(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】3D接触力感知システム
(51)【国際特許分類】
G01L 5/171 20200101AFI20241001BHJP
A61B 17/00 20060101ALI20241001BHJP
A61J 15/00 20060101ALI20241001BHJP
B25J 19/02 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
G01L5/171
A61B17/00
A61J15/00 A
B25J19/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020031321
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2022-11-22
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513204665
【氏名又は名称】シリコン マイクロストラクチャーズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SILICON MICROSTRUCTURES, INC.
【住所又は居所原語表記】1701 McCarthy Boulevard, Milpitas, California 95035 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】ジャマリ,アーミン
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2011-0106551(KR,A)
【文献】国際公開第2018/150314(WO,A1)
【文献】特表2010-521658(JP,A)
【文献】特表2001-502189(JP,A)
【文献】特公昭48-26553(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00 - 5/28
A61B 13/00 - 18/18
A61J 15/00
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
力測定システムであって、
前記力測定システムは、
中心軸(102)と、
前記中心軸(102)周りに半径方向に配置されている3つ以上の圧力センサチャンバ(110、410、710、810、910、1010、1110、1210、1510、1610)と、
前記中心軸(102)に一致し、かつ少なくとも1つの方向に偏向可能な中央部材(434、534、734、830、920、1020)と
を備え、
前記圧力センサチャンバのそれぞれは、前記圧力センサチャンバに収容されている流体(1116、1216)、および前記流体(1116、1216)に加わる圧力を感知するように位置決めされている圧力センサ(712、812、1012、1112、1212、1312、1512、1612)を備えるとともに、
前記力測定システムは医療用であ
り、
前記力測定システムの少なくとも一部は、カテーテルまたは経鼻胃チューブの、患者の体内で動作し得る遠位部に配置されている、
力測定システム。
【請求項2】
前記中央部材(434、534、734、830、920、1020)を、前記中心軸(102)に一致する中心点周りで偏向させることができ、前記中央部材(434、534、734、830、920、1020)は、偏向すると、前記3つ以上の圧力センサチャンバ(110、410、710、810、910、1010、1110、1210、1510、1610)のうちの少なくとも1つに力を及ぼす、
請求項1に記載の力測定システム。
【請求項3】
力測定システムであって、
前記力測定システムは、
中心軸(102)と、
前記中心軸(102)周りに半径方向に配置されている3つ以上の圧力センサチャンバ(810)と、
前記中心軸(102)に一致し、かつ少なくとも1つの方向に偏向可能な中央部材と
を備え、
前記圧力センサチャンバのそれぞれは、前記圧力センサチャンバに収容されている流体(1116、1216)、および前記流体(1116、1216)に加わる圧力を感知するように位置決めされている圧力センサ(712、812、1012、1112、1212、1312、1512、1612)を備えるとともに、
前記圧力センサチャンバ(810)は周囲バルーン(810)であり、前記中央部材は中央バルーン(830)であり、前記周囲バルーン(810)は前記中央バルーン(830)内に配置されている、
力測定システム。
【請求項4】
力測定システムであって、
前記力測定システムは、
中心軸(102)と、
前記中心軸(102)周りに半径方向に配置されている3つ以上の圧力センサチャンバ(910)と、
前記中心軸(102)に一致し、かつ少なくとも1つの方向に偏向可能な中央部材と
を備え、
前記圧力センサチャンバのそれぞれは、前記圧力センサチャンバに収容されている流体(1116、1216)、および前記流体(1116、1216)に加わる圧力を感知するように位置決めされている圧力センサ(712、812、1012、1112、1212、1312、1512、1612)を備えるとともに、
前記3つ以上の圧力センサチャンバ(910)は各々、周囲バルーン(910)を備え、前記中央部材は、中央バルーン(940)と、偏向するように構成されているロッド(920)とを備え、前記ロッド(920)が横方向に偏向すると、前記ロッド(920)は、前記周囲バルーン(910)のうちの少なくとも1つに力を及ぼし、前記ロッド(920)が前記中心軸(102)に沿って偏向すると、前記ロッド(920)は、前記中央バルーン(940)に力を及ぼすように構成されている、
力測定システム。
【請求項5】
前記力測定システムの少なくとも一部は、カテーテルまたは経鼻胃チューブの遠位端に配置されている、
請求項
3または4に記載の力測定システム。
【請求項6】
力測定システムの中心軸(102)周りに半径方向に配置されている3つ以上の周囲圧力センサチャンバ(110、410、710、810、910、1010、1110、1210、1510、1610)と、
前記中心軸(102)に一致する中央圧力センサチャンバ(830、940、1040)とを備え、
前記周囲圧力センサチャンバ(110、410、710、810、910、1010、1110、1210、1510、1610)のそれぞれは、前記周囲圧力センサチャンバに収容されている流体(1116、1216)、および前記周囲圧力センサチャンバの前記流体(1116、1216)に加わる圧力を感知するように位置決めされている圧力センサ(1112、1212、1312、1512、1612)を備え、
前記中央圧力センサチャンバ(830、940、1040)は、前記中央圧力センサチャンバに収容されている流体(1116、1216)、および前記中央圧力センサチャンバの前記流体(1116、1216)に加わる圧力を感知するように位置決めされている圧力センサ(1112、1212、1312、1512、1612)を備える、
力測定システム。
【請求項7】
前記周囲圧力センサチャンバ(810)は、前記中央圧力センサチャンバ(830)内にある、
請求項6に記載の力測定システム。
【請求項8】
前記周囲圧力センサチャンバ(910)は、前記力測定システムの前部と前記中央圧力センサチャンバ(940)との間にある、
請求項6に記載の力測定システム。
【請求項9】
偏向するように構成されているロッド(920、1020)をさらに備え、前記ロッド(920、1020)は、横方向に偏向すると、前記周囲圧力センサチャンバ(910、1010)のうちの少なくとも1つに力を及ぼし、前記ロッド(920、1020)は、前記中心軸(102)に沿って偏向すると、前記中央圧力センサチャンバ(940、1040)に力を及ぼす、
請求項6に記載の力測定システム。
【請求項10】
前記3つ以上の周囲圧力センサチャンバ(810、910、1010)は各々、バルーン(810、910、1010)を備える、
請求項6に記載の力測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
接触力感知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野において、最小侵襲手術が非常に重要なツールとなっている。従来の手術と比べると、最小侵襲手術によって、患者のリスクが低下し、結果が向上し、回復時間が早まり、費用が削減されている。
【0003】
最小侵襲手術において、いくつかの手技を使用することができる。多くの場合、細胞壁または自然開口を通して、カテーテルを体内、例えば血管系に導くことができる。カテーテルが所望の位置に到達すると、特定の手術手技を適用することができる。例えば、カテーテルならびに関連する機器および装置を使用して、高周波加熱または液体冷却を用いるアブレーション、膨張式構造を用いる血管形成術、薬物送達、およびその他の手技を採用することができる。
【0004】
これらの処置の一部として、カテーテルおよび関連する装置は、体内の細胞壁または他の面に接触することが多い。そのようなときに、外科医は、カテーテルによって細胞壁または他の構造に加えられている力の正確な測定値を有することが重要になり得る。例えば、過度の力を防ぐことができれば、細胞壁の破裂を防ぐのに役立ち得る。また、力が不十分であれば、効果がない場合があり、または望ましくない合併症を引き起こす場合がある。同様に、適切な力を与えることができれば、アブレーションなどの処置中に十分な力が確実に加わって、所望の結果を確実に得ることができる。
【0005】
したがって、接触力感知システムは、最小侵襲手術における有効なツールとなっている。医療機器は、接触力センサを実装して、細胞壁または他の面にどのくらいの力が加わっているかを判定することができる。しかしながら、この知識の範囲は限定されているため、有効性が限られる。すなわち、接触力を反映する単一のデータ点のみでは、外科医は、カテーテルと細胞壁との接触の特質および詳細を十分に見ることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決すべき課題は、カテーテルおよび他の装置により細胞壁および他の面に加えられる力についての追加の情報を与えることのできる、接触力感知システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、カテーテルおよび他の装置により細胞壁および他の面に加えられる力についての追加の情報を与えることのできる、接触力感知システムが提供される。例えば、本発明の実施形態は、方向情報、すなわち、手術装置によって力が加えられている方向に関する情報を与えることができる。また、もしくは代わりに、本発明のこれらおよび他の実施形態は、手術装置を案内するために使用可能な情報を与えることができる。
【0008】
本発明の例示的な実施形態は、接触力感知システムについての方向情報を与えることができる。複数の圧力センサチャンバを、接触力感知システムの中心軸の周囲に配置することができる。細胞壁に直接接触するように構成されている受力構造を備えることができ、この受力構造を中心軸内または中心軸に沿って配置することができる。受力構造は、ロッド、ボール、もしくは他の構造であってよく、またはこれを備えてもよい。受力構造は、受力構造が受ける力を周囲配置された圧力センサチャンバに分散させる力分散構造を備えることができ、またはこれに連結することができる。これらの圧力センサチャンバの各々は、流体を含むことができる。この流体は、圧縮性であっても非圧縮性であってもよい。
圧力センサを、圧力センサチャンバの各々に配置することができ、または関連付けることができる。結果として得られる圧力を使用して、受力構造に加わる力の大きさだけでなく、力の角度も判定することができる。例えば、本発明のこれらおよび他の実施形態を使用して、受力構造が受ける力の大きさ、平面角、および非平面角を判定することができる。
【0009】
本発明のこれらおよび他の実施形態は、1つまたは複数の中央配置圧力センサチャンバを、1つまたは複数の周囲配置圧力センサチャンバと共に使用することができる。これらの中央配置圧力センサチャンバを、接触力感知システムの中心軸に沿って配置することができる。このようなシステムにおいて、受力構造は、中央配置圧力センサチャンバに直接作用することができる。そのため、中央配置圧力センサチャンバを使用して、受力構造が受ける力の大きさを判定することができ、同時に、周囲配置圧力センサチャンバを使用して方向情報を判定することができる。
【0010】
本発明のこれらおよび他の実施形態は、中央配置圧力センサチャンバを使用することができ、中央配置圧力センサチャンバは、1つまたは複数の周囲配置圧力センサチャンバを囲むまたは取り囲む。例えば、周囲配置圧力センサチャンバは、バルーンであってよい。中央配置圧力センサチャンバは、他のバルーンを取り囲むまたは囲むバルーンであってよい。極低温技術のために、より大きい中央バルーンに冷液を充填してもよい。また、もしくは代わりに、局所加熱のために、中央バルーンを使用して高周波エネルギーまたは他のエネルギーを伝えてもよい。
【0011】
本発明のこれらおよび他の実施形態は、接触力感知システムの案内機能をもたらすことができる。例えば、接触力感知システムは、外科医または手術者に触覚応答を与えて、装置を体内で正確に案内できるようにしてもよい。装置は、手術道具、撮像装置、または他の装置であってよい。システムは、カテーテルを通して互いに連結されている2つの装置を備えることができる。遠位端は案内先端を備えることができる。案内先端を上下左右に方向付けして、遠位端を所望の位置に案内することができる。案内先端を、周囲配置圧力センサチャンバの数により方向付けしてもよい。例えば、上部圧力センサチャンバの増加により、案内先端を下方に傾斜させることができる。周囲配置圧力センサチャンバの圧力を、カテーテルの近位端に配置された対応する周囲配置圧力センサチャンバによって制御することができる。
近接圧力センサチャンバの圧力を、外科医または他の手術者が操作する操作棒または他の制御部によって制御することができる。例えば、操作棒の位置の変化により、近接圧力センサチャンバの圧力を変化させることができる。この近接圧力センサチャンバを、遠位圧力センサチャンバに連結することができ、または遠位圧力センサチャンバの一部として形成することができる。これにより、遠位圧力センサチャンバの圧力を変化させることができるため、案内先端の角度が変化する。このようにして、操作棒位置の変化により、案内先端の向きを変化させることができるため、カテーテルの遠位端を目的位置に案内することができる。本発明のこれらおよび他の実施形態において、案内先端を定位置に保持することができるため、これを受力構造として使用することができる。これにより、目的位置に到達した後に、装置を3D力感知システムとして使用することができる。
【0012】
以下で、添付図面を参照しながら本発明について例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態による接触力感知システムを示す図である。
【
図2】本発明の実施形態による、案内情報を与えることのできる接触力感知システムを示す図である。
【
図3】本発明の実施形態による、誘導センサシステムを示す図である。
【
図4】本発明の実施形態による接触力感知システムの一部を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態による接触力感知システムの別の部分を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態による接触力感知システムが受ける力の例を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態による別の接触力感知システムを示す図である。
【
図8】本発明の実施形態による別の接触力感知システムを示す図である。
【
図9】本発明の実施形態による別の接触力感知システムを示す図である。
【
図10】本発明の実施形態による別の接触力感知システムを示す図である。
【
図11】本発明の実施形態による接触力感知システムの一部を示す図である。
【
図12】本発明の実施形態による接触力感知システムの一部を示す図である。
【
図13】本発明の実施形態による接触力感知システムの一部を示す図である。
【
図14】本発明の実施形態による、力の分散を判定するための測定装置を示す図である。
【
図15】本発明の実施形態による別の接触力感知システムを示す図である。
【
図16】本発明の実施形態による別の接触力感知システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態は、接触の大きさを超える情報を外科医に与える接触力感知システムを提供することができる。例えば、本発明の実施形態は、接触力感知システムが受ける力に関する方向情報を与えることができる。また、もしくは代わりに、本発明のこれらおよび他の実施形態は、案内情報を伝える接触力感知システムを提供することができる。方向情報を与えることのできる接触力感知システムの例を、以下の図に示す。
【0015】
図1は、本発明の実施形態による接触力感知システムを示す。この図は、他の図と同様に、例示の目的で示されるものであり、本発明の可能な実施形態または特許請求の範囲を限定するものではない。
【0016】
接触力感知システム100は、いくつかの周囲配置された圧力センサチャンバ110を備えることができる。圧力センサチャンバ110を、中心軸102の周囲に配置することができる。接触力感知システム100は、中央配置された受力構造130をさらに備えることができる。受力構造130は、細胞壁または他の面に直接接触することができる。受力構造130に作用する力を、力分散構造120を通して圧力センサチャンバ110に分散させることができる。力分散構造120を、受力構造130に取り付ける、もしくは受力構造130の一部として形成することができ、または力分散構造120と受力構造130とを別個に形成することができる。受力構造130、および本明細書に示され、本発明の他の実施形態に一致する他の受力構造は、剛性であっても可撓性であってもよい。例えば、これらの受力構造は、ポリマー被覆を有する剛性構造であってよい。
【0017】
受力構造130は球体として示されているが、ロッドであってもよく、またはロッド、球体、もしくは他の構造を備えていてもよい。受力構造130は、細胞壁または他の面に遭遇するように適切に形成されている上面132を含むことができる。例えば、上面132は、平らであっても、円形であっても、他の適切な特徴を有していてもよい。力分散構造120は、圧力センサチャンバ110に接触していてよい。圧力センサチャンバ110の各々に流体を充填することができ、圧力センサチャンバ110は各々、圧力センサを備えることができる。流体は、圧縮性流体であっても非圧縮性流体であってもよい。
【0018】
受力構造130に作用する力を、圧力センサチャンバの各々の圧力センサによって測定することができる。この例では、受力構造130に加わる力を、力分散構造120によって圧力センサチャンバ110に分散させることができる。圧力センサチャンバ110に加わる力は、圧力センサチャンバ110内の流体に作用することができる。流体に作用する力を、個々の圧力センサチャンバ110の圧力センサ(図示せず)によって測定することができる。
【0019】
個々の圧力センサによって測定された圧力の大きさの組合せにより、受力構造130に作用する力の大きさの指標を与えることができる。個々の圧力センサによって測定された圧力の大きさの差は、受力構造130に作用する力の角度の指標を与えることができる。本発明のこれらおよび他の実施形態を使用して、受力構造130が受ける正味の力の大きさ、平面角、および非平面角を判定することができる。
【0020】
さらに、本発明のこれらおよび他の実施形態は、案内情報を与えることのできる接触力感知システムを提供することができる。以下の図に例を示す。
【0021】
図2は、本発明の実施形態による、案内情報を与えることのできる接触力感知システムを示す。接触力感知システム200は、患者の体内で動作し得る遠位部202と、外科医が操作することのできる近位部204とを備えることができる。接触力感知システム200を外科医が使用して、遠位部202を特定位置に案内することができる。
【0022】
受力構造230が細胞壁または他の構造に遭遇すると、受力構造230に力が作用し得る。受力構造230は、力分散構造(図示せず)を通して作用して、圧力チャネル240内の流体に圧力を加えることができる。このような流体は、受力構造230に加わる力の方向に応じて、圧縮力また膨張力を受けることができる。このような流体に加わる圧縮力また膨張力によって力を発生させることができ、この力を、力分散構造(図示せず)を通して操作棒270に与えることができる。結果として得られるこのような力によって操作棒270を動かすことができるため、外科医に触覚応答を与えることができる。
【0023】
同様に、外科医は操作棒270に力を与えることができる。この力を、力分散システムを通して圧力チャネル240に分散させることができる。結果として得られる圧力チャネル240の圧力により、力分散構造を介して受力構造230に力を伝えることができる。これらの力により、受力構造230を案内のために傾斜させることができる。
【0024】
これら2つの作用により、外科医は、受力構造230が遠位端で受ける力を示す触覚応答を受け取ることができ、同時に、受力構造230を上下左右に傾斜させて所望の位置に案内することができる。受け取る触覚応答および与えられる案内を、増幅する、または減衰させることができる。例えば、受力構造230の大きさおよび操作棒270の大きさを、互いに対して変化させてもよい。操作棒270が大きいほど、外科医または他の手術者が受力構造230をある量だけ動かすのに必要な動きが大きくなり得る。
【0025】
本発明のこれらおよび他の実施形態は、案内可能な他のタイプのシステムを提供することができる。このようなシステムとしては、体内の流体を測定するための圧力センサなどのセンサ、体内の画像を提供するためのカメラ、または他のタイプのセンサが挙げられる。以下の図に例を示す。
【0026】
図3は、本発明の実施形態による、誘導センサシステムを示す。接触力感知システム300は、患者の体内で動作し得る遠位部302と、外科医が操作することのできる近位部304とを備えることができる。この例では、外科医が操作棒370に力を加えることができる。このような力を、力分散システム(図示せず)によって圧力チャネル340に分散させることができる。このような力により、圧力チャネル340の流体の圧力差を生じさせることができる。このような圧力差により、カメラセンサ330に接続されている力分散構造に作用し得る力を与えることができる。このようにして、外科医は、カメラセンサ330を傾斜させる、または他の方法で方向付けすることのできる操作棒370に、力を与えることができる。結果として、外科医または他の手術者は、触覚情報に加えて視覚情報を受け取ることができる。
また、この構成により、カメラセンサ330は、カメラセンサ330による他の動きがない場合でも回転することができる。操作棒370によってカメラセンサ330に与えられる案内を、増幅する、または減衰させることができる。例えば、操作棒370の大きさを変化させてもよい。操作棒370が大きいほど、外科医または他の手術者がカメラセンサ330をある量だけ動かすのに必要な動きが大きくなり得る。
【0027】
図4は、本発明の実施形態による接触力感知システムの一部を示す。接触力感知システム400は、受力構造430を備えることができる。受力構造430を、接触力感知システム400の中心軸に沿って配置することができる。受力構造430は、ロッド434に接続可能なボール432を備えることができる。接触力感知システム400は、いくつかの周囲配置圧力センサチャンバ410を備えることもできる。受力構造430が受ける力を、力分散構造420を通して個々の圧力センサチャンバ410に分散させることができる。圧力センサチャンバ410に流体を充填してもよい。この流体は、圧縮性であっても非圧縮性であってもよい。圧力センサチャンバ410は各々、圧力センサを備えることができる。このような圧力センサは、接触力感知システム400を備えるカテーテルまたは他の医療装置の反対側にある演算装置に、電気信号を与えることができる。
【0028】
したがって、受力構造430に作用する力を、力分散構造420を通して圧力センサチャンバ410に分散させることができる。力分散構造420は、圧力センサチャンバ410の流体の圧力を増減させることができる。このような圧力の変化を、圧力センサチャンバ410に位置する圧力センサによって記録することができる。このような圧力の変化は、反対側端部にある演算装置により使用され、受力構造430に作用する力の大きさおよび方向の情報が判定される。この情報から、このような力の大きさ、角度、平面角、および非平面角の情報を判定することができる。
【0029】
図5は、本発明の実施形態による接触力感知システムの別の部分を示す。この部分は、ボール532とロッド534とを備え得る受力構造530を備えることができる。受力構造530を、力分散構造520に取り付けることができる。受力構造530および力分散構造520は、この例ではロッド540により画定される中心軸周りで傾斜することができる。力分散構造520は、ロッド524を介して圧力センサチャンバ410(
図4に示す)に圧力を加えることができる。ロッド524は、力分散構造520および個々の圧力センサチャンバ410の開口部で旋回可能な球形構造522を備えることができる。同様に、ロッド540は、力分散構造520の開口部に嵌入可能な球形端部542を備えて、力分散構造520をロッド540に対して傾斜させることができる。
【0030】
図6は、本発明の実施形態による接触力感知システムが受ける力の例を示す。この例では、力F1、F2、F3を、圧力センサチャンバの圧力センサの変化から推測することができる。このような圧力の変化を使用して、接触力感知システムに作用する正味の力の大きさ、角度、および非平面角を判定することができる。
【0031】
図7は、本発明の実施形態による別の接触力感知システムを示す。この例では、接触力感知システム700は、ハウジング740に収容することができ、使用中に細胞壁または他の構造に直接遭遇し得る受力構造730を備えることができる。受力構造730は、ロッド734を通して力分散構造720の板726に取り付けられている球形端部732を備えることができる。力分散構造720は、圧力センサチャンバ710に作用するように板726によって動かすことのできるロッド724をさらに備えることができる。圧力センサチャンバ710には、本明細書に示す他の圧力センサチャンバ、および本発明の実施形態に一致する他の圧力センサチャンバと共に、少なくとも部分的に流体を充填することができ、圧力センサチャンバ710は圧力センサ712を備えることができる。
これらの圧力センサチャンバに、弾性ゴムまたはポリマーなどの変形可能材料を少なくとも部分的に充填することができる。圧力センサ712を、ワイヤ714を通して演算装置に取り付けることができる。前述したように、ロッド724は、板726の開口部に存在し得る球形端部722を備えることができるため、板726を力感知システム700の中心軸に対して傾斜させることができる。
【0032】
本発明のこれらおよび他の実施形態は、中央圧力センサチャンバを、いくつかの周囲配置圧力センサチャンバと共に使用することができる。この配置を様々な構成で提供することができる。以下の図に例を示す。
【0033】
図8は、本発明の実施形態による別の接触力感知システムを示す。この例では、周囲配置された周囲配置圧力センサチャンバ810は、流体または弾性材料もしくは変形可能材料を充填可能なバルーンであり得る。周囲配置圧力センサチャンバ810は、ワイヤ814を介して離れた演算装置に取り付け可能な圧力センサ812を備えることができる。周囲配置圧力センサチャンバ810を、中央圧力センサチャンバ830に入れることができる。電極816を使用して、この接触力感知システム800が遭遇する組織の電気信号を測定することができる。また、もしくはあるいは、電極816を使用して、電流、電圧、または電流と電圧との両方をこのような組織に加えることができる。この接触力感知システム800の遠位端にこのような信号を伝えるワイヤ(図示せず)に、電極816を連結することができる。
【0034】
この構成により、中央圧力センサチャンバ830は、接触力感知システム800に加わる力の大きさを測定することができ、同時に、個々の周囲配置圧力センサチャンバ810は方向情報を与えることができる。また、この構成により、アブレーションおよび他の処置中に加熱するための高周波信号を伝えることのできる材料から、中央圧力センサチャンバ830を形成することができる。また、もしくはあるいは、中央圧力センサチャンバ830に、これらおよび他の処置中に使用する極低温液体を充填することができる。
【0035】
図9は、本発明の実施形態による別の接触力感知システムを示す。この例では、接触力感知システム900は、中央配置圧力センサチャンバ940といくつかの周囲配置圧力センサチャンバ910とを備えることができる。中央圧力センサチャンバおよび周囲圧力センサチャンバは各々、ワイヤ914を通して演算装置に取り付け可能な圧力センサ(図示せず)を備えることができる。
【0036】
受力構造930によって力を受けることができる。このような力を、力分散構造920を通して周囲配置圧力センサチャンバ910および中央配置圧力センサチャンバ940に分散させることができる。接触力感知システム900の中心軸に沿った垂直分力が、中央配置圧力センサチャンバ940に直接作用することができる。この力は、中央配置圧力センサチャンバ940の流体に圧縮力を加えることができる。この圧縮力を、圧力センサにより測定し、受力構造930が受ける力の大きさの判定に使用することができる。受力構造930に横方向に作用する横力成分により、力分散構造920を、周囲配置圧力センサチャンバ910のうちの1つまたは複数に押し込むことができる。
これにより、周囲配置圧力センサチャンバ910の流体に加わる力を増減させることができるため、個々の圧力センサによって圧力差を測定することができる。その後、この情報は離れた演算装置によって使用され、受力構造930が受ける力の方向情報が判定される。
【0037】
図10は、本発明の実施形態による別の接触力感知システムを示す。この例では、接触力感知システム1000は、力分散構造1020に接続可能な受力構造1030を備えることができる。力分散構造1020は、周囲配置圧力センサチャンバ1010および中央配置圧力センサチャンバ1040として作用するバルーンに隣接可能なカップ状サービス(cupped services)1022を備えることができる。周囲配置圧力センサチャンバ1010および中央配置圧力センサチャンバ1040は、ワイヤ1014を通じて演算装置と通信可能な圧力センサ1012を備えることができる。
【0038】
このような様々な圧力センサチャンバの流体は、圧縮性であっても非圧縮性であってもよい。例えば、流体は、水、ココナッツウォータ、オリーブオイル、または他の流体、またはこれらもしくは他の流体の組合せであってよい。圧力センサチャンバにこれらの流体が完全に充填されていても、圧力センサチャンバが1つまたは複数の気泡を含んでいてもよい。以下の図に例を示す。
【0039】
図11は、本発明の実施形態による接触力感知システムの一部を示す。この例は、力分散構造1120に連結されている受力構造1130を備える。受力構造1130が受ける力は、力分散構造1120を通して圧力センサチャンバ1110に作用することができる。圧力センサチャンバ1110は、ワイヤ1114を通じて離れた演算装置と通信可能な圧力センサ1112を備えることができる。圧力センサチャンバ1110に流体1116を充填することができる。流体は、1つまたは複数の気泡1118を含むことができる。圧力センサチャンバ1110と力分散構造1120の一部とを、ハウジング1150に配置することができる。この例では、1つまたは複数の気泡1118を使用し、可能な流体を任意選択で使用することにより、使用中に圧力センサ1112の薄膜が損傷することを防ぐことができる。
【0040】
図12は、本発明の実施形態による接触力感知システムの一部を示す。この例は、力分散構造1220に連結されている受力構造1230を備える。受力構造1230が受ける力は、力分散構造1220を通して圧力センサチャンバ1210に作用することができる。圧力センサチャンバ1210は、ワイヤ1214を通じて離れた演算装置と通信可能な圧力センサ1212を備えることができる。圧力センサチャンバ1210に流体1216を充填することができる。流体は、1つまたは複数の気泡1208を含むことができる。圧力センサチャンバ1210と力分散構造1220の一部とを、ハウジング1250に配置することができる。この例では、1つまたは複数の気泡1208を使用し、可能な流体を任意選択で使用することにより、使用中に圧力センサ1212の薄膜が損傷することを防ぐことができる。
【0041】
本発明のこれらおよび他の実施形態において、ゴムまたはエラストマーなどの他の圧縮性材料を使用することができる。以下の図に例を示す。
【0042】
図13は、本発明の実施形態による接触力感知システムの一部を示す。この例は、力分散構造1320を通して圧縮性材料1310に力を加えることのできる受力構造1330を備える。圧力センサ1312は、圧縮性材料1310内に配置され、ワイヤ1314を通じて離れた演算装置と通信することができる。
【0043】
これらおよび同様の原理を、他のタイプの力感知構造で使用することができる。例えば、本発明のこれらおよび他の実施形態は、力の分散を判定可能な装置を提供することができる。以下の図に例を示す。
【0044】
図14は、本発明の実施形態による力の分散を判定するための測定装置を示す。測定装置1400は、ハウジング1420に収容されているいくつかの圧力センサチャンバ1410を備えることができる。ハウジング1420に作用する力は、同様に圧力センサチャンバ1410に作用することができる。圧力センサチャンバ1410は、ワイヤ1414を通じて離れた演算装置と通信可能な圧力センサ1412を備えることができる。圧力センサチャンバ1410を1次元または複数次元に並べて、ハウジング1420に作用する力の分散を判定することができる。
【0045】
図15は、本発明の実施形態による別の接触力感知システムを示す。接触力感知システム1500は、いくつかの圧力センサチャンバ1510を支持するバルーンまたは他の構造1530を備えることができる。圧力センサチャンバ1510を、構造1530の表面に取り付けることができる。圧力センサチャンバ1510は各々、対応する圧力センサ1512を備えることができる。圧力センサ1512は、ワイヤおよび電極1514を通じて離れた演算装置と通信することができる。構造1530をステム1532によって支持してもよい。
【0046】
本発明の本実施形態において、圧力センサチャンバ1510を構造1530に取り付けることができる。本発明のこれらおよび他の実施形態において、圧力センサチャンバ1510の一部または全部を、構造上に可撓層を取り付けることによって形成することができる。以下の図に例を示す。
【0047】
図16は、本発明の実施形態による別の接触力感知システムを示す。接触力感知システム1600は、いくつかの圧力センサチャンバ1610を支持する構造1630を備えることができる。構造1630の表面の一部に可撓層1618を配置することによって、圧力センサチャンバ1610を形成することができる。圧力センサチャンバ1610は、ワイヤおよび電極1614を通じて離れた演算装置と通信可能な圧力センサ1612を備えることができる。