(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】全固体電池積層体
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20241001BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20241001BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20241001BHJP
H01M 50/593 20210101ALI20241001BHJP
H01M 50/528 20210101ALI20241001BHJP
H01M 50/54 20210101ALI20241001BHJP
H01M 50/178 20210101ALI20241001BHJP
H01M 4/70 20060101ALI20241001BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241001BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M50/586
H01M50/593
H01M50/528
H01M50/54
H01M50/178
H01M4/70 A
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2019231368
(22)【出願日】2019-12-23
【審査請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2019022941
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 拓海
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 元
(72)【発明者】
【氏名】山本 聡美
(72)【発明者】
【氏名】谷本 晃一
(72)【発明者】
【氏名】大久保 壮吉
【審査官】森 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-195528(JP,A)
【文献】特開2017-204377(JP,A)
【文献】特開2010-238687(JP,A)
【文献】特開2007-250319(JP,A)
【文献】特開2013-110081(JP,A)
【文献】特表2013-539171(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0135180(KR,A)
【文献】特開2018-037247(JP,A)
【文献】特開2018-073665(JP,A)
【文献】特開2018-174074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0585
H01M 10/0562
H01M 50/528
H01M 50/54
H01M 50/586
H01M 50/593
H01M 50/178
H01M 4/70
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のモノポーラ型電池ユニットが、絶縁体層を介して互いに積層されており、
前記モノポーラ型電池ユニットは、第1の集電体層、第1の活物質層、固体電解質層、第2の活物質層、第2の集電体層、第2の活物質層、固体電解質層、第1の活物質層、及び第1の集電体層が、この順に積層されており、
複数の前記モノポーラ型電池ユニットは、互いに直列に接続されており、
直列に接続されている2つの前記モノポーラ型電池ユニットについて、前記第1の集電体層及び前記第2の集電体層は、それぞれ本体部及び突出部を有しており、
一方の前記モノポーラ型電池ユニットが有する一対の前記第1の集電体層の突出部と、他方の前記モノポーラ型電池ユニットが有する前記第2の集電体層の突出部とが電気的に接続されており、
(A)それぞれの前記モノポーラ型電池ユニットについて、
一方の前記第1の集電体層において、突出部を含めて全体が、隣接する前記絶縁体層の外縁の内側に配置されており、
他方の前記第1の集電体層において、突出部以外の部分は、隣接する前記絶縁体層の外縁の内側に配置されており、かつ突出部は、隣接する前記絶縁体層の外縁から突出しており、
一方の前記第1の集電体層の突出部と他方の前記第1の集電体層の突出部とが、前記モノポーラ型電池ユニットの積層方向に関して重なる位置に配置されており、かつ
一対の前記第1の集電体層の突出部と第2の集電体層の突出部とが、前記モノポーラ型電池ユニットの積層方向に関して重ならない位置に配置されており、
(B)直列に接続されている2つの前記モノポーラ型電池ユニットについて、
2つの前記モノポーラ型電池ユニットは、前記絶縁体層を挟んで隣接しており、かつ
一方の前記モノポーラ型電池ユニットが有する一対の前記第1の集電体層の突出部と他方の前記モノポーラ型電池ユニットが有する前記第2の集電体層の突出部とが、前記モノポーラ型電池ユニットの積層方向に関して重なる位置に配置されて、電気的に接続されている、
全固体電池積層体。
【請求項2】
直列に接続されている2つの前記モノポーラ型電池ユニットにおいて、一方の前記モノポーラ型電池ユニットが有する一対の前記第1の集電体層と、他方の前記モノポーラ型電池ユニットが有する前記第2の集電体層とが電気的に接続されている、請求項
1に記載の全固体電池積層体。
【請求項3】
前記全固体電池積層体の積層方向の一方の端部にある前記モノポーラ型電池ユニットの一対の前記第1の集電体層に、第1の集電タブが接続されており、かつ
前記積層方向の他方の端部にある前記モノポーラ型電池ユニットの前記第2の集電体層に、第2の集電タブが接続されている、
請求項1
又は2に記載の全固体電池積層体。
【請求項4】
外装体の内部に収容されており、かつ前記第1の集電タブ及び前記第2の集電タブが、前記外装体の外部に延出している、請求項
3に記載の全固体電池積層体。
【請求項5】
前記第1の集電体層が正極集電体層であり、前記第1の活物質層が正極活物質層であり、前記第2の活物質層が負極活物質層であり、かつ前記第2の集電体層が負極集電体層である、
請求項1~
4のいずれか一項に記載の全固体電池積層体。
【請求項6】
前記絶縁体層が、絶縁性ポリマーシートである、請求項1~
5のいずれか一項に記載の全固体電池積層体。
【請求項7】
前記絶縁体層が、絶縁性粒子を含有している、請求項1~
6のいずれか一項に記載の全固体電池積層体。
【請求項8】
前記絶縁性粒子が、アルミナ粒子である、請求項
7に記載の全固体電池積層体。
【請求項9】
前記モノポーラ型電池ユニットを構成する2つの前記第1の集電体層のうち一方が、前記絶縁体層と結着されて、絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニットを構成しており、かつ
隣り合う2つの前記絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニットのうち一方の前記絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニットの前記絶縁体層と他方の前記絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニットの前記第1の集電体層とが接するようにして、複数の前記絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニットが互いに積層されている、
請求項1~
8のいずれか一項に記載の全固体電池積層体。
【請求項10】
前記モノポーラ型電池ユニットを構成する2つの前記第1の集電体層が、それぞれ前記絶縁体層と結着されて、絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニットを構成しており、かつ
隣り合う2つの前記絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニットの絶縁体層同士が接するようにして、複数の前記絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニットが互いに積層されている、
請求項1~
8のいずれか一項に記載の全固体電池積層体。
【請求項11】
前記モノポーラ型電池ユニットを構成する2つの前記第1の集電体層のうち少なくとも一方が、前記絶縁体層の外縁の内側に配置されている、請求項1~
10のいずれか一項に記載の全固体電池積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全固体電池積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器や自動車等の電源として高性能な電池が広く利用されている。このような高性能な電池の例としては、バイポーラ構造を有する全固体電池積層体を挙げることができる。
【0003】
バイポーラ構造を有する全固体電池積層体は、電池内部において複数の構成単位セルが直列に接続された構造を有するため、高い電圧を有する。そのため、バイポーラ構造を有する全固体電池積層体は、自動車のような、比較的に高い電圧が要求される製品への適用に適していると考えられる。
【0004】
特許文献1は、集電体層の一方に正極活物質層を有し、かつ他方に負極活物質層を有する構造を有する、いわゆるバイポーラ型の電池ユニットが、複数個、互いに積層されている全固体電池積層体を開示している。このような全固体電池積層体は、バイポーラ型の電池ユニットが直列に接続されているため、高い電圧を実現することができる。
【0005】
また、特許文献2は、バイポーラ型の電池ユニットが、複数個、互いに積層されている全固体電池積層体において、バイポーラ型の電池ユニットの一部が絶縁材料で被覆された構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-253155号公報
【文献】特開2008-186595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
全固体電池積層体において、バイポーラ構造を実現するための一つの方法としては、例えば、集電体層の一方の面に負極活物質層を、他方の面に正極活物質層をそれぞれ直接配置した構造を採用することが考えられる。しかしながら、このような構造を採用した場合、製造時において各層を緻密化するためのプレスを行う際の条件によっては、負極活物質層と正極活物質層との伸縮性の違いにより、集電体層にひずみが生じ、負極活物質層及び正極活物質層に割れが発生する場合がある。また、このような構造は、一つの集電体層が正極集電体層と負極集電体層とを兼ねているため、集電体層の材料の選択が制限される。
【0008】
バイポーラ構造を実現するための他の方法としては、例えば、正極集電体層、正極活物質層、固体電解質層、負極活物質層、及び負極集電体層をこの順で有する構成単位セルを、複数個、互いの正極集電体層と負極集電体層とが重なるようにして積層した構造を採用することが考えられる。しかしながら、複数個の構成単位セルを、互いの正極集電体層と負極集電体層とが重なるようにして積層した場合、正極集電体層と負極集電体層とが重なる。したがって、この重複する集電体層の分だけ全固体電池積層体の体積及び質量が増加し、全固体電池積層体のエネルギー密度の低下の要因となる。
【0009】
更に、上記2つの構造を採用した全固体電池積層体では、製造過程において正極活物質層又は負極活物質層を形成する際、又は使用時に集電体層が破断すると、正極活物質層及び負極活物質層が直接接することにより、内部短絡が生じる場合がある。
【0010】
このように、バイポーラ構造を有する全固体電池積層体は、高い電圧が得られる点で好ましいものの、製造上及び構造上、解決するべき問題を有している。
【0011】
そこで、本開示者は、バイポーラ構造を有する全固体電池積層体に代わる、高い電圧を有する全固体電池積層体を検討した。
【0012】
したがって、本開示は、高い電圧を有する全固体電池積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示者は、以下の手段により上記課題を達成することができることを見出した:
《態様1》
複数のモノポーラ型電池ユニットが、絶縁体層を介して互いに積層されており、
前記モノポーラ型電池ユニットは、第1の集電体層、第1の活物質層、固体電解質層、第2の活物質層、第2の集電体層、第2の活物質層、固体電解質層、第1の活物質層、及び第1の集電体層が、この順に積層されており、
複数の前記モノポーラ型電池ユニットは、互いに直列に接続されている、
全固体電池積層体。
《態様2》
直列に接続されている2つの前記モノポーラ型電池ユニットにおいて、一方の前記モノポーラ型電池ユニットが有する一対の前記第1の集電体層と、他方の前記モノポーラ型電池ユニットが有する前記第2の集電体層とが電気的に接続されている、態様1に記載の全固体電池積層体。
《態様3》
前記全固体電池積層体の積層方向の一方の端部にある前記モノポーラ型電池ユニットの一対の前記第1の集電体層に、第1の集電タブが接続されており、かつ
前記積層方向の他方の端部にある前記モノポーラ型電池ユニットの前記第2の集電体層に、第2の集電タブが接続されている、
態様1又は2に記載の全固体電池積層体。
《態様4》
外装体の内部に収容されており、かつ前記第1の集電タブ及び前記第2の集電タブが、前記外装体の外部に延出している、態様3に記載の全固体電池積層体。
《態様5》
前記第1の集電体層が正極集電体層であり、前記第1の活物質層が正極活物質層であり、前記第2の活物質層が負極活物質層であり、かつ前記第2の集電体層が負極集電体層である、
態様1~4のいずれか一つに記載の全固体電池積層体。
《態様6》
前記絶縁体層が、絶縁性ポリマーシートである、態様1~5のいずれか一つに記載の全固体電池積層体。
《態様7》
前記絶縁体層が、絶縁性粒子を含有している、態様1~6のいずれか一つに記載の全固体電池積層体。
《態様8》
前記絶縁性粒子が、アルミナ粒子である、態様7に記載の全固体電池積層体。
《態様9》
前記モノポーラ型電池ユニットを構成する2つの前記第1の集電体層のうち少なくとも一方が、前記絶縁体層と結着している、態様1~8のいずれか一つに記載の全固体電池積層体。
《態様10》
前記モノポーラ型電池ユニットを構成する2つの前記第1の集電体層のうち一方が、前記絶縁体層と結着されて、絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニットを構成しており、かつ
隣り合う2つの前記絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニットのうち一方の前記絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニットの前記絶縁体層と他方の前記絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニットの前記第1の集電体層とが接するようにして、複数の前記絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニットが互いに積層されている、
態様1~9のいずれか一つに記載の全固体電池積層体。
《態様11》
前記モノポーラ型電池ユニットを構成する2つの前記第1の集電体層が、それぞれ前記絶縁体層と結着されて、絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニットを構成しており、かつ
隣り合う2つの前記絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニットの絶縁体層同士が接するようにして、複数の前記絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニットが互いに積層されている、
態様1~9のいずれか一つに記載の全固体電池積層体。
《態様12》
前記モノポーラ型電池ユニットを構成する2つの前記第1の集電体層のうち少なくとも一方が、前記絶縁体層の外縁の内側に配置されている、態様1~11のいずれか一つに記載の全固体電池積層体。
《態様13》
直列に接続されている2つの前記モノポーラ型電池ユニットについて、前記第1の集電体層及び前記第2の集電体層は、それぞれ突出部を有しており、
一方の前記モノポーラ型電池ユニットが有する一対の前記第1の集電体層の突出部と、他方の前記モノポーラ型電池ユニットが有する前記第2の集電体層の突出部とが電気的に接続されている、
態様1~12のいずれか一つに記載の全固体電池積層体。
《態様14》
(A)それぞれの前記モノポーラ型電池ユニットについて、
一方の前記第1の集電体層において、突出部を含めて全体が、隣接する前記絶縁体層の外縁の内側に配置されており、
他方の前記第1の集電体層において、突出部以外の部分は、隣接する前記絶縁体層の外縁の内側に配置されており、かつ突出部は、隣接する前記絶縁体層の外縁から突出しており、
一方の前記第1の集電体層の突出部と他方の前記第1の集電体層の突出部とが、前記モノポーラ型電池ユニットの積層方向に関して重なる位置に配置されており、かつ
一対の前記第1の集電体層の突出部と第2の集電体層の突出部とが、前記モノポーラ型電池ユニットの積層方向に関して重ならない位置に配置されており、
(B)直列に接続されている2つの前記モノポーラ型電池ユニットについて、
2つの前記モノポーラ型電池ユニットは、前記絶縁体層を挟んで隣接しており、かつ
一方の前記モノポーラ型電池ユニットが有する一対の前記第1の集電体層の突出部と他方の前記モノポーラ型電池ユニットが有する前記第2の集電体層の突出部とが、前記モノポーラ型電池ユニットの積層方向に関して重なる位置に配置されて、電気的に接続されている、
態様13に記載の全固体電池積層体。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、高い電圧を有する全固体電池積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本開示の第1の実施形態に従う全固体電池積層体を構成する電池ユニットを示す模式図である。
【
図2】
図2は、本開示の第1の実施形態に従う全固体電池積層体を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本開示の第2の実施形態に従う全固体電池積層体を構成する絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニットを示す模式図である。
【
図4】
図4は、本開示の第3の実施形態に従う全固体電池積層体を構成する絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニットを示す模式図である。
【
図5】
図5は、本開示の第4の実施形態に従う全固体電池積層体を示す模式図である。
【
図6】
図6は、本開示の第4の実施形態に従う全固体電池積層体を構成する電池ユニットが有する2つの第1の集電体層のうち一方と、絶縁体層との位置関係を示す模式図である。
【
図7】
図7は、本開示の第4の実施形態に従う全固体電池積層体を構成する電池ユニットが有する2つの第1の集電体層のうち他方と、絶縁体層との位置関係を示す模式図である。
【
図8】
図8は、本開示の第5の実施形態に従う全固体電池積層体を示す模式図である。
【
図9】
図9は、本開示の第6の実施形態に従う全固体電池積層体を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施の形態について詳述する。なお、本開示は、以下の実施の形態に限定されるのではなく、開示の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0017】
本開示の全固体電池積層体は、複数のモノポーラ型電池ユニットが、絶縁体層を介して互いに積層されている。また、モノポーラ型電池ユニットは、第1の集電体層、第1の活物質層、固体電解質層、第2の活物質層、第2の集電体層、第2の活物質層、固体電解質層、第1の活物質層、及び第1の集電体層が、この順に積層されている。また、複数のモノポーラ型電池ユニットは、互いに直列に接続されている。
【0018】
本開示の全固体電池積層体は、複数のモノポーラ型電池ユニットが互いに直列に接続された構造を有する。これにより、以下のとおり、バイポーラ構造に起因する各種の問題を抑制しつつ、高い電圧を有することができる。
【0019】
モノポーラ型電池ユニットは、集電体層の両面に同一の活物質層を有する。そのため、例えば、製造過程において各層を緻密化するためのプレスを行った場合にも、集電体層の両面において伸縮性に差異が生じにくく、集電体層の歪みの発生及び各層の割れ等を抑制することができる。また、製造過程及び使用時等において集電体層が破断等しても、同じ極の活物質層が接触するため、内部短絡しない。
【0020】
更に、モノポーラ型電池ユニットは、2つの構成単位セルが一つの集電体層を共有した構造を有することができるため、2つの構成単位セルを互いに積層した構造と比較して、集電体層を一つ少なくすることができる。そのため、本開示の全固体電池積層体は、エネルギー密度を向上させることができる。
【0021】
本開示の全固体電池積層体が有するモノポーラ型電池ユニットの数は、複数、すなわち2個以上であれば特に限定されず、全固体電池積層体の用途及び体積、電圧、及び容量等の所望の性能に合わせて、適宜調節することができる。
【0022】
また、モノポーラ型電池ユニットの製造効率の観点から、本開示の全固体電池積層体において、第1の集電体層が正極集電体層であり、第1の活物質層が正極活物質層であり、第2の活物質層が負極活物質層であり、かつ第2の集電体層が負極集電体層であることが好ましい。
【0023】
本開示の全固体電池積層体のより具体的な構成を、
図1及び2を用いて説明する。
【0024】
図1は、本開示の第1の実施形態に従う全固体電池積層体を構成する電池ユニットを示す模式図である。
【0025】
図1に示すモノポーラ型電池ユニット10は、第1の集電体層11、第1の活物質層12、固体電解質層13、第2の活物質層14、第2の集電体層15、第2の活物質層14、固体電解質層13、第1の活物質層12、及び第1の集電体層11が、この順に積層された構造を有している。すなわち、
図1に示すモノポーラ電池は、第1の集電体層11、第1の活物質層12、固体電解質層13、第2の活物質層14、及び第2の集電体層15をそれぞれ有している2つの構成単位セルが、第2の集電体層15を共有している構造を有している。
【0026】
なお、
図1は、本開示の全固体電池積層体を限定する趣旨ではない。
【0027】
図2は、本開示の第1の実施形態に従う全固体電池積層体を示す模式図である。
【0028】
図2に示す全固体電池積層体100は、3つのモノポーラ型電池ユニット10が、絶縁体層20を介して互いに積層された構造を有している。また、直列に接続されている2つのモノポーラ型電池ユニット10において、一方のモノポーラ型電池ユニット10が有する一対の第1の集電体層11と、他方のモノポーラ型電池ユニット10が有する第2の集電体層15とが電気的に接続されている。また、全固体電池積層体100の積層方向の一方の端部にあるモノポーラ型電池ユニット10の一対の第1の集電体層11に、第1の集電タブ30が接続されている。また、他方の端部にあるモノポーラ型電池ユニット10の第2の集電体層15に、第2の集電タブ40が接続されている。更に、全固体電池積層体100は、外装体50の内部に収容されており、かつ第1の集電タブ30及び第2の集電タブ40が、外装体50の外部に延出している。
【0029】
なお、
図2は本開示の全固体電池積層体を限定する趣旨ではない。
【0030】
また、本開示において、モノポーラ型電池ユニットを構成する2つの第1の集電体層のうち少なくとも一方が、絶縁体層と結着しているのが好ましい。
【0031】
全固体電池積層体の体格を小さくするためには、絶縁体層は絶縁機能を有する範囲で極力薄い方が望ましい。しかしながら、薄い絶縁体層は撓みやすく、形状を保持することが難しい場合がある。そのため、全固体電池積層体の組立て方によっては、複数のモノポーラ型電池ユニットを、絶縁体層を介して互いに積層する際に、モノポーラ型電池ユニットと絶縁体層との相対的なずれが生じ、絶縁体層を挟んで対向する第1の集電体層同士が接触し、短絡を引き起こす場合がある。
【0032】
また、全固体電池に用いられる電極活物質材料には、充放電の際に起こるリチウムイオンの挿入・脱離に対して膨張・収縮するものが多く、全固体電池積層体を拘束した状態で電極活物質が膨張すると、活物質層は面方向に膨張する。この時、集電体層が絶縁体層からはみ出て、絶縁体層を挟んで反対側の集電体層に接触し、短絡を引き起こす場合がある。
【0033】
これに対して、モノポーラ型電池ユニットを構成する2つの第1の集電体層のうち少なくとも一方が、絶縁体層と結着している場合、複数のモノポーラ型電池ユニットを、絶縁体層を介して互いに積層して全固体電池積層体を組立てる際に、少なくとも互いに結着している第1の集電体層と絶縁体層との相対的な位置関係の変動を抑制することができる。
【0034】
また、集電体層に活物質層が結着している場合、電池の充放電に伴って活物質層が膨張して集電体層が引き延ばされた場合にも活物質層の膨張に伴い集電体層も面方向に延びるため、集電体層が絶縁体層からはみ出ることがなくなり、絶縁体層を挟んで対向する集電体層同士が接触して短絡を引き起こす可能性が低減される。
【0035】
集電体層端部で短絡が起こる可能性が低減されることにより、絶縁体層を集電体層や他の部材より大きくする必要がなくなり、全固体電池積層体の体格を小さくすることができる。
【0036】
本開示の全固体電池積層体は、モノポーラ型電池ユニットを構成する2つの第1の集電体層のうち一方が、絶縁体層と結着されて、絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニットを構成しており、かつ隣り合う2つの絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニットのうち一方の絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニットの絶縁体層と他方の絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニットの第1の集電体層とが接するようにして、複数の絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニットが互いに積層されていることができる。
【0037】
また、本開示の全固体電池積層体は、モノポーラ型電池ユニットを構成する2つの第1の集電体層が、それぞれ絶縁体層と結着されて、絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニットを構成しており、かつ隣り合う2つの絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニットの絶縁体層同士が接するようにして、複数の絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニットが互いに積層されていることができる。
【0038】
本開示の絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニットの構成例を、
図3及び4に示す。
【0039】
図3は、本開示の第2の実施形態に従う全固体電池積層体を構成する絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニット61を示す模式図である。この絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニット61は、モノポーラ型電池ユニット10を構成する2つの第1の集電体層11のうち一方が、絶縁体層20と結着された構成を有している。
【0040】
なお、
図3は本開示の全固体電池積層体を限定する趣旨ではない。
【0041】
図4は、本開示の第3の実施形態に従う全固体電池積層体を構成する絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニット62を示す模式図である。この絶縁体層付きモノポーラ型電池ユニット62は、モノポーラ型電池ユニット10を構成する2つの第1の集電体層11が、それぞれ絶縁体層20と結着された構成を有している。
【0042】
なお、
図4は本開示の全固体電池積層体を限定する趣旨ではない。
【0043】
また、本開示の全固体電池積層体において、直列に接続されている2つのモノポーラ型電池ユニットについて、第1の集電体層及び第2の集電体層は、それぞれ本体部及び突出部を有しており、一方のモノポーラ型電池ユニットが有する一対の第1の集電体層の突出部と、他方のモノポーラ型電池ユニットが有する第2の集電体層の突出部とが電気的に接続されていることができる。
【0044】
この場合において、本開示の全固体電池積層体は、以下の(A)及び(B)を更に満たしていることができる:
(A)それぞれのモノポーラ型電池ユニットについて、
一方の第1の集電体層において、突出部を含めて全体が、隣接する絶縁体層の外縁の内側に配置されており、他方の第1の集電体層において、突出部以外の部分は、隣接する絶縁体層の外縁の内側に配置されており、かつ突出部は、隣接する絶縁体層の外縁から突出しており、一方の第1の集電体層の突出部と他方の第1の集電体層の突出部とが、モノポーラ型電池ユニットの積層方向に関して重なる位置に配置されており、かつ一対の第1の集電体層の突出部と第2の集電体層の突出部とが、モノポーラ型電池ユニットの積層方向に関して重ならない位置に配置されており、
(B)直列に接続されている2つのモノポーラ型電池ユニットについて、2つのモノポーラ型電池ユニットは、絶縁体層を挟んで隣接しており、かつ一方のモノポーラ型電池ユニットが有する一対の第1の集電体層の突出部と他方のモノポーラ型電池ユニットが有する第2の集電体層の突出部とが、モノポーラ型電池ユニットの積層方向に関して重なる位置に配置されて、電気的に接続されている。
【0045】
本開示の全固体電池積層体が上記(A)及び(B)を満たしている場合、直列に接続されている2つのモノポーラ型電池ユニットを電気的に接続させつつ、隣接している2つのモノポーラ型電池ユニットの第1の集電体層の外縁部分同士が接触することによる短絡を抑制することができる。
【0046】
すなわち、直列に接続されている2つのモノポーラ型電池ユニットについて、一方のモノポーラ型電池ユニットが有する一対の第1の集電体層の突出部と他方のモノポーラ型電池ユニットが有する第2の集電体層の突出部とを、モノポーラ型電池ユニットの積層方向に、例えば溶接などによって接触させることで、これらの突出部を電気的に接続することができる。そして、それぞれのモノポーラ型電池ユニットが有する一対の第1の集電体層について、一方の第1の集電体層において、突出部を含めて全体が、隣接する絶縁体層の外縁の内側に配置されているため、2つのモノポーラ型電池ユニットの間に配置されている絶縁体層の一方に接している第1の集電体層と他方に接している第1の集電体層との外縁部分同士が接触しにくくなるため、短絡を抑制することができる。
【0047】
【0048】
図5及び6に示すように、本開示の第4の実施形態に従う全固体電池積層体100では、それぞれのモノポーラ型電池ユニット10が有する一対の第1の集電体層11a及び11bについて、一方の第1の集電体層11aにおいて、突出部11a’を含めて全体が、隣接する絶縁体層20の外縁の内側に配置されており(
図5)、他方の第1の集電体層11bにおいて、突出部11b’以外の部分は、隣接する絶縁体層20の外縁の内側に配置されており、かつ突出部11b’は、隣接する絶縁体層20の外縁から突出している(
図6)。
【0049】
また、
図7に示すように、一方の第1の集電体層11aの突出部11a’と他方の第1の集電体層11bの突出部11b’とが、モノポーラ型電池ユニット10の積層方向に関して重なる位置に配置されており、かつ一対の第1の集電体層11a及び11bの突出部11a’及び11b’と第2の集電体層15の突出部15’とが、モノポーラ型電池ユニットの積層方向に関して重ならない位置、より具体的にはモノポーラ型電池ユニット10の積層方向に直交する方向に関して反対側に配置されている。
更に、黒い矢印で示すように、直列に接続されている2つのモノポーラ型電池ユニット10について、2つのモノポーラ型電池ユニット10は、絶縁体層20を挟んで隣接しており、かつ一方のモノポーラ型電池ユニット10が有する一対の第1の集電体層11a及び11bの突出部11a’及び11b’と他方のモノポーラ型電池ユニット10が有する第2の集電体層15の突出部15’とが、モノポーラ型電池ユニット10の積層方向に関して重なる位置に配置されて、電気的に接続されている。
【0050】
そして、それぞれのモノポーラ型電池ユニット10が有する一対の第1の集電体層11a及び11bについて、一方の第1の集電体層11aにおいて、突出部11a’を含めて全体が、隣接する絶縁体層20の外縁の内側に配置されているため、2つのモノポーラ型電池ユニット10の間に配置されている絶縁体層20の一方に接している第1の集電体層11aと他方に接している第1の集電体層11bとの外縁部分同士が接触しにくくなっている。
【0051】
なお、
図7では、簡略化のため外装体は省略している。また、
図5~7は本開示の全固体電池積層体を限定する趣旨ではない。
【0052】
《モノポーラ型電池ユニット》
本開示の全固体電池積層体が有するモノポーラ型電池ユニットは、第1の集電体層、第1の活物質層、固体電解質層、第2の活物質層、第2の集電体層、第2の活物質層、固体電解質層、第1の活物質層、及び第1の集電体層が、この順に積層されている。
【0053】
本開示の全固体電池積層体が有するモノポーラ型電池ユニットの数は、2個以上1000個以下であってよい。モノポーラ型電池ユニットの数は、2個以上、3個以上、5個以上、10個以上、50個以上、100個以上、200個以上、又は500個以上であってよく、1000個以下、900個以下、800個以下、700個以下、600個以下、又は500個以下であってよい。
【0054】
〈モノポーラ電池ユニット間の接続構造〉
複数のモノポーラ型電池ユニット同士を互いに直列に接続するための接続構造は、特に限定されないが、例えば、直列に接続されている2つのモノポーラ型電池ユニットにおいて、一方のモノポーラ型電池ユニットが有する一対の第1の集電体層と、他方のモノポーラ型電池ユニットが有する第2の集電体層とが電気的に接続されている構造を挙げることができる。
【0055】
直列に接続されている2つのモノポーラ型電池ユニットにおける、第1の集電体層と第2の集電体層とは、電気的に接続されていればよい。例えば、これらのモノポーラ型電池ユニットは、第1の集電体層及び第2の集電体層が直接的に接することにより接続されてよく、又は導電性の部材によって接続されていてもよい。
【0056】
第1の集電体層と第2の集電体層とを接続することができる導電性の部材は、例えばSUS、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、チタン、又はカーボン等からなる部材であってよい。
【0057】
〈集電体層〉
第1の集電体層及び第2の集電体層は、一方が正極集電体層であり、他方が負極集電体層である。すなわち、第1の集電体層が正極集電体層の場合には、第2の集電体層は負極集電体層であり、第1の集電体層が負極集電体層の場合には、第2の集電体層は正極集電体層である。
【0058】
集電体層に用いられる材料は、特に限定されず、全固体電池に使用できるものを適宜採用することができる。例えば、集電体層に用いられる材料は、SUS、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、チタン、又はカーボン等であってよいが、これらに限定されない。なかでも、正極集電体層の材料は、アルミニウムであることが好ましく、負極集電体層の材料は、銅であることが好ましい。
【0059】
集電体層の形状は、特に限定されず、例えば、箔状、板状、又はメッシュ状等を挙げることができる。これらの中で、箔状が好ましい。
【0060】
また、集電体層は、本体部及び突出部を有している形状であることができる。ここで、本体部は、活物質層に接する面を含んでいる部分であり、活物質層と略相似な形状を有していることができる。
【0061】
更に、
図8に示すように、第1の集電体層11cが有する本体部は、モノポーラ型電池ユニットの積層方向に関して活物質層の外縁の外側からはみ出していることができる。言い換えれば、第1の活物質層12は、本体部の外縁の内側に配置されていることができる。この様な態様において、モノポーラ型電池ユニット内部における短絡を抑制する観点から、本体部のうち、第1の活物質層12の外縁の外側からはみ出している部分の長さpは、第1の集電体層11cの最端部と第2の活物質層14の最端部との間の長さの最小値qよりも小さいことが好ましい。
【0062】
第1の集電体層11cの本体部のうち第1の活物質層12の外縁の外側からはみ出している部分の長さpがこのような範囲にある場合、第1の集電体層11cが第2の活物質層14側に折れ曲がっても、第2の活物質層14に接触することがないため、モノポーラ型電池ユニット内部における短絡を抑制することができる。
【0063】
また、
図9に示すように、全固体電池積層体が、第2の活物質層及び第2の集電体層の外周を覆うようにして配置されている端部絶縁部材70を有している場合、隣り合う2つのモノポーラ型電池ユニット同士の短絡を抑制する観点から、第1の集電体層11cのうち端部絶縁部材70の外縁の外側からはみ出している部分の長さrは、モノポーラ型電池ユニットの積層方向に関して、一方のモノポーラ型電池ユニットの第1の集電体層11eと他方の第1の集電体層11fとの間の長さの最小値sよりも小さいことが好ましい。
【0064】
第1の集電体層11cのうち端部絶縁部材70の外縁の外側からはみ出している部分の長さrがこのような範囲にある場合、第1の集電体層11cが他方の第1の集電体層11f側に折れ曲がっても、他方の第1の集電体層11fに接触することがないため、隣り合う2つのモノポーラ型電池ユニット同士の短絡を抑制することができる。
【0065】
なお、突出部は、本体部から突出している部分であり、複数のモノポーラ型電池ユニット同士を直列に接続するための部分である。
【0066】
なお、
図8及び9では、簡略化のため外装体は省略している。また、
図8及び9は本開示の全固体電池積層体を限定する趣旨ではない。
【0067】
〈活物質層〉
第1の活物質層及び第2の活物質層は、一方が正極活物質層であり、他方が負極活物質層である。すなわち、第1の活物質層が正極活物質層の場合には、第2の活物質層は負極活物質層であり、第1の活物質層が負極活物質層の場合には、第2の活物質層は正極活物質層である。
【0068】
(正極活物質層)
正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含み、好ましくは後述する固体電解質をさらに含む。そのほか、使用用途や使用目的等に合わせて、例えば、導電助剤又はバインダ等の全固体電池の正極活物質層に用いられる添加剤を含むことができる。
【0069】
正極活物質の材料としては、特に限定されない。例えば、正極活物質は、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、Li1+xMn2-x-yMyO4(Mは、Al、Mg、Co、Fe、Ni、及びZnから選ばれる1種以上の金属元素)で表される組成の異種元素置換Li-Mnスピネル等であってよいが、これらに限定されない。
【0070】
導電助剤としては、特に限定されない。例えば、導電助剤は、VGCF(気相成長法炭素繊維、Vapor Grown Carbon Fiber)及びカーボンナノ繊維等の炭素材並びに金属材等であってよいが、これらに限定されない。
【0071】
バインダとしては、特に限定されない。例えば、バインダは、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ブタジエンゴム(BR)若しくはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の材料、又はこれらの組合せであってよいが、これらに限定されない。
【0072】
(負極活物質層)
負極活物質層は、少なくとも負極活物質を含み、好ましくは上述した固体電解質をさらに含む。そのほか、使用用途や使用目的等に合わせて、例えば、導電助剤及びバインダ等のリチウムイオン二次電池の負極活物質層に用いられる添加剤を含むことができる。なお、導電助剤及びバインダは、上記の正極活物質層に関する記載を参照することができる。
【0073】
負極活物質の材料としては、特に限定されず、金属リチウムであってよく、リチウムイオン等の金属イオンを吸蔵及び放出可能な材料であってよい。リチウムイオン等の金属イオンを吸蔵及び放出可能な材料としては、例えば、負極活物質は、合金系負極活物質又は炭素材料等であってよいが、これらに限定されない。
【0074】
合金系負極活物質としては、特に限定されず、例えば、Si合金系負極活物質、又はSn合金系負極活物質等が挙げられる。Si合金系負極活物質には、ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素炭化物、ケイ素窒化物、又はこれらの固溶体等がある。また、Si合金系負極活物質には、ケイ素以外の元素、例えば、Fe、Co、Sb、Bi、Pb、Ni、Cu、Zn、Ge、In、Sn、Ti等を含むことができる。Sn合金系負極活物質には、スズ、スズ酸化物、スズ窒化物、又はこれらの固溶体等がある。また、Sn合金系負極活物質には、スズ以外の元素、例えば、Fe、Co、Sb、Bi、Pb、Ni、Cu、Zn、Ge、In、Ti、Si等を含むことができる。これらの中で、Si合金系負極活物質が好ましい。
【0075】
炭素材料としては、特に限定されず、例えば、ハードカーボン、ソフトカーボン、又はグラファイト等が挙げられる。
【0076】
〈固体電解質層〉
固体電解質層は、少なくとも固体電解質を含む。また、固体電解質層は、上述した固体電解質以外に、必要に応じてバインダ等を含んでもよい。なお、バインダは、上記の正極活物質層に関する記載を参照することができる。
【0077】
固体電解質の材料は、特に限定されず、全固体電池の固体電解質として利用可能な材料を用いることができる。例えば、固体電解質は、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、又はポリマー電解質等であってよいが、これらに限定されない。
【0078】
硫化物固体電解質の例として、硫化物系非晶質固体電解質、硫化物系結晶質固体電解質、又はアルジロダイト型固体電解質等が挙げられるが、これらに限定されない。具体的な硫化物固体電解質の例として、Li2S-P2S5系(Li7P3S11、Li3PS4、Li8P2S9等)、Li2S-SiS2、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Li2S-P2S5、LiI-LiBr-Li2S-P2S5、Li2S-P2S5-GeS2(Li13GeP3S16、Li10GeP2S12等)、LiI-Li2S-P2O5、LiI-Li3PO4-P2S5、Li7-xPS6-xClx等;又はこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0079】
酸化物固体電解質の例として、Li7La3Zr2O12、Li7-xLa3Zr1-xNbxO12、Li7-3xLa3Zr2AlxO12、Li3xLa2/3-xTiO3、Li1+xAlxTi2-x(PO4)3、Li1+xAlxGe2-x(PO4)3、Li3PO4、又はLi3+xPO4-xNx(LiPON)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
ポリマー電解質としては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、及びこれらの共重合体等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
固体電解質は、ガラスであっても、結晶化ガラス(ガラスセラミック)であってもよい。
【0082】
《絶縁体層》
絶縁体層は、互いに積層されているモノポーラ型電池ユニット間の絶縁性を確保することができる任意の材料からなる層であってよい。絶縁体層は、例えば絶縁性ポリマーシートであってよい。絶縁性ポリマーシートとしては、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタラート(PET)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0083】
また、絶縁体層は、絶縁性を確保することができる材料として、絶縁性粒子を含有していることができる。絶縁性粒子としては、例えばアルミナ粒子を挙げることができるが、これに限定されない。
【0084】
モノポーラ型電池ユニットの絶縁性をより向上させる観点から、モノポーラ型電池ユニットを構成する2つの第1の集電体層のうち少なくとも一方が、絶縁体層の外縁の内側に配置されているのが好ましい。第1の集電体層を絶縁体層の外縁の内側に配置させる方法としては、例えば、絶縁体層面積を第1の集電体層の面積よりも大きくすることが挙げられるが、この様な方法に限定されない。
【0085】
絶縁体層は、第1の集電体層よりも小さいヤング率を有しているのが好ましい。絶縁体層のヤング率が第1の集電体層よりも小さい場合、これにより、全固体電池積層体の充放電の際等において、全固体電池積層体の内部において局所的な圧力が加わった場合に、モノポーラ型電池ユニットの各層に係る圧力の差を、面内方向において低減することができる。これにより、全固体電池積層体の入出力特性および耐久性を向上させることができる。
【0086】
絶縁体層及び第1の集電体層のヤング率は、例えば圧縮試験(JIS K7181)等によって測定することができる。
【0087】
《集電タブ》
本開示の全固体電池積層体は、集電タブと接続されていてよい。より具体的には、本開示の全固体電池積層体の積層方向の一方の端部にあるモノポーラ型電池ユニットの一対の第1の集電体層に、第1の集電タブが接続されており、かつ積層方向の他方の端部にあるモノポーラ型電池ユニットの第2の集電体層に、第2の集電タブが接続されていてよい。
【0088】
第1の集電タブ及び第2の集電タブは、それぞれ第1の集電体層及び第2の集電体層と同一の極の集電タブである。例えば、第1の集電体層が正極集電体層であり、第2の集電体層が負極集電体層である場合には、第1の集電タブは、正極集電タブであり、かつ第2の集電タブは、負極集電タブである。
【0089】
集電タブに用いられる材料は、特に限定されず、全固体電池に使用できるものを適宜採用することができる。例えば、集電体層に用いられる材料は、SUS、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、チタン、又はカーボン等であってよいが、これらに限定されない。なかでも、正極集電タブの材料は、アルミニウムであることが好ましく、負極集電タブの材料は、銅であることが好ましい。
【0090】
《外装体》
本開示の全固体電池積層体は、外装体に収容されていてよい。より具体的には、本開示の全固体電池積層体は、外装体の内部に収容されており、かつ第1の集電タブ及び第2の集電タブが、外装体の外部に延出していてよい。
【0091】
本開示の全固体電池積層体を収容することができる外装体は、全固体電池積層体を封止することができる任意の構造を有していることができる。
【0092】
全固体電池積層体が、空気中の酸素や水蒸気等に触れることによって劣化する材料を用いている場合には、外装体の材料は空気中の酸素や水蒸気等に対する非透過性を有する材料であることが好ましく、例えば鉄、銅、アルミニウム、真鍮、ステンレス鋼、又は鋼等からなる金属層と、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、又はポリ塩化ビニル等からなるシーラント材層とを有するラミネートシートであってよい。
【実施例】
【0093】
《実施例1》
正極集電体層、正極活物質層、固体電解質層、負極活物質層、負極集電体層、負極活物質層、固体電解質層、正極活物質層、及び正極集電体層がこの順に積層されているモノポーラ型電池ユニットを3つ作製した。
【0094】
これらのモノポーラ型電池ユニット同士を、間に絶縁性ポリマーフィルムを挟んで互いに積層した。積層した各モノポーラ型電池ユニット同士の正極集電体層及び負極集電体層を、
図2に示すように接続して、実施例1の全固体電池積層体を完成させた。
【0095】
実施例1の全固体電池積層体に対して、1/3Cの定電流かつ1/100Cの定電圧での充電及び1/3Cの定電流かつ1/100Cの定電圧での放電を交互に3サイクル行い、電池として機能することを確認した。この充放電条件において、実施例1の全固体電池積層体は、初期放電電圧が約7.5Vであった。また、3サイクル後の容量維持率は、約99.8%であった。なお、各モノポーラ型電池ユニット単独の理論上の初期放電電圧は、2.8Vであった。
【符号の説明】
【0096】
10 モノポーラ型電池ユニット
11 第1の集電体層
12 第1の活物質層
13 固体電解質層
14 第2の活物質層
15 第2の集電体層
20 絶縁体層
30 第1の集電タブ
40 第2の集電タブ
50 外装体
100 全固体電池積層体