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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】定着装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20241001BHJP
   H05B 3/06 20060101ALI20241001BHJP
   H05B 3/02 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
G03G15/20 515
H05B3/06 B
H05B3/02 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020012659
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021117448
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-01-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】池野 雄一
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-191734(JP,A)
【文献】特開2020-003689(JP,A)
【文献】特開2002-299016(JP,A)
【文献】特開2020-201385(JP,A)
【文献】特開2019-164996(JP,A)
【文献】特開2000-243539(JP,A)
【文献】特開2016-139487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
H05B 1/00-3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向および短手方向に延びた平板状であり、第1面と、前記第1面の反対側の第2面を有するヒータであって、
凹部を有する金属製の基板と、
前記基板に設けられた抵抗発熱体からなる発熱パターンと、
前記発熱パターンと導通する複数の給電端子であって、前記ヒータの長手方向の一方の端部に設けられた複数の給電端子と、を有するヒータと、
前記ヒータを支持するホルダであって、
前記ヒータの前記第1面を支持する支持壁と、
前記支持壁の前記長手方向の一方の端から前記長手方向および前記短手方向に直交する方向に突出する第1側壁と、
前記第1側壁から前記長手方向の他方に突出し、前記ヒータの前記第2面に接触可能に設けられた第1接触部と、
前記長手方向において前記凹部と接触する凸部と、を有するホルダと、
前記給電端子に接続する電極と、前記長手方向において前記ホルダと係合する係合部と、を有するコネクタと、
を備え、
前記凹部は、前記長手方向において、前記発熱パターンと、前記複数の給電端子のうち前記発熱パターンに最も近い給電端子と、の間に設けられ、
前記複数の給電端子は、前記長手方向において、前記凹部と前記第1接触部の間に位置し、
前記ヒータの前記長手方向における端面は、前記第1側壁と前記長手方向において対面していることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記コネクタは、前記長手方向において、前記凸部と前記第1接触部との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記ホルダは、
前記支持壁の前記長手方向の他方の端から前記長手方向および前記短手方向に直交する方向に突出する第2側壁と、
前記第2側壁から前記第1側壁に向かって前記長手方向に突出し、前記ヒータの前記第2面に接触可能に設けられた第2接触部と、をさらに有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記第2接触部を向く前記第1接触部の端面と、前記ヒータの前記長手方向の端面のうち、前記第1接触部との距離が小さい方の端面と、の前記長手方向の距離が、前記第1接触部を向く前記第2接触部の端面と、前記ヒータの前記長手方向の端面のうち、前記第2接触部との距離が小さい方の端面と、の前記長手方向の距離よりも小さいことを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記コネクタと前記第1接触部との前記長手方向の距離は、前記コネクタと前記第2接触部との前記長手方向の距離よりも小さいことを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記ヒータは、前記給電端子と前記発熱パターンとを電気的に接続する給電パターンを有し、
前記給電パターンは、
前記発熱パターンから前記発熱パターンと前記凹部との間の位置まで前記長手方向に沿って延びる第1パターンと、
前記第1パターンの前記給電端子側の端部から、前記凹部が位置する前記ヒータの短手方向の端部から離れるように延びる第2パターンと、
前記第2パターンの前記給電端子側の端部から、前記複数の給電端子の1つに向かって延びる第3パターンと、を有し、
前記凹部は、前記短手方向から見て、前記第3パターンと重なる位置に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記ホルダは、前記ヒータを支持する面の反対側の面から突出する突出部を有し、
前記係合部は、前記突出部を受け入れる溝であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項8】
前記突出部は、前記ヒータの短手方向における一端から他端まで短手方向に延びていることを特徴とする請求項7に記載の定着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板状のヒータを備えた定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定着装置として、平板状のヒータと、ヒータの長手方向の端部に取り付けられるコネクタおよびコネクタ係止部を備えたものが知られている(特許文献1参照)。具体的に、コネクタとコネクタ係止部は、ヒータの端部を短手方向に挟むようにヒータに取り付けられている。そして、コネクタ係止部が、ヒータの短手方向の一端に形成された凹部に係合することで、コネクタがヒータに対して長手方向にずれることが規制されている。
【0003】
ヒータは、金属製の基板と、基板の一方の面上に設けられた絶縁層と、絶縁層上に設けられた給電端子と、給電端子と導通する発熱パターンと、を有しており、基板はヒータの端面において露出している。ヒータの凹部は、ヒータの長手方向において給電端子と同じ範囲に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-191734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、金属製の基板を有するヒータでは、給電端子と基板の端面の距離が近いと、空気を通って給電端子と基板の端面との間で放電が生じるおそれがある。そのため、給電端子と基板の端面との間に充分な絶縁距離を確保する必要がある。特許文献1のように、ヒータの凹部が、ヒータの長手方向において給電端子と同じ範囲に設けられていると、凹部内で露出する基板の端面と給電端子との距離が近くなってしまうため、充分な絶縁距離を確保するにはヒータの短手方向の幅を広くするしかなかった。ヒータの短手方向の幅が広いと、材料費が高くなるだけでなく、電熱効率が低下する。
【0006】
そこで、本発明は、ヒータに対してコネクタが長手方向にずれるのを良好に抑えつつ、ヒータの短手方向の幅を狭くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の定着装置は、平板状のヒータであって、凹部を有する金属製の基板と、前記基板に設けられた抵抗発熱体からなる発熱パターンと、前記発熱パターンと導通する複数の給電端子であって、前記ヒータの長手方向の一方の端部に設けられた複数の給電端子と、を有するヒータと、前記長手方向において前記凹部と接触する凸部を有し、前記ヒータを支持するホルダと、前記給電端子に接続する電極と、前記長手方向において前記ホルダと係合する係合部と、を有するコネクタと、を備える。そして、前記凹部は、前記長手方向において、前記発熱パターンと、前記複数の給電端子のうち前記発熱パターンに最も近い給電端子と、の間に設けられている。
【0008】
このような構成によれば、ヒータに対してコネクタが長手方向にずれるのを良好に抑えるとともに、凹部が給電端子と長手方向でずれていることにより、充分な絶縁距離を確保しつつヒータの短手方向の幅を狭くすることができる。
【0009】
前記凹部は、前記長手方向において前記コネクタと前記発熱パターンとの間に設けてもよい。
【0010】
これによれば、凹部を給電端子からより遠ざけることができるので、絶縁距離をより確保することができる。
【0011】
前記凹部と、前記複数の給電端子のうち前記発熱パターンに最も近い給電端子と、の距離は、前記凹部と前記発熱パターンとの距離よりも小さくてもよい。
【0012】
これによれば、凹部と接触するホルダの凸部と、コネクタの係合部と接触するホルダの部分とが近くに配置されるので、ヒータに対してコネクタが長手方向にずれるのをより良好に抑えることができる。
【0013】
前記ヒータは、前記給電端子と前記発熱パターンとを電気的に接続する給電パターンを有し、前記給電パターンは、前記発熱パターンから前記発熱パターンと前記凹部との間の位置まで前記長手方向に沿って延びる第1パターンと、前記第1パターンの前記給電端子側の端部から、前記凹部が位置する前記ヒータの短手方向の端部から離れるように延びる第2パターンと、を有してもよい。
【0014】
前記複数の給電端子は、前記ヒータの短手方向の中央にそれぞれ設けてもよく、互いに大きさおよび形状が同一であってもよい。
【0015】
これによれば、給電端子と基板の短手方向のそれぞれの端面との絶縁距離を確保しつつ、ヒータの短手方向の幅が最小となるように給電端子を効率的に配置することができる。
【0016】
前記ホルダは、前記ヒータを支持する面の反対側の面から突出する突出部を有してもよく、前記係合部は、前記突出部を受け入れる溝であってもよい。
【0017】
これによれば、例えばホルダに溝を設けた場合と比べてホルダの強度を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ヒータに対してコネクタが長手方向にずれるのを良好に抑えるとともに、凹部が給電端子と長手方向でずれていることにより、絶縁距離を確保しつつヒータの短手方向の幅を狭くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るレーザプリンタを示す断面図である。
図2】定着装置を示す断面図である。
図3】ヒータを分解して示す斜視図(a)と、ヒータの断面図(b)である。
図4】ヒータを保持しているホルダの平面図(a)と、その両端部の拡大図(b)である。
図5】ヒータを保持しているホルダの部分的な背面図である。
図6】ヒータを保持しているホルダの両端部の拡大断面図であり、一方の端部でコネクタがヒータとホルダを挟持している状態を示す拡大断面図である。
図7】ヒータを保持しているホルダからコネクタを外した状態を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、レーザプリンタ1は、筐体2内に、供給部3と、露光装置4と、プロセスカートリッジ5と、定着装置8とを主に備えている。
【0021】
供給部3は、筐体2内の下部に設けられ、シートSが収容される供給トレイ31と、押圧板32と、供給機構33とを主に備えている。供給トレイ31に収容されたシートSは、押圧板32によって上方に寄せられ、供給機構33によってプロセスカートリッジ5に供給される。
【0022】
露光装置4は、筐体2内の上部に配置され、図示しない光源装置や、符号を省略して示すポリゴンミラー、レンズ、反射鏡などを備えている。露光装置4では、光源装置から出射される画像データに基づく光ビームが、感光体ドラム61の表面で高速走査されることで、感光体ドラム61の表面を露光する。
【0023】
プロセスカートリッジ5は、露光装置4の下方に配置され、筐体2に設けられたフロントカバー21を開いたときにできる開口から筐体2に対して着脱可能となっている。プロセスカートリッジ5は、ドラムユニット6と、現像ユニット7とを備えている。ドラムユニット6は、感光体ドラム61と、帯電器62と、転写ローラ63とを主に備えている。また、現像ユニット7は、ドラムユニット6に対して着脱可能となっており、現像ローラ71と、供給ローラ72と、層厚規制ブレード73と、トナーを収容する収容部74とを主に備えている。
【0024】
プロセスカートリッジ5では、感光体ドラム61の表面が、帯電器62により一様に帯電された後、露光装置4からの光ビームによって露光されることで、感光体ドラム61上に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、収容部74内のトナーは、供給ローラ72を介して現像ローラ71に供給され、現像ローラ71と層厚規制ブレード73の間に進入して一定厚さの薄層として現像ローラ71上に担持される。現像ローラ71上に担持されたトナーは、現像ローラ71から感光体ドラム61上に形成された静電潜像に供給される。これにより、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム61上にトナー像が形成される。その後、感光体ドラム61と転写ローラ63の間でシートSが搬送されることで感光体ドラム61上のトナー像がシートS上に転写される。
【0025】
定着装置8は、シートSの搬送方向において、プロセスカートリッジ5の下流側に配置されている。トナー像が転写されたシートSは、定着装置8を通過することでトナー像が定着される。トナー像が定着されたシートSは、搬送ローラ23,24によって排出トレイ22上に排出される。
【0026】
図2に示すように、定着装置8は、加熱ユニット81と、加圧ローラ82とを備えている。加熱ユニット81および加圧ローラ82の一方は、図示せぬ付勢機構によって、他方に対して付勢されている。
【0027】
加熱ユニット81は、ヒータ110と、ホルダ120と、ステイ130と、ベルト140とを備えている。ヒータ110は、平板状のヒータであり、ホルダ120に支持されている。なお、ヒータ110の構造は、後で詳述する。
【0028】
ホルダ120は、樹脂などからなり、ベルト140の内周面141に接触してベルト140を案内するガイド面120Aを有している。ステイ130は、ホルダ120を支持する部材であり、ホルダ120より剛性が大きい板材、例えば、鋼板などを断面視略U字状に折り曲げることで形成されている。
【0029】
ベルト140は、耐熱性と可撓性を有する無端状のベルトであり、ステンレス鋼等の金属からなる金属素管と、その金属素管を被覆するフッ素樹脂層とを有する。ヒータ110、ホルダ120およびステイ130は、ベルト140の内側に配置されている。ベルト140は、ヒータ110、ホルダ120およびステイ130の周りを回転するように構成されている。
【0030】
加圧ローラ82は、金属製のシャフト82Aと、シャフト82Aを被覆する弾性層82Bとを有している。加圧ローラ82は、ヒータ110との間でベルト140を挟むことで、シートSを加熱・加圧するためのニップ部NPを形成している。
【0031】
加圧ローラ82は、筐体2内に設けられた図示しないモータから駆動力が伝達されて回転駆動するように構成されており、回転駆動することでベルト140(またはシートS)との摩擦力によりベルト140を従動回転させるようになっている。これにより、トナー像が転写されたシートSは、加圧ローラ82と加熱されたベルト140の間を搬送されることでトナー像が熱定着されるようになっている。
【0032】
図3(a),図3(b)に示すように、ヒータ110は、細長い平板であり、加熱ユニット81または加圧ローラ82の付勢方向に直交する第1面111および第2面112を有している。
【0033】
以下、ヒータ110の長手方向を単に「長手方向」とも称し、ヒータ110の短手方向を単に「短手方向」とも称する。ヒータ110の長手方向は加圧ローラ82の回転軸方向、すなわちシャフト82Aの延びる方向である。ヒータ110の短手方向は、ニップ部NPにおけるシートSの搬送方向であり、ニップ部NPにおけるベルト140の移動方向である。
【0034】
ヒータ110は、凹部113を有している。凹部113は、後述するホルダ120と接触して、ヒータ110の長手方向への移動を規制する部位である。凹部113は、ヒータ110の長手方向の一端部に設けられており、ヒータ110の短手方向の一方側の端部から短手方向に凹んでいる。
【0035】
本実施形態では、ヒータ110の第2面112が加圧ローラ82に向くように、ヒータ110が配置されることとする。ヒータ110は、基板Mと、第1絶縁層G1と、第2絶縁層G2と、発熱パターンPHと、給電パターンPEと、給電端子Tと、保護層Cとを有している。
【0036】
基板Mは、細長い平板であり、ステンレス鋼などの金属からなっている。基板Mは、ヒータ110の第1面111に対応する第1面M1およびヒータ110の第2面112に対応する第2面M2を有している。また、基板Mは、ヒータ110の凹部113を構成する凹部M11を有している。基板Mは、ヒータ110の端面において露出する。
【0037】
図3(a),図3(b)に示すように、第1絶縁層G1、第2絶縁層G2および保護層Cは、ガラス材などの絶縁体からなっている。第1絶縁層G1は、基板Mの第1面M1の上に形成されている。第2絶縁層G2は、基板Mの第2面M2の上に形成されている。
【0038】
第2絶縁層G2の上には、発熱パターンPH、給電端子Tおよび給電パターンPEが形成されている。つまり、発熱パターンPH、給電端子Tおよび給電パターンPEは、第2絶縁層G2を介して基板Mに設けられている。
【0039】
発熱パターンPHは、通電により発熱する抵抗発熱体からなっている。本実施形態では、発熱パターンPHは、ヒータ110の短手方向における各端部と長手方向の他端部に沿って延びるU字形のパターンとして形成されている。
【0040】
給電端子Tは、発熱パターンPHに電気を供給するための端子であり、ヒータ110の長手方向の一端部に2つ設けられている。各給電端子Tは、ヒータ110の短手方向の中央にそれぞれ長手方向に並んで設けられており、互いに大きさおよび形状が同一である。各給電端子Tは、給電パターンPEを介して発熱パターンPHと導通している。各給電端子Tは、後述するコネクタ200(図4参照)と接続可能となっており、コネクタ200を介して筐体2内の図示せぬ電源に接続される。以下の説明では、発熱パターンPHから遠い方を第1給電端子T1、近い方を第2給電端子T2とも称する。
【0041】
給電パターンPEは、給電端子Tと発熱パターンPHとを電気的に接続するためのパターンである。給電パターンPEは、第1給電端子T1と発熱パターンPHを接続する第1給電パターンPE1と、第2給電端子T2と発熱パターンPHを接続する第2給電パターンPE2を有する。給電パターンPEと給電端子Tは、発熱パターンPHよりも抵抗値の小さな導電性の材料からなっている。
【0042】
保護層Cは、各給電端子Tが外部に露出するように、給電パターンPEと発熱パターンPHとを覆っている。
【0043】
図4に示すように、凹部113は、長手方向において、発熱パターンPHと、第2給電端子T2と、の間に位置している。また、長手方向において、凹部113と第2給電端子T2との距離は、凹部113と発熱パターンPHとの距離よりも小さい。つまり、凹部113は、発熱パターンPHよりも第2給電端子T2に近接して配置されている。さらに、凹部113は、長手方向において後述するコネクタ200と発熱パターンPHとの間に配置されている。
【0044】
給電端子Tとヒータ110の端面との距離L1は、給電端子Tとヒータ110の端面において露出する基板Mとの間で放電が生じるおそれがない距離(最小絶縁距離)以上となっている。距離L1を最小絶縁距離とすることにより、ヒータ110の幅を狭くすることができる。給電端子Tと凹部113との最短距離L2は、距離L1よりも長く、すなわち最小絶縁距離以上である。これにより、給電端子Tと凹部113内で露出する基板Mの端面との間の放電が抑制されている。
【0045】
第1給電パターンPE1は、第1パターンPE11と、第2パターンPE12と、第3パターンPE13と、第4パターンPE14と、を有する。第1パターンPE11は、発熱パターンPHから発熱パターンPHと凹部113(M11)との間の位置まで長手方向に沿って延びている。第2パターンPE12は、第1パターンPE11の給電端子T側の端部から、凹部113(M11)が位置するヒータ110の短手方向の一方の端部から離れるように延びている。第2パターンPE12は、長手方向に対して傾斜している。第3パターンPE13は、第2パターンPE12の給電端子T側の端部から、第2給電端子T2とヒータ110の短手方向の他方の端部との間を通って、長手方向に沿って延び、第4パターンPE14に接続される。第4パターンPE14は、第3パターンPE13の第1給電端子T1側の端部から第1給電端子T1まで短手方向に沿って延びている。
【0046】
第2給電パターンPE2は、第1パターンPE21と、第2パターンPE22と、第3パターンPE23と、を有する。第1パターンPE21は、発熱パターンPHから発熱パターンPHと凹部113(M11)との間の位置まで長手方向に沿って延びている。第2パターンPE22は、第1パターンPE21の給電端子T側の端部から、凹部113(M11)が位置するヒータ110の短手方向の一方の端部から離れるように延びている。第2パターンPE22は、長手方向に対して傾斜している。第3パターンPE23は、第2パターンPE22の給電端子T側の端部から、第2給電端子T2まで長手方向に沿って延びている。
【0047】
次に、ホルダ120の構造について説明する。
図4および図6に示すように、ホルダ120は、支持壁121と、側壁122と、第1接触部123と、第2接触部124と、凸部125と、突出部126と、を有している。
【0048】
支持壁121は、ヒータ110を支持する支持面121Aを有する。支持面121Aは、ヒータ110の第1面111に接触する。
【0049】
側壁122は、支持面121Aから突出し、支持壁121の周囲に沿って設けられている。側壁122は、第1側壁122Aと、第2側壁122Bと、第3側壁122Cと、第4側壁122Dと、を有している。第1側壁122Aは、支持壁121の長手方向の一方の端部に位置し、短手方向に沿って延びている。第2側壁122Bは、支持壁121の長手方向の他方の端部に位置し、短手方向に沿って延びている。第3側壁122Cは、支持壁121の短手方向の一方の端部に位置し、長手方向に沿って延びている。第4側壁122Dは、支持壁121の短手方向の他方の端部に位置し、長手方向に沿って延びている。
【0050】
第1接触部123は、第1側壁122Aから第2側壁122Bに向かって長手方向に突出し、ヒータ110の第2面112と接触可能となるように設けられている。つまり、第1接触部123は、ヒータ110の面111に直交する方向においてヒータ110の第2面112と対向している。第1接触部123は、長手方向において第1距離L3にわたってヒータ110の第2面112と接触可能となっている。第1距離L3は、第2側壁122Bを向く第1接触部123の端面123Aと、ヒータ110の長手方向の端面110A,110Bのうち、第1接触部123との距離が小さい方の端面110Aと、の長手方向の距離である。以下、ヒータ110の面111に直交する方向を単に「直交方向」とも称する。
【0051】
第2接触部124は、第1接触部123から長手方向に離間されている。第2接触部124は、第2側壁122Bから第1接触部123に向かって長手方向に突出し、ヒータ110の第2面112と接触可能となるように設けられている。つまり、第2接触部124は、直交方向においてヒータ110の第2面112と対向している。第2接触部124は、長手方向の第2距離L4にわたってヒータ110の第2面112と接触可能となっている。第2距離L4は、第1接触部123を向く第2接触部124の端面124Aと、ヒータ110の長手方向の端面110A,110Bのうち、第2接触部124との距離が小さい方の端面110Bと、の長手方向の距離である。
【0052】
第1距離L3は、第2距離L4よりも小さい。つまり、直交方向から見て、第1接触部123がヒータ110と重なる長さ(かかり代)は、第2接触部124がヒータ110と重なる長さよりも短い。
【0053】
図4に示すように、第1接触部123は2つあり、ヒータ110の長手方向の一方の端部の角部とそれぞれ重なっている。
また、第2接触部124は2つあり、ヒータ110の他方の端部の角部とそれぞれ重なっている。
【0054】
ホルダ120は、長手方向に延びる細長い部材である。ホルダ120は、ヒータ110よりも一回り大きく、ヒータ110の周囲を側壁122で囲んでヒータ110を保持している。ホルダ120は、前述したガイド面120Aを短手方向の両端に有している。
【0055】
凸部125は、第3側壁122Cから第4側壁122Dに向かって短手方向に延びている。凸部125は、ヒータ110の凹部113に入っている。凸部125は、ヒータ110の凹部113と長手方向において接触し、ヒータ110の長手方向の移動を規制するように機能する。
【0056】
凸部125は、第1接触部123と同じホルダ120の長手方向の端部に設けられている。つまり、凸部125と第1接触部123との長手方向の距離は、凸部125と第2接触部124との長手方向の距離よりも小さい。
【0057】
図6図7に示すように、突出部126は、ホルダ120の長手方向の一方の端部において、支持壁121の支持面121Aとは反対側の面121Bから突出している。突出部126は、後述するコネクタ200の長手方向の範囲において、長手方向の略中央に設けられており、短手方向に延びている(図5参照)。
【0058】
続いて、コネクタ200の構造について説明する。
コネクタ200は、ヒータ110に電力を供給するための部材である。コネクタ200は、ヒータ110の一部をホルダ120に固定するための固定部材としても機能する。コネクタ200は、ヒータ110の短手方向の一方側からヒータ110およびホルダ120の一端部に取り付けられている。コネクタ200は、樹脂などからなるコネクタ本体200Aと、金属などの導電性の材料からなる、2つの電極200Bとを備えている。
【0059】
各電極200Bは、ヒータ110の各給電端子Tに接続される電極であり、長手方向に間隔を空けて並んでいる。各電極200Bは、図示せぬ配線を介して図示せぬ電源に接続されている。
【0060】
コネクタ本体200Aは、直方体形状のベース部210と、ベース部210からヒータ110に向けて延びる第1延出部211および第2延出部212とを有している。第1延出部211および第2延出部212は、直交方向において、間隔を空けて並んでいる。第1延出部211および第2延出部212は、ヒータ110とホルダ120とを、直交方向に挟持している。
【0061】
第2延出部212の第1延出部211を向いた面には、係合部としての溝213が設けられている。溝213は、突出部126を受け入れて突出部126と長手方向において接触し、ホルダ120に対するコネクタ200の長手方向の移動を規制する。
【0062】
コネクタ200は、長手方向において第1接触部123と凸部125との間に設けられている。すなわち、コネクタ200と第1接触部123との長手方向の距離は、コネクタ200と第2接触部124との長手方向の距離よりも小さい。
【0063】
次に、本実施形態に係る定着装置8の作用効果について説明する。
定着装置8の組み立ての際には、まず、ヒータ110がホルダ120に取り付けられる。このとき、ヒータ110の長手方向の他方の端部を第2接触部124に挿入し、ヒータ110をたわませながら、ヒータ110の長手方向の一方の端部を第1接触部123に挿入することで、ヒータ110をホルダ120に容易に取り付けることができる。なお、この際、ヒータ110の凹部113がホルダ120の凸部125と係合する。
【0064】
次に、ホルダ120を加熱ユニット81に設置する。このとき、図2に示すように、ヒータ110の第2面112が加圧ローラ82を向くように下向きに配置されるため、ヒータ110は、長手方向の両端部が接触部123,124に接触して、長手方向の中央が下に向けて凸となるように直交方向にたわむ。ヒータ110の凹部113とホルダ120の凸部125が、第1接触部123に近接した位置に設けられていることにより、ヒータ110のかかり代の減少が、第2接触部124側の端部よりも第1接触部123側の端部で小さくなる。これにより、第1接触部123のかかり代が比較的短くても、ヒータ110をホルダ120に確実に保持することができる。
【0065】
印刷を実行すべく、ヒータ110に電気を供給すると、給電端子Tおよび給電パターンPEを介して発熱パターンPHに電気が供給され、発熱パターンPHが発熱する。そして、発熱パターンPHからの熱によってヒータ110およびホルダ120が長手方向に熱膨張する。樹脂などからなるホルダ120の線膨張率は、金属などからなるヒータ110の線膨張率よりも大きい。一方で、ヒータ110の熱伝導率は、ホルダ120の熱伝導率よりも大きく、また、ヒータ110は発熱パターンPHを有するため、ヒータ110の温度はホルダ110よりも上昇しやすい。これらの要因から、ホルダ120とヒータ110で熱膨張量に差が生じ、ホルダ120に位置決めされるコネクタ200とヒータ110の給電端子Tが長手方向でずれる。本実施形態では、凹部113が給電端子Tに近接して設けられているため、凸部125を基準とした給電端子Tの位置とコネクタ200の電極200Bの位置のずれが比較的小さく抑えられる。
【0066】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
ホルダ120を介してコネクタ200をヒータ110に位置決めしたことで、ヒータ110に対してコネクタ200が長手方向にずれるのを良好に抑えるとともに、ヒータ110の凹部113を給電端子Tから長手方向でずれるように配置することができる。このような凹部113の配置により、凹部113内で露出する基板Mの端面と給電端子Tとの間に充分な絶縁距離を確保しつつ、ヒータ110の短手方向の幅を狭くすることが可能となる。これにより、材料費を抑えるとともに、電熱効率を高めることができる。
【0067】
凹部113を長手方向においてコネクタ200と発熱パターンPHとの間に設けたことで、凹部113を給電端子Tからより遠ざけることができ、絶縁距離をより確保することが可能となる。
【0068】
凹部113と、第2給電端子T2と、の距離を、凹部113と発熱パターンPHとの距離よりも小さくしたことで、凹部113と接触するホルダ120の凸部125と、コネクタ200の係合部と接触するホルダ120の部分とが近くに配置され、ヒータ110に対してコネクタ200が長手方向にずれるのをより良好に抑えることができる。
【0069】
給電端子Tをヒータ110の短手方向の中央にそれぞれ設け、互いに大きさおよび形状を同一とすることにより、給電端子Tと基板Mの短手方向のそれぞれの端面との絶縁距離を確保しつつ、ヒータ110の短手方向の幅が最小となるように給電端子Tを効率的に配置することができる。
【0070】
ホルダ120に突出部126を設け、コネクタ200に溝213を設けたことで、例えばホルダ120に溝を設けた場合と比べてホルダ120の強度を高めることができる。
【0071】
コネクタ200と第1接触部123との長手方向の距離を、コネクタ200と第2接触部124との長手方向の距離よりも小さくしたことで、コネクタ200の保持力を利用して、第1接触部123側でより確実にヒータ110をホルダ120に保持することができる。
【0072】
コネクタ200を、長手方向において第1接触部123と凸部125との間に設けたことにより、コネクタ200の保持力を利用して、第1接触部123側でより確実にヒータ110をホルダ120に保持することができる。
【0073】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、2つの接触部123,124を用いてヒータ110をホルダ120に取り付けているが、第1接触部123はなくてもよい。この場合でも、第2接触部124と、第2接触部124から長手方向に離間した固定部材としてのコネクタ200でヒータ110をホルダ120に保持できる。なお、固定部材は、接着剤等であってもよい。このような構成でも、ヒータ110をホルダ120に取り付けるための部品が1つで済むので、ヒータ110をホルダ120に容易に取り付けることができる。
【0074】
前記実施形態では、突出部をホルダ120側に設け、溝をコネクタ200側に設けているが、突出部をコネクタ200に設け、溝をホルダ120に設けてもよい。
【0075】
また、前記実施形態では、接触部123,124は、それぞれ2つあるが、接触部123,124は、1つまたは3つ以上でもよい。また、接触部123,124は、ヒータ110の角部に限らず、ヒータ110の短手方向の少なくとも一部にわたって延びていればよい。さらに、本実施形態では、接触部123,124は、第1側壁122Aおよび第2側壁122Bからそれぞれ長手方向に延びているが、第1側壁122Aおよび第2側壁122Bから離れ、第3側壁122C,第4側壁122Dから短手方向に延びていてもよい。
【0076】
さらに、前記実施例では、側壁122は、支持壁121の周囲に沿って連続的に設けられているが、側壁122は、支持壁121に沿って不連続に設けることができる。例えば、側壁122は、離間して配置された複数の側壁を含んでもよい。この場合でも、ホルダ120によってヒータ110を保持することが可能である。また、接触部123,124が第3側壁122C,第4側壁122Dから延びている場合は、第1側壁122A,第2側壁122Bはなくてもよい。
【0077】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0078】
110 ヒータ
120 ホルダ
121 支持壁
121A 支持面
122 側壁
123 第1接触部
124 第2接触部
125 凸部
200 コネクタ
200B 電極
M 基板
M11 凹部
PE 給電パターン
PH 発熱パターン
T 給電端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7