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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】両面ラミネート紙および紙カップ
(51)【国際特許分類】
   B32B 29/02 20060101AFI20241001BHJP
   D21H 19/34 20060101ALI20241001BHJP
   B65D 3/22 20060101ALI20241001BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241001BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B32B29/02
D21H19/34
B65D3/22 B
B65D65/40 D
B32B5/02 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020035174
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021137982
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】清水 宏祐
(72)【発明者】
【氏名】森永 貴大
(72)【発明者】
【氏名】安井 皓章
(72)【発明者】
【氏名】大藤 利通
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-190544(JP,A)
【文献】国際公開第2017/179717(WO,A1)
【文献】特開2019-077482(JP,A)
【文献】特開2017-222033(JP,A)
【文献】特開2012-011651(JP,A)
【文献】国際公開第2019/229759(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/040547(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
B65D
D21H
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース紙と、前記ベース紙上に形成されたセルロースナノファイバーを含むバリア層とを有する積層体の両面に熱可塑性樹脂層を積層した両面ラミネート紙であって、
前記バリア層の塗工量が乾燥質量で1.4g/m以上30.0g/m以下の範囲内であり、
前記バリア層における前記セルロースナノファイバーの含有量が20質量%以上80質量%以下の範囲内であり、
前記バリア層は、水溶性高分子をさらに含有し、
前記水溶性高分子は、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド、デンプン、ペクチン、またはアルギン酸であり、
前記バリア層の前記セルロースナノファイバーの繊維長が1.5μm以上3.0μm以下の範囲内のみであり、
前記ベース紙の坪量は、400g/m 以下であり、
前記熱可塑性樹脂層の膜厚が10μm以上100μm以下の範囲内であり、
前記熱可塑性樹脂層がポリオレフィン樹脂を含み、
前記バリア層の塗工量が乾燥質量で2.0g/m 以上5.0g/m 以下の範囲内であり、
前記ベース紙の前記バリア層を塗工する面の表面凹凸は、算術平均粗さRaが0.5μm以上100.0μm以下の範囲内であり、
前記バリア層の厚さは、前記セルロースナノファイバーの繊維長よりも厚く、
JIS K5600-5-1:1999「塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第1節:耐屈曲性(円筒形マンドレル法)」に準拠して、前記バリア層が形成された面を外側にして直径8mmのマンドレルで2秒間屈曲した後の30℃、40%RHでの酸素透過率が50cc/m・day以下であることを特徴とする両面ラミネート紙。
【請求項2】
請求項1に記載の両面ラミネート紙の前記バリア層が前記ベース紙よりも内面側に配置されたことを特徴とする紙カップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品などを充填包装する両面ラミネート紙およびその両面ラミネート紙からなる紙カップに関する。
【背景技術】
【0002】
食品をはじめとする包装材料分野では、内容物を保護するために、包装材料を透過する酸素などの気体を遮断するガスバリア性が求められる。
【0003】
従来、ガスバリア性材料としては、温度や湿度の影響が少ないアルミニウムやポリ塩化ビニリデンが用いられてきた。しかしながら、これらを焼却処分すると、アルミニウムにおいては、焼却残渣が排気口や炉内部で詰まり焼却効率を下げるという問題が生じ、ポリ塩化ビニリデンにおいては、ダイオキシンが発生するなどの問題が生じることがある。そのため、ガスバリア性材料を、環境負荷の少ない材料に切り替えることが求められている。例えば、特許文献1に記載されているように、ポリ塩化ビニリデンの一部を、同じ化石資源から造られる材料であっても、アルミニウムや塩素を含まないポリビニルアルコールやエチレン-ビニルアルコール共重合体に切り替えることが進められている。また、将来的には、石油由来の材料を、バイオマス材料へ切り替えることが期待されている。また、従来、ガスバリア性材料の基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの石油由来の樹脂フィルムが広く用いられてきた。しかし、ガスバリア性材料の基材を、代表的なバイオマス材料である紙に切り替えることが期待されており、包装材料の紙化が進んでいる。
【0004】
新たなガスバリア性材料としては、セルロースナノファイバーが注目されている。セルロースナノファイバーは、生分解性を有することに加え、例えば、ガスバリア性、強度、弾性率、寸法安定性、耐熱性、結晶性などの物理特性にも優れている。そのため、セルロースナノファイバーは、機能性材料への応用が期待されている。セルロース系材料としては、例えば、特許文献2および特許文献3に記載されているような、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシラジカル(以下、「TEMPO」と言う。)触媒による酸化反応により生成するセルロース繊維を分散処理して得られるセルロースナノファイバーや、特許文献4に記載されているような、グルコースユニットにカルボキシメチル基を導入した後に分散処理して得られるセルロースナノファイバー、特許文献5に記載されているような、酵素処理・アルカリ処理を施した後に機械解繊して得られるセルロースナノファイバーなどが知られている。これらのセルロースナノファイバーを基材上に塗布・積層することにより、酸素の透過率を抑制することができるガスバリア性材料が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-164591号公報
【文献】特開2008-308802号公報
【文献】特開2008-1728号公報
【文献】特開2013-185122号公報
【文献】特開平6-10288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、セルロースナノファイバーを含むバリア層は、基材上に塗布・製膜しても硬く、脆いため割れ易い。さらに、基材に紙を用いた場合、樹脂基材に比べて表面の凹凸が大きく紙繊維の影響を受けやすい。そのため、従来技術に係るセルロースナノファイバーを含むバリア層は、包装材などに加工・成型する際の屈曲・折り曲げなどの応力に耐えられず、クラックが発生してバリア性を維持し難いという課題がある。さらに、加工・成型して包装容器とした後も、内容物を入れた際に重みに耐えられず、折り曲げ部分以外のバリア層にもクラックが発生してガスバリア性を維持し難い場合がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、加工や内容物を充填した際、セルロースナノファイバーを含むバリア層にクラックが発生し難い両面ラミネート紙、即ち耐屈曲性の高いバリア層を含む両面ラミネート紙およびその両面ラミネート紙からなる紙カップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る両面ラミネート紙は、ベース紙と、そのベース紙上に形成されたセルロースナノファイバーを含むバリア層とを有するバリア紙の両面に熱可塑性樹脂層を積層した両面ラミネート紙であって、JIS K5600-5-1:1999「塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第1節:耐屈曲性(円筒形マンドレル法)」に準拠して、バリア層が形成された面を外側にして直径8mm以上のマンドレルで2秒間屈曲した後の30℃、40%RHでの酸素透過率が50cc/m・day以下であることを特徴とする両面ラミネート紙である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、ベース紙上にセルロースナノファイバーを含むバリア層を形成したバリア紙の両面に熱可塑性樹脂層を積層した両面ラミネート紙とすることで、ベース紙表面の凹凸の影響を受け難く、基材(ベース紙)とバリア層の隙間が少なく、耐屈曲性に優れるバリア層を有する両面ラミネート紙となる。そのため、ガスバリア性に優れ、加工・成型時にも耐え得る耐屈曲性に優れる両面ラミネート紙およびその両面ラミネート紙からなる紙カップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るバリア紙の構造を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る両面ラミネート紙の構造を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る紙カップの形状を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法などは、実際の積層体の寸法関係とは異なる場合がある。
「バリア紙」
図1は、本発明の実施形態に係るバリア紙の構造を模式的に示す断面図である。
本実施形態に係るバリア紙(積層体)10は、図1に示すように、ベース紙1と、ベース紙1上、すなわち、ベース紙1の一方の面1aに形成されたセルロースナノファイバーを含むバリア層2と、を有する。
ベース紙1は、特に限定されず、用途に応じて、印刷用紙や包装用紙から適宜選択することができる。ベース紙1としては、例えば、グラシン紙、パーチメント紙、上級印刷用紙、中級印刷用紙、下級印刷用紙、薄葉印刷紙、色上質紙、アート紙、コート紙、クラフト紙、段ボール原紙、コートボール、アイボリー紙、カード紙、カップ原紙などが挙げられる。
【0012】
ベース紙1は、坪量が400g/m以下であることが好ましく、坪量が30g/m以上400g/m以下の範囲内であることがより好ましく、坪量が150g/m以上400g/m以下の範囲内であることがさらに好ましく、坪量が180g/m以上400g/m以下の範囲内であることが最も好ましい。
ベース紙1の坪量が400g/m以下であれば、バリア紙10を屈曲させたときに、バリア層2にかかる応力が大きくなり過ぎることがなく、その応力によりバリア層2にクラックが生じることもなく、ガスバリア性が低下することもない。また、ベース紙1の坪量が400g/m以下であれば、コストの増加を抑えることができる。
【0013】
また、バリア紙10を通常包装用途に用いる場合、ベース紙1の坪量が180g/m以上であることが好ましい。ベース紙1の坪量が180g/m以上であると、通常包装用途において十分な強度を保つことができる。なお、ベース紙1の坪量が30g/m以上であると、通常包装用途において使用上問題がない程度の強度を保つことができる。また、ベース紙1の坪量が150g/m以上であると、通常包装用途において複数回使用しても問題がない程度の強度を保つことができる。
バリア層2に含まれるセルロースナノファイバーの原料としては、天然のセルロース繊維が用いられる。天然のセルロース繊維としては、例えば、針葉樹や広葉樹などから得られる各種木材パルプ、ケナフ、バガス、ワラ、竹、綿、海藻などから得られる非木材パルプ、ホヤから得られるセルロース繊維、微生物が生産するセルロース繊維などが挙げられる。
【0014】
本発明で使用されるセルロースナノファイバーは、水に分散した際にも繊維状の形状の少なくとも一部が維持されるものが好ましい。すなわち、セルロースナノファイバーの水分散体を電子顕微鏡で観察すると、繊維状の物質を観察することができ、セルロースナノファイバーをX線回折で測定した際にセルロースI型結晶のピークを観測することができるものが好ましい。
【0015】
セルロース繊維としては、必要に応じて化学処理したものを用いることもできる。
化学処理方法としては、特に限定されないが、例えば、触媒として上述のTEMPOを用い、pHを調整しながら次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤、臭化ナトリウムなどの臭化物を用いて、セルロース繊維を酸化してカルボキシル化する方法が挙げられる。この方法により、セルロースのC6位の水酸基がカルボキシル化されたセルロース繊維、すなわち、セルロースのC6位にカルボキシ基を有するセルロース繊維が得られる。このカルボキシル化されたセルロース繊維は、セルロース繊維相互の静電反発が高まり膨潤するため、低エネルギーを投入した機械処理によってセルロースナノファイバーの分散液を調製することができる。
【0016】
また、化学処理方法としては、例えば、セルロース繊維をカルボキシメチル化する方法が挙げられる。
この化学処理方法の一例としては、例えば、次のような方法が挙げられる。
セルロース繊維を含む溶媒に、マーセル化剤として水酸化ナトリウムを添加・混合し、セルロース繊維のマーセル化処理を行った後、カルボキシメチル化剤をグルコース残基当たり0.05倍モル~10.0倍モル添加し、エーテル化反応を行うことで、カルボキシメチル基を導入したセルロース繊維が得られる。このカルボキシメチル基を導入したセルロース繊維は、カルボキシメチル基に起因して、セルロース繊維相互の静電反発が起こるため、容易にセルロースナノファイバーとすることができる。
さらに、別の化学処理方法としては、例えば、セルロース繊維に、リン酸化、亜リン酸化、酵素処理、薬品処理(アルカリ処理、酸処理、膨潤薬品処理)、オゾン処理などの前処理を行うことができる。
前処理したセルロース繊維を洗浄したもの、またはその前処理の処理液を懸濁液として微細化して得られるセルロースナノファイバーを、バリア層2の材料として用いることができる。
【0017】
図1を参照して、本実施形態に係るバリア紙10の製造方法について説明する。
始めに、セルロース繊維を微細化(解繊)する(セルロース繊維の微細化工程)。
セルロース繊維の微細化方法としては、特に限定されず、例えば、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、グラインダー磨砕、凍結粉砕、メディアミルなどの分散装置を用いた機械処理が挙げられる。
また、機械処理を行う前工程として、セルロース繊維に上述の化学処理を施してもよい。機械処理や化学処理の処理度を任意に制御することにより、所望の繊維形状や粒子径(繊維径)を有するセルロースナノファイバーを得ることができる。
【0018】
バリア層2に含まれるセルロースナノファイバーは、平均繊維長が100nm以上30μm以下の範囲内であることが好ましく、100nm以上10μm以下の範囲内であることがより好ましい。平均繊維長が100nmより小さい(短い)セルロースナノファイバーは、化学的前処理や分散処理を組み合わせても、製造するのは困難であり現実的でない。平均繊維長が30μmより大きい(長い)セルロースナノファイバーは、バリア層2を形成した際、粗大な繊維が層中に存在することでバリア層2から繊維が突き出すなど、平滑性が悪く、バリア性にも影響を及ぼすことがある。また、平均繊維長が30μmより大きい(長い)セルロースナノファイバーは、ベース紙1にバリア層2を形成する際、粗い紙の繊維との間に微細な空隙ができやすくなり、ベース紙1との密着性が低下するため好ましくない。これらの繊維長の測定は、例えば、AFM(原子間力顕微鏡)やSEM(走査電子顕微鏡)などの装置を用いて形状観察を行い、任意の多数のサンプルの繊維長を測定してその平均をとる手法、あるいは塗液の粒度分布計などを用いた粒径測定結果から計測することが可能である。なお、本実施形態では前者の観察からの計測値を用いた。
【0019】
本実施形態に係るバリア紙10では、バリア層2に含まれるセルロースナノファイバー間に存在する間隙を充填することのできる材料として、バリア層2に、セルロースナノファイバーと相性のよい水溶性高分子が含まれることが好ましい。セルロースナノファイバーと水溶性高分子を含むバリア層2は、例えば、水蒸気や汚れなどの劣化因子の浸入・浸透を抑制し、その結果、屈曲などによるガスバリア性の低下が小さくなる傾向がある。
【0020】
水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド、デンプン、ペクチン、アルギン酸などが用いられる。
これらの水溶性高分子は、例えば、成膜性、透明性、柔軟性などに優れ、セルロース繊維との相性も良いため、容易にセルロースナノファイバーの間隙を充填し、強度と密着性を併せ持つバリア層2を形成することができる。また、ポリビニルアルコール(PVA)は、ポリ酢酸ビニルをけん化して得られるものであるが、酢酸基が10%~20%残存している、いわゆる部分けん化PVAから、酢酸基が1%~2%しか残存していない完全けん化PVAまでを含む。
【0021】
水溶性高分子を用いる場合、バリア層2を形成するための塗工液中におけるセルロースナノファイバー(A)と水溶性高分子(B)との質量比((A)/(B))は、20/80~80/20であることが好ましい。水溶性高分子(B)の質量比が20以上であると、水溶性高分子(B)により、セルロースナノファイバーの間隙を充填することができ、バリア層2に柔軟性を付与し耐屈曲性が改善する。一方、水溶性高分子(B)の質量比が80以下であると、セルロースナノファイバーの補強効果によりバリア層2に欠損が生じ難くなる。また、セルロースナノファイバーの増粘効果により、ベース紙1に対して、バリア層2となる塗工液が染み込み難く、バリア層2の成膜性が低下することを抑制できる。なお、上述した塗工液中におけるセルロースナノファイバー(A)と水溶性高分子(B)との質量比((A)/(B))は、そのままバリア層2中におけるセルロースナノファイバー(A)と水溶性高分子(B)との質量比((A)/(B))となっている。つまり、バリア層2におけるセルロースナノファイバーの含有量は、20質量%以上80質量%以下の範囲内となっている。
【0022】
次に、上述の工程で得られたセルロースナノファイバーと水溶性高分子とを含む塗工液を、ベース紙1の一方の面1aに塗布して、ベース紙1の一方の面1aにその塗工液からなる塗膜を形成した後、その塗膜を乾燥して、バリア層2を形成する(バリア層の形成工程)。
これにより、ベース紙1と、ベース紙1の一方の面1aに形成されたセルロースナノファイバーを含むバリア層2と、を有するバリア紙10を得る。
ベース紙1の一方の面1aに、塗工液を塗布する方法としては、特に限定されず、公知の塗工方法を用いることができる。塗工方法としては、例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターなどの塗工装置を用いた方法が挙げられる。
【0023】
ベース紙1の一方の面1aに、上述の塗工液を塗工して形成した塗膜の乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、送風乾燥、熱風乾燥、UV乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射などが挙げられる。
乾燥温度は、100℃以上180℃以下の範囲内であることが好ましい。乾燥温度が100℃以上であれば、塗膜内の水分が抜けるため、セルロースナノファイバー同士の水素結合が増えて、バリア層2の凝集力が高くなり、耐屈曲性が向上する。一方、乾燥温度が180℃以下であれば、バリア層2が熱により劣化して変色することを防止できる。
【0024】
バリア層2の塗工量は、乾燥質量で1.4g/m以上30.0g/m以下の範囲内であることが好ましく、2.0g/m以上5.0g/m以下の範囲内であることがより好ましい。
バリア層2の塗工量が乾燥質量で1.4g/m以上であると、バリア層2がベース紙1表面の凹凸の影響を受けた場合であっても、ベース紙1の表面上に十分な量のバリア層2が形成されるため、バリア層2に欠陥が生じ難く、バリア層2のガスバリア性を向上させることができる。つまり、バリア層2の塗工量が乾燥質量で1.4g/m以上であると、一般的に包装容器用資材として使用されているベース紙1であっても、その表面の凹凸形状の影響を受け難く、バリア層2に欠陥が生じ難い傾向がある。そのため、バリア層2のガスバリア性を向上させることができる。バリア層2の塗工量が乾燥質量で30.0g/m以下であると、製造コストの増加を抑制できる。なお、本実施形態におけるベース紙1のバリア層2を塗工する面1aの表面凹凸は、例えば、算術平均粗さRaが0.5(μm)以上100.0(μm)以下の範囲内であることが好ましい。
【0025】
「両面ラミネート紙」
ベース紙1に対して、バリア層2を形成した後、熱可塑性樹脂からなる層(熱可塑性樹脂層)20をバリア紙10の両面に形成し両面ラミネート紙100とすることができる。以下、この両面ラミネート紙100について説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る両面ラミネート紙の構造を模式的に示す断面図である。
本実施形態に係る両面ラミネート紙100は、図2に示すように、ベース紙1と、ベース紙1の一方の面1a上に形成されたバリア層2とを有するバリア紙10の両面に熱可塑性樹脂層20を積層したものである。
【0026】
バリア紙10の両面に熱可塑性樹脂層20を形成する方法としては、例えば、ウエットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤ラミネーション法、サーマルラミネーション法、溶融押し出しラミネーション法などが挙げられる。熱可塑性樹脂層20は、必要に応じて、基材(バリア紙10)の全面または一部に形成すればよい。熱可塑性樹脂層20の材料としては特に限定されず、ポリオレフィン樹脂であれば好ましい。熱可塑性樹脂層20に含まれるポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)などのポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン樹脂、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体などのポリプロピレン系樹脂などから選択可能であるが、作業性、加工適性、経済性などの面から直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)が好ましい。
中でも、本実施形態の積層体(両面ラミネート紙100)では、熱可塑性樹脂層20としてメルトマスフローレート(MFR)が3.0g/10分以上8.0g/10分以下の範囲内であり、かつ熱可塑性樹脂層20の密度が910kg/m以上930kg/m以下の範囲内であるLLDPEを熱可塑性樹脂層20として用いることが好ましい。メルトマスフローレートと密度がこの数値範囲内にあるLLDPEを用いることで、成型の際の応力に耐え、バリア層2が割れ難いため、成型後も十分なバリア性を維持することができる。
また、熱可塑性樹脂層20の膜厚は、10μm以上100μm以下の範囲内であることが好ましい。熱可塑性樹脂層20の膜厚がこの数値範囲内にあると、成型の際の応力に確実に耐え、バリア層2が割れ難くなるため、成型後も十分なバリア性を維持することができる。
【0027】
バリア紙10上に熱可塑性樹脂層20を形成する際には、未密着性改善のため、予め、コロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品を用いた酸化処理など公知の表面処理を繊維層であるバリア層2に施してもよい。特に、セルロースナノファイバーを含む層であるバリア層2上にポリエチレン樹脂などの熱可塑性樹脂層20を形成する場合、セルロースナノファイバーを含むバリア層2のアンカー効果が小さくなるため、層間の密着強度が低下する場合がある。その場合、バリア層2と熱可塑性樹脂層20との間に、例えば、プライマーコート層、アンカーコート層、接着剤層などを任意に形成してもよい。
【0028】
一般的に、図2に示すような両面ラミネート紙においてバリア層は、その膜厚が厚い場合には耐屈曲性が低く、割れ易い傾向がある。しかし、本実施形態のセルロースナノファイバーを含むバリア層2は、セルロースナノファイバーによる補強効果により膜の強度が改善されている。特にセルロースナノファイバーの繊維長よりも塗膜の膜厚が厚い場合、セルロースナノファイバーの補強効果が効率的に発揮される。これは塗膜中のセルロースナノファイバーが塗膜内に均一に分散することができ、塗工面からはみ出さず平滑なバリア層2を形成できるためである。
【0029】
本実施形態に係る両面ラミネート紙100は、JIS K5600-5-1:1999「塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第1節:耐屈曲性(円筒形マンドレル法)」に準拠して、バリア層2が形成された面を外側にして直径8mm以上のマンドレルで屈曲した後の30℃、40%RHでの酸素透過率が50cc/m・day以下であることが好ましく、10cc/m・day以下であることがより好ましい。
バリア層2の塗工量が乾燥質量で1.4g/m以上であれば、直径8mm以上のマンドレルで屈曲した後の30℃、40%RHでの酸素透過率が50cc/m・day以下となり、2.0g/m以上であれば、10cc/m・day以下となる傾向が高まる。
屈曲後の酸素透過率が上記の範囲内であれば、両面ラミネート紙100は、例えば、紙カップ等に加工・成型した後であっても良好なガスバリア性を発揮することができる。
なお、上述したマンドレルは直径8mmのもので屈曲すると加工工程での応力に近い応力をかけることができ、実際の加工工程でのバリア層2の劣化の代替評価をすることが可能である。また、8mm未満のマンドレルを使用する場合、バリア層2にかかる応力が強すぎるため、バリア層2に極端なクラックが発生してしまうため、評価として適切ではない。
【0030】
熱によりヒートシール可能な熱可塑性樹脂層20を形成することで、両面ラミネート紙100を成型し紙製包装材料として使用できる。また、防汚性や浸透性の高い液体に対する耐液性を付与することができる。特に、酸性の内容物、例えば、乳製品、乳酸菌飲料、発酵乳、ドレッシング類の包装材料に好適である。
熱可塑性樹脂層20の形成前に、必要に応じて印刷層(図示せず)を形成してもよい。印刷層は用途、目的、工程に応じて、セルロースナノファイバーを含むバリア層2上に形成してもよいし、基材であるベース紙1の他方の面(バリア層2に接しない面)1b上に形成してもよい。紙製包装容器を形成するための紙製包装材料としては、機能性を付与するバリア層2を紙カップ等の紙製包装容器の内側ISとし、基材であるバリア紙10の他方の面1bを印刷面すなわち紙カップ等の紙製包装容器の外側OSとするのが、機能性発揮の面からは好ましい。
【0031】
「紙カップ」
図3は、本発明の実施形態に係る紙カップの形状を模式的に示す斜視図である。
本実施形態に係る紙カップ200は、本実施形態のバリア紙10からなり、バリア層2が紙カップの内側(内面側)ISに配置されたものである。
本実施形態に係る紙カップ200(図3参照)は、本実施形態のバリア紙10からなり、バリア層2が紙カップの内側ISに配置されているため、ガスバリア性および耐屈曲性に優れている。バリア層2が紙カップの内側ISに位置しているため、成型や輸送の際に物体が紙カップの外側に衝突しても、熱可塑性樹脂層20とベース紙を介することでバリア層2が受ける衝撃を低減させることができる。そのため、バリア層2に欠陥が発生する程度が軽減し、ガスバリア性が維持される。
本実施形態に係る紙カップ200は、本実施形態のバリア紙10に対し熱可塑性樹脂からなる層(熱可塑性樹脂層)20を積層し両面ラミネート紙100(図2参照)としたものから成型することができる。図2に示すように、熱可塑性樹脂層20は、バリア紙10のバリア層2上およびベース紙1上に形成する。
【0032】
紙カップ200を作製するには、まず、両面ラミネート紙100を抜き型により打ち抜いて、胴材と底部材とを作製する。次に、この胴材と底部材とを、カップ成形機を用いてカップ形状に成型する。
次に、別に作製しておいた蓋材を剥離可能な様にシールし密閉することにより、紙カップ200が得られる。
なお、本実施形態では、両面ラミネート紙100で形成した紙カップ200の構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。両面ラミネート紙100で形成される包装容器であれば、その形状は問わない。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。また、各部の具体的構成や材質などは上述の実施形態に例示したものに限られるものではなく適宜変更可能である。
【0033】
[実施例]
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[セルロースナノファイバーの分散液の調製方法1]
針葉樹由来漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)5.00g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)39mg(絶乾1gのセルロースに対し0.05mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)とを溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで攪拌した。
反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を次亜塩素酸ナトリウムが5.5mmol/gになるように添加し、室温にて酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。
反応後の混合物をガラスフィルターで濾過した後、十分な水の量による水洗、ろ過を2回繰り返すことにより、固形分10質量%の、水を含浸させた酸化セルロース繊維を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.68mmol/gであった。上記の工程で得られた酸化パルプを水で固形分1%に調整し、高圧ホモジナイザー(20℃、150MPa)で10回処理して、セルロースナノファイバーの分散液を得た。
【0034】
[セルロースナノファイバーの分散液の調製方法2]
パルプを混ぜることができる攪拌機に、針葉樹由来漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)を乾燥質量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥質量で111g加え、パルプ固形分が20%(w/v)になるように水を加えた。
その後、30℃で30分間攪拌した後にモノクロロ酢酸ナトリウムを216g(有効成分換算)添加した。30分間攪拌した後に、70℃まで昇温し1時間攪拌した。
その後、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.25のカルボキシメチル化したパルプを得た。
その後、カルボキシメチル化したパルプを水で固形分1%とし、これを、高速回転ミキサーを用いて約60分間攪拌し、セルロースナノファイバーの分散液を得た。
【0035】
[セルロース繊維を含む分散液の比較調製方法1(比較調製方法1)]
高圧ホモジナイザーを用いて、パルプを含むイオン交換水を1回処理した以外は、調製方法1と同様にして、白濁したセルロース繊維を含む分散液を得た。
[セルロース繊維を含む分散液の比較調製方法2(比較調製方法2)]
調製方法2で得られたセルロース繊維を含む分散液に、高速回転ミキサーを用いて約5分間分散処理を施し、白濁したセルロース繊維を含む分散液を得た。
【0036】
[評価1]
[セルロースナノファイバー、セルロース繊維の評価]
調製方法1、2、比較調製方法1、2で得られたセルロースナノファイバー、セルロース繊維の平均繊維長を測定した。各分散液を0.001%濃度まで希釈し、マイカ上に塗布しAFMにて繊維形態を観察した。1本ずつ存在している任意の繊維30点の幅の平均を求め、平均の繊維長とした。以下、その結果を示す。
調製方法1・・・・・1.5μm
調製方法2・・・・・3.0μm
比較調製方法1・・・40μm
比較調製方法2・・・50μm
【0037】
[ポリビニルアルコール水溶液の調製方法]
市販のポリビニルアルコール(商品名:PVA-124、クラレ社製)5gをビーカーに量りとり、純水を加えて500gとした。これを100℃に加熱しながら攪拌し、純水にポリビニルアルコールを溶解させて、ポリビニルアルコールの固形分1%水溶液を調製した。
[カルボキシメチルセルロース水溶液の調製方法]
市販のカルボキシメチルセルロース(商品名:F10LC、日本製紙社製)5gをビーカーに量りとり、純水を加えて500gとした。これを100℃に加熱しながら攪拌し、純水にカルボキシメチルセルロースを溶解させて、カルボキシメチルセルロースの固形分1%水溶液を調製した。
【0038】
[塗工液1~4の調製方法]
調製方法1、2で得られた分散液をそれぞれ100g採取し、それぞれの分散液に上記のポリビニルアルコール水溶液100gを加え、その混合物をスターラーで30分間攪拌し、塗工液1、2を調製した。
調製方法1、2で得られた分散液をそれぞれ100g採取し、それぞれの分散液に上記のカルボキシメチルセルロース水溶液100gを加え、その混合物をスターラーで30分間攪拌し、塗工液3、4を調製した。
[塗工液5、6の調製方法]
調製方法1、2で得られた分散液をそれぞれ160g採取し、それぞれの分散液に上記のポリビニルアルコール水溶液40gを加え、その混合物をスターラーで30分間攪拌し、塗工液5、6を調製した。
【0039】
[塗工液7、8の調製方法]
調製方法1、2で得られた分散液をそれぞれ40g採取し、それぞれの分散液に上記のポリビニルアルコール水溶液160gを加え、その混合物をスターラーで30分間攪拌し、塗工液7、8を調製した。
[塗工液9、10の調製方法]
調製方法1、2で得られた分散液をそれぞれ180g採取し、それぞれの分散液に上記のポリビニルアルコール水溶液20gを加え、その混合物をスターラーで30分間攪拌し、塗工液9、10を調製した。
【0040】
[塗工液11、12の調製方法]
調製方法1、2で得られた分散液をそれぞれ20g採取し、それぞれの分散液に上記のポリビニルアルコール水溶液180gを加え、その混合物をスターラーで30分間攪拌し、塗工液11、12を調製した。
[塗工液13、14の調製方法]
比較調製方法1、2で得られた分散液をそれぞれ100g採取し、それぞれの分散液に上記のポリビニルアルコール水溶液100gを加え、その混合物をスターラーで30分間攪拌し、塗工液13、14を調製した。
【0041】
[実施例1~12のバリア紙の作製]
カップ原紙(坪量280g/m、日本製紙社製)基材上に、塗工液1~8をバーコート法により塗工して、塗膜を形成した後、その塗膜を150℃にて10分間乾燥させて、カップ原紙基材上にバリア層が形成されたバリア紙を得た。
バリア層の塗工量を表1に示す。
[比較例1~10のバリア紙の作製]
カップ原紙(坪量280g/m、日本製紙社製)基材上に、塗工液1~4、塗工液9~14をバーコート法により塗工して、塗膜を形成した後、その塗膜を150℃にて10分間乾燥させて、カップ原紙基材上にバリア層が形成されたバリア紙を得た。
バリア層の塗工量を表1に示す。
【0042】
[両面ラミネート紙作製]
続いて押し出しラミネーション法にてバリア紙の両面にヒートシール層(熱可塑性樹脂層)を30μm厚となるよう貼り合わせた。ヒートシール層(熱可塑性樹脂層)としてはポリエチレンLC600A(日本ポリエチレン(株))を使用した。
[評価2]
実施例1~12と比較例1~10で得られたバリア紙の耐屈曲性を、下記の方法に従って評価した。
【0043】
[耐屈曲性試験]
実施例1~12と比較例1~10で得られた両面ラミネート紙を、23℃、50%RHの環境下で6時間以上調湿した後、JIS K5600-5-1:1999「塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第1節:耐屈曲性(円筒形マンドレル法)」に準拠して、バリア層が形成された面を外側にして直径8mmのマンドレルに巻き付けて屈曲させた。
[酸素透過率(等圧法)の測定]
実施例1~12と比較例1~10で得られたバリア紙について、上述の耐屈曲性試験前後の酸素透過率(cc/m・day)を、下記の方法に従って測定した。
酸素透過率測定装置MOCON(商品名:OX-TRAN2/21、モダンコントロール社製)を用いて、30℃、40%RHの雰囲気下におけるバリア紙の酸素透過率を測定した。
測定した結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1の結果から、実施例1~12の両面ラミネート紙は1.4g/m以上の塗工量のバリア層を備えているため、酸素透過率の劣化(屈曲前後での酸素透過率の変化率)が小さく、屈曲後もガスバリア性が維持されていることが分かった。
また、セルロースナノファイバーと水溶性高分子との混合比が20/80~80/20であることで、セルロースナノファイバーの間隙を充填することができ、バリア層に柔軟性を付与し耐屈曲性が改善する、かつ製膜性良くバリア層を積層できることが分かった。
これに対して、比較例1、4、7、8ではバリア層の膜厚が薄いため、バリア層が紙の表面の凹凸に追従することができず、屈曲前のガスバリア性は良好だが、屈曲させることでバリア層にクラックが発生し、ガスバリア性が大幅に低下していることが分かった。
【0046】
また、比較例2、5は、水溶性高分子の量が少なく、バリア層のセルロースナノファイバーの間隙を充填することができず、屈曲させることでバリア層にクラックが発生し、酸素透過率が悪化したと考えられる。比較例3、6では水溶性高分子の量が多く、塗工液の粘度が低いためバリア層が乾燥前にベース紙に染込み、欠陥が発生しやすいため初期の酸素透過率が悪いと考えられる。比較例9、10ではセルロース繊維が大きすぎるため、基材(ベース紙)上にバリア層を形成する際、粗い紙の繊維との間に微細な空隙ができるため初期の酸素透過率が悪いと考えられる。
【0047】
以上の結果から、バリア層が1.4g/m以上であり、含まれるセルロースナノファイバーの繊維長が100nm以上30μm以下であり、バリア層におけるセルロースナノファイバーの含有量が20質量%以上80質量%以下であれば、そのバリア層を有する両面ラミネート紙のガスバリア性は良好で、屈曲後のガスバリア性の低下が小さい。そのため、そのバリア紙を用いて包装容器を形成とした場合も、その包装容器は十分な強度を有し、実用に耐え得る。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のバリア紙は、ガスバリア性および耐屈曲性に優れているため、食品やトイレタリー製品、薬品、医療品、電子部材などの容器や包材などの様々な分野へ応用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1・・・紙基材(ベース紙)
2・・・バリア層
10・・・バリア紙
20・・・樹脂層(熱可塑性樹脂層)
100・・・シート材(両面ラミネート紙)
200・・・紙カップ
IS・・・紙カップの内側
OS・・・紙カップの外側
図1
図2
図3