(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】包装袋及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 65/42 20060101AFI20241001BHJP
B65D 30/02 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B65D65/42 A
B65D30/02
(21)【出願番号】P 2020025391
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100186761
【氏名又は名称】上村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 実
(72)【発明者】
【氏名】矢島 俊輔
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-084244(JP,A)
【文献】特開2001-248097(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0350074(US,A1)
【文献】特開2005-262696(JP,A)
【文献】特開2015-227517(JP,A)
【文献】特開2003-128125(JP,A)
【文献】特開平01-266300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40-65/42
B65D 30/02
B32B 27/10
D21H 27/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製の基材と、
前記基材よりも外側
であって前記基材の直上に位置し、カオリンを含む無機フィラー、及び樹脂バインダを含む第1コート層と、
前記第1コート層の外表面上に位置するインキと、
前記第1コート層の前記外表面及び前記インキを覆う第2コート層と、
前記基材よりも内側に位置するシール層と、
を備え、
前記シール層の一部と他の一部とによって封止されており、
前記基材の坪量は、10g/m
2以上200g/m
2以下であり、
前記第1コート層において、
前記樹脂バインダの含有量は、前記無機フィラーの含有量よりも多く、
前記無機フィラーが複数のフィラーを含む場合、前記カオリンの含有量は、他のフィラーの合計含有量よりも多い、
包装袋。
【請求項2】
前記第1コート層における前記カオリンの含有量は、5質量%以上50質量%未満である、請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
前記第1コート層における前記カオリンの含有量は、20質量%以上35質量%以下である、請求項2に記載の包装袋。
【請求項4】
前記第1コート層の厚さは、3μm以上25μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の包装袋。
【請求項5】
前記基材の坪量は、40g/m
2以上150g/m
2以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の包装袋。
【請求項6】
前記基材の坪量は、40g/m
2以上100g/m
2以下である、請求項5に記載の包装袋。
【請求項7】
前記基材の質量は、前記基材と、前記第1コート層と、前記インキと、前記第2コート層と、前記シール層との合計質量における51%以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の包装袋。
【請求項8】
坪量が10g/m
2以上200g/m
2以下である紙製の基材を準備する工程と、
前記基材の一方面
の直上にカオリンを含む無機フィラー、及び樹脂バインダを含む第1コート層を形成する工程と、
前記第1コート層の外表面上にインキを印刷する工程と、
前記第1コート層の前記外表面及び前記インキを覆う第2コート層を形成する工程と、
前記基材の他方面上にシール層を形成する工程と、
前記基材を曲げ、前記シール層の一部と他の一部とを接着することによって、袋形状を形成する工程と、
を備え、
前記第1コート層において、
前記樹脂バインダの含有量は、前記無機フィラーの含有量よりも多く、
前記無機フィラーが複数のフィラーを含む場合、前記カオリンの含有量は、他のフィラーの合計含有量よりも多い、
包装袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋及びその製造方法に関し、特に紙製の基材を備える包装袋及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐久性、印刷適性等の観点から、PET(ポリエチレンテレフタレート)等を基材としたプラスチックフィルムから形成される包装袋が利用されている。一方、近年では、海洋プラスチック等の環境問題の観点から、紙を基材とした包装袋の利用が検討されている。ここで、包装袋の表面には、通常、インキによる印刷が施される。また、包装袋には耐水性等を付すことがある。インキによる印刷の適性(印刷適性)、耐水性等の観点から、包装用紙により形成される包装袋の利用が考えられる。例えば、下記特許文献1,2には、原紙の少なくとも片面に顔料と接着剤を含有する塗工層を有する塗工包装用紙が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-26734号広報
【文献】特開2011-63900号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1,2に開示される塗工包装用紙を用いると、包装袋の表面には良好な印刷がなされるが、当該包装袋に発生した皺等にて塗工層の割れが容易に発生してしまう。塗工層が割れた部分は、包装袋における水分等の浸入口となってしまう。この浸入口から水等が紙に到達すると、包装袋の強度が顕著に低下してしまう。したがって、紙を利用した場合における包装袋の印刷適性と耐水性との両立には、未だ課題がある。
【0005】
本発明の一側面の目的は、良好な印刷適性及び耐水性の両立が可能な包装袋及びその製造方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る包装袋は、紙製の基材と、基材よりも外側に位置し、カオリンを含む無機フィラー、及び樹脂バインダを含む第1コート層と、第1コート層の外表面上に位置するインキと、第1コート層の外表面及びインキを覆う第2コート層と、基材よりも内側に位置するシール層と、を備え、シール層の一部と他の一部とによって封止されており、基材の坪量は、10g/m2以上200g/m2以下である。第1コート層において、樹脂バインダの含有量は、無機フィラーの含有量よりも多く、無機フィラーが複数のフィラーを含む場合、カオリンの含有量は、他のフィラーの合計含有量よりも多い。
【0007】
この包装袋によれば、インキは、カオリンを含む無機フィラー、及び樹脂バインダを含む第1コート層の外表面上に位置する。これにより、包装袋の外表面側には、良好な印刷が施される。また、基材の坪量は、10g/m2以上200g/m2以下であるので、当該基材は、いわゆる薄紙といえる。このため、例えば、複数の包装袋が箱詰めされて輸送されるときなど、包装袋に伝達される振動等によって、包装袋が変形しやすい。これにより、包装袋には、皺、折れ等が形成されることがある。ここで、第1コート層において、樹脂バインダの含有量は無機フィラーの含有量よりも多く、無機フィラーが複数のフィラーを含む場合、カオリンの含有量は他のフィラーの合計含有量よりも多い。これにより、包装袋の変形した部分等において、第1コート層の割れが発生しにくい。このため、基材の一方面が外部に露出しにくくなるので、空気中の水分、第2コート層に付着した水滴等が基材に浸み込みにくくなる。したがって本発明の一側面によれば、良好な印刷適性及び耐水性の両立が可能な包装袋が得られる。
【0008】
第1コート層におけるカオリンの含有量は、5質量%以上50質量%未満でもよい。この場合、包装袋の変形した部分における第1コート層の割れがより発生しにくい。
【0009】
第1コート層における前記カオリンの含有量は、20質量%以上35質量%以下でもよい。この場合、より良好な印刷適性及び耐水性の両立が可能な包装袋が得られる。
【0010】
第1コート層の厚さは、3μm以上25μm以下でもよい。
【0011】
基材の坪量は、40g/m2以上150g/m2以下でもよい。基材の坪量は、40g/m2以上100g/m2以下でもよい。これらのように比較的薄い紙を基材とした場合であっても、良好な印刷適性及び耐水性を有し得る包装袋が得られる。
【0012】
基材の質量は、基材と、第1コート層と、インキと、第2コート層と、シール層との合計質量における51%以上でもよい。この場合、例えばプラスチックフィルムを基材とした包装袋と比較して、環境負荷が顕著に低い包装袋が得られる。
【0013】
本発明の別の一側面に係る包装袋の製造方法は、坪量が10g/m2以上200g/m2以下である紙製の基材を準備する工程と、基材の一方面上にカオリンを含む無機フィラー、及び樹脂バインダを含む第1コート層を形成する工程と、第1コート層の外表面上にインキを印刷する工程と、第1コート層の外表面及びインキを覆う第2コート層を形成する工程と、基材の他方面上にシール層を形成する工程と、基材を曲げ、シール層の一部と他の一部とを接着することによって、袋形状を形成する工程と、を備える。第1コート層において、樹脂バインダの含有量は、無機フィラーの含有量よりも多く、無機フィラーが複数のフィラーを含む場合、カオリンの含有量は、他のフィラーの合計含有量よりも多い。
【0014】
この包装袋の製造方法によれば、インキは、カオリンを含む無機フィラー、及び樹脂バインダを含む第1コート層の外表面上に印刷される。これにより、包装袋の外表面側には、良好な印刷が施される。また、基材の坪量は、10g/m2以上200g/m2以下であるので、当該基材は、いわゆる薄紙といえる。このため、例えば、複数の包装袋が箱詰めされて輸送されるときなど、包装袋に伝達される振動等によって、包装袋が変形しやすい。これにより、包装袋には、皺、折れ等が形成されることがある。ここで、第1コート層において、樹脂バインダの含有量は無機フィラーの含有量よりも多く、無機フィラーが複数のフィラーを含む場合、カオリンの含有量は他のフィラーの合計含有量よりも多い。これにより、包装袋の変形した部分等において、第1コート層の割れが発生しにくい。このため、基材の一方面が外部に露出しにくくなるので、空気中の水分、第2コート層に付着した水滴等が基材に浸み込みにくくなる。したがって本発明の一側面に係る製造方法を実施することによって、良好な印刷適性及び耐水性の両立が可能な包装袋が得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一側面によれば、良好な印刷適性及び耐水性の両立が可能な包装袋及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の一側面の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0018】
<包装袋の概要>
図1及び
図2を参照しながら、本実施形態に係る包装袋について説明する。
図1は、包装袋の概略平面図である。
図2は、
図1のII-II線に沿った断面図である。
【0019】
図1及び
図2に示される包装袋1は、固体等を収容する密封容器であり、例えば紙製容器包装袋である。紙製容器包装袋は、日本の資源有効利用促進法に基づき、紙製容器包装の識別表示が付される包装体である。このため、本実施形態に係る包装袋1の主成分は、紙である。本実施形態においては、包装袋1の合計質量のうち、紙の質量が51%以上である。包装袋1は、シート2から構成されると共に、内容物3を収容している。包装袋1は、例えば内容物3を挟むように二つ折りにしたシート2の端部を封止することによって、袋形状に成形される。内容物3は、特に限定されず、例えば飲食物、医薬品、化粧品、化学品、電子機器、工具、文房具等である。内容物3は、固体に限られず、液体、気体でもよい。内容物3は、個包装されてもよい。
【0020】
包装袋1は、内容物3が収容される本体部4と、本体部4の端部に位置するシール部5と、シート2が折り曲げられた折曲部6とを有する。本体部4の形状は、特に限定されず、例えば所定の方向から見て矩形状を呈する。本体部4の外表面における少なくとも一部には、印刷が施されている(不図示)。本体部4には、例えば、内容物3に加えて窒素等の特定の気体が収容されてもよい。シール部5は、シート2の一部と他部とが貼り合わされる部分である。シール部5においては、シート2の一部と他部とが互いに密着している。シール部5は、例えばシート2の一部と他部とが加熱及び圧縮される(すなわち、ヒートシールされる)ことによって形成される。本実施形態では、所定の方向から見て、折曲部6が本体部4の一辺を構成し、シール部5が本体部4の残り三辺を構成する。折曲部6の両端と、シール部5とは重なっている。
【0021】
<シート>
図2及び
図3を参照しながら、包装袋1を構成するシート2について詳細に説明する。
図3は、シートの概略断面図である。シート2は、包装袋1を形成するために用いられる包装用紙である。シート2は、要求される性能(例えば、ガスバリア性、遮光性、耐水性、耐温湿性、機械的強度、印刷容易性、印刷適性、装飾容易性等)を備え得る。なお、ガスバリア性は、酸素、水蒸気等のガス透過を防止または抑制する性能を意味する。耐水性は、包装袋1が濡れたときの強度低下率によって評価される。印刷適性は、印刷された部分のピンホール、虫食い等の数によって評価される。例えば、印刷適性が高いほど印刷された部分におけるピンホール等の数が少ないので、当該部分の発色性が高い傾向にある。シート2は、紙製の基材11と、第1コート層12と、インキ13と、第2コート層14と、シール層15とを有する。
【0022】
基材11は、抄紙された紙自体から形成されるフィルム状部材であり、主面11a,11bを有する。主面11a,11bは、基材11の厚さ方向に対して交差する面である。シート2から包装袋1が形成されたとき、主面11aは包装袋1の外表面側に位置する一方面であり、主面11bは包装袋1の内表面側に位置する他方面である。基材11を構成する紙は、例えば上質紙、特殊上質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、和紙、模造紙、クラフト紙等である。本実施形態では、基材11は、晒クラフト紙であるが、これに限られない。基材11は、例えば、未晒クラフト紙でもよい。包装袋1の外表面における美粧性の観点から、基材11は、雲龍紙でもよいし、混抄紙でもよい。
【0023】
基材11の坪量は、例えば10g/m2以上200g/m2以下である。このため、基材11は、いわゆる薄紙であり、可撓性を示す。基材11の坪量の下限値は、例えば10g/m2でもよいし、40g/m2でもよいし、60g/m2でもよいし、80g/m2でもよい。この場合、シート2の一部と他部との貼り合わせ加工を良好に実施できる。また、基材11の坪量の上限値は、例えば200g/m2でもよいし、150g/m2でもよいし、120g/m2でもよいし、100g/m2でもよい。この場合、シート2の一部と他部との境界が良好に加熱される。包装袋1のコスト、物理的強度等の観点から、基材11の坪量は、40g/m2以上150g/m2以下でもよいし、40g/m2以上100g/m2以下でもよい。本実施形態では、基材11の質量は、基材11と、第1コート層12と、インキ13と、第2コート層14と、シール層15との合計質量における51%以上である。
【0024】
第1コート層12は、包装袋1における耐水性、印刷適性等を向上するための層であり、主面11aの全体をコーティングする。シート2から包装袋1が形成されたとき、第1コート層12は、基材11よりも外側に位置する。第1コート層12の厚さは、例えば3μm以上25μm以下である。第1コート層12の厚さが3μm以上であることによって、基材11に形成される凹凸を埋めることができる。このため、第1コート層12の外表面12aを平滑面にできる。また、第1コート層12の厚さが25μm以下であることによって、第1コート層12が割れにくくなる。第1コート層12の厚さの下限値は、例えば5μmでもよいし、10μmでもよい。第1コート層12の厚さの上限値は、例えば20μmでもよいし、15μmでもよい。
【0025】
第1コート層12は、無機フィラー及び樹脂バインダを含む。第1コート層12において、樹脂バインダの含有量は、無機フィラーの含有量よりも多い。換言すると、第1コート層12における無機フィラーの含有量は、50質量%未満である。この場合、第1コート層12が割れにくくなる。これにより、第1コート層12上に設けられるインキ13の割れ、第1コート層12において割れた部分における基材11の露出等を抑制できる。第1コート層12は、例えば、無機フィラー及び樹脂バインダの混合物を乾燥することによって形成される。当該混合物は、水、有機溶媒等の液体を含んでもよい。当該液体の一部もしくは全部は、乾燥にて第1コート層12から蒸発する。
【0026】
無機フィラーは、例えば包装袋1における印刷適性等に関係しており、第1コート層12内に分散する無機粒子、無機片等である。無機フィラーは、例えば、カオリン、タルク、硫酸バリウム、酸化チタン等である。無機フィラーの平均粒径は、特に限定されないが、例えば0.01μm以上20μm以下である。無機フィラーの平均粒径は、例えばレーザ回折法等の公知の手法によって測定される。無機フィラーの形状は、特に限定されない。
【0027】
本実施形態では、包装袋1の遮光性、隠蔽性、第1コート層12の割れ防止等の観点から、無機フィラーは、少なくともカオリンを含む。カオリンは、例えばタルク等と比較して高いアスペクト比を有するので、第1コート層12の割れ防止機能を良好に発揮できる。本実施形態では、無機フィラーは、湿式カオリン、焼成カオリン、及び乾式カオリンの少なくとも一つを含む。無機フィラーが複数種類のカオリンを含む場合、これらカオリンの比率は特に限定されない。カオリンの平均粒径は、特に限定されないが、例えば0.2μm以上4μm以下である。カオリンの形状は、特に限定されないが、例えば扁平板形状を呈する。
【0028】
第1コート層12におけるカオリンの含有量は、例えば、5質量%以上50質量%未満である。第1コート層12におけるカオリンの含有量の下限値は、例えば5質量%でもよく、10質量%でもよく、20質量%でもよく、25質量%でもよい。この場合、包装袋1に皺等の変形箇所が発生したとき、当該変形箇所もしくはその周辺における第1コート層12の割れを抑制できる。すなわち、包装袋1の皺に対する耐性を確保できる。また、第1コート層12におけるカオリンの含有量の上限値は、例えば49質量%でもよく、45質量%でもよく、35質量%でもよく、30質量%でもよい。この場合、第1コート層12の物理的強度を確保できる。包装袋1の印刷適性等の観点から、第1コート層12におけるカオリンの含有量は、25質量%以上35質量%以下でもよい。なお、無機フィラーが複数のフィラーを含む場合、第1コート層12におけるカオリンの含有量は、他のフィラーの合計含有量よりも多い。この場合、第1コート層12が割れにくくなる。
【0029】
樹脂バインダは、例えば、第1コート層12に無機フィラーを留めるために用いられる。樹脂バインダは、包装用紙製造分野で用いられる公知の材料から構成されればよい。例えば、樹脂バインダは、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、オレフィン系樹脂、ラテックス等から構成される。ラテックスは、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体ラテックス、スチレンーメチルメタクリレートーブタジエン共重合体ラテックス等の共役ジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの重合体または共重合体等のアクリル系重合体ラテックス、エチレン-酢酸ビニル重合体ラテックス等のビニル系重合体ラテックスである。これらのラテックスは、化学的に変性されてもよい。樹脂バインダは、上記ラテックスの1種類もしくは2種類以上を含み得る。本実施形態では、樹脂バインダは、変性したスチレン-ブタジエン共重合体ラテックスを含む。第1コート層12には、樹脂バインダとして、1種類の樹脂が含まれてもよいし、複数種類の樹脂が含まれてもよい。第1コート層12においては、分散された無機フィラーが樹脂バインダによって固定される。
【0030】
第1コート層12は、単層構造を有してもよいし、積層構造を有してもよい。本実施形態では、第1コート層12は、単層構造を有する。第1コート層12が複数の層を有する場合、当該複数の層の合計厚さが、第1コート層12の厚さに相当する。第1コート層12が複数の層を有する場合、当該複数の層のうち少なくとも1つが、無機フィラー及び樹脂バインダを含む層であればよい。もしくは、上記複数の層のうち少なくとも1つが無機フィラーを含む層であって、上記複数の層のうち別の少なくとも1つが樹脂バインダを含む層でもよい。第1コート層12は、無機フィラー及び樹脂バインダ以外の物質として、例えばデンプン誘導体、防滑剤、染料、顔料等を含み得る。
【0031】
インキ13は、包装袋1において印刷された部分に相当し、第1コート層12の外表面12a上に位置する。インキ13は、例えば水性もしくは油性のインクが印刷された部分であり、第1コート層12に付着している。インキ13に含まれるインクの少なくとも一部は、第1コート層12に浸み込んでもよい。インキ13では、複数のインクが混合されてもよいし、複数のインクが重ね合わされてもよい。印刷適性及びコスト等の観点から、インキ13の厚さは、例えば0.1μm以2μm以下である。本実施形態では、インキ13の厚さは、1μm程度である。
【0032】
第2コート層14は、包装袋1の最外面に相当し、インキ13及び第1コート層12を保護するオーバーコート層である。第2コート層14は、第1コート層12の外表面12a及びインキ13を覆う。本実施形態では、第2コート層14は、基材11の主面11aに対して完全に重なっているが、これに限られない。第2コート層14は、例えば、ニス等の塗料、紫外線硬化樹脂、熱可塑性樹脂等から形成される。第2コート層14の厚さは、例えば0.1μm以上40μm以下である。塗料を用いた場合、第2コート層14の厚さは、0.1μm以上30μm以下でもよい。コスト、コーティング性能等の観点から、塗料を用いた場合における第2コート層14の厚さは、0.5μm以上5μm以下でもよい。紫外線硬化樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂を用いた場合、第2コート層14の厚さは、1μm以上40μm以下でもよい。コスト、コーティング性能等の観点から、上記樹脂を用いた場合における第2コート層14の厚さは、5μm以上20μm以下でもよい。
【0033】
シール層15は、シート2の一部と他部とを貼り付けるための接着層であり、基材11の主面11b上に位置する。このため、包装袋1においては、シール層15は、基材11よりも内側に位置する。本実施形態では、シール層15は、包装袋1の内面となり、ヒートシールが実施される。シール層15には、例えば熱可塑性樹脂が含まれる。熱可塑性樹脂の軟化温度は、例えば40℃以上250℃以下である。この場合、輸送時等に予期せぬヒートシールの軟化を抑制できる。加えて、基材11に炭化等が発生することなく、ヒートシールにてシール部5を形成できる。熱可塑性樹脂は、例えば直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリウレタン、ポリプロピレン、エチレン-不飽和エステル共重合樹脂、又はポリエステル系共重合樹脂等である。シール層15の厚さは、特に限定されないが、例えば3μm以上50μm以下である。シール層15の厚さは、0.5μm以上30μm以下でもよい。
【0034】
以下では、本実施形態に係る包装袋1の製造方法の一例について説明する。まず、紙製の基材11を準備する(第1工程)。第1工程では、例えば公知の抄紙条件、抄紙方式にて、坪量が10g/m2以上200g/m2以下である紙製の基材11を形成する。基材11の厚さ方向から見て、基材11は、略矩形状を呈する。基材11の主材料として、クラフトパルプのみが用いられてもよいし、古紙パルプのみが用いられてもよいし、クラフトパルプと古紙パルプとの混合物が用いられてもよい。クラフトパルプの種類、及び古紙パルプの種類のそれぞれは、特に限定されない。基材11を形成するとき、硫酸バンド、ロジン等のサイズ剤、ポリアミド、澱粉等の紙力増強剤、濾水歩留まり向上剤、ポリアミドポリアミンエピクロヒドリン等の耐水化剤、染料などが使用されてもよい。
【0035】
次に、基材11の主面11a上にカオリンを含む無機フィラー、及び樹脂バインダを含む第1コート層12を形成する(第2工程)。第2工程では、まず、カオリンを含む無機フィラー、及び樹脂バインダを含む混合物を準備する。当該混合物は、液体状でもよく、スラリー状でもよい。この混合物では、樹脂バインダと無機フィラーとの固形分配合質量比は、樹脂バインダの比率が高くなるように調整される。続いて、上記混合物を主面11aの全体に塗布する。続いて、塗布された混合物を乾燥することによって、第1コート層12を形成する。例えば、混合物が塗布された基材11を室温よりも高い温度環境に静置することによって、当該混合物が層状に乾燥する。本実施形態では、基材11に対する混合物の乾燥後塗布量は、例えば3g/m2以上25g/m2以下である。基材11に対する混合物は、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、ロールコート法、エアナイフ法、ドクターブレード法等の周知の方法によって主面11aに塗布される。
【0036】
次に、第1コート層12の外表面12a上にインキ13を印刷する(第3工程)。第3工程では、例えばグラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、デジタル印刷等の公知の手法にて、外表面12a上にインキ13を印刷する。
【0037】
次に、第1コート層12の外表面12a及びインキ13を覆う第2コート層14を形成する(第4工程)。第4工程では、例えば上記第2工程と同様の手法にて、外表面12aの全体に対して第2コート層14を形成する。第2コート層14が熱可塑性樹脂を含む場合、例えばエクストルーダー加工(押出成形加工)によって第2コート層14が形成されてもよい。
【0038】
次に、基材11の主面11b上にシール層15を形成する(第5工程)。第5工程では、まず、例えば熱可塑性樹脂が溶解された溶液(コーティング液)を主面11b上にコーティングする。当該コーティング液には、微粒子が分散されてもよい。この場合、上記コーティング液は、エマルジョン・ディスパージョン液でもよい。続いて、上記コーティング液から溶媒を除去することによって、シール層15を形成する。溶媒の除去は、例えばコーティング液が塗布された基材11を室温よりも高い温度環境に静置することによって、実施される。
【0039】
次に、基材11を曲げ、シール層15の一部と他の一部とを接着することによって、袋形状の包装袋1を形成する(第6工程)。第6工程では、まず、基材11を二つ折りにする。このとき、シール層15が内側に位置し、且つ、二つ折りされた基材11の一方と他方との縁が揃うように、基材11を折り曲げる。二つ折りされた基材11は、略矩形形状を呈している。基材11において折り曲げられた部分を除く3つの縁は、開放端となっている。続いて、折り曲げた基材11の間に内容物3を供給した後、上記3つの縁及びその周辺を加熱及び加圧する。このとき、当該縁及びその周辺にて接しているシール層15の一部と他部とがヒートシールされる。これにより、内容物3を収容する密封容器である包装袋1が形成される。
【0040】
以上に説明した本実施形態に係る製造方法にて製造される包装袋1によれば、インキ13は、カオリンを含む無機フィラー、及び樹脂バインダを含む第1コート層12の外表面12a上に位置する。これにより、インキ13が外表面12aに対して良好に付着するので、包装袋1の外表面側には良好な印刷が施される。基材11の坪量は、10g/m2以上200g/m2以下であり、いわゆる薄紙である。このため、例えば、複数の包装袋1が箱詰めされて輸送されるときなど、包装袋1に伝達される振動等によって、包装袋1が変形しやすい。これにより、包装袋1には、皺、折れ等が形成されることがある。加えて、包装袋1には折曲部6が形成される。ここで、第1コート層12において、樹脂バインダの含有量は無機フィラーの含有量よりも多く、無機フィラーが複数のフィラーを含む場合、カオリンの含有量は他のフィラーの合計含有量よりも多い。これにより、包装袋1の変形した部分等において、第1コート層12の割れが発生しにくい。このため、基材11の主面11aが外部に露出しにくくなるので、空気中の水分、第2コート層14に付着した水滴等が基材11に浸み込みにくくなる。したがって、本実施形態に係る製造方法を実施することによって、良好な印刷適性及び耐水性の両立が可能な包装袋1が得られる。
【0041】
本実施形態では、第1コート層12におけるカオリンの含有量は、5質量%以上50質量%未満である。このため、包装袋1の折曲部6、及び包装袋1の変形した部分における第1コート層の割れがより発生しにくい。
【0042】
本実施形態では、第1コート層12におけるカオリンの含有量は、20質量%以上35質量%以下でもよい。この場合、より良好な印刷適性及び耐水性の両立が可能な包装袋1が得られる。
【0043】
本実施形態では、第1コート層12の厚さは、3μm以上25μm以下でもよい。
【0044】
本実施形態では、基材11の坪量は、40g/m2以上150g/m2以下でもよい。基材の坪量は、40g/m2以上100g/m2以下でもよい。これらのように比較的薄い紙を基材11とした場合であっても、良好な印刷適性及び耐水性を有し得る包装袋1が得られる。
【0045】
本実施形態では、基材11の質量は、基材11と、第1コート層12と、インキ13と、第2コート層14と、シール層15との合計質量における51%以上である。このため、従来のプラスチックフィルムから形成される包装袋1と比較して、環境負荷が顕著に低い包装袋1が得られる。
【0046】
本発明の一側面に係る包装袋は、上記実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、シートは、基材、第1コート層、インキ、第2コート層、及びシール層を有するが、これに限られない。シートは、上記層以外の層を有してもよい。例えば、基材とシール層との間には、ガスバリア性等を示すバリア層が設けられてもよいし、物理的強度を向上させるための補強層が形成されてもよい。バリア層は、例えば既存の手法、材料にて形成できる。補強層は、例えば未延伸フィルムでもよいし、延伸フィルムでもよい。この場合、補強層は、例えばポリアミド、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂を含む。もしくは、シール層上に上記バリア層、補強層等が形成されてもよい。この場合、これらの層は、シール層のヒートシール時に破壊可能な厚さであればよい。
【0047】
上記実施形態では、第1コート層は、一方面である主面の全体をコーティングしているが、これに限られない。第1コート層は、例えば主面の一部をコーティングしてもよい。この場合、第1コート層は、基材の主面上においてインキが重なる部分のみ、もしくは当該部分及びその周辺のみをコーティングしてもよい。また、インキは第1コート層の外表面の一部に付着しているが、これに限られない。例えば、インキは、第1コート層の外表面の全体に付着してもよい。すなわち、包装袋の露出部の全体が印刷されてもよい。また、包装袋の内部の少なくとも一部が印刷されてもよい。この場合、第1コート層が基材の両方の主面上に形成されてもよい。
【0048】
上記実施形態では、シール層は、ヒートシールが実施される層であるが、これに限られない。シール層は、コールドシール等が実施されてもよい。この場合、シール層に含まれる材料は、適宜調整されてもよい。
【0049】
上記実施形態では、シートが二つ折りされているが、これに限られない。シートは複数回屈曲されてもよい。もしくは、包装袋は、シートを折り曲げることなく製造されてもよい。この場合、例えば互いに重ね合わせた2枚のシートの端部を封止することによって、包装袋を製造する。また、包装袋は、必ずしも密封されなくてもよい。例えば、包装袋の少なくとも一部が開放されてもよい。もしくは、包装袋の一部には、開閉自在な部分が形成されてもよい。
【0050】
上記実施形態では、第1工程から第6工程を順次実施することによって包装袋が製造されるが、これに限られない。第1工程から第6工程の順番は、適宜変更されてもよい。例えば、第5工程が第1工程の前に実施されてもよい。
【実施例】
【0051】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
<シート>
まず、紙製の基材として矩形形状を呈すると共に坪量80g/m2の晒クラフト紙(王子マテリア株式会社製、「OKブリザード」)を準備した。また、無機フィラーとしてカオリン(株式会社イメリス・ミネラルズ・ジャパン製、「エンジニアードカオリン」)と、樹脂バインダとして変性スチレン・ブタジエン系共重合ラテックス(日本ゼオン株式会社製、「Nipol 2507H」)との混合物を形成した。続いて、エアナイフ法によって上記混合物を上記基材の一方面上に塗工した。このとき、混合物の乾燥後塗布量が10g/m2になるように、上記塗工を実施した。そして、当該混合物を90℃の条件にて20秒間乾燥処理することによって、基材の一方面上に第1コート層を形成した。なお、混合物に含まれる無機フィラーと樹脂バインダとの組成は、下記表1に示される。
【0053】
次に、一般的なグラビア印刷にて第1コート層の外表面に色インキ(東洋インキ株式会社製、「エコカラー(登録商標)HR」、赤色)を印刷した。色インキは、上記外表面の全体に印刷された。色インキの乾燥後厚さが約1μmになるように、上記印刷が実施された。色インキを乾燥させることによって、上記外表面上に位置するインキを形成した。続いて、色インキが印刷された上記外表面上に、グラビア印刷にてニス(東洋インキ株式会社製、商「エコカラーOPニス」)を印刷した。ニスは、上記外表面の全体に印刷された。ニスの乾燥後厚さが約1μmになるように、上記印刷が実施された。続いて、ニスを乾燥させることによって、第1コート層の外表面及びインキを覆う第2コート層を形成した。
【0054】
次に、基材の他方面上にヒートシールニス(三井化学株式会社製、「ケミパールS300」)を塗工した。このとき、ヒートシールニスの乾燥後塗布量が7g/m2になるように、上記塗工を実施した。そして、当該ヒートシールニスを90℃の条件にて20秒間乾燥処理することによって、基材の他方面上にシール層を形成した。以上により、基材、第1コート層、インキ、第2コート層、及びシール層を有するシートを形成した。
【0055】
<包装袋>
まず、個包装された内容物(スナック菓子)を10個挟むように、上記シートを二つ折りにした。このとき、シール層が内側に位置するように、上記シートを半分に折り曲げた。二つ折りされた部分同士が重なる方向から見た寸法は、170mm×250mmとした。続いて、包装充填機として縦型ピロー製袋機(株式会社イシダ製、「INSPIRA」)を用いて、二つ折りした上記シートのうち、開放端である3辺をヒートシールした。当該ヒートシールは、180℃、0.2MPa、0.5secの条件で実施した。以上の工程を経て、密封された表面赤色の包装袋(パウチ)を形成した。また、内容物の寸法は、40mm×60mmとし、内容物の重さは30gとした。
【0056】
(実施例2)
第1コート層を形成するための混合物の組成を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、紙製の包装袋を形成した。実施例2の混合物に含まれる無機フィラーと樹脂バインダとの組成は、下記表1に示される。
【0057】
(実施例3)
第1コート層を形成するための混合物の組成を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、紙製の包装袋を形成した。実施例3の混合物に含まれる無機フィラーと樹脂バインダとの組成は、下記表1に示される。
【0058】
(実施例4)
第1コート層を形成するための混合物の組成を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、紙製の包装袋を形成した。実施例4の混合物に含まれる無機フィラーと樹脂バインダとの組成は、下記表1に示される。
【0059】
(実施例5)
カオリンとタルク(日本タルク株式会社製、「MS-P」)とを含む無機フィラーを用いたこと、及び、第1コート層を形成するための混合物の組成を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、紙製の包装袋を形成した。実施例5の混合物に含まれる無機フィラーと樹脂バインダとの組成は、下記表1に示される。
【0060】
(比較例1)
無機フィラーを用いずに第1コート層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、紙製の包装袋を形成した。
【0061】
(比較例2)
第1コート層を形成するための混合物の組成を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、紙製の包装袋を形成した。比較例2の混合物に含まれる無機フィラーと樹脂バインダとの組成は、下記表2に示される。
【0062】
(比較例3)
第1コート層を形成するための混合物の組成を変更したこと以外は、実施例5と同様にして、紙製の包装袋を形成した。比較例3の混合物に含まれる無機フィラーと樹脂バインダとの組成は、下記表2に示される。
【0063】
(比較例4)
第1コート層を形成するための混合物の組成を変更したこと以外は、実施例5と同様にして、紙製の包装袋を形成した。比較例4の混合物に含まれる無機フィラーと樹脂バインダとの組成は、下記表2に示される。
【0064】
(比較例5)
紙製の基材として矩形形状を呈すると共に坪量89.4g/m2の片面アート紙(王子製紙株式会社製、「OK金藤+」)を準備したこと、及び、第1コート層を形成するための混合物の組成を変更したこと以外は、実施例5と同様にして、紙製の包装袋を形成した。比較例5の混合物に含まれる無機フィラーと樹脂バインダとの組成は、下記表2に示される。なお、片面アート紙は、白色顔料等を含む塗工層を有する。塗工層の乾燥後塗布量は、約10g/m2である。比較例5では、第1コート層は、上記塗工層上に形成される。
【0065】
(比較例6)
第1コート層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、紙製の包装袋を形成した。
【0066】
【0067】
【0068】
<評価方法>
実施例1~5及び比較例1~6の包装袋のそれぞれを、下記の方法で試験し、評価した。
【0069】
<ゲルボフレックス試験>
株式会社東洋精機製作所製のゲルボフレックステスター「BE-1005」を用いて、23℃、湿度65%の条件下であって、ASTM F392に準じた設定にて、包装袋に対して300往復の屈曲・復元を実施した。その後、包装袋の表面の全体を目視にて観察し、当該表面における白化した部分(白化点若しくは白化したスジ部分)の有無を評価した。白化した部分は、インキ割れが発生することによって基材が露出した部分に相当する。各実施例及び各比較例に対するゲルボフレックス試験の評価は、以下に示すA~Dの基準に沿って定めた。評価結果がA又はBであれば、ゲルボフレックス試験に対して良好な耐性を示すと言える。なお、各実施例及び各比較例に対するゲルボフレックス試験の評価結果は、以下の表3,4に示される。ここで、5mm以上の白化した部分は、白化したスジ部分と判断される。よって、白化した部分のうち、白化したスジ部分よりも小さいものは、当該スジ部分よりも微小な白化点と判断される。
A:白化点が5個以内観察され、白化したスジ部分が観察されない
B:白化点が10個以上観察され、白化したスジ部分が観察されない
C:白化したスジ部分が観察される
D:全体的に白化したスジ部分が観察される
【0070】
下記表3,4に示されるように、比較例1~6においては、比較例2~5はC又はDと判定された。このことから、第1コート層において、樹脂バインダの含有量が無機フィラーの含有量よりも多い場合、白化した部分が形成されにくいことがわかる。また、実施例1~5においては、実施例1がBと判定され、実施例2~5はAと判定された。このことから、第1コート層における無機フィラーの含有量と樹脂バインダの含有量との調整によって、白化した部分の発生をより抑制可能であることがわかる。
【0071】
<流通時インキ割れ>
まず、10つの包装袋を段ボール箱(縦:0.2m、横:0.3m、高さ:0.2m)に収容した後、当該段ボールを密閉した。続いて、振動試験機(IMV株式会社製、「CV-300-2」)に上記段ボール箱を設置した。続いて、加速度を5.8RMSに設定し、90分間、上記段ボール箱を垂直方向に沿ってランダムに振動させた(周波数:3Hz以上200Hz以下)。振動後、段ボール箱から取り出した各包装袋の全体を目視にて観察した。そして、各包装袋の表面における白化した部分の有無を評価し、最も低い評価の包装袋を抽出した。各実施例及び各比較例に対する評価は、以下に示すA~Eの基準に沿って定めた。評価結果がA又はBであれば、輸送等におけるインク割れ耐性が良好であると言える。なお、各実施例及び各比較例に対する振動試験の評価結果は、以下の表3,4に示される。
A:変化なし
B:白化点が5個以内観察され、白化したスジ部分が観察されない
C:白化点が10個以上観察され、白化したスジ部分が観察されない
D:白化したスジ部分が観察される
E:全体的に白化したスジ部分が観察される
【0072】
下記表3,4に示されるように、比較例1~6においては、比較例2~5はC,DもしくはEと判定された。このことから、第1コート層において、樹脂バインダの含有量が無機フィラーの含有量よりも多い場合、白化した部分が形成されにくいことがわかる。また、実施例1~5においては、実施例1,5がBと判定され、実施例2~4はAと判定された。このことから、第1コート層における無機フィラーの含有量と樹脂バインダの含有量との調整によって、輸送等におけるインキ割れの発生を抑制可能であることがわかる。
【0073】
<印刷適性>
形成された直後の包装袋の表面の全体を目視にて観察することによって、印刷適性を評価した。ここでは、上記表面において虫食い、ピンホール等に起因する白化した部分の有無を評価することによって、包装袋の印刷適性を評価した。各実施例及び各比較例に対する評価は、以下に示すA~Cの基準に沿って定めた。本評価では、A又はBであれば、高い印刷適性を示すと言える。なお、各実施例及び各比較例に対する印刷適性試験の評価結果は、以下の表3,4に示される。
A:白化点が5個以内観察され、白化したスジ部分が観察されない
B:白化点が10個以上観察され、白化したスジ部分が観察されない
C:白化したスジ部分が観察される
【0074】
下記表3,4に示されるように、比較例1~6においては、比較例1,6はCと判定された。このことから、第1コート層が無機フィラーを含むことによって、印刷適性が向上することがわかる。また、実施例1~5においては、実施例4のみがBと判定され、実施例1~3,5はAと判定された。
【0075】
<白色度>
JIS P 8148:2001にて示される「紙,板紙及びパルプ-ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に準拠した手法にて、包装袋の表面の白色度を測定した。この測定には、「X-Rite eXact」(ビデオジェット・エックスライト株式会社製)を用いた。各実施例及び各比較例に対する白色度の測定結果は、以下の表3,4に示される。下記表3,4に示されるように、比較例1,6のみ白色度が80%未満であった。
【0076】
<不透明度>
JIS P 8149:2000にて示される「紙及び板紙-不透明度試験方法(紙の裏当て)」に準拠した拡散照明法にて、包装袋の不透明度を測定した。この測定には、「WMS-1」(株式会社村上色彩技術研究所製)を用いた。各実施例及び各比較例に対する不透明度の測定結果は、以下の表3,4に示される。下記表3,4に示されるように、比較例1,6のみ不透明度が80%未満であった。
【0077】
<耐水性>
まず、同条件にて形成した2つの包装袋を準備した。次に、JIS P 8113:2006にて示される「紙及び板紙-引張特性の試験方法-第2部:定速伸張法」に準拠した手法にて、一方の包装袋の引張強度を測定した。また、他方の包装袋を1分間完全に水没させた。水没させた包装袋を回収した後、当該包装袋の引張強度を測定した。次に、一方の包装袋の引張強度と他方の包装袋の引張強度との差分を算出した。そして、一方の包装袋の引張強度に対する当該差分の割合を、強度低下率として算出した。強度低下率が20%以下である場合には「A」と評価し、強度低下率が40%以上である場合には「B」と評価した。各実施例及び各比較例における強度低下率の評価結果は、以下の表3,4に示される。下記表3,4に示されるように、比較例6のみBと判定された。
【0078】
<密封性>
包装袋を30秒間水没させる間に、当該包装袋から漏れる空気の有無を評価した。各実施例及び各比較例において、シール部以外から空気漏れが発生しない場合には「A」と評価し、シール部以外から空気漏れが発生する場合には「B」と評価した。各実施例及び各比較例における密封性の評価結果は、以下の表3,4に示される。下記表3,4に示されるように、比較例6のみBと判定された。
【0079】
<耐摩耗性>
学振型摩耗試験機(テスター産業株式会社製、「AB-301」)を用いて、500g荷重、100回の条件にて、包装袋の表面と上質紙(王子製紙株式会社製、「OKプリンス上質」)とを摩擦させた。当該摩擦後、包装袋の表面に設けられる印刷の変化(例えば、インキかすれなど)を目視にて観察した。換言すると、上記摩擦後、包装袋のインキの剥離等(インキ落ち)の有無を観察した。インキ落ちの発生が観察されない場合には「A」と評価し、インキ落ちの発生が観察された場合には「B」と評価した。各実施例及び各比較例における耐摩耗性の判定結果は、以下の表3,4に示される。下記表3,4に示されるように、比較例6のみBと判定された。
【0080】
<総合評価>
各実施例及び各比較例に対して、上述した各項目の内容に基づいた総合評価を、以下に示すA~Dの基準に沿って定めた。各実施例及び各比較例に対する総合評価結果は、以下の表3,4に示される。
A:ゲルボフレックス試験、印刷適性、耐水性、密封性、耐摩耗性の全てがA評価
B:ゲルボフレックス試験、印刷適性、耐水性、密封性、耐摩耗性の評価結果のうち、C,D評価が0
C:ゲルボフレックス試験、印刷適性、耐水性、密封性、耐摩耗性のA評価が3つ以上であって、D,E評価が0
D:ゲルボフレックス試験、印刷適性、耐水性、密封性、耐摩耗性のD評価もしくはE評価が存在する、あるいはA評価が0
【0081】
【0082】
【符号の説明】
【0083】
1…包装袋、2…シート、3…内容物、4…本体部、5…シール部、6…折曲部、11…基材、11a…主面(一方面)、11b…主面(他方面)、12…第1コート層、12a…外表面、13…インキ、14…第2コート層、15…シール層。