(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】木質基材及びそれを用いた化粧材
(51)【国際特許分類】
B27N 3/02 20060101AFI20241001BHJP
B27M 1/08 20060101ALI20241001BHJP
B32B 21/04 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B27N3/02 D
B27N3/02 C
B27M1/08 E
B32B21/04
(21)【出願番号】P 2020077529
(22)【出願日】2020-04-24
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】大久保 透
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-062901(JP,A)
【文献】特開2013-139100(JP,A)
【文献】特開2008-087470(JP,A)
【文献】特開2011-173285(JP,A)
【文献】特開2002-144399(JP,A)
【文献】特開平01-171801(JP,A)
【文献】特開平09-267311(JP,A)
【文献】特開2016-055620(JP,A)
【文献】特許第5553279(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27N 1/00- 9/00
B27M 1/00- 3/38
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体状ないしチップ状の木質材料と、粉体状の熱可塑性樹脂組成物と、を含む原料混合物を加熱加圧して形成される木質基材であって、
前記熱可塑性樹脂組成物が、熱可塑性樹脂と、前記熱可塑性樹脂の100質量部に対して0.1~3質量部の有機過酸化物と、を含み、
前記原料混合物が、前記木質材料と前記熱可塑性樹脂組成物との合計を100質量部とし、当該100質量部に対して0.1~8質量部のアルコキシシラン化合物を含み、
前記アルコキシシラン化合物が、メタ(アクリル)基を含
み、
前記熱可塑性樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂として、ポリエチレン樹脂を含み、且つ、不飽和ジカルボン酸を含まず、
前記有機過酸化物は、1,1-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンであることを特徴とする木質基材。
【請求項2】
前記アルコキシシラン化合物が、さらにアミノ基と、エポキシ基と、メルカプト基との少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の木質基材。
【請求項3】
前記アルコキシシラン化合物が、さらにエポキシ基と、メルカプト基との少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の木質基材。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂組成物が、カルボキシ基と、カルボキシ基同士が脱水縮合した構造との少なくとも一つを有する酸性基含有樹脂を含むことを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載の木質基材。
【請求項5】
前記酸性基含有樹脂は、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、またはエチレン(メタ)アクリル酸共重合体であることを特徴とする請求項
4に記載の木質基材。
【請求項6】
前記酸性基含有樹脂の添加量は、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して1~50質量部であることを特徴とする請求項
5に記載の木質基材。
【請求項7】
前記原料混合物において前記木質材料と、前記熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)が、95/5~70/30であることを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載の木質基材。
【請求項8】
粉体状ないしチップ状の木質材料と、粉体状の熱可塑性樹脂組成物と、を含む原料混合物を加熱加圧して形成される木質基材であって、
前記熱可塑性樹脂組成物が、熱可塑性樹脂と、前記熱可塑性樹脂の100質量部に対して0.1~3質量部の有機過酸化物と、を含み、
前記原料混合物が、前記木質材料と前記熱可塑性樹脂組成物との合計を100質量部とし、当該100質量部に対して0.1~8質量部のアルコキシシラン化合物を含む前記木質基材に、意匠性基材が積層されてなり、
前記アルコキシシラン化合物が、メタ(アクリル)基を含
み、
前記熱可塑性樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂として、ポリエチレン樹脂を含み、且つ、不飽和ジカルボン酸を含まず、
前記有機過酸化物は、1,1-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンであることを特徴とする化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、機械強度及び耐水性に優れた木質基材及びそれを用いた化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
木質基材は、木粉、木質チップ、木質繊維などの木質材料を接着剤と混合したものを加熱加圧成形して得られる基材であり、木質材料の種類などによりパーティクルボードや中密度繊維板などと称され、床や壁などの下地材、建具や家具など幅広い用途で使用されている。
木質基材の接着剤としては、通常、尿素樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤が、ホルムアルデヒドを含む硬化剤とともに用いられる。ホルムアルデヒドはシックハウス症候群の原因となる有害物質であるため、木質基材からの放散が問題となり、放散量低減のための各種施策が検討されているが完全に抑制することはできない。
【0003】
これに対し、従来、ホルムアルデヒドを含まない接着剤として、粉体の糖類と粉体のポリカルボン酸を主成分とする接着剤を用い、これを植物繊維と混合し加熱加圧成形することで繊維ボードを製造する方法が提案されている(特許文献1の段落[0017]参照)。
また、従来、ポリビニルアルコールと水からなる接着剤を用いた木質基材を含む積層体の製造方法が提案されている(特許文献2の段落[0017]、及び
図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-55620号公報
【文献】特許第5553279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した従来の接着剤を用いた木質基材は、曲げ強度などの機械特性や耐水性が実用上十分なものではなかった。
そこで、本発明の一態様は、機械強度及び耐水性に優れた木質基材及びそれを用いた化粧材を提供することを課題とする。
すなわち、本発明の一態様は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、木質材料と熱可塑性樹脂組成物の粉体混合物を加熱加圧して形成する木質基材において、熱可塑性樹脂組成物に有機過酸化物を含有させ、さらに粉体混合物にアルコキシシラン化合物を含有させることで、上記課題が解決することを見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る木質基材は、粉体状ないしチップ状の木質材料と、粉体状の熱可塑性樹脂組成物と、を含む原料混合物を加熱加圧して形成される木質基材であって、前記熱可塑性樹脂組成物が、熱可塑性樹脂と、前記熱可塑性樹脂の100質量部に対して0.1~3質量部の有機過酸化物と、を含み、前記原料混合物が、前記木質材料と前記熱可塑性樹脂組成物との合計を100質量部とし、当該100質量部に対して0.1~8質量部のアルコキシシラン化合物を含むことを特徴とする。
また、本発明の一態様に係る木質基材は、前記アルコキシシラン化合物が、ビニル基と、メタ(アクリル)基との少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一態様に係る木質基材は、前記アルコキシシラン化合物が、さらにアミノ基と、エポキシ基と、メルカプト基との少なくとも一つを含むことを特徴とする。
本発明の一態様に係る木質基材は、前記熱可塑性樹脂組成物が、不飽和ジカルボン酸を含むことを特徴とする。
本発明の一態様に係る木質基材は、前記熱可塑性樹脂組成物が、カルボキシ基と、カルボキシ基同士が脱水縮合した構造との少なくとも一つを有する酸性基含有樹脂を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る木質基材は、前記原料混合物において前記木質材料と、前記熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)が、95/5~70/30であることを特徴とする。
本発明の一態様に係る木質基材は、前記木質材料が、菌床を原料に含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る化粧材は、粉体状ないしチップ状の木質材料と、粉体状の熱可塑性樹脂組成物と、を含む原料混合物を加熱加圧して形成される木質基材であって、前記熱可塑性樹脂組成物が、熱可塑性樹脂と、前記熱可塑性樹脂の100質量部に対して0.1~3質量部の有機過酸化物と、を含み、前記原料混合物が、前記木質材料と前記熱可塑性樹脂組成物との合計を100質量部とし、当該100質量部に対して0.1~8質量部のアルコキシシラン化合物を含む前記木質基材に、意匠性基材が積層されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、実用的な機械強度と耐水性を備えた木質基材及びそれを用いた化粧材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係り、木質基材の原料混合物の模式図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係り、化粧材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(
図1に示す第1実施形態)
図1中、20は、本発明の第1実施形態に係る木質基材であり、木質材料11の種類などによりパーティクルボードや中密度繊維板などと称され、床や壁などの下地材、建具や家具など幅広い用途で使用されている。
木質基材20は、
図1に示すように、粉体状又はチップ状の木質材料11と、粉体状の熱可塑性樹脂組成物12とを含む原料混合物10を加熱加圧して形成される。
熱可塑性樹脂組成物12は、熱可塑性樹脂及び有機過酸化物を含有する。
【0013】
原料混合物10は、アルコキシシラン化合物を含有している。
すなわち、原料混合物10の形態としては、次のうち少なくとも一つの形態を含むものである。
(1)木質材料11と、熱可塑性樹脂組成物12と、アルコキシシラン化合物との混合物
(2)木質材料11と、アルコキシシラン化合物を含有する熱可塑性樹脂組成物12との混合物
【0014】
(木質材料11)
木質材料11は、例えば、木粉、木質繊維、木材をチップ状に破砕したものが挙げられ、原料としては、間伐材、オガ粉、廃木材などを用いることができる。また、木材以外でも、竹、麻、ヤシ繊維、クルミ殻など、木材と同様にセルロース成分を含むものであれば候補とすることができる。
木質材料11の原料としては、キノコ栽培時に大量に発生する使用済み菌床を好適に用いることができる。菌床は木材チップやオガ粉にフスマや米ぬかなどの栄養分を混ぜたものである。キノコ栽培後の菌床は国内で年間30万トン前後が廃棄されていると推定されバイオマスとして有望であるが、リサイクルが進んでいないのが現状であり、これを木質原料に用いることは環境負荷の低減において有益である。
【0015】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂組成物12が含有する熱可塑性樹脂は、ポリエスエル、ポリアミド、ポリオレフィン、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、エチレンビニルアセテート、シリコーンゴムなど各種用いることができるが、木質基材の機械強度と耐水性の点でポリエチレンが好適である。
ポリエチレン樹脂は、特に限定されるものでなく、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなど既存の材料から、加熱加圧時の反応性や流動性などを考慮し適宜選択して用いられる。
【0016】
(有機過酸化物)
熱可塑性樹脂組成物12が含有する有機過酸化物は、原料混合物の加熱加圧において熱可塑性樹脂をラジカル架橋させるために用いられ、例えば、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステルなどの既存材料から、反応性や安定性を考慮し適宜選択して用いることができる。
有機過酸化物の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1~3質量部である。
添加量が0.1質量部に満たないと、原料混合物の加熱加圧時の反応性が不足するため、木質基材に十分な強度を得ることができない。また、添加量が3質量部を超えると反応時の分解生成物が多くなり、木質基材の変形の原因になる場合があるため好ましくない。
【0017】
(熱可塑性樹脂組成物12)
熱可塑性樹脂組成物12は、ラジカル重合性の材料を配合することで、基材形成時に熱可塑性樹脂に該材料を化学結合させることが可能な場合があり、例えばマレイン酸などの不飽和ジカルボン酸を結合させることで、木質基材1の機械強度をさらに向上させることができる。
【0018】
また、熱可塑性樹脂組成物12は、カルボキシ基又はカルボキシ基同士が脱水縮合した構造の少なくとも一つを有する酸性基含有樹脂を配合することで、木質基材1の機械強度をさらに向上させることができる。
酸性基含有樹脂としては、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレンや無水マレイン酸ポリプロレンなどの無水マレイン酸変性ポリオレフィン、及びエチレン(メタ)アクリル酸共重合体などを用いることができる。
【0019】
(不飽和ジカルボン酸)
不飽和ジカルボン酸は、木質材料11と熱可塑性樹脂の接着性を向上するために用いられ、フマル酸、マレイン酸および無水マレイン酸の少なくとも一つを含むことが好ましい。
不飽和ジカルボン酸の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.01~3質量部である。添加量が0.01質量部に満たないと、木質材料11との熱可塑性樹脂との接着性が不足するため、木質基材1に十分な強度を得ることができない。また、添加量が3質量部を超えると、未反応の不飽和ジカルボン酸が木質基材に残存しやすく、臭気や耐水性が低下する要因となる場合があるため好ましくない。
有機過酸化物と、不飽和ジカルボン酸とを含む熱可塑性樹脂組成物12は、各種公知の方法で作製することが可能であり、例えば、一軸混錬機やバッチ式混錬機を用いて熱可塑性樹脂とともに有機過酸化物と不飽和ジカルボン酸とを加熱混錬後、機械的粉砕や凍結粉砕などの方法で粉体化することができる。
【0020】
(酸性基含有樹脂)
酸性基含有樹脂は、木質材料11と熱可塑性樹脂の接着性を向上するため、カルボン酸又はカルボン酸無水物の少なくとも一つを含む樹脂が用いられる。具体例としては、無水マレイン酸変性ポリエチレンや無水マレイン酸ポリプロレンなど無水マレイン酸変性ポリオレフィン、及びエチレン(メタ)アクリル酸共重合体などを用いることができる。
酸性基含有樹脂の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して1~50質量部である。添加量が1質量部に満たないと、木質材料11との熱可塑性樹脂との接着性が不足するため、木質基材1に十分な強度を得ることができない。また添加量が50質量部を超えると強度が低下する場合が多いため好ましくない。
有機過酸化物と、酸性基含有樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物12は、各種公知の方法で作製することが可能であり、例えば、一軸混錬機やバッチ式混錬機を用いて熱可塑性樹脂とともに有機過酸化物と酸含有樹脂とを加熱混錬後、機械的粉砕や凍結粉砕などの方法で粉体化することができる。
【0021】
(アルコキシシラン化合物)
アルコキシシラン化合物は、木質基材1の機械強度を向上させるために用いられ、例えば、メチルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、など各種公知の材料から適宜選択して用いることができる。
「ビニル基」含有加工物としては、上記の例では、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが該当する。
また、「(メタ)アクリル基」含有加工物としては、上記の例では、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランが該当する。
【0022】
アルコキシシラン化合物は、アルコキシ基の少なくとも一部が加水分解した状態や、部分的に縮合した状態が包含される。例えば、アルコキシシラン加水分解物や、オリゴマーやレジンと称される縮合物などの公知の材料を用いることができるが、原料混合物10の配合前に加水分解処理を施して用いても良い。
【0023】
アルコキシシラン化合物は、木質基材の機械強度の観点から、ビニル基又は(メタ)アクリル基を有する化合物が好ましく、さらに同化合物とともにアミノ基と、エポキシ基と、メルカプト基とを含むアルコキシシラン化合物の少なくとも一つを併用することが好ましい。これらのビニル基、(メタ)アクリル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基を含む化合物は、例えば、前述した各種公知の材料を用いることができる。
【0024】
(アルコキシシラン化合物の配合量)
アルコキシシラン化合物の配合量は、100質量部の原料混合物10に対し、0.1~8質量部である。添加量が0.1質量部に満たないと木質基材1に十分な強度を得ることができない。また添加量が8質量部を超えると木質基材の強度や耐水性が低下する場合が多いため好ましくない。
【0025】
(木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12との質量比)
木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12との質量比は、木質材料/熱可塑性樹脂組成物が95/5~70/30の範囲である。木質材料の含有量がこの範囲より大きくなると、木質基材1に十分な曲げ強度を付与することができない。一方、木質材料の含有量がこの範囲より小さくなると、加熱加圧時に木質基材の変形が生じやすくなり、好ましくない。
【0026】
(熱可塑性樹脂組成物12の作製方法)
熱可塑性樹脂組成物12は、各種公知の方法で作製することが可能であり、例えば、一軸混錬機やバッチ式混錬機を用い、熱可塑性樹脂とともに、有機過酸化物と(必要に応じ)アルコキシシラン化合物とを加熱混錬後、機械的粉砕や凍結粉砕などの方法で粉体化することができる。
【0027】
(原料混合物10の加熱加圧の方法)
原料混合物10の加熱加圧は各種公知の方法を用いることができるが、枠型を用いたプレス成型が好適である。加熱温度は通常は120℃~250℃であり、熱可塑性樹脂の融点以上であることが必要であるが、250℃を超えると木質材料11の熱劣化が顕著に生じ場合がある。加圧圧力は通常は10kgf/cm2~400kgf/cm2であり、所望する木質基材の密度などにより適宜設定した値を用いる。
上記で得られる木質基材1の密度や形状は用途に応じて適宜決定されるが、密度については0.5~1.2g/cm3、特に0.6~1.1g/cm2が好ましい。
【0028】
(
図2に示す第2実施形態)
図2を用いて第2実施形態について説明する。
本第2実施形態の特徴は、先に
図1を用いて説明した第1実施形態に係る木質基材20に、意匠性を有する意匠性基材31を積層した化粧材30とした点である。
本第2実施形態によれば、木質基材20に意匠性基材31を積層することで、意匠性を付与することができる。
すなわち、木質基材20は、基材単独でも化粧材として実用に供することができるが、意匠性を付与するため、
図2に示すように絵柄などの意匠が付与された紙やフィルムなどの意匠性基材31を木質基材20に積層して化粧材30としたものである。
【実施例】
【0029】
以下に、本発明の第1実施形態に係る木質基材の実施例1~8及び比較例1~4について説明する。なお、本発明は、下記の実施例1~8に限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)
実施例1では、低密度ポリエチレン樹脂(以下「LDPE」ともいう。)100質量部、有機過酸化物(商品名:パーヘキサC、日油(株)製、以下「PO」ともいう。)1.5重量部をバッチ式混錬装置で加熱混錬後、機械粉砕することで、粉体状の熱可塑性樹脂組成物を得た。
木質材料としては、キノコ収穫後の菌床を洗浄後に乾燥した材料である。
アルコキシシラン化合物としては、メタクリロキシ基含有シラン(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、商品名KBM503、信越化学工業(製)、以下「KBM503」ともいう。)、及びアミノ基含有シラン(3-アミノプロピルトリメトキシシラン、商品名KBM903、信越化学工業(製)、以下「KBM903」ともいう。)を用いる。
木質材料/熱可塑性樹脂組成物/KBM503/KBM903は、85/15/1/1の質量比で混合することで、木質基材の原料混合物を得た。
原料混合物の配合については、次の表1の通りである。
【0031】
【0032】
この原料混合物をアルミ製の型枠に導入し、熱プレス装置で加熱加圧することで、木質基材を得た(プレス条件:100kgf/cm2、200℃10分、基材厚:10mm、基材密度:0.7g/cm3)。
【0033】
(実施例2)
実施例2では、実施例1のアミノ基含有シランを、エポキシ基含有シラン(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、商品名KBM403、信越化学工業(製)、以下「KBM403」ともいう。)に置き換え、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0034】
(実施例3)
実施例3では、実施例1のアミノ基含有シランを、メルカプト基含有シラン(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、商品名KBM803、信越化学工業(製)、以下「KBM803」ともいう。)に置き換え、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0035】
(実施例4)
実施例4では、実施例1の熱可塑性樹脂組成物の成分に、無水マレイン酸粉末(商品名CRYSTAL MAN、日油(株)製、以下「MA」ともいう。)1質量部を追加し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0036】
(実施例5)
実施例5では、実施例1のアミノ基含有シラン(KBM903)を使用せず、木質材料/熱可塑性樹脂組成物/KBM503を85/15/2の質量比とし、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0037】
(実施例6)
実施例6では、実施例1のアルコキシシラン化合物としてテトラエトキシシランオリゴマーを用い、木質材料/前記熱可塑性樹脂組成物/アルコキシシラン化合物=85/15/5の質量比とし、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0038】
(実施例7)
実施例7では、実施例1のアミノ基含有シラン(KBM903)を使用せず、木質材料/熱可塑性樹脂組成物/KBM503を85/15/0.1の質量比とし、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0039】
(実施例8)
実施例8では、実施例1のアミノ基含有シラン(KBM903)を使用せず、木質材料/熱可塑性樹脂組成物/KBM503を85/15/8の質量比とし、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0040】
(比較例1)
比較例1では、実施例1のアルコキシシラン化合物を使用せず、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0041】
(比較例2)
比較例2では、実施例1の有機過酸化物を使用せず、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0042】
(比較例3)
比較例3では、実施例1の木質材料/熱可塑性樹脂組成物/KBM503/KBM903を、85/15/5/5の質量比に変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0043】
(比較例4)
比較例4では、実施例1の有機過酸化物の配合量を5質量部に変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0044】
(木質基材の評価)
木質基材の物性評価は、次の(1)機械強度、(2)耐水性、(3)基材変形の3点で評価した。
【0045】
(機械強度)
機械強度は、JISA5908に準拠する方法で曲げ強度を測定した。測定値(単位:N/mm2)に対する機械強度の評価基準は当該JISの規格値を踏まえ、以下とした。
機械強度の評価基準は、下記の通り、「◎」、「○」、「△」、「×」の4段階とし、「◎」、「○」及び「△」を合格とし、「×」を不合格とした。
記
(1)◎:18以上(合格)
(2)○:13以上(合格)
(3)△:8以上13未満(合格)
(4)×:8未満(不合格)
【0046】
(耐水性)
耐水性は、JISA5908に準拠する方法で吸水厚さ膨潤率を測定した。
測定値(単位:%)に対する耐水性の評価基準は、当該JISの規格値を踏まえ、以下とした。
耐水性の評価基準は、下記の通り、「○」、「△」、「×」の3段階とし、「○」及び「△」を合格とし、「×」を不合格とした。
記
(1)○:8未満(合格)
(2)△:8以上12未満(合格)
(3)×:12以上(不合格)
【0047】
(基材変形)
基材変形とは、基材表面が部分的に膨れた状態であり、主にプレス中に基材内部で発生するガスの滞留により発生する。
基材変形は基材端部の状態により如実に反映されるため、基材端部の外観を目視評価した。評価基準は、以下とした。
基材変形の評価基準は、下記の通り、「○」、「△」、「×」の3段階とし、「○」及び「△」を合格とし、「×」を不合格とした。
記
(1)○:空隙なし(合格)
(2)△:痕跡程度の空隙あり(合格)
(3)×:空隙あり(不合格)
【0048】
(評価結果)
木質基材の評価結果は、次の表2の通りである。
【0049】
【0050】
3点の物性評価のすべてが「合格」なのは、実施例1~8の8件であり、残る4件の比較例1~4は1個以上の不合格を含んでいた。
【0051】
(機械強度の評価結果)
機械強度が不合格なものは、比較例1~3の3件であった。
比較例1では、アルコキシシラン化合物を使用しないことが原因と推測できる。比較例2では、有機過酸化物を使用しないことが原因と推測できる。比較例3では、KBM503とKBM903とを合計したアルコキシシラン化合物の添加量が多すぎたことが原因と推測できる。
【0052】
(耐水性の評価結果)
耐水性が不合格なものは、比較例3の1件であった。
比較例3では、KBM503とKBM903とを合計したアルコキシシラン化合物の添加量が多すぎたことが原因と推測できる。
【0053】
(基材変形の評価結果)
基材変形が不合格なものは、比較例3及び比較例4の2件であった。
比較例3では、KBM503とKBM903とを合計したアルコキシシラン化合物の添加量が多すぎたことが原因と推測できる。比較例4では、有機過酸化物であるパーヘキサC(PO)の添加量が多すぎたことが原因と推測できる。
【0054】
(総合的な評価結果)
総合的な評価結果としては、実施例1~8は、3点の物性評価のすべてが「合格」であり、表2から明らかなように、本発明の木質基材は優れた機械強度と耐水性を有し、基材変形も問題ないことが示された。
実施例1~8を比較すると、実施例4では、機械強度の評価結果が「◎」であった。実施例4では、無水マレイン酸粉末(MA)1質量部を追加したことが原因と推測できる。
また、機械強度の評価結果が「△」であったのは、実施例1~8のうち、実施例5~8の4件である。実施例5~8では、アミノ基含有シラン(KBM903)などを使用しなかったことが原因と推測できる。
耐水性の評価結果が「△」であったのは、実施例6及び実施例8の2件である。実施例6では、アルコキシシラン化合物としてテトラエトキシシランオリゴマーを用いたことが原因と推測できる。また、実施例6では、アルコキシシラン化合物の比率を増加したことが原因と推測できる。
基材変形の評価結果が「△」であったのは、実施例6の1件である。実施例6では、アルコキシシラン化合物としてテトラエトキシシランオリゴマーを用いたことが原因と推測できる。
【符号の説明】
【0055】
10 原料混合物
11 木質材料
12 熱可塑性樹脂組成物
20 木質基材
30 化粧材
31 意匠性基材