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特許7562991蓄電池監視装置及び蓄電池監視装置の保守方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】蓄電池監視装置及び蓄電池監視装置の保守方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/44 20060101AFI20241001BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241001BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20241001BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20241001BHJP
   G01R 31/371 20190101ALI20241001BHJP
【FI】
H01M10/44 P
H02J7/00 U
G01R31/367
G01R31/382
G01R31/371
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020091187
(22)【出願日】2020-05-26
(65)【公開番号】P2021190182
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 広和
(72)【発明者】
【氏名】紀平 裕也
(72)【発明者】
【氏名】春木 一夫
(72)【発明者】
【氏名】綿野 伊吹
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-146991(JP,A)
【文献】特開2014-072931(JP,A)
【文献】特開2015-181327(JP,A)
【文献】特開2013-009531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
G01R 31/327-31/34
G01R 31/36-31/396
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列及び/又は並列に接続された複数の蓄電池に取り付けられる複数の監視ユニットと、
前記複数の監視ユニットと無線通信接続が可能な管理ユニットと、を備え、
前記管理ユニットは、
予め記憶してある前記複数の監視ユニットの識別情報を順次選択し、
選択した監視ユニットとの間の通信を確立すべく、選択した監視ユニットの識別情報を含む接続リクエストメッセージを、無線通信を介して前記複数の監視ユニットへ送信し、
前記管理ユニットは更に、一の監視ユニットが他の監視ユニットに交換された際に、無線通信を介して、前記他の監視ユニットの識別情報を前記一の監視ユニットの識別情報に更新する、蓄電池監視装置。
【請求項2】
前記管理ユニットは、タッチパネル表示部を備え、前記タッチパネル表示部に、前記他の監視ユニットの識別情報の前記一の監視ユニットの識別情報への更新を受付ける受付画面が表示される、請求項1に記載の蓄電池監視装置。
【請求項3】
前記他の監視ユニットは、前記管理ユニットによる更新の前には、前記識別情報として監視ユニット初期IDを有する、請求項1又は2に記載の蓄電池監視装置。
【請求項4】
前記管理ユニットは、当該管理ユニットにネットワーク接続された端末から、前記他の監視ユニットの識別情報の前記一の監視ユニットの識別情報への更新を受付ける、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蓄電池監視装置。
【請求項5】
前記管理ユニットは、前記複数の蓄電池で構成される蓄電システムの動作を監視しながら、交換作業に伴う前記監視ユニットの識別情報の更新を行う、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の蓄電池監視装置。
【請求項6】
直列及び/又は並列に接続された複数の蓄電池に取り付けられる複数の監視ユニットと、前記複数の監視ユニットと無線通信接続が可能な管理ユニットと、を備える蓄電池監視装置の保守方法であって、
一の監視ユニットを他の監視ユニットに交換し、
前記管理ユニットが備えるタッチパネルにて前記他の監視ユニットの識別情報を選択して前記管理ユニットと前記他の監視ユニットとの通信を確立し、
前記管理ユニットが備えるタッチパネルにて、無線通信を介して、前記他の監視ユニットの識別情報を前記一の監視ユニットの識別情報に更新する、蓄電池監視装置の保守方法。
【請求項7】
前記管理ユニットは、前記複数の蓄電池で構成される蓄電システムの動作を監視しながら、交換作業に伴う前記監視ユニットの識別情報の更新を行う、請求項6に記載の蓄電池監視装置の保守方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池監視装置及び蓄電池監視装置の保守方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、蓄電システムにおいて、中継盤が、上位の電力制御装置と下位の各蓄電池盤とに通信接続されることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6135767号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一態様は、無線通信を用いた蓄電池監視装置及びその保守方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る蓄電池監視装置は、直列及び/又は並列に接続された複数の蓄電池に取り付けられる複数の監視ユニットと、前記複数の監視ユニットと無線通信接続が可能な管理ユニットと、を備え、前記管理ユニットは、予め記憶してある前記複数の監視ユニットの識別情報を順次選択し、選択した監視ユニットとの間の通信を確立すべく、選択した監視ユニットの識別情報を含む接続リクエストメッセージを、無線通信を介して前記複数の監視ユニットへ送信する。前記管理ユニットは更に、無線通信を介して、一の監視ユニットが他の監視ユニットに交換された際に、前記他の監視ユニットの識別情報を前記一の監視ユニットの識別情報に更新する。
【0006】
本発明の他の一態様に係る直列及び/又は並列に接続された複数の蓄電池に取り付けられる複数の監視ユニットと、前記複数の監視ユニットと無線通信接続が可能な管理ユニットと、を備える蓄電池監視装置の保守方法は、一の監視ユニットを他の監視ユニットに交換し、前記管理ユニットが備えるタッチパネルにて前記他の監視ユニットの識別情報を選択して前記管理ユニットと前記他の監視ユニットとの通信を確立し、前記管理ユニットが備えるタッチパネルにて、無線通信を介して、前記他の監視ユニットの識別情報を前記一の監視ユニットの識別情報に更新する。
【発明の効果】
【0007】
上記態様により、一の監視ユニット(例えば故障した監視ユニット)が他の監視ユニット(例えば予備の監視ユニット)に交換された際、識別情報の更新を容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】蓄電池監視装置の概要を示す図である。
図2】コントロールユニットの構成を示すブロック図である。
図3】コントロールユニットとセンサユニットとの間の通信を示す概略図である。
図4】Webブラウザ上の遠隔監視画面を示す図である。
図5】コントロールユニットにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6】センサユニットにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7】通信手順を示す概略図である。
図8】蓄電池監視装置のメニュー画面を示す図である。
図9】センサユニットの識別情報更新のための画面を示す図である。
図10】センサユニットの識別情報更新のための画面を示す図である。
図11】センサユニットの識別情報更新のための画面を示す図である。
図12】センサユニットの識別情報更新のための画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
蓄電システムでは、多数の蓄電池が直列及び/又は並列に接続される。数百個の蓄電池で構成される大規模な蓄電システムもある。大規模な蓄電システムにおいて個々の蓄電池を遠隔監視することに対するニーズが高まっている。そのような蓄電池監視の実現のために、蓄電池それぞれに取り付けられた複数の監視ユニットと、それら監視ユニットからデータを取得する管理ユニットとを有線接続すると、ネットワーク敷設コストがかさんでしまう。
ワイヤリングコスト及び通信コストを低減しながら、蓄電池の遠隔監視を実現できる技術が求められている。
【0010】
近距離無線通信規格の中では、IoT用途で、Bluetooth Low Energyが注目されている(以下、BLEという)。BLEにより、安価に無線通信を行うことができる。
【0011】
以下、図面を参照しながら、蓄電池監視装置の実施形態(鉛蓄電池監視装置)を説明する。図1に示す鉛蓄電池監視装置は、直列及び/又は並列に接続された複数の鉛蓄電池1のそれぞれに取り付けられる複数のセンサユニット(監視ユニット)20と、複数のセンサユニット20と無線通信接続が可能なコントロールユニット(管理ユニット)10とを備える。
【0012】
ここで、複数の鉛蓄電池1が直列に接続されたものをバンクと称し、複数のバンクが並列に接続されたものをドメインと称してもよい。
【0013】
コントロールユニット10と、複数のセンサユニット20とは、監視対象である複数の鉛蓄電池を格納している蓄電池盤に設置されてもよい。例えば、蓄電池盤の開閉蓋の内側に、コントロールユニット10が取り付けられる。複数のセンサユニット20は、蓄電池盤内に並べられる複数の鉛蓄電池1の上にそれぞれ設置される。
【0014】
コントロールユニット10は、Webサーバ機能を有し、ネットワーク接続されたコンピュータ(PC)や、タブレット等の端末によるアクセスを受け付けてもよい。
【0015】
図2は、コントロールユニット10の構成を示すブロック図である。コントロールユニット10は、制御部100、記憶部110、表示部30、操作部40、第1通信部51、第2通信部52、第3通信部53を備える。
【0016】
制御部100は、プロセッサを有しており、記憶部110に記憶してあるプログラムに基づいて第1通信部51、第2通信部52、第3通信部53を制御する。
【0017】
記憶部110は、不揮発性メモリを用いる。記憶部110は予めプログラムを記憶する。記憶部110は、後述のメニュー画面での操作によって設定された内容を記憶する。記憶部110は、制御部100によって取得される蓄電池情報を記憶する。
【0018】
表示部30は、例えば液晶パネルである。操作部40は、液晶パネルに内蔵されるタッチパネルである。操作部40は物理ボタンを含んでもよい。
【0019】
第1通信部51は、センサユニット20と無線通信接続を実現する無線通信モジュールである。コントロールユニット10は、第1通信部51によって複数のセンサユニット20と通信接続する。第1通信部51は、BLEによって通信を実現する。第2通信部52は、図1に示した顧客(鉛蓄電池1によるバックアップ電源などの蓄電システムを所有する顧客)のネットワークと接続するための接続モジュールであって、例えば有線LANに対応するネットワークカードである。第3通信部53は、ネットワーク接続されたコンピュータ(PC)や、タブレット端末との通信接続を可能とする通信モジュールである。第3通信部53は例えばUSB(Universal Serial Bus)である。
【0020】
図3は、コントロールユニット10とセンサユニット20との間の通信を示す概略図である。コントロールユニット10から複数のセンサユニット20に同報送信されるメッセージには、特定のセンサユニット20の識別情報が含まれている。
メッセージは、MACアドレス格納部と、メッセージ本体とを含んでもよい。MACアドレス格納部に、特定のセンサユニット20の識別情報を格納してもよい。
【0021】
コントロールユニット10は、Webサーバ機能を有し、複数の鉛蓄電池1の全体的な状態を表すアイコンを含む画面表示用の画面データを作成する。
【0022】
図4は、コントロールユニット10にネットワーク接続されたWebブラウザ端末に表示される遠隔監視画面の例を示す。遠隔監視画面は、全体ステータスのアイコンと、蓄電池電圧状態のアイコンと、蓄電池内部抵抗状態のアイコンと、を含む。
【0023】
全体ステータスのアイコンとして、「正常」を示すアイコンのほか、「注意」を示すアイコンや、「警告」を示すアイコンが用意されてもよい。蓄電池電圧状態のアイコンと蓄電池内部抵抗状態のアイコンについても、同様に、「注意」や「警告」を示すアイコンが用意されてもよい。
【0024】
上述の鉛蓄電池監視装置では、コントロールユニット10から複数のセンサユニット20に同報送信されるメッセージに、特定のセンサユニット20の識別情報を含め、その識別情報を用いて、コントロールユニット10と当該特定のセンサユニット20との間の通信を確立する。
そのため、複数のバンクを含むドメインの形態の蓄電池群を持つ蓄電システムのように、数百個の鉛蓄電池1に付随する数百個のセンサユニット20が設けられる場合でも、それらセンサユニット20から順次、コントロールユニット10で監視データを確実に取得できる。
【0025】
鉛蓄電池監視装置では、センサユニット20と、コントロールユニット10とが、同一の蓄電池盤に設置される。監視装置を備えていない既設の蓄電池盤にも、比較的容易に、この鉛蓄電池監視装置を取り付ける(後付けする)ことが可能である。
【0026】
センサユニット20は、当該センサユニット20が接続されている鉛蓄電池1の電圧、内部抵抗、及び温度、の監視データを、コントロールユニット10に無線送信する。そのため、鉛蓄電池1の健康状態(SOH)を監視できる。
【0027】
コントロールユニット10は、複数の鉛蓄電池1の監視データ(数値データ)について、閾値との比較や、統計処理を行って、全体的な状態を決定してもよい。
コントロールユニット10にLAN接続する端末のWebブラウザにて、鉛蓄電池1の遠隔監視を行うことができる。複数の鉛蓄電池1の全体的な状態を表すアイコンにより、蓄電システムの状態の把握が容易になる。
【0028】
図5は、コントロールユニット10における処理手順の一例を示すフローチャートである。コントロールユニット10は、所定のタイミングで(例えば1日に1回)、バンク単位で以下の処理を実行する。コントロールユニット10は、全てのバンクについて順に処理を実行する。コントロールユニット10は、内蔵するメモリに、以下の処理を実行するタイミング、接続対象のセンサユニット20の識別情報を記憶している。
【0029】
コントロールユニット10は、センサユニット20の識別情報を1つ選択する(ステップS201)。コントロールユニット10は、選択した識別情報を含む接続リクエストメッセージをBLEによって送信し(ステップS202)、選択した識別情報のセンサユニット20との通信接続(ペアリング)が確立したか否かを判断する(ステップS203)。通常の監視時(計測時)とは別のタイミングで、コントロールユニット10から接続リクエトを送信することもあるが、この点については後述する。
【0030】
ステップS203において通信接続が確立したと判断した場合(S203:YES)、コントロールユニット10は、計測リクエストを、通信接続しているセンサユニット20へ送信し(ステップS204)、計測リクエストに応じて計測して得られる監視データを受信できたか否か判断する(ステップS205)。
【0031】
監視データを受信できたと判断された場合(S205:YES)、コントロールユニット10は、スリープ指示を、通信接続しているセンサユニット20へ送信し(ステップS206)、通信接続を切断し(ステップS207)、処理を次のステップS208へ進める。
【0032】
コントロールユニット10は、対象バンクに含まれる全てのセンサユニット20の識別情報を選択したか否かを判断する(ステップS208)。全て選択していないと判断された場合(S208:NO)、コントロールユニット10は、処理をステップS201へ戻し、次のセンサユニット20の識別情報を選択する。
【0033】
全て選択したと判断された場合(S208:YES)、コントロールユニット10は、バンクに対する処理を終了する。
【0034】
ステップS203にて確立していないと判断された場合(S203:NO)、コントロールユニット10は、処理をステップS203へ戻して待機する。コントロールユニット10は、所定待機時間で所定回数試行し、通信確立ができなかった場合、処理をステップS207へ進める。
【0035】
ステップS205で受信できないと判断された場合(S205:NO)、
コントロールユニット10は、処理をステップS205へ戻して待機する。
コントロールユニット10は、所定待機時間で所定回数試行し、データを受信できなかった場合、処理をステップS207へ進める。
【0036】
図6は、センサユニット20における処理手順の一例を示すフローチャートである。センサユニット20は、例えば2秒又は3秒毎と間欠的に、スリープ状態からBLEの通信デバイスを起動させ(ステップS301)、自身への接続リクエストを受信できたか否かを判断する(ステップS302)。
【0037】
接続リクエストを受信できなかったと判断された場合(S302:NO)、センサユニット20は、再度スリープ状態へ遷移し(ステップS303)、処理を終了する。
【0038】
ステップS302で接続リクエストを受信できたと判断された場合(S302:YES)、センサユニット20は全体を起動し(ステップS304)、計測リクエストを受信したか否かを判断する(ステップS305)。計測
リクエストを受信したと判断された場合(S305:YES)、センサユニ
ット20は、自装置が取り付けられている鉛蓄電池における電圧、内部抵抗、及び、温度の監視データを計測する(ステップS306)。センサユニット20は、計測によって得られた監視データを、計測リクエストに対する応答としてコントロールユニット10へ送信する(ステップS307)。
【0039】
センサユニット20は、スリープ指示を受信したか否かを判断し(ステップS308)、受信したと判断した場合、スリープ状態へ遷移し(ステップS303)、処理を終了する。
【0040】
センサユニット20は、ステップS305で計測リクエストを受信できなかったと判断された場合(S305:NO)、処理をステップS305へ戻して待機する。センサユニット20は、所定待機時間で所定回数試行し、計測リクエストを受信できなかった場合、処理をステップS303へ進める。
【0041】
センサユニット20は、ステップS308でスリープ指示を受信できなかったと判断された場合(S308:NO)、処理をステップS308へ戻して待機する。センサユニット20は、所定待機時間で所定回数試行し、スリープ指示を受信できなかった場合、処理をステップS303へ進める。
【0042】
図7は、通信手順を示す概略図である。コントロールユニット10が図5のフローチャートに示した手順を実行し、センサユニット20がそれに応じて図6のフローチャートに示した手順を実行することによるセンサユニット20における起動時間が示されている。図7に示すように、センサユニット20は、BLEの通信デバイスで接続リクエストを受信できたか否かを間欠的に判断し、受信できたときのみ当該センサユニットが取り付けられている鉛蓄電池1の監視データを計測し、計測した監視データをコントロールユニット10に無線送信している。
【0043】
図8は、コントロールユニット10の表示部30に表示されるメニュー画面を示している。メニュー画面は、「1.現在の状態」、「2.計測画面」、「3.現在警報」、「4.履歴表示」、「5.グラフ表示」、「6.各種設定」、「7.システム情報」、「8.警報出力設定確認」、「9.データ保存」といった表示(アイコン)を有する。「画面OFF」の表示(アイコン)を有してもよい。
【0044】
鉛蓄電池監視装置は、各種の異常が発生した際に、警報を発する。具体的には、センサユニット20により監視される鉛蓄電池1の電圧及び内部抵抗に加え、鉛蓄電池1の温度(鉛蓄電池1の近傍に設置された温度センサにて検出される温度)が、異常な値を示す場合に、鉛蓄電池監視装置は警報を発する。
また、センサユニット20とコントロールユニット10との間の通信状態の異常や、センサユニット20それ自体の異常について、鉛蓄電池監視装置は警報を発する。
【0045】
図8における「3.現在警報」を選択すると、発せられている警報を確認することができる。
センサユニット20について警報が発せられて、あるセンサユニット20が故障していることが判明した場合、故障したセンサユニットは、予備のセンサユニットに交換される。予備のセンサユニットには、識別情報として、センサユニット初期IDが設定されている。予備のセンサユニットは、常に同一の初期IDを有してもよい。初期IDは例えば、「0-N/A-0」である。
【0046】
図8における「6.各種設定」を選択すると、各種設定を受付ける画面に遷移し、その画面から更に、図9に示す「センサユニット設定」の画面に遷移することができる。
【0047】
図9では、「セット番号入力」の欄に「0」と表示され、「バンク情報入力」の欄に「N/A」と表示され、電池番号入力の欄に「0」と表示されている。これらは、センサユニット20の初期IDである「0-N/A-0」を示している。
ここで、セット番号とは、コントロールユニット10の番号(例えばシリアル番号)を示す。バンク情報とは、そのコントロールユニット10により管理される複数のバンク(A、B、C、D)のうちのいずれのバンクかを示す。電池番号とは、そのバンクにおける電池の直列順位を示す。
【0048】
以下、セット番号123のコントロールユニット10により管理される、バンクAにおける、直列順位123の鉛蓄電池1に取り付けられたセンサユニット20に異常が発生し、予備のセンサユニットに取り替える場合を説明する。これは、通常の監視時(計測時)とは別のタイミングでコントロールユニット10から接続リクエストを送信する例である。
先ず、保守員(又は顧客のオペレータ)が蓄電池盤を訪れて、故障したセンサユニット20に代えて、予備のセンサユニットを鉛蓄電池1に取り付ける。この時点では、故障して取外されたセンサユニット20には識別情報として「123-A-123」が設定されていて、予備のセンサユニット20には初期IDである「0-N/A-0」が設定されている。
保守員は、警報が発せられたセンサユニットの識別情報を、取外したセンサユニットの識別情報として記憶してもよい。
【0049】
次に保守員は、コントロールユニット10の表示部に、図9に示すように、「セット番号入力」の欄に「0」、「バンク情報入力」の欄に「N/A」、電池番号入力の欄に「0」と表示されていることを確認し、「接続開始」を押す。
これによりコントロールユニット10は、接続リクエストを送信して、識別情報が「0-N/A-0」のセンサユニット20と通信接続する試みを開始する。その間、コントロールユニット10の表示部には、図10に示すような画面が表示される。
【0050】
このときの接続リクエストを、通常の監視時の接続リクエストとは区別して、ID設定リクエストと呼ぶ。
ID設定リクエストは、第一ID設定リクエスト(ID設定リクエスト0)と、第二ID設定リクエスト(ID設定リクエスト1)とを含んでもよい。コントロールユニット10が送信する第一ID設定リクエストを、識別情報が「0-N/A-0」のセンサユニット20が受信した際、そのセンサユニット20が備える表示部(LEDなどの発光部)が、第一ID設定リクエストを受信したことを周囲に知らせてもよい(例えばLEDが点灯してもよい)。これにより保守員は、鉛蓄電池1に取り付けた予備のセンサユニット20が、コントロールユニット10との通信を開始したことを確認できる。
コントロールユニット10が送信する第二ID設定リクエストを、識別情報が「0-N/A-0」のセンサユニット20が受信し、コントロールユニット10と予備のセンサユニット20との通信接続が確立されると、図11に示す画面における保守員の入力によって、予備のセンサユニットの識別情報「0-N/A-0」を、取外されたセンサユニットの識別情報「123-A-123」に更新することを受付ける。
【0051】
保守員は、図11に示す「ID設定」を押す。
これにより、予備のセンサユニットの識別情報が、「123-A-123」に更新されると、図12に示す画面に遷移する。「センサユニットID」の欄に、「123-A-123」と表示されている。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る鉛蓄電池監視装置は、直列及び/又は並列に接続された複数の鉛蓄電池1に取り付けられる複数のセンサユニット20と、それらセンサユニット20と無線通信接続が可能なコントロールユニット10と、を備える。
【0053】
コントロールユニット10は、次のステップを実行する:
予め記憶してある複数のセンサユニット20の識別情報を順次選択し、
選択したセンサユニット20との間の通信を確立すべく、選択したセンサユニットの識別情報を含む接続リクエストメッセージを複数のセンサユニット20へ送信し、
通信が確立されたセンサユニット20に監視データの計測リクエストを送信する。
【0054】
複数のセンサユニット20は夫々、接続リクエストメッセージを受信しコントロールユニット10との通信が確立された場合には、計測リクエストの受信に応じて当該センサユニット20が取り付けられている鉛蓄電池1の監視データを計測し、計測した監視データをコントロールユニット10に無線送信する。
【0055】
コントロールユニット10は更に、一のセンサユニット(識別情報が「123-A-123」のセンサユニット)が他のセンサユニット(識別情報が「0-N/A-0」のセンサユニット)に交換された際に、他のセンサユニットの識別情報「0-N/A-0」を一のセンサユニットの識別情報「123-A-123」に更新する。
ここで、識別情報の形態「123-A-123」や「0-N/A-0」は、例示であって、識別情報はこの形態に限定されず、シンプルに、センサユニット20のシリアル番号であってもよい。
【0056】
上記構成により、一のセンサユニット(例えば故障したセンサユニット)が他のセンサユニット(例えば予備のセンサユニット)に交換された際、識別情報の更新を容易に行える。
数百個の鉛蓄電池1で構成される大規模な蓄電システムを監視する場合、各鉛蓄電池1に取り付けられるセンサユニット20の数が多いことに伴いセンサユニット20の異常発生確率が高まり、センサユニット交換の頻度も高まる。上記構成により、鉛蓄電池監視装置の保守活動が著しく簡素化される。蓄電システムの動作を継続しながら(顧客への迷惑や負担を最小限にしながら)、交換作業に伴うセンサユニットの設定変更を迅速に行うことができる。通常の監視動作のときと類似した接続手順によってコントロールユニット10と予備のセンサユニット20との無線通信接続を確立して、センサユニットIDを更新し、通常の監視動作に復帰することができる。
【0057】
本実施形態に係る鉛蓄電池監視装置は、コントロールユニット10が、タッチパネル式の表示部30を備え、タッチパネル表示部30に、センサユニット20の識別情報更新を受付ける受付画面が表示される。
これにより、警報が発せられた蓄電池盤を訪れた保守員は、様々な保守装置を持参しなくても、その現場で、センサユニット20の交換と、センサユニット20の識別情報更新とを行うことができる。
【0058】
本実施形態に係る鉛蓄電池監視装置は、予備の(鉛蓄電池1に未装着の)センサユニット20が、コントロールユニット10による識別情報更新の前には、ユニークなセンサユニット初期ID「0-N/A-0」を有する。
これにより、保守活動の一部が共通化され、保守活動が更に簡素化される。現場で保守員が作業を誤ったり、センサユニット初期IDを失念したりといった事態を未然に防ぐことができる。
【0059】
上述した実施形態は例であり、本発明はこれに限定されない。用いられる無線通信の通信規格は、BLEに限定されない。蓄電池は、鉛蓄電池に限定されず、リチウムイオン電池や、その他の二次電池であってもよい。
【0060】
保守員が蓄電池盤を訪れることなく、遠隔からセンサユニット20の識別情報更新を行ってもよい。例えば、センサユニット交換は、顧客オペレータ(第一のオペレータ)に任せて、保守員(第二のオペレータ)はコントロールユニット10にネットワーク接続された端末から、センサユニット20の識別情報更新を行ってもよい。
【0061】
図9図12に示した手順は、故障したセンサユニット20を交換する場合に限らず、他の状況においてセンサユニットの識別情報更新のために実施されてもよい。例えば、新規に蓄電池監視装置を蓄電システム(電池盤など)に据え付ける際に、設定の誤りなどにより意図しない識別情報に設定されたセンサユニット20の識別情報を適正な識別情報に変更するために、この手順が実施されてもよい。
【0062】
上述した実施形態における蓄電池監視装置は、以下の構成を備える。
蓄電池監視装置は、直列及び/又は並列に接続された複数の蓄電池に取り付けられる複数の監視ユニットと、前記複数の監視ユニットと無線通信接続が可能な管理ユニットと、を備え、前記管理ユニットは、予め記憶してある前記複数の監視ユニットの識別情報を順次選択し、選択した監視ユニットとの間の通信を確立すべく、選択した監視ユニットの識別情報を含む接続リクエストメッセージを、無線通信を介して前記複数の監視ユニットへ送信し、通信が確立された前記監視ユニットに監視データの計測リクエストを送信し、前記複数の監視ユニットは夫々、前記接続リクエストメッセージを受信し前記管理ユニットとの通信が確立された場合には、前記計測リクエストの受信に応じて当該監視ユニットが取り付けられている前記蓄電池の監視データを計測し、計測した監視データを前記管理ユニットに無線送信し、前記管理ユニットは更に、無線通信を介して、一の監視ユニットが他の監視ユニットに交換された際に、前記他の監視ユニットの識別情報を前記一の監視ユニットの識別情報に更新する。
すなわち、上述した実施形態では、監視ユニットは夫々、管理ユニットから送信された計測リクエストの受信に応じて蓄電池の監視データを計測する。
代替的に、管理ユニットからの計測リクエストを待つことなく、監視ユニットが自律的に蓄電池の監視データを計測する構成であってもよい。監視ユニットは、イベントとして(例えば所定の周期で)、当該監視ユニットが取り付けられている蓄電池の監視データを計測し、計測した監視データを管理ユニットに無線送信してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 鉛蓄電池
10 コントロールユニット(管理ユニット)
20 センサユニット(監視ユニット)

図1
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図12