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  • 特許-紡糸口金の製造方法 図1
  • 特許-紡糸口金の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】紡糸口金の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01D 4/00 20060101AFI20241001BHJP
   D01D 4/08 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
D01D4/00 B
D01D4/08 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020091122
(22)【出願日】2020-05-26
(65)【公開番号】P2021188142
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】兼森 康宜
(72)【発明者】
【氏名】船越 祥二
【審査官】山下 航永
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第202369684(CN,U)
【文献】特開2010-084303(JP,A)
【文献】特開2009-174076(JP,A)
【文献】特開2016-188454(JP,A)
【文献】特開2011-195989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00 - 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路が形成された1枚以上の分配板と吐出板とがポリマ紡出方向の下流に向かい順に配置され、ポリマ吐出面から観察して一方向に延存する紡糸口金を製造する方法であって、
1枚の前記分配板、または、2枚以上の前記分配板が重ねられた積層体の少なくとも一方の面に、ポリマ紡出方向に延びる流路を有する補助分配板が重ねられた部分分配板を複数用意し、
次いで、1つ以上の前記部分分配板の少なくとも一方の前記補助分配板に、そのポリマ紡出方向の厚みを薄くする加工を施して、全ての部分分配板のポリマ紡出方向の厚みの差を0.009mm以下にし、
次いで、前記複数の部分分配板を、前記紡糸口金の延在する方向に並べ、
次いで、並べられた前記複数の部分分配板に前記吐出板を重ねる、紡糸口金の製造方法。
【請求項2】
流路が形成された1枚以上の分配板と吐出板とがポリマ紡出方向の下流に向かい順に配置され、ポリマ吐出面から観察して一方向に延存する紡糸口金を製造する方法であって、
1枚の前記分配板、または、2枚以上の前記分配板が重ねられた積層体の少なくとも一方の面に、ポリマ紡出方向に延びる流路を有する補助分配板が重ねられた部分分配板を複数用意し、
次いで、前記複数の部分分配板を、前記紡糸口金の延在する方向に並べ、
次いで、1つ以上の前記部分分配板の少なくとも一方の前記補助分配板に、そのポリマ紡出方向の厚みを薄くする加工を施して、全ての部分分配板のポリマ紡出方向の厚みの差を0.009mm以下にし、
次いで、並べられた前記複数の部分分配板に前記吐出板を重ねる、紡糸口金の製造方法。
【請求項3】
前記部分分配板が、1枚の前記分配板、または、2枚以上の前記分配板が重ねられた積層体の両面に前記補助分配板が重ねられている、請求項1または2の紡糸口金の製造方法。
【請求項4】
前記部分分配板の両方の前記補助分配板に、そのポリマ紡出方向の厚みを薄くする加工を施す、請求項3の紡糸口金の製造方法。
【請求項5】
前記ポリマ紡出方向の厚みを薄くする加工が研削加工である、請求項1~4のいずれかの紡糸口金の製造方法。
【請求項6】
前記分配板と前記補助分配板とが接合されている、請求項1~5のいずれかの紡糸口金の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紡糸口金の製造方法と、その方法によって製造された紡糸口金に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な繊維ウェブを製造するための紡糸口金は、矩形の長辺方向に延在した形状であり、多数のノズル孔が穿孔されている。近年は、この紡糸口金自体を広幅化することにより、生産性の向上が図られており、例えば、スパンボンドの大手設備メーカであるライフェンホイザー社(ドイツ)では、幅5.2mの紡糸機を2017年4月にプレスリリースしている点からも、幅3m以上の超大型の紡糸口金が主流となりつつある。
【0003】
そのような中、幅3m以上もあるような非常に幅の広い紡糸口金を製作する場合には、高額な長尺加工機が必要となるため、口金の製作費用が高額となる。また、このような長尺加工機では、1つの口金を製作するのに非常に長い時間が必要となる。そこで、幅方向に延存する紡糸口金を複数個に分割して製作し、それらを並べる紡糸口金の検討が進められている。しかし、その際の問題としては、分割して製作した紡糸口金の厚みが各々均一でないことから、ポリマ漏れの懸念がある。特に、複数成分のポリマを用いた複合紡糸用の紡糸口金では、紡糸口金が複数枚のプレートの積層により構成されており、これを分割した場合には、個々のプレート間での板厚み差が生じることから、ポリマ漏れの懸念が更に顕著となる。
【0004】
そこで、特許文献1では、矩形の長尺の紡糸口金では無いものの、紡糸口金と、紡糸口金を保持するための口金ホルダーを複数個に分割し、紡糸口金と口金ホルダーとから構成される部材を複数個並べて配置することが開示されている。この構成とすることにより、個別の口金ホルダー毎に紡糸口金を組み立てることができ、ポリマ漏れを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-84303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、上述のように、分割した口金ホルダー毎に紡糸口金を構成することにより、課題のポリマ漏れを解決する方法が開示されているが、この方法を、繊維ウェブを製造する矩形の紡糸口金に適用した場合には、以下の1)~3)の問題が発生し得る。なお、特許文献1を矩形の紡糸口金に適用した場合は、口金ホルダーが吐出板(吐出板の下面に吐出孔が穿孔されており、ポリマを吐出)に該当する。
【0007】
1) 吐出板の下面に段差が生じるため、口金清掃時(ヘラによる吐出面を清掃)に段差部にポリマが堆積し、糸切れの要因となり、生産性が低化する。
【0008】
2) 吐出板が分割されているため、微小なポリマ漏れが生じた場合には、吐出面にポリマが堆積し、糸切れの要因となり、生産性が低化する。
【0009】
3) 吐出板の分割線上の近傍には、吐出孔が配置できないため、紡糸口金に配置できる吐出孔の数が少なくなり、生産性が低化する。特に、分割された吐出板の外周をボルトで締結する場合には、そのスペースの分だけ吐出孔の数が少なくなる。繊維ウェブを製造するための紡糸口金は、幅1m当たりに数千個の吐出孔が配置されているため、吐出孔が配置できないスペースが大きいと、吐出孔の個数が大幅に減少して、生産性が大きく低下する。
【0010】
また、特許文献1には、分割口金を製作する具体的な方法は開示されていない。
【0011】
そこで、本発明は、安価に導入できる汎用加工機を用いて分割型の矩形の紡糸口金を製造する方法において、ポリマ漏れが無く、多数の吐出孔を配置できる生産性の高い紡糸口金を製造する方法と、その方法で製造された紡糸口金を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)上記課題を解決する本発明の紡糸口金の製造方法は、流路が形成された1枚以上の分配板と吐出板とがポリマ紡出方向の下流に向かい順に配置され、ポリマ吐出面から観察して一方向に延存する紡糸口金を製造する方法であって、
1枚の上記分配板、または、2枚以上の上記分配板が重ねられた積層体の少なくとも一方の面に、ポリマ紡出方向に延びる流路を有する補助分配板が重ねられた部分分配板を複数用意し、
次いで、1つ以上の上記部分分配板の少なくとも一方の上記補助分配板に、そのポリマ紡出方向の厚みを薄くする加工を施して、全ての部分分配板のポリマ紡出方向の厚みを同じにし、
次いで、上記複数の部分分配板を、上記紡糸口金の延在する方向に並べ、
次いで、並べられた上記複数の部分分配板に上記吐出板を重ねる。
【0013】
(2)上記課題を解決する本発明のもう1つの紡糸口金の製造方法は、流路が形成された1枚以上の分配板と吐出板とがポリマ紡出方向の下流に向かい順に配置され、ポリマ吐出面から観察して一方向に延存する紡糸口金を製造する方法であって、
1枚の上記分配板、または、2枚以上の上記分配板が重ねられた積層体の少なくとも一方の面に、ポリマ紡出方向に延びる流路を有する補助分配板が重ねられた部分分配板を複数用意し、
次いで、上記複数の部分分配板を、上記紡糸口金の延在する方向に並べ、
次いで、1つ以上の上記部分分配板の少なくとも一方の上記補助分配板に、そのポリマ紡出方向の厚みを薄くする加工を施して、全ての部分分配板のポリマ紡出方向の厚みを同じにし、
次いで、並べられた上記複数の部分分配板に上記吐出板を重ねる。
【0014】
本発明の紡糸口金の製造方法は、以下の(3)~(6)の少なくとも1つを満たすことが好ましい。
(3)上記部分分配板が、1枚の上記分配板、または、2枚以上の上記分配板が重ねられた積層体の両面に上記補助分配板が重ねられている。
(4)上記部分分配板の両方の上記補助分配板に、そのポリマ紡出方向の厚みを薄くする加工を施す。
(5)上記ポリマ紡出方向の厚みを薄くする加工が研削加工である。
(6)上記分配板と上記記補助分配板とが接合されている、
(7)上記課題を解決する本発明の紡糸口金は、流路が形成された1枚以上の分配板と吐出板とがポリマ紡出方向の下流に向かい順に配置され、ポリマ吐出面から観察して一方向に延存する紡糸口金であって、
1枚の上記分配板、または、2枚以上の上記分配板が重ねられた積層体の少なくとも一方の面に、ポリマ紡出方向に延びる孔を有する補助分配板が重ねられた部分分配板であって、ポリマ紡出方向の厚みが同じ複数の部分分配板が、上記紡糸口金の延在方向に並んで構成されている。
【0015】
本発明の紡糸口金は、以下の(8)および/または(9)を満たすことが好ましい。
(8)上記部分分配板が、1枚の上記分配板、または、2枚以上の上記分配板が重ねられた積層体の両面に上記補助分配板が重ねられている。
(9)上記分配板と上記補助分配板とが接合されている。
【0016】
本発明における各用語の意味を以下に列記する。
「ポリマ紡出方向」とは、ポリマを紡糸口金から吐出する主方向をいう。
「長辺方向」とは、紡糸口金の吐出面に多数のノズル孔が配設された略矩形域の辺が長い方向をいう。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、安価に導入できる汎用加工機を用いて分割型の矩形の紡糸口金を製造する方法において、ポリマ漏れが無く、多数の吐出孔を配置できる生産性の高い紡糸口金を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の紡糸口金を構成する概略断面図である。
図2】本発明の紡糸口金の一部である部分分配板を製造する工程の例であり、その部分分配板の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の紡糸口金の製造方法について詳細に説明する。図1は、本発明の紡糸口金の概略断面図であり、図2はその一部分である部分分配板5を製造する工程の例である。なお、これらは、本発明の要点を正確に伝えるための概念図であり、図を簡略化しており、スピンブロック4の数、分配板2の数、部分分配板5の数、ノズル孔8の数、ならびにその寸法比などは実施の形態に合わせて変更できる。
【0020】
本発明の紡糸口金1は、図1に示すように、長辺方向に延存した矩形の形状を有しており、スピンブロック4の下方(ポリマ紡出方向の下流側)に固定され、その長辺方向に複数個並べられた部分分配板5と、部分分配板5のポリマ紡出方向の下流に位置し、長辺方向に分割がされていない吐出板3とから構成されている。スピンブロック4と部分分配板5との間には計量板等(図示は無し)の流路部材が挿入されていてもよい。また、吐出板3には、ポリマを吐出するためのノズル孔8が形成されている。
【0021】
部分分配板5は、分配板2と、分配板2のポリマ紡出方向の両面に配設された2枚の補助分配板6とから構成され、ポリマを通過させる流路として、分配板2には流路9が、補助分配板6には流路13が形成されている。補助分配板6は、分配板2のポリマ紡出方向のどちらか一方の面のみに配設されていてもよい。また、分配板2は1枚でも、または2枚以上が重ねられて構成されていてもよい。分配板2が2枚以上重ねられて構成されている場合は、その重ねられた積層体のポリマ紡出方向の少なくとも一方の面に補助分配板6が配設される。分配板2と補助分配板6とは、位置決めピンにより、お互いの流路が合うように位置決めを行い、ネジ、ボルト等により一体で固定してもよく、または溶接してもよく、熱圧着により金属接合(拡散接合)させてもよい。
【0022】
ここで、スピンブロック4に導かれたポリマは、スピンブロック4から部分分配板5の流路9、流路13を通過し、吐出板3のノズル孔8に導かれ、吐出面12から吐出される。その後、冷却工程(図示せず)を経て、糸条として巻き取とられる。あるいは、捕集ネット上に重ね広げられ繊維ウェブを形成する。
【0023】
紡糸口金1は、2成分以上のポリマを用いる複合紡糸用の紡糸口金であっても、単成分ポリマを用いる単成分用であってもよい。複合紡糸用の紡糸口金1の場合、ポリマを微細に分配する必要があるため、複数枚の分配板2を積層して構成することが多い。この複数枚の分配板2を積層した積層体を長辺方向に複数個並べた場合には、個々の分配板2同士の厚みの差が、分配板2を積層することでより大きな厚みの差となり、個々の積層体の厚みの差は大きくなりがちである。そのため、複合紡糸用の紡糸口金を製造する際に、本発明の紡糸口金の製造方法は、より顕著な効果が期待できる。
【0024】
次に、本発明の紡糸口金の製造方法について説明する。本発明の製造方法は、図2(a)から(d)までの4つの製造工程を順に経て製作する。
【0025】
まず初めに、図2(a)に示すように、長辺方向に前もって分割した複数個の分配板2を製作する。この分配板2には、ポリマを精度よく分配するため、孔または溝、もしくは孔と溝の双方から構成する流路9を、精度よく加工する。その加工方法は、ドリル加工や金属精密加工である旋盤であってもよく、マシニング、プレス、レーザー、放電加工を用いてもよく、またはエッチング加工を用いてもよい。また、複数枚の分配板2を積層した積層体を1つの厚い分配板にしてもよい。分配板2が複数枚にて構成されている方が積層後の分配板の総厚みの誤差が大きくなる場合があるため、本発明の紡糸口金の製造方法によるポリマシール性の向上の効果がより顕著に現れる。なお、図2に図示されている分配板2は、製造過程を分かり易くするため、実際よりも極端に厚みの差を大きくして図示されている。
【0026】
次いで、図2(b)に示すように、分割された分配板2の最上面10と最下面11に、補助分配板6を重ねる。なお、分配板2の最上面10と最下面11の両面に補助分配板6を重ねるのが好ましいが、どちらか片面にのみ重ねてもよい。片面に重ねた場合には、加工費用を低減できる。両面に重ねた場合には、次の製造工程(図2(c))において、先に片面を研削加工することで表面粗さや反りなどの無い良好な面状態を確保し、その面を基準面として反対側に重ね合わせた補助分配板6を研削することができるため、長辺方向に個別に製作した部分分配板5の厚みを均一に加工しやすくなる。補助分配板6には、分配板2の流路9に連通する流路13が加工されているが、次の製造工程(図2(c))において、補助分配板は研削されるので、緻密な流路にしてしまうと、研削加工中に流路の寸法が変化してしまう。そのため、補助分配板6の流路13は、分配板2の複数の流路9に連通する、径の大きな流路にすることが好ましい。また、加工費用、納期を考慮すると、補助分配板6の流路13の数はできるだけ少ないことが好ましい。
【0027】
次いで、図2(c)に示すように、部分分配板5の両側、つまり分配板2のポリマ紡出方向の上流側、下流側に重ねられた補助分配板6を研削する。この際、長辺方向に連続する複数個の部分分配板5を、一つの研削機に配設し、研削することが好ましい。これにより、部分分配板5の厚みを均一にできる。部分分配板5の厚みを均一にする方法としては、前述の通り研削が好ましいが、この限りではなく、エッチング加工や、レーザー、放電加工を用いてもよい。なお、補助分配板6を重ねずに分配板2を直接研削してしまうと、分配板2に精度よく加工された流路9の寸法が変化してしまうため、ポリマの分配性が悪化する懸念がある。そのため、分配板2に重ねた補助分配板6を研削することが重要である。
【0028】
次いで、図2(d)に示すように、前の製作工程にて研削された部分分配板5を長辺方向に連続して配置する。この際に、隣り合う部分分配板5をピンによって位置決めし、ネジ、ボルト等で固定してもよい。また、隣り合う部分分配板5の分割線7において、溶接や、金属接合してもよい。
【0029】
なお、研削などの加工を施す前の部分分配板5を長辺方向に並べて固定し、固定した状態のままで研削機などに配設でき、部分分配板5の厚みを均一にする加工を施せるのであれば、上記の図2(c)と図2(d)の工程の順番は入れ替えてもよい。
【0030】
以上のように、長尺の分配板で構成せずに、部分分配板5を長辺方向に並べて構成することにより、高額な長尺加工機を必要とせず、安価に導入できる汎用加工機を用いて紡糸口金を製造できる。その上で、全ての部分分配板間の板厚みを同じにすることが出来るため、長辺方向に分割されていない吐出板3を使用しても、長尺の分配板を分割した時の大きな課題である、ポリマ漏れを抑制できる。そのため、前述の特許文献1における1)、2)の生産性の低化を回避できる。
【0031】
さらには、吐出板に分割線が存在せず、多数のノズル孔が配置されている略矩形域内にボルト用のスペースを設ける必要がなくなるため、前述の特許文献1における3)のような問題もなく、ノズル孔を多数配置できることから生産性を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、一般的な溶融紡糸法に用いられる紡糸口金の製造方法に限らず、ポリマ以外の液体を通液するための口金の製造方法にも応用できるが、その応用範囲が、これらに限られるものではない。
【実施例
【0033】
以下実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
【0034】
[実施例1]
ポリマ紡出方向から観察した大きさが600mm×300mmで、厚みが11mmの分配板を5つ製作した。そして各分配板の両方の面に厚さ5mmの補助分配板を接合し、厚さ21mmの部分分配板を5つ製作した。各分配板と各補助分配板に厚みの製作誤差があるため、製作した5つの部分分配板の厚みの差は最大で0.193mmあった。
【0035】
製作した5つの部分分配板を、600mmの辺が長尺方向となるように並べて一つの研削機に配設した。そして、各部分分配板の厚みを20mmにすることを目標として、各面の補助分配板をそれぞれ0.5mmずつ研削した。研削加工を施した各部分分配板の厚みの差は最大で0.009mmで無視できる程度であり、各部分分配板の厚みはほぼ均一になった。
【0036】
研削加工を施した5つの部分分配板を並べたもののポリマ紡出方向の上流側の面に、長辺方向に分割されていないスピンブロックを、ポリマ紡出方向の下流側の面に、長辺方向に分割されていない吐出板を組み付けて紡糸口金を構成した。この紡糸口金にポリマを流入させ、ノズル孔からポリマ流を吐出させたところ、ポリマ漏れは観察されなかった。
【0037】
[比較例1]
ポリマ紡出方向から観察した大きさが600mm×300mmで、厚みが20mmの分配板を5つ製作した。各分配板に厚みの製作誤差があるため、5つの部分分配板の厚みの差は最大で0.182mmあった。
【0038】
製作した5つ分配板を、600mmの辺が長尺方向となるように並べて、この並べた分配板のポリマ紡出方向の上流側の面に、長辺方向に分割されていないスピンブロックを、ポリマ紡出方向の下流側の面に、長辺方向に分割されていない吐出板を組み付けて紡糸口金を構成した。この紡糸口金にポリマを流入させ、ノズル孔からポリマ流を吐出させたところ、ポリマ漏れが発生した。
【0039】
実施例1と比較例1の結果を表1にまとめた。
【0040】
【表1】
【符号の説明】
【0041】
1 紡糸口金
2 分配板
3 吐出板
4 スピンブロック
5 部分分配板
6 補助分配板
7 分割線
8 ノズル孔
9 流路
10 最上面
11 最下面
12 吐出面
13 流路
図1
図2