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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】制動制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/17 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
B60T8/17 C
B60T8/17 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020061853
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160418
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100174713
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧川 彰人
(72)【発明者】
【氏名】余語 和俊
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-230800(JP,A)
【文献】特開2006-123657(JP,A)
【文献】特開2007-153206(JP,A)
【文献】国際公開第2013/115166(WO,A1)
【文献】特開2014-061835(JP,A)
【文献】特開2017-154721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/17
B60T 8/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪及び非駆動輪のホイールシリンダを加圧する加圧部と、
前記駆動輪に回生制動力を付与する回生制動部と、
前記駆動輪の前記ホイールシリンダと前記加圧部とを接続する第1液路に配置され、前記第1液路における前記加圧部側の液圧が前記ホイールシリンダ側の液圧よりも高圧となるように調圧して発生させる第1差圧を、第1制御電流に応じて調整可能なリニアソレノイドバルブである第1電磁弁と、
前記回生制動部により前記駆動輪に付与される前記回生制動力に基づいて、前記駆動輪の制動力と前記非駆動輪の制動力との配分比が所定比となるように前記駆動輪の目標液圧制動力を設定し、前記目標液圧制動力に基づいて前記第1制御電流を設定する制御部と、
前記加圧部と前記ホイールシリンダとの間に配置されたアクチュエータと、
を備え、
前記アクチュエータは、
前記第1電磁弁と、
前記第1液路において前記第1電磁弁に対して前記加圧部側で直列に接続され、前記第1液路における前記ホイールシリンダ側の液圧が前記加圧部側の液圧よりも高圧となるように調圧して発生させる差圧を調整可能な第3電磁弁と、
前記第1液路のうち前記第1電磁弁と前記第3電磁弁とを接続する部分である第3液路にブレーキ液を供給する供給源と、
を備え、
前記制御部は、前記第1制御電流を、前記駆動輪に発生する前記回生制動力の最大値に相当する前記駆動輪の前記ホイールシリンダの液圧分だけ、前記第1電磁弁により前記第1差圧が発生するように設定する、制動制御装置。
【請求項2】
駆動輪及び非駆動輪のホイールシリンダを加圧する加圧部と、
前記駆動輪に回生制動力を付与する回生制動部と、
前記駆動輪の前記ホイールシリンダと前記加圧部とを接続する第1液路に配置され、前記第1液路における前記加圧部側の液圧が前記ホイールシリンダ側の液圧よりも高圧となるように調圧して発生させる第1差圧を、第1制御電流に応じて調整可能なリニアソレノイドバルブである第1電磁弁と、
前記非駆動輪の前記ホイールシリンダと前記加圧部とを接続する第2液路に配置され、前記第2液路における前記ホイールシリンダ側の液圧が前記加圧部側の液圧よりも高圧となるように調圧して発生させる第2差圧を、第2制御電流に応じて調整可能なリニアソレノイドバルブである第2電磁弁と、
前記回生制動部により前記駆動輪に付与される前記回生制動力に基づいて、前記駆動輪の制動力と前記非駆動輪の制動力との配分比が所定比となるように前記駆動輪の目標液圧制動力を設定し、前記目標液圧制動力に基づいて前記第1制御電流を設定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記駆動輪に前記回生制動力が付与されている状態で設定される前記第1差圧に基づいて、前記第2電磁弁により発生させる前記第2差圧を設定する、制動制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1制御電流を、前記駆動輪に発生する前記回生制動力の最大値に相当する前記駆動輪の前記ホイールシリンダの液圧分だけ、前記第1電磁弁により前記第1差圧が発生するように設定し、
前記第2制御電流を、前記第1差圧に相当する前記第2差圧が発生するように設定する、請求項2に記載の制動制御装置。
【請求項4】
前記加圧部と前記ホイールシリンダとの間に配置されたアクチュエータを備え、
前記アクチュエータは、
前記第1電磁弁と、
前記第2電磁弁と、
前記第1液路において前記第1電磁弁に対して前記加圧部側で直列に接続され、前記第1液路における前記ホイールシリンダ側の液圧が前記加圧部側の液圧よりも高圧となるように調圧して発生させる差圧を調整可能な第3電磁弁と、
前記第2液路において前記第2電磁弁に対して前記ホイールシリンダ側で直列に接続され、前記第2液路における前記加圧部側の液圧が前記ホイールシリンダ側の液圧よりも高圧となるように調圧して発生させる差圧を調整可能な第4電磁弁と、
前記第1液路のうち前記第1電磁弁と前記第3電磁弁とを接続する部分である第3液路、及び前記第2液路のうち前記第2電磁弁と前記第4電磁弁とを接続する部分である第4液路にブレーキ液を供給する供給源と、
を備える、請求項2又は3に記載の制動制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記回生制動力が前記最大値未満であり且つ前記加圧部側の液圧がゼロである状態において、前記第1電磁弁を閉弁する、請求項1に記載の制動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回生協調制御を実行する制動制御装置には、例えば、すべてのホイールシリンダを加圧可能な加圧部と、加圧部とホイールシリンダとの間に配置され各ホイールシリンダの液圧を調整可能なアクチュエータと、駆動輪に回生制動力を付与する回生制動部と、を備えるものがある。このような制動制御装置は、例えば特開2013-230800号公報に記載されている。この制動制御装置では、上流側にマスタシリンダが配置され、下流側にアクチュエータが配置されている。この制動制御装置では、回生制動時、駆動輪のブレーキ装置に対して下流圧を上流圧より減圧し、非駆動輪のブレーキ装置に対して下流圧を上流圧よりも昇圧する制御が実行される。また、この制動制御装置では、制動時の車両の安定性を予測し、その予測結果に基づいて駆動輪及び非駆動輪に対する目標制動力の配分を変化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-230800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記制動制御装置では、車両安定性を重視するか又は回生エネルギーを重視するかを判断しつつ、回生制動時にアクチュエータによる複雑な制御が実行される。また、上記制動制御装置では、制動時、非駆動輪での昇圧によりアクチュエータのポンプが駆動するため、必ずポンプの作動音が発生する。
【0005】
本発明の目的は、シンプルで且つ作動音を抑制可能な制御により、車両安定性の向上と回生エネルギーの回収効率の維持・向上との両立が可能となる制動制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の制動制御装置は、駆動輪及び非駆動輪のホイールシリンダを加圧する加圧部と、前記駆動輪に回生制動力を付与する回生制動部と、前記駆動輪の前記ホイールシリンダと前記加圧部とを接続する第1液路に配置され、前記第1液路における前記加圧部側の液圧が前記ホイールシリンダ側の液圧よりも高圧となるように調圧して発生させる第1差圧を、第1制御電流に応じて調整可能なリニアソレノイドバルブである第1電磁弁と、前記回生制動部により前記駆動輪に付与される前記回生制動力に基づいて、前記駆動輪の制動力と前記非駆動輪の制動力との配分比が所定比となるように前記駆動輪の目標液圧制動力を設定し、前記目標液圧制動力に基づいて前記第1制御電流を設定する制御部と、前記加圧部と前記ホイールシリンダとの間に配置されたアクチュエータと、を備え、前記アクチュエータは、前記第1電磁弁と、前記第1液路において前記第1電磁弁に対して前記加圧部側で直列に接続され、前記第1液路における前記ホイールシリンダ側の液圧が前記加圧部側の液圧よりも高圧となるように調圧して発生させる差圧を調整可能な第3電磁弁と、前記第1液路のうち前記第1電磁弁と前記第3電磁弁とを接続する部分である第3液路にブレーキ液を供給する供給源と、を備え、前記制御部は、前記第1制御電流を、前記駆動輪に発生する前記回生制動力の最大値に相当する前記駆動輪の前記ホイールシリンダの液圧分だけ、前記第1電磁弁により前記第1差圧が発生するように設定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、回生制動時、制動力の不足を補うために、加圧部により駆動輪及び非駆動輪のホイールシリンダに向けて液圧が供給される。この際、第1電磁弁に第1制御電流が供給されることで、加圧部の出力液圧に対して駆動輪のホイールシリンダの液圧が第1差圧分だけ低くなる。つまり、この場合、第1電磁弁の作動により、駆動輪には回生制動力と相対的に小さい液圧制動力とが付与され、非駆動輪には相対的に大きい液圧制動力が付与される。このように、制御部91が第1制御電流を設定して第1電磁弁に供給するだけで、駆動輪の制動力(回生制動力+液圧制動力)と非駆動輪の制動力(液圧制動力)との配分比を調整することができる。本発明によれば、シンプルな制御により制動力の配分比を調整できる。つまり、本発明によれば、シンプルな制御により、車両安定性が良好な配分比を実現することができる。
【0008】
また、上記制御では、回生制動力を低下させないため、回生エネルギーの回収効率は維持される。また、第1電磁弁の制御では、ポンプの作動音が発生しない。このように本発明によれば、シンプルで且つ作動音を抑制可能な制御により、車両安定性の向上と回生エネルギーの回収効率の維持・向上との両立が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の制動制御装置の構成図(非通電状態)である。
図2】本実施形態の制御例を説明するためのタイムチャートである。
図3】本実施形態の制御例を説明するためのフローチャートである。
図4】本実施形態の上流ユニットの構成図(非通電状態)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。説明に用いる各図は概念図である。本実施形態の制動制御装置1は、図1に示すように、上流ユニット(「加圧部」に相当する)11と、第1液路51と、第2液路52と、回生制動部12と、アクチュエータ3と、第1ブレーキECU901と、第2ブレーキECU902と、電源装置903と、を備えている。本実施形態の例では、前輪Wfが駆動輪であり、後輪Wrが非駆動輪である。
【0011】
上流ユニット11は、前輪Wfのホイールシリンダ81、82と、後輪Wrのホイールシリンダ83、84とを加圧可能に構成されている。上流ユニット11は、ブレーキ操作部材Zの操作量(ストローク及び/又は踏力)に応じて、ホイールシリンダ81~84を加圧する。第1液路51は、上流ユニット11とホイールシリンダ81、82とを接続している。第2液路52は、上流ユニット11とホイールシリンダ83、84とを接続している。
【0012】
上流ユニット11は、一例として、電動シリンダ2を備えている(図4参照)。電動シリンダ2は、第1液路51を介してホイールシリンダ81、82の液圧を調整し、第2液路52を介してホイールシリンダ83、84の液圧を調整する。上流ユニット11は、ブレーキ操作部材Zの操作により発生する液圧と、制御により発生させる液圧とが液圧的に分離されたバイワイヤ構成を形成可能なユニットである。上流ユニット11の構成例については後述する。
【0013】
回生制動部12は、前輪Wfに対して設けられ、前輪Wfに回生制動力を付与する回生制動装置である。回生制動装置については公知の構成を用いることができるため、以下簡単に説明する。回生制動部12は、図示しないが、モータ、インバータ、バッテリ、及びECU等を備えている。制御例を説明すると、回生制動部12は、第1ブレーキECU901が設定した目標制動力(目標減速度)に基づいて、目標回生制動力を設定する。回生制動部12は、実際に発生している回生制動力(実回生制動力)の情報を、第1ブレーキECU901に送信する。第1ブレーキECU901は、実回生制動力が目標制動力に達しない場合、当該不足分を液圧制動力で補うために、目標液圧制動力を設定する。第1ブレーキECU901は、目標液圧制動力に基づいて上流ユニット11を作動させ、液圧制動力を発生させる。このようにブレーキECU901、902及び回生制動部12は、回生協調制御を実行する。
【0014】
アクチュエータ3は、上流ユニット11とホイールシリンダ81~84との間に配置されている。アクチュエータ3は、ホイールシリンダ81、82を調圧可能に構成された第1液圧出力部31と、ホイールシリンダ83、84を調圧可能に構成された第2液圧出力部31Bと、を備える下流ユニットである。アクチュエータ3は、上流ユニット11に接続されている。
【0015】
アクチュエータ3は、いわゆるESCアクチュエータであって、各ホイールシリンダ81~84の液圧を独立に調圧することができる。アクチュエータ3は、第2ブレーキECU902の制御に応じて、例えばアンチスキッド制御(ABS制御とも呼ばれる)、横滑り防止制御(ESC)、又はトラクションコントロール等を実行する。第1液圧出力部31と第2液圧出力部31Bとは、アクチュエータ3の液圧回路上、互いに独立している。
【0016】
アクチュエータ3の構成例について、ホイールシリンダ81に接続された液圧回路を例に簡単に説明する。アクチュエータ3の第1液圧出力部31は、液路311と、差圧制御弁(「第3電磁弁」に相当する)312と、チェックバルブ312aと、保持弁(「第1電磁弁」に相当する)313と、チェックバルブ313aと、減圧弁314と、ポンプ315と、電気モータ316と、リザーバ317と、還流液路317aと、を備えている。
【0017】
液路311は、第1液路51の一部であって、ホイールシリンダ81に接続されている。液路311には、圧力センサ75が設置されている。差圧制御弁312は、ノーマルオープン型のリニアソレノイドバルブである。より詳細に、差圧制御弁312は、供給された制御電流に応じて、差圧制御弁312よりもホイールシリンダ81側の液圧が差圧制御弁312よりも上流ユニット11側の液圧よりも高い状態で維持可能に構成されたリニアソレノイドバルブである。差圧制御弁312の開度(電磁力による閉弁側への力)が制御されることで、上下流間(出入口間)に差圧を発生させることができる。チェックバルブ312aは、差圧制御弁312に並列に接続され、上流ユニット11からホイールシリンダ81へのブレーキ液の流通のみを許可する。
【0018】
保持弁313は、液路311のうち差圧制御弁312とホイールシリンダ81との間に設けられたノーマルオープン型のリニアソレノイドバルブである。より詳細に、保持弁313は、供給された第1制御電流に応じて、保持弁313よりも上流ユニット11側の液圧が保持弁313よりもホイールシリンダ81側の液圧よりも高い状態で維持可能に構成されたリニアソレノイドバルブである。保持弁313の開度(電磁力による閉弁側への力)が制御されることで、上下流間(出入口間)に差圧を発生させることができる。
このように、保持弁313は、前輪Wfのホイールシリンダ81、82と上流ユニット11とを接続する第1液路51に配置されている。保持弁313は、第1液路51における上流ユニット11側の液圧がホイールシリンダ81、82側の液圧よりも高圧となるように調圧して発生させる第1差圧を、第1制御電流に応じて調整可能なリニアソレノイドバルブである。
【0019】
差圧制御弁312と保持弁313との間の部分、すなわち第1液路51が分岐する部分を分岐部Xとすると、差圧制御弁312は、制御電流に応じて、上流ユニット11からの入力液圧よりも分岐部Xの液圧のほうが高い状態で維持することができる。また、保持弁313は、制御電流に応じて、ホイールシリンダ81の液圧よりも分岐部Xの液圧のほうが高い状態を維持することができる。
このように、差圧制御弁312は、第1液路51において保持弁313に対して上流ユニット11側で直列に接続されている。差圧制御弁312は、第1液路51におけるホイールシリンダ81、82側の液圧が上流ユニット11側の液圧よりも高圧となるように調圧して発生させる差圧を調整可能なリニアソレノイドバルブである。
【0020】
チェックバルブ313aは、保持弁313に並列に接続され、ホイールシリンダ81から分岐部Xへのブレーキ液の流通のみを許可する。減圧弁314は、減圧液路314aに設けられたノーマルクローズ型の電磁弁である。減圧液路314aは、液路311のうち保持弁313とホイールシリンダ81との間の部分と、リザーバ317とを接続している。
【0021】
ポンプ315は、電気モータ316の駆動力により作動する。ポンプ315は、ポンプ液路315aに設けられている。ポンプ液路315aは、分岐部Xとリザーバ317とを接続している。ポンプ315が作動すると、リザーバ317内のブレーキ液が分岐部Xに吐出される。
【0022】
リザーバ317は、調圧リザーバである。還流液路317aは、上流ユニット11とリザーバ317とを接続している。リザーバ317は、ポンプ315の作動により、リザーバ317内のブレーキ液が優先的に吸入され、リザーバ317内のブレーキ液が減少すると開弁して還流液路317aを介して上流ユニット11からブレーキ液が吸入されるように構成されている。
【0023】
(アクチュエータによる加減圧制御)
第2ブレーキECU902は、アクチュエータ3によりホイールシリンダ81を加圧する場合、差圧制御弁312に目標差圧に応じた制御電流を印加し、差圧制御弁312を閉弁させる。この際、保持弁313は開弁しており、減圧弁314は閉弁している。また、ポンプ315が作動することで、第1液路51からリザーバ317を介して分岐部Xにブレーキ液が供給される。これにより、ホイールシリンダ81が加圧される。
【0024】
ホイールシリンダ81の液圧(以下「ホイール圧」ともいう)と上流ユニット11からの供給液圧との差が目標差圧を超えて高くなろうとすると、力の大小関係から差圧制御弁312が開弁する。加圧後のホイール圧は、上流ユニット11からの供給液圧(基礎液圧)と、目標差圧との和になる。このように、アクチュエータ3は、電動シリンダ2の出力液圧である基礎液圧とホイール圧との間に差圧を発生させることで、ホイールシリンダ81~84を加圧する。なお、目標差圧が設定されて閉弁している保持弁313は、差圧制御弁312同様の原理により、力の大小関係で開弁する。
【0025】
第2ブレーキECU902は、アンチスキッド制御等でアクチュエータ3によりホイール圧を減圧する場合、減圧弁314を開弁させ且つ保持弁313を閉弁させた状態でポンプ315を作動させ、ホイールシリンダ81内のブレーキ液をポンプバックさせる。第2ブレーキECU902は、アクチュエータ3によりホイール圧を保持する場合、保持弁313及び減圧弁314を閉弁させる。上流ユニット11の作動のみによりホイール圧を加圧又は減圧する場合、第2ブレーキECU902は、差圧制御弁312及び保持弁313を開弁し、減圧弁314を閉弁させる。
【0026】
前輪Wfのもう一方のホイールシリンダ82に対応する構成は、第1液路51が分岐部Xで分岐することで、上記同様の構成となる。後輪Wr(非駆動輪)のホイールシリンダ83、84に接続される第2液圧出力部31Bの構成も、第1液圧出力部31と同様である。第1液圧出力部31は第1系統(駆動輪系統)の一部を構成し、第2液圧出力部31Bは第2系統(非駆動輪系統)の一部を構成している。なお、図1において、系統の区別のため、第2液圧出力部31Bの各構成要素の符号は、第1液圧出力部31の対応する構成要素の符号に「B」を付加して表されている。液路311に対応する液路311Bは、第2液路52の一部である。
差圧制御弁312に対応する第2系統の差圧制御弁(「第2電磁弁」に相当する)312Bは、後輪Wrのホイールシリンダ83、84と上流ユニット11とを接続する第2液路52に配置されている。差圧制御弁312Bは、第2液路52におけるホイールシリンダ83、84側の液圧が上流ユニット11側の液圧よりも高圧となるように調圧して発生させる第2差圧を、第2制御電流に応じて調整可能なリニアソレノイドバルブである。
また、保持弁313に対応する第2系統の保持弁(「第4電磁弁」に相当する)313Bは、第2液路52において差圧制御弁312Bに対してホイールシリンダ83、84側で直列に接続されている。保持弁313Bは、第2液路52にける上流ユニット11側の液圧がホイールシリンダ83、84側の液圧よりも高圧となるように調圧して発生させる差圧を調整可能なリニアソレノイドバルブである。このように各構成要素は系統同士で同様であるため説明は省略する。
【0027】
要点をまとめると、制動制御装置1は、上流ユニット11とホイールシリンダ81~84との間に配置されたアクチュエータ3を備えている。保持弁313は、前輪Wfのホイールシリンダ81、82の液圧を保持するための電磁弁であるといえる。また、差圧制御弁312Bは、後輪Wrのホイールシリンダ83、84の液圧と上流ユニット11の供給液圧との間に差圧を発生させることで、ホイールシリンダ83、84を加圧可能に構成されている。アクチュエータ3は、第1電磁弁である保持弁313と、第2電磁弁である差圧制御弁312Bと、第3電磁弁である差圧制御弁312と、第4電磁弁である保持弁313Bと、を備えている。また、アクチュエータ3は、第1液路51のうち保持弁313と差圧制御弁312とを接続する部分X(「第3液路」に相当する)、及び第2液路52のうち差圧制御弁312Bと保持弁313Bとを接続する部分XB(「第4液路」に相当する)にブレーキ液を供給するポンプ(「供給源」に相当する)315、315Bを備えている。
【0028】
(ブレーキECU及び各種センサ)
ブレーキECU901、902は、それぞれCPUやメモリを備える電子制御ユニットである。各ブレーキECU901、902は、各種制御を実行する1つ又は複数のプロセッサを備えている。第1ブレーキECU901と第2ブレーキECU902とは、別個のECUであって、互いに情報(制御情報等)を通信可能に接続されている。
【0029】
第1ブレーキECU901は、少なくとも上流ユニット11を制御するECUであって、上流ユニット11に制御可能に接続されている。第2ブレーキECU902は、少なくともアクチュエータ3を制御するECUであって、アクチュエータ3に制御可能に接続されている。各ブレーキECU901、902は、各種センサ(71、72、73、75)の検出結果に基づいて各種制御を実行する。電源装置903は、各ブレーキECU901、902に電力を供給する装置である。
【0030】
(回生制動時の制御)
第2ブレーキECU902は、回生制動時に、第1液圧出力部31の保持弁313を制御し、第2液圧出力部31Bの差圧制御弁312B(「第2電磁弁」に相当する)を制御する制御部91を備えている。
【0031】
制御部91は、回生制動部12により前輪Wfに付与される回生制動力に基づいて、前輪Wfの制動力と後輪Wrの制動力との配分比が所定比となるように前輪Wfの目標液圧制動力を設定し、目標液圧制動力に基づいて第1制御電流を設定する。例えば、制御部91は、前輪Wfに発生している回生制動力に基づいて、前輪Wfのホイールシリンダ81、82の液圧が後輪Wrのホイールシリンダ83、84の液圧よりも低くなるように、保持弁313に第1制御電流を供給する。所定比は、例えば1:1に設定される。
また、制御部91は、前輪Wfに回生制動力が付与されている状態で設定される第1差圧に基づいて、差圧制御弁312Bにより発生させる第2差圧を設定する。換言すると、制御部91は、前輪Wfに回生制動力が付与されている状態で供給される保持弁313への第1制御電流に基づいて、差圧制御弁312Bに第2制御電流を供給する。
【0032】
本実施形態において、第1制御電流は、前輪Wfに発生する回生制動力の最大値に相当するホイールシリンダ81、82の液圧(液圧制動力)分だけ、保持弁313により第1差圧が発生するように設定される。詳細は後述するが、これにより、制御部91は、回生制動力の最大値分だけ前輪Wfの液圧制動力を低下させる。また、第2制御電流は、第1差圧に相当する第2差圧が発生するように設定される。つまり、第2制御電流は、第1差圧と第2差圧とが同レベル(例えば同値)になるように設定される。制御部91は、上記のように第1制御電流及び第2制御電流を設定する。なお、制御電流と差圧との関係は、電磁弁の特性により異なる。
【0033】
(制御例)
この制御について、図2を参照して説明する。時間T0~T1において、運転者がブレーキ操作部材Zを踏み込み(又は自動ブレーキの指示により)、目標制動力が上昇していくと、それに応じて実回生制動力も上昇する。そして、時間T1において、実回生制動力が回生制動力の最大値となると、目標制動力と実回生制動力との差を液圧制動力で補うために、上流ユニット11の電動シリンダ2が作動する。
【0034】
また、時間T0~T1(例えば時間T0)において、制御部91は、第1系統の各保持弁313に第1制御電流を供給し、第2系統の差圧制御弁312Bに第2制御電流を供給する。つまり、時間T1において、第1系統では差圧制御弁312が開弁状態で且つ各保持弁313が閉弁状態となり、第2系統では差圧制御弁312Bが閉弁状態で且つ各保持弁313Bが開弁状態となる。
【0035】
(第1系統の動き)
各保持弁313の閉弁状態は、分岐部Xの液圧(上流ユニット11の出力液圧)がホイールシリンダ81、82の液圧よりも高く、且つ両液圧の差圧が第1制御電流に対応する目標差圧ΔPgよりも大きくなると、解除される。つまり、各保持弁313の閉弁は、出入口間の差圧が目標差圧ΔPgより大きくなるまで維持される。したがって、時間T1~T2において、前輪Wfのホイールシリンダ81、82の液圧(前輪ホイール圧)は、各保持弁313の閉弁により上昇しない。
【0036】
時間T2~T4において、上流ユニット11の供給液圧がΔPgよりも高くなると、各保持弁313の閉弁側への電磁力が差圧による押圧力に負け、各保持弁313が開弁する。これにより、各保持弁313の出入口間の差圧が目標差圧ΔPgで維持されつつ、前輪ホイール圧が上流ユニット11の供給液圧の上昇に応じて上昇する。つまり、時間T2~T4において、前輪ホイール圧は、上流ユニット11の供給液圧よりも目標差圧ΔPg分だけ低くなる。時間T3~T4では、目標制動力が一定であるため、上流ユニット11の供給液圧が一定に保たれて、前輪ホイール圧も一定に保たれる。
【0037】
時間T4において、目標制動力が減少し始め、上流ユニット11は供給液圧の減圧を開始する。ここで本例では、上流ユニット11の電動シリンダ2と各保持弁313とを接続する液路511、及び電動シリンダ2と差圧制御弁312Bとを接続する液路521は、密閉状態となっている。この密閉状態すなわちブレーキ液の供給がない状態で、液路511、521の容積が大きくなると、液路511、521の液圧は急激に低下する。
【0038】
液路511については、一端が各保持弁313で閉ざされ、他端が電動シリンダ2のピストン23で閉ざされている(図4参照)。液路521については、一端が差圧制御弁312Bで閉ざされ、他端が電動シリンダ2のピストン23で閉ざされている。ピストン23が初期位置側に移動すると、ブレーキ液の供給なく、実質的に液路511、521の容積が拡大される。これにより、時間T4において、上流ユニット11の供給液圧は、一気に前輪ホイール圧と同レベルまで低下する。換言すると、時間T4において、上流ユニット11の供給液圧は、保持弁313の目標差圧ΔPg分だけ低下する。
【0039】
時間T4において、上流ユニット11の供給液圧が前輪ホイール圧よりも低くなると、ホイールシリンダ81、82内のブレーキ液がチェックバルブ313aを介して液路511に供給される。これにより上流ユニット11の供給液圧の急低下は停止し、時間T4以降、上流ユニット11の供給液圧と前輪ホイール圧とが同レベルを保ちつつ、上流ユニット11の供給液圧の低下に応じて前輪ホイール圧が低下する。
【0040】
(第2系統の動き)
一方、第2系統においては、差圧制御弁312Bが閉弁されているものの、上流ユニット11の供給液圧はチェックバルブ312aBを介してホイールシリンダ83、84に供給される。したがって、時間T1~T4において、上流ユニット11の供給液圧とホイールシリンダ83、84の液圧(後輪ホイール圧)とが同レベルを保ちつつ、上流ユニット11の供給液圧の変化に応じて後輪ホイール圧が変化する。
【0041】
差圧制御弁312Bの閉弁状態は、分岐部XBの液圧が上流ユニット11の供給液圧より高く、且つ両液圧の差圧が目標差圧ΔPgよりも大きくなると、解除される。つまり、差圧制御弁312Bの閉弁は、差圧制御弁312Bの出入口間の差圧が目標差圧ΔPgを超えるまで維持される。したがって、時間T4において、上流ユニット11の供給液圧が保持弁313の目標差圧ΔPg分だけ低くなっても、後輪ホイール圧は、上流ユニット11の供給液圧よりも差圧制御弁312Bの目標差圧ΔPg分だけ高い値で維持される。そして、時間T4以降、差圧を目標差圧ΔPgで維持するように、上流ユニット11の供給液圧の低下に伴って差圧制御弁312Bが開弁し、後輪ホイール圧も低下する。なお、最終的に後輪ホイール圧を0にするために、例えば差圧制御弁312Bの目標差圧を徐々に低下させてもよい。
【0042】
図3に示すように、第1ブレーキECU901は、ブレーキ操作部材Zの操作量又は自動ブレーキの指示に基づき目標制動力を設定すると、回生制動部12に目標制動力を送信する(S101)。回生制動部12は、目標制動力に基づいて回生制動力を発生させ、実回生制動力を各ブレーキECU901、902に送信する(S102)。第2ブレーキECU902の制御部91は、目標制動力が設定された時点から上流ユニット11が作動するまでの間に、各保持弁313に第1制御電流を供給し、差圧制御弁312Bに第2制御電流を供給する(S103)。その後、目標制動力に対して実回生制動力が不足した場合、上流ユニット11が作動する。
【0043】
(本実施形態の効果)
本実施形態によれば、回生制動時、制動力の不足を補うために、上流ユニット11により前後輪Wf、Wrのホイールシリンダ81~84に向けて液圧が供給される。この際、各保持弁313に第1制御電流が供給されることで、上流ユニット11の出力液圧に対して前輪Wfのホイールシリンダ81、82の液圧が第1差圧分だけ低くなる。つまり、この制御により、前輪Wfに付与される液圧制動力が後輪Wrに付与される液圧制動力よりも小さくなる。各保持弁313の作動により、前輪Wfには回生制動力と相対的に小さい液圧制動力とが付与され、後輪Wrには相対的に大きい液圧制動力が付与される。このように、制御部91が第1制御電流を設定して第1電磁弁に供給するだけで駆動輪の液圧制動力を調整できるため、容易に駆動輪の制動力(回生制動力+液圧制動力)と非駆動輪の制動力(液圧制動力)との配分比を調整することができる。本実施形態によれば、シンプルな制御により、前輪Wf及び後輪Wrの一方である駆動輪と、前輪Wf及び後輪Wrの他方である非駆動輪との間の制動力のバランスを良くすることができ、車両安定性を向上させることができる。
【0044】
また、上記制御では、回生制動力を低下させないため、回生エネルギーの回収効率は維持される。また、各保持弁313の制御では、アクチュエータ3のポンプ(315、315B)の作動音が発生しない。このように本実施形態によれば、シンプルで且つ作動音を抑制可能な制御により、車両安定性の向上と回生エネルギーの回収効率の維持・向上との両立が可能となる。
【0045】
また、差圧制御弁312Bに第2制御電流が供給されることで、上流ユニット11がホイールシリンダ81~84を減圧する際、後輪Wrのホイールシリンダ83、84の液圧の急激な低下を抑制することができる。つまり、後輪Wrのホイールシリンダ83、84の液圧を、目標制動力の低下に応じて低下させることができる。この制御においても、アクチュエータ3のポンプは駆動せず、ポンプの作動音は発生しない。上流ユニット11の作動に加えて、第1制御電流の供給又は第1制御電流と第2制御電流との供給が実行されることで、系統間に物理的にホイール圧の高低が発生し、回生制動力を考慮した前後制動力のバランスの維持が可能となる。
【0046】
また、第1制御電流は、回生制動力の最大値に相当するホイール圧の値が第1差圧となるように設定されている。これにより、前輪Wfには目標液圧制動力から回生制動力を減算した液圧制動力が付与され、後輪Wrには目標液圧制動力に相当する液圧制動力が付与される。前輪Wfには回生制動力が付与されているため、演算上、増圧時に前後輪Wf、Wrの制動力のバランスは均等に保たれる。つまり、演算上、前後輪の制動力の配分比を1:1にすることができる。
【0047】
また、第2制御電流は、第1差圧に相当する第2差圧が差圧制御弁312Bの出入口間に発生するように設定されている。これにより、上流ユニット11の供給液圧が減圧される際、ホイールシリンダ81、82の液圧に対してホイールシリンダ83、84の液圧を回生制動力に相当する液圧分だけ高くすることができる。つまり、減圧時も、前後輪Wf、Wrの制動力のバランスは均等に保たれる。
【0048】
(上流ユニットの構成例)
図4に示すように、上流ユニット11は、電動シリンダ2と、マスタシリンダユニット4と、第1液路51と、第2液路52と、連通路53と、ブレーキ液供給路54と、連通制御弁61と、マスタカット弁62と、を備えている。電動シリンダ2は、リザーバ45に接続され、ホイールシリンダ81~84を調圧可能な調圧ユニットである。電動シリンダ2が加圧部であるともいえる。
【0049】
電動シリンダ2は、シリンダ21と、電気モータ22と、ピストン23と、出力室24と、付勢部材25と、を有する。電気モータ22は、回転運動を直線運動に変換する直動機構22aを介してピストン23に接続されている。電動シリンダ2は、シリンダ21内に単一の出力室24が形成されているシングルタイプの電動シリンダである。
【0050】
ピストン23は、電気モータ22の駆動によりシリンダ21内を軸方向に摺動する。ピストン23は、軸方向一方側に開口し軸方向他方側に底面を有する有底円筒状に形成されている。出力室24は、シリンダ21とピストン23により区画されており、ピストン23の移動により容積が変化する。出力室24は、リザーバ45及びアクチュエータ3に接続されている。出力室24とリザーバ45とは、ピストン23が初期位置のときに連通する。
【0051】
マスタシリンダユニット4は、リザーバ45に接続され、ブレーキ操作部材Zの操作量に応じて機械的にアクチュエータ3の第1液圧出力部31にブレーキ液を供給するユニットである。マスタシリンダユニット4は、第1液圧出力部31を介してホイールシリンダ81、82を加圧可能に構成されている。マスタシリンダユニット4には、ストロークシミュレータ43及びシミュレータカット弁44が設けられている。ストロークシミュレータ43は、ブレーキ操作部材Zの操作に対して反力(負荷)を発生させる装置である。シミュレータカット弁44は、ノーマルクローズ型の電磁弁である。
【0052】
第1液路51は、マスタシリンダユニット4と第1液圧出力部31とを接続している。第2液路52は、電動シリンダ2と第2液圧出力部31Bとを接続している。連通路53は、第1液路51と第2液路52とを接続している。つまり、電動シリンダ2と各保持弁313とを接続する液路511は、第1液路51の一部と第2液路52の一部と連通路53とで形成されている。また、電動シリンダ2と差圧制御弁312Bとを接続する液路521は、第2液路52の一部で形成されている。連通制御弁61は、連通路53に設けられたノーマルクローズ型の電磁弁である。連通制御弁61は、電動シリンダ2による第1液圧出力部31へのブレーキ液の供給を許可又は禁止する。
【0053】
マスタカット弁62は、第1液路51のうち、第1液路51と連通路53との接続部50と、マスタシリンダユニット4との間に設けられたノーマルオープン型の電磁弁である。マスタカット弁62は、マスタシリンダユニット4から第1液圧出力部31へのブレーキ液の供給を許可又は禁止する。ブレーキ液供給路54は、リザーバ45と電動シリンダ2とを接続している。リザーバ45は、ブレーキ液を貯留し、内部の圧力は大気圧に保たれている。
【0054】
ストロークセンサ71は、ブレーキ操作部材Zのストロークを検出する。圧力センサ72は、マスタシリンダユニット4の液圧(マスタ圧)を検出する。圧力センサ73は、電動シリンダ2の出力液圧を検出する。
【0055】
第1ブレーキECU901は、例えばイグニッションがオン(電気自動車においては車両の起動時)されると、上流ユニット11をバイワイヤモードに切り替える。バイワイヤモードでは、連通制御弁61が開弁され、マスタカット弁62が閉弁され、シミュレータカット弁44が開弁される。第1ブレーキECU901は、バイワイヤモードにおいて、目標制動力及び実回生制動力に基づいて、目標液圧制動力を設定する。第1ブレーキECU901は、目標液圧制動力に基づいて、電動シリンダ2を制御する。
【0056】
(上流ユニットのその他の例)
上流ユニット11の上記マスタシリンダユニット4は、2つのマスタピストンにより2つの同圧のマスタ室が形成されたタンデム型のシリンダユニットであってもよい。この場合、一方のマスタ室が第1マスタカット弁を介して第1液圧出力部31に接続され、他方のマスタ室が第2マスタカット弁を介して第2液路52に接続される。また、第2液路52には、連通制御弁61に相当する第2の連通制御弁が配置される。上流ユニット11がこのような構成であっても、上記同様の効果が発揮される。
【0057】
また、上流ユニット11は、マスタピストンをサーボ圧により駆動させるハイドロブースタを備える構成であってもよい。なお、上流ユニット11の構成によっては、各保持弁313が閉弁され且つ差圧制御弁312Bが閉弁された状態で、加圧源と各保持弁313とを接続する液路(511)と、加圧源と差圧制御弁312Bとを接続する液路(521)とが密閉状態にならない構成もある。上流ユニット11がこのような構成(例えばポンプを含む構成)である場合、図2の時間T4以降、第1ブレーキECU901は、例えば上流ユニット11の供給液圧を徐々にホイールシリンダ81、82の液圧に近づけるように制御してもよい。これにより、上流ユニット11の供給液圧がホイールシリンダ81、82を下回った後は、図2に類似した液圧の変化を実現することができる。
【0058】
(その他)
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば後輪Wrが駆動輪で、前輪Wfが非駆動輪であってもよい。また、例えば、上記のように下流ユニットとしてESCアクチュエータが採用された場合でも、回生制動時の各保持弁313の制御については、クロス配管(X配管)であっても上記同様の効果が発揮される。クロス配管とは、第1液路51に前輪Wfと後輪Wrのホイールシリンダが接続され、第2液路52にも前輪Wfと後輪Wrのホイールシリンダが接続される配管構成である。
【0059】
また、下流ユニットが設けられず、第1液路51に対して保持弁313に相当するリニアソレノイドバルブが配置されてもよい。同様に、下流ユニットが設けられず、第2液路52に対して差圧制御弁312Bに相当するリニアソレノイドバルブが配置されてもよい。また、第1差圧及び第2差圧は、回生制動力の最大値に相当する液圧でなくてもよい。例えば第1差圧及び第2差圧は、それぞれ制動力配分の理想曲線に合わせて設定されてもよい。また、第1差圧と第2差圧とは異なっていてもよい。また、本発明は、自動運転車両にも適用できる。また、所定比は1:1に限らず、例えば状況に応じて変更できる。
【符号の説明】
【0060】
1…制動制御装置、11…上流ユニット(加圧部)、12…回生制動部、2…電動シリンダ、3…アクチュエータ、312…差圧制御弁(第3電磁弁)、312B…差圧制御弁(第2電磁弁)、313…保持弁(第1電磁弁)、313B…保持弁(第4電磁弁)、315、315B…ポンプ(供給源)、81~84…ホイールシリンダ、91…制御部、Wf…前輪(駆動輪)、Wr…後輪(非駆動輪)。
図1
図2
図3
図4