本体22aは、空気などの気体を供給(たとえばホッパー3a内への補給)する部分である。加圧配管22bは、本体22a内とホッパー3a内とを接続する配管と、本体22a内と粉末補給機21内とを接続する配管との2本配置されてもよい。すなわち圧力調整機構22は、ホッパー3a内および粉末補給機21内への気体の供給源である。
【0025】
本体22aは、ホッパー3aと繋がるものと粉末補給機21と繋がるものとが一体(同一物)であってもよいし、別体(別の物)であってもよい。すなわちホッパー3aに繋がる本体22aと粉末補給機21に繋がる本体22aとの2台を有してもよいし、1台のみの本体22aを有してもよい。
【0026】
本体22aから加圧配管22bを介して、
図2中の矢印Fで示すように、ホッパー3a内に気体が供給(補給)され、かつ粉末補給機21内に気体が供給(補充)される。本体22aから供給される気体の流量が時々刻々調整される。この流れ込む気体により、本体22aは、ホッパー3a内の圧力と、粉末補給機21内の圧力とを、たとえば時間変化せず一定になるように制御する。圧力調整機構22は、送る気体の流量を調整することで、ホッパー3a内および粉末補給機21内の圧力を調整できる。具体的には、圧力調整機構22は、たとえば流量を一定にしたり、流量を増加または減少させたりできる。粉末補給機21内およびホッパー3a内の圧力は、気体の流入量と流出量とが等しくなるよう制御されることにより、時間変化せず一定の状態となる。
【0027】
開閉弁23は、ホッパー3a内と粉末補給機21内とを繋ぐ部分である配管5Aに設置されている。開閉弁23は、配管5Aにおける気体などの流通可能状態と、流通できない状態とを切り替える。すなわち開閉弁23は、粉末補給機21内からホッパー3a内へ粉末を補う補給時に、ホッパー3a内と粉末補給機21内とが連続するよう開通(接続)されたオン状態となる。この状態が第1の状態である。また開閉弁23は、粉末補給機21内へ粉末を補う補充時に、ホッパー3a内と粉末補給機21内とが遮断されたオフ状態となる。この状態が第2の状態である。
【0028】
以上述べたように、粉末供給システム200は、ホッパー3a(粉末供給部3)に粉末が出入りする流れの上流側から下流側へ、粉末補給機21、配管5A(開閉弁23)、ホッパー3a(粉末供給部3)、配管5、ノズル2b(スプレーガン2)の順に部材が配置される。
図2においては概ね左側から右側へ、粉末を流す構成となっている。
【0029】
開閉弁23が開通(接続)された状態においては、粉末補給機21は、ホッパー3a内に粉末を補給する。これはホッパー3a内と粉末補給機21内との圧力差を一定に保ちながら、粉末補給機21内からホッパー3a内に気体を含む粉末が補給されることでなされる。なおここでの圧力差が一定とは、厳密に圧力差が時間的に変化せずまったく同一の値である場合に限らず、圧力差の時間変化量が、ホッパー3aの圧力の平均値に対して±10%以内である場合を含むものとする。このことは以降においても同様である。
【0030】
開閉弁23が開通(接続)された状態、たとえば配管5Aに気体が流れる第1の状態では、ホッパ-3a内の圧力および粉末補給機21内の圧力が一定に保たれる。このため、両者の圧力差は一定に保たれる。第1の状態では、粉末補給機21内の一定の圧力値がホッパー3a内の一定の圧力値よりも大きい。この状態を維持しながら、粉末補給機21内から配管5Aを介してホッパー3a内へ粉末が流される。
【0031】
一方、開閉弁23が閉じられた(遮断された)状態(たとえば配管5Aに気体が流れない第2の状態)においては、粉末補給機21内の圧力とホッパー3a内の圧力差が、第1の状態での圧力差と同じ値である必要はない。
【0032】
開閉弁23の状態にかかわらず、粉末補給機21内には加圧配管22bにより気体が補充されてもよい。ホッパー3a内には加圧配管22bにより気体が補給可能であってもよい。開閉弁23の状態にかかわらず、溶射工程の原理上、ノズル2b内には、ホッパー3a内よりも圧力が低くなるように負圧が発生する。この負圧により、矢印32のように、ホッパー3a内の気体および粉末は配管5を介してノズル2b側に引き込まれるように流れる。この気体が成膜装置100(
図1参照)の動作ガスとして機能する。負圧は、開閉弁23の状態にかかわらず、時間変動が少ない。このため、ホッパー3a内の一定の圧力値により、ノズル2b内とホッパー3a内との圧力差はほぼ一定に保たれる。特にホッパー3a内の圧力値が大気圧よりも大きいことが好ましい。このようにすれば、負圧を利用してホッパー3aからノズル2bへの気体および粉末の流通がスムーズになる。
【0033】
その他、粉末供給システム200は、粉末補充機構24をさらに備えてもよい。粉末補充機構24は、粉末補給機21内に粉末を補充するための治具などの部材である。
【0034】
図3は、粉末補充機構および粉末容器を示す概略図である。
図3においても、図の上下方向が概ねZ方向である。ただし
図3では
図2よりやや上方から斜視している。
図3を参照して、粉末補充機構24は、粉末補給機21内に粉末を補充するための円筒状の部材である。粉末補充機構24は、たとえば、円筒形の粉末補充機構24の内壁面24aおよび底面に囲まれた収納部(空間)を有している。粉末補充機構24の底面には底突起部24bが形成されている。底突起部24bは底面からZ方向の上側に延びており、中空の円筒形状を有している。
【0035】
粉末補給機21への粉末の補充方法は次の通りである。補充すべき粉末を収め、上部にたとえばアルミニウム製のフィルムが蓋として貼り付けられた粉末容器25が準備される。粉末容器25が、天地反転した状態で、粉末補充機構24の収納部に挿入され、収納部内を下降する。フィルムが底突起部24bに接触した状態から、粉末容器25がさらに下方に押し込まれる。すると底突起部24bによって、フィルムが破られる。これにより粉末容器25内の粉末が粉末補充機構24内に入る。粉末補充機構24内に入った粉末のうち底突起部24bの内側の空洞部24cに入ったものは、底突起部24bから落下する。たとえば粉末補充機構24を
図2のように粉末補給機21内の上側の領域(または粉末補給機21の上面上)に設置することにより、落下した粉末を粉末補給機21内に補充できる。
【0036】
粉末供給システム200は、振動機構26をさらに備えている。
図2では、振動機構26は粉末補給機21の外側に配置されている。
図2の振動機構26は、接続部材5Bにより、粉末補給機21の底部に接続するように図示されている。しかしこのような態様に限られない。たとえば振動機構26は、粉末補給機21の粉末補充機構24に隣接する部分に接続されてもよい。振動機構26は粉末補給機21の外側に配置されてもよいが、粉末補給機21の内側に配置されてもよい。振動機構26は、粉末補給機21を振動させてもよい。振動機構26は、粉末補給機21の本体に限らず、粉末補充機構24を振動させてもよい。
【0037】
振動機構26は、一般公知の振動用の電子部品などである。振動機構26を備えることにより、たとえば粉末補充機構24内に投入された粉末は、粉末補給機21内にて下降し、スムーズに粉末補給機21内に貯留される。振動機構26が粉末補充機構24を振動させれば、粉末補充機構24内に投入された粉末を粉末補給機21内の貯留部に振り落とす(粉末補給機21内に補充する)効果が高められる。
【0038】
図2に示すように、ホッパー3a(粉末供給部3)は、電子天秤27の上に設置されても良い。電子天秤27は、ホッパー3a内の粉末の量を計測する。電子天秤27は台車28の上に設置されてもよい。また電子天秤27は粉末補給機21内の粉末の残量を計測可能であることがより好ましい。
【0039】
図2に示されないが、粉末供給システム200は、ホッパー3a内および粉末補給機21内の圧力を測定可能な圧力計を備えてもよい。
【0040】
粉末供給システム200は制御システム29を有することがより好ましい。制御システム29は、第1の状態の途中に粉末補給機21内の粉末の残量が減少し、粉末補給機21内への粉末の補充が必要となった際に、自動的に開閉弁23を閉じる(遮断する)。このとき制御システム29は、ホッパー3a内の圧力の変化量および変化時間を最小限に留めるよう、粉末供給システム200を制御する。具体的には、たとえば圧力調整機構22からホッパー3a内に供給される気体の量を一時的に増加させる。また粉末補給機21内を大気開放するために大気圧となるよう、圧力調整機構22から粉末補給機21内に供給される気体の量を調整する。
【0041】
<作用効果の背景:従来例の説明>
本実施の形態の考案に至った背景となる従来例およびその課題について改めて説明する。たとえば第1段階の従来技術では、粉末供給システムは、粉末補給機21を有さず、
図2のホッパー3aに相当する粉末供給部3と、圧力調整機構22とのみを有する。この場合、ホッパー3a内の圧力を一定にするために、圧力調整機構22からホッパー3a内に気体が供給される。負圧によるノズル2bへの動作ガスおよび粉末の安定供給の観点から、常時ホッパー3a内を密閉し、ホッパー3a内に気体を供給する必要がある。しかしこの場合、外部から粉末を補給可能な場所はホッパー3aのみである。このため粉末の補給時にはホッパー3a内を大気圧に開放する必要がある。このときホッパー3a内からノズル2bへの安定供給ができなくなる。つまりノズル2bへ時間的に連続、安定した粉末の供給は難しい。またたとえば容量が12リットルのホッパー3aを用いた場合、ノズル2bへの連続供給が可能な時間は8時間程度である。連続供給可能な時間をさらに延長する要請もある。
【0042】
そこで第2段階の従来技術では、粉末供給システムは、ホッパー3aに加え、粉末補給機21を有する。粉末補給機21からホッパー3aへ粉末が流動できる構成とする。第2段階では第1段階に比べて連続供給可能な時間が延長し、たとえば24時間前後になる。粉末補給機21を有する分だけ、粉末を収納可能な場所が増加し、装置全体の容量が拡張するためである。
【0043】
しかし第2段階においては粉末補給機21およびホッパー3aに気体を供給し、粉末補給機21内の圧力値をホッパー3a内の圧力値よりも大きくする必要がある。このようにしなければ粉末補給機21からホッパー3aへ粉末が流動できない。また第2段階では粉末補給機21とホッパー3aとの配管5Aに開閉弁23を有さない。このため、粉末補給機21内とホッパー3a内とが常時解放された状態(第1の状態に相当)となる。この場合、粉末補給機21内に粉末を補充する際には、やはりホッパー3a内を含めていったん大気開放する必要が生じる。このため第1段階と同様に、ホッパー3a内からノズル2bへの安定供給ができなくなる。これにより、たとえばホッパー3a内の粉末がその上側と下側との間で状態が変わり、膜厚および膜質の変化をもたらす可能性がある。
【0044】
<本実施の形態の作用効果>
以上の従来例の課題を解決する観点から、本実施の形態に係る粉末供給システム200は、ホッパー3aと、粉末補給機21と、圧力調整機構22と、開閉弁23とを備える。ホッパー3aは、成膜装置100に供給する粉末10を貯蔵する。粉末補給機21は、ホッパー3aに接続され、ホッパー3a内との圧力差を一定に保ちながら、ホッパー3a内に粉末10を補給する。圧力調整機構22は、ホッパー3a内および粉末補給機21内の圧力が一定になるように、ホッパー3a内の圧力と、粉末補給機21内の圧力とを調整可能である。開閉弁23は、ホッパー3a内と粉末補給機21内とを繋ぐ部分に設置されている。
【0045】
ホッパー3aに加えて粉末補給機21を備え、さらにホッパー3a内と粉末補給機21内とを繋ぐ部分に開閉弁23を有する。このため粉末10の補給時には開閉弁23を閉じて第2の状態とするだけで、ホッパー3a内の圧力をほぼ一定に保つことができる。負圧によるホッパー3aからノズル2bへの粉末10の供給への影響を最小限にし、ホッパー3a内とノズル2bとの圧力差の変動を最小限にできる。つまりほぼ一定量の粉末10をノズル2bへ供給する状態を維持しながら、粉末補給機21内のみを大気開放し、そこへ粉末10を補給できる。このためノズル2bへは時間的に連続して粉末10を安定に供給できる。つまり時間的に連続して、誤差の少ない安定した量および質の粉末10を供給できる。
【0046】
圧力調整機構22により、粉末補給機21内にホッパー3a内よりも高い一定の圧力が加えられる。このため両者の一定の圧力差を利用して、配管5Aでの粉末の流量を一定にできる。したがって、時間的に連続して粉末を安定に供給できる。
【0047】
上記の粉末供給システム200において、開閉弁23は、粉末補給機21内からホッパー3a内への粉末10の補給時に、ホッパー3a内と粉末補給機21内とが連続するよう開通された第1の状態となる。開閉弁23は、粉末補給機21内への粉末10の補充時に、ホッパー3a内と粉末補給機21内とが遮断された第2の状態となる。このようにすれば、第1の状態時には一定の圧力差を利用して、粉末補給機21内からホッパー3a内へ、時間的に連続するように安定に粉末10を供給できる。また第2の状態時には粉末補給機21内のみ大気開放しつつ、ホッパー3a内からノズル2bへ、時間的に連続するように安定に粉末10を供給できる。すなわち開閉弁23の状態にかかわらず、ホッパー3a内からノズル2bへ、時間的に連続するように安定に粉末10を供給できる。
【0048】
上記の粉末供給システム200において、第1の状態と第2の状態との間の切り替え前後において、ホッパー3a内の圧力は一定である。具体的には、第1の状態時と第2の状態時との間で、ホッパー3a内の圧力は一定である。ただし上記と同様、圧力が一定とは、圧力の時間変化量が、圧力の平均値に対して±10%以内である場合を含むものとする。また第1の状態から第2の状態への切り替え時、および第2の状態から第1の状態への切り替え時においても、ホッパー3a内の圧力はほとんど変化しない状態を保つことができる。後述するようにホッパー3a内の圧力がごく短時間僅かに圧力変化することもあるが、まったく圧力変化しないように制御することもできる。これにより、開閉弁23の状態にかかわらず、ホッパー3a内からノズル2bへ、時間的に連続するように安定に粉末10を供給できる。
【0049】
以上の作用効果について、次の
図4を用いて総括する。
図4は、本実施の形態に係る粉末供給システムの粉末供給時および粉末補給時での一連の工程と、各構成部材の状態とを示す一覧表である。
【0050】
図4を参照して、第1の状態(S1)では、粉末補給機21内の圧力は一定値(たとえばP
21)である。開閉弁23は開通されている(接続されている)。ホッパー3a内の圧力は一定値(たとえばP
3a)である。ホッパー3aへの圧力調整機構22からの気体供給量F(
図2参照)は一定値(たとえばF1)である。ノズル2bの負圧は一定である。ホッパー3aの内圧とノズル2bの負圧とが一定のため、これらの差が一定となり、ノズル2bへの粉末10の連続した安定供給ができる。
【0051】
粉末補給機21内の粉末の量が減少し、粉末補給機21内に粉末10を補充するために第1の状態から第2の状態へと開閉弁23を切り替える工程が(S2)である。工程(S2)では、粉末補給機21内を大気圧に開放する。このため粉末補給機21内の圧力は変化する。具体的には、粉末補給機21内に供給された気体が排気される。開閉弁23は接続されている(開いている)状態から遮断されている(閉じている)状態へと切り替わる。ホッパー3a内の圧力は、P3aより少し減少する場合がある。開閉弁23の遮断により、粉末補給機21内からの気体の供給がストップするためである。これに伴い、ホッパー3aへの圧力調整機構22からの気体供給量Fは増加する。一方、ノズル2bの負圧は工程(S2)においてもほぼ一定である。
【0052】
粉末補給機21内に粉末10を補充するときは、第2の状態(S3)である。第2の状態(S3)では、粉末補給機21内の圧力は一定値(大気圧)である。開閉弁23は遮断されている(閉じている)。ホッパー3a内の圧力は一定値(たとえばP
3a)である。ホッパー3aへの圧力調整機構22からの気体供給量F(
図2参照)は一定値(たとえばF2)である。F2はF1よりも大きい。ホッパー3a内の圧力を第1の状態と同じ圧力にする観点から、粉末補給機21内からの気体の供給がストップしている分を補うためである。ノズル2bの負圧は一定である。これにより、ホッパー3aの内圧とノズル2bの負圧との圧力差は第1の状態(S1)の時と同じである。したがって、第1の状態(S1)の時と同様にノズル2bへの粉末供給が可能となる。
【0053】
粉末補充後(S4)、つまり粉末補給機21への粉末10の補充が完了した後、粉末10のホッパー3aへの補給を再開するまでの間は次の通りである。粉末補給機21内の圧力は変化する。すなわち粉末補給機21内の圧力は変化する。再び第1の状態での一定値P
21に戻すために気体を粉末補給機21内に大量に流し込むためである。開閉弁23はこの時点では遮断されたままである。ホッパー3a内の圧力は一定値(たとえばP
3a)である。ホッパー3aへの圧力調整機構22からの気体供給量F(
図2参照)は一定値(たとえばF2)である。ノズル2bの負圧は一定である。
【0054】
粉末補充後の粉末補給機21への気体の大量供給が終了し、粉末補給機21内の圧力がほぼP
21に戻った後、再び第1の状態へと開閉弁23を切り替える工程(S5)がなされる。このとき開閉弁23を開き、配管5Aへ気体が流出し始めることに伴い、粉末補給機21内の圧力は一瞬変化する場合もある。しかしすぐ一定値P
21に戻る。戻った後はほぼ一定であるため、
図4では粉末補給機21内の圧力は「一定P
21」と記載している。開閉弁23は遮断されている(閉じている)状態から接続されている(開いている)状態へと切り替わる。ホッパー3a内の圧力は、P
3aより少し増加する場合がある。開閉弁23の接続により、粉末補給機21内からホッパー3a内への気体の流入が再開するためである。これに伴い、ホッパー3aへの圧力調整機構22からの気体供給Fは減少する。一方、ノズル2bの負圧は工程(S2)においてもほぼ一定である。ノズル2bの負圧は開閉弁23の切り替え時、および第1の状態、第2の状態の時のすべてにおいて、常時一定に保たれる。このことは上記した通りである。
【0055】
以上のとおり、ホッパー3a内の圧力は、開閉弁を切り替える工程(S2,S5)において一定値P3aに対し多少変化すなわち増減する場合がある。しかし当該圧力の変化を極力短時間で済ませさえすれば、基本的には全工程を通じてホッパー3a内の圧力を常時一定にすることができる。
【0056】
なお工程(S2)において制御システム29を動作させ、ホッパー3a内への気体の供給量が減少すると同時にその減少分だけ圧力調整機構22からホッパー3a内への気体の供給量を増加させるよう制御されてもよい。このようにすれば、工程(S2)においてもホッパー3a内の圧力を全く変化させずに、ノズル2bへ粉末10をより安定に供給できる。工程(S5)においても同様に、制御システム29を動作させ、ホッパー3a内への気体の供給量が増加すると同時にその増加分だけ圧力調整機構22からホッパー3a内への気体の供給量を減少させるよう制御されてもよい。これにより粉末供給システム200の性能がさらに向上する。したがって結果的に、ホッパー3a内の圧力値を全ての工程間で常時一定にすることができる。
【0057】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。矛盾のない限り、今回開示された実施の形態中に記載される少なくとも2つの特徴を組み合わせてもよい。
【0058】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
成膜装置に供給する粉末を貯蔵するホッパーと、
前記ホッパーに接続され、前記ホッパー内との圧力差を一定に保ちながら、前記ホッパー内に前記粉末を補給する粉末補給機と、
前記ホッパー内および前記粉末補給機内の圧力が一定になるように、前記ホッパー内の圧力と、前記粉末補給機内の圧力とを調整可能な圧力調整機構と、
前記ホッパー内と前記粉末補給機内とを繋ぐ部分に設置された開閉弁とを備える、粉末供給システム。
【0059】
(付記2)
前記開閉弁は、前記粉末補給機内から前記ホッパー内への前記粉末の補給時に、前記ホッパー内と前記粉末補給機内とが連続するよう開通された第1の状態となり、前記粉末補給機内への前記粉末の補充時に、前記ホッパー内と前記粉末補給機内とが遮断された第2の状態となる、付記1に記載の粉末供給システム。
【0060】
(付記3)
前記第1の状態と前記第2の状態との間の切り替え前後において、前記ホッパー内の圧力は一定である、付記2に記載の粉末供給システム。
【0061】
(付記4)
前記圧力調整機構は、前記ホッパー内および前記粉末補給機内に気体を流すことにより、前記ホッパー内の圧力と、前記粉末補給機内の圧力を制御する、付記1~3のいずれか1項に記載の粉末供給システム。
【0062】
(付記5)
前記粉末補給機内に前記粉末を補充する粉末補充機構をさらに備える、付記1~4のいずれか1項に記載の粉末供給システム。
【0063】
(付記6)
前記粉末補給機を振動させる振動機構をさらに備える、付記5に記載の粉末供給システム。
【0064】
(付記7)
前記ホッパーには、前記粉末を出力可能な粉末貯蔵部が含まれ、
前記粉末貯蔵部は、水平方向の寸法が、前記ホッパーの前記粉末貯蔵部を除く部分のうち鉛直方向の最下部の水平方向の寸法よりも大きい、付記1~6のいずれか1項に記載の粉末供給システム。
【符号の説明】
【0065】
1 マスク治具、2 スプレーガン、2a スプレーガン本体部、2b ノズル、2c ヒータ、3 粉末供給部、3a ホッパー、3b 粉末貯蔵部、4 ガス供給部、5,5A,6 配管、5B 接続部材、7 バルブ、8 圧力センサ、9 温度センサ、10 粉末、20 基材、21 粉末補給機、22 圧力調整機構、22a 圧力調整機構本体、22b 加圧配管、23 開閉弁、24 粉末補充機構、24a 内壁面、24b 底突起部、24c 空洞部、25 粉末容器、26 振動機構、27 電子天秤、28 台車、29 制御システム、30,31,32 矢印、100 成膜装置、200 粉末供給システム。
【要約】
粉末供給システム(200)は、ホッパー(3a)と、粉末補給機(21)と、圧力調整機構(22)と、開閉弁(23)とを備える。ホッパー(3a)は、成膜装置に供給する粉末を貯蔵する。粉末補給機(21)は、ホッパー(3a)に接続され、ホッパー(3a)内との圧力差を一定に保ちながら、ホッパー(3a)内に粉末を補給する。圧力調整機構(22)は、ホッパー(3a)内および粉末補給機(21)内の圧力が一定になるように、ホッパー(3a)内の圧力と、粉末補給機(21)内の圧力とを調整可能である。開閉弁(23)は、ホッパー(3a)内と粉末補給機(21)内とを繋ぐ部分に設置されている。