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特許7562969起泡性水中油型乳化物及び起泡性水中油型乳化物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】起泡性水中油型乳化物及び起泡性水中油型乳化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/00 20060101AFI20241001BHJP
   A23L 9/20 20160101ALI20241001BHJP
【FI】
A23D7/00 508
A23L9/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020047713
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021145592
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前川 敬祐
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-009774(JP,A)
【文献】特開2019-195294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D、A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
起泡性水中油型乳化物を構成する油脂のSFCが34~85%である温度(品温)でオーバーランを30~105までホイップし、ホイップした温度以下で24時間保存した後のホイップクリームの硬さが400g/19.6mm2以上であることを特徴とする起泡性水中油型乳化物。
但し、該起泡性水中油型乳化物の総油分は36~50重量%であり、該起泡性水中油型乳化物はパーム核ステアリンとパーム中融点部を含有し、該起泡性水中油型乳化物の構成油脂中のラウリン酸含量が20~45重量%であり、SOS型トリグリセリドの含量が7~30重量%である。ここでSOS型トリグリセリドにおいて、Sはパルミチン酸(P)またはステアリン酸(St)、Oはオレイン酸を示す。
なお、ホイップクリームの硬さは、直径3cm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分によるレオメーターの測定値とした。
【請求項2】
構成する油脂の15℃と25℃におけるSFCの差であるΔSFC(15-25)が44以上である、請求項1記載の起泡性水中油型乳化物。
【請求項3】
(ホイップ直後のホイップクリームの硬さ)に対して(ホイップした温度以下で24時間保存した後のホイップクリームの硬さ)が4.5倍以上である、請求項1又は2に記載の起泡性水中油型乳化物。
【請求項4】
増粘多糖類、および/または食物繊維を不使用である、請求項1~いずれか1項に記載の起泡性水中油型乳化物。
【請求項5】
請求項1~いずれか1項に記載の起泡性水中油型乳化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製菓・製パン分野に使用される起泡性水中油型乳化物及びその起泡性水中油型乳化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洋菓子、パン及び調理用原料として、外観及び風味を向上させて嗜好性を高めるべく、起泡性水中油型乳化物が幅広く利用されている。起泡性水中油型乳化物には、牛乳から分離された生クリーム、動植物性油脂を原料とした合成クリーム、さらに前記二者を混合したコンパウンドクリームの3種類がある。前記の生クリームは優れた乳風味を有するが、高価であり、乳化安定性が低いために、流通や輸送の段階で可塑化現象(ボテ)やチャーニング現象(乳化破壊)を起こし易く、また起泡時の起泡終点巾が狭いため適正な起泡が困難という問題を有している。一方、合成クリームやコンパウンドクリームは生クリームと対比して、安価であり、乳化安定性や起泡性も比較的安定であることから、上記用途に幅広く利用されている。
【0003】
しかしながら、合成クリームやコンパウンドクリームのような起泡性水中油型乳化物においても、流通や保管の条件によって、或いは起泡性水中油型乳化物に使用する油脂や乳化剤の種類、使用量によって、起泡前原液の粘度上昇や可塑化現象が生じる場合がある。
特に、起泡性水中油型乳化物が例えば20~40℃のような常温で流通される場合には、乳化安定性の低い起泡性水中油型乳化物ではクリーム中の油脂の結晶が部分合一を引き起こしやすくなり、起泡前原液の粘度上昇や可塑化現象が生じることで、起泡性水中油型乳化物の商品価値が失われるという問題があった。
【0004】
上記のような問題を解決する手法としては、起泡性水中油型乳化物に使用される油脂又は乳化剤の両面から検討され、種々解決法が提案されている。
【0005】
特許文献1では、油相3~50重量%、水相97~50重量%からなる起泡性水中油型乳化物であって、油相が、構成脂肪酸残基が炭素数20~24の飽和脂肪酸を5~70重量%含む油脂及び親油性乳化剤として主要構成脂肪酸残基が炭素数20~24の飽和脂肪酸であるグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びプロピレングリコール脂肪酸エステルの一種又は二種以上を含むことを特徴とする起泡性水中油型乳化物が開示されている。
【0006】
特許文献2では、安定性の改善されたホイップ可能食料製品として、ヨウ素価5以下のパーム核硬化油などの第一フラクション80~90重量%とパーム油高融点部などの第二フラクション10~20重量%からなる油脂、安定化乳化剤対不安定化乳化剤HLB比が1~4である乳化剤成分、及び1種以上の糖、を含有するホイップ可能な水中油型エマルジョン食料製品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平6-276978号公報
【文献】特表2007-500516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者の目的は、製菓、製パンに使用される起泡性水中油型乳化物において、冷蔵と常温のどちらの条件下においても保存性、離水の防止、保形性の維持といった品質の安定性を有し、気泡直後は流動性を有することで製菓や製パンへのフィリング材として使用する際の絞りや充填といった作業性が良好であり、時間経過により強固な構造体となるが良好な食感と風味・口溶けを有する起泡性水中油型乳化物及びその起泡性水中油型乳化物の製造方法を提供することした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、課題の解決に向け鋭意検討を行った。
特許文献1の起泡性水中油型乳化物では、機械耐性、外部環境の変化による温度耐性に満足な特性を有しており、5℃で起泡後のホイップクリームを20℃で24時間の保存によってもクリーム組織の変化がないと記載されている。しかし、起泡性水中油型乳化物の15~20℃での起泡性については何ら言及されていなかった。特許文献2の起泡性水中油型乳化物では、10~27℃にてホイップすることができ、典型的なオーバーランは約150~500%であると記載されている。しかし、これよりも低いオーバーランについては何ら言及されていなかった。本発明者らは、上記課題の解決に向けて鋭意検討した結果、特定の油分であり、起泡時のSFCが特定範囲内にある中で、最適なホイップ終点でのオーバーランが30~105になるように調整することにより、気泡直後は流動性を有しながらも時間経過により強固な構造体となる起泡性水中油型乳化物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)起泡性水中油型乳化物を構成する油脂のSFCが34~85%である温度(品温)でオーバーランを30~105までホイップし、ホイップした温度以下で24時間保存した後のホイップクリームの硬さが400g/19.6mm以上であることを特徴とする起泡性水中油型乳化物、
なお、ホイップクリームの硬さは、直径3cm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分によるレオメーターの測定値とした、
(2)総油分が36~50重量%である(1)記載の起泡性水中油型乳化物、
(3)構成する油脂の15℃と25℃におけるSFCの差であるΔSFC(15-25)が44以上である(1)または(2)記載の起泡性水中油型乳化物、
(4)(ホイップ直後のホイップクリームの硬さ)に対して(ホイップした温度以下で24時間保存した後のホイップクリームの硬さ)が4.5倍以上である、(1)~(3)いずれか1つに記載の起泡性水中油型乳化物、
(5)増粘多糖類、および/または食物繊維を不使用である、(1)~(4)いずれか1つに記載の起泡性水中油型乳化物、
(6)(1)~(5)いずれか1つに記載の起泡性水中油型乳化物の製造方法、
に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、15~25℃のような常温で起泡可能な水中油型乳化物、及びその起泡性水中油型乳化物の製造方法を提供することが可能となった。本発明により、冷蔵や冷凍流通網の整っていない市場への起泡性水中油型乳化物の提供が可能となり、冷蔵や冷凍保管を必要としないことによるエネルギーの低減、輸送中の可塑化現象(ボテ)やチャーニング現象(乳化破壊)に伴う食品廃棄の軽減に寄与する起泡性水中油型乳化物を提供することができる。また、本発明品は一般的な起泡性水中油型乳化物と比べて硬い構造体を形成するため、サンド菓子やパン・洋菓子用フィリングとして使用することができる。これらの用途で通常使用されている油中水型乳化物であるマーガリンや油脂組成物であるショートニングと比べて、水中油型乳化物である本発明品は口溶けに優れる。
【0012】
起泡性水中油型乳化物は、”ホイップ用クリーム”と呼ばれたりもする。これを泡立器具、または専用のミキサーを用いて空気を抱き込ませるように攪拌して起泡済み水中油型乳化物としたものが、俗に”ホイップクリーム”または”ホイップドクリーム”と称される、起泡状態を呈するものである。本発明品の物性は、気泡直後は一般的なホイップクリームと同様であるため、絞りや充填といった操作が可能である。また、経時により構造体の骨格が強固となるため、ホイップクリームで問題となる輸送時の形状の崩れやダレと呼ばれる変形は起こらず、安定的に形状が維持された製品の創出が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の起泡性水中油型乳化物は、油脂、乳化剤及び水を含む水中油型乳化物であって、ホイップ前は流動状態で乳化安定性を有する乳化物であり、さらに常温(15~25℃)で起泡可能なホイップ性を有し、ホイップ後の起泡性水中油型乳化物(ホイップクリーム)をホイップした温度以下で24時間保存した後強固な構造体となる。ここで、本発明の起泡性水中油型乳化物をホイップした直後は、通常の起泡性クリーム同様の流動性を有するものであるが、ホイップした温度以下で24時間保存することにより強固な構造体となる。本願発明において強固な構造体とは、一般的な起泡性水中油型乳化物と比べて硬い構造体を形成するため、ホイップクリームで問題となる輸送時の形状の崩れやダレと呼ばれる変形は起こらず、安定的に形状が維持された状態のことである。より具体的には、ホイップした温度以下で24時間保存した後のホイップクリームの硬さが400g/19.6mm以上である。また、本願の起泡性水中油型乳化物は、(ホイップ直後のホイップクリームの硬さ)に対して(ホイップした温度以下で24時間保存した後のホイップクリームの硬さ)が4.5倍以上であることが好ましい。
なお、本発明においてホイップクリームの硬さの測定は、クリームを目的のオーバーランまでホイップした後に直径30cm、高さ3.0cmのカップ容器に充填、FUDOHレオメーター(株式会社レオテック)を用いて、直径3cm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分によるレオメーターの測定値とした。
【0014】
本発明の起泡性水中油型乳化物は、構成油脂のSFCが34~85%である温度(品温)でホイップする。構成油脂のSFCは、より好ましくは35~83%であり、さらに好ましくは36~80%でホイップする。構成油脂のSFCが好ましい値となる温度(品温)とすることにより、適度なオーバーランに調整することができ、ホイップした温度以下で24時間保存した後の硬さが特定の値となるものである。ここで、本発明の起泡性水中油型乳化物における構成油脂とは、植物性油脂及び動物性油脂の総和である。そのため、生クリームを使用した場合には、生クリーム中の乳脂分を使用した植物性油脂に加えたものである。また、本発明の起泡性水中油型乳化物における油相とは、使用する油脂の構成油脂及び親油性乳化剤を含有するものである。
なお、本発明におけるSFCとは、AOCS Official Method第5版Cd16-81に準じて、60℃で60分温調して油脂を融解させ、0℃で60分保持することにより固化し、さらに各測定温度で30分温調後に測定したものである。
【0015】
本発明の起泡性水中油型乳化物は、構成油脂のSFCが好ましい値となる温度(品温)でオーバーランを30~105までホイップする。オーバーランは、より好ましくは33~100まで、さらに好ましくは35~95までホイップする。オーバーランが低すぎる場合には風味は強くなるが、食感がやや重くなる場合があり、オーバーランが高すぎる場合には食感が軽くなるが、風味の乏しいものになる場合がある。ここで、オーバーランは起泡性水中油型乳化物の保管温度、起泡前の品温、起泡作業環境温度、起泡装置に影響されて上下する。例えば、ホイップする際に起泡性水中油型乳化物の品温が15~25℃と一般的なホイップ時の品温である5~10℃に比べて高い場合には、解乳化しやすいためオーバーランが低くなる傾向がある。
なお、本発明の起泡性水中油型乳化物において、オーバーランの測定は、容器に起泡済み水中油型乳化物(ホイップクリーム)を充填して測定した内容物の重量を、同型の容器に充填して測定した起泡前の水中油型乳化物の内容物の重量で除して算出することにより求めた。
【0016】
本発明の起泡性水中油型乳化物をホイップしたホイップクリームは、ホイップした温度以下で24時間保存した後の硬さが400g/19.6mm以上である。ホイップした温度以下で24時間保存した後の硬さは、より好ましくは450~5000g/19.6mm以上であり、さらに好ましくは500~3000g以上/19.6mmである。
【0017】
本発明の起泡性水中油型乳化物は、構成油脂の総油分が36~50重量%であることが好ましく、より好ましくは37~48重量%である。
総油分が下限未満であると、起泡にかかる時間が延びる、ホイップしない場合がある。逆に総油分が上限を超えると、乳化安定性が悪くなる、やや油っぽい食感になる場合がある。
【0018】
本発明の起泡性水中油型乳化物において、構成油脂の15℃と25℃におけるSFCの差である(ΔSFC(15-25))が44以上であることが好ましく、より好ましくは45~65である。
【0019】
また、本発明の起泡性水中油型乳化物をホイップしたホイップクリームにおいて、(ホイップ直後のホイップクリームの硬さ)に対して(ホイップした温度で24時間保存した後のホイップクリームの硬さ)が4.5倍以上であることが好ましく、より好ましくは5~30倍である。
【0020】
本発明の起泡性水中油型乳化物において、構成油脂にラウリン酸を含有する植物性油脂を使用するのが好ましい。本発明においてラウリン酸を含有する油脂としては、植物性油脂であるパーム核油、ヤシ油、ババス油の分別油、水素添加油、エステル交換油、または前述のラウリン酸を含有した混合油を原料としたエステル交換油から選択される1種または2種以上であるのが好ましい。具体的には、パーム核油の極度硬化油、パーム核油の分別油、または精製パーム核油等、ラウリン酸を含有する油脂とパーム油等のラウリン酸を含有しない油脂とのエステル交換油を例示することができ、これらのいずれか1種又は2種以上を用いることができる。
【0021】
本発明の起泡性水中油型乳化物において、構成油脂中のラウリン酸含量が20~45重量%以上であることが好ましく、より好ましくは25~40重量%が、さらに好ましくは30~38重量%である。構成油脂中にラウリン酸含量が少ないとホイップ性が損なわれ、逆に油脂中にラウリン酸含量が多すぎると製品コストが上昇する。
なお、本発明において動物性油脂である乳脂を含有する場合には、これを加味した構成油脂中のラウリン酸含量を計算することとする。
【0022】
また、本発明の起泡性水中油型乳化物において、構成油脂にSOS型トリグリセリドを含有する植物性油脂を使用するのが好ましい。SOS型トリグリセリドを含有する植物性油脂としては、具体的には、パーム油、イリッペ脂、カカオ脂、シア脂、アランブラキア脂、及びこれらの硬化及び/又は分別油脂、並びに2位がオレイン酸に富む油脂の1、3位に飽和脂肪酸を導入して得たエステル交換油脂が例示でき、構成油脂中のSOS型トリグリセリド含量が7~30重量%であることが好ましく、より好ましくは8~27重量%、さらに好ましくは9~25重量%である。ここで、構成油脂に乳脂を使用する場合であっても、乳脂由来のSOS型トリグリセリドは除くものとする。SOS型トリグリセリドを含有する油脂としてパーム中融点部を使用する場合、起泡性水中油型乳化物としての口どけの点で好適である。また、SOS型トリグリセリドを適当な量含有することにより、起泡性水中油型乳化物は好ましい乳風味を示す。
なお、SOS型トリグリセリドにおいて、Sはパルミチン酸(P)またはステアリン酸(St)、Oはオレイン酸を示す。すなわち、本発明においてSOS型トリグリセリドとは、POP型トリグリセリドである1,3-ジパルミトイル-2-オレオイル-グリセロール、POSt型トリグリセリドである1-パルミトイル-2-オレオイル-3-ステアロイル-グリセロール、およびStOSt型トリグリセリドである1,3-ジステアロイル-2-オレオイル-グリセロールからなる。
【0023】
本発明の起泡性水中油型乳化物においては、構成油脂中にラウリン酸を含有する植物性油脂およびSOS型トリグリセリドに加えて、さらに乳脂を混合して使用することもできる。本発明の起泡性水中油型乳化物において、構成油脂中の乳脂含量は50重量%以下であることが好ましく、40重量%以下がより好ましく、さらに好ましくは30重量%以下である。
なお、本発明の乳脂とは、乳脂自体をそのまま配合しても良いし、牛乳、生クリーム、バター等の乳製品を起源とし水相に配合できるものは水相に配合しても良い。また、これらの原料を加工処理して得られるバターオイル、乳脂の極度硬化、乳脂を分別した分別乳脂高融点部や分別乳脂中融点部や分別乳脂低融点部を使用してもよい。
【0024】
本発明の起泡性水中油型乳化物において、上記の範囲を満たす限りにおいて、構成油脂中にラウリン酸を含有する植物性油脂、SOS型トリグリセリド、および乳脂以外の油脂を使用することができる。例えば、大豆油、綿実油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、パーム油、菜種油、米ぬか油、ゴマ油、カポック油、ラード、魚油、鯨油等の各種の動植物油脂及びそれらの硬化油、分別油、エステル交換油等である。無論、これらのうちから2種以上を混合した油脂も使用することができる。
【0025】
本発明の起泡性水中油型乳化物において、本発明の効果を損なわない範囲で、乳化剤を添加しても良い。乳化剤としてはレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、シュガーエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよび酢酸モノグリセリド、酒石酸モノグリセリド、酢酸酒石酸混合モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、リンゴ酸モノグリセリド等各種有機酸モノグリセリド、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0026】
本発明の起泡性水中油型乳化物における水相とは、水、無脂乳固形分、風味材、必要に応じて水溶性添加剤を含有するものである。
無脂乳固形分としては、生乳、牛乳、脱脂乳、生クリーム、濃縮乳、無糖練乳、加糖練乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、ホエーたん白、乳糖、乳ミネラル、バターミルクパウダー、カゼイン類、またはトータルミルクプロテインなどが使用できる。また、乳以外の風味付与を目的にココアパウダーや果汁といった風味剤を目的に沿って使用することが出来る。水溶性添加剤としては、水溶性乳化剤、pH調整剤、水溶性日持ち向上剤・抗菌剤、水溶性色素などを目的に沿って適宜添加することができる。
【0027】
本発明の起泡性水中油型乳化物においては、増粘多糖類を使用しないのが好ましい。本発明において増粘多糖類としては、ジェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、プルラン、グァーガム、サイリウムシードガム、サクシノグリカン、水溶性大豆多糖類、カラギーナン、タマリンド種子ガム及びタラガムを例示することができる。
【0028】
本発明の起泡性水中油型乳化物においては、食物繊維を使用しないのが好ましい。本発明において食物繊維としては、各種セルロース類、イヌリンを例示することができる。
【0029】
本発明の起泡性水中油型乳化物において、本願発明の効果を妨げない範囲であれば、糖類、蛋白質、塩類、香料、着色料、保存料を適宜使用することができる。
【0030】
本発明の起泡性水中油型乳化物における糖類としては、澱粉分解物、少糖類、ニ糖類、単糖類、糖アルコール、希少糖から選択される1種または2種以上であり、グルコース、スクロース、フラクトース、マルトース、ラクトース、デキストロース、トレハロース、ポリデキストロース、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ラクチトール、ソルビトールなどが例示できるが、より自然な甘味とするためにスクロースやマルトースの利用がより好ましい。
【0031】
本発明の起泡性水中油型乳化物における蛋白質としては、乳蛋白質を含有する乳原料、植物性蛋白質を含有する植物性原料のいずれも使用できる。乳蛋白質を含有する乳原料としては、全脂粉乳、脱脂粉乳、バターミルクパウダー、ホエー蛋白、酸カゼイン、レンネットカゼイン、若しくはカゼインナトリウム、カゼインカルシウム、カゼインカリウム等のカゼイン類、またはトータルミルクプロテインが例示できる。植物性原料としては、濃縮大豆蛋白質、分離大豆蛋白質、エンドウ豆蛋白質、小麦蛋白質などが例示できる。
【0032】
本発明の起泡性水中油型乳化物における塩類としては、食塩、ヘキサメタリン酸塩、第2リン酸塩、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸塩、重曹等を単独又は2種以上を混合使用することができる。
【0033】
本発明の起泡性水中油型乳化物を製造する方法としては、一般的なクリーム類を製造する要領で行うことができる。具体的には油脂、水、乳成分等の主たる原料に乳化剤、塩類、その他の添加物を加えた原料を混合して、予備乳化、殺菌又は滅菌処理し均質化処理し冷却することにより得ることができる。均質化処理は前均質化、後均質化のどちらか一方でも、両方を組み合わせた2段均質化でも良い。起泡性水中油型乳化物の保存性の点で滅菌処理することが好ましい。
【0034】
本発明において起泡性水中油型乳化物の滅菌処理には、間接加熱方式と直接加熱方式の2種類があり、間接加熱処理する装置としてはAPVプレート式UHT処理装置(APV株式会社製)、CP-UHT滅菌装置(クリマティー・パッケージ株式会社製)、ストルク・チューブラー型滅菌装置(ストルク株式会社製)、コンサーム掻取式UHT滅菌装置(テトラパック・アルファラベル株式会社製)等が例示できるが、特にこれらにこだわるものではない。また、直接加熱式滅菌装置としては、超高温滅菌装置(岩井機械工業(株)製)、ユーペリゼーション滅菌装置(テトラパック・アルファラバル株式会社製)、VTIS滅菌装置(テトラパック・アルファラバル株式会社製)、ラギアーUHT滅菌装置(ラギアー株式会社製)、パラリゼーター(パッシュ・アンド・シルケーボーグ株式会社製)等のUHT滅菌装置が例示でき、これらの何れの装置を使用してもよい。
【0035】
本発明の起泡性水中油型乳化物は、上記滅菌処理後の液状の状態で無菌的にテトラパックやショーリーパックに充填することにより、無菌充填商品として優れた乳化安定性を有するものである。
【0036】
本発明の起泡性水中油型乳化物は、まず起泡性水中油型乳化物を15~25℃、より好ましくは15~23℃、さらに好ましくは15~21℃、に温調し、縦型ミキサーや連続ミキサーを含む起泡装置を用いて特定のオーバーランまで起泡させることができるものである。
【0037】
本発明の起泡性水中油型乳化物の起泡直後は、通常の起泡性クリーム同様の流動性を持つため、絞りや充填といった作業性が良好である。そのため、一般的な起泡性クリームと同様に、洋菓子、パン、調理において、外観及び風味を向上させて嗜好性をより高めるために、フィリング材、サンド材、トッピング材、コーチング材として幅広く利用することができる。
【実施例
【0038】
以下に本発明の実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明の精神は以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、%及び部は重量基準を意味する。また、ホイップクリームの硬さの単位はg/19.6mmである。

実験1 ホイップ温度によるホイップクリームの硬さへの影響
【0039】
検討1 起泡性水中油型乳化物の調製
表1 配合


・乳化剤には、レシチン(辻製油株式会社製)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(阪本薬品工業株式会社製)、ショ糖脂肪酸エステル(三菱ケミカルフーズ株式会社製)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(日油株式会社製)を用いた。
・配合においては、油脂などの主たる原料合計を100%とし、添加量が少量である乳化剤、塩類、その他の添加物は原料合計には加えなかった。
【0040】
表1の配合により、下記の「起泡性水中油型乳化物の調製方法」に従って、起泡性水中油型乳化物を調製した。
「起泡性水中油型乳化物の調製方法」
1.食用油脂と油脂に溶解する成分を含む油相と、水及び水に溶解する成分からなる水相をそれぞれ調製した。
2.水相と油相を混合し、60℃、20分間予備乳化した。
3.プレート式熱交換機にて78℃まで予備加熱した。
4.超高温滅菌装置(岩井機械工業(株)製)(直接蒸気吹き込み方式)によって、146℃まで加熱、ホールディングチューブによる保持で殺菌を行った。
5.蒸発冷却し78℃まで冷却した。
6.高圧ホモゲナイザーにより均質化(3MPa)した。
7.プレート冷却装置にて5℃へ冷却した。
8.一晩エージング(5℃)した。
【0041】
パーム核ステアリン(ヨウ素価7.0、ラウリン酸含量55.0重量%、SOS型トリグリセリド含量0.5重量%以下)26.50部、パーム中融点部(ヨウ素価34.0、ラウリン酸含量0.5重量%以下、SOS型トリグリセリド含量80.2重量%)11.00部に、ショ糖飽和脂肪酸エステル(HLB5.0)0.30部、大豆レシチン0.20部を添加して混合溶解することにより油相とした。
これとは別に水41.00部、生クリーム(乳脂含量47.7重量%、ラウリン酸含量3.6重量%、よつ葉乳業株式会社製)15.00部、脱脂粉乳6.00部、カゼインカリウム0.50部、ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB11.6)0.10部、ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB8.8)0.01部、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(HLB15.7)0.05部、およびクエン酸ナトリウム(pH調整剤)0.30部を添加して混合溶解することにより水相とした。上記油相と水相を60℃、20分間予備乳化タンクで高速攪拌により予備乳化を行った後、プレート式熱交換機にて78℃まで予備加熱を行い、超高温滅菌装置(岩井機械工業(株)製)(直接蒸気吹き込み方式)によって、144℃まで加熱した。さらに殺菌保持チューブであるホールディングチューブにて144℃で4秒間保持し、蒸発冷却し78℃まで冷却した。その後、3MPaの均質化圧力で再均質化して、再びプレート冷却装置にて5℃に冷却し72時間熟成後、実施例1の起泡性水中油型乳化物を得た。ここで、実施例1の起泡性水中油型乳化物は、ホイップ時の温度(品温)である20℃における構成油脂のSFCは50.6であり、総油分が44.7重量%、構成する油脂の15℃と25℃におけるSFCの差であるΔSFC(15-25)は52.7であった。また、起泡性水中油型乳化物を構成する油脂中のラウリン酸含量が33.2重量%、SOS型トリグリセリドが19.8重量%であった。次に、実施例1の起泡性水中油型乳化物200gを品温20℃に加温し、16gのグラニュー糖を加えて縦型ミキサーでオーバーランが60までホイップし、実施例1のホイップクリームを調製した。ホイップ直後のホイップクリームの硬さは128、5℃で24時間保存後の硬さは1750であった。このように、ホイップした温度以下で24時間保存することにより、ホイップ直後の硬さに対して4.5倍以上の硬さになった。
なお、ホイップクリームの硬さの測定は、クリームを目的のオーバーランまでホイップした後に直径30cm、高さ3.0cmのカップ容器に充填、FUDOHレオメーター(株式会社レオテック)を用いて、直径3cm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分によるレオメーターの測定値とした。
【0042】
実施例1のホイップクリームについて、温度を変えて24時間保存した際のホイップクリームの硬さを測定した。また、5℃で48時間保存した際のホイップクリームの硬さも測定した。
表2 保存時の温度によるホイップクリームの硬さへの影響
【0043】
20℃でホイップした起泡性水中油型乳化物を20℃以下で24時間保存した場合、ホイップ直後の硬さに対して4.5倍以上の硬さになり、48時間後でもその特徴は維持されていた。しかし、ホイップした温度である20℃を超える25℃で24時間保存した場合には、ホイップ直後の硬さに対して4.5倍以上の硬さを得ることはできなかった。

実験2 ホイップ温度、およびオーバーランによるホイップクリームの硬さへの影響
【0044】
表3 ホイップクリームの硬さ変化

【0045】
実施例1の起泡性水中油型乳化物200gを品温20℃に加温し、16gのグラニュー糖を加えて縦型ミキサーでオーバーランが38までホイップし、実施例2のホイップクリームを調製した。ここで、実施例1の起泡性水中油型乳化物は、ホイップ時の温度(品温)である20℃における構成油脂のSFCは50.6であった。また、ホイップ直後のホイップクリームの硬さは131、5℃で24時間保存後の硬さは1900であった。このように、ホイップした温度以下で24時間保存することにより、ホイップ直後の硬さに対して4.5倍以上の硬さになった。
【0046】
実施例1の起泡性水中油型乳化物200gを品温15℃に加温し、16gのグラニュー糖を加えて縦型ミキサーでオーバーランが78までホイップし、実施例3のホイップクリームを調製した。ここで、実施例1の起泡性水中油型乳化物は、ホイップ時の温度(品温)である15℃における構成油脂のSFCは74.5であった。また、ホイップ直後のホイップクリームの硬さは123、5℃で24時間保存後の硬さは710であった。このように、ホイップした温度以下で24時間保存することにより、ホイップ直後の硬さに対して4.5倍以上の硬さになった。
【0047】
実施例1の起泡性水中油型乳化物200gを品温10℃に加温し、16gのグラニュー糖を加えて縦型ミキサーでオーバーランが112までホイップし、比較例1のホイップクリームを調製した。ここで、実施例1の起泡性水中油型乳化物は、ホイップ時の温度(品温)である10℃における構成油脂のSFCは86.4であった。また、ホイップ直後のホイップクリームの硬さは120、5℃で24時間保存後の硬さは112であった。このように、ホイップした温度以下で24時間保存したにもかかわらず、ホイップ直後の硬さに対して4.5倍以上の硬さにはならなかった。
【0048】
実施例1の起泡性水中油型乳化物200gを品温5℃で、16gのグラニュー糖を加えて縦型ミキサーでオーバーランが123までホイップし、比較例2のホイップクリームを調製した。ここで、実施例1の起泡性水中油型乳化物は、ホイップ時の温度(品温)である5℃における構成油脂のSFCは88.6であった。また、ホイップ直後のホイップクリームの硬さは88、5℃で24時間保存後の硬さは49であった。このように、ホイップした温度で24時間保存したにもかかわらず、ホイップ直後の硬さに対して4.5倍以上の硬さにはならなかった。

実験3 起泡性水中油型乳化物の組成によるホイップクリームの硬さへの影響
【0049】
表4 起泡性水中油型乳化物の組成とホイップクリームの硬さ


【0050】
油相をパーム核ステアリン22.25部、パーム中融点部9.50部、水相を水49.25部、生クリーム12.50部とした以外は実施例1と同様にして、実施例4の起泡性水中油型乳化物を得た。ここで、実施例4の起泡性水中油型乳化物は総油分が37.7重量%、構成油脂の15℃と25℃でのSFCの差であるΔSFC(15-25)は52.5であった。また、起泡性水中油型乳化物を構成する油脂中のラウリン酸含量が33.0重量%、SOS型トリグリセリドが20.2重量%であった。次に、実施例4の起泡性水中油型乳化物200gを品温20℃に加温し、16gのグラニュー糖を加えて縦型ミキサーでオーバーランが95までホイップし、実施例4のホイップクリームを調製した。ホイップ直後のホイップクリームの硬さは70、5℃で1日保存後の硬さは590であった。このように、ホイップした温度以下で24時間保存することにより、ホイップ直後の硬さに対して4.5倍以上の硬さになった。
【0051】
油相をパーム核ステアリン24.38部、パーム中融点部10.25部、水相を水45.13部、生クリーム13.75部とした以外は実施例1と同様にして、実施例5の起泡性水中油型乳化物を得た。ここで、実施例5の起泡性水中油型乳化物は総油分が41.2重量%、構成油脂の15℃と25℃でのSFCの差であるΔSFC(15-25)は52.1であった。また、起泡性水中油型乳化物を構成する油脂中のラウリン酸含量が33.1重量%、SOS型トリグリセリドが20.0重量%であった。次に、実施例5の起泡性水中油型乳化物200gを品温20℃に加温し、16gのグラニュー糖を加えて縦型ミキサーでオーバーランが78までホイップし、実施例5のホイップクリームを調製した。ホイップ直後のホイップクリームの硬さは119、5℃で1日保存後の硬さは1020であった。このように、ホイップした温度以下で24時間保存することにより、ホイップ直後の硬さに対して4.5倍以上の硬さになった。
【0052】
油相をパーム核ステアリン13.25部、パーム中融点部5.50部、精製パーム核油(ヨウ素価17、ラウリン酸含量47.6重量%、SOS型トリグリセリド含量0.5重量%以下)13.75部、パーム油とパーム核オレインのエステル交換油(ヨウ素価41、ラウリン酸含量15重量%、SOS型トリグリセリド含量1.4重量%)5.00部とした以外は実施例1と同様にして、実施例6の起泡性水中油型乳化物を得た。ここで、実施例6の起泡性水中油型乳化物は総油分が44.7重量%、構成油脂の15℃と25℃でのSFCの差であるΔSFC(15-25)は46.4であった。また、起泡性水中油型乳化物を構成する油脂中のラウリン酸含量が33.2重量%、SOS型トリグリセリドが10.0重量%であった。次に、実施例6の起泡性水中油型乳化物200gを品温20℃に加温し、16gのグラニュー糖を加えて縦型ミキサーでオーバーランが86までホイップし、実施例6のホイップクリームを調製した。ホイップ直後のホイップクリームの硬さは44、5℃で1日保存後の硬さは550であった。このように、ホイップした温度以下で24時間保存することにより、ホイップ直後の硬さに対して4.5倍以上の硬さになった。
【0053】
油相をパーム核ステアリン19.87部、パーム中融点部8.25部、精製パーム核油6.88部、パーム油とパーム核オレインのエステル交換油2.50部とした以外は実施例1と同様にして、実施例7の起泡性水中油型乳化物を得た。ここで、実施例7の起泡性水中油型乳化物は総油分が44.7重量%、構成油脂の15℃と25℃でのSFCの差であるΔSFC(15-25)は50.0であった。また、起泡性水中油型乳化物を構成する油脂中のラウリン酸含量が33.2重量%、SOS型トリグリセリドが14.9重量%であった。次に、実施例7の起泡性水中油型乳化物200gを品温20℃に加温し、16gのグラニュー糖を加えて縦型ミキサーでオーバーランが68までホイップし、実施例7のホイップクリームを調製した。ホイップ直後のホイップクリームの硬さは90、5℃で1日保存後の硬さは1100であった。このように、ホイップした温度以下で24時間保存することにより、ホイップ直後の硬さに対して4.5倍以上の硬さになった。
【0054】
油相をパーム核ステアリン26.50部、パーム中融点部11.00部、パーム油とパーム核オレインのエステル交換油7.20部とし、生クリームを使用せずに、水相を水48.80部、脱脂粉乳を6.80部とした以外は実施例1と同様にして、実施例8の起泡性水中油型乳化物を得た。ここで、実施例8の起泡性水中油型乳化物は総油分が44.7重量%、構成油脂の15℃と25℃でのSFCの差であるΔSFC(15-25)は56.3であった。また、起泡性水中油型乳化物を構成する油脂中のラウリン酸含量が35.0重量%、SOS型トリグリセリドが20.0重量%であった。次に、実施例8の起泡性水中油型乳化物200gを品温20℃に加温し、16gのグラニュー糖を加えて縦型ミキサーでオーバーランが64までホイップし、実施例8のホイップクリームを調製した。ホイップ直後のホイップクリームの硬さは100、5℃で1日保存後の硬さは920であった。このように、ホイップした温度以下で24時間保存することにより、ホイップ直後の硬さに対して4.5倍以上の硬さになった。
【0055】
油相をパーム核ステアリン18.00部、パーム中融点部8.00部、水相を水57.50部、生クリーム10.00部とした以外は実施例1と同様にして、比較例3の起泡性水中油型乳化物を得た。ここで、比較例3の起泡性水中油型乳化物は総油分が30.8重量%、構成油脂の15℃と25℃でのSFCの差であるΔSFC(15-25)は52.7であった。また、起泡性水中油型乳化物を構成する油脂中のラウリン酸含量が32.7重量%、SOS型トリグリセリドが20.9重量%であった。次に、比較例3の起泡性水中油型乳化物200gを品温20℃に加温し、16gのグラニュー糖を加えて縦型ミキサーでホイップしたが、ホイップ状態にならずペースト状であった。
【0056】
油相をパーム核ステアリン20.13部、パーム中融点部8.00部、水相を水57.50部、生クリーム10.00部とした以外は実施例1と同様にして、比較例4の起泡性水中油型乳化物を得た。ここで、比較例4の起泡性水中油型乳化物は総油分が34.2重量%、構成油脂の15℃と25℃でのSFCの差であるΔSFC(15-25)は52.7であった。また、起泡性水中油型乳化物を構成する油脂中のラウリン酸含量が32.8重量%、SOS型トリグリセリドが20.5重量%であった。次に、比較例4の起泡性水中油型乳化物200gを品温20℃に加温し、16gのグラニュー糖を加えて縦型ミキサーでホイップしたが、ホイップ状態にならずペースト状であった。
【0057】
油相を精製パーム核油27.50部、パーム油とパーム核オレインのエステル交換油10.00部とした以外は実施例1と同様にして、比較例5の起泡性水中油型乳化物を得た。ここで、比較例5の起泡性水中油型乳化物は総油分が44.7重量%、構成油脂の15℃と25℃でのSFCの差であるΔSFC(15-25)は39.5であった。また、起泡性水中油型乳化物を構成する油脂中のラウリン酸含量が33.2重量%、SOS型トリグリセリドが0.3重量%であった。次に、比較例5の起泡性水中油型乳化物200gを品温20℃に加温し、16gのグラニュー糖を加えて縦型ミキサーでホイップしたが、ホイップ状態にならずペースト状であった。
【0058】
油相をパーム核ステアリン6.63部、パーム中融点部2.75部、油相を精製パーム核油20.63部、パーム油とパーム核オレインのエステル交換油7.50部とした以外は実施例1と同様にして、比較例6の起泡性水中油型乳化物を得た。ここで、比較例6の起泡性水中油型乳化物は総油分が44.7重量%、構成油脂の15℃と25℃でのSFCの差であるΔSFC(15-25)は43.0であった。また、起泡性水中油型乳化物を構成する油脂中のラウリン酸含量が33.2重量%、SOS型トリグリセリドが5.2重量%であった。次に、比較例6の起泡性水中油型乳化物200gを品温20℃に加温し、16gのグラニュー糖を加えて縦型ミキサーでホイップしたが、ホイップ状態にならずペースト状であった。
【0059】
市販の生クリーム(乳脂含量47.7重量%、よつ葉乳業株式会社製)を比較例7の起泡性水中油型乳化物とした。ここで、比較例7の起泡性水中油型乳化物は総油分が47.7重量%、構成油脂の15℃と25℃でのSFCの差であるΔSFC(15-25)は24.0であった。また、起泡性水中油型乳化物を構成する油脂中のラウリン酸含量が3.6重量%であった。次に、比較例7の起泡性水中油型乳化物200gを品温5℃で、16gのグラニュー糖を加えて縦型ミキサーでオーバーランが65までホイップし、比較例7のホイップクリームを調製した。ホイップ直後のホイップクリームの硬さは172、5℃で1日保存後の硬さは137であった。このように、ホイップした温度以下で24時間保存したにもかかわらず、ホイップ直後の硬さに対して4.5倍以上の硬さにはならなかった。