(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/42 20060101AFI20241001BHJP
F04D 29/44 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
F04D29/42 M
F04D29/44 P
(21)【出願番号】P 2020107091
(22)【出願日】2020-06-22
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下原 直人
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/099417(WO,A1)
【文献】特開2018-141405(JP,A)
【文献】特開2001-263296(JP,A)
【文献】特開2014-109214(JP,A)
【文献】特開2012-087709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/42
F04D 29/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラが配される主流路と、
前記主流路より前記インペラの径方向外側に形成される副流路と、
前記副流路に設けられたリブと、
前記主流路と前記副流路とを連通させる上流連通路と、
前記上流連通路よりも前記インペラに近接し、前記インペラ
の羽根と径方向に対向して配され、前記主流路と前記副流路とを連通させる下流連通路と、
前記下流連通路に設けられ、前記インペラの回転軸方向における第1位置で前記主流路と前記副流路とを連通させる第1連通部と、
前記下流連通路に設けられ、前記インペラの周方向および前記回転軸方向の双方において前記第1位置と異なる第2位置で前記主流路と前記副流路とを連通させる第2連通部と、
を備え、
前記第1連通部および前記第2連通部は、前記回転軸方向において、互いに少なくとも一部が重複しない位置に配され、
前記第1連通部および前記第2連通部のうち少なくとも一方は、遠心圧縮機の運転領域内で前記インペラ
の前記羽根において共振が想定される、あるいは、共振した際の振動モードにおける節となる位置に対向して配され
、
前記振動モードは、前記羽根の外径縁を径方向に見た時の、前記インペラの周方向への変形を含む、
遠心圧縮機。
【請求項2】
前記第1連通部は、前記第1位置において前記周方向に延在する第1スリットを含み、
前記第2連通部は、前記第2位置において前記第1スリットと異なる位相で前記周方向に延在する第2スリットを含む、請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
前記第1スリットは、前記第2スリットと前記回転軸方向に離隔している、請求項2に記載の遠心圧縮機。
【請求項4】
前記下流連通路は、一端と他端が前記回転軸方向の異なる位置に配され、前記一端から前記他端まで前記周方向に連続する、請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項5】
前記第1連通部は、互いに離隔して形成される複数の第1貫通孔を含み、
前記第2連通部は、前記第1貫通孔と離隔し、互いに離隔して形成される複数の第2貫通孔を含む、請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項6】
前記第1連通部の前記回転軸方向の幅は、前記第2連通部の前記回転軸方向の幅と異なる、請求項1~5のいずれか1項に記載の遠心圧縮機。
【請求項7】
前記第1連通部の前記周方向の幅は、前記第2連通部の前記周方向の幅と異なる、請求項1~3、
5のいずれか1項に記載の遠心圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠心圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遠心圧縮機は、コンプレッサハウジングを備える。特許文献1には、主流路と、副流路とが形成されたコンプレッサハウジングについて開示がある。主流路には、コンプレッサインペラが配される。副流路は、主流路よりも径方向外側に配される。主流路と副流路は、上流スリットおよび下流スリットを介して連通する。副流路には、主流路と副流路との間を区画する区画壁を保持するためのリブが配される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンプレッサインペラに流入する流体(例えば,空気)の流量によって、コンプレッサインペラにより圧縮された圧縮流体が、下流スリットを介して主流路と副流路を流出入する。ここで、副流路にリブが配される場合、圧縮流体とリブが干渉し、下流スリットと主流路の連通部で周方向に圧力が高い領域と低い領域が形成される。このような周方向に圧力の高低差がある流れ場は、コンプレッサインペラを励起する加振力を生み、この中を通過するコンプレッサインペラは共振し、損傷に至るような振動応力が生じる場合がある。
【0005】
本開示の目的は、コンプレッサインペラに生じる振動応力を低減可能な遠心圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る遠心圧縮機は、インペラが配される主流路と、主流路よりインペラの径方向外側に形成される副流路と、副流路に設けられたリブと、主流路と副流路とを連通させる上流連通路と、上流連通路よりもインペラに近接し、インペラの羽根と径方向に対向して配され、主流路と副流路とを連通させる下流連通路と、下流連通路に設けられ、インペラの回転軸方向における第1位置で主流路と副流路とを連通させる第1連通部と、下流連通路に設けられ、インペラの周方向および回転軸方向の双方において第1位置と異なる第2位置で主流路と副流路とを連通させる第2連通部と、を備え、第1連通部および第2連通部は、回転軸方向において、互いに少なくとも一部が重複しない位置に配され、第1連通部および第2連通部のうち少なくとも一方は、遠心圧縮機の運転領域内でインペラの羽根において共振が想定される、あるいは、共振した際の振動モードにおける節となる位置に対向して配され、振動モードは、羽根の外径縁を径方向に見た時の、インペラの周方向への変形を含む。
【0007】
第1連通部は、第1位置において周方向に延在する第1スリットを含み、第2連通部は、第2位置において第1スリットと異なる位相で周方向に延在する第2スリットを含んでもよい。
【0008】
第1スリットは、第2スリットと回転軸方向に離隔していてもよい。
【0009】
下流連通路は、一端と他端が回転軸方向の異なる位置に配され、一端から他端まで周方向に連続していてもよい。
【0010】
第1連通部は、互いに離隔して形成される複数の第1貫通孔を含み、第2連通部は、第1貫通孔と離隔し、互いに離隔して形成される複数の第2貫通孔を含んでもよい。
【0011】
第1連通部の回転軸方向の幅は、第2連通部の前記回転軸方向の幅と異なっていてもよい。
【0012】
第1連通部の周方向の幅は、第2連通部の周方向の幅と異なっていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、コンプレッサインペラに生じる振動応力を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図4】
図4は、下流連通路が形成されるコンプレッサハウジングの内周面を展開した概略展開図である。
【
図7】
図7は、第1変形例における下流連通路が形成されるコンプレッサハウジングの内周面を展開した概略展開図である。
【
図8】
図8は、第2変形例における下流連通路が形成されるコンプレッサハウジングの内周面を展開した概略展開図である。
【
図9】
図9は、第3変形例における下流連通路が形成されるコンプレッサハウジングの内周面を展開した概略展開図である。
【
図10】
図10は、第4変形例における下流連通路が形成されるコンプレッサハウジングの内周面を展開した概略展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
図1は、過給機TCの概略断面図である。
図1に示す矢印L方向を過給機TCの左側として説明する。
図1に示す矢印R方向を過給機TCの右側として説明する。
図1に示すように、過給機TCは、過給機本体1を備える。
【0018】
過給機本体1は、ベアリングハウジング3と、タービンハウジング5と、コンプレッサハウジング7とを備える。ベアリングハウジング3の左側には、締結ボルト9によってタービンハウジング5が連結される。ベアリングハウジング3の右側には、締結ボルト11によってコンプレッサハウジング7が連結される。
【0019】
本実施形態の過給機TCは、タービンTと、遠心圧縮機Cとを備える。タービンTは、ベアリングハウジング3およびタービンハウジング5を含む。遠心圧縮機Cは、ベアリングハウジング3およびコンプレッサハウジング7を含む。以下では、遠心圧縮機Cの一例として、過給機TCについて説明する。ただし、遠心圧縮機Cは、過給機TCに限られない。遠心圧縮機Cは、過給機TC以外の装置に組み込まれてもよいし、単体であってもよい。
【0020】
ベアリングハウジング3には、軸受孔3aが形成されている。軸受孔3aは、過給機TCの左右方向に貫通する。軸受孔3aには、軸受13が設けられる。
図1では、軸受13の一例としてフルフローティング軸受を示す。ただし、軸受13は、セミフローティング軸受や転がり軸受など、他のラジアル軸受であってもよい。軸受13によって、シャフト15が回転自在に軸支されている。シャフト15の左端部には、タービンインペラ17が設けられる。タービンインペラ17は、タービンハウジング5内に回転自在に収容される。シャフト15の右端部には、コンプレッサインペラ(インペラ)19が設けられる。コンプレッサインペラ19は、コンプレッサハウジング7内に回転自在に収容される。
【0021】
コンプレッサハウジング7には、ハウジング穴7aが形成される。ハウジング穴7aは、過給機TCの右側に開口する。ハウジング穴7aには、取付部材21が接続される。コンプレッサハウジング7および取付部材21によって主流路23が形成される。主流路23は、過給機TCの右側に開口する。主流路23は、コンプレッサインペラ19の回転軸方向(以下、単に回転軸方向と称す)に延在する。主流路23は、不図示のエアクリーナに接続される。コンプレッサインペラ19は、主流路23に配される。
【0022】
ベアリングハウジング3とコンプレッサハウジング7の間には、ディフューザ流路25が形成される。ディフューザ流路25は、ベアリングハウジング3とコンプレッサハウジング7の回転軸方向における対向面によって形成される。ディフューザ流路25は、空気を昇圧する。ディフューザ流路25は、シャフト15の径方向内側から外側に向けて環状に形成されている。ディフューザ流路25は、シャフト15の径方向内側において主流路23に連通している。
【0023】
コンプレッサハウジング7には、コンプレッサスクロール流路27が設けられている。コンプレッサスクロール流路27は、環状に形成される。コンプレッサスクロール流路27は、例えばディフューザ流路25よりもシャフト15の径方向外側に位置する。コンプレッサスクロール流路27は、不図示のエンジンの吸気口およびディフューザ流路25と連通している。コンプレッサインペラ19が回転すると、主流路23からコンプレッサハウジング7内に流体(例えば、空気)が吸気される。吸気された流体は、コンプレッサインペラ19の翼間を流通する過程において、加圧加速される。加圧加速された流体は、ディフューザ流路25およびコンプレッサスクロール流路27で昇圧される。昇圧された流体は、エンジンの吸気口に導かれる。
【0024】
タービンハウジング5には、吐出口29が形成されている。吐出口29は、過給機TCの左側に開口する。吐出口29は、不図示の排気ガス浄化装置に接続される。また、タービンハウジング5には、連通路31と、タービンスクロール流路33とが設けられている。連通路31は、タービンインペラ17よりも径方向外側に位置する。連通路31は、タービンインペラ17を介してタービンスクロール流路33と吐出口29とを連通させる。
【0025】
タービンスクロール流路33は、環状に形成される。タービンスクロール流路33は、例えば連通路31よりもタービンインペラ17の径方向外側に位置する。タービンスクロール流路33は、不図示のガス流入口と連通する。ガス流入口には、不図示のエンジンの排気マニホールドから排出される排気ガスが導かれる。ガス流入口からタービンスクロール流路33に導かれた排気ガスは、連通路31およびタービンインペラ17の翼間を介して吐出口29に導かれる。吐出口29に導かれた排気ガスは、その流通過程においてタービンインペラ17を回転させる。
【0026】
タービンインペラ17の回転力は、シャフト15を介してコンプレッサインペラ19に伝達される。上記のとおりに、空気は、コンプレッサインペラ19の回転力によって昇圧されて、エンジンの吸気口に導かれる。
【0027】
図2は、
図1の一点鎖線部分の抽出図である。
図2に示すように、コンプレッサハウジング7には、循環流路100が形成される。循環流路100は、副流路110と、上流連通路120と、下流連通路130とを含む。以下、
図2に示す矢印R方向を主流路23の吸気の上流側として説明する。
図2に示す矢印L方向を主流路23の吸気の下流側として説明する。
【0028】
副流路110は、主流路23よりコンプレッサインペラ19の径方向外側に形成される。副流路110は、コンプレッサインペラ19の径方向(以下、単に径方向ともいう)において、主流路23から離隔して形成される。副流路110は、コンプレッサインペラ19の周方向(以下、単に周方向ともいう)に延在し、大凡円筒形状に形成される。
【0029】
上流連通路120および下流連通路130は、副流路110と主流路23との間に形成される。上流連通路120および下流連通路130は、主流路23と副流路110とを連通させる。上流連通路120は、コンプレッサインペラ19の前縁端であるリーディングエッジLEよりも主流路23の吸気の上流側(
図2中、右側)に位置する。上流連通路120は、大凡円環形状に形成される。
【0030】
下流連通路130は、上流連通路120よりもコンプレッサインペラ19に近接する側に位置する。下流連通路130は、コンプレッサインペラ19のリーディングエッジLEよりも吸気の下流側(
図2中、左側)に位置する。下流連通路130は、コンプレッサインペラ19と径方向に対向して配される。下流連通路130の詳細な形状については後述する。
【0031】
主流路23、副流路110、上流連通路120、および、下流連通路130の間には、区画壁140が形成される。区画壁140は、径方向において、主流路23と副流路110の間に設けられる。区画壁140は、主流路23と副流路110とを区画する。区画壁140は、回転軸方向において、上流連通路120と下流連通路130の間に設けられる。区画壁140は、上流連通路120と下流連通路130とを区画する。
【0032】
副流路110には、リブ150が設けられる。リブ150は、例えば板状に形成される。リブ150は、回転軸方向に延在する。本実施形態では、副流路110に複数のリブ150が設けられる。複数のリブ150は、互いに離隔して周方向に等間隔に配される。ただし、複数のリブ150は、周方向に不等間隔に配されてもよい。リブ150は、コンプレッサハウジング7と、区画壁140とに接続される。リブ150は、コンプレッサハウジング7から脱落しないように、区画壁140を支持(保持)する。
【0033】
図3は、
図1の破線部分の抽出図である。
図3に示すように、下流連通路130は、第1連通部131と、第2連通部133とを含む。第1連通部131は、回転軸方向における第1位置P1で主流路23と副流路110とを連通させる。第2連通部133は、周方向および回転軸方向の双方において第1位置P1と異なる第2位置P2で主流路23と副流路110とを連通させる。例えば、第1連通部131は、回転軸方向において第2連通部133と重複しない位置に配される。第1連通部131は、周方向において第2連通部133と重複しない位置に配される。つまり、第1連通部131と第2連通部133は、互いに離隔し、独立して形成される。第1連通部131は、第2連通部133と連通しない位置に配される。ただし、第1連通部131は、回転軸方向において第2連通部133と重複する位置に配されてもよい。あるいは、第1連通部131は、周方向において第2連通部133と重複する位置に配されてもよい。
【0034】
本実施形態では、第1連通部131は、第1スリット131aを含む。第1スリット131aは、第1位置P1において周方向に延在する大凡半円環状のスリットである。本実施形態では、第2連通部133は、第2スリット133aを含む。第2スリット133aは、第2位置P2において第1スリット131aと異なる位相で周方向に延在する大凡半円環状のスリットである。
【0035】
図4は、下流連通路130が形成されるコンプレッサハウジング7の内周面S1を展開した概略展開図である。
図4に示すように、第1スリット131aは、第2スリット133aと周方向において異なる位相(領域)に形成される。
【0036】
本実施形態では、第1スリット131aの周方向の幅は、第2スリット133aの周方向の幅と同じである。また、第1スリット131aの軸方向の幅は、第2スリット133aの軸方向の幅と同じである。したがって、コンプレッサハウジング7の内周面S1に開口する第1スリット131aの開口面積は、第2スリット133aの開口面積と等しい。ただし、第1スリット131aの開口面積は、第2スリット133aの開口面積と異なっていてもよい。例えば、第1スリット131aの周方向の幅は、第2スリット133aの周方向の幅と異なっていてもよい。また、第1スリット131aの軸方向の幅は、第2スリット133aの軸方向の幅と異なっていてもよい。
【0037】
第1スリット131aは、第2スリット133aと回転軸方向に離隔している。したがって、回転軸方向において、第1スリット131aと第2スリット133aとの間には、肉厚部160が形成される。肉厚部160が形成されることにより、区画壁140がコンプレッサハウジング7に支持される。換言すれば、肉厚部160は、コンプレッサハウジング7から脱落しないように、区画壁140を支持(保持)する。つまり、肉厚部160は、上述したリブ150と同様の機能を有する。そのため、本実施形態では、
図2および
図3に示すリブ150は、必須の構成ではなく、副流路110には、リブ150が設けられなくてもよい。
【0038】
図5Aは、
図4に示すVA-VA矢視断面図である。
図5Bは、
図4に示すVB-VB矢視断面図である。
図5Aおよび
図5B中、矢印DR方向は、コンプレッサインペラ19の回転方向を示す。
図5Aおよび
図5Bに示すように、第1スリット131aは、周方向の両端部に前方傾斜面131bおよび後方傾斜面131cを有する。
【0039】
前方傾斜面131bは、第1スリット131aのうちコンプレッサインペラ19の回転方向DR前方側に設けられる。前方傾斜面131bは、コンプレッサインペラ19の回転軸を含む面に対し傾斜している。前方傾斜面131bは、コンプレッサハウジング7の内周面S1から径方向外側(
図5Aおよび
図5B中、下側)に離隔するほど、回転方向DR前方側に傾斜する。
【0040】
後方傾斜面131cは、第1スリット131aのうちコンプレッサインペラ19の回転方向DR後方側に設けられる。後方傾斜面131cは、コンプレッサインペラ19の回転軸を含む面に対し傾斜している。後方傾斜面131cは、コンプレッサハウジング7の内周面S1から径方向外側(
図5Aおよび
図5B中、下側)に離隔するほど、回転方向DR前方側に傾斜する。
【0041】
このように、本実施形態の第1スリット131aは、周方向の両端部に前方傾斜面131bおよび後方傾斜面131cを有している。しかし、これに限定されず、第1スリット131aは、周方向の両端部に、コンプレッサインペラ19の回転軸を含む面と平行な面を有してもよい。
【0042】
図6Aは、
図4に示すVIA-VIA矢視断面図である。
図6Bは、
図4に示すVIB-VIB矢視断面図である。
図6Aおよび
図6B中、矢印DR方向は、コンプレッサインペラ19の回転方向を示す。
図6Aおよび
図6Bに示すように、第2スリット133aは、周方向の両端部に前方傾斜面133bおよび後方傾斜面133cを有する。
【0043】
前方傾斜面133bは、第2スリット133aのうちコンプレッサインペラ19の回転方向DR前方側に設けられる。前方傾斜面133bは、コンプレッサインペラ19の回転軸を含む面に対し傾斜している。前方傾斜面133bは、コンプレッサハウジング7の内周面S1から径方向外側(
図6Aおよび
図6B中、下側)に離隔するほど、回転方向DR前方側に傾斜する。
【0044】
後方傾斜面133cは、第2スリット133aのうちコンプレッサインペラ19の回転方向DR後方側に設けられる。後方傾斜面133cは、コンプレッサインペラ19の回転軸を含む面に対し傾斜している。後方傾斜面133cは、コンプレッサハウジング7の内周面S1から径方向外側(
図6Aおよび
図6B中、下側)に離隔するほど、回転方向DR前方側に傾斜する。
【0045】
このように、本実施形態の第2スリット133aは、周方向の両端部に前方傾斜面133bおよび後方傾斜面133cを有している。しかし、これに限定されず、第2スリット133aは、周方向の両端部に、コンプレッサインペラ19の回転軸を含む面と平行な面を有してもよい。
【0046】
次に、
図2を参照して本実施形態の循環流路100の作用について説明する。コンプレッサインペラ19に流入する流体(空気)の流量が小さくなると、コンプレッサインペラ19により圧縮された圧縮流体が、下流連通路130を介して副流路110に流入し、上流連通路120から主流路23に還流する。こうして、コンプレッサインペラ19に流入する見かけ上の流量が増加するため、遠心圧縮機Cの小流量側の作動領域が拡大する。
【0047】
ここで、副流路110にリブ150が配される場合、圧縮流体とリブ150が干渉し、下流連通路130と主流路23の連通部で周方向に圧力が高い領域と低い領域が形成される。このような周方向に圧力の高低差がある流れ場は、コンプレッサインペラ19を励起する加振力を生み、この中を通過するコンプレッサインペラ19は共振し、損傷に至るような振動応力が生じる場合がある。
【0048】
そこで、本実施形態の下流連通路130は、
図3に示すように第1連通部131と第2連通部133とを備える。上述したように、第1連通部131が配される第1位置P1は、第2連通部133が配される第2位置P2と周方向および回転軸方向の双方で異なる。
【0049】
そのため、リブ150と衝突して高められた圧縮流体の圧力が、第1連通部131を介してコンプレッサインペラ19に伝達する位置と、第2連通部133を介してコンプレッサインペラ19に伝達する位置とが異なる。したがって、コンプレッサインペラ19の同じ位置に作用する圧力(励振力)を低減することができる。その結果、コンプレッサインペラ19に生じる振動応力を低減することができる。
【0050】
ここで、第1連通部131および第2連通部133のうち少なくとも一方は、遠心圧縮機Cの運転領域内でコンプレッサインペラ19が共振する振動モードの節の位置に対向して配されるとよい。つまり、第1位置P1および第2位置P2の少なくとも一方は、コンプレッサインペラ19が共振する振動モードの節の位置に配されるとよい。ここで、コンプレッサインペラ19の振動モードは、コンプレッサインペラ19の形状に応じて決定される。そして、コンプレッサインペラ19が共振する振動モードは、リブ150の数や、コンプレッサインペラ19の回転数に応じて特定される。例えば、コンプレッサインペラ19が共振する振動モードは、リブ150の数×整数倍×回転周波数によって特定することができる。第1連通部131および第2連通部133のうち少なくとも一方は、このようにして特定されたコンプレッサインペラ19の振動モードの節の位置に対向して配されるとよい。
【0051】
また、
図4に示すように第1連通部131は、第1スリット131aを含み、第2連通部133は、第2スリット133aを含む。そして、第1スリット131aは、第2スリット133aと回転軸方向に離隔している。
【0052】
これにより、第1スリット131aと第2スリット133aの間には、肉厚部160を形成することができ、副流路110からリブ150を除去することが可能となる。その結果、リブ150に起因するコンプレッサインペラ19に作用する圧力(励振力)をさらに低減することができる。
【0053】
また、
図5A、
図5B、
図6Aおよび
図6Bに示すように、第1スリット131aは、コンプレッサインペラ19の回転軸を含む面に対し回転方向DR前方側に傾斜した前方傾斜面131bおよび後方傾斜面131cを有する。第2スリット133aは、コンプレッサインペラ19の回転軸を含む面に対し回転方向DR前方側に傾斜した前方傾斜面133bおよび後方傾斜面133cを有する。
【0054】
これにより、主流路23から第1スリット131aおよび第2スリット133aに流入した圧縮流体が前方傾斜面131b、133bおよび後方傾斜面131c、133cに衝突した際の圧力の上昇度を抑制することができる。
【0055】
(第1変形例)
図7は、第1変形例における下流連通路230が形成されるコンプレッサハウジング7の内周面S1を展開した概略展開図である。上記実施形態の過給機TCと実質的に等しい構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。第1変形例の循環流路100は、下流連通路230の形状が、上記実施形態の下流連通路130と異なっている。それ以外の過給機TCの構成は、上記実施形態の過給機TCと同じである。
【0056】
図7に示すように、下流連通路230は、第1連通部231および第2連通部233を備える。第1連通部231は、回転軸方向における第1位置P3で主流路23と副流路110とを連通させる。第2連通部233は、周方向および回転軸方向の双方において第1位置P3と異なる第2位置P4で主流路23と副流路110とを連通させる。例えば、第1連通部231は、回転軸方向において第2連通部233と重複しない位置に配される。第1連通部231は、周方向において第2連通部233と重複しない位置に配される。つまり、第1連通部231と第2連通部233は、互いに離隔し、独立して配される。
【0057】
第1変形例では、第1連通部231は、下流連通路230のうち一端E1側に配され、第2連通部233は、下流連通路230のうち他端E2側に配される。下流連通路230は、一端E1と他端E2が回転軸方向の異なる位置に配される。第1変形例では、一端E1は、周方向において他端E2と同じ位相に配される。ただし、一端E1は、周方向において他端E2と異なる位相に配されてもよい。一端E1は、他端E2と回転軸方向に離隔して配される。したがって、回転軸方向において、一端E1と他端E2との間には、肉厚部260が形成される。肉厚部260が形成されることにより、区画壁140がコンプレッサハウジング7に支持される。下流連通路230は、一端E1から他端E2に向かってで延在する。下流連通路230は、一端E1から他端E2まで周方向に連続している。
【0058】
第1変形例によれば、上記実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0059】
(第2変形例)
図8は、第2変形例における下流連通路330が形成されるコンプレッサハウジング7の内周面S1を展開した概略展開図である。上記実施形態の過給機TCと実質的に等しい構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。第2変形例の循環流路100は、下流連通路330の形状が、上記実施形態の下流連通路130と異なっている。それ以外の過給機TCの構成は、上記実施形態の過給機TCと同じである。
【0060】
図8に示すように、下流連通路330は、第1連通部331および第2連通部333を備える。第1連通部331は、回転軸方向における第1位置(第1領域)P5で主流路23と副流路110とを連通させる。第2連通部333は、周方向および回転軸方向の双方において第1位置P5と異なる第2位置(第2領域)P6で主流路23と副流路110とを連通させる。例えば、第1連通部331は、回転軸方向において第2連通部333と重複する位置に配される。ただし、第1連通部331は、回転軸方向において第2連通部333と重複しない位置に配されてもよい。第1連通部331は、周方向において第2連通部333と重複しない位置に配される。
【0061】
第2変形例では、第1連通部331は、複数の第1貫通孔331aを含む。複数の第1貫通孔331aは、周方向に互いに離隔して形成される。したがって、周方向において、複数の第1貫通孔331aの間には、肉厚部360が形成される。肉厚部360が形成されることにより、区画壁140がコンプレッサハウジング7に支持される。第1貫通孔331aは、例えば、開口形状が大凡六角形状である。ただし、これに限定されず、第1貫通孔331aの開口形状は、円形状、楕円形状、三角形状、矩形状など、六角形状と異なる形状であってもよい。
【0062】
第2連通部333は、複数の第2貫通孔333aを含む。複数の第2貫通孔333aは、周方向および回転軸方向の双方において複数の第1貫通孔331aと離隔している。また、複数の第2貫通孔333aは、周方向に互いに離隔して形成される。したがって、周方向において、複数の第2貫通孔333aの間には、肉厚部360が形成される。肉厚部360が形成されることにより、区画壁140がコンプレッサハウジング7に支持される。第2貫通孔333aは、例えば、開口形状が大凡六角形状である。ただし、これに限定されず、第2貫通孔333aの開口形状は、円形状、楕円形状、三角形状、矩形状など、六角形状と異なる形状であってもよい。
【0063】
複数の第1貫通孔331aと複数の第2貫通孔333aのうち互いに最も近接する第1貫通孔331aおよび第2貫通孔333aは、周方向および回転軸方向の双方に離隔して形成される。したがって、周方向および回転軸方向において、互いに最も近接する第1貫通孔331aおよび第2貫通孔333aの間には、肉厚部360が形成される。肉厚部360が形成されることにより、区画壁140がコンプレッサハウジング7に支持される。
【0064】
第2変形例によれば、複数の第1貫通孔331aの間、複数の第2貫通孔333aの間、および、第1貫通孔331aおよび第2貫通孔333aの間に肉厚部360が形成される。そのため、
図8に示すように、第1連通部331および第2連通部333を周方向に重複させることができる。したがって、例えば、第1連通部331および第2連通部333の双方を上述した節の位置に設ける場合の位置調整を容易にすることができる。
【0065】
また、第2変形例によれば、複数の肉厚部360が形成される。そのため、区画壁140を支持する肉厚部360の強度を向上させることができる。第2変形例によれば、上記実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0066】
(第3変形例)
図9は、第3変形例における下流連通路430が形成されるコンプレッサハウジング7の内周面S1を展開した概略展開図である。上記実施形態の過給機TCと実質的に等しい構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。第3変形例の循環流路100は、下流連通路430の形状が、上記実施形態の下流連通路130と異なっている。それ以外の過給機TCの構成は、上記実施形態の過給機TCと同じである。
【0067】
図9に示すように、下流連通路430は、第1連通部431(第1スリット431a)と、第2連通部433(第2スリット433a)とを含む。第1連通部431は、回転軸方向における第1位置P1で主流路23と副流路110とを連通させる。第2連通部433は、周方向および回転軸方向の双方において第1位置P1と異なる第2位置P2で主流路23と副流路110とを連通させる。
【0068】
第3変形例の第1連通部431および第2連通部433は、上記実施形態の第1連通部131および第2連通部133に対し、回転軸方向の幅のみ異なっている。第3変形例では、第1連通部431の回転軸方向の幅D1は、第2連通部433の回転軸方向の幅D2と異なる。第3変形例では、幅D1は、幅D2よりも小さい。ただし、これに限定されず、幅D1は、幅D2よりも大きくてもよい。なお、第3変形例では、第1連通部431の周方向の幅は、第2連通部433の周方向の幅と同じである。
【0069】
第3変形例によれば、第1連通部431の開口面積は、第2連通部433の開口面積と異なる。これにより、リブ150から第1連通部431を介してコンプレッサインペラ19に伝達される圧縮流体の圧力と、リブ150から第2連通部433を介してコンプレッサインペラ19に伝達される圧縮流体の圧力とに差を生じさせることができる。ここで、開口面積が大きくなるほど、コンプレッサインペラ19に伝達される圧縮流体の圧力が低減される。
【0070】
例えば、第1連通部431および第2連通部433のうち開口面積が小さい方を上述した節の位置に設け、開口面積が大きい方を上述した節と異なる位置に設ける。そうすることで、コンプレッサインペラ19に生じる振動応力を効果的に低減することができる。第3変形例によれば、上記実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0071】
(第4変形例)
図10は、第4変形例における下流連通路530が形成されるコンプレッサハウジング7の内周面S1を展開した概略展開図である。上記実施形態の過給機TCと実質的に等しい構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。第4変形例の循環流路100は、下流連通路530の形状が、上記実施形態の下流連通路130と異なっている。それ以外の過給機TCの構成は、上記実施形態の過給機TCと同じである。
【0072】
図10に示すように、下流連通路530は、第1連通部531(第1スリット531a)と、第2連通部533(第2スリット533a)とを含む。第1連通部531は、回転軸方向における第1位置P1で主流路23と副流路110とを連通させる。第2連通部533は、周方向および回転軸方向の双方において第1位置P1と異なる第2位置P2で主流路23と副流路110とを連通させる。
【0073】
第4変形例の第1連通部531および第2連通部533は、上記実施形態の第1連通部131および第2連通部133に対し、周方向の幅のみ異なっている。第4変形例では、第1連通部531の周方向の幅D3は、第2連通部533の周方向の幅D4と異なる。第4変形例では、幅D3は、幅D4よりも小さい。ただし、これに限定されず、幅D3は、幅D4よりも大きくてもよい。なお、第4変形例では、第1連通部531の回転軸方向の幅は、第2連通部533の回転軸方向の幅と同じである。
【0074】
第4変形例によれば、第1連通部531の開口面積は、第2連通部533の開口面積と異なる。そのため、上記第3変形例と同様の作用および効果を得ることができる。また、上記実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0075】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0076】
上記実施形態と上記変形例とを組み合わせた構成としてもよい。例えば、上記第1変形例の下流連通路230と第3変形例の下流連通路430を組み合わせて、第1連通部231および第2連通部233の回転軸方向の幅を互いに異ならせてもよい。また、第2変形例の下流連通路330と第3変形例の下流連通路430を組み合わせて、第1連通部331および第2連通部333の回転軸方向の幅を互いに異ならせてもよい。また、第2変形例の下流連通路330と第4変形例の下流連通路530を組み合わせて、第1連通部331および第2連通部333の周方向の幅を互いに異ならせてもよい。
【0077】
上記実施形態と上記変形例では、下流連通路130、230、330、430、530が、回転軸方向の異なる位置に配された(分割された)2つの連通部(第1連通部131、231、331、431、531と第2連通部133、233、333、433、533)を備える例について説明した。しかし、これに限定されず、下流連通路130、230、330、430、530は、回転軸方向の異なる位置に配された(分割された)2つ以上の連通部を備えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本開示は、遠心圧縮機Cに利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
C 遠心圧縮機
E1 一端
E2 他端
P1 第1位置
P2 第2位置
S1 内周面
7 コンプレッサハウジング
19 コンプレッサインペラ(インペラ)
23 主流路
100 循環流路
110 副流路
120 上流連通路
130 下流連通路
131 第1連通部
131a 第1スリット
133 第2連通部
133a 第2スリット
230 下流連通路
231 第1連通部
233 第2連通部
330 下流連通路
331 第1連通部
331a 第1貫通孔
333 第2連通部
333a 第2貫通孔
430 下流連通路
431 第1連通部
433 第2連通部
530 下流連通路
531 第1連通部
533 第2連通部