(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】粉粒状金属石けんの製造方法、および、該製造方法により得られる粉粒状金属石けん
(51)【国際特許分類】
C11D 13/10 20060101AFI20241001BHJP
C11D 13/20 20060101ALI20241001BHJP
C11D 1/04 20060101ALI20241001BHJP
C11D 17/06 20060101ALI20241001BHJP
C07C 51/41 20060101ALI20241001BHJP
C07C 53/126 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
C11D13/10
C11D13/20
C11D1/04
C11D17/06
C07C51/41
C07C53/126
(21)【出願番号】P 2020113019
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000174541
【氏名又は名称】堺化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100193172
【氏名又は名称】上川 智子
(72)【発明者】
【氏名】阪口 聡
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅博
(72)【発明者】
【氏名】津田 耕市
【審査官】林 建二
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-073397(JP,A)
【文献】特開平11-106794(JP,A)
【文献】特開昭64-051496(JP,A)
【文献】特開昭51-061510(JP,A)
【文献】”新しい石鹸作りプロジェクト(1)~加熱タンクを石鹸釜に改造する”[online],インターネット,2015年02月25日,<URL:https://store.kimurasoap.co.jp/blog/new-soap-making-project01>,[2024年4月11日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00-19/00
C07B 31/00-63/04
C07C 1/00-409/44
C11B 1/00-15/00
C11C 1/00-5/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリン酸と、
酸化亜鉛と、水と、を加圧下で
反応容器内で加熱しながら撹拌混合することを含む、粉粒状の金属石けんの製造方法であって、
該
ステアリン酸と、該
酸化亜鉛との仕込み量が、得られる金属石けんに対する化学当量であり、
該水の含有量が、該ステアリン酸、および、該酸化亜鉛の合計重量の15重量%以下であり、
該加熱が間接加熱と
加熱した水蒸気を該反応容器内に導入することによる直接加熱とを併用して行われ
、該間接加熱、および、該直接加熱時の該反応容器内の温度が、得られる金属石けんの融点未満である、粉粒状の金属石けんの製造方法。
【請求項2】
前記水の含有量が、前記ステアリン酸、および、前記酸化亜鉛の合計重量の5重量%~10重量%である、請求項1に記載の粉粒状の金属石けんの製造方法。
【請求項3】
前記間接加熱、および、前記直接加熱時の前記反応容器内の温度が前記ステアリン酸の融点以上である、請求項1
または2に記載の粉粒状の金属石けんの製造方法。
【請求項4】
前記直接加熱、および、前記間接加熱時の前記反応容器内の温度が110℃~117℃である、請求項1から
3のいずれかに記載の粉粒状の金属石けんの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉粒状金属石けんの製造方法、および、該製造方法により得られる粉粒状金属石けんに関する。
【背景技術】
【0002】
金属石けんは、高級脂肪酸および有機酸のアルカリ金属以外の金属の塩であり、ポリ塩化ビニル樹脂用安定剤等の様々な用途に用いられている。近年、ポリ塩化ビニル樹脂用安定剤では、鉛などの重金属規制に伴い、金属石けんを主原料とした低毒性ポリ塩化ビニル樹脂用安定剤の設計が主流となっている。そのため、金属石けんの生産効率化を図り、コストダウンすることが一層重要となってきている。
【0003】
金属石けんの製造方法としては、金属酸化物および/または金属水酸化物と、脂肪酸と、を直接反応させる直接溶融法(乾式法)が知られている。乾式法は簡便な製法であり、副生成物も少ない。しかしながら、反応物を溶融状態で攪拌する必要があるため、粉粒状の金属石けんとするには、溶融状態の反応物を冷却してフレークとし、得られたフレークを解砕および粉砕を行う必要がある。また、他の製造方法として、加圧容器を用いて、一定圧力下で、金属酸化物および/または金属水酸化物と、脂肪酸とを、金属石けんの融点以下で反応を開始させ、粒状の金属石けんを得る方法(加圧法)が知られている。これらの方法では、脂肪酸と金属との化学量論比に対し、過剰量の金属酸化物および/または金属水酸化物を用いて金属石けんを製造する(例えば、特許文献1)。そのため、未反応物である遊離脂肪酸の含有率が高くなり、さらに過剰に用いられる金属の影響により、溶融した金属石けんの透明性が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、低コストで製造効率のよい粉粒状の金属石けんの製造方法、および、この製造方法により得られる金属石けんを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の粉粒状の金属石けんの製造方法は、脂肪酸と、金属酸化物、金属水酸化物および金属炭酸塩からなる群より選択される少なくとも1種と、水と、を加圧下で加熱しながら撹拌混合することを含む。この脂肪酸と、金属酸化物、金属水酸化物および金属炭酸塩からなる群より選択される少なくとも1種との仕込み量は、得られる金属石けんに対して化学当量である。この加熱は間接加熱と直接加熱とを併用して行われる。
1つの実施形態においては、上記直接加熱は蒸気による直接加熱である。
1つの実施形態においては、上記加熱時の温度は、得られる金属石けんの融点未満である。
1つの実施形態においては、上記脂肪酸は炭素数8から28の脂肪酸からなる群より選択される少なくとも1種である。
1つの実施形態においては、上記金属酸化物、金属水酸化物および金属炭酸塩に含まれる金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スズおよび亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種の金属である。
本発明の別の局面においては金属石けんが提供される。この金属石けんは、160℃で1時間加熱した金属石けんの溶融透明性評価試験における透明性が1である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の粉粒状の金属石けんの製造方法は、脂肪酸と、金属酸化物、金属水酸化物および金属炭酸塩からなる群より選択される少なくとも1種と、水と、を加圧下で加熱しながら撹拌混合することを含み、加熱を間接加熱と直接加熱とを併用して行う。本発明の製造方法では、原料である脂肪酸と、金属酸化物、金属水酸化物および金属炭酸塩からなる群より選択される少なくとも1種が化学量論上のモル比で反応し得る。そのため、得られる金属石けんに含まれ得る未反応物(遊離脂肪酸および過剰分の金属)の量を低減することができる。さらに、原料を過剰に用いる必要がないため、コストを低減することができる。
【0008】
さらに、本発明の製造方法により得られる金属石けんは、未反応物等の不純物の含有量が少ない。そのため、金属石けんを溶融した状態での透明性が向上し得る。そのため、透明性が求められる用途にも好適に用いることができる。さらに、金属石けんを用いた製品への未反応物(例えば、遊離脂肪酸)による不良の発生を防止し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例および比較例で得られた金属石けんの溶融透明性評価試験結果の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0011】
A.粉粒状の金属石けんの製造方法
本発明の粉粒状の金属石けんの製造方法は、脂肪酸と、金属酸化物、金属水酸化物および金属炭酸塩からなる群より選択される少なくとも1種(以下、金属原料ともいう)と、水と、を加圧下で加熱しながら撹拌混合することを含む。この脂肪酸と、金属原料との仕込み量は、得られる金属石けんに対して化学当量である。すなわち、脂肪酸の酸価に対する金属石けんの化学当量分の金属原料が用いられる。さらに、本発明の金属石けんの製造方法では、加熱を間接加熱と直接加熱とを併用して行う。間接加熱と直接加熱とを併用することにより、原料である脂肪酸と、金属原料とが、化学量論上のモル比で反応し得る。そのため、得られる金属石けんに含まれ得る未反応物(遊離脂肪酸および過剰分の金属)を低減することができる。さらに、原料を過剰に用いる必要がないため、コストを低減することができる。
【0012】
A-1.脂肪酸
脂肪酸としては、所望の金属石けんに応じて、任意の適切な脂肪酸を用いることができる。例えば、炭素数8~28の脂肪酸からなる群より選択される少なくとも1種の脂肪酸を用いることができる。好ましくは、ステアリン酸、アラキン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、ウンデカン酸、カプリン酸、ベヘン酸、および、モンタン酸を用いることができる。これらの脂肪酸を用いることにより得られる金属石けんを、塗料用樹脂原料、石けん用樹脂原料、樹脂原料、各種誘電体等の様々な工業用途の原料として幅広く用いることができる。脂肪酸は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
A-2.金属酸化物、金属水酸化物および金属炭酸塩
金属酸化物、金属水酸化物および金属炭酸塩としては、所望の金属石けんに応じて、任意の適切な金属の金属酸化物、金属水酸化物および金属炭酸塩を用いることができる。安価で、化学的に安定しており、不純物が少ないという点から、好ましくは金属酸化物が用いられる。金属酸化物、金属水酸化物および金属炭酸塩は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
金属酸化物、金属水酸化物および金属炭酸塩に含まれる金属としては、所望の金属石けんに応じて、任意の適切な金属を用いることができる。好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スズおよび亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種の金属であり、より好ましくは亜鉛、カルシウム、マグネシウム、バリウムである。これらの金属を用いることにより、よりかさ比重値の高い、流動性を有する粉粒状の金属石けんを製造することができる。金属は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
A-3.水
水としては、任意の適切な水を用いることができる。例えば、精製水、水道水、蒸留水、イオン交換水等が挙げられる。本発明の製造方法において、水は触媒として機能し得る。したがって、水は少量含まれていればよい。水の含有量は、例えば、脂肪酸、および、金属原料の合計重量の15重量%以下となるよう用いることができ、好ましくは脂肪酸および金属原料の合計重量の5重量%~10重量%である。
【0016】
A-4.その他成分
本発明の製造方法では、脂肪酸、金属原料、および、水以外の任意の適切な他の材料をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、界面活性剤等が挙げられる。
【0017】
A-5.撹拌・混合
本発明の製造方法は、脂肪酸と、金属酸化物、金属水酸化物および金属炭酸塩からなる群より選択される少なくとも1種と、水と、任意の他の成分と、を加圧下で、直接加熱および間接加熱により加熱しながら撹拌・混合することにより粉粒状の金属石けんを製造することができる。本発明の製造方法では、脂肪酸と、金属原料とを、化学量論上のモル比(得られる金属石けんに対する化学当量)で用いる。加圧下で、直接加熱および間接加熱により加熱しながら撹拌混合することにより、化学量論上のモル比で脂肪酸と金属原料とを反応させることができ、得られる金属石けんに含まれる未反応物を低減させることができる。
【0018】
直接加熱および間接加熱は、任意の適切な方法により行うことができる。直接加熱とは、加熱対象物(反応物)が高温ガスに接触することにより加熱されることを意味し、加熱対象物(反応物)が入った反応容器内に高温ガスを導入することにより行う熱効率のよい加熱方法である。直接加熱に用いる高温ガスとしては、例えば、加熱された水蒸気、加熱された窒素等の不活性ガスが挙げられる。好ましくは、加熱された水蒸気を反応容器内に導入することにより、直接加熱を行う。上記の通り、水は触媒として機能し得る。したがって、直接加熱を行うとともに触媒としても水蒸気が機能し、結果として製造効率が向上し得る。
【0019】
間接加熱とは、加熱対象物(反応物)が高温ガスとの接触以外の方法で加熱されることを意味し、例えば、ジャケットヒーター等により加熱対象物(反応物)が入った容器を加熱することにより行う。
【0020】
直接加熱および間接加熱は、同時に開始してもよく、任意の適切な順序で行ってもよい。例えば、反応容器に投入した脂肪酸と、金属原料と、水と、を間接加熱し、次いで間接加熱したまま、直接加熱を行ってもよい。1つの実施形態においては、脂肪酸と、金属原料と、水と、が投入された反応容器を間接加熱した状態で、加熱された水蒸気を反応容器内に投入することにより加熱を行うことができる。間接加熱により昇温した状態で、直接加熱を行うことにより、投入された水蒸気が気体の状態を維持することができ、より反応を促進することができる。
【0021】
直接加熱および間接加熱は、反応容器内が任意の適切な温度となるよう行われる。加熱時の温度は任意の適切な値に設定され得る。好ましくは、得られる金属石けんの融点未満の温度となるよう加熱する。例えば、金属石けんとしてステアリン酸亜鉛を製造する場合、容器内の温度が110℃~117℃となるように加熱する。金属石けんの融点未満の温度とすることにより、スラリーまたは固体の状態で原料を撹拌・混合することができる。そのため、かさ比重値が高く、流動性がある粉粒状の金属石けんが得られ得る。また、加熱時の温度は、好ましくは用いる脂肪酸の融点以上である。
【0022】
本発明の製造方法では、加圧下で直接加熱および間接加熱を行う。容器内の圧力は、反応容器の耐圧性に応じて任意の適切な値に設定することができる。加圧下で加熱することにより、スラリーまたは固体の状態で原料を撹拌・混合することができる。そのため、かさ比重値が高く、流動性がある粉粒状の金属石けんが得られ得る。
【0023】
反応容器としては、耐圧性のある任意の適切な容器を用いることができる。例えば、耐圧性があり、任意の適切な撹拌手段を備えた容器が用いられる。例えば、ミキサー、ブレンダー、オートクレーブ等が挙げられる。
【0024】
撹拌・混合は、加熱時の温度、および、圧力等の条件、および、用いる脂肪酸、および、金属酸化物、金属水酸化物、および、金属炭酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の量等に応じて、任意の適切な時間行われる。撹拌・混合時間は、脂肪酸と、金属酸化物、金属水酸化物、および、金属炭酸塩からなる群より選択される少なくとも1種との反応が完結するよう設定され得る。例えば、反応時の圧力を高くすることにより、反応時間を短縮することができる。
【0025】
A-6.その他の工程
本発明の製造方法は、上記撹拌・混合以外に、任意の適切な工程をさらに含んでいてもよい。例えば、乾燥工程、および、得られた金属石けんを所望の粒状とするための粉砕工程を含んでいてもよい。粉砕工程は、任意の適切な方法により行うことができる。例えば、ピンミル、ハンマーミル、エアミル等の粉砕装置を用いて得られた金属石けんを粉砕することができる。本発明の製造方法では、スラリーまたは固体の状態で原料を撹拌・混合する。そのため、より容易に得られる粉粒状の金属石けんのかさ比重値を調整することができる。
【0026】
B.金属石けん
本発明の粉粒状の金属石けんは、上記製造方法により得られる。上記の通り、本発明の製造方法では、脂肪酸および金属原料を化学量論上のモル比で用いて製造することができる。したがって、得られる金属石けんは遊離脂肪酸、および、過剰に投入された金属等の未反応物の含有量が低減され得る。具体的には、得られる金属石けんの遊離脂肪酸の量は、好ましくは0.20重量%以下、より好ましくは0.16重量%以下である。そのため、溶融した金属石けんは透明性に優れ得る。
【0027】
この金属石けんは、任意の適切な用途に用いることができる。本発明の金属石けんは未反応物の含有量が少ない。したがって、遊離脂肪酸および過剰に投与された金属が悪影響を及ぼし得る用途にも好適に用いることができる。また、本発明の金属石けんは溶融した際に透明性に優れる。そのため、透明性が要求される用途にも好適に用いることができる。例えば、ラップ、および波板等の塩化ビニル樹脂加工品に用いられる安定剤、デスクマット等の雑貨用途、農業用塩化ビニル樹脂加工品に用いられる安定剤等が挙げられる。また、塗料用樹脂への添加剤、および、各種誘電体等の様々な工業用途に好適に用いることができる。
【0028】
1つの実施形態において、金属石けんは、160℃で1時間加熱した金属石けんの溶融透明性評価試験における透明性が1である。このような透明性を有することにより、より透明性が要求される用途にも好適に用いることができる。本明細書において、溶融透明性評価試験は以下の方法により行う試験をいう。
【0029】
<透明性評価試験>
金属石けんをガラス製の試験管(φ18mm×180mm、品番:リム付A-18、株式会社マルエム)に5g入れ、160℃の乾燥機で1時間加熱し、金属石けんを溶融させる。次いで、乾燥機から試験管を取り出し、試験管に密接させて黒色のステンレス板を設置する。次いで、黒色ステンレス板を40cm離れた位置から試験管を通して目視で観察する。溶融した金属石けんの透明性は、溶融した金属石けんの透明性がよく、ステンレス板の黒色がはっきりみえるものを1、ステンレス板の黒色が見づらいものは2、ステンレス板の黒色がほとんど見えないものを3として評価する。
【0030】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0031】
[実施例]
5Lコンビミックス(プライミクス社製)に脂肪酸(ステアリン酸、Southern Acid(M) Berhad社製、商品名:POFAC1865L、酸価:204mg/KOH)1609g、酸化亜鉛(酸化亜鉛、堺化学工業社製、商品名:酸化亜鉛2種)238.1g(脂肪酸の酸価に対する金属石けんの化学当量分)、および、精製水150gを仕込み、蒸気を通気させて加熱したジャケットによる間接加熱で110℃まで攪拌混合した。次いで、攪拌混合による熟成を15分間行った。その後、容器内に0.3MPa~0.4MPaの水蒸気を入れ、容器内を110℃~117℃に保持し、15分間熟成を行った。なお、水蒸気はバルブのON・OFFスイッチでコントロールし、容器内の圧力が0.10MPa~0.20Mpaの間で一定になるように調整した。次いで、減圧乾燥して容器内の水分を除去し、粉状金属石けんを得た。なお、サンプリングは得られた金属石けん、容器壁面、攪拌に用いた羽軸のそれぞれ3箇所で行い、それらを混合して評価に用いた。
【0032】
(比較例1および2)
直接加熱を行わなかったことと、加熱温度および加熱時間を表1に記載の通りに変更した以外は実施例と同様にして、金属石けんを得た。
【0033】
(比較例3および4)
直接加熱を行わなかったことと、精水の使用量、加熱温度、および、加熱時間を表1に記載の通りに変更した以外は実施例と同様にして、金属石けんを得た。
【0034】
<評価>
実施例および比較例で得られた金属石けんを用いて以下の評価を行った。
1.遊離脂肪酸(FFA)分析
エーテル:エタノール=1:1の混合溶液に得られた金属石けんを1.0g入れて溶解させ、次いでろ過した。その後、ろ液を0.1mol/L水酸化カリウム溶液(N/10)(エタノール標準液)(富士フィルム和光純薬社製)を用いて滴定し、滴定量を用いて下記式から、得られた金属石けんに含まれる遊離脂肪酸の割合を算出した。
遊離脂肪酸の割合(%)=(水酸化カリウム滴定量(mL)×N/10水酸化カリウム標準液のファクター×脂肪酸の分子量/100)/試料の採取量(g)
2.溶融透明性評価試験
得られた金属石けん5gをガラス製の試験管(φ18mm×180mm、品番:リム付A-18、株式会社マルエム)に入れ、160℃の乾燥機で1時間加熱した。次いで、乾燥機から試験管を取り出し、試験管に密接させて黒色のステンレス板を設置した。その後、黒色ステンレス板を40cm離れた位置から試験管を通して目視で観察した。溶融した金属石けんの透明性は、溶融した金属石けんの透明性がよく、ステンレス板の黒色がはっきりみえるものを1、ステンレス板の黒色が見づらいものは2、ステンレス板の黒色がほとんど見えないものを3として評価した。なお、実施例および比較例で得られた金属石けんの溶融透明性評価試験時の写真を
図1に示す。
【0035】
【0036】
実施例で得られた金属石けんは遊離脂肪酸の割合が少なかった。また、
図1にも示すように、溶融透明性評価では、試験管の後ろに設置したステンレス板の黒色がはっきりと確認することができた。精水の仕込み量を増加した比較例3および4では、透明性が若干向上したものの溶融状態の金属石けんに濁りがあり、透明性に改善の余地があった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の粉粒状の金属石けんの製造方法によれば、効率よく透明性が高い金属石けんが得られ得る。本発明の製造方法により得られる金属石けんは、塩化ビニル製品用の安定剤として好適に用いることができる。