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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】制御方法、制御装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H03H 17/02 20060101AFI20241001BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20241001BHJP
   H04R 3/04 20060101ALI20241001BHJP
   H03H 17/00 20060101ALN20241001BHJP
【FI】
H03H17/02 601J
H04R3/00
H04R3/04
H03H17/00 601J
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020053770
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021158401
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】四童子 広臣
(72)【発明者】
【氏名】田宮 健一
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-022537(JP,A)
【文献】特開2013-110568(JP,A)
【文献】特開2009-081660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 17/00-17/08
H04R 3/04
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声信号を処理するフィルタの周波数レスポンスを制御する方法であって、
前記周波数レスポンスの高域側の特性に関する高域パラメータと、前記周波数レスポンスの低域側の特性に関する低域パラメータと、を用意し、
第1の変更指示として受け付けられた高域変更指示又は低域変更指示に応じて、前記高域パラメータ又は前記低域パラメータの何れかを独立して変更し、
第2の変更指示として受け付けられた前記高域変更指示又は前記低域変更指示に応じて、前記高域パラメータと前記低域パラメータとの両方を、互いに連動させて変更し、
前記高域パラメータと前記低域パラメータとを用いて、前記周波数レスポンスを制御し、
前記高域変更指示又は前記低域変更指示を受け付ける第1のモードであって、前記高域変更指示に応じて前記高域パラメータを変更し、前記低域変更指示に応じて前記低域パラメータを変更する前記第1のモードと、前記高域変更指示又は前記低域変更指示を受け付ける第2のモードであって、前記高域変更指示又は前記低域変更指示の何れを受け付けたとしても、前記高域パラメータと前記低域パラメータとの両方を変更する前記第2のモードと、を切替指示に応じて切り替える、
制御方法。
【請求項2】
前記第1の変更指示により前記高域パラメータの変更が指示された場合には、前記低域パラメータを変更せずに前記高域パラメータを変更し、
前記第1の変更指示により前記低域パラメータの変更が指示された場合には、前記高域パラメータを変更せずに前記低域パラメータを変更し、
前記第2の変更指示により増加が指示された場合には、前記高域パラメータと前記低域パラメータとの両方を増加させ、
前記第2の変更指示により減少が指示された場合には、前記高域パラメータと前記低域パラメータとの両方を減少させる、
請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記第2の変更指示に応じて、前記高域パラメータと前記低域パラメータとの差又は比率を維持するように、前記高域パラメータと前記低域パラメータとの両方を変更する、
請求項1又は2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記第2の変更指示に応じて、前記高域パラメータを増加させて前記低域パラメータを減少させる、又は、前記高域パラメータを減少させて前記低域パラメータを増加させる、
請求項1~の何れかに記載の制御方法。
【請求項5】
ポインティングデバイスによる2つの位置の指定を受け付け、
前記高域変更指示は、前記2つの位置のうちの左側の位置を維持し、右側の位置を移動させることによって行われ、
前記低域変更指示は、前記右側の位置を維持し、前記左側の位置を移動させることによって行われる、
請求項に記載の制御方法。
【請求項6】
前記高域パラメータ及び前記低域パラメータは、前記フィルタの振幅特性に関して、BiquadフィルタのQ値と同様の挙動を示す、
請求項1~の何れかに記載の制御方法。
【請求項7】
音声信号を処理するフィルタの周波数レスポンスを制御する制御装置であって、
前記周波数レスポンスの高域側の特性に関する高域パラメータと、前記周波数レスポンスの低域側の特性に関する低域パラメータと、を用意し、
第1の変更指示として受け付けられた高域変更指示又は低域変更指示に応じて、前記高域パラメータ又は前記低域パラメータの何れかを独立して変更し、
第2の変更指示として受け付けられた前記高域変更指示又は前記低域変更指示に応じて、前記高域パラメータと前記低域パラメータとの両方を、互いに連動させて変更し、
前記高域パラメータと前記低域パラメータとを用いて、前記周波数レスポンスを制御し、
前記高域変更指示又は前記低域変更指示を受け付ける第1のモードであって、前記高域変更指示に応じて前記高域パラメータを変更し、前記低域変更指示に応じて前記低域パラメータを変更する前記第1のモードと、前記高域変更指示又は前記低域変更指示を受け付ける第2のモードであって、前記高域変更指示又は前記低域変更指示の何れを受け付けたとしても、前記高域パラメータと前記低域パラメータとの両方を変更する前記第2のモードと、を切替指示に応じて切り替える、
制御装置。
【請求項8】
音声信号を処理するフィルタの周波数レスポンスを制御するコンピュータに、
前記周波数レスポンスの高域側の特性に関する高域パラメータと、前記周波数レスポンスの低域側の特性に関する低域パラメータと、を用意させ、
第1の変更指示として受け付けられた高域変更指示又は低域変更指示に応じて、前記高域パラメータ又は前記低域パラメータの何れかを独立して変更させ、
第2の変更指示として受け付けられた前記高域変更指示又は前記低域変更指示に応じて、前記高域パラメータと前記低域パラメータとの両方を、互いに連動させて変更させ、
前記高域パラメータと前記低域パラメータとを用いて、前記周波数レスポンスを制御させ、
前記高域変更指示又は前記低域変更指示を受け付ける第1のモードであって、前記高域変更指示に応じて前記高域パラメータを変更し、前記低域変更指示に応じて前記低域パラメータを変更する前記第1のモードと、前記高域変更指示又は前記低域変更指示を受け付ける第2のモードであって、前記高域変更指示又は前記低域変更指示の何れを受け付けたとしても、前記高域パラメータと前記低域パラメータとの両方を変更する前記第2のモードと、を切替指示に応じて切り替えさせ、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御方法、制御装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
音声信号が入力されるフィルタの周波数レスポンスを制御する技術が知られている。周波数レスポンスは、周波数領域におけるフィルタ特性であり、振幅特性と位相特性とで規定される。グラフィックイコライザ(GEQ)やパラメトリックイコライザ(PEQ)の各peakingフィルタは、通常、Biquadフィルタで構成される。Biquadフィルタを用いたpeakingフィルタの伝達特性は、アナログとデジタルの何れの場合も、略同様である。ユーザは、略同じ振幅特性のpeakingフィルタを使用しているので、この振幅特性に基づく音質に慣れている。
【0003】
特許文献1には、FIR(Finite Impulse Response)フィルタで実現されたpeakingフィルタが開示されている、ここでは、1つのpeakingフィルタの周波数レスポンスの高域側の傾斜部の幅と低域側の傾斜部の幅とが、相互に独立に制御され、。非対称な形状の振幅特性を得られる。
【0004】
一方、従来の一般的なpeakingフィルタは、アナログとデジタルの何れの場合も、中心周波数、ゲイン、及びQ値(鋭さ)の3種類のパラメータにより操作されることが多い。アナログ及びデジタルのpeakingフィルタは、相互に類似するアルゴリズムのBiquadフィルタで構成されており、両者は似たような振幅特性(音質)を有する。つまり、デジタルのBiquadフィルタは、通常、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタである。非特許文献1及び非特許文献2には、Biquadフィルタ及びQ値の基本的な説明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-169847号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】URL: https://en.wikipedia.org/wiki/Digital_biquad_filter, Wikipedia “Digital biquad filter”
【文献】URL:https://en.wikipedia.org/wiki/Q_factor, Wikipedia “Q factor”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のpeakingフィルタは、アナログとデジタルの何れの場合も、略同じ振幅特性と、略同じ操作性(中心周波数、ゲイン、及びQ値の指定)と、があるので、ユーザは、これらに慣れていることが多い。使い慣れたpeakingフィルタに機能が追加されたという感覚でユーザに使用させることができれば、ユーザの負担にならずに利便性を向上させられる。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されるFIRフィルタで構成されたpeakingフィルタの技術では、ユーザが傾斜部の幅を指定しており、Biquadフィルタの操作性や振幅特性を得ることはできない。一方、従来のアナログないしデジタルのBiquadフィルタで構成されたpeakingフィルタは、ユーザがその操作性及び音質に慣れてはいるが、これら3種類のパラメータでは非対称な形状の振幅特性を得られない。また、このフィルタにはアルゴリズム上の制約があるため、何らかのパラメータを追加して振幅特性を非対称化することは困難である。
【0009】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであって、従来のBiquadフィルタと同じような操作性と、同じような振幅特性を保ちつつ、非対称な形状の振幅特性を実現可能なpeakingフィルタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る制御方法は、音声信号を処理するフィルタの周波数レスポンスを制御する方法であって、前記周波数レスポンスの高域側の特性に関する高域パラメータと、前記周波数レスポンスの低域側の特性に関する低域パラメータと、を用意し、第1の変更指示に応じて、前記高域パラメータ又は前記低域パラメータの何れかを独立して変更し、第2の変更指示に応じて、前記高域パラメータと前記低域パラメータとの両方を、互いに連動させて変更し、前記高域パラメータと前記低域パラメータとを用いて、前記周波数レスポンスを制御する。
【0011】
本発明に係る制御装置は、音声信号を処理するフィルタの周波数レスポンスを制御する制御装置であって、前記周波数レスポンスの高域側の特性に関する高域パラメータと、前記周波数レスポンスの低域側の特性に関する低域パラメータと、を用意し、第1の変更指示に応じて、前記高域パラメータ又は前記低域パラメータの何れかを独立して変更し、第2の変更指示に応じて、前記高域パラメータと前記低域パラメータとの両方を、互いに連動させて変更し、前記高域パラメータと前記低域パラメータとを用いて、前記周波数レスポンスを制御する。
【0012】
本発明に係るプログラムは、音声信号を処理するフィルタの周波数レスポンスを制御するコンピュータに、前記周波数レスポンスの高域側の特性に関する高域パラメータと、前記周波数レスポンスの低域側の特性に関する低域パラメータと、を用意させ、第1の変更指示に応じて、前記高域パラメータ又は前記低域パラメータの何れかを独立して変更させ、第2の変更指示に応じて、前記高域パラメータと前記低域パラメータとの両方を、互いに連動させて変更させ、前記高域パラメータと前記低域パラメータとを用いて、前記周波数レスポンスを制御させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、従来のBiquadフィルタと同じような操作性と、同じような振幅特性を保ちつつ、非対称な形状の振幅特性を実現可能なpeakingフィルタを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る制御装置の一例を示す図である。
図2】SPUのフィルタの一例を示す図である。
図3】制御装置で実現される機能の一例を示すブロック図である。
図4】関連データのデータ格納例を示す図である。
図5】高域パラメータと低域パラメータの説明図である。
図6】高域パラメータと低域パラメータの説明図である。
図7】フィルタ制御画面の一例を示す図である。
図8】制御装置が実行する処理の一例を示すフロー図である。
図9】変形例(1)の高域変更指示と低域変更指示の一例を示す図である。
図10】変形例(3)の第2の変更指示の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[1.制御装置のハードウェア構成]
以下、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態に係る制御装置の一例を示す図である。制御装置10は、音声信号を処理するフィルタの周波数レスポンスを制御する。例えば、制御装置10は、デジタルミキサ、信号処理プロセッサ、オーディオアンプ、電子楽器、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン、又はデジタルアシスタントである。
【0016】
音声信号は、音を示すデジタル又はアナログの信号である。フィルタは、入力された音声信号を処理して出力する回路である。本実施形態のフィルタは、有限長のFIRフィルタである。操作性と振幅特性とを模擬するため、個々のpeakingフィルタの振幅特性は、Biquadフィルタと同じようなベル型である。周波数レスポンスは、周波数領域におけるフィルタ特性であり、振幅特性と位相特性とで規定される。ユーザの設定した周波数レスポンス(振幅特性)のカーブに基づいて、フィルタの係数が設定され、所望の周波数レスポンス(振幅特性)を有するフィルタが得られる。
【0017】
なお、本実施形態では、「得る」は、処理の結果として得ることを意味する。例えば、周波数レスポンスは、後述する高域パラメータ等に基づく処理の結果として得られるので、制御装置10は、周波数レスポンスを「得る」。「得る」は、作成する、定義する、又は生成すると言い換えることもできる。一方、「取得する」は、受け取ることを意味する。例えば、ユーザにより指示された情報は、外部から受け取るものなので、制御装置10は、当該情報を取得する。「取得する」は、受信すると言い換えることもできる。本実施形態では、このようにして「得る」と「取得する」を使い分ける。
【0018】
図1に示すように、制御装置10は、CPU11、不揮発メモリ12、RAM13、操作部14、表示部15、入力部16、SPU(Signal Processing Unit)17、及びDAC(Digital Analog Converter)18を含む。制御装置10は、パワードスピーカ20に接続される。なお、スピーカ20は、制御装置10と一体であってもよい。
【0019】
CPU11は、少なくとも1つのプロセッサを含む。CPU11は、不揮発メモリ12に記憶されたプログラム及びデータに基づいて、所定の処理を実行する。不揮発メモリ12は、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ、又はハードディスク等のメモリである。RAM13は、揮発性メモリの一例である。操作部14は、タッチパネル、キーボード、マウス、ボタン、又はレバー等の入力デバイスである。表示部15は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等のディスプレイである。
【0020】
入力部16は、音声信号を取得する。本実施形態では、入力部16は、デジタル音声信号を取得する。入力部16は、アナログ音声信号を取得してもよい。この場合、入力部16は、A/D変換器を利用して、アナログ音声信号をデジタル音声信号に変換する。例えば、入力部16は、外部からの音声信号の入力を受け付けるインタフェースを含む。入力部16は、不揮発メモリ12に記憶された音声データを取得してもよい。入力部16は、取得した音声信号をSPU17に入力する。SPU17は、入力された音声信号を処理するフィルタを含む。
【0021】
図2は、SPU17のフィルタの一例を示す図である。図2に示すように、フィルタFは、遅延回路Z1~Zn-1と、乗算器M1~Mnと、を含む。nは、フィルタFのタップ数である。nは、任意の自然数であってよい。乗算器M1~Mnの各々には、係数α1~αnが設定される。係数α1~αnは、後述する全体レスポンスに応じた値となる。フィルタFは、音声信号に係数α1~αnを畳み込むFIRフィルタである。
【0022】
入力部16から入力された音声信号は、乗算器M1と遅延回路Z1に入力される。遅延回路Z1に入力された音声信号は、所定時間だけ遅延されて乗算器M2と遅延回路Z2に入力される。以降同様にして、音声信号が遅延回路Z3~Zn-1の各々により遅延される。遅延された音声信号は、乗算器M3~Mnの各々に入力される。
【0023】
乗算器M1~Mnの各々は、自身に入力された音声信号に係数α1~αnを乗じる。乗算器M1~Mnの各々は、自身の係数α1~αnを乗じた音声信号を加算器Aに入力する。加算器Aは、乗算器M1~Mnの各々から出力された音声信号を加算する。加算器Aは、加算された音声信号をDAC18に入力する。
【0024】
DAC18は、デジタル音声信号をアナログ音声信号に変換する回路である。DAC18は、パワードスピーカ20に対し、変換されたアナログ音声信号を出力する。スピーカ20は、入力されたアナログ音声信号に応じた音を出力する。
【0025】
なお、制御装置10のハードウェア構成は、上記の例に限られない。例えば、制御装置10は、有線通信又は無線通信用の通信インタフェースを含んでもよい。また例えば、制御装置10は、コンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体を読み取る読取装置(例えば、光ディスクドライブ又はメモリカードスロット)を含んでもよい。また例えば、制御装置10は、データの入出力をするための入出力端子(例えば、USBポート)を含んでもよい。本実施形態で不揮発メモリ12に記憶されるものとして説明するプログラム及びデータは、通信インタフェース、読取装置、又は入出力端子を介して制御装置10に供給されてもよい。
【0026】
[2.制御装置で実現される機能]
図3は、制御装置10で実現される機能の一例を示すブロック図である。図3に示すように、制御装置10では、データ記憶部100、用意部101、表示制御部102、受付部103、切替部104、第1変更部105、第2変更部106、及び制御部107が実現される。データ記憶部100は、不揮発メモリ12を主として実現され、他の各機能は、CPU11を主として実現される。
【0027】
[2-1.データ記憶部]
データ記憶部100は、周波数レスポンスに関連する関連データを記憶する。図4は、関連データのデータ格納例を示す図である。図4に示すように、関連データDは、管理ヘッダ、PEQデータ、及び全体レスポンスを含む。管理ヘッダは、関連データを管理するための情報である。例えば、管理ヘッダは、関連データの名称等を含む。
【0028】
PEQデータは、PEQの設定内容を示す。PEQデータは、PEQごとに用意される。例えば、PEQデータは、オンオフ情報、中心周波数、ゲイン、高域パラメータ、低域パラメータ、リンクパラメータ、及び個別レスポンスを含む。
【0029】
オンオフ情報は、PEQのオン(有効)/オフ(無効)を示す情報である。オンオフ情報は、PEQがオンであることを示す値、又は、PEQがオフであることを示す値の何れかを示す。PEQのオンオフ情報がオンの場合、そのPEQの個別レスポンスは、全体レスポンスに合算される。PEQのオンオフ情報がオフの場合、そのPEQの個別レスポンスは、全体レスポンスに合算されない。
【0030】
高域パラメータは、個別レスポンスの高域側の特性に関するパラメータである。低域パラメータは、個別レスポンスの低域側の特性に関するパラメータである。高域側とは、所定の周波数よりも高い帯域である。低域側とは、所定の周波数よりも低い帯域である。本実施形態では、所定の周波数を中心周波数とするが、中心周波数以外の周波数が高域/低域の基準になってもよい。
【0031】
図5及び図6は、高域パラメータと低域パラメータの説明図である。高域パラメータと低域パラメータはBiquadフィルタのQ値と同様に振幅特性の先鋭度を示すので、ここではQ値(クオリティファクタ値)と呼ぶことにする。高域パラメータ及び低域パラメータは、フィルタの振幅特性に関して、BiquadフィルタのQ値と同様の挙動を示す。図5及び図6では、高域パラメータを「高域Q」と記載し、低域パラメータを「低域Q」と記載する。図5及び図6では、中心周波数が1000Hzなので、高域側は、1000Hzよりも高い帯域となる。低域側は、1000Hzよりも低い帯域となる。
【0032】
図5は、あるPEQの高域パラメータと低域パラメータが、そのPEQの個別レスポンスの振幅特性に与える影響を示す。振幅特性は、横軸が周波数を示し、縦軸が振幅を示す。図6は、あるPEQの高域パラメータと低域パラメータが、そのPEQの個別レスポンスの位相特性に与える影響を示す。位相特性は、横軸が周波数を示し、縦軸が位相の進み具合又は遅れ具合を示す。図5及び図6に示すように、高域パラメータと低域パラメータに応じて、振幅特性のカーブと位相特性のカーブを非対象にすることができる。
【0033】
図5及び図6に示すように、高域パラメータ(高域Q)が変わると、高域側のカーブの傾きが変わる。ある高域Qに対応する高域側カーブの形状は、その高域Qと同じQ値に対応するBiquadフィルタの振幅特性の中心周波数より高域側のカーブと同じになる。低域パラメータ(低域Q)が変わると、低域側のカーブの傾きが変わる。ある低域Qに対応する低域側カーブの形状は、その低域Qと同じQ値に対応するBiquad型のpeakingフィルタの振幅特性の中心周波数より低域側のカーブと同じになる。図5及び図6の例では、高域パラメータ及び低域パラメータの各々は、特に中心周波数付近のカーブの傾きに影響する。高域パラメータと低域パラメータは、上限値と下限値が設定されている。
【0034】
本実施形態では、高域パラメータと低域パラメータの互いの相対的な関係によって、高域側のカーブと低域側のカーブの各々の傾きが決まる。例えば、高域パラメータが相対的に大きくなるほど、高域側のカーブの傾きが急になる。低域パラメータが相対的に大きくなるほど、低域側のカーブの傾きが急になる。高域パラメータと低域パラメータが同じ場合には、振幅特性のカーブは中心周波数で左右対称になり、位相特性のカーブは中心周波数で点対称になる。このときの振幅特性のカーブの形状は、高域Q及び低域Qと同じQ値のBiquad型のpeakingフィルタの振幅特性のカーブと同じになる。後述する制御部107によって、これらのカーブが制御される。
【0035】
なお、高域パラメータ及び低域パラメータとカーブの傾きとの関係は、本実施形態の例に限られない。高域パラメータが高域側のカーブの傾きに影響し、低域パラメータが低域側のカーブの傾きに影響すればよい。
【0036】
他にも例えば、本実施形態のような相対的な関係ではなく、絶対的な値に応じてカーブの傾きが決まってもよい。例えば、低域パラメータの値に関係なく、高域パラメータが小さいほど、高域側のカーブの傾きが急になってもよい。高域パラメータの値に関係なく、低域パラメータが小さいほど、低域側のカーブの傾きが急になってもよい。これとは逆に、高域パラメータが大きいほど、高域側のカーブの傾きが急になり、低域パラメータが大きいほど、低域側のカーブの傾きが急になってもよい。
【0037】
リンクパラメータは、リンクのオン(有効)/オフ(無効)を示す情報である。リンクとは、高域パラメータと低域パラメータが連動することである。リンクがオンの場合、ある1つの指示に応じて、高域パラメータと低域パラメータの両方が変更される。リンクがオフの場合、高域パラメータと低域パラメータの各々を変更しようとすると、別々の指示が必要になる。本実施形態では、リンクパラメータがオフの場合に、第1変更部105の処理が実行される。リンクパラメータがオンの場合に、第2変更部106の処理が実行される。
【0038】
個別レスポンスは、PEQ固有の周波数レスポンスである。本実施形態では、個別レスポンスが周波数領域で示される場合を説明するが、個別レスポンスは、逆フーリエ変換されて時間領域で示されてもよい。時間領域の個別レスポンスは、横軸が時間軸で表現される(いわゆるインパルスレスポンス)である。全体レスポンスは、オンオフ情報がオンのPEQの個別レスポンスが合算された周波数レスポンスである。全体レスポンスについても同様に、周波数領域で示される場合を説明するが、時間領域で示されてもよい。
【0039】
なお、PEQデータに含まれる情報は、上記の例に限られない。PEQデータには、PEQの設定に関する情報が含まれるようにすればよい。例えば、PEQデータには、振幅特性の減衰に関するパラメータが格納されていてもよい。このパラメータは、カットオフ周波数を中心にしてゲインが半分になるまでの周波数を示す。例えば、このパラメータが1の場合、カットオフ周波数から±1オクターブになると、ゲインが半分になる。
【0040】
[2-2.用意部]
用意部101は、周波数レスポンスの高域側の特性に関する高域パラメータと、周波数レスポンスの低域側の特性に関する低域パラメータと、を用意する。用意とは、所定の処理を実行するために必要な情報を取得することである。高域パラメータと低域パラメータは、第1変更部105及び第2変更部106の処理のために用意される。本実施形態では、高域パラメータと低域パラメータは、関連データDに格納されているので、用意部101は、関連データDを参照することによって、高域パラメータと低域パラメータとを用意する。
【0041】
なお、高域パラメータと低域パラメータは、データ記憶部100に記憶されるのではなく、外部のコンピュータ又は情報記憶媒体に記憶されていてもよい。この場合、用意部101は、当該コンピュータ又は当該情報記憶媒体から高域パラメータと低域パラメータを取得することによって、これらを用意する。他にも例えば、ユーザがこれらの初期値を指定してもよい。この場合、用意部101は、ユーザによって指定された初期値としての高域パラメータと低域パラメータを取得することによって、これらを用意する。
【0042】
[2-3.表示制御部]
表示制御部102は、フィルタ制御画面を表示部15に表示させる。フィルタ制御画面は、フィルタFの設定作業をするためのユーザインタフェースである。図7は、フィルタ制御画面の一例を示す図である。本実施形態では、振幅特性を指定するためのフィルタ制御画面Gを例に挙げるが、位相特性についてもフィルタ制御画面Gで指定可能である。図7に示すように、フィルタ制御画面Gには、振幅特性画像I1と、指示画像I2~I8と、が表示される。
【0043】
振幅特性画像I1には、設定中の個別レスポンスの振幅特性が表示される。本実施形態では、関連データDにPEQデータが格納されたPEQのうち、何れか1つのPEQの個別レスポンスが設定される。設定中のPEQの名称は、指示画像I2に表示される。ユーザは、指示画像I2から設定対象のPEQを変更可能である。なお、ユーザは、マウスのドラッグ操作等により、振幅特性画像I1におけるカーブを変形させることによって、振幅特性を指定してもよい。
【0044】
指示画像I3は、オンオフ情報を変更するための画像である。ユーザは指示画像I3を選択することによって、オンオフ情報が示すオン/オフを変更する。図7の例では、オンオフ情報がオンを示しており、指示画像I3には「ON」の文字列が表示される。ユーザがオンオフ情報をオフにすると、指示画像I3には「OFF」の文字列が表示される。
【0045】
指示画像I4は、中心周波数を変更するための画像である。指示画像I5は、ゲインを変更するための画像である。指示画像I6は、低域パラメータを変更するための画像である。指示画像I7は、高域パラメータを変更するための画像である。本実施形態では、指示画像I4~I7各々は、ユーザインタフェースで利用されるつまみの形状をしている。例えば、ユーザは、指示画像I4~I7の各々を回転させることによって、中心周波数、ゲイン、低域パラメータ、及び高域パラメータの各々を指定する。例えば、指示画像I4~I7の各々を右回転させるほど、これらの値が増加する。なお、指示画像I6については、左回転させた場合に、低域パラメータが増加してもよい。
【0046】
指示画像I8は、リンクパラメータを変更するための画像である。ユーザは、指示画像I8を選択することによって、リンクパラメータのオン/オフを変更する。図7の例では、リンクパラメータがオンを示しており、指示画像I8には「LINK」の文字列が表示される。ユーザがリンクパラメータをオフにすると、指示画像I8には「OFF」の文字列が表示される。なお、リンクパラメータがオンの場合、図7に示すように、指示画像I6とI7が結ばれるような表示がなされてもよい。
【0047】
[2-4.受付部]
受付部103は、ユーザによる指示を受け付ける。例えば、受付部103は、第1の変更指示を受け付ける。第1の変更指示は、第1変更部105に処理を実行させるための指示である。別の言い方をすれば、第1の変更指示は、高域パラメータと低域パラメータを互いに連動させずに、高域パラメータ又は低域パラメータの何れかを独立して変更するための指示である。第1の変更指示は、高域パラメータ又は低域パラメータの何れかの増加又は減少の指示である。
【0048】
例えば、受付部103は、第1の変更指示として、高域変更指示又は低域変更指示を受け付ける。高域変更指示は、高域パラメータを変更するための指示である。低域変更指示は、低域パラメータを変更するための指示である。本実施形態では、第1の変更指示は、これら2つの指示を含む意味である。
【0049】
図7のフィルタ制御画面Gの例では、リンクパラメータがオフの状態で指示画像I7を回転させることは、高域変更指示に相当する。指示画像I7を所定方向に回転させることは、高域パラメータの増加を指示する高域変更指示である。指示画像I7を当該所定方向とは逆方向に回転させることは、高域パラメータの減少を指示する高域変更指示である。
【0050】
リンクパラメータがオフの状態で指示画像I6を回転させることは、低域変更指示に相当する。指示画像I6を所定方向に回転させることは、低域パラメータの増加を指示する低域変更指示である。指示画像I6を当該所定方向とは逆方向に回転させることは、低域パラメータの減少を指示する低域変更指示である。
【0051】
例えば、受付部103は、第2の変更指示を受け付ける。第2の変更指示は、第2変更部106に処理を実行させるための指示である。別の言い方をすれば、第2の変更指示は、高域パラメータ又は低域パラメータの何れかを独立して変更するのではなく、高域パラメータと低域パラメータの両方を互いに連動させて変更するための指示である。
【0052】
本実施形態では、第1の変更指示と第2の変更指示が同じものとして説明するが、後述する変形例のように、第1の変更指示と第2の変更指示は、互いに異なる指示であってもよい。このため、受付部103は、第2の変更指示として、高域変更指示又は低域変更指示を受け付ける。本実施形態では、リンクパラメータがオンの場合、高域変更指示と低域変更指示は、第2の変更指示として扱われる。リンクパラメータがオフの場合、高域変更指示と低域変更指示は、第1の変更指示として扱われる。
【0053】
なお、第1の変更指示と第2の変更指示は、操作部14から入力可能な任意の指示であればよく、本実施形態の例に限られない。第1の変更指示と第2の変更指示は、予め定められた指示であればよい。例えば、第1の変更指示と第2の変更指示は、クリック、ダブルクリック、ドラッグアンドドロップ、タップ、ダブルタップ、フリック、ピンチイン、ピンチアウト、物理的なスイッチ若しくはレバーに対する操作、又はキーボードのボタン押下等であってもよい。
【0054】
また、受付部103が受け付ける指示は、第1の変更指示及び第2の変更指示に限られない。受付部103は、他の指示を受け付けてもよい。例えば、受付部103は、切替指示を受け付ける。切替指示は、後述する第1のモードと第2のモードとを切り替えるための指示である。本実施形態では、切替指示は、指示画像I8を選択することによって行われる。なお、切替指示についても、第1の変更指示及び第2の変更指示と同様、操作部14から入力可能な任意の指示であってよい。
【0055】
[2-5.切替部]
切替部104は、切替指示に応じて、第1の変更指示を受け付ける第1のモードと、第2の変更指示を受け付ける第2のモードと、を切り替える。第1のモードとは、第1変更部105が処理をするモードである。別の言い方をすれば、第1のモードは、高域パラメータと低域パラメータを互いに連動させずに、高域パラメータ又は低域パラメータの何れかを独立して変更させるモードである。本実施形態では、リンクパラメータがオフであることは、第1のモードを意味する。
【0056】
第2のモードとは、第2変更部106が処理をするモードである。別の言い方をすれば、第2のモードは、高域パラメータと低域パラメータの両方を互いに連動させて変更可能なモードである。本実施形態では、第1のモードから第2のモードに切り替わると、リンクパラメータがオンになる。第2のモードから第1のモードに切り替わると、リンクパラメータがオフになる。切替部104は、リンクパラメータを変更することによって、モードを変更する。本実施形態では、リンクパラメータがオンであることは、第2のモードを意味する。
【0057】
切替部104は、切替指示に応じてリンクパラメータを変更することによって、第1のモードと第2のモードを切り替える。切替部104は、リンクパラメータをオフからオンに変更することによって、第1のモードから第2のモードに切り替える。切替部104は、リンクパラメータをオンからオフに変更することによって、第2のモードから第1のモードに切り替える。
【0058】
[2-6.第1変更部]
第1変更部105は、第1の変更指示に応じて、高域パラメータ又は低域パラメータの何れかを独立して変更する。第1変更部105は、第1の変更指示に応じて、高域パラメータ又は低域パラメータの一方を、他方から独立して変更する。独立して変更とは、高域パラメータが変更しても低域パラメータが変更しないこと、及び、低域パラメータが変更しても高域パラメータが変更しないことを意味する。
【0059】
例えば、第1変更部105は、第1の変更指示の指示量に応じて、高域パラメータ又は低域パラメータの何れかの変更量を制御する。指示量とは、指示の多さである。指示量は操作量ということもできる。本実施形態では、指示画像I6,I7の回転量(回転角度)は、指示量に相当する。第1変更部105は、指示量が多いほど変更量を多くする。指示量と変更量の関係は、予め数式等に定めておけばよい。例えば、指示量と変更量は比例する。
【0060】
なお、指示量は、指示の種類に応じた意味であればよい。例えば、クリックの回数、ダブルクリックの回数、ドラッグアンドドロップの移動距離、タップの回数、ダブルタップの回数、フリックの移動距離、ピンチインの移動距離、ピンチアウトの移動距離、物理的なスイッチ若しくはレバーに対する操作の移動量、又はキーボードのボタン押下の回数が指示量に相当してもよい。
【0061】
第1変更部105は、第1の変更指示により高域パラメータの変更が指示された場合には、低域パラメータを変更せずに高域パラメータを変更する。本実施形態では、指示画像I7を回転させることによって高域パラメータの変更が指示されるので、第1変更部105は、ユーザが指示画像I7を回転させた場合に、高域パラメータを、低域パラメータから独立して変更する。
【0062】
第1変更部105は、第1の変更指示により低域パラメータの変更が指示された場合には、高域パラメータを変更せずに低域パラメータを変更する。本実施形態では、指示画像I6を回転させることによって低域パラメータの変更が指示されるので、第1変更部105は、ユーザが指示画像I6を回転させた場合に、低域パラメータを、高域パラメータから独立して変更する。
【0063】
本実施形態では、第1のモード(リンクパラメータがオフの状態)と第2のモード(リンクパラメータがオンの状態)が切り替わるので、第1変更部105は、第1のモードでは、高域変更指示に応じて高域パラメータを変更し、低域変更指示に応じて低域パラメータを変更する。第1変更部105は、第2のモードでは、処理を実行しない。第1変更部105は、現在のモードが第1のモードであることを条件として、処理を実行する。
【0064】
[2-7.第2変更部]
第2変更部106は、第2の変更指示に応じて、高域パラメータと低域パラメータとの両方を、互いに連動させて変更する。連動させて変更するとは、一度の指示で高域パラメータと低域パラメータの両方が変更することである。高域パラメータの変化と、低域パラパラメータの変化と、には相関関係がある。例えば、第2変更部106は、第2の変更指示の指示量に応じて、高域パラメータと低域パラメータの各々の変更量を制御する。指示量の意味は、先述した通りである。第2変更部106は、指示量が多いほど変更量を多くする。指示量と変更量の関係は、予め数式等に定めておけばよい。例えば、指示量と変更量は比例する。
【0065】
本実施形態では、第2変更部106は、第2の変更指示に応じて、高域パラメータと低域パラメータとの両方を、同じように変更する。高域パラメータと低域パラメータとは同じ変化をする。例えば、高域パラメータの変更量と、低域パラメータの変更量と、は同じである。高域パラメータが増加する場合には、低域パラメータも増加する。高域パラメータが減少する場合には、低域パラメータも減少する。
【0066】
例えば、第2変更部106は、第2の変更指示に応じて、高域パラメータと低域パラメータとの差又は比率を維持するように、高域パラメータと低域パラメータとの両方を変更する。差又は比率を維持とは、変更前の差又は比率と、変更後の差又は比率と、が同じことである。第2変更部106は、第2の変更指示が受け付けられた場合の高域パラメータと低域パラメータとの差又は比率を計算する。第2変更部106は、計算した差又は比率を維持するように、高域パラメータと低域パラメータとの両方を変更する。
【0067】
なお、高域パラメータと低域パラメータは、互いに異なる変化をしてもよい。例えば、高域パラメータの変更量と、低域パラメータの変更量と、が異なってもよい。高域パラメータが増加する場合に低域パラメータが減少してもよい。高域パラメータが減少する場合に低域パラメータが増加してもよい。即ち、高域パラメータと低域パラメータは、同じ方向に変化するのではなく、逆方向に変化してもよい。この場合、第2変更部106は、第2の変更指示に応じて、高域パラメータを増加させて低域パラメータを減少させる、又は、高域パラメータを減少させて低域パラメータを増加させる。
【0068】
第2変更部106は、第2の変更指示により増加が指示された場合には、高域パラメータと低域パラメータとの両方を増加させる。本実施形態では、指示画像I6,I7を所定方向に回転させた場合に増加が指示されるので、第2変更部106は、ユーザが指示画像I6,I7を所定方向に回転させた場合に、高域パラメータと低域パラメータとの両方を増加させる。
【0069】
第2変更部106は、第2の変更指示により減少が指示された場合には、高域パラメータと低域パラメータとの両方を減少させる。本実施形態では、指示画像I6,I7を所定方向の逆方向に回転させた場合に減少が指示されるので、第2変更部106は、ユーザが指示画像I6,I7を逆方向に回転させた場合に、高域パラメータと低域パラメータとの両方を減少させる。
【0070】
本実施形態では、第2のモードになったとしても、第1のモードと同じ高域変更指示又は低域変更指示が受け付けられるので、第2変更部106は、第2のモードでは、高域変更指示又は低域変更指示の何れを受け付けたとしても、高域パラメータと低域パラメータとの両方を変更する。本実施形態では、第2のモードにおいて、高域変更指示を受け付けた場合と、低域変更指示を受け付けた場合と、で同じ変化をする場合を説明するが、互いに異なる変化をしてもよい。例えば、高域変更指示を受け付けた場合の単位指示量あたりの変化量と、低域変更指示を受け付けた場合の単位指示量あたりの変化量と、が異なってもよい。第2変更部106は、現在のモードが第2のモードであることを条件として、処理を実行する。
【0071】
[2-8.制御部]
制御部107は、高域パラメータと低域パラメータとを用いて、周波数レスポンスを制御する。制御部107は、振幅特性のカーブの形状と、位相特性のカーブの形状と、を決定する。制御部107は、高域パラメータと低域パラメータとに基づいて、高域側のカーブの傾きと低域側のカーブの傾きとを制御する。本実施形態では、PEQごとにPEQデータが用意されているので、制御部107は、各PEQのPEQデータに含まれる高域パラメータと低域パラメータとに基づいて、当該PEQの個別レスポンスを制御する。本実施形態における制御部107の制御方法の詳細は、図5及び図6を参照して説明した通りである。
【0072】
[3.制御装置が実行する処理]
図8は、制御装置10が実行する処理の一例を示すフロー図である。この処理は、CPU11が不揮発メモリ12に記憶されたプログラムに従って動作することによって実行される。この処理は、図3に示す機能ブロックにより実行される処理の一例である。この処理は、音声信号を処理するフィルタの周波数レスポンスを制御する処理の一例である。
【0073】
図8に示すように、CPU11は、不揮発メモリ12に記憶された関連データDを参照し、高域パラメータと低域パラメータを用意する(S1)。S1においては、CPU11は、設定対象のPEQのPEQデータを取得することによって、高域パラメータと低域パラメータとを用意する。CPU11は、PEQデータが関連データDに格納されたPEQの何れかを、設定対象として選択する。なお、CPU11は、PEQデータに含まれる他の情報も参照して用意する。
【0074】
CPU11は、設定対象のPEQのPEQデータに基づいて、フィルタ制御画面Gを表示部15に表示させる(S2)。S2においては、CPU11は、設定対象のPEQのPEQデータに含まれる個別レスポンスの振幅特性を、フィルタ制御画面Gの振幅特性画像I1に表示させる。CPU11は、当該PEQデータに含まれるオンオフ情報とリンクパラメータを、それぞれ位置画像I3,I8に表示させる。
【0075】
CPU11は、操作部14の検出信号に基づいて、ユーザの指示を特定する(S3)。S3においては、指示画像I2~I8の各々を利用した指示が受け付けられる。
【0076】
S3において、指示画像I2からPEQの変更が指示された場合(S3;PEQ)、CPU11は、ユーザにより指定されたPEQのPEQデータに基づいて、フィルタ制御画面Gを更新する(S4)。S4においては、CPU11は、関連データのうち、ユーザにより指定されたPEQのPEQデータを参照し、個別レスポンス、オンオフ情報、及びリンクパラメータに基づいて、フィルタ制御画面Gを更新する。
【0077】
S3において、指示画像I3からオンオフ情報の変更が指示された場合(S3;オンオフ情報)、CPU11は、ユーザの指示に応じてオンオフ情報を変更し(S5)、後述するS8の処理に移行する。S8の処理に移行すると、S5におけるオンオフ情報の変更に応じて、全体レスポンスが更新される。
【0078】
S3において、指示画像I4から中心周波数の変更が指示された場合(S3;中心周波数)、CPU11は、ユーザの指示に応じて中心周波数を変更する(S6)。S6においては、CPU11は、指示画像I4に対する指示量に応じて、中心周波数を増加又は減少させる。
【0079】
CPU11は、最新のPEQデータに基づいて、個別レスポンスを制御する(S7)。S7においては、CPU11は、関連データDのうち、設定中のPEQの個別レスポンスを更新する。フィルタ制御画面Gにおける振幅特性画像I1の表示も、個別レスポンスに応じて更新される。
【0080】
CPU11は、個別レスポンスを合算して全体レスポンスを制御する(S8)。S8においては、CPU11は、関連データのうち、オンオフ情報がオンのPEQの個別レスポンスを合算することによって、全体レスポンスを制御する。個別レスポンスの合算自体は、公知の計算式によって実行されるようにすればよい。
【0081】
CPU11は、全体レスポンスに基づいて、フィルタFの係数を設定する(S9)。S9においては、CPU11は、全体レスポンスを逆フーリエ変換し、時間領域におけるカーブに基づいて、各タップの係数を設定する。
【0082】
S3において、指示画像I5からゲインの変更が指示された場合(S3;ゲイン)、CPU11は、ユーザの指示に応じてゲインを変更し(S10)、S7の処理に移行する。S10においては、CPU11は、指示画像I4に対する指示量に応じて、ゲインを増加又は減少させる。S7の処理に移行すると、S10におけるゲインの変更に応じて、個別レスポンスが制御される。
【0083】
S3において、指示画像I6から低域変更指示が受け付けられた場合(S3;低域変更指示)、CPU11は、設定中のPEQのリンクパラメータを参照する(S11)。リンクパラメータがオンの場合(S11;オン)、CPU11は、ユーザの低域変更指示に応じて、高域パラメータと低域パラメータとの両方を、互いに連動させて変更し(S12)、S7の処理に移行する。S12においては、CPU11は、指示画像I6に対する指示量に応じて、高域パラメータと低域パラメータを増加又は減少させる。S7の処理に移行すると、S12における高域パラメータと低域パラメータの変更に応じて、個別レスポンスが制御される。
【0084】
S11において、リンクパラメータがオフの場合(S11;オフ)、CPU11は、ユーザの低域変更指示に応じて、高域パラメータから独立して低域パラメータを変更し(S13)、S7の処理に移行する。S13においては、CPU11は、指示画像I6に対する指示量に応じて、低域パラメータを増加又は減少させる。S7の処理に移行すると、S13における低域パラメータの変更に応じて、個別レスポンスが制御される。
【0085】
S3において、指示画像I7から高域変更指示が受け付けられた場合(S3;高域変更指示)、CPU11は、設定中のPEQのリンクパラメータを参照する(S14)。リンクパラメータがオンの場合(S14;オン)、CPU11は、高域変更指示に応じて、高域パラメータと低域パラメータとの両方を、互いに連動させて変更し(S15)、S7の処理に移行する。S15においては、CPU11は、指示画像I7に対する指示量に応じて、高域パラメータと低域パラメータを増加又は減少させる。S7の処理に移行すると、S15における高域パラメータと低域パラメータの変更に応じて、個別レスポンスが制御される。
【0086】
S14において、リンクパラメータがオフの場合(S14;オフ)、CPU11は、ユーザの高域変更指示に応じて、低域パラメータから独立して高域パラメータを変更し(S16)、S7の処理に移行する。S16においては、CPU11は、指示画像I7に対する指示量に応じて、高域パラメータを増加又は減少させる。S7の処理に移行すると、S16における高域パラメータの変更に応じて、個別レスポンスが制御される。
【0087】
S3において、指示画像I8からリンクパラメータの変更が指示された場合(S3;リンク)、CPU11は、ユーザの指示に応じてリンクパラメータを変更し(S17)、S3の処理に戻る。S3において、所定の終了指示が受け付けられた場合(S3;終了)、本処理は終了する。終了指示は、任意の指示であってよい。例えば、終了指示は、フィルタ制御画面Gの閉じるボタンを選択することによって行われる。
【0088】
本実施形態の制御装置10は、高域パラメータ又は低域パラメータの何れかを独立して変更する状態と、高域パラメータと低域パラメータとの両方を、互いに連動させて変更する状態と、を使い分けることにより、より少ない指示量で所望の周波数レスポンスを得ることができ、かつ、Biquadフィルタを用いたpeakingフィルタと同様の感覚で使用できるフィルタを提供できる。高域パラメータと低域パラメータを一度の指示で変更することにより、これらを別々の指示で変更する場合に比べて、所望の周波数レスポンスを得るのに要する指示量を軽減することができる。また、高域パラメータと低域パラメータが同値であれば、Biquadフィルタを用いたpeakingフィルタのQ値を変更するのと同様の使用感(音質と操作性)が得られる。本発明のpeakingフィルタは、従来のBiquadフィルタと同じような操作性と、同じような振幅特性(音質)に加えて、非対称な形状の振幅特性を提供する点に特徴がある。
【0089】
また、制御装置10は、高域パラメータだけを変更する状態、低域パラメータだけを変更する状態、及び高域パラメータと低域パラメータとの両方を増加又は減少させる状態を使い分けることにより、ユーザの利便性を高めることができる。
【0090】
また、制御装置10は、高域パラメータと低域パラメータとの差又は比率を維持するように変更することによって、ユーザの操作性を高めることができる。
【0091】
また、第2の変更指示に応じて、高域パラメータを増加させて低域パラメータを減少させる、又は、高域パラメータを減少させて低域パラメータを増加させる場合には、高域パラメータと低域パラメータの一方を増加させて他方を減少させる操作をワンタッチで行うことができる。
【0092】
また、制御装置10は、切替指示に応じて第1のモードと第2のモードとを切り替えることにより、ユーザの利便性を高めることができる。
【0093】
また、制御装置10は、第2のモードでは高域変更指示又は低域変更指示の何れを受け付けたとしても、高域パラメータと低域パラメータとの両方を変更することにより、第2のモード専用の指示を用意する必要がなくなり、指示の種類を減らすことができる。
【0094】
また、高域パラメータ及び低域パラメータは、フィルタの振幅特性に関して、BiquadフィルタのQ値と同様の挙動を示すので、BiquadフィルタのQ値を変更するのと同様の使用感(音質と操作性)が得られる。
【0095】
[4.変形例]
なお、本発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更可能である。
【0096】
(1)例えば、高域変更指示と低域変更指示は、実施形態で説明した例に限られない。図9は、変形例(1)の高域変更指示と低域変更指示の一例を示す図である。本変形例では、受付部103は、ポインティングデバイスによる2つの位置の指定を受け付ける。ポインティングデバイスは、平面又は空間上の位置を指示するための入力デバイスである。例えば、ポインティングデバイスは、タッチパネル、タッチパッド、リモコン、又はマウスである。
【0097】
本変形例では、タッチパネルを例に挙げる。ユーザが自身の指を利用する場合を説明するが、タッチペン等の物体が利用されてもよい。ユーザは、少なくとも2つの位置をタッチする。タッチパネルは、タッチされた位置の座標を検出する。タッチパネルは、3つ以上の位置を検出してもよい。
【0098】
図9に示すように、高域変更指示は、2つの位置のうちの左側の位置(相対的に左側にある位置)を維持し、右側の位置(相対的に右側にある位置)を移動させることによって行われる。位置が全く変わらないこと、又は、位置の変化が閾値未満であることは、位置を維持することに相当する。閾値は、データ記憶部100に記憶されているものとする。閾値は、可変であってもよい。位置の変化が閾値以上であることは、位置を移動させることに相当する。
【0099】
高域変更指示は、右側の位置だけを移動させるピンチアウト操作又はピンチイン操作である。ピンチアウト操作の場合、右側の位置と左側の位置の距離は広がる。ピンチイン操作の場合、右側の位置と左側の位置の距離は狭くなる。なお、左側の位置は、移動してはいけないわけではなく、多少であれば移動してもよい。例えば、高域変更指示がピンチアウト操作の場合には増加が指示される。この場合、第1モードであれば、高域パラメータだけが増加し、第2モードであれば、高域パラメータと低域パラメータの両方が増加する。高域変更指示がピンチイン操作の場合には減少が指示される。この場合、第1モードであれば、高域パラメータだけが減少し、第2モードであれば、高域パラメータと低域パラメータの両方が減少する。
【0100】
低域変更指示は、右側の位置を維持し、左側の位置を移動させることによって行われる。低域変更指示は、左側の位置だけを移動させるピンチアウト操作又はピンチイン操作である。なお、右側の位置は、移動してはいけないわけではなく、多少であれば移動してもよい。例えば、低域変更指示がピンチアウト操作の場合には増加が指示される。この場合、第1モードであれば、高域パラメータだけが増加し、第2モードであれば、高域パラメータと低域パラメータの両方が増加する。
【0101】
なお、ユーザが2つの位置を指示している場合に、左側又は右側をダブルタップしたことに応じて、リンクパラメータのオン/オフが切り替わってもよい。例えば、リンクパラメータがオンの状態でダブルタップされた場合に、リンクパラメータがオフになり、かつ、ダブルタップ側のパラメータが変更対象になる。その後の操作で変更対象のパラメータだけが変更されてもよい。
【0102】
例えば、低域パラメータが変更対象の場合に、左側をダブルタップすると、リンクパラメータがオンになってもよい。この場合、右側をダブルタップすると、リンクパラメータがオフのまま、高域パラメータが変更対象になる。例えば、高域パラメータが変更対象の場合に、右側をダブルタップすると、リンクパラメータがオンになってもよい。この場合、左側をダブルタップすると、リンクパラメータがオフのまま、低域パラメータが変更対象になる。
【0103】
変形例(1)によれば、高域変更指示と低域変更指示が、より直観的な操作になり、操作性が向上する。
【0104】
(2)例えば、実施形態では、第1の変更指示と第2の変更指示が同じである場合を説明したが、これらは異なってもよい。本変形例の第2の変更指示は、高域変更指示及び低域変更指示とは異なる指示である。例えば、表示制御部102は、フィルタ制御画面Gに、指示画像I6,I7とは別の指示画像を表示させる。当該別の指示画像は、第2の変更指示のための画像である。受付部103は、当該別の指示画像に対する指示を受け付けることによって、第2の変更指示を受け付ける。この場合、第2の変更指示によって、リンクすべきことを識別できるので、切替指示及びリンクパラメータは、省略してもよい。第2の変更指示が受け付けられた場合の第2変更部106の処理は、実施形態と同様である。
【0105】
変形例(2)によれば、第2の変更指示を高域変更指示及び低域変更指示とは異なる指示とすることで、切替指示及びリンクパラメータを省略できる。リンクパラメータを省略することで、関連データDのデータ量を削減できる。
【0106】
(3)例えば、変形例(1)と(2)を組み合わせて、図9に示す指示とは異なる指示によって第2の変更指示が実現されてもよい。図10は、変形例(3)の第2の変更指示の一例を示す図である。第1の変更指示である高域変更指示と低域変更指示については、変形例(1)で説明した通りである。本変形例の第2の変更指示は、左側の位置と右側の位置の両方を、互いの距離が変わるように移動させることによって行われる。距離が変わるとは、距離が短くなること、又は、距離が長くなることである。
【0107】
第2変更指示は、右側の位置と左側の位置の両方を移動させるピンチアウト操作又はピンチイン操作である。右側の位置と左側の位置の距離を維持したまま、これらを移動させる操作は、第2変更指示には該当しない。例えば、第2変更指示がピンチアウト操作の場合には増加が指示される。この場合、高域パラメータと低域パラメータの両方が増加する。第2変更指示がピンチイン操作の場合には減少が指示される。この場合、高域パラメータと低域パラメータの両方が減少する。
【0108】
変形例(3)によれば、高域変更指示、低域変更指示、及び第2の変更指示を、より直観的な操作とすることができる。更に、変形例(2)と同様に、切替指示及びリンクパラメータを省略できる。
【0109】
(4)例えば、第2変更部106が、高域パラメータと低域パラメータの差又は比率を維持するように、これらを変更する場合を説明したが、特に差又は比率は維持されなくてもよい。例えば、変形例(3)の第2変更指示において、左側の位置の移動量に応じて低域パラメータが変更され、右側の位置の移動量に応じて高域パラメータが変更されてもよい。
【0110】
例えば、リンクパラメータがオンになった場合に、高域パラメータと低域パラメータが同じ値になってもよい。この場合、高域パラメータが低域パラメータと同じ値になる、又は、低域パラメータが高域パラメータと同じ値になる。
【符号の説明】
【0111】
10 制御装置、11 CPU、12 不揮発メモリ、13 RAM、14 操作部、15 表示部、16 入力部、17 SPU、18 DAC、20 パワードスピーカ、A 加算器、F フィルタ、G フィルタ制御画面、I1 振幅特性画像、I2,I3,I4,I5,I6,I7,I8 指示画像、100 データ記憶部、101 用意部、102 表示制御部、103 受付部、104 切替部、105 第1変更部、106 第2変更部、107 制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10