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特許7562948ジャガイモ包装体、ジャガイモの鮮度保持方法およびカビ発生抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】ジャガイモ包装体、ジャガイモの鮮度保持方法およびカビ発生抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A23B 7/00 20060101AFI20241001BHJP
   B65D 85/50 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
A23B7/00 101
B65D85/50 120
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019235979
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021103948
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】大槻 みどり
【審査官】天野 皓己
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-172176(JP,A)
【文献】特開2018-172142(JP,A)
【文献】特開2008-173012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B 7/00 - 9/34
B65D 85/50 - 85/52
A23L 19/00 - 19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂フィルムから構成されたジャガイモ用鮮度保持包装袋にジャガイモが収容されたジャガイモ包装体であって、
前記ジャガイモ用鮮度保持包装袋は、貫通孔を有さず、
40℃、90%RHにおけるジャガイモ100gあたりの水蒸気透過量が1.1g/day・atm以上、3.3g/day・atm以下であり、
ジャガイモ100gあたりの前記ジャガイモ用鮮度保持包装袋の内面積が50cm 以上200cm 以下である、ジャガイモ包装体。
【請求項2】
前記合成樹脂フィルムの厚みが、10μm以上150μm以下である、請求項1に記載のジャガイモ包装体。
【請求項3】
前記合成樹脂フィルムは、単層または多層構造であって、ポリエチレン、エチレン共重合体、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリアミド樹脂の中から選ばれる1種または2種以上を含む、請求項1または2に記載のジャガイモ包装体。
【請求項4】
請求項1乃至いずれか一項に記載のジャガイモ包装体を10℃±2℃の環境下で保存する、ジャガイモの鮮度保持方法。
【請求項5】
請求項1乃至いずれか一項に記載のジャガイモ包装体を10℃±2℃の環境下で保存する、カビ発生抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャガイモ用鮮度保持包装容器、ジャガイモ包装体、ジャガイモの鮮度保持方法およびカビ発生抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
青果物は収穫後も呼吸し続けており、呼吸が活発なほど劣化が進みやすい。青果物の呼吸は、大気中の組成とは異なる適度な酸素、二酸化炭素環境下では抑制される。このような条件下で、青果物を保存した際、青果物の劣化や追熟は抑制される。そのため、近年、青果物の包装方法として、MA(Modified Atmosphere)包装と呼ばれる技術を用いて青果物の鮮度を保持する方法が用いられている。かかるMA包装と呼ばれる技術は、包装容器によって包装した青果物の呼吸速度と、包装容器のガス透過速度のバランスを調節することで、大気よりも青果物の保存に適した酸素、二酸化炭素環境を実現するものである(特許文献1~3等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平2-85181号公報
【文献】特開平9-252718号公報
【文献】特開2007-186248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、青果物の中でも、ジャガイモ等の根菜類は、冷蔵保存される場合と常温保存される場合とがある。本発明者は、従来のMA包装と呼ばれる鮮度保持技術を利用してジャガイモを冷蔵保存するとジャガイモの鮮度が十分に保持されない場合があるという新たな課題を見出した。
具体的には、地中に埋まった状態で育つジャガイモなどの根菜は、果実等の光に照らされて成長する青果物と異なり、収穫後の貯蔵、流通または保存中に光が照射されることにより、呼吸量が増大し、結果として劣化が生じやすくなる傾向にある。そしてジャガイモなどの根菜が冷蔵保存される場合、萌芽の発生は低減されるものの、カビが発生し、安定した鮮度保持を十分に保持することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者はかかる新たな課題を解決する観点から鋭意検討を行った結果、MA包装容器が特定の水蒸気透過量を満たすことが課題解決に有効であることを見出した。すなわち、本発明は、MA包装容器が特定の水蒸気透過量を満たすときとそうでないときにおいて、ジャガイモの鮮度が十分に保持される場合と保持されない場合とに選別できるという新たな知見に基づくものであり、特定の水蒸気透過量を指標とするものである。
【0006】
本発明によれば、
合成樹脂フィルムから構成されたジャガイモ用鮮度保持包装容器であって、
前記ジャガイモ用鮮度保持包装容器にジャガイモが収容されたとき、40℃、90%RHにおけるジャガイモ100gあたりの水蒸気透過量が1.1g/day・atm以上、3.3g/day・atm以下である、ジャガイモ用鮮度保持包装容器が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、上記ジャガイモ用鮮度保持包装容器にジャガイモが収容されたジャガイモ包装体が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、上記ジャガイモ用鮮度保持包装容器にジャガイモを収容して、10℃±2℃の環境下で保存する、ジャガイモの鮮度保持方法が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、上記ジャガイモ用鮮度保持包装容器にジャガイモを収容して、10℃±2℃の環境下で保存する、カビ発生抑制方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ジャガイモの鮮度をより長期間保持できる技術を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、「略」という用語は、特に明示的な説明の無い限りは、製造上の公差や組立て上のばらつき等を考慮した範囲を含むことを表す。また、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
【0012】
<ジャガイモ用鮮度保持包装容器>
本実施形態のジャガイモ用鮮度保持包装容器(以下、単に「包装容器」とも称する)は、以下の指標を満たすものである。
指標:ジャガイモ用鮮度保持包装容器にジャガイモが収容されたとき、40℃、90%RHにおけるジャガイモ100gあたりの水蒸気透過量が1.1g/day・atm以上、3.3g/day・atm以下である。
本実施形態の包装容器によれば、当該水蒸気透過量を上記下限値以上とすることで、ジャガイモの呼吸、蒸散を適度に維持し、重量が低減するのを抑制して鮮度を保持できるとともに、ジャガイモの呼吸、蒸散によって包装容器内の湿度が高くなりカビが繁殖しやすくなることを抑制できる。
一方、冷蔵保存下では包装容器の周囲の湿度が高くなりやすいところ、本実施形態の包装容器によれば、当該水蒸気透過量を上記上限値以下とすることで、多湿な空気が包装容器内に入り込み、包装容器内が結露しやすくなることを抑制できる。その結果、カビの発生を抑制できる。また、水蒸気透過量を上記上限値以下であれば、ジャガイモの呼吸を適度に維持し、重量減少を抑制し鮮度を保持できる。
また、本実施形態のジャガイモ用鮮度保持包装容器にジャガイモが収容されたとき、40℃、90%RHにおけるジャガイモ100gあたりの水蒸気透過量は、好ましくは、1.2g/day・atm以上、3.0g/day・atm以下、より好ましくは、1.5g/day・atm以上、2.8g/day・atm以下、さらに好ましくは、1.8g/day・atm以上、2.60g/day・atm以下である。
当該水蒸気透過量を、上記下限値以上とすることにより、よりカビ発生を抑制でき、上記上限値以下とすることにより、重量残存率を保持しつつ、カビ発生を抑制できるようになる。
【0013】
なお、水蒸気透過量は、JIS Z0208(カップ法)に準拠した方法によって測定することができる。
【0014】
また、包装容器の水蒸気透過量は、後述する合成樹脂フィルムの材料の選択、合成樹脂フィルムの製造方法、合成樹脂フィルムの層構造、貫通孔の有無及び貫通孔の平均径、数などを制御することによって、調整することができる。
【0015】
[合成樹脂フィルム]
合成樹脂フィルムは、ジャガイモを外部から視認できる観点から、透明または半透明であることが好ましく、透明であることがより好ましい。また、ジャガイモを特定する等の目的で印刷が施されたものであってもよい。
【0016】
合成樹脂フィルムを構成する合成樹脂は、ジャガイモの包装に用いることができるものであれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。
例えば、各種ポリエチレンおよびエチレン共重合体、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレートおよびポリ乳酸などのポリエステル樹脂、6ナイロンなどのポリアミド樹脂などが挙げられる。これらはホモポリマーであってもよく、2種類以上のコポリマーであってもよく、これらホモポリマーやコポリマーを2種類以上含むブレンド物であってもよい。
また、上記各種ポリエチレンおよびエチレン共重合体の具体例としては、エチレン・ビニルアルコール共重合体、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン-直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン-アクリル酸コポリマー、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-α-オレフィンコポリマーなどのコポリマーあるいはアイオノマーなどが挙げられる。これらは1種または2種以上含んだものでもよく、これらと他の樹脂とを混合したものであってもよい。
【0017】
なかでも、水蒸気透過量を適切に制御する観点から、ポリエチレン、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ乳酸などのポリエステル樹脂、およびナイロンなどのポリアミド樹脂であることが好ましく、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリスチレン、ポリ乳酸、ナイロンであることがより好ましい
【0018】
なお、価格、物性の観点からは、ヒートシール可能な防曇延伸ポリプロピレンフィルム、低密度ポリエチレンフィルム、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム、メタロセン触媒ポリエチレンを用いることが好ましい。
【0019】
合成樹脂フィルムの成型方法は、特に限定されないが、押出、インフレーション、カレンダーリング等の方法が用いられる。合成樹脂フィルムを成型する際、必要に応じて、防曇剤等の添加物を混練してもよく、2種類以上の樹脂をブレンドしてもよい。
また、合成樹脂フィルムに、延伸処理やアニーリングなどを施してもよく、さらに、シーラント層を設けたものでもよい。なかでも、延伸処理を施すことにより、合成樹脂フィルムの剛性、耐ピンホール性、水蒸気・酸素バリア性、および見栄えを向上できる。例えば、延伸ナイロン、延伸ポリ乳酸、延伸ポリスチレンであることが好ましい。
【0020】
合成樹脂フィルムは、単層として用いてもよいし、2層以上の多層構造として用いてもよい。
【0021】
例えば、ジャガイモを包装するための十分な強度を得る観点からは、無延伸ポリプロピレン、延伸ポリプロピレン、無延伸ナイロン、延伸ナイロン、延伸ポリエステルなどのフィルムに対し、ポリエチレンをドライラミネーション、押出しラミネーション、共押し出しにより多層フィルムとしたものを用いることが好ましい。
【0022】
合成樹脂フィルムの平均厚みは、10μm以上、150μm以下が好ましく、15μm以上、100μm以下がより好ましく、20μm以上、50μm以下がさらに好ましい。
合成樹脂フィルムの平均厚みを上記下限値以上とすることにより、酸素透過量、水蒸気透過量をより高度に制御し易くするとともに、包装容器の強度を高めることができる。一方、合成樹脂フィルムの平均厚みを上記上限値以下とすることにより、包装容器の取扱性を良好にし、適切な水蒸気透過量、酸素透過量を付与すると共に、生産コストも低くできる。
【0023】
[貫通孔]
本実施形態の包装容器は、貫通孔を有していてもよい。これにより、水蒸気透過量を安定的に調整できるようになる。また、ジャガイモの鮮度を効果的に保持しやすくなる。
【0024】
貫通孔の平面形状としては、たとえば、円形、多角形、またはスリットであってもよい。円形とは、真円形に限定されず、略円形を含むものである。また、円形以外にも、半円形や三日月形状であってもよい。多角形とは、三角形、四角形、および五角形等の三つ以上の線分によって囲まれた形状であればよい。スリットとは、包装容器を構成する合成樹脂フィルムを貫通している切り込み、細隙であって、直線、曲線、L字型、×印などであってもよく、その長さ等も特に限定されない。
【0025】
貫通孔の平均直径は30μm~1100μmであることが好ましく、40μm~500μmであることがより好ましく、50μm~200μmであることがさらに好ましい。
貫通孔の平均直径を上記下限値以上とすることにより、水蒸気透過量、酸素透過量が向上し、カビ発生を抑制しつつ、鮮度を保持しやすくなる。一方、貫通孔の平均直径を上記上限値以下とすることにより、多湿な外気が入り込み、カビが発生しやすくなることを抑制できる。また、本実施形態の包装容器の特定の水蒸気透過量への影響を最小限にしつつ、適度な酸素を取り込むことができるようになる。
なお、貫通孔の平均直径は、貫通孔の開孔面積から貫通孔を正円として算出される。
【0026】
また、貫通孔の個数は、貫通孔の大きさや水蒸気透過量に応じて適宜調整されるが、安定的な水蒸気透過量を得る観点から、包装容器の内面積1000cmに対して、1個~150個であることが好ましく、2個~80個であることがより好ましく、3個~50個であることがさらに好ましい。
【0027】
上記の貫通孔は、包装容器を製造する際、予め合成樹脂フィルムに形成されていてもよく、合成樹脂フィルムを容器に形成したあとに形成されてもよく、合成樹脂フィルムを容器に形成した前後において形成されてもよい。
貫通孔の形成方法は、公知の方法を用いることができ、例えば、熱針による加工法、レーザー光により穿孔する方法、ロールカッターなどの金型を利用した方法等が挙げられる。
【0028】
包装容器の23℃、60%RHにおける酸素透過量は、ジャガイモの呼吸を保持し、鮮度を保持する観点から、好ましくは2cc/m・day・atm以上であり、より好ましくは5cc/m・day・atm以上であり、さらに好ましは300cc/m・day・atm以上である。
一方、包装容器の23℃、60%RHにおける酸素透過量は、ジャガイモの品質保持、鮮度保持する観点から、好ましくは50000cc/m・day・atm以下であり、より好ましくは10000cc/m・day・atm以下であり、さらに好ましくは7500cc/m・day・atm以下である。
【0029】
また、包装容器の酸素透過量は、上述した合成樹脂フィルムの材料の選択、合成樹脂フィルムの製造方法、合成樹脂フィルムの層構造、貫通孔の有無及び貫通孔の平均径、数などを制御することによって、調整することができる。
【0030】
[内面積]
本実施形態の包装容器の内面積は、ジャガイモ100gあたり50cm以上1000cm以下が好ましく、70cm以上500cm以下がより好ましく、90cm以上200cm以下がより好ましい。包装容器の内面積を、上記数値範囲内とすることで、ジャガイモの重量減少を抑制して鮮度を保持しつつ、カビの発生を抑制しやすくなる。
【0031】
[容器]
ジャガイモ用鮮度保持包装容器の形態としては、袋状、自立型容器等が挙げられる。なかでも、鮮度保持効果を安定的に発揮できる点から、袋状であることが好ましい。袋としては、ジャガイモ収容用の袋として公知のものを用いることができる。また、袋の製造方法は、特に限定されないが、例えば、合成樹脂フィルムを溶断してシールする方法や合成樹脂フィルムをカットした後ヒートシールする方法などが挙げられる。
【0032】
<ジャガイモ包装体>
本実施形態のジャガイモ包装体は、上記のジャガイモ用鮮度保持包装容器にジャガイモが収容されたものを意図する。ジャガイモの収容量は、ジャガイモの大きさ、重さ、包装容器内の内面積に応じて、適宜設定される。
【0033】
本実施形態のジャガイモ包装体は、ジャガイモを収容した後、密封されることが好ましく、開口した部分にヒートシール処理を施してもよいし、バックシーリングテープ、結束帯、輪ゴム、かしめ等の部材を用いてもよい。
【0034】
ジャガイモは、鮮度保持効果を安定的に得るため、収穫後水洗され、水気が除去されたものであることが好ましい。またはジャガイモへの水分による影響をできるだけ早期に取り除く観点から、ジャガイモに付着している水分を真空予冷等により除去してもよい。
【0035】
また、本実施形態におけるジャガイモ包装体の重量保持率は、好ましくは95%以上であり、より好ましくは97%以上であり、さらに好ましくは98%以上である。かかる数値とすることで、ジャガイモの鮮度保持効果を向上できる。
【0036】
<ジャガイモの鮮度保持方法>
本実施形態のジャガイモの鮮度保持方法は、上記のジャガイモ用鮮度保持包装容器にジャガイモを収容して、10℃±2℃の環境下で保存するものである。これにより、カビの発生を抑制し、ジャガイモの鮮度を保持できる。
10℃±2℃の環境下とは、本実施形態のジャガイモ用鮮度保持包装容器を用いた時のジャガイモの鮮度保持に適した温度である。
【0037】
<カビ発生抑制方法>
本実施形態のカビ発生抑制方法は、上記のジャガイモ用鮮度保持包装容器にジャガイモを収容して、10℃±2℃の環境下で保存するものである。これにより、ジャガイモにカビが発生することを抑制できる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.
合成樹脂フィルムから構成されたジャガイモ用鮮度保持包装容器であって、
前記ジャガイモ用鮮度保持包装容器にジャガイモが収容されたとき、40℃、90%RHにおけるジャガイモ100gあたりの水蒸気透過量が1.1g/day・atm以上、3.3g/day・atm以下である、ジャガイモ用鮮度保持包装容器。
2.
前記合成樹脂フィルムの厚みが、10μm以上150μm以下である、1.に記載のジャガイモ用鮮度保持包装容器。
3.
前記ジャガイモ100gあたりの前記ジャガイモ用鮮度保持包装容器の内面積が50cm 以上1000cm 以下である、1.または2.に記載のジャガイモ用鮮度保持包装容器。
4.
前記ジャガイモ用鮮度保持包装容器が、貫通孔を有する、1.乃至3.いずれか一つに記載のジャガイモ用鮮度保持包装容器。
5.
前記ジャガイモ用鮮度保持包装容器の内面積1000cm に対する、前記貫通孔の個数が、1個以上150個以下である、4.に記載のジャガイモ用鮮度保持包装容器。
6.
前記貫通孔の平均孔径が、30μm以上1100μm以下である、4.または5.に記載のジャガイモ用鮮度保持包装容器。
7.
1.乃至6.いずれか一つに記載のジャガイモ用鮮度保持包装容器にジャガイモが収容されたジャガイモ包装体。
8.
1.乃至6.いずれか一つに記載のジャガイモ用鮮度保持包装容器にジャガイモを収容して、10℃±2℃の環境下で保存する、ジャガイモの鮮度保持方法。
9.
1.乃至6.いずれか一つに記載のジャガイモ用鮮度保持包装容器にジャガイモを収容して、10℃±2℃の環境下で保存する、カビ発生抑制方法。
【実施例1】
【0039】
次に、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
【0040】
<実施例1>
1)合成樹脂フィルムAの作製
ナイロン6(宇部興産社製、UBEナイロン(登録商標)1022B)と、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH:日本合成化学工業株式会社製、商品名:ソアノール16DX)とを用い、Tダイ押出機に投入し、共押出Tダイ法にて、2層構造の合成樹脂フィルムAを作製した。得られた合成樹脂フィルムAの厚さは、30μmであった。
2)包装袋の作製
得られた合成樹脂フィルムAのナイロン6からなる層が内側になるようにして該合成樹脂フィルムを円筒状にカットし、袋の底部を190℃、2秒で溶断し、包装袋を作製した。得られた包装袋の袋サイズ(内寸)は175mm×320mmであった。
3)包装体の作製
ジャガイモを包装袋内に収容し、開口部から70mm付近をバックシール(結束)により密封し、包装体を得た。
【0041】
<実施例2>
1)合成樹脂フィルムBの作製
エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂に防曇剤(グリセリンラウレート:デカグリセリンラウレートが、97重量部:3重量部)を2.5重量%に添加した混合材料を、二軸延伸ナイロンフィルム(ユニチカ株式会社製、商品名「エンブレムONBC」厚み25μm)上に、800mg/m(ドライ)となるように塗工して、合成樹脂フィルムBを得た。塗工は、グラビアコート(乾燥温度100℃、乾燥時間10秒)によって行った。得られた合成樹脂フィルムBの厚さは、25μmであった。
2)包装袋の作製
得られた合成樹脂フィルムBをカットし、防曇剤を含む層が内側になるようにして合成樹脂フィルムを2枚重ね合わせ、インパルスシーラー(富士インパルス社製、FI-400Y-10PK)を用いて3方にヒートシール加工を施して10mm幅の熱シール部分を190℃、シール時間1秒で形成し、包装袋を作製した。得られた包装袋の袋サイズ(内寸)は175mm×320mmであった。
3)包装体の作製
ジャガイモを包装袋内に収容し、開口部から70mm付近をバックシール(結束)により密封し、包装体を得た。
【0042】
<実施例3>
1)合成樹脂フィルムBの作製
実施例2と同様にして合成樹脂フィルムBを作製した。
2)包装袋の作製
包装袋の袋サイズ(内寸)を225mm×370mmにした以外は、実施例2と同様にして包装袋を作製した。
3)包装体の作製
ジャガイモを包装袋内に収容し、開口部から70mm付近をバックシール(結束)により密封し、包装体を得た。
【0043】
<実施例4>
1)合成樹脂フィルムBの作製
実施例2と同様にして合成樹脂フィルムBを作製した。
2)包装袋の作製
実施例2と同様にして包装袋を作製し、得られた包装袋全体に、φ60μmの孔を7個、レーザー加工により穿孔した。
3)包装体の作製
ジャガイモを包装袋内に収容し、開口部から70mm付近をヒートシールにより密封し、包装体を得た。
【0044】
<実施例5>
1)合成樹脂フィルムBの作製
実施例2と同様にして合成樹脂フィルムBを作製した。
2)包装袋の作製
実施例2と同様にして包装袋を作製し、得られた包装袋全体に均等になるように、φ130μmの孔を2個、レーザー加工により穿孔した。
3)包装体の作製
ジャガイモを包装袋内に収容し、開口部から70mm付近をヒートシールにより密封し、包装体を得た。
【0045】
<比較例1>
1)合成樹脂フィルムCの作製
ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、品番WFW5T)を溶融し、温度230℃でTダイから押し出し、縦5倍×横9倍の延伸処理を施して、2軸延伸ポリプロピレンフィルム(合成樹脂フィルムC)を得た。得られた合成樹脂フィルムCの厚さは、25μmであった。
2)包装袋の作製
実施例2と同様にして、包装袋を作製した。
3)包装体の作製
ジャガイモを包装袋内に収容し、開口部から70mm付近をバックシール(結束)により密封し、包装体を得た。
【0046】
<比較例2>
1)合成樹脂フィルムAの作製
実施例1と同様にして合成樹脂フィルムAを作製した。
2)包装袋の作製
実施例2と同様にして、包装袋を作製した。ただし、合成樹脂フィルムAの厚さは共押出Tダイ法における時間当たりの吐出樹脂量を2倍にすることにより、60μmとした。
3)包装体の作製
ジャガイモを包装袋内に収容し、開口部から70mm付近をバックシール(結束)により密封し、包装体を得た。
【0047】
<比較例3>
1)合成樹脂フィルムAの作製
実施例1と同様にして合成樹脂フィルムAを作製した。
2)包装袋の作製
実施例2と同様にして、包装袋を作製した。ただし、合成樹脂フィルムAの厚さは、共押出Tダイ法における時間当たりの吐出樹脂量を1.3倍にすることにより40μmとした。
3)包装体の作製
ジャガイモを包装袋内に収容し、開口部から70mm付近をバックシール(結束)により密封し、包装体を得た。
【0048】
<比較例4>
1)合成樹脂フィルムBの作製
実施例2と同様にして合成樹脂フィルムBを作製した。
2)包装袋の作製
実施例2と同様にして、包装袋を作製した。ただし、包装袋の袋サイズ(内寸)を275mm×420mmに変更した。
3)包装体の作製
ジャガイモを包装袋内に収容し、開口部から70mm付近をバックシール(結束)により密封し、包装体を得た。
【0049】
得られた包装体を用いて、以下の測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0050】
<測定>
・40℃、90%RHにおける水蒸気透過量の測定
JIS Z0208(カップ法)に準拠した方法で測定した。測定条件は、40℃、90%RHに設定した。また、秤量は、23℃、50%RHの条件下で実施した。なお、単位は、g/(day・atm・ジャガイモ100g)である。
また、合成樹脂フィルムの水蒸気透過量が大きすぎることによりJIS Z0208(カップ法)に準拠した方法を使用できない場合には、カップの代わりに50mm×100mm(内寸)の袋に塩化カルシウムをヒートシールで密封包装して、この袋の重さの経時変化より水蒸気透過量を算出した。この場合、袋の保管期間は、塩化カルシウムが吸湿しきらない範囲内とした。
【0051】
・貫通孔の平均孔径(μm)の測定
マイクロスコープ(キーエンス社製、VH-6300)を用いて包装袋における内表面の開孔面積を孔5点について測定した。開孔部を真円と仮定して、開孔面積から直径を算出し、平均直径を算出した。
【0052】
<評価>
上記で得られた各ジャガイモ入り包装体(いずれもジャガイモ内容量700~900gの範囲内)を、10℃にて23日間保存した。その後、包装体からジャガイモを取り出し、以下の方法により「カビ発生率(%)」「萌芽率(%)」「重量残存率(%)」をそれぞれ測定した。
・カビ発生率(%):カビの有無を目視で観察し、ジャガイモの全個数に対するカビの発生が観察されたジャガイモの個数を算出し、カビ発生率(%)とした。
・萌芽率(%):発芽の有無を目視で観察し、ジャガイモの全個数に対する発芽が観察されたジャガイモの個数を算出し、萌芽率(%)とした。
・重量残存率(%):保存前のジャガイモの重量(g)に対する保存後のジャガイモの重量(g)の割合(%)を算出した。
【0053】
【表1】