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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20241001BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20241001BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241001BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241001BHJP
   C08K 3/10 20180101ALI20241001BHJP
【FI】
H01L23/30 B
C08L101/00
C08K3/013
C08K3/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020088189
(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公開番号】P2021145120
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2020042642
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】光田 昌也
(72)【発明者】
【氏名】山下 勝志
(72)【発明者】
【氏名】野津 賢祐
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/141663(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/199639(WO,A1)
【文献】特開2018-141172(JP,A)
【文献】特表2016-500733(JP,A)
【文献】特開2013-038410(JP,A)
【文献】特開2008-270454(JP,A)
【文献】特開2014-192170(JP,A)
【文献】特表2016-520139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
C08L 101/00
C08K 3/013
C08K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に搭載された半導体素子と、
前記半導体素子を封止するとともに、硬化性樹脂組成物の硬化物により構成される第1の封止材と、
前記第1の封止材の表面を覆うとともに、LDS(LASER DIRECT STRUCTURING)用熱硬化性樹脂組成物の圧縮成形硬化物により構成される第2の封止材と、
を含み、
前記LDS用熱硬化性樹脂組成物が、
熱硬化性樹脂と、
無機充填材と、
活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物と、
を含み、
前記第2の封止材の厚さが30μm以上500μm以下であり、
前記第2の封止材の、熱機械分析(TMA)により測定される、ガラス転移温度未満の温度領域の線膨張係数が7ppm/℃以上20ppm/℃以下である、半導体装置である電子装置。
【請求項2】
前記第1の封止材が前記非導電性金属化合物を含まない、請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記第1の封止材の、熱機械分析(TMA)により測定される、ガラス転移温度未満の温度領域の線膨張係数が7ppm/℃以上20ppm/℃以下である、請求項1または2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記第2の封止材が、前記基板の上部において前記第1の封止材の前記表面全体を封止している、請求項1乃至いずれか1項に記載の電子装置。
【請求項5】
前記LDS用熱硬化性樹脂組成物が、カップリング剤をさらに含む、請求項1乃至いずれか1項に記載の電子装置。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか1項に記載の電子装置の製造方法であって、
前記基板に搭載された前記半導体素子が前記第1の封止材により封止された構造体を準備する工程と、
前記第1の封止材上に、前記LDS用熱硬化性樹脂組成物の前記圧縮成形硬化物により構成される前記第2の封止材を形成する工程と、
含む電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LASER DIRECT STRUCTURING(LDS)に用いられる樹脂材料に関する技術として、特許文献1(特開2015-134903号公報)に記載のものがある。同文献には、LDS添加剤を含む熱可塑性樹脂組成物を連続繊維に含浸させてなる繊維強化樹脂材料について記載されており、熱可塑性樹脂としてポリアミド樹脂が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-134903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、成形回路部品(Molded Interconnect Device:MID)等の電子装置の製造にLDSによる微細加工を用いることを検討した。
本発明は、信頼性および回路形成性に優れる電子装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、
電子部品と、
前記電子部品の表面の少なくとも一部を覆う第1の封止材と、
前記電子部品および第1の封止材の表面の少なくとも一部を覆う第2の封止材と、
を含み、
前記第1および第2の封止材の少なくとも一方が、LDS(LASER DIRECT STRUCTURING)用熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成され、
前記LDS用熱硬化性樹脂組成物が、
熱硬化性樹脂と、
無機充填材と、
活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物と、
を含む、電子装置が提供される。
【0006】
本発明によれば、
基板と、
前記基板に搭載された半導体素子と、
前記半導体素子を封止する第1の封止材と、
前記第1の封止材の表面を覆うとともに、LDS(LASER DIRECT STRUCTURING)用熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成される第2の封止材と、
を含み、
前記LDS用熱硬化性樹脂組成物が、
熱硬化性樹脂と、
無機充填材と、
活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物と、
を含む、半導体装置である電子装置が提供される。
【0007】
本発明によれば、
基板に搭載された半導体素子が第1の封止材により封止された構造体を準備する工程と、
前記第1の封止材上に、LDS(LASER DIRECT STRUCTURING)用熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成される第2の封止材を形成する工程と、
を含み、
前記LDS用熱硬化性樹脂組成物が、
熱硬化性樹脂と、
無機充填材と、
活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物と、
を含む、半導体装置の製造方法が提供される。
【0008】
本発明によれば、
第1の封止材上に、前記第1の封止材の表面の少なくとも一部を覆うように第2の封止材を形成する工程と、
前記第1および第2の封止材が電子部品の少なくとも一部を覆うように、前記電子部品を配設する工程と、
を含み、
前記第1または第2の封止材の少なくとも一方が、LDS(LASER DIRECT STRUCTURING)用熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成され、
前記LDS用熱硬化性樹脂組成物が、
熱硬化性樹脂と、
無機充填材と、
活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物と、
を含む、電子装置の製造方法が提供される。
【0009】
本発明によれば、
第1の封止材上に電子部品が設けられた構造体を準備する工程と、
前記第1の封止材上に、前記電子部品の少なくとも一部を覆うように第2の封止材を形成する工程と、
を含み、
前記第1の封止材が、LDS(LASER DIRECT STRUCTURING)用熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成され、
前記LDS用熱硬化性樹脂組成物が、
熱硬化性樹脂と、
無機充填材と、
活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物と、
を含む、電子装置の製造方法が提供される。
【0010】
なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。
たとえば、本発明によれば、前記本発明における半導体装置の前記第2の封止材に用いられるLDS用熱硬化性樹脂組成物およびその硬化物を得ることもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、信頼性および回路形成性に優れる電子装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態における半導体装置の構成例を示す断面図である。
図2】実施形態における半導体装置の構成例を示す断面図である。
図3】実施形態における薄膜インダクタの構成例を示す斜視図である。
図4】薄膜インダクタの製造方法の一例を示す概略工程断面図である。
図5】薄膜インダクタの製造方法の一例を示す概略工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは必ずしも一致していない。数値範囲の「A~B」は断りがなければ、「A以上B以下」を表す。組成物は、各成分をいずれも単独でまたは2種以上を組み合わせて含むことができる。
また、以下の実施形態の構成は、適宜組み合わせて用いることができる。
【0014】
(第1の実施形態)
本実施形態においては、電子装置が半導体装置である例を示す。
図1(a)は、本実施形態における半導体装置の構成例を示す断面図である。図1(b)は、図1(a)に示した半導体装置100の変形例を示す図である。
電子装置(半導体装置100)は、電子部品(半導体素子103)と、半導体素子103の表面の少なくとも一部を覆う第1の封止材(第1封止層105)と、半導体素子103および第1封止層105の少なくとも一部表面を覆う第2の封止材(第2封止層107)と、を含む。とともに、第1封止層105および第2封止層107の少なくとも一方は、LDS(LASER DIRECT STRUCTURING)用熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成される。LDS用熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と、無機充填材と、活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物と、を含む。
図1(a)および図1(b)において、具体的には、第2封止層107がLDS用熱硬化性樹脂組成物により構成される。すなわち、半導体装置100は、基板101と、基板101に搭載された半導体素子103と、半導体素子103を封止する第1の封止材(第1封止層105)と、第1封止層105の表面を覆うとともに、LDS(LASER DIRECT STRUCTURING)用熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成される第2の封止材(第2封止層107)と、を含む。LDS用熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と、無機充填材と、活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物と、を含む。
LDS用熱硬化性樹脂組成物の構成成分の具体例については、第6の実施形態にて後述する。
【0015】
半導体装置100の具体例として、成形回路部品、各種半導体パッケージが挙げられる。
成形回路部品の具体例として、携帯電話等の携帯電子機器、自動車等の車両または医療機器等の部材に用いられるものなどが挙げられる。
半導体パッケージの具体例として、MAP(Mold Array Package)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、CSP(Chip Size Package)、QFN(Quad Flat Non-leaded Package)、SON(Small Outline Non-leaded Package)、BGA(Ball Grid Array)、LF-BGA(Lead Flame BGA)、FCBGA(Flip Chip BGA)、MAPBGA(Molded Array Process BGA)、eWLB(Embedded Wafer-Level BGA)、Fan-In型eWLB、Fan-Out型eWLBなどの半導体パッケージ;SIP(System In package)などが挙げられる。
【0016】
また、半導体装置100は、たとえば三次元成形回路部品(Molded Interconnect Device:MID)である。MIDは、三次元形状、上記樹脂成形品、三次元回路の3要素を有するものであり、たとえば、三次元構造の樹脂成形品の表面に金属膜で回路形成された部品である。MIDは、具体的には、三次元構造を有する樹脂成形品と、この樹脂成形品の表面に形成された三次元回路と、を備えることができる。このようなMIDを使用することにより、空間を有効活用でき、部品点数の削減や軽薄短小化が可能である。
【0017】
半導体素子103は、基板101上に搭載されている。ここで、半導体素子103は半導体チップまたは半導体パッケージの形態で基板101の上に設けられていてもよい。
基板101は、たとえば、インターポーザ等の配線基板、またはリードフレームである。図1(b)は、半導体装置100の変型例を示す断面図である。図1(b)においては、基板がリードフレーム109である。
半導体素子103は、たとえばワイヤボンディングまたはフリップチップ接続等により、基板101に電気的に接続される。たとえば、半導体素子103に設けられた導体部(不図示)が、基板101に設けられた導体部(図1(b)のリードフレーム109)と電気的に接続していてもよい。導体部は、配線等である。導体部は具体的には導電材料により構成されており、たとえばCuまたはCu合金により構成される。
【0018】
半導体装置100においては、封止材が第1封止層105および第2封止層107を含み、これらが積層されている。
第1封止層105は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成される。封止材全体の誘電特性を向上する観点、および、第1封止層105と導電部材(たとえば図1(b)のリードフレーム109)との密着性を向上する観点から、第1封止層105、または、第1封止層105に用いられる熱硬化性樹脂組成物は、好ましくは非導電性金属化合物を含まない。
【0019】
第1封止層105の厚さは、たとえば半導体素子103の形状、大きさに応じて調整することができ、具体的には、半導体素子103を安定的に封止できる程度の厚さとすることができる。
【0020】
第1封止層105の、熱機械分析(TMA)により測定される、ガラス転移温度未満の温度領域の線膨張係数は、隣接する導体部との密着性向上の観点から、好ましくは6ppm/℃以上であり、より好ましくは7ppm/℃以上、さらに好ましくは9ppm/℃以上である。
また、同様の観点から、第1封止層105の、熱機械分析(TMA)により測定される、ガラス転移温度未満の温度領域の線膨張係数は、好ましくは20ppm/℃以下であり、より好ましくは18ppm/℃以下、さらに好ましくは15ppm/℃以下である。
【0021】
ここで、第1封止層105および後述の第2封止層107の線膨張係数の測定は、TMA装置(たとえば日立ハイテクノロジーズ社製、TMA6100)を用い、昇温速度10℃/minにて、30℃から350℃までの温度範囲にておこなうことができる。
【0022】
第2封止層107は、後述のLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成される。LDS用熱硬化性樹脂組成物の形状の具体例として、シート状、粒状(たとえば顆粒状、タブレット状)等の固形状;液状が挙げられる。本実施形態においては、以下、シート状のLDS用熱硬化性樹脂組成物を用いる場合を例に説明する。
本実施形態において、第2封止層107は、具体的にはシート状のLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物である。
第2封止層107は第1封止層105に接して設けられてこれを覆う。第2封止層107は、第1封止層105の少なくとも一部を覆えばよく、たとえば第1封止層105の上面および側面の少なくとも一部を覆ってもよい。
半導体装置100においては、第2封止層107が、基板101の上部において第1封止層105の表面全体を封止している。つまり、第2封止層107が基板101の上部において第1封止層105の表面全体を覆っている。また、第2封止層107が端部において基板101の表面に接している。かかる構成により、封止材の外側への回路形成の自由度をよりいっそう高めることができる。
【0023】
第2封止層107の厚さは、回路形成の安定性を高める観点から、好ましくは30μm以上であり、より好ましくは40μm以上、さらに好ましくは50μm以上、さらに好ましくは80μm以上である。
また、半導体装置100の全体の固型化の観点、および、封止材全体の誘電特性向上の観点から、第2封止層107の厚さは、好ましくは500μm以下であり、より好ましくは400μm以下、さらに好ましくは300μm以下、さらにより好ましくは200μm以下、よりいっそう好ましくは150μm以下である。
【0024】
第2封止層107の、熱機械分析(TMA)により測定される、ガラス転移温度未満の温度領域の線膨張係数は、第1封止層105との密着性向上の観点から、好ましくは6ppm/℃以上であり、より好ましくは7ppm/℃以上、さらに好ましくは8ppm/℃以上である。
また、同様の観点から、第2封止層107の、熱機械分析(TMA)により測定される、ガラス転移温度未満の温度領域の線膨張係数は、好ましくは20ppm/℃以下であり、より好ましくは18ppm/℃以下、さらに好ましくは15ppm/℃以下である。
【0025】
また、第1封止層105と第2封止層107との密着性向上の観点から、第1封止層105のガラス転移温度未満の温度領域の線膨張係数と第2封止層107のガラス転移温度未満の温度領域の線膨張係数との差は、好ましくは5ppm/℃以下であり、より好ましくは3ppm/℃以下、さらに好ましくは1ppm/℃以下である。また、上記線膨張係数差は、たとえば0ppm/℃超であってよく、好ましくは0ppm/℃である。
ここで、第1封止層105および第2封止層107の線膨張係数は、たとえばこれらの封止層に用いられる熱硬化性樹脂組成物中の無機充填材含量を調整することにより、調整することができる。
【0026】
また、第1封止層105および第2封止層107のガラス転移温度(Tg)は、半導体装置100の耐熱信頼性を向上させる観点から、いずれも、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは120℃以上であり、また、好ましくは250℃以下であり、より好ましくは220℃以下である。
【0027】
次に、半導体装置100の製造方法を説明する。
電子装置(半導体装置100)の製造方法は、具体的には、電子部品(半導体素子103)が第1封止層105により封止された構造体を準備する工程と、第1封止層105の上に、第2封止層107を形成する工程と、を含み、第1封止層105および第2封止層107の少なくとも一方がLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成される。
以下、第2封止層107がLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成される場合を例に挙げてさらに具体的に説明する。このとき、半導体装置100の製造方法は、たとえば以下の工程1および工程2を含む。
(工程1)基板101に搭載された半導体素子103が第1封止層105により封止された構造体を準備する工程
(工程2)第1封止層105の上に、LDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成される第2封止層107を形成する工程
【0028】
工程1においては、たとえば常法に従い基板101上に半導体素子103を搭載し、半導体素子103を第1封止層105で封止する。第1封止層105の形成には、生産安定性向上の観点から、好ましくは圧縮成形またはトランスファー成形が用いられる。
【0029】
工程2においては、たとえばLDS用熱硬化性樹脂組成物の形状に応じて第2封止層107の成形方法を選択することができる。
本実施形態において、具体的には、シート状のLDS用熱硬化性樹脂組成物を用いて第1封止層105全体を封止してもよい。
【0030】
このとき、第2封止層107の形成には、たとえば圧縮成形またはラミネーション成形を用いることができる。
圧縮成形の場合、たとえば工程1で得られた構造体を、クランプ、吸着のような固定手段により圧縮成形金型の上型と下型の一方に固定する。以下では、構造体における第1封止層105の形成面が樹脂材料供給容器に対面するように圧縮成型金型の上型に固定した場合を例に挙げて説明する。
【0031】
次に、金型の上型に固定した構造体に対応する位置となるように、金型の下型キャビティ内にシート状のLDS用熱硬化性樹脂組成物を配置する。次いで、減圧下、金型の上型と下型の間隔を狭めることにより、シート状のLDS用熱硬化性樹脂組成物は、下型キャビティ内で所定温度に加熱され、溶融状態となる。その後、金型の上型と下型を結合させることにより、溶融状態のLDS用熱硬化性樹脂組成物を上型に固定された構造体に対して押し当てる。こうすることで、構造体をLDS用熱硬化性樹脂組成物で埋めることができるとともに、構造体の表面を溶融状態のLDS用熱硬化性樹脂組成物で覆うことができる。その後、金型の上型と下型を結合させた状態を保持しながら、所定時間をかけLDS用熱硬化性樹脂組成物を硬化させる。こうすることで、第1封止層105を封止する第2封止層107を形成することができる。
【0032】
ここで、圧縮成形を行う場合には、金型内を減圧下にしながら樹脂封止を行うことが好ましく、真空条件下であるとさらに好ましい。こうすることで、充填部分を残すことなく第1封止層105を第2封止層107で埋設することができる。
【0033】
圧縮成形における成形温度は、好ましくは50~200℃であり、より好ましくは80~180℃である。成形圧力は、好ましくは0.5~12MPaであり、より好ましくは1~10MPaである。また、成形時間は、好ましくは30秒~15分であり、より好ましくは1~10分である。成形温度、圧力、時間を上記範囲とすることで、溶融状態の封止材が充填されない部分が発生することを防止することができる。
【0034】
また、シート状のLDS用熱硬化性樹脂組成物を用いて工程1で得られた構造体を圧縮成形法により封止成形した後に実施するポストキュア温度は、好ましくは150~200℃であり、より好ましくは165~185℃である。ポストキュア時間は、好ましくは1時間~5時間であり、より好ましくは2時間~4時間である。
【0035】
また、ラミネーション成形の場合、まず、ロール形状で準備したシート状のLDS用熱硬化性樹脂組成物を、真空加圧式ラミネーターの巻き出し装置に取り付け、巻き取り装置まで接続する。次に、工程1で得られた構造体をダイアフラム(弾性膜)式ラミネーター部まで搬送する。次いで、減圧下、プレスを開始すると、シート状のLDS用熱硬化性樹脂組成物は、所定温度に加熱され、溶融状態となる。その後、溶融状態のシート状のLDS用熱硬化性樹脂組成物を、ダイアフラムを介してプレスすることにより構造体の第1封止層105形成面に対して押し当てることで、第2封止層107で埋めることができるとともに、第1封止層105の表面を溶融状態の第2封止層107で覆うことができる。その後、所定時間をかけて第2封止層107を硬化させる。こうすることで、第1封止層105を封止することができる。
なお、第2封止層107に対し、より高精度な平坦性が要求される場合は、ダイアフラム式ラミネーターでのプレスの後に、高精度に調整された平坦プレス装置によるプレス工程を追加して成型することもできる。
【0036】
上述したラミネーション成形を行う際、ダイアフラム(弾性膜)式ラミネーター部による成形温度は、好ましくは50~120℃であり、より好ましくは80~110℃である。ダイアフラム(弾性膜)式ラミネーター部による成形圧力は、好ましくは0.5~1MPaであり、より好ましくは0.6~0.9MPaである。また、ダイアフラム(弾性膜)式ラミネーター部による成形時間は、好ましくは30秒~5分であり、より好ましくは1~3分である。ダイアフラム(弾性膜)式ラミネーター部による成形温度、圧力、時間を上記範囲とすることで、溶融状態のLDS用熱硬化性樹脂組成物が充填されない部分が発生することを防止することができる。
【0037】
上述したラミネーション成形を行う際、平坦プレス装置によるプレス温度は、好ましくは80~130℃であり、より好ましくは90~120℃である。平坦プレス装置による成形圧力は、好ましくは0.5~2MPaであり、より好ましくは0.8~1.5MPaである。また、平坦プレス装置による成形時間は、好ましくは30秒~5分であり、より好ましくは1~3分である。平坦プレス装置によるプレス温度、成形圧力、時間を上記範囲とすることで、溶融状態のLDS用熱硬化性樹脂組成物が充填されない部分が発生することを防止することができる。
【0038】
また、シート状のLDS用熱硬化性樹脂組成物を用い、ラミネーション成形法により第1封止層105を封止成形後に実施するポストキュア温度は、好ましくは150~200℃であり、より好ましくは165~185℃である。ポストキュア時間は、好ましくは1時間~5時間であり、より好ましくは2時間~4時間である。
【0039】
また、工程2の後、たとえば以下の工程3および工程4をおこなってもよい。
(工程3)第2封止層107の表面の特定の部位に活性エネルギー線を照射する工程
(工程4)第2封止層107の表面の活性エネルギー線が照射された領域(凹部)に金属層を選択的に形成することにより配線層等の導体層を形成する工程
また、工程3の後、工程4の前に表面洗浄工程を追加してもよい。
【0040】
工程3においては、第2封止層107の表面の特定の部位にレーザー等の活性エネルギー線を選択的に照射する。レーザー照射により、たとえば、第2封止層107のレーザー照射部に凹部を形成することができる。
レーザーは、たとえば、YAGレーザー、エキシマレーザー、電磁線等の公知のレーザーから適宜選択することができ、YGAレーザーが好ましい。また、レーザーの波長も定めるものではないが、たとえば、200nm以上2000nm以下であり、細線化の観点から、好ましくは240nm以上1100nm以下である。この中でも、好ましくは248nm、308nm、355nm、515nm、532nm、1064nmまたは1060nmのものがレーザーとして挙げられる。
【0041】
工程4においては、LDSにより第2封止層107の所定の領域に選択的に金属膜が形成される。LDSにおいては、具体的には、LDS添加剤を含有する第2封止層107の表面に活性エネルギー線を照射して金属核を生成し、その金属核をシードとして、無電解めっき等のめっき処理により、エネルギー線照射領域にめっきパターンを形成する。このめっきパターンに基づき配線、回路等の導電性部材を形成することができる。以下、さらに具体的に説明する。
【0042】
工程4において、第2封止層107の表面のレーザー照射部位、具体的には凹部に配線層等の導体層を選択的に形成する。導体層は、具体的にはめっき膜により構成される。
また、工程4は、具体的には、凹部に金属を適用する工程と、凹部に金属のめっき層を成長させる工程と、を含む。
【0043】
めっき処理としては、電解めっきまたは無電解めっきのいずれを用いてもよい。工程2においてレーザーが照射された領域に、めっき処理を施すことにより、回路(めっき層)を形成することができる。めっき液としては、定めるものではなく、公知のめっき液を広く採用することができ、金属成分として銅、ニッケル、金、銀、パラジウムが混合されているめっき液を用いてもよい。
【0044】
以上の工程により、半導体装置100が得られる。
本実施形態においては、半導体素子103の封止材が第1封止層105および第2封止層107のコアシェル構造となっているため、信頼性および回路形成性に優れる半導体装置100を得ることができる。たとえば、第1封止層105および第2封止層107に用いる樹脂組成物としてそれぞれ異なるものを用い、好ましくは第1封止層105に用いる樹脂組成物が非導電性金属化合物を含まない構成とすることにより、半導体素子103や導体部と第1封止層105との密着性を優れたものとしつつ、封止材全体の成形性や誘電特性をより好ましいものとすることができる。また、第2封止層107がLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成されているため、たとえば前述の工程3および4により、LDS加工による配線形成を安定的におこなうことができるとともに、より、微細化または複雑化された配線構造を半導体装置100に設けることも可能となる。
【0045】
以下の実施形態においては、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0046】
(第2の実施形態)
図2(a)は、本実施形態における半導体装置の構成の一例を示す断面図である。図2(b)は、図2(a)に示した半導体装置110の変形例を示す図である。
図2(a)および図2(b)において、半導体装置110の基本構成はそれぞれ図1(a)および図1(b)に示した半導体装置100と同様であるが、第2の封止材として、第2封止層107にかえて第2封止層111が設けられている点が異なる。
本実施形態において、第2封止層111は、具体的には液状のLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物である。
第2封止層111は第1封止層105の上部に接して設けられており、第1封止層105の上面全体を覆っている。
【0047】
第2封止層111の厚さは、たとえば第1の実施形態と同様の観点から、第1の実施形態で前述した第2封止層107の厚さ程度とすることができる。
第2封止層111の熱機械分析(TMA)により測定される、ガラス転移温度未満の温度領域の線膨張係数、第1封止層105のガラス転移温度未満の温度領域の線膨張係数と第2封止層111のガラス転移温度未満の温度領域の線膨張係数との差、および、第2封止層111のガラス転移温度についても、それぞれ、たとえば第1の実施形態で前述した程度の大きさとすることができる。
【0048】
半導体装置110の製造についても、たとえば第1の実施形態で前述した半導体装置100の製造方法に準じておこなうことができ、さらに具体的には前述の工程1および工程2を含む製造方法とすることができる。
【0049】
工程1は、たとえば第1の実施形態と同様の方法とすることができる。
工程2では、たとえば液状のLDS用熱硬化性樹脂組成物を第1封止層105の上面に塗布して膜を形成し、これを硬化させて第2封止層111を形成することができる。
LDS用熱硬化性樹脂組成物の塗布方法の具体例として、オフセット印刷、スクリーン印刷などの印刷;エアーディスペンス、メカニカルディペンスなどのジェットディスペンスなどが挙げられ、好ましくは印刷とする。
また、圧縮成形により第2封止層111を得ることも好ましい。
【0050】
半導体装置110においても、半導体素子103の封止材が第1封止層105および第2封止層111のコアシェル構造となっているため、第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態によれば、たとえば、封止材の反りを好適に抑制することも可能となる。
【0051】
以上には、半導体素子103が第1封止層105中に埋設されている例を挙げたが、第1封止層105および第2封止層111は、それぞれ、電子部品の表面の少なくとも一部を覆っていればよい。電子部品の一部が第1封止層105および第2封止層111の少なくとも一方の表面に露出していてもよい。
また、以上には、第2封止層111が第1封止層105の表面に接して設けられている例を挙げたが、第1封止層105と第2封止層111との間に1つ以上の介在層が設けられてもよい。
【0052】
また、以上においては、電子装置が半導体装置である場合を例に説明したが、電子装置は半導体装置には限られない。電子装置の他の具体例として、薄膜インダクタ等のインダクタが挙げられる。
以下、薄膜インダクタを例に挙げて説明する。以下の実施形態において、MID回路の形成には、たとえば、第1の実施形態にて前述した方法の少なくとも一部、さらに具体的には、工程3および工程4の少なくとも一部を用いることができる。
【0053】
(第3の実施形態)
図3は、本実施形態における薄膜インダクタの構成の一例を示す斜視図である。図3に示した薄膜インダクタ10は、樹脂成形材料からなる軟磁性薄膜12(38)と、その上面にMID(Molded Interconnect Device)回路14とを備える。
【0054】
図4(a)~図4(d)は、薄膜インダクタ10の製造工程の一例を示す断面図である。薄膜インダクタ10は、たとえば以下の工程を含む方法で製造することができる。
(工程11)第1の封止材(軟磁性薄膜12)上に、軟磁性薄膜12の表面の少なくとも一部を覆うように第2の封止材(絶縁層13)を形成する工程
(工程12)軟磁性薄膜12および絶縁層13が電子部品(銅層16)の少なくとも一部を覆うように、銅層16を配設する工程
本実施形態において、たとえば軟磁性薄膜12がLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成されてもよい。このとき、LDS用熱硬化性樹脂組成物は、たとえば第5の実施形態で後述する、活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物を含む構成とすることができる。
【0055】
工程11においては、まず、樹脂成形材料のトランスファー成形または圧縮成形により、軟磁性薄膜12を形成する(図4(a))。軟磁性薄膜12の膜厚は200μm程度である。
【0056】
ここで、軟磁性薄膜12を得るための樹脂成形材料としては、公知のインダクタ成形用樹脂組成物を用いることができる。インダクタ成形用樹脂組成物は、たとえば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と、磁性体粉末と、を含む。
また、軟磁性薄膜12が高飽和磁束密度を有し、さらに曲げ強度などの機械強度に優れた磁性材料とする観点から、インダクタ成形用樹脂組成物は、好ましくは、エポキシ樹脂、硬化剤、下記一般式(1)で表される化合物、および軟磁性粒子を含む。
【0057】
【化1】
【0058】
(上記一般式(1)中、Rは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルケニル基、炭素数1~10のアルキニル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のアラルキル基を示し、Rは、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のアルケニレン基、炭素数1~10のアルキニレン基を示す。
Aは、それぞれ独立して、炭素数1~3のアルコキシ基または炭素数1~3のアルキル基を示し、少なくとも1つのAは炭素数1~3のアルコキシ基である。)
【0059】
エポキシ樹脂、硬化剤および軟磁性粒子については、それぞれ、たとえばインダクタ成形用樹脂組成物として公知のものを用いることができる。
また、一般式(1)に示した化合物の具体例として、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-602、信越化学工業社製)、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-603、信越化学工業社製)、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-903、信越化学工業社製)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE-903、信信越化学工業社製)、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン(KBE-9103P、信越化学工業社製)、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-573、信越化学工業社製/CF-4083:東レ・ダウコーニング社製)、等を挙げることができる。
【0060】
製造方法の説明に戻り、次に、軟磁性薄膜12の上面に絶縁層13を形成する(図4(b))。絶縁層13の膜厚は200μm程度である。絶縁層13は従来公知の材料から形成することができ、スプレー法やコート法等により形成される。
【0061】
そして、軟磁性薄膜12の特定の部位にレーザー等の活性エネルギー線を選択的に照射し、軟磁性薄膜12から絶縁層13にわたる凹部(開口部15)を形成する(図4(c))。
また、軟磁性薄膜12を形成した後、軟磁性薄膜12の特定の部位に活性エネルギー線を選択的に照射して回路パターンを形成した後、軟磁性薄膜12の上面全体に絶縁層を形成し、パターン部分に再度活性エネルギー線を選択的に照射して、開口部15内壁に絶縁層を形成することもできる。
【0062】
次いで、めっき処理を行い開口部15内に銅層16を形成して、軟磁性薄膜12にMID回路14を備える薄膜インダクタ10を得る(図4(d))。なお、薄膜インダクタ10は図4(d1)に示される構造とすることもできる。
【0063】
(第4の実施形態)
本実施形態は、第3の実施形態で前述した薄膜インダクタ10(図3)の別の製造方法に関する。 図5(a)~図5(d)は、薄膜インダクタ10の製造工程の一例を示す断面図である。薄膜インダクタ10は、たとえば以下の工程を含む方法で製造することもできる。
(工程21)第1の封止材(MID膜32)上に電子部品(銅層36)が設けられた構造体を準備する工程
(工程22)MID膜32上に、銅層36の少なくとも一部を覆うように第2の封止材(軟磁性層(薄膜)38)を形成する工程
本実施形態において、具体的には、MID膜32が、LDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成される。
【0064】
まず、LDS用熱硬化性樹脂組成物をダイコーターにより塗布・乾燥してMID膜32を形成する(図5(a))。MID膜32の膜厚は200μm程度である。LDS用熱硬化性樹脂組成物は、たとえば第5の実施形態で後述する構成とすることができる。
【0065】
MID膜32にの特定の部位にレーザー等の活性エネルギー線を選択的に照射して開口部34を形成する(図5(b))。
【0066】
そして、めっき処理を行い開口部34内に銅層36を形成して、MID膜32にMID回路14を作成する(図5(c))。なお、当該工程の後、銅層36の表面に絶縁層を形成することもできる。
【0067】
次いで、上述のトランスファー成形または圧縮成形により、MID膜32および銅層36上に軟磁性層(薄膜)38を形成してこれらを封止し、軟磁性層(薄膜)38にMID回路14を備える薄膜インダクタ10を得る(図5(d))。軟磁性層(薄膜)38の材料としては、たとえば第3の実施形態における軟磁性薄膜12の材料が挙げられる。
なお、薄膜インダクタ10は図5(d1)に示される構造とすることもできる。
【0068】
(第5の実施形態)
本実施形態においては、第1封止層105および各実施形態における第2封止層に用いる熱硬化性樹脂組成物について説明する。
【0069】
(第1封止層)
第1封止層105に用いられる熱硬化性樹脂組成物は、具体的には、半導体封止用樹脂組成物とすることができ、さらに具体的には、熱硬化性樹脂と、無機充填材と、を含むものとすることができる。
【0070】
また、第1封止層105に用いられる熱硬化性樹脂組成物には、たとえば半導体封止材として用いられるものを広く用いることができる。また、第1封止層105に用いられる熱硬化性樹脂組成物は、たとえば後述の第2封止層に用いられる熱硬化性樹脂組成物から、非導電性金属化合物を除いた成分により構成される組成物とすることもできる。
【0071】
また、第1封止層105がLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物である場合、後述の第2封止層に用いられる熱硬化性樹脂組成物の構成を採用することもできる。
【0072】
(第2封止層)
第2封止層に用いられる熱硬化性樹脂組成物は、レーザーダイレクトストラクチャリング(LASER DIRECT STRUCTURING:LDS)に用いるLDS用熱硬化性樹脂組成物である。LDSとは、MIDの製造方法の一つである。LDSにおいては、具体的には、LDS添加剤を含有する樹脂成形品の表面に活性エネルギー線を照射して金属核を生成し、その金属核をシードとして、無電解めっき等のめっき処理により、エネルギー線照射領域にめっきパターンを形成する。このめっきパターンに基づき配線、回路等の導電性部材を形成することができる。
【0073】
本実施形態において、LDS用熱硬化性樹脂組成物(以下、単に「熱硬化性樹脂組成物」ともよぶ。)は、熱硬化性樹脂と、無機充填材と、活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物と、を含む。
熱硬化性樹脂組成物の構成成分および配合は、たとえば第2封止層の形状や第1封止層105の上への適用方法に応じてそれぞれ選択することができる。
【0074】
また、熱硬化性樹脂組成物の形状についても、たとえば第2封止層の形状や第1封止層105の上への適用方法に応じてそれぞれ選択することができる。熱硬化性樹脂組成物の形状として、たとえば、粒状、シート状等の固形状;液状が挙げられる。
第2封止層の形成方法をトランスファー成形とするとき、たとえば粒状またはシート状の熱硬化性樹脂組成物を用いることができる。
第2封止層の形成方法を圧縮成形とするとき、たとえば粒状、シート状または液状の熱硬化性樹脂組成物を用いることができる。
【0075】
第2封止層の構成は、たとえば第4の実施形態におけるMID膜32にも適用することができる。
【0076】
また、第2封止層が活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物を含まない樹脂組成物の硬化物である場合、かかる樹脂組成物として前述の第1封止層105に用いられる熱硬化性樹脂組成物の構成を採用することもできる。
【0077】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂として、たとえば、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、シアネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびベンゾシクロブテン樹脂からなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。また、熱硬化性樹脂は、後述するフェノール樹脂硬化剤等の樹脂硬化剤を含むことができる。
硬化性、保存性、耐熱性、耐湿性、および耐薬品性を向上させる観点から、熱硬化性樹脂は好ましくはエポキシ樹脂を含み、より好ましくはエポキシ樹脂である。
【0078】
エポキシ樹脂として、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量や分子構造は限定されない。
エポキシ樹脂は、たとえばビフェニル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等に例示されるトリスフェノール型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種類または2種類以上を含む。
熱硬化性樹脂組成物を硬化して得られる成形体の反り抑制や、流動性、充填性、耐熱性、耐湿性等の諸特性のバランスを向上させる観点から、これらのうち、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、多ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上が好ましく用いられる。
【0079】
熱硬化性樹脂組成物中の熱硬化性樹脂の含有量は、成形時における流動性を向上させて、充填性や成形安定性の向上を図る観点から、熱硬化性樹脂組成物全体に対して好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは2.5質量%以上である。
一方、耐湿信頼性や耐リフロー性を向上させる観点、および、成形体の反りを抑制する観点から、熱硬化性樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは14質量%以下、さらに好ましくは13質量%以下である。
ここで、本実施形態において、熱硬化性樹脂組成物全体に対する含有量とは、熱硬化性樹脂組成物が溶媒を含む場合には、熱硬化性樹脂組成物のうちの溶媒を除く固形分全体に対する含有量を指す。熱硬化性樹脂組成物の固形分とは、熱硬化性樹脂組成物中における不揮発分を指し、水や溶媒等の揮発成分を除いた残部を指す。
【0080】
(硬化剤)
熱硬化性樹脂組成物は、硬化剤を含んでもよい。硬化剤としては、たとえば重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、および縮合型の硬化剤の3タイプに大別することができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
重付加型の硬化剤は、たとえば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m-フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドラジドなどを含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物;フェノール樹脂硬化剤;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類からなる群から選択される1種または2種以上を含む。
【0082】
このうち、フェノール樹脂硬化剤は、たとえば、レゾール型フェノール樹脂;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック等のノボラック型フェノール樹脂;ポリビニルフェノール、トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格およびビフェニレン骨格の少なくとも一方を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレンおよびビフェニレン骨格の少なくとも一方を有するナフトールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル型フェノール樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物からなる群から選択される1種または2種以上を含む。これらの中でも、成形体の反りを抑制する観点からは、ノボラック型フェノール樹脂、多官能型フェノール樹脂およびフェノールアラルキル型フェノール樹脂を含むことがより好ましい。また、フェノールノボラック樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、ホルムアルデヒドで変性したトリフェニルメタン型フェノール樹脂を好ましく使用することもできる。
【0083】
触媒型の硬化剤は、たとえば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(EMI24)などのイミダゾール化合物;BF3錯体などのルイス酸からなる群から選択される1種または2種以上を含む。
【0084】
縮合型の硬化剤は、たとえば、メチロール基含有尿素樹脂などの尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂などのメラミン樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含む。
【0085】
熱硬化性樹脂組成物が液状であるとき、耐熱性向上の観点から、熱硬化性樹脂組成物は、好ましくはポリアミン化合物および酸無水物からなる群から選択される1または2以上の硬化剤を含み、より好ましくは酸無水物から選択される1または2以上の化合物を含むことがより好ましい。
また、熱硬化性樹脂組成物が粒状またはシート状であるとき、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、および保存安定性等についてのバランスを向上させる観点から、フェノール樹脂硬化剤を含むことがより好ましい。
【0086】
熱硬化性樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、成形時において、優れた流動性を実現し、充填性や成形性の向上を図る観点から、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、さらにより好ましくは3質量%以上である。
一方、電子部品の耐湿信頼性や耐リフロー性を向上させる観点、および、得られる成形体の反りを抑制する観点から、硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、好ましくは9質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下である。
【0087】
(無機充填材)
無機充填材は、たとえば、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ等の溶融シリカ;結晶シリカ、非晶質シリカ等のシリカ(二酸化珪素);アルミナ;水酸化アルミニウム;窒化珪素;および窒化アルミからなる群から選択される1種または2種以上の材料を含む。熱硬化性樹脂組成物の硬化物の機械特性または熱特性を好ましいものとする観点から、無機充填材は、好ましくは溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ等のシリカを含み、より好ましくはシリカである。
【0088】
無機充填材のd50粒径は、流動性を好ましいものとする観点から、たとえば1μm以上であり、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは12μm以上、さらにより好ましくは15μm以上である。
一方、レーザー加工後のメッキ配線幅を小さくする観点から、無機充填材のd50粒径は、好ましくは40μm以下であり、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは27μm以下、さらにより好ましくは25μm以下である。
【0089】
ここで、無機充填材の粒径分布は、市販のレーザー回折式粒度分布測定装置(たとえば、島津製作所社製、SALD-7000)を用いて粒子の粒度分布を体積基準で測定することができる。
【0090】
熱硬化性樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、寸法安定性を高める観点から、熱硬化性樹脂組成物全体に対して40質量%以上であり、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上、さらにより好ましくは70質量%以上である。
一方、粘度、流動性を好ましいものとする観点から、無機充填材の含有量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、85質量%以下であり、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは78質量%以下であり、さらに好ましくは75質量%以下、さらにより好ましくは73質量%以下である。
【0091】
(活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物)
活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物(以下、単に「非導電性金属化合物」とも呼ぶ。)は、活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物である。かかる化合物は、LDS添加剤として作用する。非導電性金属化合物は、活性エネルギー線の照射により金属核を形成できるものであれば限定されない。詳細なメカニズムは定かでないが、このような非導電性金属化合物は、吸収可能な波長領域を有するYAGレーザー等の活性エネルギー線が照射されると、金属核が活性化して(たとえば、還元されて)、金属めっきが可能な金属核が生成される、と考えられる。そして、非導電性金属化合物が分散された熱硬化性樹脂組成物の硬化物の表面に対して活性エネルギー線を照射すると、その照射面に、金属めっきが可能な金属核を有するシード領域が形成される。得られたシード領域を利用することにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の表面に、回路などのめっきパターンを形成することが可能になる。
【0092】
非導電性金属化合物は、たとえば、(i)スピネル型の金属酸化物、(ii)周期表第3族~第12族の中から選択されており、かつ当該族が隣接する2以上の遷移金属元素を有する金属酸化物、および、(iii)錫含有酸化物からなる群から選択される1種以上を含む。
【0093】
上記(i)において、スピネル型の構造とは、複酸化物でAB24型の化合物(AとBは金属元素である。)にみられる代表的結晶構造型の一つである。スピネル構造は、順スピネル構造、(AとBが一部入れ替わった)逆スピネル構造(B(AB)O4)のいずれでもよいが、順スピネル構造がより好ましく使用できる。この場合、順スピネル構造のAが銅であってもよい。
【0094】
スピネル型の金属酸化物を構成する金属原子としては、たとえば、銅やクロムを用いることができる。つまり、非導電性金属化合物は、銅またはクロムを含むスピネル型の金属酸化物を含有することができる。たとえば、銅メッキパターンとの密着性を高める観点から、金属原子として銅を用いることができる。
【0095】
また、金属原子として、銅やクロムの他に、アンチモン、スズ、鉛、インジウム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、カドミウム、銀、ビスマス、ヒ素、マンガン、マグネシウム、カルシウムなどの金属原子を微量含有していてもよい。これらの微量金属原子は酸化物として存在していてもよい。また、微量金属原子の含有量は、それぞれ、金属酸化物中の金属原子全体に対して、0.001質量%以下とすることができる。
【0096】
スピネル型の金属酸化物は、熱的に高安定性があり、酸性またはアルカリ性の水性金属化浴において耐久性を有することができる。スピネル型の金属酸化物は、たとえば、熱硬化性樹脂組成物の分散性を適切に制御することにより、高酸化物の状態で、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の表面における未照射領域に存在することができる。以上のようなスピネル型の金属酸化物の一例として、たとえば、特表2004-534408号公報に記載されているものが挙げられる。
【0097】
上記(ii)の遷移金属元素を有する金属酸化物としては、周期表第3族~第12族の中から選択されており、かつ当該族が隣接する2以上の遷移金属元素を有する金属酸化物である。ここで、上記遷移金属元素に属する金属は、周期表のn族の金属と、n+1族の金属とを含有すると表すことができる。上記遷移金属元素を有する金属酸化物は、これら金属の酸化物を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
周期表のn族に属する金属としては、たとえば、3族(スカンジウム、イットリウム)、4族(チタン、ジルコニウムなど)、5族(バナジウム、ニオブなど)、6族(クロム、モリブテンなど)、7族(マンガンなど)、8族(鉄、ルテニウムなど)、9族(コバルト、ロジウム、イリジウムなど)、10族(ニッケル、パラジウム、白金)、11族(銅、銀、金など)、12族(亜鉛、カドミウムなど)、13族(アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)が挙げられる。
【0099】
周期表のn+1族の金属としては、たとえば、4族(チタン、ジルコニウムなど)、5族(バナジウム、ニオブなど)、6族(クロム、モリブテンなど)、7族(マンガンなど)、8族(鉄、ルテニウムなど)、9族(コバルト、ロジウム、イリジウムなど)、10族(ニッケル、パラジウム、白金)、11族(銅、銀、金など)、12族(亜鉛、カドミウムなど)、13族(アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)が挙げられる。
以上のような遷移金属元素を有する金属酸化物の一例として、たとえば、特表2004-534408号公報に記載されているものが挙げられる。
【0100】
また、上記(iii)の錫含有酸化物としては、少なくとも錫を含有する金属酸化物である。錫含有酸化物を構成する金属原子が、錫のほかにアンチモンを含んでもよい。このような錫含有酸化物は、酸化錫、酸化アンチモンを含有することができる。さらに具体的には、錫含有酸化物に含まれる金属成分中、90質量%以上が錫であり、5質量%以上がアンチモンであってもよい。この錫含有酸化物は、金属成分として、鉛および/または銅をさらに含有してもよい。具体的には、錫含有酸化物に含まれる金属成分においては、たとえば、90質量%以上が錫であり、5~9質量%がアンチモンであり、0.01~0.1質量%の範囲で鉛を含み、0.001~0.01質量%の範囲で銅を含むことができる。このような錫含有酸化物は、たとえば、酸化錫および酸化アンチモンと、酸化鉛および酸化銅の1種以上とを含有することができる。なお、錫含有酸化物は、スピネル型の金属酸化物で例示された微量金属原子を含有してもよい。
また、錫含有酸化物は、上記(i)のスピネル型の金属酸化物または上記(ii)の遷移金属元素を有する金属酸化物と併用して使用してもよい。
【0101】
熱硬化性樹脂組成物中の非導電性金属化合物の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物において、めっき付き特性を良好なものとする観点から、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、たとえば2質量%以上であり、好ましくは4質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上である。また、熱硬化性樹脂組成物の硬化物において、絶縁性の低下や誘電正接の増加を抑制する観点、および、非導電性金属化合物の形状が非球形の場合において、熱硬化性樹脂組成物の流動性を良好なものとする観点から、非導電性金属化合物の含有量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、たとえば20質量%以下であり、好ましくは18質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0102】
また、熱硬化性樹脂組成物中の無機充填材および非導電性金属化合物の含有量の合計は、樹脂機械特性、樹脂強度の向上の観点から、熱硬化性樹脂組成物全体に対して好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらにより好ましくは82質量%以上である。
一方、成形性を向上する観点から、無機充填材および非導電性金属化合物の含有量の合計は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して好ましくは98質量%以下であり、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
【0103】
(その他の成分)
本実施形態において、熱硬化性樹脂組成物は、上述の成分以外の成分を含んでもよい。
たとえば、熱硬化性樹脂組成物は、カップリング剤、硬化促進剤および(メタ)アクリル化合物からなる群から選択される1種または2種以上をさらに含んでもよい。
【0104】
(カップリング剤)
熱硬化性樹脂組成物は、第2封止層の成形性を向上する観点から、好ましくはカップリング剤をさらに含む。
同様の観点から、カップリング剤は、好ましくはメルカプトシラン、アミノシランおよびエポキシシランからなる群から選択される1種以上を含む。連続成形性という観点では、メルカプトシランが好ましく、流動性の観点では、2級アミノシランが好ましく、密着性という観点ではエポキシシランが好ましい。
【0105】
このうち、エポキシシランとして、たとえば、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられ、好ましくはγ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランである。
【0106】
アミノシランとして、たとえば、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(3-(トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ベンゼンジメタナン等が挙げられ、好ましくはN-フェニル-γ-アミノプロピルトリエトキシシランである。アミノシランの1級アミノ部位をケトンまたはアルデヒドを反応させて保護した潜在性アミノシランカップリング剤として用いてもよい。また、アミノシランは、2級アミノ基を有してもよい。
【0107】
また、メルカプトシランとして、たとえば、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランのほか、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドのような熱分解することによってメルカプトシランカップリング剤と同様の機能を発現するシランカップリング剤などが挙げられ、好ましくはγ-メルカプトプロピルトリメトキシシランである。
【0108】
これらのシランカップリング剤は予め加水分解反応させたものを配合してもよい。これらのシランカップリング剤は1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0109】
熱硬化性樹脂組成物中のカップリング剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物のフロー流動長を長くすることにより成形性を向上させる観点から、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。
一方、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の吸水性の増大を抑制し、良好な防錆性を得る観点から、カップリング剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.8質量%以下、さらに好ましくは0.6質量%以下、さらにより好ましくは0.4質量%以下である。
【0110】
(硬化促進剤)
硬化促進剤は、熱硬化性樹脂と硬化剤との架橋反応を促進させるものであればよく、一般の熱硬化性樹脂組成物に使用するものを用いることができる。
【0111】
硬化促進剤は、たとえば有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン(BDMA)等が例示されるアミジンや2,4,6-トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP-30)などの3級アミン化合物;3級アミン、上記アミジンやアミンの4級塩等の窒素原子含有化合物から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。これらの中でも、硬化性を向上させる観点からはリン原子含有化合物を含むことがより好ましい。また、成形性と硬化性のバランスを向上させる観点からは、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等の潜伏性を有するものを含むことがより好ましい。同様の観点から、硬化促進剤は、好ましくはトリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケートおよびテトラフェニルホスホニウム-4,4'-スルフォニルジフェノラートから選択される1以上を含む。
【0112】
熱硬化性樹脂組成物が硬化促進剤を含むとき、硬化促進剤の含有量は、成形時における硬化性を効果的に向上させる観点から、熱硬化性樹脂組成物の全体に対して好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.15質量%以上、さらに好ましくは0.25質量%以上である。
一方、成形時における流動性の向上を図る観点から、硬化促進剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の全体に対して好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.8質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0113】
((メタ)アクリル化合物)
(メタ)アクリル化合物として、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリルオリゴマー、(メタ)アクリルモノマー等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物が(メタ)アクリル化合物を含むことにより、熱硬化性樹脂組成物をシート状とする際のシートの割れや欠けの抑制効果を向上することができる。
シートの割れや欠けを抑制する観点から、(メタ)アクリル化合物は、好ましくは(メタ)アクリルモノマーを含む。
(メタ)アクリルモノマーは、好ましくは、本実施形態におけるシート状の熱硬化性樹脂組成物の製造において使用される溶剤よりも沸点の高いモノマーである。
また、シート状の熱硬化性樹脂組成物の製造工程における(メタ)アクリルモノマーの揮発を抑制し、また、(メタ)アクリルモノマーと溶剤および樹脂組成物との間の化学的な反応により相互作用させを生じさせる観点から、(メタ)アクリルモノマーの沸点は、好ましくは100℃超であり、より好ましくは110℃以上である。こうすることで、シート状の熱硬化性樹脂組成物を、使用時の作業性を向上させることができる程度に柔軟性に優れたものとすることができる。
【0114】
(メタ)アクリルモノマーとしては、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルメチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルメチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルテトラヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルメチルテトラヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルメチルテトラヒドロフタル酸、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリロキシプロパン、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4―シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、エチル-α-(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャルブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャルブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジンクモノ(メタ)アクリレート、ジンクジ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4-ヘキサフロロブチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N'-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N'-エチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,2-ジ(メタ)アクリルアミドエチレングリコール、ジ(メタ)アクリロイロキシメチルトリシクロデカン、2-(メタ)アクリロイロキシエチル、N-(メタ)アクリロイロキシエチルマレイミド、N-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N-(メタ)アクリロイロキシエチルフタルイミド、N-ビニル-2-ピロリドン、エトキシ化ビスフェノールA(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールA(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能モノマー等が挙げられる。
【0115】
熱硬化性樹脂組成物中の(メタ)アクリルモノマーの含有量は、シートの割れや欠けを抑制する観点から、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。
また、同様の観点から、(メタ)アクリルモノマーの含有量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0116】
また、熱硬化性樹脂組成物は、上述の非導電性金属化合物のほかに、少なくとも1種類の有機性の熱安定性金属キレート錯塩を含有していてもよい。
また、熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、たとえば、界面活性剤、シリコーン、離型剤、難燃剤、イオン捕捉剤、着色剤、低応力材、密着助剤および酸化防止剤等の添加剤を含有することができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱硬化性樹脂組成物中のこれら各成分の量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、それぞれ、0.01~10質量%程度の量とすることができる。
【0117】
本実施形態において、熱硬化性樹脂組成物の製造方法は、熱硬化性樹脂組成物の形状や配合成分に応じて選択することができる。
たとえば、シート状の熱硬化性樹脂組成物の製造方法としては、たとえば、各構成成分を配合し調製した熱硬化性樹脂組成物のワニスをフィルム上に塗布・乾燥してシート状に形成し、溶剤を揮発させる方法が挙げられる。
ワニスの塗布の方法としては、コンマコーターやダイコーターのような塗工機を用いた塗工による方法、ステンシル印刷やグラビア印刷のような印刷による方法などが挙げられる。
また、熱硬化性樹脂組成物を押し出してシート状に形成してもよい。
【0118】
液状の熱硬化性樹脂組成物の製造方法としては、たとえば、各成分、添加剤などをプラネタリーミキサー、三本ロール、二本熱ロール、ライカイ機などの装置を用いて分散混練したのち、真空下で脱泡処理して製造する方法が挙げられる。
【0119】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
たとえば、以上の実施形態においては、封止材が第1封止層105および第2封止層の2層構造である場合を例示したが、第1封止層105の外側に設ける封止層数に制限はなく、たとえば第3封止層をさらに有する構成としてもよい。このとき、たとえば最も外側の封止層がLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成されることが好ましい。
また、第1および第2の実施形態においては、それぞれ、シート状および液状のLDS用熱硬化性樹脂組成物を用いる例を主に説明したが、LDS用熱硬化性樹脂組成物の性状はこれに限られず、粒状等の他の性状としてもよい。
【0120】
以下、参考形態の例を付記する。
(参考形態A)
1. 基板と、
前記基板に搭載された半導体素子と、
前記半導体素子を封止する第1の封止材と、
前記第1の封止材の表面を覆うとともに、LDS(LASER DIRECT STRUCTURING)用熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成される第2の封止材と、
を含み、
前記LDS用熱硬化性樹脂組成物が、
熱硬化性樹脂と、
無機充填材と、
活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物と、
を含む、半導体装置。
2. 前記第1の封止材が前記非導電性金属化合物を含まない、1.に記載の半導体装置。
3. 前記第2の封止材の厚さが30μm以上500μm以下である、1.または2.に記載の半導体装置。
4. 前記第2の封止材の、熱機械分析(TMA)により測定される、ガラス転移温度未満の温度領域の線膨張係数が7ppm/℃以上20ppm/℃以下である、1.乃至3.いずれか1項に記載の半導体装置。
5. 前記第1の封止材の、熱機械分析(TMA)により測定される、ガラス転移温度未満の温度領域の線膨張係数が7ppm/℃以上20ppm/℃以下である、1.乃至4.いずれか1項に記載の半導体装置。
6. 前記第2の封止材が、前記基板の上部において前記第1の封止材の前記表面全体を封止している、1.乃至5.いずれか1項に記載の半導体装置。
7. 前記LDS用熱硬化性樹脂組成物が、カップリング剤をさらに含む、1.乃至6.いずれか1項に記載の半導体装置。
8. 基板に搭載された半導体素子が第1の封止材により封止された構造体を準備する工程と、
前記第1の封止材上に、LDS(LASER DIRECT STRUCTURING)用熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成される第2の封止材を形成する工程と、
を含み、
前記LDS用熱硬化性樹脂組成物が、
熱硬化性樹脂と、
無機充填材と、
活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物と、
を含む、半導体装置の製造方法。
(参考形態B)
B1. 電子部品と、
前記電子部品の表面の少なくとも一部を覆う第1の封止材と、
前記電子部品および第1の封止材の表面の少なくとも一部を覆う第2の封止材と、
を含み、
前記第1および第2の封止材の少なくとも一方が、LDS(LASER DIRECT STRUCTURING)用熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成され、
前記LDS用熱硬化性樹脂組成物が、
熱硬化性樹脂と、
無機充填材と、
活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物と、
を含む、電子装置。
B2. 基板と、
前記基板に搭載された半導体素子と、
前記半導体素子を封止する第1の封止材と、
前記第1の封止材の表面を覆うとともに、LDS(LASER DIRECT STRUCTURING)用熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成される第2の封止材と、
を含み、
前記LDS用熱硬化性樹脂組成物が、
熱硬化性樹脂と、
無機充填材と、
活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物と、
を含む、半導体装置である電子装置。
B3. 前記第1の封止材が前記非導電性金属化合物を含まない、B1.またはB2.に記載の電子装置。
B4. 前記第2の封止材の厚さが30μm以上500μm以下である、B1.乃至B3.いずれか1つに記載の電子装置。
B5. 前記第2の封止材の、熱機械分析(TMA)により測定される、ガラス転移温度未満の温度領域の線膨張係数が7ppm/℃以上20ppm/℃以下である、B1.乃至B4.いずれか1つに記載の電子装置。
B6. 前記第1の封止材の、熱機械分析(TMA)により測定される、ガラス転移温度未満の温度領域の線膨張係数が7ppm/℃以上20ppm/℃以下である、B1.乃至B5.いずれか1つに記載の電子装置。
B7. 前記第2の封止材が、前記基板の上部において前記第1の封止材の前記表面全体を封止している、B1.乃至B6.いずれか1つに記載の電子装置。
B8. 前記LDS用熱硬化性樹脂組成物が、カップリング剤をさらに含む、B1.乃至B7.いずれか1つに記載の電子装置。
B9. 基板に搭載された半導体素子が第1の封止材により封止された構造体を準備する工程と、
前記第1の封止材上に、LDS(LASER DIRECT STRUCTURING)用熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成される第2の封止材を形成する工程と、
を含み、
前記LDS用熱硬化性樹脂組成物が、
熱硬化性樹脂と、
無機充填材と、
活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物と、
を含む、半導体装置の製造方法。
【実施例
【0121】
以下、実施例を参照して実施形態を詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0122】
(実施例1)
表1に記載の配合にてシート状のLDS用熱硬化性樹脂組成物を調製した。具体的には、まず、溶剤およびアクリルモノマーを除く各原料成分を下記表1に示す配合量に従って混練して得られた樹脂混合物を所定量のプロピレングリコールモノメチルエーテルと表1に記載の量のアクリルモノマーに溶解させてワニスを調製した。
次いで、PETフィルム(ユニチカ社製、TR1)の上面に、調製したワニスをダイコーターにより塗布し、その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルが揮発するまで乾燥させた。こうすることにより、本例の樹脂シートを作製した。なお、得られた樹脂シートの厚みは100μmであり、幅は500mmであった。
【0123】
(実施例2、3)
表2に記載の配合にて顆粒状のLDS用熱硬化性樹脂組成物を調製した。表2に示す配合量の各原材料を、常温でミキサーを用いて混合した後、70~100℃でロール混練した。次いで、得られた混練物を冷却した後、これを粉砕して、顆粒状の熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0124】
(実施例4)
表3に記載の配合にて液状のLDS用熱硬化性樹脂組成物を調製した。表3に示す配合量の各原材料をビーカーに取りスパチュラで混ぜ合わせた後、三本ロールにて3回混錬したのち、ビーカーに入れて真空オーブン(常温、5mmHg)中で10分間脱泡処理を行い、液状の熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0125】
表1~表3に記載の成分の詳細を以下に示す。
(熱硬化性樹脂)
エポキシ樹脂1:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、NC-3000L、日本化薬社製
エポキシ樹脂2:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、EOCN-1020、日本化薬社製
エポキシ樹脂3:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、NC3000、日本化薬社製
エポキシ樹脂4:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、YDF-870GS、東都化成社製(硬化剤)
硬化剤1:トリヒドロキシフェニルメタン型フェノール樹脂、HE910-20、エアウォーターケミカル社製
硬化剤2:ノボラック型フェノール樹脂、PR-HF-3、住友ベークライト社製
硬化剤3:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型樹脂、MEH-7851SS、明和化成社製
硬化剤4:酸無水物、HN-2200R、日立化成社製
(硬化促進剤)
硬化促進剤1:トリフェニルフォスフィン
硬化促進剤2:テトラフェニルホスホニウムビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート
硬化促進剤3:テトラフェニルホスホニウム-4,4'-スルフォニルジフェノラート
(無機充填材)
無機充填材1:溶融球状シリカ、MUF-046、龍森社製、平均粒子径4.1μm
無機充填材2:非晶質シリカ/結晶質シリカ、MUF-4V、龍森社製、平均粒子径3.8μm
無機充填材3:二酸化珪素、SC-2500-SQ、アドマテックス社製、平均粒子径0.6μm
無機充填材4:二酸化珪素、SC-5500-SQ、アドマテックス社製、平均粒子径1.6μm
無機充填材5:二酸化珪素、MSR-SC3-TS、龍森社製、平均粒子径12μm
無機充填材6:二酸化珪素、SO-E2/24C、アドマテックス社製、平均粒子径0.5μm
(アクリル化合物)
アクリルモノマー1:トリメチロールプロパントリメタクリレート、ライトエステルTMP、共栄社化学社製、沸点200℃以上
(添加剤)
添加剤1(非導電性金属化合物):無機複合酸化物、Black3702、アサヒ化成工業社製
添加剤2:ノニオン性界面活性剤、BYK-A506、ビックケミー社製
(着色剤)
着色剤1:カーボンブラック、カーボン#5、三菱ケミカル社製
(カップリング剤)
カップリング剤1:3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、S810、チッソ社製
カップリング剤2:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、S510、チッソ社製
カップリング剤3:N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、CF-4083、東レダウコーニング社製
カップリング剤4:γ-グリシジルプロピルトリメトキシシラン、KBM-403E、信越化学工業社製
(離型剤)
離型剤1:グリセリントリモンタン酸エステル、リコルブ-WE-4、クラリアント・ジャパン社製
(シリコーン)
シリコーン1:ポリオキシアルキレンエポキシ変性ジメチルポリシロキサン、FZ-3730、東レダウコーニング社製
シリコーン2:シリコーンゴム複合粒子、KMP600、信越化学工業社製
(低応力材)
低応力材1:エポキシ化ポリブタジエン、JP-200、日本曹達社製
【0126】
(無機充填材のサイズの測定)
表3に記載の例について、無機充填材全体のd50をレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製、SALD-7000)により測定した。
【0127】
(熱硬化性樹脂組成物の粘度)
表3に記載の例で得られた熱硬化性樹脂組成物の粘度を、E型粘度計(東機産業社製、TVB-10)に3°×R7.7型コーンを装着し、25℃で2.5rpmの条件により測定した。
【0128】
(ガラス転移温度(Tg)、線膨張係数)
各例で得られた熱硬化性樹脂組成物を、成形温度175℃、3分、PMC175℃、4時間の条件で圧縮成形し、硬化物を得た。
TMA(日立ハイテクノロジーズ社製、TMA6100)にて、昇温速度:10℃/minにて、30℃から350℃までの温度範囲の測定により硬化物のガラス転移温度および線膨張係数を測定した。各表において、Tg以下の温度領域の硬化物の線膨張係数をCTE1とも記載する。
【0129】
(評価)
各例で得られた熱硬化性樹脂組成物について、以下の方法で評価用試料を作製し、評価した。
【0130】
(成形性)
各例で得られた熱硬化性樹脂組成物を第2封止層の形成に用いた。
まず、第1の熱硬化性樹脂組成物を175℃/180秒の条件で、圧縮成形機を用いて成形し、240mm×70mmの成形物を得た。ここで、第1の熱硬化性樹脂組成物には、住友ベークライト社製、スミコン(登録商標)EME-G700H Type Cを使用した。
得られた成形物に、各例で得られた熱硬化性樹脂組成物の硬化物が積層された成形物を得た。製造方法および条件は以下の通りである。
実施例1:表1に記載の配合にて、作製したシート状封止材について、圧縮成形機を用いて、先に作製した第1の熱硬化組成物を基板に見立て、成型厚50μm、175℃/180秒で圧縮成形を実施した。
実施例2、3:表2に記載の配合にて、作製した顆粒状封止材について、圧縮成形機を用いて、先に作製した第1の熱硬化組成物を基板に見立て、成型厚100μm、175℃/180秒で圧縮成形を実施した。
実施例4:表3に記載の配合にて、作製した液状封止材について、圧縮成形機を用いて、先に作製した第1の熱硬化組成物を基板に見立て、成型厚100μm、175℃/180秒で圧縮成形を実施した。
【0131】
得られた成形物を観察し、以下の判断基準で評価した。
◎:内部ボイド、外部ボイドともになし
○:内部ボイドが観察されるが、外部ボイドなし
△:外部ボイドが観察される
×:未充填がある
【0132】
(反り)
表3に記載の例で得られた熱硬化性樹脂組成物を第2封止層の形成に用いた。
まず、第1の熱硬化性樹脂組成物を175℃/180秒の条件で、圧縮成形機を用いて成形し、240mm×70mmの成形物を得た。ここで、第1の熱硬化性樹脂組成物には、住友ベークライト社製、スミコン(登録商標)EME-G700H Type Cを使用した。
得られた成形物に、175℃/180秒の条件で圧縮成形で成形し、第2封止層が積層された成形物を得た。得られた成形物の反りの大きさを基準面からの成形物の下端までの高さで評価した。評価基準を以下に示す。
○:高さが5mm以下
△:高さが5mm超10mm以下
×:高さが10mmを超える
【0133】
(メッキ性)
各例で得られた樹脂組成物を150℃の条件で成形硬化し硬化物を得た。得られた硬化物の表面に、YAGレーザー(波長1064nm)を照射し、無電解銅メッキを実施して、そのレーザー照射領域におけるメッキ付き性について、以下の判断基準で評価した。
◎:めっき表面にムラなし
○:めっき表面に多少のムラが見えるがめっき未着部分はなし
△:めっき表面にムラが見えるがめっき未着部分はなし
×:めっき表面にひどいムラが見えめっき未着部あり
【0134】
(L/S)
上述のめっき付き性評価と同様にして、成形物を作成し、得られた樹脂成形物の表面に対して、YAGレーザー(波長1064nm)を照射し、それぞれのライン幅の回路を作成し、導通のとれたもので最も狭ピッチのものを各表中に、それぞれの例の結果として記載した。
評価水準は、L/S=20、30、40、50、75、100および200μmの7水準とした。
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【符号の説明】
【0138】
10 薄膜インダクタ
12、38 軟磁性薄膜
13 絶縁層
14 MID回路
15、34 開口部
16、36 銅層
32 MID膜
100 半導体装置
101 基板
103 半導体素子
105 第1封止層
107 第2封止層
109 リードフレーム
110 半導体装置
111 第2封止層
図1
図2
図3
図4
図5